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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20231020BHJP
   F02D 19/02 20060101ALI20231020BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
F02M21/02 301K
F02M21/02 301P
F02D19/02 Z
F02M37/00 341D
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021051444
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149336
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】上原 洋志
(72)【発明者】
【氏名】福井 義典
(72)【発明者】
【氏名】平岩 琢也
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 祐介
(72)【発明者】
【氏名】山口 永人
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02740918(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0003176(US,A1)
【文献】国際公開第2014/050269(WO,A1)
【文献】実開昭62-117260(JP,U)
【文献】特開2013-241905(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1531489(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1334146(KR,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0017819(KR,A)
【文献】欧州特許出願公開第02818674(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
F02B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも気体燃料を燃焼させて動力を発生するエンジンと、
前記エンジンに前記気体燃料を供給する気体燃料供給管と、
前記気体燃料供給管への前記気体燃料の供給を遮断することの可能な燃料流量調整部と、
前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した状態において、前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を、大気圧よりも大きい圧力の気体によって前記気体燃料供給管の外部に排出する燃料排出部と
を備え、
前記エンジンは、前記エンジンの内部に前記気体燃料を供給する気体燃料供給部を含み、
前記気体燃料を燃焼させる場合、前記気体燃料供給部は、前記気体燃料の流路を開放することで、前記気体燃料供給管から供給される前記気体燃料を前記エンジンの内部に供給し、
前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を排出する場合、前記気体燃料供給部は、前記気体燃料の流路を開放することで、大気圧よりも大きい圧力の前記気体を、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した状態において前記気体燃料供給管に導入し、
前記燃料排出部は、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した状態において、前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を、前記気体燃料供給管に導入された前記気体によって前記気体燃料供給管の外部に排出する、エンジンシステム。
【請求項2】
前記燃料排出部は、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した後において前記気体燃料供給管を開放することで、前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を、大気圧よりも大きい圧力の前記気体によって前記気体燃料供給管の外部に排出する、請求項1に記載のエンジンシステム。
【請求項3】
大気圧よりも大きい圧力の空気を、前記エンジンの内部に供給する過給機を更に備え、
前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を排出する場合に前記気体燃料供給管に導入される前記気体は、前記過給機によって供給される前記空気である、請求項1又は請求項2に記載のエンジンシステム。
【請求項4】
前記気体燃料を燃焼させる場合、前記気体燃料供給部は、前記気体燃料の流路の開閉を繰り返すことで、前記エンジンの内部に前記気体燃料を供給し、
前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を排出する場合、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断する前から、前記気体燃料の流路を開閉する動作を繰り返すことを継続することで、前記気体燃料供給部は、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した状態において、大気圧よりも大きい圧力の前記気体を前記気体燃料供給管に導入するか、又は、
前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を排出する場合、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した後に、前記気体燃料の流路を継続して開放することで、前記気体燃料供給部は、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した状態において、大気圧よりも大きい圧力の前記気体を前記気体燃料供給管に導入する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記エンジンを制御する制御部を更に備え、
前記エンジンは、気体燃料モード及び混焼モードのうちの少なくとも1つのモードを有し、
前記気体燃料モードは、前記気体燃料を燃焼させて前記エンジンに動力を発生させるモードであり、
前記混焼モードは、前記気体燃料と液体燃料との双方を略同時に燃焼させて前記エンジンに動力を発生させるモードであり、
前記気体燃料モード又は前記混焼モードから前記エンジンを停止する場合、前記制御部は、大気圧よりも大きい圧力の前記気体を前記気体燃料供給管に導入するように前記気体燃料供給部を制御するとともに、前記気体燃料供給管から前記気体燃料を排出するように前記燃料排出部を制御する、請求項から請求項のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項6】
前記エンジンの内部に前記液体燃料を供給する液体燃料供給部を更に備え、
前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した後において前記エンジンが回転数を一定に維持するように、前記制御部は、前記液体燃料供給部による前記液体燃料の供給を制御する、請求項に記載のエンジンシステム。
【請求項7】
前記エンジンを制御する制御部を更に備え、
前記エンジンは、気体燃料モード及び混焼モードのうちの少なくとも1つのモードと、液体燃料モードとを有し、
前記気体燃料モードは、前記気体燃料を燃焼させて前記エンジンに動力を発生させるモードであり、
前記液体燃料モードは、液体燃料を燃焼させて前記エンジンに動力を発生させるモードであり、
前記混焼モードは、前記気体燃料と前記液体燃料との双方を略同時に燃焼させて前記エンジンに動力を発生させるモードであり、
前記気体燃料モード又は前記混焼モードから前記液体燃料モードに移行する場合、前記制御部は、大気圧よりも大きい圧力の前記気体を前記気体燃料供給管に導入するように前記気体燃料供給部を制御するとともに、前記気体燃料供給管から前記気体燃料を排出するように前記燃料排出部を制御する、請求項から請求項のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項8】
前記エンジンの内部に前記液体燃料を供給する液体燃料供給部を更に備え、
前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断する前と後とにおいて前記エンジンの回転数が一定に維持されるように、前記制御部は、前記液体燃料供給部による前記液体燃料の供給を制御する、請求項に記載のエンジンシステム。
【請求項9】
前記気体燃料供給管に存在する気体の圧力を検知する圧力検知部と、
前記燃料排出部を制御する制御部と
を更に備え、
前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した後において、前記気体燃料供給管に存在する前記気体の圧力が閾値未満になった場合に、前記制御部は、前記気体燃料供給管から前記気体燃料の排出を開始するように前記燃料排出部を制御する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項10】
前記気体燃料供給部を制御する制御部を更に備え、
前記燃料排出部が前記気体燃料の排出を開始してから所定時間が経過した後に、前記気体燃料供給部が前記気体燃料の流路を閉塞するように、前記制御部は、前記気体燃料供給部を制御する、請求項から請求項のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【請求項11】
前記気体燃料は、水素、アンモニア、又は、天然ガスである、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天然ガスを燃料とした筒内直噴エンジンが開示されている。ガスを燃料とするエンジンでは、燃料噴射弁を用いて高圧のガスを気筒に噴射するため、ガスタンクから燃料噴射弁までの間の燃料供給管が高圧で密閉されている。エンジンの停止時には、燃料供給管に高圧のガスが保持された状態となる。この場合、燃料噴射弁から各気筒内を介してガスが漏れるおそれがあるため、燃料供給管中のガスの圧力を下げる。具体的には、エンジン停止時における燃料供給管中のガスを外部に放出して圧力を下げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-56380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているエンジンは、ガス漏れ防止のために、燃料供給管中のガスの圧力を下げることを目的としているに過ぎない。また、特許文献1は、エンジン停止時における燃料供給管中のガスを外部に放出する具体的な手法について開示していない。
