(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】腎疾患を有し、および標準治療の処置を受ける患者の腎機能を維持し、および改善するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/744 20150101AFI20231020BHJP
A61K 31/702 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/733 20060101ALI20231020BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20231020BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20231020BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20231020BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231020BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20231020BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20231020BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A61K35/744
A61K31/702
A61K31/733
A61K35/745
A61K35/747
A61P1/14
A61P13/12
A61P15/10
A61P25/28
A61P43/00
A61P43/00 101
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2020520181
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 US2018035635
(87)【国際公開番号】W WO2019005422
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-06
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506105526
【氏名又は名称】キボー バイオテック、インク
【氏名又は名称原語表記】KIBOW BIOTECH, INC.
【住所又は居所原語表記】4781 West Chester Pike,Newtown Square,Pennsylvania 19073,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ランガナタン,ナタラジャン
【合議体】
【審判長】光本 美奈子
【審判官】原口 美和
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第8257693(US,B2)
【文献】米国特許第8481025(US,B2)
【文献】International Journal of Research Studies in Medical and Health Sciences,Vol.2,No.1,2017年4月,pp.11-24
【文献】BioMed Research International,2014年,Vol.2014,Article ID 568571,pp.1-9
【文献】British Journal of Nutrition,2012年,Vol.108,pp.1847-1858
【文献】Amakiri and Thantsha SpringerPlus,2016年,5:1343,pp.1-12
【文献】Journal of Agricultural and Food Chemistry,2000年,Vol.48,pp.1644-1652
【文献】エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2009,2009年,「8 糖尿病性腎症」,pp.87-104
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/744- 35/747, A61K, A61P
CAPlus/EMBASE/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JdreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低減された腎機能を有する患者において腎機能
を改善し、およびクオリティ・オブ・ライフを改善するための医薬組成物であって、
