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特許7370310熱硬化性樹脂組成物及びこれを用いたプリプレグ、積層シート、並びに印刷回路基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物及びこれを用いたプリプレグ、積層シート、並びに印刷回路基板
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20231020BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20231020BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231020BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
C08F290/06
C08J5/24 CEZ
B32B27/00 103
H05K1/03 610H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020207650
(22)【出願日】2020-12-15
(62)【分割の表示】P 2019007093の分割
【原出願日】2015-12-21
(65)【公開番号】P2021073325
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2014-0186496
(32)【優先日】2014-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0179108
(32)【優先日】2015-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】504408236
【氏名又は名称】ドゥーサン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、トン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、チョン トン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ム ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ト ウン
【審査官】飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-231132(JP,A)
【文献】特開平04-088054(JP,A)
【文献】特表2006-516297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0146692(US,A1)
【文献】特開2010-195970(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/06
C08J 5/24
B32B 27/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子鎖の両末端にビニル基、アリル基、又はメタクリロイルオキシ基からなる群から選択される不飽和置換基を2つ以上有するポリフェニレンエーテル又はそのオリゴマー;および
(b)3種以上の互いに異なる架橋結合性硬化剤;を含み、前記3種以上の異なる架橋結合性硬化剤は、炭化水素系架橋結合性硬化剤(但し、スチレン-ブタジエンブロック構造であるものを除く)、3つ以上の官能基を含有する架橋結合性硬化剤(但し、炭化水素系架橋結合性硬化剤、及びスチレン-ブタジエンブロック構造であるものを除く)、ジ-4-ビニルベンジルエーテル及びスチレン-ブタジエンブロック構造の架橋結合性硬化剤を含み;更に、
(c)難燃剤を含み、
前記3つ以上の官能基を含有する架橋結合性硬化剤は、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate、TAIC)及び1,2,4-トリビニルシクロヘキサン(1,2,4-trivinyl cyclohexane、TVCH)からなる群から選択されるものであり、
前記スチレン-ブタジエンブロック構造の架橋結合性硬化剤は、スチレン-ブタジエン、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンブロック共重合体からなる群から選択されるものであり、
前記炭化水素系架橋結合性硬化剤は、ブタジエン又はそのポリマー、デカジエン又はそのポリマー、及びオクタジエン又はそのポリマーからなる群から選択されるものであり、
前記炭化水素系架橋結合性硬化剤、前記3つ以上の官能基を含有する架橋結合性硬化剤及び前記 スチレン-ブタジエンブロック構造の架橋結合性硬化剤の含量は、それぞれ、樹脂組成物の全重量を基準にして、1.65~15重量%の範囲であり、
前記ジ-4-ビニルベンジルエーテルの含量は、樹脂組成物の全重量を基準にして、1~10重量%の範囲であり、
周波数1GHzでの誘電率(Dk)が3.63以下である、高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された無機フィラーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記3つ以上の官能基を含有する架橋結合性硬化剤及び前記スチレン-ブタジエンブロック構造の架橋結合性硬化剤の使用比率は、1~20:1重量比であることを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(a)は、下記の化1で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式中、Yは、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ナフタレン型、アントラセン型、ビフェニル型、テトラメチルビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、及びビスフェノールSノボラック型からなる群から選択される1種以上の化合物であり、m及びnは、それぞれ独立に、3~20の自然数である)
【請求項5】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(a)は、数平均分子量が1,000~10,000の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリフェニレンエーテル樹脂(a)の分子量分布は、3以下(Mw/Mn≦3)であることを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記スチレン-ブタジエンブロック構造の架橋結合性硬化剤は、下記の化で示されるものであることを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【化2】
(式中、nは、5~20の整数であり、mは、5~20の整数である)
【請求項8】
