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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20231020BHJP
   G03G 7/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
G03G9/087 331
G03G7/00 M
G03G9/087
G03G9/087 325
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019209671
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2020086459
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018217218
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天羽 優花
(72)【発明者】
【氏名】若林 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 省伍
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-098804(JP,A)
【文献】特開2018-059964(JP,A)
【文献】特開2016-114825(JP,A)
【文献】特開2016-218448(JP,A)
【文献】特開2017-090573(JP,A)
【文献】特開2005-316378(JP,A)
【文献】特開平07-114209(JP,A)
【文献】特開平07-114208(JP,A)
【文献】特開2004-004806(JP,A)
【文献】特開平03-050561(JP,A)
【文献】特開2019-095475(JP,A)
【文献】国際公開第2019/004095(WO,A1)
【文献】特開2009-014820(JP,A)
【文献】特開2018-013600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ポリエステル系樹脂A、及び結晶性ポリエステル系樹脂Cを含有する、静電荷像現像用トナーであって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aが、ポリエステル樹脂由来の構成部位、及び、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位を有し、前記ポリエステル樹脂由来の構成部位と前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位とが共有結合を介して連結し、
前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位の量が、トナー中の樹脂成分の合計量に対して、5質量%以上15質量%以下である、静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記結晶性ポリエステル系樹脂CのFedorsによる溶解度パラメータが、9.0(cal/cm1/2以上10.5(cal/cm1/2以下である、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステル系樹脂Cが、α,ω-脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分の重縮合物からなるポリエステル樹脂セグメントを少なくとも有する、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記結晶性ポリエステル系樹脂Cが、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合体である、付加重合系樹脂セグメントを更に有する、請求項3に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂由来の構成部位と前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位とが、エステル結合により連結する、請求項1~4のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記変性ポリオレフィン系重合体Aが、変性ポリプロピレン系重合体である、請求項1~5のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記反応性官能基が、カルボン酸基又は無水カルボン酸基である、請求項1~6のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記変性ポリオレフィン系重合体Aの数平均分子量が500以上8,000以下である、請求項1~7のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aの軟化点と5℃以上異なる軟化点を有する非晶性ポリエステル系樹脂Bを更に含有する、請求項1~8のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記結晶性ポリエステル系樹脂Cの量に対する前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位の量の質量比が、10/90以上90/10以下である、請求項1~9のいずれかに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の静電荷像現像用トナーを用いて、電子写真法により定着温度70℃以上180℃以下でポリプロピレンフィルムへ印刷する、印刷方法。
【請求項12】
非晶性ポリエステル系樹脂A、及び結晶性ポリエステル系樹脂Cを含有する、静電荷像現像用トナー用樹脂組成物であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aが、ポリエステル樹脂由来の構成部位、及び、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位を有し、前記ポリエステル樹脂由来の構成部位と前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位とが共有結合を介して連結し、
前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位の量が、トナー中の樹脂成分の合計量に対して、5質量%以上15質量%以下である、静電荷像現像用トナー用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナー、及び樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化印刷に対応した静電荷像現像用トナーの開発が要求されている。
特許文献1には、少なくともポリエステルからなるバインダー樹脂とワックスとを含有するトナーにおいて、ポリエステルとワックスとを相溶化させる相溶化剤であって、ポリエステルと、無水マレイン酸変性ポリオレフィンとを反応させてなることを特徴とする相溶化剤及び相溶化剤を含有することを特徴とするトナー用ポリエステル系樹脂組成物等が記載されている。当該相溶化剤によれば、トナー中におけるワックスの分散性を改善し、低温定着性、耐高温オフセット性、耐ブロッキング性、耐スペント性、耐フィルミング性に優れたトナーとすることが可能と記載されている。
特許文献2には、少なくとも、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶性樹脂、及びα-オレフィンと無水マレイン酸とを重合してなる共重合体を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナーが記載されている。当該トナーは、色再現性及び透明性に優れるとしている。
特許文献3には、ポリエステル系樹脂とポリプロピレン系ワックス(W-1)とを含有し、下記式(1)で表される吸熱量比ΔHCW/Wが、0.10以上0.80以下である、静電荷像現像トナー用結着樹脂組成物が記載されている。
吸熱量比ΔHCW/W=ΔHCW/ΔH (1)
ΔHCW:前記結着樹脂組成物として測定した場合における、ポリプロピレン系ワックス(W-1)1g当たりの溶融吸熱ピークの吸熱量
ΔH:ポリプロピレン系ワックス(W-1)を単独で測定した場合における、ポリプロピレン系ワックス(W-1)1g当たりの溶融吸熱ピークの吸熱量
当該結着樹脂組成物によれば、PP(ポリプロピレン)フィルムへの定着性に優れるトナーが得られると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-316378号公報
【文献】特開2007-199300号公報
【文献】特開2016-218448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷メディアの多様化により、紙以外の印刷メディアへの電子写真印刷が求められはじめている。主要なメディアの一つにポリプロピレンフィルム(以下「PPフィルム」ともいう)があり、ペットボトルラベルや種々のパッケージなどに用いられる。一方で紙とポリプロピレンでは、その材料の極性や表面の状態など印刷メディアとしての特性が大きく異なる。そのため、例えば、特許文献1又は2に記載されている従来開発されたトナーでは、PPフィルムには定着しないという課題を有していた。
また、特許文献3に開示されるトナーであっても、より優れたPPフィルムへの定着性が望まれた。そして、ペットボトルのラベル等の使用態様を考慮し、PPフィルムへの印刷後、印刷物が擦れても、印刷画像が剥がれないよう、耐擦過性に優れた画像が得られるトナーが求められる。
本発明の一実施形態は、ポリプロピレンフィルムへの定着性に優れ、印刷後の画像の耐擦過性に優れる静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナー用樹脂組成物等に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、以下の〔1〕及び〔2〕に関する。
〔1〕非晶性ポリエステル系樹脂A、及び結晶性ポリエステル系樹脂Cを含有する、静電荷像現像用トナーであって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aが、ポリエステル樹脂由来の構成部位、及び、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位を有し、前記ポリエステル樹脂由来の構成部位と前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位とが共有結合を介して連結し、
前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位の量が、トナー中の樹脂成分の合計量に対して、5質量%以上30質量%以下である、静電荷像現像用トナー。
〔2〕非晶性ポリエステル系樹脂A、及び結晶性ポリエステル系樹脂Cを含有する、静電荷像現像用トナー用樹脂組成物であって、
前記非晶性ポリエステル系樹脂Aが、ポリエステル樹脂由来の構成部位、及び、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位を有し、前記ポリエステル樹脂由来の構成部位と前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位とが共有結合を介して連結し、
