(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】大視野3D分光顕微鏡法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20231020BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
G02B21/06
G01N21/64 E
(21)【出願番号】P 2020532902
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2018085062
(87)【国際公開番号】W WO2019115807
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-16
(32)【優先日】2017-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113934
【氏名又は名称】アルヴェオル
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スチューダ,ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ギャルラン,レミ
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118762(JP,A)
【文献】国際公開第2017/205858(WO,A1)
【文献】特開平11-249023(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104568872(CN,A)
【文献】BEDARD Noah,Image mapping spectrometry: calibration and characterization,Optical Engineering,2012年07月13日,Vol. 51 Issue 11,111711-1 - 111711-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G01N 21/62 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光に応答して蛍光を発することができる三次元対象媒体の物体面を観察するための広視野
分光蛍光顕微鏡であって、
前記照明光のための第1の光チャネルと、前記照明光および前記蛍光のための第2の光チャネルと、前記蛍光のための第3の光チャネルとを備え、
前記第1のチャネルは、前記広視野顕微鏡の視野を制限する空間変調器(1)を備え、
前記第2のチャネルは、前記物体面と、前記照明光および前記蛍光に対して二色性を有するビームスプリッタ(3)との間に延在し、
前記第3のチャネルは、前記第2のチャネルと、前記蛍光を検出可能な
モノクロカメラ(4)との間に延在し、
前記顕微鏡は、前記照明光について前記空間変調器(1)を前記物体面と共役にすると共に、前記蛍光について前記物体面を前記カメラ(4)と共役にするための光学手段を備え、
前記第3のチャネルは、前記蛍光に対して分散性を有する光学素子を備え、
前記第3のチャネルには、空間変調器が備えられていないことを特徴とする広視野蛍光顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の広視野顕微鏡であって、
前記光学手段は、前記第2のチャネルに配置された顕微鏡対物レンズ(2)を備える、
広視野顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の広視野顕微鏡であって、
前記光学手段は、前記第1のチャネルに配置された第1の顕微鏡対物レンズと、前記第2のチャネルに配置された第2の顕微鏡対物レンズとを備える、広視野顕微鏡。
【請求項4】
請求項1に記載の広視野顕微鏡であって、
分散性を有する前記光学素子は、プリズム(5)である、広視野顕微鏡。
【請求項5】
請求項1に記載の広視野顕微鏡であって、
前記空間変調器(1)はデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)である、広視野顕微鏡。
【請求項6】
請求項1に記載の広視野顕微鏡であって、
前記空間変調器(1)は、スピニングディスクである、広視野顕微鏡。
【請求項7】
請求項1に記載の広視野顕微鏡を第1の波長において校正するための方法であって、
第1の照明光に応答して、前記第1の波長を含む第1のスペクトル帯域で蛍光を発することができる対象媒体を、前記物体面の近傍に配置するステップと
前記第1の波長の近傍を分光的に選択可能な第1の干渉フィルタを、前記第3のチャネルに配置するステップと、
前記物体面において前記顕微鏡の広視野の各点を前記空間変調器(1)によって前記第1の照明光で順次照明するステップと、
前記顕微鏡の前記広視野の各点の第1画像を前記カメラ(4)に記録するステップと、
前記第1の干渉フィルタを前記第3のチャネルから除去するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
請求項1に記載の広視野顕微鏡を第2の波長において校正するための、請求項7に記載の方法であって、
前記第2の波長の近傍を分光的に選択可能な第2の干渉フィルタを用いて、請求項7のステップを繰り返し、前記第2の干渉フィルタを用いて前記カメラ(4)に記録される、
前記顕微鏡の前記広視野の各点の第2画像を得る、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法を用いて校正された請求項1に記載の広視野顕微鏡の使用方法であって、
照明光に応答して、前記第1の波長の近傍と前記第2の波長の近傍とを含む波長スペクトルで蛍光を発することができる試料を、前記物体面の近傍に配置するステップと、
前記空間変調器(1)を用いて、複数の点から成るグリッドに従って、前記顕微鏡の前記広視野を照明するステップと、
前記波長スペクトルのための前記グリッドの各点の画像を、前記カメラ(4)に記録するステップと、
前記波長スペクトルのための前記顕微鏡の前記広視野の各点の画像が、前記カメラ(4)に記録されるまで、前記空間変調器(1)により、前記顕微鏡の前記広視野において前記グリッドを並進させながら、上記2つのステップを繰り返すステップと、
前記第1の波長における前記試料の一点の第1画像を、前記波長スペクトルのための前記各点の前記画像と、前記校正方法を用いて得られる前記第1の波長における前記各点の前記第1画像とから、画像処理によって、推定するステップと、
