(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、ファン、およびモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/028 20160101AFI20231020BHJP
H02P 25/22 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
H02P29/028
H02P25/22
(21)【出願番号】P 2019224007
(22)【出願日】2019-12-11
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】民辻 敏泰
(72)【発明者】
【氏名】久冨 祐也
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159630(JP,A)
【文献】特開2011-202902(JP,A)
【文献】特開2015-146715(JP,A)
【文献】特開2019-134513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/028
H02P 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの入力電圧を検出するとともに、前記モータの目標回転速度を指示する速度指令信号に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路と、を備え、
前記駆動制御回路は、前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定する異常状態判定モードと、前記速度指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する通常駆動モードとを有し、
前記駆動制御回路は、前記モータが停止している状態から前記モータを起動させる場合に前記異常状態判定モードで動作し、前記異常状態判定モードにおける前記モータの回転速度の指令値として
、前記速度指令信号で指定された回転速度ではない第1回転速度が設定可能にされ、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、検出した前記入力電圧の値と前記第1回転速度とに基づいて、前記モータが前記第1回転速度で回転するように前記駆動制御信号を生成するとともに、その時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定し、前記モータおよび前記モータ駆動回路が異常でないと判定した場合に、前記異常状態判定モードから前記通常駆動モードに移行する
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御信号は、PWM信号であり、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記入力電圧が大きくなるほどデューティ比が小さくなるように前記駆動制御信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路には、複数の前記入力電圧毎に前記モータの回転速度とデューティ比との対応関係を示す対応関係情報が記憶され、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記対応関係情報に基づいて、前記入力電圧の値と制御の目標とする回転速度との組み合わせに対応するデューティ比を決定し、前記駆動制御信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて前記モータが前記第1回転速度で回転しない場合に、回転速度が段階的に大きくなるように前記駆動制御信号を生成するとともに、前記モータが回転したときの回転速度を回転可能速度として記憶し、前記回転可能速度に基づいて前記モータの異常度合を決定する
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度で回転しない場合に、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度で回転するように前記駆動制御信号を生成して前記モータを再起動させ、前記モータの再起動時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータの異常の種類を判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおける前記モータの再起動時に、前記モータが前記第2回転速度で回転した場合に、前記モータが第1異常状態であると判定するとともに前記通常駆動モードに移行し、前記モータが前記第2回転速度で回転しなかった場合に、前記モータが第2異常状態であると判定し、前記モータの駆動を停止する
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記モータは、第1系統のコイルと第2系統のコイルを含み、
前記モータ駆動回路は、前記第1系統のコイルを駆動する第1モータ駆動回路と前記第2系統のコイルを駆動する第2モータ駆動回路とを含み、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度で第1方向に回転するように前記駆動制御信号を生成して前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路にそれぞれ供給する
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
モータの入力電圧を検出するとともに、前記モータの目標回転速度を指示する速度指令信号に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路と、を備え、
前記駆動制御回路は、前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定する異常状態判定モードと、前記速度指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する通常駆動モードとを有し、
前記駆動制御回路は、前記モータが停止している状態から前記モータを起動させる場合に前記異常状態判定モードで動作し、前記異常状態判定モードにおける前記モータの回転速度の指令値として第1回転速度が設定可能にされ、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、検出した前記入力電圧の値と前記第1回転速度とに基づいて、前記モータが前記第1回転速度で回転するように前記駆動制御信号を生成するとともに、その時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定し、前記モータおよび前記モータ駆動回路が異常でないと判定した場合に、前記異常状態判定モードから前記通常駆動モードに移行し、
前記モータは、第1系統のコイルと第2系統のコイルを含み、
前記モータ駆動回路は、前記第1系統のコイルを駆動する第1モータ駆動回路と前記第2系統のコイルを駆動する第2モータ駆動回路とを含み、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度で第1方向に回転するように前記駆動制御信号を生成して前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路にそれぞれ供給し、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度で回転した場合に、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度で前記第1方向に回転するように生成した前記駆動制御信号を前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路にそれぞれ異なるタイミングで供給して前記モータを再起動させ、前記モータの再起動時に、前記第1モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転し、且つ前記第2モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転した場合に前記モータが正常であると判定するとともに前記通常駆動モードに移行し、前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路の何れか一方からの駆動によって前記モータが回転しなかった場合に、前記一方が故障していると判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度で回転しなかった場合に、前記モータが前記第2回転速度よりも大きい第3回転速度で前記第1方向に回転するように生成した前記駆動制御信号を前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路にそれぞれ異なるタイミングで供給して前記モータを再起動させ、前記モータの再起動時に、前記第1モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転し、且つ前記第2モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転した場合に、前記モータが第1異常状態であると判定するとともに前記通常駆動モードに移行し、前記一方からの駆動によって前記モータが回転しなかった場合に、前記一方が故障していると判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第4回転速度で回転するように前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する異常駆動モードを更に有し、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記一方が故障していると判定した場合に前記異常駆動モードに移行し、前記異常駆動モードにおいて、前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路の他方にのみ前記駆動制御信号を供給する
モータ駆動制御装置。
【請求項11】
請求項10に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第5回転速度で前記第1方向とは逆の第2方向に回転するように前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する逆回転駆動モードを更に有し、
前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおける前記モータの再起動時に、前記第1モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転せず、且つ前記第2モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転しなかった場合に、前記逆回転駆動モードに移行し、前記逆回転駆動モードにおいて、前記モータが回転しなかった場合に、前記モータが第2異常状態であると判定する
モータ駆動制御装置。
【請求項12】
前記モータと、
前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラと、
請求項1乃至11の何れか一項に記載のモータ駆動制御装置と、を備える
ファン。
【請求項13】
モータの入力電圧を検出するとともに、前記モータの目標回転速度を指示する速度指令信号に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路とを有するモータ駆動制御装置によるモータ駆動制御方法であって、
前記駆動制御回路は、前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常状態の有無を判定する異常状態判定モードと、前記速度指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する通常駆動モードとを有し、前記異常状態判定モードにおける前記モータの回転速度の指令値として
、前記速度指令信号で指定された回転速度ではない第1回転速度が設定可能にされ、
前記モータが停止している状態から前記モータを起動させる場合に、前記駆動制御回路が前記異常状態判定モードに移行する第1ステップと、
前記異常状態判定モードにおいて、前記駆動制御回路が、検出した前記入力電圧の値と前記第1回転速度とに基づいて、前記モータを前記第1回転速度で回転させるように前記駆動制御信号を生成する第2ステップと、
前記第2ステップで生成した前記駆動制御信号に基づいて前記モータ駆動回路が前記モータを駆動させたとき、前記駆動制御回路が、その時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定する第3ステップと、
前記駆動制御回路が、前記第3ステップにおいて前記モータおよび前記モータ駆動回路が異常でないと判定した場合に、前記異常状態判定モードから前記通常駆動モードに移行する第4ステップと、を含む
モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、ファン、およびモータ駆動制御方法に関し、例えば、モータによって回転するファンの風量を制御するモータ駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家電機器やOA機器等において、その内部に設けられた部品等を冷却するための装置として、モータによってインペラ(羽根車)を回転させて風を発生させるファン(以下、「ファンモータ」とも称する。)が知られている。
【0003】
ファンの中でも、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載されるファンは、汚れの固着や装置に取り付けられているフィルタの目詰まり等により、ファン自身の寿命より早くに、回転低下を起こし、冷却性能が低下してしまう場合がある。