【0005】
本発明の目的は、エンジンに気体燃料を供給する気体燃料供給管に残留する気体燃料を効果的に排出できるエンジンシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によれば、エンジンシステムは、エンジンと、気体燃料供給管と、燃料流量調整部と、燃料排出部とを備える。エンジンは、少なくとも気体燃料を燃焼させて動力を発生する。気体燃料供給管は、前記エンジンに前記気体燃料を供給する。燃料流量調整部は、前記気体燃料供給管への前記気体燃料の供給を遮断することが可能である。燃料排出部は、前記燃料流量調整部が前記気体燃料の供給を遮断した状態において、前記気体燃料供給管に残留する前記気体燃料を、大気圧よりも大きい圧力の気体によって前記気体燃料供給管の外部に排出する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンに気体燃料を供給する気体燃料供給管に残留する気体燃料を効果的に排出できるエンジンシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るエンジンシステムの構成を示す図である。
図2】本実施形態に係る水素燃料供給部を示す断面図である。
図3】本実施形態に係るエンジンシステムを示すブロック図である。
図4】本実施形態に係るエンジンを停止する際のエンジンシステムの各種状態の変化を示すタイムチャートである。
図5】本実施形態に係るエンジンを停止する際の残留水素排出方法を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係るエンジンの運転モードを液体燃料モードに移行する際のエンジンシステムの各種状態の変化を示すタイムチャートである。
図7】本実施形態に係るエンジンの運転モードを液体燃料モードに移行する際の残留水素排出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0010】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係るエンジンシステム100を説明する。図1に示すエンジンシステム100は、少なくとも気体燃料を燃焼させて動力を発生する。気体燃料は、特に限定されないが、例えば、水素、アンモニア、又は、天然ガスである。天然ガスは、例えば、気化された液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)である。エンジンシステム100は、例えば、乗り物に搭載されるか、建造物内に設置されるか、又は、屋外に設置される。乗り物は、例えば、船舶、自動車、鉄道車両、又は、飛行機である。
【0011】
以下、本明細書において、気体燃料として、水素燃料を例に挙げて説明する。また、エンジンシステム100が搭載される乗り物として、船舶200を例に挙げて説明する。なお、本明細書において、船舶200を「乗り物」と読み替え、水素燃料を「気体燃料」と読み替え、水素を「燃料気体」又は「燃料」と読み替えることができる。
【0012】
図1に示すように、船舶200は、エンジンシステム100を備える。エンジンシステム100は、少なくとも水素燃料を燃焼させて動力を発生する。
【0013】
エンジンシステム100は、エンジン1と、液化水素タンク3と、気化器5と、水素燃料調整部7と、圧力検知部9と、水素燃料供給管10と、過給機11と、インタークーラー13と、給気管15と、吸気マニホールド17と、排気管19とを備える。吸気マニホールド17は「給気マニホールド17」と記載することもできる。
【0014】
エンジン1は、少なくとも水素燃料を燃焼させて動力を発生する。本実施形態では、エンジン1は、水素燃料モードと、液体燃料モードとを有する。水素燃料モードは、水素燃料を燃焼させてエンジン1に動力を発生させるモードである。水素燃料モードは、例えば、エンジン1を水素エンジンとして機能させる水素燃焼モードである。液体燃料モードは、液体燃料を燃焼させてエンジン1に動力を発生させるモードである。液体燃料は、例えば、軽油又は重油である。液体燃料モードは、例えば、エンジン1をディーゼルエンジンとして機能させるディーゼルモードである。
【0015】
水素燃料モードは、本発明の「気体燃料モード」の一例に相当する。「気体燃料モード」は、気体燃料を燃焼させてエンジン1に動力を発生させるモードである。
【0016】
水素燃料供給管10は、気体状態の水素燃料をエンジン1に供給する。具体的には、液化水素タンク3、気化器5、水素燃料調整部7、及び、圧力検知部9が、この順番で、上流から下流に向かって配置される。
【0017】
本実施形態では、特に明示しない限り、「上流」は、水素燃料をエンジン1の内部に供給する際の水素燃料の流れの上流を示す。また、「下流」は、水素燃料をエンジン1の内部に供給する際の水素燃料の流れの下流を示す。
【0018】
液化水素タンク3は、液体状態の水素燃料である液体水素燃料を貯留する。液化水素タンク3は、水素燃料の供給源である。気化器5は、液化水素タンク3から供給される液体水素燃料を気化して、気体状態の水素燃料を水素燃料供給管10に供給する。なお、水素燃料は、圧縮された高圧ガスとして保管及び貯留されてもよい。この場合、例えば、エンジンシステム100は、液化水素タンク3に代えて、圧縮された高圧ガスとしての水素燃料を貯留する圧縮水素タンクを備え、気化器5を備えない。
【0019】
水素燃料調整部7は、水素燃料供給管10内の水素燃料を調整する。水素燃料調整部7は、例えば、ガスバルブユニット(GVU:Gas Valve Unit)である。ガスバルブユニットは、例えば、複数のバルブ、複数の配管、単数又は複数のガスフィルタ、及び、単数又は複数のガスレギュレータを含む。
【0020】
具体的には、水素燃料調整部7は、燃料流量調整部71と、燃料排出部72と、排出管73とを含む。燃料流量調整部71は水素燃料供給管10に配置される。排出管73は、燃料流量調整部71よりも下流において、水素燃料供給管10から分岐している。燃料排出部72は、排出管73に配置される。
【0021】
燃料流量調整部71は、水素燃料供給管10を流れる水素燃料の流量を調整する。燃料流量調整部71による水素燃料の流量の調整は、流量を連続的又は段階的に増減させることだけでなく、流量をゼロにすることを含む。燃料流量調整部71は、少なくとも、水素燃料供給管10の流路を開いた状態と閉じた状態とを切り替えることができればよい。燃料流量調整部71は、例えば、流量調整弁又は開閉弁である。流量調整弁は、例えば、調圧弁である。調圧弁は、例えば、単数又は複数の弁から構成される。
【0022】
燃料流量調整部71は、水素燃料供給管10の流路を閉塞することで、水素燃料供給管10のうちの水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断することが可能である。水素燃料供給管10Xは、水素燃料供給管10のうち、燃料流量調整部71から水素燃料供給部55まで延びる管を示す。従って、燃料流量調整部71は、水素燃料供給部55への水素燃料の供給を遮断することが可能である。図1の例では、水素燃料供給管10Xの上流端に燃料流量調整部71が接続され、水素燃料供給管10Xの下流端に水素燃料供給部55が接続される。また、排出管73は、燃料流量調整部71よりも下流において、水素燃料供給管10Xから分岐している。
【0023】
水素燃料供給管10Xは、本発明の「気体燃料供給管」の一例に相当する。
【0024】
燃料排出部72は、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した状態において、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を、大気圧よりも大きい圧力の気体によって水素燃料供給管10Xの外部に排出する。従って、本実施形態によれば、エンジン1に水素燃料を供給する水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を効果的に排出できる。例えば、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料の大部分又は全部を、水素燃料供給管10Xの外部に排出できる。
【0025】
具体的には、燃料排出部72は、排出管73の流路を開放することで、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において、大気圧よりも大きい圧力の気体によって、排出管73を介して水素燃料供給管10に残留する水素燃料を排出する。例えば、燃料排出部72は、水素燃料供給管10に残留する水素燃料を、排出管73を介してエンジン1が設置される部屋(以下、「エンジンルーム」と記載)に排出する。エンジンルームに排出された水素燃料は空気によって希釈される。従って、エンジンルームにおいて、水素燃料の濃度は水素の可燃範囲外の値に低下する。つまり、エンジンルームにおいて、水素燃料の濃度は4%未満に低下する。従って、エンジンルームにおいて水素燃料が着火することはない。燃料排出部72は、例えば、絞り弁である。絞り弁は、単数又は複数の弁によって構成される。
【0026】
好ましくは、燃料排出部72は、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した後において水素燃料供給管10Xを開放することで、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を、大気圧よりも大きい圧力の気体によって水素燃料供給管10Xの外部に排出する。この好ましい例によれば、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した後であって、水素燃料供給管10Xを開放して水素燃料を排出する前においては、水素燃料供給管10Xからエンジン1に対して水素燃料を供給できる。従って、水素燃料をエンジン1で無駄なく燃焼できる。また、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を無駄なく消費することで、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する際の排出量を低減できる。
【0027】
水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する際の制御の詳細は、後述する。以下、本実施形態では、一例として、大気圧よりも大きい圧力の気体は、大気圧よりも大きい圧力の空気である。なお、大気圧よりも大きい圧力の気体は、例えば、不活性気体でもよい。不活性気体は、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、又は、二酸化炭素である。
【0028】
圧力検知部9は、水素燃料供給管10に存在する気体の圧力を検知する。圧力検知部9は、例えば、圧力センサーである。
【0029】
