(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】潤滑剤配合物中の再生可能なベースオイル
(51)【国際特許分類】
C10M 105/04 20060101AFI20231020BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20231020BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20231020BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20231020BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20231020BHJP
【FI】
C10M105/04
C10M101/02
C10N20:00 Z
C10N20:00 A
C10N20:02
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2019569787
(86)(22)【出願日】2018-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2018065976
(87)【国際公開番号】W WO2018234188
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-21
(32)【優先日】2017-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルマラ、カリ
(72)【発明者】
【氏名】カスタニエン、クリス
(72)【発明者】
【氏名】ニッスフォルク、フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】ケッツネン、ミカ
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/061050(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0217606(US,A1)
【文献】特表2009-518530(JP,A)
【文献】特表2009-518534(JP,A)
【文献】特表2010-529176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C10N 20/02,40/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも13wt%の再生可能なベースオイル、
同じまたは異なるAPI(アメリカ石油協会)カテゴリー内の一または複数のベースオイルから選択される残余物
を含むベースオイル混合物(ここでwt%で与えられるベースオイルの量は総計のベースオイル混合物に基づく)と、
b)一または複数の性能向上用添加剤と
を含む潤滑オイル組成物であって、
前記再生可能なベースオイルが、
80wt%~95wt%のあいだのC
31アルカン、
0.1wt%~10wt%のあいだのC
32以上のアルカン、
1wt%~20wt%のあいだのC
20~30アルカン、および、
0wt%~9wt%のあいだのシクロアルカン
を含み、
前記少なくとも一または複数の性能向上用添加剤が、抗酸化物、金属不活性化剤、腐食防止剤、界面活性剤、分散剤、耐摩耗添加剤、摩擦調節剤、流動点抑制剤、粘度改良剤、発泡防止剤、増粘剤、抗乳化剤、乳化剤、殺菌剤、殺真菌薬、および粘性剤からなるリストより選択され、
前記再生可能なベースオイルの炭化水素組成物の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものである潤滑オイル組成物。
【請求項2】
0W-20、0W-16、0W-12または0W-8のいずれかを含む、0W-XXのための仕様に合致する請求項1記載の潤滑オイル組成物。
【請求項3】
前記再生可能なベースオイルが、0.1wt%~1wt%のあいだのC
32以上のアルカンを含み、前記再生可能なベースオイルの炭化水素組成物の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものである請求項1または2記載の潤滑オイル組成物。
【請求項4】
前記再生可能なベースオイルが、
0.1wt%~10wt%のあいだのC
32以上のアルカン、
70wt%以上のイソ-アルカンを含むアルカン、
1wt%未満の酸素含有化合物、
電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものである炭化水素の重量パーセント、
を含む請求項1記載の潤滑オイル組成物。
【請求項5】
前記再生可能なベースオイルが、
1wt%~10wt%のあいだのC
20~30アルカン、
0.1wt%~10wt%のあいだのC
32以上のアルカン、
1wt%~8wt%のC
25~32シクロアルカン
1wt%未満の芳香族炭化水素、
2wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン、
電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものである炭化水素の重量パーセント、
を含む請求項1記載の潤滑オイル組成物。
【請求項6】
前記再生可能なベースオイルが、0.1wt%~10wt%のあいだのC
32~48アルカンを含む請求項5記載の潤滑オイル組成物。
【請求項7】
前記再生可能なベースオイルにおいて、
炭化水素の重量パーセントが、電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものであり、
ここで、
C
29およびC
30アルカンのwt%での総量がC
26およびC
27アルカンのwt%での総量より少ない、および/または
C
29およびC
31シクロルカンのwt%での総量が、C
25、C
26、C
27、C
28、C
30シクロアルカンのwt%での総量より多い
請求項1~6のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項8】
前記再生可能なベールオイルが、一または複数の以下の特性:
ASTM D 7500を用いて測定された場合の、350℃~650℃のあいだである沸点、
ASTM D 2270を用いて測定された場合の、140より大きい粘度指数(VI)、
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、
ASTM D 7346を用いて測定された場合の、-6℃未満の流動点
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1800cP未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-35℃)粘度指数、
EN ISO 3104を用いた5cSt未満である動的粘度(KV100)、
ASTM D445を用いて測定された場合の、16cStである100℃での動的粘度、
CECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、多くて11%のノアク揮発度、
を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項9】
前記再生可能なベースオイルが総計のベースオイル混合物に対して少なくとも35wt%の量で存在する請求項1~8のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項10】
前記再生可能なベースオイルが総計のベースオイル混合物に対して少なくとも50wt%の量で存在する請求項1~9のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項11】
前記ベースオイル混合物の総計に対して10~50wt%のグループIIおよび/またはグループIIIベースオイルを含む請求項1~10のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項12】
前記ベースオイル混合物が、10wt%を超えるポリアルファオレフィンベースオイルを含まない請求項1~11のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項13】
前記ベースオイル混合物が、10wt%より多いフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まない請求項1~12のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項14】
前記再生可能なベースオイルの含有量が、総計のベースオイル混合物に対して15~95wt%のあいだである請求項1~13のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項15】
前記再生可能なベースオイルが、9wt%未満のシクロアルカンを含む請求項1~14のいずれか1項に記載の潤滑オイル組成物。
【請求項16】
前記再生可能なベースオイルが、4.5wt%未満のシクロアルカンを含む請求項15記載の潤滑オイル組成物。
【請求項17】
80wt%~95wt%のあいだであるC
31アルカン、
0.1wt%~10wt%のあいだのC
32以上のアルカン、
1wt%~20wt%のあいだのC
20~30アルカン、
70wt%以上のイソ-アルカンを含むアルカン、
9wt%未
満のシクロアルカン、
ここで、炭化水素の重量パーセントは電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものである
を含むベースオイル組成物。
【請求項18】
C
29およびC
30アルカンの総量のwt%は、C
26およびC
27アルカンの総量のwt%より小さい、および/または
C
29およびC
31シクロアルカンの総量のwt%は、C
25、C
26、C
27、C
28、C
30シクロアルカンの総量のwt%よりも大きい、
ここで、炭化水素の重量パーセントは電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものである、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
0.5wt%未満の芳香族炭化水素、
0.5wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン、
1wt%未満の酸素含有化合物、
ASTM D 3120を用いて測定された場合の、300ppm未満の硫黄含有量、
ASTM D 4629を用いて測定された場合の、100ppm未満の窒素含有量
を含み、
ここで、炭化水素の重量パーセントは電解イオン化質量分析(FI-MS)によるものである
請求項17または18記載の組成物。
【請求項20】
以下の特性:
ASTM D7500を用いて測定された場合の、350℃~650℃のあいだ、例えば380℃~650℃のあいだ、例えば420℃~650℃のあいだである沸点、
ASTM D2270を用いて測定された場合の、140より大きい粘度指数(VI)、
ASTM D5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、
ASTM D7346を用いて測定された場合の、-10℃未満の流動点
ASTM D5293を用いて測定された場合の、1800cP未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-35℃)粘度、
ASTM D5293を用いて測定された場合の、1300mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
EN ISO 3104を用いた5mm
2/s未満である動的粘度(KV100)
ASTM D7346を用いて測定された場合の、-5℃未満である前記C
31ベースオイルの流動点、
ASTM D7346を用いて測定された場合の、-10℃未満である前記C
31ベースオイルの流動点、