【0004】
ファンの劣化等による冷却性能の低下、工作機器等の停止などを未然に防ぐために、ファンの劣化度合いを判定し、適切なタイミングで、ユーザに対してファン等のメンテナンスの実施を促すことが望ましい。
【0005】
従来技術として、ファンの起動不良が発生する前にファンの劣化を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1に開示された電子機器は、停止状態にあるファンを所定のトルク(起動トルク)で起動させ、ファンが正常に回転するか否かを判定することにより、ファンの劣化の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、ファンのトルクは、モータの入力電圧に依存し、入力電圧が大きくなるほど、トルクが大きくなる傾向がある。しかしながら、特許文献1に開示された電子機器は、モータの入力電圧を考慮せずに、ファンの異常判定時の起動トルクを設定しているため、入力電圧が変化した場合、起動トルクが一定ではなくなる。そのため、入力電圧の値によっては、ファンの異常判定を正確に行うことができない虞がある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、モータの入力電圧に関わらず、モータの異常状態の有無を正確に判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、モータの入力電圧を検出するとともに、前記モータの目標回転速度を指示する速度指令信号に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号を生成する駆動制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路と、を備え、前記駆動制御回路は、前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定する異常状態判定モードと、前記速度指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する通常駆動モードとを有し、前記駆動制御回路は、前記モータが停止している状態から前記モータを起動させる場合に前記異常状態判定モードで動作し、前記異常状態判定モードにおける前記モータの回転速度の指令値として第1回転速度が設定可能にされ、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、検出した前記入力電圧の値と前記第1回転速度とに基づいて、前記モータが前記第1回転速度で回転するように前記駆動制御信号を生成するとともに、その時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定し、前記モータおよび前記モータ駆動回路が異常でないと判定した場合に、前記異常状態判定モードから前記通常駆動モードに移行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るモータ駆動制御装置によれば、モータの入力電圧に関わらず、モータの異常状態の有無を正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1に係るファンの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る駆動制御回路の機能ブロック構成を示す図である。
【
図4】異常度合判定基準情報の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係るファンにおけるモータの駆動制御処理の流れを示すフロー図である。
【
図6】実施の形態2に係るファンの構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態2に係る駆動制御回路の機能ブロック構成を示す図である。
【
図8A】実施の形態2に係るファンにおけるモータの駆動制御処理の流れを示すフロー図である。
【
図8B】実施の形態2に係るファンにおけるモータの駆動制御処理の流れを示すフロー図である。
【
図8C】実施の形態2に係るファンにおけるモータの駆動制御処理の流れを示すフロー図である。
【
図8D】実施の形態2に係るファンにおけるモータの駆動制御処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1,1A)は、モータ(50,50A)の入力電圧(Vdc)を検出するとともに、前記モータの目標回転速度を指示する速度指令信号(Sc)に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号(Sca,Sca1,Sca2)を生成する駆動制御回路(20,20A)と、前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路(10,10a,10b)と、を備え、前記駆動制御回路は、前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定する異常状態判定モードと、前記速度指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する通常駆動モードとを有し、前記駆動制御回路は、前記モータが停止している状態から前記モータを起動させる場合に前記異常状態判定モードで動作し、前記異常状態判定モードにおける前記モータの回転速度の指令値として第1回転速度(起動回転速度Rs)が設定可能にされ、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、検出した前記入力電圧の値と前記第1回転速度とに基づいて、前記モータが前記第1回転速度で回転するように前記駆動制御信号を生成するとともに、その時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定し、前記モータおよび前記モータ駆動回路が異常でないと判定した場合に、前記異常状態判定モードから前記通常駆動モードに移行することを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御信号は、PWM信号であり、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記入力電圧が大きくなるほどデューティ比が小さくなるように前記駆動制御信号を生成してもよい。
【0015】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路には、複数の前記入力電圧毎に前記モータの回転速度とデューティ比との対応関係を示す対応関係情報(222)が記憶され、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記対応関係情報に基づいて、前記入力電圧の値と制御の目標とする回転速度(Rs,Rrs,Rrs1,Rrs2)との組み合わせに対応するデューティ比を決定し、前記駆動制御信号を生成してもよい。
【0016】
〔4〕上記〔1〕乃至〔3〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置(1)において、前記駆動制御回路(20)は、前記異常状態判定モードにおいて前記モータが前記第1回転速度で回転しない場合に、回転速度が段階的に大きくなるように前記駆動制御信号を生成するとともに、前記モータが回転したときの回転速度を回転可能速度(Ra)として記憶し、前記回転可能速度に基づいて前記モータの異常度合を決定してもよい。
【0017】
〔5〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置(1)において、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度で回転しない場合に、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度(Rrs)で回転するように前記駆動制御信号を生成して前記モータを再起動させ、前記モータの再起動時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータの異常の種類を判定してもよい。
【0018】
〔6〕上記〔5〕に記載のモータ駆動制御装置(1)において、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおける前記モータの再起動時に、前記モータが前記第2回転速度で回転した場合に、前記モータが第1異常状態(例えばモータの汚れ)であると判定するとともに前記通常駆動モードに移行し、前記モータが前記第2回転速度で回転しなかった場合に、前記モータが第2異常状態(例えば、モータがロック状態またはモータとモータ駆動回路の少なくともどちらかが故障している状態)であると判定し、前記モータの駆動を停止する。
【0019】
〔7〕上記〔1〕乃至〔4〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記モータ(50A)は、第1系統のコイル(80a)と第2系統のコイル(80b)を含み、前記モータ駆動回路は、前記第1系統のコイルを駆動する第1モータ駆動回路(10a)と前記第2系統のコイルを駆動する第2モータ駆動回路(10b)とを含み、前記駆動制御回路(20A)は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度で第1方向に回転(正回転)するように前記駆動制御信号を生成して前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路にそれぞれ供給してもよい。
【0020】
〔8〕上記〔7〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20A)は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度(Rs)で回転した場合に、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第2回転速度(Rrs1)で前記第1方向に回転するように生成した前記駆動制御信号を前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路にそれぞれ異なるタイミングで供給して前記モータを再起動させ、前記モータの再起動時に、前記第1モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転し、且つ前記第2モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転した場合に前記モータが正常であると判定するとともに前記通常駆動モードに移行し、前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路の何れか一方からの駆動によって前記モータが回転しなかった場合に、前記一方が故障していると判定してもよい。
【0021】
〔9〕上記〔8〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20A)は、前記異常状態判定モードにおいて、前記モータが前記第1回転速度(Rs)で回転しなかった場合に、前記モータが前記第2回転速度(Rrs1)よりも大きい第3回転速度(Rrs2)で前記第1方向に回転するように生成した前記駆動制御信号を前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路にそれぞれ異なるタイミングで供給して前記モータを再起動させ、前記モータの再起動時に、前記第1モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転し、且つ前記第2モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転した場合に、前記モータが第1異常状態(例えばモータの汚れ)であると判定するとともに前記通常駆動モードに移行し、前記一方からの駆動によって前記モータが回転しなかった場合に、前記一方が故障していると判定してもよい。
【0022】
〔10〕上記〔8〕または〔9〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20A)は、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第4回転速度(Ru)で回転するように前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する異常駆動モードを更に有し、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおいて、前記一方が故障していると判定した場合に前記異常駆動モードに移行し、前記異常駆動モードにおいて、前記第1モータ駆動回路および前記第2モータ駆動回路の他方にのみ前記駆動制御信号を供給してもよい。
【0023】
〔11〕上記〔10〕に記載のモータ駆動制御装置(1A)において、前記駆動制御回路(20A)は、前記モータが前記第1回転速度よりも大きい第5回転速度(Rr)で前記第1方向とは逆の第2方向に回転(逆回転)するように前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する逆回転駆動モードを更に有し、前記駆動制御回路は、前記異常状態判定モードにおける前記モータの再起動時に、前記第1モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転せず、且つ前記第2モータ駆動回路からの駆動によって前記モータが回転しなかった場合に、前記逆回転駆動モードに移行し、前記逆回転駆動モードにおいて、前記モータが回転しなかった場合に前記モータが第2異常状態(例えばモータがロック状態またはモータと第1,第2モータ駆動回路の少なくともどちらかが故障している状態)であると判定してもよい。
【0024】
〔12〕本発明の代表的な実施の形態に係るファン(100,100A)は、前記モータ(50,50A)と、前記モータの回転力によって回転可能に構成されたインペラ(90)と、上記〔1〕乃至〔11〕の何れか一つに記載のモータ駆動制御装置(1,1A)とを備えることを特徴とする。