ここで、組成物は、キシロオリゴ糖類、イヌリン、ならびに、450億のコロニー形成単位の、Streptococcus thermophilus、Lactobacillus acidophilusおよびBifidobacterium longumからなるプロバイオティクスのバクテリアを含み、
ここで、キシロオリゴ糖類およびイヌリンは、合計の組成物重量の約20%~約70%であり、プロバイオティクスのバクテリアは、合計の組成物重量の約20%~約70%であり、
ここで、患者は、低減された腎機能をもたらす疾患を患い、インスリン、メトホルミン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グリピジド、シタグリプチン、ダパグリフロジン、抗高血圧剤、抗炎症剤、抗菌剤、血液透析、腹膜透析およびそれらの組み合せからなる群から選択される標準治療の処置を受けて
おり、
腎機能の改善が、糸球体濾過速度における少なくとも2mL/minの増加を含む、
前記医薬組成物。
【請求項2】
クオリティ・オブ・ライフの改善が、精力レベルの増加、社会的相互作用の増加、活力の増加、改善された食欲、高い認知機能、継続して働く能力およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
その調整機能、内分泌機能、および代謝機能のほかに、正常な、健康な腎臓の主な機能の1つは、老廃物(waste products)の処理である。排泄機能のいかなる機能障害も、尿素、クレアチニンおよび尿酸を包含する様々な窒素老廃物の蓄積を導き得る。血流中の高濃度の老廃物は、腎不全を悪化させ得、および腎臓結石を促進し得る。その上、循環血液中の窒素溶質は、小腸壁を横切る濃度勾配のため、管腔の中へ浸透圧性拡散を促進する。この拡散メカニズムは、消化管ベースの窒素老廃物のクリアランスを増強する経口吸着剤の概念を導いた。吸着剤または細菌は、大腸内の様々な化合物および窒素廃棄物(wastes)を除去するそれらの能力を実証している。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマーおよび修飾された多糖類などの尿素特異的な吸着剤は、消化管を介する尿素および他の窒素廃棄物の除去について評価されている。酸化デンプン、活性炭、およびイナゴマメ粉などの他の吸着剤もまた、いくつかの成功をもって、尿毒症性毒素のin vivoでの排出について調査されてきている。Prakash & Chang((1996)Nature Medicine 2:883-88)は、マイクロカプセル化され、遺伝子操作されたE.Coli DH5が、in vitro系において尿素およびアンモニアを除去することに有効であることを実証した。同研究者らは、尿毒症のラット動物モデルにおけるE.Coli DH5細胞の経口投与において同様の結果を得た。Bliss et al.((1996) Am. J. Clin. Nutr. 63:392-398)は、補足的なアラビアゴム線維が糞便の窒素排出を増加し、および低タンパク食を摂る慢性腎不全患者における尿素窒素濃度を低下させることを実証した。Reinhart et al.((1998) Rec. Adv. In Canine and Feline Nutr. Iams Nutrition Symposium Proceedings. Vol. II:395-404)は、発酵性線維のブレンドを含有する食事を給餌されたイヌ科の腎患者は、臨床末期腎疾患状態を改善することを見出し、特定の栄養素の変化が、結腸における発酵または追加のバクテリアの増殖によって窒素排出を腎臓から離し、そして糞便の中へ再配分することを可能とすることを、示唆する。
【0003】
US 5,756,088は、γ-リノレン酸、γ-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸などのポリ-不飽和脂肪酸、および/またはビオチン、および乳酸バクテリア、ビフィズス菌(Bifidobacterium)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、酪酸バクテリア(Butylic acid bacterium)または桿菌(Bacillus)などの抗鼓腸薬、ならびに任意にオリゴ糖類を含有する組成物を含む、イヌおよびネコの皮膚疾患の予防および処置のための処方食を教示する。
【0004】
US 7,993,903は、腸管においてコレステロール吸収を阻害するための組成物を教示し、ここで組成物は、ビフィズス菌、ならびに任意に乳酸桿菌および炭水化物を包含する。
【0005】
US 2011/0171283は、少なくとも1つの栄養素、少なくとも1つの消毒または除染物質、および/または少なくとも1つのプロテアーゼ阻害物質、および/または外部ケアおよび/またはヒトまたは動物の損傷の処置のための吸収性包帯に組み込まれる複合物質を含有する組成物を教示する。一態様において、プロテアーゼ阻害物質は、非病原性の酸を産生する微生物(例として、ビフィズス菌、ラクトコッカス(lactococci)、または乳酸桿菌)および/またはシンバイオティクス(例として、キシロオリゴ糖類)を包含する。