前記第2の波長における前記試料の前記点の第2画像を、前記波長スペクトルのための前記各点の前記画像と、前記校正方法を用いて得られる前記第2の波長における前記各点の前記画像とから、画像処理によって、推定するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
前記広視野顕微鏡の光軸に沿って切片化された試料のスペクトル画像を得るために、
前記画像処理は、前記カメラ(4)によって記録された前記画像の連続したバックグラウンドを除去するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広視野光学的蛍光顕微鏡法、特に、蛍光物体の画像がカメラのリニアまたはマトリックスアレイ検出器によって複数の波長において記録される広視野分光蛍光顕微鏡法の分野に関する。とりわけ、本発明は、広視野三次元(3D)分光(またはマルチカラーまたは疑似カラー)蛍光顕微鏡法に適用可能である。
【0002】
蛍光顕微鏡法は、少なくとも2種類の顕微鏡、広視野顕微鏡および共焦点顕微鏡、に採用されている。広視野顕微鏡において、視野は、二次元(2D)視野絞りによって画成される。共焦点顕微鏡において、視野絞りは、一次元(スリット)またはゼロ次元(孔状絞り)になる。
【0003】
特に簡素であるのは、分散素子または何れかの種類の分光計を共焦点顕微鏡と併用することによって、それらからスペクトル撮像装置を構成することである。具体的には、視野絞りより一次元多い単色検出器を使用し、この次元における光のスペクトルの各成分を公知の従来技術の分散素子(プリズム、回析格子、マイケルソン干渉計等)で分散させれば十分である。例えば、孔を採用した共焦点顕微鏡では、リニアアレイを用いて、孔によって照らされたプリズムによって分散されたスペクトルを、集めることが可能である。別の例において、スリットを採用した共焦点顕微鏡では、二次元またはマトリックスアレイを用いて、プリズムの分散方向に平行に配置されていないスリットによってプリズムが照らされ、その照らされたプリズムによって分散されたスペクトルを、集めることが可能である。
【0004】
これに対して、従来技術においては、記録される画像の分解能を著しく低下させずに、分散素子を広視野顕微鏡と併用することは不可能である。二次元(2D)またはマトリックスアレイ検出器、またはカメラの何れの次元も、画像のスペクトル成分の記録には利用できず、検出器の二次元視野全体が画像によって占有され得る。
【0005】
実際に、従来技術においては、単色マトリックスアレイ検出器に対応付けられた広視野顕微鏡を、物体から顕微鏡の視野全体に発せられた蛍光のスペクトル成分に高感度な、またはアクセス可能な、顕微鏡に変換することは、困難な課題である。
【0006】
ただし、シーケンシャルな共焦点顕微鏡より高いレートで一画像の複数の点の記録を先験的に可能にする広視野分光顕微鏡法は、動的物体を、とりわけ三次元で、記録するために望ましい手法になるであろう。
【0007】
定義
光学分野に関する本願の全体にわたって、用語「の間に配置される」は、光学装置の各素子に適用される際、各素子に光学機能、特に光学的共役、透過、偏差、分散、または反射、を行わせるのに適した各素子の空間的な配置を示している。
【0008】
本願において、以下の用語は以下の意味を有する。
カラーまたは疑似カラー:カメラによる蛍光のスペクトル分布の測定値である。性質がそれぞれ異なる複数の蛍光体はそれぞれ異なる色を有することが理解されるであろう。
【0009】
ビームスプリッタ:入射光の一部を反射し、一部を透過させるように処理された光学プレートまたはダイクロイックミラー。透過光および反射光のスペクトル特性はそれぞれ異なる。蛍光顕微鏡法に使用される際、このようなビームスプリッタは、例えば、励起または照明スペクトルを少ない(すなわち、できる限り少ない)損失で反射し、蛍光スペクトルを少ない損失で透過させるように、最適化されるであろう。照明光および蛍光に対するビームスプリッタまたはダイクロイックプレートビームスプリッタが、カメラの手前に配置される。実際には、ビームスプリッタまたはダイクロイックプレートビームスプリッタは、カメラを照明光から隔離するのに役立つ複数の薄い光学層が重なったもので、強度が数桁低い蛍光を、カメラを飽和させずに検出する。
【0010】
カメラまたはモノクロカメラ:複数のカメラ画素で構成されたマトリックスアレイ(すなわち、二次元または2D)検出器を備えた光学装置であって、一カメラ画素によって受光される、または、カメラによって記録される、複数の色を区別できず、画像は受光されたスペクトル全体にわたって積分されたエネルギーレベル(グレースケールとも呼称される)として記録される。検出器は、最大限可能な量子効率を有するカメラ画素を具現化する。
【0011】
プリズム:透過させる光の波長または色に応じたその屈折率の変化により、二面角の稜線に垂直な平面で光を分散させる二面角光学素子。
【0012】
空間変調器:光学素子であって、本素子が透過または反射させる光に、空間的に可変のエネルギー差を印加可能な光学素子。このような素子は、大きな光源から、任意に選択された複数の画素から成るパターンの取得を可能にする(一画素は、この素子の最小寸法または変調周期である)。空間変調器の例は、特に、スピニングディスクまたはデジタルマイクロミラーデバイス(DMD:digital micromirror device)であり、または、空間光変調器(SLM:spatial light modulator)でさえある。変調器は、特に単一の点または画素を選択し得るが、規則的に分布した空間的に分離した一組の点または画素から成る、離散物体、離散パターン、変調された離散物体、または、変調された離散パターンも選択し得る。これは、物体の画像から連続したバックグラウンドを除去するために役立つ。したがって、DMDは、物体を動かさずに、一組の選択された点の並行照明を可能にする。
【0013】
グリッド:複数の点から成る、一般に一平面に位置する点のネットワークのノードに一致する、二次元マトリックスアレイ上に位置する、一組の画素で構成された離散物体(または、その様々な画像)。
【背景技術】
【0014】
従来技術においては、複数の反射マイクロミラーから成るマトリックスアレイを使用する顕微鏡を備えた結像装置が公知である。このマトリックスアレイは、顕微鏡の照明または励起光路に配置されている。この顕微鏡は、例えば、照明によって誘発された蛍光を(CMOS、CCD等)カメラの複数のセンサまたは画素から成るマトリックスアレイを用いて集めるための結像光路を更に有する。蛍光は、可変なスペクトル帯域を有するか、または、照明された様々な分子の性質と1つ以上の励起光源のスペクトル組成とに応じて異なる色を有する。
