(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】Vienna整流器を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/12 20060101AFI20231020BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
H02M7/12 A
H02J7/00 P
(21)【出願番号】P 2020569992
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019063686
(87)【国際公開番号】W WO2019238404
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-04-27
(32)【優先日】2018-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コテイッチ, モハマド
(72)【発明者】
【氏名】サクル, ナディーム
(72)【発明者】
【氏名】ルーハナ, ナジブ
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103187887(CN,A)
【文献】Ming ZHANG et al.,“A Novel Strategy for Three-Phase/Switch/Level (Vienna) Rectifier Under Severe Unbalanced Grids”,IEEE Transactions on Industrial Electronics,2013年,pp.1826-1832
【文献】Sensen LIU et al.,“A novel strategy for vienna-type rectifier with light unbalanced input voltage”,IEEE Energy Conversion Congress and Exposition,2013年,pp.4253-4257
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/12
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網に接続された充電装置向けに電流目標値を生成するための方法であって、
- 少なくとも1つの電圧を測定するステップ(61、71)と、
- 少なくとも1つの測定電圧(V
mes)と前記電力網の電気角周波数(ω
G)の値とに基づき、少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧(V
ftr)が計算される、フィルタ処理するステップ(62、72)と、
- 前記少なくとも1つの測定電圧と前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧(V
ftr)とに基づき、前記少なくとも1つの測定電圧の周波数(f
G)および振幅(V
G)を推定するステップ(63、73)と、
- 前記少なくとも1つの測定電圧(V
mes)と前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧(V
ftr)とに基づき、統合電圧(V
cs)を計算することを含む統合ステップ(64、74)であって、低電圧の前記少なくとも1つの測定電圧に近く、ゼロから離れるように移動する間に前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧に近い統合電圧を、前記計算が提供する、統合ステップ(64、74)と、
- 前記統合電圧(V
cs)と推定振幅(V
G)とに基づき、電流目標値(i
req)を生成するステップ(65、75)と
を含む方法。
【請求項2】
前記方法が、数回連続して実行され、前記フィルタ処理するステップ(62、72)の前記電気角周波数(ω
G)の値が、前回の実行において推定された周波数(f
G)に基づき判定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記測定するステップ(61)が、三相電力網の相電圧(v
a
mes、v
b
mes、v
c
mes)を測定することと、二相基準フレーム(α、β)において
測定した前記
相電圧(v
a
mes、v
b
mes、v
c
mes)を計算するステップ(611)とを含むことを特徴とする、三相充電装置向けの請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- 前記フィルタ処理済み電圧の順方向成分
