(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】艶消し面および改善されたシール性能を有するポリオレフィン系フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20231020BHJP
B32B 27/08 20060101ALI20231020BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231020BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B32B27/32 Z
B32B27/08
C08J5/18 CES
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020524604
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 US2018061977
(87)【国際公開番号】W WO2019104017
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-18
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】516370305
【氏名又は名称】ピービービー ポリシャー エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ダゴスト、シルヴィーナ ヴァネッサ
(72)【発明者】
【氏名】メッツォーラ、ニコラス カルドソ
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス、ジョルジ カミネロ
(72)【発明者】
【氏名】ブワシュチック、ジェンナ
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122218(JP,A)
【文献】国際公開第2017/003543(WO,A1)
【文献】特開平06-340042(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D
C08J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの艶消し層と、少なくとも2つの追加層と、を含む多層フィルムであって、前記艶消し層が、
0.857~0.895g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って230℃および2.16kgで測定した場合に2~25g/10分のメルトフローレート(I
2)を有する20~80重量%のプロピレン-エチレンコポリマーと、
0.935~0.955の密度、ならびにASTM D-1238に従って190℃および5.0kgで測定した場合に0.1~0.8g/10分のメルトフローレート(I
5)を有する20~80重量%のエチレン系ポリマーと、を含み、
前記少なくとも2つの追加層が独立して、ポリアミド、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレンアクリル酸、およびエチレン無水マレイン酸のうちの少なくとも1つを含み、
前記多層フィルムが、ASTM D-2457に従って測定した場合、10単位未満の光沢45°値、および70℃以下のホットタック開始温度を有する、多層フィルム。
【請求項2】
前記プロピレン-エチレンコポリマーの前記メルトフローレート(I
2)が、ASTM D-1238に従って230℃および2.16kgで測定した場合、3~10g/10分である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記2つの追加層のうちの少なくとも1つが、0.905~0.930g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って190℃および2.16kgで測定した場合に0.5~3.0g/10分のメルトフローレート(I
2)を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む、請求項1または2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記2つの追加層のうちの少なくとも1つが、0.910~0.935の密度、ASTM D-1238に従って190℃および2.16kgで測定した場合に0.5~3.0g/10分のメルトフローレート(I
2)、ならびにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される3~10の分子量分布(MWD=Mw/Mn)を有する低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である、請求項1~3のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記2つの追加層の少なくとも1つが、0.905~0.930g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って190℃および2.16kgで測定した場合に0.5~3.0g/10分のメルトフローレート(I
2)を有する直鎖状低密度ポリエチレンと、0.910~0.935の密度、ASTM D-1238に従って190℃および2.16kgで測定した場合に0.5~3.0g/10分のメルトフローレート(I