【0015】
蛍光を使用する分光顕微鏡検査システムの品質にとって重要であるのは、所定の物点の各画像が様々なスペクトル帯域で形成されることを確実にすることだけでなく、当該物体の所定の一点の当該各画像の空間的重畳が、カメラの1画素の精度を維持すること、すなわち、当該物体の各点の空間的基準、も保証することである。
【0016】
従来技術においては、モノクロカメラを用いて分光システムを作成するには、複数の干渉フィルタを用いて複数のスペクトル画像を順次記録する必要があり、その後、全てのスペクトル帯域を互いに参照して全てのスペクトル帯域から成る同時画像を再作成するために、これら画像をビューイングシステムにおいて重ね合わせる必要がある。したがって、干渉フィルタを使用したシステムの分解能を低下させないように、これらフィルタはほぼ完全に平行である、すなわち、ほぼ数秒角以内である、必要があることが知られている。これらフィルタは、それらの頂角が殆どゼロであり、それらがビームに導入されたときに引き起こされるシフトが、ゼロまたは1カメラ画素より小さいため、ゼロシフトフィルタと呼ばれる。
【0017】
したがって、従来技術においては、カメラにより分解能が制限され蛍光を使用する顕微鏡検査システムの結像光路へ、完全に平行ではない素子を導入することは、不利であると考えられていた。より一般的には、モノクロカメラによって蛍光結像を行うには、スペクトル帯域を選択するために光路上に導入され得る各素子は、従来技術においては、カメラ上の画素シフトがゼロである必要があると考えられていた(すなわち、ゼロシフト素子)。この条件によって導かれた想定は、光路上に導入され得る各素子は、ゼロシフト干渉フィルタのように、ゼロシフトで波長の関数としてゼロ偏差の分散である必要があるということであった。ゼロシフト干渉フィルタとは、その平行度がゼロ画素である、または実際には数秒角(1秒角は1ミリラジアンの60分の1)未満であるフィルタ(例えば、米国セムロック(Semrock)社が販売しているフィルタなど)である。そのような特性は、実際には、一旦製作された複数のフィルタをソートすることによって得られる。なぜなら、その特性は、複数の平坦な平行面を有するプレートの工業的に可能な製造精度の範囲を超えているからである。
【0018】
プリズムおよび他の分散素子(回析格子等)は従来技術においても知られているが、前述の各素子は、従来技術においては、ゼロシフトシステムに必要とされる平行度の公差を満たすことができない。とりわけ、ビームを大きな角度にわたって偏向させ、波長分散性を有するプリズムは、ゼロシフトシステムには特に不向きであると思われる。
【0019】
最後に、複数の干渉フィルタを光路上に順次導入する必要がある。これにより、取得レートが大幅な制限される。取得レートは、これらフィルタの後退速度によって制限される。したがって、この制限により、実際には、3D顕微鏡法のためのそのようなシステムの速度も低下する。このシステムでは、物体面に垂直な顕微鏡の光軸または「Z軸」に沿った、物体面に平行な複数の平面に、その複数の測定点が位置している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
この文脈において、本発明は、照明光に応答して蛍光を発することができる三次元対象媒体の物体面を観察するための広視野蛍光顕微鏡に関する。本広視野蛍光顕微鏡は、照明光のための第1の光チャネルと、照明光および蛍光のための第2の光チャネルと、蛍光のための第3の光チャネルとを備え、第1のチャネルは、広視野顕微鏡の視野を制限する空間変調器を備え、第2のチャネルは、体面と、照明光および蛍光に対して二色性を有するビームスプリッタとの間に延在し、第3のチャネルは、第2のチャネルと、蛍光を検出可能なカメラとの間に延在し、顕微鏡は、照明光について空間変調器を物体面と共役にすると共に、蛍光について物体面をカメラと共役にするための光学手段を備え、第3のチャネルは、蛍光に対して分散性を有する光学素子を備える。
【0021】
複数の変形例において、
-光学手段は、第2のチャネルに配置された顕微鏡対物レンズを備える。
-光学手段は、第1のチャネルに配置された第1の顕微鏡対物レンズと、第2のチャネルに配置された第2の顕微鏡対物レンズとを備える。
-分散性を有する光学素子は、プリズムである。
-空間変調器は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)である。
-空間変調器は、スピニングディスクである。
【0022】
本発明は、更に、第1の波長において広視野顕微鏡を校正するための方法に関する。本方法は、
-第1の照明光に応答して、第1の波長を含む第1のスペクトル帯域で蛍光を発することができる対象媒体を、物体面の近傍に配置するステップと、
-第1の波長の近傍を分光的に選択可能な第1の干渉フィルタを、第3のチャネルに配置するステップと、
-物体面における顕微鏡の広視野の各点を空間変調器によって第1の照明光で順次照明するステップと、
-顕微鏡の広視野の各点の第1の画像をカメラに記録するステップと、
-第1の干渉フィルタを第3のチャネルから除去するステップと、
を含む。
【0023】
本方法の1つの変形例において、本発明は、更に、広視野顕微鏡を第2の波長において校正するための方法に関する。本方法では、第2の波長の近傍を分光的に選択可能な第2の干渉フィルタを用いて、第1の波長において校正するステップを繰り返し、第2の干渉フィルタを用いてカメラに記録される、顕微鏡の広視野の各点の第2の画像を得る。
【0024】
本発明は、更に、第1の波長および第2の波長において校正された広視野顕微鏡を使用するための方法に関する。本方法は、
-照明光に応答して、第1の波長の近傍と第2の波長の近傍とを含む波長スペクトルで蛍光を発することができる試料を、物体面の近傍に配置するステップと、
-空間変調器を用いて、複数の点から成るグリッドに従って、顕微鏡の広視野を照明するステップと、
-当該波長スペクトルのためのグリッドの各点の画像を、カメラに記録するステップと、
-当該波長スペクトルのための顕微鏡の広視野の各点の1つの画像が、カメラに記録されるまで、空間変調器により、顕微鏡の広視野においてグリッドを並進させながら、上記2つのステップを繰り返すステップと、
