IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鉄住金エンジニアリング株式会社の特許一覧

特許7370245プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版
<>
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図1
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図2
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図3
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図4
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図5
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図6
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図7
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図8
  • 特許-プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】プレキャスト床版構造物、プレキャスト床版
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
E01D19/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019234779
(22)【出願日】2019-12-25
(65)【公開番号】P2021102889
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】北 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 信彰
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-315076(JP,A)
【文献】特開2006-219901(JP,A)
【文献】特開2018-172908(JP,A)
【文献】特開平07-090814(JP,A)
【文献】特開平09-242254(JP,A)
【文献】特開2018-172893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状に形成されて端部にコンクリートが露出するとともに厚さ方向の内方に鉄筋が配置された複数のプレキャスト床版を備え、前記端部同士を対向させて配列させるとともに前記端部同士の間に充填材からなる継手が形成されることにより前記プレキャスト床版が接続されたプレキャスト床版構造物であって、
前記端部には、
床版端面と床版表面の角部を含んで除去した面取り部が形成され
前記継手に前記鉄筋が配置されない
ことを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項2】
請求項1に記載のプレキャスト床版構造物であって、
前記面取り部は、
前記プレキャスト床版の厚さ方向において前記鉄筋の前記床版表面に最も近接する端部よりも前記床版表面側に形成されている
ことを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレキャスト床版構造物であって、
前記面取り部は、
前記床版端面と前記床版表面とを接続する直線を含んで形成されている
ことを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項4】
請求項3に記載のプレキャスト床版構造物であって、
前記面取り部は、
側面視前記直線と床版表面との面取り角度が30°以上45°以下に設定されていることを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項5】
請求項4に記載のプレキャスト床版構造物であって、
前記面取り部は、
側面視前記床版端面と曲線により接続されている
ことを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項6】
請求項4に記載のプレキャスト床版構造物であって、
前記面取り部は、
側面視曲率半径20mm以上40mm以下に設定され、前記床版端面と接線で接続されるR形状を備えている
ことを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のプレキャスト床版構造物であって、
前記充填材の弾性率は、前記コンクリートの弾性率の1/100以上1/3以下である
ことを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のプレキャスト床版構造物であって、
前記面取り部は、前記プレキャスト床版の端部の上側と下側に形成される
ことを特徴とするプレキャスト床版構造物。
【請求項9】
板状に形成されて端部にコンクリートが露出するとともに厚さ方向の内方に鉄筋が配置され、前記端部同士を対向させて配列させて前記端部同士の間に充填材からなる継手が形成されることにより接続されるプレキャスト床版であって、
前記端部には、
床版端面と床版表面の角部を含んで除去した面取り部が形成され