2)、ならびにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される3~10の分子量分布(MWD=Mw/Mn)を有する低密度ポリエチレンと、を含み、Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である、請求項1または2に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記艶消し層が、40~60重量%のプロピレン-エチレンコポリマーと、40~60重量%のエチレン系ポリマーと、を含む、請求項1~5のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記多層フィルムが、20~200μmの厚さを有する、請求項1~6のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記光沢45°値が、ASTM D-2457に従って測定した場合、8単位未満である、請求項1~7のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記多層フィルムが、ASTM F-1921に従って測定された場合、75℃~90℃の温度範囲で2.5N/25.4mmを超えるホットタック強度を有する、請求項1~8のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記多層フィルムが、100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を有する、請求項1~9のいずれかに記載の多層フィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の前記多層フィルムを含む、物品。
【請求項12】
前記物品が、可撓性パッケージである、請求項
11に記載の物品。
【請求項13】
少なくとも1つの艶消し層と、少なくとも2つの追加層と、を含む多層フィルムであって、前記艶消し層が、
0.857~0.895g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って230℃および2.16kgで測定した場合に2~25g/10分のメルトフローレート(I
2)を有する20~80重量%のプロピレン-エチレンコポリマーと、
0.935~0.955の密度、ならびにASTM D-1238に従って190℃および5.0kgで測定した場合に0.1~0.8g/10分のメルトフローレート(I
5)を有する20~80重量%のエチレン系ポリマーと、を含み、
前記少なくとも2つの追加層が独立して、ポリアミド、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレンアクリル酸、およびエチレン無水マレイン酸のうちの少なくとも1つを含み、
前記多層フィルムが、ASTM D-2457に従って測定された場合、10単位未満の光沢45°値、および100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を有する、多層フィルム。
【請求項14】
前記艶消し層が、40~60重量%のプロピレン-エチレンコポリマーと、40~60重量%のエチレン系ポリマーと、を含む、請求項13に記載の多層フィルム。
【請求項15】
前記プロピレン-エチレンコポリマーの前記メルトフローレート(I
2)が、ASTM D-1238に従って230℃および2.16kgで測定された場合、3~10g/10分である、請求項13または14に記載の多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月22日に出願された米国仮特許出願第62/589,910号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、艶消し面および改善されたヒートシール性能、特にコロナ処理後の改善されたヒートシール性能を有するポリオレフィン系フィルムに関する。
【背景技術】
【0003】
艶消し面を有するポリマーフィルムは、様々な用途で一般的に使用されている。例えば、パッケージング用途では、艶消し面を有するポリマーフィルムを利用する。艶消し面などの光学特性は、表面光沢およびヘイズの観点から定義されてもよい。艶消し面は、より低い光沢およびより高いヘイズ値によって特徴付けられてもよい。
【0004】
具体例では、おむつは一般に、可撓性ポリエチレンフィルムで構成されたガセット袋にまとめられる。これらのガセット付き可撓性容器は、現在、ガセットを形成するように折り畳まれ、周囲形状に熱シールされる可撓性フィルムを使用して製造される。ガセット付き本体部分は、方形断面または矩形断面を有する可撓性容器を形成するように開く。ガセットは、実質的に平坦な底を形成するように容器の底部で終端し、容器が部分的または完全に充填されたときの安定性を提供する。ガセットはまた、硬い詰め物を受け取るための開口ネックおよび閉鎖を形成するように容器の上部で終端する。このフィルムは、押し出され、表面処理され、外層に印刷され、切断および密封によって袋を形成する。そのようなガセット袋は、艶消し面を有することが望ましいが、しかしながら、従来の艶消しフィルムは、ヒートシール開始温度が高すぎるため、特にガセット領域において、コロナ処理後のシール性能が欠乏している。
【0005】
したがって、コロナ処理後もヒートシール可能である改善された艶消し面に対する継続的な必要性が存在し得る。
【発明の概要】
【0006】
本開示の実施形態は、コロナ処理後に艶のない外観および低いヒートシール開始温度を提供することができる多層フィルムを対象とする。多層フィルムは、本明細書でさらに説明されるように、多層フィルムの少なくとも1つの層にエチレン系ポリマーおよびプロピレン-エチレンコポリマーを含む。
【0007】