-第1の波長における試料の一点の第1の画像を、波長スペクトルのための前述の各点の画像と、校正方法を用いて得られる第1の波長における前述の各点の第1の画像とから、画像処理によって、推定するステップと、
-第2の波長における当該試料の当該点の第2の画像を、波長スペクトルのための前述の各点の画像と、校正方法を用いて得られる第2の波長における前述の各点の画像とから画像処理によって、推定するステップと、
を含む。
【0025】
1つの変形例において、本発明は、広視野顕微鏡の光軸に沿って切片化された試料のスペクトル画像を得るための方法に関する。この画像処理は、
-カメラによって記録された複数の画像の連続したバックグラウンドを除去するステップを含む。
【0026】
添付の図面を参照すると、本発明をより深く理解されるであろう。図面には、参照符号が示されている。添付の図面は模式的であり、同じ縮尺ではない。図面の目的は、とりわけ、本発明の原理を示すことである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示されている蛍光顕微鏡検査システムの例は、顕微鏡対物レンズ2の物体焦点面と共役である空間変調器1を備え、空間変調器1は、ビームスプリッタ3を介してその物体焦点面の画像をカメラ4上に形成する。また、分散素子、すなわち、
図1においてはビームスプリッタ3とカメラ4との間に配置されたプリズム5、を更に備える。
【0029】
空間変調器1は、(空間変調器1がその焦点に配置されている)レンズ6を介して、照明チャネルと称されるこのチャネル上で反射時に機能するビームスプリッタ3、および、顕微鏡対物レンズ2を介して、顕微鏡対物レンズ2の物体焦点面と光学的に共役である。ビームスプリッタ3は、空間変調器1、ここではDMDまたはデジタルマイクロミラーデバイス、によって反射された照明光を、反射するように機能する。照明光は、光源(
図1には不図示)によって空間変調器1に送達される。
【0030】
ビームスプリッタ3は、更に、物体焦点面に配置された、照明光にさらされた蛍光物体により発せられた蛍光を透過させる役割を果たす。
【0031】
照明光と蛍光とは、ビームスプリッタ3と顕微鏡対物レンズ2の物体焦点面との間で、特に顕微鏡対物レンズ2を、反対方向に透過する。
【0032】
必要であれば、ノッチフィルタなどの公知の光学手段(
図1には不図示)を使用して、カメラ4による照明光の検出を確実に不可能にすることが出来る。
【0033】
図1は、蛍光光学顕微鏡法のための光学装置の一例を示す。本光学装置は、空間変調器1と、顕微鏡対物レンズ2と、ビームスプリッタ3と、カメラ4とを備え、ビームスプリッタ3は空間変調器1と顕微鏡対物レンズ2との間に配置され、ビームスプリッタ3はカメラ4と顕微鏡対物レンズ2との間に配置され、分散素子として機能するプリズム5は、ビームスプリッタ3とカメラ4との間に配置される。
【0034】
空間変調器1は、ダイクロイックビームスプリッタ3の第1の面または側に終端する照明光路またはチャネル上または内に配置される。ビームスプリッタ3のこの第1の面と物体面、ここでは顕微鏡対物レンズ2の物体焦点面、との間に照明および蛍光光路すなわち光チャネルが存在する。ビームスプリッタ3の第2の面または第2の側からカメラ4まで第3の蛍光光路すなわち光チャネルが存在する。平常の光学動作では、照明光のみが第1の光チャネルを進み、蛍光のみが第3のチャネルを進み、これら両方の種類の光が第2のチャネルを、ここでは両者反対方向に、進む。同様に、顕微鏡対物レンズ2で蛍光を集める代わりに、別の顕微鏡対物レンズおよび別のカメラによって物体焦点面の反対側で蛍光を集めることも可能であろう。そこでは、照明光をブロックするために、ひいては、同じ様に蛍光のみがその別のカメラに達することを確実にするために、別のダイクロイックビームスプリッタが使用される(この別のダイクロイックビームスプリッタは、傾斜した入射ばかりでなく、垂直の入射にも使用可能である)。
【0035】
図1を参照すると、第1の実施形態は、レンズ6およびビームスプリッタ3を介して顕微鏡対物レンズ2の物体焦点面と共役である、DMDまたはデジタルマイクロミラーデバイスである空間変調器1を、備えた蛍光顕微鏡検査システムに関する。本実施形態には、反射時または透過時に機能する、液晶を使用した空間光変調器または別の振幅変調器が適していることになる。
【0036】
DMDは、蛍光体を励起するのに適した、一般に350nm~800nmの波長の光ビームによって照らされる。DMDは、顕微鏡の物体焦点面と、つまり物体と、共役であるので、二次元に間隔を置いた複数の点から成る様々なパターンで選択的に照明可能である。
【0037】
このビームは、物体焦点面における、DMDに対応付けられた公知の電子素子によって選択された複数の点において、物体の蛍光を励起させる。一般に、照明ビームは同じ光路上にまとめられた複数のレーザビームで構成されることにより、蛍光体が物体内に存在する場合に各レーザビームが1蛍光体を励起することが出来る。複数のラインで構成された光源のパワーが十分であれば、この光源も適切であり得る。
【0038】
したがって、このチャネルは顕微鏡照明チャネルと称され、顕微鏡対物レンズ2の物体焦点面への励起光の伝達を可能にする。この光路上で、半反射ミラー、またはプレートビームスプリッタ、またはリターンビームスプリッタ、またはビームスプリッタ3、は照明ビームを分散させずに反射する。
【0039】
従来技術において公知のように、ビームスプリッタは、蛍光を著しく分散させずに透過させる。
【0040】
ビームスプリッタは、一般には、干渉フィルタに対応付けられたダイクロイックミラーである。干渉フィルタは、ダイクロイックミラーと光源との間に配置される。光源は、水銀灯、1つ以上の平行LEDで構成された光源、または1つ以上のレーザビームを混合して得られる直線状ビーム、であり得る。
【0041】
したがって、対物レンズ2は、不図示の物体の蛍光が励起された後、この物体の一切片の画像をカメラ4上の蛍光スペクトルの波長の物体焦点面に、形成する。この顕微鏡は、この目的のために、カメラのCCDまたはCMOSマトリックスアレイ上に画像を形成する所謂チューブレンズを備える。一般に、このスペクトルは可視スペクトルであり、画像はビームスプリッタ3を介してカメラ4上に形成される。ビームスプリッタ3は、励起スペクトルと蛍光スペクトルとの間での選択が可能な波長選択ミラーの役割を果たす。例えば、ビームスプリッタは、光軸に対して45°の角度で配置され得る。これにより、反射されるビームは、90°で、または直角に、反射される。また、蛍光スペクトルでカメラ4を照明することができれば、すなわち、励起ビームを、照明と、対物レンズ2の焦点面にある物体から発せられたビームとに分割できれば、ビームスプリッタの平面の法線に対する何れの傾斜値も適している。
