(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】磁気共鳴温度測定における測定アーチファクトを補正するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20231020BHJP
A61N 7/02 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B5/055 390
A61N7/02
(21)【出願番号】P 2021530188
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 IB2019001226
(87)【国際公開番号】W WO2020109860
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-21
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508154863
【氏名又は名称】インサイテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リノット, シャハル
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ, ヨアフ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/036912(WO,A1)
【文献】特表2015-507951(JP,A)
【文献】特表2016-539669(JP,A)
【文献】特表2015-503381(JP,A)
【文献】特開平08-084740(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0071746(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
A61N 7/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴(MR)温度測定を実施するためのシステムであって、前記システムは、
磁気共鳴撮像(MRI)ユニットと、
コントローラであって、前記コントローラは、前記MRIユニットと通信し、
(i)前記MRIユニットに、撮像領域の少なくとも1つのベースライン位相画像と、前記撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く前記撮像領域の少なくとも1つの治療位相画像とを入手させることと、
(ii)少なくとも部分的に、前記入手されたベースライン位相画像および治療位相画像に基づいて、前記サブ領域の温度変化をピクセル単位で示す熱マップを電子的に発生させることと、
(iii)前記発生された熱マップを参照することなく、少なくとも部分的に、治療の間に前記サブ領域内に堆積されたエネルギーに基づいて、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測することと、
(iv)少なくとも部分的に、前記熱マップによって示される前記サブ領域の温度変化と前記サブ領域の予測された温度変化との間の偏差が所定の閾値を超えるかどうかに基づいて、前記熱マップが不正確であるかどうかを決定することであって、前記所定の閾値の値は、前記サブ領域に伝送された音響エネルギーの量に基づいており、前記所定の閾値は、治療の間に前記サブ領域内に堆積されたエネルギーに正の相関がある、ことと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、システム。
【請求項2】
前記コントローラはさらに、
前記発生された熱マップにおける前記温度変化を前記予測された温度変化と比較することにより、それらの間の偏差を決定することと、
前記偏差を前記所定の閾値と比較することと
を行うように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラはさらに、前記偏差が、前記所定の閾値を超えると決定することに応じて、前記熱マップが、不正確であると決定するように構成される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラはさらに、少なくとも部分的に、前記サブ領域内に堆積されたエネルギー、前記ベースライン位相画像および/または治療位相画像と関連付けられる雑音レベル、または前記発生された熱マップにおける前記温度変化と前記予測された温度変化との間の前記偏差のうちの少なくとも1つに基づいて、前記所定の閾値を調節するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記サブ領域の温度変化を引き起こすように構成される医療デバイスをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記医療デバイスは、複数のトランスデューサ要素を含む超音波トランスデューサを備え、前記コントローラはさらに、物理モデルを使用して、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測するように構成される、請求項