を抽出するステップ(621)を含み、
前記推定するステップ(63)が、抽出された前記順方向成分
にさらに基づく
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記統合ステップ(64、74)が、振幅閾値の値(Vth、Vth_max、Vth_min)にさらに基づくことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法を実行するために、電力網に接続された充電装置を制御するための装置であって、
- 少なくとも1つの電圧を測定するための手段と、
- 前記電力網の電気角周波数(ω
G)の値に基づき、少なくとも1つの測定電圧(V
mes)をフィルタ処理するための手段と、
- 前記少なくとも1つの測定電圧と少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧(V
ftr)とに基づき、前記少なくとも1つの測定電圧の周波数(f
G)および振幅(V
G)を推定するための手段と、
- 前記少なくとも1つの測定電圧(V
mes)と前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧(V
ftr)とに基づき、前記少なくとも1つの測定電圧を統合するための手段であって、前記少なくとも1つの低電圧の測定電圧に近く、ゼロから離れるように移動する間に前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧に近い統合電圧を提供することができる、前記少なくとも1つの測定電圧を統合するための手段と、
- 前記統合電圧(V
cs)と推定された振幅(V
G)とに基づき、電流目標値(i
req)を生成するための手段(65、75)と
を含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
蓄電池のバッテリを再充電するための、電力網に接続されるように構成されているアセンブリ(10)であって、力率補正回路(20)と、DC/DC変換器(12)と、蓄電池のバッテリと、請求項6に記載の制御装置とを有する再充電アセンブリ(10)。
【請求項8】
前記力率補正回路がVienna整流器を備えることを特徴とする、請求項7に記載の再充電アセンブリ(10)。
【請求項9】
三相または単相の電力網に接続されることを特徴とする、請求項7または8に記載の再充電アセンブリ(10)。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか一項に記載の再充電アセンブリを備える自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁AC/DC(AC電流からDC電流への)変換器を備える単相入力または三相入力の充電装置用の整流器を制御するための方法に関する。このような充電装置は、電気自動車またはハイブリッド自動車の車載装置として使用するのに特に好適である。
【背景技術】
【0002】
これらの車両には、高電圧バッテリが搭載されており、一般に車載充電器、すなわち車両に直接取り付けられた電気バッテリ充電装置を備える。これらの充電装置の主な機能は、送電網から利用可能な電力によりバッテリを再充電するという機能である。したがって、これらの充電装置は、AC電流をDC電流に変換する。充電装置、より具体的には車載充電器に求められる基準は、高効率、小型化、ガルバニック絶縁、良好な信頼性、動作上の安全性、電磁妨害の低放出、および入力電流における低い高調波レベルである。
【0003】
本発明の目的は、単相および三相の充電装置に適用される。例示として、
図1は、三相電力網30から車両の高電圧バッテリを再充電するための、電気車両またはハイブリッド車両に搭載された絶縁充電装置10の知られているトポロジを示しており、車載充電装置10が、電力網の回線インピーダンス40によって三相電力網30に接続されている。このようなトポロジは、単相充電装置に適合されてもよい。
【0004】
ガルバニック絶縁を有するAC/DC変換機能を実行するために、充電装置10を使用することが知られており、この充電装置10は、入力電流の高調波を制限するための力率補正(PFC)回路20を有する第1のAC/DC変換器と、充電を制御し、安全な使用のための絶縁機能を提供することを目的とした第2のDC/DC変換器(DC電流からDC電流)12とを備えている。従来、入力フィルタ13は、三相電力網30に対してPFC回路20の上流にある車載充電装置10の入力部において一体化されている。
【0005】