前記変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位の量が、トナー中の樹脂成分の合計量に対して、5質量%以上30質量%以下である、静電荷像現像用トナー用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、ポリプロピレンフィルムへの定着性に優れ、印刷後の画像の耐擦過性に優れる静電荷像現像用トナー、及び静電荷像現像用トナー用樹脂組成物等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[静電荷像現像用トナー]
本発明の一実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)は、非晶性ポリエステル系樹脂A(以下、単に「樹脂A」ともいう)、及び結晶性ポリエステル系樹脂C(以下、単に「樹脂C」ともいう)を含有する。
樹脂Aは、ポリエステル樹脂由来の構成部位、及び、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体A(以下、単に「重合体A」ともいう)由来の構成部位を有し、当該ポリエステル樹脂由来の構成部位と当該変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位とが共有結合を介して連結している。
そして、重合体A由来の構成部位の量は、トナー中の樹脂成分の合計量に対して、5質量%以上30質量%以下である。
以上の構成により、ポリプロピレンフィルムへの定着性に優れ、印刷後の画像の耐擦過性に優れるトナーが得られる。その理由は定かではないが、次のように考えられる。
【0008】
本発明の一実施形態に係るトナーは、ポリエステル樹脂由来の構成部位、及び、重合体A由来の構成部位を有する非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する。樹脂Aは、重合体A由来の構成部位とポリエステル樹脂由来の構成部位が、共有結合により連結し、分子レベルで複合化した構造を有する。そうすると、PPフィルムへ電子写真法により印刷を行う際の定着加熱により、ポリエステル系樹脂Aの重合体A由来の構成部位がPPフィルム方向へ配向し、PPフィルムとポリエステル系樹脂A間に分子間相互作用が発現することにより、PPフィルムへの優れた定着性が達成できると考えられる。
これに対し、樹脂Aを含むトナーに更に結晶性ポリエステル系樹脂Cを含有させることで、フィルムへの定着性が向上するとともに、定着強度が増大することで、剥離強度や耐擦過性も向上することを見出した。これは、比較的疎水性の高い樹脂Cが、樹脂A中の重合体A由来の構成部位にもPPフィルムにも親和性が高く、これらの界面で強固な分子間相互作用が働くためか、3成分間で強固な結合力が生じるためと考えられる。
【0009】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と樹脂又はポリエステル樹脂由来の構成部位に由来する吸熱の最高ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最高ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.65以上1.4未満、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上であり、そして、好ましくは1.2以下の樹脂である。非晶性樹脂とは、結晶性指数が1.4以上、又は0.65未満の樹脂である。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。ポリエステル樹脂由来の構成部位に由来する吸熱ピークは、常法より帰属できるが、通常は、重合体A由来の構成部位に由来する吸熱ピークより低温側に現れる。いずれのピークに帰属するべきかが不明な場合には、ポリエステル樹脂単独、及び、重合体A単独で、示差走査熱量計を用いて上記条件で測定し、各吸熱ピークにより近い温度の吸熱ピークをそれぞれの構成部位由来の吸熱ピークに帰属する。
「カルボン酸化合物」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)も包含する概念である。
カルボン酸化合物がカルボン酸のアルキルエステルである場合、カルボン酸化合物の炭素数には、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を算入しない。
「樹脂成分」とは、非晶性ポリエステル系樹脂A、非晶性ポリエステル系樹脂B、結晶性ポリエステル系樹脂Cを包含するトナー中に含まれる樹脂成分を意味する。
【0010】
トナーは、樹脂A及び樹脂Cを含有する。トナーは、好ましくは、樹脂Aの軟化点と5℃以上異なる軟化点を有する非晶性ポリエステル系樹脂Bを更に含有する。静電荷像現像用トナー用樹脂組成物も、樹脂A及び樹脂Cを含有し、好ましくは、樹脂Aの軟化点と5℃以上異なる軟化点を有する非晶性ポリエステル系樹脂Bを更に含有する。
トナーにおいて、樹脂Aの重合体A由来の構成部位の量は、PPフィルムへの定着性に優れ、印刷後の画像の耐擦過性に優れるトナーを得る観点から、トナー中の樹脂成分の合計量に対して、5質量%以上30質量%以下である。
重合体A由来の構成部位の量は、トナー中の樹脂成分の合計量に対して、PPフィルムへの定着性を向上させる観点から、好ましくは8質量%以上、より好ましくは9質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
当該重合体A由来の構成部位の量は、以下の式から算出する。
重合体A由来の構成部位の量(質量%)={[重合体A由来の構成部位を含む樹脂の量×当該樹脂中の重合体A由来の構成部位の割合]/[トナー中の樹脂成分の合計量]}×100
【0011】
そして、トナーは、例えば、トナー粒子及び外添剤を含む。
<トナー粒子>
トナー粒子は、好ましくは樹脂A及び樹脂Cを含有し、より好ましくは樹脂A、樹脂B及び樹脂Cを含有する。
トナー粒子は、その他、着色剤、ワックス、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0012】
〔非晶性ポリエステル系樹脂A〕
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、PPフィルムへの定着性に優れ、印刷後の画像の耐擦過性に優れるトナーを得る観点から、ポリエステル樹脂由来の構成部位、及び、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位を有し、ポリエステル樹脂由来の構成部位と変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位とが共有結合を介して連結している。
ポリエステル系樹脂Aは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステル系樹脂であってもよい。変性されたポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂由来の構成部位がウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル系樹脂、ポリエステル樹脂由来の構成部位がエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル系樹脂が挙げられる。
共有結合を介して連結しているとは、共有結合を介して構成部位が連結していることを意味する。
共有結合を介して構成部位が連結している例としては、例えば、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合、及びこれらの結合と連結基を有する結合が挙げられる。
連結基としては、例えば、炭素数1以上6以下の2価以上の炭化水素基が挙げられる。連結基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、フェニレン基等が挙げられる。
中でも、エステル結合を介して連結していることが好ましく、エステル結合により直接連結していることがより好ましい。
【0013】
(ポリエステル樹脂由来の構成部位)
以下、ポリエステル樹脂由来の構成部位について説明する。
「ポリエステル樹脂由来の構成部位」とは、ポリエステル樹脂の一部が、他の分子団と結合する樹脂の構成部位を意味する。
ポリエステル樹脂は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
(アルコール成分)
アルコール成分は、例えば、2価以上のアルコールを含む。
2価以上のアルコールの含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
2価以上のアルコールとしては、例えば、芳香族基を有するジオール、直鎖又は分岐の脂肪族ジオール、脂環式ジオール、3価以上の多価アルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族基を有するジオール、又は、直鎖若しくは分岐の脂肪族ジオールが好ましく、芳香族基を有するジオールがより好ましく、芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物が更に好ましい。
【0014】
芳香族ジオールのアルキレンオキシド付加物は、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物であり、より好ましくは式(I):
【化1】

(式中、OR及びROはオキシアルキレン基であり、R及びRはそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、そして、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物としては、例えば、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物の量は、耐擦過性をより向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0015】
直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい。第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは3以上4以下である。第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオールが挙げられる。
アルコール成分が第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールを含有する場合、第2級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0016】
その他の直鎖又は分岐の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
【0017】
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA[2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン]、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキシド(平均付加モル数2以上12以下)付加物が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0018】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分は、例えば、2価以上のカルボン酸化合物を含む。
