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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】半導体パッケージ及び半導体発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/54 20100101AFI20231020BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20231020BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20231020BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L23/12 F
H01L23/02 C
H01L23/02 F
H01L23/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020025224
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021132061
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一ノ倉 啓慈
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 一義
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-263248(JP,A)
【文献】特開2016-103636(JP,A)
【文献】特開2013-093583(JP,A)
【文献】特開2010-010474(JP,A)
【文献】特開2019-087734(JP,A)
【文献】特開2019-117939(JP,A)
【文献】特開2019-047123(JP,A)
【文献】特開2018-037583(JP,A)
【文献】特開2012-008265(JP,A)
【文献】特開2019-129256(JP,A)
【文献】特開2017-188653(JP,A)
【文献】特開2018-006693(JP,A)
【文献】特開2018-037582(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0307003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
H01L 23/00 - 23/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側に開口を有する半導体収容空間が形成された半導体パッケージ基板と、
前記半導体パッケージ基板の縁部に形成された搭載領域に搭載された蓋部材と、
前記蓋部材と前記縁部とを接合する接合部材と、を備え、
前記半導体パッケージ基板は、
前記開口の開口側と反対側から前記半導体収容空間を区画するとともに、半導体発光素子を実装する実装面と
前記実装面の周囲に設けられるとともに前記半導体収容空間を区画し前記実装面に実装された前記半導体発光素子から発せられた光を反射する反射壁と
を備え、
前記反射壁は、前記実装面から離れるほど外方へと拡がる傾斜面により形成されており、
前記半導体パッケージ基板は、前記縁部と接続された段差部を有し、
前記段差部は、前記接合部材が前記搭載領域から前記半導体収容空間内に流れ込まないように、前記搭載領域と前記反射壁とを空間的に分離し、
前記搭載領域は、Auメッキ膜が被覆されている、半導体パッケージ。
【請求項2】
前記段差部は、前記縁部と垂直に接続された側面と、前記側面と垂直に接続された分離面とを有する、
請求項1に記載の半導体パッケージ。
【請求項3】
前記Auメッキ膜は、4.965mm以上の表面積を有する、
請求項1又は2に記載の半導体パッケージ。
【請求項4】
前記接合部材のプリフォームの体積は、0.0466mm以上である、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体パッケージ。
【請求項5】
前記段差部の高さは、0.15mm以上である、
請求項3又は4に記載の半導体パッケージ。
【請求項6】
前記半導体パッケージ基板の表面における前記実装面と前記反射壁との間に形成された第2の段差部をさらに備える、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体パッケージ。
【請求項7】
前記反射壁は、Alにより形成されたAl蒸着膜により被覆されている、
請求項1乃至のいずれか1項に記載の半導体パッケージ。
【請求項8】