一実施形態によれば、少なくとも1つの艶消し層および少なくとも2つの追加層を含む多層フィルムが提供される。艶消し層は、0.857~0.895g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って230℃および2.16kgで測定した場合に2~25g/10分のメルトフローレート(I2)を有する20~80重量%のプロピレン-エチレンコポリマーと、0.935~0.955g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って190℃および5.0kgで測定した場合に0.1~1.0g/10分のメルトフローレート(I5)を有する20~80重量%のエチレン系ポリマーと、を含む。多層フィルムは、ポリアミド、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレンアクリル酸、およびエチレン無水マレイン酸のうちの少なくとも1つを独立して含んでもよい、少なくとも2つの追加層を含む。多層フィルムは、ASTM D-2457に従って測定した場合、10単位未満の光沢45%値を有する。多層フィルムは、70℃以下のホットタック開始温度を有する。
【0008】
別の実施形態によれば、多層フィルムは、ASTM D-2457に従って測定した場合の10単位未満の光沢45%値、および100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を有し得る。
【0009】
本明細書に記載される実施形態の追加の特徴および利点は、以下の発明を実施するための形態に記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、または以下の発明を実施するための形態、および特許請求の範囲を含む本明細書に記載される実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと最もよく理解することができ、これらの図面では、同様の構造体が同様の参照番号で示される。
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態による比較および本発明のフィルムに関するホットタック強度対温度のグラフ表示である。
【
図2】本開示の1つ以上の実施形態による比較および本発明のフィルムに関するヒートシール強度対温度のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで、本出願の具体的な実施形態について説明する。ただし、本開示は、異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0012】
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのみのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられる用語「ホモポリマー」、ならびに2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。「ブロックコポリマー」という用語は、2つ以上の化学的に異なる領域またはセグメント(「ブロック」と呼ばれる)を含むポリマーを指す。いくつかの実施形態では、これらのブロックは、直線状に、すなわち、端部と端部がつながれた化学的に区別された単位を含むポリマーでつながれてもよい。本明細書で使用される場合、「ランダムコポリマー」は、2つ以上のポリマーを含み、各ポリマーは、コポリマー鎖骨格に沿って単一単位または複数の連続する繰り返し単位を含んでもよい。コポリマー鎖骨格に沿った単位のいくつかは、単一単位として存在するが、本明細書ではこれらをポリマーと呼ぶ。
【0013】
「多層フィルム」または「多層フィルム構造」とは、2つ以上の層を有する任意の構造を意味する。例えば、多層構造は、2、3、4、5、またはそれ以上の層を有してもよい。多層構造は、文字で示される層を有するとして説明され得る。例えば、コア層B、ならびに2つの外部層AおよびCを有する3層構造は、A/B/Cとして示されてもよい。同様に、2つのコア層BおよびC、ならびに2つの外部層AおよびDを有する構造は、A/B/C/Dとして示されるであろう。いくつかの実施形態において、本発明の多層フィルムは、最大で11個の層を含む。
【0014】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、50モル%を超える、エチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野で知られているポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、極低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状および実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンランダムコポリマー」は、50モル%を超える、エチレンモノマーに由来する単位を含むランダムコポリマーである。
【0015】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも呼ばれる場合があり、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,599,392号を参照されたい)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブまたは管状反応器中で、部分的または完全にホモ重合または共重合されることを意味するように定義される。