のうちの一または複数を含む請求項17~19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも95wt%の炭化水素を含む請求項19または20記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも99wt%の炭化水素を含む請求項19~21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
少なくとも90wt%のアルカンを含む請求項17~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも11wt%の、請求項17~23のいずれか1項で規定される再生可能なベースオイル組成物、
同じまたは異なるAPI(アメリカ石油協会)カテゴリー内の一または複数のベースオイルから選択される残余物、
を含むベースオイル混合物であって、
wt%で与えられる量は総計のベースオイル混合物に基づき、
前記組成物がASTM D445を用いて測定された場合の、16cStである100℃での動的粘度を有し、
前記組成物がCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、多くて11%のノアク揮発度をもつ
ベースオイル混合物。
【請求項25】
請求項17~23のいずれか1項で規定される再生可能なベースオイル組成物が、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも35wt%の量で存在する請求項24記載のベースオイル混合物。
【請求項26】
請求項17~23のいずれか1項で規定される再生可能なベースオイル組成物が、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも50wt%の量で存在する請求項25記載のベースオイル混合物。
【請求項27】
総計のベースオイル混合物に対して10~50wt%のグループIIおよび/またはグループIIIベースオイルを含む請求項24~26のいずれか1項に記載のベースオイル混合物。
【請求項28】
10wt%を超えるポリアルファオレフィンベースオイルを含まない請求項24~27のいずれか1項に記載のベースオイル混合物。
【請求項29】
10wt%より多いフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まない請求項24~28のいずれか1項に記載のベースオイル混合物。
【請求項30】
請求項17~23のいずれか1項で規定される再生可能なベースオイルの含有量が、総計のベースオイル混合物に対して15~95wt%のあいだである請求項24~29のいずれか1項に記載のベースオイル混合物。
【請求項31】
潤滑オイル組成物のノアク揮発度および/または100℃での動的粘度を低下させるための再生可能なベースオイルの使用であって、前記潤滑オイル組成物が、
再生可能なベースオイルを含むベースオイル混合物と、
一または複数の性能向上用添加剤
を含み、
前記再生可能なベースオイルは、請求項17~23のいずれか1項で規定され、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも11wt%の量であり、前記組成物が、ASTM D445を用いて測定された場合の、9.3mm
2/s以下である100℃での動的粘度を有し、前記組成物が、CECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、多くて11%のノアク揮発度をもち、前記少なくとも一または複数の性能向上用添加剤が、抗酸化物、金属不活性化剤、腐食防止剤、界面活性剤、分散剤、耐摩耗添加剤、摩擦調節剤、流動点抑制剤、粘度改良剤、発泡防止剤、増粘剤、抗乳化剤、乳化剤、殺菌剤、殺真菌薬、および粘性剤からなるリストより選択される使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑オイルの分野に関し、特には、顕著に優れた潤滑特性を示す新規な再生可能なベースオイル(RBO)を含む潤滑オイル組成物、並びに、新規な再生可能なベースオイル組成物(RBO)組成物を含むベースオイル混合物および新規なC31の再生可能なベースオイル組成物に関する。C31の再生可能なベースオイル組成物、RBOを含むベースオイル混合物、およびそのようなベースオイル混合物を含む潤滑オイル組成物は、潤滑組成物、特には乗用車用モーターオイルなどの内燃機関のための潤滑組成物のノアク揮発度および/または動的粘度を低下させるために有益である。
【背景技術】
【0002】
流体潤滑は、近接し、かつ互いに対して移動する表面間の摩擦を低減するために重要である。潤滑なしに、または不十分な潤滑では、そのような摩擦が増大された熱および摩滅をもたらすであろう。
【0003】
ベースオイルは、潤滑油、モーターオイル、および金属処理流体などの製品を製造するために使用される。ベースオイルにおけるいくつかの重要な要件は、潤滑性に重要である様々な温度における粘度であり、オイルの蒸発を減少させるのに重要でありしたがって、例えば乗用車などのオイル交換サービスの間隔を伸ばすことのできるノアク揮発度である。とりわけ、コールドクランキングシミュレータ粘度に対する乗用車における潤滑油の性能が重要である。コールドクランキングシミュレータは、特別な条件「コールドクランキング」-すなわち冷えたエンジンを始動させる-における、潤滑油の低温性能を測定する方法としてデザインされた。
【0004】
乗用車用モーターオイルが車のオイル交換サービス間隔を長くするために低いノアク揮発度、および、低いコールドクランキングシミュレータ粘度(例えば-30℃で測定される、しばしばCCS-30℃と省略される)を有していることが望ましい。しかしながら、これらの2つの特性のあいだには、典型的には、トレードオフがあり、すなわち、低いノアク揮発度は典型的には高いCCS-30℃粘度をもたらし、そして、反対に、低いCCS-30℃粘度は典型的には高いノアク揮発度をもたらす。
【0005】
別の特性、高温高せん断(HTHS)粘度も重要な特性であり、これは、燃料の経済性および走行エンジンの耐久性に関連する。高温高せん断(HTHS)および100℃における動的粘度(KV100)は、低粘度SAEグレードのオイルの重要な特性のうちの2つである。
【0006】
低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の組み合わせおよび/またはベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする許容できるHTHSおよびKV100をもつベースオイルはほんのわずかしか存在しない。
【0007】
1-デセンのポリ-アルファオレフィンオリゴマーは、SAEグレードの0w-XX潤滑油の配合のために必要である、低い粘度および低いノアク揮発度を有するように製造され得る。しかしながら、PAOベースオイルは、他のベースオイルと比較して、効果であり、および、1-デセンである原材料の入手可能性に依存しており、この入手可能性は現在限られている。
【0008】
特許文献1(Neste Oyjが特許権者)は、好ましくは生物起源である、不飽和のカルボン酸を含むC1~C38のカルボン酸を含む種々のフィードストックから炭化水素ベースオイルを製造するための方法に関し、そしてその実施例は、ガス相でのケトン化、水素化脱酸素化および異性化工程を含んでいる。特許文献1で製造されたベースオイルは、分岐の炭化水素に加えて、好ましくは5~20wt%のモノ-ナフタレンおよび1wt%未満の多環のナフテンを含み、および、ある実施例におけるノアク揮発度はPAOベースオイルに比べて低いものの、CCS-30℃粘度はより高く、これは、2つの特性間のトレードオフによるものかもしれない。HTHSは開示されておらず、そして、何らの具体的なSAEグレードのエンジンオイルも開示されていない。
【0009】
したがって、現存の低粘度に見受けられるノアク揮発度とCCS-30℃粘度と間のトレードオフによる影響をより受けない潤滑組成物、とりわけエンジンオイルに対する要求がある。したがって、ベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする、またはそのための自由度を与えるベースオイルに対する要求がある。
【0010】
したがって、さらなる低粘度ベースオイル生成物、特に限られたオレフィンの入手可能性や将来の化石資源の枯渇に拘束されることのない生成物に対する要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2013/113976号
【文献】国際公開第2007/068795号
【文献】国際公開第2013/113977号
【発明の概要】
【0012】
本発明は、上述の従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、低粘度ベースオイル、とりわけ低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方を有するベースオイルを提供すること、および/または、ベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする許容され得るHTHSおよびKV100の組み合わせを同時に有する低粘度ベースオイルを提供することである。
【0013】
課題を解決するために、本発明は、a)少なくとも13wt%の再生可能なベースオイル、および、同じまたは異なるAPI(アメリカ石油協会)カテゴリー内の一または複数のベースオイルから選択される残余物を含むベースオイル混合物(ここでベースオイルの量は総計のベースオイル混合物を基にしてwt%で与えられる)、b)一または複数の性能向上用添加剤を含む、潤滑オイル組成物、例えば内燃機関のための潤滑オイル組成物であって、ここで、再生可能なベースオイルは、60wt%より多いC31アルカン、好ましくは80wt%より多いC31アルカンを含む(ここで再生可能なベースオイルの量は再生可能なベースオイルを基にしてwt%で与えられる)潤滑オイル組成物を提供する。
【0014】
再生可能なベースオイルの炭化水素組成物の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。
【0015】
すなわち、本発明の発明者らは、本発明の第1の形態において、パーム油および他の再生可能なフィードストック中に存在するC
16脂肪酸から得られ得るC
31の再生可能なベースオイ
ルを含むことが、低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方に関連する(
図5)、および、ベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする許容され得るHTHSおよびKV100の組み合わせを有する(
図6)優れた特性をもつことを発見した。
【0016】
追加で、本発明の再生可能なベースオイルのための脂肪酸フィードストックの再生可能な特性は、限られたアルファオレフィン入手可能性によって、または将来可能性のある化石資源の枯渇によって束縛され得るベースオイルと比較して、ベースオイルブレンダー業者へのより安定した原料供給を提供する。
【0017】
潤滑オイル組成物の少なくとも一または複数の性能向上用添加剤は、抗酸化物、金属不活性化剤、腐食防止剤、界面活性剤、分散剤、耐摩耗添加剤、摩擦調節剤、流動点抑制剤、粘度改良剤、発泡防止剤、増粘剤、抗乳化剤、乳化剤、殺菌剤、殺真菌薬、および粘性剤からなるリストより選択され得る。
【0018】
潤滑オイル組成物は、例えば0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの0W-XXのための仕様に合致するように配合される。C31の再生可能なベースオイルは、0W-12の仕様、または0W-8の仕様にでさえ合致する非常に低い粘度グレードの配合物を可能にする。
【0019】
潤滑組成物の再生可能なベースオイルは、さらに、以下の特性:
20wt%未満のC32以上のアルカン、好ましくは、10wt%未満のC32以上のアルカン、
70wt%以上のイソ-アルカンを含むアルカン、
1wt%未満の酸素含有化合物、
1wt%~20wt%のあいだのC20~30アルカン、
0.1wt%~20wt%のあいだのC32以上のアルカン、好ましくは、10wt%未満のC32以上のアルカン、例えばC32~48のアルカンなど、
1wt%~8wt%のC25~32
シクロアルカン
1wt%未満の芳香族炭化水素、
2wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン、
C29およびC30アルカンのwt%での総量がC26およびC27アルカンのwt%での総量より少ない、
C29およびC31シクロルカンのwt%での総量が、C25、C26、C27、C28、C30シクロアルカンのwt%での総量より多い
のうちの一または複数を含むように規定され得る。
【0020】
炭化水素の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。
【0021】
潤滑組成物の再生可能なベースオイルは、さらに、以下の特性:
20wt%未満のC32以上のアルカン、好ましくは、10wt%未満のC32以上のアルカン
70wt%以上のイソ-アルカンを含むアルカン、
1wt%未満の酸素含有化合物、
のうちの一または複数を含むように規定され得る。
【0022】
炭化水素の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。
【0023】
潤滑組成物の再生可能なベースオイルは、さらに、以下の特性:
1wt%~20wt%のあいだのC20~30アルカン、
0.1wt%~20wt%のあいだのC32以上のアルカン、好ましくは、10wt%未満のC32以上のアルカン、例えばC32~48のアルカンなど、
1wt%~8wt%のC25~32
シクロアルカン
1wt%未満の芳香族炭化水素、
2wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン、
のうちの一または複数を含むように規定され得る。
【0024】
炭化水素の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。
【0025】
潤滑組成物の再生可能なベースオイルは、さらに、以下の特性:
C29およびC30アルカンのwt%での総量がC26およびC27アルカンのwt%での総量より少ない、
C29およびC31シクロルカンのwt%での総量が、C25、C26、C27、C28、C30シクロアルカンのwt%での総量より多い
のうちの一または複数を含むように規定され得る。
【0026】
炭化水素の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。
【0027】
潤滑オイル組成物は、さらに、以下の特性:
EN 15199-2を使用したシミュレーション蒸留 AC750を用いて測定された場合の、350℃~650℃のあいだ、例えば380℃~650℃のあいだ、例えば420℃~650℃のあいだである沸点、
ASTM D 2270を用いて測定された場合の、140より大きい粘度指数(VI)、
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、
ASTM D 7346を用いて測定された場合の、-6℃未満の流動点
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1800cP未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-35℃)粘度、
EN ISO 3104を用いた5 cSt未満である動的粘度(KV100)
のうちの一または複数をもつことによって機能的に特徴づけられ得る。
【0028】
潤滑オイル組成物は、さらに、少なくとも以下の特性:
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、および
EN ISO 3104を用いた5 cSt未満である動的粘度(KV100)
を有する再生可能なベースオイルによって機能的に特徴づけられ得る。
【0029】
潤滑オイル組成物は、ベースオイルがASTM D445を用いて測定された場合の、16 cStである100℃での動的粘度を有すること、および、組成物がCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、多くて11%のノアク揮発度をもつことに特徴づけられ得る。
【0030】
潤滑オイル組成物は、再生可能なベースオイルが総計のベースオイル混合物に対して少なくとも35wt%、例えば少なくとも50wt%、例えば少なくとも60wt%の量で存在することに特徴づけられ得る。
【0031】
潤滑オイル組成物のベースオイル混合物は、少なくとも13wt%の再生可能なベースオイルに加えて、同じまたは異なるAPIカテゴリー内の2またはそれ以上のベースオイルを含み得る。
【0032】
潤滑オイル組成物は、ベースオイル混合物の総計に対して10~50wt%のグループIIおよび/またはグループIIIベースオイルを含み得る。
【0033】
潤滑オイル組成物は、ベースオイル混合物が10wt%を超えるポリアルファオレフィンベースオイルを含まないということに特徴づけられ得る。例えば、潤滑オイル組成物は、ベースオイル混合物が本質的にポリアルファオレフィンベースオイルを含まない、好ましくはベースオイル混合物がポリアルファオレフィンベースオイルを含まない、ことに特徴づけられ得る。
【0034】
潤滑オイル組成物は、ベースオイル混合物が、10wt%以下のフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルしか含まないということに特徴づけられ得る。例えば、潤滑オイル組成物は、ベースオイル混合物が本質的にフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まない、好ましくはベースオイル混合物がフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まない、ことに特徴づけられ得る。
【0035】
潤滑オイル組成物は、総計のベースオイル混合物に対して、15~100wt%のあいだ、例えば15~95wt%のあいだ、例えば20~90wt%のあいだである再生可能なベースオイル含有量を有し得る。
【0036】
本発明は、本発明の潤滑オイル組成物の一部を形成する60wt%より多くのC31アルカンを有する、および、低粘度ベースオイルを得るために本発明のベースオイル混合物の一部を形成する、特には、低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方を有する、および/または、ベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする許容され得るHTHSおよびKV100の組み合わせを同時にもつ低粘度ベースオイルを提供するための、新規のC31ベースオイルに基づく。
【0037】
以下の炭化水素の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。
【0038】
ベースオイル組成物は好ましくは再生可能な起源のものであり、および、
60wt%より多いC31アルカン、
20wt%未満のC32以上のアルカン、好ましくは10wt%未満のC32以上のアルカン、
70wt%以上のイソ-アルカンを含むアルカン、
9wt%未満、好ましくは4.5wt%未満のシクロアルカン、例えば、8wt%未満のC25~32シクロアルカン
そ含んでいてもよい。
【0039】
ベースオイル組成物はさらに、
1wt%~10wt%のあいだのC20~C30アルカン、
を含み得ることで特徴づけられ得る。
【0040】
ベースオイル組成物はさらに、
C29およびC30アルカンの総量のwt%は、C26およびC27アルカンの総量のwt%より小さい、および/または
C29およびC30シクロアルカンの総量のwt%は、C25、C26、C27、C28、C30シクロアルカンの総量のwt%よりも大きい、
ということで特徴付けられ得る。
【0041】
特には、ベースオイル組成物は、ごく少量のみまたは少量の不純物を含む主にパラフィン系である。したがって、再生可能なベースオイル組成物は、さらに、
0.5wt%未満の芳香族炭化水素、
0.5wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン
1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満の酸素含有化合物、
ASTM D 3120を用いて測定された場合の、300ppm未満の硫黄含有量、
ASTM D 4629を用いて測定された場合の、100ppm未満の窒素含有量
を有することで特徴づけられ得る。
【0042】
ベースオイル組成物は、さらに、一またはそれ以上の、以下の特性を有することによって特徴づけられ得る。
ASTM D 7500を用いて測定された場合の、350℃~650℃のあいだである、例えばIBPとFBPの間の範囲としてまたは5%と95%の蒸留点の間の範囲としてのいずれかで測定された380℃~650℃、400~620℃、420℃~600℃のあいだである沸点、
ASTM D 2270を用いて測定された場合の、140より大きい粘度指数(VI)、
ASTM D5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、
ASTM D 7346を用いて測定された場合の、-10℃未満の流動点
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1800mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-35℃)粘度、
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1300mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)。
【0043】
例えば、ベースオイル組成物は、少なくとも以下の2つの特性を有することによって特徴づけられ得る。
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、および
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)。
【0044】
本発明のC31のベースオイル組成物は、他のベースオイルを含むベースオイルの一部であってもよい。ベースオイル混合物、例えば、少なくとも13wt%の上記で規定されるようなC31ベースオイル、および、同じまたは異なるAPI(アメリカ石油協会)カテゴリー内の一または複数のベースオイルから選択される残余物を含む内燃機関のためのベースオイル混合物(ここでベースオイルの量は総計のベースオイル混合物を基にしてwt%で与えられる)など。
【0045】
ベースオイル混合物のC31ベースオイル量は、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも35wt%の量で、例えば総計のベースオイル混合物に対して少なくとも50wt%の量で存在し得る。
【0046】
ベースオイル混合物は少なくとも13wt%の再生可能なベースオイルに加えて、同じまたは異なるAPIカテゴリー内の2またはそれ以上のベースオイルを含んでいてもよい。
【0047】
ベースオイル混合物は、ベースオイル混合物の総計に対して10~50wt%のグループIIおよび/またはグループIIIベースオイルを含み得る。
【0048】
ベースオイル混合物は、10wt%より多くのポリアルファオレフィンベースオイルを含まないかもしれない。例えば、ベースオイル混合物は、本質的にポリアルファオレフィンベースオイルを含まない、好ましくはベースオイル混合物はポリアルファオレフィンベースオイルを含まない。
【0049】
ベースオイル混合物は、10wt%以下のフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルしか含まないかもしれない。例えば、ベースオイル混合物は、本質的にフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まない、好ましくはベースオイル混合物はフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まない。
【0050】
ベースオイル混合物は、総計のベースオイル混合物に対して、15~100wt%のあいだ、例えば15~95wt%のあいだ、例えば20~90wt%のあいだである、
【0051】