給気管15は、過給機11、インタークーラー13、及び、吸気マニホールド17を介して、エンジン1の外部の空気をエンジン1に供給する。具体的には、過給機11及びインタークーラー13が、この順番で、給気の上流から下流に向かって配置される。過給機11は、大気圧よりも大きい圧力の空気を、エンジン1の内部に供給する。具体的には、過給機11は、給気管15を流れる空気を圧縮して、大気圧よりも大きい圧力の空気を給気管15に流す。以下、「圧縮された空気」は、大気圧よりも大きい圧力の空気を示す。
【0030】
インタークーラー13は、過給機11によって圧縮された空気を冷却して、吸気マニホールド17に供給する。吸気マニホールド17は、エンジン1に対して、圧縮及び冷却された空気を供給する。具体的には、エンジン1は、複数の気筒1aを有する。図1には、図面の簡略化のために、1つの気筒1aが図示されている。そして、吸気マニホールド17は、圧縮及び冷却された空気を各気筒1aに供給する。なお、エンジン1は、1つの気筒1aを有していてもよい。この場合、吸気マニホールド17は省略可能である。
【0031】
排気管19には、エンジン1から排出される排気ガスが流れる。つまり、排気管19は、排気ガスをエンジン1の外部に排出する。排気ガスは過給機11によって利用される。具体的には、過給機11は、タービン111と、コンプレッサー112とを含む。タービン111は排気管19に配置され、コンプレッサー112は給気管15に配置される。タービン111は、排気管19を流れる排気ガスによって回転し、回転力をコンプレッサー112に伝達する。そして、コンプレッサー112は、タービン111の回転力によって駆動され、給気管15を流れる空気を圧縮して、大気圧よりも大きい圧力の空気を生成する。
【0032】
エンジン1は、シリンダーヘッド51、シリンダーブロック52、吸気バルブ53、排気バルブ54、水素燃料供給部55、液体燃料供給部56、着火誘引部57、ピストン58、コネクティングロッド59、クランクシャフト60、及び、エンジン回転数検知部62を含む。吸気バルブ53は「給気バルブ53」と記載することもできる。また、エンジン1は燃焼室61を有する。燃焼室61は、シリンダーブロック52に形成される。燃焼室61は、シリンダーヘッド51とピストン58との間の空間である。
【0033】
シリンダーヘッド51は、シリンダーブロック52の上部に固定される。シリンダーヘッド51は、吸気通路63及び排気通路64を有する。吸気通路63は「給気通路63」と記載することもできる。
【0034】
吸気通路63の入口には、吸気マニホールド17が接続される。従って、吸気通路63には、吸気マニホールド17から、圧縮及び冷却された空気が供給される。吸気通路63の出口は、燃焼室61に接続される。
【0035】
水素燃料供給部55は、シリンダーヘッド51に配置される。そして、水素燃料供給部55は、水素燃料を燃焼室61で燃焼させる場合、つまり、水素燃料モードにおいて、水素燃料供給管10Xから供給される水素燃料をエンジン1の内部に供給する。図1の例では、矢印SLによって示されるように、水素燃料供給部55は、水素燃料モードにおいて、水素燃料供給管10Xから吸気通路63に水素燃料を供給する。この場合、例えば、水素燃料供給部55は水素燃料を噴射する。従って、水素燃料は、吸気マニホールド17から供給される空気と混合されて、燃焼室61に供給される。水素燃料供給部55が供給する水素燃料は、エンジン1(具体的にはピストン58)を駆動するために燃焼される気体燃料である。
【0036】
なお、例えば、水素燃料供給部55は、吸気マニホールド17に配置されてもよいし、インタークーラー13よりも下流において給気管15に配置されてもよい。
【0037】
水素燃料供給部55は、本発明の「気体燃料供給部」の一例に相当する。水素燃料供給部55は、例えば、ガスアドミッションバルブ(GAV:Gas Admission Valve)、又は、ガスインジェクター(Gas Injector)を含む。
【0038】
具体的には、吸気通路63の出口には、吸気バルブ53が配置される。吸気バルブ53は、吸気通路63の出口を、開いたり、閉じたりする。吸気バルブ53が吸気通路63の出口を開くと、空気と混合された水素燃料が燃焼室61に供給される。詳細には、水素燃料を燃焼室61で燃焼させる場合、つまり、水素燃料モードでは、吸気バルブ53が開いた時に、水素燃料供給部55は、水素燃料の流路の開放することで、水素燃料供給管10Xからエンジン1の内部に水素燃料を供給する。
【0039】
より詳細には、水素燃料を燃焼室61で燃焼させる場合、つまり、水素燃料モードでは、水素燃料供給部55は、吸気バルブ53の開閉に同期して水素燃料の流路の開閉を繰り返すことで、エンジン1の内部に間欠的に水素燃料を供給する。換言すれば、水素燃料モードでは、水素燃料供給部55は、水素燃料の供給と供給停止とを交互に繰り返すことで、エンジン1の内部に水素燃料を間欠的に供給する。更に換言すれば、水素燃料モードでは、水素燃料供給部55は、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部との間で連通状態と遮断状態とを交互に繰り返すことで、エンジン1の内部に水素燃料を間欠的に供給する。連通状態は、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部とが連通されて、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部との間で気体が流通可能な状態を示す。遮断状態は、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部とが遮断されて、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部との間で気体が流通不可能な状態を示す。
【0040】
図1の例では、水素燃料が吸気通路63に供給されているため、水素燃料供給部55は、水素燃料をエンジン1の内部に直接的に供給している。ただし、水素燃料供給部55は、水素燃料をエンジン1の内部に間接的に供給してもよい。例えば、水素燃料供給部55は、吸気マニホールド17に配置されてもよい。この場合は、水素燃料供給部55は、吸気マニホールド17内の吸気通路(不図示)に水素燃料を供給することで、吸気マニホールド17を介して水素燃料をエンジン1の内部に供給する。又は、例えば、水素燃料供給部55は、インタークーラー13よりも下流において給気管15に配置されてもよい。この場合は、水素燃料供給部55は、給気管15の流路(不図示)に水素燃料を供給することで、給気管15及び吸気マニホールド17を介して水素燃料をエンジン1の内部に供給する。
【0041】
また、図1の例では、水素燃料供給部55は、吸気通路63に水素燃料を供給することで、吸気通路63を介して燃焼室61に水素燃料を間接的に供給している。ただし、水素燃料供給部55は、燃焼室61に水素燃料を直接的に供給してもよい。水素燃料供給部55が、水素燃料を燃焼室61に対して直接的又は間接的に供給できる限りにおいて、水素燃料供給部55の配置は特に限定されない。
【0042】
ここで、本実施形態では、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、水素燃料供給部55は、水素燃料の流路を開放することで(つまり、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部とを連通することで)、矢印DLによって示されるように、大気圧よりも大きい圧力の空気を、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した状態において水素燃料供給管10Xに導入する。そして、燃料排出部72は、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した状態において、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を、水素燃料供給管10Xに導入された空気によって水素燃料供給管10Xの外部に排出する。
【0043】
従って、大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10Xに導入する場合と、エンジン1の内部に水素燃料を供給する場合とで、水素燃料供給部55が共用される。つまり、大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10Xに導入する経路と、エンジン1の内部に水素燃料を供給する経路とが、同じである。従って、大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10Xに導入するための専用の空気導入機構が不要である。その結果、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を効果的に排出可能な構成を実現しつつも、エンジンシステム100の製造コストを低減できる。
【0044】
特に、本実施形態では、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合に水素燃料供給管10Xに導入される空気は、過給機11によって供給される空気である。つまり、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、水素燃料供給部55は、水素燃料の流路を開放することで(つまり、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部とを連通することで)、矢印DLによって示されるように、過給機11によって供給される空気を水素燃料供給管10Xに導入する。従って、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断されている状態において、過給機11によって供給される「大気圧よりも大きい圧力の空気」によって排出管73から排出される。よって、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出するための専用のコンプレッサーの設置が不要である。その結果、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を効果的に排出可能な構成を実現しつつも、エンジンシステム100の製造コストを更に低減できる。なお、水素燃料供給管10に残留する水素燃料を排出する際の制御の詳細は、後述する。
【0045】
具体的には、本実施形態では、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、水素燃料供給部55は、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断する前から、水素燃料の流路を開閉する動作を繰り返すことを継続することで、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した状態において、大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10Xに間欠的に導入する。
【0046】
