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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】ハードディスク用基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/84 20060101AFI20231020BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20231020BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20231020BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
G11B5/84 A
G11B5/84 C
B24B37/08
B24B49/12
B24B1/00 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020572331
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005748
(87)【国際公開番号】W WO2020166694
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2019026110
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 純一
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-051026(JP,A)
【文献】国際公開第2014/049947(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/103984(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/84
B24B 37/08
B24B 49/12
B24B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードディスク用基板を研磨する研磨工程と、
該研磨工程後の前記ハードディスク用基板の研磨平坦度を測定する研磨平坦度測定工程と、
該研磨平坦度測定工程で所定枚数の前記ハードディスク用基板について測定した測定結果から前記所定枚数の前記ハードディスク用基板の研磨平坦度の傾向を算出し、該研磨平坦度の傾向が第1Aの基準を満たすか否かを判定する研磨平坦度判定工程と、
該研磨平坦度判定工程で前記研磨平坦度の傾向が前記第1Aの基準を満たさないことを条件として、前記研磨平坦度の傾向が第1Cの基準を満たすか否かを判定し、該判定結果に基づいて研磨条件の変更または研磨パッドの交換を行う研磨調整工程と、
を含むことを特徴とするハードディスク用基板の製造方法。
【請求項2】
前記研磨調整工程では、前記研磨平坦度の傾向が前記第1Cの基準を満たすことを条件として、研磨パッドの交換を行い、前記研磨平坦度の傾向が前記第1Cの基準を満たさないことを条件として、研磨条件の変更を行うことを特徴とする請求項1に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項3】
前記研磨調整工程では、前記研磨平坦度の傾向が前回の前記研磨条件の変更時における前記研磨平坦度の傾向と一致する場合に前記第1Cの基準を満たすと判定することを特徴とする請求項1に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項4】
前記研磨調整工程では、前記研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、前記プラス側または前記マイナス側の両側に前記所定の閾値を超えて振れている状態かを、前記研磨平坦度の傾向として前記第1Cの基準による判定に用いることを特徴とする請求項1に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項5】
前記研磨平坦度判定工程では、前記ハードディスク用基板の研磨平坦度の傾向が予め設定された所定の閾値以下である場合に、前記第1Aの基準を満たすと判定することを特徴とする請求項1に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項6】
前記研磨調整工程では、第1Bの基準を満たすか否かを判定し、前記第1Bの基準を満たさないときは研磨条件の変更を行い、前記第1Bの基準を満たすことを条件として前記第1Cの基準を満たすか否かの判定を行うことを特徴とする請求項1に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項7】
前記研磨調整工程では、研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、前記第1Bの基準を満たすと判定することを特徴とする請求項6に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項8】
前記研磨平坦度測定工程では、前記ハードディスク用基板の表面および裏面に対する垂線が重力方向に対して略垂直になるように前記ハードディスク用基板を保持して、前記研磨平坦度を測定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項9】
ハードディスク用基板を粗研磨する粗研磨工程と、
該粗研磨工程後の前記ハードディスク用基板の粗研磨平坦度を測定する粗研磨平坦度測定工程と、
該粗研磨工程後の前記ハードディスク用基板を仕上げ研磨する仕上げ研磨工程と、
該仕上げ研磨工程後の前記ハードディスク用基板の仕上げ研磨平坦度を測定する仕上げ研磨平坦度測定工程と、
該仕上げ研磨平坦度測定工程で測定した所定枚数の前記ハードディスク用基板の測定結果から仕上げ研磨平坦度の傾向を算出し、該仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Aの基準を満たすか否かを判定する仕上げ研磨平坦度判定工程と、
該仕上げ研磨平坦度判定工程で前記仕上げ研磨平坦度の傾向が前記第3Aの基準を満たさないことを条件として、前記粗研磨平坦度測定工程で測定した所定枚数の前記ハードディスク用基板の測定結果から粗研磨平坦度の傾向を算出し、該粗研磨平坦度の傾向と前記仕上げ研磨平坦度の傾向とを比較し、前記粗研磨平坦度の傾向が前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致しているか否かに応じて粗研磨条件の変更または粗研磨パッドの交換を行う粗研磨調整と、仕上げ研磨条件の変更または仕上げ研磨パッドの交換を行う仕上げ研磨調整とのいずれか一方を行う研磨調整工程と、
を含むことを特徴とするハードディスク用基板の製造方法。
【請求項10】
前記研磨調整工程では、前記粗研磨平坦度の傾向が前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致していることを条件として前記粗研磨調整行い、前記粗研磨平坦度の傾向が前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致していないことを条件として前記仕上げ研磨調整行うことを特徴とする請求項9に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項11】
前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、前記仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Cの基準を満たすことを条件として、前記粗研磨パッドの交換を行い、前記仕上げ研磨平坦度の傾向が前記第3Cの基準を満たさないことを条件として、前記粗研磨条件の変更を行うことを特徴とする請求項10に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項12】
前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、前記仕上げ研磨平坦度の傾向が前回の前記粗研磨条件の変更時における前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致する場合に前記第3Cの基準を満たすと判定することを特徴とする請求項11に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項13】
前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、前記仕上げ研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、前記プラス側または前記マイナス側の両側に前記所定の閾値を超えて振れている状態の場合に、前記研磨平坦度の傾向が前記第3Cの基準を満たさないと判定することを特徴とする請求項12に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項14】
前記仕上げ研磨平坦度判定工程では、前記ハードディスク用基板の仕上げ研磨平坦度の傾向が予め設定された所定の閾値以下である場合に、前記第3Aの基準を満たすと判定することを特徴とする請求項9に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項15】
前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、第3Bの基準を満たすか否かを判定し、前記第3Bの基準を満たすことを条件として前記第3Cの基準を満たすか否かを判定し、前記第3Bの基準を満たすか否かを判定した結果と、前記第3Cの基準を満たすか否かを判定した結果とに基づいて前記粗研磨条件の変更または前記粗研磨パッドの交換を行うことを特徴とする請求項11に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項16】
前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、粗研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、前記第3Bの基準を満たすと判定することを特徴とする請求項15に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【請求項17】
前記粗研磨平坦度測定工程および前記仕上げ研磨平坦度測定工程では、前記ハードディスク用基板の平面から前記ハードディスク用基板の表面までの距離または干渉縞本数または研磨量を測定し、測定した前記ハードディスク用基板の平面から前記ハードディスク用基板の表面までの距離または干渉縞本数または研磨量に基づいて前記粗研磨平坦度および仕上げ研磨平坦度を算出することを特徴とする請求項9に記載のハードディスク用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨工程および平坦度測定工程を有するハードディスク用基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のハードディスク用基板の製造方法として、ハードディスク用基板の表面および裏面の被膜層を研磨パッドで研磨する研磨装置と、研磨前後の表面および裏面の被膜層の各厚みを測定する測定装置と、研磨装置の回転速度を制御する制御装置とを有し、制御装置が測定された表面および裏面の被膜層の研磨前後の各厚みの差から各研磨量を演算し、表面および裏面の被膜層の各研磨量に応じて研磨装置の回転速度を制御するものが開示されている(特許文献1参照)。測定装置は、1バッチの50枚目か、1枚~49枚目の内の何れか1枚のハードディスク用基板か、または複数枚のハードディスク用基板を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-207610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のハードディスク用基板の製造方法は、測定装置が、1バッチの内の1枚か、複数枚のハードディスク用基板の表面および裏面の各被膜層の厚みを測定しており、いわゆる抜き取り方法で測定を行っている。このような抜き取り方法では、研磨パッドの使用による経時的な摩耗に追従することができず、研磨パッドが適正な状態から外れた状態で使用が継続されてしまい、許容される平坦度の範囲を逸脱し不良のハードディスク用基板を大量に発生させてしまうという問題がある。
【0005】
図13は、研磨工程後のハードディスク用基板10の断面を模式的に示す図である。ハードディスク用基板10は、薄板のブランク円盤11の表面にめっき層12が形成された構成を有している。図13(a)に示すハードディスク用基板10のめっき層12は、TOP面10aのめっき厚taと、BOT面10bのめっき厚tbがほぼ同じであり(ta=tb)、図13(b)に示すハードディスク用基板10のめっき層12は、TOP面10aのめっき厚taの方が、BOT面10bのめっき厚tbよりも厚く(ta>tb)なっている。
【0006】
平坦度(μm)は、研磨パッドで研磨した結果、図13(a)に示すように、TOP面10aのめっき厚taとBOT面10bのめっき厚tbが、両面とも同じ厚みであれば良好であるが、図13(b)に示すように、TOP面10aのめっき厚taよりもBOT面10bのめっき厚tbの方が薄いと、めっき厚の薄いBOT面10bに圧縮応力が作用し、めっき厚の厚いTOP面10aの方向に凸状に反ってしまい、平坦度が悪化してしまう。
【0007】
図14は、TOP面とBOT面との研磨量差と平坦度を示す相対値との関係を示すグラフである。ハードディスク用基板10のめっき厚は、図14の縦軸に示す相対値から、横軸に示す研磨量差を推定することができ、TOP面10aとBOT面10bとのめっき厚の差を推定することができる。図14に示すように、ハードディスク用基板10の厚みが、例えば0.8mmや、0.635mmのように、薄くなればなるほど、1.27mm以上の厚いものよりも平坦度の悪化が顕著になる。
【0008】
また、特許文献1に記載のハードディスク用基板の製造方法は、測定装置により測定された研磨量差が許容範囲外であるときに、制御装置により研磨装置の回転速度が制御され、研磨量の調整が行われるだけで、研磨パッドの交換は行われていない。研磨パッドは、使用により時間とともに摩耗が進み、ハードディスク用基板の平坦度も経時とともに悪化し、交換が必要となる。研磨パッドが適切な状態から外れて交換が必要な状態で使用が継続されてしまうと、許容される平坦度の範囲を逸脱し不良のハードディスク用基板を大量に発生させてしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、ハードディスク用基板の平坦度を測定し、測定された平坦度に基づいて、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することで、高精度の研磨を可能とし、不良のハードディスク用基板の発生を抑制することができるハードディスク用基板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、ハードディスク用基板を研磨する研磨工程と、該研磨工程後の前記ハードディスク用基板の研磨平坦度を測定する研磨平坦度測定工程と、該研磨平坦度測定工程で所定枚数の前記ハードディスク用基板について測定した測定結果から前記所定枚数の前記ハードディスク用基板の研磨平坦度の傾向を算出し、該研磨平坦度の傾向が第1Aの基準を満たすか否かを判定する研磨平坦度判定工程と、該研磨平坦度判定工程で前記研磨平坦度の傾向が前記第1Aの基準を満たさないことを条件として、前記研磨平坦度の傾向が第1Cの基準を満たすか否かを判定し、該判定結果に基づいて研磨条件の変更または研磨パッドの交換を行う研磨調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
(2)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(1)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程では、前記研磨平坦度の傾向が前記第1Cの基準を満たすことを条件として、研磨パッドの交換を行い、前記研磨平坦度の傾向が前記第1Cの基準を満たさないことを条件として、研磨条件の変更を行うことを特徴とする。
【0012】
(3)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(1)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程では、前記研磨平坦度の傾向が前回の前記研磨条件の変更時における前記研磨平坦度の傾向と一致する場合に前記第1Cの基準を満たすと判定することを特徴とする。
【0013】