【0025】
〔13〕本発明の代表的な実施の形態に係る方法は、モータ(50)の入力電圧(Vdc)を検出するとともに、前記モータの目標回転速度を指示する速度指令信号(Sc)に基づいて、前記モータの回転速度を制御するための駆動制御信号(Sca,Sca1,Sca2)を生成する駆動制御回路(20,20A)と、前記駆動制御信号に基づいて、前記モータを駆動するモータ駆動回路(10,10a,10b)とを有するモータ駆動制御装置(1,1A)によるモータ駆動制御方法であって、前記駆動制御回路は、前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常状態の有無を判定する異常状態判定モードと、前記速度指令信号に基づいて前記駆動制御信号を生成して前記モータの駆動を制御する通常駆動モードとを有し、前記異常状態判定モードにおける前記モータの回転速度の指令値として第1回転速度(Rs)が設定可能にされ、前記モータが停止している状態から前記モータを起動させる場合に、前記駆動制御回路が前記異常状態判定モードに移行する第1ステップ(S10,S10A)と、前記異常状態判定モードにおいて、前記駆動制御回路が、検出した前記入力電圧の値と前記第1回転速度とに基づいて、前記モータを前記第1回転速度で回転させるように前記駆動制御信号を生成する第2ステップ(S12,S12A,S13,S13A)と、前記第2ステップで生成した前記駆動制御信号に基づいて前記モータ駆動回路が前記モータを駆動させたとき、前記駆動制御回路が、その時の前記モータの回転状態に基づいて前記モータおよび前記モータ駆動回路の異常の有無を判定する第3ステップ(S14,S23,S14A,S17A,S19A.S27A.S32A.S34A.S40A.S43A)と、前記駆動制御回路が、前記第3ステップにおいて前記モータおよび前記モータ駆動回路が異常でないと判定した場合に、前記異常状態判定モードから前記通常駆動モードに移行する第4ステップ(S16,S27,S21A)と、を含むことを特徴とする。
【0026】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態1に係るファンの構成を示すブロック図である。
【0028】
実施の形態1に係るファン(ファンモータ)100は、インペラ(羽根車)を回転させることによって風を発生させる装置である。ファン100は、機器の内部で発生する熱を外部へ排出し、その機器の内部を冷却する冷却装置の一つとして利用可能であり、例えば、サーバ等の情報処理装置の他に、オイルミスト、切削屑、煙、埃などが発生する環境下で使用される工作機械等に搭載可能である。ファン100は、例えば、軸流ファンである。
【0029】
図1に示すように、ファン100は、モータ50と、モータ50の回転位置に応じて位置信号を出力する位置検出器41、モータ50を駆動するモータ駆動制御装置1と、モータ50の回転力によって回転可能に構成されたインペラ90とを備えている。
【0030】
本実施の形態において、モータ50は、例えば、ティース(図示せず)に巻回された1系統のコイル80を備えた単相のブラシレスモータである。モータ駆動制御装置1は、モータ50の回転を制御するための装置である。モータ駆動制御装置1は、モータ50を構成する単相のコイル80に周期的に駆動電流を流すことで、モータ50を回転させる。
【0031】
モータ駆動制御装置1には、外部から直流の電源電圧Vdcが供給される。モータ駆動制御装置1は、上位装置500に接続されている。モータ駆動制御装置1には、上位装置500から出力された速度指令信号Scが入力される。モータ駆動制御装置1は、入力された速度指令信号Scに応じてモータ50を駆動させる。また、モータ駆動制御装置1は、上位装置500に対して、モータ50の状態に関する情報を出力する。例えば、後述するように、モータ駆動制御装置1は、モータ50の実回転数に応じた信号FGや後述するモータの異常状態を示す状態信号So等を上位装置500に対して出力する。これにより、上位装置500は、モータ50の回転状態やモータ50の異常の有無等を知ることができる。
【0032】
本実施の形態において、モータ駆動制御装置1は、モータ駆動回路10と、モータ駆動回路10の動作を制御する駆動制御回路20とを備えている。モータ駆動回路10は、制御回路12と、制御回路12による制御に基づいてコイル80に通電するインバータ回路(通電回路)15とを有する。
【0033】
モータ駆動回路10には、位置検出器41が接続されている。位置検出器41は、モータ50のロータの位置に応じて位置検出信号を出力する。本実施の形態において、位置検出器41は、例えば、ホール素子である。ホール素子は、位置検出信号として、正負の極性を有するホール信号を出力する。位置検出器41から出力された位置検出信号としてのホール信号は、制御回路12に入力される。
【0034】
モータ駆動回路10は、一端が直流電源に接続されたヒューズ19を有している。モータ駆動回路10において、直流電源は、電源電圧Vdcを、ヒューズ19を経由してインバータ回路15および制御回路12に供給する。
【0035】
インバータ回路15は、制御回路12から出力された駆動信号Sdrに基づいてモータ50のコイル80に通電する。駆動信号Sdrは、例えば、PWM(パルス幅変調)信号である。インバータ回路15は、例えば、Hブリッジ回路であり、電源電圧Vdcの両端に設けられた2つのスイッチ素子(例えばトランジスタ)の直列回路の対を2つ有している。各直列回路における2つのスイッチ素子同士の接続点がそれぞれ、コイル80に通電するための出力端子16,17である。インバータ回路15を構成する各スイッチ素子は、制御回路12から出力される、インバータ回路15の各スイッチ素子に対応する駆動信号(PWM信号)Sdrによって、オン・オフが制御される。これにより、インバータ回路15の出力端子16,17に接続されたコイル80の通電が制御される。
【0036】
このとき、電源電圧Vdcがインバータ回路15のスイッチ素子を経由してモータ50のコイル80に印加されることから、モータ50の入力電圧は、電源電圧Vdcとなる。
【0037】
制御回路12は、駆動制御回路20から供給される駆動制御信号Scaと、位置検出器41から出力された位置検出信号とに基づいて、駆動信号Sdrを生成し、インバータ回路15を制御する。例えば、制御回路12は、位置検出信号に基づいてモータ50の実回転数を検出し、モータ50の実回転数が駆動制御信号Sca(速度指令信号Sc)で指定された回転数と一致するようにデューティ比を調整したPWM信号を生成し、駆動信号Sdrとしてインバータ回路15に供給することにより、インバータ回路15の各スイッチング素子のオン、オフ動作を制御する。また、制御回路12は、位置検出信号に基づいて、モータ50の実回転数に対応する信号fgを生成して出力する。制御回路12は、例えば、モータ駆動用の汎用のIC(Integrated Circuit)である。
【0038】
駆動制御回路20は、モータ駆動回路10を介してモータ50の駆動を制御するための回路である。駆動制御回路20は、例えば、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等の各種メモリ、タイマ(カウンタ)、A/D変換回路、入出力I/F回路、およびクロック生成回路等のハードウェア要素を有し、各構成要素がバスや専用線を介して互いに接続されたプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ:MCU)によって構成されている。
【0039】
本実施の形態において、駆動制御回路20は、一つの半導体装置(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化されているが、これに限られるものではない。
【0040】
駆動制御回路20は、電源電圧Vdcに応じて制御回路12に印加される入力電圧V1を検出するとともに、上位装置500からの速度指令信号Scに基づいて、モータ50の回転速度を制御するための駆動制御信号Scaを生成する。なお、本実施の形態では、例えば、V1=Vdcである。
【0041】
ここで、速度指令信号Scは、モータ50の目標回転速度(目標回転数)を指示する信号であり、例えば、モータの目標回転速度に対応するデューティ比のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、速度指令信号Scは、例えば目標回転速度に対応する周波数のPFM信号など、他の形式の信号であってもよい。
【0042】
また、駆動制御信号Scaは、速度指令信号Scと同様に、モータ50の目標回転速度(目標回転数)を指示する信号であり、例えば、モータの目標回転速度に対応するデューティ比のPWM信号である。
【0043】
駆動制御回路20は、上位装置500からの速度指令信号Scに従ってモータ50の駆動制御を行う機能に加えて、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10)の異常の有無を判定し、判定結果に基づいてモータ50の駆動制御を行う機能を有している。
【0044】
具体的には、駆動制御回路20は、モータ50の駆動制御のための動作モードとして、通常駆動モードおよび異常状態判定モードを有している。通常駆動モードは、上位装置500からの速度指令信号Scに基づいて駆動制御信号Scaを生成し、モータ50の駆動を制御する動作モードである。通常駆動モードにおいて、駆動制御回路20は、速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50を回転させるように駆動制御信号Scaを生成し、モータ駆動回路10に供給することにより、モータ50を駆動する。
【0045】
異常状態判定モードは、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10)の異常の有無を判定する動作モードである。異常状態判定モードにおいて、駆動制御回路20は、速度指令信号Scで指定された回転速度ではなく、予め設定された所定の回転速度でモータを回転させ、そのときのモータ50の回転状態に基づいて、ファン100の異常の有無を判定する。駆動制御回路20は、モータ50が停止している状態からモータ50を起動させる場合に異常状態判定モードで動作する。
【0046】
図2は、実施の形態1に係る駆動制御回路20の機能ブロック構成を示す図である。
図2に示すように、駆動制御回路20は、通常駆動モードおよび異常状態判定モードによるモータ駆動制御を実現するための機能ブロックとして、入力電圧検出部201、記憶部202、デューティ比決定部203、異常状態判定部204、異常度合判定部205、駆動制御信号出力部206、および状態信号出力部207を有している。
【0047】
駆動制御回路20を構成するこれらの機能ブロックは、例えば、上述した駆動制御回路20を構成するMCUにおいて、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムに従って各種演算を行うとともにA/D変換回路および入出力I/F回路等の周辺回路を制御することによって実現される。
【0048】
入力電圧検出部201は、入力電圧V1を検出する機能部である。入力電圧検出部201は、例えば、ヒューズ19を経由してインバータ回路15および制御回路12に入力される入力電圧V1の値を検出する。入力電圧検出部201は、例えば、MCU内のA/D変換回路によって構成されており、プロセッサから指示に応じて、アナログ信号である入力電圧V1をデジタル信号に変換する。
【0049】
記憶部202は、通常駆動モードおよび異常状態判定モードによるモータ駆動制御を実現するために必要な各種パラメータ等を記憶する機能部である。例えば、記憶部202には、起動回転速度(第1回転速度の一例)Rs、再起動回転速度(第2回転速度の一例)Rrs、対応関係情報222、および異常度合判定基準情報224等が記憶されている。
【0050】
起動回転速度Rsは、異常状態判定モード時のモータ50の回転速度を指定するパラメータの一つである。起動回転速度Rsは、異常状態判定モードにおいて、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、モータ50の異常を判定する際に必要十分なトルク(起動トルク)をモータ50に発生させるための速度指令値である。
【0051】
再起動回転速度Rrsは、起動回転速度Rsと同様に、異常状態判定モード時のモータ50の回転速度を指定するパラメータの一つである。再起動回転速度Rrsは、異常状態判定モード時に起動回転速度Rsに対応する回転速度でモータ50が回転しなかった場合に、起動トルクよりも大きなトルクでモータ50を再起動させるときの速度指令値である。ここで、起動回転速度Rsと再起動回転速度Rrsとの関係は、Rrs>Rsである。
なお、対応関係情報222および異常度合判定基準情報224の詳細については、後述する。
【0052】
デューティ比決定部203は、入力電圧検出部201によって検出された入力電圧V1の検出結果と、上位装置500からの速度指令信号Scと、異常状態判定部204による判定結果とに基づいて、駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する機能部である。駆動制御信号出力部206は、デューティ比決定部203によって決定されたデューティ比のPWM信号を生成し、駆動制御信号Scaとして出力する。
【0053】
デューティ比決定部203は、駆動制御回路20の動作モードによってデューティ比の決定方法を切り替える。
通常駆動モードにおいて、デューティ比決定部203は、上位装置500からの速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50が回転するように、駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。例えば、デューティ比決定部203は、速度指令信号Scと等しくなるように駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。駆動制御信号出力部206は、例えば、速度指令信号Scとデューティ比が等しく、且つ周波数(または電圧)が異なるPWM信号を生成して、駆動制御信号Scaとして出力する。