【0006】
US 2009/0252709は、活性成分としてビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)を包含する胃炎または潰瘍の予防的なまたは治療の薬剤を教示する。この参照は、他の微生物(例として、ビフィズス菌または乳酸桿菌バクテリアを、キシロオリゴ糖類などの糖と同様に教示する。
【0007】
WO 2007/140622は、プロピオニバクテリア(Propionibacterium)、乳酸桿菌、ビフィズス菌および連鎖状球菌(Streptococcus)の混合物を含有する、プロバイオティクス組成物を教示し、ここで該組成物は、プレバイオティクスをさらに包含し得る。
【0008】
米国特許第6,706,263号および米国特許第6,706,287号は、吸着剤およびバクテリアの混合物を含む、尿毒症の兆候を緩和するための組成物および方法を開示する。
【0009】
米国特許第7,998,470号は、腸溶性コーティングされたプロバイオティクスの連鎖状球菌バクテリアを含む、腎機能を改善するための組成物および方法を教示する。
【0010】
米国特許第8,257,693号は、アシドフィルス菌(L. acidophilus)、ロンガム菌(B. Longum)、およびサーモフィルス菌(S. thermophilus)からなる、腎機能を改善するための組成物を教示する。
【0011】
米国特許第8,481,025号は、アシドフィルス菌(L. acidophilus)、ロンガム菌(B. Longum)、サーモフィルス菌(S. thermophilus)およびサイリウムハスク(psyllium husks)を含む、腎不全を処置するための方法および組成物を開示する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、低減された腎機能をもたらす疾患を患う患者に、疾患の標準治療の処置との組み合わせにおいて、RENADYL(商標)からなる組成物の有効量を投与することを含む、腎機能を維持および改善し、およびクオリティ・オブ・ライフを改善するための方法を提供する。RENADYL(商標)は、カプセル中に450億のコロニー形成単位(CFU)を含有する、3つのプロバイオティクスのバクテリア(サーモフィルス菌(S. thermophilus)KB19株、アシドフィルス菌(L. acidophilus)KB27株、およびロンガム菌(B. Longum))と2つのプレバイオティクス構成要素(キシロオリゴ糖類およびイヌリン)の混合物である。方法は、腎機能の維持または改善ならびに処置されている患者のクオリティ・オブ・ライフの改善を提供する。ある態様において、腎機能改善は、糸球体濾過速度(GFR)における少なくとも2mL/minの増加を包含する。
【0013】
発明の詳細な記載
血流中に蓄積する窒素老廃物は、健康に対する有害効果(detrimental affect)を有する。結腸の中へそれらを転送することであるエンテリックダイアリシス(enteric dialysis)による窒素廃棄物の除去は、老廃物の蓄積が個人の生理機能上に有するネガティブな影響を減少するための実行可能なアプローチである。本発明は、処置されている特定の疾患または状態についての標準治療であると考えられる処置レジメンと組み合わされるときに、患者における腎機能を維持するかまたは改善し、および患者のクオリティ・オブ・ライフを改善するためのシンバイオティクス製品または組成物の中へ、プロバイオティクスおよびプレバイオティクス構成要素の特性を組み合わせる組成物を患者へ投与することを伴う、異なる形態の腎臓疾患を患う患者において腎機能を維持するかまたは改善する方法である。
【0014】
本発明において使用されるRENADYL(商標)組成物において、プロバイオティクス構成要素は、合計の組成物重量の約20%~約70%である。特定の態様において、プロバイオティクス構成要素は、合計の組成物重量の約50%である。同じく、組成物のプレバイオティクス構成要素は、合計の組成物重量の約20%~約70%であり、またはより好ましくは、合計の組成物重量の約50%である。
【0015】
RENADYL(商標)のプロバイオティクス構成要素は、以下の3つの異なるプロバイオティクス生物からなる:サーモフィルス菌(S. thermophilus)KB19株、アシドフィルス菌(L. acidophilus)KB27株、およびロンガム菌(B. Longum)。これら3つのプロバイオティクス生物が、患者の血液中の窒素廃棄物を低減し、および腎機能を改善すること(米国特許第8,257,693号)、ならびに腎不全の処置において有効であること(米国特許第8,481,025号)が示されてきた。
【0016】