(4)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(1)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程では、前記研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、前記プラス側または前記マイナス側の両側に前記所定の閾値を超えて振れている状態かを、前記研磨平坦度の傾向として前記第1Cの基準による判定に用いることを特徴とする。
【0014】
(5)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(1)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨平坦度判定工程では、前記ハードディスク用基板の研磨平坦度の傾向が予め設定された所定の閾値以下である場合に、前記第1Aの基準を満たすと判定することを特徴とする。
【0015】
(6)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(1)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程では、第1Bの基準を満たすか否かを判定し、第1Bの基準を満たさないときは研磨条件の変更を行い、前記第1Bの基準を満たすことを条件として前記第1Cの基準を満たすか否かの判定を行うことを特徴とする。
【0016】
(7)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(6)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程では、粗研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、前記第1Bの基準を満たすと判定することを特徴とする。
【0017】
(8)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(1)または(2)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨平坦度測定工程では、前記ハードディスク用基板の表面および裏面に対する垂線が重力方向に対して略垂直になるように前記ハードディスク用基板を保持して、前記平坦度を測定することを特徴とする。
【0018】
(9)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、ハードディスク用基板を粗研磨する粗研磨工程と、該粗研磨工程後の前記ハードディスク用基板の粗研磨平坦度を測定する粗研磨平坦度測定工程と、該粗研磨工程後の前記ハードディスク用基板を仕上げ研磨する仕上げ研磨工程と、該仕上げ研磨工程後の前記ハードディスク用基板の仕上げ研磨平坦度を測定する仕上げ研磨平坦度測定工程と、該仕上げ研磨平坦度測定工程で測定した所定枚数の前記ハードディスク用基板の測定結果から仕上げ研磨平坦度の傾向を算出し、該仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Aの基準を満たすか否かを判定する仕上げ研磨平坦度判定工程と、該仕上げ研磨平坦度判定工程で前記第3Aの基準を満たさないことを条件として、前記粗研磨平坦度測定工程で測定した所定枚数の前記ハードディスク用基板の測定結果から粗研磨平坦度の傾向を算出し、該粗研磨平坦度の傾向と前記仕上げ研磨平坦度の傾向とを比較し、前記粗研磨平坦度の傾向が前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致しているか否かに応じて粗研磨条件の変更または粗研磨パッドの交換を行う粗研磨調整と、仕上げ研磨条件の変更または仕上げ研磨パッドの交換を行う仕上げ研磨調整とのいずれか一方を行う研磨調整工程と、を含むことを特徴とする。
【0019】
(10)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(9)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程では、前記粗研磨平坦度の傾向が前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致していることを条件として前記粗研磨調整工程を行い、前記粗研磨平坦度の傾向が前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致していないことを条件として前記仕上げ研磨調整工程を行うことを特徴とする。
【0020】
(11)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(10)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、前記仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Cの基準を満たすことを条件として、前記粗研磨パッドの交換を行い、前記仕上げ研磨平坦度の傾向が前記第3Cの基準を満たさないことを条件として、前記粗研磨条件の変更を行うことを特徴とする。
【0021】
(12)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(11)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、前記仕上げ研磨平坦度の傾向が前回の前記粗研磨条件の変更時における前記仕上げ研磨平坦度の傾向と一致する場合に前記第3Cの基準を満たすと判定することを特徴とする。
【0022】
(13)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(12)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、前記仕上げ研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、前記プラス側または前記マイナス側の両側に前記所定の閾値を超えて振れている状態の場合に、前記研磨平坦度の傾向が前記第3Cの基準を満たさないと判定することを特徴とする。
【0023】
(14)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(9)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記仕上げ研磨平坦度判定工程では、前記ハードディスク用基板の仕上げ研磨平坦度の傾向が予め設定された所定の閾値以下である場合に、前記第3Aの基準を満たすと判定することを特徴とする。
【0024】
(15)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(9)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、第3Bの基準を満たすか否かを判定し、第3Bの基準を満たすことを条件として前記第3Cの基準を満たすか否かを判定し、前記第3Bの基準を満たすか否かを判定した結果と、前記第3Cの基準を満たすか否かを判定した結果とに基づいて前記粗研磨条件の変更または前記粗研磨パッドの交換を行うことを特徴とする。
【0025】
(16)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(15)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記研磨調整工程の前記粗研磨調整では、粗研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、前記第3Bの基準を満たすと判定することを特徴とする。
【0026】
(17)本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、(9)に記載のハードディスク用基板の製造方法であって、前記粗研磨平坦度測定工程および前記仕上げ研磨平坦度測定工程では、前記ハードディスク用基板の平面から前記ハードディスク用基板の表面までの距離または干渉縞本数または研磨量を測定し、測定した前記ハードディスク用基板の平面から前記ハードディスク用基板の表面までの距離または干渉縞本数または研磨量に基づいて前記粗研磨平坦度および仕上げ研磨平坦度を算出することを特徴とする。
【0027】
上記(1)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨平坦度測定工程で測定した測定結果からハードディスク用基板の研磨平坦度の傾向が算出され、研磨平坦度の傾向が第1Aの基準を満たさないことを条件として、研磨平坦度の傾向が第1Cの基準を満たすか否かが判定される。そして、その判定結果に基づいて、研磨条件の変更または研磨パッドの交換が行われるので、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することができる。したがって、ハードディスク用基板に対して適切な研磨を行うことができる。
【0028】
上記(2)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨平坦度の傾向が第1Cの基準を満たすことを条件として、研磨パッドの交換が行われるので、研磨条件の変更では研磨平坦度の傾向を変更することができない場合に、新たな研磨パッドへの交換がなされる。また、研磨平坦度の傾向が第1Cの基準を満たさないことを条件として、研磨条件の変更が行われるので、新たな研磨パッドに交換することなく、速やかに粗研磨平坦度を改善することができる。
【0029】
上記(3)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨平坦度の傾向が前回の研磨条件の変更時における研磨平坦度の傾向と一致する場合に第1Cの基準を満たすと判定するので、研磨パッドの状態が、研磨条件の変更では研磨平坦度の傾向を変更することができない状態であり、研磨パッドの交換が必要な状態であると判断することができる。
【0030】
上記(4)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、プラス側またはマイナス側の両側に所定の閾値を超えて振れている状態かを、前記研磨平坦度の傾向として前記第1Cの基準による判定に用いるので、基準の明確化が図られ、ハードディスク用基板に対して適切な研磨を行うことができる。
【0031】
上記(5)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨平坦度判定工程では、ハードディスク用基板の研磨平坦度の傾向が予め設定された所定の閾値以下である場合に、第1Aの基準を満たすと判定するので、ハードディスク用基板の研磨平坦度の傾向が所定の閾値を超える場合にのみ研磨調整が行われる。
【0032】
上記(6)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、前記研磨調整工程では、第1Bの基準を満たすか否かを判定し、第1Bの基準を満たさないときは研磨条件の変更を行い、前記第1Bの基準を満たすことを条件として前記第1Cの基準を満たすか否かの判定を行うので、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することができる。
【0033】
上記(7)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨調整工程では、粗研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、第1Bの基準を満たすと判定するので、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することができる。
【0034】
上記(8)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、ハードディスク用基板の表面および裏面に対する垂線が重力方向に対して略垂直になるようにハードディスク用基板が保持されて、平坦度が測定されるので、ハードディスク用基板の重力による撓みの影響を少なくすることができ、より精確な状態でハードディスク用基板を測定することが可能となる。
【0035】
上記(9)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法は、粗研磨工程と、粗研磨平坦度測定工程と、仕上げ研磨工程と、仕上げ研磨平坦度測定工程と、仕上げ研磨平坦度判定工程と、研磨調整工程とを含む。仕上げ研磨平坦度判定工程では、仕上げ研磨平坦度測定工程で測定した所定枚数のハードディスク用基板の測定結果から仕上げ研磨平坦度の傾向を算出し、仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Aの基準を満たすか否かを判定する。そして、研磨調整工程では、仕上げ研磨平坦度判定工程で第3Aの基準を満たさないことを条件として、粗研磨平坦度測定工程で測定した所定枚数のハードディスク用基板の測定結果から粗研磨平坦度の傾向を算出し、粗研磨平坦度の傾向と仕上げ研磨平坦度の傾向とを比較する。そして、粗研磨平坦度の傾向が仕上げ研磨平坦度の傾向と一致しているか否かに応じて粗研磨条件の変更または粗研磨パッドの交換を行う粗研磨調整と、仕上げ研磨条件の変更または仕上げ研磨パッドの交換を行う仕上げ研磨調整とのいずれか一方を行う。
【0036】
したがって、仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Aの基準を満たしていない研磨不良の原因は粗研磨工程と仕上げ研磨工程のどちらにあるのかを突き止めて、その原因を解消するための対応を採ることができる。つまり、研磨不良が発生した場合に、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を粗研磨工程と仕上げ研磨工程の何れで行うかが決定され、その決定された工程における研磨条件の変更または研磨パッドの交換が行われる。したがって、粗研磨工程および仕上げ研磨工程において高精度の研磨が行われ、不良のハードディスク用基板の発生が抑制される。
【0037】
上記(10)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨調整工程では、粗研磨平坦度の傾向が仕上げ研磨平坦度の傾向と一致していることを条件として粗研磨調整工程を行い、粗研磨平坦度の傾向が仕上げ研磨平坦度の傾向と一致していないことを条件として仕上げ研磨調整工程を行うので、ハードディスク用基板に対して適切な研磨を行うことができる。
【0038】
上記(11)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Cの基準を満たすことを条件として、粗研磨パッドの交換を行い、仕上げ研磨平坦度の傾向が第3Cの基準を満たさないことを条件として、粗研磨条件の変更を行うので、速やかに粗研磨平坦度を改善することができる。
【0039】
上記(12)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨調整工程の粗研磨調整では、仕上げ研磨平坦度の傾向が前回の粗研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向と一致する場合に第3Cの基準を満たすと判定するので、研磨条件の変更では研磨の平坦度の傾向を変更することができない状態であり、新たな粗研磨パッドの交換が必要な状態であると判断することができ、ハードディスク用基板に対して適切な研磨を行うことができる。
【0040】
上記(13)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨調整工程の粗研磨調整では、仕上げ研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、プラス側またはマイナス側の両側に所定の閾値を超えて振れている状態の場合に、研磨平坦度の傾向が第3Cの基準を満たさないと判定するので、基準の明確化が図られ、ハードディスク用基板に対して適切な研磨を行うことができる。
【0041】
上記(14)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、仕上げ研磨平坦度判定工程では、ハードディスク用基板の仕上げ研磨平坦度の傾向が予め設定された所定の閾値以下である場合に、第3Aの基準を満たすと判定するので、基準の明確化が図られ、ハードディスク用基板に対して適切な研磨を行うことができる。
【0042】
上記(15)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨調整工程の粗研磨調整では、第3Bの基準を満たすか否かを判定し、第3Bの基準を満たすことを条件として第3Cの基準を満たすか否かを判定し、第3Bの基準を満たすか否かを判定した結果と、第3Cの基準を満たすか否かを判定した結果とに基づいて粗研磨条件の変更または粗研磨パッドの交換を行うので、第3Bの基準と第3Cの基準による判定結果に応じて研磨条件の変更と研磨パッドの交換のいずれを行うのがよいのかを判断することができる。
【0043】
