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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】フッ化物イオン含有溶液を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20231020BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20231020BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20231020BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20231020BHJP
   H01M 8/02 20160101ALN20231020BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0568
H01G11/62
H01G11/60
H01M8/02
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021033591
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2018502753の分割
【原出願日】2016-08-04
(65)【公開番号】P2021099999
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】62/200,998
(32)【優先日】2015-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】サイモン シー ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィクトリア ケイ デービス
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エム ベイツ
(72)【発明者】
【氏名】ネボイサ モムシロヴィック
(72)【発明者】
【氏名】ブレット エム サヴォイエ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エイ ウェブ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エフ ミラー ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エイチ グラブズ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ブルックス
(72)【発明者】
【氏名】大道 馨
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-501434(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093272(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0566-10/0569
H01M 10/05
H01M 10/36
H01G 11/60-11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオン含有溶液を製造する方法であって、
フッ化物塩を一またはそれよりも多くの非水溶媒に溶解し、一またはそれよりも多くの非水溶媒に無水の形で前記フッ化物塩を提供する工程を含む方法であり、:
前記フッ化物塩は、
一またはそれよりも多くのフッ化物イオン;および
有機カチオン
を含むもので:
有機カチオンは、結合水素を有するβ位において炭素をもたず;および
カチオン電荷中心は、N、P、S、またはOであるもの;および
一またはそれよりも多くの非水溶媒を含み;
前記一またはそれよりも多くの非水溶媒は、フッ素化されており、且つ、形態[X-(CH2)n-Y]によって特徴付けられる少なくとも一の官能基を含み、式中、XおよびYは、CH2基または基群に部分正電荷を付与するために組合せの効果をもつ極性官能基であり、およびn=1または2であり、
前記フッ化物塩は、置換または非置換(2,2-ジメチルプロピル)トリメチルアンモニウムフロライド(NpMe3NF)または置換または非置換ビス(2,2-ジメチルプロピル)ジメチルアンモニウムフロライド(Np2Me2NF)であり;および
前記溶液において溶解された前記フッ化物イオンの濃度は、0.05Mより高いか、またはそれに等しい、フッ化物イオン含有溶液を製造する方法。
【請求項2】
前記溶液において溶解された前記フッ化物イオンの濃度が、1Mより高いか、またはそれに等しく、かつ、20Mより低いか、またはそれに等しい、請求項1の方法。
【請求項3】
前記YはOまたはSであり、前記Xは、エーテル、エステル、無水酸、アミン、アミド、炭酸塩、スルホン、スルホニルエステル、リン酸、ニトリル、ニトロ、アルデヒド、酢酸塩、SF5、またはフッ化炭素からなる群から選択される官能基である、請求項1の方法。
【請求項4】
前記一またはそれよりも多くの非水溶媒は、式(FX7a)、(FX7b)、(FX7c)、(FX7d)、(FX7e)または(FX7g):
【化1】
によって特徴付けられる、請求項1の方法。
【請求項5】
前記非水溶媒は、フッ素化ホスファイトであり、フッ素化ホスファイトは式(FX8a);
【化2】
によって特徴付けられる、請求項1の方法。
【請求項6】
前記非水溶媒は、フッ素化エステルであり、フッ素化エステルは式(FX9b);
【化3】
によって特徴付けられる、請求項1の方法。
【請求項7】
前記非水溶媒は、ニトリルであり、ニトリルは式(FX10c);
【化4】
によって特徴付けられる、請求項1の方法。
【請求項8】
前記非水溶媒は、式(FX12a):
【化5】
によって特徴付けられ、
式中、R7は、ハロゲン基、または、ハロゲン置換のC1-C20アルキル、ハロゲン置換のC3-C20シクロアルキル、ハロゲン置換のC5-C30アリール、ハロゲン置換のC5-C30ヘテロアリール、ハロゲン置換のC1-C20アシル、ハロゲン置換のC2-C20アルケニル、ハロゲン置換のC3-C20シクロアルケニル、ハロゲン置換のC2-C20アルキニル、ハロゲン置換のC5-C20アルキルアリール、ハロゲン置換のC2-C20アルコキシカルボニル、ハロゲン置換のC21-C30脂肪族、ハロゲン置換のC 21 -C30脂環式もしくはハロゲン置換のC 4 香族であり;および
式中、nは1ないし20の範囲から選ばれる整数である、請求項1の方法。
【請求項9】
前記溶液は、前記一またはそれよりも多くの非水溶媒と異なる、第二の非水溶媒をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項10】
第二の非水溶媒は、エーテルまたはグリムである、請求項9の方法。
【請求項11】
前記一またはそれよりも多くの非水溶媒と前記第二の非水溶媒の量の比率量の比は、1: 20から20: 1までの範囲から選ばれる、請求項9の方法。
【請求項12】
前記フッ化物塩が第一フッ化物塩であり、溶解工程は、第一フッ化物塩とは異なる第二フッ化物塩を、フッ化物イオン含有溶液中に溶解する工程を含み、;および、
前記第二フッ化物塩は、
1つ以上の第二のフッ化物イオン;そして
第二の有機カチオン、
を含むもので;
第二の有機カチオンのカチオン電荷中心は、N、P、S、またはOであるもの;である、請求項1の方法。
【請求項13】
前記フッ化物イオン含有溶液は、25℃で0.1mS/cmより大きいか、またはそれに等しいイオン伝導性を提供する、請求項1の方法。
【請求項14】
前記一またはそれよりも多くの非水溶媒は、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)、トリス(2,2,2トリフルオロエチル)ホスファイト(TTFP)、2,2,2-トリフルオロアセテート(TFE-TFA)、メトキシアセトニトリル(MeOAN)、3-メトキシプロピオニトリル(3-MeOPN)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)からなる群から選択される、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2015年8月4日付け出願の、および「Non-Aqueous Fluoride Salts, Soluti
ons and their uses(非水フッ化物塩、溶液およびそれらの使用)」と題する米国仮出願
第62/200,998号の利益およびそれに対する優先権を主張する。上記出願の全体の教示は参
照によりここに組み込む。
【0002】
政府支援
ここに記載される発明は、NASA契約NNN12AA01Cの下での作業の実行において行われ、お
よび公法96-517(35 USC 202)の規定に従うもので、請負者はタイトルを保持することを
選択した。
【背景技術】
【0003】
背景
バッテリーは、一般的に、正極(放電中のカソード)、負極(放電中のアノード)、お
よびそれらの間のイオン輸送のための電解質を含む。電解質は電荷キャリアとして作用す
る一またはそれよりも多くのイオン種を含むことができる。広く利用可能な多くのバッテ
リーシステムは、カチオン電極反応に基づき、電極は電解質からカチオンを捕捉するか、
または放出し、および電荷を外部回路からの電子とバランスさせる。その非常に低い電気
化学的酸化/還元電位および軽量のために、元素のリチウム(Li)がカチオンベースのバ
ッテリーシステムにおいて普通に使用される。リチウムおよびリチウムイオンバッテリー
の双方が商業上利用可能であり、そして広く用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リチウム金属またはリチウム含有電極の電気化学は、商業的使用のため
の問題を提示する。一態様では、リチウム金属は非常に反応性があり、そして安全な形態
においてリチウムを貯蔵(例えば、インターカレート)するために安全装置が使用され、
電池重量が増加し、エネルギー密度が低下する。例えば、個々のLiイオンバッテリーおよ
びLiイオンバッテリーパックは、電圧または温度が最適動作範囲外になるとき、バッテリ
ーをシャットダウンするために高価な電圧および熱の制御回路を含むことが多い。
【0005】
フッ化物-アニオン系電極反応は、リチウムおよびリチウムイオンバッテリーの代替物
を提供する。例えば、フッ化物イオンバッテリー(FIB)では、アノードおよびカソード
は、物理的には互いに分離されるが、フッ化物アニオン伝導電解質と共通して接触する。
アノードおよびカソードは、低電位要素または化合物(例えば、金属、金属フッ化物、ま
たはインターカレート組成物、例えば、グラファイトまたは他の炭素系物質などのような
もの)から典型的に形成され、そこではカソード物質はアノード物質よりも高い電位を有
する。フッ化物アニオン伝導電解質においてフッ化物アニオン(F-)は、放電中にカソー
ドからアノードに、およびバッテリーの充電中にアノードからカソードに移動する。
【0006】
特に、そのようなフッ化物イオンバッテリーの動作は、作動用に電解質において容易に
移動できるF-源を必要とする。しかし、多くのソリッド・ステート(固体の状態、固態と
も言う)電解質組成物は、約200℃未満の温度で低いイオン伝導度を有し、高い電池内部
抵抗が原因で低温での電池性能の顕著な低下をもたらす。さらに、共通金属フッ化物(例
えば、LiF、CsF、MgF2、BaF2)、遷移金属フッ化物(例えば、VF4、FeF3、MoF6、PdF2、A
gF)、主族金属フッ化物(例えば、AlF3、PbF4、BiF3)およびランタニドまたはアクチニ
ドフッ化物(例えば、LaF3、YF3、UF5)は、有機溶媒においてほとんど不溶性であり、そ
して液状電解質成分として用いることができない。
【0007】
したがって、電気化学的な適用における使用のための優れたフッ化物系電解質に対する
継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態は、無水フッ化物塩、随意に無水の、リチウムフリーのフッ化物塩、
およびその非水溶液を提供する。フッ化物塩および非水性溶媒の組合せは、例えば、様々
な用途のために、電気化学システム用の電解質を含めて有用な、高いフッ化物イオン濃度
を有して提供される。電気化学システムは、高濃度のフッ化物イオンによって特徴付けら
れる非水電解質成分を組み込んで、フッ化物イオンバッテリーシステム、随意に、リチウ
ムフリーのフッ化物イオンバッテリーシステムを含めて提供される。
【0009】
いくらかの実施形態では、フッ化物塩の分子構造は、(i)実質的な分解を伴わずに無
水形態において作られるそれらの能力、および(ii)非水溶媒において高いフッ化物イオ
ン濃度を生成するために効率的な解離を達成するそれらの能力を促進する。例えば、いく
つかの用途に有用なフッ化物塩には、一またはそれよりも多くのフッ化物イオンおよびβ
位に炭素をもたないか、または結合水素を有するβ位において炭素をもたない有機カチオ
ンが含まれる(例えば、N、P、S、またはOの電荷中心をもつ)。一定の実施形態において
、有機カチオンには、結合水素を有するβ位においてsp3混成炭素(hybridized carbon)
をもたない。フッ化物塩の例には、制限されないが、アルキルアンモニウム塩、例えば、
(2,2-ジメチルプロピル)トリメチルアンモニウムフッ化物(NpMe3NF)およびビス(2,2ジ
メチルプロピル)ジメチルアンモニウムフッ化物(Np2Me2NF)などのようなものを含め、
アンモニウム塩が含まれ得る。
【0010】
本開示の実施形態は、一またはそれよりも多くの非水溶媒において高フッ化物イオン濃
度によって特徴付けられるこれらのフッ化物塩の非水溶液を提供する(例えば、0.05Mよ
りも高いか、またはそれに等しく、および一定のケースでは最大20Mまで)。フッ化物塩
は、電解質溶液を形成するために、非水溶媒との接触に先立って無水である。すなわち、
フッ化物塩は電解質内のインシトゥーで形成されない。以下でより一層詳細に議論するよ
うに、これらのフッ化物塩と少なくとも一の含フッ素非水溶媒との組合せは、非水溶媒内
でのフッ化物塩の解離および溶解性を促進することが確認された。理論によって拘束され
るものではないが、例えば、電子求引基(例えば、Oおよび/またはCF3)に隣接するCH2
分を含む構造を有する溶媒は、CH2部分での部分的な正電荷の増加を引き起こすと考えら
れる。CH2部分での部分的な正電荷は、フッ化物イオンのカチオン溶媒和および付随する
溶解性をさらに促進する。
【0011】
例えば、以下でより一層詳細に議論するように、CH2部分の有無にかかわらず、溶媒で
のフッ化物イオンおよび異なるカチオンの溶媒和自由エネルギーを比較する理論的計算(
例えば、形態X-CH2-Y-CH2-XまたはX-(CH2)2-Y-(CH2)2-Xによって特徴付けられ、ここでは
X、Yは電子求引基である)は、CH2部分を欠く溶媒がフッ化物溶解度の顕著な低下を見せ
ることを例示する。さらに、電子求引基に隣接するCH2部分を含む構造を有する溶媒は、
電子求引基に隣接するCH2部分を欠く溶媒と比較して、フッ化物溶媒和自由エネルギーに
おいて最大10倍までの増加を見せる。加えて、電子密度修飾基、例えば、電子供与性およ
び/または電子求引性基などのようなものの存在は、カチオン電荷中心に隣接し、カチオ
ンの溶媒への誘引を修飾し、カチオンが溶解性を高めるために異なる溶媒に調整されるの
を可能にすることができる。
【0012】
