IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国電力株式会社の特許一覧 ▶ 日本電気株式会社の特許一覧

特許7370258プラント監視システムおよびプラント監視方法
<>
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図1
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図2
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図3
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図4
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図5
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図6
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図7
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図8
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図9
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図10
  • 特許-プラント監視システムおよびプラント監視方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】プラント監視システムおよびプラント監視方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
G05B23/02 302R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020003830
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021111212
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】生田 睦男
(72)【発明者】
【氏名】林 司
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 隆
(72)【発明者】
【氏名】坪内 光介
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬之
(72)【発明者】
【氏名】日野 勇夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 翔
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539886(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の機器や系統である機器系統にセンサが設けられ、前記機器系統が正常時の各センサ間の関係性を表す第1のモデルを作成し、実働の前記機器系統について、前記第1のモデルを基にして前記各センサ間の関係性の変化を検知し、関係性の変化を検知した場合には変化を出力する監視手段を備えるプラント監視システムにおいて、
前記監視手段は、前記機器系統に対して少なくとも1つの冗長の機器系統が設けられ、かつ、冗長の機器系統に冗長のセンサが設けられている構成の冗長化されている機器系統については、前記冗長化されている機器系統の各センサからの測定値を合成し、合成した値を用いて第2のモデルを作成し、前記冗長化されている各機器系統を監視する際にはこの第2のモデルを用いる、
ことを特徴とするプラント監視システム。
【請求項2】
前記監視手段は、冗長化されている前記センサからの測定値を加算し、この加算した値を、合成した値として用いる、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラント監視システム。
【請求項3】
前記監視手段は、前記機器系統の切り替えの際に、前記第2のモデルを基にして前記各センサの関係性の変化を検知した場合には、所定時間の経過後までこの関係性の変化が継続したときに、変化を出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプラント監視システム。
【請求項4】
監視対象の機器や系統である機器系統にセンサが設けられ、前記機器系統が正常時の各センサ間の関係性を表す第1のモデルを作成し、実働の前記機器系統について、前記第1のモデルを基にして前記各センサ間の関係性の変化を検知し、関係性の変化を検知した場合には変化を出力するプラント監視方法において、