【0016】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒システムを使用して作製された樹脂、ならびにこれらに限定されないが、ビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と呼ばれることもある)および拘束ジオメトリ触媒を含む、シングルサイト触媒を使用して作製された樹脂、ならびにポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれる。LLDPEには、直鎖状の、実質的に直鎖状の、または不均一なポリエチレンコポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEは、LDPEよりも短い鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、および同第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号における組成物などの均一分岐直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたポリマーなどの不均一分岐エチレンポリマー、ならびに/またはそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号もしくは同第5,854,045号に開示されるものなど)を含む。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意のタイプの反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0017】
「MDPE」という用語は、0.926~0.940g/ccの密度を有する中密度ポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロムもしくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、またはこれらに限定されないが、ビスメタロセン触媒および拘束ジオメトリ触媒を含むシングルサイト触媒を使用して作製される。
【0018】
「HDPE」という用語は、約0.940g/ccを超える密度を有するポリエチレンを指し、それらは、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、またはこれらに限定されないが、ビスメタロセン触媒および拘束ジオメトリ触媒を含むシングルサイト触媒で調製される。
【0019】
「ULDPE」という用語は、0.880~0.912g/ccの密度を有するポリエチレンを指し、それらは、一般に、チーグラー・ナッタ触媒、これらに限定されないが、ビスメタロセン触媒および束縛ジオメトリ触媒を含むシングルサイト触媒、ならびにポストメタロセン分子触媒で調製される。
【0020】
本明細書で使用される場合、「プロピレン系ポリマー」という用語は、50重量%を超える、プロピレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを指す、重合形態で、含むポリマーを指す。これには、プロピレンホモポリマー、ランダムコポリマーポリプロピレン、インパクトコポリマーポリプロピレン、プロピレン/α-オレフィンコポリマー、およびプロピレン/α-オレフィンコポリマーが含まれる。
【0021】
「コロナ処理」という用語は、コロナ放電によりポリオレフィンフィルムの表面上の接着力を高める技術である。
【0022】
「ホットタック強度」などの用語は、シールが作成された直後、かつ周囲温度に冷却される前に、可撓性ウェブの熱可塑性表面の間に形成されたヒートシールの強度を意味する。フォームフィル操作では、パッケージのシールされた領域は、まだ熱いうちに破壊的な力を受けることがよくある。ホットシールのこれらの力に対する耐性が不十分な場合、パッケージングプロセス中に破損が発生し得る。ホットタック強度は、ホットシール強度としても知られ、この品質が重要である商用的応用での遂行能力において材料を特徴付け、ランク付けるための手段である。ホットタック強度は、ASTM F1921に従って以下のように測定され得る。
【0023】
「ホットタック開始温度(HTIT)」は、シールが、充填される必要な重量を保持する温度であるのに対して、「ヒートシール開始温度(HSIT)」は、シールが、輸送および取り扱い要件に耐える最低強度を有する温度である。
【0024】
ここで、組成物が少なくとも1つの艶消し層および少なくとも2つの追加層を含む、本開示の多層フィルムの実施形態を詳細に参照する。本明細書で使用される場合、「艶消し層」は、場合によってはシーラント層と呼ばれてもよく、コロナ処理後にヒートシール可能でもあると同時に、所望の艶のない外観を実現する層である。特性の観点から、この艶消し層を含む多層フィルムは、ASTM D-2457に従って測定した場合、10単位未満の光沢45%値を有する。この光沢と組み合わせて、多層フィルムは、70℃以下のホットタック開始温度、100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度、またはその両方を含んでもよい。理論に縛られることなく、艶消し層でのプロピレン-エチレンコポリマーとエチレン系ポリマーとの組み合わせは、コロナ処理後にヒートシール可能でもあると同時に、艶のない外観を可能にすることを補助する。
【0025】
1つ以上の実施形態では、艶消し層は、0.857~0.895g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って230℃および2.16kgで測定した場合に2~25g/10分のメルトフローレート(I2)を有するプロピレン-エチレンコポリマーと、0.935~0.955の密度、ならびにASTM D-1238に従って190℃および5.0kgで測定した場合に0.1~1.0g/10分のメルトフローレート(I5)を有するエチレン系ポリマーと、を含む。さらなる実施形態では、艶消し層は、20~80重量%のプロピレン-エチレンコポリマーと、20~80重量%のエチレン系ポリマーと、を含む。少なくとも1つの艶消し層に加えて、少なくとも2つの追加層は独立して、ポリアミド、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、エチレンビニルアセテート(EVA)、およびエチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリアミド、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、エチレンアクリル酸(EAA)、およびエチレン無水マレイン酸(EMA)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0026】