開示された実施形態の非水溶液は、ある範囲のフッ素化および非フッ素化溶媒と適合性
がある。フッ素化された、非水溶媒の例には、制限されないが、ビス(2,2,2-トリフルオ
ロエチル)エーテル(BTFE)が含まれる。さらなる実施形態では、溶媒は、少なくとも一
の非水含フッ素溶媒(例えば、BTFE)および少なくとも一の非水性の、含非フッ素溶媒(
例えば、プロピオニトリル(PN)、ジメトキシエタン(DME))の混合物であり得る。例
えば、以下で詳述するように、BTFE/PNの溶媒混合物を含む電解質溶液は、同じモル濃度
にて純粋なBTFEよりも高い導電率を示すことが観察される。理論によって束縛されないが
、溶媒、例えば、BTFEなどのようなものは、イオン対として高濃度にてフッ化物塩を電荷
分離および/または溶解する(charge separate and/or dissolve)ことができると考えら
れ、その一方で、溶媒、例えば、PNなどのようなものは、塩を解離するが、純粋な溶媒に
おいて匹敵する濃度にて塩を溶解するのに足りる極性がない。
【0013】
本開示のさらなる実施形態は、電気化学的用途で、例えば、フッ化物イオンバッテリー
、電気化学二重層キャパシター、および電気化学的フッ素化反応で、例えば、インターカ
レーション反応などのようなものにおけるこれらの高濃度電解質溶液の使用を提示する。
【0014】
ある実施形態では、電解質溶液を提供する。本溶液には、フッ化物塩および一またはそ
れよりも多くの非水溶媒、例えば、フッ素化溶媒、非フッ素化した、非水溶媒、またはそ
れらの組合せが含まれる。フッ化物塩には、一またはそれよりも多くのフッ化物イオンお
よび有機カチオンが含まれ、有機カチオンはβ位において炭素をもたないか、または結合
水素を有するβ位において炭素をもたず、およびカチオン電荷中心はN、P、S、またはOで
ある。前記電解質溶液において溶解された前記フッ化物イオンの濃度は、0.05Mより高い
か、またはそれに等しい。
【0015】
電解質溶液の実施形態は、以下のうちの一またはそれよりも多くを、任意の組合せにお
いて含むことができる。
【0016】
ある実施形態では、有機カチオンは、β位において炭素をもたないか、または結合水素
を有するβ位においてsp3混成炭素をもたない。
【0017】
電解質溶液の一実施形態において、前記電解質溶液において溶解された前記フッ化物イ
オンの濃度は、1Mより高いか、またはそれに等しい。電解質溶液の一実施形態において、
前記電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの濃度は、0.5Mないし20Mの範囲にわ
たって選定される。
【0018】
電解質溶液の一実施形態では、フッ化物塩は無水形態において、前記非水溶媒に提供さ
れる。電解質溶液の一実施形態では、フッ化物塩はリチウムを含まない。
【0019】
電解質溶液の一実施形態では、フッ化物塩は置換または非置換アンモニウムフッ化物塩
である。置換または非置換のアンモニウムフッ化物塩には、式(FX1):
【化1】
によって特徴付けられる置換または非置換アルキルアンモニウムカチオンが含まれ、
式中、R1、R2、R3、およびR4の各々は、無関係に、C1-C20アルキル、C3-C20シクロアル
キル、C5-C30アリール、C5-C30ヘテロアリール、C1-C20アシル、C2-C20アルケニル、C3-C
20シクロアルケニル、C2-C20アルキニル、C5-C20アルキルアリール、C1-C20アルキル、C2
-C20アルコキシカルボニル、ハロであり;または式中、R1-R4の少なくとも二つは一また
はそれよりも多くの脂環式または芳香族、炭素環式または複素環式の5または6員環を形成
するために組み合わされる。
【0020】
電解質溶液のある実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、
ハロゲン置換された置換基である。
【0021】
電解質溶液のある実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、
フッ素置換された置換基である。
【0022】
電解質溶液のある実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、
極性置換基である。
【0023】
電解質溶液のある実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、
置換または非置換のフェニル、ベンジル、または複素環種からなる群より選ばれる極性基
である。
【0024】
電解質溶液のある実施形態では、アンモニウムフッ化物塩は、式(FX2a)、(FX2b)、
(FX2c)、または(FX2d):
【化2】
によって特徴付けられる。
【0025】
電解質溶液のある実施形態では、アンモニウムフッ化物塩は、置換または非置換のネオ
ペンチルアンモニウムフッ化物塩である。例えば、一実施形態では、置換または非置換の
ネオペンチルアンモニウムフッ化物塩は、式(FX3a)、(FX3b)、(FX3c)、または(FX
3d):
【化3】
によって特徴付けられる。
【0026】
電解質溶液の別の実施形態において、アンモニウムフッ化物塩は、置換または非置換の
ベンジルアンモニウムカチオンである。ある実施形態では、置換または非置換ベンジルア
ンモニウムカチオンは、式(FX4a)または(FX4b):
【化4】
によって特徴付けられ、
式中、R5はO-R6、N-R6、CO2-R6、CF3、SF5、または-SO2R6であり、R5a-R5eは無関係に
、H、O-R6、N-R6、CO2-R6、CF3、SF5、または-SO2R6から選ばれ、およびR6はH、C1-C10
ルキル、またはC1-C10アリールである。
【0027】
電解質溶液のある実施形態では、R5は、N-(CH3)2、O-CH3、CO2-CH3、またはCF3の一で
ある。電解質溶液のある実施形態では、R6はC1-C10フルオロカーボンである(例えば、CF
3またはC2F5)。
【0028】
電解質溶液の別の実施形態において、フッ化物塩は、置換または非置換ヘキサメチレン
テトラミン(HMT)フッ化物塩である。
【0029】
電解質溶液の別の実施形態において、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)フッ化物塩は
、式(FX5a)、(FX5b)、(FX5c)、(FX5d):
【化5】
によって特徴付けられる。
【0030】
別の実施形態において、フッ化物塩は、置換または非置換の、飽和または不飽和の複素
環式フッ化物塩であり、そこで、複素環式カチオンには、四、五、六、または七員環の一
部として一またはそれよりも多くの窒素、酸素、硫黄、またはリン原子が含まれ、そこで
は、複素環式カチオンの一またはそれよりも多くは複素環式カチオンのアルキル化を通し
て付与される形式電荷を有し、および複素環式カチオンはβ位において炭素をもたないか
、または結合水素を有するβ位においてsp3混成炭素をもたない。
【0031】
別の実施形態において、複素環式フッ化物塩は、式(FX6a)、(FX6b)、(FX6c)、(
FX6d)、(FX6e)、(FX6f)、(FX6g)、(FX6h)、または(FX6i):
【化6】
によって特徴付けられる。
【0032】
電解質溶液の別の実施形態において、非水溶媒は、一またはそれよりも多くのフッ素化
された非水溶媒である。
【0033】
電解質溶液の別の実施形態では、非水溶媒は形態[X-(CH2)n-Y]によって特徴付けられ、
式中、n=1または2、そこで、XおよびYは、CH2基または基群にて部分的に正の電荷を与え
るために結合された効果を有する電子求引性官能基である。
【0034】
電解質溶液の別の実施形態では、YはOまたはSであり、およびXは、エーテル、エステル
、酸無水物、アミン、アミド、カーボナート、スルホン、スルホニルエステル、ホスファ
イト、ホスファート、ニトリル、ニトロ、アルデヒド、アセタート、SF5、またはフルオ
ロカーボン(例えば、-CF3、-CF2CF3)からなる群より選ばれる官能基である。
【0035】
電解質溶液の別の実施形態において、非水溶媒は、形態[X-(CH2)n-Y]によって特徴付け
られる少なくとも一の官能基を含め、芳香族溶媒であり、式中、n=1または2、およびそこ
では、XおよびYは極性官能基で、CH2基または基群にて部分的な正電荷を付与するために
結合された効果を有する。
【0036】
電解質溶液の別の実施形態では、YはOまたはSであり、およびXは、エーテル、エステル
、酸無水物、アミン、アミド、カーボナート、スルホン、スルホニルエステル、ホスファ
イト、ホスファート、ニトリル、ニトロ、アルデヒド、アセタート、SF5、またはフルオ
ロカーボン(例えば、-CF3、-CF2CF3)からなる群より選ばれる官能基である。
【0037】
電解質溶液の別の実施形態において、非水溶媒は、フッ素化エーテルおよびその任意の
組合せである。例えば、ある実施形態では、フッ素化エーテルは、式(FX7a)(FX7b)、
(FX7c)、(FX7d)、(FX7e)、(FX7f)、または(FX7g):
【化7】
によって特徴付けられる。
【0038】
電解質溶液の一実施形態では、非水溶媒は、フッ素化ホスファイトおよびその任意の組
合せである。例えば、ある実施形態では、フッ素化ホスファイトは、式(FX8a):
【化8】
によって特徴付けられる。
【0039】
電解質溶液の別の実施形態において、非水溶媒は、フッ素化エステルまたは無水物、お
よびそれらの任意の組合せである。例えば、ある実施形態では、フッ素化エステルまたは
無水物は、式(FX9a)、(FX9b)、または(FX9c):
【化9】
によって特徴付けられる。
【0040】
電解質溶液の別の実施形態では、非水溶媒は、ニトリルおよびその任意の組合せである
。例えば、ある実施形態では、ニトリルは、式(FX10a)、(FX10b)、(FX10c)、また
は(FX10d):
【化10】
によって特徴付けられる。
【0041】
電解質溶液の別の実施形態において、非水溶媒は、フッ素置換芳香族溶媒およびその任
意の組合せである。例えば、ある実施形態では、フッ素置換芳香族は、式(FX11a)、(F
X11b)、(FX11c)、または(FX11d):
【化11】
によって特徴付けられる。
【0042】
電解質溶液の別の実施形態において、非水溶媒は、式(FX12a)または(FX12b)および
それらの任意の組合せ:
【化12】
によって特徴付けられ、
式中、R7は、置換または非置換のC1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C5-C30アリ
ール、C5-C30ヘテロアリール、C1-C20アシル、C2-C20アルケニル、C3-C20シクロアルケニ
ル、C2-C20アルキニル、C5-C20アルキルアリール、C1-C20アルキル、C2-C20アルコキシカ
ルボニル、またはハロであり;または式中、R1-R4の少なくとも二つは一またはそれより
も多くの脂環式または芳香族、炭素環式または複素環式の5または6員環を形成するために
組み合わされ、および式中、nは1ないし20の範囲から選ばれる整数である。
【0043】
さらなる実施形態では、ある電解質溶液が提供される。本電解質溶液には、フッ化物塩
、および第一の非水含フッ素溶媒および第一の溶媒とは異なる、第二の、非水溶媒を含め
、非水溶媒混合物が含まれる。フッ化物塩には、一またはそれよりも多くのフッ化物イオ
ンおよび有機カチオンが含まれ、そこでは、有機カチオンは、β位において炭素をもたな
いか、または結合水素を有するβ位において炭素をもたず、およびカチオン電荷中心は、
N、P、S、またはOである。電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの濃度は、0.05
Mよりも高いか、またはそれに等しい。
【0044】
電解質溶液の実施形態は、以下の一またはそれよりも多くを任意の組合せで含むことが
できる。
【0045】
電解質溶液の別の実施形態では、電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの濃度
は1Mより高いか、またはそれに等しい。電解質溶液の別の実施形態では、電解質溶液にお
いて溶解されたフッ化物イオンの濃度は、0.05Mないし20Mの範囲にわたって選ばれる。
【0046】
電解質溶液の別の実施形態では、第二の、非水溶媒は含非フッ素溶媒である。
【0047】
電解質溶液の別の実施形態では、第二の、非水溶媒は含フッ素溶媒である。
【0048】
電解質溶液の別の実施形態では、第一の溶媒および第二の溶媒の量の比は1:2より大き
い。電解質溶液の別の実施形態では、第一の溶媒および第二の溶媒の量の比は、1:20か
ら20:1まで、および随意に1:2から9:1までの範囲から選ばれる。
【0049】
電解質溶液の別の実施形態において、第一の溶媒および第二の溶媒は、それぞれ無関係
に極性溶媒である。
【0050】
電解質溶液の別の実施形態において、第一の溶媒、第二の溶媒、またはその双方は、エ
ーテル、エステル、酸無水物、アミン、アミド、カーボナート、スルホン、スルホニルエ
ステル、ホスファイト、ホスファート、ニトリル、またはグリムからなる群より無関係に
選ばれる。
【0051】
電解質溶液の一実施形態では、第一の溶媒、第二の溶媒、またはその双方は、無関係に
、芳香族溶媒である。
【0052】
電解質溶液の別の実施形態では、第一の溶媒はフッ素化エーテルである。例えば、フッ
素化エーテルは、式(FX7a)または(FX7b)、(FX7c)、(FX7d)、(FX7e)、(FX7f)
、または(FX7g):
【化13】
によって特徴付けられる。
【0053】
電解質溶液の別の実施形態では、第一の溶媒はフッ素化ホスファイトである。例えば、
ある実施形態では、フッ素化ホスファイトは、式(FX8a):
【化14】
によって特徴付けられる。
【0054】
電解質溶液の別の実施形態では、第一の溶媒はフッ素化エステルまたは無水物である。
例えば、ある実施形態では、フッ素化エステルまたは無水物は、式(FX9a)、(FX9b)、
または(FX9c):
【化15】
によって特徴付けられる。
【0055】
電解質溶液の別の実施形態では、第一の溶媒はフッ素化ニトリルである。例えば、ある
実施形態では、フッ素化ニトリルは、式(FX10c):
【化16】
によって特徴付けられる。
【0056】
電解質溶液の別の実施形態では、第一の溶媒はフッ素化芳香族溶媒である。例えば、あ
る実施形態では、フッ素化芳香族溶媒は、式(FX11a)、(FX11b)、(FX11c)、または
(FX11d):
【化17】
によって特徴付けられる。
【0057】
電解質溶液の別の実施形態において、第二の溶媒は、ニトリル、ベンゾニトリル、ピリ
ジン、およびエステルからなる群より選ばれる。
【0058】
電解質溶液の別の実施形態において、第二の溶媒は、式(FX10a)、(FX10b)、または
(FX10d):
【化18】
によって特徴付けられるニトリルである。
【0059】
電解質溶液の一実施形態では、第二の溶媒は、式(FX13a)または(FX13b):
【化19】
によって特徴付けられる置換または非置換ベンゾニトリルである。
【0060】
電解質溶液の一実施形態では、第一の溶媒は、式(FX7a):
【化20】
によって特徴付けられ;および
第二の溶媒は、式(FX10a):
【化21】
によって特徴付けられる。
【0061】
電解質溶液の一実施形態では、フッ化物塩には、置換または非置換アンモニウムフッ化
物塩が含まれる。
【0062】
電解質溶液の一実施形態では、置換または非置換アンモニウムフッ化物塩には、式(FX