5に記載のシステム。
【請求項7】
前記物理モデルは、少なくとも部分的に、前記サブ領域において集束帯を発生させるための超音波パラメータの値に基づく、請求項
6に記載のシステム。
【請求項8】
前記超音波パラメータは、前記トランスデューサ要素のそれぞれと関連付けられる振幅、周波数、位相、方向、またはアクティブ化時間のうちの少なくとも1つを備える、請求項
7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラはさらに、前記発生された熱マップを参照することなく、物理モデルを使用して、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記物理モデルは、少なくとも部分的に、前記サブ領域または前記サブ領域と異なる第2のサブ領域のうちの少なくとも1つと関連付けられる組織特性に基づく、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラはさらに、少なくとも部分的に、前記MRIユニットを使用して入手された撮像データに基づいて、前記組織特性を入手するように構成される、請求項
10に記載のシステム。
【請求項12】
組織特性は、タイプ、構造、厚さ、密度、音速、熱吸収係数、灌流係数、または代謝熱発生率のうちの少なくとも1つを備える、請求項
10に記載のシステム。
【請求項13】
前記物理モデルは、生体熱伝達方程式に基づく、請求項
9に記載のシステム。
【請求項14】
前記生体熱伝達方程式は、ペンネ方程式を含む、請求項
13に記載のシステム。
【請求項15】
前記コントローラはさらに、統計モデルを使用して、前記サブ領域の温度変化を予測するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記サブ領域の温度変化を引き起こすように構成される医療デバイスをさらに備え、前記統計モデルは、前記医療デバイスの以前のアクティブ化からもたらされる温度の変化の履歴データを含む、請求項
15に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラはさらに、前記MRIユニットに、それぞれが前記撮像領域の予想される運動の異なる段階の間の位相背景に対応する前記撮像領域の複数のベースライン位相画像を含む参照ライブラリを入手させるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラはさらに、それらの間の類似性に基づいて、前記治療位相画像に最良に合致する前記参照ライブラリ内のベースライン位相画像を識別し、少なくとも部分的に、前記識別された最良に合致するベースライン位相画像に基づいて、前記熱マップを発生させるように構成される、請求項
17に記載のシステム。
【請求項19】
前記所定の閾値の値はさらに、入手されたMR撮像データと関連付けられる雑音レベルに基づく、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
磁気共鳴(MR)温度測定を実施する
ためのシステムの作動方法であって、
前記システムは、コントローラと、磁気共鳴撮像(MRI)ユニットとを備え、前記
作動方法は、
前記コントローラによって制御される前記MRIユニットが、撮像領域の少なくとも1つのベースライン位相画像と、前記撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く前記撮像領域の少なくとも1つの治療位相画像とを入手することと、
前記コントローラが、少なくとも部分的に、前記入手されたベースライン位相画像および治療位相画像に基づいて、前記サブ領域の温度変化をピクセル単位で示す熱マップを電子的に発生させることと、
前記発生された熱マップを参照することなく、
前記コントローラが、少なくとも部分的に、治療の間に前記サブ領域内に堆積されたエネルギーに基づいて、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測することと、
前記コントローラが、少なくとも部分的に、前記熱マップによって示される前記サブ領域の温度変化と前記サブ領域の予測された温度変化との間の偏差が所定の閾値を超えるかどうかに基づいて、前記熱マップが不正確であるかどうかを決定することであって、前記所定の閾値の値は、前記サブ領域に伝送された音響エネルギーの量に基づいており、前記所定の閾値は、治療の間に前記サブ領域内に堆積されたエネルギーに正の相関がある、ことと
を含む、
作動方法。
【請求項21】
前記所定の閾値はさらに、入手されたMR撮像データと関連付けられる雑音レベルに基づく、請求項
20に記載の
作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年11月28日に出願された米国特許出願第16/202,558号の優先権および利益を主張し、それを参照することによってその全体として本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、概して、磁気共鳴(MR)撮像に関し、より具体的には、MR熱撮像(またはMR温度測定)およびMR温度測定における補正のための技法に関する。
