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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】鋼棒の連結装置
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20231020BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20231020BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
E04C5/18 102
E04G21/12 105E
F16B7/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019222741
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021092058
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000241474
【氏名又は名称】トヨタT&S建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101535
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 好道
(74)【代理人】
【識別番号】100161104
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 浩康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇晃
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-048523(JP,A)
【文献】特開2006-124964(JP,A)
【文献】特開2019-052490(JP,A)
【文献】特開平10-037383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00 - 5/20
E04G 21/12
F16B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結する一方の鋼棒と他方の鋼棒の夫々の端部を、連結部材に形成された軸方向の両端部が開口する中空部内に挿入して、連結する連結装置であって、
前記夫々の鋼棒は本体部を有し、該本体部の軸方向における前記連結部材の中空部内に位置する端部に抜け止め部を設け、
前記本体部の外周面には、本体部の軸芯を中心とする螺旋状の溝が複数本刻設され、各溝は、本体部の軸方向全体に亘って連続して形成され、
前記本体部における前記溝の底面積は、溝が形成されていない部分の表面積より少なく、
前記抜け止め部を、前記本体部の軸芯を中心とする雄ねじで構成し、この雄ねじのピッチを、前記本体部に刻設された溝のピッチより細くし、
前記雄ねじを、前記中空部内に位置する鋼棒の軸方向全体に亘って形成したことを特徴とする鋼棒の連結装置。
【請求項2】
前記連結部材の軸芯方向における両端部において、前記鋼棒の本体部の径より長い軸方向距離に亘って、その両端部の径方向の厚みを、前記連結部材の軸芯方向における中央部の径方向の厚みより厚く形成したことを特徴とする請求項記載の鋼棒の連結装置。
【請求項3】
前記連結する両鋼棒の少なくとも一方と連結部材を、コンクリート部材に埋設したことを特徴とする請求項1又は2記載の鋼棒の連結装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼棒の連結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート部材内に埋設する節鉄筋やねじ節鉄筋を、相互に機械式継ぎ手を用いて連結することが行われている(例えば、特許文献1)参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-135011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、節鉄筋は、軸芯を中心とする円環状の凸部が軸方向に等間隔で形成され、ねじ節鉄筋は、平坦な平面部が軸芯を中心として180度対向する位置に2カ所形成されている。そのため、節鉄筋やねじ節鉄筋をコンクリート内に埋設した後に、節鉄筋やねじ節鉄筋に外力が作用して軸方向に延びた場合に、節鉄筋やねじ節鉄筋は、軸芯を中心として回転することができないため、節鉄筋やねじ節鉄筋の伸びにより、凸部間の間隔が広がる。この凸部の軸方向への移動によりコンクリートに亀裂等が生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、鋼棒をコンクリート部材に埋設した状態において、鋼棒に外力が働いて伸びた場合に、コンクリート部材に亀裂が生じにくい鋼棒の連結装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、連結する一方の鋼棒と他方の鋼棒の夫々の端部を、連結部材に形成された軸方向の両端部が開口する中空部内に挿入して、連結する連結装置であって、
前記夫々の鋼棒は本体部を有し、該本体部の軸方向における前記連結部材の中空部内に位置する端部に抜け止め部を設け、
前記本体部の外周面には、本体部の軸芯を中心とする螺旋状の溝が複数本刻設され、各溝は、本体部の軸方向全体に亘って連続して形成され、
前記本体部における前記溝の底面積は、溝が形成されていない部分の表面積より少なく、
前記抜け止め部を、前記本体部の軸芯を中心とする雄ねじで構成し、この雄ねじのピッチを、前記本体部に刻設された溝のピッチより細くし、
