(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】作業機械のバケット用のツースの摩耗を検査するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20231020BHJP
E02F 9/28 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
E02F9/26 A
E02F9/28 A
(21)【出願番号】P 2020022609
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淑彦
(72)【発明者】
【氏名】伊輪 公博
(72)【発明者】
【氏名】中村 龍太
(72)【発明者】
【氏名】茗荷谷 聖
(72)【発明者】
【氏名】荒木 篤実
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0165884(US,A1)
【文献】特表2017-503093(JP,A)
【文献】特開2014-118760(JP,A)
【文献】国際公開第2019/181923(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
E02F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のバケット用のツースの摩耗を検査するためにコンピュータによって実行される方法であって、前記コンピュータはカメラおよびディスプレイと通信可能であり、
前記カメラによって撮影された前記ツースの実画像を示す画像データを取得することと、
前記ツースの摩耗限界の位置を示すデータを取得することと、
前記摩耗限界の位置を示す画像と前記ツースの実画像とを互いに重ね合わせて、前記ディスプレイに表示させること
と、
前記画像データから、前記ツースの現在の長さを計測することと、
前記ツースの未使用時の長さを含むモデルデータを取得することと、
前記ツースの未使用時の長さと前記ツースの現在の長さとから、前記ツースの摩耗度を算出することと、
前記摩耗度から摩耗速さを算出し、前記摩耗速さに基づいて、前記ツースが前記摩耗限界に達するまでの残存稼働時間と、前記ツースの長さが前記摩耗限界に到達する摩耗限界時期との少なくとも一方とを算出することと、
算出した前記残存稼働時間と前記摩耗限界時期との少なくとも一方を前記ディスプレイに表示させること、
を備える方法。
【請求項2】
前記ツースの現在の長さと前記摩耗限界の位置とから、前記ツースの残りの長さを算出することと、
前記ツースの残りの長さを前記ディスプレイに表示させること、
をさらに備える請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記ツースの現在の長さと前記ツースの残りの長さとの少なくとも一方を示す画像を、前記ツースの実画像に重ね合わせて、前記ディスプレイに表示させることをさらに備える、
請求項
1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記摩耗度を前記ディスプレイに表示させること、
をさらに備える請求項
1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータは、外部のサーバーと通信可能であり、
前記ツースの現在の長さを含むツースデータを前記サーバーに送信することをさらに備える、
請求項
1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記バケットにおける前記ツースの取り付け位置を示す配置データを取得することと、
前記配置データを前記ディスプレイに表示させること、
をさらに備える請求項1から
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ツースは、内部の空洞を含み、
前記ツースにおける前記内部の空洞の位置から、前記摩耗限界の位置を決定することをさらに備える、
請求項1から
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ツースは、前記バケットに設けられたアダプタが嵌入されるための内部の空洞を含み、
前記摩耗限界の位置は、前記ツースがバケットに取り付けられた状態における前記アダプタの位置から決定される、
請求項1から
6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
作業機械のバケット用のツースの摩耗を検査するためのシステムであって、
カメラと、
ディスプレイと、
前記カメラおよび前記ディスプレイと通信可能に接続されたコンピュータと、
を備え、
前記コンピュータは、
前記カメラによって撮影された前記ツースの実画像を示す画像データを取得し、
前記ツースの摩耗限界の位置を示すデータを取得し、