【0054】
異常状態判定モードにおいて、デューティ比決定部203は、入力電圧V1が大きくなるほどデューティ比が小さくなるように駆動制御信号Scaを生成する。具体的には、デューティ比決定部203は、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、入力電圧検出部201によって検出された入力電圧V1の検出値と、記憶部202に設定された起動回転速度Rsまたは再起動回転速度Rrsと、記憶部202に記憶された対応関係情報222とに基づいて、駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。
【0055】
ここで、対応関係情報222は、複数の入力電圧V1毎に、モータ50の回転速度とデューティ比との対応関係を示したデータである。
【0056】
図3は、対応関係情報222の一例を示す図である。
図3において、縦軸の左欄は駆動制御信号Scaのデューティ比を、横軸の上欄は入力電圧を、これらの各値がクロスする欄は各値に対応するモータ50の回転速度(rpm)を示している。なお、本図に示す各パラメータ(デューティ比、入力電圧、回転数)の数値は、あくまで本発明の趣旨を説明するための具体例であって、数値自体に特別な意味はなく、本図に限定されるものではない。
【0057】
図3に示すように、対応関係情報222は、例えば、入力電圧V1の値とデューティ比との組み合わせ毎にモータ50の回転速度(トルク)の値が規定されているテーブルである。対応関係情報222において、回転速度(トルク)は、入力電圧V1が大きくなるほど大きくなり、且つデューティ比が大きくなるほど大きくなるように、設定されている。
【0058】
駆動制御回路20は、モータ50が停止している状態からモータ50を起動させる場合に異常状態判定モードで動作する。このとき、デューティ比決定部203は、対応関係情報222に基づいて、入力電圧検出部201によって検出した入力電圧V1の値と制御の目標とする回転速度(起動回転速度Rsまたは再起動回転速度Rrs)との組み合わせに対応するデューティ比を決定する。
【0059】
例えば、異常状態判定モードにおいてモータ50を起動回転速度Rs=3000rpmで回転させる場合を考える。この場合において、入力電圧検出部201によって検出した入力電圧Vd1が12Vであったとすると、デューティ比決定部203は、
図3に示す対応関係情報222(テーブル)において、入力電圧V1=12Vとしたときの回転速度が3000rpmに最も近い値(=2890rpm)を選択し、入力電圧V1=12Vと回転速度=2890rpmに対応するデューティ比=30%を駆動制御信号Scaのデューティ比とする。
【0060】
また、上述の例において、入力電圧検出部201によって検出した入力電圧V1が20Vであった場合には、デューティ比決定部203は、対応関係情報222(テーブル)において、入力電圧V1=20Vとしたときの回転速度が3000rpmに最も近い値(=3330rpm)を選択し、入力電圧V1=20Vと回転速度=3330rmpに対応するデューティ比=20%を駆動制御信号Scaのデューティ比とする。
【0061】
このように、デューティ比決定部203は、異常状態判定モードにおいて、入力電圧V1に依らずモータ50の回転速度が略一定(上記の例の場合、起動回転速度Rs=約3000rmp)になるように、入力電圧V1の値に応じて駆動制御信号Scaのデューティ比を調整する。これにより、異常状態判定モードでは、モータ50の入力電圧V1に関わらず、回転速度、すなわちトルク(起動トルク)が略一定になるように、モータ50を駆動することができる。
【0062】
異常状態判定モードにおいて、モータ50が起動回転速度Rsに対応する回転速度で回転しなかった場合には、駆動制御回路20は、モータ50の回転速度(トルク)が段階的に大きくなるように駆動制御信号Scaを生成する。具体的には、デューティ比決定部203は、モータ50の回転速度(トルク)が段階的に大きくなるように、駆動制御信号Scaのデューティ比を段階的に大きくする。
【0063】
例えば、入力電圧V1=16V、起動回転速度Rs=3000rpm、駆動制御信号Scaのデューティ比が25%であるときに、異常状態判定モードにおいてモータ50が起動回転速度Rsに対応する回転速度(約3000rpm)で回転しなかった場合を考える。この場合、デューティ比決定部203は、デューティ比=25%から例えばΔd=5%ずつ、デューティ比を段階的に増加させる。その後、デューティ比が所定の上限値に到達した場合、またはモータ50の回転が検出された場合に、デューティ比決定部203は、デューティ比の段階的な増加を停止する。
【0064】
モータ50のトルクの段階的な増加を停止した後、駆動制御回路20は、更に大きなトルクでモータ50を再起動させる。具体的には、デューティ比決定部203は、入力電圧検出部201によって検出された入力電圧V1の値と再起動回転速度Rrsとの組み合わせに対応するデューティ比を決定する。
【0065】
例えば、異常状態判定モードにおいて、再起動回転速度Rrs=7000rpmでモータ50を再起動する場合を考える。この場合において、入力電圧検出部201によって検出した入力電圧V1が12Vであったとすると、デューティ比決定部203は、
図3に示す対応関係情報222(テーブル)において、入力電圧V1=12Vとしたときの回転速度が7000rpmに最も近い値(=7100rpm)を選択し、入力電圧V1=12Vと回転速度=7100rpmに対応するデューティ比=90%を駆動制御信号Scaのデューティ比とする。
【0066】
異常状態判定部204は、ファン100の異常の有無を判定するための機能部である。異常状態判定部204は、モータ50の回転状態に基づいて、ファン100の異常の有無を判定する。
具体的に、異常状態判定部204は、異常状態判定モードにおいて、信号fgに基づいて、モータ50が回転しているか否か(例えば起動回転速度Rsでモータ50が回転しているか否か)を判定し、判定結果に基づいて、モータ50およびモータ駆動回路10の異常の有無を判定する。
【0067】
異常状態判定部204は、異常状態判定モードにおいて、モータ50が起動回転速度Rsで回転していることを検出した場合に、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10)が正常であると判定する。
一方、モータ50が起動回転速度Rsで回転していないことを検出した場合には、異常状態判定部204は、異常状態判定モードにおけるモータ50の再起動後に、モータ50が回転しているか否か(例えば、再起動回転速度Rrsに対応する回転速度でモータ50が回転しているか否か)を判定する。再起動回転速度Rrsに設定後にモータ50が回転している場合、異常状態判定部204は、ファン100(モータ50)が第1異常状態、例えばファン100が汚れている状態であると判定する。一方、再起動回転速度Rrsに設定してもモータ50が回転しない場合、異常状態判定部204は、ファン100が第2異常状態、例えば、モータ50がロックしている状態またはモータ50とモータ駆動回路10の少なくともどちらかが故障している状態であると判定する。
【0068】
更に、異常状態判定部204は、異常状態判定モードにおいて、モータ50が回転したときの回転速度を回転可能速度Raとして記憶部202に記憶する。例えば、デューティ比決定部203によって駆動制御信号Scaのデューティ比を段階的に大きくしているときに、モータ50が回転を始めた場合には、そのときのモータ50の回転速度を回転可能速度Raとして、記憶部202に記憶する。そして、駆動制御回路20は、次にモータ50を起動する際の起動回転速度Rsを、記憶部202に記憶されている回転可能速度Raに基づいて決定する。
【0069】
例えば、V1=16V、記憶部202に設定されている起動回転速度Rs(初期値)が3000rpmであるときに、異常状態判定モードにおいてモータ50が起動回転速度Rsに対応する速度で回転せず、駆動制御回路20が、駆動制御信号Scaのデューティ比を段階的に大きくしてモータを駆動している場合を考える。
【0070】
駆動制御信号Scaのデューティ比が段階的に増加している状況において、例えば、モータ50が回転速度=5000rpmが回転を始めたとき、異常状態判定部204は、そのときの回転速度5000rpmを、回転可能速度Raとして記憶部202に記憶する。
次にモータ50を停止状態から起動させるとき、駆動制御回路20(デューティ比決定部203)は、記憶部202に予め記憶されている起動回転速度Rsの初期値(3000rpm)ではなく、記憶部202に記憶されている回転可能速度Ra(=5000rpm)を起動回転速度Rsとして用いて、上述した手法により、駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。
【0071】
異常度合判定部205は、モータ50の異常度合を判定する機能部である。具体的には、異常度合判定部205は、異常状態判定部204によって第1異常状態(ファン100(モータ50)が汚れている状態)であると判定された場合に、記憶部202に記憶されている回転可能速度Raに基づいて、ファン100(モータ50)の異常度合を判定する。例えば、異常度合判定部205は、記憶部202に記憶されている異常度合判定基準情報224に基づいて、回転可能速度Raからファン100(モータ50)の異常度合を決定する。
【0072】
図4は、異常度合判定基準情報224の一例を示す図である。
異常度合判定基準情報224は、回転可能速度Raと異常度合との対応関係を示す情報であり、例えば、
図4に示すように、回転可能速度Raの所定の範囲毎に異常度合が割り当てられたテーブルである。異常度合に関し、L、M、Hの順にファン100(モータ50)の汚れ度合が大きいことを表している。例えば、回転可能速度Raが6000rmpであった場合、異常度合は“M”となる。
【0073】
異常度合判定基準情報224は、入力電圧V1毎に用意されている。異常度合判定部205は、入力電圧V1の値に応じた適切な異常度合判定基準情報224を用いて、回転可能速度Raからファン100(モータ50)の異常度合を決定する。
【0074】
状態信号出力部207は、モータ50の状態を表す信号を出力する機能部である。例えば、状態信号出力部207は、異常状態判定部204によってモータ50が正常状態であると判定された場合には、制御回路12からの信号fgに基づいて、モータ50の実回転数に応じた信号FGを出力する。例えば、状態信号出力部207は、上位装置500との通信に適合するように、信号fgの周波数や電圧を調整した信号FGを生成して出力する。
【0075】
一方、異常状態判定部204によってモータ50が異常状態であると判定された場合には、状態信号出力部207は、ファン100(モータ50)が異常状態であることを示す信号や異常度合を表す信号を、状態信号Soとして出力する。
【0076】
例えば、異常状態判定部204によってモータ50がロック状態またはモータ10とモータ駆動回路10の少なくともどちらかが故障していると判定された場合には、異常度合判定部205は、ファン100(モータ50)が異常状態(ロック状態または故障状態)であることを示す状態信号を出力する。この場合には、異常度合判定部205は、例えば、状態信号Soの電圧をハイレベルまたはローレベルに固定する。
【0077】
また、例えば、異常状態判定部204によってファン100(モータ50)が汚れていると判定された場合には、状態信号出力部207は、異常度合判定基準情報224によって判定された、ファン100(モータ50)の異常度合(汚れ度合)を示す状態信号Soを出力する。この場合には、状態信号出力部207は、例えば、状態信号Soのデューティ比を異常度合(汚れ度合)に応じて変化させる。
【0078】
次に、ファン100における駆動制御回路20によるモータ駆動制御の処理の流れについて説明する。
【0079】
図5は、実施の形態1に係るファン100におけるモータ50の駆動制御処理の流れを示すフロー図である。
【0080】
例えば、ファン100に電源電圧Vdcが投入され、停止している状態のモータ50を起動させるとき、駆動制御回路20は、異常状態判定モードで動作する(ステップS10)。先ず、異常状態判定モードにおいて、入力電圧検出部201が入力電圧V1の値を検出する(ステップS11)。
【0081】
次に、デューティ比決定部203が、異常状態判定モードにおける起動時の駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する(ステップS12)。具体的には、デューティ比決定部203が、上述した手法により、ステップS11で検出した入力電圧V1の値と、記憶部202に記憶されている起動回転速度Rs(初期値)および対応関係情報222とに基づいて、モータ50を低トルクの起動回転速度Rsで回転させるための駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。
【0082】
なお、記憶部202に回転可能速度Raが既に記憶されている場合には、上述したように、デューティ比決定部203は、記憶部202に記憶されている起動回転速度Rsの初期値ではなく、回転可能速度Raを起動回転速度Rsとして用いて駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。
【0083】
次に、駆動制御信号出力部206が、ステップS12で決定したデューティ比の駆動制御信号Scaをモータ駆動回路10に供給して、モータ50を低トルク(起動トルク)で起動させる(ステップS13)。
【0084】
次に、異常状態判定部204が、信号fgに基づいて、モータ50が起動回転速度Rsで回転しているか否かを判定する(ステップS14)。モータ50が起動回転速度Rsで回転している場合(ステップS14:Yes)、異常状態判定部204は、モータ50およびモータ駆動回路10が正常状態であると判定する(ステップS15)。
【0085】