前記継手に前記鉄筋が配置されない
ことを特徴とするプレキャスト床版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部を対向させて配列され充填材により接続されたプレキャスト床版構造物、プレキャスト床版に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、橋梁等を構成するプレキャスト床版の継手として、PC鋼より線で接合するもの、ループ継手に代表される鉄筋構造と間詰用コンクリートで接合するもの、充填材料のみで接合するもの等が用いられている。
【0003】
近年、施工における省力化・工期短縮のために、プレキャスト床版が適用される事例が増えている。
特に、高速道路における床版取替工事では、プレキャスト床版を鉄筋構造と間詰用コンクリート等の充填材を用いて接合するプレキャスト床版構造物が多く採用されている。
【0004】
プレキャスト床版を充填材により接合するプレキャスト床版構造物では、プレキャスト床版の端部と充填材との界面は、側面視して鉛直方向に切り立った矩形断面や下端部に張り出したあご掛けを設けた断面とすることが一般的である。
【0005】
これらプレキャスト床版構造物は、プレキャスト床版の厚さが増加するのを抑えつつ疲労耐久性を向上させることが望まれている。
そこで、プレキャスト床版構造に関する種々の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5879452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のプレキャスト床版構造は、継手界面の上端部・下端部が輪荷重による曲げ作用やせん断作用に起因して応力集中が発生しやすく、充填材が早期に剥離しやすい。
その結果、プレキャスト床版の端面から突出している鉄筋に錆汁が発生しやすく、鉄筋の腐食が進行してプレキャスト床版が早期に劣化するという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、プレキャスト床版の端部同士を対向させて配列し、複数のプレキャスト床版を充填材により連続的に接続してプレキャスト床版構造物を構成する際に、継手に生じる疲労を抑制することが可能なプレキャスト床版構造物、プレキャスト床版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、板状に形成されて端部にコンクリートが露出するとともに厚さ方向の内方に鉄筋が配置された複数のプレキャスト床版を備え、前記端部同士を対向させて配列させるとともに前記端部同士の間に充填材からなる継手が形成されることにより前記プレキャスト床版が接続されたプレキャスト床版構造物であって、前記端部には、床版端面と床版表面の角部を含んで除去した面取り部が形成され、前記継手に前記鉄筋が配置されないことを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、板状に形成されて端部にコンクリートが露出するとともに厚さ方向の内方に鉄筋が配置され、前記端部同士を対向させて配列させて前記端部同士の間に充填材からなる継手が形成されることにより接続されるプレキャスト床版であって、前記端部には、床版端面と床版表面の角部を含んで除去した面取り部が形成され、前記継手に前記鉄筋が配置されないことを特徴とする。
【0011】
この発明に係るプレキャスト床版構造物、プレキャスト床版によれば、端部に、床版端面と床版表面の角部を含んで除去した面取り部が形成されているので、プレキャスト床版の端部同士を対向させて配列させ、対向する端部と端部の間に充填材によって継手を形成して接続する場合に、床版端面と床版表面の角部同士を対向させるのに比較して端面の法線方向に作用する力が分散されて小さくなる。
また、面取り部によりプレキャスト床版の端部の床版表面間の距離が大きくなるので、充填材に生じる歪み(単位長さ当たりの伸び等)が小さくなる。
その結果、プレキャスト床版構造物の継手に生じる疲労を抑制することができる。
【0012】
ここで、面取り部とは、プレキャスト床版の端部において、側面視して床版端面に設定した部位と床版表面に設定した部位とを側面視して直線および/または曲線(以下、接続線という場合がある)で接続して、床版端面と床版表面とが交差する角部側を含む領域を除去して形成される部位をいう。
言い換えると、床版表面と床版端面とを接続する接続線によって定義され、床版本体側(角部を含まない側)に位置する部分(側面視したときの線又は隣接配置される床版に向かって露出される対向面)をいう。
【0013】
なお、面取り部を形成する際の角部の除去は、プレキャスト床版の端部に形成された床版端面と床版表面とが交差する角部を物理的に除去して形成してもよいし、プレキャスト床版の端部に面取り部が設定されることを以って除去してもよい。すなわち、実際に角部を形成した後、除去してもよいし、そもそも角部を形成しなくてもよい。言い換えると、角部が形成されていると仮定した場合に、その角部が除去されているかのような形状に、面取り部が形成されていればよい。
【0014】
また、端部に面取り部が形成されているとは、端部が互いに対向する2つのプレキャスト床版を側面から見た場合に、第1のプレキャスト床版の上側角部、下側角部と、第2のプレキャスト床版の上側角部、下側角部のうち、面取り部をいずれの位置に形成するかは任意に設定することが可能であり、例えば、いずれかひとつの角部を除去して面取り部を形成してもよいし、対向する角部をともに除去して面取り部を形成してもよい。