前記摩耗限界の位置を示す画像と前記ツースの実画像とを互いに重ね合わせて、前記ディスプレイに表示さ
せ、
前記画像データから、前記ツースの現在の長さを計測し、
前記ツースの未使用時の長さを含むモデルデータを取得し、
前記ツースの未使用時の長さと前記ツースの現在の長さとから、前記ツースの摩耗度を算出し、
前記摩耗度から摩耗速さを算出し、前記摩耗速さに基づいて、前記ツースが前記摩耗限界に達するまでの残存稼働時間と、前記ツースの長さが前記摩耗限界に到達する摩耗限界時期との少なくとも一方とを算出し、
算出した前記残存稼働時間と前記摩耗限界時期との少なくとも一方を前記ディスプレイに表示させる、
システム。
【請求項10】
前記コンピュータは、
前記ツースの現在の長さと前記摩耗限界の位置とから、前記ツースの残りの長さを算出し、
前記ツースの残りの長さを前記ディスプレイに表示させる、
請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コンピュータは、前記ツースの現在の長さと前記ツースの残りの長さとの少なくとも一方を示す画像を、前記ツースの実画像に重ね合わせて、前記ディスプレイに表示させる、
請求項
9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コンピュータ
は、前記摩耗度を前記ディスプレイに表示させる、
請求項
9から11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記コンピュータは、外部のサーバーと通信可能であり、
前記コンピュータは、前記ツースの現在の長さを含むツースデータを前記サーバーに送信する、
請求項
9から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータは、
前記バケットにおける前記ツースの取り付け位置を示す配置データを取得し、
前記配置データを前記ディスプレイに表示させる、
請求項
9から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記ツースは、内部の空洞を含み、
前記コンピュータは、前記ツースにおける前記内部の空洞の位置から、前記摩耗限界の位置を決定する、
請求項
9から14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記ツースは、前記バケットに設けられたアダプタが嵌入されるための内部の空洞を含み、
前記摩耗限界の位置は、前記ツースがバケットに取り付けられた状態における前記アダプタの位置から決定される、
請求項
9から14のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械のバケット用のツースの摩耗を検査するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械の掘削バケットには、アダプタを介して、バケットツースが取り付けられる。ツースの使用に応じて、ツースは摩耗する。ツースの摩耗がある程度まで進行すると、ツースは交換される。例えば、ツースは、内部の空洞を有している。アダプタの先端部は、ツースの内部の空洞に挿入される。アダプタの先端部の摩耗を防止するために、アダプタの先端部がツースの外部に露出する前に、ツースが交換される。
【0003】
特許文献1では、ツースの内部の空洞において、アダプタの先端部とツースの内部の空洞との間に空間(サインポケット)が設けられている。ツースがアダプタの先端部の近くまで摩耗すると、サインポケットがツースの外部に露出することで、使用者にツースの交換時期を知らせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術では、使用者が、サインポケットが露出したことに気づかずに、作業を行うと、サインポケットから土砂がツースの内部の空洞に侵入してしまう。その場合、アダプタを損耗する可能性がある。また、使用者は、サインポケットが露出するまで、ツースの交換時期を把握することは困難である。本開示の目的は、アダプタの損耗を防止し、且つ、使用者がツースの交換時期を容易に把握することを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、作業機械のバケット用のツースの摩耗を検査するためにコンピュータによって実行される方法である。コンピュータは、カメラおよびディスプレイと通信可能である。本態様に係る方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、カメラによって撮影されたツースの実画像を示す画像データを取得することである。第2の処理は、ツースの摩耗限界の位置を示す限界位置データを取得することである。第3の処理は、摩耗限界の位置を示す画像とツースの実画像とを互いに重ね合わせて、ディスプレイに表示させることである。なお、上述した処理の実行の順番は、上記の記載の順番に限らず、変更されてもよい。