上記(16)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、研磨調整工程の粗研磨調整では、粗研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、第3Bの基準を満たすと判定するので、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することができる。
【0044】
上記(17)に記載した本発明に係るハードディスク用基板の製造方法によれば、粗研磨平坦度測定工程および仕上げ研磨平坦度測定工程では、ハードディスク用基板の平面からハードディスク用基板の表面までの距離または干渉縞本数または研磨量を測定し、測定したハードディスク用基板の平面からハードディスク用基板の表面までの距離または干渉縞本数または研磨量に基づいて粗研磨平坦度および仕上げ研磨平坦度を算出するので、粗研磨平坦度および仕上げ研磨平坦度が的確に算出される。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、ハードディスク用基板の平坦度を測定し、測定された平坦度に基づいて、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することで、高精度の研磨を可能にし、不良のハードディスク用基板の発生を抑制することができるハードディスク用基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】第1実施形態に係るハードディスク用基板の製造方法により製造されるハードディスク用基板の図であり、図1(a)は、ハードディスク用基板の斜視図を示し、図1(b)は、ハードディスク用基板の断面図を示す。
図2】ハードディスク用アルミ基板の製造工程のフローチャート。
図3】第1実施形態に係るハードディスク用基板の製造工程の研磨工程を説明するフローチャート。
図4】第1実施形態のステップS25の粗研磨調整のフローチャート。
図5】第1実施形態のステップS30の仕上げ研磨調整のフローチャート。
図6】第1実施形態の平坦度の算出方法の一例を説明する図であり、図6(a)は、TOP面が凸の例を示し、図6(b)は、BOT面が凸の例を示す。
図7】第1実施形態に係るハードディスク用基板の製造方法における平坦度測定結果が良であることを示す平坦度の傾向を表すグラフであり、図7(a)は、振れが小さい例を示し、図7(b)は、振れが片寄っている例を示す。
図8】第1実施形態に係るハードディスク用基板の製造方法における平坦度測定結果が不良であることを示す平坦度の傾向を表すグラフであり、図8(a)は、片寄っている振れが大きい例を示し、図8(b)は、両側に大きく振れている例を示し、図8(c)も、両側に大きく振れている例を示す。
図9】第1実施形態に係るハードディスク用基板の製造方法における平坦度測定で測定した平坦度のグラフであり、図9(a)は、研磨前と研磨後での平坦度が良好な場合の推移の一例を示し、図9(b)は、研磨前と研磨後での平坦度不良が発生した場合の推移の一例を示す。
図10】第2実施形態に係るハードディスク用基板の製造工程の研磨工程を説明するフローチャート。
図11】第2実施形態のステップS60の粗研磨調整のフローチャート。
図12】第2実施形態のステップS61の仕上げ研磨調整のフローチャート。
図13】従来のハードディスク用基板の製造方法により製造されたハードディスク用基板の断面図であり、図13(a)は、ta=tbの状態を示し、図13(b)は、ta>tbの状態を示す。
図14】従来のハードディスク用基板の製造方法における研磨量差と平坦度の関係を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明に係るハードディスク用基板の製造方法を適用した第1実施形態と第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法について図面を参照して説明する。
【0048】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法により作製されるハードディスク用基板10について説明する。ハードディスク用基板10は、図1(a)、図1(b)に示すように、厚みがT、外径がD、中心の貫通孔hの内径がdの円盤で構成されている。
【0049】
ハードディスク用基板10の厚みTは0.5mm~2mm程度、外径Dは、30mm~270mm程度、内径dは、10mm~70mm程度の寸法を有している。具体的には、厚みTが、1.75mm、1.6mm、1.27mm、1.0mm、0.8mm、0.635mm、0.6mm、0.54mm、0.5mmの内から選択される。
【0050】
ハードディスク用基板10は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の板材からなるブランク円盤11と、そのブランク円盤11の表面にめっきされためっき層12を有している(図6を参照)。ハードディスク用基板10は、高い精度の平滑性と表面硬度を有しており、高速回転による振動の発生を抑制することができる高い剛性および耐衝撃性も有している。これらの特性を備えるためにハードディスク用基板10は硬い素材で形成されている。
【0051】
次いで、第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、公知の各工程については簡単に説明し、本実施形態に係るハードディスク用基板の製造方法の要部について詳細に説明する。
【0052】
第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法は、図2に示すように、アルミブランク(ステップS1)、旋盤(ステップS2)、焼鈍(ステップS3)、グラインダー(研削)(ステップS4)、焼鈍(ステップS5)、無電解ニッケル-りんめっき(Ni-P)(ステップS6)、焼鈍(ステップS7)、Aステップ、表面検査(ステップS8)、出荷(ステップS9)の各工程が含まれる。各工程は順に行われる。
【0053】
図2のAステップは、図3に示すように、粗研磨(ステップS21)、洗浄(ステップS22)、粗研磨平坦度測定(ステップS23)、粗研磨平坦度判定(ステップS24)、粗研磨調整(ステップS25)、仕上げ研磨(ステップS26)、洗浄(ステップS27)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)、仕上げ研磨調整(ステップS30)の各工程が含まれる。第1実施形態では、図3に示す工程を一例として示しているが、記載以外の工程があってもよい。
【0054】
第1実施形態のAステップでは、粗研磨平坦度判定(ステップS24)の後と、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)の後でそれぞれ、粗研磨調整(ステップS25)と仕上げ研磨調整(ステップS30)を行うようにした。
【0055】
なお、第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法における粗研磨(ステップS21)、粗研磨平坦度測定(ステップS23)、粗研磨平坦度判定(ステップS24)、粗研磨調整(ステップS25)、仕上げ研磨(ステップS26)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)、仕上げ研磨調整(ステップS30)は、それぞれ本発明の請求項1に係るハードディスク用基板の製造方法における研磨工程、研磨平坦度測定工程、研磨平坦度判定工程、研磨調整工程に対応する。
【0056】
アルミブランク(ステップS1)においては、図1(a)、図1(b)に示すように厚みがT、外径がD、中心の貫通孔hの内径がdの寸法を有するアルミニウムまたはアルミニウム合金のブランク材からなるブランク円盤11(図6参照)が作製される。例えば、外径Dのサイズが3.5inch、厚みTが0.8mm、内径dが25mmのハードディスク用基板10と同形状のブランク円盤11が作製される。
【0057】
旋盤(ステップS2)においては、ブランク円盤11の外径Dの外周面の角部および内径dの内周面の角部が、旋盤により所定の形状に加工され、いわゆるチャンファー形状の調整が行われる。
【0058】
焼鈍(ステップS3)においては、旋盤加工により生じたブランク円盤11の内部の残留応力が熱処理により緩和または除去される。熱処理は、ブランク円盤11が所定の温度に加熱された後、緩やかに冷却されることで行われる。グラインダー(研削)(ステップS4)においては、ブランク円盤11の表面および裏面が粗研削された後に仕上げ研削が行われ、ブランク円盤11の厚みTおよび表面と裏面の表面粗さRaの調整が行われる。焼鈍(ステップS5)においては、グラインダー(研削)により生じた研削表面の残留応力が熱処理により緩和または除去される。
【0059】
無電解ニッケル-りんめっき(Ni-P)(ステップS6)においては、ブランク円盤11の前処理として下地の表面処理が行われ、表面処理の後に無電解ニッケル-りんめっき(Ni-P)によるめっき処理が行われ、ブランク円盤11の表面と裏面にNi-Pの被膜であるめっき層12(図6参照)が形成される。めっき処理では、ブランク円盤11の中心の貫通孔hにめっき軸が通され、複数枚のブランク円盤11がめっき軸にぶら下げ支持された状態で、めっき軸が無電解ニッケル-りんめっき(Ni-P)のめっき浴を備えためっき設備に装着される。
【0060】
めっき軸は、めっき浴に浸漬された状態で回転駆動される。複数枚のブランク円盤11は、めっき軸の回転に伴って従動回転され、ブランク円盤11に対して無電解めっきが施され、無電解めっき終了後にめっき軸とともにめっき浴から引き上げられ、めっき済みのブランク円盤11(ハードディスク用基板10)がめっき軸から外されてめっき処理が完了する。
【0061】
焼鈍(ステップS7)においては、無電解ニッケル-りんめっき(Ni-P)により生じたハードディスク用基板10の内部の残留応力が熱処理により緩和または除去されるとともに、密着性の向上が図られる。
【0062】
表面検査(ステップS8)においては、検査機によりハードディスク用基板10の表面および裏面に生じた突起や凹みなどの表面の不具合の検査が行われる。検査機として、KLA・TENCOR社製の光学表面検査機Candelaや、Zygo社製の光学式表面性状測定機や、白色光の干渉を利用して表面形状を測定する検査機であるPhase Shift Technology社製のOptiflatが挙げられる。
【0063】
表面検査(ステップS8)における表面検査は、検査機が設置されているクリーンルームが、クラス100の清浄度で維持されている状態で行われる。表面検査(ステップS8)において不良品とされたハードディスク用基板10は、不良品の処理が行われ、良品とされたハードディスク用基板10は、出荷に進む。
【0064】
出荷(ステップS9)においては、表面検査(ステップS8)で良品とされたハードディスク用基板10の確認、梱包、出荷数の確認、送り先の確認などの出荷作業が行われる。梱包されたハードディスク用基板10が、所定の送り先に出荷される。
【0065】
次いで、図2のAステップについて図3を参照して説明する。
粗研磨(ステップS21)においては、図示しない研磨機により、ハードディスク用基板10が粗研磨される。研磨機は、重力方向の上部に設けられ上側研磨パッドを備えた上側定盤と、重力方向の下部に設けられ下側研磨パッドを備えた下側定盤と、上側定盤と下側定盤との間で、複数枚のハードディスク用基板10を保持する複数のキャリアと、上側研磨パッドおよび下側研磨パッドにスラリーを供給するスラリー供給機構と制御装置を備えている。
【0066】
研磨機は、上側定盤および下側定盤により、複数のキャリアが上側研磨パッドおよび下側研磨パッドの間で研磨機の回転軸を中心として公転するとともに、複数のキャリア自体がそれぞれ自転し、複数のキャリア内に保持されているハードディスク用基板10の表面および裏面の両面が上側研磨パッドおよび下側研磨パッドで研磨する構成を有する。複数のキャリアには、1バッチ分のハードディスク用基板10として、例えば、総計50枚が保持されるように構成されている。
【0067】
研磨機は、キャリアの回転と同時に、スラリーがスラリー供給機構により上側研磨パッドおよび下側研磨パッドに供給され、ハードディスク用基板10の表面および裏面を同時に研磨することができる。
【0068】
上側研磨パッドは、ウレタン材のベースと表面に形成された発泡ウレタンとにより構成されている。下側研磨パッドも、上側研磨パッドと同様に、ウレタン材のベースと表面に形成された発泡ウレタンとにより構成されている。上側研磨パッドおよび下側研磨パッドは、上側定盤および下側定盤に対して交換可能に取り付けられている。
【0069】
スラリーは、酸化アルミニウム(Al)および二酸化ケイ素(SiO)からなる砥粒と、エッチング成分からなる化学成分とを含む液状の研磨液を有している。スラリーは、砥粒自体が有する表面化学作用、または、化学成分の作用によって、スラリーとハードディスク用基板10との相対運動による機械的研磨効果を増大させ、平滑な研磨面が得られるように構成されている。
【0070】
粗研磨(ステップS21)では、ハードディスク用基板10に対する粗研磨加工が行われ、ハードディスク用基板10の表面および裏面の表面粗さRaやうねりが調整される。粗研磨(ステップS21)では、ハードディスク用基板10の表面および裏面に対して所定の研磨量(μm)が得られるように、研磨パッドがハードディスク用基板10を押える所定圧力、研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数、所定研磨時間などの研磨条件に基づいて制御装置により制御される。
【0071】
洗浄(ステップS22)では、粗研磨(ステップS21)において研磨されたハードディスク用基板10に対して、洗剤を使った超音波による精密洗浄が行われる。ハードディスク用基板10は精密洗浄後に乾燥される。
【0072】
粗研磨平坦度測定(ステップS23)では、粗研磨がなされ洗浄されたハードディスク用基板10に対して粗研磨平坦度の測定が行われる。測定する枚数は2枚以上であればよいが、全数測定することが好ましい。また、1バッチごとに測定してもよく、1バッチは、所定枚数、例えば、1度で研磨する枚数として50枚で設定される。粗研磨平坦度測定(ステップS23)では、図示しない平坦度計により、所定枚数のハードディスク用基板10の粗研磨平坦度が測定される。
【0073】
第1実施形態の平坦度は、ハードディスク用基板10の平坦に対する歪みの度合のことである。この歪みの度合は、平面からハードディスク用基板10の表面までの距離や、干渉縞の本数、研磨量などから求めることができる。
【0074】
平坦度の算出方法としては、図6に示すように、ハードディスク用基板10の表面(TOP面10a)側および裏面(BOT面10b)側のそれぞれの最大値の差分、つまり、TOP-BOT(トップマイナスボトム)で算出する方法が挙げられる。この算出方法によれば、TOP面10a側が凸であれば算出の結果は+(プラス)となり、BOT面10b側が凸であれば算出の結果は-(マイナス)となり、単位はμmで表される。
【0075】
平坦度の算出方法と測定方法について、図6を用いて以下に具体的に説明する。
図6は、第1実施形態における平坦度を説明する図である。第1実施形態の平坦度の算出方法は、幾何学的に正しい平面(幾何学的平面)からハードディスク用基板10の表面までの距離を測定し、その測定した数値を用いている。
【0076】
具体的には、ハードディスク用基板10のTOP面10aにおいて厚さ方向に最も突出した箇所と最も引っ込んだ箇所との差(TOP)と、ハードディスク用基板10のBOT面10bにおいて厚さ方向に最も突出した箇所と最も引っ込んだ箇所との厚さ方向の差(BOT)とを測定し、TOPからBOTを引いた数値で表される。
【0077】
なお、平坦度の定義は、上記の内容に限定されるものではなく、例えば、JIS規格(JIS B0621-1984)に定義されている平面度と同様の意味内容でもよいし、ハードディスク用基板10の両面の干渉縞の本数や、研磨量を測定し、TOP面10aの数値からBOT面10bの数値を引いた数値で表してもよい。
【0078】
ハードディスク用基板10の両面を測定するためには、平坦度計や干渉計など、検出する対象によって選ぶことができる。これらの測定機器には、ハードディスク用基板10の両面を測定する機構だけでなく、測定した数値を所定の数値として算出・表示するための制御装置や記憶装置、出力装置を備えていてもよい。第1実施形態における平坦度の測定方法は、例えば、平坦度計により測定することができる。
【0079】
平坦度計は、オンラインまたはオフラインで使用され、生産性向上の観点からはハードディスク用基板10の生産ライン内に設置され、いわゆるオンラインで、ハードディスク用基板10の平坦度を自動的に測定するように構成されている。
【0080】
平坦度計は、センサヘッドと、センサヘッド内部に設けられ高周波電流を流すコイルと、コントローラとを有しており、高周波磁界を利用してハードディスク用基板10の平坦度を測定するように構成されている。
【0081】
平坦度計は、コイルに高周波電流を流し、ハードディスク用基板10のめっき層12との間に高周波磁界を発生させ、この高周波磁界内にあるめっき層12に、電磁誘導作用によって磁束の通過と垂直方向の渦電流が流れるように構成されている。
【0082】