【0042】
ビームスプリッタ3によって照明ビームから分割された結像チャネルにプリズム5が導入されることにより、画像の偏差と、画像における波長分散と、物体の同じ点に対する、互いにオフセットされた波長の一組の画像の形態を取る1つの多色画像の、カメラ4の複数の画素上での形成と、が引き起こされる。したがって、これらの画像は、何れの空間基準およびスペクトル基準も失われ、隣接する複数の画素から成る複数の画像が混じりあってぼやける。
【0043】
したがって、2つの難点を克服する必要がある。プリズムの稜線またはその各面の平面の直線交線を中心とした角度から識別可能な、画像間の横オフセットを判定する必要がある。更には、各画像は、所定の一画素の各波長において選択的に記録可能である必要がある。
【0044】
したがって、以下において最初に説明するのは、所定の一画素の(プリズムによって角度的に分割され、その後、カメラの対物レンズの焦点を介してカメラの検出器上で空間的に分割された)様々な波長の各々において画像を選択的に記録し、これら画像を重ねるためのDMDの一つの特定の使用方法である。次に説明するのは、1つの色の位置を突き止めることによって絶対スペクトル基準を見出し、その後に第2の色の位置を突き止めることによって相対スペクトル基準を見出すことを可能にする校正方法である。このような方法は、様々な(受光されたモノクロまたはグレースケール)画像をカメラにより分割または区別できるのであれば、如何なる数の色にも一般化され得る。
【0045】
プリズムの分散がその稜線に垂直な一平面において単一方向に起こる、所定の一画素の異なる波長における各画像を、選択的に記録し重ね合わせるために、DMD画像、またはDMDが照明する各点が使用される。それらは、空間的に分離している複数の点、櫛状部(互いに分離されて直線上に配置された複数の画素)、または複数の画素の複数のグリッドである。したがって、画像において照明された点の間に分散画像を配置することが可能になる。その距離により、プリズムの分散の調整のための自由スペクトル領域が与えられる。グリッドを並進させることによって、画像の「タイリング」、すなわち、並進された複数のグリッドを用いて変調器の全ての点をカバーすることが可能になるので、一般性を失わずに、複数のグリッドであるDMD上の複数の画像に対して最良の結果が得られる。したがって、以下においては、DMD上の各画像または各パターンを各グリッドと考える。
【0046】
この場合、可能であるのは、正方形または矩形グリッドの一辺の方向をプリズムの分散方向に、または、グリッドの2つの点の間の自由スペクトル領域を最大化するために対角線の方向に、適切に位置合わせすることである。同じく可能であるのは、グリッドの2つの点の間の最大距離、したがってより広い自由スペクトル領域、を得るために、六角形パターンまたはネットワーク内に間隔を置いて配置された複数の点から成る複数のグリッドの複数の画像を使用することである。
【0047】
間隔を置いて配置された複数の点のこのタイプの照明は、スペクトルレベルでの干渉の回避を可能にする。そこでは、物体の一点の様々な波長における画像セグメントは、すなわち、プリズムによる分散によって得られるセグメントは、この物体と光学的に共役であり励起または照明チャネルに配置されるDMDによって、照明される物体内の、間隔を置いて配置された様々な点の間に位置する。
【0048】
好ましくは、最小分解能は、DMDによって制限されず、カメラの複数の画素は、画像内のDMDの単一画素をカバーすることができる。このように、カメラの画素のダイナミックレンジを使用して、一点の画像のスペクトル位置を補間し、最終的な分解能を向上させることが可能である。例えば、DMDの一画素の画像がカメラの4画素から成る正方形(すなわち、2画素×2画素の正方形)にわたって延在するように、倍率の調整が可能である。
【0049】
ただし、これら画像の場合、波長間の空間基準が必要である。以下においては、この校正あるいは空間またはスペクトル基準が決定される方法を説明する。各波長は、プリズムによって、カメラ上の位置によりコード化される。プリズムは、分散性を有する、すなわち、様々な波長の光線を角度的に分離する。
【0050】
この方法においては、所定の波長を中心とし、且つ、その波長を中心とする狭い通過帯域を持つ、光バンドパス蛍光フィルタまたはカラーフィルタが、ビームスプリッタとカメラとの間に、すなわち顕微鏡の結像チャネルに、挿入され、DMDを用いて、単一の画素、または複数の点から成る櫛状部、または複数の点から成るグリッド、またはDMDの画素として知られる間隔を置いて配置されたまたは離散した物体、が生成される。
【0051】
選択される1つまたは複数のフィルタは、ゼロシフトフィルタである。すなわち、これらフィルタの各々は、そのような平行度をそれぞれの面の間に有するので、光路に導入しても、物体の一点の画像の偏差は結像システムの分解能の半分以下である。このようなフィルタは、従来技術において公知であり、米国セムロック社によって販売されている。複数の平坦な平行面を有するプレートの場合、波長分散はプリズムの角度に比例するので、無視できるほど小さい可能性がある。これにより、偏差がゼロになることで、分散もゼロになり、使用されるカメラの全画素にわたって引き起こされるシフトがゼロの、または、分解能が極めて高い、システムに適した動作をもたらすことを確実にすることが可能になる。
【0052】
変調器と共役である顕微鏡の物体面に、すなわち、現在の顕微鏡における物体焦点面に、2つの蛍光体または蛍光色素を含有する溶液を載置してもよく、それにより、DMD上で選択される、したがって物体面において照明される、単一の点が如何なる点であろうとも、顕微鏡の照明に対して、蛍光スペクトルが第1の色および第2の色で得られることが確実になる。
【0053】
この場合、校正溶液と同じ蛍光体を含む未知の物体のために蛍光を励起させる顕微鏡の照明源を用いて、この未知の物体の各点において各色のための画像を得ることが可能である。
【0054】
例えば、DMDの一画素の単一点を照明し、そのような物体の画像、またはこの点に対するシステムのスペクトル応答を記録することが可能である。そのスペクトル応答は、結像チャネルに、すなわちビームスプリッタとカメラとの間に、挿入された所定の既知の第1カラーフィルタのために、モノクロカメラ上で空間的にコード化またはマークされる。
【0055】