前記架橋結合性硬化剤(b)の含量は、樹脂組成物の全重量を基準にして、5~40重量%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記架橋結合性硬化剤は、前記炭化水素系架橋結合性硬化剤(b1)、3つ以上の官能基を含有する架橋結合性硬化剤(b2)及びスチレン-ブタジエンブロック構造の架橋結合性硬化剤(b3)をb1:b2:b3=1~20:1~20:1重量比で含むことを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂組成物は、反応開始剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記難燃剤は、ハロゲン含有難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、及び金属水酸化物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記反応開始剤は、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチルー2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、ベンゾイルペルオキシド、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキシキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutylonitrile)、及び金属カルボキシレート塩からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項10に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記反応開始剤の含量は、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して2~5重量部の範囲であることを特徴とする請求項10に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された繊維基材;及び前記繊維基材に含浸された請求項1~13のいずれか1項に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物を含むプリプレグ。
【請求項15】
前記高周波用熱硬化性樹脂組成物は、1GHzでの誘電率(Dk)が3.6~3.63であり、1GHzでの誘電正接(Df)が0.0017~0.0020であり、熱膨張係数(CTE)が1.9~2.1%の範囲であることを特徴とする請求項14に記載のプリプレグ。
【請求項16】
前記繊維基材は、ガラスペーパー、ガラス繊維不織布(glass web)、ガラスクロス(glass cloth)及びアラミドペーパー(aramid paper)からなる群から選択された1種以上の材料を含む基材であるものであることを特徴とする請求項14に記載のプリプレグ。
【請求項17】
金属箔又は高分子フィルム基材;及び前記基材の片面又は両面上に形成され、請求項1~13のいずれか1項に記載の高周波用熱硬化性樹脂組成物が硬化された樹脂層;を含む機能性積層シート。
【請求項18】
請求項14に記載のプリプレグを1層以上含んで積層成形されるものであることを特徴とする印刷回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた低誘電損失特性及び良好な吸湿耐熱性、低熱膨張性、優れた熱的安定性などを同時に示すことができる新規な高周波用熱硬化性樹脂組成物及びこれを用いたプリプレグ、機能性積層シート、銅箔積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、半導体基板、印刷回路基板、EMC(Epoxy Molding Compound)などのような電子部品及び情報通信機器の信号の帯域が高くなる傾向にある。電気信号の伝送損失は、誘電正接及び周波数に比例する。従って、周波数が高いほど伝送損失が大きくなって減衰をもたらし、伝送信頼性の低下が生じる。また、伝送損失の熱への変換による発熱の問題が発生することがある。それで、高周波領域では、誘電正接が非常に小さい絶縁材料が求められている。
【0003】
また、現在、半導体機器及びPCBの分野において高集積化、高精細化、高性能化などの要求が高まるに伴い、半導体機器の集積及び印刷回路基板の高密度化と共に配線間隔の簡潔化が求められつつある。このような特性を満たすため、伝送速度を速くする低誘電率と伝送損失を減少させるための低誘電損失特性を有する物質を使用することが好ましい。
【0004】
このような低誘電特性を示すため、優れた誘電特性を有するポリフェニレンエーテル樹脂を適用する試みが行われているが、高い溶融粘度、ハンドリングの困難性、プリプレグの成型加工性などのような問題があった。また、優れた誘電特性を有するポリフェニルエーテル樹脂などのような熱可塑性樹脂の効果的な架橋化方法に関する研究は行われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述の問題点を解決するためになされたものであって、分子鎖の両側が不飽和結合の置換基で改質されたポリフェニレンエーテル樹脂、及び3種以上の特定の架橋結合性硬化剤を併用することで、優れた耐熱性、低誘電特性及び諸物性が同時に得られる熱硬化性樹脂組成物に関するものである。
【0006】
それで、本発明の目的は、優れた耐熱性と低誘電特性を発揮する熱硬化性樹脂組成物、前記組成物を用いたプリプレグ、積層シート及び印刷回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、(a)分子鎖の両末端にビニル基及びアリル基からなる群から選択される不飽和置換基を2つ以上有するポリフェニレンエーテル又はそのオリゴマー;(b)3種以上の互いに異なる架橋結合性硬化剤;(c)難燃剤;を含む高周波用熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0008】
前記高周波用熱硬化性樹脂組成物は、ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された無機フィラーをさらに含むことができる。
【0009】
一例としては、前記架橋結合性硬化剤は、炭化水素系架橋剤(b1)、3つ以上の官能基を含有する架橋剤(b2)及びブロック構造のゴム(b3)の混合物である。
【0010】
また、本発明は、ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された繊維基材;及び前記繊維基材に含浸された上述の熱硬化性樹脂組成物を含むプリプレグを提供する。
【0011】
また、本発明は、金属箔又は高分子フィルム基材;及び前記基材の片面又は両面の上に形成され、上述の熱硬化性樹脂組成物が硬化された樹脂層を含む機能性積層シート;を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、前記プリプレグを1層以上含んで積層成形されたものであることを特徴とする印刷回路基板を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱硬化性樹脂組成物は、ガラス転移温度(Tg)の向上、低熱膨張係数(CTE)、低誘電特性、低誘電損失及び高耐熱性、優れた加工性を同時に満たすことができるため、これを用いた印刷回路基板は、優れた高周波特性及び良好な吸湿耐熱性、低熱膨張特性を発揮することが可能となる。
【0014】
従って、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、1GHz以上の高周波信号を取り扱うモバイル通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーターなどのネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータなどの各種の電気電子機器に使用される印刷回路基板の部品用途として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳述する。
【0016】