その後、駆動制御回路20は、動作モードを異常判定モードから通常駆動モードに移行させる(ステップS16)。具体的には、デューティ比決定部203が、異常状態判定部204による判定結果(正常状態)に応じて、上位装置500からの速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50が回転するようにデューティ比を決定し、駆動制御信号出力部206が決定されたデューティ比の駆動制御信号Scaを生成してモータ駆動回路10に与える。これにより、通常駆動モードでは、速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50を回転させることが可能となる。
【0086】
一方、モータ50が起動回転速度Rsで回転していない場合(ステップS14:No)、デューティ比決定部203および駆動制御信号出力部206は、ステップS12で設定されたデューティ比よりもΔdだけ増加させた駆動制御信号Scaを生成する(ステップS17)。
【0087】
次に、異常状態判定部204が、モータ50が回転しているか否かを判定する(ステップS18)。モータ50が回転していない場合(ステップS18:No)、異常状態判定部204が、ステップS17で更新した駆動制御信号Scaのデューティ比が所定の上限値以上であるか否かを判定する(ステップS19)。更新した起動回転速度Rsが上限値以上でない場合、異常状態判定部204が、デューティ比決定部203および駆動制御信号出力部206に対してデューティ比を更にΔdだけ増加させた駆動制御信号Scaを生成するように指示し、モータ50が回転するか否かを判定する(ステップS18、S19)。
【0088】
一方、ステップS18において、異常状態判定部204が、モータ50が回転したことを検出した場合(ステップS18:Yes)、または駆動制御信号Scaのデューティ比が所定の上限値以上である場合(ステップS19:Yes)には、その時の回転速度を回転可能速度Raとして記憶部202に記憶する(ステップS20)。
【0089】
次に、駆動制御回路20は、より高いトルクでモータ50を再起動させる(ステップS21)。具体的には、デューティ比決定部203が、上述した手法により、ステップS11で検出した入力電圧V1の値と、記憶部202に記憶されている再起動回転速度Rrsおよび対応関係情報222とに基づいて、駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。その後、駆動制御信号出力部206が、ステップS21で決定したデューティ比の駆動制御信号Scaをモータ駆動回路10に対して出力して、モータ50を高トルクで再起動させる(ステップS22)。
【0090】
次に、異常状態判定部204が、信号fgに基づいて、モータ50が再起動回転速度Rrsで回転しているか否かを判定する(ステップS23)。
モータ50が再起動回転速度Rrsで回転している場合(ステップS23:Yes)、異常状態判定部204は、モータ50が第1異常状態(モータ50の汚れ)であると判定する(ステップS24)。この場合、異常度合判定部205が、上述した手法により、記憶部202に記憶されている回転可能速度Raに基づいて異常度合(汚れ度合)を決定する(ステップS25)。
【0091】
次に、状態信号出力部207が、ステップS25で決定された異常度合(汚れ度合)を示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS26)。
【0092】
その後、駆動制御回路20は、動作モードを異常状態判定モードから通常駆動モードに移行させる(ステップS27)。具体的には、デューティ比決定部203が、上位装置500からの速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50が回転するようにデューティ比を決定し、駆動制御信号出力部206が決定されたデューティ比の駆動制御信号Scaを生成してモータ駆動回路10に与える。これにより、上位装置500に対してファン100が汚れていることを通知しつつ、ファン100の回転を継続させることができる。
【0093】
一方、ステップS23において、異常状態判定部204が、モータ50が再起動回転速度Rrsで回転していないことを検出した場合には、モータ50がロック状態またはモータ50とモータ駆動回路10の少なくともどちらかが故障していると判定する(ステップS28)。この場合、状態信号出力部207は、モータ50がロック状態またはモータ50とモータ駆動回路10の少なくともどちらかが故障していることを示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS29)。その後、駆動制御回路20は、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、モータ50の駆動を停止する(ステップS30)。
【0094】
以上、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1において、駆動制御回路20は、モータ50およびモータ駆動回路10の異常の有無を判定する異常状態判定モードと、速度指令信号Scに基づいて駆動制御信号Scaを生成してモータ50の駆動を制御する通常駆動モードとを有している。駆動制御回路20は、異常状態判定モードにおいて、モータ50の入力電圧V1の値と起動回転速度Rsとに基づいて、モータ50が起動回転速度Rsで回転するように駆動制御信号Scaを生成するとともに、その時のモータ50の回転状態に基づいてモータ50およびモータ駆動回路10の異常の有無を判定し、モータ50およびモータ駆動回路10が異常でないと判定した場合に、異常状態判定モードから通常駆動モードに移行する。
これによれば、駆動制御回路20は、異常状態の判定処理において、起動トルク(起動回転速度Rs)を発生させる際に、モータ50の入力電圧Vdcの値を考慮して駆動制御信号Scaを生成するので、入力電圧V1に関わらず、異常状態判定時にモータ50に発生する起動トルク(モータ50の回転速度)を一定にすることが可能となる。
【0095】
具体的には、上述したように、駆動制御回路20が、異常状態判定モードにおいて、入力電圧V1が大きくなるほどデューティ比が小さくなるように駆動制御信号ScaとしてのPWM信号を生成することにより、従来技術のように、異常状態の判定処理において入力電圧V1に依存してモータ50の回転速度、すなわち起動トルクが変化することを防止することができる。これにより、モータの異常状態の判定精度のばらつきを抑えることが可能となる。
【0096】
また、これによれば、入力電圧V1、すなわち電源電圧Vdcが大きくなったとしてもデューティ比が適切に調整されるので、モータ50に流れる電流が不必要に大きくなること防ぐことができる。これにより、モータ駆動回路10の負担を低減することが可能となる。
【0097】
また、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1において、駆動制御回路20には、複数の入力電圧V1毎にモータ50の回転速度とデューティ比との対応関係を示す対応関係情報222が記憶され、駆動制御回路20は、異常状態判定モードにおいて、対応関係情報222に基づいて、入力電圧V1の値と起動回転速度Rsとの組み合わせに対応するデューティ比を決定し、駆動制御信号Scaを生成する。
【0098】
これによれば、異常状態の判定処理において、複雑な演算を行うことなく、モータ50の回転速度(起動トルク)が一定になるような駆動制御信号Scaのデューティ比を容易に算出することが可能となるので、CPUの演算負荷を低減することができる。
【0099】
また、駆動制御回路20は、異常状態判定モードにおいて、モータ50が起動回転速度Rsで回転しない場合に駆動制御信号Scaのデューティ比を段階的に増加させるとともに、モータ50が回転を始めたときの回転速度を回転可能速度Raとして記憶し、回転可能速度Raに基づいてモータの異常度合を決定する。
【0100】
ファン100においてインペラ90等に異物が付着して汚れている場合、汚れが酷くなるほどモータ50が回転し難くなる傾向がある。実施の形態1に係る駆動制御回路20は、異常状態判定モードにおいてモータ50が回転を始めたときの回転速度(トルク)に従ってモータの異常度合を決定するので、ファン100が汚れているか否かの情報だけでなく、ファン100の汚れの程度を示す情報をユーザに提供することが可能となる。
【0101】
また、駆動制御回路20は、異常状態判定モードにおいて、モータ50が起動回転速度Rsで回転しない場合に、モータ50が起動回転速度Rsよりも大きい再起動回転速度Rrsで回転するように駆動制御信号Scaを生成してモータ50を再起動させ、モータの再起動時のモータ50の回転状態に基づいてモータ50の異常の種類を判定する。
【0102】
これによれば、ファン100が汚れている状態(第1異常状態)であるのか、モータ50がロック状態またはモータ10とモータ駆動回路10の少なくともどちらかが故障している状態(第2異常状態)であるのかを、容易に判定することが可能となる。
【0103】
また、上述したように、実施の形態1に係る駆動制御回路20は、モータ50が第1異常状態であると判定した場合に、通常駆動モードに移行し、モータ50が第2異常状態であると判定した場合に、モータの駆動を停止する。
【0104】
これによれば、ファン100において、ユーザにファン100が異常状態(汚れている状態)であることを通知しつつ、ファン100の回転を止めずに対象物の冷却を継続することができる。
【0105】
また、駆動制御回路20は、異常状態判定モードにおいて、回転可能速度Raが記憶されている場合に、回転可能速度Raを起動回転速度Rsとして駆動制御信号Scaを生成する。
これによれば、一度でも第1異常状態(ファンの汚れ)と判定された場合には、次回以降の異常判定に係る処理において、駆動制御信号Scaのデューティ比を段階的に増加させるために必要な時間を削減することができ、モータ50の異常判定に必要な時間を短縮することが可能となる。
【0106】
≪実施の形態2≫
図6は、本発明の実施の形態2に係るファンの構成を示すブロック図である。
実施の形態2に係るファン(ファンモータ)100Aは、2系統のモータ駆動回路10a(第1モータ駆動回路の一例),10b(第2モータ駆動回路の一例)によってモータ50Aの駆動が可能な構成を有する点において、実施の形態1に係るファン100と相違する。
【0107】
図6に示すように、ファン100Aは、ティース(図示せず)に巻回された第1系統のコイル80aおよび第2系統のコイル80bを有するモータ50Aを備えている。なお、第1系統のコイル80aおよび第2系統のコイル80bは、それぞれ1つのコイルにより構成されていてもよい。
【0108】
実施の形態2において、モータ駆動制御装置1Aは、モータ駆動回路10aと、モータ駆動回路10bと、モータ駆動回路10aの動作とモータ駆動回路10bの動作とを制御する駆動制御回路20Aとを備えている。モータ駆動回路10aおよびモータ駆動回路10bは、実施の形態1に係るモータ駆動回路10と同様の回路構成を有している。なお、モータ駆動回路10aおよびモータ駆動回路10bを互いに区別しない場合には、単にモータ駆動回路10と称する場合がある。
【0109】
ファン100Aは、モータ50Aの回転位置に応じて位置信号を出力する2個の位置検出器(例えばホール素子)41a,41bを更に備えている。位置検出器41aは、第1系統のコイル80aに対応する位置に配置されている。位置検出器41bは、第2系統のコイル80bに対応する位置に配置されている。
【0110】
位置検出器41a,41bは、モータ50Aのロータの位置に応じて位置検出信号を出力する。位置検出器41aは、モータ駆動回路10aが備える制御回路12に位置検出信号を出力し、位置検出器41bは、モータ駆動回路10bが備える制御回路12に位置検出信号を出力する。
【0111】
各モータ駆動回路10a,10bは、一端が直流電源に接続されたヒューズ19をそれぞれ有している。直流電源は、電源電圧Vdcを、各モータ駆動回路10a,10bのヒューズ19を経由して、各モータ駆動回路10a,10b内の制御回路12およびインバータ回路15a,15bに供給する。インバータ回路15aは、制御回路12から出力された駆動信号Sdr1に基づいてモータ50Aのコイル80aに通電する。インバータ回路15bは、制御回路12から出力された駆動信号Sdr2に基づいてモータ50Aのコイル80bに通電する。
【0112】
モータ駆動回路10aは、第1系統のコイル80aに接続される出力端子16a,17aを有している。モータ駆動回路10aの制御回路12は、位置検出器41aから供給された位置検出信号(第1のホール信号)に応じたタイミングで第1系統のコイル80aに流れる電流の向きを切り替える。また、モータ駆動回路10aの制御回路12は、位置検出器41aから供給された位置検出信号(第1のホール信号)に基づいて、モータ50Aの実回転数に応じた信号fg1を生成して駆動制御回路20Aに出力する。
【0113】
モータ駆動回路10bは、モータ駆動回路10aと同様に、第2系統のコイル80bに接続される出力端子16b,17bを有している。モータ駆動回路10bの制御回路12は、位置検出器41bから供給された位置検出信号(第2のホール信号)に応じたタイミングで第2系統のコイル80bに流れる電流の向きを切り替える。また、モータ駆動回路10bの制御回路12は、位置検出器41bから供給された位置検出信号(第2のホール信号)に基づいて、モータ50Aの実回転数に応じた信号fg2を生成して駆動制御回路20Aに出力する。
【0114】
駆動制御回路20Aは、各モータ駆動回路10a,10bを介してモータ50Aの駆動を制御するための回路である。駆動制御回路20Aは、実施の形態1に係る駆動制御回路20と同様に、プログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ:MCU)によって構成されている。
【0115】
駆動制御回路20Aは、電源電圧Vdcに応じてモータ駆動回路10a,10bのそれぞれの制御回路12に供給される入力電圧Vdc1,Vdc2を検出するとともに、上位装置500からの速度指令信号Scに基づいて、モータ50Aの回転速度を制御するための駆動制御信号Sca1,Sca2を生成し、各モータ駆動回路10a,10bにそれぞれ供給する。なお、本実施の形態では、例えば、Vdc1=Vdc2=Vdcである。