PFC回路20は、統括コントローラ(図示せず)によって制御され、この統括コントローラは、電圧に対する電流の傾向をリアルタイムに分析および補正する。これにより、統括コントローラは、電圧の整流された正弦波との比較によって形状誤差を推論し、これらの形状誤差を、高周波チョッピングによりエネルギー量を制御し、エネルギーをインダクタに蓄積することによって補正する。より正確には、統括コントローラの役割は、位相オフセットのない、充電器の電力供給の入力部において可能な限り正弦波である電流を実現することである。
【0006】
PFC回路20については、特に、先行技術文献CN104811061から、3つのスイッチを有する3レベル三相整流器を使用することが知られており、この整流器は、先行技術文献EP94120245および
図2に記載するように、三相Vienna整流器という名前で一般に知られている。
【0007】
このトポロジを選択することは、特に具体的に、力率補正の性能の観点から有利である。
【0008】
三相Vienna整流器20では、三相AC入力電圧30の各相が、それぞれのインダクタLa、Lb、Lcにより整流器20のスイッチングアーム1、2、3に接続され、このスイッチングアームに電力スイッチのセルSa、Sb、Scがそれぞれ設けられている。
【0009】
電力スイッチのセルSa、Sb、Scはそれぞれ、それぞれのインダクタLa、Lb、Lcと、整流器20の2つの出力電圧VDCHおよびVDCLの間の中心タップ0との間に位置付けられ、これらの出力電圧はそれぞれ、中心タップ0と正の電力供給線Hとの間に接続された第1の出力キャパシタC1の電圧、および中心タップ0と負の電力供給線Lとの間に接続された第2の出力キャパシタC2の電圧に対応している。
【0010】
一般に、このようなVienna整流器20を制御するために、各スイッチSa、Sb、Scの入力部と整流器の出力部における電圧および電流が測定され、スイッチSa、Sb、Scの平均オン時間を制御するために必要なデューティサイクルを生成するために、制御ループが使用される。
【0011】
しかし、このタイプの構造に関する1つの問題は、測定電圧が高調波または不平衡による影響を受けるとき、電流目標値の最適な生成を確保することができず、有効電力目標値の生成が不確実になることである。
【0012】
測定電圧の不平衡に関する問題は、特に文献CN103187887Bから知られており、この文献は、正弦波目標値を使用したVienna整流器用コントローラを記載しているが、これらの問題に対するいかなる解決策も開示していない。
【0013】
文献US8971068B2は、AC電流の入力電圧と、単方向整流器の位相電流の入力電圧との位相差の絶対値に関する所定の閾値に準拠するため、またはそれに近づけるために、高電圧三相単方向整流器から生じる様々な高調波を抑制するための手段を記載している。しかし、この文献US8971068B2は、特定の瞬間的な有効電力目標値を提供できるいかなる可能性も記載していない。
【0014】
同様に、他の知られている文献、たとえばCN104811061A、CN103227575A、およびKR101250454B1は、無効電力補償を有する整流器を記載しているが、電流目標値を開示していない。
【0015】
文献EP2461469A3は、回転基準フレームにおけるDC電流目標値を生成できるシステムを提案している。しかし、このシステムは、出力信号を生成するための整流器を制御するために、回転基準フレームの位相などの付加的な変数を使用するという欠点がある。
【発明の概要】
【0016】
したがって、本発明は、電力網に干渉する不平衡または高調波を克服するのに十分信頼できるやり方で、三相または単相の電力網の電圧から有効電力目標値を提供するための電流目標値を生成することを目的とする。
【0017】
文献FR3056851が特に知られており、この文献は、三相電力網の電圧から有効電力目標値を提供するための、フィルタ処理済み電流目標値を生成する方法を開示し、電力網の不平衡の克服を目的としている。
【0018】
しかし、このような解決策は、単相充電器には適用することができない。さらに、このような解決策は、電圧のゼロ交差において不十分な挙動を呈し、電力網電圧の周波数および振幅を推定することができず、それによりコントローラの電力および性能が比較的不正確なままになる。
【0019】
したがって、上に概説した先行技術の問題を解決するために、電流目標値を生成するための方法が必要とされている。
【0020】
電力網に接続された充電装置向けに電流目標値を生成するための方法であって、
- 少なくとも1つの電圧を測定するステップと、
- 前記少なくとも1つの測定電圧と電力網の電気角周波数の値とに基づき、少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧が計算される、フィルタ処理するステップと、