つまり、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、水素燃料供給部55は、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断する前から、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部との間で連通状態と遮断状態とを交互に繰り返す動作を継続することで、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した状態において、大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10Xに間欠的に導入する。
【0047】
従って、本実施形態によれば、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断する際に水素燃料供給部55の制御を変更することなく、大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10Xに導入できる。つまり、水素燃料供給部55の制御が容易である。
【0048】
次に、図2を参照して、水素燃料供給部55を説明する。図2は、水素燃料供給部55を示す断面図である。図2に示すように、水素燃料供給部55は、水素燃料供給管10Xの下流端に接続される。
【0049】
水素燃料供給部55は、例えば、バルブ551と、スリーブ554とを含む。図2は、バルブ551が開いた状態を示している。バルブ551は、例えば、ガスアドミッションバルブ(GAV)である。スリーブ554は、略筒状である。例えば、スリーブ554は、略円筒状である。
【0050】
例えば、バルブ551は、シリンダーヘッド51の上部に配置される。バルブ551の上流側には、水素燃料供給管10Xの下流端が接続される。一方、バルブ551の下流側には、スリーブ554が接続される。スリーブ554は、バルブ551の下流側から吸気通路63に向かって延びる。そして、スリーブ554は、シリンダーヘッド51を貫通し、吸気通路63に突き出ている。
【0051】
バルブ551は、開いた状態において、水素燃料供給管10Xの流路110とエンジン1の内部(図2の例では、吸気通路63)との間を連通状態にする。一方、バルブ551は、閉じた状態において、水素燃料供給管10Xの流路110とエンジン1の内部(図2の例では、吸気通路63)との間を遮断状態にする。
【0052】
具体的には、バルブ551が開いた状態では、バルブ551の流路555を介して、水素燃料供給管10Xの流路110とスリーブ554の流路556とが連通する。従って、バルブ551が開くと、矢印SLに示されるように、水素燃料供給管10X内の水素燃料は、スリーブ554から吸気通路63に供給される。つまり、スリーブ554は、水素燃料を吸気通路63に噴射する。
【0053】
一方、バルブ551が閉じた状態では、流路555が遮断される。従って、バルブ551が閉じると、水素燃料供給管10からスリーブ554への水素燃料の供給が停止される。その結果、スリーブ554から吸気通路63への水素燃料の供給が停止される。つまり、スリーブ554は、水素燃料の噴射を停止する。
【0054】
更に具体的には、水素燃料を燃焼室61で燃焼させる場合、つまり、水素燃料モードでは、バルブ551は、水素燃料の流路555の開閉を繰り返すことで、エンジン1の内部に水素燃料を間欠的に供給する。つまり、水素燃料モードでは、バルブ551は、開状態と閉状態とを交互に繰り返すことで、エンジン1の内部に水素燃料を間欠的に供給する。
【0055】
例えば、バルブ551は、ハウジング552と、駆動体553とを含む。ハウジング552は、流路555を有する。流路555は、水素燃料供給管10Xの流路110に接続される。駆動体553は、ハウジング552内を開方向D1及び閉方向D2に移動することで、流路555を開閉する。開方向D1は、例えば、鉛直上方向を示す。閉方向D2は、例えば、鉛直下方向を示す。
【0056】
具体的には、駆動体553は、開方向D1に移動することで、流路555を開放する。従って、水素燃料供給管10Xの流路110が流路555を介してスリーブ554の流路556に連通する。その結果、矢印SLに示されるように、水素燃料供給管10Xからの水素燃料が、流路555を通って流路556に流れ、スリーブ554から噴射される。一方、駆動体553は、閉方向D2に移動することで、流路555を閉塞する。つまり、流路555が遮断される。従って、水素燃料は、スリーブ554から噴射されない。
【0057】
更に具体的には、水素燃料モードでは、駆動体553が、開方向D1への移動と閉方向D2への移動とを交互に繰り返すことで、流路555の開閉が繰り返される。その結果、スリーブ554は、水素燃料を間欠的に噴射する。
【0058】
ここで、本実施形態では、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、バルブ551は、開いた状態になることで、水素燃料の流路555を開放して、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部(図2の例では吸気通路63)とを連通する。つまり、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、駆動体553は、開方向D1に移動することで、水素燃料の流路555を開放して、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部とを連通する。従って、矢印DLに示されるように、過給機11によって供給される空気が、スリーブ554の流路556及びバルブ551の流路555を通って水素燃料供給管10Xに導入される。その結果、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において、大気圧よりも大きい圧力の空気によって、排出管73から外部に排出される。
【0059】
具体的には、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、バルブ551(具体的には駆動体553)は、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断する前から、開状態と閉状態とを繰り返す動作を継続することで、水素燃料の流路555を開閉する動作を繰り返して、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部(図2の例では吸気通路63)とを間欠的に連通する。つまり、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、バルブ551(具体的には駆動体553)は、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断する前から、水素燃料供給管10Xとエンジン1の内部との間で連通状態と遮断状態とを交互に繰り返す動作を継続する。従って、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した状態において、矢印DLに示されるように、過給機11によって供給される空気が水素燃料供給管10Xに間欠的に導入される。
【0060】
図1に戻って、排気通路64の入口は燃焼室61に接続される。排気通路64の出口は排気管19に接続される。従って、燃焼室61からの排気ガスは、排気通路64を通って排気管19に排出される。具体的には、排気通路64の入口には、排気バルブ54が配置される。排気バルブ54は、排気通路64の入口を、開いたり、閉じたりする。排気バルブ54が排気通路64の入口を開くと、排気ガスが排気通路64を通って排気管19に排出される。
【0061】
液体燃料供給部56は、液体燃料モードにおいて、燃焼室61に向けて液体燃料を供給する。例えば、液体燃料供給部56は、燃焼室61に向けて液体燃料を噴射する。液体燃料供給部56が供給する液体燃料は、エンジン1(具体的にはピストン58)を駆動するために燃焼される液体燃料である。液体燃料は、例えば、軽油又は重油である。液体燃料供給部56は、例えば、液体燃料インジェクターである。液体燃料インジェクターは、例えば、メイン噴射弁である。
【0062】
着火誘引部57は、水素燃料モードにおいて、水素燃料供給部55によって燃焼室61に供給された水素燃料の着火を誘引する液体燃料を、燃焼室61に噴射する。また、着火誘引部57は、液体燃料モードにおいて、液体燃料供給部56によって燃焼室61に供給された液体燃料の着火を誘引する液体燃料を、燃焼室61に噴射する。
【0063】
着火誘引部57が水素燃料モード及び液体燃料モードにおいて噴射する液体燃料の噴射量は、液体燃料供給部56が液体燃料モードにおいて供給する液体燃料の供給量よりも少ない。なぜなら、着火誘引部57が噴射する液体燃料の噴射量は、水素燃料の着火及び液体燃料の着火を誘引できる程度の量で十分だからである。以下、着火誘引部57が噴射する液体燃料を「パイロット燃料」と記載する場合がある。パイロット燃料は、例えば、軽油又は重油である。パイロット燃料の種類は、例えば、液体燃料供給部56が供給する液体燃料と同じ種類である。着火誘引部57は、例えば、パイロット燃料インジェクターである。パイロット燃料インジェクターは、例えば、パイロット燃料噴射弁である。また、着火誘引部57は、例えば、火花又はレーザーで点火を行う「点火プラグ」であってもよい。
【0064】
なお、液体燃料モードにおいてパイロット燃料の噴射なしで液体燃料を着火できる場合でも、着火誘引部57は、液体燃料モードにおいてパイロット燃料を噴射する。液体燃料の燃焼によって着火誘引部57が損傷することを防止するためである。
【0065】
シリンダーブロック52は、気筒1aを構成する。シリンダーブロック52は、ピストン58、コネクティングロッド59、及び、クランクシャフト60を収容する。ピストン58は、シリンダーブロック52の内部を上下に往復運動する。コネクティングロッド59は、ピストン58とクランクシャフト60とを連結する。そして、コネクティングロッド59は、ピストン58の往復運動をクランクシャフト60に伝達する。クランクシャフト60は、ピストン58の往復運動を回転運動に変換する。
【0066】
例えば、水素燃料モードでは、ピストン58が下降し、排気バルブ54が閉じた状態で吸気バルブ53が開くと、空気と混合された水素燃料が吸気通路63から燃焼室61に供給される。つまり、水素燃料供給部55は、吸気バルブ53が開くタイミングで、水素燃料を噴射する。次に、排気バルブ54及び吸気バルブ53が閉じた状態で、ピストン58が上昇する。次に、ピストン58の上死点において、着火誘引部57がパイロット燃料を噴射し、水素燃料が着火して燃焼する。その結果、燃焼によってピストン58は下降する。次に、ピストン58が上昇し、吸気バルブ53が閉じた状態で排気バルブ54が開く。その結果、排気ガスが燃焼室61から排気通路64に排出される。
【0067】
例えば、液体燃料モードでは、ピストン58が下降し、排気バルブ54が閉じた状態で吸気バルブ53が開くと、空気が吸気通路63から燃焼室61に供給される。次に、排気バルブ54及び吸気バルブ53が閉じた状態で、ピストン58が上昇する。次に、ピストン58の上死点において、液体燃料供給部56が液体燃料を噴射するとともに、着火誘引部57がパイロット燃料を噴射する。従って、液体燃料が着火して燃焼する。その結果、燃焼によってピストン58は下降する。次に、ピストン58が上昇し、吸気バルブ53が閉じた状態で排気バルブ54が開く。その結果、排気ガスが燃焼室61から排気通路64に排出される。