RENADYL(商標)のプレバイオティクス構成要素は、結腸中の1つ以上の非病原性バクテリアの増殖および/または活性、ならびに/あるいは本願組成物のバクテリアの1つ以上の増殖および/または活性を選択的に刺激することによって宿主に有益な影響を与える、非消化性食物である。プレバイオティクス構成要素は、抗がん性の、抗微生物性の、脂質低下性の、およびグルコース調節性の活性を有すると考えられる。それらはまた、ミネラルの吸収およびバランスをも改善し得る。さらにまた、ビフィズス菌および乳酸桿菌ファミリーに属するバクテリアは、プレバイオティクス構成要素の存在によって刺激され、および増殖する。薬物動態学的に、プレバイオティクス構成要素は、大部分が完全なまま結腸へ到達する。RENADYL(商標)のプレバイオティクス構成要素は、イヌリンおよびキシロオリゴ糖類からなる。
【0017】
キシロオリゴ糖類は、ビフィズス菌および乳酸桿菌バクテリアの増殖を促進するため、RENADYL(商標)中に包含される。同様に、イヌリンは、慢性腎臓疾患(CKD)患者においてビフィズス菌の増殖を促進し、およびp-クレゾールおよびp-クレシル硫酸のレベルもまた低下させるため、包含される(Salmean,et al.(2015) J. Ren. Nutr. 25(3):316-320)。
【0018】
本発明の文脈において、「シンバイオティクス」は、健康増強効果を促進する、少なくとも1つのプロバイオティクス構成要素および少なくとも1つのプレバイオティクス構成要素の混合物を指す(Gibson and Roberfroid (1995) J. Nutr. 125:1401-1412)。該シンバイオティクス製品の摂取は、循環する血流中に蓄積する窒素老廃物の血中濃度を低減する。RENADYL(商標)のケースにおいて、サーモフィルス菌(S. thermophilus)、アシドフィルス菌(L. acidophilus)およびロンガム菌(B. Longum)(合計450億)からなる組成物が尿素のレベルをおよそ24時間中に60%低減し得ることが観察されている。それらの老廃物は、正常なまたは正常ではない代謝ルートまたはバクテリアの腐敗作用などの内在性の由来のものであり得る。さらにまた、老廃物は、タンパク質およびアミノ酸の食事摂取におけるような外来性の由来のものであり得る。さらにまた、RENADYL(商標)自体の繰り返し摂取は、健康な腸内微環境を促進すると知られる細菌の大腸における局在化およびコロニー形成によって、腸内マイクロフローラ上に高度に有益な効果を有する。
【0019】
RENADYL(商標)のプロバイオティクスおよびプレバイオティクス構成要素が、一般に安全であるとして認識されるため、それらは、1日に、1、2、または3回、またはそれ以上の回数消費されてもよい。
【0020】
本発明は、低減した腎機能を有する患者において、特に高いレベルの窒素含有老廃物を有する対象において腎機能を維持するかまたは改善し、およびクオリティ・オブ・ライフを改善するための方法である。方法は、RENADYL(商標)処置と患者へすでに投与されている標準治療の処置を組み合わせることを伴う。その標準治療は、処置されている疾患に応じて変動するだろう。RENADYL(商標)の投与は、血液における窒素老廃物のレベルを正常な範囲まで減少させるかまたは低減させる、追加の有益な効果を有する。例えば、血液におけるクレアチニンの正常なレベルは、0.6~1.2mg/dLの範囲であり、一方で正常な血液尿素窒素(BUN)レベルは、7~18mg/dLの範囲であり、ならびに男性および女性における正常な尿酸レベルは、夫々、2.1~8.5mg/dLおよび2.0~7.0mg/dLの範囲である。よって、高いクレアチニン、BUNおよび/または尿酸レベルを有する対象は、正常な範囲を超えるレベルを有する。さらに、5~35のBUN/クレアチニン比は、血液における窒素老廃物の正常なレベルを指し示しているものである。当業者が正しく理解できるとおり、窒素廃棄物のレベルを決定するための手段は、熟練した実験室の臨床医にとって周知のものである。
【0021】
RENADYL(商標)と標準治療の組み合わせ処置に企図される疾患は、ネフロン機能が損なわれ、これにより糸球体濾過速度を減少する、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症、糸球体腎炎、間質性腎炎、または多発性嚢胞腎疾患をもつ人々を包含するが、しかしそれらに限定されない。当業者は、患者になされた診断に基づき、どの標準治療の処置が組み合わせられるだろうかを理解するだろう。例えば、糖尿病の患者における標準治療は、インスリンまたはメトホルミン、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、グリピジド、シタグリプチン、およびダパグリフロジンを包含するだろうが、それらに限定されない、血糖値を安定化させるために使用される他の薬物であってもよい。他の形態の腎臓疾患に対して、多くの患者は、兆候および彼らの疾患の原因に応じて抗高血圧剤、抗炎症剤、および抗菌剤などの薬物を服用しているだろう。標準治療はまた、血液透析および腹膜透析をも包含するだろう。RENADYL(商標)は、標準治療の薬物処置レジメンに追加され得、および使用されている標準治療の処置に関わらず、腎機能およびクオリティ・オブ・ライフにおいて有益な効果を提供する。