ハードディスク用基板10のめっき層12に渦電流が流れると、コイルのインピーダンスが変化し、この変化に基づいて、コントローラによりセンサヘッドとハードディスク用基板10との距離が得られる。得られた距離に基づいてコントローラによりハードディスク用基板10の平坦度が得られる。また、距離を測る場合にはレーザにより測定してもよい。
【0083】
干渉縞は、例えば、図示しないレーザ干渉計によって測定することができる。レーザ干渉計は光源から出たレーザ光を2つのレーザ光に分割し、1つのレーザ光は凹凸が30nm以下の高精度な平面測定用基準板の基準面に到達し反射する。もう1つのレーザ光は基準面を透過後、ハードディスク用基板10に到達して反射する。基準面からの反射光とハードディスク用基板10からの反射光は元の光路を逆戻りし、その光路差によって干渉縞が発生する。この干渉縞の本数を見ることによりハードディスク用基板10の歪み度合を測定することができる。例えば、TOP面10aの干渉縞本数からBOT面10bの干渉縞本数を引くことでハードディスク用基板10の平坦度を算出することができる。
【0084】
なお、第1実施形態における平坦度の算出方法は、図6に示すように、TOP面10a側が凸であれば算出の結果は+(プラス)となり、BOT面10b側が凸であれば算出の結果は-(マイナス)となるように算出しているが、TOP面10a側とBOT面10b側のどちらが凸になっているかが分かるような算出方法であればよく、+と-は逆となっていてもよい。また、+か-かのみを判定することだけでもよいが、ハードディスク用基板10がどの程度凸になっているかを数値で判定することがようにすることで、研磨条件を変更する際に適切な研磨条件に変更することができ、より精密な研磨を行うことができる。
【0085】
算出結果を用いたハードディスク用基板10の製造方法について、図7および図8を用いて説明する。図7および図8は、1バッチ50枚の全数について測定した平坦度の平均値をグラフにしたものであり、図7は良好な測定結果の一例を、図8は不良な測定結果の一例を示している。図7および図8の縦軸には、バッチ毎の平坦度が表され、横軸には、TOP-BOTの数値である平坦度が、0を中心として、1~4、-1~-4の目盛りで表されている。
【0086】
横軸の中心の0は、TOP-BOTの平坦度が0(μm)であることを示しており、実際のハードディスク用基板10では、多少の平坦度のばらつきがあるので、グラフで示すように、TOP-BOTの平坦度(μm)は、-1(μm)から+1.5(μm)の範囲内で-側および+側にばらついている。図7および図8では、目盛が-4~4まで設定されているがこの目盛は一例であってこれには限定されず、適宜設定することができる。
【0087】
粗研磨平坦度測定(ステップS23)においては、複数バッチにおける全数だけでなく、任意の所定枚数を測定対象とし、平坦度計により、所定枚数分のハードディスク用基板10の平坦度が測定されるようにしてもよい。この場合、得られた所定枚数分のハードディスク用基板10の粗研磨平坦度は平坦度計により算出される。測定される枚数は多ければ多いほど算出の確度が増すため、好ましくは1バッチの半数以上、より好ましくは1バッチの全数を測定するのがよい。
【0088】
平坦度計および干渉計では、ハードディスク用基板10の粗研磨平坦度を測定する際、ハードディスク用基板10のTOP面10aおよびBOT面10bに対する垂線が重力方向に対して略垂直になるようにハードディスク用基板10を立てた状態に保持してもよく、また、TOP面10aおよびBOT面10bに対する垂線が重力方向に対して平行になるようにハードディスク用基板10を横に倒した状態に保持してもよい。
【0089】
ハードディスク用基板10のTOP面10aおよびBOT面10bに対する垂線が重力に対して略垂直になるように保持することで、ハードディスク用基板10の重力による撓みの影響を少なくすることができ、より精確な状態を測定することが可能である。ここで略垂直とは、完全なる垂直である必要はなく、ハードディスク用基板10が重力の影響を受けにくい程度に角度を有していることを許容する。
【0090】
粗研磨平坦度判定(ステップS24)においては、粗研磨平坦度測定(ステップS23)において測定された測定結果と、予め設定されている第1Aの基準との比較が行われ、測定結果が第1Aの基準を満たしているか否かのYES/NO判定が行われる。そして、ステップS23における粗研磨平坦度の測定結果が第1Aの基準を満たしている(YES)と判定された場合には、仕上げ研磨(ステップS26)に進み、第1Aの基準を満たしていない(NO)と判定された場合には、粗研磨調整(ステップS25)に進む。
【0091】
粗研磨平坦度判定(ステップS24)では、粗研磨平坦度測定(ステップS23)において測定された測定結果として、例えば1バッチ50枚の全数、あるいは、任意の抜き取りによるハードディスク用基板10の粗研磨平坦度(μm)に基づいて、粗研磨平坦度(1バッチ算出値)が算出される。その後、バッチ毎の粗研磨平坦度の平均値が算出され、複数バッチ分が蓄積された粗研磨平坦度の傾向Snが算出される。
【0092】
粗研磨平坦度の傾向Snは図7に示すように数値化された複数の棒グラフで表すことができる。粗研磨平坦度の傾向Snは、具体的には、ハードディスク基板10の個々の粗研磨平坦度の数値に基づいて算出し、表示することができ、図7に示すように複数バッチのハードディスク基板10の粗研磨平坦度の傾向Snとしてもよいし、1バッチ内のハードディスク基板10の粗研磨平坦度の傾向Snとしてもよい。
【0093】
粗研磨平坦度の傾向Snの算出には上記の他、個々の基板の平坦度の測定方法としてはTOP-BOTに依らない方法で測定した数値を用いることもできる。粗研磨平坦度の傾向Snは、平坦度を基に算出したものとして例えば、バッチあたりの平坦度を表す値として測定値そのものも用いることができ、傾向を表わす値としては平均値や測定値の他に不良品の発生回数の増減、不良品の発生率の増減などを用いることもでき、これらを組み合わせることもできる。なお、粗研磨平坦度の傾向Snの算出は、仕上げ研磨平坦度の傾向Snの算出にも対応し、同様に用いることができる。
【0094】
粗研磨平坦度の傾向Snは、粗研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、プラス側またはマイナス側の両側に所定の閾値を超えて振れている状態か、を示す。
【0095】
粗研磨平坦度の傾向Snは、例えば粗研磨平坦度の平均値、粗研磨平坦度の測定値、不良品の発生回数、不良品の発生率などで表すことができ、これらを組み合わせてもよい。傾向Snは、前述のとおりバッチ毎の粗研磨平坦度を算出し、複数バッチ分を蓄積したものとしてもよく、あるいは、1バッチ内における傾向としてもよい。例えば、1枚毎の粗研磨平坦度を複数枚分蓄積したものを傾向Snとすることができる。
【0096】
そして、粗研磨平坦度の傾向Snと第1Aの基準とが比較され、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たしているか、つまり、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準から逸脱していないかが判定される。第1Aの基準は、前述の所定の閾値の範囲を有しており、かかる範囲内に粗研磨平坦度の傾向Snが収まっていれば、1バッチ50枚のハードディスク用基板10は良品として、即ちYESとして、次工程の仕上げ研磨(ステップS26)に進む。
【0097】
所定の閾値は、ハードディスク基板10の材質、形状、表面処理などの設定諸元や実験値などのデータに基づいて適宜選択される。所定の閾値は、具体的には、例えばTOP-BOT(μm)は、図7および図8に示すように、プラスまたはマイナス3μm程度である。
【0098】
一方、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たしていない場合、つまり、粗研磨平坦度の不良の程度が第1Aの基準から逸脱している場合には、1バッチ50枚のハードディスク用基板10は不良が多いとして、即ちNOとして、研磨条件の変更またはパッドの交換要否を判定すべく、粗研磨調整(ステップS25)に移行する。
【0099】
第1Aの基準としては、粗研磨の研磨条件の変更または粗研磨の研磨パッドの交換を行ったほうがよいかどうかを判定する基準となるものであればよく、任意に設定することができる。第1Aの基準には、例えば粗研磨平坦度の傾向や、粗研磨平坦度の平均値、粗研磨平坦度の測定値、平均値または測定値の絶対値、不良品の発生回数、粗研磨平坦度不良の程度や、不良品の発生率を用いることができ、これらを組み合わせることもできる。
【0100】
次に、第1Aの基準の一例、即ち粗研磨平坦度の傾向Snの一例について説明する。
図7は、平坦度測定結果が良好であったときの粗研磨平坦度の傾向を示すグラフである。図7(a)に示すグラフでは、粗研磨平坦度(TOP-BOT)が所定の閾値(-3μm~+3μm)を超えない範囲で粗研磨平坦度0を跨いでプラス側とマイナス側にばらついている傾向を示しており、粗研磨平坦度の良好な粗研磨が行われていることを示している。また、図7(b)に示すグラフでは、粗研磨平坦度(TOP-BOT)が0~+3(μm)の範囲に片寄っているものの、良品の範囲内であり粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たしていると判定することができる(YES判定)。粗研磨平坦度の傾向Snを読み取るためには、少なくとも2バッチ~25バッチ程度であることが好ましく、例えば、図7(a)および図7(b)に示すグラフでは、縦軸に示す11バッチ分を傾向Snとしている。
【0101】
図8は、粗研磨平坦度の測定結果が不良であったときの粗研磨平坦度の傾向を示すグラフである。図8(a)のグラフでは、粗研磨平坦度(TOP-BOT)が0~+4.5(μm)の範囲に片寄っており、1バッチ内に所定の閾値+3(μm)を越えている個体が複数存在し、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たしていないと判定することができる(NO判定)。
【0102】
また、図8(b)のグラフは、粗研磨平坦度(TOP-BOT)が-4.5~+4.5(μm)の範囲に亘って(所定の閾値を超えて)プラス側とマイナス側に振れており、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たしていないと判定することができる(NO判定)。しかし、図8(a)、(b)に示す平坦度の傾向Snは、NO判定ではあるが、研磨調整によりハードディスク用基板10を研磨する圧力や、研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数などの研磨条件を変更することによって粗研磨平坦度の改善の可能性があることを示している。
【0103】
粗研磨調整(ステップS25)では、粗研磨平坦度判定(ステップS24)において粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たしていない(NO)と判定された場合に、粗研磨平坦度不良の基板の発生を抑えるため、粗研磨条件の変更または粗研磨パッドの交換要否の判定を行う。
【0104】
粗研磨調整(ステップS25)の内容について、図4のフローチャートを用いて説明する。粗研磨調整(ステップS25)は、図4に示すように、粗研磨条件変更判定(ステップS41)、平坦度の傾向判定(ステップS42)、粗研磨条件の変更(ステップS43)、粗研磨パッドの交換(ステップS44)の各工程を含む。粗研磨調整(ステップS25)では、粗研磨の調整を、粗研磨条件の変更(ステップS43)と粗研磨パッドの交換(ステップS44)の何れで対応するかが選択される。
【0105】
なお、第1実施形態における粗研磨条件変更判定(ステップS41)、平坦度の傾向判定(ステップS42)は、それぞれ本発明の請求項6に係るハードディスク用基板の製造方法における、第1Bの基準を満たすか否かの判定、第1Bの基準を満たすことを条件として第1Cの基準を満たすか否かの判定、に対応し、第1Bの基準を満たさないときは粗研磨条件の変更を行う。なお、第1実施形態において、粗研磨条件変更判定(ステップS41)から平坦度の傾向判定(ステップS42)へ進む判定は、本発明の請求項7に記載の、研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、前記第1Bの基準を満たすと判定することに対応する。
【0106】
まず、粗研磨条件変更判定(ステップS41)で、粗研磨平坦度測定(ステップS23)において測定された測定結果と第1Bの基準とが比較され、粗研磨条件を変更するか否かが判定される。そして、測定結果が第1Bの基準を満たしていない(NO)場合には、粗研磨(ステップS21)における粗研磨条件の変更が必要とされ、粗研磨条件の変更(ステップS43)が選択される。そして、測定結果が第1Bの基準を満たしている(YES)場合には、さらに別の判定方法で第1Cの基準に基づいて、粗研磨条件の変更(ステップS43)と粗研磨パッドの交換(ステップS44)の何れを選択するのかが判定される。
【0107】
粗研磨条件変更判定(ステップS41)では、具体的には、粗研磨平坦度測定(ステップS23)において算出された粗研磨平坦度の傾向Snを測定結果として、測定結果と第1Bの基準との比較が行われる。そして、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Bの基準を満たしていない場合(ステップS41でNO)、粗研磨における粗研磨条件の変更が必要とされ、粗研磨条件の変更(ステップS43)が選択され、粗研磨調整(ステップS25)において粗研磨の条件が変更されて、粗研磨(ステップS21)に進む。
【0108】
第1Bの基準としては、粗研磨条件の変更で解決する可能性を判定する基準となるものであればよく、任意に設定することができる。例えば、研磨パッド交換後から初めて現れたかものか否かで判定し、その判定には粗研磨平坦度の傾向や、粗研磨平坦度の平均値、粗研磨平坦度の測定値、粗研磨平均値または測定値の絶対値、不良品の発生回数、粗研磨平坦度不良の程度や、不良品の発生率を用いることができ、これらを組み合わせることもできる。
【0109】
例えば、粗研磨調整(ステップS25)の結果、粗研磨平坦度(TOP-BOT)がプラス側もしくはマイナス側のどちらかに所定の閾値を超えて片寄って振れている傾向が(、例えば図8(a))研磨パッドの交換後から初めて現れた場合や、粗研磨平坦度の傾向Snが所定の閾値を超えてプラス側とマイナス側の両方に振れている傾向が(例えば図8(b))研磨パッドの交換後から初めて現れた場合には、ハードディスク用基板10を研磨する条件を変更すれば粗研磨平坦度を改善できる余地があるため、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Bの基準を満たしていないと判定される(ステップS41でNO)。
【0110】
また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(b)に示すような粗研磨平坦度の傾向Snが現れた場合には、粗研磨パッドが摩耗し滑ってしまい、所定の研磨量が得られない状態である。このような場合には、粗研磨パッドの交換を考慮すべきであるため、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Bの基準を満たしていると判定される(ステップS41でYES)。しかし、研磨条件の変更で改善できる余地もまだあるため、次の判定(ステップS42)に移る。また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(a)に示すような粗研磨平坦度の傾向Snが現れた場合においても、第1Bの基準を満たしていると判定される(ステップS41でYES)。
【0111】
粗研磨平坦度の傾向Snが第1Bの基準を満たしている場合(ステップS41でYES)、次に、第1Cの基準を満たしているかを判定する(ステップS42)。粗研磨平坦度の傾向Snが第1Cの基準を満たしているか否かは、粗研磨条件を変更する前と後における粗研磨平坦度の傾向Sn-1とSnとが同じであるか否か、より正確には、今回の粗研磨平坦度の傾向Snが前回の粗研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるか否かが判定される。さらに上記判定に加え、不良品の程度や、不良の発生率、不良品の発生回数、同じ粗研磨平坦度の傾向Snの発生回数などを予め登録されたオペレータ経験値に基づいて判定してもよい。
【0112】
例えば、粗研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、プラス側またはマイナス側の両側に所定の閾値を超えて振れている状態かを、粗研磨平坦度の傾向として第1Cの基準による判定に用いることができる。例えば、前回の粗研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(a)に示すように粗研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらかに所定の閾値を超えて片寄って振れている状態から再度所定の閾値を超えて片寄って振れている粗研磨平坦度の傾向Snに変化した場合、第1Cの基準を満たしていないとして、粗研磨条件の変更(ステップS43)を選択する。