さらなる実施形態では、プロピレン-エチレンコポリマーのメルトフローレート(I2)は、ASTM D-1238に従って230℃および2.16kgで測定した場合、2~10g/10分、または3~9g/10分、または6~9g/10分である。さらに、別の実施形態では、プロピレン-エチレンコポリマーの密度は、0.870~0.890g/ccである。様々な組成物がプロピレン-エチレンコポリマーに好適であると考えられる。プロピレン-エチレンコポリマーの適切な商業的実施形態には、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical CompanyからのVERSIFY(商標)製品、例えば、VERSIFY(商標)3200が含まれる。
【0027】
エチレン系ポリマーのさらなる実施形態では、メルトフローレート(I5)は、ASTM D-1238に従って230℃および5kgで測定した場合、0.1~0.8g/10分、または0.2~0.4g/10分であってもよい。さらに、さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーの密度は、0.935~0.950g/cc、または0.935~0.945g/ccであってもよい。
【0028】
様々な組成物がエチレン系ポリマーに好適であると考えられる。エチレン系ポリマーの好適な商業的実施形態には、DOW(商標)MDPE NG6995、DOW(商標)HDPE NG7000、またはDOW(商標)HDPE DGDC2100-NT7が含まれてもよく、これらはすべて、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手可能である。さらに、エチレン系ポリマーの別の適切な商業的実施形態は、Braskemによって製造されるBraskem BF4810であってもよい。
【0029】
艶消し層内のプロピレン-エチレンコポリマーおよびエチレン系ポリマーについては、様々なブレンド量が考えられる。1つ以上の実施形態では、艶消し層は、20~80重量%のプロピレン-エチレンコポリマー、または30~70重量%のプロピレン-エチレンコポリマー、または40~60重量%のプロピレン-エチレンコポリマー、または50重量%のプロピレン-エチレンコポリマーを含んでもよい。逆に、艶消し層は、20~80重量%のエチレン系ポリマー、または30~70重量%のエチレン系ポリマー、または40~60重量%のエチレン系ポリマー、または50重量%のエチレン系ポリマーを含んでもよい。
【0030】
上記のように、多層フィルムの1つ以上の追加層は独立して、ポリアミド、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、EVA、EVOH、EVA、およびEMAのうちの少なくとも1つを含んでもよい。プロピレン系ポリマーおよびエチレン系ポリマーは、上記の組成物の実施形態を含んでもよい。
【0031】
別の実施形態では、2つの追加層のうちの少なくとも1つは、0.905~0.930g/ccの密度、ならびにASTM D-1238に従って190℃および2.16kgで測定した場合に0.5~3.0g/10分のメルトフローレート(I2)を有する直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含む。さらなる実施形態では、LLDPEは、0.915~0.925g/ccの密度を含んでもよい。さらに他の実施形態では、LLDPEのメルトフローレート(I2)は、0.5~2.0g/10分、または0.5~1.5g/10分である。
【0032】
LLDPEには、様々な市販の組成物が考えられる。例えば、LLDPEは、ELITE(商標)NG5401B、DOWLEX(商標)NG2045B、およびDOWLEX(商標)TG2085Bのうちの1つ以上を含んでもよく、これらはすべて、ミシガン州ミッドランドのThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0033】
さらに、2つの追加層のうちの少なくとも1つは、0.910~0.935の密度、ASTM D-1238に従って190℃および2.16kgで測定された場合に0.5~3.0g/10分のメルトフローレート(I2)、ならびにゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される3~10の分子量分布(MWD=Mw/Mn)を有する低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでもよく、ここで、Mwは、重量平均分子量であり、Mnは、数平均分子量である。
【0034】
さらに、追加層のうちの少なくとも1つは、LLDPEとLDPEとのブレンドを含んでもよい。さらなる実施形態では、少なくとも2つの追加層は、LLDPEとLDPEとのブレンドを含む。LLDPEとLDPEとのブレンド中の各成分には、様々な量が考えられる。例えば、2つの追加層のうちの少なくとも1つは、50~95重量%のLLDPE、または60~90重量%のLLDPE、または60~80重量%のLLDPEを含んでもよい。逆に、2つの追加層のうちの1つのうちの少なくとも1つは、5~50重量%のLDPE、または10~40重量%のLDPE、または20~40重量%のLLDPEを含んでもよい。
【0035】
様々な追加の添加剤が、多層フィルムに含まれると考えられる。これらには、スリップ添加剤(例えば、エルカミド、オレアミド、エステアラミド、およびシリコーン)、乳白剤もしくは粘着防止剤(例えば、シリカ、タルク、および炭酸カルシウム)、着色顔料、帯電防止添加剤、核生成、添加剤、紫外線吸収剤添加剤、または印刷インキが含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