【0022】
腎機能の尺度として、本発明の方法は、組み合わせ治療を伴う処置の前と比較して、標準治療の処置と組み合わせたRENADYL(商標)を伴う処置の後、患者のGFRの増加またはGFRの低下の低減を提供する。健康な成人において、平均推算GFRは、90より大きい。GFRが3ヶ月を超えて60を下回る場合、患者は、中等度~重度慢性腎臓疾患と典型的に診断される。15を下回るGFRは、腎不全を表す。本発明の方法を使用し、(1)組み合わせ治療が毎日投与されたとき、個人のGFRは、少なくとも2mL/min増加すること、または(2)組み合わせ治療が毎日投与されたとき、慢性腎臓疾患を有する患者において観察されたGFRの低下は、緩慢なものとなるかまたはおよそ2分の1倍に低減され得ることが見出された。とりわけ、組み合わせ処置を受けている対象のGFRの増加の平均は、少なくとも1年当たり3.5ml/min/1.73m2であり、それは、GFRのおよそ10%の改善に相当した。クオリティ・オブ・ライフを査定するときに、標準治療の処置と組み合わせたRENADYL(商標)を伴う処置を受けている患者が、組み合わせ処置を受けている間、精力レベルの増加、社会的相互作用の増加、活力の増加、改善された食欲、高い認知機能、および/または継続して働く能力を経験したことが見いだされた。結果的に、本方法は、低減された腎機能を有する患者における量的および質的な改善の両方を提供する。
【0023】
本発明は、以下の例においてさらに記載され、それは特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【0024】
例1:標準治療との組み合わせにおけるRENADYL(商標)、4人のインド人患者におけるケーススタディ
4人の患者は、RENADYL(商標)を過去9ヶ月~4年間毎日服用してきた。患者1は、10ヶ月間RENADYL(商標)を常用してきた77歳の男性(67kg)であった。患者2は、4年間RENADYL(商標)を常用してきた72歳の男性(45kg)であった。患者2は、9ヶ月間RENADYL(商標)を常用してきた55歳の男性(71kg)であった。患者4は、1年間RENADYL(商標)を常用してきた73歳の男性(70kg)であった。彼らの疾患状態についての標準ケアの治療に加えて、これらの患者は、1日当たり2カプセルのRENADYL(商標)(900億CFU)を服用してきていた。疾患状態は、CKD(患者1、2および4)、および菲薄化した糸球体基底膜の腎症(thin basement membrane glomerular nephropathy)(患者3)を包含した。患者がRENADYL(商標)を服用している時間の間、肉体的パラメータ、精神的パラメータ、および検査値を測定した。加えて、患者は、彼らのベースライン状態(彼らがRENADYL(商標)を服用し始める前)と比較して、彼らのクオリティ・オブ・ライフを評価した。
【0025】
定期的に計画された訪問の間、内科医は、通常の診察および身体検査を実施しただろう。関心のあるヘルスパラメータにおける進行または変化を、診療所への訪問の間に評価した。検査値、すなわち基礎代謝プロファイル、CBC、およびeGFR値のモニタリングに加えて、患者は、研究の間中、クオリティ・オブ・ライフにおける変化を、自己報告するように求められた。RENADYL(商標)への有害反応、薬物相互作用、および他の異常な出来事を評価した。
【0026】
結果は以下のとおりである。患者1について、GFRは、9mL/min増加し、一方、精力が増加し、ならびに増加した運動および社会的機能を可能とした。患者2において、GFRは、6mL/min増加し、および患者は、増大した精力レベルを報告した。患者3において、GFRは、12mL/min増加し、および患者は、活動的に働いていると報告した。患者4において、GFRは、6mL/min増加し、およびこの患者もまた活動的に働いていることを報告した。
【0027】
要約すれば、4人のCKD患者すべては、併存症の状態を有し、および彼らの状態のための標準ケアの治療のすべてを遵守した。各患者は、RENADYL(商標)処置に認容であり、および深刻な副作用はなかったと報告した。鎮静した鼓腸の報告が1件あった。加えて、RENADYL(商標)と各個人のために処方された薬品との間に報告された薬物相互作用はなかった。すべての個人は、ポジティブな、および改善されたクオリティ・オブ・ライフを報告した。4人の患者すべてに対して観察したGFRの立証された改善は、健康な腎機能を維持するRENADYL(商標)の能力を確認した。インドにおける高い透析の費用を考慮すると、結果は、患者の転帰を改善する能力という観点から重要である。