本発明のC31ベースオイルは、潤滑オイル組成物のノアク揮発度および/または低100℃における動的粘度を低下させるために使用され得、ここで、潤滑オイル組成物は、C31ベースオイルを含むベースオイル混合物、一または複数の性能向上用添加剤を含み、C31ベースオイルは、上記で記載されるように、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも13wt%の量である。具体的な使用において、結果として得られる潤滑組成物は、ASTM D445を用いて測定された場合の、9.3mm2/s以下である100℃での動的粘度を有し、組成物は、CECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、多くて13%のノアク揮発度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、60wt%より多いC
31アルカンを有するC
31ベースオイルのサンプルの電解イオン化質量分析(FI-MS)分析を示す図である。C
31ベースオイル(図中、「異性化されたC31生成物」で示されている)は、飽和のC
31イソ-パラフィン材料を
図1のC
31ベースオイルとして得るための、続いての水素化脱酸素化(「水素化脱酸素化C31生成物」)および水素化異性化反応(「異性化されたC31生成物」)から得られるパルミチン酸の液相触媒ケトン化によって得られた。
【
図2】
図2は、本発明のC
31ベースオイル(表1のサンプル1)のFI-MS分析を示す図であり、ここで、パラフィンおよびモノ-ナフテンのwt%は、4~72である炭素数の関数として示されている。図より、C
31ベースオイルは60wt%はより多い、例えば80wt%より多いC
31アルカン(パラフィン)を有しており、および、モノ-ナフテンの量は少ない。
【
図3】
図3は、本発明のC
31ベースオイル(表1の全てのサンプルA~K)のパラフィン含有量のFI-MS分析を示す図であり、ここで、パラフィンのwt%は、20~33である炭素数の関数として示されている。
図3Aより、C
31ベースオイルの全てのサンプルは、80wt%より多くのC
31アルカン(パラフィン)を含んでいることがわかる。
図3Bは、
図3Aの拡大図であり、ここで、y軸は、0~5wt%で表されている。
図3Bより、1wt%~20wt%のあいだのC
20~30アルカンが存在していることがわかる。加えて、wt%でのC
29およびC
30のアルカンの総量は、wt%でのC
26およびC
27のアルカンの総量より少ないことがわかる。
【
図4】
図4は、本発明のC
31ベースオイル(表1の全てのサンプルA~K)のものナフテン含有量のFI-MS分析を示す図であり、ここで、パラフィンのwt%は、20~33である炭素数の関数として示されている。
図4より、モノナフテンの量は少ないことがわかる。さらに、実施例に記載されているように、モノナフテン以外の他のナフテンは見られなかった。加えて、wt%でのC
29およびC
31のシクロアルカンのそれぞれ(およびC
29およびC
30のモノナフテンの総量)は、C
25、C
26、C
27、C
28、C
30のシクロアルカンを合わせた合計量より多いことがわかる。
【
図5】
図5は、Neste Oyjからの典型的なAPIグループIIIオイル(「NEXBASE group III」、本発明のC
31再生可能なベースオイル(RBO)(「NEXBASE RBO」)、典型的なフィッシャー・トロプシュ法によるベースオイル(ガス-液ベースオイル(「GTL」)、および水素化分解装置の底油の水素-異性化からの典型的なAPIグループIII+タイプのパラフィン系ベースオイル(「Yubase+」)を含む、多数の低粘度ベースオイルの-30℃におけるコールドクランキングシミュレータ粘度(CCS-30℃)の関数としてのノアク揮発度に対する混合性能を示す図である。低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方が、低粘度ベースオイルにおいて望ましい。しかしながら、
図5中のダイアグラムが示すように、これらの2つの特性のあいだには、典型的には、トレードオフがあり、すなわち、低いノアク揮発度は典型的には高いCCS-30℃粘度をもたらし、そして、反対に、低いCCS-30℃粘度は典型的には高いノアク揮発度をもたらす。本発明のC
31RBOを他の典型的な低粘度ベースオイルと比較すると、同じノアク揮発度において、本発明のC
31RBOと比較して他のベースオイルははるかに高いCCS-30℃粘度をもっており、そして、同じCCS-30℃粘度では、本発明のC
31RBOは他のベースオイルと比較してはるかに低いノアク揮発度を有していることがわかる。
図5から、本発明のC
31RBOが、他の低粘度ベースオイルと比較してはるかにより低いノアク揮発度の範囲(5~9wt%のあいだ)およびCCS-30℃粘度(900~1200mPas)を有していることが明らかにわかり、したがってより明確に規定された生成物であると考えられ得る。
【
図6】
図6は、低粘度SAEグレードオイルの重要な特性の2つである高温高せん断(HTHS)および100℃における動的粘度(KV100)をもつSAE(SAE J300_201501)0W-30、0W-20、0W-16、0W-12、0W-8グレードのための配合スペースを示す図である。これらの2つの特性が、C
31RBOを使用して種々のSAE J300グレードを得ることが可能であるということを示すために
図6にプロットされた。
図6のダイアグラム中の種々の水平方向のライン(一点鎖線/点線)は、SAEグレード30、20、16、12および8である最小のHTHSを示している。描かれているボックスは、SAE J300_201501で特定されているSAEグレード0W-30、0W-20、0W-16、0W-12、0W-8グレードのためのHTHSおよびKV100に関する配合スペースを示している。J300は、同じSAE20、SAE16、SAE12、SAE8のための100℃での動的粘度がこれらのグレードのための適切な配合スペースを提供するように重なっていることを特定している。
図6は表6のデータをプロットしており、そして、C
31RBOが、SAE 0W-20~SAE 0W-8までも全てのSAEグレードに合うようにブレンドされ得ることを示している。
図6は、0W-8 SAEグレードのベースオイル混合物を得るために、添加剤パッケージを含む、および、任意の追加の粘度指数向上剤を含むおよび含まないの両方のC
31RBOとNEXBASE(登録商標) 3035ベースオイルとからブレンドされたベースオイル混合物を示している。記載されているSAEグレードは、C
31RBOとNEXBASE(登録商標) 3035ベースオイルとのブレンドで得ることができ、ここで、NEXBASE(登録商標) 3035ベースオイルは、34wt%と39wt%のあいだの添加物のないベースオイル混合物である。
図6Bは、0W-8および0W-12の拡大図であり。これはまたノアク揮発度を含んでいる。
図6Bから明らかなように、本発明のC
31RBOは、0W-8 SAEグレードを達成することができる一方、Yubase4+の例では達成されず、そして0W-12 SAEグレードに関して、C
31RBOは非常に類似のHTHSおよびKV100を与えた。しかしながら、C
31RBOは顕著に良好なノアク揮発度を有しており、これは、より少ない蒸発損失に起因してオイル交換のあいだの時間をより長いものとする。加えて、表5に示されているように、0W-12グレードのC
31RBOのCCS-35℃粘度はまた、Yubase4+0W-12グレードのものよりはるかに良好であった(3066mPas対4130mPas)。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の実施形態を記載するにあたり、特定の用語が明確性を目的として使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の用語に限定される意図はなく、そして、それぞれの特定の用語は、類似の目的を達成するための類似の方法で操作される全ての技術的に透過であるものを含むと理解されるべきである。本発明の利益が例えば、説明を簡便化するためにエンジンオイルを参照して記載されていたとしても、本発明の利益はエンジンオイルに限定されるものではない。シクロアルカンおよびナフテンが参照されている。2つの用語は、アルカンおよびパラフィンが参照されている場合と同じ様式で、同じ化合物を意味することが意図されている。
【0054】
乗用車のエンジンのためのベースオイルは、例えば75~90%のベースオイルおよび10~25%性能向上用添加剤パッケージなどからなっていてもよい。ベースオイルは、典型的には乗用車塩銀における最大の成分であるため、流体の性能において劇的な効果をもたらす。ベースオイルは、例えば、粘度、酸化安定性、揮発性および粘度指数などの低温流動性などの多くのパラメータに影響する。
【0055】
性能向上用添加剤パッケージは、例えば抗酸化物、金属不活性化剤、腐食防止剤、界面活性剤、分散剤、耐摩耗添加剤、摩擦調節剤、流動点抑制剤、粘度改良剤、発泡防止剤、増粘剤、抗乳化剤、乳化剤、殺菌剤、殺真菌薬、および粘性剤などの、種々の添加剤を含んでいてよい。
【0056】
アメリカ石油協会(API)はベースオイルを5つのメイングループに分類している。グル-プI~IIIは、様々な品質をもつ石油系ベースオイルである。
【0057】
APIは、グループIIおよびIIIのあいだの差異を粘度指数(VI)に関してでしか定義しておらず、そして、グループIIIベースオイルはまた、非常に高い粘度のベースオイル(VHVI)と呼ばれている。しかしながら、低温流動特性およびノアク揮発度もまたベースオイルの重要な特性である。
【0058】
オイル揮発度は、通常、ノアク揮発度試験(例えば、ASTM D5800またはCECL-40-93-B)を用いて測定される。ノアク試験に先立って、潤滑油の引火点が、オイルの揮発度を見積もるために使用された。ノアク試験においては、オイルサンプルは秤量され、そしえ、一時間250℃まで加熱される(250℃は上限のエンジン温度をシミュレートすることを意図している)。乾燥空気がサンプル上を通され、沸騰したオイル蒸気を運び、そしてビーカー内に堆積される。元のサンプルが除去されそして、再秤量される。重量における全ての減少が元の重量の損失割合として評価される。ASTM D5800を用いて測定される%重量損失(g/100g)であるノアク揮発度限界は、基準に合致していなければならない。API SN性能分類は例えば、美髪による重量損失が、モーターオイルの全て粘度グレードにおいて15%より大きくないことを要件としている。より低いノアク指数がより良好であり、これは、オイルレベルを減少させるであろう、高温に暴露された場合により容易に蒸発するオイル中の軽い分子量の分子の蒸発を測定しているものであるためである。2016年の最も一般的な乗用車用エンジンオイルは、典型的には、13%より小さいノアク揮発度指数を有しており、一方、合成の乗用車用エンジンオイルは約9~11wt%であり得る。完全に合成の高加重油は8~9%に低下したノアク揮発度指数を有し得る。
【0059】
ベースオイルにおいて、典型的には、沸点範囲が高くなると、粘度がより高くなり、そして、オイルの揮発がより低くなることが観察される。反対に、より低い粘度がより高いオイル揮発性と結びついているということもまた典型的に観察される。
【0060】
オイル揮発性がより高くなると、より多くのエンジンオイルが蒸発し、そしてそれにより、オイルはより重質となる。より重質な、より粘性の高いオイルは、良好に循環せず、これは、燃料の経済性、オイル消費および排出に影響を与える。
【0061】
粘度の一つの基準は、低温クランキング粘度でおり、これは、低温、例えば-30℃などで、コールドクランキングシミュレータ粘度計(CCS粘度)によって測定され、その値が、センチポイズ(cP)(これはミリパスカル秒(mPa・s)と同じである)で与えられる。これは、エンジンの起動機の作動をシミュレートする試験である。試験は、例えば冬季にエンジンを始動させるなどの場合の、低温における適切なクランキングスピードを作り出す際のバッテリおよび起動機が経験する抵抗と関係するために重要である。
【0062】
潤滑オイルの粘度グレードは、アメリカ自動車技術者協会(SAE)によって決定されている。オイルは、汎用潤滑オイルおよびモノグレードオイルに分離され得る。汎用潤滑オイルは、2つの粘度特性を満たしていなければならず、それらの粘度グレードは例えば10W-40など2つの数字から構成されており、ここで、10Wは低温粘度(「冬」)を参照しており、そして、40は高温粘度(「夏」)を参照している。