2価以上のカルボン酸化合物の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
2価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、芳香族ジカルボン酸化合物、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。
【0019】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0020】
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは22以下、より好ましくは16以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、又は、これらの無水物若しくは炭素数1以上3以下のアルキルエステルが挙げられる。
炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸、又はこれらの無水物が好ましい。
カルボン酸成分が直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸を含有する場合、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは2モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
【0021】
3価以上の多価カルボン酸としては、好ましくは3価のカルボン酸であり、例えばトリメリット酸又はその無水物が挙げられる。これらの中でもトリメリット酸又はその無水物が好ましい。
カルボン酸成分が3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、そして、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0022】
アルコール成分のヒドロキシ基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0023】
(重合体A由来の構成部位)
樹脂Aは、PPフィルムへの定着性に優れ、印刷後の画像の耐擦過性に優れるトナーを得る観点から、重合体A由来の構成部位を有する。
「重合体A由来の構成部位」とは、重合体Aの一部が、他の分子団と結合する樹脂Aの構成部位を意味する。
重合体Aは、PPフィルムへの定着性及び印刷後の画像の耐擦過性を向上させる観点から、変性ポリオレフィン系重合体Aである。
変性ポリオレフィン系重合体Aとしては、例えば、変性ポリエチレン系重合体、変性ポリプロピレン系重合体、変性ポリブチレン系重合体が挙げられる。
これらの中でも、PPフィルムへの定着性及び印刷後の画像の耐擦過性をより向上させる観点から、変性ポリプロピレン系重合体が好ましい。
変性ポリオレフィン系重合体Aは、反応性官能基を有し、該反応性官能基としては、例えば、カルボン酸基、無水カルボン酸基、ヒドロキシ基が挙げられる。これらの中でも、カルボン酸基又は無水カルボン酸基が好ましい。
重合体Aは、PPフィルムへの定着性及び印刷後の画像の耐擦過性を向上させる観点から、不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物により変性されたポリプロピレン系重合体(以下「酸変性ポリプロピレン系重合体」ともいう)である。
【0024】
変性前のポリプロピレン系重合体としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンとその他オレフィンとの共重合体が挙げられる。
ポリプロピレンは、例えば、一般のプロピレンの重合によって得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンを熱分解して得る方法、一般成形用の容器等に使用されるポリプロピレンの製造時に副生成される低分子量のポリプロピレンを分離精製する方法により得られるポリプロピレンが挙げられる。
プロピレンとその他のオレフィンとの共重合体は、例えば、プロピレンと、プロピレンと共重合可能な不飽和結合を有するその他のオレフィンとを重合させることにより得られる共重合体が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
その他のオレフィンは、例えば、エチレン、炭素数4以上10以下のオレフィンが挙げられる。その他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、2-エチルヘキセンが挙げられる。
プロピレンとその他のオレフィンとの共重合体としては、例えば、プロピレン/ヘキセン共重合体、エチレン/プロピレン共重合体が挙げられる。
これらの変性前のポリプロピレン系重合体の中でも、PPフィルムへの定着性及び印刷後の画像の耐擦過性を向上させる観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0025】
酸変性ポリプロピレン系重合体としては、例えば、不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物により末端変性されたポリプロピレン系重合体(以下単に、「末端変性ポリプロピレン系重合体」ともいう)、不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物によりランダムグラフト変性されたポリプロピレン系重合体(以下単に、「ランダムグラフト変性ポリプロピレン系重合体」ともいう)が挙げられる。
これらの中でも、PPフィルムへの定着性及び印刷後の画像の耐擦過性を向上させる観点から、不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物により末端変性されたポリプロピレン系重合体が好ましい。末端変性されたポリプロピレン系重合体は、好ましくは片末端のみが不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物により変性された、ポリプロピレン系重合体(以下、「片末端変性ポリプロピレン系重合体」ともいう)である。
不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物としては、例えば、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸が挙げられる。これらの中でも無水マレイン酸が好ましい。
不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物により末端変性されたポリプロピレン系重合体としては、例えば、末端に不飽和結合を有するポリプロピレン系重合体に、不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物をEne反応させることで得られる。片末端に不飽和結合を有するポリプロピレン系重合体は、公知の方法により得られるが、例えば、バナジウム系触媒、チタン系触媒、ジルコニウム系触媒等を用いて製造することができる。
【0026】
重合体Aとしては、例えば、末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン、末端無水マレイン酸変性プロピレンとその他オレフィンとの共重合体が挙げられる。
これらの中でも、ポリプロピレンフィルムへの定着性を向上させる観点から、末端無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましく、片末端無水マレイン酸変性ポリプロピレンがより好ましい。ポリプロピレン系重合体に無水マレイン酸部位が導入されることにより、2つのポリエステル系樹脂由来の構成部位がエステル結合を介して連結することができる。特に片末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン系重合体を用いることで、ポリプロピレン系重合体の末端の無水マレイン酸部位により、2つのポリエステル系樹脂由来の構成部位が連結した構造を有するポリエステル系樹脂が得られると考えられる。そのため、片末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン系重合体を用いることで、ポリプロピレンフィルムへの定着性をより向上させられると考えられる。
【0027】
末端変性ポリプロピレン系重合体の市販品としては、例えば、片末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン「X-10065」(Mn=1,000)、片末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン「X-10088」(Mn=2,500)、片末端無水マレイン酸変性ポリプロピレン「X-10082」(Mn=8,000)、片末端無水マレイン酸変性プロピレン/ヘキセン共重合体「X-10087」(Mn=800)、片末端無水マレイン酸変性プロピレン/ヘキセン共重合体「X-10053」(Mn=2,000)、片末端無水マレイン酸変性プロピレン/ヘキセン共重合体「X-10052」(Mn=4,000)(以上、BAKER HUGHES社製)が挙げられる。
【0028】
ランダムグラフト変性ポリプロピレン系重合体は、好ましくは無水マレイン酸がランダムにグラフト化され変性されたポリプロピレン系重合体(以下、「ランダムグラフト無水マレイン酸変性ポリプロピレン系重合体」ともいう)である。
ランダムグラフト無水マレイン酸変性ポリプロピレン系重合体は、好ましくは1分子中に1個以上の無水マレイン酸がグラフト化され変性されている。無水マレイン酸によって変性されているかは、一般的なスペクトル測定によって規定できる。無水マレイン酸によって変性されると、無水マレイン酸の二重結合が単結合に変化するのでそのスペクトル変化を測定することで規定できる。
ランダムグラフト変性ポリプロピレン系重合体は、例えば、ポリプロピレン系重合体分子内にラジカルを発生させ、不飽和結合を有するカルボン酸化合物又はその無水物と反応させることで得られる。
【0029】
ランダムグラフト変性ポリプロピレン系重合体の市販品としては、例えば、ランダムグラフト無水マレイン酸変性ポリプロピレン系重合体として、「トーヨータック」シリーズの「M-100」,「M-300」,「M-310」,「PMA H1000A」,「PMA H1100A」,「PMA H3000A」,「PMA-T」,「PMA-F2」,「PMA-L」(以上、東洋紡株式会社製)、「ユーメックス」シリーズの「1001」,「1010」,「100TS」,「110TS」(以上、三洋化成工業株式会社製)、「カヤブリット」シリーズの「003」,「006」(以上、アクゾノーベル株式会社製)が挙げられる。
【0030】
重合体Aの融点は、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは40℃以上、更に好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
【0031】