前記機器系統に対して少なくとも1つの冗長の機器系統が設けられ、かつ、冗長の機器系統に冗長のセンサが設けられている構成の冗長化されている機器系統については、前記冗長化されている機器系統の各センサからの測定値を合成し、
合成した値を用いて第2のモデルを作成し、
前記冗長化されている各機器系統を監視する際にはこの第2のモデルを用いる、
ことを特徴とするプラント監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発電所等の各種のプラントを監視するプラント監視システムおよびプラント監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所の発電プラントには、蒸気タービンやボイラー等の各種の機器や給排気系のような系統(「機器系統」という)が使用されている。発電プラントはこれらの機器系統により発電を行っている。こうした発電プラントでは、例えばSIAT技術(System Invariant Analysis Technology:インバリアント解析技術)を応用したシステムにより、プラントの各機器系統に設けられている機器や系統について、故障の予兆を監視している(例えば、特許文献1参照。)。この監視システムによれば、プラントの各機器系統に設置されている各種のセンサからの測定値を次のように用いている。
【0003】
監視システムは、プラントが正常に動いている場合の各種のセンサからの測定値を基に、センサ間の相関関係のような関係性を調べる。そして、監視システムは、センサ間の関係性の強さを表す監視モデルを各機器系統毎に作成する。この後、監視システムは、監視モデルを基にしたセンサの予測値と、定期的に取得した実測値とにより、センサ間の関係性を調べる。そして、関係性に崩れ(変化)があると、監視システムはアラーム(警報)を通知する。
【0004】
ところで、発電プラントを含む各種のプラントには、1つの機器系統に対して少なくとも1つの冗長の機器系統がバックアップ等のために多重化されて設けられている(「冗長化されている」または「冗長性がある」という)場合がある。つまり、プラントは、冗長化された複数の機器系統を備え、必要に応じて、現在運用している機器系統つまり実働の機器系統から別の機器系統に切り替えている。こうした場合に、監視システムは、冗長化されている各機器系統毎に監視モデルを作成する。そして、機器系統の切り替えが行われると、監視システムは監視モデルも切り替えて機器系統の監視を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-021702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、先に述べた従来の監視システムには次の課題がある。プラントが冗長化による複数の機器系統を備える場合に、監視システムが機器の故障予兆を正確に検知するためには、実働する機器系統の動作状況(起動、停止、系統切替等)に応じて監視モデルを切り替える必要がある。この結果、監視システムにおいては切り替えが煩雑となり、担当者の労力の増大や、監視モデルの切り替え間違いが発生する可能性がある。
【0007】
この発明の目的は、前記の課題を解決し、冗長化された機器系統を監視するときには、監視対象モデルの切り替え頻度を削減することを可能にするプラント監視システムおよびプラント監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、監視対象の機器や系統である機器系統にセンサが設けられ、前記機器系統が正常時の各センサ間の関係性を表す第1のモデルを作成し、実働の前記機器系統について、前記第1のモデルを基にして前記各センサ間の関係性の変化を検知し、関係性の変化を検知した場合には変化を出力する監視手段を備えるプラント監視システムにおいて、前記監視手段は、前記機器系統に対して少なくとも1つの冗長の機器系統が設けられ、かつ、冗長の機器系統に冗長のセンサが設けられている構成の冗長化されている機器系統については、前記冗長化されている機器系統の各センサからの測定値を合成し、合成した値を用いて第2のモデルを作成し、前記冗長化されている各機器系統を監視する際にはこの第2のモデルを用いる、ことを特徴とするプラント監視システムである。
【0009】