【0028】
例2:RENADYL(商標)経験の調査
健康な腎機能を維持する消化管マイクロバイオームの調節によってエンテリックダイアリシスは、CKDを患う多くの人々において有用であると証明されている。RENADYL(商標)は、2010年以来商業的に入手可能であり、およびその間有効性を査定するために継続的に研究してきた。RENADYL(商標)の顧客600人へ与えられた短い調査を、GFRがどのように変化したか、および彼らの標準治療へ食物サプリメントを追加した後のクオリティ・オブ・ライフにおけるRENADYL(商標)使用の影響を確かめるために配布した。
【0029】
書面による調査を顧客へ配布し、対象の年齢;性別;民族性;対象が高血圧症、心臓疾患、糖尿病または他の併存症を患うかどうか;対象がRENADYL(商標)を服用することをいつ始めたか;彼らがRENADYL(商標)を服用することを始めたときの対象のGFRの値がいくつであったか;対象の現在のGFRがいくつであったか;RENADYL(商標)が対象のクオリティ・オブ・ライフを改善したかどうか(より少ないストレス、より多い精力、より大きな生産性、より高い活性レベル、よりよい食欲、等々)をたずねた。調査はまた対象が、RENADYL(商標)を用いた今までのところの彼らの経験についての簡潔なおよび率直な証拠を提供することも要求した。同様の調査を、2013年および2015年において実施してきたが、それらの調査において、GFRデータは本明細書に記載されるもっとも最近の調査におけるように、明確に要求されなかった。
【0030】
GFRデータについて統計的分析を実施し、RENADYL(商標)のGFR、およびクオリティ・オブ・ライフにおける影響を推測した。GFRを最初は時間における2点において、すなわちベースライン、および次いで調査の取られた時間において、対応のあるスチューデントのt検定を介して比較した。各々の患者について、フォローアップの時間が異なったために、一年当たりのGFRの平均の変化を同様の様式で比較した。PROC MIXED(SAS)を使用する混合モデル化手順を、様々な年のフォローアップに従ってGFR変化をモデル化し、および経時的なGFRの差があるかどうかについて識別するために使用した。この手順は、患者当たりの繰り返しの測定を考慮に入れ、GFRが様々な年のフォローアップの間で異なるかどうかを推測した。患者内における繰り返しの測定が相互に関係するだろうために、この手順は、一般に共分散パターンと呼ばれる「相関構造」をモデル化することを可能とする。その上、この推測は、測定の標準誤差が改善された推測を可能とした。データがランダムに欠損している(missing at random)(MAR)と仮定することができるために、それはまたすべての時点における推測についても可能とする。
【0031】
選択肢として数多の様々な共分散構造がある。より共通の共分散構造の3つは、いずれかの2つの時点に対して一定である相関のための複合対称性(cs)、さらに離れた時点に対してより小さい相関のための自己回帰オーダー1(ar1)、および共分散マトリックス内に数学的パターンを有さないアンストラクチャード(unstructured(un))を包含する。複合対称性(cs)構造は、最良の適合度を提供した。経時的なGRFの変化における性別および/または高血圧症などの他の因子の潜在的な役割もまた混合方法手順を使用して調べた。カイ二乗分析を使用し、性別とクオリティ・オブ・ライフの間に関連があるかどうかを探索した。データを、SASシステムのソフトウェアを使用して、分析した(SAS Institute Inc, Cary, NC)。
【0032】
送付された600の調査のうち、214人の回答(35.6%)を受け取った。いくつかのケースにおいて、回答の中に欠損する情報があった。例えば、206人(96.2%)は、顧客の年齢を記述し、196人(91.5%)は、製品摂取の時間について情報を与え、150人(701%)は、サプリメントを服用する前および後のGFRについての質問に答え、および200人(93.5%)は、性別(男性117人および女性83人)についての情報を自発的に申し出た。調査回答者の平均年齢は69歳であり、8~99歳の範囲であった。平均の調査回答者は、RENADYL(商標)を約3年間使用してきている。GFRの結果を、以下の表1において示す。平均GFR1(ベースラインGFR)は、30.52ml/min/1.73m
2(4~100mL/min/1.73m
2の範囲をとる)であり、および平均GFR2(もっとも最近に測定されたGFR)は、34.07ml/min/1.73m
2(5~106mL/min/1.73m
2の範囲をとる)であった。回答者へのRENADYL(商標)使用の開始から、もっとも最近の医者の訪問までのGFRの平均の変化は、3.55ml/min/1.73m