【0063】
クランキング粘度に関連するSAE低温粘度要件は、0W SAE粘度グレードについて、最大の許容クランキング粘度が、-35℃で6200cPであることを特定している(より低い値がより良い)。
【0064】
高温高せん断(HTHS)および100℃における動的粘度(KV100)は、低粘度SAEグレードのオイルの高温粘度(「夏」)SAEグレードの重要な特性のうちの2つである。SAE20、16、12および8の最小HTHSは、それぞれ、2.6、2.3、2.0および1.7mPasである(SAE J300_201501)。J300は、同じSAE20、SAE16、SAE12、SAE8のための100℃での動的粘度(KV100)がこれらのグレードのための適切な配合スペースを提供するように重なっていることを特定している。
【0065】
本発明の目的の一つは、特には低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方を有する低粘度のベースオイルを提供すること、および/または、ベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする許容され得るHTHSおよびKV100の組み合わせを同時にもつ低粘度ベースオイルを提供することである。
【0066】
潤滑オイルまたはグリースの最も重要な成分は、そのベースオイルである。ベースオイルの特性は、添加剤によって補充されてもよい。しかしながら、潤滑オイルの「基本の(base)」特性を決定するのはベースオイルである。これらの特性は、添加剤の添加によってある程度まで改変され得る。
【0067】
たいていの潤滑ベースオイルはパラフィン(直鎖または分岐鎖の炭化水素)、ナフテン(シクロパラフィン)、および芳香族化合物(アルキルベンゼンおよび融合環芳香族)の混合物である。典型的には、ベースオイルは、一分子あたり25~50の炭素原子を含む。ベースストックは、その主成分によって特徴づけられ得る。したがって、もしもパラフィンが主である場合、ベースストックは、パラフィン系ベースオイルと称され、もしナフテンが主である場合、それはナフテン系ベースオイルであり、ポリ-アルファ-オレフィン(PAO)が主である場合、それはPAOベースオイルである。ベースストックが再生可能な供給源由来であれば、それは再生可能なベースオイル(RBO)である。例えば、再生可能な供給源からのPAOベースオイルは、再生可能なPAOベースオイルと称され得、そして、再生可能な供給源からのパラフィン系ベースオイルは、再生可能なパラフィン系ベースオイルと称され得る。
【0068】
例えば、1-デセンのポリ-アルファオレフィンオリゴマー(例えばPAO4)、フィッシャー・トロプシュ合成からのガス液化イソパラフィン(例えばGTL4)、および水素化分解装置の底流の水素異性化からのグループIII+タイプのパラフィン系ベースオイル(例えばYubase4 PLUS:Yubase4+)のベースオイルなどの低粘度生成物は、現在、限られた入手可能性を有している。0W-XX潤滑オイルの配合のために必要とれるこれらの低粘度生成物(~4cSt)は、限られた入手可能性を有している。
【0069】
PAO市場は、歴史的に、限られた1-デセンの入手可能性によって拘束されてきた。さらに、化石起源である天然ガスに基づくGTL市場のさらなる成長は、将来の化石資源が枯渇すればおそらく限られてくる。このような成長という現象は、水素化分解装置の底流の水素異性化からのグループIII+タイプのパラフィン系ベースオイルへも同等に適用され得る。
【0070】
C31ベースオイル
本発明の潤滑オイル組成物の一部を形成する、および、低粘度ベースオイルを得るために本発明のベースオイル混合物の一部を形成する、特には、低いノアク揮発度および低いCCS粘度(例えばCCS-30℃、CCS-35℃、およびCCS-40℃など)の両方を有する、および/または、ベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする許容され得るHTHSおよびKV100の組み合わせを同時にもつ低粘度ベースオイルを提供するための、新規のC31ベースオイルに基づく。
【0071】
特に記載がない限り、炭化水素の重量パーセントは、例えば実施例に記載されているように、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。
【0072】
本明細書および請求項において、「C31ベースオイル」および「C31再生可能なベースオイル」は交換可能に使用されると解釈される。しかしながら、ベースオイル組成物は特には、再生可能な起源のものである。本発明の再生可能なベースオイルのための脂肪酸フィードストックの再生可能性は、ベースオイルブレンダー業者(OEMs)へのより安定した原料供給を提供する。
【0073】
再生可能な成分含有量はまた、ASTM D6866に記載されているような14C、13C、および/または12Cを含む同位体分布によって決定され得る。
【0074】
C31ベースオイルは、60wt%より多くのC31アルカンを有する、パラフィン系ベースオイルである。C31ベースオイルは、ケトン化、水素化脱酸素化(HDO)および水素化異性化反応を通じて、C16脂肪酸(パルミチン酸)から製造され得る。典型的には、パルミチン酸のケトン化反応は、実施例1で記載されるように、HDOおよびISOM反応の先に起こるであろう、しかしながら、例えばパルミチン酸の異性化の後に続いてケトン化およびHDO反応などの、他の変形もまた使用され得る。
【0075】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の発明者らによって、本発明のC
31ベースオイルの優れた品質は、16個の炭素原子を有するパルミチン酸の液相ケトン化反応(ガス相ケトン化反応とは逆に)から得られると推測される。液相ケトン化(HDOおよび水素化異性化反応が後に続く)と組み合わされた単一の炭素数である脂肪酸は、驚くべきことに、(ガス相)ケトン化、水素化脱酸素化および水素化異性化反応では普通のことである、予期された量のより小さな炭素数のホモログ(C
30、C
29、C
28、C
27、C
26など)を含まずにほぼ排他的にC
31ベースオイルのみを与えた。多環のナフサなしのほぼ排他的な(80wt%~95wt%)C
31パラフィン系ベースオイルおよびごく少量のモノナフテンを示している
図3Aが参照される。総計のナフテンおよび総計のモノナフテンが確かに9.0wt%未満、例えば4.5wt%未満、および多くで4.0wt%未満であることがわかる
図4および表1を参照のこと。
【0076】
新規のオイルを多くの他のパラフィン系ベースオイルから区別しているものは主にC31ベースオイルのC31パラフィン性である。このパラフィン性は、排他的にまたは高度にC16飽和脂肪酸(パルミチン酸)で富化されているフィードストックをケトン化することによって得られる。パルミチン酸の特に良好に適した原料は、パーム油脂肪酸蒸留物(PFAD)であり、これは、食用に適していない分解した脂肪を含んでおり、および、パーム油を食品工業の品質基準に合致させる前にパーム油精製プロセスのあいだに除去される必要があるものである。PFADの脂肪酸組成物は原料によって変化するが、パキスタンにおける種々のオイル処理工業のPFAD中の脂肪酸のいくつかの平均値が、0.04% C12:0; 0.42% C14:0; 41.25% C16:0; 7.29% C18:0; 41.58% C18:1; 8.95% C18:2; 0.04% C20:1; 0.27% C20:1; 0.07% C22:0; and 0.05% C24:0であることが見つけられた(Chang et al. 2016, J. Oleo. Sci. 65(11), 897-901)。
【0077】
したがって、PFADは、
0.46%のC12~14脂肪酸、
41.25%のパルミチン酸、
57.82%のC18脂肪酸、および
0.43%のC20~24の脂肪酸
からなり得る。
【0078】
より高い沸点の脂肪酸からの大規模なパルミチン酸の分離は、パルミチン酸が351℃の沸点を有し、ステアリン酸が361℃の沸点を有することから、単純なことではない。
【0079】
実施例1に記載の減圧分画蒸留を行うことによって、99.72wt%および98.66wt%の純度でパルミチン酸を得ることができ、これは、本発明を、研究室スケールではなく大規模な工業スケール(例えば1000t/annumなど)での商業的に実行可能にせしめている。
【0080】
パルミチン酸の上述の純度は、80wt%より多い量のC
31アルカン、およびより多い、例えば95wt%までのC
31アルカンを含むC
31ベースオイルへと変換され得る。PFAD以外のフィードストックおよび例えばPFAD
組成物などにおける変化ならびに蒸留効率は、C
31ベースオイ
ルが60wt%より多いC
31アルカン、例えば70wt%より多いC
31アルカンなどを含むベースオイルを結果としてもたらし得、これは提供される少なくともいくつかの優れた特性を有している。C
31含有量が70wt%より多いことが好ましく、および、
図3Aからもまた明らかなように、80wt%より多いC
31アルカン、例えば60wt%~95wt%であるC
31アルカンが好ましい。
【0081】
もしパルミチン酸が実施例1よりもより低い純度であるならば、C
31ベースオイルが20wt%までのC
32以上のアルカンを含むという状況があり得る。C
32以上とは、C
32~C
46、例えばC
32~C
35を含み、これはC
18脂肪酸不純物を含むパルミチン酸のための結果として生じる範囲であろう。不純物のレベルは低いものであるべきことが望まれ、そして、どのような場合でも、C
31ベースオイルは、20wt%未満のC
32以上のアルカン、好ましくは10wt%未満のC
32以上のアルカンのみを含むべきである。これはまた、実施例1のパルミチン酸から得られるものであり、ここで、結果として得られるC
31ベースオイルは、表1、
図2および
図3Bから明らかなように、5wt%未満の、および1wt%未満でさえのC
32以上のアルカンしか含まない。
【0082】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明の発明者らによって、例えばC16の炭素原子をもつパルミチン酸などの液相のケトン化反応はまた、ガス相のケトン化反応とは反対に、少ない量のナフテンをもたらす。したがって、C
31ベースオイルは、表1および
図4に示されているモノ-ナフテン量からもまた明らかであるように、9wt%未満のシクロアルカン、好ましくは4.5wt%未満のシクロアルカンを含むであろう。例えば、8wt%未満のC
25~32シクロアルカン(すなわち、モノ-ナフテン、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、およびそれより多置換のナフテン)または4.5wt%未満のC
25~32シクロアルカン。
【0083】
最後に、C31ベースオイルが高度にイソ-パラフィン系であることが重要であり、これは、ベースオイルのアルカンが70wt%以上、例えば80wt%以上、90wt%以上ほど高い、95wt%以上、または99wt%以上のイソ-アルカンを含んでいるべきであることを意味している。単一のメチル分岐のC31ベースオイルからより高度に分岐されたC31ベースオイルまで多くの種々のイソ-アルカンがある。イソ-アルカンの分岐の程度は、結果として得られる異性化されたC31ベースオイルの流動点と相関する。したがって、異性化の程度もまた、流動点を特定することによる機能的な方法で本発明のC31ベースオイルのために与えられ得る。特には、水素化異性化反応のあいだ、異性化の程度は、しばしば、所望の流動点が得られるまで行われる。異性化の程度はしたがって、イソ-アルカンのwt%での量として、または、C31ベースオイルの流動点として、または、好ましくは、イソ-アルカンの量と流動点との組み合わせとして与えられ得る。例えば、C31ベースオイルの流動点は、ASTM D7346を用いて測定された場合で、実施例1で提供されるようにおよび表2に示されるように、-5℃未満、例えば-10℃未満、または-15℃未満、または-19℃未満でさえある高さ、または-25℃未満であり得る。分解に起因して水素化異性化反応のあいだにC31ベースオイルのいくらかの損失があるので、C31ベースオイルの収率と異性化の程度とのあいだにはしばしば妥協点があり、例えば、流動点は-5℃~-35℃、例えば-10℃~-30℃である。