【0068】
エンジン回転数検知部62は、エンジン1の単位時間当たりの回転数を検知する。エンジン回転数検知部62は、例えば、エンジン回転数センサーである。エンジン回転数センサーは、例えば、センサーとパルス発生器とにより構成され、クランクシャフト60の回転に応じてパルス信号を発生する。
【0069】
次に、図3を参照して、エンジンシステム100を説明する。図3は、エンジンシステム100を示すブロック図である。図3に示すように、エンジンシステム100は、エンジン制御装置21と、操作制御装置23と更に備える。
【0070】
操作制御装置23は、操作者からの操作を受け付け、操作者からの操作に応じた操作信号をエンジン制御装置21に出力する。
【0071】
操作制御装置23は、例えば、入力装置と、表示装置と、コンピューターとを含む。入力装置は、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、ダイヤル、及び、プッシュボタンを含む。表示装置は、例えば、液晶ディスプレイである。表示装置は、例えば、タッチパネルを含んでいてもよい。コンピューターは、例えば、プロセッサーと記憶装置とを含む。プロセッサーは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。記憶装置は、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶装置は、例えば、半導体メモリー等の主記憶装置と、半導体メモリー及びハードディスクドライブ等の補助記憶装置とを含む。記憶装置は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。操作制御装置23は、例えば、操作制御盤である。
【0072】
エンジン制御装置21は、エンジン1を制御する。例えば、エンジン制御装置21は、操作制御装置23が出力した操作信号に応じてエンジン1を制御する。また、例えば、エンジン制御装置21は、コンピュータープログラムに従ってエンジン1を制御する。
【0073】
エンジン制御装置21は、例えば、水素燃料供給部55、液体燃料供給部56、及び、着火誘引部57を制御する。また、エンジン制御装置21は、水素燃料調整部7を制御する。例えば、エンジン制御装置21は、燃料流量調整部71及び燃料排出部72を制御する。さらに、エンジン制御装置21は、圧力検知部9から、水素燃料供給管10内の気体の圧力を示す情報を受信する。
【0074】
エンジン制御装置21は、例えば、コンピューターである。コンピューターは、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。具体的には、エンジン制御装置21は、制御部211と、記憶部212とを含む。制御部211は、CPU等のプロセッサーを含む。記憶部212は、記憶装置を含み、データ及びコンピュータープログラムを記憶する。記憶装置は、例えば、半導体メモリー等の主記憶装置及び補助記憶装置を含む。記憶装置は、リムーバブルメディアを含んでいてもよい。
【0075】
制御部211は、エンジン1及び水素燃料調整部7を制御する。具体的には、制御部211は、水素燃料供給部55、液体燃料供給部56、着火誘引部57、燃料流量調整部71、及び、燃料排出部72を制御する。更に具体的には、制御部211のプロセッサーは、記憶部212の記憶装置に記憶されたコンピュータープログラムを実行することで、水素燃料供給部55、液体燃料供給部56、着火誘引部57、燃料流量調整部71、及び、燃料排出部72を制御する。
【0076】
水素燃料モードからエンジン1を停止する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10に導入するように水素燃料供給部55を制御する。加えて、水素燃料モードからエンジン1を停止する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において水素燃料供給管10から水素燃料を排出するように燃料排出部72を制御する。その結果、水素燃料モードからのエンジン1の停止後に、水素燃料供給管10に水素燃料が残留することを効果的に抑制できる。
【0077】
エンジン1を停止する場合とは、エンジン停止条件が満足された場合を示す。エンジン停止条件は、エンジン1を停止するための条件を示す。エンジン停止条件は、例えば、エンジン1を停止するエンジン停止指示を操作制御装置23から制御部211が受信したことである。又は、エンジン停止条件は、例えば、制御部211が、コンピュータープログラムに従った演算を実行することで、エンジン1の状態に基づいてエンジン1を停止することを決定したことである。
【0078】
また、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10に導入するように水素燃料供給部55を制御する。加えて、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において水素燃料供給管10から水素燃料を排出するように燃料排出部72を制御する。その結果、水素燃料モードから液体燃料モードに移行後に、水素燃料供給管10に水素燃料が残留することを効果的に抑制できる。
【0079】
水素燃料モードから液体燃料モードに移行する場合とは、液体燃料モード移行条件が満足された場合を示す。液体燃料モード移行条件は、エンジン1の運転モードを水素燃料モードから液体燃料モードに移行するための条件を示す。液体燃料モード移行条件は、例えば、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する移行指示を制御部211が操作制御装置23から受信したことである。又は、液体燃料モード移行条件は、例えば、制御部211が、コンピュータープログラムに従った演算を実行することで、エンジン1の状態に基づいて運転モードを水素燃料モードから液体燃料モードに移行することを決定したことである。
【0080】
仮に、水素燃料モードからのエンジン1の停止時、又は、水素燃料モードから液体燃料モードへの移行時に、水素燃料が水素燃料供給管10Xに残留すると、水素分子のサイズは小さいため、水素分子が部品同士の継ぎ目部分から徐々に流出したり、各種バルブの密閉が不十分な場合に水素分子がバルブから流出したりする可能性がある。この場合、水素分子が、様々な要因でエンジン1の予期できない場所に流入又は滞留する可能性がある。そこで、本実施形態では、大気圧よりも大きい圧力の空気によって水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出することで水素燃料を希釈し、水素分子がエンジン1の予期できない場所に流入及び滞留することを防止する。なお、仮に、エンジン1の予期できない場所に水素分子が流入又は滞留すると、例えば、水素分子が、エンジン1再稼働時に発生する静電気、又は、エンジン1運転時の排気に起因する高熱の影響を受ける可能性がある。
【0081】
次に、図4を参照して、水素燃料モードにおいてエンジン1を停止させる際の残留水素排出制御を説明する。残留水素排出制御は、水素燃料供給部55及び水素燃料調整部7によって水素燃料供給管10Xに残留する水素を排出する制御を示す。
【0082】
図4は、水素燃料モードにおいてエンジン1を停止させる際のエンジンシステム100の各種状態の変化を示すタイムチャートである。
【0083】
図4において、チャートCT1~CT8の横軸は時間を示す。チャートCT1の縦軸はエンジン1の状態を示し、チャートCT2の縦軸は燃料流量調整部71の状態(開状態又は閉状態)を示し、チャートCT3の縦軸は、水素燃料供給部55の状態(開状態又は閉状態)を示す。チャートCT4の縦軸は水素燃料供給管10X内の水素量を示し、チャートCT5の縦軸は液体燃料供給部56による液体燃料の供給量を示し、チャートCT6の縦軸は着火誘引部57によるパイロット燃料の噴射量を示す。チャートCT7の縦軸は燃料排出部72の状態(開状態又は閉状態)を示し、チャートCT8の縦軸は水素燃料供給管10X内の気体の圧力を示す。
【0084】
図4に示すように、時刻t1よりも前の時間では、エンジンシステム100の状態は次の通りである。すなわち、チャートCT1に示すように、エンジン1は水素燃料モードで運転されている。従って、チャートCT2に示すように、燃料流量調整部71は、開状態である。従って、水素燃料供給管10Xには気化器5から水素燃料が供給される。その結果、チャートCT4に示すように、水素燃料供給管10X内の水素量は略一定に維持されている。同様に、チャートCT8に示すように、水素燃料供給管10X内の気体(水素燃料)の圧力は略一定に維持されている。また、チャートCT3に示すように、水素燃料供給部55は、開閉を繰り返すことで、エンジン1の燃焼室61に水素燃料を間欠的に供給している。更に、チャートCT6に示すように、着火誘引部57は、開閉を繰り返すことで、エンジン1の燃焼室61にパイロット燃料を間欠的に噴射している。従って、チャートCT1に示すように、エンジン1は、燃焼室61における水素燃料の燃焼によって駆動している。この場合、エンジン1は、例えば、一定の回転数で回転する。一方、チャートCT7に示すように、燃料排出部72は、閉状態である。従って、排出管73の流路は閉塞されている。また、チャートCT5に示すように、液体燃料供給部56は、液体燃料の供給を停止している。
【0085】
次に、時刻t1において、エンジン停止条件が満足される。例えば、時刻t1において、制御部211は、エンジン停止指示を受け付ける。その結果、チャートCT1に示すように、時刻t1において、エンジン1は、クーリングモードを開始する。クーリングモードは、エンジン1が無負荷運転を実行するモードであって、エンジン1の停止前にエンジン1を冷却するモードである。
【0086】
時刻t1においてエンジン停止条件が満足された場合でも、チャートCT3に示すように、水素燃料供給部55が時刻t1よりも前から継続して開閉を繰り返すように、制御部211は水素燃料供給部55を制御している。
【0087】
時刻t1でエンジン停止条件が満足されたことに応答して、チャートCT2に示すように、制御部211は、燃料流量調整部71を閉状態にすることで水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断する。従って、時刻t1において、チャートCT4、CT8に示すように、水素燃料供給管10X内の水素量及び気体圧力(水素圧力)が低下し始める。その結果、時刻t1において、例えば、エンジン1の回転数が、低下し始める。また、時刻t1において、チャートCT5に示すように、液体燃料供給部56がエンジン1の燃焼室61への液体燃料の供給を開始するように、制御部211は液体燃料供給部56を制御する。更に、チャートCT6に示すように、時刻t1以降でも引き続き、着火誘引部57は、開閉を繰り返すことで、エンジン1の燃焼室61にパイロット燃料を間欠的に噴射している。
【0088】