多層フィルムを製造するための様々な方法論が考えられる。特定の実施形態では、多層フィルムは、共押出し、例えば、ブローンフィルム押出しまたはキャストフィルム押出しによって製造される。メタライゼーションおよびポスト配向などの他のフィルム処理プロセスもまた、利用されてもよい。さらに、本発明の多層フィルムはまた、可撓性パッケージングプロセスにおいて他の基材に積層または結合されてもよい。具体的な可撓性パッケージングの実施形態では、艶消し層は、ヒートシールの前に表面張力を増加させるためにコロナ処理を受けてもよい。
【0037】
多層フィルムは、様々な厚さを有してもよい。例えば、多層フィルムは、20~200μm、または20~150μmの厚さを有してもよい。多層フィルムにおける様々な層比が考えられる。(A/B/C)3層構造の1つ以上の実施形態では、個々の層の全体の厚さのパーセンテージは、5/90/5~33/34/33、または25/50/25~30/40/30の範囲であってもよい。
【0038】
上記のように、艶消し特性と低ヒートシール開始との組み合わせは、本多層フィルムの実施形態の利点の1つである。多層フィルムの艶消し表面特性は、光沢の特性によって特徴付けられてもよい。上記のように、フィルムは、ASTM D2457に従って45°で測定した場合、10単位未満のフィルムの外部艶消し表面に対する外部光沢を示してもよい。さらなる実施形態では、フィルムは、8単位未満、または6単位未満の外部光沢を示してもよい。
【0039】
さらに、多層フィルムのヒートシール特性は、ホットタック開始温度(HTIT)、ヒートシール開始温度(HSIT)、ホットタック強度、およびヒートシール強度の特性によって特徴付けられてもよい。一実施形態では、多層フィルムは、70℃以下のHTITを実証する。別の実施形態では、多層フィルムは、ASTM F-1921に従って測定した場合、75℃~90℃の温度範囲で2.5N/25.4mmを超えるホットタック強度を有する。さらに、多層フィルムは、ASTM F-1921に従って測定した場合、少なくとも3N/25.4mm、または少なくとも3.5N/25.4mmの最大ホットタック強度を有する。別の実施形態では、多層フィルムは、100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を有してもよい。さらに別の実施形態では、多層フィルムは、100℃で少なくとも6N/25.4mmのヒートシール強度を有してもよい。さらに、多層フィルムは、100℃で4~10N/25.4mmのヒートシール強度、または100℃で6~10N/25.4mmのヒートシール強度を有してもよい。
【0040】
試験方法
一般的にアプリケーション、および特に以下の実施例で使用される試験方法には、次のものが含まれる。
【0041】
メルトフローレート(I2、I5、I10)
メルトインデックス(I2)は、ASTM D-1238に従って、エチレン系ポリマー樹脂に関しては190℃、2.16kgで、プロピレン系ポリマー樹脂に関しては230℃、2.16kgで測定した。エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I5)は、ASTM D-1238に従って190℃、5kgで測定し、メルトインデックス(I10)は、ASTM D-1238に従って190℃、10kgで測定した。値を、10分あたりに溶出したグラムに対応する、g/10分で報告する。
【0042】
密度
密度測定用の試料を、ASTM D4703に従って調製し、グラム/立方センチメートル(g/ccまたはg/cm3)で報告した。測定は、ASTM D792、方法Bを用いて、1時間以内の試料圧縮で行った。
【0043】
ヒートシール開始温度
ヒートシール開始温度は、比熱強度のシールを形成するのに必要な最小シール温度である。シールは、Brugger HSG-Cシーラー内で、0.5秒の滞留時間、210Nのシールバー圧力で実施した。シールされた試料は、10インチ/分(4.2mm/秒または250mm/分)でInstron Tensiometer内で試験した。
【0044】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
PolymerChar(スペイン、バレンシア)からのGPC-IR高温クロマトグラフィーシステムには、Precision Detectors(マサチューセッツ州アマースト)の2角度レーザー光散乱検出器モデル2040、いずれもPolymerCharからであるIR5赤外線検出器および4細管粘度計が備わっていた。データ収集は、PolymerChar Instrument Controlソフトウェアおよびデータ収集インターフェースを使用して実施した。このシステムには、Agilent Technologies(カリフォルニア州サンタクララ)からのオンラインの溶媒脱ガスデバイスおよびポンプシステムが備わっていた。
【0045】
射出温度は、150℃に制御した。使用したカラムは、Polymer Laboratories(英国シュロップシャー州)からの3つの10ミクロン「Mixed-B」カラムであった。使用した溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであった。試料は、「50ミリリットルの溶媒中0.1グラムのポリマー」の濃度で調製した。クロマトグラフィー溶媒および試料調製溶媒はそれぞれ、「200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)」を含有した。両溶媒源を窒素スパージした。エチレン系ポリマー試料を、160℃で3時間穏やかに撹拌した。注入容量は、「200マイクロリットル」であり、流速は、「1ミリリットル/分」であった。GPCカラムセットは、21個の「狭い分子量分布」ポリスチレン標準物を実行することによって較正した。標準物の分子量(MW)は、580~8,400,000g/モルの範囲であり、標準物を6つの「カクテル」混合物に含有させた。各標準混合物は、個々の分子量間で少なくとも一桁の間隔を有した。標準混合物は、Polymer Laboratoriesから購入した。ポリスチレン標準物は、1,000,000g/モル以上の分子量については、「50mLの溶媒中0.025g」、および1,000,000g/モル未満の分子量については、「50mLの溶媒中0.050g」で調製した。