重合体Aの酸価は、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは200mgKOH/g以下、より好ましくは150mgKOH/g以下、更に好ましくは100mgKOH/g以下であり、そして、好ましくは0.1mgKOH/g以上、より好ましくは1mgKOH/g以上、更に好ましくは5mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上である。
融点、酸価の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0032】
重合体Aの数平均分子量は、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは300以上、より好ましくは500以上、更に好ましくは700以上、更に好ましくは800以上であり、そして、好ましくは50,000以下、より好ましくは15,000以下、更に好ましくは8,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,000以下である。
数平均分子量は、標準試料としてポリスチレンを用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定する。
【0033】
非晶性ポリエステル系樹脂A中、重合体A由来の構成部位の量は、PPフィルムへの定着性、及び耐擦過性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、保存性を向上させる観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましく60質量%以下、更に好ましく40質量%以下、更に好ましく35質量%以下である。
上記量において、ポリエステル系樹脂Aの量は、重合体A及び原料モノマーの量の合計量であり、重縮合による脱水量を除いた量である。
【0034】
〔樹脂Aの製造方法〕
樹脂Aは、例えば、
(a)反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体Aの存在下、アルコール成分とカルボン酸成分とを含む原料モノマーを重縮合することを含む方法、又は
(b)ポリエステル樹脂に、反応性官能基を有する変性ポリオレフィン系重合体Aを反応させることを含む方法
により得られる。
(b)の反応は、例えば、反応性官能基がカルボン酸基又は無水カルボン酸基である場合、脱水縮合、エステル交換反応が挙げられる。反応条件は、重合体Aのカルボン酸基又は無水カルボン酸基と、アルコール成分、カルボン酸成分等が脱水縮合又はエステル交換する条件が好ましい。
【0035】
アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、重合禁止剤等の存在下、150℃以上250℃以下程度の温度で行うことができる。エステル化触媒としては、例えば、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物が挙げられる。エステル化触媒とともに用い得るエステル化助触媒としては、例えば、没食子酸が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分、及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、そして、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下である。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分、及びカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。
【0036】
〔樹脂Aの物性〕
樹脂Aの軟化点は、耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
【0037】
樹脂Aのガラス転移温度は、保存性をより向上させる観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
樹脂Aの重合体A由来の構成部位の結晶融解ピークは、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは、観測されない、又は140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下であり、そして、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上である。
重合体Aに由来する結晶融解ピーク温度の測定方法は実施例に記載の方法による。
【0038】
樹脂Aの量は、トナー中の樹脂成分の総量に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0039】
〔非晶性ポリエステル系樹脂B〕
トナー中には、樹脂Aの軟化点と5℃以上異なる軟化点を有する非晶性ポリエステル系樹脂B(以下、単に「樹脂B」ともいう)が含まれていてもよい。
樹脂Bの軟化点は、樹脂Aの軟化点よりも高いことが好ましく、樹脂Bは、より好ましくは樹脂Aの軟化点よりも10℃以上高い軟化点を有し、更に好ましくは樹脂Aの軟化点よりも15℃以上高い軟化点を有し、更に好ましくは樹脂Aの軟化点よりも20℃以上高い軟化点を有する。
樹脂Bは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。アルコール成分及びカルボン酸成分は、前述の樹脂Aで例示したとおりである。
【0040】
〔樹脂Bの物性〕
樹脂Bの軟化点は、保存性をより向上させる観点から、好ましくは90℃以上、より好ましくは110℃以上、更に好ましくは120℃以上であり、そして、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは140℃以下、更に好ましくは130℃以下である。
【0041】
樹脂Bのガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上、更に好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは80℃以下、より好ましくは75℃以下、更に好ましくは70℃以下である。
【0042】
樹脂Bの軟化点、及びガラス転移温度は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0043】
樹脂Bは、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合により得られる。重縮合の条件は、例えば、前述の樹脂Aの製造方法で示した反応条件を適用することができる。
【0044】
樹脂Bを含有する場合、樹脂Aと樹脂Bとの質量比率[樹脂A/樹脂B]は、好ましくは20/80以上、より好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは60/40以下である。
【0045】
樹脂Bを含有する場合、樹脂Bの含有量は、トナーの樹脂成分中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下である。
【0046】
樹脂Bを含有する場合、樹脂Aと樹脂Bの合計量は、トナー中の樹脂成分の総量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
【0047】
〔結晶性ポリエステル系樹脂C〕
トナーは、結晶性ポリエステル系樹脂C(以下、単に「樹脂C」ともいう)を含有する。
樹脂Cは、好ましくは、α,ω-脂肪族ジオールを含むアルコール成分と、脂肪族ジカルボン酸を含むカルボン酸成分の重縮合物からなるポリエステル樹脂セグメントを少なくとも有し、より好ましくは、当該ポリエステル樹脂セグメント及びスチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合体である、付加重合系樹脂セグメントを有する。
【0048】
(アルコール成分)
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールを含む。
α,ω-脂肪族ジオールは、好ましくはα,ω-直鎖脂肪族ジオールである。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール又は1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオール又は1,12-ドデカンジオールがより好ましい。
【0049】
α,ω-脂肪族ジオールの量は、アルコール成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0050】
アルコール成分は、α,ω-脂肪族ジオールとは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のα,ω-脂肪族ジオール以外の脂肪族ジオール;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0051】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸を含む。
脂肪族ジカルボン酸は、好ましくは直鎖脂肪族ジカルボン酸である。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、又はドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0052】
脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
【0053】
カルボン酸成分は、脂肪族ジカルボン酸とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、等の芳香族ジカルボン酸;3価以上の多価カルボン酸が挙げられる。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
アルコール成分の水酸基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比(COOH基/OH基)は、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下である。
【0055】
(付加重合系樹脂セグメント)
付加重合系樹脂セグメントは、例えば、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合体である。
スチレン系化合物としては、例えば、置換又は無置換のスチレンが挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩等が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
スチレン系化合物の含有量は、付加重合系樹脂セグメントの原料モノマー中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
【0056】
他の原料モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等の共役ジエン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N-ビニルピロリドン等のN-ビニル化合物類が挙げられる。
【0057】
(両反応性モノマー由来の構成単位)