時刻t1から時刻t2までの期間T1において、チャートCT3に示すように、水素燃料供給部55が開閉することで、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料が燃焼室61に供給されて燃焼される。加えて、期間T1において、チャートCT5に示すように、液体燃料供給部56が液体燃料の供給量を目標供給量Q1に向かって増加するように、制御部211は液体燃料供給部56を制御する。従って、期間T1では、燃焼室61で液体燃料も燃焼される。その結果、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断されているにも拘わらず、期間T1では、エンジン1が、回転数を一定に維持する。なお、チャートCT6に示すように、期間T1でも、パイロット燃料の間欠的な噴射が継続されている。
【0089】
すなわち、本実施形態では、クーリングモードにおいてエンジン1の回転数を一定に維持するために、クーリングモードの期間T1において、液体燃料だけでなく、水素燃料も燃焼させる。その結果、クーリングモードにおける液体燃料の供給量を低減できる。また、クーリングモードの期間T1において、水素燃料供給管10Xに残留した水素燃料を燃焼することで、時刻t2以降における水素燃料供給管10Xから外部(例えば、エンジンルーム)への水素燃料の排出量を低減できる。
【0090】
ここで、本明細書において、エンジン1の回転数を一定に維持する場合、一定に維持される回転数は、特に限定されず、任意の回転数であってよい。
【0091】
次に、時刻t2では、チャートCT7に示すように、燃料排出部72が開状態になるように、制御部211は燃料排出部72を制御する。従って、燃料排出部72は、開状態になって排出管73を開放する。加えて、チャートCT3に示すように、水素燃料供給部55が時刻t2よりも前から継続して開閉を繰り返すように、制御部211は水素燃料供給部55を制御している。その結果、チャートCT4に示すように、時刻t2から時刻t3までの期間T2において、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料が、水素燃料供給部55を介して水素燃料供給管10Xに導入される空気(具体的には大気圧よりも大きい圧力の空気)によって、排出管73から外部に排出される。また、期間T2では、チャートCT8に示すように、水素燃料供給管10X内の気体(空気と水素との混合気体)の圧力は略一定になる。期間T2での水素燃料供給管10X内の気体の圧力は、期間T1での水素燃料供給管10X内の気体の圧力よりも小さい。
【0092】
期間T2では、チャートCT3に示すように、水素燃料供給部55が開閉を繰り返しているが、水素燃料供給部55は水素燃料を燃焼室61に供給していない。なぜなら、水素燃料供給部55から水素燃料供給管10Xに向かって、大気圧よりも大きい圧力の空気が流入しているからである。また、期間T2では、チャートCT5に示すように、液体燃料供給部56による液体燃料の供給量が目標供給量Q1に維持されるように、制御部211は液体燃料供給部56を制御する。従って、クーリングモードの期間T2では、液体燃料の燃焼だけで、エンジン1の回転数が一定に維持される。目標供給量Q1は、液体燃料の燃焼だけでエンジン1の回転数を一定に維持可能な液体燃料の供給量を示す。なお、チャートCT6に示すように、期間T2でも、パイロット燃料の間欠的な噴射が継続されている。
【0093】
次に、時刻t3において、チャートCT7に示すように、燃料排出部72が閉状態になるように、制御部211は燃料排出部72を制御する。従って、燃料排出部72は、閉状態になって排出管73を閉塞する。また、時刻t3では、チャートCT3に示すように、水素燃料供給部55が閉状態になるように、制御部211は水素燃料供給部55を制御する。従って、水素燃料供給部55から水素燃料供給管10Xへの空気の導入が停止される。その結果、チャートCT8に示すように、時刻t3において、水素燃料供給管10X内の気体(空気)の圧力は、大気圧と略同じになる。なお、液体燃料供給部56からの液体燃料によって、時刻t3から時刻t4までの期間においても、例えば、エンジン1の回転数が一定に維持される。
【0094】
次に、時刻t4において、チャートCT5に示すように、液体燃料供給部56が液体燃料の供給を停止するように、制御部211は液体燃料供給部56を制御する。加えて、時刻t4において、チャートCT6に示すように、着火誘引部57がパイロット燃料の供給を停止するように、制御部211は着火誘引部57を制御する。その結果、時刻t4において、クーリングモードが終了し、エンジン1が停止する。つまり、時刻T4では、エンジン1の回転数はゼロになる。
【0095】
以上、図4のチャートCT2、CT7、CT5を参照して説明したように、本実施形態によれば、水素燃料モードからエンジン1を停止する際に、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した後においてエンジン1が回転数を一定に維持するように、制御部211は、液体燃料供給部56による液体燃料の供給を制御する(時刻t1以降)。従って、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された後において、エンジン1を冷却してからエンジン1を停止できる。つまり、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断されてから、クーリングモードへ円滑に移行できる。
【0096】
一例として、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した後においてエンジン1が回転数を一定に維持する場合、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した後のエンジン1の回転数は、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断する前のエンジン1の回転数を維持してもよい。又は、一例として、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した後においてエンジン1が回転数を一定に維持する場合、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した後のエンジン1の回転数は、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断する前のエンジン1の回転数よりも低くてよい。
【0097】
また、チャートCT7、CT3に示すように、燃料排出部72が水素燃料の排出を開始してから所定時間T2が経過した後に、水素燃料供給部55が閉状態になるように、制御部211は水素燃料供給部55を制御する(時刻t3)。つまり、燃料排出部72が水素燃料の排出を開始してから所定時間T2が経過した後に、水素燃料供給部55が水素燃料の流路555(図2)を閉塞するように、制御部211は水素燃料供給部55を制御する。従って、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料は、所定時間T2継続して排出管73から排出される。その結果、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を更に効果的に排出できる。所定時間T2は、水素燃料供給管10Xの流路容積に基づいて予め定められる。
【0098】
なお、例えば、水素燃料モードにおいて、制御部211は、水素燃料供給部55の開時間及び/又は開閉間隔を、エンジン1の回転数に応じて変更する。また、エンジン1の回転数は、例えば、水素燃料モードとクーリングモードとで、略同じでもよいし、異なっていてもよい。更に、エンジン1の回転数は、例えば、水素燃料モードにおいて、一定に維持されなくてもよく、変動してもよい。更に、エンジン1の回転数は、例えば、クーリングモードにおいて、一定に維持されなくてもよく、変動してもよい。
【0099】
次に、図3及び図5を参照して、水素燃料モードにおいてエンジン1を停止させる際の残留水素排出方法を説明する。図5は、水素燃料モードにおいてエンジン1を停止させる際の残留水素排出方法を示すフローチャートである。図5に示すように、残留水素排出方法は、ステップS1~ステップS8を含む。また、ステップS1の段階では、エンジン1は水素燃料モードで運転中である。従って、ステップS1の段階では、水素燃料供給部55は、開閉を繰り返して、水素燃料を燃焼室61に間欠的に供給している。同様に、着火誘引部57もまた、開閉を繰り返して、パイロット燃料を燃焼室61に間欠的に供給している。
【0100】
図3及び図5に示すように、まず、ステップS1において、制御部211は、エンジン停止条件が満足されたか否かを判定する。
【0101】
ステップS1でエンジン停止条件が満足されていないと判定した場合(No)、処理は終了する。
【0102】
一方、ステップS1でエンジン停止条件が満足されたと判定した場合(Yes)、処理はステップS2に進む。
【0103】
次に、ステップS2において、制御部211は、液体燃料供給部56を制御してクーリングモードを開始する。なお、制御部211は、手動操作に応答してクーリングモードを開始してもよい。
【0104】
次に、ステップS3において、制御部211は、閉状態になるように燃料流量調整部71を制御する。つまり、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断するように燃料流量調整部71を制御する。
【0105】
ここで、ステップS2とステップS3とが、略同時に実行されてもよい(図4の時刻t1参照)。
【0106】
次に、ステップS4において、制御部211は、水素燃料供給管10X内の気体(水素)の圧力が閾値TH未満か否かを判定する。この場合、制御部211は、圧力検知部9から、水素燃料供給管10X内の気体(水素)の圧力を示す情報を取得する。
【0107】
ステップS4で水素燃料供給管10X内の気体(水素)の圧力が閾値TH未満でないと判定され場合(No)、水素燃料供給管10X内の気体(水素)の圧力が閾値TH未満になるまで、ステップS4が繰り返される。
【0108】
一方、ステップS4で水素燃料供給管10Xの気体(水素)の圧力が閾値TH未満であると判定された場合(Yes)、処理はステップS5に進む。水素燃料供給管10Xの気体(水素)の圧力が閾値TH未満であることは、例えば期間T1(図4)において水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料が燃焼室61で燃焼されて、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料が目標量まで低下したことを示す。
【0109】
次に、ステップS5において、制御部211は、開状態になるように燃料排出部72を制御する。つまり、制御部211は、排出管73を開放するように燃料排出部72を制御する。
【0110】
次に、ステップS6において、制御部211は、燃料排出部72が開状態になってから所定時間T2が経過したか否かを判定する。つまり、制御部211は、燃料排出部72が水素燃料の排出を開始してから所定時間T2が経過したか否かを判定する。
