(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインクジェットプリンタの制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/015 20060101AFI20231020BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20231020BHJP
B41J 2/045 20060101ALN20231020BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/01 501
B41J2/01 301
B41J2/045
(21)【出願番号】P 2020047918
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】岸田 雄太郎
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-177758(JP,A)
【文献】特開2009-178996(JP,A)
【文献】特開2013-123883(JP,A)
【文献】特開2006-035812(JP,A)
【文献】特開2003-136758(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクを吐出する複数のノズルと複数の前記ノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、
前記インクジェットプリンタの外部温度を検知する外部温度センサと、前記インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、
前記制御部は、複数の前記インク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、前記インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御
し、かつ、前記制御部に入力された印刷データに基づいて複数の前記インク流路のそれぞれにおける前記インク流量を特定するとともに、前記外部温度センサで検知された前記外部温度を前記第1温度とすることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクを吐出する複数のノズルと複数の前記ノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、前記インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、
前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、
前記制御部は、複数の前記インク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、前記インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御し、
様々な前記インク流量および前記第1温度に応じた、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が前記制御部に予め記憶され、
前記制御部は、前記制御部に記憶された測定結果と、前記インク流量および前記第1温度とに基づいて、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドは、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備え、
前記ヘッド内ヒータによって加温されるインクの目標加温温度と、様々な前記インク流量および前記第1温度とに応じた、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が前記制御部に予め記憶されていることを特徴とする請求項
2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクを吐出する複数のノズルと複数の前記ノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構と、前記インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、
前記インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、前記加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、
複数の前記加温機構インク流路のそれぞれは、複数の前記インク流路のそれぞれに繋がっており、
前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子と、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備え、
前記制御部は、複数の前記インク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、前記インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項5】
インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、
インクを吐出する複数のノズルと複数の前記ノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度を検知するための複数のインク温度センサと、
前記インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構と、前記インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、
前記インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、前記加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、
複数の前記加温機構インク流路のそれぞれは、複数の前記インク流路のそれぞれに繋がっており、
前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子
と、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備え、
前記制御部は、複数の前記インク温度センサの検知結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インク温度センサは、複数の前記インク流路のそれぞれの近傍または複数の前記インク流路のそれぞれの中に配置されていることを特徴とする請求項5記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
インクを吐出する複数のノズルと複数の前記ノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドを備え、前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備えるインクジェットプリンタの制御方法であって、
前記インクジェットプリンタは、前記インクジェットプリンタの外部温度を検知する外部温度センサを備え、
前記インクジェットプリンタの制御方法では、複数の前記インク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、前記インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御
し、かつ、入力された印刷データに基づいて複数の前記インク流路のそれぞれにおける前記インク流量を特定するとともに、前記外部温度センサで検知された前記外部温度を前記第1温度とすることを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【請求項8】
インクを吐出する複数のノズルと複数の前記ノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、複数の前記インク流路のそれぞれにおけるインクの温度を検知するための複数のインク温度センサと
、前記インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構とを備え、
前記インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、前記加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、複数の前記加温機構インク流路のそれぞれは、複数の前記インク流路のそれぞれに繋がっており、前記インクジェットヘッドは、複数の前記ノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子