- 前記少なくとも1つの測定電圧と前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧とに基づき、前記少なくとも1つの測定電圧の周波数および振幅を推定するステップと、
- 前記少なくとも1つの測定電圧と前記フィルタ処理済み電圧とに基づき、統合電圧が計算される、統合ステップと、
- 前記統合電圧と推定振幅とに基づき、電流目標値を生成するステップとを含む方法が、提案される。
【0021】
したがって、三相電力網または単相電力網の両方に、より全般的には任意のN相の電力網に適合でき、さらに、電力網の不平衡および高調波の存在にもかかわらず、比較的迅速で信頼できるやり方で、比較的正確な制御を確保することができるVienna整流器向けの電流制御を実現することが可能になる。
【0022】
この方法はさらに、電圧のゼロ交差中に、比較的最適な挙動を有する制御を実現可能にする。
【0023】
有利には、限定することなく、この方法は、数回連続して実行され、フィルタ処理するステップの電気角周波数の前記値が、前回の実行において推定された周波数に基づき判定される。したがって、前の推定周波数の測定によって、比較的効率的に電気角周波数を判定することが可能である。
【0024】
有利には、限定することなく、測定するステップは、三相電力網の相電圧を測定することと、二相基準フレームにおいて測定電圧を計算するステップとを含む。したがって、複雑性および必要な計算時間を単純にすることが比較的に容易に可能である。たとえば、二相基準フレームにおけるこの計算は、クラーク変換またはコンコルディア変換を含むことができる。
【0025】
有利には、限定することなく、この方法は、
- フィルタ処理済み電圧の順方向成分を抽出するステップを含み、
前記推定するステップは、前記抽出された順方向成分にさらに基づく。したがって、電流制御をより一層有効かつ正確にすることが可能である。
【0026】
有利には、限定することなく、統合ステップは、振幅閾値の値にさらに基づく。したがって、潜在的に不正確または不要な値が生じないように、統合値を限定することが可能である。
【0027】
また、本発明は、上に記載の方法を実行するために電力網に接続された充電装置を制御するための装置であって、
- 少なくとも1つの電圧を測定するための手段と、
- 電力網の電気角周波数の値に基づき、前記少なくとも1つの測定電圧をフィルタ処理するための手段と、
- 前記少なくとも1つの測定電圧と前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧とに基づき、前記少なくとも1つの測定電圧の周波数および振幅を推定するための手段と、
- 前記少なくとも1つの測定電圧と前記少なくとも1つのフィルタ処理済み電圧とに基づき、前記少なくとも1つの測定電圧を統合するための手段と、
- 前記統合電圧と推定振幅とに基づき、電流目標値を生成するための手段とを含む装置に関する。
【0028】
また、本発明は、蓄電池のバッテリを再充電するための、電力網に接続されることになっているアセンブリであって、力率補正回路と、DC/DC変換器と、蓄電池のバッテリと、本発明による制御装置とを有するアセンブリに関する。
【0029】
有利には、限定することなく、力率補正回路はVienna整流器を備える。
【0030】
有利には、限定することなく、再充電アセンブリは、三相または単相の電力網に接続される。
【0031】
また、本発明は、上に記載の再充電アセンブリを備える自動車に関する。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、指標としてであって限定することなく示される本発明の特定の一実施形態の、以下の説明を、添付図面を参照しながら読めば明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図3に示す本発明の一実施形態による方法を実行する電圧変換器を示す図である。
【
図2】先行技術から知られている三相Vienna整流器を示す図である。
【
図3】本発明による測定電圧をフィルタ処理するステップを示す図である。
【
図4】本発明による前記測定電圧の周波数および振幅を推定するステップを示す図である。
【
図6】本発明による方法のフローチャートを示す図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態による方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図2は、本発明で使用する、先行技術から知られている三相Vienna整流器20の構造を示す。
【0035】