【0084】
出発材料がほぼ完全にパルミチン酸であること、上述されるようなケトン化反応の種類および異性化の程度に起因して、C
31ベースオイル
組成物は、非常に少量の分解生成物しか含まず、これは典型的にはより高いノアク揮発度の値をもたらす。したがって、C
31ベースオイル
組成物はさらに、少量のCアルカンを含むこと、表1、
図2および
図3Bに示されている結果から明らかであるように1wt%~15wt%のあいだのC
20~30アルカンを含むこと、例えば30wt%未満、例えば20wt%未満、または15wt%未満のC
20~30アルカン、たとえば10wt%未満のC
20~30アルカン、または7wt%未満ほどに低いC
20~30アルカンを含むことで特徴付けられ得る。
【0085】
実施例1で記載されるように、C
31ベースオイルを製造するための、PFADからパルミチン酸を得ること、液粗ケトン化反応、水素化脱酸素化および水素化異性化を含む具体的な方法は、少なくとも2つの「フィンガープリント」識別子を有するC
31ベースオイル
組成物を提供し、これは、使用された特定の方法およびフィードを識別するために使用され得る。したがって、ベースオイル
組成物はさらに、C
29および/またはC
30アルカンのwt%での量が、
図3Bから明らかであるように、C
26およびC
27アルカンのwt%での合計量より少ないという第1の「フィンガープリント」識別子によって特徴づけられ得る。
【0086】
C
31ベースオイル
組成物は、追加で、C
29およびC
31アルカンのwt%での合計量は、
図4から明らかであるように、C
25、C
26、C
27、C
28、C
30のシクロアルカンの合計量よりも多いという第2の「フィンガープリント」識別子によって特徴づけられてもよい。
【0087】
本明細書中で記載されるように、好ましくは、C31ベースオイルは、再生可能な起源のものであり、これはベースオイルブレンダー業への供給のより強力な補償を提供することに加え、また、例えば化石由来のベースオイルなどと比較して、C31ベースオイルが非常に少量の不純物しか含まないという明確な優位点を提供する。
【0088】
特には、ベースオイル組成物は、主に、少しのおよび定量の不純物いしか含まないパラフィン系である、したがって、再生可能なベースオイル組成物は、さらに、少なくとも一または複数の(しかしながら好ましくは全ての)不純物が、もし存在するのであれば、
1.5wt%未満、好ましくは0.5wt%、例えば0.3wt%未満、例えば0.1wt%以下の芳香族炭化水素
1.0wt%未満、好ましくは0.5wt%未満のジ-、トリ-、テトラ-またはより多置換のナフテン、
1wt%未満、好ましくは0.5wt%未満、例えば0.3wt%未満、たとえば0.1wt%以下の酸素含有化合物、
ASTM D 3120を用いて測定された場合の、300ppm未満、例えば100ppm未満または50ppm未満の硫黄含有量
ASTM D 4629を用いて測定された場合の、100ppm未満、または10ppm未満、例えば1ppm未満の窒素含有量
であることに特徴づけられ得る。
【0089】
C31ベースオイル組成物は、さらに、以下の特性のうちの一または複数を有することによって機能的に特徴づけられ得る。
ASTM D 7500を用いて測定された場合の、350℃~650℃のあいだである沸点、
ASTM D 2270を用いて測定された場合の、140より大きい粘度指数(VI)、
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、
ASTM D 7346を用いて測定された場合の、-10℃未満の流動点
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1800mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1300mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)。
【0090】
ベースオイル組成物はさらに、ASTM D 7500を用いて測定された場合の、380℃より高い沸点、例えばASTM D 7500を用いて測定された場合の、420℃より高い沸点を有することによって機能的に特徴づけられ得る。ベースオイル組成物はさらに、650℃未満の沸点、例えば600℃未満の沸点を有することによって機能的に特徴づけられ得る。いくつかの場合において、上記の沸点は、ASTM D 7500の5%沸点として定義される。例えば、C31ベースオイルの沸点範囲は、初留点(IBP)および最終沸点(FBP)のあいだの範囲として、または、5%蒸留点および95%蒸留点のあいだの範囲のどちらかとして、380~650℃、400~620℃、420~600℃であり得る。C31ベースオイルに関するこれらの蒸留範囲は、狭い。例えば、サンプルの30%より多くが、10℃の温度範囲内(例えば、ASTM D7500の50%および90%沸点の値が10℃しか離れていない)で沸騰し得るか、または、ASTM D7500の10%および90%沸点の値のあいだの沸点範囲を70℃未満、例えば50℃未満、例えば40℃未満の温度範囲内に有する。
【0091】
C
31ベースオイルの低いCCS-30℃粘度と組み合わされた低いノアク揮発度という組み合わされた性能は、C
31ベースオイルがそれ自身を他の低粘度ベースオイルと区別する別のパラメータである。低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方が、低粘度ベースオイルにおいて望ましい。しかしながら、
図5のダイアグラムが示しているように、典型的には、これらの2つの特性のあいだには、典型的には、トレードオフがあり、すなわち、低いノアク揮発度は典型的には高いCCS-30℃粘度をもたらし、そして、反対に、低いCCS-30℃粘度は典型的には高いノアク揮発度をもたらす。本発明のC
31RBOを他の典型的な低粘度ベースオイルと比較すると、同じノアク揮発度において、本発明のC
31RBOと比較して他のベースオイルははるかに高いCCS-30℃粘度をもっており、そして、同じCCS-30℃粘度では、本発明のC
31RBOは他のベースオイルと比較してはるかに低いノアク揮発度を有していることがわかる。
図5から、本発明のC
31RBOが、他の低粘度ベースオイルと比較してはるかにより狭い範囲のノアク揮発度の範囲(5~9wt%のあいだ)およびCCS-30℃粘度(900~1200mPas)を有していることが明らかにわかり、したがってより明確に規定された生成物であると考えられ得る。
【0092】
したがって、C31ベースオイル組成物は、さらに、以下の特性の両方:
ASTM D 5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満、例えば9wt%未満であるノアク揮発度、および
ASTM D 5293を用いて測定された場合の、1600mPas未満、例えば1300mPas未満であるコールドクランキングシミュレータ(CCS-30℃)粘度、
を有することによって機能的に特徴づけられ得る。
【0093】
特には、低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度のあいだの組み合わせが本発明のC
31ベースオイルの特性である。700~1300mPasのあいだのCCS-30℃粘度の、5~10wt%のあいだのノアク揮発度との組み合わせ、例えば700~1200mPasのあいだのCCS-30℃粘度の、5~9wt%のあいだのノアク揮発度との組み合わせ、例えば800~1100mPasのあいだのCCS-30℃粘度の、6~9wt%のあいだのノアク揮発度との組み合わせ、例えば
図5に関連する800~1050mPasのあいだのCCS-30℃粘度の、6.5~9wt%のあいだのノアク揮発度との組み合わせ、1400mPasより低いCCS-30℃粘度の、10wt%より低いノアク揮発度との組み合わせ、例えば1300mPasより低いCCS-30℃粘度の、9.5wt%より低いノアク揮発度との組み合わせなど。
【0094】
C31ベースオイル組成物は、ノアク揮発度およびCCS-30℃粘度に加えて、
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)
によって機能的に特徴づけられ得る。
【0095】
ベースオイル組成物はまた、以下の特性のうちの一または複数:
ASTM D5800またはCECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、10wt%未満であるノアク揮発度、および
EN ISO 3104を用いた5mm2/s未満である動的粘度(KV100)
を有することによって機能的に特徴づけられ得る。
【0096】
C31ベースオイルを含むベースオイル混合物
本明細書中に記載されるように、C31ベースオイルは低い粘度および低いノアク揮発度に関して魅力的な特性を有している。このような特性は、例えば内燃機関のエンジンのためのベースオイル混合物などのベースオイル混合物のブレンディングに優位に利用され得る。ベースオイルは典型的に乗用車用エンジンにおけるもっとも多い成分であるため、流体の性能において劇的な効果を及ぼす。ベースオイルは、例えば、粘度、酸化安定性、揮発性および粘度指数などの多くのパラメータに影響する。新規のC31ベースオイルの入手可能性は、より少ない添加剤パッケージを用いて、またあるいは、より少量の他の公知の低粘度オイルを用いてもしくは全く用いないで、SAEグレード仕様を得ることのできる可能性を提供する。
【0097】
本発明のC31ベースオイル組成物は、他のベースオイルを含むベースオイルの一部であってもよい。ベースオイル混合物、例えば、少なくとも13wt%の上記で規定されるようなC31ベースオイル、および、同じまたは異なるAPI(アメリカ石油協会)カテゴリー内の一または複数のベースオイルから選択される残余物を含む内燃機関のためのベースオイル混合物(ここでベースオイルの量は総計のベースオイル混合物を基にしてwt%で与えられる)など。
【0098】
ベースオイル混合物のC31ベースオイル量は、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも35wt%の量で、例えば総計のベースオイル混合物に対して少なくとも50wt%の量で存在し得る。C31ベースオイルは例えば、表3、5および6に示されるように、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも60wt%、例えば、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも80wt%であってもよく、および、総計のベースオイル混合物に対して95wt%まで、または100wt%でさえC31ベースオイルであり得る。ベースオイル混合物は、総計のベースオイル混合物に対して、15~100wt%のあいだの、例えば15~95wt%のあいだの、例えば20~90wt%のあいだの本発明のC31ベースオイルの含有量を有し得る。
【0099】
ベースオイル混合物は少なくとも13wt%の再生可能なベースオイルに加えて、同じまたは異なるAPIカテゴリー内の2またはそれ以上のベースオイルを含んでいてもよい。例えば、ベースオイル混合物は、ベースオイル混合物の総計に対して10~87wt%のグループIIおよび/またはグループIIIベースオイル、例えばベースオイル混合物の総計に対して50wt%未満または40wt%未満のグループIIおよび/またはグループIIIベースオイルを含み得る。
【0100】
例えば表2および
図5および
図6に示されるように、C
31ベースオイルは、他の低粘度ベースオイル、例えばポリアルファオレフィン(PAOs)またはフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイル(GTLs)などの特性に匹敵するまたはそれより優れている特性を有している。
【0101】