と、前記インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備えるインクジェットプリンタの制御方法であって、
複数の前記インク温度センサの検知結果に基づいて、複数の前記吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とするインクジェットプリンタの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタに関する。また、本発明は、かかるインクジェットプリンタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線硬化型のインクであるUVインクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドに供給されるインクをインクジェットヘッドの外部で温めるヘッド外インク加温装置を備えている。インクジェットヘッドには、インクを吐出する複数のノズルが形成されている。また、インクジェットヘッドの内部には、複数のノズルが繋がる複数のインク流路が形成されている。たとえば、インクジェットヘッドには、異なる色のカラーインクが流れる4個のインク流路が形成されている。インクジェットヘッドは、複数のノズルからインクを吐出させる駆動ユニットを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、複数のノズルから吐出されるインクを温めてインクの粘度を低下させるためのフィルム状のヒータがインクジェットヘッドの外周に巻き付けられている。インクジェットヘッドは、インク流路の中のインクの温度を検知するための温度センサを備えている。温度センサは、インクジェットヘッドの内部に配置されている。ヒータは、温度センサで検知される温度に基づいて制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタのように、複数のインク流路がインクジェットヘッドに形成されているインクジェットプリンタでは、印刷時の条件によって、印刷品質が低下する場合があることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、複数のインク流路が形成されたインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタにおいて、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能なインクジェットプリンタを提供することにある。また、本発明の課題は、複数のインク流路が形成されたインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタにおいて、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能となるインクジェットプリンタの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本願発明者は、種々の検討を行った。その結果、本願発明者は、まず、複数のインク流路がインクジェットヘッドに形成されているインクジェットプリンタにおいて、特にUVインクのように、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクを用いて印刷を行う場合に、印刷時の条件によって、印刷品質が低下しやすくなることを知見するに至った。また、本願発明者は、複数のインク流路がインクジェットヘッドに形成されているインクジェットプリンタにおいて、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクを用いて印刷を行う場合であって、かつ、インクジェットヘッドに供給されるインクを十分に加温することができなかった場合に、印刷品質がより低下しやすくなることを知見するに至った。
【0008】
また、本願発明者は、さらなる検討によって、複数のインク流路がインクジェットヘッドに形成されているインクジェットプリンタにおいて、たとえば、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの量のばらつき等によって、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらつく場合に、複数のノズルから吐出されるインクの粘度がインク流路によってばらつくため、複数のインク流路がインクジェットヘッドに形成されているインクジェットプリンタでは、インク流路によって複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度にばらつきが生じて、印刷品質が低下する場合があることを知見するに至った。
【0009】
本発明のインクジェットプリンタは、かかる新たな知見に基づくものであり、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する複数のノズルと複数のノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、インクジェットプリンタの外部温度を検知する外部温度センサと、インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、制御部は、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御し、かつ、制御部に入力された印刷データに基づいて複数のインク流路のそれぞれにおけるインク流量を特定するとともに、外部温度センサで検知された外部温度を第1温度とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のインクジェットプリンタの制御方法は、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出する複数のノズルと複数のノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドを備え、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備えるインクジェットプリンタの制御方法であって、インクジェットプリンタは、インクジェットプリンタの外部温度を検知する外部温度センサを備え、インクジェットプリンタの制御方法では、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御し、かつ、入力された印刷データに基づいて複数のインク流路のそれぞれにおけるインク流量を特定するとともに、外部温度センサで検知された外部温度を第1温度とすることを特徴とする。
【0011】
本発明では、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本発明では、たとえば、複数のインク流路のそれぞれに流入するインク流量のばらつき等に起因して、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらつき、その結果、複数のノズルから吐出されるインクの粘度がインク流路によってばらついても、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度の推定結果に基づいて、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路によるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本発明では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
【0012】
なお、本明細書における「駆動電圧」には、吐出エネルギー発生素子が電圧制御される場合の駆動電圧の他に、吐出エネルギー発生素子がPWM(Pulse Width Modulation)制御される場合の実効電圧も含まれている。
【0013】
また、本発明では、インクジェットプリンタは、インクジェットプリンタの外部温度を検知する外部温度センサを備え、入力された印刷データに基づいて複数のインク流路のそれぞれにおけるインク流量を特定するとともに、外部温度センサで検知された外部温度を第1温度としているため、インクジェットプリンタの機械的な構成を簡素化しつつ、比較的容易にインク流量および第1温度を求めることが可能になる。
【0014】
また、本発明のインクジェットプリンタは、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する複数のノズルと複数のノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子を備え、制御部は、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御し、様々なインク流量および第1温度に応じた、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が制御部に予め記憶され、制御部は、制御部に記憶された測定結果と、インク流量および第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定することを特徴とする。