2の増加であった。観察されたGFRの増加は、統計学的に優位であった(p<0.0013)。受け取られた調査のうち、140は、GFRを包含する完全な情報を含有した。記録された最も低いベースラインGFRは、4ml/min、最も高いものは100ml/min(最終段階の腎疾患または末期腎不全(ESRD)から正常な腎機能と一致する値)であった。調査の参加者の平均ベースラインGFRは、30ml/min(CKD ステージ4)であった。報告されたもっとも最近のGFRは、5ml/minから106ml/minまで変動した。最も高いGFRの影響は、65ml/minの増加であり、およびGFRのもっと大きな減少は、-40ml/minであった。調査の参加者についてのGFRの平均の変化は、2.90ml/minの増加であった。
【表1】
【0033】
送付された調査のうち、200人の調査解答者は、イエスまたはノーの答えを表し、RENADYL(商標)が彼らの全体のクオリティ・オブ・ライフ(表2)に影響を与えたか、または与えていないかどうかを表した。結果は、解答者の176(88%)人が、RENADYL(商標)が実際に彼らの全体のクオリティ・オブ・ライフをまさに改善したと表したことを示し、一方で調査解答者の12%のみが、製品は、全体のクオリティ・オブ・ライフに効果を有さなかったことを表した。データは、男性と比較して女性においてクオリティ・オブ・ライフを改善することにおいてより良かっただろうこと示唆し、女性の92%が、RENADYL(商標)が全体のクオリティ・オブ・ライフを改善したと報告しているのに対して男性の84%のみが改善を報告した。この結果は、統計的に優位であるとは見出されなかった(p<0.08)。
【表2】
【0034】
CKDの処置/治療におけるプライマリーエンドポイントの有効性を決定するための米国食品医薬品局(FDA)および全米腎臓基金のガイドラインは、GFRの低下の30%の低減である(好ましくは40%である)。RENADYL(商標)の調査の結果は、大規模な、二重盲検の、プラセボ対照試験において、これらのガイドラインを超過するだろうということを示唆する。調査結果は、RENADYL(商標)が腎機能においてポジティブな影響を有することを示した。平均すると、GFRの3.5mL/min/1.73m2の増加は、GFRの11.6%の改善に解釈されるだろう(RENADYL(商標)を服用し始めにおける平均GFRは、30mL/min/1.73m2であった)。GFRのかかる強い改善とともに、88%の調査回答者がRENADYL(商標)を服用した後、彼らのクオリティ・オブ・ライフが改善したと表したことを見るのは驚くべきことではない。クオリティ・オブ・ライフの情報を確かめることに焦点を合わせた2つの先行顧客調査が、2013年および2015年において配布された。2013年の調査において、72%の解答者は、RENADYL(商標)がクオリティ・オブ・ライフを改善したことを表し、一方で2015年の調査において73%の解答者は、クオリティ・オブ・ライフの改善を表した。現在の調査において、同様の改善が、患者によって報告された。
【0035】
この調査において得られた結果を記載する別のやり方は、RENADYL(商標)使用の影響を、通常のCKDの進行ならびに、好ましい全米腎臓基金(NKF)/FDAのガイドラインのプライマリーエンドポイントである40%CKDの進行を減少させるいずれかの介入性の治療を使用して得られた理論上の結果と比較することである。表3は、これらの比較を使用するRENADYL(商標)の起こり得る影響を実証する。NKD/FDAのガイドラインと一致するように3年間の期間が適用された。平均の調査回答者は、30ml/min/1.73m
2に近いベースラインGFRを有し、したがって、この値をベースラインとして使用した。回答者の平均の増加は、3.5ml/min/1.73m
2であり、それを彼らが製品を服用した3年間の平均時間で割ることにより、1年当たり2.9ml/minの平均をもたらす。Tsai et al.(PLoS ONE 12)によって実行された2017年の研究に基づくCKDの通常の進行は、1年当たり4.42ml/min/1.73m
2のGFRの減少を導いただろう。これを通常の進行として使用し、NKF/FDAの好ましいガイドラインは、GFRの低下を40%低減させるだろう。よって、GFRの年間の減少は、1年当たり2.6ml/minであるだろう。ベースライン(1年)および2年のフォローアップの後、製品を使用するCKDの人のGFRは、32.4ml/minであるだろうし、通常の進行を有する人は、21.2ml/minであるだろうし、および40%進行を低下させるという結果になる治療を使用する人は、24.8ml/minであるだろう。よって、RENADYL(商標)使用者は、CKDの通常の進行を経験する人よりも11.2ml/minよりよいGFRを有するだろうし、およびRENADYL(商標)使用者は、40%ガイドラインを満たす理論上の治療を使用する人よりも7.8ml/minよりよいGFRを有するだろう。
【表3】
【0036】