このようにして、第1カラーフィルタの中心波長のための全ての光学素子を介して、カメラによりDMDの一点の第1の画像を判定可能である。第1カラーフィルタは、このフィルタによって規定される第1の色の蛍光に適合されている。したがって、カメラにより、第1の色に対応付けられた絶対的な空間基準が得られる。
【0056】
したがって、DMDの一画素の画像のカメラ上の位置が、第1のフィルタの中心波長である第1の波長において得られる。
【0057】
カメラ上で、一波長またはカラースケールのために、2つの解決策が実施可能である。
一方においては、プリズムのパラメータとプリズムの符号での波長分散とに基づいて、画像のスペクトル位置が計算によって第1の波長から外挿される。プリズムの屈折率およびその頂角を知ることにより、公知のように、第2の色または他の色における画像の位置の波長分散をこのように予測することが可能である。
他方においては、第2の蛍光体の蛍光に適合された第2カラーフィルタで第2の波長において、第2の画像を記録することによって、または、第2の測定を行うことによって、2つの波長間を補間する。
【0058】
したがって、これらの操作後、一物点の一画像を得ることが可能である。この画像は、プリズムがない場合の当該点の画像に対して、プリズムの存在により空間的に偏差されているが、その物体の当該点の様々なスペクトル帯域における各画像は、カメラ上で1画素以内のシフトに重ね合わせられている。したがって、所定の一点の複数のスペクトル画像間の相対的なずれはゼロ画素である。スペクトル基準は、任意の波長であり得る。したがって、従来技術の空間基準、すなわちプリズムなしの画像は、この実施形態において、他のスペクトルまたはカラー画像が重ねられる、これらスペクトル帯域のうちの1つにおける当該物体の複数の画像のうちの、1画像のスペクトル基準に置き換えられる。
【0059】
いずれの点においてもDMDのスペクトル応答を得るために、それらの点の各々は順次照明され得る。この操作は一度だけ行われるので、各点について、拘束されない時間長にわたって行われ得る。実際には、よく調整された高品質の光学部品の場合、点間のスペクトル応答の変化が緩やかであるので、この応答を10画素以上毎に記録し、その他の点については、校正された点間の補間を行えば十分であることが観察されている。
【0060】
したがって、所定の一点において、複数の波長に対してこの判定を行うことが可能である。最初の記録に加え、各記録により、画像の各点において記録された第1の波長に対するスペクトル並進の判定が可能になる。このために、蛍光体の透過波長を中心帯域とする複数のカラーフィルタを使用することが可能である。このようなフィルタは、通常、蛍光顕微鏡のために利用可能である。
【0061】
校正段階後、カラーフィルタを介して得られた、DMDの1画素の全ての物体の(グレースケールでの)各画像点の全ての絶対位置が分かる、または、波長を関数として計算可能になる。それらは、コンピュータメモリに適切に格納される。これら波長のうちの1つを基準とすると、これら色の各点の全ての相対位置も格納され得る。
【0062】
したがって、マッピングにより、波長に関数としてそれら画像の一組の位置を変調器の一画素と対応付けることが可能になる。逆に、カメラ上に所定の時点に(グレースケールで)結像された他の画素の他のカラー画像から、各カラーの画像が分離可能であれば、カメラに一画素の各画像の位置を記録することにより、それらの位置をカラー画像処理システムにおいて一画素の色に対応付け、その画素のカラー画像を得ることが可能である。
【0063】
実際には、分散は、(レンズの幾何収差のため)視野内の位置に依存する。したがって、隣接する複数の画素から成る帯状体を考慮に入れることは通常不可能である。したがって、通常必要であるのは、点や、複数の点から成る櫛状部、マトリックスアレイ、またはグリッドである、校正のためにDMD上に間隔を置いて配置された複数の点を持つ物体またはパターンを使用し、実際に、異なる色の複数の測定値間の補間によって、または、計算および外挿によって、視野の各位置のスペクトル分散を判定することである。各素子の光インパルス応答に関する先験知識があれば、DMD上で使用される校正点の数およびこの作業の継続時間を削減することが出来る。
【0064】
特に、3色以上の色を結像する能力を有する機器を得るために、3以上の蛍光体による校正の実施が可能であり、特に、特定の顕微鏡に利用可能な各カラーフィルタを用いて、または所定の試料の各蛍光体を用いて、校正を実施することが可能である。
【0065】
画像を取得するために、特に正方形マトリックスアレイ、または六角形マトリックスアレイ上に、例えば、顕微鏡の4~5つの回析スポットによって分離された1画素の発光グリッドを形成することが可能である。光学システムの分解能に応じてグリッドのピッチが選択されたら、一点の蛍光スペクトルの全ての画像色点が、プリズムによって分散されたときに、別の波長におけるグリッドの一点と重ならずに、選択されたグリッドに含まれるように、プリズムの角度が選択される。これにより、グリッドの全ての色点をカメラの取得レートで一度に記録可能である。
【0066】
実際には、3D顕微鏡法の場合は、公知のように、グリッドの点間の距離を設定する焦点面の外側の蛍光バックグラウンドの各ソースポイントを分離する必要がある。
【0067】
正方形または矩形の画像、または他の何れの形状の画像、を記録するために、正方形または矩形の画像、または、カメラのセンサの形状によって与えられる他の何れの形状の画像、の全ての点のカラー画像が記録されるまで、一グリッドを複数の非共線方向に並進可能である。
【0068】
カメラの複数の画素が画像内のDMDの1つの画素をカバーする場合は、カメラのこれらの画素の強度を用いて、カメラによって、空間分解能をDMDの空間分解能より向上させることが可能である。
【0069】
これにより、如何なるカラーマスクまたは可動部品もなしに、また、単一の校正によりカメラの所定の一画素上の各波長に対応付けられた並進または位置を知らずに、基準波長、すなわち、基準となる校正された第1の波長、を選択し、互いの位置が既知である複数のカラー画像を画像処理システムにおいて基準画像上に並進することによって、これら画像を重ねることが可能になる。本装置を用いて、画像シーケンスまたはハイパースペクトルおよびマルチカラー動画像を3Dで作成可能である。
【0070】
それぞれが主蛍光体の発光帯域を中心帯域とする、校正のために使用される限定数のフィルタが、通常、顕微鏡内の蛍光結像システムに存在すること、また、カラー結像またはビデオキャプチャをカメラの最大取得周波数で可能にする付属品により、多数の既存装置に、校正をより一層適用可能であること、に留意されよう。