これは、低粘度潤滑オイルのためのベースオイル混合物におけるより少量のポリアルファオレフィン(PAO)またはPAOの欠如さえの可能性を提供する。例えば、ベースオイル混合物は、10wt%より多くのポリアルファオレフィンベースオイルを含まないかもしれず、または、ベースオイル混合物は、本質的にポリアルファオレフィンベースオイルを含まないかもしれず、ここでベースオイル混合物はポリアルファオレフィンベースオイルを含まない。本質的にポリアルファオレフィンを含まないベースオイルとは、その含有量が2wt%よりも少ないと考えられる。
【0102】
これは、低粘度潤滑オイルのためのベースオイル混合物におけるより少量のフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイル(GTL)またはGTLの欠如さえの可能性を提供する。例えば、ベースオイル混合物は、10wt%より多くのフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まないかもしれない。例えば、ベースオイル混合物は、本質的にフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まないかもしれず、好ましくはここでベースオイル混合物はフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まない。本質的にフィッシャー・トロプシュ法由来のベースオイルを含まないベースオイルとは、その含有量が2wt%よりも少ないと考えられる。
【0103】
C31ベースオイルを含む潤滑オイル組成物
本明細書中に記載されるように、C31ベースオイルは低い粘度および低いノアク揮発度に関して魅力的な特性を有している。このような特性は、例えば内燃機関のエンジンのための、添加剤パッケージと一緒のベースオイル混合物、例えばベースオイル混合物および潤滑オイル組成物などを含む、ベースオイル混合物のブレンディングおよび潤滑剤配合物に優位に利用され得る。ベースオイルは典型的に乗用車用エンジンにおけるもっとも多い成分であるため、流体の性能において劇的な効果を及ぼす。ベースオイルは、例えば、粘度、酸化安定性、揮発性および粘度指数などの多くのパラメータに影響する。新規のC31ベースオイルの入手可能性は、より少ない添加剤パッケージを用いて、またあるいは、より少量の他の公知の低粘度オイルを用いてもしくは全く用いないで、潤滑オイル組成物におけるSAEグレード仕様を得ることのできる可能性を提供する。
【0104】
潤滑オイル組成物、例えば内燃機関のエンジンのための潤滑オイル組成物は、a)少なくとも13wt%のC31ベースオイル、および、同じまたは異なるAPI(アメリカ石油協会)カテゴリー内の一または複数のベースオイルから選択される残余物を含むベースオイル混合物(ここでwt%で与えられるベースオイルの量は総計のベースオイル混合物に基づく)と、b)一または複数の性能向上用添加剤と、を含む。
【0105】
C31ベースオイルの組成物は、本明細書中で記載されるように、例えば、60wt%より多いC31アルカン、好ましくは80wt%より多いC31アルカンを含み、ここで再生可能なベースオイルの量は再生可能なベースオイルを基にしてwt%で与えられ、再生可能なベースオイルの炭化水素組成物の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。C31ベースオイルの構造および特性に関するさらに詳細な情報については、「C31ベースオイル」の題が付けられた箇所が参照される。ベースオイル混合物の組成物についてのさらなる詳細な情報に関しては、「C31ベースオイルを含むベースオイル混合物」の題が付けられた箇所が加えて参照される。繰り返しを避けるために、これらの2つの箇所からの特徴は、本発明の潤滑オイル組成物中のベースオイル混合物およびC31ベースオイル組成物の特徴をさらに特定することに関して、これらの箇所の特徴が考慮に入れられるべきであることは明らかであることから、ここでは繰り返されていない。
【0106】
発明の概要で述べられているように、パーム油および他の(再生可能な)フィードストック中に存在するC
16脂肪酸から得られ得るC
31の(再生可能な)ベースオイ
ルを含むことが、低いノアク揮発度および低いCCS-30℃粘度の両方に関連する(
図5)、および、ベースオイルブレンダー業者に例えばSAEグレード0W-20、0W-16、0W-12または0W-8などの高品質なエンジンオイルを配合させることを可能にする許容され得るHTHSおよびKV100の組み合わせを有する(
図6)優れた特性をもつことが発見された。
【0107】
加えて、本発明の再生可能なベースオイルのための脂肪酸フィードストックの再生可能な特性は、限られたアルファオレフィン入手可能性によって、または将来可能性のある化石資源の枯渇によって束縛され得るベースオイルと比較して、ベースオイルブレンダー業者へのより安定した原料供給を提供する。
【0108】
潤滑オイル組成物はベースオイル混合物および添加剤パッケージを含む。ベースオイル混合物は、C31ベースオイルを含む。
【0109】
添加剤パッケージが潤滑オイル組成物の配合物のためにしばしば必要とされる理由は、ベースオイルだけでは、近代の潤滑オイルおよびグリースの要件に合致しないためである。添加剤は、特定の特性を加えるまたは改良するためにベースオイルに添加される化学物質である、添加剤は、少なくとも一または複数の潤滑オイル組成物の性能向上用添加剤を含み、そして、抗酸化物、金属不活性化剤、腐食防止剤、界面活性剤、分散剤、耐摩耗添加剤、摩擦調節剤、流動点抑制剤、粘度改良剤、発泡防止剤、増粘剤、抗乳化剤、乳化剤、殺菌剤、殺真菌薬、および粘性剤からなるリストより選択され得る。2以上の機能/特性を有している添加剤は、多目的添加剤と称される。
【0110】
個々の性能向上用添加剤は、追加の効果、相乗効果または拮抗効果をもたらし得、そしてしばしば多くの異なる性能向上用添加剤を含む添加剤パッケージが開発され、そして、望ましい特性を有する潤滑オイル組成物を製造するためにベースオイル混合物に添加される。
【0111】
潤滑オイル組成物をデザインする際、潤滑オイルおよびグリースの装置製造者および使用者のますます厳しくなる必要条件を売るための鍵となる要素はこれらの添加剤およびベースオイルである。
【0112】
当該技術分野における当業者であれば上記の添加剤の種類および他の添加剤には精通しているであろうから、これらはここではさらに詳細には記載されない。このような添加剤の具体的な例は、例えば,Gresham, R. M., Canter, N. M., Zabawski, E. S. および Zou, M. 2015. Lubrication and Lubricants. Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology. 1-77などに記載されている。
【0113】
C
31ベースオイル組成物特性は、潤滑オイル
組成物が例えば0W-20、0W-16、0W-12または0W-8のうちのいずれかなどの0W-XXのための仕様に合致するように配合されることを可能にする(
図6Aを参照のこと)。C
31の再生可能なベースオイルは、0W-12の仕様に合致する、または0W-8の仕様に合致する非常に低い粘度グレードの配合物を可能にする。
図6Aの0W-8および0W-12配合スペースの拡大であり、個々のノアク揮発度を示している
図6Bが参照される。
図6Bから明らかなように、本発明のC
31RBOは、0W-8 SAEグレードを達成することができる一方、Yubase4+の例では達成されず、そして0W-12 SAEグレードに関して、C
31RBOは非常に類似のHTHSおよびKV100を与えた。しかしながら、C
31RBOは顕著に良好なノアク揮発度を有しており、これは、より少ない蒸発損失に起因してオイル交換のあいだの時間をより長いものとする。加えて、表5に示されているように、0W-12グレードのC
31RBOのCCS-35℃粘度はまた、Yubase4+0W-12グレードのものよりはるかに良好であった(3066mPas対4130mPas)。
【0114】
図6Bに示されているように、0W-8 SAEグレードは、C
31ベースオイルを用いて、それがNEXBASE(登録商標) 3035と混合される場合に達成され得、これは、より低いコストの低粘度および高いノアク揮発度をもつAPIグループII品質基準である。
【0115】
潤滑オイル組成物を配合する際には、結果として得られる潤滑オイルのコストを低減するために、より低いコストのまたは標準のAPIグループIIベースオイルを使うこと、
これらのベースオイルを他の低粘度オイル、例えば高性能かつより効果なオイル、例えばYubase4+などと混合することが望ましい。しかしながら、NEXBASE(登録商標) 3035のような生成物の、Yubase4+のような生成物との使用は、困難であるかほぼ不可能である。これはなぜならば、Yubase4+の配合物のノアクは高い側(表2を参照のこと)ではNEXBASE(登録商標) 3035の添加なしでもすでに高い(これは、約23wt%という比較的高いノアク揮発度を持っているAPIグループIIベースオイルである)ので、潤滑オイル組成物が高すぎるノアク揮発度となってしまうであろうためである。
【0116】
本発明のC31ベースオイルは低いノアク揮発度および低いCCS粘度は、これらが(高すぎる)ノアク揮発度に起因してより低いSAE0W-XXグレードのためには技術的に諦めるべきと以前は考えられていた生成物を使い始めることを可能にするという点で新しい自由度を有する、ベースオイル混合物と潤滑オイル組成物の配合剤を提供する。これらの技術的に諦められてきたおよびより高いノアク揮発度のベースオイルは、ここで、本発明のC31ベースオイルと共にベースオイル混合物および潤滑オイル組成物を提供するために使用され得、かつ、ノアク要件(例えばACEA乗用車用モーターオイルグレード(PCMO)のための13wt%より小さいノアク揮発度という要件など)に合致し得る。
【0117】
NEXBASE(登録商標) 3035は、約23wt%のノアクを有するそのような生成物の一例であり、これは、例えば0W-12または0W-8などのより低いSAE0W-XXグレードに到達するために必要とされる、低粘度オイル(例えば、PAOs、表2に記載のGTLs Yubase+など、全て13wt%のノアク揮発度に近い値を有する)と共に使用することが困難であったが、ACEA PCMOのための13wt%より小さいノアク揮発度という要件など)に合致し得る。C
31ベースオイルが相当量(34wt%)のNEXBASE(登録商標) 3035を含むベースオイル混合物にブレンドされることが可能であり、かつ、SAEグレード 0W-8オイルにおける12.4wt%という許容され得るノアク揮発度をもつことが示されている、
図6Bおよび表5の項目6Bが参照される。
【0118】
C31ベースオイルのノアク揮発度と動的粘度の両方における優れた特性によって、本発明のC31ベースオイルは、潤滑オイル組成物のノアク揮発度および/または100℃での動的粘度を低下させるために使用され得、ここで、潤滑オイル組成物は、
C31ベースオイルを含む、ベースオイル混合物、
一または複数の性能向上用添加剤
を含み、ここで、C31ベースオイルは、上記で記載されるように、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも13wt%の量である。
【0119】
具体的な使用において、結果として得られる潤滑組成物は、ASTM D445を用いて測定された場合の、9.3mm2/s以下である100℃での動的粘度を有し、および、組成物は、CECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、多くて13%のノアク揮発度を有する。
【0120】
C31ベースオイルのノアク揮発度とコールドクランキングシミュレータ粘度の両方における優れた特性によって、本発明のC31ベースオイルは、潤滑オイル組成物のノアク揮発度および/またはコールドクランキングシミュレータ粘度(例えば-30℃、-35℃、または-40℃での)を低下させるために使用され得、ここで、潤滑オイル組成物は、
C31ベースオイルを含む、ベースオイル混合物、
一または複数の性能向上用添加剤
を含み、ここで、C31ベースオイルは、上記で記載されるように、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも13wt%の量である。