本発明では、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本発明では、たとえば、複数のインク流路のそれぞれに流入するインク流量のばらつき等に起因して、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらつき、その結果、複数のノズルから吐出されるインクの粘度がインク流路によってばらついても、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度の推定結果に基づいて、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路によるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本発明では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
また、本発明では、様々なインク流量および第1温度に応じた、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が制御部に予め記憶され、制御部は、制御部に記憶された測定結果と、インク流量および第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するため、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定する際の制御部の処理を簡素化することが可能になる。
本発明において、たとえば、インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備え、ヘッド内ヒータによって加温されるインクの目標加温温度と、様々なインク流量および第1温度とに応じた、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されるとともに、測定結果が制御部に予め記憶されている。
【0015】
さらに、本発明のインクジェットプリンタは、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する複数のノズルと複数のノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構と、インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、複数の加温機構インク流路のそれぞれは、複数のインク流路のそれぞれに繋がっており、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子と、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備え、制御部は、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とする。
本発明では、複数のインク流路のそれぞれに流入するインクの流量であるインク流量と、インクジェットヘッドの内部または外部の温度である第1温度とに基づいて、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本発明では、たとえば、複数のインク流路のそれぞれに流入するインク流量のばらつき等に起因して、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらつき、その結果、複数のノズルから吐出されるインクの粘度がインク流路によってばらついても、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度の推定結果に基づいて、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路によるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本発明では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
また、本発明では、インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構を備え、インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、複数の加温機構インク流路のそれぞれは、複数のインク流路のそれぞれに繋がっており、インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備えているため、複数の加温機構インク流路の長さおよび断面積の加温機構インク流路によるばらつき、複数の加温機構インク流路のそれぞれとヘッド外ヒータとの距離の加温機構インク流路によるばらつき、および、複数のインク流路のそれぞれとヘッド内ヒータとの距離のインク流路によるばらつきによって、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらつきやすくなる。しかしながら、本発明では、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらついても、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路によるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。
【0016】
また、本発明のインクジェットプリンタは、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出して印刷を行うインクジェットプリンタにおいて、インクを吐出する複数のノズルと複数のノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を検知するための複数のインク温度センサと、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構と、インクジェットプリンタを制御する制御部とを備え、インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、複数の加温機構インク流路のそれぞれは、複数のインク流路のそれぞれに繋がっており、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子と、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備え、制御部は、複数のインク温度センサの検知結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明のインクジェットプリンタの制御方法は、上述の新たな知見に基づくものであり、インクを吐出する複数のノズルと複数のノズルが繋がる複数のインク流路とが形成されるインクジェットヘッドと、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を検知するための複数のインク温度センサと、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構とを備え、インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、複数の加温機構インク流路のそれぞれは、複数のインク流路のそれぞれに繋がっており、インクジェットヘッドは、複数のノズルのそれぞれからインクを吐出させる複数の吐出エネルギー発生素子と、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータとを備えるインクジェットプリンタの制御方法であって、複数のインク温度センサの検知結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することを特徴とする。
【0018】
本発明では、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を検知するための複数のインク温度センサの検知結果に基づいて、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本発明では、たとえば、複数のインク流路のそれぞれに流入するインク流量のばらつき等に起因して、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらつき、その結果、複数のノズルから吐出されるインクの粘度がインク流路によってばらついても、複数のインク温度センサの検知結果に基づいて、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路によるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本発明では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