【0071】
当該フィルタを含む光学システムのスペクトル校正は、蛍光顕微鏡の製造者または使用者により所定の校正するもので、その初回使用前に1回のみ行われ得ることに留意されよう。製造者は、それぞれの平行度ができる限り完璧な、且つ、それぞれのスペクトル透過率が製作されたすべてのフィルタの代表的な、一組の標準フィルタで校正を行うことが可能である。使用者は、顕微鏡と共に提供される複数のフィルタで、それらの平行度を受け入れて校正を行うことが可能である。
【0072】
何れにせよ、校正は、測定とは非同期で行われ得る。測定は、プリズムの分散を利用して、各カメラ画素が受光した蛍光スペクトル、カラー、または中心波長と、記録された基準画像とを、区別することにより、カラーフィルタなしに、行われ得る。実際には、ここでも、1つ以上の励起波長の除去が可能な、フィルタおよびダイクロイックミラーが、通常必要である。
【0073】
したがって、本発明は、モノクロカメラを用いて、カメラの速度に応じたレートで、カラー結像能力を得る。
【0074】
したがって、2D画像を作成するために、照明グリッドの全ての位置を記録することが必要である。一般的なケースでは、約200のカメラ画像が、1つの2D画像を得るのに、必要とされる。したがって、実際の結像レートは、カメラ速度の200分の1である。この結像レートは、カメラを変調器に電子的に同期することによって得られる。したがって、実際には、カメラはDMDに同期される。
【0075】
注目すべきことに、離散パターンの場合、2Dで得られるスペクトルまたはマルチカラー画像は共焦点であり(すなわち、z方向に、または光軸の方向に、または深さ方向に、切片化され、または切片化可能であり)、3D顕微鏡法に適している。グリッドの場合、例えば、画像は、上記の自由スペクトル領域の理由により必然的に間隔を置いて配置された複数の点から成るパターンであり、これら画像は、実際に、物体面とは異なる、光軸に垂直な複数の平面が発生させた、面外蛍光の連続したバックグラウンドに対する、照明グリッドの離散的な空間周波数のフィルタリングに、当然適している。したがって、フィルタリング後に一蛍光物体の複数の3Dカラー画像を得るために、公知の手段を用いて、顕微鏡を物体に対して、または物体を顕微鏡に対して、移動させることが可能である。
【0076】
実際には、DMDによって同時に照明される画像内の点の数が減るのに伴い、切片化が向上するが、取得レートはそれに応じて低速化する。DMDまたはカメラは、後者を制限する。単純な実行操作によって可能であるのは、所定のz切片化のために、グリッドの周期を調整すること、および、その結果得られる取得レートを観察すること、または、取得レートを設定しそれにより得られたz切片化を続行することである。
【0077】
最初にプリズムによって角度的に分離され、その後にカメラで空間的に分離された、または、顕微鏡の光軸に沿ってz方向に分離された(切片化された)、物体の様々な色からもたらされる複数の画像の、分離可能性は、可変であり得ることが理解されるであろう。この基準は、本発明をできる限り広範に適用出来るように、選択された空間変調器パターンが、所定のプリズムおよび所定の光学特性のための本発明の具現化に適しているかどうかを確認するために、光学画像の分解能限界と同じ観点から評価され得る。このパターンは、顕微鏡によって結像される各物体に対して実施される測定に先立って、校正の開始時に、この基準により適合化され得る。
【0078】
本発明は、カラー蛍光で観察するための3D顕微鏡の分野に工業的に適用可能である。
【0079】
本願において、用語「光源」は、第1の蛍光体の蛍光の励起を第1の色で、また、第2の蛍光体の蛍光の励起を第2の色で得るという観点で、その発光スペクトルが第1のスペクトル帯域と第2のスペクトル帯域とを含む、複数の(同軸)光源を意味することも理解されたい。
【0080】
本願において意図されているように、「その発光スペクトルが第1のスペクトル帯域と第2のスペクトル帯域とを含む光源」は、本願の教示範囲から逸脱することなく、第1のスペクトル帯域で発光する第1の光源の第1の光ビームと第2のスペクトル帯域で発光する第2の光源の第2の光ビームとを重ねることにより、得られ得ることを理解されるであろう。特に、本願において意図されているように、光源は、同軸で、波長がそれぞれ異なる複数のレーザ源を使用することにより得られ得る。
【0081】
本願の文脈において、物点から発し顕微鏡を通過した光ビームにプリズムが導入されるとき、その導入位置は、プリズムが透過させる光ビームにプリズムによってもたらされる光学的欠陥あるいは色収差または幾何収差を最小化する必要がある限り、好ましくは、ビームの複数の光線、すなわち、プリズムに入射する複数の光線、が互いに平行である位置、少なくとも近軸近似内である位置であると理解されるであろう。
【0082】
マトリックスアレイ検出器を備えたカメラ上の空間基準の損失が意味するのは、カメラのマトリックスアレイ検出器のグリッドによって形成された基準フレームに対する物体の一点の画像の、物体空間における移動であり、当該結像システムの分解能限界の半分より大きい移動である。このような移動は、光学素子をアセンブリに追加する、および、アセンブリから除去する、の少なくとも一方によって、引き起こされ得ることが知られている。
【0083】
単色検出器上で、それぞれが未知の波長または未知の波長を中心とする狭い波長間隔に対応付けられる複数のカラー画像に波長分散される一画像にとって、空間基準の損失という問題は、以下の事実に特徴付けられる。それは、未知の一波長または未知の一波長を中心とした狭い波長間隔内のカラー画像の何れも、物体空間において、静止したままではない、または、その偏差が当該結像システムの分解能限界の半分以上である、という事実である。
【0084】
結像システムにおける空間基準の損失という問題は、従来技術においては特定されていなかったように見受けられる。本願において提案される校正方法は、その平行度およびその照明条件が既知の波長または既知のスペクトルに対する空間基準の損失を招かない干渉フィルタを用いて、この既知の波長または既知のスペクトルを分離することを備え、したがって、この既知の波長またはこの既知のスペクトルに対する空間基準を回復させる手段であるように見える。この方法は、空間基準を得る必要がある全ての既知の波長または既知のスペクトルに一般化することが出来る。例えば、モノクロシステムで得られた画像を、画像波長分散なしに使用される結像システムと同じ分解能で、複数の疑似カラーで表すという観点で、色空間の任意の色(赤色、緑色、青色、等)を蛍光体スペクトルに対応付ける蛍光顕微鏡検査システムの全ての蛍光体スペクトルに、一般化することが出来る。