本発明は、印刷回路基板、特に、高周波数用途の多層印刷回路基板に有用に使用できる熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【0017】
電気信号の誘電損失は、回路を形成する絶縁層の比誘電率の平方根、誘電正接及び電気信号の周波数の積に比例するため、電気信号の周波数が高いほど誘電損失が大きくなる。
従って、高周波数印刷回路基板の絶縁層に使用するためには、誘電率と誘電損失因子(誘電損失)が低い物質を使用することが求められている。このような要求に応えて低誘電性高分子材料を実現するため、エポキシ樹脂の水酸基の低減、熱可塑性樹脂の架橋化方案、液晶高分子やポリイミドの使用などを適用した高周波用基板材料の開発が行われているが、それだけでは、高周波特性を満たす誘電特性が得られておらず、又は、基板の成形に難しさがある。
【0018】
それで、本発明では、上述のような低誘電特性及び誘電損失特性を満足させるため、熱硬化性樹脂組成物の構成成分として、ポリフェニレンエーテル[poly(phenylene)ether、PPE]を使用して行っていたが、PPEの使用時に発生する、低い耐熱性、PPE樹脂融解物の粘性増加などが考慮して、分子鎖の両末端が不飽和結合性置換基であるビニル基又はアリル基で改質されたポリフェニレンエーテル及び3種以上の特定の架橋結合性硬化剤を併用することを特徴としている。
【0019】
より具体的に、本発明では、ポリフェニレンエーテルの両末端をビニル(vinyl)基、アリル(allyl)基などで改質することで不飽和結合が可能となる。これは、熱により架橋反応が起こって耐熱性の向上に寄与し、絶縁層の変形、流動を抑制することができる。また、ガラス転移温度(Tg)の向上、低い熱膨張係数(CTE)及び-OH(ヒドロキシ基)の減少により、耐湿性及び誘電特性を満たすと共に、既存の熱硬化システムにおいても適用することができ、架橋剤の特性による誘電特性などに関する研究を行うことで、諸物性及び加工性を同時に確保することが可能となる。
【0020】
また、本発明では、上述のように誘電特性に優れたポリフェニレンエーテル(PPE)を再分配反応により低分子量に改質した後、両末端をビニル基で処理して相溶性(compatibility)を高めたPPEをベースレジン(base resin)として使用し、さらに、誘電特性に優れた3種以上の架橋結合性硬化剤を使用することで、ラジカル重合により、低誘電特性を実現すると共に、優れた耐熱特性及び機械的特性を実現することが可能となる(表3参照)。
【0021】
例えば、前記3種以上の架橋結合性硬化剤として、炭化水素系架橋剤、3つ以上の官能基を含有する架橋剤及びブロック構造のゴムを混用することができる。
【0022】
ここで、前記炭化水素系架橋剤は、低分極特性を有するため、低誘電特性を実現することができる共に、良好な流動性を有するため、優れた成形加工性が得られる。また、本発明の樹脂組成物は、硬化の際に前記炭化水素系架橋剤によりエラストマー性質を有するようになるため、ドリル加工においてドリル磨耗性に効果的である。このような炭化水素系架橋剤を3つ以上の官能基を含有する架橋剤(以下、「3つ以上官能基含有架橋剤」という)と共に使用すると、前記3つ以上官能基含有架橋剤により樹脂それ自体の体積が大きくなり、これによって、炭化水素系硬化剤とのシナジー効果が発揮され、炭化水素系架橋剤を単独で使用する場合に比べて、より低い誘電特性を実現することができ、また、架橋密度が増加して耐熱特性が向上することができる。さらに、前記架橋剤と共に、ブロック構造のゴム、例えば、スチレン-ブタジエンゴムを併用する場合、樹脂組成物の硬化後に高分子鎖内のスチレンなどの剛直な構造がドメインとしての役割を果たし、機械的特性が向上し、特に、スチレン系ユニット及びブタジエン系ユニットを含有する共重合体(例えば、スチレン-ブタジエンゴム)を使用する場合は、スチレンの加工性及びブタジエンの耐衝撃性、耐化学性のメリットを同時に実現することが可能である。
【0023】
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、非エポキシ系の熱硬化性樹脂組成物であって、(a)分子鎖の両末端にビニル基及びアリル基からなる群から選択される不飽和置換基を2つ以上有するポリフェニレンエーテル又はそのオリゴマー;(b)3種以上の架橋結合性硬化剤;及び(c)難燃剤を含む。また、前記熱硬化性樹脂組成物は、ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された無機フィラーをさらに含むことができる。なお、必要に応じて、硬化促進剤、開始剤(例えば、ラジカル開始剤)などをさらに含むこともできる。
【0024】
(a)ポリフェニレンエーテル
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル(PPE)又はそのオリゴマーを含む。前記PPE又はそのオリゴマーは、分子鎖の両末端に2つ以上のビニル基、アリル基又はその両方を有するものであり、その構造は、特に限定されない。
【0025】
本発明において、下記の化1で示される、アリル化したポリフェニレンエーテルが好ましい。これは、側部が2つ以上のビニル基で改質されることで、ガラス転移温度の向上、低熱膨張係数、-OH基の減少による耐湿特性及び誘電特性を満足させることができるためである。
【0026】
【化1】
(式中、Yは、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ナフタレン型、アントラセン型、ビフェニル型、テトラメチルビフェニル型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、及びビスフェノールSノボラック型からなる群から選択される1種以上の化合物であり、m及びnは、それぞれ独立に、3~20の自然数である)
【0027】
本発明では、分子鎖の両末端に、2つ以上のビニル基を有するものを主に使用しているが、前記ビニル基の他に、当業界で周知の不飽和二重結合性モイエティ(moiety)を使用することも、本発明の範疇に含まれる。
【0028】
なお、ポリフェニレンエーテルは、本質的に融点が高く、これによって、樹脂組成物の融解物の粘性が高くなるため、多層シートを生産することが困難である。それで、本発明では、従来の高分子量のポリフェニレンエーテルをそのまま使用せず、その代わりに、再分配反応を行うことで低分子量に改質される形態のものを使用することが好ましい。
【0029】
特に、従来の高分子量のポリフェニレンエーテルを、低分子量のポリフェニレンエーテル樹脂に改質させる時に、一般的に、フェノールに由来する化合物やビスフェノールAのような化合物を使用しているが、この場合、分子構造上、ローテーションが可能あるため、誘電率低下現象が発生する。
【0030】
なお、本発明では、従来の高分子量のポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂をそのまま使用せず、その代わりに、アルキル(alkyl)基の含量と芳香族環(aromatic)基の含量が増加した特定のビスフェノール(bisphenol)化合物を用いて再分配反応を行うことで低分子量に改質された形態であって、再分配により樹脂の両末端にビニル基が導入された形態をとる。なお、前記再分配反応は、ラジカル開始剤、触媒、又は、ラジカル開始剤と触媒との存在下で行われる。
【0031】
具体的に、従来の銅箔積層板用ポリフェニレンエーテルはポリフェノールとラジカル開始剤とを触媒として使用する再分配反応により、高分子ポリフェニレンエーテルを、両末端にアルコール基を有する低分子ポリフェニレンエーテルに改質して使用している。しかし、従来、再分配に使用されるポリフェノールであるビスフェノールAの構造的特徴及び再分配の後に生成される両末端におけるアルコール基の高い極性によって低い誘電損失特性の実現には限界があった。