【0007】
本開示の第2の態様は、作業機械のバケット用のツースの摩耗を検査するためのシステムである。本態様に係るシステムは、カメラと、ディスプレイと、コンピュータとを備える。コンピュータは、カメラおよびディスプレイと通信可能に接続される。コンピュータは、以下の処理を実行するように構成されている。コンピュータは、カメラによって撮影されたツースの実画像を示す画像データを取得する。コンピュータは、ツースの摩耗限界の位置を示す限界位置データを取得する。コンピュータは、摩耗限界の位置を示す画像とツースの実画像とを互いに重ね合わせて、ディスプレイに表示させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る方法及びシステムによれば、摩耗限界の位置を示す画像とツースの実画像とが、互いに重ね合わせてディスプレイに表示される。それにより、使用者は、ツースの交換時期を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】本実施形態に係るシステムの構成を示すブロック図である。
【
図7】コンピュータによって実行される処理を示すフローチャートである。
【
図9】バケットにおけるツースの取り付け位置の一例を示す。
【
図10】位置合わせ時の画像の一例を示す図である。
【
図11】位置合わせ時の画像の一例を示す図である。
【
図12】位置合わせ時の画像の一例を示す図である。
【
図16】コンピュータによって実行される処理を示すフローチャートである。
【
図17】検査データに含まれる摩耗度の変化を示すグラフである。
【
図22】ツースの摩耗限界の位置の他の例を示す図である。
【
図23】計測されるツースの長さの第1変形例を示す図である。
【
図24】計測されるツースの長さの第2変形例を示す図である。
【
図25】計測されるツースの長さの第3変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態に係るシステム及び方法について説明する。本実施形態に係るシステム及び方法は、作業機械のバケット用のツースの摩耗を検査するための方法及びシステムである。
図1は、作業機械1の一例を示す図である。作業機械1は、例えば油圧ショベルである。作業機械1は、バケット2を備えている。
【0011】
図2は、バケット2の拡大図である。
図2に示すように。バケット2には、ツース3が、アダプタ4を介して取り付けられる。
図3は、アダプタ4の斜視図である。
図3に示すように。アダプタ4は、先端部11と、バケット2への取付部12とを含む。先端部11は、先細りの形状を有している。取付部12は、凹部13を含む。凹部13には、バケット2の一部が挿入される。
【0012】
図4は、ツース3の斜視図である。
図5は、ツース3の側面図である。
図4及び
図5に示すように、ツース3の外面は、先細りの形状を有している。ツース3は、内部の空洞14(以下、「ツースポケット14」と呼ぶ)を含む。ツースポケット14の内面は、先細りの形状を有している。ツースポケット14には、アダプタ4の先端部11が挿入される。ツース3は、アダプタ4に着脱可能に取り付けられる。ツース3は、例えば、ピンなどの取付部材を介して、アダプタ4に取り付けられる。
【0013】
図6は、本実施形態に係るシステム5の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、システム5は、コンピュータ21と、カメラ22と、ディスプレイ23とを備える。コンピュータ21は、メモリ24と、プロセッサ25とを含む。メモリ24は、システム5を制御するためのプログラム及びデータを記憶する。メモリ24は、例えばRAM(Random access memory)及びROM(Read only memory)を含む。プロセッサ25は、プログラム及びデータに基づいて、システム5を制御するための処理を実行する。プロセッサ25は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0014】
カメラ22は、画像を撮影し、画像を示す信号を出力する。ディスプレイ23は、カメラ22によって撮影された画像を表示する。ディスプレイ23は、例えばLCD(liquid crystal display)、或いはOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイであってもよく、或いは、他の種類のディスプレイであってもよい。ディスプレイ23は、コンピュータ21から出力される画像を表示する。
【0015】
システム5は、ストレージ26と、入力装置27と、通信モジュールと28を備える。ストレージ26は、システム5を制御するためのプログラム及びデータを記憶する。ストレージ26は、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよい。或いは、ストレージ26は、HDD(Hard Disk Drive)などの他の記録媒体であってもよい。