【0015】
また、ここで、側面視とは、配列されるプレキャスト床版の端部同士の間に形成される間隙に沿った方向(例えば、プレキャスト床版の配列方向及び厚さ方向の双方と直交する方向)から見ることをいう。
また、プレキャスト床版構造物を適用する対象は任意に設定することが可能であり、例えば、道路橋、橋梁、桟橋、港湾、港湾海岸、空港、物流倉庫の床面等に適用してもよい。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプレキャスト床版構造物であって、前記面取り部は、前記プレキャスト床版の厚さ方向において前記鉄筋の前記床版表面に最も近接する端部よりも前記床版表面側に形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係るプレキャスト床版構造物によれば、面取り部がプレキャスト床版の厚さ方向において鉄筋の外周面のうち床版表面に最も近接する端部よりも床版表面側に形成されているので、鉄筋が面取り部に露出することがなく、鉄筋に錆が生じて強度劣化するのを抑制することができる。また、鉄筋の外周面が削られて小さくなることがないので鉄筋の強度が低下するのを抑制することができる。
その結果、プレキャスト床版に大きな耐力を確保することができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のプレキャスト床版構造物であって、前記面取り部は、前記床版端面と前記床版表面とを接続する直線を含んで形成されていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係るプレキャスト床版構造物によれば、面取り部が、床版端面と床版表面とを接続する直線を含んで形成されているので、面取り部を容易かつ効率的に形成することができる。
ここで、面取り部が直線を含んで形成されているとは、面取り部が直線のみによって形成されている場合に限られず、面取り部の端部がR形状等の曲線部を含んでいてもよいことを意味する。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のプレキャスト床版構造物であって、前記面取り部は、側面視前記直線と床版表面との面取り角度が30°以上45°以下に設定されていることを特徴とする。
【0021】
この発明に係るプレキャスト床版構造物によれば、面取り部が、側面視直線と床版表面との面取り角度が30°以上45°以下に設定されているので、充填材に作用する荷重が効率的に抑制されるとともに、プレキャスト床版の面取り部に対して充填材が充分に固着されて面取り部から剥離するのを抑制することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のプレキャスト床版構造物であって、前記面取り部は、側面視前記床版端面と曲線により接続されていることを特徴とする。
【0023】
この発明に係るプレキャスト床版構造物によれば、面取り部が、側面視前記床版端面と曲線により接続され、継手が面取り部から床版端面に緩やかに接続されるので、プリキャスト床版の端部から継手に加わる力が分散される。
その結果、継手が劣化するのが抑制されて疲労強度が向上する。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載のプレキャスト床版構造物であって、前記面取り部は、側面視曲率半径20mm以上40mm以下に設定され、前記床版端面と接線で接続されるR形状を備えていることを特徴とする。
【0025】
この発明に係るプレキャスト床版構造物によれば、面取り部が、側面視曲率半径20mm以上40mm以下に設定され、床版端面と接線で接続されるR形状を備えているので、床版端面と緩やかに接続される。
【発明の効果】
【0026】
本発明のプレキャスト床版構造物、プレキャスト床版によれば、プレキャスト床版構造物を構成する際に、継手が疲労するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物を適用した道路橋の概略構成の一例を説明する斜視図である。
図2】第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物の概略構成の一例を説明する斜視図である。
図3】第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物の端部の概略構成を説明する斜視図である。
図4】第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物の要部詳細を説明する側面から見た概念図である。
図5】第1実施形態の第1変形例に係るプレキャスト床版構造物の要部詳細を説明する側面から見た概念図である。
図6】第1実施形態の第2変形例に係るプレキャスト床版構造物の要部詳細を説明する側面から見た概念図である。
図7】本発明の効果を説明するためのプレキャスト床版構造物の概略構成を示す図である。
図8】本発明のプレキャスト床版構造物に係る面取り部の床版表面に対する面取り角度と応力の関係を検証した検証試験1を説明するグラフである。