1):R1R2R3R4N+(FX1)によって特徴付けられる置換または非置換アルキルアンモニウム
カチオンが含まれ、式中、各々のR1、R2、R3、およびR4は、無関係に、置換または非置換
のC1-C20アルキル、C3-C20シクロアルキル、C5-C30アリール、C5-C30ヘテロアリール、C1
-C20アシル、C2-C20アルケニル、C3-C20シクロアルケニル、C2-C20アルキニル、C5-C20
ルキルアリール、C1-C20アルキル、C2-C20アルコキシカルボニル、またはハロであり;ま
たは式中、R1-R4の少なくとも二つは一またはそれよりも多くの脂環式または芳香族、炭
素環式または複素環式の5または6員環を形成するために組み合わされる。
【0063】
電解質溶液の一実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、ハ
ロゲン置換された置換基である。
【0064】
電解質溶液の一実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、フ
ッ素置換された置換基である。
【0065】
電解質溶液の一実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、極
性置換基である。
【0066】
電解質溶液の一実施形態では、R1、R2、R3、およびR4の少なくとも一は、無関係に、置
換または非置換のフェニル、ベンジル、または複素環種からなる群より選ばれる極性基で
ある。
【0067】
電解質溶液の一実施形態では、アンモニウムフッ化物塩は、式(FX2a);(FX2b)、(
FX2c)、または(FX2d):
【化22】
【0068】
【化23】
によって特徴付けられる。
【0069】
電解質溶液の一実施形態では、アンモニウムフッ化物塩は、置換または非置換ネオペン
チルアンモニウムフッ化物塩である。
【0070】
電解質溶液の一実施形態では、置換または非置換ネオペンチルアンモニウムフッ化物塩
は、式(FX3a)、(FX3b)、(FX3c)、または(FX3d):
【化24】
によって特徴付けられる。
【0071】
電解質溶液の一実施形態では、アンモニウムフッ化物塩には、置換または非置換ベンジ
ルアンモニウムカチオンが含まれる。
【0072】
電解質溶液の一実施形態では、置換または非置換ベンジルアンモニウムカチオンは、式
(FX4a)または(FX4b):
【化25】
によって特徴付けられ;
式中、R5はO-R6、N-R6、CO2-R6、CF3、SF5、または-SO2R6であり、R5a-R5eは無関係に
、H、O-R6、N-R6、CO2-R6、CF3、SF5、または-SO2R6から選ばれ、およびR6はH、C1-C10
ルキル、またはC1-C10アリールである。
【0073】
電解質溶液の一実施形態では、R5は、N-(CH3)2、O-CH3、CO2-CH3またはCF3の一である
。電解質溶液のある実施形態では、R6はC1-C10フルオロカーボンである(例えば、CF3
たはC2F5)。
【0074】
電解質溶液の一実施形態では、フッ化物塩には、置換または非置換ヘキサメチレンテト
ラミン(HMT)フッ化物塩が含まれる。
【0075】
電解質溶液の一実施形態では、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)フッ化物塩は、式(F
X5a)、(FX5b)、(FX5c)、または(FX5d):
【0076】
【化26】
によって特徴付けられる。
【0077】
電解質溶液の一実施形態では、フッ化物塩は、置換または非置換の、飽和または不飽和
の複素環式フッ化物塩であり、そこで、複素環式カチオンは、一またはそれよりも多くの
窒素、酸素、硫黄、または燐原子を、四-、五-、六-、または七-員環の一部分として含み
、そこで、一またはそれよりも多くの複素環式カチオンは、複素環式カチオンのアルキル
化を通して付与される形式電荷を所有し、および複素環式カチオンは、β位において炭素
をもたないか、または結合水素を有するβ位においてsp3混成炭素をもたない。
【0078】
電解質溶液の実施態様において、複素環式フッ化物塩は、式(FX6a)、(FX6b)、(FX
6c)、(FX6d)、(FX6e)、(FX6f)、(FX6g)、(FX6h)、または(FX6i):
【化27】
によって特徴付けられる。
【0079】
さらなる実施形態では、電気化学セルが提供される。本電気化学セルには、正極、負極
、および正極と負極の間に設けられる電解質溶液が含まれる。電解質溶液には、フッ化物
塩および一またはそれよりも多くの非水溶媒が含まれる。フッ化物塩には、一またはそれ
よりも多くのフッ化物イオンおよび有機カチオンが含まれる。有機カチオンはβ位におい
て炭素をもたないか、または結合水素を有するβ位において炭素をもたず、およびカチオ
ン電荷中心はN、P、S、またはOである。電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの
濃度は、0.05Mよりも高いか、またはそれに等しい。
【0080】
ある実施形態では、ある電気化学セルを提供する。本電気化学セルには、正極、負極、
および正極と負極の間に設けられる電解質溶液が含まれる。電解質溶液には、フッ化物塩
および非水溶媒混合物が含まれる。フッ化物塩には、一またはそれよりも多くのフッ化物
イオンおよび有機カチオンが含まれる。有機カチオンはβ位において炭素をもたないか、
または結合水素を有するβ位において炭素をもたず、およびカチオン電荷中心はN、P、S
、またはOである。非水溶媒混合物には、第一の非水含フッ素溶媒および第一の溶媒とは
異なる、第二の、非水溶媒が含まれる。電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの
濃度は、0.05Mより高いか、またはそれに等しい。
【0081】
いずれかの電気化学セルの実施形態は、以下のうちの一またはそれよりも多くを任意の
組合せで含むことができる。
【0082】
電気化学セルの一実施形態では、電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの濃度
は1Mよりも高いか、またはそれに等しい。
【0083】
電気化学セルの一実施形態では、電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの濃度
は、0.05Mないし20Mの範囲にわたって選ばれる。
【0084】
電気化学セルの別の実施形態では、第二の、非水溶媒は含非フッ素溶媒である。
【0085】
電気化学セルの別の実施形態では、第二の、非水溶媒は含フッ素溶媒である。
【0086】
電気化学セルの一実施形態では、電解質溶液は、前記正極および負極の間でフッ化物イ
オンの輸送を提供する。
【0087】
電気化学セルの一実施形態では、電解質溶液は、25℃にて0.1mS/cmよりも高いか、また
はそれに等しいフッ化物イオンの導電率を提供する。
【0088】
電気化学セルの実施形態では、電解質溶液はリチウムを含まない。
【0089】
ある実施形態では、電気化学セルはリチウムを含まない。
【0090】
ある実施形態では、電気化学セルには、フッ化物イオン電気化学セルが含まれる。
【0091】
ある実施形態では、電気化学セルには、二次電気化学セルが含まれる。
【0092】
ある実施形態では、電気化学セルには、バッテリー、フューエルセル、電解システム、
またはキャパシターが含まれる。
【0093】
追加の実施形態では、電解質溶液が提供される。本電解質溶液には、第一のフッ化物塩
、第二のフッ化物塩、および一またはそれよりも多くの非水溶媒が含まれる。第一のフッ
化物塩には、一またはそれよりも多くのフッ化物イオンおよび有機カチオンが含まれ、そ
こでは、有機カチオンはβ位において炭素をもたないか、または結合水素を有するβ位に
おいて炭素をもたず、およびカチオン電荷中心は、N、P、S、またはOである。第二のフッ
化物塩は、第一のフッ化物塩とは異なり、および一またはそれよりも多くのフッ化物イオ
ンおよび有機カチオンを含み、そこでは、カチオン電荷中心はN、P、S、またはOである。
電解質溶液において溶解されたフッ化物イオンの濃度は、0.05Mより高いか、またはそれ
に等しい。
【0094】
電解質溶液の実施形態は、以下の一またはそれよりも多くを、任意の組合せで含むこと
ができる。
【0095】
電解質溶液の一実施形態では、第一のフッ化物塩には、置換または非置換アンモニウム
フッ化物塩が含まれ、および第二のフッ化物塩には、置換または非置換アンモニウムフッ
化物塩が含まれる。
【0096】
電解質溶液の一実施形態では、第二のフッ化物塩は、テトラメチルアンモニウムフッ化
物(TMAF)または式(FX2a):
【化28】
によって特徴付けられる。
【0097】
電解質溶液の一実施形態では、第一のアンモニウムフッ化物塩は、式(FX2b)、(FX2c
)、(FX3a)、(FX3b)、(FX4a)、(FX5a)、(FX5b)、(FX5c)、または(FX5d):
【化29】
によって特徴付けられる。
【0098】
電解質溶液の一実施形態では、第二のフッ化物塩の有機カチオンは、β位において炭素
をもたないか、または結合水素を有するβ位において炭素をもたない。
【0099】
電解質溶液の一実施形態では、第二のアンモニウムフッ化物塩は、式(FX2b)、(FX2c
)、(FX3a)、(FX3b)、(FX4a)、(FX5a)、(FX5b)、(FX5c)、(FX5d):
【化30】
によって特徴付けられる。
【0100】
電解質溶液の一実施形態では、第一のアンモニウムフッ化物塩は、式(FX2b)、(FX2c
)、(FX3a)、(FX3b)、(FX4a)、(FX5a)、(FX5b)、(FX5c)、または(FX5d):
【化31】
によって特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
前述の、および他の目的、特長および利点は、添付の図面において、同様の参照記号が
異なる見解を通して同じ部分に言及されて示されるように、実施形態の以下のより一層詳
細な説明から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺通りではなく、実施形態の原理
を例示することに重点が置かれる。
図1】HFおよびHF2 -を形成するための乾燥条件下でのテトラアルキルアンモニウムフッ化物塩の分解の説明図である。
図2】本開示の含フッ化物電解質の実施形態を採用する電気化学セルの実施形態の概略図である。
図3図3A-3Bは、(2,2-ジメチルプロピル)トリメチルアンモニウムフッ化物(NpMe3NF)の調製のための提案された合成経路の実施形態の生成物の1Hおよび19F NMRスペクトルである。
図4図4A-4Bは、ビス(2,2-ジメチルプロピル)ジメチルアンモニウムフッ化物(Np2Me2NF)の調製のための提案された合成経路の実施形態の生成物の1Hおよび19F NMRスペクトルである。
図5図5A-5Bは、NpMe3NFおよびプロピオニトリル(PN)の溶液の1Hおよび19F NMRスペクトルである。
図6図6A-6Bは、NpMe3NFおよびビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エーテル(BTFE)の溶液の1Hおよび19F NMRスペクトルである。
図7図7A-7Bは、NpMe3NFおよび2,6-ジフルオロピリジン(2,6-F2Py)の溶液の1Hおよび19F NMRスペクトルである。
図8図8A-8Bは、NpMe3NFおよびビス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボナート(BTFEC)の溶液の1Hおよび19F NMRスペクトルである。
図9図9A-9Bは、NpMe3NFおよび3-メトキシプロピオニトリル(3-MeOPN)の溶液の1Hおよび19F NMRスペクトルである。
図10】正に分極化されたCH2部分を伴う、および伴わない溶媒におけるフッ化物イオンおよび異なるカチオンの計算された溶媒和自由エネルギー(ΔGs)のプロットである。
図11図11Aは希釈濃度でのBTFE溶媒におけるフッ化物イオンについての分離の関数としての動径分布関数(radial distribution function、半径方向分布関数と言うことがある)のプロットである。 図11BはBTFE、1,2-ジメトキシエタン、および1-エトキシ-2-(メトキシエトキシ)エタンについての溶媒の関数としてのフッ化物イオン配位数のプロットである。
図12図12A-Dは、形態X-CH2-Y-CH2-XおよびX-CH2-CH2-Y-CH2-CH2-Xによって特徴付けられる種々の溶媒分子においてのCH2での部分電荷のプロットである。
図13】PN、2,6-F2Py、BTFE、およびPhTFAにおけるNpMe3NFの無水溶液についての0-40℃間の温度依存性イオン伝導度のプロットである。実験後のカールフィッシャー滴定によって測定されたこれらの溶液の含水量は、42ppm(BTFE)、4ppm(2,6-ジフルオロピリジン)、および137ppm(プロピオニトリル)である。
図14図14A-Dは、導電性実験後のBTFE、2,6-F2PyおよびPN溶液の19F NMRスペクトルである。
図15】種々の濃度およびPN含量(容量による)でのBTFEにおけるNpMe3NFおよびNp2Me2NFの溶液についての温度依存性イオン伝導度データのプロットである。
図16A図16A-16Bは、フッ化物塩および非水溶媒混合物を含む溶液;(A)NpMe3NF塩;(B)Np2Me2NF塩の導電率(conductivity、伝導度、伝導率とも言う)の棒グラフである。
図16B図16Aの説明に記載される。
図17】本開示の電解質溶液の実施形態についての線形掃引(リニアスイープ)ボルタモグラムから測定された電圧窓の棒グラフである。
図18-1】図18AはCu正極およびNpMe3NF/PN電解質溶液を含む電気化学セルの電気化学試験についての比容量(specific capacity)の関数としての電圧のプロットである。 図18B図18Aの電気化学セルのCu正極の、初期条件下、放電後、および充電後に測定されるX線回折スペクトルである。
図18-2】図18CはCu正極およびNpMe3NF/BTFE電解質溶液を含む電気化学セルの電気化学試験についての比容量の関数としての電圧のプロットである。 図18D図18Cの電気化学セルのCu正極の、初期条件下および放電後に測定されるX線回折スペクトルである。
【0102】
図面の簡単な説明中の図1中のHF2 -
は、
を表示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0103】
詳細な記載
概して、ここに使用する用語および語句は、それらの技術で認識される意味を有し、そ
れらはその技術において熟練する者(当業者と言うことがある)に知られる標準的なテキ
スト、雑誌参考文献および文脈を参照することによって見出すことができる。以下の規定
は、開示された実施形態の関係におけるそれらの特定の使用を明確にするために提供する
【0104】
「β-位においての炭素」または「β-炭素」は、関心がある原子、基、官能基または他
の部分から除かれる炭素原子のものを指す。一定の実施形態において、関心がある官能基
は、第四級アルキルアンモニウム官能基であり、およびβ-炭素は、アルキルアンモニウ
ム官能基からの第二の炭素である。
【0105】
「無水」は、塩、例えば、フッ化物塩などのようなものを含め、それが水を実質含まない
組成に言及する。ある実施形態では、例えば、百万あたり1000部(1000ppm)未満、およ
びいくらかの実施態様において百万あたり100部(100ppm)未満の量の水によって特徴付