【0016】
入力装置27は、オペレータによって操作可能である。入力装置27は、例えばタッチスクリーンを含む。或いは、入力装置27は、ハードウェアキーを含んでもよい。入力装置27は、マウスなどのポインティングデバイスを含んでもよい。通信モジュール28は、外部の機器とデータの送受信を行う。通信モジュール28は、モバイルネットワーク、或いは無線LANなどの通信ネットワーク29を介して、サーバー30などの外部の機器と通信を行う。
【0017】
上述したシステム5の構成は、一体的に1つの装置に実装されてもよい。例えば、システム5は、スマートフォン、タブレット、ウェアラブルデバイス、或いはラップトップPCなどのモバイルコンピュータに搭載されてもよい。或いは、上述したシステム5の構成は、複数の独立した装置に分散して配置されてもよい。
【0018】
次に、ツース3の摩耗を検査するための制御について説明する。
図7は、コンピュータ21によって実行される処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、ステップS101では、コンピュータ21は、機械データを取得する。機械データは、作業機械1の機種、作業機械1のシリアル番号、作業機械1の累積稼働時間を含む。作業機械1の累積稼働時間は、例えば、作業機械1のシステムがアクティブである間の時間である。或いは、作業機械1の累積稼働時間は、作業機械1が掘削などの特定の作業を行っている間の時間であってもよい。コンピュータ21は、機械データの一部、或いは全てを、オペレータによる入力装置27の操作によって取得してもよい。或いは、コンピュータ21は、機械データの一部、或いは全てを、ストレージ26、或いは外部のサーバー30から取得してもよい。
【0019】
ステップS102では、コンピュータ21は、バケットデータを取得する。バケットデータは、バケット2の種類とツース3の種類とを含む。例えば、オペレータは、入力装置27の操作によって、バケット2の種類とツース3の種類とを選択してもよい。コンピュータ21は、選択されたバケット2の種類とツース3の種類とに対応するバケットデータを、サーバー30から取得してもよい。バケットデータは、バケット2、アダプタ4、及びツース3のモデルデータを含む。モデルデータは、バケット2、アダプタ4、及びツース3の3次元的形状を示す。なお、コンピュータ21は、バケットデータをストレージ26から取得してもよい。
【0020】
ステップS103では、コンピュータ21は、ツース3の画像データを取得する。オペレータは、カメラ22によってツース3を撮影する。撮影されるツース3は、バケット2に装着された状態であってよい。画像データは、カメラ22によって撮影されたツース3の実画像を示す。
図8に示すように、コンピュータ21は、カメラ22によって撮影されたツース3の実画像31をディスプレイ23上に表示する。
【0021】
ステップS104では、コンピュータ21は、ツース3の配置データを取得する。配置データは、バケット2におけるツース3の取り付け位置を示す。
図9は、バケット2におけるツース3の取り付け位置の一例を示す。
図9に示すように、バケット2には、複数のツース3a-3eが取り付けられる。複数のツース3a-3eは、第1~第5ツース3a-3eを含む。バケット2におけるツース3a-3eの取り付け位置は、第1~第5位置P1-P5を含む。なお、ツース3の数およびツース3の取り付け位置の数は、5つに限らず、5つより少なくても、或いは多くてもよい。なお、以下の説明において、「ツース3」は、複数のツース3a-3eのうち任意の1つを意味するものとする。
【0022】
図8に示すように、コンピュータ21は、ツース3の取り付け位置を示す位置インジケータ32をディスプレイ23に表示する。オペレータは、入力装置27の操作によって、撮影中のツース3に対応する取り付け位置を選択する。コンピュータ21は、選択された取付位置を、撮影中のツース3に対応する配置データとして取得する。
【0023】
ステップS105では、コンピュータ21は、位置合わせを行う。コンピュータ21は、バケット2、アダプタ4、或いはツース3のモデル画像上の参照位置をディスプレイ23に表示する。オペレータは、カメラ22を移動させて、ディスプレイ23上の実画像31中のバケット2、アダプタ4、或いはツース3を、参照位置に合わせる。
【0024】
例えば、