請求項1の発明では、監視手段は、機器系統にセンサが設けられ、機器系統が正常時の各センサ間の関係性を表す第1のモデルを作成する。この後、監視手段は、実働の機器系統について、第1のモデルを基にして各センサ間の関係性の変化を検知し、関係性の変化を検知した場合には変化を出力する。さらに、監視手段は、冗長化されている機器系統については、冗長化されている機器系統の各センサからの測定値を合成し、合成した値を用いて第2のモデルを作成する。この後、監視手段は、冗長化されている各機器系統を監視する際にはこの第2のモデルを用いる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のプラント監視システムにおいて、前記監視手段は、冗長化されている前記センサからの測定値を加算し、この加算した値を、合成した値として用いる、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のプラント監視システムにおいて、前記監視手段は、前記機器系統の切り替えの際に、前記第2のモデルを基にして前記各センサの関係性の変化を検知した場合には、所定時間の経過後までこの関係性の変化が継続したときに、変化を出力する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、監視対象の機器や系統である機器系統にセンサが設けられ、前記機器系統が正常時の各センサ間の関係性を表す第1のモデルを作成し、実働の前記機器系統について、前記第1のモデルを基にして前記各センサ間の関係性の変化を検知し、関係性の変化を検知した場合には変化を出力するプラント監視方法において、前記機器系統に対して少なくとも1つの冗長の機器系統が設けられ、かつ、冗長の機器系統に冗長のセンサが設けられている構成の冗長化されている機器系統については、前記冗長化されている機器系統の各センサからの測定値を合成し、合成した値を用いて第2のモデルを作成し、前記冗長化されている各機器系統を監視する際にはこの第2のモデルを用いる、ことを特徴とするプラント監視方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、冗長化されている機器系統については、監視手段はこの冗長化されている機器系統用の第2のモデルを作成し、この第2のモデルを基にして冗長化の各機器系統を監視するので、実働の機器系統を切り替えたときにモデルを切り替える頻度を、従来に比べて削減することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、冗長化されている機器系統の各センサからの測定値を合成するには、各センサの測定値を加算すればよいので、測定値の合成を簡単な演算で行うことを可能にする。
【0015】
請求項3の発明によれば、冗長化されている機器系統を切り替える際に発生する、センサの関係性の変化を、監視手段が誤検知することを所定時間によるフィルタリングで防ぐことができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、冗長化されている機器系統については、この冗長化されている機器系統用の第2のモデルを作成し、この第2のモデルを基にして冗長化の各機器系統を監視するので、実働の機器系統を切り替えたときにモデルを切り替える頻度を、従来に比べて削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この発明の一実施の形態によるプラント監視システムを示す構成図である。
図2】センサデータの一例を示す図である。
図3】センサデータの一例を示す図である。
図4】データの関係性の抽出を説明する説明図である。
図5】発電プラントの冗長化された各系統を示す図である。
図6】センサの一覧を示す図である。
図7】従来のセンサ間の関係性を監視する様子を示す図である。
図8】この実施の形態によるセンサ間の関係性を監視する様子を示す図である。
図9】従来のセンサ間の関係性を監視する様子を示す図である。
図10】この実施の形態によるセンサ間の関係性を監視する様子を示す図である。
図11】監視処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。この実施の形態によるプラント監視システムを図1に示す。図1のプラント監視システムは、発電プラント10が設置されている発電所で用いられるものであり、センサ監視装置20と、社内通信網30と、モデル監視装置40とを主に備えている。
【0019】
発電プラント10は原子力や火力で発電を行う。発電プラント10には、図示を省略しているが、原子炉、タービン、発電機、ポンプや配管などの多数の機器や系統が使用されている。発電プラント10は、これらの機器系統により発電を行う。発電プラント10には、各機器系統の状態を調べるために、同じく図示を省略しているが、各種のセンサが設置されている。各センサは、機器系統の測定値sg1~sg3をセンサ監視装置20に送る。
【0020】