【0032】
これに対し、本発明では、再分配反応に使用されるポリフェノールとして、アルキル基の含量と芳香族環基の含量とが増加した特定のビスフェノール化合物を使用して再分配を行った後、両末端に位置するアルコール基を、極性の低いビニル基に変形することで、架橋の後にも誘電損失の小さなポリフェニレンエーテルを得ることができる。このような変性ポリフェニレンエーテルは、既存のポリフェニレンに由来する化合物に比べて、分子量が低くアルキル基の含量が高くため、既存のエポキシ樹脂との相溶性に優れていると共に積層板の製造時に流動性が向上し、工程の改善が可能となり、さらに誘電特性の改善が可能となる。従って、本発明の樹脂組成物を使用して製造された印刷回路基板は、成形性、加工性、誘電特性、耐熱性、接着強度などの物性が向上するメリットを有するようになる。
【0033】
なお、前記アルキル基の含量と芳香族環基の含量が増加した特定のビスフェノール化合物としては、ビスフェノールA[BPA、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン]を除くビスフェノール系化合物を制限なく使用できる。使用可能なビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールAP(1,1-Bis(4-hydroxyphenyl)-1-phenyl-ethane)、ビスフェノールAF(2,2-Bis(4-hydroxyphenyl)hexafluoropropane)、ビスフェノールB(2,2-Bis(4-hydroxyphenyl)butane)、ビスフェノールBP(Bis-(4-hydroxyphenyl)diphenylmethane)、ビスフェノールC(2,2-Bis(3-methyl-4-hydroxyphenyl)propane)、ビスフェノールC(Bis(4-hydroxyphenyl)-2,2-dichloroethylene)、ビスフェノールG(2,2-Bis(4-hydroxy-3-isopropyl-phenyl)propane)、ビスフェノールM(1,3-Bis(2-(4-hydroxyphenyl)-2-propyl)benzene)、ビスフェノールP(Bis(4-hydroxyphenyl)sulfone)、ビスフェノールPH(5,5’-(1-Methylethyliden)-bis[1,1’-(bisphenyl)-2-ol]propane)、ビスフェノールTMC(1,1-Bis(4-hydroxyphenyl)-3,3,5-trimethyl-cyclohexane)、ビスフェノールZ(1,1-Bis(4-hydroxyphenyl)-cyclohexane)又はこれらの1種以上の混合物などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0034】
前記プリフェニレンエーテル樹脂(a)は、数平均分子量が10,000~30,000範囲の高分子量ポリフェニレンエーテル樹脂を、ビスフェノール系化合物(但し、ビスフェノールAを除く)の存在下で再分配反応を行うことで、数平均分子量(Mn)が1,000~10,000範囲の低分子量に改質されたものであることができ、好ましくは、数平均分子量(Mn)が1,000~5,000の範囲、より好ましくは、1,000~3,000の範囲である。
【0035】
また、前記ポリフェニレンエーテルの分子量分布は、3以下(Mw/Mn≦3)が好適であり、好ましくは、1.5~2.5の範囲である。
【0036】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物において、前記ポリフェニレンエーテル樹脂又はそのオリゴマーの含量は、樹脂組成物の全重量を基準にして、約20~50重量%であることができる。
【0037】
(b)架橋結合性硬化剤
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、3種以上の互いに異なる架橋結合性硬化剤を含む。
【0038】
前記架橋結合(cross-linking)性硬化剤は、前記ポリフェニレンエーテルを3次元的に架橋結合させて網状構造を形成するものであって、レジン組成物の流動性を増加させるために低分子量に改質されたポリフェニレンエーテルを使用しても、3種以上の架橋結合性硬化剤の使用により、ポリフェニレンエーテルの耐熱性が改善される。また、前記架橋結合性硬化剤は、PPEを架橋結合させることで、低誘電率及び誘電損失特性を実現することができ、前記硬化樹脂組成物の流動性を増加させ、他の基材(例えば、銅箔)との剥離強度を向上させることができる。
【0039】
前記架橋結合性硬化剤は、炭化水素系架橋剤(b1)、3つ以上の官能基を含有する架橋剤(b2)及びブロック構造のゴム(b3)からなる群から選択される。
一例としては、前記架橋結合性硬化剤として、炭化水素系架橋剤(b1)、3つ以上の官能基を含有する架橋剤(b2)及びブロック構造のゴム(b3)を混用して使用することができる。
【0040】
本発明において使用可能な炭化水素系架橋剤としては、二重結合又は三重結合を有している炭化水素系架橋剤であれば、特に限定されないが、好ましくは、ジエン系架橋剤であることができる。具体的には、例えば、ブタジエン(例えば、1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエンなど)又はそのポリマー、デカジエン(例えば、1,9-デカジエンなど)又はそのポリマー、オクタジエン(例えば、1,7-オクタジエンなど)又はそのポリマー、ビニルカルバゾールなどが挙げられるが、これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
一例としては、前記炭化水素系架橋剤として、下記の化2で示されるポリブタジエンを使用することができる。
【0042】
【化2】
(式中、nは、10~30の整数である)
【0043】
前記炭化水素系架橋剤の分子量(Mw)は、500~3,000の範囲であることができ、好ましくは、1,000~3,000の範囲である。
【0044】
本発明において使用可能な3つ以上(好ましくは、3~4個)の官能基を含有する架橋剤としては、例えば、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate、TAIC)、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン(1,2,4-trivinyl cyclohexane、TVCH)などが挙げられるが、これらに制限されない。なお、これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
一例としては、3つ以上の官能基を含有する架橋剤として、下記の化3で示されるトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を使用することができる。
【0046】
【化3】
【0047】
本発明において使用可能なブロック構造のゴムとしては、ブロック共重合体の形態で、好ましくは、ブタジエンユニットを含有するブロック共重合体型のゴム、より好ましくは、ブタジエンユニットと共にスチレンユニット、アクリロニトリルユニット、アクリレートユニットなどのようなユニットを含有するブロック共重合体型のゴムである。例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリレート-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴムなどが挙げられるが、これらに制限されない。なお、これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