前記蓋部材は、石英ガラスにより形成されている、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体パッケージ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体パッケージと、
前記半導体パッケージ基板に実装された前記半導体発光素子と、
を備える、半導体発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パッケージ及び半導体発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体発光装置として、パッケージ基板に形成されたキャビティに半導体発光素子を収容したものが知られている。このような半導体発光装置として、例えば、半導体パッケージからの光取り出し効率を向上させるため、キャビティの壁部に傾斜を設ける構造を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体発光装置のパッケージ基板は、キャビティの壁部に傾斜する光反射面を設ける構造を有している。また、キャビティの開口を覆うように、半導体発光素子の出射光を透過する窓部材が配置されている。そして、パッケージ基板と窓部材とは、金錫(AuSn)の合金を含む低融点の金属材料で構成された接合部材により封止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-037583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の半導体発光装置によれば、接合部材としてAuSn共晶半田を用いた場合、このAuSn共晶半田がキャビティの壁部を伝いキャビティ内へ流れてしまう虞がある。AuSn共晶半田がキャビティ内に流れてしまうと、蓋部材の搭載領域に残るAuSn共晶半田の量が部分的に減ってしまう。その後、AuSn共晶半田が冷えて固まると、AuSn共晶半田の量が減少した部分と減少していない部分との間でAuSn共晶半田の厚みに高低差が生じ、両部分の間に応力が発生して蓋部材の割れやはがれに繋がる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、半導体発光素子を収容するキャビティ内に接合部材が流れてしまうことを抑制して蓋部材の割れやはがれを防ぐことができる半導体パッケージ及び半導体発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的として、本発明の一実施の態様による半導体パッケージは、一方側に開口を有する半導体収容空間が形成された半導体パッケージ基板と、前記半導体パッケージ基板の縁部に形成された搭載領域に搭載された蓋部材と、前記蓋部材と前記縁部とを接合する接合部材と、を備え、前記半導体パッケージ基板は、前記開口の開口側と反対側から前記半導体収容空間を区画するとともに、半導体発光素子を実装する実装面と前記実装面の周囲に設けられるとともに前記半導体収容空間を区画し前記実装面に実装された前記半導体発光素子から発せられた光を反射する反射壁とを備え、前記反射壁は、前記実装面から離れるほど外方へと拡がる傾斜面により形成されており、前記半導体パッケージ基板は、前記縁部と接続された段差部を有し、前記段差部は、前記接合部材が前記搭載領域から前記半導体収容空間内に流れ込まないように、前記搭載領域と前記反射壁とを空間的に分離し、前記搭載領域は、Auメッキ膜が被覆されている
【0008】
発明の他の実施の態様による半導体発光装置は、前記半導体パッケージと、前記半導体パッケージ基板に実装された半導体発光素子と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の半導体パッケージ及び半導体発光装置によれば、半導体発光素子を収容するキャビティ内に接合部材が流れてしまうことを抑制して蓋部材の割れやはがれを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る半導体発光装置の構成を説明する分解斜視図である。
図2】半導体発光素子の積層構造の一例を概略的に示す説明図ある。
図3】半導体パッケージ基板の構成の一例を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、図1のA-A断面図である。
図4】蓋部材の構成の一例を示す底面図である。
図5】半導体発光装置の構成の一例を説明する図であり、(a)は、平面図、(b)は、縦断面図である。
図6】半導体パッケージ基板と蓋部材との付着の結果の一例を示す写真図であり、(a)は、比較例に係る半導体発光装置、(b)は、本発明の一実施例に係る半導体発光装置である。
図7】試作したいくつかの半導体発光装置について蓋部材が接合できたか否かを調べた結果を表にまとめて示した図である。
図8】キャビティ側にAuSn共晶半田がはみ出した状態における半導体発光装置を模式的に示す断面図である。