また、本発明では、インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めるインク加温機構を備え、インク加温機構は、インクが流れる複数の加温機構インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、加温部本体を加熱するヘッド外ヒータとを備え、複数の加温機構インク流路のそれぞれは、複数のインク流路のそれぞれに繋がっており、インクジェットヘッドは、インクジェットヘッドの内部のインクを加温するヘッド内ヒータを備えているため、複数の加温機構インク流路の長さおよび断面積の加温機構インク流路によるばらつき、複数の加温機構インク流路のそれぞれとヘッド外ヒータとの距離の加温機構インク流路によるばらつき、および、複数のインク流路のそれぞれとヘッド内ヒータとの距離のインク流路によるばらつきによって、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらつきやすくなる。しかしながら、本発明では、複数のインク流路のインクの温度がインク流路によってばらついても、複数のノズルからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路によるばらつきが抑制されるように、複数の吐出エネルギー発生素子に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。
【0019】
本発明において、インク温度センサは、複数のインク流路のそれぞれの近傍または複数のインク流路のそれぞれの中に配置されていることが好ましい。このように構成すると、複数のインク温度センサによって、複数のインク流路のそれぞれにおけるインクの温度を精度良く検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明では、複数のインク流路が形成されたインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタにおいて、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの斜視図である。
【
図2】
図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
【
図3】
図2に示すキャリッジの周辺部分の一部の斜視図である。
【
図4】
図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するためのブロック図である。
【
図5】
図2に示すインクジェットヘッドの概略構成を説明するための断面図である。
【
図6】
図2に示すインクジェットヘッドの概略構成を説明するための底面図である。
【
図7】
図3に示す加温部本体の構成を説明するための断面図である。
【
図8】
図4に示す制御部に記憶される、各インク流路におけるインクの温度の測定結果の例を説明するための図である。
【
図9】
図4に示す制御部に記憶されるテーブルの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
(インクジェットプリンタの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の斜視図である。
図2は、
図1に示すインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
図3は、
図2に示すキャリッジ4の周辺部分の一部の斜視図である。
図4は、
図1に示すインクジェットプリンタ1の構成を説明するためのブロック図である。
図5は、
図2に示すインクジェットヘッド3の概略構成を説明するための断面図である。
図6は、
図2に示すインクジェットヘッド3の概略構成を説明するための底面図である。
図7は、
図3に示す加温部本体20の構成を説明するための断面図である。
【0026】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、インクを吐出して印刷媒体2に印刷を行う。プリンタ1では、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクが使用される。本形態では、紫外線硬化型のインクであるUVインクがプリンタ1で使用される。印刷媒体2は、たとえば、印刷用紙、布帛または樹脂製のフィルム等である。
【0027】
プリンタ1は、印刷媒体2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)と、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を主走査方向(
図1等のY方向)へ移動させるキャリッジ駆動機構5と、キャリッジ4を主走査方向へ案内するためのガイドレール6と、ヘッド3に供給されるインクが収容される複数のインクタンク7とを備えている。以下の説明では、主走査方向(Y方向)を「左右方向」とし、上下方向(
図1等のZ方向)と主走査方向とに直交する副走査方向(
図1等のX方向)を「前後方向」とする。また、前後方向の一方側である
図1等のX1方向側を「前」側とし、前後方向の他方側である
図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。
【0028】
また、プリンタ1は、ヘッド3の内部圧力を調整するための圧力調整機構11と、ヘッド3に供給されるインクを温めるためのインク加温機構12と、ヘッド3の内部のインクの温度を検知するためのヘッド内温度センサ13と、プリンタ1の外部の温度(外部温度)を検知するための外部温度センサ14とを備えている。さらに、プリンタ1は、プリンタ1を制御する制御部9を備えている。制御部9には、PC(パーソナルコンピュータ)等のプリンタ1の上位装置10が電気的に接続されている。
【0029】
ヘッド3の下面には、インクを吐出する複数のノズル3aが形成されている。複数のノズル3aは、前後方向に一定のピッチで配列されており、前後方向に配列される複数のノズル3aによって、ノズル列3bが構成されている。本形態では、ヘッド3の下面に複数のノズル列3bが形成されている。複数のノズル列3bは、左右方向に配列されている。ヘッド3の内部には、複数のノズル列3bのそれぞれが繋がる複数のインク流路3c~3fが形成されている。すなわち、ヘッド3には、複数のノズル3aが繋がる複数のインク流路3c~3fが形成されている。インク流路3c~3fの一端は、ヘッド3に向かってインクが流入するインク流入口3gとなっている。インク流入口3gは、ヘッド3の前端側に形成されている。
【0030】
本形態では、たとえば、4個のノズル列3bがヘッド3の下面に形成されており、4個のノズル列3bのそれぞれに繋がる4本のインク流路3c~3fがヘッド3に形成されている。インク流路3c~3fは、ヘッド3の、左右方向の一端側から他端側に向かってこの順番で配置されている。4本のインク流路3c~3fのそれぞれでは、たとえば、異なる色のインクが流れる。ただし、4本のインク流路3c~3fのうちの少なくとも2本のインク流路3c~3fにおいて同じ色のインクが流れても良い。
【0031】
ヘッド3の下側には、プラテン8が配置されている。プラテン8には、印刷時の印刷媒体2が載置される。プラテン8に載置される印刷媒体2は、図示を省略する媒体送り機構によって前後方向に搬送される。キャリッジ駆動機構5は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ4に固定されるベルトと、プーリを回転させるモータとを備えている。なお、キャリッジ4には、ヘッド3から吐出されたインクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射器(図示省略)が搭載されている。
【0032】
ヘッド3は、複数のノズル3aのそれぞれからインクを吐出させる複数の圧電素子16を備えている。また、ヘッド3は、圧電素子16に駆動電圧を印加して圧電素子16を駆動するドライバIC(Integrated Circuit)17と、ヘッド3の内部のインクを加温するヘッド内ヒータ18とを備えている。圧電素子16、ドライバIC17およびヘッド内ヒータ18は、ヘッド3の内部に配置されている。圧電素子16は、制御部9に電気的に接続されている。本形態の圧電素子16は、吐出エネルギー発生素子である。なお、ドライバIC17は、ヘッド3の内部に配置されていなくても良い。この場合には、たとえば、キャリッジ4に搭載される回路基板にドライバIC17が実装されている。
【0033】