【0111】
ステップS6で所定時間T2が経過していないと判定された場合(No)、所定時間T2が経過するまで、ステップS6が繰り返される。
【0112】
一方、ステップS6で所定時間T2が経過したと判定された場合(Yes)、処理はステップS7に進む。
【0113】
次に、ステップS7において、制御部211は、閉状態になるように水素燃料供給部55を制御する。つまり、制御部211は、水素燃料の流路555(図2)を閉塞するように水素燃料供給部55を制御する。また、ステップS7では、制御部211は、閉状態になるように燃料排出部72を制御する。つまり、制御部211は、排出管73を閉塞するように燃料排出部72を制御する。
【0114】
ここで、水素燃料供給部55を閉状態にするタイミングと、燃料排出部72を閉状態にするタイミングとが異なっていてもよい。例えば、水素燃料供給部55を閉状態にした後に燃料排出部72を閉状態にしてもよい。
【0115】
次に、ステップS8において、制御部211は、液体燃料供給部56を制御してクーリングモードを終了する。その結果、エンジン1が停止する。そして、残留水素排出方法は終了する。
【0116】
ここで、ステップS8とステップS7とが略同時に実行されてもよい。
【0117】
以上、図5を参照して説明したように、本実施形態によれば、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した後において、水素燃料供給管10Xに存在する気体(水素)の圧力が閾値TH未満になった場合に、制御部211は、水素燃料供給管10Xから水素燃料の排出を開始するように燃料排出部72を制御する(ステップS5、図4の時刻t2)。従って、本実施形態によれば、水素燃料供給管10Xに存在する気体(水素)の圧力が閾値TH未満になるまでは、水素燃料が燃焼室61に供給される。従って、水素燃料を無駄なく消費できる。また、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を無駄なく消費することで、水素燃料供給管10Xから排出管73を通して排出する水素燃料の排出量を低減できる。
【0118】
次に、図6を参照して、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する際の残留水素排出制御を説明する。
【0119】
図6は、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する際のエンジンシステム100の各種状態の変化を示すタイムチャートである。
【0120】
図6において、チャートCT10~CT80の横軸は時間を示す。チャートCT10~チャートCT80の縦軸は、それぞれ、図4に示すチャートCT1~チャートCT8の縦軸と同様である。また、図4の説明において、チャートCT1~チャートCT8をそれぞれチャートCT10~チャートCT80と適宜読み替えることで、図6の説明に置き換えることができる。以下、図6を参照して、図4との相違点を主に説明する。
【0121】
図6のチャートCT10~CT80に示すように、時刻t1よりも前の時間において、エンジンシステム100の状態は、図4に示すエンジンシステム100の状態と同様である。
【0122】
次に、時刻t1において、液体燃料モード移行条件が満足される。例えば、時刻t1において、制御部211は、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する移行指示を受け付ける。チャートCT50に示すように、時刻t1において、液体燃料モード移行条件が満足されたことに応答して、チェンジオーバー制御が開始される。チェンジオーバー制御は、液体燃料供給部56に、液体燃料の供給量を目標供給量Q1に向かって増加させる制御である。目標供給量Q1は、液体燃料の燃焼だけでエンジン1の回転数を一定に維持可能な液体燃料の供給量を示す。換言すれば、目標供給量Q1は、液体燃料モードに移行する前におけるエンジン1の回転数を、液体燃料モードに移行した後において維持可能な液体燃料の供給量を示す。図6の例では、期間T1において、チェンジオーバー制御が実行される。
【0123】
時刻t1において液体燃料モード移行条件が満足された場合でも、チャートCT30に示すように、水素燃料供給部55が時刻t1よりも前から継続して開閉を繰り返すように、制御部211は水素燃料供給部55を制御している。
【0124】
時刻t1で液体燃料モード移行条件が満足されたことに応答して、チャートCT20に示すように、制御部211は、燃料流量調整部71を閉状態にすることで水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断する。従って、時刻t1において、チャートCT40、CT80に示すように、水素燃料供給管10X内の水素量及び気体圧力(水素圧力)が低下し始める。しかしながら、チェンジオーバー制御が実行されるので、例えば、エンジン1の回転数が一定に維持される。つまり、時刻t1において、チャートCT50に示すように、液体燃料供給部56がエンジン1の燃焼室61への液体燃料の供給を開始するように、制御部211は液体燃料供給部56を制御する。その結果、チェンジオーバー制御が開始される。
【0125】
時刻t1から時刻t2までの期間T1において、チャートCT50に示すように、液体燃料供給部56が液体燃料の供給量を目標供給量Q1に向かって増加するように、制御部211は液体燃料供給部56を制御する。加えて、期間T1において、チャートCT30に示すように、水素燃料供給部55が開閉することで、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料が燃焼室61に供給されて燃焼される。従って、期間T1では、液体燃料だけでなく、水素燃料も燃焼される。従って、チェンジオーバー制御が実行される期間T1において、例えば、エンジン1が回転数を一定に維持する。
【0126】
すなわち、本実施形態では、チェンジオーバー制御においてエンジン1の回転数を一定に維持するために、期間T1において、液体燃料だけでなく、水素燃料も燃焼させる。その結果、チェンジオーバー制御における液体燃料の供給量を低減できる。また、期間T1において、水素燃料供給管10Xに残留した水素燃料を燃焼することで、時刻t2以降における水素燃料供給管10Xから外部(例えば、エンジンルーム)への水素燃料の排出量を低減できる。
【0127】
次に、時刻t2では、チャートCT70、CT30によって示される燃料排出部72及び水素燃料供給部55の動作は、それぞれ、図4に示すチャートCT7、CT3と同様である。従って、チャートCT40に示すように、期間T2において、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料が、水素燃料供給部55を介して水素燃料供給管10Xに導入される空気(具体的には大気圧よりも大きい圧力の空気)によって、排出管73から外部に排出される。
【0128】
また、チャートCT50に示すように、時刻t2においてチェンジオーバー制御が終了する。そして、時刻t2以降において、チャートCT50に示すように、液体燃料供給部56による液体燃料の供給量が目標供給量Q1に維持されるように、制御部211は液体燃料供給部56を制御する。加えて、チャートCT60に示すように、時刻t2以降において、パイロット燃料の間欠的な噴射が継続されている。その結果、時刻t2以降において、例えば、液体燃料の燃焼だけで、エンジン1の回転数が一定に維持される。つまり、時刻t2において液体燃料モードが開始され、例えば、液体燃料モードにおいてエンジン1の回転数が一定に維持される。
【0129】
次に、時刻t3では、チャートCT70、CT30によって示される燃料排出部72及び水素燃料供給部55の動作は、それぞれ、図4に示すチャートCT7、CT3と同様である。従って、時刻t3において、水素燃料供給部55から水素燃料供給管10Xへの空気の導入が停止されて、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料の排出が完了する。
【0130】
以上、図6を参照して説明したように、一例として、水素燃料モードとチェンジオーバー制御の期間T1と液体燃料モードとにおいて、エンジン1の回転数が一定に維持される。
【0131】
また、本実施形態によれば、例えば、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する際に、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断する前と後とにおいてエンジン1の回転数が一定に維持されるように、制御部211は、液体燃料供給部56による液体燃料の供給を制御する(時刻t1以降)。従って、エンジン1の出力の変動を伴うことなく、水素燃料モードから液体燃料モードに円滑に移行できる。
【0132】
また、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する際においても、水素燃料モードからエンジン1を停止する場合と同様に、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料は、所定時間T2継続して排出管73から排出される。その結果、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を更に効果的に排出できる。
【0133】
なお、例えば、水素燃料モードにおいて、制御部211は、水素燃料供給部55の開時間及び/又は開閉間隔を、エンジン1の回転数に応じて変更する。同様に、例えば、液体燃料モードにおいて、制御部211は、液体燃料供給部56の開時間及び開閉間隔を、エンジン1の回転数に応じて変更する。また、エンジン1の回転数は、例えば、水素燃料モードとチェンジオーバー制御と液体燃料モードとで、略同じでもよいし、異なっていてもよい。更に、エンジン1の回転数は、例えば、水素燃料モードにおいて、一定に維持されなくてもよく、変動してもよい。更に、エンジン1の回転数は、例えば、チェンジオーバー制御において、一定に維持されなくてもよく、変動してもよい。更に、エンジン1の回転数は、例えば、液体燃料モードにおいて、一定に維持されなくてもよく、変動してもよい。
【0134】
次に、図3及び図7を参照して、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する際の残留水素排出方法を説明する。図7は、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する際の残留水素排出方法を示すフローチャートである。図7に示すように、残留水素排出方法は、ステップS11~ステップS19を含む。また、ステップS11の段階では、エンジン1は水素燃料モードで運転中である。従って、ステップS11の段階では、水素燃料供給部55は、開閉を繰り返して、水素燃料を燃焼室61に間欠的に供給している。同様に、着火誘引部57もまた、開閉を繰り返して、パイロット燃料を燃焼室61に間欠的に供給している。
【0135】
図3及び図7に示すように、まず、ステップS11において、制御部211は、液体燃料モード移行条件が満足されたか否かを判定する。