【0113】
また、例えば、前回の研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(a)に示すように所定の閾値を超えて一方側に片寄って振れている状態から図8(b)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている粗研磨平坦度の傾向Snに変化した場合のように、前回の研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の粗研磨平坦度の傾向Snが異なるときは(ステップS42でNO)、第1Cの基準を満たしていないとして、粗研磨条件の変更(ステップS43)を選択する。
【0114】
あるいは、第1Cの基準を満たしているとして、粗研磨パッドの交換(ステップS44)を選択する。粗研磨条件の変更(ステップS43)においては、粗研磨パッドがハードディスク用基板10を押える圧力、研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数、研磨時間などの粗研磨条件が制御装置により変更される。
【0115】
そして、前回の研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の粗研磨平坦度の傾向Snが同じ場合(ステップS42でYES)、つまり、前回の粗研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(b)に示すように所定の閾値を超えて両側に振れている状態から、同様に図8(c)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている粗研磨平坦度の傾向Snに変化した場合のように、今回の粗研磨平坦度の傾向Snが前回の粗研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるときは(図8(c))、粗研磨パッドが摩耗し滑ってしまい、これ以上の粗研磨条件の変更を繰り返しても、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たすことが困難であると判定し、第1Cの基準を満たすとして、粗研磨パッドの交換(ステップS44)を選択する。
【0116】
図示していないが、研磨パッドの交換後、粗研磨(ステップS21)を行う前に試運転を行ってもよい。ここでの粗研磨平坦度の傾向Snが同じ場合とは、数値が完全に一致することを指すのではなく、粗研磨平坦度の傾向Snが同様であることを指す。
【0117】
粗研磨パッドの交換が手動で行われる場合には、粗研磨パッドの交換が必要である旨が、図示しない表示装置に表示され、粗研磨パッドの交換が必要であることが作業者によって認識されるように表示があってもよい。第1実施形態では、傾向が同じであるか否かを判定する基準として、前回の粗研磨平坦度の傾向Sn-1を用いているが、前々回の粗研磨平坦度の傾向Sn-2のように、基準を適宜変更することができる。
【0118】
仕上げ研磨(ステップS26)は、粗研磨(ステップS21)における研磨機と同様の研磨機により同様に行われる。仕上げ研磨は、使用するスラリーが粗研磨と異なっており、仕上げ研磨におけるスラリーは、二酸化ケイ素(SiO)からなる砥粒と、エッチング成分からなる化学成分とを含む液状の研磨液で構成されている。
【0119】
スラリーは、粗研磨と同様、砥粒自体が有する表面化学作用または、化学成分の作用によって、スラリーとハードディスク用基板10との相対運動による機械的研磨効果を増大させ、平滑な研磨面が得られるように構成されている。
【0120】
仕上げ研磨(ステップS26)では、ハードディスク用基板10のTOP面およびBOT面の表面粗さRaやうねりが調整される。仕上げ研磨(ステップS26)においても、ハードディスク用基板10のTOP面およびBOT面の所定の研磨量(μm)が得られるように、研磨パッドがハードディスク用基板10を押える所定圧力、研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数、所定研磨時間などの研磨条件に基づいて制御装置により制御される。
【0121】
仕上げ研磨(ステップS26)における研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数、所定研磨時間などの研磨条件は、ハードディスク用基板10の構造、大きさ、形状などの設定諸元や、実験値などのデータに基づいて適宜選択される。
【0122】
洗浄(ステップS27)では、仕上げ研磨(ステップS26)において仕上げ研磨されたハードディスク用基板10に対して、洗剤を使った超音波による精密洗浄が行われる。ハードディスク用基板10は精密洗浄後に乾燥される。
【0123】
仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)は、仕上げ研磨がなされ洗浄されたハードディスク用基板10に対して行われ、前述の粗研磨平坦度測定(ステップS23)と同様に行われる。
【0124】
仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)においては、図3に示すように、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)において測定された測定結果と、予め設定されている第2Aの基準との比較が行われ、測定結果が第2Aの基準を満たしているか否かのYES/NO判定が行われる。そして、ステップS28における仕上げ研磨平坦度の測定結果が第2Aの基準を満たしている(YES)と判定された場合には、次工程に進み、第2Aの基準を満たしていない(NO)と判定された場合には、仕上げ研磨調整(ステップS30)に進む。
【0125】
仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)では、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)において測定された測定結果として、例えば1バッチ50枚の全数、あるいは、任意の抜き取りによるハードディスク用基板10の仕上げ研磨平坦度に基づいて、仕上げ研磨平坦度(1バッチ算出値)が算出される。その後、バッチ毎の仕上げ研磨平坦度の平均値が算出され、複数バッチ分が蓄積された仕上げ研磨平坦度の傾向Snが算出される。
【0126】
仕上げ研磨平坦度の傾向Snは、粗研磨平坦度の傾向Snと同様に、図7に示すように数値化された複数の棒グラフで表すことができる。仕上げ研磨平坦度の傾向Snは、具体的には、ハードディスク基板10の個々の仕上げ研磨平坦度の数値に基づいて算出し、表示することができ、図7に示すように複数バッチのハードディスク基板10の仕上げ研磨平坦度の傾向Snとしてもよいし、1バッチ内のハードディスク基板10の仕上げ研磨平坦度の傾向Snとしてもよい。また、仕上げ研磨平坦度の傾向Snは、例えば仕上げ研磨平坦度の平均値、仕上げ研磨平坦度の測定値、不良品の発生回数、不良品の発生率などで表すことができ、これらを組み合わせてもよい。仕上げ研磨平坦度の傾向Snを読み取るためには、少なくとも2バッチ~25バッチ程度であることが好ましく、例えば、図7(a)および図7(b)に示すグラフでは、縦軸に示す11バッチ分を傾向Snとしている。
【0127】
そして、仕上げ研磨平坦度の傾向Snと第2Aの基準とが比較され、前述の粗研磨平坦度判定(ステップS24)と同様のYES/NO判定が行われる。第2Aの基準は、所定の範囲を有しており、係る範囲内に仕上げ研磨平坦度の傾向Snが収まっていれば、1バッチ50枚のハードディスク用基板10は良品として、即ちYESとして、次工程に進む。
【0128】
一方、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Aの基準を満たしていない場合、つまり、仕上げ研磨平坦度の不良の程度が第2Aの基準から逸脱している場合には、1バッチ50枚のハードディスク用基板10は不良が多いとして、即ちNOとして、研磨条件の変更またはパッドの交換要否を判定すべく、仕上げ研磨調整(ステップS30)に移行する。
【0129】
第2Aの基準は、第1Aの基準と同様に、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を行ったほうがよいかどうかを判定する基準となるものであればよく、任意に設定することができる。第2Aの基準には、第1Aの基準と同様に、例えば仕上げ研磨平坦度の傾向や、仕上げ研磨平坦度の平均値、仕上げ研磨平坦度の測定値、平均値または測定値の絶対値、不良品の発生回数、仕上げ研磨平坦度不良の程度や、不良品の発生率を用いることができ、これらを組み合わせることもできる。なお、第1実施形態の説明において粗研磨平坦度判定における第1Aの基準と仕上げ研磨平坦度判定における第2Aの基準の説明を同じように説明しているが、第1Aの基準と第2Aの基準とを揃える必要はなく、異なる基準を設けてもよい。
【0130】
また、第1実施形態の説明において粗研磨条件変更判定における第1Bの基準と仕上げ研磨条件変更判定における第2Bの基準、または粗研磨平坦度の傾向判定における第1Cの基準と仕上げ研磨平坦度の傾向判定における1Cの基準の説明を同じように説明しているが、第1Bの基準と第2Bの基準、第1Cの基準と第2Cの基準のそれぞれを揃える必要はなく、粗研磨毎または仕上げ研磨毎に異なる基準を設けてもよい。
【0131】
仕上げ研磨調整(ステップS30)では、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)において仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Aの基準を満たしていない(NO)と判定された場合に、仕上げ研磨平坦度不良の基板の発生を抑えるため、仕上げ研磨条件の変更または仕上げ研磨パッドの交換要否の判定を行う。
【0132】
仕上げ研磨調整(ステップS30)の内容について、図5のフローチャートを用いて説明する。図5は、仕上げ研磨調整(ステップS30)の内容を説明するフローチャートである。仕上げ研磨調整(ステップS30)は、仕上げ研磨条件変更判定(ステップS45)、仕上げ研磨平坦度の傾向判定(ステップS46)、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS48)の各工程を含む。仕上げ研磨調整(ステップS30)では、仕上げ研磨の調整を、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)と仕上げ研磨パッドの交換(ステップS48)の何れで対応するかが選択される。
【0133】
なお、第1実施形態における仕上げ研磨条件変更判定(ステップS45)、仕上げ平坦度の傾向判定(ステップS46)は、それぞれ本発明の請求項6に記載の、第1Bの基準を満たすか否かの判定、第1Bの基準を満たすことを条件として第1Cの基準を満たすか否かの判定、に対応し、第1Bの基準を満たさないときは仕上げ研磨条件の変更を行う。なお、第1実施形態において、仕上げ研磨条件変更判定(ステップS45)から平坦度の傾向判定(ステップS46)へ進む判定は、本発明の請求項7に記載の、研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、第1Bの基準を満たすと判定することに対応する。
【0134】
まず、仕上げ研磨条件変更判定(ステップS45)では、ステップS28において測定された測定結果と第2Bの基準とが比較され、仕上げ研磨条件を変更するか否かが判定される。そして、測定結果が第2Bの基準を満たしていない(NO)場合には、仕上げ研磨(ステップS26)における仕上げ研磨条件の変更が必要とされ、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)が選択される。そして、測定結果が第2Bの基準を満たしている(YES)場合には、さらに別の判定方法で第2Cの基準に基づいて、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)と仕上げ研磨パッドの交換(ステップS48)の何れを選択するのかが判定される。
【0135】
仕上げ研磨条件変更判定(ステップS45)では、具体的には、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)において算出された仕上げ研磨平坦度の傾向Snを測定結果として、測定結果と第2Bの基準との比較が行われる。そして、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Bの基準を満たしていない場合(ステップS45でNO)、仕上げ研磨における仕上げ研磨条件の変更が必要とされ、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)が選択され、仕上げ研磨の条件が変更されて仕上げ研磨(ステップS26)に進む。なお、図示していないが、仕上げ研磨パッドの交換後、仕上げ研磨(ステップS26)を行う前に試運転を行ってもよい。
【0136】
第2Bの基準としては、第1Bの基準と同様に、研磨条件の変更で解決する可能性を判定する基準となるものであればよく、任意に設定することができる。例えば、仕上げ研磨パッドの交換後から初めて現れたかものか否かで判定し、その判定には仕上げ研磨平坦度の傾向や、仕上げ研磨平坦度の平均値、仕上げ研磨平坦度の測定値、平均値または測定値の絶対値、不良品の発生回数、仕上げ研磨平坦度不良の程度や、不良品の発生率を用いることができこれらを組み合わせることもできる。第2Bの基準は第1Bの基準と同じである必要はなく、異なる基準を設定してもよい。
【0137】
例えば、仕上げ研磨調整(ステップS30)の結果、仕上げ研磨平坦度(TOP-BOT)がプラス側もしくはマイナス側のどちらかに所定の閾値を超えて片寄って振れている傾向が(例えば図8(a))、研磨パッドの交換後から初めて現れた場合や、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが所定の閾値を超えてプラス側とマイナス側の両方に振れている傾向が(例えば図8(b))仕上げ研磨パッドの交換後から初めて現れた場合には、ハードディスク用基板10を研磨する条件を変更すれば仕上げ研磨平坦度を改善できる余地があるので、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Bの基準を満たしていないと判定される(ステップS45でNO)。
【0138】
また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(b)に示すような仕上げ研磨平坦度の傾向Snが現れた場合には、仕上げ研磨パッドが摩耗し滑ってしまい、所定の研磨量が得られない状態である。このような場合には、仕上げ研磨パッドの交換を考慮すべきであるため、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Bの基準を満たしていると判定される(ステップS45でYES)。しかし、仕上げ研磨条件の変更で改善できる余地もまだあるため、次の判定(ステップS46)に移る。
【0139】
また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(a)に示すような仕上げ研磨平坦度の傾向Snが現れた場合においても、第2Bの基準を満たしていると判定される(ステップS45でYES)。
【0140】
仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Bの基準を満たしている場合(ステップS45でYES)、次に、第2Cの基準を満たしているかを判定する(ステップS46)。仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Cの基準を満たしているか否かは、仕上げ研磨条件を変更する前と後における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1とSnとが同じであるか否か、より正確には、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるか否かが判定される。さらに上記仕上げ研磨平坦度判定に加え、不良品の程度や、不良の発生率、不良品の発生回数、同じ仕上げ研磨平坦度の傾向Snの発生回数などを予め登録されたオペレータ経験値に基づいて判定してもよい。
【0141】
例えば、仕上げ研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、プラス側またはマイナス側の両側に所定の閾値を超えて振れている状態かを、仕上げ研磨平坦度の傾向として第2Cの基準による判定に用いることができる。例えば、前回の仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(a)に示すように所定の閾値を超えて一方側に片寄って振れている状態から図8(b)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている仕上げ研磨平坦度の傾向Snに変化した場合のように、前回の研磨条件の変更時と仕上げ研磨平坦度の傾向Snが異なる場合(ステップS46でNO)、つまり、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と異なるときは(図8(a)、(b))、第2Cの基準を満たしていないとして、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)を選択する。