図9】本発明のプレキャスト床版構造物に係る面取り部の面取り高さと応力の関係を検証した検証試験2を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、図1図4を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物を適用した道路橋の概略構成の一例を説明する斜視図である。また、図2は、プレキャスト床版構造物の概略構成の一例を説明する斜視図であり、図3は、プレキャスト床版構造物の端部の概略構成を説明する斜視図であり、図4は、プレキャスト床版構造物の要部詳細を説明する側面から見た概念図である。なお、以下の図面において、便宜のため、各構成要素の厚さや寸法の比率を適宜調整する場合がある。
【0029】
図1図4において、符号10は道路橋を、符号20はプレキャスト床版構造を、符号100はプレキャスト床版を、符号110は端部を、符号110Sは床版表面を、符号110Tは床版端面を示している。
また、符号Xは橋軸方向を、符号Yは橋軸直交方向を、符号Zは上下方向又はプレキャスト床版の厚さ方向を示しており、橋軸方向X及び橋軸直交方向Yと直交している。
【0030】
道路橋10は、図1に示すように、例えば、橋軸方向Xに間隔を開けて配置された橋脚11と、橋軸方向Xに延在し隣接する橋脚11間にわたって配置された複数の橋桁15と、プレキャスト床版構造物20とを備えている。なお、図1において、橋脚11は1本のみ図示している。
【0031】
橋脚11は、橋軸方向Xに沿って見たときに、例えば、略T字形に形成され、地面(不図示)から立設されている。
橋脚11には、例えば、RC( Reinforced Concrete:鉄筋コンクリート)又はPC( Prestressed Concrete)等を用いることができる。
【0032】
橋桁15は、図1に示すように、下方を橋脚11に支持され橋脚11の上面に配置されている。また、橋脚11の上面にはプレキャスト床版構造物20が配置されている。
橋桁15は、橋軸方向Xに延在して配置されるとともに、橋軸方向Xと直交する橋軸直交方向Yに互いに間隔をあけて配置されている。
なお、橋軸方向X及び橋軸直交方向Yは、例えば、水平面に沿って配置されている。
【0033】
橋桁15は、例えば、H形鋼等を適用して構成することが可能である。
また、H形鋼は、図1に示すように、ウェブ16の上方及び下方にそれぞれフランジ17が配置された構成とされている。
【0034】
プレキャスト床版構造物20は、上方のフランジ17にずれ止め(不図示)で固定されている。ここで、ずれ止めとは、頭付きスタッドや孔あき鋼板ジベル等を用いることが可能である。
また、下方のフランジ17は、橋脚11上に設置された支承にずれ止めボルトや溶接(いずれも不図示)により固定されている。
【0035】
プレキャスト床版構造物20は、図1図2図4に示すように、橋軸方向Xに沿って配列される複数のプレキャスト床版100と、隣接するプレキャスト床版100同士の間に配置される継手25と、を備えている。
なお、図1図2図4では、プレキャスト床版構造物20を構成する複数のプレキャスト床版100の一部を図示している。
【0036】
プレキャスト床版100は、図1に示すように、例えば、平面視(上下方向Zに沿って見た)ときに、外形が略矩形とされ一定の厚さに設定された平板状に形成されている。
また、プレキャスト床版100は、橋軸方向Xにおける一端側Fと他端側Rに、それぞれ端部110が形成されている。
【0037】
床版表面110Sは、プレキャスト床版100の上側と下側に配置され、橋軸方向X及び橋軸直交方向Yに沿って形成された面である。
床版端面110Tは、プレキャスト床版100の橋軸方向Xにおける一端側Fと他端側Rに配置され、橋軸直交方向Y及び上下方向Zに沿って形成された平面である。
【0038】
また、プレキャスト床版100は、図3図4に示すように、コンクリート部(コンクリート)101と、コンクリート部101の厚さ方向Zの内方に配置され、橋軸方向Xに延在する複数の鉄筋102と、を備えている。
【0039】
コンクリート部101は、適用可能な強度を備えた周知のコンクリートを適用することが可能である。
【0040】
鉄筋102は、図3図4に示すように、橋軸直交方向Yに間をあけて上下方向Zにおける上側と下側に2段で配置されている。
上側の鉄筋102は、床版表面110Sに対してかぶり厚さL01の位置に配置されている。
また、下側の鉄筋102は下側の床版表面110Sからかぶり厚さL02の位置に配置されている。
【0041】
また、プレキャスト床版100の端部110は、図3図4に示すように、床版表面110Sと、床版端面110Tと、面取り部120と、を備えた構成とされている。
【0042】
以下、図3図4において、端部110の下側に形成された面取り部を例にして、面取り部120の詳細について説明する。
図3図4において、符号P1は床版表面側面取り起点を、符号P2は面取り高さ設定点を、符号P3は角部を、符号120Lは直線部を、符号120RはR形状部(曲線部)は示している。また、図4において、符号θ1、θ2は面取り部120と床版表面110Sの面取り角度を、符号L11、L12は、床版表面110Sからの面取り高さを示す寸法である。
【0043】
面取り部120は、図2図4に示すように、例えば、プレキャスト床版100の端部110の上側と下側に形成されている。
端部110の上側と下側の形状については任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、端部110の上側と下側における面取り部120は、同じ形状に形成されている。
言い換えると、面取り角度θ1、θ2、面取り高さL11、L12、及びコンクリートのかぶり厚さL01、L02は、それぞれ同じ数値に設定されている。
なお、面取り角度θ1、θ2、面取り高さL11、L12及びコンクリートのかぶり厚さL01、L02の数値については任意に設定することが可能であり、これらを異なる数値に設定してもよい。