樹脂Cは、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合系樹脂セグメントを連結するため、好ましくは、ポリエステル樹脂セグメント及び付加重合系樹脂セグメントと共有結合を介して結合した両反応性モノマー由来の構成単位を有する。
「両反応性モノマー由来の構造単位」とは、両反応性モノマーの官能基、エチレン性不飽和基が反応した単位を意味する。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有するエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基又はカルボキシ基を有するエチレン性不飽和モノマーが好ましく、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和モノマーがより好ましい。
両反応性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、樹脂Cのポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは3モル部以上、更に好ましくは5モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である。
【0058】
ポリエステル樹脂セグメントの量は、樹脂C中、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
付加重合系樹脂セグメントの量は、樹脂C中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、樹脂C中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは0.8質量%以上であり、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
樹脂Cがポリエステル樹脂セグメント及び付加重合系樹脂セグメントを有する場合、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合系樹脂セグメントと、両反応性モノマー由来の構成単位の合計量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下である。
【0059】
上記量は、ポリエステル樹脂セグメント、付加重合系樹脂セグメントの原料モノマー、両反応性モノマー、重合開始剤の量の比率を基準に算出し、ポリエステル樹脂セグメント等における重縮合による脱水量は除く。なお、重合開始剤を用いた場合、重合開始剤の質量は、付加重合系樹脂セグメントに含めて計算する。
【0060】
〔樹脂Cの製造方法〕
樹脂Cの製造方法は、例えば、アルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合すること、及び付加重合系樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーを付加重合することとを含む。
重縮合の条件は、上述の樹脂Aの製造方法で示したとおりであるが、必要に応じて4-tert-ブチルカテコール等のラジカル重合禁止剤をアルコール成分及びカルボン酸成分の合計量100質量部に対し0.001質量部以上0.5質量部以下用いて重縮合してもよい。
重縮合及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応を更に進める観点から、カルボン酸成分は、一部を重縮合に供し、次いで付加重合を行った後に再度反応温度を上昇させ、残部を反応系に添加することが好ましい。
【0061】
付加重合においては、付加重合系樹脂セグメントの原料モノマー及び両反応性モノマーを付加重合する。付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下である。また、重合の後半に反応系を減圧することにより、反応を促進させることが好ましい。
【0062】
付加重合の重合開始剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルパーオキシド等の過酸化物、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等の公知の重合開始剤を使用することができる。
重合開始剤の使用量は、付加重合系樹脂セグメントの原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0063】
〔樹脂Cの物性〕
樹脂Cの軟化点は、耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下、更に好ましくは120℃以下、更に好ましくは110℃以下である。
【0064】
樹脂Cの融点は、耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、そして、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
【0065】
樹脂CのFedorsによる溶解度パラメータ(以下、単に「SP値」ともいう)は、PPフィルムへの定着性及び印刷画像の耐擦過性をより向上させる観点から、好ましくは9.0(cal/cm1/2以上、より好ましくは9.2(cal/cm1/2以上、更に好ましくは9.4(cal/cm1/2以上であり、そして、好ましくは10.5(cal/cm1/2以下、より好ましくは10.3(cal/cm1/2以下、更に好ましくは9.9(cal/cm1/2以下、更に好ましくは9.8(cal/cm1/2以下、更に好ましくは9.7(cal/cm1/2以下、更に好ましくは9.6(cal/cm1/2以下である。
本明細書における「SP値」とは、Fedorsらが提案した〔POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE, FEBRUARY, 1974, Vol.14, No.2, ROBERT F. FEDORS. (147~154頁)〕に記載の方法によって計算されたものである。
【0066】
樹脂Cの軟化点、ガラス転移温度及びSP値は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、軟化点、ガラス転移温度の値は、実施例に記載の方法により求められる。
【0067】
樹脂Cの量は、トナー中の樹脂成分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0068】
樹脂Aと樹脂Bの合計量に対する樹脂Cの量の質量比(樹脂C/(樹脂A+樹脂B))は、好ましくは0.1/99.9以上、より好ましくは1/99以上、更に好ましくは3/97以上であり、そして、好ましくは60/40以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは35/65以下、更に好ましくは30/70以下である。
【0069】
結晶性ポリエステル系樹脂Cの量に対する変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位の量の質量比(重合体A/樹脂C)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上、更に好ましくは40/60以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは75/25以下である。
【0070】
〔着色剤〕
トナーは、着色剤を含有していてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエローが挙げられる。トナーは、黒トナー、その他のカラートナーのいずれであってもよい。
【0071】
着色剤の含有量は、トナーの樹脂成分の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0072】
〔離型剤〕
トナーは、離型剤を含有していてもよい。
離型剤としては、ワックスが挙げられる。
ワックスとしては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0073】
離型剤の融点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは120℃以下である。
【0074】
離型剤の含有量は、トナーの樹脂成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下である。
【0075】
〔荷電制御剤〕
トナーは、荷電制御剤を含有していてもよい。
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤、負帯電性荷電制御剤のいずれであってもよい。
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンp-51」(オリヱント化学工業株式会社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業株式会社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成工業株式会社製)等;スチレン-アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成株式会社製)が挙げられる。
【0076】
また、負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(以上、保土谷化学工業株式会社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット株式会社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業株式会社製)、「TN-105」(保土谷化学工業株式会社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物等が挙げられる。
【0077】
荷電制御剤の含有量は、トナーの樹脂成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。
【0078】
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、更に好ましくは6μm以上であり、そして、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。
なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0079】
トナー粒子の含有量は、トナー中、好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上、更に好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下である。
【0080】
<外添剤>
トナーには、流動性を向上させるため、外添剤を用いることが好ましい。外添剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子、酸化錫微粒子、酸化亜鉛微粒子等の無機微粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の有機微粒子が挙げられる。これらは、1種又は2種類以上を用いてもよい。
シリカは、例えば、疎水化処理された疎水性シリカが挙げられる。
シリカ微粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシランが挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