けられる無水フッ化物塩が提供される。一実施形態では、例えば、ここに開示するような
フッ化物塩が無水形態で提供され、および一またはそれよりも多く(一以上と言うことが
ある)の非水溶液中に少なくとも部分的に溶解されるフッ化物イオン含有溶液の製造方法
が提供される。
【0106】
用語「電気化学セル」は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換し、または電気エネ
ルギーを化学エネルギーに変換するデバイスおよび/またはデバイス構成要素に言及する
。電気化学セルは、二またはそれよりも多くの電極(例えば、正および負の電極)および
電解質を有し、そこでは、電極表面にて生じる電極反応は、電荷移動プロセスをもたらす
。電気化学セルには、制限されないが、一次バッテリー(一次電池と言うことがある)、
二次バッテリー、電解システム、およびキャパシター(コンデンサと言うことがある)が
含まれる。
【0107】
「電極」は、導電体に言及し、そこでは、イオンおよび電子が電解質および外部回路と
交換される。「正の電極」および「カソード」は、本明細書では同義語的に使用し、およ
び電気化学的セルにおいてより一層高い(すなわち、負の電極よりも高い)電極電位を有
する電極に言及する。「負の電極」および「アノード」は、本明細書中では同義語的に使
用され、および電気化学的セルにおいてより一層低い(すなわち、正の電極より低い)電
極電位を有する電極に言及される。カソード還元は化学種の電子(群)の獲得に言及し、
およびアノード酸化は化学種の電子(群)の損失に言及する。本電気化学セルの正電極お
よび負電極は、導電性希釈剤、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、粉体グ
ラファイト、コークス、炭素繊維、および金属粉などのようなものをさらに含むことがで
き、および/またはバインダー、例えば、ポリマーバインダーなどのようなものをさらに
含みうる。いくつかの実施形態において、正極のための有用なバインダーには、フルオロ
ポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのようなものが含まれる。本電気
化学セルの正および負の電極は、有用な配置(configuration、構成と言うことがある)
および形状因子の範囲において、薄い電極設計、例えば、薄膜電極配置などのようなもの
を含め、電気化学およびバッテリー科学の技術において知られるように提供され得る。電
極は、ここに開示されるように、および当技術において知られ、例えば、米国特許第4,05
2,539号、第6,306,540号、第6,852,446号明細書に記載されるように製造され、各々を参
照することによってここに組み込む。いくらかの実施形態について、電極は典型的に、電
極物質、導電性不活性物質、バインダー、および液状キャリアを電極電流コレクタにて堆
積させること、および次いでキャリアを蒸発させて、粘性塊を電流コレクタと電気的接触
にさせることによって組み立てられる。
【0108】
F-を含む水性溶液は、電気化学的用途における電解質としての使用には問題がある。例
えば、図1において例示するように、F-イオンは水と迅速に反応し、フッ化水素酸(HF)
および複合イオン
(HF2 -と記すことがある)を形成する。HFの形成は望ましくなく、それは腐食性が強く、
および毒性が非常に高いためである。さらに、HF2 -は、電気化学的用途においてF-よりも
はるかに活性が低く、および極端な場合には、不活性でさえありうる。HF2 -はまた、興味
があるカソード反応より低い電位でH2を発生させ、電気化学的用途における有用な電位窓
が制限され、およびその電解質を採用する電気化学的セル(例えば、バッテリー)の障害
が潜在的に生じる。
【0109】
これらの問題を回避するため、非水F-電解質溶液の使用が望ましい。しかしながら、F-
の非水溶液は、有用であるのに足りる高い濃度(例えば、0.05Mより高いか、またはそれ
に等しい(0.05M以上であると言うことがある))で調製することは困難であることが判
明した。例えば、次の:
・金属フッ化物は、「可溶化」種、例えば、クラウンエーテルなどのようなものの存在
下でさえ、非水溶媒において高度に不溶性である。例えば、D. A. Wynn(ウィン)ら、「
The solubility of alkali-metal fluorides in non-aqueous solvents with and withou
t crown ethers, as determined by flame emission spectroscopy(フレーム発光分光法
によって測定された、クラウンエーテルを含む、および含まない非水溶媒におけるアルカ
リ金属フッ化物の溶解度)」、Talana(タランタ)、Vol. 31、No. 11(1984年11月)、1
036-1040頁参照。
・有機フッ化物は典型的に、乾燥条件下で(例えば、図1に例示するように、ホフマン
除去反応を通して)、有機カチオン(有機陽イオンとも言う)とF-との反応性が原因で、
水分汚染を除去するために乾燥するのが困難である。例えば、R.K. Sharma(シャルマ)
およびJ.L. Fry(フライ)、「Instability of anhydrous tetra-n-alkylammonium fluor
ides(無水テトラ-n-アルキルアンモニウムフッ化物の不安定性)」、J. Org. Chem.(ザ
・ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー)、Vol. 48、No.12(1983年6月)、p
p. 2112-2114参照。
・一定の場合に、無水有機フッ化物塩、例えば、テトラメチルアンモニウムフッ化物(
TMAF)などのようなものが知られ、これらの塩は非水溶媒において難溶性である。例えば
、K.O. Christe(クリステ)ら、「Syntheses, properties, and structures of anhydro
us tetramethylammonium fluoride and its 1:1 adduct with trans-3-amino-2-buteneit
rile(無水テトラメチルアンモニウムフッ化物およびそのトランス-3-アミノ-2-ブテンニ
トリルとの1:1付加物の合成、特性、および構造)」、J. Am. Chem. Soc.(ジャーナル
・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ)、Vol. 112、No. 21(1990年10月)参
照。
【0110】
上記の問題に対処するため、本開示の実施形態は、無水形態で調製することができる、
リチウムフリー(リチウムを含まないことを意味する)の、フッ化物塩を提示する。これ
らのフッ化物塩の分子構造は、分解することなく無水にされるそれらの能力を促進する。
例えば、フッ化物塩には、一またはそれよりも多くのフッ化物イオン、およびβ位におい
て炭素をもたないか、または結合水素を有するβ位において炭素をもたない有機カチオン
(例えば、N、P、S、またはOの電荷中心を有する)が含まれる。
【0111】
本開示のさらなる実施形態は、非水溶媒においてこれらのフッ化物塩の高濃度溶液(例
えば、0.05Mより高いか、またはそれに等しく、および場合によっては最大20Mまで)を提
示する。以下により一層詳細に論ずるように、これらのフッ化物塩と少なくとも一の含フ
ッ素非水溶媒との組み合わせが、フッ化物塩の非水溶媒内での溶解性を増進することが確
認された。さらなる実施形態では、溶媒は、少なくとも一の非水性の含フッ素溶媒および
少なくとも一の非水性の含非フッ素溶媒(non-fluorine containing solvent)の混合物
であってもよい。
【0112】
本開示のさらなる実施形態は、電気化学的用途、例えば、フッ化物イオンバッテリー、
電気化学二重層キャパシター、および電気化学的フッ素化反応などのようなものにおける
これらの高濃度電解質溶液の使用を提示する。
無水フッ化物塩
【0113】
考察は、次に、無水フッ化物塩の実施形態の設計検討に変わる。いくつかの用途では、
無水フッ化物塩は無水形態において安定であり、およびリチウムを含まない。以下の実施
例においてさらに論じるように、無水フッ化物塩および一以上の非水溶媒の実施形態を含
む溶液は、0.05Mよりも高いか、またはそれに等しい、一以上の非水溶媒内に溶解された
フッ化物イオンの濃度を見せる。さらなる実施形態では、一以上の非水溶媒内に溶解され
たフッ化物イオンの濃度は最大で20Mまでである。さらなる実施形態では、フッ化物イオ
ンの濃度は0.05Mないし20Mの範囲にわたって選ばれる。
【0114】
図1に関して上述したように、無水フッ化物塩はHFおよびHF2 -の形成を避けることが望
ましい。一実施形態では、この目的は、一以上のフッ化物イオンおよび有機カチオンを含
むフッ化物塩によって達成することができ、そこでは、有機カチオンは結合水素を有する
β位において炭素をもたず、この結合水素が乾燥の際に反応するからである。例えば、図
1に例示すように、β-炭素は、第四級アルキルアンモニウム官能基(N-(CH3)3)-+の窒素
から除去された一の炭素原子であり、および乾燥の際にHFが除去される。
【0115】
別の実施形態において、この目的は、一以上のフッ化物イオンおよび有機カチオンを含
むフッ化物塩によって達成され得、そこでは、有機カチオンはβ位において炭素をもたな
い。カチオン電荷中心は、窒素(N)、リン(P)、硫黄(S)、または酸素(O)から選ぶ
ことができる。
【0116】
しかし、特に、β位において炭素が存在しないか、または結合水素を有するβ位におい
て炭素が存在しないことは、フッ化物塩の非水溶媒での高レベルの溶解度を促進するには
不十分であり得ることが観察された。例えば、以下に例示する、テトラメチルアンモニウ
ムフッ化物(TMAF)が考えられる。
【化32】

テトラメチルアンモニウムフッ化物(TMAF)
以下に詳細に論じるように、TMAFは非水溶媒にあまり溶解しないことが観察された。
【0117】
β位において炭素をもたないか、または結合水素を有するβ位において炭素をもたない
フッ化物塩の溶解度は、カチオンのアルキル化および/または置換の程度を増加させるこ
と、および/またはカチオンの対称性を減少させることによって改善され得ることが確認
された。例えば、表1に例示するように、カチオンをネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル
)基により置換することで、アルキル化による溶解性を高めながらホフマン脱離を乾燥の
際に(upondrying)回避することが一つの解決策である。
【表1】
後述するように、ネオペンチルフッ化物塩には、制限されないが、(2,2-ジメチルプロ
ピル)トリメチルアンモニウムフッ化物(NpMe3NF)およびビス(2,2-ジメチルプロピル)ジ
メチルアンモニウムフッ化物(Np2Me2NF)が含まれる。包括的に、無水フッ化物塩の実施
形態は、置換または非置換アンモニウムフッ化物塩(フッ化アンモニウム塩とも言う)で
あってもよい。
【0118】
理論に束縛されないが、アルキルアンモニウムカチオンの電子供与性または電子求引性
によるアルキル化および/または置換は、カチオン電荷中心での電荷を修飾すると考えら
れる。さらに、溶媒および実施例に関してより一層詳細に後述するように、部分正電荷を
有するCH2部分が含まれる溶媒がそのような塩と組み合わせされるとき、溶媒によるカチ
オン、ならびにフッ化物アニオンの溶媒和は、改善され得る。
非水溶媒
【0119】
塩としてNpMe3NFを用いて実行される溶媒スクリーニングを、以下、例3において詳細に
論じる。このスクリーニングから識別される適切な非水溶媒の実施態様は、以下に概説さ
れる。ある実施形態では、非水溶媒には、少なくとも一のフッ素化された、非水溶媒が含
まれる。一実施形態では、非水溶媒は、形態XCH2YCH2XまたはXCH2CH2YCH2CH2X(すなわち
、[X-(CH2)n-Y]、式中、n=1または2である)によって特徴付けられ、式中、XおよびYは極
性官能基(すなわち、電子求引基)であり、CH2基またはその基群での部分正電荷を付与
するために結合された効果(複合効果と言うことがある)を有する。たとえば、YはOまた
はSであってよい。Xは官能基であることができ、それには、制限されないが、エーテル、
エステル、酸無水物、アミン、アミド、カーボナート、スルホン、スルホニルエステル、
ホスファイト(亜リン酸塩または亜リン酸エステルと言うことがある)、ホスファート(
リン酸塩と言うことがある)、ニトリル、ニトロ、アルデヒド、アセタート、SF5、また
はフルオロカーボン(フッ化炭素と言うことがある)(例えば、-CF3、-CF2CF3)が含ま
れる。
【0120】
別の実施形態において、非水溶媒は、芳香族溶媒であり、それには、形態[X(CH2)n-Y]
によって特徴付けられ、式中、n=1または2、および式中、XおよびYは、CH2基またはその
基群での部分正電荷を付与するために複合効果を有する少なくとも一の極性官能基を含む
。電解質溶液の別の実施形態では、YはOまたはSであり、およびXは、制限されないが、エ
ーテル、エステル、酸無水物、アミン、アミド、カーボナート、スルホン、スルホニルエ
ステル、ホスファイト、ホスファート、ニトリル、ニトロ、アルデヒド、アセタート、SF
5、またはフルオロカーボン(例えば、-CF3、-CF2CF3)が含まれる群より選ばれる官能基
である。
【0121】
さらなる実施形態では、非水溶媒は、第一の非水性含フッ素溶媒および第二の非水性含
非フッ素溶媒の混合物である。第一の溶媒および第二の溶媒の量の比は1:2より大きい。
例えば、第一の溶媒および第二の溶媒の量の比は、1:20から20:1まで、および随意に1
:2から9:1までの範囲から選ばれる。別の実施形態において、第一の溶媒および第二の
溶媒は、それぞれ無関係に極性溶媒である。
フッ化物塩の混合物を含む電解質溶液
【0122】
追加の実施形態では、一よりも多くのフッ化物塩を含む電解質溶液(電解液とも言う)
が考えられる。例えば、電解質溶液は、第一のフッ化物塩、第二のフッ化物塩、および一
以上の非水溶媒を含むことができる。いくつかの実施形態では、例えば、第一のフッ化物
塩は、一以上のフッ化物イオンおよび有機カチオンを含むことができ、そこでは、有機カ
チオンはβ位において炭素をもたず、または結合水素を有するβ位において炭素をもたな
ず、およびカチオン電荷中心はN、P、S、またはOである。いくつかの実施形態では、例え
ば、第二のフッ化物塩は、第一のフッ化物塩と異なり、および一以上のフッ化物イオンお
よび有機カチオンを含むことができ、そこで、カチオン電荷中心は、N、P、S、またはOで
ある。いくつかの実施形態では、例えば、電解液において溶解される前記フッ化物イオン
の濃度は、0.05Mより高いか、またはそれに等しい。
電気化学セル
【0123】
さらなる実施形態では、電気化学セルが提供される。本開示の電気化学セルの実施形態
には、制限されないが、一次電気化学セル、二次フッ化物イオン電気化学セル、バッテリ
ー、フューエルセル(燃料電池とも言う)、電解システム、およびキャパシターが含まれ
得る。電気化学セルには、正電極(正極とも言う)(すなわち、カソード)、負電極(負
極とも言う)(すなわち、アノード)、および正極と負極との間に設けられる電解質溶液
が含まれる。電解質溶液は、ここで論じる任意の実施形態を含み得る。
【0124】
一実施形態では、電気化学セルは、異なるアニオン電荷キャリアホスト材料が含まれる