三相Vienna整流器2は、3つの並列なインバウンド接続を含み、それぞれの接続は、直列のインダクタコイルLa、Lb、Lcによって三相電力供給網30のうちの一相に結合され、それぞれの接続は、一対のスイッチSa、Sb、Scに接続されて、三相Vienna整流器の第1、第2、および第3のスイッチングアームを形成している。
【0036】
各対のスイッチSa、Sb、Scは、対応する入力電流ia、ib、icが正のときに駆動される第1の対応するスイッチSah、Sbh、Schと、対応する入力電流が負のときに駆動される第2の対応するスイッチSal、Sbl、Sclとから構成されるヘッドツーテール直列アセンブリを備える。言い換えれば、スイッチ分岐上で駆動される単一のスイッチを使用して電流がチョップされる。スイッチは、ダイオードと逆並列に接続されたSiC-MOS(silicon-carbide metal-oxide semiconductor(炭化ケイ素金属酸化膜半導体)の頭字語)トランジスタなど、開閉について制御される半導体構成要素によって形成される。このタイプの半導体は、非常に高いチョッピング周波数に好適である。スイッチSah、Sbh、Schはハイサイドスイッチとも呼ばれ、スイッチSal、Sbl、Sclはローサイドスイッチとも呼ばれる。
【0037】
三相Vienna整流器20は、3つの並列な分岐1、2、および3も備え、それぞれが2つのダイオードDahとDal、DbhとDbl、およびDchとDclを有し、これらが、エネルギーを単方向に伝送するため、かつ三相電力供給網30から得る電流および電圧を整流するための、ダイオード6個の三相ブリッジを形成する。
【0038】
三相Vienna整流器20の各入力は、それぞれの並列なインバウンド接続により、同じ分岐1、2、および3の2つのダイオード間にある接続点に接続されている。
【0039】
分岐1、2、および3の共通の2つの端部は、三相Vienna整流器20のそれぞれ正Hと負Lである2つの出力端子HおよびLを形成し、これらがDC/DC装置12に結合されることになっている。
【0040】
さらに各相のスイッチングアームSa、Sb、Scはそれぞれ、第1、第2、および第3の分岐の2つのダイオード間にある接続点a、b、cと、三相Vienna整流器20の出力電圧VDCHおよびVDCLの中心タップ0との間にそれぞれ接続されており、これらの出力電圧VDCHおよびVDCLはそれぞれ、三相整流器の正の出力端子Hと中心タップ0との間の出力キャパシタC1の電圧と、中心タップ0と三相整流器20の負の出力端子Lとの間の出力キャパシタC2の電圧とに対応している。
【0041】
図1に示す全体的なトポロジによれば、出力キャパシタC1、C2の電圧は、三相Vienna整流器20の出力に接続された充電装置のDC/DC変換器により、独立して従属制御される。言い換えれば、三相Vienna整流器20の出力電圧は、DC/DC変換器12によって制御される。
【0042】
充電器10の電力供給の入力に挿入された三相Vienna整流器20は、充電器の力率を補正する役割を担う。こうした役割によって、充電器によって生成された干渉電流(高調波)が、Vienna整流器20の上流にある電力網のインピーダンスに流れることを防止することが可能になる。
【0043】
三相電力網30の各相のスイッチングアームSa、Sb、およびScは、6つのPWM(pulse width modulation(パルス幅変調)の短縮)制御信号によって制御され、これらの制御信号は、140kHzに等しい固定チョッピング周波数をもつ可変デューティサイクルを有し、高いサンプリング周波数のために、たとえばFPGA処理手段(図示せず)によって個々に制御される。
【0044】
したがって、この処理手段は、整流器の入力部において正弦電流を従属制御するために必要な、整流器のスイッチングアームのスイッチの切替えを制御するための信号のデューティサイクルを決定するのに好適である。
【0045】
処理手段は、前記Vienna整流器を制御するのに好適な制御方法を実行する。
【0046】
本発明による制御方法は、電力網の相電圧を測定するステップ61と、測定電圧をフィルタ処理するステップ62と、電力網の電流の周波数fGおよび振幅VGを推定するステップ63と、測定電圧を統合するステップ64と、電流目標値を生成するステップ65とを含む。
【0047】
三相充電装置を備える本発明の第1の実施形態では、各電気層の相電圧va
mes、vb
mes、vc
mesが測定される。
【0048】
次いで測定電圧をフィルタ処理するステップ62が実行される。
【0049】
フィルタ処理の目的は、ノイズの多い信号の周波数成分を抽出することである。
図3に示すフィルタが、クラーク領域に変換された測定電圧成分、電力網電圧の電気角周波数ωG(2Πf
Gに対応し、ここでf