ヘッド内温度センサ13は、ヘッド3の内部に配置されている。本形態では、1個のヘッド内温度センサ13がヘッド3の内部に配置されている。ヘッド内温度センサ13は、たとえば、
図5に示すように、インク流路3c~3fの後端部の上側に配置されている。また、ヘッド内温度センサ13は、インク流路3c~3fの外側に配置されている。ヘッド内温度センサ13は、ヘッド3の本体フレームの温度を検知することで、ヘッド3の内部のインク(具体的には、インク流路3c~3fの中のインク)の温度を間接的に検知する。ヘッド内温度センサ13は、制御部9に電気的に接続されている。なお、ヘッド内温度センサ13は、インク流路3c~3fのいずれかの中に配置されていても良い。
【0034】
ヘッド内ヒータ18は、ヘッド3の本体フレームを加熱することでヘッド3の内部のインク(具体的には、インク流路3c~3fの中のインク)を温めて、ヘッド3の内部のインクの粘度を低下させる機能を果たしている。ヘッド内ヒータ18は、インク流路3c~3fの上側に配置されている。また、ヘッド内ヒータ18は、ヘッド3の内部の中心部分に配置されている。本形態では、インク流路3d、3eのインクがインク流路3c、3fのインクよりも、ヘッド内ヒータ18からの熱で温まりやすくなっている。すなわち、ヘッド内ヒータ18によって加温されるインク流路3c~3fのインクの加温度合いには、インク流路3c~3fによってばらつきがある。
【0035】
ヘッド内ヒータ18は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、ヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいてヘッド内ヒータ18を制御する。具体的には、制御部9は、ヘッド内温度センサ13で検知される温度が所定の設定温度未満である場合に、ヘッド内ヒータ18を駆動し、ヘッド内温度センサ13で検知される温度が設定温度以上になると、ヘッド内ヒータ18を停止させる。なお、ヘッド内ヒータ18は、ヘッド内ヒータ18の過熱状態を検知するための温度センサ(図示省略)を備えている。この温度センサは、たとえば、サーミスタであり、ヘッド内ヒータ18に取り付けられている。
【0036】
圧力調整機構11には、インクタンク7からインクが供給される。具体的には、インクタンク7は、圧力調整機構11よりも上側に配置されており、水頭差によってインクタンク7から圧力調整機構11にインクが供給される。インク加温機構12は、ヘッド3へのインクの供給経路において圧力調整機構11とヘッド3との間に配置されている。インク加温機構12には、圧力調整機構11からインクが供給され、ヘッド3には、インク加温機構12からインクが供給される。圧力調整機構11およびインク加温機構12は、キャリッジ4に搭載されている。
【0037】
インク加温機構12は、ヘッド3の外部に配置されるヘッド外インク加温装置である。インク加温機構12は、ヘッド3に供給されるインクを温めることで、ヘッド3に供給されるインクの粘度を低下させる機能を果たしている。インク加温機構12は、ヘッド3の上側に配置されている。インク加温機構12は、ブロック状に形成される加温部本体20と、加温部本体20に取り付けられるヘッド外ヒータ21と、加温部本体20に取り付けられるヘッド外温度センサ22とを備えている。
【0038】
加温部本体20は、全体として略直方体状に形成されている。また、加温部本体20は、アルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属材料で形成されている。加温部本体20の内部には、インクが流れる複数の加温機構インク流路20c~20fが形成されている。本形態では、ヘッド3の4本のインク流路3c~3fのそれぞれに繋がる4本の加温機構インク流路20c~20fが加温部本体20に形成されている。たとえば、加温機構インク流路20cは、インク流路3cに繋がり、加温機構インク流路20dは、インク流路3dに繋がり、加温機構インク流路20eは、インク流路3eに繋がり、加温機構インク流路20fは、インク流路3fに繋がっている。
【0039】
4本の加温機構インク流路20c~20fのうちの、少なくとも1本の加温機構インク流路20c~20fの長さ(流路長)は、その他の加温機構インク流路20c~20fの流路長と異なっている。たとえば、加温機構インク流路20cの流路長と加温機構インク流路20fの流路長とが等しく、かつ、加温機構インク流路20dの流路長と加温機構インク流路20eの流路長とが等しくなっているとともに、加温機構インク流路20c、20fの流路長と加温機構インク流路20d、20eの流路長とが異なっている。あるいは、4本の加温機構インク流路20c~20fの流路長は互いに異なっている。
【0040】
また、4本の加温機構インク流路20c~20fのうちの、少なくとも1本の加温機構インク流路20c~20fの断面積(インク流路20c~20fの長手方向に直交する断面の断面積)の平均値は、その他の加温機構インク流路20c~20fの断面積の平均値と異なっている。たとえば、加温機構インク流路20cの断面積の平均値と加温機構インク流路20fの断面積の平均値とが等しく、かつ、加温機構インク流路20dの断面積の平均値と加温機構インク流路20eの断面積の平均値とが等しくなっているとともに、加温機構インク流路20c、20fの断面積の平均値と加温機構インク流路20d、20eの断面積の平均値とが異なっている。あるいは、4本の加温機構インク流路20c~20fの断面積の平均値は互いに異なっている。
【0041】
ヘッド外ヒータ21は、加温部本体20を加熱する。ヘッド外ヒータ21は、シート状に形成されたシートヒータである。ヘッド外ヒータ21は、加温部本体20の側面に貼り付けられている。本形態では、1枚のヘッド外ヒータ21が2箇所で90°に折り曲げられた状態で、加温部本体20の左右の両側面および前面に貼り付けられている。ヘッド外ヒータ21およびヘッド外温度センサ22は、制御部9に電気的に接続されている。制御部9は、ヘッド外温度センサ22の検知結果に基づいてヘッド外ヒータ21を制御する。
【0042】
4本の加温機構インク流路20c~20fのうちの、少なくとも1本の加温機構インク流路20c~20fとヘッド外ヒータ21との距離は、その他の加温機構インク流路20c~20fとヘッド外ヒータ21との距離と異なっている。たとえば、加温機構インク流路20cとヘッド外ヒータ21との距離と、加温機構インク流路20fとヘッド外ヒータ21との距離とが等しく、かつ、加温機構インク流路20dとヘッド外ヒータ21との距離と、加温機構インク流路20eとヘッド外ヒータ21との距離とが等しくなっているとともに、加温機構インク流路20c、20fとヘッド外ヒータ21との距離と、加温機構インク流路20d、20eとヘッド外ヒータ21との距離とが異なっている。
【0043】
圧力調整機構11は、インク加温機構12に取り付けられている。本形態では、1個のインク加温機構12に2個の圧力調整機構11が取り付けられている。圧力調整機構11の下側部分は、加温部本体20に収容されている。圧力調整機構11は、たとえば、特開2011-46070号公報に記載された調圧ダンパと同様に構成される機械式の圧力ダンパであり、圧力調整用のポンプを用いることなく、ヘッド3の内部圧力を機械的に調整する。また、圧力調整機構11は、ヘッド3の内部圧力(インク流路3cの内部圧力)を負圧に調整する。圧力調整機構11の内部には、2本のインク流路(図示省略)が形成されている。
【0044】
外部温度センサ14は、たとえば、キャリッジ4に搭載されている。あるいは、外部温度センサ14は、プリンタ1の操作パネル上または本体フレームに取り付けられている。外部温度センサ14は、制御部9に電気的に接続されている。
【0045】
(インクジェットプリンタの制御方法)
図8は、
図4に示す制御部9に記憶される、各インク流路3c~3fにおけるインクの温度の測定結果の例を説明するための図である。
図9は、
図4に示す制御部9に記憶されるテーブルの一例を説明するための図である。
【0046】
本形態では、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに繋がる複数のノズル3aから吐出されるインクの量がインク流路3c~3fによってばらつくと(すなわち、インクの消費量がインク流路3c~3fによってばらつくと)、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインクの流量がばらつくため、加温機構インク流路20c~20fのそれぞれを通過するインクの通過時間が加温機構インク流路20c~20fによってばらついて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインクの温度がばらつく結果、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度がばらつく場合がある。
【0047】