外添剤の個数平均粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上であり、そして、好ましくは200nm以下、より好ましくは120nm以下、更に好ましくは90nm以下である。
【0081】
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。
【0082】
[トナーの製造方法]
トナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法、凝集融着法等の公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナー、又は凝集融着法によるケミカルトナーが好ましい。
溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、結着樹脂、着色剤、離型剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸又は2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0083】
凝集融着法によるケミカルトナーの場合、水系媒体中で樹脂粒子、及び必要に応じて着色剤粒子、離型剤粒子等を凝集する工程(工程1)と、凝集粒子を融着する工程(工程2)を有することが好ましい。また、工程1は、樹脂粒子分散液、及び必要に応じて着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液等を調製し、これを混合し、樹脂粒子、着色剤粒子、及び離型剤粒子等を凝集させる工程であることが好ましい。
【0084】
<工程1>
〔樹脂粒子分散液〕
樹脂粒子分散液は、樹脂粒子Xを含有し、該樹脂粒子Xは、同一又は異なる粒子内に非晶性ポリエステル系樹脂A及び結晶性ポリエステル系樹脂Cを含有し、更に、非晶性ポリエステル系樹脂Bを含有することが好ましく、工程1において、樹脂A及び樹脂Cを同一の粒子内に含有する樹脂粒子を使用することが好ましく、樹脂A、樹脂B、及び樹脂Cを同一の粒子内に含有する樹脂粒子を使用することがより好ましい。
樹脂粒子分散液は、樹脂を水系媒体中に分散させることで得られる。
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、樹脂粒子分散液の分散安定性を向上させる観点、及び環境負荷低減の観点から、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下である。水性媒体に含まれうる水以外の成分としては水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0085】
分散は、公知の方法を用いて行うことができるが、例えば、樹脂の有機溶媒溶液又は溶融した樹脂に水性媒体を添加して転相乳化する方法が挙げられる。
転相乳化に用いる有機溶媒としては、樹脂を溶解すれば特に限定されないが、水性媒体添加後の混合液からの除去が容易である観点から、メチルエチルケトン、酢酸エチルが好ましい。
有機溶媒溶液には、必要に応じて中和剤を添加する。中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。
【0086】
有機溶媒溶液又は溶融した樹脂を撹拌しながら、水性媒体を添加して転相させる。撹拌には、アンカー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置、デスパ(浅田鉄工株式会社製)、T.K.ホモミクサー、T.K.ホモディスパー、T.K.ロボミックス(以上、いずれもプライミクス株式会社製)、クレアミックス(エム・テクニック株式会社製)、ケイディーミル(ケイディー インターナショナル社製)等の高速撹拌混合装置等を用いることができる。
水性媒体を添加する際の有機溶媒溶液温度は、使用する有機溶媒の沸点にもよるが、樹脂粒子Xの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子Xを構成する樹脂Aのガラス転移温度以上であり、そして、好ましくは90℃以下、より好ましくは80℃以下である。
【0087】
転相乳化の後に、必要に応じて、得られた分散液から蒸留等により有機溶媒を除去してもよい。
【0088】
分散液中の樹脂粒子Xの体積中位粒径D50は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.3μm以下である。
分散液中の樹脂粒子XのCV値は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下である。
体積中位粒径D50及びCV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0089】
なお、樹脂Aを含有する樹脂粒子の分散液と、樹脂Cを含有する樹脂粒子の分散液と、樹脂Bを含有する樹脂粒子の分散液とを使用する場合や、樹脂A及び樹脂Cを含有する樹脂粒子の分散液と、樹脂Bを含有する樹脂粒子の分散液とを使用する場合には、いずれも、前述の樹脂粒子Xの製造方法に準じて製造することができる。これらの樹脂粒子の分散液中の樹脂粒子の体積中位粒径D50及びCV値の好適範囲は前述の範囲と同様である。
【0090】
また、樹脂粒子分散液は、有機溶媒を使用せずに、界面活性剤と混合することにより分散液としてもよい。
【0091】
〔離型剤粒子分散液〕
離型剤粒子分散液は、離型剤を水系媒体中に分散させることにより得られ、離型剤の融点以上の温度で分散機を用いて分散することによって得ることが好ましい。分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機が例示される。
離型剤粒子分散液で用いる水系媒体の好ましい態様は、樹脂粒子分散液を得る際に用いられるものと同様である。
【0092】
離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、離型剤と樹脂粒子Zとを混合して得ることが好ましい。離型剤を分散する樹脂粒子Zを構成する樹脂は、ポリエステル系樹脂が好ましい。樹脂特性の好適範囲、好適製造方法、粒径やCV値の好適範囲等は、前述の樹脂粒子Xと同様である。
樹脂粒子Zの使用量は、分散安定性の観点から、離型剤100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、そして、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下である。
【0093】
離型剤粒子分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径(D50)は、PPフィルムへの定着性をより向上させる観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上であり、そして、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.7μm以下である。
離型剤粒子分散液中の離型剤粒子のCV値は、離型剤粒子の分散安定性の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下である。
【0094】
〔着色剤粒子分散液〕
着色剤は、着色剤粒子を含有する着色剤粒子分散液として添加することが好ましい。
着色剤の分散には、分散剤を使用することが好ましく、アニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩及びアルキルエーテル硫酸塩が好ましい。
【0095】
着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像を得る観点から、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.08μm以上、更に好ましくは0.1μm以上であり、そして、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.2μm以下である。
【0096】
なお、荷電制御剤等の他の成分を添加する場合には、離型剤粒子分散液や着色剤粒子分散液と同様にして、水系分散液として添加することが好ましい。
【0097】
凝集を効率的に行うために、工程1において、凝集剤を添加することが好ましい。
〔凝集剤〕
凝集剤としては、例えば、第四級塩等のカチオン性界面活性剤、ポリエチレンイミン等の有機系凝集剤、無機系凝集剤が挙げられる。無機系凝集剤としては、例えば、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム等の無機金属塩;硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;2価以上の金属錯体が挙げられる。
【0098】
凝集剤を用いて、例えば、0℃以上40℃以下の樹脂粒子及び着色剤粒子を含む混合分散液に、樹脂の総量100質量部に対し5質量部以上50質量部以下の凝集剤を添加し、樹脂粒子及び着色剤粒子を水性媒体中で凝集させて、凝集粒子を得る。更に、凝集を促進させる観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。
【0099】
少なくとも樹脂A及び樹脂Cを含有する樹脂粒子、並びに、必要に応じて離型剤粒子及び着色剤粒子を凝集させて得られた凝集粒子に、更に、樹脂A’を含有する樹脂粒子を添加して、樹脂A及び樹脂Cを含有する樹脂粒子を含有する凝集粒子に、樹脂A’を含有する樹脂粒子を付着してなる凝集粒子を得てもよい。これにより、樹脂A及び樹脂Cを含有する樹脂粒子をコア部に含有し、樹脂A’をシェル部に含有するコアシェル構造を有するトナー粒子を得ることができる。
樹脂A’としては、アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合物であるポリエステル樹脂が好ましい。樹脂A’は、好ましくは非晶性ポリエステル樹脂である。
樹脂A’のアルコール成分、カルボン酸成分の好適例及びその物性の好適範囲等は、非晶性ポリエステル系樹脂Aのポリエステル樹脂由来の構成部位で示した例と同様である。樹脂A’を含有する樹脂粒子の分散液を得る方法は、樹脂粒子Xの製造方法と同様である。
樹脂A’を含有する樹脂粒子と、樹脂A及び樹脂Cを含有する樹脂粒子との質量比[A’/A+C]は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上であり、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下である。
【0100】
凝集粒子が、トナー粒子として適度な粒径に成長したところで凝集を停止させてもよい。
凝集を停止させる方法としては、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法等が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
【0101】
〔凝集停止剤〕
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、樹脂粒子中の樹脂100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。
【0102】