Gは、電力網電圧の周波数である)に基づき、この実施形態において実装され、
図3において提案された論理レイアウトによる、調節ゲインK1、2つの倍率器x、2つの積分器1/s、および2つの加算器を備える。
【0050】
図3によるフィルタは、実装が比較的単純で、計算の複雑性が比較的低いという利点を有する。このフィルタは、スピードとフィルタ処理精度の両方を比較的うまく兼ね備えることができる。例として、50Hzの周波数をフィルタ処理するために、このフィルタは、100ms未満の応答時間、および定常状態動作において非常に良好な精度を実現する。
【0051】
さらに、このようなフィルタは、入力信号に対して直交の信号(+90°位相オフセット)を生成可能にするので、本発明による方法、特に、
- 入力信号の周波数および振幅を推定するステップ63、
- 三相の場合に電圧の逆方向成分を推定するステップ621、および
- 単相電力網を用いて、第2の実施形態により充電器を制御するための方法
などのステップを実行するのに特に好適である。
【0052】
しかし、本発明は、このフィルタ処理のみに限定されず、任意の他の好適なフィルタ処理を使用することができる。
【0053】
このフィルタを三相電力網に適用するために、三相の相電圧va
mes、vb
mes、vc
mesが、最初に各相について測定され、または一代替形態によれば、これが相間の三相電圧の測定値から計算される。
【0054】
次に、クラーク変換(三相から二相へ)を適用することにより、電圧の成分αおよびβが計算される。
【0055】
クラーク変換により、三次元(たとえば、相電圧Va、Vb、Vc)の測定電圧に対して実行した計算を、基準フレームα、βの2次元に変換することが可能になる。したがって、この実施形態の残りの部分では、三相電力網に関して、特に測定電圧およびフィルタ処理済み電圧についての言及はいずれも、基準フレームα、βで考えられているものとして理解される。
【0056】
次いで、フィルタが各電圧成分vα、vβに適用されて、フィルタ済み電圧
および
が生成され、これらのフィルタ済み電圧から、それぞれの直交成分
および
が推論される。
【0057】
しかし、電力網が不平衡な場合、αの直交成分は、常にβに整合するとは限らない。平衡な電力網の場合には、これらの量が一致する。言い換えれば、基準フレームα、βのコヒーレンスは、測定される相同士間の平衡に依存し、これはクラーク変換のよく知られた基準である。
【0058】
したがって、主信号(順方向成分)から不平衡(逆方向成分)を分離するように直交成分を推定することが有利である。
【0059】
主信号から不平衡を分離するために、三相電圧から順方向成分および逆方向成分を抽出するステップ621が実行される。
【0060】
具体的には、不平衡な三相電圧は、以下の3成分、
- 順方向成分:元の電圧と同じシーケンスの平衡な三相電圧
- 逆方向成分:元の電圧とは反対のシーケンスの平衡な三相電圧
- 単極成分:相内に3成分を有する平衡な三相電圧(ゼロシーケンス、3つの相間で相のオフセットがない)
の合計とみなしてもよいことが知られている。
【0061】
フィルタ処理済み電圧の順方向成分の成分αβは、連立方程式
を使用して計算される。
【0062】
指数pは、順方向成分(正のシーケンス)に対応する。
【0063】
フィルタ処理済み電圧の逆方向成分の成分αβは、連立方程式
を使用して計算される。
【0064】
指数nは、これが逆方向成分(負のシーケンス)であることを示す。
【0065】
次いで、逆クラーク変換が適用されて、順方向三相電圧
と逆方向三相電圧
が計算される。
【0066】
単極成分の計算結果は、三相の相電圧の合計の1/3に相当する。
【0067】
次いで、基準フレームβにおいて測定された電圧、フィルタ処理済み電圧、およびフィルタ済み電圧に直交する電圧に基づき、周波数fGおよび振幅VGを推定するステップ63が実行される。
【0068】
【0069】
【0070】
位相同期ループ(PLL)を使用する従来の構造よりも有利なことは、計算の複雑性が低いことである。
【0071】
次いで、当該の相の測定電圧v
abc
mesおよびフィルタ処理済み電圧v
abcp
ftrに基づき、
図5に示すように測定電圧から統合された電圧v
abc
csを計算することを含む統合ステップ64が実行される。
【0072】
この目的は、低電圧の測定電圧v
abc
mesに近い統合電圧v
abc
csを提供することであり、これにより、電圧のゼロ交差における最適な挙動が確保され、ゼロからさらに離れるように移動する間にフィルタ処理済み電圧に近くなる。これは式
v
abc
cs=αv
abcp
ftr+(1-α)v
abc
mes
によって得られ、
ここで