【0044】
面取り部120は、図3図4に示すように、例えば、直線部120Lと、R形状部(曲線部)120Rとを備えている。
また、面取り部120は、床版表面110Sと床版端面110Tとが交差する仮想的な角部P3が含まれる領域を除去することにより形成され、プレキャスト床版100の本体側に形成され、外方(例えば、側面から見て角部P3がある側)に向かって露出する面によって構成されている。
【0045】
直線部120Lは、図4に示すように、側面視したときに、床版表面110Sに位置される床版表面側面取り起点P1と床版端面110Tに位置される面取り高さ設定点P2とを接続する構成とされている。
【0046】
ここで、床版表面側面取り起点P1は、床版表面110Sの橋軸方向Xにおけるプレキャスト床版100の本体側(言い換えると、橋軸方向Xにおけるプレキャスト床版100の中央寄り)に位置されている。
【0047】
また、面取り高さ設定点P2は、プレキャスト床版100の床版端面110Tに配置され、床版表面110Sからの面取り高さL12に設定されている。
また、この実施形態では、例えば、面取り高さL12がコンクリートのかぶり厚さL02よりも小さな寸法(言い換えると、面取り高さ設定点P2が鉄筋102の外周面よりも床版表面110S側に位置される)設定とされている。
【0048】
また、直線部120Lと床版表面110Sとの面取り角度θ2は、床版表面側面取り起点P1及び面取り高さ設定点P2により一義的に設定される構成とされている。
なお、床版表面側面取り起点P1、面取り高さ設定点P2の位置は、面取り角度θ2やコンクリートのかぶり厚さL02等を考慮して任意に設定してもよい。
【0049】
なお、面取り角度θ1、θ2については、任意に設定することが可能であるが、例えば、30°以上45°以下に設定することが好適であり、40°以上45°以下に設定することがより好適である。
【0050】
R形状部(曲線部)120Rは、側面視したときに、直線部120Lに接する接線と、床版端面110Tと接する接線と、を有する円弧(曲率半径R2)によって構成されている。
【0051】
R形状部(曲線部)120Rの寸法については、任意に設定することが可能であるが、例えば、曲率半径20mm以上40mm以下に設定することが好適で有り、曲率半径30mm以上40mm以下に設定することがより好適である。
【0052】
また、R形状部(曲線部)120Rと床版端面110Tの接点と床版表面110Sとの距離は、かぶり厚さL02よりも小さな寸法に設定されている。
すなわち、端部110の下側に形成された面取り部120においては、R形状部(曲線)120Rは、鉄筋102の外形(外径)の下面(下端)よりも下方で床版端面110Tと接していて、鉄筋102は面取り部120と干渉しないようになっている。
その結果、鉄筋102は、面取り部120から露出せず、鉄筋102に錆が生じることにより強度劣化しないようになっている。また、鉄筋102の外形が削られることなく維持されるようになっている。
【0053】
継手25は、充填材により構成されている。
充填材の材質は任意に設定することが可能であり、例えば、アクリル樹脂モルタル及びエポキシ樹脂を適用してもよい。例えば、アクリル樹脂モルタルの弾性率は0.8×10N/mmであり、エポキシ樹脂の弾性率は3.0×10N/mmである。
また、充填材として、ポリマーセメントモルタル(PCM)やエポキシ樹脂モルタル(ERM)を適用してもよく、例えば、ポリマーセメントモルタル(PCM)は、弾性率13.0×10N/mm、ポアソン比0.24、圧縮強度29.7N/mm、割裂強度3.75N/mmであり、エポキシ樹脂モルタル(ERM)は、弾性率0.50×10N/mm、ポアソン比0.38、圧縮強度17.1N/mm、割裂強度4.07N/mmである。
また、充填材としてゴムを適用してもよい。例えば、ゴムの弾性率は1×10~10×10N/mm2である。
なお、充填材の弾性率は、例えば、コンクリート101の1/100以上1/3以下であることが好適であり、1/50以上1/3以下であることがより好適である。
【0054】
第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物20、プレキャスト床版100によれば、法線方向に作用する応力が分散されて小さくなるので、プレキャスト床版構造物20の継手25に生じる疲労を抑制することができる。
【0055】
また、第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物20、プレキャスト床版100によれば、面取り部120が鉄筋102の端部よりも床版表面110S側に形成されているので、鉄筋102が面取り部120に露出することがなく、鉄筋102に錆が生じて強度劣化するのを抑制することができる。また、鉄筋102の外周面が削られて小さくなることがないので鉄筋102の強度が低下するのを抑制することができる。
その結果、プレキャスト床版100に大きな耐力を確保することができる。
【0056】
また、第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物20、プレキャスト床版100によれば、面取り部120が、床版端面110Tと床版表面110Sとを接続する直線部120Lを含んで形成されているので、面取り部120を容易かつ効率的に形成することができる。
【0057】