【0046】
ポリスチレン標準物を、穏やかに撹拌しながら80℃で30分間溶解した。分解を最小限に抑えるために、狭い標準混合物を最初に、かつ「最高分子量成分」が減少する順に流した。ポリスチレン標準物のピーク分子量を、等式1(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Letters,6,621(1968))に説明されているとおり)を使用してポリエチレン分子量に変換した。
【0047】
Mポリスチレン=A×(Mポリスチレン)B(等式1)
(式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4316に等しく、Bは、1.0に等しい)。
【0048】
数平均分子量(Mn(gpc転化率))、重量平均分子量(Mw-gpc転化率)、およびz平均分子量(Mz(gpc転化率))を、以下の等式2~4に従って計算した。
【数1】
【0049】
等式2~4において、RVは、「1秒あたり1点」で収集されたカラム保持容積(直線的に離間される)であり、IRは、GPC計器のIR5測定チャネルからの、ボルト単位でのベースライン減算IR検出器信号であり、MPEは、等式1から決定されたポリエチレン当量MWである。データ計算は、PolymerCharからの「GPC Oneソフトウェア(バージョン2.013H)」を使用して実施した。
【0050】
ヒートシール試験
フィルム上のヒートシール測定は、ASTM F-88(技法A)に従って市販の引張試験機で実施する。ヒートシール試験は、可撓性バリア材料のシールの強度(シール強度)のゲージである。これは、シールを含有する材料の試験ストリップを分離するのに必要な力を測定することによって行い、試験片の破損のモードを特定する。シール強度は、開封力とパッケージの完全性に関連する。切断する前に、フィルムをASTM D-618(手順A)に従って23℃(+2℃)および50%(+5%)のRH(相対湿度)で最低40時間調整する。次に、シートを、3層の共押出積層フィルムから縦方向に約11インチの長さおよび約8.5インチの幅に切断する。シートを、シーリング圧力0.275N/mm2およびシーリング滞留時間0.5秒の条件下で一定の温度範囲で、Brugger HSG-Cシーラー上で縦方向にヒートシールする。
【0051】
温度範囲は、ホットタック範囲(つまり、少なくとも最低限のホットタックシールが達成され、溶け落ち温度の前の温度範囲)によってほぼ決まる。シールされたシートを、23℃(+2℃)および50%のRH(+5%)で最低3時間調整した後、1インチ幅のストリップに切断する。次に、これらのストリップを、試験前に23℃(+2℃)および50%のRH(+5%)で最低40時間さらに調整する。
【0052】
試験のために、ストリップを、2インチの初期分離で引張試験機のグリップに装填し、23℃(+2℃)および50%のRH(+5%)で10インチ/分のグリップ分離速度で引っ張る。ストリップは、支持されていない状態で試験する。各シーリング温度に対して、5回の反復試験を実施する。
【0053】
ホットタック試験
フィルムのホットタック測定は、STM F-1921に従ってEnepay商用試験機を使用して実施する。試験の前に、フィルムを、ASTM D-618(手順A)に従って23℃および50%のR.H.で最低40時間調整する。ホットタック試験は、シールが完全に冷却する前に、材料をポーチまたは袋へ充填することをシミュレートする。
【0054】
8.5インチ×14インチの寸法のシートを、縦方向に最も長い寸法で、3層の共押出積層フィルムから切断する。1インチ×14インチのストリップを、各フィルムから切断する。試験は、これらのサンプルに対して一定範囲の温度で実施し、結果は、温度の関数として最大負荷として報告する。典型的な温度ステップは、5℃または10℃の各温度で6回繰り返す。試験で使用されたパラメーターは、試料幅25.4mm(1.0インチ)、シール圧力0.275N/mm2、シーリング滞留時間0.5秒、遅延時間0.1秒、および剥離速度200mm/秒である。Enepay機は、5mmのシールを作成する。データは、平均ホットタックとして報告し、平均ホットタック力(N)は、温度の関数として報告する。ホットタック開始温度は、事前定義された最小ホットタック力を達成するために必要な温度である。この力は通常、1~2Nの範囲であるが、特定の適用によって異なるであろう。極限ホットタック強度は、ホットタック曲線のピークである。ホットタック範囲は、シール強度が最小ホットタック力を超える温度範囲である。
【0055】
光沢
光沢は、ASTM D2457に従って、BYK Gardner Glossmeter Microgloss45°を使用して測定した。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、様々な比較の単層および多層フィルムと比較して、本発明の単層および多層フィルムの例示的な実施形態を示す。
【0057】
実施例1
表2および4の実施例で使用される樹脂を、以下の表1に列挙する。
【表1】
【0058】