【0142】
あるいは、第2Cの基準を満たしているとして、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS48)を選択する。仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)においては、仕上げ研磨パッドがハードディスク用基板10を押える圧力、研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数、研磨時間などの仕上げ研磨条件が制御装置により変更される。
【0143】
そして、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同じ場合(ステップS46でYES)、つまり、前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(b)に示すように所定の閾値を超えて両側に振れている状態から、同様に図8(c)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている仕上げ研磨平坦度の傾向Snに変化することがある。
【0144】
このように変化した場合、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるときは(図8(c))、仕上げ研磨パッドが摩耗し滑ってしまい、これ以上の仕上げ研磨条件の変更を繰り返しても、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第2Aの基準を満たすことが困難であると判定し、第2Cの基準を満たすとして、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS48)を選択する。
【0145】
なお、仕上げ研磨パッドが交換された場合にも、仕上げ研磨条件の変更が行われるようにしてもよい。図示していないが、仕上げ研磨パッドの交換後、仕上げ研磨(ステップS54)を行う前に試運転を行ってもよい。なお、ここでの仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同じ場合とは、数値が完全に一致することを指すのではなく、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同様であることを指す。
【0146】
仕上げ研磨パッドの交換が手動で行われる場合には、仕上げ研磨パッドの交換が必要である旨が、図示しない表示装置に表示され、仕上げ研磨パッドの交換が必要であることが作業者によって認識されるように表示があってもよい。第1実施形態では、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同じであるか否かを判定する基準として、前回の仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1を用いているが、前々回の仕上げ研磨Sn-2のように、基準を適宜変更することができる。
【0147】
第1実施形態の説明において、第1Aの基準と第2Aの基準は同じ説明を行っているが、粗研磨と仕上げ研磨とでその基準を異なるものにしてもよい。また、第1実施形態の説明では、粗研磨と仕上げ研磨との両工程で粗平坦度測定と、仕上げ研磨平坦度測定と、粗平坦度判定と、仕上げ研磨平坦度判定と、粗研磨調整と、仕上げ研磨調整とを実施することを一例に示しているが、これらの測定、調整、及び判定を粗研磨もしくは仕上げ研磨の何れか一方のみで行ってもよい。
【0148】
図9は、第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法における粗研磨または仕上げ研磨の平坦度測定で測定した粗研磨または仕上げ研磨の平坦度のグラフである。
図9(a)および図9(b)において、研磨前推移で表示されているグラフは、粗研磨および仕上げ研磨が行われる前の50枚のハードディスク用基板10の平坦度(TOP-BOT)を表している。この粗研磨または仕上げ研磨の平坦度は、平坦度計による測定ではなく、レーザ干渉計などの他の測定器により実際に測定されたもので、実際の測定結果に基づいて作成されている。
【0149】
そして、図9(a)において研磨後推移で表示されているグラフは、粗研磨および仕上げ研磨が行われた後の平坦度(TOP-BOT)が全く変化しない理想の研磨が行われたと想定した場合を表しており、研磨前推移で表示されているグラフと、研磨後推移で表示されているグラフとが同一のグラフになることを表している。
【0150】
一方、図9(b)において研磨後推移で表示されているグラフは、粗研磨および仕上げ研磨が行われた後の平坦度(TOP-BOT)が変化する研磨が行われた実際のハードディスク用基板10の平坦度(TOP-BOT)を表している。
【0151】
この平坦度(TOP-BOT)は、レーザ干渉計により測定された干渉縞のデータに基づいて作成された50枚の全数の平坦度(TOP-BOT)であり、研磨前推移で表示されているグラフと、研磨後推移で表示されているグラフとが大きく異なっていることを表している。図8(a)のように片寄って振れているとは、常に連続している必要はなく、連続が途切れたような場合でも片寄って振れていると判定でき、前述の粗研磨および仕上げ研磨調整と同様に適宜設定することができる。
【0152】
以下、第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法の効果について説明する。
【0153】
第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法は、図3に示すように、粗研磨(ステップS21)、粗研磨平坦度測定(ステップS23)、粗研磨平坦度判定(ステップS24)、仕上げ研磨(ステップS26)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)および仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)を含む。
【0154】
この製造方法では、ハードディスク用基板10を粗研磨し、粗研磨後のハードディスク用基板10の粗研磨平坦度を測定し、粗研磨平坦度測定で所定枚数のハードディスク用基板10について測定した測定結果から所定枚数のハードディスク用基板10の粗研磨平坦度の傾向Snを算出する。そして、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Aの基準を満たしているかを判定し、第1Aの基準を満たしていないことを条件として、粗研磨調整(ステップS25)を行う。
【0155】
粗研磨調整(ステップS25)では、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Bの基準を満たすか否かを判定し(ステップS41)、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Bの基準を満たさないときは粗研磨条件の変更を行う(ステップS43)。そして、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Cの基準を満たすときは、粗研磨パッドの交換(ステップS44)を行う。
【0156】
例えば、粗研磨平坦度の傾向Snが第1Bの基準を満たさないとき、あるいは、第1Bの基準は満たすが第1Cの基準を満たさないときは、粗研磨条件の変更(ステップS43)が選択される。したがって、新たな粗研磨パッドに交換することなく、速やかに粗研磨平坦度の傾向Snを変更することができる。したがって、ハードディスク用基板10に対して適切な研磨を行うことができるという効果が得られる。
【0157】
そして、第1Bの基準と第1Cの基準の両方を満たすとき、つまり、今回の研磨平坦度の傾向が前回の研磨条件の変更時における研磨平坦度の傾向と同じであるときは、粗研磨パッドの交換(ステップS44)が選択される。したがって、粗研磨パッドの交換を行うタイミングをタイムリーに判定することができ、例えば粗研磨条件の変更によってハードディスク用基板10の粗研磨平坦度の傾向Snを適切な傾向に調整できる範囲を逸脱している場合には、新たな粗研磨パッドへの交換がなされ、ハードディスク用基板10に対して適切な粗研磨を行うことができるという効果が得られる。
【0158】
そして、ステップS21からステップS25までの粗研磨に続いて、ステップS26からステップS30までの仕上げ研磨が行われる。粗研磨後のハードディスク用基板10を仕上げ研磨し、仕上げ研磨後のハードディスク用基板10の仕上げ研磨平坦度を測定し、仕上げ研磨平坦度測定で所定枚数のハードディスク用基板10について測定した測定結果から所定枚数のハードディスク用基板10の仕上げ研磨平坦度の傾向Snを算出する。そして、仕上げ研磨平坦度の傾向が第2Aの基準を満たしているかを判定し、第2Aの基準を満たしていないことを条件として、仕上げ研磨調整を行う(ステップS30)。
【0159】
仕上げ研磨調整(ステップS30)では、仕上げ研磨条件の変更により第2Bの基準を満たすか否かを判定し(ステップS45)、第2Bの基準を満たさないときは仕上げ研磨条件の変更を行う(ステップS47)。そして、第2Bの基準を満たしているときは、第2Cの基準に基づいて、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)と仕上げ研磨パッドの交換(ステップS48)の何れを選択するのかを判定する(ステップS46)。
【0160】
例えば、第2Bの基準を満たさないとき、あるいは、第2Bの基準は満たすが第2Cの基準を満たさないときは、仕上げ研磨条件の変更(ステップS47)が選択される。したがって、新たな仕上げ研磨パッドに交換することなく、速やかに仕上げ研磨平坦度の傾向Snを変更することができ、ハードディスク用基板10に対して適切な研磨を行うことができるという効果が得られる。
【0161】
そして、第2Bの基準と第2Cの基準の両方を満たすとき、つまり、今回の研磨平坦度の傾向が前回の研磨条件の変更時における研磨平坦度の傾向と同じであるときは、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS48)が選択される。したがって、仕上げ研磨パッドの交換を行うタイミングをタイムリーに判定することができ、例えば仕上げ研磨条件の変更によってハードディスク用基板10の仕上げ研磨平坦度の傾向Snを適切な傾向に調整できる範囲を逸脱している場合には、新たな仕上げ研磨パッドへの交換がなされ、ハードディスク用基板10に対して適切な仕上げ研磨を行うことができるという効果が得られる。
【0162】
第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法は、ハードディスク用基板10の平坦度を測定し、測定された平坦度に基づいて、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することで、高精度の研磨を可能にし、不良のハードディスク用基板10の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0163】
なお、第1実施形態においては、研磨条件の変更または研磨パッドの交換の判断処理を粗研磨と仕上げ研磨の両方に実施しているが、粗研磨と仕上げ研磨に限られず、研磨であれば同様の効果が得られる。
【0164】
また、研磨条件の変更または研磨パッドの交換の判断処理を粗研磨と仕上げ研磨の両方に適用しているが、どちらか一方のみでもよく、より効果的に実施することを考えると、平坦度への影響が大きい研磨(図3でいう粗研磨)に適用するのがよい。
【0165】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法ついて、図10図11および図12を用いて説明する。なお、第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法において、第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法と同様の構成要素には同様の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0166】
上述の第1実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法においては、粗研磨後に粗研磨平坦度を測定し、粗研磨平坦度の判定(ステップS24)のYES/NO判定を行い、研磨良好(YES)のときは仕上げ研磨に移行すること、および、仕上げ研磨後に仕上げ研磨平坦度を測定し、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS29)のYES/NO判定を行い、研磨良好(YES)のときは次工程に移行すること、さらに、粗研磨後の平坦度判定および仕上げ研磨後の平坦度判定で研磨不良(NO)のときは平坦度判定の結果に基づいてそれぞれ粗研磨調整および仕上げ研磨調整を行うようにした。
【0167】
これに対し、第2実施形態において特徴的なことは、平坦度判定を仕上げ研磨後のみで行うようにしたこと、および、粗研磨平坦度調整(ステップS60)と仕上げ研磨調整(ステップS61)における仕上げ研磨平坦度の傾向Snの判定を、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)で測定した結果を用いて行うようにしたことである。
【0168】
第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法は、第1実施形態と同様であり、アルミブランク(ステップS1)、旋盤(ステップS2)、焼鈍(ステップS3)、グラインダー(研削)(ステップS4)、焼鈍(ステップS5)、無電解ニッケル-りんめっき(Ni-P)(ステップS6)、焼鈍(ステップS7)、Bステップ、表面検査(ステップS8)、出荷(ステップS9)の各工程が含まれる(図2を参照)。
【0169】
図10は、第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造工程のフローチャートであり、図2のAステップに対応するものであるが、Aステップとはやや異なるBステップとなっている。
【0170】
図10のBステップでは、粗研磨(ステップS51)、洗浄(ステップS52)、粗研磨平坦度測定(ステップS53)、仕上げ研磨(ステップS54)、洗浄(ステップS55)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS57)、をこの順で行う。
【0171】
そして、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS57)でNOと判定された場合に、粗研磨調整(ステップS60)と仕上げ研磨調整(ステップS61)の何れか一方を行うべく、仕上げ研磨平坦度の傾向Snの比較(ステップS58)以降に移行する。仕上げ研磨平坦度の傾向Snの比較(ステップS58)では、後述する仕上げ研磨平坦度の傾向Snの比較が行われ、その結果に基づいて、粗研磨調整(ステップS60)を行うかまたは仕上げ研磨調整(ステップS61)を行うかが判定される。
【0172】
粗研磨(ステップS51)、洗浄(ステップS52)、粗研磨平坦度測定(ステップS53)、仕上げ研磨(ステップS54)、洗浄(ステップS55)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)の各工程は、それぞれ第1実施形態の粗研磨(ステップS21)、洗浄(ステップS22)、粗研磨平坦度測定(ステップS23)、仕上げ研磨(ステップS26)、洗浄(ステップS27)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS28)と同様の工程が行われる。
【0173】
なお、第2実施形態における粗研磨(ステップS51)と仕上げ研磨(ステップS54)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS57)、及び、粗研磨調整(ステップS60)と仕上げ研磨調整(ステップS61)は、それぞれ本発明の請求項1に記載の研磨工程、研磨平坦度測定工程、研磨平坦度判定工程、研磨調整工程に対応する。
【0174】
仕上げ研磨平坦度判定(ステップS57)においては、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において測定された測定結果と、予め設定されている第3Aの基準との比較が行われ、測定結果が第3Aの基準を満たしているか否かのYES/NO判定が行われる。そして、ステップS56における仕上げ研磨平坦度測定の測定結果が第3Aの基準を満たしている(YES)と判定された場合には、次工程に進み、第3Aの基準を満たしていない(NO)と判定された場合には、粗研磨平坦度と仕上げ研磨平坦度の傾向Snとの比較(ステップS58)を行う。
【0175】