図9】本発明の一変形例に係る半導体パッケージ基板の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施の形態に係る半導体発光装置の構成を説明する分解斜視図である。図1に示すように、この半導体発光装置1は、半導体発光素子2と、半導体発光素子2や回路を保護する役割を担う保護素子3と、これら半導体発光素子2及び保護素子3を包み込んで防護する半導体パッケージ4と、を備えて構成されている。以下、各構成要素の詳細について、説明する。
【0013】
(半導体発光素子2)
半導体発光素子2は、例えば、トランジスタ、レーザダイオード(Laser Diode:LD)、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)等を含む。本実施の形態では、半導体発光素子2として、紫外領域の波長の光(特に、中心波長が300nm以下の深紫外光)を発する発光ダイオードを例に挙げて説明する。
【0014】
図2は、半導体発光素子2の積層構造の一例を概略的に示す説明図である。図2に示すように、本実施の形態に係る半導体発光素子2は、サファイアで形成された透明基板21と、透明基板21上に形成されたAlGaN系の窒化物半導体層22と、電極23と、を有している。
【0015】
本実施の形態では、窒化物半導体層22は、透明基板21側から、AlNを含むバッファ層22a、n型AlGaNを含むnクラッド層22b、AlGaNを含む発光層22c、p型AlGaNを含むpクラッド層22d及びp型GaNを含むコンタクト層22eを順次形成して構成されている。電極23は、コンタクト層22e上に形成されたアノード側電極(p電極)23aと、nクラッド層22b上に形成されたカソード側電極(n電極)23bと、を有している。
【0016】
(保護素子3)
保護素子3は、例えば、電流の値によらずに電圧の値を一定に保てるツェナーダイオードが該当する。
【0017】
(半導体パッケージ4)
半導体パッケージ4は、半導体発光素子2及び保護素子3を収容する半導体パッケージ基板5と、半導体発光素子2及び保護素子3に被せられるように搭載される蓋部材6と、半導体パッケージ基板5及び蓋部材6を接合する接合部材7と、を備える。
【0018】
〔半導体パッケージ基板5〕
図3は、半導体パッケージ基板5の構成の一例を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、図1のA-A断面図である。半導体パッケージ基板5は、セラミックを含む無機材質基板である。具体的には、半導体パッケージ基板5は、例えば、高温焼成セラミック多層基板(HTCC、High Temperature Co-fired Ceramic)により形成される。
【0019】
半導体パッケージ基板5は、略直方体形状に形成され、その一の面(図示+Z方向の面をいう。以下、「上面」ともいう。)に半導体発光素子2及び保護素子3を収容する凹状のキャビティ51が形成されている。キャビティ51は、半導体収容空間の一例である。
【0020】
キャビティ51は、底側(図示-Z方向側)に形成された実装面511と、この実装面511の周囲に設けられ、光(ここでは、特に、深紫外線を含む紫外線をいう。)を反射する反射壁512と、により形成されている。
【0021】
実装面511は、半導体発光素子2及び保護素子3が実装される底面であり、図示は省略するが、半導体発光素子2及び保護素子3を接続するための電極(以下、「基板側電極」ともいう。)が設けられている。
【0022】
反射壁512は、実装面511に実装された半導体発光素子2から発せられた紫外線を反射して、キャビティ51の開口51a側に導くものである。そのため、好ましくは、反射壁512は、実装面511からキャビティ51の開口51a側に向かって、実装面511から離れるほど外方(キャビティ51の中心から離れる方向をいう。)に拡がる傾斜面により形成されている。実装面511と反射壁512とのなす角は、例えば、60±5°である。
【0023】
反射壁512は、金属膜で形成されている。紫外線の反射率を高めて光取出し効率を向上させるために、この金属膜は、例えば、Alにより形成されたAl蒸着膜を用いてよい。
【0024】
また、半導体パッケージ基板5は、縁部52に、蓋部材6が搭載される搭載領域(図5(b)の破線及び「R」参照。)を形成している。ここで、縁部52とは、半導体パッケージ基板5の上面の枠状の領域をいう。また、搭載領域Rとは、縁部52のうち、溶融した接合部材7を介して蓋部材6と接合する領域をいう。
【0025】
搭載領域Rは、Auメッキ膜521が被覆されている。Auメッキ膜521は、接合部材7を溶融する溶融パターンを形成する。
【0026】