また、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインクの流量がばらつかなくても、加温機構インク流路20c~20fのそれぞれの長さおよび断面積の平均値の、加温機構インク流路20c~20fによるばらつき、および、加温機構インク流路20c~20fのそれぞれとヘッド外ヒータ21との距離の、加温機構インク流路20c~20fによるばらつきによって、インク加温機構12によるインクの加温度合いが加温機構インク流路20c~20fによってばらついて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインクの温度がばらつく結果、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度がばらつく場合がある。
【0048】
さらに、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインクの温度がばらつかなくても、ヘッド内ヒータ18によって加温されるインク流路3c~3fのインクの加温度合いのインク流路3c~3fによるばらつきによって、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度がばらつく場合がある。
【0049】
本願発明者の検討によると、プリンタ1の外部温度が低くて、インク加温機構12によってインクを十分に加温できない場合や、インク流路3c~3fに流入するインクの流量が多くて(すなわち、加温機構インク流路20c~20fを通過するインクの通過時間が短くて)、インク加温機構12によってインクを十分に加温できない場合に、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度のばらつきが生じやすくなる。また、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度がばらつくと、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの粘度がばらつく。
【0050】
そこで、本形態では、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの粘度がばらついても、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路3c~3fによるばらつきが抑制されるように、プリンタ1で印刷媒体2の印刷を行うときに、制御部9は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインクの流量(すなわち、インク加温機構12から4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインクの単位時間当たりの流量)であるインク流量と、外部温度センサ14で検知されるプリンタ1の外部温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。具体的には、制御部9は、以下のように、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。
【0051】
なお、本形態では、外部温度センサ14で検知される外部温度がヘッド3の外部の温度である第1温度となっており、制御部9は、外部温度センサ14で検知された外部温度を第1温度としている。また、以下の説明では、インク流路3cに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16と、インク流路3dに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16と、インク流路3eに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16と、インク流路3fに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる圧電素子16とを区別して表す場合には、インク流路3cに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16C」とし、インク流路3dに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16D」とし、インク流路3eに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16E」とし、インク流路3fに繋がる複数のノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16のそれぞれを「圧電素子16F」とする。
【0052】
また、本形態では、制御部9は、圧電素子16Cと圧電素子16Dと圧電素子16Eと圧電素子16Fとを個別に制御することが可能となっている。一方で、制御部9は、複数の圧電素子16Cのそれぞれを個別に制御することはできない。すなわち、複数の圧電素子16Cには、同じ駆動電圧が印加される。同様に、複数の圧電素子16Dには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Eには、同じ駆動電圧が印加され、複数の圧電素子16Fには、同じ駆動電圧が印加される。すなわち、制御部9は、同じインク流路3c~3fに繋がるノズル3aからインクを吐出させる複数の圧電素子16に同じ駆動電圧を印加する。
【0053】
印刷媒体2の印刷前には、様々なインク流量およびプリンタ1の外部温度に応じた、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。具体的には、ヘッド内ヒータ18によって加温されるインクの目標加温温度(インクの加温温度の目標値)と、様々なインク流量および外部温度とに応じた、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。本形態では、ヘッド3から吐出されるインクの最適温度が45℃となっており、目標加温温度は45℃となっている。
【0054】
たとえば、
図8に示すように、外部温度がT1でインク流路3c~3fのインク流量がQ1、Q2、Q3・・・の場合の、インク流路3cのインクの温度T11、T12、T13・・・、インク流路3dのインクの温度T21、T22、T23・・・、インク流路3eのインクの温度T31、T32、T33・・・、および、インク流路3fのインクの温度T41、T42、T43・・・が印刷媒体2の印刷前に予め測定されている。同様に、外部温度がT2でインク流路3c~3fのインク流量がQ1、Q2、Q3・・・の場合の、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度、および、外部温度がT3でインク流量がQ1、Q2、Q3・・・の場合の、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度等が印刷媒体2の印刷前に予め測定されている。また、これらの測定結果は、テーブル化されて制御部9に予め記憶されている。
【0055】
なお、様々なインク流量および外部温度に応じた、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を測定するときには、たとえば、同じインク流量および外部温度において、少なくとも1本のインク流路3c~3fのインクの温度が、目標加温温度である45℃となるように、かつ、4本のインク流路3c~3fの全てにおいてインクの温度が45℃以下となるように、ヘッド内ヒータ18およびヘッド外ヒータ21が制御されている。
【0056】
たとえば、外部温度がT1で、かつ、インク流路3c~3fのインク流量がQ1の場合には、インク流路3cのインクの温度T11、インク流路3dのインクの温度T21、インク流路3eのインクの温度T31およびインク流路3fのインクの温度T41の少なくともいずれか1つが45℃となるように、かつ、T11、T21、T31、T41の全てが45℃以下となるように、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度の測定時には、ヘッド内ヒータ18およびヘッド外ヒータ21が制御されている。
【0057】
印刷媒体2の印刷時には、まず、印刷媒体2に印刷を行うための印刷データが上位装置10から制御部9に入力される。制御部9は、制御部9に入力された印刷データに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインク流量を特定する。たとえば、制御部9は、制御部9に入力された印刷データに基づく所定の演算を行って、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインク流量を算出する。
【0058】
また、制御部9は、特定されたインク流量と、外部温度センサ14で検知されたプリンタ1の外部温度と、制御部9に記憶された測定結果とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定する。すなわち、制御部9は、特定されたインク流量と、外部温度センサ14で検知された外部温度とに基づいて、制御部9に記憶されたテーブル(