【0085】
この観点から、単純なプリズム以外の何れかの分散素子の使用、例えば、複数のプリズム(特にアミチ(Amici)プリズム)の組み合わせまたは回析格子なども、カラー結像システム内の対象スペクトルまたは波長の空間基準の損失を引き起こすのであれば、本願の教示の一部となることが、本願から理解されるであろう。したがって、これが特に該当するのは、その平行度に関する欠陥またはその色収差が当該スペクトルまたは波長に対する空間基準の損失を招くのであれば、光を屈折させずその代わりに分散させるマイケルソン干渉計などの素子の場合であろう。
【0086】
最後に、本願の方法の全般的な発明概念は、空間的および波長的に分散性を有する素子を組み込んだ、すなわち、モノクロカメラのマトリックスアレイ検出器上での各対象波長または各対象スペクトルの形状の空間位置を、カメラ上に画像を形成するために使用される結像システムの空間分解能以下の(または、選択された基準に応じた分解能の半分の)位置決め誤差で、確立する、結像システムを空間校正および分光校正するために、モノクロカメラ上で空間基準を維持するスペクトルフィルタを使用することであると言ってもよい。
【0087】
本方法は、空間基準を維持する素子を結像光路に挿入することによっても、あるいは、校正された素子を光路に挿入することによっても、同等に実施され得ることが、本願から理解されるであろう。校正された素子とは、空間基準の変化に関して正確に測定され、それにより、結像システムの分解能より低い誤差で、空間基準の既知の変位を提供出来るので、これを差し引いて、導入された構成要素または素子の変動を打ち消すことが出来る素子である。
【0088】
例えば、本発明の方法による校正のために複数の平坦な平行面を有するプレートを複数備えた干渉フィルタを使用するために、同等に可能であるのは、その2つの面の間の平行度および各面の平面性での公差が、この維持を実現するほど十分に低いことを要求すること、または、その平行性不良後の対象スペクトルの空間基準の変動を査定する、あるいは干渉フィルタの面間角度および屈折率を測定することにより計算して、この変動を部分的に予測すること、である。
【0089】
当該蛍光体のために最大限可能な正確な校正を得るには、好ましくは、校正に使用される干渉フィルタのスペクトル透過が狭範囲であり、結像に使用される蛍光体の発光スペクトルがその中心となっていることにも留意されよう。このようなフィルタは、従来技術において公知である。
【0090】
本発明の方法は、一見特に矛盾しているが、波長の関数として幾何偏差をゼロにするスペクトルフィルタを、光路に追加したり光路から除去したりすることによって、光路上に配置されている、波長の関数として可変の幾何偏差を生じさせる光学素子の作用を最小化する手段であるとも言える。
【0091】
上記の諸要素を考慮して、本発明の文脈におけるプリズムは、カメラの1画素より大きい、または物体における光学的分解能より大きい、物体の一点の複数画像の相対的な色分散を引き起こす何れかの素子である。
【0092】
上記の諸要素を考慮して、本発明の文脈におけるフィルタ、干渉フィルタ、または光学フィルタは、その透過率が波長の関数として可変であり、結像システムにおいて、その幾何偏差が、波長の関数としてゼロである、または結像システムの空間分解能の半分より低い、何れかの光学素子である。
【0093】
本発明の方法は、波長分散素子をそれぞれの光路に有するモノクロ結像システムのスペクトル校正のために、工業的に適用または使用可能である。
【0094】
本願の目的のために、本発明の光学装置において、「の間に配置され」という表現における用語「の間に」は、光学部品Aと光学部品Bと「の間に」配置されている光学部品Cの場合、本発明の装置の平常動作モードにおいて、AからBに光路を通って送られる光は、Bより先にCに遭遇すること、または、BからAに光路上を運ばれる光は、光路の可逆性の原理を応用して、Aより先にCに遭遇すること、を意味する。したがって、この観点から、Cは、AとBとの間、またはBとAとの間、に光のために設けられた光路上に確かに位置する。特に、本発明のシステムまたは装置は、所謂「非デスキャン」システムである。このシステムにおいては、変調器がビームスプリッタと顕微鏡対物レンズとの間に存在する所謂「デスキャン」システムに対して、ビームスプリッタが変調器と顕微鏡対物レンズとの間に位置する。この区別は必須である。なぜなら、デスキャンシステムの場合、変調器が空間基準をもたらすため、分散素子の導入時の空間基準の損失という技術的課題は深刻なほど発生しないからである。
【0095】
本発明のシステムにおいて、DMDまたは変調器は、照明光のために(
図1において、DMD1がその物体焦点面に配置されるレンズ6、および、顕微鏡対物レンズ2を介して)物体面と共役であり、他方、物体の蛍光のために、物体面はカメラの検出器の平面と共役である。換言すると、本発明の全てのシステムの平常使用において、変調器は光源により発生された照明光によってのみ照明され、物体面はこの照明光によってのみ照明され、カメラは、物体面に配置された蛍光物体の、照明下での、蛍光によってのみ照明される。したがって、カメラ上の物体の画像において空間基準の役割を果たし得るカメラ上の変調器の画像は、本発明のシステムによっては一切形成されない。上記のように、本発明は、変調器の何れの画像もカメラ上に形成しない光学手段によって、所定の物体面とそのそれぞれが共役である変調器とカメラとを、使用する何れの蛍光顕微鏡検査システムにも、適用可能である。ただし、本願においては、反射時に照明チャネルで、また、透過時に蛍光チャネルで(またはこの逆で)機能し、変調器とカメラとを所定の物体面と共役にする単一の顕微鏡対物レンズに対応付けられるビームスプリッタは、照明のために変調器を物体面の一方の側と共役にする第1の顕微鏡対物レンズ、および物体面のもう一方の側を、ビームスプリッタを介して、カメラと共役にする第2の顕微鏡対物レンズに、同等に十分置き換えられ得ることが理解されるであろう。これにより、単一の顕微鏡対物レンズについて上述したのと同じ方法で、照明光が除去され、蛍光のみがカメラに達することが確実になる。
【0096】
何れの分散光学素子(プリズム、回析格子等)でも、本願の教示の範囲から逸脱せずに、上記のプリズムと同等に使用され得ることは本願から理解されるであろう。