また、第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物20、プレキャスト床版100によれば、面取り部120の面取り角度が30°以上45°以下に設定されているので、充填材に作用する荷重が効率的に抑制されるとともに、プレキャスト床版100の面取り部120に対して充填材が充分に固着されて面取り部120から剥離するのを抑制することができる。
【0058】
また、第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物20、プレキャスト床版100によれば、面取り部120が、側面視床版端面110Tと曲線により接続され、継手25が面取り部120から床版端面110Tに緩やかに接続されるので、プリキャスト床版100の端部110から継手25に加わる力が分散される。
その結果、継手25が劣化するのが抑制されて疲労強度が向上する。
【0059】
また、第1実施形態に係るプレキャスト床版構造物20、プレキャスト床版100によれば、面取り部120を構成するR形状部120Rが側面視曲率半径20mm以上40mm以下に設定され、床版端面と接線で接続されるR形状を備えているので、床版端面と緩やかに接続される。
【0060】
<第1変形例(第1実施形態)>
以下、図5を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。
図5は、第1実施形態の第1変形例に係るプレキャスト床版構造物の要部詳細を説明する側面から見た概念図である。
図5において、符号30はプレキャスト床版構造物を、符号200はプレキャスト床版を、符号210はプレキャスト床版の端部を、符号220は面取り部を示している。
【0061】
プレキャスト床版構造物30は、図5に示すように、橋軸方向Xに沿って配列される複数のプレキャスト床版200と、隣接するプレキャスト床版200同士の間に配置される継手25と、を備えている。
【0062】
プレキャスト床版200は、例えば、平面視したときに、外形が略矩形とされ一定の厚さに設定された平板状に形成されている。
また、プレキャスト床版200は、橋軸方向Xにおける一端側Fと他端側Rに、それぞれ端部210が形成されている。
【0063】
プレキャスト床版200の端部210は、図5に示すように、床版表面110Sと、床版端面110Tと、面取り部220と、を備えた構成とされている。
【0064】
以下、図5において、端部210の下側に形成された面取り部を例にして、面取り部220の詳細について説明する。
面取り部220は、図5に示すように、例えば、プレキャスト床版200の端部210の上側と下側に形成されている。
端部210の上側と下側の形状については任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、端部210の上側と下側における面取り部220は、同じ形状に形成されている。
なお、図5に示す面取り角度θ1、θ2、面取り高さL11、L12及びコンクリートのかぶり厚さL01、L02の数値については任意に設定することが可能であり、これらを異なる数値に設定してもよい。
【0065】
面取り部220は、図5に示すように、例えば、直線部220Lを備えている。
また、面取り部120は、床版表面110Sと床版端面110Tとが交差する仮想的な角部P3が含まれる領域を除去することにより形成され、プレキャスト床版200の本体側に形成され、外方(例えば、側面から見て角部P3がある側)に向かって露出する面によって構成されている。
【0066】
直線部220Lは、図5に示すように、側面視したときに、床版表面110Sに位置される床版表面側面取り起点P1と床版端面110Tに位置される面取り高さ設定点P2とを接続する構成とされている。
【0067】
ここで、床版表面側面取り起点P1は、床版表面110Sの橋軸方向Xにおけるプレキャスト床版200の本体側(言い換えると、橋軸方向Xにおけるプレキャスト床版200の中央寄り)に位置されている。
【0068】
また、面取り高さ設定点P2は、プレキャスト床版200の床版端面110Tに配置され、床版表面110Sからの面取り高さL12に設定されている。
また、この実施形態では、例えば、面取り高さL12がコンクリートのかぶり厚さL02よりも小さな寸法(言い換えると、面取り高さ設定点P2が鉄筋102の外周面よりも床版表面110S側に位置される)設定とされている。
その結果、鉄筋102は、面取り部220から突出せずに、外形が削られることなく維持されるようになっている。
【0069】
また、直線部220Lと床版表面110Sとの面取り角度θ2は、床版表面側面取り起点P1及び面取り高さ設定点P2により一義的に設定される構成とされている。
なお、床版表面側面取り起点P1、面取り高さ設定点P2の位置は、面取り角度θ2やコンクリートのかぶり厚さL02等を考慮して任意に設定してもよい。
その他は、第1実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0070】
<第2変形例(第1実施形態)>
以下、図6を参照して、第1実施形態の第2変形例について説明する。
図6は、第1実施形態の第2変形例に係るプレキャスト床版構造物の要部詳細を説明する側面から見た概念図である。
図6において、符号40はプレキャスト床版構造物を、符号300はプレキャスト床版を、符号310はプレキャスト床版の端部を、符号320は面取り部を示している。
【0071】
プレキャスト床版構造物40は、図6に示すように、橋軸方向Xに沿って配列される複数のプレキャスト床版300と、隣接するプレキャスト床版300同士の間に配置される継手25と、を備えている。