正および負電極によるアニオン電荷キャリアの収容および放出を含む同時酸化および還元
反応の原理で動作する。これらのシステムでは、電解質溶液は、アニオン電気化学セルの
放電および充電中に、正および負電極間でアニオン電荷キャリア(例えば、フッ化物イオ
ン)の輸送を提供する。例えば、電気化学セルで利用されるとき、開示された電解質溶液
の実施形態は、25℃にて0.1mS/cmよりも高いか、またはそれに等しいフッ化物イオンの導
電率を提供することができる。
【0125】
以下の電極半反応、セル反応および電解質反応は、本開示のアニオン性電気化学セルが
それによって動作する基本原理を説明および記載するために提供される。
(i)電極反応
【0126】
説明の目的で、A-はアニオン電荷キャリア、PAnは正電極アニオンホスト材料、およびN
Amは負電極アニオンホスト材料であると仮定する。一次バッテリーでは、放電反応だけが
起こる:
【化33】
【0127】
放電中のフッ化物イオン電気化学セルの実施態様の略図を図2において示す。放電中、
フッ化物アニオンは正電極(すなわち、指定されたカソード)から放出され、電解質溶液
を通って移動し、および負電極(すなわち、指定されたアノード)によって収容される。
図2において示されるように、放電中の電子の流れの方向は、負電極から正電極への方向
である。フッ化物イオン電気化学セルの充電中、フッ化物アニオンは、負電極から放出さ
れ、電解質溶質を通って移動し、および正電極によって収容される。充電中の電子の流れ
の方向は、正電極から負電極に向かう方向である。放電および充電中のフッ化物イオンの
放出および収容は、電極で起こる酸化および還元反応から生じる。
【0128】
広範な電極物質を、開示された液状電解質の実施形態と共に使用することができる。安
全性を改善するために、リチウムフリー電極、または実質リチウムフリーの電極、または
低重量パーセントのリチウム(例えば、10%未満のリチウム)を有する電極を用いること
ができる。
(ii)電極組成
【0129】
本開示のフッ化物イオン電気化学セルの正および負電極のための活物質には、電気化学
セルの放電および充電中に電解質からフッ化物イオンを収容することが可能なフッ化物イ
オンホスト物質が含まれる。このような関係において、フッ化物イオンの収容には、ホス
ト物質へのフッ化物イオンの挿入、ホスト物質へのフッ化物イオンのインターカレーショ
ンおよび/またはホスト物質とのフッ化物イオンの反応が含まれる。収容には、合金形成
反応、表面反応および/またはホスト物質とのバルク反応が含まれる。本開示の二次フッ
化物イオンバッテリーにとって、サイクルの際にフッ化物イオンホスト物質を著しく劣化
させることなく、フッ化物イオンを電解質と可逆的に交換することが可能なフッ化物イオ
ンホスト物質の使用が好適である。
【0130】
一実施形態では、本開示のフッ化物イオン電気化学セルの負極には、フッ化物イオンホ
スト物質、例えば、フッ化物の化合物などのようなものが含まれ、低標準還元電位、可能
なら、若干の用途のために約-1Vより低いか、またはそれに等しく、およびより一層さら
に可能なら、若干の用途のために約-2Vより低いか、またはそれに等しいものをもつ。電
気化学セルの負極のための有用なフッ化物イオンホスト物質には、制限されないが、次の
:LaFx、CaFx、AlFx、EuFx、LiC6、LixSi、LixGe、Lix(CoTiSn)、SnFx、InFx、VFx、CdFx
、CrFx、FeFx、ZnFx、GaFx、TiFx、NbFx、MnFx、YbFx、ZrFx、SmFx、LaFxおよびCeFxが含
まれる。電気化学セルの負極のための好ましいフッ化物ホスト物質は、要素フッ化物MFx
であり、式中、Mはアルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba)であり、Mは遷移金属であり、Mは第1
3族に属し(B、Al、Ga、In、Tl)、またはMは希土類元素(原子番号Zは57および71の間)
である。本開示にはまた、アニオンイオン電荷キャリアが含まれるフッ化物イオンを可逆
的に交換することが可能なポリマー(群)を含む負極フッ化物イオンホスト物質が含まれ
る。そのような共役ポリマーの例は、制限されないが、次の:ポリアセチレン、ポリアニ
リン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリパラフェニレンである。本開示において
負極に有用なポリマー材料は、Manecke(マネッケ), G.およびStrock(ストロック), W
.、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(エンサイクロペディア・オブ
・ポリマー・サオエンス・アンド・エンジニアリング)、2nd Edition(第二版)」、Kro
schwitz(クロシュウィッツ), J., I.、編。John Wiley(ジョン・ワイリー)、New Yor
k、1986、vol.5、pp.725-755にさらに説明され、および記載されており、それはここでの
開示と矛盾しない程度に参照によりここに組み込まれる。
【0131】
一実施形態では、本開示のフッ化物イオン電気化学セルの正極は、フッ化物イオンホス
ト物質、例えば、フッ化物化合物などのようなものを含み、高い標準還元電位をもち、そ
れは好ましくは、いくらかの適用について、約1Vより高いか、またはそれに等しく、およ
びより一層好ましくは、いくらかの適用について、約2Vより高いか、またはそれに等しい
。ある実施形態では、正極のフッ化物イオンホスト物質は、フッ化物イオンインターカレ
ーション化合物を生成するようにフッ化物イオンを収容することが可能なインターカレー
ションホスト物質である。「インターカレーション」は、イオンがホスト物質に挿入し、
移動性ゲストイオン、例えば、フッ化物イオンなどのようなものの挿入と一体となる電気
化学的電荷移動プロセスを伴うホスト/ゲスト固形状態レドックス反応を介してインター
カレーション化合物を生成するプロセスに言及する。ホスト物質の主な構造的特長は、イ
ンターカレーションを介するゲストイオンの挿入後に保存される。いくらかのホスト物質
において、インターカレーションはゲストイオンが層状ホスト物質の中間層ギャップ(例
えば、ギャラリー)に取り込まれるプロセスに言及する。
【0132】
本開示の電気化学セルの正極のための有用なフッ化物イオンホスト物質には、制限され
ないが、CFx、AgFx、CuFx、NiFx、CoFx、PbFx、CeFx、MnFx、AuFx、PtFx、RhFx、VFx、Os
Fx、RuFx、およびFeFxが含まれる。ある実施形態では、正極のフッ化物イオンホスト物質
は、式CFxを有する部分フッ素化(subfluorinated)炭素質材料であり、式中、xはフッ素
原子対炭素原子の平均原子比率であり、および約0.3ないし約1.0の範囲から選ばれる。こ
の実施形態の正極に有用な炭素質材料は、グラファイト、グラフェン、コークス、単層ま
たは多層(single or multi-walled)カーボンナノチューブ、重層化(multi-layered)
カーボンナノファイバー、重層化カーボンナノ粒子、カーボンナノウィスカーおよびカー
ボンナノロッドからなる群より選ばれる。本開示はまた、アニオンイオン電荷キャリアを
含むフッ化物イオンを可逆的に交換することが可能なポリマー(群)が含まれる、正極フ
ッ化物イオンホスト物質を含む。正極用の共役ポリマーの例には、制限されないが、ポリ
アセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンおよびポリパラフェニレンが
含まれる。
【実施例
【0133】
開示する無水フッ化物塩、電解質溶液、および電気化学セルの実施形態の実践を説明す
るために、以下の特定の例を示すが、決して制限的とみなされるべきではない。
例1-無水ネオペンチルアンモニウムフッ化物塩の合成および特徴付け
【0134】
二つのネオペンチルアンモニウムフッ化物無水物塩、(2,2-ジメチルプロピル)トリメチ
ルアンモニウムフッ化物(NpMe3NF)およびビス(2,2-ジメチルプロピル)ジメチルアンモ
ニウムフッ化物(Np2Me2NF)の10グラムスケールのバッチを合成するための改善された方
法を、以下に述べる。
(i)NpMe3NF:
【0135】
NpMe3NFは、ネオペンチルアミン出発物質(C5H13N)および以下の(E1-1)に例示され
る正味の反応から形成される:
【化34】
例えば、ネオペンチルアミンをギ酸およびホルムアルデヒドで処理して、N,N,2,2-テト
ラメチル-1-プロパンアミンを形成する(E1-1a):
【化35】
次いで、N,N,2,2-テトラメチル-1-プロパンアミンをCH3Iでの処理によりメチル化して
、アンモニウム塩NpMe3NIを形成する(E1-1b):
【化36】
あるいはまた、ネオペンチルアミンは、過剰のCH3Iでの、K2CO3およびEtOHでの処理、
続いて2-プロパノールからの再結晶によって網羅的にメチル化され、アンモニウム塩NpMe
3NIを直接得ることができる(E1-1a'):
【化37】
この後者の合成経路は、反応時間を大幅に短縮し、および全体の収率を改善する。
【0136】
しかる後、ヨウ素アニオンは、Ag2OおよびH2Oとの反応によってヒドロキシルアニオン
により置換される(E1-1c):
【化38】
この反応を1時間行い、次いでろ過し、およびろ液を次の反応に直接使用する(E1-1d)
【0137】
最後に、HF滴定手順に従って、NpMe3NFを得る(E1-1d):
【化39】
共沸乾燥プロセスを使用し、ロータリーエバポレーター(3×)で「ベンチトップ」(
すなわち無水ではない)2-プロパノール溶媒を使用して混合物から大部分の水が除去され
た。続いて、混合物を、ミクロンフィルター(0.2μm)を通して2-プロパノール溶液にお
いてろ過し、痕跡量の灰色不純物(おそらく残留銀塩)を除去する。ろ過後、無水2-プロ
パノールを使用し、残りの物質を5×共沸水の除去によって乾燥させる。得られる白色粉
体を100℃にて、約80mTorrで5日間乾燥する。純度を確かにし、および痕跡量の水を十分
に除去するために、白色粉体をアルゴン雰囲気下に、グローブボックスにおいて乾燥した
乳鉢と乳棒を用いて十分に粉砕した。細かく砕いた粉体を乾燥プラスチックボトルに移し
、および次いで約80mTorrにて7日間置いた。無水NpMe3NFの合計収量は約10g(ヨウ化物か
ら88%)である。
(ii)Np2Me2NF:
【0138】
Np2Me2NFは、ネオペンチルアミン出発物質(C5H13N)から形成し、および正味の反応を
以下に例示する(E1-2):
【化40】
例えば、ネオペンチルアミンをトリメチルアセチル塩化物、クロロホルム(CHCl3)お
よびトリエタノールアミン(TEA)で処理し、N-ネオペンチルピバラミドを形成する(E2-
2a):
【化41】
【0139】
続いて、N-ネオペンチルピバラミドを水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)、n-ブチ
ルエーテル(n-Buエーテル)、およびジエチルエーテルで処理して、第二アミンジ-ネオ
ペンチルアミンを形成する(E1-2b):
【化42】
【0140】
ジ-ネオペンチルアミンのメチル化を、アセトニトリルにおいて還流下で6日間実行し、
アンモニウム塩Np2Me2NIを形成する(E1-2c):
【化43】
【0141】
Np2Me2NIをNp2Me2NFに変換するために、上記の修飾した滴定後の乾燥手順もここで続け
る(E1-2d)、(E1-2e):
【化44】
無水Np2Me2NFの合計収量は約10gであり、ヨウ化物からは87%を有する。
(iii)NMR特徴付け:
【0142】
合成されたNpMe3NFおよびNp2Me2NF塩は、それぞれ重水素化アセトニトリル(CD3CN)に
おいて、1Hおよび19F NMR分光法によって特徴付ける。NpMe3NFについて測定されたNMRス
ペクトルを図3A-3Bにおいて例示する。NpMe2NFについて測定されたNMRスペクトルを図4A-
4Bにおいて例示する。
【0143】
図3A、4Aにおいて例示される1Hスペクトルを参照すると、合成されたNpMe3NFおよびNp2
Me2NF塩は主要不純物を含まない。
【0144】
図3B、4Bにおいて例示される19Fスペクトルを参照すると、CD3CN溶液において無水物の
F-についてF-のケミカルシフト特性がそれぞれの場合に観察される。
例2-NpMe3NFを用いる溶媒スクリーニング
【0145】
種々の溶媒クラスにおけるNpMe3NFの溶解度および安定性をスクリーニングし、および
その結果を以下の表2において示す。溶媒内に溶解したNpMe3NFの濃度が0.05Mより高い場
合、NpMe3NFは与えられた溶媒に可溶性であると判定される。
(i)NpMe3NF溶解度:
【表2-1】
【表2-2】
表2の結果を検討すると、最も高いNpMe3NF溶解度を与える溶媒はフッ素化溶媒(すな
わち、BTFE、TTFP、TFE-TFA)であることが観察される。さらに、NpMe3NF BTFEの溶解度
は非常に大きい。およそ0.195gのNpMe3NF(1.3mmol)が0.95g BTFE(0.068mL)において
溶解することが見出され、NpMe3NFが19M(19.31M)より高いBTFEにおける近似溶解度を有
することが示される。さらに、BTFEにおいてNpMe3NFの溶解度は、調べた他の溶媒の溶解
度よりも著しく高い。
(ii)溶解度の比較:TMAF対NpMe3NFおよびNp2Me2NF
【0146】
表3および4において例示する、フッ素化溶媒3-フルオロベンゾニトリルおよびBTFEを用
いて、TMAF、NpMe3NF、およびNp2 Me2NFの溶解度間のさらなる比較を実行する。
【表3】
【表4】
【0147】
有用な濃度(例えば、>0.05M)にてTMAFがこれらのフッ素化溶媒において溶解しないこ
とが観察される。対照的に、NpMe3NFおよびNp2Me2NFは、著しく高い溶解度を見せる。こ
れらの結果は、非水溶媒において高い溶解性を得るために、フッ化物塩のフッ化物含有カ
チオンおよびフッ素化溶媒との組合せが必要であることを指し示す。
(iii)NpMe3NF安定性:
【0148】
様々な溶媒におけるNpMe3NF安定性を、1Hおよび19F NMR測定によって分析する。F-イオ
ンに対して「化学的に安定」である溶媒について使用される予備的な基準は、重水素化ア
セトニトリル溶媒(CD3CN)からのDF2 -形成から生じる1:1:1トリプレットと一緒に、19
Fスペクトルにおける明瞭で、鋭いピークの観察である。対応する1Hおよび19F NMRスペク
トルを図5-9において例示する。プロピオニトリル(PN)、BTFE、および2,6-ジフルオロ
ピリジン(2,6-F2Py)は良好な安定性を示したことが観察される。対照的に、例えば、ビ
ス(2,2,2-トリフルオロエチル)カーボナート(BTFEC)および3-メトキシプロピオニトリ
ル(3-MeOPN)は低い安定性を見せた。
例3-フッ化物-溶媒相互作用の理論的モデリング
【0149】
理論上のモデル化は、上記で確認された第四級アルキルアンモニウムフッ化物塩および
高められた溶解度を生じさせる溶媒の間の相互作用の性質をより一層良好に理解するため
に実行される。フッ化物塩TMAF、NpMe3NF、およびNp2Me2NFならびにある範囲の置換アル
キル-およびベンジルアンモニウム塩を、BTFE、グリム(グライムと言うことがある)、
および関連する溶媒において研究する。
(i)溶媒和自由エネルギー:
【0150】
計算された溶媒和自由エネルギー(ΔGs)を、図10において、(i)溶媒にて正に極性