【0116】
駆動制御回路20Aは、モータ50Aの駆動制御のための動作モードとして、実施の形態1に係る駆動制御回路20と同様の通常駆動モードおよび異常状態判定モードに加えて、異常駆動モードと逆回転モードとを有している。
【0117】
異常駆動モードは、2系統のモータ駆動回路10a,10bのうち一方が故障した場合であっても他方を利用してモータ50Aの駆動を制御する動作モードである。異常駆動モードにおいて、駆動制御回路20Aは、速度指令信号Scに関わらず、所定の回転速度(例えば、モータ50Aとして設定可能な最大の回転速度)でモータ50Aを回転させるように駆動制御信号Sca1,Sca2を生成し、故障していない方のモータ駆動回路10a,10bに供給することにより、1系統のみによるモータ駆動を実現する。
【0118】
逆回転モードは、異常状態判定モードにおけるモータの回転方向(第1回転方向)とは逆の回転方向(第2回転方向)にモータを回転させて、ファン100A(モータ50Aおよびモータ駆動回路10a,10b)の異常の有無を判定する動作モードである。
【0119】
なお、以下の説明では、モータ50Aの第1回転方向への回転を「正回転」、第2回転方向への回転を「逆回転」とも称する。
【0120】
逆回転モードにおいて、駆動制御回路20Aは、速度指令信号Scで指定された回転速度ではなく、予め設定された所定の回転速度でモータを第2回転方向に回転させ、そのときのモータ50Aの回転状態に基づいて、ファン100Aの異常の有無を判定する。
【0121】
図7は、実施の形態2に係る駆動制御回路20Aの機能ブロック構成を示す図である。
図7に示すように、駆動制御回路20Aは、通常駆動モード、異常状態判定モード、異常駆動モード、および逆回転モードによるモータ駆動制御を実現するための機能ブロックとして、入力電圧検出部201A、記憶部202A、デューティ比決定部203A、異常状態判定部204A、異常度合判定部205A、駆動制御信号出力部206A、および状態信号出力部207Aを有している。
【0122】
駆動制御回路20Aを構成するこれらの機能ブロックは、例えば、実施の形態1に係る駆動制御回路20の各機能ブロックと同様に、駆動制御回路20Aを構成するMCUにおいて、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムに従って、各種演算を行うとともにA/D変換回路および入出力I/F回路等の周辺回路を制御することによって、実現される。
【0123】
入力電圧検出部201Aは、入力電圧検出部201と同様に、入力電圧Vdc1,Vdc2を検出する機能部である。入力電圧検出部201Aは、例えば、各モータ駆動回路10a,10bにおいてヒューズ19を経由してインバータ回路15a,15bおよび制御回路12に入力される入力電圧Vdc1,Vdc2の値をそれぞれ検出する。
【0124】
記憶部202Aは、記憶部202と同様に、各動作モードによるモータ駆動制御を実現するために必要な各種パラメータ等を記憶する機能部である。例えば、記憶部202Aには、起動回転速度(第1回転速度の一例)Rs、第1再起動回転速度(第2回転速度の一例)Rrs1、第2再起動回転速度Rrs2(第3回転速度の一例)、対応関係情報222、および異常度合判定基準情報224に加えて、逆回転速度Rr(第5回転速度の一例)および高トルク用回転速度Ru(第4回転速度の一例)が記憶されている。
【0125】
第1再起動回転速度Rrs1は、起動回転速度Rsと同様に、異常状態判定モード時のモータ50Aの回転速度を指定するパラメータの一つである。第1再起動回転速度Rrs1は、異常状態判定モード時に起動回転速度Rsに対応する回転速度でモータ50Aが回転した場合に、モータ駆動回路10a,10bによって1系統ずつ個別にモータ50Aを再起動させるときの速度指令値である。ここで、起動回転速度Rsと第1再起動回転速度Rrs1との関係は、Rrs1>Rsである。
【0126】
第2再起動回転速度Rrs2は、起動回転速度Rsと同様に、異常状態判定モード時のモータ50Aの回転速度を指定するパラメータの一つである。第2再起動回転速度Rrs2は、異常状態判定モード時に起動回転速度Rsに対応する回転速度でモータ50Aが回転しなかった場合に、モータ駆動回路10a,10bによって1系統ずつ個別にモータ50Aを再起動させるときの速度指令値である。ここで、起動回転速度Rs、第1再起動回転速度Rrs1、第2再起動回転速度Rrs2との関係は、Rrs2>Rrs1>Rsである。
【0127】
逆回転速度Rrは、逆回転モード時のモータ50Aの回転速度を指定するパラメータである。逆回転速度Rrは、逆回転モードにおいて、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、起動トルクよりも大きなトルクでモータ50Aを逆回転させるときの速度指令値である。ここで、起動回転速度Rsと逆回転速度Rrとの関係は、|Rr|>|Rs|である。
【0128】
高トルク用回転速度Ruは、異常駆動モード時のモータ50Aの回転速度を指定するパラメータである。高トルク用回転速度Ruは、異常状態判定モード時に2系統のモータ駆動回路10a,10bのうち一方が故障していると判定された場合に、故障していない他方のみを用いてモータ50Aを起動トルクよりも大きなトルクでモータ50Aを駆動させるときの速度指令値である。
【0129】
デューティ比決定部203Aは、入力電圧検出部201Aによって検出された入力電圧Vdc1,Vds2の検出結果と、上位装置500からの速度指令信号Scと、異常状態判定部204Aによる判定結果とに基づいて、駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する機能部である。駆動制御信号出力部206Aは、デューティ比決定部203Aによって決定されたデューティ比のPWM信号を生成し、駆動制御信号Sca1,Sca2として出力する。
【0130】
デューティ比決定部203Aは、駆動制御回路20Aの動作モードによってデューティ比の決定方法を切り替える。
【0131】
通常駆動モードにおいて、デューティ比決定部203Aは、実施の形態1に係るデューティ比決定部203と同様に、上位装置500からの速度指令信号Scで指定された回転数でモータ50Aが回転するように、駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する。例えば、デューティ比決定部203Aは、速度指令信号Scと等しくなるように駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する。駆動制御信号出力部206Aは、例えば、速度指令信号Scとデューティ比が等しく、且つ周波数(または電圧)が異なるPWM信号を生成して、駆動制御信号Sca1,Sca2として出力する。これにより、通常駆動モードでは、2系統のモータ駆動回路10a,10bによってモータ50Aが回転する。
【0132】
異常状態判定モードにおいて、デューティ比決定部203Aは、実施の形態1に係るデューティ比決定部203と同様に、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、入力電圧検出部201Aによって検出された入力電圧Vdc1,Vdc2の検出値と、記憶部202Aに設定された起動回転速度Rs、第1再起動回転速度Rrs1、または第2再起動回転速度Rrs2と、記憶部202Aに記憶された対応関係情報222とに基づいて、駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する。
【0133】
具体的には、異常状態判定モードにおいて、デューティ比決定部203Aは、先ず、実施の形態1に係るデューティ比決定部203と同様に、対応関係情報222に基づいて、入力電圧検出部201Aによる入力電圧Vdc1,Vdc2の検出値と起動回転速度Rsとの組み合わせに対応するデューティ比を決定する。次に、デューティ比決定部203Aは、対応関係情報222に基づいて、入力電圧検出部201Aによる入力電圧Vdc1,Vdc2の検出値と第1再起動回転速度Rrs1または第2再起動回転速度Rrs2との組み合わせに対応するデューティ比を決定する。
【0134】
例えば、モータ50Aが起動回転速度Rsに対応する回転速度で回転した場合には、デューティ比決定部203Aは、入力電圧検出部201にAよる入力電圧Vdc1,Vdc2の検出値と第1再起動回転速度Rrs1との組み合わせに対応するデューティ比を決定する。
【0135】
一方、モータ50Aが起動回転速度Rsに対応する回転速度で回転した場合には、デューティ比決定部203Aは、デューティ比決定部203と同様に、モータ50Aの回転速度(トルク)が段階的に大きくなるように、デューティ比を段階的に大きくしていく。
【0136】
モータ50Aのトルクの段階的な増加を停止した後、駆動制御回路20Aは、更に大きなトルクでモータ50Aを再起動させる。具体的には、デューティ比決定部203Aは、入力電圧検出部201Aによる入力電圧Vdc1,Vdc2の検出値と第2再起動回転速度Rrs2との組み合わせに対応するデューティ比を決定する。
【0137】
また、異常駆動モードにおいて、駆動制御回路20Aは、起動時よりも大きなトルクでモータ50Aを回転させる。具体的には、デューティ比決定部203Aは、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、モータ50Aが高トルク用回転速度Ruで回転するようにデューティ比を決定する。
【0138】
ここで、高トルク用回転速度Ruは、起動トルクに対応する起動回転速度Rsや第1および第2再起動回転速度Rrs1,Rrs2よりも大きい値であることが好ましく、例えば、モータ50Aの設定可能な最大回転速度に設定することが好ましい(Rs<Rrs1<Rrs2<Ru)。この理由は、通常動作モードでは、2系統のモータ駆動回路10a,10bを用いてモータ50Aを回転させるのに対し、異常駆動モードでは、2系統のモータ駆動回路10a,10bのうち一方のみのモータ駆動回路によってモータ50Aを回転させるため、通常動作モードと同程度のファンの風量を得るためには、より大きな回転速度に設定しなければならないからである。
【0139】
駆動制御回路20Aは、更に、逆回転モードにおいて、異常状態判定モードにおける第1回転方向とは逆の第2回転方向にモータ50Aを回転させる。具体的には、デューティ比決定部203Aは、記憶部202Aに設定された逆回転速度Rrに基づいて、駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定し、異常状態判定モードとは逆方向にモータ50Aを回転させる。
【0140】
駆動制御信号出力部206Aは、デューティ比決定部203Aによって決定されたデューティ比のPWM信号を駆動制御信号Sca1,Sca2として生成し、モータ駆動回路10a,10bにそれぞれ供給する。
【0141】
駆動制御信号出力部206Aは、モータ駆動回路10a,10bを1系統毎に制御可能に構成されている。例えば、モータ駆動回路10aのみ用いてモータ50Aを駆動する場合には、所望のデューティ比の駆動制御信号Sca1をモータ駆動回路10aに対して出力し、停止を指示する駆動制御信号Sca2(例えば、デューティ比が0%の駆動制御信号Sca2)をモータ駆動回路10bに対して出力する。
【0142】
異常状態判定部204Aは、モータ50Aの回転状態に基づいて、ファン100Aの異常の有無を判定する。具体的に、異常状態判定部204Aは、異常状態判定モードにおいて、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50が所望の回転速度で回転しているか否かを判定し、判定結果に基づいて、モータ50Aおよびモータ駆動回路10a,10bの異常の有無を判定する。
【0143】
異常状態判定部204Aは、異常状態判定モードにおける起動時に、2系統のモータ駆動回路10a,10bによる駆動によりモータ50Aが起動回転速度Rsで回転し、且つ、異常状態判定モードにおける再起動時に各モータ駆動回路10a,10bによる個別の駆動によってモータ50Aが第1再起動回転速度Rrs1で正回転した場合に、モータが正常であると判定する。
【0144】
また、異常状態判定部204Aは、異常状態判定モードにおけるモータ50Aの再起動時に、モータ駆動回路10aおよびモータ駆動回路10bの何れか一方からの駆動によってモータ50Aが正回転しなかった場合に、上記一方が故障していると判定する。
【0145】
また、異常状態判定部204Aは、異常状態判定モードにおけるモータ50Aの再起動時に、2系統のモータ駆動回路10a,10bからの駆動によってモータ50Aが正回転した場合に、ファン100A(モータ50A)が第1異常状態(例えばファン100Aが汚れている状態)であると判定する。
【0146】
また、異常状態判定部204Aは、異常状態判定モードにおけるモータ50Aの再起動時に、2系統のモータ駆動回路10a,10bからの駆動によってモータ50Aが正回転も逆回転もしない場合に、ファン100A(モータ50A)が第2異常状態(例えば、モータ50Aがロック状態またはモータ50Aと2系統のモータ駆動回路10a,10bの少なくともどちらかが故障している状態)であると判定する。
【0147】
また、異常状態判定部204Aは、異常状態判定モードにおけるモータ50Aの再起動時に、モータ駆動回路10a,10bの何れか一方からの駆動によってモータ50Aが回転しなかった場合に、ファン100A(モータ駆動回路10a,10b)が第3異常状態(例えば、モータ駆動回路10a,10bの何れか一方が故障している状態)であると判定する。
【0148】
更に、異常状態判定部204Aは、実施の形態1に係る異常状態判定部204と同様に、異常状態判定モードにおいて、モータ50Aが回転したときの回転速度を回転可能速度Raとして記憶部202に記憶する。デューティ比決定部203Aは、次にモータ50Aを停止状態から起動するときの起動回転速度Rsを、記憶部202Aに記憶されている回転可能速度Raに基づいて決定する。
【0149】
異常度合判定部205Aは、異常状態判定部204Aによって第1異常状態(ファン100A(モータ50A)が汚れている状態)であると判定された場合に、実施の形態1に係る異常度合判定部205と同様に、回転可能速度Raに基づいてファン100A(モータ50A)の異常度合を判定する。