図8に示すテーブル)を参照して、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定する。
【0059】
また、制御部9には、圧電素子16の駆動電圧とインクの温度とが予め対応付けられたテーブル(
図9参照)が記憶されており、制御部9は、推定結果に基づいて、このテーブルを参照して、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。なお、
図9に示すテーブルでは、インクの温度にかかわらず、ノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度が一定となるように、インクの温度のそれぞれに応じた圧電素子16の駆動電圧が設定されている。
【0060】
たとえば、外部温度センサ14で検知された外部温度がT1で、特定されたインク流路3cのインク流量がQ1で、特定されたインク流路3dのインク流量がQ2で、特定されたインク流路3eのインク流量がQ3で、特定されたインク流路3fのインク流量がQ1である場合には、制御部9は、インク流路3cのインクの温度をT11と推定し、インク流路3dのインクの温度をT22と推定し、インク流路3eのインクの温度をT33と推定し、インク流路3fのインクの温度をT41と推定する。
【0061】
また、たとえば、T11が42℃であり、T22が44℃であり、T33が45℃であり、T41が43℃と推定される場合には、制御部9は、42℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.828(V)を圧電素子16Cに印加し、44℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.276(V)を圧電素子16Dに印加し、45℃に対応付けられる駆動電圧V1(V)を圧電素子16Eに印加し、43℃に対応付けられる駆動電圧V1+0.552(V)を圧電素子16Fに印加する。
【0062】
制御部9は、1枚の印刷媒体2の印刷が行われるごとに、インク流量と外部温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。または、制御部9は、印刷媒体2の印刷中にキャリッジ4の主走査方向へ走査動作が1回行われるごとに、インク流量と外部温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。
【0063】
あるいは、制御部9は、リアルタイムで、インク流量と外部温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。すなわち、制御部9は、印刷媒体2の印刷中にキャリッジ4が主走査方向へ走査動作を行っている途中でも、インク流量と外部温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定し、この推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を更新して設定する。
【0064】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、制御部9は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインク流量と、プリンタ1の外部温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定するとともに、推定結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御している。そのため、本形態では、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインク流量のばらつき等に起因して4本のインク流路3c~3fのインクの温度がインク流路3c~3fによってばらついて、その結果、複数のノズル3aから吐出されるインクの粘度がインク流路3c~3fによってばらついても、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度の推定結果に基づいて、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路3c~3fによるばらつきが抑制されるように、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、本形態では、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。
【0065】
特に本形態では、加温機構インク流路20c~20fのそれぞれの長さおよび断面積の平均値の、加温機構インク流路20c~20fによるばらつき、加温機構インク流路20c~20fのそれぞれとヘッド外ヒータ21との距離の、加温機構インク流路20c~20fによるばらつき、および、ヘッド内ヒータ18によって加温されるインク流路3c~3fのインクの加温度合いのインク流路3c~3fによるばらつきに起因して、4本のインク流路3c~3fのインクの温度がインク流路3c~3fによってばらつきやすくなるが、本形態では、4本のインク流路3c~3fのインクの温度がインク流路3c~3fによってばらつきやすくなっても、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路3c~3fによるばらつきが抑制されるように、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。
【0066】
本形態では、制御部9は、制御部9に入力された印刷データに基づいて4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインク流量を特定している。そのため、本形態では、プリンタ1の機械的な構成を簡素化しつつ、比較的容易に4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインク流量を求めることが可能になる。
【0067】
本形態では、様々なインク流量およびプリンタ1の外部温度に応じた、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。また、本形態では、制御部9は、特定されたインク流量と、外部温度センサ14で検知されたプリンタ1の外部温度と、制御部9に記憶された測定結果とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定している。そのため、本形態では、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定する際の制御部9の処理を簡素化することが可能になる。
【0068】
(インクジェットプリンタの制御方法の変形例)
上述した形態において、プリンタ1は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を検知するための複数のヘッド内温度センサ13を備えていても良い。たとえば、プリンタ1は、
図6の二点鎖線で示すように、4本のインク流路3c~3fのそれぞれの近傍に配置される4個のヘッド内温度センサ13を備えていても良い。この場合には、ヘッド内温度センサ13は、たとえば、インク流路3c~3fの後端部のそれぞれの上側に配置されている。この変形例のヘッド内温度センサ13は、インク温度センサである。
【0069】
この変形例では、制御部9は、4個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御する。たとえば、インク流路3cの上側に配置されるヘッド内温度センサ13で検知されるインク流路3cの温度が42℃であり、インク流路3dの上側に配置されるヘッド内温度センサ13で検知されるインク流路3dの温度が44℃であり、インク流路3eの上側に配置されるヘッド内温度センサ13で検知されるインク流路3eの温度が45℃であり、インク流路3fの上側に配置されるヘッド内温度センサ13で検知されるインク流路3fの温度が43℃である場合には、制御部9は、駆動電圧V1+0.828(V)を圧電素子16Cに印加し、駆動電圧V1+0.276(V)を圧電素子16Dに印加し、駆動電圧V1(V)を圧電素子16Eに印加し、駆動電圧V1+0.552(V)を圧電素子16Fに印加する。なお、この変形例では、制御部9は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれのインク流量を特定する必要はない。また、この変形例では、様々なインク流量および外部温度に応じた、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を予め測定する必要はない。
【0070】