一例としては、ブロック構造のゴムとして、下記の化4で示されるスチレン-ブタジエンゴムを使用することができる。
【0049】
【化4】
(式中、nは、5~20の整数であり、mは、5~20の整数である)
【0050】
本発明の熱硬化性樹脂組成物において、前記架橋結合性硬化剤(b)の含量は、特に限定されないが、樹脂組成物の全重量を基準にして、約5~45重量%の範囲であることができ、好ましくは、約10~30重量%の範囲である。前記架橋結合性硬化剤の含量が上述の範囲内であれば、樹脂組成物の低誘電特性、硬化性、成形加工性及び接着力が良好である。
【0051】
一例としては、前記3種以上の架橋結合性硬化剤として、炭化水素系架橋剤(b1)、3つ以上の官能基を含有する架橋剤(b2)及びブロック構造のゴムを混用する場合、前記炭化水素系架橋剤(b1)、3つ以上の官能基を含有する架橋剤(b2)及びブロック構造のゴム(b3)の含量は、それぞれ、樹脂組成物の全重量を基準にして、約1.65~15重量%の範囲、好ましくは、約3.33~10重量%の範囲、より好ましくは、約5~10重量%の範囲である。
【0052】
他の例としては、前記3種以上の架橋結合性硬化剤として、炭化水素系架橋剤(b1)、3つ以上の官能基を有する架橋剤(b2)及びブロック構造のゴムを混用する場合、前記炭化水素系架橋剤(b1)、3つ以上の官能基を含有する架橋剤(b2)及びブロック構造のゴム(b3)の使用比率は、b1:b2:b3=1~20:1~20:1重量比であり、好ましくは、b1:b2:b3=1~7:1~7:1重量比である。
【0053】
必要に応じて、本発明では、上述の炭化水素系硬化剤、3つ以上の官能基を含有する架橋剤及びブロック構造のゴムの他に、当業界で周知の架橋結合性硬化剤をさらに含むことができる。なお、架橋結合性硬化剤は、側部がビニル基、アリル基などで改質されたポリフェニレンエーテルとの優れた混和性を有することが好ましい。
【0054】
使用可能な架橋結合性硬化剤としては、例えば、ジビニルナフタレン、ジビニルジフェニル、スチレンモノマー、フェノール、トリアリルシアヌレート(TAC)、ジ-4-ビニルベンジルエーテル[di-(4-vinylbenzyl)ether](化5)などが挙げられるが、これに制限されない。なお、上述の硬化剤は、単独で又は2種以上を混用して使用することができる。
【0055】
【化5】
【0056】
本発明において、上述の架橋結合性硬化剤を適切な混用及び最適な含量に調節することで、低誘電特性だけでなく、諸物性と加工性を極大化することができる。特に、本発明では、架橋結合剤として、開始遅延反応効果を示すジ-4-ビニルベンジルエーテル[di-(4-vinylbenzyl)ether](化5)を、他の架橋結合性硬化剤(炭化水素系硬化剤、3つ以上の官能基を含有する硬化剤及びブロック構造のゴム)と、最適な含量で混合して使用することで、粘度の調節を容易に行うことができる。これによって、レジン流動性を調節することで、プリプレグのハンドリング性や成形可能の困難性を克服することができる。
【0057】
具体的に、架橋結合性硬化剤として炭化水素系硬化剤、3つ以上の官能基を含有する硬化剤及びブロック構造のゴムと共に、ジ-4-ビニルベンジルエーテルを混用すると、低誘電特性と含量調節による流動特性とを同時に確保することができる。なお、炭化水素系硬化剤、3つ以上の官能基を含有する硬化剤及びブロック構造のゴムは、それぞれ、樹脂組成物の全重量を基準にして、約1.65~15重量%の範囲、好ましくは、約3.33~10重量%の範囲、より好ましくは、約5~10重量%の範囲で使用することができ、ジ-4-ビニルベンジルエーテルは、樹脂組成物の全重量を基準にして、約1~10重量%の範囲、好ましくは、約2~5重量%の範囲で使用することができる。
【0058】
(c)難燃剤
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、難燃剤(c)を含む。
【0059】
前記難燃剤としては、当業界で周知のものを制限なく使用することができ、例えば、臭素又は塩素を含有するハロゲン系難燃剤;トリフェニルホスフェート、リン酸トリクレジル(tricresyl phosphate)、トリスジクロロプロピルホスフェート、ホスファゼンなどのリン系難燃剤;三酸化アンチモンなどのアンチモン系難燃剤;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物などのような無機物の難燃剤が挙げられる。本発明では、ポリフェニレンエーテルとの反応性がなく、かつ耐熱特性及び誘電特性の低下を生じない添加型臭素難燃剤が好ましく使用される。
【0060】
本発明において臭素化難燃剤としては、ブロモフタルイミド(bromophtalimide)、ブロモフェニル(bromophenyl)、添加型臭素系難燃剤、或いは、アリル末端(allyl terminated)型のテトラブロモビスフェノールA(tetrabromo bisphenol A allyl ether)、ジビニルフェノール(divinylphenol)型の難燃性硬化剤を使用することで、硬化剤特性と難燃特性とを同時に得ることができる。また、臭素化有機化合物を使用することができ、具体例としては、デカブロモジフェニルエタン(decabromodiphenylethane)、4,4-ジブロモビフェニル、エチレンビステトラブロモフタルイミド(ethylenebistetrabromophthalimide)などが挙げられる。
【0061】
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物において、前記難燃剤の含量は、樹脂組成物の全重量を基準にして、約10~30重量%含むことができ、好ましくは、約10~20重量%の範囲である。前記難燃剤が上述の範囲である場合は、難燃94V-0レベルの火炎抵抗性を十分に示すと共に、優れた熱抵抗性と電気的特性を示すことができる。
【0062】
(d)ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理された無機フィラー
本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された無機フィラーを含むことができる。
【0063】
前記無機フィラーは、表面がビニル基含有シランカップリング剤で処理されたものであって、これは、両末端にビニル基及び/又はアリル基を含有するポリフェニレンエーテルとの相溶性に優れているため、低誘電特性、かつ吸湿耐熱性及び加工性を向上させることができる。また、前記無機フィラーは、樹脂層と他層との間の熱膨張係数(CTE)の差を減少させ、最終製品の曲げ特性、低膨張化、機械的強度(toughness)、低応力化を効果的に向上させることができる。
【0064】
本発明において使用可能な無機フィラー(d)としては、当業界で公知のもので、表面がビニル基含有シランカップリング剤で処理されたものであれば、特に制限されない。例えば、天然シリカ(natural silica)、溶融シリカ(fused silica)、アモルファスシリカ(amorphous silica)、結晶シリカ(crystalline silica)などのようなシリカ類;ベーマイト(boehmite)、アルミナ、タルク(talc)、球形ガラス、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マクネシア、クレイ、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、酸化アンチモン、ガラス繊維、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、滑石(talc)、雲母(mica)などが挙げられるが、これらの表面は、ビニル基含有シランカップリング剤で処理されている。このような無機フィラーは、単独で又は2つ以上を混用して使用することができる。