化されたCH2部分を有しない溶媒(最も左側の溶媒)および(ii)溶媒にて正に極性化さ
れたCH2部分を有する溶媒(すなわち、形態[X-(CH2)n-Y]、式中、n=1または2によって特
徴付けられるもの)でのフッ化物および種々のカチオンについて示す。溶媒和自由エネル
ギーは熱力学的積分法を用いて真空から溶媒への移動自由エネルギーとして算出される。
【0151】
CH2部分を含まない溶媒に関連して、CH2部分の除去が観察され、フッ化物塩の溶解性に
おいて驚異的な低下がもたらされる。逆に、形態X-CH2-Y-CH2-XおよびX-CH2CH2-Y-CH2CH2
-Xによって特徴付けられる溶媒は、計算されたフッ化物溶媒和自由エネルギーの10倍まで
の増加を見せる。これらのシミュレーションは、フッ化物:CH2相互作用に起因するフッ
化物溶媒和での相対的増加、およびこれがカチオン分子構造における適切な置換によって
いかに変調され得るかを例示する。
(ii)分子動力学シミュレーション:
【0152】
ある範囲の溶媒においてフッ化物の分子動力学シミュレーションを、図11A-11Bにおい
て示すように、統計的に平均化されたフッ化物配位構造を決定するために実行する。図11
Aを参照すると、BTFE:F-配位についての動径分布関数は、どの基が、フッ化物からの種
々の変位で存在し、および第一の配位シェルでのCH2の大部分の存在を実証するかを示す
【0153】
図11Bを参照すると、いくつかの溶媒(BTFE、1,2-ジメトキシエタン、および1-エトキ
シ-2-(メトキシエトキシ)エタン)において第一のフッ化物配位シェルでの非水素原子の
平均数を算出するシミュレーション結果が提示される。BTFEの構造を調べると、各CH2
は一つの酸素および一つのCF3基に隣接することが観察され得る。対照的に、1,2-ジメト
キシエタンおよび1-エトキシ-2-(メトキシエトキシ)エタンの双方において、CH2基は二つ
の酸素に隣接し、1-エトキシ-2-(メトキシエトキシ)エタンが、1,2-ジメトキシエタンと
比較して、それに隣接する追加の酸素および二つの追加のメチレンを有する。概して、CF
3基および酸素の双方は電子求引性であり、各溶媒のケースでは、他のすべての官能基を
合わせたもの(~1-3)よりも高いCH2の配位数(~7-8)によって証明されるように、他
の官能基と比較して、CH2を伴うフッ化物の顕著な優先的関係が存在する。この観察結果
は、CH2を伴うフッ化物の関係が、CH2基に隣接する電子求引基の存在によって促進される
という提案を支持する。この観察結果はさらに、改善されたフッ化物塩の溶解性に対する
溶媒または溶媒混合物の合理的な選定を可能にする。
(iii)部分電荷分析:
【0154】
CH2基での部分原子電荷を、形態X-CH2-Y-CH2-XおよびX-CH2-CH2-Y-CH2-CH2-Xによって
特徴付けられる溶媒分子で、式中、XおよびYは電子求引性基であり、部分的に正の電荷を
CH2基に与えるために複合効果を有するものについて、この仮説を探求するためにさらに
調べる。YはOまたはSであり、およびXは、エーテル、エステル、酸無水物、アミン、アミ
ド、カーボナート、スルホン、スルホニルエステル、ホスファイト、ホスファート、ニト
リル、ニトロ、アルデヒド、アセタート、SF5、またはフルオロカーボン(例えば、-CF3
、-CF2CF3)からなる群より選ばれる官能基である。部分電荷は、密度(汎)関数理論計
算電子密度(density functional theory calculated electron densities)(B3LYP/def
2-PVTZレベルの理論)を有するCHELPアルゴリズムを用いて計算され、および図12A-12Dに
おいて例示される。
【0155】
形態X-CH2-Y-CH2-XおよびX-CH2-CH2-Y-CH2-CH2-Xによって特徴付けられる溶媒分子は、
一貫してCH2部分での増加した正電荷を見せることが観察される。上記理論的結果と併せ
て、このことは、正に荷電したCH2基が、広範囲の電子求引性単位を通した特定の溶媒ま
たは溶媒混合物においてフッ化物の配位および溶解を仲介することを実証する。
例4-NpMe3NFおよびNp2Me2NF溶液の電気化学的試験
(i)NpMe3NF溶液のベースライン電気化学試験
【0156】
多数の無水NpMe3NFおよびNp2Me2NF溶液についてイオン伝導度をACインピーダンス分光
法によって0、10、25および40℃で調べた。測定は、二つの平行なPt電極の間に溶液を封
止するTeflon(テフロン、商標)リングを含む空気フリーのガラス導電率セルを使用して
、100mHzと1MHzの間で取得する。Pt電極は~1cmだけ離れる(各実験の前に0.1M KCl(aq.
)の導電率を測定することによってセル定数を決定する)。Tenney(テニイ)TUJRチャン
バによって熱制御が提供され、サンプル(試料と言うことがある)は測定前に熱平衡に達
することができる(時間の経過とともにインピーダンススペクトルでの無変化の観察によ
って決定される)。
【0157】
図13は、PNにおいてNpMe3NF(0.07M)、2,6-F2PyにおいてNpMe3NF(0.22M)、
2,6-F2PyにおいてNpMe3NF(0.35M)、BTFEにおいてNpMe3NF(1.0M)、およびPhTFAにおい
てNpMe3NF(0.38M)についてイオン伝導率測定結果を示す。実験後のカールフィッシャー
滴定によって測定されたこれらの溶液の含水量は、42ppm(BTFE)、4ppm(2,6-ジフルオ
ロピリジン)、および137ppm(プロピオニトリル)である。これらの測定値は、すべての
溶液が室温(25℃)で相当のイオン伝導度(>0.1mS/cm)を見せることを指し示す。これ
らの観察結果から、NpMe3NFはこれらの溶媒において溶解する際に移動性NpMe3N+およびF-
イオンを形成すると結論付けることができる。特に、BTFEにおいて1MのNpMe3NFは、25℃
で2.7mS/cmの室温導電率を表示し、予備的なバッテリー試験にとって十分高くなければな
らい値であり、塩のモル濃度を増加させて必要に応じてこれを増加させるために選択肢を
伴う。
【0158】
導電率によって調べられるすべての溶液は、実験の時間期間(3-4日)にわたって安定
しているように見えた。確認のために、導電率実験後に測定されたBTFE、2,6-ジフルオロ
ピリジン、およびプロピオニトリル溶液の19F NMRスペクトルを、図14A-14Dに示す。この
ように、これらの溶媒はすべて、このタイムスケールで少なくとも40℃まで溶解したF-の
存在下で化学的に安定であると考えられる。
(ii)NpMe3NFおよびNp2Me2NF溶液の電気化学的試験
【0159】
上述の有望なベースラインイオン伝導度調査の観点から、NpMe3NFおよびNp2Me2NFのイ
オン伝導度のさらなる測定は、BTFEおよびBTFEとPNとの混合物において実行される。~1c
mによって分離された二つの平行なPt電極の間に溶液を封止するTeflon(商標)リングか
らなる空気フリーのガラス伝導性セルを用いて、ACインピーダンス分光法(100mHzと1MHz
の間の測定)により、研究を遂行する(各実験の前に、0.1M KCl(aq.)の伝導度を測定
することによってセル定数を決定する)。Tenney TUJRチャンバによって熱制御が提供さ
れ、試料は測定前に熱平衡に達することができる(時間の経過とともにインピーダンスス
ペクトルでの無変化の観察によって決定される)。
【0160】
図15は、種々の濃度およびPN含量(容量による)でのBTFEにおけるNpMe3NFおよびNp2Me
2NFの溶液について温度依存性イオン伝導度データを例示する。BTFEにおいてNpMe3NFの1.
0Mおよび2.0M溶液の導電率は非常に類似し、NpMe3NFが、BTFEにおいてこれらの濃度にて
イオン中に十分に解離しないことがあることが指し示される。これらの二つの溶液につい
て温度依存性データは、わずかに異なる曲線に従い(25℃付近のクロスオーバを伴い)、
温度依存解離平衡がイオン運動論(ion kinetics)に起因して温度による伝導度での予想
された変化と並行して動作することが示される。
【0161】
BTFEにおいてより多く置換された塩Np2Me2NFの2M溶液は、さらにより一層低いイオン伝
導度を表示し、上記の計算と一致して、さらに高い程度のイオン対形成が示唆された。実
際、Np2Me2NFはBTFEにおいてNpMe3NFよりも著しく難溶性であり、およびそれは溶解のた
めにBTFEにおいてNp2Me2NFの2.0M溶液を作製するのに若干の時間がかかる。対照的に、Np
Me3NFはこの(およびより一層高い)濃度にて難なく溶解する。
【0162】
概して、PNの増加量での添加は、ほぼすべての温度にて導電率を有意に増加させること
も観察され、この溶媒タイプがカチオンとアニオンの双方を溶媒和することによってイオ
ン解離を助けることが示唆される。しかし、Np2Me2NFは、BTFEとは対照的に、NpMe3NFよ
りもPNにおいてより可溶性であることが観察される。したがって、より一層多く置換され
た塩は、BTFEの濃度が比較的低い(例えば、<50容量%)場合、そのような混合溶媒系に
おいてより一層有用であり得る。
【0163】
溶媒混合物のさらなる特徴付けは、NpMe3NFおよびNp2Me2NF塩を用いて実行される。図1
6Aは溶媒とNpMe3NFとの混合物について測定された導電率を示し、その一方、図16Bは溶媒
とNp2Me2NFとの混合物について測定された導電率を示す。NpMe3NF溶液に関して、ある場
合には、導電率は、溶媒混合物の使用を通して与えられる濃度での塩のBTFE混合物につい
て観察されるものよりも増加させることができる。特に、グリム(例えば、ジメトキシエ
タン)およびアミドは、そのような効果を達成するのに有用な共溶媒であり得る。Np2Me2
NF溶液に関して、一定のケースにおいて、一定の溶媒および混合物においてNp2Me2NF塩の
より一層高い溶解性のために、より一層高い導電率値を、NpMe3NF混合物と比較して測定
することができる。
(iii)NpMe3NF溶液の電位窓
【0164】
PNおよびBTFEにおいてNpMe3NFの溶液もまた、それらの電位窓を決定するために線形掃
引ボルタンメトリーによって研究する。Pt作用電極、Pt補助および非水Ag+/Ag(MeCN)参
照電極は、Arパージと共にそれに採用する。図17において例示する0.75MのNpMe3NF/BTFE
:DMA(3:2)、0.75MのNpMe3NF/BTFE:G4(3:2)、1MのNPMe3NF/BTFE、0.75MのNpMe3NF
/BTFE:DME(3:2)、および0.1MのNpMe3NF/PNの電解質溶液について、100μA/cm2の限界
電流のための電位窓を、1mV/sにて測定する。電位窓のデータは、これらの非水電解質溶
液が、少なくとも3Vの有用な電気化学的窓を所有し得ることを示唆する。フッ化物塩のこ
れらの非水溶液は、それらの高い導電率と組み合わされて、電気化学的用途、例えば、フ
ッ化物イオンバッテリー、電気化学的二重層キャパシターおよび電気化学的フッ素化反応
におけるものなどのようなもののための電解質として採用することができる。
例5-正極の電気化学試験
【0165】
Cu正極の電気化学試験を、電気化学セル内の開示された電解質溶液の実施形態の性能を
比較するために、さらに実行する。PN/NpMe3NFおよびBTFE/NpMe3NFの電解質溶液を検討す
る。標準的な三電極電気化学セルが利用され、フッ化銅(II)作用電極、白金対電極、お
よびAg/Ag+参照電極が含まれる。動作中、セル内で発生する充放電反応は、以下の反応式
(5)および(6)によって与えられる:
放電:CuF2→Cu (5)
充電:Cu→CuF、CuF2(Cu2+) (6)
放電中、定電流放電は-24Vまで-50μAであり、および次いで電流が-5.0μAに低下する
まで一定電圧である。定電流充電は-0.3Vまで50μAである。電気化学セルの初期状態につ
いて、ならびに放電後および/または充電後の対応する電極X線回折(XRD)パターンをさ
らに取得する。
【0166】
NpMe3NF/PNおよびNpMe3NF/BTFEの電解質溶液について比容量の関数としての電圧を、図
18Aおよび18Cにそれぞれ示す。NpMe3NF/PN電解質溶液を含むセルの比容量が、放電後428m
Ah/gであり、および充電後304mAh/gであることが観察され得る。NpMe3NF/BTFE電解質溶液
を含むセルの比容量は、放電後に198mAh/gであり、および充電後に133mAh/gである。
【0167】
特に、NpMe3NF/PN電解質溶液を採用する電気化学セルにおいて観察されるキャパシティ
(容量、能力と言うことがある)は、428mAh/gで、CuF2の理論的能力(528mAh/g)のおよ
そ81%である。さらに、この容量は、慣習的なLi-イオンバッテリーシステム、コバルト
酸リチウム、約150mAh/gから得られる容量よりも著しく大きい。
【0168】
理論に束縛されないが、NpMe3NF/PNおよびNpMe3NF/BTFEの電解質溶液の間の観察された
容量および挙動の差異は、異なる溶媒混合物から生じる界面抵抗に起因すると考えられる
。NpMe3NF/PNから活物質への電子移動の抵抗は低いと考えられる。低抵抗のために、NpMe
3NF/BTFEと比較して、NpMe3NF/PNでは、より一層高い容量および放電電圧が観察される。
【0169】
電気化学セルの初期状態にて、および放電および充電の後に測定される対応する電極X
線回折(XRD)スペクトルを、図18B(NpMe2NF/PN)および18D(NpMe3NF/BTFE)において
例示する。それぞれの場合において、放電後に測定されるXRDスペクトルは、Cuに対応す
るピークの出現、およびCuF、CuF2に対応するピークの消失を、初期状態と比較して、反
応式(5)に従い、Cu2+のCuへの還元を反映して、明らかに示す。さらに、充電後に測定
されるXRDスペクトルは、反応式(6)に従って、CuF2に対応するピークの再出現およびCu
に対応するピークの減少を示し、Cu-およびCu2+へのCuの酸化が反映される。
【0170】
これらの電圧およびXRD測定は、CuF2がこれらの電解質システムにおいて電気化学的に
還元および再フッ素化され得、および還元活性が溶媒依存性であることを実証する。さら
に、PNは電子移動を促進する効果を有してもよい。
化学物質および名称に関する記述
【0171】
ここに使用されるように、用語「基」は化学的化合物の官能基に言及し得る。本化合物
の基は、化合物の一部分である原子または原子の集合に言及する。本化合物の基は、一以
上の共有結合を介して化合物の他の原子に付着することができる。基はまた、それらの原
子価状態に関して特徴付けることもできる。本化合物には、一価、二価、三価、等の原子
価状態として特徴付けられる基が含まれる。
【0172】
ここに使用するように、用語「置換され」は、水素が別の官能基によって置き換えられ
る化合物に言及する。
【0173】
アルキル基には、直鎖、分枝および環状アルキル基が含まれる。アルキル基には、1か
ら30までの炭素原子を有するものが含まれる。アルキル基には、1ないし3個の炭素原子を
有する小アルキル基が含まれる。アルキル基には、4-10個の炭素原子を有する中程度の長
さのアルキル基が含まれる。アルキル基には、10を超える炭素原子を有する長アルキル基
、特に10-30個の炭素原子を有するものが含まれる。用語シクロアルキルは、具体的には
、環構造、例えば、一以上の環を有するアルキル基を含め、3-30個の炭素原子、随意に3-
20個の炭素原子および随意に2-10個の炭素原子を含む環構造などのようなものを有するア