図10に示すように、コンピュータ21は、アダプタ4のモデル画像33をディスプレイ23に表示させる。この場合、参照位置は、アダプタ4全体である。オペレータは、カメラ22を移動させて、ディスプレイ23上の実画像31中のアダプタ4を、アダプタ4のモデル画像33の位置に合わせる。また、オペレータは、ディスプレイ23上の実画像31を拡大又は縮小することで、ディスプレイ23上の実画像31中のアダプタ4を、アダプタ4のモデル画像33の位置に合わせる。タッチスクリーンが用いられる場合には、オペレータは、タッチスクリーンへのピンチアウト、ピンチインの操作によって、実画像31を拡大又は縮小してもよい。なお、参照位置は、アダプタ4の全体に限らず、アダプタ4の一部であってもよい。参照位置は、アダプタ4上の複数の点であってもよい。
【0025】
或いは、
図11に示すように、コンピュータ21は、バケット2のモデル画像34をディスプレイ23に表示させてもよい。この場合、参照位置は、バケット2の一部である。オペレータは、カメラ22を移動させて、ディスプレイ23上の実画像31中のバケット2の一部を、バケット2のモデル画像34の位置に合わせる。また、オペレータは、ディスプレイ23上の実画像31を拡大又は縮小することで、ディスプレイ23上の実画像31中のバケット2を、バケット2のモデル画像34の位置に合わせる。なお、参照位置は、バケット2の一部に限らず、バケット2の全部であってもよい。参照位置は、バケット2上の複数の点であってもよい。
【0026】
或いは、
図12に示すように、コンピュータ21は、ツース3のモデル画像35をディスプレイ23に表示させてもよい。この場合、参照位置は、ツース3の一部である。例えば、参照位置は、ツース3の基端部である。オペレータは、カメラ22を移動させて、ディスプレイ23上の実画像31中のツース3の一部を、ツース3のモデル画像35の位置に合わせる。また、オペレータは、ディスプレイ23上の実画像31を拡大又は縮小することで、ディスプレイ23上の実画像31中のツース3を、ツース3のモデル画像35の位置に合わせる。なお、参照位置は、ツース3上の複数の点であってもよい。
【0027】
ステップS106では、コンピュータ21は、ツース3の実形状の認識を行う。コンピュータ21は、実画像31の画像解析により、ツース3の実形状を認識する。コンピュータ21は、実画像31中のツース3の複数の特徴点を自動的に認識して、ツース3の実形状を認識してもよい。或いは、オペレータが手動で、実画像31中のツース3の複数の特徴点を指定してもよい。コンピュータ21は、指定された特徴点からツース3の実形状を認識してもよい。或いは、コンピュータ21が認識した実画像31中のツース3の複数の特徴点から1つをオペレータが手動で指定してもよい。コンピュータ21は、指定された特徴点と同様の境界条件を有する複数の特徴点から、ツース3の実形状を認識してもよい。
【0028】
ステップS107では、コンピュータ21は、AR(Augmented Reality)画像を生成する。
図13に示すように、コンピュータ21は、上述したモデルデータから未使用時のツース3の形状を示すモデル画像35と、ツース3の摩耗限界の位置を示すモデル画像36とを生成する。コンピュータ21は、ツース3の実画像31と、未使用時のツース3を示すモデル画像35と、ツース3の摩耗限界の位置を示すモデル画像36とを互いに重ね合わせて、ディスプレイ23上に表示する。なお、本実施形態では、ツース3の摩耗限界の位置は、ツース3のツースポケット14の位置である。
【0029】
ツース3の摩耗限界の位置は、ツース3が装着されているアダプタ4の位置であっても良い。詳細には、摩耗限界の位置は、アダプタ4の先端部のコーナーの位置であっても良い。アダプタ4の先端部は、ツースポケット14内でツース3に嵌合しており、画像ではツースポケット14の位置とアダプタ4の位置は、略同じである。
【0030】
ステップS108では、コンピュータ21は、ツース3の現在の長さL
CURRENTを計測する。
図14に示すように、コンピュータ21は、画像データから、ツース3の基端と先端との間の長さを、ツース3の現在の長さL
CURRENTとして計測する。
【0031】
ステップS109では、コンピュータ21は、ツース3の摩耗度を算出する。
図15に示すように、コンピュータ21は、ツース3の現在の長さと摩耗限界の位置とから、ツース3の残りの長さを算出する。コンピュータ21は、以下の式(1)により、ツース3の摩耗度を算出する。
W={1-L
REMAIN/(L
NEW-L
LIMIT)}×100 (1)
Wは、摩耗度である。L
REMAINは、ツース3の残りの長さである。
図5に示すように、L
NEWは、ツース3の未使用時(新品時)の長さである。L
LIMITは、ツース3の摩耗限界長である。コンピュータ21は、ツース3の未使用時(新品時)の長さと、摩耗限界の位置とから、ツース3の摩耗限界長を算出してもよい。或いは、摩耗限界長は、ツース3のモデルデータに含まれていてもよい。コンピュータ21は、ツース3の現在の長さL
CURRENTを示すグラフィック画像37と、残りの長さL
REMAINを示すグラフィック画像38と、摩耗度を示すグラフィック画像39とをディスプレイ23に表示させる。
【0032】