前記雄ねじを、前記中空部内に位置する鋼棒の軸方向全体に亘って形成したことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項記載の発明は、請求項記載の発明において、前記連結部材の軸芯方向における両端部において、前記鋼棒の本体部の径より長い軸方向距離に亘って、その両端部の径方向の厚みを、前記連結部材の軸芯方向における中央部の径方向の厚みより厚く形成したことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記連結する両鋼棒の少なくとも一方と連結部材を、コンクリート部材に埋設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、本体部の外周面には、本体部の軸芯を中心とする螺旋状の溝が複数本刻設され、各溝は、本体部の軸方向全体に亘って連続して形成したことにより、本体部がコンクリート部材内に埋設した後に、本体部の軸方向に延びる力が作用した場合に、溝の位置が変わることなく、本体部が軸芯を中心として捩れながら軸方向に延びることができ、溝の移動によりコンクリートが損傷することを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1に係る鋼棒の連結装置の部分側断面図。
図2】本発明の実施例1に用いる鋼棒の側面図。
図3図2の横断面図。
図4】本体部の斜視図。
図5】本発明の実施例2に係る鋼棒の連結装置の部分側断面図。
図6】本発明の実施例3に係る鋼棒の連結装置の部分側断面図。
図7】本発明の実施例4に係る鋼棒同士の連結方法を説明するための部分側断面図。
図8】本発明の実施例4に係る鋼棒の連結装置の部分側断面図。
図9】本発明の実施例5に係る鋼棒の連結装置の一例の部分側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0014】
[実施例1]
図2は、本発明の実施例1に用いる鋼棒1の側面図である。
【0015】
この鋼棒1は、図2図4に示すように、軸方向(X-X方向)に長尺の円棒状の本体部2を有する。本体部2の外周面には、本体部2の軸芯を中心とする螺旋状の溝3が複数本形成されている。また、溝3は、本体部2の軸芯を中心とする周方向において、適宜間隔、本実施例においては等間隔に形成した。溝3の数は、複数であれば任意に設定することができ、本実施例においては6本形成した。
【0016】
各溝3は、図3に示すように、底部3aと、底部3aの周方向の両側部に設けられた底部から表面に向かうほど周方向の外側に位置する側部3b,3bで、横断面が略台形状となるように構成されている。
【0017】
本体部2における底部3aの面積、すなわち、溝3の底面積は、図3に示すように、本体部2の最も外側に位置する面(溝3以外の部分)2aの表面積より小さく設定されている。溝3の深さHは、その開口部の周方向の長さWより小さく形成されている。また、螺旋状の溝3における本体部2の軸方向のピッチ(軸方向の溝3と3の間隔)Pは、本体部2の直径Rより大きくなるように形成されている。
【0018】
上記のように、溝3は、上記従来技術の節鉄筋やねじ節鉄筋の凸部の高さより浅く形成されるとともに、上記従来技術の節鉄筋やねじ節鉄筋における凸部のピッチより大きく形成されている。
【0019】
本体部2の直径及び軸方向の長さは任意に設定する。
【0020】
本体部2の軸方向(X-X方向)の少なくとも一方の端部(連結側端部)には、本体部2の外周面より径方向の外側に膨出する抜け止め部5が、本体部2と一体に形成されている。
【0021】
次に、鋼棒1を用いた本発明の鋼棒の連結装置について説明する。
【0022】
図1に示すように、連結部材8である機械式継手は、軸方向の両端部が開口する中空部9を有する。中空部9における両端の開口部9a,9bの直径は、抜け止め部5の直径より大きく設定されている。連結部材8の軸芯を中心とする径方向における厚みが、軸方向全体において、略一定となるように形成した。
【0023】
中空部9の内周面には、軸芯側に突出する環状の凸部10が、軸方向において適宜間隔を有して一体に形成されている。連結部材8の側面には、軸方向の両端部において、中空部9内と外部を連通する連通穴11,11が形成されている。
【0024】
上記の構成において、図1に示すように、連結部材8の中空部9内に、一方の開口部9a側から一方の鋼棒1Aの抜け止め部5を挿入し、他方の開口部9b側から他方の鋼棒1Bの抜け止め部5を挿入する。
【0025】
次に、何れかの開口部9a(9b)と鋼棒1A(1B)との隙間をふさいだ後に、一方の連通穴11からグラウト等の接着剤を中空部9内に注入し、接着剤が硬化することにより、一方の鋼棒1Aと他方の鋼棒1Bを連結することができる。
【0026】
一方の鋼棒1Aと他方の鋼棒1Bと連結部材8により鋼棒の連結装置12を構成する。
【0027】
なお、一方の鋼棒1Aと他方の鋼棒1Bを、連結部材8を用いて連結した後に、この連結装置12をコンクリート部材内に埋設してもよいし、一方の鋼棒1Aと連結部材8をコンクリート部材に埋設し、コンクリートを硬化させた後に、他方の鋼棒1Bを連結部材8の中空部内に挿入した後に、接着剤を注入して一方の鋼棒1Aと他方の鋼棒1Bを連結するようにしてもよい。
【0028】
本発明の鋼棒の連結装置は上記の構造、構成を有することにより、以下の作用、効果を奏する。
【0029】
本体部2の外周面に螺旋状の溝3を形成したことにより、円筒状の鋼棒と比較して、本体部2とコンクリートとの定着力を高くすることができる。
【0030】
また、鋼棒1の抜け止め部5を、連結部材8の中空部9内に位置し、接着剤で連結部材8と鋼棒1を接続したことにより、鋼棒1の軸方向(X-X方向)の他方側に引っ張る力が作用した場合にも、連結部材8から鋼棒1が抜けることを防止できる。
【0031】