この変形例でも、上述した形態と同様に、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインク流量のばらつき等に起因して4本のインク流路3c~3fのインクの温度がインク流路3c~3fによってばらついて、その結果、複数のノズル3aから吐出されるインクの粘度がインク流路3c~3fによってばらついても、4個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて、複数のノズル3aからのインクの吐出量および吐出速度の、インク流路3c~3fによるばらつきが抑制されるように、複数の圧電素子16に印加される駆動電圧を制御することが可能になる。したがって、この変形例でも、印刷時の条件にかかわらず、印刷品質の低下を抑制することが可能になる。また、この変形例では、ヘッド内温度センサ13が4本のインク流路3c~3fのそれぞれの近傍に配置されているため、ヘッド内温度センサ13によって、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を精度良く検知することが可能になる。
【0071】
なお、この変形例において、4本のインク流路3c~3fのそれぞれの中にヘッド内温度センサ13が配置されていても良い。この場合でも、ヘッド内温度センサ13によって、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を精度良く検知することが可能になる。また、この変形例において、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を適切に検知することができるのであれば、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を検知するための4個のインク温度センサは、ヘッド3の外部に配置されていても良い。たとえば、加温機構インク流路20c~20fのそれぞれの、インクの流出口の近傍にインク温度センサが配置されていても良い。
【0072】
また、この変形例のように、4本のインク流路3c~3fのそれぞれの近傍にヘッド内温度センサ13が配置されている場合には、4本のインク流路3c~3fが形成される位置のそれぞれにヘッド内ヒータ18を1個ずつ配置して、4個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて4個のヘッド内ヒータ18を個別に制御することで、4本のインク流路3c~3fのそれぞれのインクの温度のばらつきを抑制することも考えられるが、本願発明者の検討によると、4個のヘッド内温度センサ13の検知結果に基づいて4個のヘッド内ヒータ18を個別に制御しても、ヘッド内ヒータ18の温度変動に伴ってインク流路3c~3fのインクの温度がすぐに変動するわけではないため、4本のインク流路3c~3fのそれぞれのインクの温度のばらつきを抑制することは困難である。
【0073】
(他の実施の形態)
上述した形態および変形例は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0074】
上述した形態において、プリンタ1は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインク流量を検知するための4個の流量計を備えていても良い。この場合には、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流量計が設置されており、制御部9は、4個の流量計の検知結果に基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインク流量を特定する。また、上述した形態において、インク加温機構12は、加温機構インク流路20c~20fのそれぞれにおけるインクの流量を検知するための4個の流量計を備えていても良い。この場合には、4本のインク流路20c~20fのそれぞれに流量計が設置されており、制御部9は、4個の流量計の検知結果に基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインク流量を特定する。
【0075】
上述した形態において、プリンタ1で印刷媒体2の印刷を行うときに、制御部9は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれのインク流量と、ヘッド外温度センサ22によって検知されるヘッド3の外部の温度である第1温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定しても良い。この場合には、印刷媒体2の印刷前に、ヘッド内ヒータ18によって加温されるインクの目標加温温度と、様々なインク流量および第1温度(具体的には、ヘッド外温度センサ22によって検知される第1温度)とに応じた、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。
【0076】
また、上述した形態において、プリンタ1で印刷媒体2の印刷を行うときに、制御部9は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれのインク流量と、ヘッド3の内部の温度である第1温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定しても良い。たとえば、制御部9は、4本のインク流路3c~3fのそれぞれのインク流量と、ヘッド内温度センサ13によって検知される第1温度とに基づいて、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度を推定しても良い。この場合には、印刷媒体2の印刷前に、ヘッド内ヒータ18によって加温されるインクの目標加温温度と、様々なインク流量および第1温度(具体的には、ヘッド内温度センサ13によって検知される第1温度)とに応じた、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度が予め測定されており、この測定結果が制御部9に予め記憶されている。
【0077】
上述した形態および変形例において、4本の加温機構インク流路20c~20fのそれぞれの流路長が互いに等しくなっていても良い。また、上述した形態において、4本の加温機構インク流路20c~20fのそれぞれの断面積の平均値が互いに等しくなっていても良い。さらに、上述した形態において、4本の加温機構インク流路20c~20fのそれぞれとヘッド外ヒータ21との距離が互いに等しくなっていても良い。また、上述した形態において、ヘッド内ヒータ18は、インク流路3c~3fのインクを均等に温めても良い。
【0078】
なお、4本の加温機構インク流路20c~20fのそれぞれの流路長および断面積の平均値が互いに等しく、かつ、4本の加温機構インク流路20c~20fのそれぞれとヘッド外ヒータ21との距離が互いに等しくなっているとともに、ヘッド内ヒータ18がインク流路3c~3fのインクを均等に温める場合であっても、4本のインク流路3c~3fのそれぞれに流入するインク流量がばらつくと、4本のインク流路3c~3fのそれぞれにおけるインクの温度はばらつく。
【0079】
上述した形態および変形例において、ヘッド3に形成されるインク流路の数は、2本または3本であっても良いし、5本以上であっても良い。また、上述した形態および変形例において、制御部9は、複数の圧電素子16のそれぞれを個別に制御することが可能となっていても良い。また、上述した形態および変形例において、ヘッド3は、ヘッド内ヒータ18を備えていなくても良い。さらに、上述した形態および変形例において、プリンタ1は、インク加温機構12を備えていなくても良い。
【0080】
上述した形態および変形例では、ノズル3aからインクを吐出させるための吐出エネルギー発生素子は、圧電素子16であるが、ノズル3aからインクを吐出させるための吐出エネルギー発生素子は、ヒータ(発熱素子)であっても良い。すなわち、上述した形態および変形例では、プリンタ1は、ピエゾ方式によってノズル3aからインクを吐出させているが、プリンタ1は、サーマル方式によってノズル3aからインクを吐出させても良い。
【0081】
上述した形態および変形例において、プリンタ1で使用されるインクは、UVインク以外の、常温での粘度が高く、かつ、温度変動に伴う粘度の変動が大きいインクであっても良いし、このような特性を有しないインクであっても良い。また、上述した形態および変形例において、プリンタ1は、プラテン8に代えて、印刷媒体2が載置されるテーブルと、テーブルを前後方向に移動させるテーブル駆動機構とを備えていても良い。さらに、上述した形態および変形例において、プリンタ1は、三次元造形物を造形する3Dプリンタであっても良い。
【符号の説明】
【0082】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
3a ノズル
3c~3f インク流路
9 制御部
12 インク加温機構
13 ヘッド内温度センサ(インク温度センサ)
14 外部温度センサ
16 圧電素子(吐出エネルギー発生素子)
18 ヘッド内ヒータ
20 加温部本体
20c~20f 加温機構インク流路
21 ヘッド外ヒータ