【0136】
ステップS11で液体燃料モード移行条件が満足されていないと判定した場合(No)、処理は終了する。
【0137】
一方、ステップS11で液体燃料モード移行条件が満足されたと判定した場合(Yes)、処理はステップS12に進む。
【0138】
次に、ステップS12において、制御部211は、液体燃料供給部56を制御してチェンジオーバー制御を開始する。
【0139】
次に、ステップS13において、制御部211は、閉状態になるように燃料流量調整部71を制御する。つまり、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断するように燃料流量調整部71を制御する。
【0140】
ここで、ステップS12とステップS13とが、略同時に実行されてもよい(図6の時刻t1参照)。
【0141】
次に、ステップS14において、制御部211は、水素燃料供給管10X内の気体(水素)の圧力が閾値TH未満か否かを判定する。
【0142】
ステップS14で水素燃料供給管10X内の気体(水素)の圧力が閾値TH未満でないと判定され場合(No)、水素燃料供給管10X内の気体(水素)の圧力が閾値TH未満になるまで、ステップS14が繰り返される。
【0143】
一方、ステップS14で水素燃料供給管10Xの気体(水素)の圧力が閾値TH未満であると判定された場合(Yes)、処理はステップS15に進む。
【0144】
次に、ステップS15において、制御部211は、液体燃料供給部56を制御してチェンジオーバー制御を終了する。
【0145】
次に、ステップS16において、制御部211は、液体燃料供給部56を制御して液体燃料モードを開始する。つまり、制御部211は、液体燃料の供給量が目標供給量Q1に維持されるように、液体燃料供給部56を制御する。
【0146】
ここで、ステップS15とステップS16とが、略同時に実行されてもよい(図6の時刻t2参照)。
【0147】
次に、ステップS17において、制御部211は、開状態になるように燃料排出部72を制御する。つまり、制御部211は、排出管73を開放するように燃料排出部72を制御する。
【0148】
ここで、ステップS17は、ステップS15及びステップS16と略同時に実行されてもよいし(図6の時刻t2参照)、ステップS14の後においてステップS15及びステップS16よりも前に実行されてもよい。
【0149】
次に、ステップS18において、制御部211は、燃料排出部72が開状態になってから所定時間T2が経過したか否かを判定する。つまり、制御部211は、燃料排出部72が水素燃料の排出を開始してから所定時間T2が経過したか否かを判定する。
【0150】
ステップS18で所定時間T2が経過していないと判定された場合(No)、所定時間T2が経過するまで、ステップS18が繰り返される。
【0151】
一方、ステップS18で所定時間T2が経過したと判定された場合(Yes)、処理はステップS19に進む。
【0152】
次に、ステップS19において、制御部211は、閉状態になるように水素燃料供給部55を制御する。つまり、制御部211は、水素燃料の流路555(図2)を閉塞するように水素燃料供給部55を制御する。また、ステップS19では、制御部211は、閉状態になるように燃料排出部72を制御する。つまり、制御部211は、排出管73を閉塞するように燃料排出部72を制御する。そして、残留水素排出方法は終了する。
【0153】
ここで、水素燃料供給部55を閉状態にするタイミングと、燃料排出部72を閉状態にするタイミングとが異なっていてもよい。例えば、水素燃料供給部55を閉状態にした後に燃料排出部72を閉状態にしてもよい。
【0154】
以上、図7を参照して説明したように、水素燃料モードから液体燃料モードに移行する際にも、水素燃料モードからエンジン1を停止する場合と同様に、水素燃料供給管10Xに存在する気体(水素)の圧力が閾値TH未満になるまでは、水素燃料が燃焼室61に供給される。従って、水素燃料を無駄なく消費できるとともに、水素燃料供給管10Xから排出管73を通して排出する水素燃料の排出量を低減できる。
【0155】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び実施例について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、または、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0156】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚さ、長さ、個数、間隔等は、図面作成の都合上から実際とは異なる場合もある。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0157】
(1)図1を参照して説明したエンジンシステム100は、液体燃料モードを有していなくてもよい。この場合、エンジンシステム100は、液体燃料供給部56を有しておらず、水素燃料モードだけを有する。この場合、水素燃料モードからエンジン1を停止する場合は、図4において、液体燃料供給部56に代えて、セルモータ等の電動モータ又は惰性によってクーリングモードを実行する。その他、残留水素排出制御は、図4及び図5に示した残留水素排出制御と同様である。
【0158】
(2)図1を参照して説明したエンジンシステム100は、混焼モードを有していてもよい。混焼モードは、気体燃料と液体燃料との双方を略同時に燃焼させてエンジン1に動力を発生させるモードである。図1においては、混焼モードは、水素燃料と液体燃料との双方を略同時に燃焼させてエンジン1に動力を発生させるモードである。エンジンシステム100は、混焼モードと水素燃料モードと液体燃料モードとのうちの全てを有していてもよいし、混焼モードと水素燃料モードと液体燃料モードとのうちの任意の2つのモードを有していてもよい。また、エンジンシステム100は、混焼モードだけを有していてもよい。
【0159】
例えば、混焼モードからエンジン1を停止する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において大気圧よりも大きい圧力の空気(もしくは窒素等の不活性気体)を水素燃料供給管10に導入するように水素燃料供給部55を制御する。加えて、混焼モードからエンジン1を停止する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において水素燃料供給管10から水素燃料を排出するように燃料排出部72を制御する。その結果、混焼モードからのエンジン1の停止後に、水素燃料供給管10に水素燃料が残留することを効果的に抑制できる。その他、残留水素排出制御は、図4及び図5に示した残留水素排出制御と同様である。
【0160】
例えば、混焼モードから液体燃料モードに移行する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において大気圧よりも大きい圧力の空気(もしくは窒素等の不活性気体)を水素燃料供給管10に導入するように水素燃料供給部55を制御する。加えて、混焼モードから液体燃料モードに移行する場合、制御部211は、水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給が遮断された状態において水素燃料供給管10から水素燃料を排出するように燃料排出部72を制御する。その結果、混焼モードから液体燃料モードに移行後に、水素燃料供給管10に水素燃料が残留することを効果的に抑制できる。その他、残留水素排出制御は、図6及び図7に示した残留水素排出制御と同様である。
【0161】
混焼モードから液体燃料モードに移行する場合とは、液体燃料モード移行条件が満足された場合を示す。液体燃料モード移行条件は、エンジン1の運転モードを混焼モードから液体燃料モードに移行するための条件を示す。液体燃料モード移行条件は、例えば、混焼モードから液体燃料モードに移行する移行指示を制御部211が操作制御装置23から受信したことである。又は、液体燃料モード移行条件は、例えば、制御部211が、コンピュータープログラムに従った演算を実行することで、エンジン1の状態に基づいて運転モードを混焼モードから液体燃料モードに移行することを決定したことである。その他、残留水素排出制御は、図6及び図7に示した残留水素排出制御と同様である。
【0162】
(3)図1を参照して説明したエンジンシステム100では、燃料排出部72は、水素燃料供給管10Xに残留した水素燃料を、排出管73を通して、エンジンルームに放出した。ただし、排出管73はタンク(不図示)に接続されていてもよい。この場合は、燃料排出部72は、水素燃料供給管10Xに残留した水素燃料を、排出管73を通してタンクに排出する。その結果、タンクに水素燃料が貯留される。
【0163】
特に、気体燃料としてアンモニアを使用する場合は、燃料排出部72が、気体燃料供給管10Xに残留したアンモニア燃料を、排出管73を通してタンクに排出することは有効である。なぜなら、アンモニアは毒性を有するためである。なお、気体燃料として天然ガス(気化した液化天然ガス)を使用する場合においても、燃料排出部72は、気体燃料供給管10Xに残留した天然ガス燃料を、排出管73を通してタンクに排出してもよい。
【0164】
(4)図4及び図6の期間T2では、水素燃料供給部55は、開閉を繰り返すことで、水素燃料供給管10Xに空気を導入した。ただし、水素燃料供給管10Xに空気を導入できる限りにおいては、水素燃料供給部55の動作は特に限定されない。
【0165】
例えば、水素燃料供給管10Xに残留する水素燃料を排出する場合、燃料流量調整部71が水素燃料供給管10Xへの水素燃料の供給を遮断した後に、水素燃料の流路を継続して開放することで、水素燃料供給部55は、燃料流量調整部71が水素燃料の供給を遮断した状態において、大気圧よりも大きい圧力の空気(もしくは窒素等の不活性気体)を水素燃料供給管10Xに導入する。具体的には、例えば、図4及び図6の期間T2において、水素燃料供給部55は、水素燃料の流路555(図2参照)を継続して開放することで、大気圧よりも大きい圧力の空気を水素燃料供給管10Xに導入する。つまり、図4及び図6の期間T2において、水素燃料供給部55は、開状態を維持する。
【0166】
(5)液体燃料モードから水素燃料モード又は混焼モードに移行する場合は、残留水素排出制御を実行しなくてもよい。なぜなら、水素燃料モード及び混焼モードでは、水素燃料を常に消費するため、水素燃料が水素燃料供給管10Xに残留しないためである。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明は、エンジンシステムに関するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0168】
1 エンジン
9 圧力検知部
10X 水素燃料供給管(気体燃料供給管)
11 過給機
55 水素燃料供給部(気体燃料供給部)
56 液体燃料供給部
71 燃料流量調整部
72 燃料排出部
100 エンジンシステム
211 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7