凝集粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。凝集粒子の体積中位粒径D50は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
【0103】
<工程2>
工程2では、例えば、凝集粒子を水性媒体内で融着させる。
融着によって、凝集粒子に含まれる各粒子を融着し、融着粒子が得られる。
融着させる温度(以下、「融着温度」ともいう)は、高い画像濃度が得られ、高温高湿下で保管後に帯電性低下が抑制されたトナーを得る観点から、樹脂Cの融点より、好ましくは6℃低い温度以上、より好ましくは4℃低い温度以上、更に好ましくは2℃低い温度以上、そして、好ましくは60℃高い温度以下、より好ましくは40℃高い温度以下、更に好ましくは20℃高い温度以下である。
融着温度で保持する時間は、特に限定されず、融着粒子の円形度をモニターし、適度な範囲となった時点で、融着を終了してもよい。
【0104】
工程2では、酸性物質を添加して融着してもよい。
酸性物質としては、例えば、無機酸、有機酸が挙げられる。
これらの中でも、無機酸が好ましく、硫酸がより好ましい。
酸性物質の添加方法としては、一度に一括で添加する方法、全量を2回以上に分割して添加する方法、一定時間をかけて連続的に添加する方法のいずれであってもよいが、凝集粒子の更なる凝集を抑制する観点から、分割して添加する方法か、一定時間をかけて連続的に添加する方法のいずれかが好ましい。酸性物質を添加する際の温度は、前述の融着温度の範囲が好ましい。
【0105】
融着により得られた融着粒子の体積中位粒径D50は、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。なお、融着粒子の体積中位粒径D50は、後述するトナー粒子と同様の方法により測定される。
融着により得られる融着粒子の円形度は、好ましくは0.955以上、より好ましくは0.960以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.985以下、更に好ましくは0.980以下である。
【0106】
<後処理工程>
工程2の後に後処理工程を行ってもよく、適宜、ろ過等の固液分離工程、洗浄工程、乾燥工程に供することにより、融着粒子を単離することによってトナー粒子が得られる。
このように得られたトナー粒子に対して、必要に応じて外添剤を外添することによって、トナーが得られる。
【0107】
トナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
トナーは、PPフィルムへの定着性及びPPフィルムへの印刷後の耐擦過性に優れるため、好ましくは、ポリプロピレンフィルム印刷用の静電荷電現像用トナーとして使用される。
【0108】
[PPフィルムへの印刷]
トナーを用いたPPフィルムへの印刷は通常の電子写真法を用いて行われる。
PPフィルムとしては、例えば、未処理二軸延伸PPフィルム、コロナ処理PPフィルム、化学処理PPフィルム、プラズマ処理PPフィルム、PPとその他樹脂や添加剤とのコンポジット樹脂の延伸フィルムが挙げられる。コストの観点から未処理二軸延伸PPフィルム、コロナ処理PPフィルムが好ましい。
トナーの定着温度としては、重合体AとPPフィルムとの間で相互作用を効果的に発生させる観点から、重合体Aの融点以上に定着温度を設定することが好ましい。
【0109】
電子写真法における、定着温度は、PPフィルムの耐熱性の観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下、更に好ましくは140℃以下であり、そして、定着性の観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上である。
【実施例
【0110】
各性状等については次の方法により測定した。
【0111】
[測定方法]
〔重合体Aの融点(Mp)〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコーインスツル株式会社製)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/minで昇温する。融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0112】
〔樹脂中の重合体A及び重合体A単体の結晶融解ピーク温度〕
樹脂又は重合体A単体の試料について、示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて昇温速度10℃/minで200℃まで昇温し、そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を重合体Aの結晶融解ピーク温度とする。なお、表中のMa-PP(Mn1000)の結晶融解ピーク温度は102℃であった。
【0113】
〔樹脂、及び重合体Aの酸価〕
JIS K 0070:1992の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K 0070:1992の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、クロロホルムとジメチルホルムアミド(以下「DMF」ともいう)の混合溶媒(クロロホルム:DMF=7:3(容量比))に変更する。
【0114】
〔樹脂、及び重合体Aの軟化点、最高ピーク温度、ガラス転移温度及び融点〕
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出する。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)樹脂の吸熱の最高ピーク温度及び融点
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/minで0℃まで冷却しそのまま1分間静止させた。その後、昇温速度50℃/minで測定する。観測される樹脂又はポリエステル樹脂由来の構成部位に由来する吸熱ピークのうち、最も高温側に現れるピークの温度を樹脂の吸熱の最高ピーク温度とする。最高ピーク温度が軟化点と20℃以内の差であれば融点とする。
ポリエステル樹脂由来の構成部位のピークは、常法より帰属できるが、通常は、変性ポリオレフィン系重合体A由来の構成部位に由来する吸熱ピークより低温側に現れる。いずれのピークに帰属するべきかが不明な場合には、ポリエステル樹脂単独、及び、変性ポリオレフィン系重合体A単独で、示差走査熱量計を用いて上記条件で測定し、各吸熱ピークにより近い温度の吸熱ピークをそれぞれの構成部位由来の吸熱ピークに帰属する。
(3)ガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/minで昇温し測定する。
吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0115】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「Q100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却する。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0116】
〔樹脂粒子、離型剤粒子、着色剤粒子の体積中位粒径D50及びCV値〕
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(株式会社堀場製作所製)
(2)測定条件:測定用セルに蒸留水を加え、吸光度を適正範囲になる濃度で体積中位粒径D50及び体積平均粒径を測定した。また、CV値(粒径分布)は下記の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
【0117】
〔樹脂粒子分散液、離型剤粒子分散液、着色剤粒子分散液の固形分濃度〕
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5min/変動幅0.05%)にて、水分(質量%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
【0118】
〔外添剤の平均粒子径〕
外添剤の平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、流動化剤及び外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定する500個の粒子の粒径の数平均値を流動化剤及び外添剤の平均粒子径とする。長径と短径がある場合は、長径を指す。
【0119】
〔トナー粒子の体積中位粒径(D50)〕
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は以下の方法で測定する。
測定機:「コールターマルチサイザーII」(ベックマン・コールター株式会社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:「コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19」(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:「アイソトンII」(ベックマン・コールター株式会社製)
分散液:「エマルゲン109P」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mLに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mLに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0120】
[樹脂の製造]
製造例A1~A5,A81,B1(樹脂A-1~A-5,A-81,B-1の製造)
表1に示す、ポリエステル樹脂の原料モノマー及びエステル化触媒、助触媒を温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管を備えた流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気にて180℃に加熱し、その後1時間ごとに5℃ずつ230℃まで昇温し固体モノマーがすべて溶融反応したことを確認した後8kPaまで減圧し1時間脱水縮合させた。その後常圧160℃まで冷却し重合体Aを添加した後、更に1時間220℃を保持して反応を行った後、220℃8kPaの条件で縮合反応を行い、軟化点が表1に示す軟化点に達するまで反応させて、樹脂A-1~A-5,A-81,B-1を得た。それぞれの樹脂の物性を測定し表1に示した。
【0121】
【表1-1】
【0122】
【表1-2】
【0123】
製造例C1~C6(樹脂C-1~C-6)
表2に示す原料モノマー及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、130℃から200℃まで10時間かけて昇温を行い、200℃で8kPaにて1時間反応させて、樹脂C-1~C-6を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
【0124】
製造例C7,C8(樹脂C-7,C-8)
表2に示すポリエステル樹脂の原料モノマー(P)、及びエステル化触媒を窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、160℃まで加熱し、6時間反応させた。その後、表2に示す付加重合系樹脂の原料モノマー(V)、両反応性モノマー(D)及び重合開始剤を滴下ロートにより1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間付加重合反応を熟成させた後、8.3kPaにて1時間保持した。更に、200℃まで8時間かけて昇温、8.3kPaにて2時間反応させて、樹脂C-7、C-8を得た。得られた樹脂の物性を表2に示す。