ともに考慮すると、調査データは、CKDを有する患者においてRENADYL(商標)がGFRを改善しおよびクオリティ・オブ・ライフを改善する有益な効果を有することを示した。RENADYL(商標)の効果をさらに調査するための将来の管理された臨床研究を、計画した。
【0037】
例3:若年性糖尿病および腎症を有する患者におけるRENADYL(商標)の長期使用
個々の患者の経験レポートはまた、ヒトにおけるRENADYL(商標)の有効性を支持する重要な情報も提供する。男性患者におけるRENADYL(商標)の11年間の使用を、報告している。患者は、若年性糖尿病性腎症と診断された。2006年6月17日から、患者は、RENADYL(商標)による処置を始めた。投薬量は、11年間、一日当たり900億CFUであった。該個人は、1961年(56年前)に若年性糖尿病と診断され、および1986年に腎症と診断された。患者は、現在は、他の健康の問題、および糖尿病(I型)のために9つの処方薬品およびインスリン(インスリンポンプ)を、夫々服用している。患者は、11年の研究の間じゅう、彼の検査値およびクオリティ・オブ・ライフを報告した。
【0038】
患者のGFRは、11年のケーススタディの間、41.7から24mL/min/1.73m2まで上下した。平均で、患者のGFRは、一年当たり1.6mL低下した。患者は、より多くの活力、改善された食欲、より高い認知機能、および継続して働く能力などの改善されたクオリティ・オブ・ライフを、11年間の研究期間中常に報告した。この長期研究の間、薬物相互作用は、報告されなかった。
【0039】
平均すると、糖尿病性腎症を患う人のGFRは、1年当たり大まかに3.3mL減少する(Alwakeel et al. (2011) Ann. Saudi Med. 31:236-42)。表4に表されるとおり、この個人のGFRは、1年当たり1.6mL減少した。これらの結果は、RENADYL(商標)がGFRの1年当たりの低下を2分の1に低減したことを表した。食物サプリメントはまた、全体のクオリティ・オブ・ライフを改善することにも役立ち、患者に彼の正常な生活を継続することを可能とした。
【表4-1】
【表4-2】
【0040】
例4:RENADYL(商標)と透析前のおよび透析患者における標準ケアの治療と組み合わせること
プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、消化に関する、および免疫に関する健康のために広く使用される。RENADYL(商標)は、血清の尿毒症生毒素を低減させるその可能性を実証している、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスの両方の構成要素からなる食物サプリメントである。3人の顧客調査を包含する腎不全の患者についてのプロ/プレバイオティクスおよびRENADYL(商標)の使用に関する様々な公開された論文からの結果およびデータを分析した。3つのパイロットスケールの臨床試験およびRENADYL(商標)を服用する顧客の3つの2年ごとの調査(2013年、2015年、2017年)は、RENADYL(商標)中の菌株がいくつかの別個のメカニズムによって腎不全の人口に貢献していることを示した。これらは、1)サーモフィルス菌(S. thermophilus)による窒素廃棄物の除去を包含する。該生物は、尿毒症性毒素、すなわち、尿素、尿酸およびクレアチニンを代謝し、有益なバクテリアの増殖の増加および病原体の増殖の低減をもたらす;2)3つのプロバイオティクスのRENADYL(商標)の菌株はすべて、バクテリオシン(抗菌分子)を産生し、それは病原体の増殖をさらに阻害する;3)アシドフィルス菌(L. acidophilus)は、心血管の毒素であるTMAおよびTMAOのレベルを低減させる;4)ロンガム菌(B. Longum)は、血清タンパク質と結合し、および日常的な透析によって除去されることができないフェノール、クレゾールおよび他の毒素の産生を低減させる;および5)C反応性タンパク質(CRP)のような炎症性バイオマーカーが減少するところでの炎症の調節、を包含する。
【0041】
分析は、RENADYL(商標)を伴うエンテリックダイアリシスが、安全であり、良好な認容性を示すことを実証した。これは、非侵襲的であり、およびより安価である。血液/腹膜透析は、インドール、クレゾールおよび他の中分子の様なタンパク質結合性尿毒症性毒素を低減することができない。これらの毒は、乏しいクオリティ・オブ・ライフと関連付けられる。アンバランスな消化管内マイクロフローラは、高いレベルの尿毒症性毒素、タンパク質結合性毒素、およびC型肝炎などの感染へ導く。RENADYL(商標)は、これらの毒素を除去し、慢性炎症を低下させ、および消化管マイクロバイオームを安定化し、よって、年齢、性、民族性、および併発状態に関わらず、透析前および透析患者へ利益を提供する。RENADYL(商標)はまた、患者集団における全体の健康状態および改善されたクオリティ・オブ・ライフを安定化する効果を有するようにも見られる。