Auメッキ膜521は、半導体パッケージ基板5の縁部52に沿って矩形枠形状に被覆されている。また、Auメッキ膜521は、縁部52の内側(キャビティ51側をいう。)の端部52aから、縁部52の外側(キャビティ51から離れる側をいう。)の端部52bよりもわずかに内側の位置に亘って形成されている。そのため、Auメッキ膜521の幅は、縁部52の幅よりも小さい。
【0027】
なお、図3(b)では、説明の便宜上、Auメッキ膜521の厚みを厚く描いているが、実際のAuメッキ膜521は、より薄いものであり、半導体パッケージ基板5や蓋部材6に対して無視できる程度の厚みである点に留意されたい。
【0028】
また、半導体パッケージ基板5は、縁部52と反射壁512との間に形成された第1の流れ防止部53を備える。第1の流れ防止部53は、接合部材7が搭載領域Rから反射壁512に伝わってキャビティ51内に流れ込まないように、反射壁512と搭載領域R(特に、Auメッキ膜521)とを空間的に分断する。
【0029】
第1の流れ防止部53は、段差状の形状を有している。具体的には、第1の流れ防止部53は、側面531と床面532とにより形成された段差部である。側面531は、半導体パッケージ基板5の縁部52の内側の端部52aと接続して実装面50の方向(図示-Z方向)に延びる平面である。床面532は、この側面531と接続してキャビティ51側に延びるとともに、反射壁512と接続する平面である。床面532は、分離面の一例である。なお、側面531及び床面532は、必ずしも平面でなくてもよく、曲面でもよく、表面に凹凸形状を含んだ面でもよい。
【0030】
側面531は、好ましくは、半導体パッケージ基板5の縁部52と垂直に接続する。また、床面532は、好ましくは、側面531と垂直に接続する。以上を換言すれば、第1の流れ防止部53は、好ましくは、垂直段差である。
【0031】
なお、「垂直」は、なす角が厳密に90°となる場合のみならず、製造過程などで生じ得る多少の誤差(例えば、1°以内)が入り込む場合も含むものとする。以下、同様の説明は、省略する。
【0032】
第1の流れ防止部53は、蓋部材6を半導体パッケージ基板5の縁部52に搭載する際に、搭載領域Rからキャビティ51側にあふれた接合部材7(図8の「7A」参照。)が反射壁512に到達しない程度の高さhを有している。ここで、第1の流れ防止部53の高さhとは、半導体パッケージ基板5の厚さ方向(図示Z方向)における搭載領域Rと反射壁512との距離をいい、本実施の形態では、側面531の高さを指す。
【0033】
また、半導体パッケージ基板5は、実装面511と反射壁512との間に形成された第2の流れ防止部54をさらに備えてもよい。第2の流れ防止部54は、接合部材7が反射壁512を伝い実装面511に流れることを抑制する機能を有している。第2の流れ防止部54は、第1の流れ防止部53と同様に、垂直段差で形成してもよい。
【0034】
半導体発光素子2は、キャビティ51に収容され、実装面511に実装される。半導体発光素子2は、透明基板21を上側(キャビティ51の開口51a側、図示+Z方向側)とし、窒化物半導体層22を下側(実装面511側、図示-Z方向側)として、半導体パッケージ基板5にフリップチップ実装されている。電極23a,23bは、半導体パッケージ基板5に設けられた基板側電極と、例えば、金バンプ等を介して電気的に接続されている。
【0035】
〔蓋部材6〕
図4は、蓋部材6の構成の一例を示す底面図である。なお、二点鎖線は、蓋部材6が半導体パッケージ基板5に搭載された状態(図5参照。)におけるAuメッキ膜521の位置を仮想的に示している。蓋部材6は、半導体パッケージ基板5の縁部52に形成された搭載領域Rに搭載される。蓋部材6は、例えば、石英ガラスを含むガラス蓋である。なお、蓋部材6は、紫外線を透過する材料で形成されていればよく、例えば、水晶やサファイアで形成されたものでもよい。
【0036】
図4に示すように、蓋部材6の底面6aは、矩形枠状の形状を有する金属膜61が形成されている。この金属膜61は、溶融した接合部材7が付着する性質を有する金属により形成される。また、金属膜61は、接合部材7のプリフォームを仮付する積層状の膜である。ここで、「プリフォーム」とは、溶融する前の状態にあるものをいう。接合部材7のプリフォームの厚さは、例えば、20±2μmである。
【0037】
この金属膜61の外縁61aは、蓋部材6が半導体パッケージ基板5に搭載された状態において、Auメッキ膜521の外縁521aよりも所定の距離W、蓋部材6の内側に位置している。また、金属膜61の内縁61bは、Auメッキ膜521の内縁521bよりも蓋部材6の外側に位置している。半導体パッケージ基板5と蓋部材6とが接合した後に、蓋部材6が半導体パッケージ基板5から剥がれにくくなるようにするためである。
【0038】
〔接合部材7〕
図5は、半導体発光装置1の構成の一例を示す図であり、(a)は、平面図、(b)は、縦断面図である。図5(b)に示すように、接合部材7は、蓋部材6が搭載された状態において、半導体パッケージ基板5のAuメッキ膜521と蓋部材6の金属膜61との間に設けられ、半導体パッケージ基板5と蓋部材6とを接合して封止する。