その中で、低い熱膨張係数を示す溶融シリカが好ましく使用される。
【0065】
前記ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理された無機フィラーを製造する方法は、特に制限されず、当業界で周知の常法で製造することができる。例えば、ビニル基含有シランカップリング剤が含まれた溶液に無機フィラーを投入した後、乾燥させることで製造することができる。
【0066】
前記無機フィラー(d)の大きさは、特に制限されないが、平均粒径が約0.5~5μmの範囲であれば、分散性に有利である。
【0067】
また、前記無機フィラーの含量は、特に制限されないが、上述の曲げ特性、機械的物性などを考慮して適宜調節することができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物の全重量を基準にして、約10~50重量%の範囲であることが好ましい。なお、前記無機フィラーの含量が多すぎると、成形性が低下するおそれがある。
【0068】
なお、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物は、架橋結合性硬化剤の有利な効果を強くさせるため、反応開始剤をさらに含むことができる。
【0069】
このような反応開始剤は、ポリフェニレンエーテルと架橋結合性硬化剤の硬化を一層加速化し、レジンの耐熱性などのような特性を向上させることができる。
使用可能な反応開始剤としては、例えば、α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチルー2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、ベンゾイルペルオキシド、3,3’,5,5’-テトラメチル-1,4-ジフェノキシキノン、クロラニル、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノキシル、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、アゾビスイソブチロニトリル(azobisisobutylonitrile)などが挙げられるが、これらに制限されない。さらに、金属カルボキシレート塩を使用することもできる。
【0070】
前記反応開始剤の含量は、ポリフェニレンエーテル100重量部に対して約2~5重量部であることができるが、これに制限されない。
【0071】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含むことができる。
【0072】
前記硬化促進剤としては、例えば、鉄、銅、亜鉛、コバルト、鉛、ニッケル、マンガン及び錫からなる群から選択される1種以上の金属を含む有機金属塩又は有機金属錯体などが挙げられる。
【0073】
前記有機金属塩又は有機金属錯体としては、例えば、鉄ナフテネート(napthenates)、銅ナフテネート、亜鉛ナフテネート、コバルトナフテネート、ニッケルナフテネート、マンガンナフテネート、錫ナフテネート、亜鉛オクタノエート(octanoate)、錫オクタノエート、鉄オクタノエート、銅オクタノエート、亜鉛2-エチルヘキノエート、鉛アセチルアセトネート、コバルトアセチルアセトネート、又はジブチル錫マレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。なお、これらは、1種単独で又は2種を混合して使用することができる。
【0074】
前記硬化促進剤の含量は、ポリフェニレンエーテル10~60重量部に対して、約0.01~1重量部の範囲であることができるが、これに制限されない。
【0075】
上述の成分の他に、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、前記樹脂組成物の固有特性を阻害しない限り、必要に応じて当業界で周知の難燃剤や、上述しない他の熱硬化性樹脂や、熱可塑性樹脂及びこれらのオリゴマーなどのような種々の高分子、固体状ゴム粒子又は紫外線吸収剤、抗酸化剤、重合開始剤、染料、顔料、分散剤、増粘剤、レベリング剤などのような他の添加剤などをさらに含むことができる。例えば、シリコン系パウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダーなどの有機充填剤、オルベン、ベントンなどの増粘剤;シリコン系、フッ素樹脂系などの高分子系消泡剤又はレベリング剤;イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤などの密着性付与剤;フタロシアニン、カーボンブラックなどの着色剤などが挙げられる。
【0076】
前記熱硬化性樹脂組成物には、硬化後の樹脂組成物に適当な可撓性を付与するため、熱可塑性樹脂を配合することができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリサルホンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても、2種以上を併用して使用しても良い。
【0077】
前記樹脂添加剤としては、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダーなどの有機充填剤、オルベン、ベントンなどの増粘剤;シリコン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤;イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤、エポキシシラン、アミノシラン、アルキルシラン、メルカプトシランなどの密着性付与剤;フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、ヨード・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラックなどの着色剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、エステル系ワックスなどの離型剤;変性シリコンオイル、シリコンパウダー、シリコンレジンなどの応力緩和剤などが挙げられる。また、電子機器(特に、印刷配線基板)の生産に使用される熱硬化性樹脂組成物に通常使用される添加剤を含むことができる。
【0078】
本発明の一例によれば、前記熱硬化性樹脂組成物は、組成物100重量部を基準にして、(a)分子鎖の両末端に不飽和性置換基を2つ以上有するポリフェニレンエーテル樹脂を約20~50重量部;(b)3種以上の架橋結合性硬化剤を約5~45重量部;及び(c)難燃剤を約10~30重量部の範囲で含むことができ、これに加え、有機溶剤や他の成分を含むことで100重量部を満たす。なお、前記構成成分の基準は、組成物の全重量であることができ、又は、有機溶剤が含まれたワニスの全重量であることもできる。
【0079】
本発明の他の一例によれば、前記熱硬化性樹脂組成物は、組成物100重量部を基準にして、(a)分子鎖の両末端に不飽和性置換基を2つ以上有するポリフェニレンエーテル樹脂を約20~50重量部;(b)3種以上の架橋結合性硬化剤を約5~45重量部;(c)難燃剤を約10~30重量部;及び(d)ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された無機フィラーを約10~50重量部の範囲で含むことができ、これに加え、有機溶剤や他の成分を含むことで、全体として100重量部を満たす。なお、前記構成成分の基準は、組成物の全重量であることができ、又は、有機溶剤が含まれたワニスの全重量であることもできる。