第3Aの基準は、第1実施形態における第1Aの基準と同様に、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を行ったほうがよいかどうかを判定する基準となるものであればよく、任意に設定することができる。第3Aの基準には、例えば仕上げ研磨平坦度の傾向や、仕上げ研磨平坦度の平均値、仕上げ研磨平坦度の測定値、平均値または測定値の絶対値、不良品の発生回数、仕上げ研磨平坦度不良の程度や、不良品の発生率を用いることができ、これらを組み合わせることもできる。
【0176】
仕上げ研磨平坦度の傾向Snの比較(ステップS58)では、粗研磨平坦度測定(ステップS53)において測定された任意の抜き取りによるハードディスク用基板10の粗研磨平坦度と、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において測定された第3Aの基準を満たしていない仕上げ研磨平坦度の傾向Snとの比較が行われ、粗研磨調整(ステップS60)を行うかまたは仕上げ研磨調整(ステップS61)を行うかが判定される。
【0177】
ハードディスク用基板10を比較する際には、粗研磨におけるTOP面とBOT面を揃えて比較する。粗研磨平坦度測定(ステップS53)において測定されたハードディスク用基板10の粗研磨平坦度と、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において測定された仕上げ研磨平坦度の傾向Snとは単位が同じであり、比較することができる。
【0178】
仕上げ研磨平坦度の傾向Snの比較(ステップS58)を含む各工程は、図10のBステップに示すフローチャートの順で行われるが、工程簡略化の観点から、粗研磨平坦度測定(ステップS53)については、平坦度の傾向の比較(ステップS58)の直前に粗研磨(ステップS51)で粗研磨され、洗浄(ステップS52)で洗浄されたードディスク用基板10から抜き取ったハードディスク用基板10の粗研磨平坦度測定(ステップS53)を行うことが好ましい。
【0179】
また、第2実施形態の仕上げ研磨平坦度の傾向Snの比較(ステップS58)では、では自動平坦度計による測定結果同士を比べているが、例えば、自動平坦度計の測定結果と膜厚計による膜厚の測定結果を比べてもよい。膜厚計による膜厚の測定結果は、粗研磨平坦度測定(ステップS53)において膜厚計により膜厚を測定することにより得ることができる。
【0180】
このハードディスク用基板10の粗研磨平坦度と仕上げ研磨平坦度の傾向Snとの比較(ステップS58)において、粗研磨平坦度と仕上げ研磨平坦度の傾向Snとが一致した場合には、ステップS57で第3Aの基準を満たしていない、即ち研磨不良(NO)と判定された原因が粗研磨(ステップS51)にあるとして、粗研磨調整(ステップS60)が行われ、粗研磨平坦度と仕上げ研磨平坦度の傾向Snとが不一致の場合には、ステップS57で研磨不良(NO)と判定された原因が仕上げ研磨(ステップS54)にあるとして、仕上げ研磨調整(ステップS61)が行われる。
【0181】
粗研磨(ステップS51)は仕上げ研磨(ステップS54)に比べて平坦度を悪化させる影響が大きいため、仕上げ研磨後の傾向が一致する場合には、粗研磨に原因があると判定することができる。一方、仕上げ研磨後、粗研磨平坦度と仕上げ研磨平坦度の傾向Snとが不一致の場合には、仕上げ研磨の悪影響がかなり大きいものと判定することができるため、上記のように粗研磨調整(ステップS60)または仕上げ研磨調整(ステップS61)へ進めることができる。
【0182】
なお、第2実施形態における粗研磨(ステップS51)、粗研磨平坦度測定(ステップS53)、仕上げ研磨(ステップS54)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS57)、粗研磨調整(ステップS60)、及び仕上げ研磨調整(ステップS61)は、それぞれ本発明の請求項9に記載の粗研磨工程、粗研磨平坦度測定工程、仕上げ研磨工程、仕上げ研磨平坦度測定工程、仕上げ研磨平坦度判定工程、粗研磨調整工程、及び仕上げ研磨調整に対応する。
【0183】
また、粗研磨工程(ステップS51)及び仕上げ研磨(ステップS54)、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)、仕上げ研磨平坦度判定(ステップS57)、粗研磨調整(ステップS60)及び仕上げ研磨調整(ステップS61)は、それぞれ本発明の請求項1に記載の研磨工程、研磨平坦度測定工程、研磨平坦度判定工程、研磨調整工程にも対応する。
【0184】
次に、粗研磨調整(ステップS60)の内容について、図11のフローチャートを用いて説明する。粗研磨調整(ステップS60)は、図11に示すように、粗研磨条件変更判定(ステップS62)、平坦度の傾向判定(ステップS63)、粗研磨条件の変更(ステップS64)、粗研磨パッドの交換(ステップS65)の各工程を含む。粗研磨調整(ステップS60)では、粗研磨の調整を、粗研磨条件の変更(ステップS64)と粗研磨パッドの交換(ステップS65)の何れで対応するかが選択される。
【0185】
なお、第2実施形態における粗研磨条件変更判定(ステップS62)、平坦度の傾向判定(ステップS63)は、それぞれ本発明の請求項6に係るハードディスク用基板の製造方法における、第1Bの基準を満たすか否かの判定、第1Bの基準を満たすことを条件として第1Cの基準を満たすか否かの判定、に対応し、第1Bの基準を満たさないときは粗研磨条件の変更を行う。なお、第1実施形態にいて、粗研磨条件変更判定(ステップS62)から平坦度の傾向判定(ステップS63)へ進む判定は、本発明の請求項7に記載の、研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、前記第1Bの基準を満たすと判定することにも対応する。
【0186】
まず、粗研磨条件変更判定(ステップS62)では、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において測定された測定結果と第3Bの基準とが比較され、粗研磨条件を変更するか否かが判定される。そして、測定結果が第3Bの基準を満たしていない(NO)場合には、粗研磨(ステップS51)における粗研磨条件の変更が必要とされ、粗研磨条件の変更(ステップS64)が選択される。そして、測定結果が第3Bの基準を満たしている(YES)場合には、さらに別の判定方法で第3Cの基準に基づいて、粗研磨条件の変更(ステップS64)と粗研磨パッドの交換(ステップS65)の何れを選択するのかが判定される。
【0187】
粗研磨条件変更判定(ステップS62)では、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において算出された仕上げ研磨平坦度の傾向Snを測定結果として、測定結果と第3Bの基準との比較が行われる。そして、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Bの基準を満たしていない場合(ステップS62でNO)、粗研磨における粗研磨条件の変更が必要とされ、粗研磨条件の変更(ステップS64)が選択され、粗研磨(ステップS51)に進み、粗研磨の条件が変更される。
【0188】
第3Bの基準としては、研磨条件の変更で解決する可能性を判定する基準であればよく、任意に設定することができる。例えば、研磨パッドの交換後から初めて現れたかものか否かで判定し、その判定には平坦度の傾向や、平坦度の平均値、平坦度の測定値、平均値または測定値の絶対値、不良品の発生回数、平坦度不良の程度や、不良品の発生率を用いることができ、これらを組み合わせることもできる。
【0189】
例えば、粗研磨調整(ステップS60)の結果、仕上げ研磨平坦度(TOP-BOT)がプラス側もしくはマイナス側のどちらかに所定の閾値を超えて片寄って振れている傾向が(例えば図8(a))研磨パッドの交換後から初めて現れた場合や、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが所定の閾値を超えてプラス側とマイナス側の両方に振れている傾向が(例えば図8(b))研磨パッドの交換後から初めて現れた場合には、ハードディスク用基板10を研磨する条件を変更すれば平坦度を改善できる余地があるため、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Bの基準を満たしていないと判定される(ステップS62でNO)。
【0190】
また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(b)に示すような仕上げ研磨平坦度の傾向Snが現れた場合には、粗研磨パッドが摩耗し滑ってしまい、所定の研磨量が得られない状態である。このような場合には、粗研磨パッドの交換を考慮すべきであるため、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Bの基準を満たしていると判定される(ステップS62でYES)。しかし、研磨条件の変更で改善できる余地もまだあるため、次の判定(ステップS63)に移る。
【0191】
また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(a)に示すような仕上げ研磨平坦度の傾向Snが現れた場合においても、第3Bの基準を満たしていると判定される(ステップS62でYES)。しかし、研磨条件の変更で改善できる余地もまだあるため、次の判定(ステップS63)に移る。
【0192】
仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Bの基準を満たしている場合(ステップS62でYES)、次に、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Cの基準を満たしているかを判定する(ステップS63)。仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Cの基準を満たしているか否かは、粗研磨条件を変更する前と後における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1とSnとが同じであるか否か、より正確には、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の粗研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるか否かにより判定される。さらに上記判定に加え、不良品の程度や、不良の発生率、不良品の発生回数、同じ仕上げ研磨傾向Snの発生回数などを予め登録されたオペレータ経験値に基づいて判定してもよい。
【0193】
例えば、仕上げ研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、プラス側またはマイナス側の両側に所定の閾値を超えて振れている状態かを、粗研磨平坦度の傾向として第3Cの基準による判定に用いることができる。
例えば、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが図8(a)に示すように平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらかに所定の閾値を超えて片寄って振れている状態から再度所定の閾値を超えて片寄って振れている仕上げ研磨平坦度の傾向Snに変化した場合、第3Cの基準を満たしていないとして、粗研磨条件の変更(ステップS64)を選択する。
【0194】
また、例えば、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(a)に示すように所定の閾値を超えて一方側に片寄って振れている状態から図8(b)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている仕上げ研磨平坦度の傾向Snに変化することがある。
【0195】
このように変化した場合、前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが異なる場合(ステップS63でNO)、つまり、今回の粗研磨平坦度の傾向Snが前回の粗研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1と異なるときは(ステップS63でNO)、第3Cの基準を満たしていないとして、粗研磨条件の変更(ステップS64)を選択する。あるいは、第3Cの基準を満たしているとして、粗研磨パッドの交換(ステップS65)を選択する。
【0196】
粗研磨条件の変更(ステップS64)においては、粗研磨パッドがハードディスク用基板10を押える圧力、研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数、研磨時間などの粗研磨条件が制御装置により変更される。
【0197】
そして、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同じ場合(ステップS63でYES)、つまり、前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(b)に示すように所定の閾値を超えて両側に振れている状態から、同様に図8(c)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている仕上げ研磨平坦度の傾向Snに変化することがある。
【0198】
このように変化した場合、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の粗研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるときは(図8(c))、これ以上の粗研磨条件の変更を繰り返しても、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Aの基準を満たすことが困難であると判定し、第3Cの基準を満たすとして、粗研磨パッドの交換(ステップS65)を選択する。
【0199】
図示していないが、研磨パッドの交換後、粗研磨(ステップS51)を行う前に試運転を行ってもよい。ここでの仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同じ場合とは、数値が完全に一致することを指すのではなく、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同様であることを指す。
【0200】
粗研磨パッドの交換が手動で行われる場合には、粗研磨パッドの交換が必要である旨が、図示しない表示装置に表示され、粗研磨パッドの交換が必要であることが作業者によって認識されるように表示があってもよい。第2実施形態では、傾向が同じであるか否かを判定する基準として、前回の粗研磨平坦度の傾向Sn-1を用いているが、前々回の粗研磨平坦度の傾向Sn-2のように、基準を適宜変更することができる。
【0201】
仕上げ研磨調整(ステップS61)は、図12に示すように、仕上げ研磨条件変更判定(ステップS66)、平坦度の傾向判定(ステップS67)、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS69)の各工程を含む。仕上げ研磨調整(ステップS61)では、仕上げ研磨の調整を、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)と仕上げ研磨パッドの交換(ステップS69)の何れで対応するかが選択される。
【0202】
なお、第2実施形態における仕上げ研磨条件変更判定(ステップS66)、仕上げ平坦度の傾向判定(ステップS67)、は、それぞれ本発明の請求項6に記載の、第1Bの基準を満たすか否かの判定、第1Bの基準を満たすことを条件として第1Cの基準を満たすか否かの判定に対応し、第1Bの基準を満たさないときは仕上げ研磨条件の変更を行う。なお、第2実施形態にいて、仕上げ研磨条件変更判定(ステップS66)から平坦度の傾向判定(ステップS67)へ進む判定は、本発明の請求項7に記載の、研磨パッドの交換を考慮すべき場合に、第1Bの基準を満たすと判定することにも対応する。
【0203】
まず、仕上げ研磨条件変更判定(ステップS66)では、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において測定された測定結果と第3Dの基準とが比較され、仕上げ研磨条件を変更するか否かが判定される。そして、測定結果が第3Dの基準を満たしていない(NO)場合には、仕上げ研磨(ステップS54)における仕上げ研磨条件の変更が必要とされ、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)が選択される。そして、測定結果が第3Dの基準を満たしている(YES)場合には、さらに別の判定方法で第3Eの基準に基づいて、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)と仕上げ研磨パッドの交換(ステップS69)の何れを選択するのかが判定される。
【0204】