【0039】
具体的には、接合部材7は、半導体パッケージ基板5及び蓋部材6を半田付けにより接合する。接合部材7は、例えば、金(Au)と錫(Sn)とを主成分として含む合金により形成されたAuSn共晶半田である。このAuSn共晶半田は、例えば、20重量%のSnを含む。
【0040】
接合部材7は、半田付けにより、溶融して蓋部材6と半導体パッケージ基板5とを接合して一体化し、蓋部材6及び半導体パッケージ基板5で形成される内部空間を外部から気密に封止する。
【0041】
なお、図5(b)では、説明の便宜上、Auメッキ膜521の厚み、金属膜61の厚み及び接合部材7の厚みを厚く描いているが、実際のAuメッキ膜521、金属膜61及び接合部材7は、より薄いものであり、半導体パッケージ基板5や蓋部材6に対して無視できる程度の厚みである点に留意されたい。
【0042】
(実施例)
図6は、半導体パッケージ基板5と蓋部材6との付着の結果の一例を示す写真図であり、(a)は、比較例に係る半導体発光装置1を示し、(b)は、本発明の一実施例に係る半導体発光装置1を示している。この写真図は、半導体発光装置1を上側(図示+Z方向側)から撮影したものである。ここで、比較例は、第1の流れ防止部53を備えていない半導体発光装置1である。
【0043】
図6(a)に示すように、比較例に係る半導体発光装置1では、AuSn共晶半田がキャビティ51内に流れる半田流れ70が生じている。また、蓋部材6には、半田流れ70によって引き起こされたと考えられる、いくつかの石英ガラスの割れ(「P」参照)が生じている。
【0044】
これに対して、図6(b)に示すように、本発明の一実施例に係る半導体発光装置1、すなわち、第1の流れ防止部53を備えた半導体発光装置1では、半田流れ70は、生じていない。また、蓋部材6に、石英ガラスの割れPも生じていない。以上、比較したように、第1の流れ防止部53を備えることで、キャビティ51内にAuSn共晶半田が流れてしまうことを抑制することができ、これにより蓋部材6の割れを抑制することができる。
【0045】
図7は、試作したいくつかの半導体発光装置1について蓋部材6が接合できたか否かを調べた結果を表にまとめて示した図である。発明者らは、条件の異なる8つの半導体発光装置1を試作し、搭載領域Rの表面積とAuSn共晶半田の体積が蓋部材6の封着性に与える影響について調査した。
【0046】
ここで、「面積(mm)」は、搭載領域Rの表面積、すなわち、Auメッキ膜521の表面積を示す。「厚み(mm)」は、AuSn共晶半田プリフォームが溶融して「面積(mm)」欄に記載の表面積に拡がったと仮定した場合における厚さを示している。すなわち、「厚み(mm)」欄には、「AuSn共晶半田プリフォーム体積(mm)」欄に記載の値を「面積(mm)」に記載の値で除した値が記載されている。「石英ガラス接合」欄は、蓋部材6の付着性について、蓋部材6が接合できるか否かの結果を示している。
【0047】
また、「反射壁」欄の「垂直面」は、半導体パッケージ基板5の反射壁512が垂直構造を有していることを示し、「傾斜面」は、半導体パッケージ基板5の反射壁512が傾斜構造を有していることを示す。
【0048】
図7に示すように、Auメッキ膜521の表面積が4.965mm以上とき(No.2、3及び8参照)、共通して蓋部材6の接合ができた。この結果は、Auメッキ膜521の表面積が4.965mm以上とすることで蓋部材6の付着性を向上できることを示している。
【0049】
なお、Auメッキ膜521の表面積を4.965mmとする場合、蓋部材6の金属膜61に設けられるAuSn共晶半田プリフォームの体積は、0.0466mmである。したがって、AuSn共晶半田プリフォームの体積は、好ましくは、0.0466mm以上である。
【0050】
図8は、蓋部材6を半導体パッケージ基板5に接合する際にキャビティ51側にAuSn共晶半田がはみ出した状態における半導体発光装置1を模式的に示す断面図である。図8では、説明の便宜上、Auメッキ膜521及び金属膜61を省略して描いた。
【0051】
図8に示すように、第1の流れ防止部53を設けることで、搭載領域Rからはみ出たAuSn共晶半田70は、実装面511側へ流れ落ちず、先ず蓋部材6の底面6aを伝って移動する。また、搭載領域Rからはみ出たAuSn共晶半田70は、表面張力により半球状となり、蓋部材6の底面6aから落ちることなく留まることができる。
【0052】
このとき、第1の流れ防止部53の高さhを所定の高さ以上にすれば、あふれたAuSn共晶半田70が反射壁512に到達しないようにすることができる。すなわち、あふれたAuSn共晶半田70が反射壁512を伝ってキャビティ51内に流れることを抑制できる。以上のようにして、第1の流れ防止部53を設けることで、キャビティ51内にAuSn共晶半田が流れてしまうことを抑制することができる。