【0080】
本発明において使用可能な有機溶剤としては、当業界で周知の有機溶剤を制限なく使用することができ、例えば、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、これらは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0081】
前記有機溶剤の含量は、前記組成物の組成比に基づいて、ワニス全体の100重量部を満たす残量の範囲であることができ、特に制限されない。
【0082】
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された繊維基材;及び繊維基材に含浸された上述の熱硬化性樹脂組成物を含む。なお、前記熱硬化性樹脂組成物は、溶媒に溶解又は分散された樹脂ワニスの形態であることもできる。
【0083】
本発明によって、前記ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された基材に、前記熱硬化性樹脂組成物を含浸させる場合、前記繊維基材と、前記組成物を構成する全成分(即ち、レジンと選択的に無機フィラー)がビニル基を含有しているため、これら間の優れた相溶性(compatibility)が得られ、これによって、誘電特性が改善され、吸湿耐熱性及び加工性が一層向上するため、高周波用素材を開発することができる。
【0084】
本発明において使用可能な繊維基材としては、当業界でプリプレグの基材として周知されたもので、表面がビニル基含有シランカップリング剤で処理されたものであれば、特に制限されない。例えば、任意に折り曲げ可能な可撓性を有する、当業界で通常使用されている繊維基材、有機物繊維基材、又はこれらの混合形態などが挙げられるが、これらの表面は、ビニル基含有シランカップリング剤で処理されている。なお、使用用途又は性能を基準に上述の繊維基材を選択することができる。
【0085】
前記繊維基材の具体例としては、例えば、E-glass、D-glass、S-glass、NE-glass、T-glass、Q-glassなどのガラス繊維、炭素繊維などのような無機繊維;ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、アラミド繊維、芳香族ポリエステル、フッ素樹脂などの有機繊維;及び前記無機繊維と有機繊維との混合物;前記無機繊維及び/又は有機繊維からなるペーパー、不織布、織物などが挙げられ、さらに、ロービング(roving)、チョップドストランドマット(chopped strand mat)、サーフェースマット(surfacing mat)などのマット類がある。これらは、上述のように、表面がビニル基含有シランカップリング剤で処理されたものであり、単独で又は2種以上を混用することができる。また、強化繊維基材を混用する場合は、プリプレグの剛性、寸法安定性が向上する。
【0086】
本発明の一例によれば、前記繊維基材として、ガラス繊維、ガラスペーパー、ガラス繊維不織布(glass web)、ガラスクロス(glass cloth)、アラミド繊維、アラミドペーパー(aramid paper)、ポリエステル繊維、炭素繊維、無機繊維、有機繊維及びこれらの混合を使用することができる。
【0087】
前記繊維基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、約0.01~0.3mmの範囲であることができる。
【0088】
前記繊維基材の表面を、ビニル基含有シランカップリング剤で処理する方法は、当業界で周知の常法で行うことができ、例えば、上述のビニル基含有シランカップリング剤で表面処理された無機フィラーの製造方法と同様にして製造することができる。
【0089】
本発明のプリプレグを製造する方法は、特に限定されず、当業界に周知の常法で行うことができる。
【0090】
一般的に、プリプレグとは、ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施された繊維基材に、上述の熱硬化性樹脂組成物をコーティング又は含浸させた後、加熱によりB-stage(半硬化状態)まで硬化させて得たシート状の材料を指称する。なお、前記加熱の温度及び時間は、特に限定されないが、例えば、加熱温度は、約20~200℃の範囲、好ましくは、約70~170℃の範囲であり、加熱時間は、約1~10分間の範囲であることができる。
【0091】
このような方法の他に、本発明のプリプレグは、当業界で公知のホットメルト法、ソルベント法などで製造することができる。
【0092】
ソルベント法は、プリプレグ形成用熱硬化性樹脂組成物を、有機溶媒に溶解させて形成された樹脂組成物ワニスに、繊維基材を含浸させた後、乾燥する方法である。このようなソルベント法では、通常、樹脂ワニスを用いている。前記樹脂組成物を繊維基材に含浸させる方法としては、例えば、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、樹脂ワニスを各種のコーターで基材に塗布する方法、樹脂ワニスをスプレーで基材に噴射する方法などが挙げられる。なお、繊維基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、繊維基材に対する樹脂組成物の含浸性が向上できるため、好ましい。
【0093】
前記樹脂組成物ワニスの調合において、有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテートなどの酢酸エステル類:セロソルブ、ブチルカルビトールなどのカルビトール類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。前記有機溶剤は、1種を使用又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
また、ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶媒に溶解することなく、樹脂組成物との剥離性に優れた離型紙にコーティングした後、これをシート状繊維基材にラミネートし、又は、ダイコーターで直接塗工する方法であることができる。また、支持体の上に積層された熱硬化性樹脂組成物からなる接着フィルムを、シート状補強基材の両面から加熱、加圧の条件下で連続的に熱ラミネートを行うことで製造することもできる。
【0095】
本発明の一例によれば、表面がビニル基含有シランカップリング剤で表面処理が施され、繊維製のシート状繊維基材又はガラス基材に上述の熱硬化性樹脂組成物をコーティングし、又は前記基材に前記熱硬化性樹脂組成物を含浸させた後、約70~170℃の温度で約1~10分間加熱して半硬化させると、プリプレグ、好ましくは印刷回路基板用プリプレグを製造することができる。なお、前記熱硬化性樹脂組成物は樹脂ワニスで製造されたものであることができる。
【0096】
<積層シート>
本発明に係る積層シートは、金属箔又は高分子フィルム基材;及び前記基材の片面又は両面上に形成され、前記熱硬化性樹脂組成物が硬化された樹脂層を含む。
【0097】
例えば、金属箔;及び前記金属箔の片面又は両面上に形成され、前記熱硬化性樹脂組成物が硬化された樹脂層を含む樹脂付銅箔が挙げられる。
【0098】