【0072】
プレキャスト床版300は、例えば、平面視したときに、外形が略矩形とされ一定の厚さに設定された平板状に形成されている。
また、プレキャスト床版300は、橋軸方向Xにおける一端側Fと他端側Rに、それぞれ端部310が形成されている。
【0073】
プレキャスト床版300の端部310は、図6に示すように、床版表面110Sと、床版端面110Tと、面取り部320と、を備えた構成とされている。
【0074】
以下、図6において、端部210の下側に形成された面取り部を例にして、面取り部320の詳細について説明する。
面取り部320は、図6に示すように、例えば、プレキャスト床版300の端部310の上側と下側に形成されている。
端部310の上側と下側の形状については任意に設定することが可能であるが、この実施形態では、端部310の上側と下側における面取り部320は、同じ形状に形成されている。
なお、図6に示す面取り角度θ1、θ2、面取り高さL11、L12及びコンクリートのかぶり厚さL01、L02の数値については任意に設定することが可能であり、これらを異なる数値に設定してもよい。
【0075】
面取り部320は、図6に示すように、例えば、直線部320Lと、R形状部(曲線部)320Rとを備えている。
また、面取り部320は、床版表面110Sと床版端面110Tとが交差する仮想的な角部P3が含まれる領域を除去することにより形成され、プレキャスト床版300の本体側に形成され、外方(例えば、側面から見て角部P3がある側)に向かって露出する面によって構成されている。
【0076】
直線部320Lは、図6に示すように、側面視したときに、床版表面110Sに位置される床版表面側面取り起点P1と床版端面110Tに位置される面取り高さ設定点P2とを接続する構成とされている。
【0077】
ここで、床版表面側面取り起点P1は、床版表面110Sの橋軸方向Xにおけるプレキャスト床版300の本体側(言い換えると、橋軸方向Xにおけるプレキャスト床版300の中央寄り)に位置されている。
【0078】
また、面取り高さ設定点P2は、プレキャスト床版300の床版端面110Tに、床版表面110Sから面取り高さL12の位置に設定されている。
また、この実施形態では、例えば、R形状部(曲線部)320Rと床版端面110Tとの接点と床版表面110Sとの距離は、コンクリートのかぶり厚さL02と同じもしくは小さい寸法に設定されている。
【0079】
また、直線部320Lと床版表面110Sとの面取り角度θ2は、床版表面側面取り起点P1及び面取り高さ設定点P2により一義的に設定される構成とされている。
なお、床版表面側面取り起点P1、面取り高さ設定点P2の位置は、面取り角度θ2やコンクリートのかぶり厚さL02等を考慮して任意に設定してもよい。
【0080】
R形状部(曲線部)320Rは、側面視したときに、直線部320Lに接する接線と、床版端面110Tと接する接線と、を有する円弧(曲率半径R2)によって構成されている。
【0081】
鉄筋102の端部が面取り部320から突出しないように、鉄筋102の床版表面110S側の外周角部(鉄筋102の外周面の端部)102Aを除去して欠肉部を形成してもよい。
その他は、第1実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0082】
〔検証試験〕
次に、図7図9を参照して、プレキャスト床版構造物に係る面取り部の寸法と面取り部における応力の関係について説明する。
図7は、本発明の効果を説明するためのプレキャスト床版構造物の概略構成を示す図である。図7において、符号10はプレキャスト床版構造物を、符号100はプレキャスト床版を、符号101はコンクリート部を、符号102は鉄筋を、符号25は継手部を、符号420は面取り部を、符号420Lは直線部を、符号420RはR形状部(曲線部)を示している。
【0083】
検証試験は、2点単純支持の無限延長を模した床版(支間2.5m、版厚180mm)の面取り部、継手部の形状を変化させて、継手部の橋軸方向Xの中央に138kNを面載荷した場合の界面近傍、コンクリート側(図7に2点鎖線で示す箇所)の界面法線方向応力を比較して検証した。なお、符号Oは、床版100の厚さ方向Zにおける中央を示している。
【0084】
また、検証試験では、面取り部(継手部)は、面取り高さL2(床版表面から面取り高さ設定点P2までの寸法)、面取り部420の直線部420Lが床版表面と交差する面取り角度θ、床版端面及び直線部420Lとそれぞれ接する接線を備えた円弧からなるR形状部(曲線部)420Rの曲率半径Rをパラメータとした。
また、下側配力鉄筋が、一般的に床版表面からかぶり高さL1=40mmに鉄筋径φ13~19が配置されることを考慮して面取り高さL2、R形状部(曲線部)420Rの曲率半径Rを設定した。また、配力鉄筋が外周を除去することなくR形状部(曲線部)420Rと干渉せずに床版端面まで配置できるようにR形状部(曲線部)420Rの曲率半径Rを設定するとともに、面取り高さL2の最大値を30mmとした。
【0085】
〔検証試験1〕
以下、図8を参照して、プレキャスト床版構造物に係る面取り部の床版表面に対する面取り角度と面取り部における応力(界面法線方向応力)の関係について説明する。
図8は、プレキャスト床版構造物に係る面取り部420の床版表面110Sに対する面取り角度θと応力の関係を検証した検証試験1を説明するグラフである。
図8において、横軸は界面法線方向応力を、縦軸は床版の厚さ方向における中央Oからの寸法を示している。