【0125】
【表2-1】
【0126】
【表2-2】
【0127】
[樹脂粒子分散液の製造]
製造例X1(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた3L容の容器に、樹脂A2 300g、樹脂B1 270g、樹脂C1 30g、メチルエチルケトン600gを入れ、73℃にて2時間かけて溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を107g添加して、30分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/minで撹拌しながら、脱イオン水1200gを1時間かけて添加し、転相乳化した。得られた溶液を、減圧下でメチルエチルケトンを留去し、水系分散体を得た。その後、撹拌を継続しながら水系分散体を30℃に冷却した後、固形分濃度が35質量%になるように脱イオン水を加えることにより、樹脂粒子分散液X-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径D50は0.19μm、CV値は30%であった。
【0128】
[離型剤粒子分散液の製造]
製造例W1(離型剤粒子分散液W-1の製造)
1リットル容のビーカーに、脱イオン水130g、樹脂粒子分散液X-1 45.7g、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、溶融混合物を得た。90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて20分間分散処理を行った後に、室温まで冷却した。脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-1を得た。分散液中の離型剤粒子の体積中位粒径D50は0.57μm、CV値は27%であった。
【0129】
[着色剤分散液の製造]
製造例E1(着色剤分散液E-1の製造)
1リットル容のビーカーに、銅フタロシアニン顔料「ECB-301」(C.I.ピグメントブルー 15:3、大日精化工業株式会社製)67.5g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G-15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)189g及び脱イオン水100gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温下で3時間分散させた後、固形分濃度が25質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤分散液E-1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径D50は125nmであった。
【0130】
[トナーの製造]
実施例1~13,15,16及び比較例1~3(トナー1~13,15,16及び81~83の製造)
表3に示す結着樹脂100質量部及び離型剤「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、パラフィンワックス、融点:80℃)、荷電制御剤「ボントロン E-304」(オリヱント化学工業株式会社製)0.5質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化工業株式会社製、C.I.ピグメントブルー15:3)4.5質量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0131】
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山株式会社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度32.4m/min、低回転側ロール(バックロール)周速度21.7m/min、ロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が145℃及び混練物排出側が100℃であり、低回転側ロールの原料投入側が75℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は10kg/hr、平均滞留時間は約3分間であった。
【0132】
得られた樹脂混練物を冷却し、粉砕機「ロートプレックス」(ホソカワミクロン株式会社製)により粗粉砕し、目開きが2mmのふるいを用いて体積中位粒径が2mm以下の粗粉砕物を得た。得られた粗粉砕物を、気流分級機「DS2型」(衝突板式、日本ニューマチック株式会社製)を用いて体積中位粒径(D50)が7.5μmになるように粉砕圧を調整して微粉砕した。得られた微粉砕物を、気流分級機「DSX2型」(日本ニューマチック株式会社製)を用いて体積中位粒径(D50)が8.5μmになるように静圧(内部圧力)を調整して分級を行い、トナー粒子を得た。
【0133】
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤「R972」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径:16nm)1.0質量部及び「RX50」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3700r/分、3分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナー1~13,15,16及び81~83を得た。
【0134】
実施例14(トナー14の製造)
実施例2において、トナー原料をヘンシェルミキサーにて混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度100℃で溶融混練した。混合物の供給速度は20kg/h、平均滞留時間は約18秒であった。
得られた樹脂混練物を実施例2と同様に粗粉砕、微粉砕を行い、分級処理してトナー粒子を得た。
得られたトナー粒子を実施例2と同様に外添剤と混合して、トナー14を得た。
【0135】
実施例17(トナー17の製造)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積5Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-1を500g、離型剤粒子分散液W-1を37g、着色剤粒子分散液E-1を45g、ポリオキシエチレン(50)ラウリルエーテル「エマルゲン150」(花王株式会社製、非イオン性界面活性剤)の10質量%水溶液18g、及び15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤)18gを温度25℃で混合した。次に、当該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム62gを脱イオン水967gに溶解した水溶液に、4.8質量%水酸化カリウム水溶液27gを添加した溶液を、25℃で10分かけて滴下した後、68℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の分散液を得た。
得られた凝集粒子の分散液に、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム「エマールE-27C」(花王株式会社製、アニオン性界面活性剤、有効濃度27質量%)156g、脱イオン水958g、及び0.1mol/Lの硫酸水溶液58gを混合した水溶液を添加した。その後、90℃まで1時間かけて昇温し、90℃下で30分保持することにより、体積中位粒径D50が8.5μmである融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却し、吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄した後、30℃で48時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100質量部に対し、外添剤「R972」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径:16nm)1.0質量部及び「RX50」(疎水性シリカ、日本アエロジル株式会社製、個数平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3700r/分、3分間混合することにより、外添剤処理を行い、トナー17を得た。
【0136】
[評価方法]
〔PPフィルム定着性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.45±0.03mg/cmに調整して、2.0cm×1.5cmのベタ画像を未処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム「トレファン 工業用タイプ2500」(東レ株式会社製,厚さ60μm)に印字し、定着温度140℃で定着させた。
定着画像をセロハンテープで剥離し、〔(テープ剥離前画像面積-テープ剥離後画像面積)/(テープ剥離前画像面積)〕×100により定着率を算出した。定着率が高いほどPPフィルム定着性が高い。
【0137】
〔T型剥離強度〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.45±0.03mg/cmに調整して、2.5cm×15.0cmのベタ画像を未処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム「トレファン 工業用タイプ2500」(東レ株式会社製,厚さ60μm)に印字した。その印字画像の上に新たな未処理二軸延伸ポリプロピレンフィルムを被せ、そのまま定着温度150℃で定着させた。作製したサンプルを、卓上型材料試験機(株式会社エー・アンド・デイ)を用いて移動速度100mm/minで剥離し、その際にかかる荷重を測定した。
【0138】
〔耐擦過性〕
非磁性一成分現像装置「OKI MICROLINE 5400」(株式会社沖データ製)にトナーを実装し、トナー付着量を0.45±0.03mg/cmに調整して、2.0cm×1.5cmのベタ画像を未処理二軸延伸ポリプロピレンフィルム「トレファン 工業用タイプ2500」(東レ株式会社製,厚さ60μm)に印字し、定着温度140℃で定着させた。
その定着画像を摩擦堅牢度試験機(株式会社大栄科学精器製作所)を用いて擦過し、トナー層剥がれを評価した。摩擦時の荷重は300g、摩擦回数を100回,300回,500回とした。
(評価基準)
A:摩擦回数500回においてトナー層の剥離が見られない
B:摩擦回数300回においてトナー層の剥離が見られないが、500回においてトナー層の剥離が見られる
C:摩擦回数100回においてトナー層の剥離が見られないが、300回においてトナー層の剥離が見られる
D:摩擦回数100回においてもトナー層の剥離が見られる
【0139】
【表3】
【0140】
以上、実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、PPフィルムへの優れた定着性、耐擦過性を示すことがわかる。