センサ監視装置20は、発電プラント10に設置されているセンサからの測定値sg1~sg3を受け取る。センサ監視装置20は、各センサから測定値sg1~sg3を受け取ると、図2に示すようなセンサデータを作成する。センサデータには、センサを表すと共にセンサを識別するためのセンサ識別情報に対応して、センサが設置されている設置点が記録されている。また、センサデータには、センサ識別情報に対応して、センサの測定値や測定日時等が記録されている。
【0021】
センサ監視装置20は、作成したセンサデータを、所定時間が経過する毎に、社内通信網30を経てモデル監視装置40に送信する。所定時間は、秒単位、分単位、時間単位、日単位などのように、必要に応じてセンサ監視装置20に設定される。
【0022】
モデル監視装置40は、社内通信網30を経てセンサ監視装置20からセンサデータを受信すると、受信したセンサデータを用いて、発電プラント10を監視する。このために、モデル監視装置40は、通信制御部41と、データサーバ42と、管理サーバ43と、クライアント44~45とを備えている。そして、モデル監視装置40の通信制御部41~クライアント45は、データの送受信が可能なように接続されている。
【0023】
通信制御部41は、データサーバ42~クライアント45を社内通信網30に接続するための通信制御を行う。例えば、通信制御部41は、社内通信網30を経てセンサ監視装置20からセンサデータを受信すると、このセンサデータをデータサーバ42に送る。
【0024】
データサーバ42は、発電プラント10に関係するデータを記憶する記憶装置である。例えば、データサーバ42は、社内通信網30と通信制御部41とを経て、センサ監視装置20からセンサデータを受け取ると、このセンサデータを記憶していく。また、データサーバ42は、管理サーバ43からのデータ送信要求を受け取ると、該当するセンサデータを抽出して、管理サーバ43に送る。
【0025】
クライアント44~45は、発電プラント10を運用する担当者によって操作される、発電プラント10を運用するためのコンピュータである。クライアント44~45には、発電プラント10の運用のために必要とする各種の指示等が担当者により入力される。例えば、発電プラント10の各監視対象モデルを作成するために、クライアント44~45にはモデル作成指示が入力される。クライアント44~45は、モデル作成指示が入力されると、このモデル作成指示を管理サーバ43に送る。
【0026】
また、クライアント44~45には、後述する実働の系統を切り替えるための切替指示が入力される。クライアント44~45は、入力された切替指示を管理サーバ43に送る。
【0027】
また、クライアント44~45は、管理サーバ43から各種のデータ、例えば後述のアラームを受け取ると、アラームの表示等を行う。また、クライアント44~45は、管理サーバ43からセンサ一覧データを受け取ると、このデータを表示する。
【0028】
管理サーバ43は、発電プラント10の監視のために、各種の処理を行うコンピュータである。先ず、管理サーバ43は発電プラント10の各監視モデルを作成する。次に、管理サーバ43は作成した各モデルを基に発電プラント10を監視する。以下では、管理サーバ43による発電プラント10の各監視モデル作成と、各監視モデルによる発電プラント10の監視とについて順に説明する。
【0029】
管理サーバ43は、発電プラント10の各監視対象の監視モデルを作成するために、データサーバ42に対してデータ送信要求を送る。または、クライアント44~45からのモデル作成指示を受け取ったときに、データサーバ42に対してデータ送信要求を送る。この後、管理サーバ43はデータサーバ42から各センサデータを受け取って、各監視対象の監視モデル(第1のモデル)を作成する。
【0030】
管理サーバ43が受け取るセンサデータの一例を図3に示す。管理サーバ43は、こうしたセンサデータを用いて発電プラント10の監視モデルを作成する。このために、管理サーバ43は、各センサデータについて関係性の抽出を行う。例えば、図4に示すように、データサーバ42から受け取った、発電プラント10が正常に動いていたときの多数のセンサデータa1~anの中で、センサデータa1とセンサデータakとが同じように変化すると、管理サーバ43は、センサデータa1を出力するセンサと、センサデータakを出力するセンサとに関係性の強さがあると判断する。こうして、管理サーバ43は、データサーバ42から受け取ったセンサデータの中から関係性の強さがあるセンサを調べる。
【0031】
この後、管理サーバ43は、調べた総ての関係性の強さからモデルを作成する。つまり、管理サーバ43は、発電プラント10の監視対象に設置されているセンサについて、センサ間の関係性の強さを表す状態を監視モデルとする。
【0032】