であり、Vthは、測定電圧の振幅の閾値である。Vth_maxは最大閾値であり、これを上回る値は、フィルタ済み電圧V
abc
ftrしか取らない。Vth_minは最小閾値であり、これを下回る値は、測定電圧V
abc
mesしか取らない。これらの閾値は、実装される充電装置に基づき、当業者によって調節および適合されてもよい。
【0073】
これらの閾値間で、フィルタ処理済み電圧と測定電圧の線形結合が実行されて、滑らかな挙動が得られるように信号の連続性が確保される。
【0074】
この統合は、(測定されたか、測定済み相間電圧から計算された)生の三相の相電圧
および
の各相と、フィルタ処理済み電圧から計算された相電圧(順方向成分)における対応するそれぞれの相
および
との間で実行される。
【0075】
次いで、電流目標値を生成するステップ65が実行される。
【0076】
電流制御について、各相の電流目標値i
abc
reqは、以下の式
を使用して計算され、ここでI
Gは、電力P
req(当該の相により伝送されるべき電力)と、(推定)電力網電圧V
Gの振幅から計算された充電電流のピーク値であり、値
において飽和する。
【0077】
電力目標値に、さらにレートリミッタが適用される。
【0078】
単相充電装置向けの本発明の第2の実施形態によれば、
図7による方法は、最初に、単相電圧V
mesを測定するステップ71を含む。
【0079】
次に、
図3により第1の実施形態について説明したフィルタ処理を使用して、フィルタ処理ステップ72が実行され、このステップでは、測定された単相電圧V
mesが直接適用される。
【0080】
図4を参照すると、次いで、測定電圧V
mesおよびフィルタ処理済み電圧V
ftrに基づき、電力網電圧の周波数および振幅が判定される73。
【0081】
周波数f
Gを計算するために、以下の式
が適用され、ここでk
2は、周波数の動的推定範囲の調節ゲインであり、動的範囲は、ゲインk
2に比例して変化する。
【0082】
信号ωGの角周波数は、
ωG=2πfG
に対応する。
【0083】
さらに、電圧の基本成分の電圧V
Gは、
によって計算される。
【0084】
図4は、これらの計算の論理図であり、1/sが積分器であり、周波数を計算するためにk2が積分器の外側にあり、1/2Πも積分器の外側にあり、k2の入力における信号が、測定電圧V
mesとフィルタ処理済み電圧V
ftrの2つの信号の逓倍に相当する。
【0085】
次に、充電電流目標値を統合するステップ74および計算するステップ75が、第1の実施形態と同様に実行されるが、計算は、単相電力網の単相についてのみ実行される。
【0086】
言い換えれば、単相の形態では、統合は、測定電圧Vmesとフィルタ処理済み電圧Vftrとの間で実行される。
【0087】
以下に記載する第1および第2の実施形態にも適用することができる本発明による方法の代替的な一実装形態によれば、測定電圧の高調波を推定するステップが実行される。
【0088】
したがって、この代替形態によれば、所与のランクの特定の高調波を抽出するために、実装されるフィルタの数が増やされる。
【0089】
これは、実装される
図3によるフィルタの数をn倍にすることによって可能になり、nは、推定/抽出されるべき高調波の数である。次いで、各フィルタxに生の測定電圧v
mesが供給され、角周波数ωに、推定/抽出されるべき高調波のランクhが乗算され(次数hの高調波を抽出するためのh×ω)、使用される他のフィルタの出力が、この電圧から減算される。言い換えれば、フィルタxの入力は
に相当し、ここでi=1は、基本成分(多くの場合50Hzまたは60Hz)に相当し、
は、次数iのフィルタの出力であり(iは、当該のフィルタxを除く他のフィルタ全てを網羅する)、
図3によるフィルタの出力に相当し、ω
Gはi×ω
Gで置換され、(iを除く)すべての高調波について実行された計算の結果を入力v
mesから減算することによる。
【0090】
言い換えれば、この代替的な実施形態では、1つのフィルタが基本成分について使用され、hの同様のフィルタが並列で使用される。これらのフィルタについて、角周波数ω
Gに高調波ランクhが乗算される。したがって、各フィルタの入力
は、測定電圧v
mesから、他のフィルタの前の計算ステップから得た結果
を減算したものに等しい。たとえば、高調波xのフィルタについて、前のステップで計算された出力
が、測定電圧v
mesから減算され、iが、高調波xを除く、すなわちそのフィルタ自体の出力を除くすべての高調波を網羅し、i=1、i≠x、最大でi=h+1である。
【0091】
この場合、各フィルタの出力は、ランクhの高調波の推定に相当し、基本成分の推定がより正確になる。この代替的な実施形態は、単相の形態でも三相の形態でも、記載した実施形態の他のステップを変更することはない。