具体的には、仕上げ研磨条件変更判定(ステップS66)では、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において算出された仕上げ研磨平坦度の傾向Snを測定結果として、測定結果と第3Dの基準との比較が行われる。そして、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Dの基準を満たしていない場合(ステップS66でNO)、仕上げ研磨(ステップS54)における仕上げ研磨条件の変更が必要とされ、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)が選択され、仕上げ研磨(ステップS54)に進み仕上げ研磨の条件が変更される。
【0205】
第3Dの基準としては、研磨条件の変更で解決する可能性があるか否かで判定する基準となるものであればよく、任意に設定することができる。例えば、平坦度の傾向を用いることができる。
【0206】
例えば、仕上げ研磨調整(ステップS61)の結果、仕上げ研磨平坦度(TOP-BOT)がプラス側もしくはマイナス側のどちらかに所定の閾値を超えて片寄って振れている傾向が(例えば図8(a))研磨パッドの交換後から初めて現れた場合や、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが所定の閾値を超えてプラス側とマイナス側の両方に振れている傾向が(例えば図8(b))研磨パッドの交換後から初めて現れた場合には、ハードディスク用基板10を研磨する条件を変更すれば平坦度を改善できる余地があるため、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Dの基準を満たしていないと判定される(ステップS66でNO)。
【0207】
また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(b)に示すような仕上げ研磨平坦度の傾向Snが現れた場合には、仕上げ研磨パッドが摩耗し滑ってしまい、所定の研磨量が得られない状態である。このような場合には、仕上げ研磨パッドの交換を考慮すべきであるため、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Dの基準を満たしていると判定される(ステップS66でYES)。しかし、研磨条件の変更で改善できる余地もまだあるため、次の判定(ステップS67)に移る。
【0208】
また、初回の研磨条件の変更から再度、図8(a)に示すような仕上げ研磨平坦度の傾向Snが現れた場合においても、第3Dの基準を満たしていると判定される(ステップS66でYES)。しかし、研磨条件の変更で改善できる余地もまだあるため、次の判定(ステップS67)に移る。
【0209】
仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Dの基準を満たしている場合(ステップS66でYES)、次に、第3Eの基準を満たしているかを判定する(ステップS67)。仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Eの基準を満たしているか否かは、仕上げ研磨条件を変更する前と後における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1とSnとが同じであるか否か、より正確には、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるか否かにより判定される。さらに上記判定に加え、不良品の程度や、不良の発生率、不良品の発生回数、同じ仕上げ研磨平坦度の傾向Snの発生回数などを予め登録されたオペレータ経験値に基づいて判定してもよい。
【0210】
仕上げ研磨平坦度の傾向判定(ステップS67)では、仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)において算出された仕上げ研磨平坦度の傾向Snを測定結果として、測定結果と第3Eの基準との比較が行われる。そして、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Eの基準を満たしていない場合(ステップS67でNO)、仕上げ研磨における仕上げ研磨条件の変更が必要とされ、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)が選択される。
【0211】
例えば、仕上げ研磨平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらか片側に所定の閾値を超えて片寄って振れている状態か、または、プラス側またはマイナス側の両側に所定の閾値を超えて振れている状態かを、仕上げ研磨平坦度の傾向として第3Eの基準による判定に用いることができる。
例えば、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが、図8(a)に示すように仕上げ研磨平坦度の平坦度がプラス側またはマイナス側のどちらかに所定の閾値を超えて片寄って振れている状態から再度所定の閾値を超えて片寄って振れている状態に変化した場合、第3Eの基準を満たしていないとして、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)を選択する。
【0212】
また、例えば、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(a)に示すように所定の閾値を超えて一方側に片寄って振れている状態から図8(b)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている上げ研磨平坦度の傾向Snに変化することがある。
【0213】
このように変化すると、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と仕上げ研磨平坦度の傾向Snが異なる場合(ステップS67でNO)、つまり、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と異なるときは(ステップS67でNO)、第3Eの基準を満たしていないとして、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)を選択する。あるいは、第3Eの基準を満たしていないとして、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS69)を選択する。
【0214】
仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)においては、仕上げ研磨パッドがハードディスク用基板10を押える圧力、研磨機の上側定盤および/または下側定盤の回転数、所定研磨時間などの仕上げ研磨条件が制御装置により変更される。
【0215】
そして、前回の研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同じ場合(ステップS67でYES)、つまり、前回の粗研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1が図8(b)に示すように所定の閾値を超えて両側に振れている状態から、同様に図8(c)に示すような所定の閾値を超えて両側に振れている仕上げ研磨平坦度の傾向Snに変化することがある。
【0216】
このように変化した場合のように、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるときは(図8(c))、仕上げ研磨パッドが摩耗し滑ってしまい、これ以上の仕上げ研磨条件の変更を繰り返しても、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Aの基準を満たすことは困難であると判定し、第3Eの基準を満たすとして、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS69)を選択する。
【0217】
図示していないが、仕上げ研磨パッドの交換後、仕上げ研磨(ステップS54)を行う前に試運転を行ってもよい。なお、ここでの仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同じ場合とは、数値が完全に一致することを指すのではなく、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが同様であることを指す。
【0218】
仕上げ研磨パッドの交換が手動で行われる場合には、仕上げ研磨パッドの交換が必要である旨が、図示しない表示装置に表示され、仕上げ研磨パッドの交換が必要であることが作業者によって認識されるように表示があってもよい。第2実施形態では、傾向が同じであるか否かを判定する基準として、前回の仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1を用いているが、前々回の仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-2のように、基準を適宜変更することができる。
【0219】
第2実施形態の説明において粗研磨条件変更判定における第3Bの基準と仕上げ研磨条件変更判定における第3Dの基準、または粗研磨平坦度の傾向判定における第3Cの基準と仕上げ研磨平坦度の傾向判定におけるける第3Eの基準の説明を同じように説明しているが、第3Bの基準と第3Dの基準、第3Cの基準と第3Eの基準のそれぞれを揃える必要はなく、粗研磨毎または仕上げ研磨毎に異なる基準を設けてもよい。また、第1実施形態の粗研磨調整工程と第2実施形態の粗研磨調整工程、第1実施形態の仕上げ研磨調整工程と第2実施形態の仕上げ研磨調整工程、はそれぞれ対応している。
【0220】
以下、第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法の効果について説明する。
【0221】
第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法は、粗研磨(ステップS51)、粗研磨平坦度測定(ステップS53)、仕上げ研磨(ステップS54)および仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)を含む。
【0222】
この製造方法では、ハードディスク用基板10を粗研磨し、続いて仕上げ研磨し、仕上げ研磨後のハードディスク用基板10の研磨平坦度を測定する。そして、平坦度測定で所定枚数のハードディスク用基板10について測定した測定結果から所定枚数のハードディスク用基板10の仕上げ研磨平坦度の傾向Snを算出する。そして、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Aの基準を満たしているかを判定し(ステップS57)、第3Aの基準を満たしていないことを条件として、粗研磨調整あるいは仕上げ研磨調整を行う。
【0223】
仕上げ研磨平坦度測定(ステップS56)で測定した仕上げ研磨平坦度が第3Aの基準を満たしていないと判定された場合に(ステップS57でNO)、粗研磨後のハードディスク用基板10の粗研磨平坦度を測定し、少なくとも1枚以上のハードディスク用基板10の粗研磨平坦度と、仕上げ研磨平坦度の傾向Snとの比較が行われる(ステップS58)。
【0224】
そして、比較の結果、粗研磨平坦度が仕上げ研磨平坦度の傾向Snと一致していると判定されたときは、粗研磨調整(ステップS60)に移行し、粗研磨における研磨条件の変更または研磨パッドの交換を行う。そして、比較の結果、粗研磨平坦度が仕上げ研磨平坦度の傾向Snと一致していないと判定されたときは、仕上げ研磨調整(ステップS61)に移行し、仕上げ研磨における研磨条件の変更または研磨パッドの交換を行う。
【0225】
この構成により、研磨不良の原因が粗研磨と仕上げ研磨の何れにあるのかが容易に判定でき、粗研磨または仕上げ研磨における研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに行うことができる。したがって、粗研磨および仕上げ研磨において高精度の研磨が行われ、不良のハードディスク用基板の発生が抑制されるという効果が得られる。
【0226】
粗研磨調整(ステップS60)では、粗研磨平坦度の傾向Snが第3Bの基準を満たすかを判定し、満たさないときは粗研磨条件の変更(ステップS64)を行う。そして、粗研磨平坦度の傾向Snが第3Bの基準を満たすときは、第3Cの基準に基づいて、粗研磨条件の変更(ステップS64)と粗研磨パッドの交換(ステップS65)の何れを選択するのかを判定する(ステップS63)。
【0227】
したがって、第3Bの基準を満たさないとき、あるいは、第3Bの基準は満たすが第3Cの基準を満たさないときは、粗研磨条件の変更(ステップS64)が選択される。したがって、新たな研磨パッドに交換することなく、速やかに粗研磨平坦度の傾向Snを変更することができる。したがって、ハードディスク用基板10に対して適切な研磨を行うことができるという効果が得られる。
【0228】
そして、粗研磨調整(ステップS60)において、第3Bの基準と第3Cの基準の両方を満たすとき、つまり、今回の粗研磨平坦度の傾向Snが前回の粗研磨条件の変更時における粗研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるときは、粗研磨パッドの交換(ステップS65)が選択される。
【0229】
したがって、例えば、研磨調整によりハードディスク用基板10を研磨する圧力を変更しても改善することが困難である場合や、粗研磨パッドの交換の時期が既に経過し、粗研磨パッドが摩耗し滑ってしまい所定の研磨量が得られない状態の場合に、粗研磨パッドを速やかに交換することができ、ハードディスク用基板10に対して適切な粗研磨を行うことができるという効果が得られる。
【0230】
仕上げ研磨調整(ステップS61)では、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Dの基準を満たしているかを判定し、満たさないときは仕上げ研磨条件の変更を行う(ステップS68)。そして、仕上げ研磨平坦度の傾向Snが第3Dの基準を満たすときは、第3Eの基準に基づいて、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)と仕上げ研磨パッドの交換(ステップS69)の何れを選択するのかを判定する(ステップS67)。
【0231】
したがって、第3Dの基準を満たさないとき、あるいは、第3Dの基準は満たすが第3Eの基準を満たさないときは、仕上げ研磨条件の変更(ステップS68)が選択される。したがって、新たな研磨パッドに交換することなく、速やかに仕上げ研磨平坦度の傾向Snを変更することができる。したがって、ハードディスク用基板10に対して適切な研磨を行うことができるという効果が得られる。
【0232】
そして、仕上げ研磨調整(ステップS61)において、第3Dの基準と第3Eの基準の両方を満たすとき、つまり、今回の仕上げ研磨平坦度の傾向Snが前回の仕上げ研磨条件の変更時における仕上げ研磨平坦度の傾向Sn-1と同じであるときは、仕上げ研磨パッドの交換(ステップS69)が選択される。
【0233】
したがって、例えば、仕上げ研磨調整によりハードディスク用基板10を研磨する圧力を変更しても改善することが困難である場合や、仕上げ研磨パッドの交換の時期が既に経過し、仕上げ研磨パッドが摩耗し滑ってしまい所定の研磨量が得られない状態の場合に、仕上げ研磨パッドを速やかに交換することができ、ハードディスク用基板10に対して適切な仕上げ研磨を行うことができる。
【0234】
第2実施形態に係るハードディスク用基板10の製造方法は、ハードディスク用基板10の平坦度を測定し、測定された平坦度に基づいて、研磨条件の変更または研磨パッドの交換を速やかに選択することで、高精度の研磨を可能にし、不良のハードディスク用基板10の発生を抑制することができるという効果が得られる。
【0235】
本発明は、上述の各実施形態で説明した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記した第1実施形態及び第2実施形態では、ハードディスク用基板10をアルミ基板で構成した場合について説明した。しかしながら、本発明に係るハードディスク用基板の製造方法においては、ハードディスク用基板をガラス基板で構成するようにしてもよい。ガラス基板の表面には、化学強化によって化学強化層が形成されるが、めっき皮膜と同様に、化学強化層の厚さに起因してガラス基板の平坦度に影響を与える可能性がある。したがって、本発明にかかるハードディスク用基板の製造方法において、化学強化層を有するガラス基板を、ハードディスク用基板として用いることができ、本発明と同様の効果を得ることができると考えられる。
【符号の説明】
【0236】
10・・・ハードディスク用基板
S21 粗研磨工程(研磨工程)
S23 粗研磨平坦度測定工程(研磨平坦度測定工程)
S24 粗研磨平坦度判定工程(研磨平坦度判定工程)
S25 粗研磨調整工程(研磨調整工程)
S26 仕上げ研磨工程(研磨工程)
S28 仕上げ研磨平坦度測定工程(研磨平坦度測定工程)
S29 仕上げ研磨平坦度判定工程(研磨平坦度判定工程)
S30 仕上げ研磨調整工程(研磨調整工程)
図1
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