【0121】
具体的な使用において、結果として得られる潤滑組成物は、4000mPas未満のCCS-35℃粘度を有し、および、組成物は、CECL-40-93-Bを用いて測定された場合の、多くて13%のノアク揮発度を有する。
【0122】
本発明のC31ベースオイルの動的粘度と高温高せん断(HTHS)粘度の両方における優れた特性によって、本発明のC31ベースオイルは、潤滑オイル組成物の100℃における動的粘度および/またはHTHSを低下させるために使用され得、ここで、潤滑オイル組成物は、
C31ベースオイルを含む、ベースオイル混合物、
一または複数の性能向上用添加剤
を含み、ここで、C31ベースオイルは、上記で記載されるように、総計のベースオイル混合物に対して少なくとも13wt%の量である。
【0123】
具体的な使用において、組成物は、1.70~2.90mPasのあいだ、例えば1.70~2.00mPasのあいだ、または2.00~2.30mPasのあいだなどの150℃におけるHTHSを有し、および、結果として得られる潤滑組成物は、ASTM D445を用いて測定された場合の、9.3mm2/s以下、例えば8.2mm2/s以下、例えば7.1mm2/s以下、例えば6.1mm2/s以下などである100℃における動的粘度を有する。
【0124】
再生可能なベースオイルの炭化水素組成物の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析され得る。他の方法と同様にこれらの方法は当業者にとって公知である。例えばFI-MS法は、実施例のセクションに記載されており、また も参照されるが、ここで、方法はまた、他の方法とともにまたは比較して記載されている。好ましい実施形態において、再生可能なベースオイルの炭化水素の重量パーセントは、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて、特にはパラフィン系の量およびナフテン系の量が分析され得る。
【0125】
本発明の実施形態が記載されるとき、全ての可能な実施例の組み合わせおよび順列が明示されているわけではない。それどころか、特定の方法が互いに異なる従属クレームに列挙されている、または異なる実施形態において記載されているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利には使用されないということを示しているわけではない。本発明は、記載されている実施形態の全ての可能な組み合わせおよび順列を想定している。
【0126】
本明細書中において用語「含む(comprising)」、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、どのような場合においても、発明者らによって、それぞれ、「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」および「からなる(consists of)」の用語と任意には置換可能であることが意図されている。
【実施例】
【0127】
実施例1 パルミチン酸からのC31の再生可能なベースオイルの調製
パルミチン酸が約250~275℃の温度および0.01~0.05bar圧力でのパーム脂肪酸蒸留物(PFAD)の蒸留によって単離された。パルミチン酸出発材料の第1のサンプルは、C14脂肪酸(0.07wt%)およびC15脂肪酸(0.06wt%)の少量の不純物を含む99.72wt%純度であった。パルミチン酸出発材料の第2のサンプルは、C18脂肪酸(0.42wt%)、C14脂肪酸(0.07wt%)、およびC15脂肪酸(0.07wt%)の少量の不純物を含む98.66wt%純度であった。第2のサンプルが残りの実施例において使用された。
【0128】
パルミチン酸は、250gの触媒材料(TiO2 BET 50~54m2/g、平均細孔径 100~200Å、結晶化度 50~100%)でロードされた触媒床を含む、連続モードで操作される固定床リアクターへとフィードされた。ケトン化は、液相中、約18bargの圧力、約360℃の温度、約1.0h-1のWHSV、および131 l/h窒素の追加のガスフローで行われた。ケトン化反応は、82~87%の脂肪酸変換で停止された。
【0129】
得られたケトン化生成物がNiMo/Al
2O
3触媒上で、約310℃の温度、約40barの圧力、約1.5h
-1のWHSV、および900nl/lのH
2/オイル比で、水素化脱酸素化された生成物を得るために水素化脱酸素化された(
図1の例示的なGC-FID応答を参照のこと)。酸素除去の効率はHDO工程として99.9%であった。
【0130】
結果として得られた水素化脱酸素化された生成物は、水素化異性触媒としてプラチナ担持ゼオライト上で、約300~350℃の温度、約20~40barの圧力、および約0.8~1.0h
-1のWHSVで、水素化異性化された生成物A~Kを得るために水素化異性化された(
図1の例示的なGC-FID応答を参照のこと)。
【0131】
水素化異性化された生成物は分画され、そして380+℃の留分が再生可能なベースオイル生成物として単離された。
【0132】
再生可能なベースオイル生成物の組成物が、電解イオン化質量分析(FI-MS)を用いて分析された。表1を参照のこと(「FIMS方法」)。
【0133】
ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-ナフテンは検出されなかった。芳香族化合物は検出されなかった。
【0134】
ASTM D 7500を用いて測定された場合の、サンプルIの蒸留範囲は、IBP(355℃)、5%(395℃)、10%(421℃)、20%(435℃)、30%(440℃)、40%(443℃)、50%(445℃)、60%(448℃)、70%(450℃)、80%(452℃)、90%(454℃)、95%(456℃)、FBP(583℃)であった。
【0135】
電解イオン化質量分析(FI-MS)
FI-MS分析に先立ち、含有されている全ての芳香族化合物は飽和の留分から分離され、そして、両方の留分が別々にFIMSを用いて分析される。
【0136】
FI-MS法において、飽和炭化水素は、以下のように、電解イオン化質量分析(FI-MS)によって、炭素および水素原子に基づく以下の分子量にしたがって分類される:
CnH2n+2は、パラフィンとして分類される、
CnH2nは、モノ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-2は、ジ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-4は、トリ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-6は、テトラ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-8は、ペンタ-ナフテンとして分類される、
CnH2n-10は、ヘキサ-ナフテンとして分類される。
【0137】
全てのFIマススペクトルは、FIモードで操作された、液体注入電界脱離イオン化(LIFDI、Linden ChroMasSpec GmbH社製)源を備えた、Thermo Fisher Scientific社製の二重収束セクター型(DFS)質量分析計を用いたセントロイドモードで得られた。FFS MSは、2000(±50)の分解能で磁気走査モードで操作された。イオン源パラメータは以下の通りである:加速電圧、5kV;対電極圧力、-5kV;参照インレット温度、80℃;イオン源温度、50℃;フラッシュ持続時間、150ms;および走査間遅延、150ms。2つの種類のFIエミッターが使用された:50mAでのLinden ChroMasSpec GmbH FI-エミッター10μm、20mAタイプ、および、90mAでのCarbo Tec 10μM Allgroundエミッター。新しいエミッターは、サンプル検定の前に、エミッター加熱電流を2時間適用することにより、予め調製された。DFS MAは、7.5s/decayの速さで、m/z50~1000で走査された。直接導入プローブ(DIP)は、試験のあいだ、50℃から360℃まで、25℃/minのランプレートで加熱された。2μLの体積のサンプル溶液は、サンプルホルダー(坩堝、低粘度ベースオイルのためのMascom GmbH 0568770S-0568780S、ならびに、他のベースオイルおよびモデル化合物混合物のためのMascom GmbH 0568760S)に注入され、そして、溶媒は分析に先立って室温にて蒸発された。サンプルホルダーは、DIP中に配置され、そして、真空交換ロックを経てイオン源中へと導入された。サンプル検定は、サンプルがイオン源中へと導入された直後に開始された。Xcalibur 2.2 プログラム(Thermo Fisher Scientific,Inc.,SanJose,CA)がMSデータの獲得および分析に使用された。
【0138】
方法はまた、Jinら“Comparison of Atmospheric Pressure Chemical Ionization and Field Ionization Mass Spectrometry for the Analysis of Large Saturated Hydrocarbons” Anal. Chem. 2016, 88(21) 10592-10598.の文献に記載されている。
【0139】
【0140】
図2は、表1の項目1のFIMS分析を示しており、
図3および4は、項目A~KのFIMS分析を示している。
【0141】
実施例2
図2は、表1の項目1のFIMS分析を示している。多くの表1の項目1の再生可能なC
31ベースオイルが測定され、そして、他の市販のベースオイルと比較された、表2を参照のこと(ここで、流動点はASTM D5950を用いて、粘度はEN ISO 3104を用いて、パラフィンおよびナフテンはFIMS法を用いて、粘度指数はASTM D2270を用いて、CCS粘度はASTM D5293を用いて、ノアク指数はCECL-40-93-Bを用いて、測定された)。
【0142】
【0143】
実施例3 種々のベースオイルの0W-30配合物のC31の再生可能なベースオイルを含む配合物との比較
多くのベースオイル、市販の乗用車用モーターオイル(PCMO)添加剤パッケージ、および市販の粘度指数改良剤(VII)に関するシミュレーションモデルが構築された。シミュレーションモデルは、種々のベースオイルのコスト的に理想化された(オイルのコストは、PAO4、PAO6>C31RBO>GTL4、GTL8、Yb4+>GpIII>GpIIであると仮定して)0W-30配合物を調製するため使用された。結果が表3に示されており、ここで、種々の量のベースオイル、添加剤パッケージ、およびVIIが、同等の推定される特性にできるだけ近くなるように使用された。
【0144】
【0145】
実施例4 C31の再生可能なベースオイルを含む0W-30試験ブレンド
PCMO添加剤パッケージ、VII、NEXBASE(登録商標) 3043、およびC31RBOを含む試験ブレンドが調製され、そしてその特性が測定された。試験ブレンドはSAEグレード0W-30オイルの要件を満たした。
【0146】
【0147】
実施例5 C31の再生可能なベースオイルを含むSAEグレード0W-XX試験ブレンド
PCMO添加剤パッケージ、粘度指数改良剤なし(ブレンド1~6)およびあり(ブレンド7~12)、を含む試験ブレンドが、C31RBOを含む種々のベースオイルから調製された。その特性およびSAEグレードが測定され、以下の表5および6に示されている。
【0148】
【0149】
【0150】
HTHSおよびKV100は、低粘度SAEグレードのオイルの重要な特性のうちの2つである。これらの特性は、C
31RBOを使用して種々のSAE J300グレードを得ることが可能であるということを示すために
図6にプロットされた。
【0151】
SAEグレード20、16、12および8の最小のHTHSは、それぞれ、2.6、2.3、2.0および1.7mPasである。J300は、同じSAE20、SAE16、SAE12、SAE8のための100℃での動的粘度がこれらのグレードのための適切な配合スペースを提供するように重なっていることを特定している。
図6は、C
31RBOが、SAE 0W-20~SAE 0W-8までも全てのSAEグレードに合うようにブレンドされ得ることを示している。