また、コンクリート部材内に鋼棒1が埋設された状態において、鋼棒1を軸方向に伸ばす力が作用し、鋼棒1が伸びた場合に、コンクリートに対する溝3の位置がほとんど変わることなく、本体部2が軸芯を中心として捩れながら軸方向に延びることができるため、本体部2の外周面に形成された溝3による、コンクリートへの影響が軽減でき、コンクリートに亀裂が生じるなどの破損を低減することができる。
【0032】
なお、連結部材は、鋼棒1同士を連結することができれば、図1に記載の機械式継手からなる連結部材8以外にも任意の部材を用いることができる。
【0033】
[実施例2]
上記実施例1においては、本体部2の外周面より径方向の外側に膨出する抜け止め部5を形成したが、図5に示すように、本体部2の軸芯方向の少なくとも一方の端部に、雄ねじ15を刻設して抜け止め部16とした鋼棒21を用いてもよい。
【0034】
雄ねじ15のピッチは、JISに規定された所定の間隔で形成し、そのピッチは、溝3のピッチより細かく形成されている。雄ねじ15の軸方向の長さは、図5に示すように、連結部材8内に雄ねじ15が収まるように設定されている。
【0035】
また、雄ねじ15にナット(図示せず)を螺合して、鋼棒21,21同士を連結した後に、連結部材8から鋼棒21が、より抜けにくくなるようにしてもよい。
【0036】
上記以外の構造は、前記実施例1と同様であるのでその説明を省略する。
【0037】
本実施例2においても前記実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【0038】
[実施例3]
本実施例3は、図6に示すように、上記実施例2における雄ねじ15にナット17を螺合し、これらを抜け止め部18としたものである。
【0039】
連結部材8における両端の開口部9a,9bの内径を、ナット17の外径より大きく設定する。
【0040】
上記以外の構造は、前記実施例2と同様であるのでその説明を省略する。
【0041】
本実施例3においても前記実施例2と同様の作用、効果を奏する。
【0042】
[実施例4]
上記実施例3は、両端の開口部9a,9bの内径を、ナット17の外径より大きく設定した連結部材8を用いたが、本実施例4は、図8に示すように、一方の開口部9aの内径を、ナット17の外径より狭く、他方の開口部9bの内径をナット17の外径より大きくした連結部材20を用いたものである。
【0043】
連結部材20における中央部から一方の開口部9a側端部に縮径部20aが設けられ、この縮径部20aの他方の開口部9b側に、開口部9b側に向かうほど徐々に拡径する変形部20bが形成され、変形部20bの開口部9b側に縮径部20aの外径より大径の拡径部20cが設けられている。
【0044】
縮径部20a内の中空部19aの内径は、一方の開口部9aの内径より大きくナット17の外径より小さく形成され、拡径部20cの中空部19cの内径は、他方の開口部9b及びナット17の外径より大きく形成されている。変形部20bの内周面には、位置決め部19bが設けられ、この位置決め部19bは、変形部20bの内周面の周方向に適宜間隔を有して複数設けられている。
【0045】
また、連結部材20における縮径された部分の長さは、拡径された部分の長さより短く設定されている。
【0046】
次に、一方の鋼棒21Aと他方の鋼棒21Bとの連結方法について説明する。
【0047】
連結部材20における一方の開口部9aから、ナット17を螺合していない一方の鋼棒21Aを挿入し、図7に示すように、他方の開口部9bから突出させた後に、雄ねじ15にナット17を螺合させた後、図8に示すように、一方の鋼棒21Aを連結部材20内に引き戻して、変形部20bの内周に設けた位置決め部19bに当接させる。次に、図8に示すように、他方の開口部9bからナット17を螺合した他方の鋼棒21Bを挿入する。
【0048】
次に、一方の連通穴11からグラウト等の接着剤を中空部19a,19c内に注入し、接着剤が硬化することにより、一方の鋼棒21Aと他方の鋼棒21Bを連結することができる。
【0049】
縮径部20aの中空部19aの内周面と一方の鋼棒21Aの外周面間の距離は、拡径部20cの中空部19cの内周面と他方の鋼棒21Bの外周面間の距離よりも短いことから、一方の鋼棒21Aと連結部材20及びその内部の接着剤との締結力を高めることができ、一方の鋼棒21Aの雄ねじ15の長さ、及び、一方の鋼棒21Aの連結部材20内への挿入量を、
他方の鋼棒21Bの雄ねじ15の長さ、及び、他方の鋼棒21Bの連結部材20内への挿入量より短くすることができ、連結部材20の軸方向の長さを、上記実施例3のものより短くすることができる。
【0050】
[実施例5]
上記実施例1乃至4においては、連結部材8の軸芯を中心とする径方向における厚みが、軸方向全体において略一定となるように形成したが、例えば、図9に示すように、軸芯方向の両端部23,23における径方向の厚みを、軸芯方向の中央部24における径方向の厚みより厚くしてもよい。
【0051】
軸芯方向の中央部24における径方向の厚みより厚く形成する両端部23,23の軸芯方向の長さは任意に設定することができる。また、その厚みも、任意に設定することができる。
【0052】
上記以外の構造は、前記実施例1乃至4と同様であるのでその説明を省略する。
【0053】
本実施例5においても前記実施例1と同様の作用、効果を奏する。
【0054】
また、本実施例5においては、連結部材8において、その軸芯方向の両端部23,23における径方向の厚みを、軸芯方向の中央部24における径方向の厚みより厚くしたことにより、鋼棒1,21がその軸芯方向へ移動等し、連結部材8内の接着剤が破断して膨張した際に、連結部材8が破損することを抑制できるとともに、連結部材8を埋設したコンクリート部材が損傷することを抑制できる。
【符号の説明】
【0055】
1,21 鋼棒
2 本体部
3 溝
5,16,18 抜け止め部
8,20 連結部材
9,19a,19c 中空部
23 連結部材の軸芯方向における両端部
24 連結部材の軸芯方向における中央部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9