ルキル基に言及する。シクロアルキル基には、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-または10-員
の炭素環(群)を有するもの、および特に3-、4-、5-、6-、7-または8-員環(群)を有す
るものが含まれる。シクロアルキル基において炭素環はまた、アルキル基を有することが
できる。シクロアルキル基には、ビシクロ(二環式とも言う)およびトリシクロ(三環式
とも言う)アルキル基が含まれ得る。アルキル基は随意に置換される。置換アルキル基に
は、とりわけアリール基で置換されたものが含まれ、それはまた随意に置換されることが
できる。特定のアルキル基には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、シクロプ
ロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、シクロブチル、n-ペンチル、分枝ペンチル、シ
クロペンチル、n-ヘキシル、分枝ヘキシル、およびシクロヘキシル基が含まれ、これらの
すべては随意に置換される。置換アルキル基には、十分にハロゲン化またはセミハロゲン
化(準ハロゲン化、半ハロゲン化とも言う)されたアルキル基、例えば、一以上の水素が
一以上のフッ素原子、塩素原子、臭素原子および/またはヨウ素原子で換えられたアルキ
ル基などのようなものが含まれる。置換アルキル基には、完全フッ素化またはセミフッ素
化アルキル基、例えば、一以上の水素が一以上のフッ素原子で換えられたアルキル基など
のようなものが含まれる。アルコキシ基は、酸素への連結によって修飾されたアルキル基
であり、そして式R-Oによって代表することができ、およびまたアルキルエーテル基と称
することもできる。アルコキシ基の例には、制限されないが、メトキシ、エトキシ、プロ
ポキシ、ブトキシおよびヘプトキシが含まれる。アルコキシ基には、アルキル基の記載に
関連してここに提供されるように、基のアルキル部分が置換される置換アルコキシ基が含
まれる。ここに使用されるように、MeO-はCH3O-に言及する。
【0174】
アルケニル基には、直鎖、分枝および環状のアルケニル基が含まれる。アルケニル基に
は、1、2またはそれよりも多くの二重結合を有するもの、および二以上の二重結合が共役
二重結合であるものが含まれる。アルケニル基には、2から20個までの炭素原子を有する
ものが含まれる。アルケニル基には、2ないし3個の炭素原子を有する小さなアルケニル基
が含まれる。アルケニル基には、4-10個からの炭素原子を有する中程度の長さのアルケニ
ル基が含まれる。アルケニル基には、10個を超える炭素原子を有する長いアルケニル基、
特に10-20個の炭素原子を有するものが含まれる。シクロアルケニル基には、二重結合が
環にか、または環に付着したアルケニル基にあるものが含まれる。用語シクロアルケニル
は、具体的には、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-または10-員の炭素環(群)を有するアル
ケニル基、特に、3-、4-、5-、6-、7-または8-員環(群)を有するものを含め、環構造を
有するアルケニル基に言及する。シクロアルケニル基において炭素環はまた、アルキル基
も伴うことができる。シクロアルケニル基には、二環式および三環式アルケニル基が含ま
れることができる。アルケニル基は随意に置換される。置換アルケニル基には、とりわけ
、アルキルまたはアリール基で置換されたものが含まれ、それらの基はまた随意に置換さ
れることができる。具体的なアルケニル基には、エテニル、プロパ-1-エニル(propl-eny
l)、プロパ-2-エニル、シクロプロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル(but-l-enyl)、ブタ-2
-エニル、シクロブタ-1-エニル、シクロブタ-2-エニル、ペンタ-1-エニル(pent-l-enyl
)、ペンタ-2-エニル、分枝ペンテニル、シクロペンタ-1-エニル、ヘキサ-1-エニル(hex
-l-enyl)、分枝ヘキセニル、シクロヘキセニルが含まれ、それらのすべてが随意に置換
される。置換アルケニル基には、十分にハロゲン化またはセミハロゲン化されたアルケニ
ル基が含まれ、例えば、一以上の水素が一以上のフッ素原子、塩素原子、臭素原子および
/またはヨウ素原子で換えられたアルケニル基などのようなものである。置換アルケニル
基には、十分にフッ素化されるか、またはセミフッ素化されたアルケニル基、例えば、一
以上の水素原子が一以上のフッ素原子で換えられたアルケニル基などのようなものが含ま
れる。
【0175】
アリール基には、複素環式芳香族環を含め、一以上の5-、6-、7-または8-員芳香環を有
する基が含まれる。用語ヘテロアリールは、具体的には、少なくとも一の5-、6-、7-また
は8-員複素環式芳香環を有するアリール基に言及する。アリール基は、一以上の縮合芳香
族環を含むことができ、一以上の縮合複素芳香族環、および/または一以上の芳香族環と
、共有結合を介して縮合または連結され得る一以上の非芳香族環との組合せが含まれる。
複素環式芳香族環には、環において一以上のN、O、またはS原子が含まれることができる
。複素環式芳香族環には、一、二または三個のN原子を有するもの、一または二のO原子を
有するもの、および一または二のS原子、または一もしくは二もしくは三のN、OまたはS原
子の組合せを有するものが含まれ得る。アリール基は随意に置換される。置換アリール基
には、とりわけ、アルキルまたはアルケニル基で置換されるものが含まれ、それらの基は
また随意に置換されることができる。具体的なアリール基には、フェニル、ビフェニル基
、ピロリジニル、イミダゾリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、フリ
ル、チエニル、ピリジル、キノリル、イソキノリル、ピリダジニル、ピラジニル、インド
リル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ベンゾオキ
サジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、およびナフチル基が含まれ、それらのすべては随
意に置換される。置換アリール基には、十分にハロゲン化されるか、またはセミハロゲン
化されたアリール基、例えば、一以上の水素が一以上のフッ素原子、塩素原子、臭素原子
および/またはヨウ素原子で換えられたアリール基などのようなものが含まれる。置換ア
リール基には、完全フッ素化またはセミフッ素化アリール基、例えば、一以上の水素が一
以上のフッ素原子で換えられたアリール基などのようなものが含まれる。アリール基には
、制限されないが、次の:ベンゼン、ナフタレン、ナフトキノン、ジフェニルメタン、フ
ルオレン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、テトラセン、テトラセンジ
オン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、インドール、イソインドール、ピロール、イ
ミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、プリン、
ベンズイミダゾール、フラン、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、カルバゾール、アクリジ
ン、アクリドン、フェナントリジン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェ
ン、キサンテン、キサントン、フラボン、クマリン、アズレンまたはアントラサイクリン
のいずれか一に対応する芳香族基含有基または複素環式芳香族基含有基が含まれる。ここ
に使用されるように、上記にリストされる基に対応する基には、任意の適切な付着点にて
本開示の化合物において共有結合配置で提供され、ここにリストされる芳香族または複素
環式芳香族基の一価、二価および多価基を含め、芳香族または複素環式芳香族基が、明示
的に含まれる。実施形態において、アリール基には、5および30個の間の炭素原子が含ま
れる。実施形態では、アリール基には、一の芳香族またはヘテロ芳香族の六員環および一
以上の追加の五-または六-員の芳香族またはヘテロ芳香族環が含まれる。実施形態におい
て、アリール基には、環において五および十八個の間の炭素原子が含まれる。アリール基
は、随意に、一以上の電子供与基、電子求引基および/または置換基としてのターゲティ
ングリガンドを有する一以上の芳香環または複素環芳香族環を有する。
【0176】
アリールアルキル基は、一以上のアリール基で置換されたアルキル基であり、そこでは
、アルキル基は随意に追加の置換基を伴い、およびアリール基は随意に置換される。特定
のアルキルアリール基はフェニル置換アルキル基、例えば、フェニルメチル基である。ア
ルキルアリール基は、代わりに、一以上のアルキル基で置換されたアリール基として記載
され、そこでは、アルキル基は随意に追加の置換基を伴い、およびアリール基は随意に置
換される。特定のアルキルアリール基は、アルキル置換フェニル基、例えば、メチルフェ
ニルなどのようなものである。置換アリールアルキル基には、完全ハロゲン化またはセミ
ハロゲン化アリールアルキル基が含まれ、例えば、一以上の水素原子が一以上のフッ素原
子、塩素原子、臭素原子および/またはヨウ素原子で換えられた一以上のアルキルおよび/
またはアリール基を有するアリールアルキル基などのようなものである。
【0177】
ここに使用されるように、用語「アルキレン」および「アルキレン基」は同義語的に使
用され、およびここに規定するようにアルキル基から誘導される二価の基に言及する。本
開示は、一以上のアルキレン基を有する化合物を含み得る。いくつかの化合物においてア
ルキレン基は付着性および/またはスペーサー基として機能する。本開示の化合物は、置
換および/または非置換のC1-C20アルキレン、C1-C10アルキレンおよびC1-C5アルキレン基
を有することができる。
【0178】
ここに使用されるように、用語「シクロアルキレン」および「シクロアルキレン基」は
、同義語的に使用され、およびここに規定するようにシクロアルキル基から誘導される二
価の基に言及する。本開示は一以上のシクロアルキレン基を有する化合物を含み得る。い
くつかの化合物においてシクロアルキル基は付着および/またはスペーサー基として機能
する。本開示の化合物は置換および/または非置換のC3-C20シクロアルキレン、C3-C10
クロアルキレンおよびC3-C5シクロアルキレン基を有してもよい。
【0179】
ここに使用されるように、用語「アリーレン」および「アリーレン基」は、同義語的に
使用され、およびここに規定するように、アリール基から誘導される二価の基に言及する
。本開示は一以上のアリーレン基を有する化合物を含み得る。いくつかの実施形態では、
アリーレンは、アリール基の芳香族環の二つの環内炭素原子からの水素原子の除去によっ
てアリール基から誘導される二価基である。いくつかの化合物においてアリーレン基は付
着および/またはスペーサー基として機能する。いくつかの化合物においてアリーレン基
は、発色団、フルオロフォア、芳香族アンテナ、色素および/またはイメージング基とし
て機能する。非制限的な例には、置換および/または非置換のC3-C30アリーレン、C3-C20
アリーレン、C3-C10アリーレンおよびC1-C5アリーレン基が含まれる。
【0180】
ここに使用するように、用語「ヘテロアリーレン」および「ヘテロアリーレン基」は同
義語的に使用され、ここに規定するように、ヘテロアリール基から誘導される二価の基に
言及する。本開示には、一以上のヘテロアリーレン基を有する化合物が含まれ得る。いく
つかの実施形態では、ヘテロアリーレンは、ヘテロアリール基の複素芳香環または芳香環
の二つの環内炭素原子または環内窒素原子から水素原子を除去することによってヘテロア
リール基から誘導される二価基である。いくつかの化合物においてヘテロアリーレン基は
、付着および/またはスペーサー基として機能する。いくつかの化合物においてヘテロア
リーレン基は、発色団、芳香族アンテナ、フルオロフォア、色素および/またはイメージ
ング基として機能する。非制限的な例には、置換および/または非置換のC3-C30ヘテロア
リーレン、C3-C20ヘテロアリーレン、C1-C10ヘテロアリーレンおよびC3-C5ヘテロアリー
レン基が含まれる。
【0181】
ここに使用するように、用語「アルケニレン」および「アルケニレン基」は、同義語的
に用いられ、およびここに規定するように、アルケニル基から誘導される二価基に言及す
る。本開示は一以上のアルケニレン基を有する化合物を含み得る。いくつかの化合物にお
いてアルケニレン基は付着および/またはスペーサー基として機能する。非制限的な例に
は、置換および/または非置換のC2-C20アルケニレン、C2-C10アルケニレンおよびC2-C5
ルケニレン基が含まれる。
【0182】
ここに使用するように、用語「シクロアルケニレン」および「シクロアルケニレン基」
は、同義語的に使用され、およびここに規定するように、シクロアルケニル基から誘導さ
れる二価基に言及する。本開示は一以上のシクロアルケニレン基を有する化合物を含み得
る。いくつかの化合物においてシクロアルケニレン基は付着および/またはスペーサー基
として機能する。非制限的な例には、置換および/または非置換のC3-C20シクロアルキレ
ニレン、C3-C10シクロアルキレンおよびC3-C5シクロアルキレン基が含まれる。
【0183】
ここに使用するように、用語「アルキニレン」および「アルキニレン基」は、同義語的
に用いられ、およびここに規定するように、アルキニル基から誘導される二価基に言及す
る。本開示は一以上のアルキニレン基を有する化合物を含み得る。いくつかの化合物にお
いてアルキニレン基は付着および/またはスペーサー基として機能する。非制限的な例に
は、置換および/または非置換のC2-C20アルキニレン、C2-C10アルキニレンおよびC2-C5
ルキニレン基が含まれる。
【0184】
ここに使用するように、用語「ハロ」は、ハロゲン基、例えば、フルオロ(-F)、クロ
ロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、ヨード(-I)またはアスタト(-At)などのようなものに言
及する。
【0185】
用語「複素環式」は、環において、炭素に加えて少なくとも一の他の種類の原子を含む
環構造に言及する。そのようなヘテロ原子の例には、窒素、酸素および硫黄が含まれる。
複素環式環には、複素環式脂環式環および複素環式芳香環が含まれる。複素環式環の例に
は、制限されないが、ピロリジニル、ピペリジル、イミダゾリジニル、テトラヒドロフリ
ル、テトラヒドロチエニル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリル、イソキノリル、ピ
リダジニル、ピラジニル、インドリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラ
ゾリル、ピリジニル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、トリアゾリルお
よびテトラゾリル基が含まれる。複素環式環の原子は、例えば、置換基として提供される
広範囲の他の原子および官能基に結合することができる。
【0186】
用語「炭素環式」は、環において炭素原子だけを含む環構造に言及する。炭素環式環の
炭素原子は、例えば、置換基として提供される広範囲の他の原子および官能基に結合する