【0086】
検証実験1では、面取り高さL2を20mmに設定し、面取り角度θ、R形状部(曲線部)420Rの曲率半径Rを変化させた。
検証実験1における界面法線方向応力は、図8に示すように、曲率半径Rを0mmとした場合、面取り高さ設定点P2近傍で発生するピーク応力は、面取り角度θが小さくなるにつれて大きくなる。
【0087】
また、図8(A)に示すように、面取り角度θが30°の場合は、R形状部420Rの曲率半径R40mmの場合に、界面法線方向のピーク応力の最小値は3.43MPaであった。
また、図8(B)に示すように、面取り角度θが45°の場合は、R形状部420Rの曲率半径R40mmの場合に、界面法線方向のピーク応力の最小値は3.69MPaであった。
また、図8(C)に示すように、面取り角度θが60°の場合は、R形状部420Rの曲率半径R40mmの場合に、界面法線方向のピーク応力の最小値は3.85MPaであった。
【0088】
以上のことから、曲率半径Rの効果は面取り角度θが小さくなるにつれて大きくなり、界面法線方向のピーク応力は、面取り角度θ=30deg、曲率半径R=40mmで最小値を示した。
したがって、面取り角度θを小さくして曲率半径Rを大きくすればピーク応力を最小化にできることが分かる。
【0089】
一方、継手部の充填性を考慮すると、面取り角度θは45degとすることが好適である。
また、下側配力鉄筋がR形状部420Rと干渉しないようにするためには曲率半径Rを40mm以下に設定することが好適である。
したがって、面取り高さL2=20mmの場合は、面取り角度45deg、曲率半径R40が最適であると言える。
【0090】
〔検証試験2〕
以下、図9を参照して、プレキャスト床版構造物に係る面取り部の面取り高さと面取り部における応力の関係について説明する。
図9は、プレキャスト床版構造物に係る面取り部420の面取り高さL2と応力の関係を検証した検証試験2を説明するグラフである。
図9において、横軸は界面法線方向応力を、縦軸は床版100の厚さ方向Zにおける中央Oからの寸法を示している。
【0091】
検証実験2では、面取り角度θを45°に設定し、面取り高さL2、R形状部420Rの曲率半径Rを変化させた。
検証実験2における界面法線方向応力は、図9に示すように、曲率半径を0mmとした場合は、面取り高さ設定点P2近傍で発生するピーク応力は、面取り高さL2が大きくなるにつれて小さくなる。
【0092】
また、図9(A)に示すように、面取り高さL2が20mmの場合は、R形状部420Rの曲率半径R40mmの場合に、界面法線方向のピーク応力の最小値は3.69MPaであった。
また、図9(B)に示すように、面取り高さL2が30mmの場合は、R形状部420Rの曲率半径R30mmの場合に、界面法線方向のピーク応力の最小値は3.44MPaであった。
【0093】
以上のように、面取り高さL2を30mmとした場合は、R形状部420Rの曲率半径はR30mmが最大があるが、面取り高さL2を20mm、曲率半径Rが40mmの場合より界面法線方向のピーク応力が小さくなっている。
したがって、版厚180mmの床版継手においては、面取り高さ30mm、曲率半径R30mmの場合に、界面法線方向応力のピークは最小となる。
【0094】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施形態においては、プレキャスト床版構造物が道路橋10に適用される場合について説明したが、プレキャスト床版構造物を適用する対象は任意に設定することが可能であり、例えば、橋梁、桟橋、港湾、港湾海岸、空港、物流倉庫の床面等に適用してもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、面取り部120、320が1つの直線部と、1つのR形状部とを組み合わせて構成され、面取り部120、320が1つの直線部により構成される場合について説明したが、面取り部の構成については任意に設定することが可能であり、二つ以上の複数の直線部と、二つ以上の複数のR形状部(曲線部)を組み合わせて構成してもよい。
【0096】
また、面取り部の各寸法については任意に設定してもよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、面取り部が床版表面110Sと直線部で接続される場合について説明したが、面取り部が床版表面110SとR形状部(曲線部)で接続される構成としてもよい。
【0098】
また、上記実施形態においては、面取り部が互いに対向する端部の上側と下側に形成される場合について説明したが、面取り部を形成する位置、数は、必要に応じて任意に設定してもよい。
【0099】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
【符号の説明】
【0100】
P1 床版表面側面取り起点
P2 面取り高さ設定点
P3 角部
10 道路橋
11 橋脚
15 橋桁
16 ウェブ
17 フランジ
20、30、40 プレキャスト床版構造
25 継手
100、200、300 プレキャスト床版
101 コンクリート部(コンクリート)
102 鉄筋
102A 外周角部(鉄筋)
110、210、310 端部
110S 床版表面
110T 床版端面
120、220、320、420 面取り部
120L、220L、320L、420L 直線部
120R、320R、420R R形状部(曲線部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9