ステップS110では、コンピュータ21は、ツースデータを保存する。ツースデータは、AR画像と、ツース3の配置と、現在の長さと、残りの長さと、摩耗度とを含む。AR画像は、上述した、互いに重ね合ったツース3の実画像31と、モデル画像35,36と、グラフィック画像37-39とを含む。コンピュータ21は、オペレータによる入力装置27の操作に応じて、ツースデータを保存してもよい。或いは、コンピュータ21は、オペレータによる入力装置27の操作なしで、自動的にツースデータを保存してもよい。
【0033】
ステップS111では、コンピュータ21は、全てのツース3a-3eのツースデータが保存されたかを判定する。全てのツース3a-3eのツースデータが保存されていないときには、処理はステップS103に戻る。例えば、第1~第5ツース3a-3eのうち第1ツース3aのツースデータのみが保存されているときには、処理はステップS103に戻る。そして、残りの第2~第5ツース3b-3eに対して、上述したS103~S110の処理が繰り返される。全てのツース3a-3eのツースデータが保存されたときには、処理は
図16に示すステップS201に進む。
【0034】
ステップS201では、コンピュータ21は、検査データをサーバー30に送信する。検査データは、全てのツース3のツースデータと機械データとを含む。サーバー30は、コンピュータ21から受信した検査データを、サーバー30のストレージに保存する。ステップS202では、コンピュータ21は、過去の検査データをサーバー30から受信する。
【0035】
ステップS203では、コンピュータ21は、残存稼働時間を算出する。残存稼働時間は、現在から、ツース3が摩耗限界に達するまでの稼働時間である。コンピュータ21は、各ツース3の摩耗速さから、残存稼働時間を算出する。摩耗速さは、ツース3の使用時間に対するツース3の磨耗量を示す。ツース3の使用時間は、作業機械1の累積稼働時間に対応している。
図17は、検査データに含まれる摩耗度の変化を示すグラフである。
図17において、W3は今回の検査データでの摩耗度を示している。W2は、1つ前の検査での摩耗度を示している。W3は、2つ前の検査での摩耗度を示している。摩耗速さは、
図17において破線A1で示す摩耗度の変化の傾きに相当する。
【0036】
コンピュータ21は、以下の式(2)~(4)のいずれかによって、摩耗速さXを算出してもよい。
X=(LNEW-LCURRENT)/(SMRCURRENT-SMRINITIAL) (2)
X=(LPREVIOUS-LCURRENT)/(SMRCURRENT-SMRPREVIOUS) (3)
X=XESTIMATE (4)
コンピュータ21は、前回のツース3の交換時の作業機械1の累積稼働時間と、今回の検査データとが利用可能なときに、式(2)を用いて、摩耗速さXを算出する。LNEWは、未使用時のツース3の長さ、すなわち前回のツース3の交換時のツース3の長さである。LCURRENTは、今回の検査時のツース3の長さである。SMRCURRENTは、今回の検査時の作業機械1の累積稼働時間である。SMRINITIALは、前回のツース3の交換時の作業機械1の累積稼働時間である。
【0037】
コンピュータ21は、前回の検査データと、今回の検査データとが利用可能なときに、式(3)を用いて、摩耗速さXを算出する。LPREVIOUSは、前回の検査時のツース3の長さである。SMRPREVIOUSは、前回の検査時の作業機械1の累積稼働時間である。
【0038】
コンピュータ21は、過去の検査データが利用不可能なときには、式(4)を用いて、摩耗速さXを算出する。XESTIMATEは、サーバー30に保存された摩耗速さの推定値である。例えば、サーバー30は、作業機械1の機種ごとにXESTIMATEを有してもよい。或いは、サーバー30は、バケット2の種類ごとにXESTIMATEを有してもよい。
【0039】
コンピュータ21は、複数のツース3a-3eのそれぞれの磨耗速さを取得する。例えば、コンピュータ21は、第1ツース3aのツースデータから第1ツース3aの磨耗速さを取得する。コンピュータ21は、第2ツース3bのツースデータから第2ツース3bの磨耗速さを取得する。同様に、コンピュータ21は、第3~第5ツース3c-3eのそれぞれツースデータから、第3~第5ツース3c-3eのそれぞれの磨耗速さを取得する。
【0040】
ステップS204では、コンピュータ21は、レポートデータを生成する。レポートデータは、ツース3の摩耗状態のレポートを示す。ステップS204において、コンピュータ21は、レポートをディスプレイ23に表示する。
図18は、レポート40の一例を示す図である。
図18に示すように、レポート40は、作業機械1の機種、作業機械1のシリアル番号、作業機械1の累積稼働時間を示す機械データ41を含む。レポート40は、バケット2の種類とツース3の種類とを含むバケットデータ42を含む。レポート40は、ツースデータの一覧43を含む。ツースデータの一覧43は、全てのツース3a-3eのツースデータの一覧を示す。