ことができる。
【0187】
用語「脂環式環」は、芳香環ではない環または複数の縮合環に言及する。脂環式環には
、炭素環および複素環の両方が含まれる。
【0188】
用語「芳香族環」は、少なくとも一つの芳香族環基を含む環、または複数の縮合環に言
及する。用語芳香族環には、炭素、水素およびヘテロ原子を含む芳香族環が含まれる。芳
香族環には、炭素環式および複素環式芳香族環が含まれる。芳香族環はアリール基の成分
である。
【0189】
用語「縮合環」または「縮合環構造」は、縮合環配置において提供される複数の脂環式
および/または芳香族環、例えば、少なくとも二つの環内炭素原子および/またはヘテロ原
子を共有する縮合環などのようなものに言及する。
【0190】
ここに使用するように、用語「アルコキシアルキル」は、式アルキル-O-アルキルの置
換基に言及する。
【0191】
ここに使用するように、用語「ポリヒドロキシアルキル」は、2から12個までの炭素原
子および2から5個までのヒドロキシル基を有する置換基、例えば、2,3-ジヒドロキシプロ
ピル、2,3,4-トリヒドロキシブチルまたは2,3,4,5-テトラヒドロキシペンチル残基などの
ようなものに言及する。
【0192】
ここに使用するように、用語「ポリアルコキシアルキル」は、式アルキル-(アルコキシ
)n-アルコキシの置換基に言及し、式中、nは1から10までの、好ましくは1ないし4、およ
びより一層好ましくはいくつかの実施形態について1ないし3の整数であるものに言及する
【0193】
一以上の置換基を含むここに記載の基のいずれかに関して、そのような基には、立体的
に非実用的および/または合成的に実現不可能な置換または置換パターンを含まないこと
が理解される。さらに、本開示の化合物には、これらの化合物の置換から生じるすべての
立体化学的異性体が含まれる。アルキル基の任意の置換には、一以上のアルケニル基、ア
リール基または双方での置換が含まれ、そこで、アルケニル基またはアリール基は随意に
置換される。アルケニル基の随意の置換には、一以上のアルキル基、アリール基または双
方による置換が含まれ、そこで、アルキル基またはアリール基は随意に置換される。アリ
ール基の随意の置換には、一以上のアルキル基、アルケニル基、または双方によるアリー
ル環の置換が含まれ、そこでは、アルキル基またはアルケニル基は随意に置換される。
【0194】
任意のアルキル、アルケニルおよびアリール基について随意の置換には、一以上の次の
置換による置換が含まれ、とりわけ、次の:ハロゲンで、フッ素、塩素、臭素またはヨウ
素を含め;シュードハライド(擬ハロゲン化物とも言う)で、-CNを含め;
【0195】
-COORで、式中、Rは水素またはアルキル基またはアリール基であり、およびより一層具
体的には、式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはフェニル基であり、
これらの基はすべて随意に置換され;
【0196】
-CORで、式中、Rは水素またはアルキル基またはアリール基であり、およびより一層具
体的には、式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはフェニル基であり、
これらの基はすべて随意に置換され;
【0197】
-CON(R)2で、式中、各Rは、互いのRに無関係に、水素またはアルキル基またはアリール
基であり、およびより一層具体的には、そこでは、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブ
チル、またはフェニル基であり、それらの基のすべては随意に置換され;およびそこでは
、RおよびRは環を形成することができ、それは一以上の二重結合を含むことができ、およ
び一以上の追加の炭素原子を含むことができ;
【0198】
-OCON(R)2で、式中、各Rは、互いのRに無関係に、水素またはアルキル基またはアリー
ル基であり、およびより一層具体的には、そこでは、Rは、メチル、エチル、プロピル、
ブチル、またはフェニル基であり、それらの基のすべては随意に置換され;およびそこで
は、RおよびRは環を形成することができ、それは一以上の二重結合を含むことができ、お
よび一以上の追加の炭素原子を含むことができ;
【0199】
-N(R)2で、式中、各Rは、互いのRに無関係に、水素、またはアルキル基、またはアシル
基またはアリール基であり、およびより一層具体的には、そこでは、Rは、メチル、エチ
ル、プロピル、ブチル、フェニルまたはアセチル基であり、これらはすべて随意に置換さ
れ;およびそこでは、RおよびRは環を形成することができ、それは一以上の二重結合を含
むことができ、および一以上の追加の炭素原子を含むことができ;
【0200】
-SRで、式中、Rは水素またはアルキル基またはアリール基であり、およびより一層具体
的には、そこでは、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはフェニル基
であり、それらは随意に置換され;
【0201】
-SO2R、または-SORで、式中、Rはアルキル基またはアリール基であり、およびより一層
具体的には、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはフェニル基であり、これ
らはすべて随意に置換され;
【0202】
-OCOORで、式中、Rはアルキル基またはアリール基であり;
【0203】
-SO2N(R)2で、式中、各Rは、互いのRに無関係に、水素、またはアルキル基、またはア
リール基であり、これらはすべて随意に置換され、およびそこでは、RおよびRは環を形成
することができ、それは一以上の二重結合を含むことができ、および一以上の追加の炭素
原子を含むことができ;
【0204】
-ORで、式中、Rは、H、アルキル基、アリール基、またはアシル基であり、これらはす
べて随意に置換される。特定の例において、Rは、アシル生成性-OCOR’’であることがで
き、式中、R’’は水素またはアルキル基またはアリール基であり、およびより一層具体
的には、そこでは、R’’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはフェニル基で
あり、それらはすべて随意に置換される。
【0205】
特定の置換アルキル基には、ハロアルキル基、特に、トリハロメチル基、および具体的
には、トリフルオロメチル基が含まれる。具体的な置換アリール基には、モノ-、ジ-、ト
リ-、テトラ-およびペンタハロ-置換フェニル基;モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-
、ヘキサ-、およびヘプタ-ハロ-置換ナフタレン基;3-または4-ハロ-置換フェニル基、3-
または4-アルキル-置換フェニル基、3-または4-アルコキシ-置換フェニル基、3-または4-
RCO-置換フェニル、5-または6-ハロ-置換ナフタレン基が含まれる。より一層具体的には
、置換アリール基には、アセチルフェニル基、特に、4-アセチルフェニル基;フルオロフ
ェニル基、特に、3-フルオロフェニルおよび4-フルオロフェニル基;クロロフェニル基、
特に、3-クロロフェニルおよび4-クロロフェニル基;メチルフェニル基、特に、4-メチル
フェニル基;およびメトキシフェニル基、特に、4-メトキシフェニル基が含まれる。
【0206】
一以上の置換基を含む上記の基のいずれかに関して、そのような基は、立体的に非実用
的および/または合成的に実現不可能な任意の置換または置換パターンを含まないことが
理解される。さらに、本開示の化合物には、これらの化合物の置換から生じるすべての立
体化学的異性体が含まれる。
参照による組込みおよび変形に関する記述
【0207】
この出願全体を通して引用されるすべての参考文献、例えば、発行され、または付与さ
れた特許または等価物を含む特許文献;特許出願公開;および非特許文献または他の原資
料は;各参考文献が本出願の開示と少なくとも部分的に矛盾しない限度で、参照により個
々に組み込まれているかのように、それらの全体が参照によりここに組み込まれる(例え
ば、部分的に矛盾する参考文献は、参考文献の部分的に一貫性のない部分を除き参照によ
り組み込まれる)。
【0208】
ここに採用された用語および表現は、説明の用語として使用され、および制限ではなく
、および示され、および説明された特長またはその一部の等価物を排除するような用語お
よび表現の使用は意図しておらず、もっとも請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々
の修飾が可能であることが認識される。したがって、本発明は好ましい実施形態によって
具体的に開示したが、ここに開示した概念の例示的な実施形態および随意の特長、修飾お
よび変形は、当業者による手段であってもよく、およびそのような修飾および変形は添付
の請求の範囲によって規定されるようにこの発明の範囲内にあると考えられると理解すべ
きである。ここに提供する特定の実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、およ
び本発明が、本明細書に表されるデバイス(装置とも言う)、デバイスコンポーネント、
方法のステップの多数の変形を用いて遂行され得ることは当業者には明らかであろう。当
業者に明白であろうように、本方法について有用な方法およびデバイスは、多数の随意の
組成および処理要素およびステップを含むことができる。
【0209】
置換基のグループをここに開示するとき、そのグループのすべての個々のメンバーおよ
びすべてのサブグループが、グループメンバーの任意の異性体、エナンチオマー、および
ジアステレオマーを含め、別々に開示されることが理解される。マーカッシュグループま
たは他のグループ化をここに用いるとき、グループのすべての個々のメンバーおよびグル
ープの可能なすべての組合せおよびサブコンビネーションが、本開示において個別に含ま
れることが意図される。化合物が、化合物の特定の異性体、エナンチオマーまたはジアス
テレオマーを、例えば、式において、または化学名において特定しないようにここに記載
されるとき、その説明は、個々にか、または任意の組み合わせで記載される化合物の各異
性体およびエナンチオマーを含むことが意図される。さらに、他に特定しない限り、ここ
に開示する化合物の同位体変形物はすべて本開示によって包含されることが意図される。
例えば、開示する分子において任意の一以上の水素を重水素またはトリチウムで置き換え
ることができることが理解されよう。分子の同位体変形物は、分子についてのアッセイに
おいて、また分子またはその使用に関連する化学的および生物学的研究において、概して
標準として有用である。そのような同位体変形物を作成するための方法は当技術において
知られる。当業者が同じ化合物を別々に命名することができることが知られているので、
化合物の特定の名称は模範的であることが意図される。
【0210】
ここに、および添付の請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、
および「the」には、文脈上他に明確に指示しない限り、複数形が含まれることに注目さ
れなければならない。したがって、例えば、「a cell(セル)」への言及には、当業者に
知られるそのような複数のセルおよびその等価物、およびその他同種類のものなどが含ま
れる。同様に、用語「a」(または「an」)、「一以上」および「少なくとも一の」は、
ここに交換可能に使用することができる。用語「comprising」、「including」、および
「having」は、交換可能に使用することができることにも注目される。表現「請求項XX-Y
Yのいずれかの」(ここで、XXおよびYYは請求項番号を指す)は、代替形態での複数従属
クレームを提供することを意図し、およびいくつかの実施形態では、表現「請求項XX-YY
のいずれか一におけるように」と交換可能である。
【0211】
他に規定されない限り、ここに使用されるすべての技術用語および科学用語は、この発
明が属する技術における当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。ここに
記載されているものと類似または等価な任意の方法および材料を本発明の実践または試験
に使用することができるが、好ましい方法および材料をここで説明する。ここでのいかな
るものも、本発明が先行発明によってそのような開示よりも先行する資格がないと認める
ものとして解釈されるべきではない。
【0212】
ここに記載または例証する成分のすべての調剤物または組合せは、別に述べない限り、
本発明を実践するために使用することができる。
【0213】
本明細書において範囲、例えば、温度範囲、時間範囲、または組成もしくは濃度の範囲
が与えられるときはいつでも、すべての中間範囲および部分範囲、ならびに与えられる範
囲において含まれるすべての個々の値は、本開示に含まれる。ここに使用されるように、
範囲には、具体的に、範囲のエンドポイント値として提供される値が含まれる。例えば、
1ないし100の範囲には、具体的に、1および100のエンドポイント値が含まれる。ここでの
記載において含まれる範囲または部分範囲における任意の部分範囲または個々の値は、こ
こでの請求の範囲から除外することができる。
【0214】
ここに使用するように、「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含む
(containing)」または「によって特徴付けられる」と同義語的であり、および包括的ま
たは制限なしであり、そして追加の、列挙されていない要素または方法ステップを除外し
ない。ここに使用するように、「からなる(consisting of)」は、請求項の要素におい
て特定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。ここに使用するよう
に、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、請求項の基本的および新
規な特徴に実質的に影響を与えない材料またはステップを排除しない。ここでの各例にお
いて、任意の用語「含む(comprising)」、「から本質的になる」および「からなる」は
、他の二つの用語のいずれかと置き換えることができる。ここに例示的に記載される本発
明は、ここに具体的に開示されない要素または要素群、制限または制限群がない場合に、
適切に実践され得る。
【0215】
具体的に例証するもの以外の出発物質、生物学的物質、試薬、合成方法、精製方法、分
析方法、アッセイ方法、および生物学的方法が過度の実験に頼ることなく本発明の実践に
用いられ得ることを当業者は理解するであろう。そのような材料および方法の、当技術で
知られるすべての機能的等価物は、この発明に含まれることが意図される。使用する用語
および表現は、説明の用語として採用され、および制限ではなく、そして示され、および
説明される特長またはその一部の等価物を排除する用語および表現の使用においてその意
図はなく、もっとも、請求される本発明の範囲内で種々の修飾が可能であることが認識さ
れる。したがって、本発明は、好ましい実施形態および随意の特長によって具体的に開示
されるが、ここに開示する概念の修飾および変形は当業者によって採用されてもよく、お
よびそのような修飾および変形が添付の請求の範囲によって規定されるように本発明の範
囲内であることが考えられると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
図16A
図16B
図17
図18-1】
図18-2】