管理サーバ43は、こうした監視モデルの作成を発電プラント10の各機器系統について行う。さらに、管理サーバ43は、例えばクライアント44からの指示等により、仮想センサによる合成信号を作成して監視モデルを生成する処理(「合成手法」という)をする。機器系統が冗長化されている場合、センサも冗長化されているときがある。例えば、図5に示すように、発電プラント10の機器系統の冗長化により、A系統101と、A系統101のバックアップ用としてB系統102およびC系統103とを発電プラント10が備え、A系統101~C系統103に対してIN-Aセンサ111、IN-Bセンサ112、IN-Cセンサ113およびOUTセンサ114を備えている。そして、IN-Aセンサ111、IN-Bセンサ112、IN-Cセンサ113による測定結果が測定値sg11、sg12、sg13であり、OUTセンサ114による測定結果が測定値sg21である。さらに、IN-Aセンサ111~IN-Cセンサ113はA系統101~C系統103の冗長化に伴って設けられている。
【0033】
この場合には、例えばA系統101~C系統103がポンプ系統であると、図6のセンサ一覧表に示すように、合成手法の適用前の従来手法によれば、A系統101では、ポンプによる冷却水等の流入量をIN-Aセンサ111が測定すると共にOUTセンサ114が流出量を測定する。そして、従来であればIN-Aセンサ111とOUTセンサ114との関係性の強さを基に、管理サーバ43はA系統101用の監視モデルを作成する。この後、管理サーバ43は、作成した監視モデルを基にしたセンサの予測値と、定期的に取得した実測値とにより、IN-Aセンサ111とOUTセンサ114との関係性の強さを調べる。そして、管理サーバ43は、関係性の崩れを検知するとアラーム(警報)を通知する。
【0034】
同様にして、管理サーバ43は、B系統102についてはIN-Bセンサ112とOUTセンサ114とを基に監視モデルを作製して、B系統102を監視する。C系統103についてはIN-Cセンサ113とOUTセンサ114とを基に監視モデルを作製して、C系統103を監視する。
【0035】
これに対して、この実施の形態では、合成手法により共通する1つの監視モデル(第2のモデル)でA系統101~C系統103の中の実働の機器系統を監視する。具体的には、共通の監視モデルは、冗長性のあるIN-Aセンサ111~IN-Cセンサ113を仮想センサとし、この仮想センサが出力する合成信号の値つまり合成値がIN-Aセンサ111~IN-Cセンサ113の測定値sg11、sg12、sg13を合成したものになる。この実施の形態では、管理サーバ43は測定値sg11、sg12、sg13を加算した値、
sg11+sg12+sg13
を合成信号の合成値とする。つまり、合成手法により、仮想センサからの合成信号の合成値が測定値sg11、sg12、sg13の加算値になる。
【0036】
管理サーバ43は、合成手法で得た合成信号の合成値とOUTセンサ114からの測定値sg21との関係性の強さを基に、A系統101~C系統103に共通する監視モデルを作成する。この後、管理サーバ43は、作成した共通の監視モデルを基にしたセンサの予測値と、A系統101~C系統103の中の実働の系統のセンサから定期的に取得した実測値とにより、仮想センサとOUTセンサ114との関係性を調べる。そして、管理サーバ43は、関係性の崩れを検知するとアラームを通知する。
【0037】
以上の様子を図7図8に示す。図7は従来手法を示す図であり、図7では冗長化されたA系統101とB系統102とを例としている。実働の系統がA系統101である場合、A系統101を基にした監視モデルにより、IN-Aセンサ111とOUTセンサ114との関係性の変化、例えば関係性の崩れを調べる。そして、クライアント44~45からの切替指示により、実働の系統がA系統101からB系統102に切り替えられた場合には、管理サーバ43は、A系統101を基にした監視モデルからB系統102を基にした監視モデルに切り替え、切り替えた監視モデルによりIN-Bセンサ112とOUTセンサ114との関係性の崩れを検知する。
【0038】
これに対して、この実施の形態では、図8に示すように、クライアント44~45の切替指示により、実働の系統がA系統101からB系統102に切り替えられた場合には、A系統101のポンプが時間経過と共に止まり、かつB系統102のポンプが動き始めるので、IN-Aセンサ111の測定値sg11が時間経過と共に小さくなり、かつIN-Bセンサ112の測定値sg12が大きくなっていく。仮想センサの合成値は、IN-Aセンサ111の測定値sg11とIN-Bセンサ112の測定値sg12とを加算した値である。この結果、仮想センサの合成値はIN-Aセンサ111の測定値sg11からIN-Bセンサ112の測定値sg12に移行していくので、管理サーバ43は監視モデルを切り替えることなく、仮想センサとOUTセンサ114との関係性を調べる。
【0039】