【0150】
次に、ファン100Aにおける駆動制御回路20Aによるモータ駆動制御の処理の流れについて説明する。
図8A~
図8Dは、実施の形態2に係るファン100Aにおけるモータ50Aの駆動制御処理の流れを示すフロー図である。
【0151】
図8Aに示すように、例えば、ファン100Aに電源電圧Vdcが投入され、停止している状態のモータ50Aを起動させるとき、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードで動作する(ステップS10A)。
【0152】
先ず、異常状態判定モードにおいて、入力電圧検出部201Aが入力電圧Vdc1,Vdc2の値を検出する(ステップS11A)。例えば、入力電圧検出部201Aは、入力電圧Vdc1と入力電圧Vdc2の平均値を入力電圧Vdcの検出値とする。
【0153】
次に、デューティ比決定部203Aが、異常状態判定モードにおける起動時の駆動制御信号Scaのデューティ比を決定する(ステップS12A)。具体的には、デューティ比決定部203Aが、実施の形態1に係るデューティ比決定部203と同様に、ステップS11Aで検出した入力電圧Vdcの値と、記憶部202Aに記憶されている起動回転速度Rs(初期値)および対応関係情報222とに基づいて、モータ50Aを低トルクの起動回転速度Rsで第1回転方向に回転(正回転)させるための駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する。
【0154】
なお、上述したように、記憶部202Aに回転可能速度Raが記憶されている場合には、デューティ比決定部203Aは、記憶部202Aに記憶されている起動回転速度Rsの初期値ではなく、回転可能速度Raを起動回転速度Rsとして用いて、駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する。
【0155】
次に、駆動制御信号出力部206Aが、ステップS12Aで決定したデューティ比の駆動制御信号Sca1,Sca2を生成して各系統のモータ駆動回路10a,10bにそれぞれ供給することにより、モータ50Aを低トルク(起動トルク)で正回転させる(ステップS13A)。
【0156】
次に、異常状態判定部204Aが、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50Aが起動回転速度Rsで回転しているか否かを判定する(ステップS14A)。モータ50Aが起動回転速度Rsで回転している場合(ステップS14A:Yes)、デューティ比決定部203Aが、各モータ駆動回路10a,10bによって個別にモータ50Aを再起動するための駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する(ステップS15A)。
【0157】
具体的には、デューティ比決定部203Aが、ステップS11Aで検出した入力電圧Vdcの値と、記憶部202Aに記憶されている第1再起動回転速度Rrs1および対応関係情報222とに基づいて、モータ50Aを中トルクの第1再起動回転速度Rrs1で第1回転方向に回転(正回転)させるように、駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する。例えば、実施の形態1に係るデューティ比決定部203と同様に、デューティ比決定部203Aは、入力電圧検出部201Aによる入力電圧Vdcの検出値と第1再起動回転速度Rrs1に最も近い回転速度との組み合わせに対応するデューティ比を対応関係情報222から選択し、選択した値を駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比とする。
【0158】
次に、駆動制御回路20Aは、モータ駆動回路10a,10bの何れか一系統のみを用いて、モータ50Aを中トルクで再起動させる(ステップS16A)。例えば、駆動制御信号出力部206Aが、モータ駆動回路10bを停止させた状態で、ステップS15Aで決定したデューティ比の駆動制御信号Sca1をモータ駆動回路10aに出力し、モータ駆動回路10aによってモータ50Aを中トルクで正回転させる。
【0159】
次に、異常状態判定部204Aが、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50Aが回転しているか否かを判定する(ステップS17A)。モータ50Aが回転している場合(ステップS17A:Yes)、駆動制御回路20Aは、ステップS15Aとは別の一系統のモータ駆動回路10a,10bを用いて、ステップS15Aで算出した第1再起動回転速度Rrs1でモータ50Aを正回転させる(ステップS18A)。例えば、駆動制御信号出力部206Aが、モータ駆動回路10aを停止させた状態で、ステップS15Aで決定したデューティ比の駆動制御信号Sca2をモータ駆動回路10bに出力し、モータ駆動回路10bによってモータ50Aを中トルクで正回転させる。
【0160】
次に、異常状態判定部204Aが、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50Aが回転しているか否かを判定する(ステップS19A)。モータ50Aが回転している場合(ステップS19A:Yes)、異常状態判定部204Aは、モータ50Aおよびモータ駆動回路10a,10bが正常状態であると判定する(ステップS20A)。
【0161】
その後、駆動制御回路20Aは、動作モードを異常判定モードから通常駆動モードに移行させる(ステップS21A)。具体的には、デューティ比決定部203Aおよび駆動制御信号出力部206Aが、異常状態判定部204Aによる判定結果(正常状態)に応じて、上位装置500からの速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50Aが回転するように駆動制御信号Sca1,Sca2を生成し、各モータ駆動回路10a,10bにそれぞれ与える。これにより、通常駆動モードでは、2系統のモータ駆動回路10a,10bにより、速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50Aを回転させることが可能となる。
この場合、状態信号出力部207Aは、信号fg1,fg2に基づいて、信号FGを生成して上位装置500に出力する。
【0162】
一方、何れか一系統のモータ駆動回路10a,10bによってモータ50Aが回転しなかった場合(ステップS17A:No、またはステップS19A:No)、異常状態判定部204Aは、ファン100が第3異常状態(一方のモータ駆動回路10a,10bが故障している状態)と判定する(ステップS22A)。この場合、状態信号出力部207Aは、モータ50Aが何れか一系統のモータ駆動回路10a,10bが故障していることを示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS23A)。
【0163】
その後、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードから異常駆動モードに移行し、故障していない一系統のモータ駆動回路10a,10bを用いて、起動時よりも大きなトルク(高トルク)でモータ50Aを回転させる(ステップS24A)。
具体的には、デューティ比決定部203Aが、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、モータ50Aが高トルク用回転速度Ruで回転するようにデューティ比を決定する。例えば、モータ駆動回路10aが故障している場合、デューティ比決定部203Aは、駆動制御信号Sca2のデューティ比を100%に設定し、駆動制御信号出力部206Aが、設定されたデューティ比の駆動制御信号Sca2をモータ駆動回路10bに出力し、モータ駆動回路10bによってモータ50Aを高トルクで再起動させる。
【0164】
これによれば、上位装置500に対してファン100Aのモータ駆動回路10a,10bの何れか一方が故障していることを通知しつつ、2系統を用いた場合と同程度の風量を確保しつつ、ファン100Aの回転を継続させることができる。
【0165】
次に、ステップS14Aにおいて、モータ50Aが起動回転速度Rsに対応する速度で回転しなかった場合(ステップS14A:No)を考える。この場合、
図8cに示すように、デューティ比決定部203Aおよび駆動制御信号出力部206Aが、ステップS12Aで設定されたデューティ比よりもΔdだけ増加させた駆動制御信号Sca1,Sca2を生成し、2系統のモータ駆動回路10a,10bに対してそれぞれ出力する(ステップS26A)。
【0166】
次に、異常状態判定部204Aが、モータ50Aが回転しているか否かを判定する(ステップS27A)。モータ50Aが回転していないと判定した場合(ステップS27A:No)、異常状態判定部204Aが、ステップS26Aで設定した駆動制御信号Scaのデューティ比が所定の上限値以上であるか否かを判定する(ステップS28A)。
【0167】
ステップS26Aで設定した駆動制御信号Scaのデューティ比が所定の上限値以上でない場合(ステップS28A:No)、異常状態判定部204Aが、デューティ比決定部203Aに対してデューティ比を更にΔdだけ増加させるように指示し、再度、モータ50Aが回転するか否かを判定する(ステップS26A、S27A)。
【0168】
一方、ステップS27Aにおいて、モータ50Aが回転した場合(ステップS27A:Yes)、またはステップS26Aで設定した駆動制御信号Scaのデューティ比が所定の上限値以上である場合(ステップS28A:Yes)には、異常状態判定部204Aが、その時の回転速度を回転可能速度Raとして記憶部202に記憶する(ステップS29A)。
【0169】
次に、駆動制御回路20Aは、各モータ駆動回路10a,10bによって個別にモータ50Aを起動時よりも高いトルクで再起動するために、駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する(ステップS30A)。
【0170】
具体的には、デューティ比決定部203Aが、ステップS11Aで検出した入力電圧Vdcの値と、記憶部202Aに記憶されている第2再起動回転速度Rrs2および対応関係情報222とに基づいて、モータ50Aを高トルクの第2再起動回転速度Rrs2で第1回転方向に回転(正回転)させるように、駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比を決定する。例えば、実施の形態1に係るデューティ比決定部203と同様に、デューティ比決定部203Aが、入力電圧検出部201Aによって検出された入力電圧Vdcの値と第2再起動回転速度Rrs2に最も近い回転速度との組み合わせに対応するデューティ比を対応関係情報222から選択し、選択した値を駆動制御信号Sca1,Sca2のデューティ比とする。
【0171】
次に、駆動制御回路20Aは、モータ駆動回路10a,10bの何れか一系統のみを用いて、第2再起動回転速度Rrs2でモータ50Aを再起動させる(ステップS31A)。例えば、駆動制御信号出力部206Aが、モータ駆動回路10bを停止させた状態で、ステップS30Aで決定したデューティ比の駆動制御信号Sca1をモータ駆動回路10aに出力し、モータ駆動回路10aによってモータ50Aを高トルクで正回転させる。
【0172】
次に、異常状態判定部204Aが、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50Aが回転しているか否かを判定する(ステップS32A)。モータ50Aが回転している場合(ステップS32A:Yes)、ステップS31Aとは別の一系統のモータ駆動回路10a,10bを用いて、ステップS30Aで算出したデューティ比(第2再起動回転速度Rrs2)でモータ50Aを正回転させる(ステップS33A)。例えば、駆動制御信号出力部206Aが、モータ駆動回路10aを停止させた状態で、ステップS30Aで決定したデューティ比の駆動制御信号Sca2をモータ駆動回路10bに出力し、モータ駆動回路10bによってモータ50Aを高トルクで正回転させる。
【0173】
次に、異常状態判定部204Aが、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50Aが回転しているか否かを判定する(ステップS34A)。モータ50Aが回転している場合(ステップS34A:Yes)、異常状態判定部204Aが、モータ50Aが第1異常状態(ファン100Aの汚れ)であると判定する(ステップS35A)。この場合、異常度合判定部205Aが、実施の形態1に係る異常度合判定部205と同様の手法により、記憶部202Aに記憶されている回転可能速度Raに基づいて異常度合(汚れ度合)を決定する(ステップS36A)。次に、状態信号出力部207Aが、ステップS36Aで決定された異常度合(汚れ度合)を示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS37A)。
【0174】
その後、駆動制御回路20Aは、動作モードを異常状態判定モードから通常駆動モードに移行させる(ステップS38A)。具体的には、デューティ比決定部203Aが、上位装置500からの速度指令信号Scで指定された回転速度でモータ50Aが回転するようにデューティ比を決定し、駆動制御信号出力部206Aが駆動制御信号Sca1,Sca2を生成してモータ駆動回路10a,10bにそれぞれ与える。これにより、上位装置500に対してファン100Aが汚れていることを通知しつつ、ファン100Aの回転を継続させることができる。
【0175】
一方、ステップS32Aにおいて、異常状態判定部204Aが、モータ50Aが回転していないことを検出した場合には、
図8Aに示すように、ステップS31Aとは別の一系統のモータ駆動回路10a,10bを用いて、ステップS30Aで算出したデューティ比(第2再起動回転速度Rrs2)でモータ50Aを正回転させる(ステップS39A)。
【0176】
次に、異常状態判定部204Aは、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50Aが回転しているか否かを判定する(ステップS40A)。モータ50Aが回転している場合(ステップS40A:Yes)、