前記金属箔としては、当業界で周知の金属又は合金製であれば制限なく使用することができる。なお、前記金属箔が銅箔である場合、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物をコーティングし、乾燥して形成された積層板を銅箔積層板として使用することができる。好ましくは、銅箔である。使用可能な銅箔としては、例えば、CFL(TZA_B、HFZ_B)、Mitsui(HSVSP、MLS-G)、Nikko(RTCHP)、Furukawa、ILSINなどが挙げられる。
【0099】
前記銅箔は、圧延法及び電解法で製造されるあらゆる銅箔を含む。ここで、銅箔には、表面の酸化腐食を防止するため、防錆処理を施すことができる。
【0100】
前記金属箔は、前記熱硬化性樹脂組成物が硬化された樹脂層と当接する一面上に所定の表面粗さ(Rz)を形成することもできる。なお、表面粗さ(Rz)は、特に制限されないが、例えば、0.6~3.0μmの範囲であることができる。
【0101】
また、前記金属箔の厚さは、特に制限されないが、最終物の厚さと機械的特性を考慮して5μm未満であることができ、好ましくは、1~3μmの範囲である。
【0102】
また、本発明において使用可能な高分子フィルムとしては、当業界で公知の絶縁フィルムであれば、特に限定されない。例えば、ポリイミドフィルム、エポキシ樹脂フィルムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
<積層板及び印刷回路基板>
本発明は、上述のプリプレグ(prepreg)2つ以上を重ね合わせた後、通常の条件で加熱及び加圧して形成される積層板を含む。
【0104】
また、本発明は、前記プリプレグ及び銅箔を積層し、通常の条件で加熱加圧成形して形成される銅箔積層板を含む。
【0105】
例えば、上述の熱硬化性樹脂組成物を常温で攪拌機を用いて十分に攪拌した後、ガラス基材に含浸させ、乾燥した後、銅箔などと共に積層して熱と圧力を加えた後、希望の銅箔積層板を得ることができる。なお、銅箔積層板の成形時において、加熱加圧条件は、製造される銅箔積層板の厚さや本発明に係る熱硬化性樹脂組成物の種類に応じて適宜調節することができる。
【0106】
さらに、本発明は、前記プリプレグ、絶縁樹脂シート及び樹脂付銅箔からなる群から選択される1種以上を含んで積層された印刷回路基板、好ましくは、多層印刷回路基板を含む。
【0107】
本発明において印刷回路基板とは、めっきスルーホール法、ビルドアップ法などにより1層以上積層した印刷回路基板を指称し、内層配線板に上述のプリプレグ又は絶縁樹脂シートを重ね合わせて、加熱加圧成形を行うことで得られる。
【0108】
前記印刷回路基板は、当業界で周知の常法で製造することができる。好適な一例としては、例えば、本発明に係るプリプレグの片面又は両面に銅箔を積層し、加熱加圧して銅箔積層板を製造した後、銅箔積層板に孔を開口してスルーホールめっきを行った後、めっき膜を含む銅箔をエッチング処理して回路を形成する製造方法が挙げられる。
【0109】
上述のように、プリプレグ及び印刷回路基板は、本発明に係る熱硬化性樹脂組成物で製造することができる。前記プリプレグ及び印刷回路基板は、低い誘電率と誘電損失を有すると共に、低い熱膨張係数(CTE)と高いガラス転移温度(Tg)及び優れた耐熱性を同時に有することがわかった(表1参照)。従って、本発明のプリプレグ及び印刷回路基板は、1GHz以上の高周波信号を取り扱うモバイル通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーターなどのネットワーク関連電子機器及び大型コンピュータなどの各種の電気電子機器に使用されるネットワーク用印刷回路基板の部品用途として有用に使用可能である。
【0110】
以下、本発明の実施例を挙げて詳述するが、下記の実施例及び実験例は、本発明の例示に過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例及び実験例により制限されることはない。なお、以下の説明において「部」は「質量部」を意味する。
【0111】
[実施例1~3]
1-1.熱硬化性樹脂組成物の製造
下記の表1に示される組成によって前記ポリフェニレンエーテルをトルエンに溶解した後、2種以上の架橋結合性硬化剤、難燃剤及び無機フィラーを混合し、3時間攪拌した後、開始剤を添加し、さらに1時間攪拌して熱硬化性樹脂組成物を製造した。表1中、各組成物の使用量単位は、重量部である。
【0112】
1-2.プリプレグ及び印刷回路基板の製造
上記で製造された樹脂組成物を、ビニル基含有シランカップリング剤で表面処理されたガラス繊維に含浸させた後、165℃で約3~10分間乾燥してプリプレグを製造した。
その後、プリプレグを1ply積層した後、プレスして0.1mm厚さの積層薄板を製造した。
【0113】
[比較例1~6]
下記の表2に示される組成で製造する以外は、上述の実施例と同様にして樹脂組成物、プリプレグ及び印刷回路基板を製造した。表2中、各組成物の使用量単位は、重量部である。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
[実験例1]印刷回路基板の物性
実施例1~3及び比較例1~6で得られた印刷回路基板について、下記の実験を行い、その結果を表3に示す。
【0117】
1)ガラス転移温度(Tg)の測定
TA Instruments社のDSC 2010及びDSC 2910で測定した。DSC測定で約5mg程度のサンプルを10/minの速度で300℃まで加熱した後、10/minの速度で30℃まで冷却した。このような最初の加熱・冷却の過程を2回にわたって同様に行った。
【0118】
2)熱膨張係数(CTE:Coefficient of thermal expansion)
TMAガラス転移温度測定:銅箔積層板を銅エッチング液に含浸して銅箔を除去した評価基板として各辺5mmの評価基板を製造し、TMA試験装置(TA Instruments、Q400)を用いて評価基板の熱膨張特性を観察することで評価した。
【0119】
3)耐熱性
IPC TM-650 2.4.13評価規格に従ってSolder 288で印刷回路基板をフローティングし、絶縁層と銅箔、絶縁層と金属コア、或いは絶縁層間の分離現象が生じる時点までの時間を測定して評価した。
【0120】
4)吸湿耐熱評価(PCT)
銅箔積層板を銅エッチング液に含浸して銅箔を除去した評価基板を製造し、圧力釜実験装置(ESPEC、EHS-411MD)を用いて、121℃、0.2MPaの条件まで4時間放置後、Solder 288で印刷回路基板を10秒間隔でディッピング(dipping)し、絶縁層と銅箔、絶縁層と金属コア、或いは絶縁層間の分離現象が生じる時点までの時間を測定して評価した。
【0121】
5)比誘電率及び誘電正接
銅箔積層板を銅エッチング液に含浸して銅箔を除去した基板を用いて、比誘電率測定装置(RF Impedence/Material Analyzer;Agilent)で、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0122】
6)難燃性
銅箔積層板を銅エッチング液に含浸して銅箔を除去した評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmの評価基板を製作し、UL94の試験法(V法)に基づいて評価した。
【0123】
7)銅箔接着性(Peel Strength、P/S)
IPC-TM-650 2.4.8の評価規則に従って印刷回路基板に形成されたパターンを、90’方向から引き上げて回路パターン(銅箔)の剥離時点を測定して評価した。
【0124】
【表3】
【0125】
実験の結果、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、優れた低誘電損失特性と低い誘電率を有すると共に、高いガラス転移温度(Tg)、優れた耐熱性、低熱膨張特性、高い熱的安定性などを同時に示すことが確認された(表3参照)。