ところで、実際の発電プラント10では、例えばA系統101からB系統102への切り替えは、図9に示すように、瞬時に系統が切り替わるようなトグル的には切り替わらない。例えば図10に示すように、切り替え時の極短期間にA系統101とB系統102との両方が動作する過渡状態の期間、つまり過渡期間T1が存在する。この過度期間T1では、仮想センサからの合成値が極端に変化するために、仮想センサとOUTセンサ114との関係性が崩れることになる。こうした関係性の崩れに対しては、例えば崩れが発生してから一定期間経過後まで、この崩れが継続している場合に、この実施の形態では過渡期間T1が経過した後まで関係性の崩れが継続している場合には、アラームを通知するなどのようなフィルタリングにより、管理サーバ43が対応している。
【0040】
以上がこの実施の形態によるプラント監視システムの構成である。次に、このプラント監視システムの作用について述べる。管理サーバ43は、クライアント44~45からのモデル作成指示を受け取ると、データサーバ42に対してデータ送信要求を送る。この後、管理サーバ43は図11に示すような監視処理を行い、発電プラント10が正常に稼動しているときの各センサデータをデータサーバ42から受け取って、機器系統の監視に用いる監視モデルを作成する(ステップS1)。ステップS1では、発電プラント10の機器系統の中で例えばA系統101~C系統103が冗長化されていると、管理サーバ43は、同じく冗長化されているIN-Aセンサ111、IN-Bセンサ112、IN-Cセンサ113を仮想センサとする。そして、管理サーバ43は、冗長化されたIN-Aセンサ111、IN-Bセンサ112、IN-Cセンサ113からの測定値sg11、sg12、sg13(図5)を合成した値、例えば測定値sg11、sg12、sg13を加算した値を合成値、つまり仮想センサの出力とする。そして、管理サーバ43は仮想センサを用いて共通の監視モデルを作成する。
【0041】
管理サーバ43は、ステップS1で監視モデルの作成を終了すると、作成した監視モデルを使って発電プラント10の各機器系統の監視を開始し(ステップS2)、例えばA系統101を監視する(ステップS3)。このときに、発電プラント10での補機切り替え等で、例えばA系統101からB系統102に機器系統が切り替えられても、共通の監視モデルは仮想センサを基に作成されているので、従来のように監視モデルを切り替えることを行わなくても、管理サーバ43は継続してB系統102の監視を行うことができる。
【0042】
A系統101やB系統102を監視しているときに、仮想センサとOUTセンサ114との関係性の崩れを検知しなければ(ステップS4)、管理サーバ43は監視を終了するかを、例えばクライアント44~45からの指示で判断する(ステップS5)。管理サーバ43は、ステップS5で監視を終了すると判断すると、例えば監視終了をクライアント44~45に通知して監視を終了する(ステップS6)。
【0043】
一方、管理サーバ43は、ステップS4で仮想センサとOUTセンサ114との関係性の崩れを検知すると、関係性の崩れが切り替え時の過渡期間T1を超えて継続しているかを判断する(ステップS7)。管理サーバ43は、関係性の崩れが過渡期間T1を超えて継続していると判断すると、例えばクライアント44~45にアラームを通知する(ステップS8)。ステップS7で関係性の崩れが過渡期間T1を超えて継続していないと判断するか、または、ステップS8の処理を終了すると、管理サーバ43は、ステップS5以下の処理を行う。つまり、管理サーバ43は監視を終了するかをステップS5で判断する。管理サーバ43は、監視を終了すると判断すると、ステップS6で監視終了を通知して監視を終了する。
【0044】
こうして、この実施の形態によれば、監視モデルの切り替え条件となる機器系統の状態変化が発生した場合、例えば故障によるものでなく、実働する機器系統を予備機等と定期的に切り替える場合、実働の機器系統と予備機とに冗長性があるときは、両機器系統のセンサ値を合成した仮想信号で共通の監視モデルを作成することにより、監視モデルの切り替え頻度を削減することができる。
【0045】
また、この実施の形態によれば、機器系統に冗長性がある場合に作成する共通の仮想センサについては、各センサの測定値を加算して出力とすればよいので、共通の仮想センサの出力を簡単な演算で得ることを可能にする。
【0046】
さらに、この実施の形態によれば、機器系統を切り替える際に発生するセンサの関係性の崩れによる誤通知を、過渡期間Tによるフィルタリングで防ぐことができる。
【符号の説明】
【0047】
10 発電プラント
20 センサ監視装置
30 社内通信網
40 モデル監視装置(監視手段)
41 通信制御部
42 データサーバ
43 管理サーバ
44~45 クライアント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11