表1に列挙されるポリマー樹脂を使用して、多層フィルム構造を製造し、以下のように表2に列挙する。層Bでは、多層フィルム構造は、白色マスターバッチ(MB)顔料も含む。多層フィルムは、40μmの厚さ、および表2に列挙される層分布を有した。これらの多層フィルム構造は、内部に複数の押出機を有する、ブラジル、ジュンダイにあるCollinブローンフィルムラインで製造された。個々の樹脂層は、別の押出機で、下の表2に列挙される量、列挙される厚さ、15℃の気温でブレンドした。以下の3層多層フィルム構造の3層を製造するために、25mm、30mm、および25mmのそれぞれのダイ径を有する3つの個別の押出機を使用した。次に、共押出機のダイは、下に列挙されるように層を構造に組み合わせる。共押出機には、直径60mm、ダイギャップ1.8mmの環状ダイが備えられ、ダイの上流に40/70メッシュのメッシュフィルターパックも含んだ。さらに、製造プロセスでは、2.5:1のブローアップ比(BUR)を使用した。
【0059】
表2の多層フィルムの形成後、フィルムを、層A、すなわち艶消し層上でコロナ処理して、44ダインの表面接着強度を達成する。
【表2】
【0060】
表2の多層フィルム構造について、光沢45°を測定し、結果を上記の表2に示す。示されるように、エチレン系ポリマーおよびプロピレン-エチレンコポリマー(VERSIFY(商標)3200)を含む艶消し層(層A)を含んだ本発明のフィルム1および2の両方とも、10単位未満、具体的には5.64で光沢45°値を有した。対照的に、エチレン系ポリマーのみを含むフィルムである比較フィルム1および2の両方とも、10単位を超える光沢値を有した。
【0061】
図1を参照すると、本発明のフィルム1および2は、75℃で2.5N/25.4mmを超えるホットタック強度を示したのに対し、比較フィルム1および2の両方とも、75℃でゼロのホットタック強度を有した。これはさらに、本発明のフィルム1および2は、低いホットタック開始温度(HTIT)、具体的には70℃より低いHTITを有したのに対し、比較フィルム1および2は両方とも、少なくとも75℃のHTIT値を有したことを実証する。比較フィルム2より大幅に優れた艶消し性能を備えていたが、本発明のフィルム1および2に比べて劣る艶消し性能を備えた比較フィルム2は、105℃を超えたHTIT値を有した。
【0062】
図2を参照すると、本発明のフィルム1および2は、比較フィルム1に匹敵するヒートシール強度を示したが、比較フィルム1は、非常に低い艶消し性能、すなわち、46.9単位の光沢45°値を有した。比較フィルム2よりも優れた艶消し性能を示した比較フィルム2は、本発明のフィルム1および2のヒートシール性能を達成しなかった。例えば、本発明のフィルム1および2の両方とも、100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を示したのに対し、比較フィルム2は、100℃でゼロのヒートシール強度を有した。要約すると、本発明のフィルムだけが、艶消し性能とヒートシール強度との組み合わせを達成した。
【0063】
表2の多層フィルム構造に加えて、さらなる多層ABCフィルム構造を調製し、以下の表4に列挙する。以下の表3に示されるように、表4の例のABC構造の艶消し層Aの組成は異なるが、層BおよびCは、表4に列挙されるすべての例で同じであった。表4のフィルムを作製するための手順は、上記の表2のフィルムを作製するために使用されたものと同じ手順であった。
【0064】
【0065】
表4に示されるように、プロピレン-エチレンコポリマーを含まない比較フィルム3および4は、10単位以上の劣った光沢45°値を得た。さらに、比較例3および4も、好適なホットタック開始温度(HTIT)、具体的には70℃より低いHTIT、または100℃以上で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を有さなかった。示されるように、エチレン系ポリマーおよびプロピレン-エチレンコポリマーを含む艶消し層(層A)を含む本発明のフィルム3~11はすべて、10単位未満の光沢45°値を有した。
【0066】
光沢45°値が10単位未満であることに加えて、本発明のフィルム5~10はすべて、70℃より低いHTIT、および100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を有する。これらのフィルムに関しては、光沢45°、70℃より低いHTIT、およびヒートシール強度のこの組み合わせが、エチレン系ポリマーおよびプロピレン-エチレンコポリマーの様々な重量パーセントで達成された。さらに、本発明のフィルム7は、VERSIFY(商標)2300(2g/10分のメルトインデックス(I2))を含み、8g/10分のメルトインデックス値(I2)を各々有したVERSIFY(商標)3200およびVERSIFY(商標)2300を伴うフィルムと同様の、光沢45°、HTIT、およびヒートシール強度の好適な組み合わせを得た。また、本発明のフィルム8に示されるように、HDPEエチレン系ポリマーは、MDPEを有する他のいくつかのフィルムと同様に好適であった。
【0067】
本発明のフィルムのいくつかは、70℃より低いHTITおよび100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度のいずれも達成しなかった。表3にさらに示されるように、本発明のフィルム3および11は、所望の光沢値および100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を達成したが、本発明のフィルム3および11は、70℃より低いHTITを達成しなかった。逆に、本発明のフィルム4は、所望の光沢値を達成し、これらのフィルムは、70℃より低いHTITを達成しなかったが、100℃で少なくとも4N/25.4mmのヒートシール強度を達成しなかった。
【0068】
添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると認識されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。