図8Bに示すように、異常状態判定部204Aが、ファン100Aが第3異常状態(一方のモータ駆動回路10a,10bが故障している状態)と判定し(ステップS22A)、状態信号出力部207Aが、モータ50Aが何れか一系統のモータ駆動回路10a,10bが故障していることを示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS23A)。その後、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードから異常駆動モードに移行し、故障していない1系統のモータ駆動回路10a,10bを用いて、起動時よりも大きなトルク(高トルク)でモータ50Aを回転させる(ステップS24A)。
【0177】
一方、
図8DのステップS40Aにおいて、モータ50Aが回転していない場合(ステップS40A:No)、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードから逆回転モードに移行する(ステップS41A)。
【0178】
逆回転モードにおいて、駆動制御回路20Aは、モータ50Aが起動時よりも高いトルクで第2回転方向に回転するように、2系統のモータ駆動回路10a,10bによってモータ50Aを駆動させる(ステップS42A)。具体的には、デューティ比決定部203Aが、記憶部202に記憶されている逆回転速度Rrでモータ50Aが逆回転するようにデューティ比を決定し、駆動制御信号出力部206Aが駆動制御信号Sca1,Sca2を生成してモータ駆動回路10a,10bにそれぞれ与える。
【0179】
次に、異常状態判定部204Aが、信号fg1,fg2に基づいて、モータ50Aが回転(逆回転)しているか否かを判定する(ステップS43A)。モータ50Aが逆回転する場合(ステップS43A:Yes)、駆動制御回路20Aは、逆回転モードから異常状態判定モードに移行し、
図8AのステップS10Aから処理を再開する。
【0180】
一方、モータ50Aが逆回転しない場合(ステップS43A:No)、異常状態判定部204Aが、モータ50Aが第2異常状態(モータ50Aがロック状態またはモータ50Aと2系統のモータ駆動回路10a,10bの少なくともどちらかが故障している状態)と判定する(ステップS44A)。この場合、状態信号出力部207Aが、モータ50Aがロック状態またはモータ50Aと2系統のモータ駆動回路10a,10bの少なくともどちらかが故障していることを示す状態信号Soを上位装置500に対して出力する(ステップS45A)。その後、駆動制御回路20Aは、上位装置500からの速度指令信号Scに関わらず、モータ50Aの駆動を停止する(ステップS46A)。
【0181】
以上、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置1Aにおいて、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードにおいて、モータ50Aの入力電圧Vdcの値と起動回転速度Rsとに基づいて、モータ50Aが起動回転速度Rsで回転するように駆動制御信号Sca1,Sca2を生成して2系統のモータ駆動回路10a,10bによってモータ50Aを駆動し、その時のモータ50Aの回転状態に基づいてモータ50Aおよびモータ駆動回路10a,10bの異常の有無を判定する。
【0182】
これによれば、実施の形態1に係るモータ駆動制御装置1と同様に、入力電圧Vdc1,Vdc2に関わらず、異常状態判定時にモータ50Aに発生する起動トルク(モータ50Aの回転速度)を一定にすることが可能となるので、モータの異常状態の判定精度のばらつきを抑えることが可能となる。
【0183】
また、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置において、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードにおいて、モータ50Aが起動回転速度Rs(第1回転速度の一例)で回転した場合に、モータ50Aが起動回転速度Rsよりも大きい第1再起動回転速度Rrs1(第2回転速度の一例)で正回転するように生成した駆動制御信号Sca1,Sca2を各モータ駆動回路10a,10bに互いに異なるタイミングで供給してモータ50Aを再起動させ、再起動時のモータ50Aの回転状態に基づいて、モータ50Aおよびモータ駆動回路10a,10bの異常の有無を判定する。
【0184】
これによれば、2系統のモータ駆動回路10a,10bのどちらの系統が故障しているかを判定することが可能となる。すなわち、モータ駆動回路10a,10bのうちの一方のみからの駆動によってモータ50Aが回転しなかった場合に、上記一方のモータ駆動回路10a,10bが故障している状態(第3異常状態)と判定することができる。
【0185】
また、何れか一系統のモータ駆動回路10a,10bが故障していると判定した場合には、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードから異常駆動モードに移行し、異常駆動モードにおいて、モータ駆動回路10a,10bのうち故障していると判定されていない方のモータ駆動回路10a,10bにのみ駆動制御信号Sca1,Sca2を供給する。
これによれば、2系統のうち1系統のモータ駆動回路10a,10bが故障している場合であっても、モータ50Aを回転させることができるので、ファン100Aによる対象物の冷却を継続することができる。
【0186】
このとき、モータ50Aが起動回転速度Rsよりも大きい高トルク用回転速度Ru(例えば、モータ50Aに設定可能な最高回転速度)となるように駆動制御信号Sca1,Sca2を生成することにより、モータ駆動回路10a,10bを1系統のみ用いた場合であっても、2系統を用いた場合と同程度の風量を確保することが可能となり、冷却性能の低下を防止することが可能となる。
【0187】
また、実施の形態2に係るモータ駆動制御装置において、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードにおいて、モータ50Aが起動回転速度Rs(第1回転速度の一例)で回転しなかった場合に、モータ50Aが起動回転速度Rsよりも大きい第2再起動回転速度Rrs2(第3回転速度の一例)で正回転するように生成した駆動制御信号Sca1,Sca2を各モータ駆動回路10a,10bに互いに異なるタイミングで供給してモータ50Aを再起動させ、再起動時のモータ50Aの回転状態に基づいて、モータ50Aおよびモータ駆動回路10a,10bの異常の有無を判定する。
【0188】
これによれば、ファン100A(モータ50A)が汚れている状態であるか否かを判定することが可能となる。すなわち、モータの再起動時に、モータ駆動回路10aからの駆動によってモータ50Aが回転し、且つモータ駆動回路10bからの駆動によってモータ50Aが回転した場合に、モータ50Aが汚れている状態(第1異常状態)であると判定することができる。
【0189】
また、モータ50Aが汚れている状態(第1異常状態)であると判定した場合には、異常状態判定モードから通常駆動モードに移行し、2系統のモータ駆動回路10a,10bによってモータ50Aを回転させることにより、ユーザに対してファン100Aが汚れている状態(第1異常状態)であることを通知しつつ、対象物の冷却を継続することができる。
【0190】
更に、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードにおけるモータ50Aの再起動時に、モータ駆動回路10aからの駆動によってモータ50Aが回転せず、且つモータ駆動回路10bからの駆動によってモータ50Aが回転しなかった場合に、異常状態判定モードから逆回転駆動モードに移行し、逆回転駆動モードにおいて、モータ50Aが逆回転しなかった場合に、モータがロック状態またはモータ駆動回路の少なくともどちらかが故障している状態(第2異常状態)であると判定する。
【0191】
これによれば、モータが汚れている状態とモータのロック状態またはモータとモータ駆動回路の少なくともどちらかが故障している状態とをより高精度に判別することが可能となる。例えば、モータに異物が付着している場合にモータを逆回転することによって異物が除去されるような状況において、モータがロック状態またはモータ駆動回路の少なくともどちらかが故障している状態であるという誤判定を防止することが可能となる。
【0192】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0193】
例えば、上記実施の形態では、状態信号出力部207,207Aが状態信号Soと信号FGとを互いに独立した信号として出力する場合を例示したが、これに限られず、上述したモータの状態に関する信号および信号FGを一つの状態信号Soとして出力してもよい。
【0194】
例えば、実施の形態1に係るファン100において、ファン100(モータ50およびモータ駆動回路10)が正常状態であると判定された場合には、状態信号出力部207は、信号FGと同等の周波数(または逓倍した周波数)のデューティ比50%の信号(FG信号)Soを出力し、モータ50がロック状態またはモータ50とモータ駆動回路10の少なくともどちらかが故障している状態と判定された場合には、状態信号出力部207は、電圧をハイレベルまたはローレベルに固定した信号Soを出力する。また、異常状態判定部204によってファン100(モータ50)が汚れていると判定された場合には、状態信号出力部207は、例えば、デューティ比を10%から50%までの範囲で異常度合(汚れ度合)に応じて変化させた信号Soを出力する。これによれば、駆動制御回路20Aとしての半導体集積回路の端子を減らすことができる。
【0195】
また、上記実施の形態では、ファン100,100Aの異常度合(汚れ度合)を状態信号Soのデューティ比で表す場合を例示したが、これに限られない。例えば、異常度合(汚れ度合)に応じて状態信号Soの周波数(周期)を変化させてもよい。
【0196】
また、この場合において、例えば、モータ駆動制御装置1,1Aに発光素子(例えばLED)を別途設け、状態信号Soに基づいて発光素子の点滅周期を変化させることにより、ファン100,100Aの汚れの進行度合を視覚的にユーザに知らせることができる。
【0197】
また、上記実施の形態では、異常状態判定モードにおいてモータ50,50Aが起動回転速度Rsで回転しなかった場合に、駆動制御信号Sca,Sca1,Sca2を段階的に増加させる場合を例示したが、これに限られず、速やかに再起動回転速度Rrs,第2再起動回転速度Rrs2でモータ50,50Aを回転させてもよい。例えば、実施の形態1に係る
図5のフローチャートにおいて、駆動制御回路20は、ステップS14の処理後(ステップS14:No)に、ステップS17~S20の各処理を行うことなく、ステップS21の処理を実行してもよい。同様に、実施の形態2に係る
図8A~
図8Dのフローチャートにおいて、駆動制御回路20Aは、ステップS14Aの処理後(ステップS14A:No)に、ステップS26A~S29Aの各処理を行うことなく、ステップS30Aの処理を実行してもよい。
【0198】
また、実施の形態2において、駆動制御回路20Aは、異常状態判定モードにおいて逆回転モードに移行する前に、2系統のモータ駆動回路10a,10bを用いて、第2再起動回転速度Rrs2でモータ50Aを回転させ、そのときのモータ50Aの回転状態に基づいて、モータ50Aを逆回転させるか否かを判定してもよい。
【0199】
例えば、2系統のモータ駆動回路10a,10bを用いてモータ50Aを第2再起動回転速度Rrs2で回転させることができた場合には、ファン100Aが第1異常状態(ファン100Aの汚れ)と判定し、2系統のモータ駆動回路10a,10bを用いてモータ50Aを第2再起動回転速度Rrs2で回転させることができなかった場合には、上述のように逆回転モードに移行し、モータがロック状態またはモータとモータ駆動回路の少なくともどちらかの故障の有無を判定してもよい。
【0200】
また、例えば、ファン100(モータ50)が汚れていると判定された場合には、状態信号出力部207は、異常度合判定基準情報224によって判定された、ファン100(モータ50)の異常度合(汚れ度合)を示す状態信号Soを出力する。この場合には、状態信号出力部207は、例えば、状態信号Soのデューティ比を異常度合(汚れ度合)に応じて変化させる。
【0201】
また、上記実施の形態において、モータ50,50Aが単相のブラシレスモータである場合を例示したが、モータ50,50Aの種類や相数等はこれに限定されない。例えば、3相のブラシレスモータであってもよい。
【0202】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0203】
100,100A…ファン、1,1A…モータ駆動制御装置、10…モータ駆動回路、10a,10b…モータ駆動回路(第1,第2モータ駆動回路の一例)、12…制御回路、15,15a,15b…インバータ回路、16,16a,16b,17,17a,17b…出力端子、19…ヒューズ、20,20A…駆動制御回路、41,41a,41b…位置検出器、50,50A…モータ、80,80a,80b…コイル、90…インペラ、100,100A…ファン、201,201A…入力電圧検出部、202,202A…記憶部、203,203A…デューティ比決定部、204,204A…異常状態判定部、205,205A…異常度合判定部、206,206A…駆動制御信号出力部、207,207A…状態信号出力部、222…対応関係情報、224…異常度合判定基準情報、500…上位装置、Ra…回転可能速度、Rs…起動回転速度(第1回転速度の一例)、Rrs…再起動回転速度(第2回転速度の一例)、Rrs1…第1再起動回転速度(第2回転速度の一例)、Rrs2…第2再起動回転速度(第3回転速度の一例)、Ru…高トルク用回転速度(第4回転速度の一例)、Rr…逆回転速度(第5回転速度の一例)、Sc…速度指令信号、Sca,Sca1,Sca2…駆動制御信号、Sdr,Sdr1,Sdr2…駆動信号、So…状態信号、Vdc…電源電圧(入力電圧)、V1,Vdc1,Vdc2…入力電圧