【0041】
図19は、ツースデータの一覧43の拡大図である。
図19に示すように、ツースデータの一覧43は、第1~第5ツース3a-3eのそれぞれの配置データ51、ツース3の未使用時(新品時)の長さ52、ツース3の現在の長さ53、ツース3の残りの長さ54、摩耗度55、残存稼働時間56、AR画像57、評価58を含む。評価58は、複数のレベルを有する。コンピュータ21は、摩耗度に応じて評価を決定する。
【0042】
レポート40は、摩耗限界の予測44を含む。コンピュータ21は、複数のツース3a-3eのうち、摩耗度が閾値よりも大きいツース3について、摩耗限界の予測44をレポート40に表示する。或いは、コンピュータ21は、全てのツース3a-3eについて、摩耗限界の予測44をレポート40に表示してもよい。
図20は、摩耗限界の予測44の拡大図である。
図20に示すように、摩耗限界の予測44は、摩耗度の変化のグラフ61と、摩耗限界時期の予測62とを含む。摩耗限界時期は、ツース3の長さが摩耗限界に到達する時期である。コンピュータ21は、上述した残存稼働時間の算出方法と同様の方法で、摩耗限界時期を算出する。
【0043】
レポート40は、ツース3の摩耗状態
図45を含む。コンピュータ21は、複数のツース3a-3eのうち、摩耗度が閾値よりも大きいツース3について、摩耗状態
図45をレポート40に表示する。或いは、コンピュータ21は、全てのツース3a-3eについて、摩耗状態
図45をレポート40に表示してもよい。
図21は、ツース3の摩耗状態
図45の拡大図である。
図21に示すように、ツース3の摩耗状態
図45は、ツース3の側面図で示される。ツース3の摩耗状態
図45は、ツース3の未使用時の外形63と、現在の外形64と、摩耗限界の位置65と、交換推奨位置66とを含む。
【0044】
以上説明した本実施形態に係るシステム5及び方法によれば、摩耗限界の位置を示す画像36とツース3の実画像31とが、互いに重ね合わせてディスプレイ23に表示される。それにより、使用者は、ツース3の交換時期を容易に把握することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、作業機械1は、油圧ショベルに限らず、他の種類の作業機械であってもよい。システム5の構成は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。
【0046】
コンピュータ21によって実行される処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。例えば、上記の実施形態の処理の一部が、変更、或いは省略されてもよい。上記の実施形態の処理の順番が変更されてもよい。上記の実施形態の処理に他の処理が追加されてもよい。
【0047】
上記の実施形態では、ツース3の摩耗限界の位置65は、ツースポケット14の位置である。しかし、
図22に示すように、ツース3の摩耗限界の位置65は、ツースポケット14よりもツース3の先端側の位置であってもよい。この場合、コンピュータ21は、ツース3におけるツースポケット14の位置から、摩耗限界の位置65を決定してもよい。例えば、コンピュータ21は、ツースポケット14よりも所定距離だけ先端側の位置を、摩耗限界の位置65として決定してもよい。
【0048】
上記の実施形態では、コンピュータ21は、ツース3の長手方向の長さを、ツース3の長さとして計測している。しかし、コンピュータ21は、ツース3の他の方向における長さを、ツース3の長さとして計測してもよい。例えば、
図23に示すように、コンピュータ21は、ツース3の中心線上のツース3の長手方向の長さL1と、ツース3の中心線から左右方向へのツース3の長さL2,L3とを計測してもよい。或いは、
図24に示すように、コンピュータ21は、ツースポケット14の角部からツース3の長手方向への長さL4,L5と、ツースポケット14の角部からツース3の左右方向への長さL6,L7とを計測してもよい。或いは、
図25に示すように、コンピュータ21は、ツースポケット14の角部の中心からツース3の外面までの最短距離L8,L9を計測してもよい。或いは、コンピュータ21は、ツース3の摩耗が進むことで、ツース3において最初に孔が開く位置の長さを計測してもよい。
【0049】
レポート40の内容は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。上記の実施形態のレポート40の一部が、変更、或いは省略されてもよい。或いは、他の事項がレポート40に追加されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示に係る方法及びシステムによれば、使用者は、ツースの交換時期を容易に把握することができる。
【符号の説明】
【0051】
21 コンピュータ
22 カメラ
23 ディスプレイ