【0053】
一例として、Auメッキ膜521の表面積を4.965mmとする場合、第1の流れ防止部53の高さhは、0.15mm以上とすることが好ましい。このようにすれば、蓋部材6の付着性を向上させることができ、かつ、キャビティ51内にAuSn共晶半田が流れてしまうことを抑制して付着した蓋部材6に割れやはがれが生じることを防ぐことができる。
【0054】
(変形例)
図9は、本発明の一変形例に係る半導体パッケージ基板5の構成を示す縦断面図である。図9に示すように、半導体パッケージ基板5は、必ずしも第2の流れ防止部54を備えなくてもよく、反射壁512が実装面511に直接的に接続する構成でもよい。
【0055】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0056】
[1]底側に形成された半導体発光素子(2)を実装する実装面(511)と、前記実装面(511)の周囲に設けられ、該実装面(511)に実装された前記半導体発光素子(2)から発せられた光を反射する反射壁(512)と、により形成された半導体収容空間と、縁部(52)に形成された、前記半導体発光素子(2)に被せられる蓋部材(6)が搭載される搭載領域(R)と、前記蓋部材(6)と前記縁部(52)とを接合する接合部材(6)が前記搭載領域(R)から前記半導体収容空間内に流れ込まないように、前記搭載領域(R)と前記反射壁(512)とを空間的に分離する流れ防止部(53)と、を備える、半導体パッケージ基板(5)。
[2]前記流れ防止部(53)は、前記縁部(52)と接続して前記実装面(511)の方向に延びる側面(531)と、前記側面(531)と接続して前記半導体収容空間側に延びる分離面と、により形成された段差状の形状を有する、前記[1]に記載の半導体パッケージ基板(5)。
[3]前記側面(531)は、前記縁部(52)と垂直に接続し、前記分離面は、前記側面(531)と垂直に接続する、前記[2]に記載の半導体パッケージ基板(5)。
[4]前記搭載領域(R)は、Auメッキ膜(521)が被覆されている、前記[1]乃至[3]に記載の半導体パッケージ基板(5)。
[5]前記Auメッキ膜(521)は、4.965mm以上の表面積を有する、前記[4]に記載の半導体パッケージ基板(5)。
[6]前記接合部材(7)のプリフォームの体積は、0.0466mm以上である、前記[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の半導体パッケージ基板(5)。
[7]前記流れ防止部(53)の高さは、0.15mm以上である、前記[5]又は[6]に記載の半導体パッケージ基板(5)。
[8]前記流れ防止部(53)を第1の流れ防止部(53)とした場合に、前記実装面(511)と前記反射壁(512)との間に形成された第2の流れ防止部(54)をさらに備える、前記[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の半導体パッケージ基板(5)。
[9]前記反射壁(512)は、前記実装面(511)から離れるほど外方へと拡がる傾斜面により形成されている、前記[1]乃至[8]のいずれか1つに記載の半導体パッケージ基板(5)。
[10]前記反射壁(512)は、Alにより形成されたAl蒸着膜により被覆されている、前記[1]乃至[9]のいずれか1つに記載の半導体パッケージ基板(5)。
[11]前記[1]乃至[10]に記載の半導体パッケージ基板(5)と、前記搭載領域(R)に搭載された前記蓋部材(6)と、を備える、半導体パッケージ(4)。
[12]前記蓋部材(6)は、石英ガラスにより形成されている、前記[11]に記載の半導体パッケージ(4)。
[13]前記[11]又は[12]に記載の半導体パッケージ(4)と、前記半導体パッケージ基板(5)に実装された前記半導体発光素子(2)と、を備える、半導体発光装置(1)。
【符号の説明】
【0057】
1…半導体発光装置
2…半導体発光素子
21…透明基板
22…窒化物半導体層
22a…バッファ層
22b…クラッド層
22c…発光層
22d…クラッド層
22e…コンタクト層
23…電極
23a…アノード電極(p電極)
23b…カソード電極(n電極)
3…保護素子
4…半導体パッケージ
5…半導体パッケージ基板
51…キャビティ
51a…開口
511…実装面
512…反射壁
52…縁部
52a…内側の端部
52b…外側の端部
521…Auメッキ膜
521a…外縁
521b…内縁
53…第1の流れ防止部
531…側面
532…床面
54…第2の流れ防止部
6…蓋部材
6a…底面
61…金属膜
61a…外縁
61b…内縁
7…接合部材
70…あふれたAuSn共晶半田
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9