【背景技術】
【0003】
体内組織のMR撮像は、診断および外科手術を含む、多数の医療手技のために使用され得る。大まかに言えば、MR撮像は、対象を比較的に均一な静的磁場内に設置することによって開始される。静的磁場は、水素原子核の急回転を引き起こし、磁場の一般的方向を中心として整合および歳差運動させる。無線周波数(RF)磁場パルスが、次いで、静的磁場上に重畳され、整合された急回転の一部を一時的高エネルギー非整合状態と整合状態との間で交互させ、それによって、MRエコーまたはMR応答信号と呼ばれるRF応答信号を誘発する。対象における異なる組織は、異なるMR応答信号を生成することが公知であり、本性質は、MR画像においてコントラストを作成するために使用されることができる。RF受信機が、MR応答信号の持続時間、強度、および源場所を検出し、そのようなデータは、次いで、トモグラフィまたは3次元画像を発生させるために処理される。
【0004】
MR撮像はまた、医療器具を位置特定および誘導することを支援するために、医療手技の間に効果的に使用されることができる。例えば、患者が、MRI機械内にいる間、医療手技が、医療器具を使用して、患者に対して実施されることができる。医療器具は、患者の中に挿入するためのものであり得る、またはそれらは、外部から使用されるが、依然として、治療または診断効果を有し得る。例えば、医療器具は、超音波デバイスであり得、これは、患者の身体の外側に配置され、超音波エネルギーを集束させ、患者の身体上またはその中の組織または他の物質をアブレーションする、または壊死させる。MRI機械は、好ましくは、患者に対する器具の場所(またはその効果の焦点)が、リアルタイムで(または実質的にリアルタイムで)監視され得るように、高速で画像を生成する。
【0005】
MR撮像はさらに、生体内温度を定量的に監視する非侵襲性手段を提供することができる。これは、治療面積の温度が、治療の進行を査定し、熱伝導およびエネルギー吸収の局所的差異を補正するために、連続的に監視されるべきである、上記に言及されるMR誘導集束超音波(MRgFUS)治療または他のMR誘導熱療法において特に有用である。MR撮像を用いた温度の監視(例えば、測定および/またはマッピング)は、概して、MR温度測定またはMR熱撮像と称される。
【0006】
MR温度測定のために利用可能な種々の方法の中でも、プロトン共鳴周波数(PRF)偏移方法が、多くの場合、温度変化に対するその優れた線形性、組織タイプにほぼ依存しないこと、およびそれを用いて取得された温度マップの高い空間および時間分解能に起因して、好ましい。PRF偏移方法は、水分子中のプロトンのMR共鳴周波数が、(有利なこととして、組織タイプ間で比較的に一定である比例定数を伴って)温度とともに線形に変化する現象に基づく。温度による周波数変化は、小さく、バルク水に関して約0.01ppm/℃および組織内で約0.0096~0.013ppm/°Cのみであるため、PRF偏移は、典型的には、位相感受性撮像方法を用いて検出され、撮像は、2回実施され、最初に、温度変化に先立ってベースラインPRF位相画像を入手し、次いで、温度変化後の第2の位相画像を入手し、それによって、温度の変化に比例するわずかな位相変化を捕捉する。
【0007】
例えば、位相画像は、MR画像データから算出され得、ベースライン画像に対する温度差マップが、(i)ピクセル単位で、ベースラインに対応する位相画像と続けて取得されたMR画像に対応する位相画像と間の位相差を決定し、(ii)静的磁場の強度およびエコー時間(TE)等の撮像パラメータを考慮しながら、PRP温度依存性に基づいて、位相差を温度差に変換することによって取得され得る。減算ステップが、関与し得るが、位相差の決定は、スカラーの単純な減算以上のものを伴うことを理解されたい。
【0008】
残念ながら、位相画像の変化は、温度変化から一意に生じない。近傍の移動する物体に起因する局所的磁場の変化、呼吸または他の移動に起因する患者の身体における磁化率変化、および磁石またはシムドリフト等の温度に関連しない種々の因子は全て、位相感受性温度測定を無効にし得る、交絡位相偏移につながり得る。例えば、MRgFUS治療手技の間、1つ以上の治療デバイスが、MR撮像面積内またはその近傍で再位置付けおよび/または再配向される必要があり得る。治療デバイスは、典型的には、金属構成要素を含むため、その移動は、局所的磁場を擾乱させ、それによって、位相背景を有意に変化させ得る。非金属物体およびその移動もまた、局所的磁場を擾乱させ得る。例えば、患者の呼吸または転回運動は、MR撮像データに対して類似する効果を及ぼし得る。実際に、患者運動および/または近傍の物体と関連付けられる磁場の変化は、上記に言及される位相感受性アプローチを使用して行われる温度測定を役に立たないものにするほど深刻であり得る。
【0009】
温度に関連しない因子からもたらされる位相変化を検出するために、種々の従来のアプローチは、MR撮像データを入手することに応じて、MR撮像データの実空間ピクセル画像を作成し、ピクセル画像内に出現するアーチファクトを識別する。検出されたアーチファクトに基づいて、非温度関連因子からもたらされる位相変化が、間接的に推論される。しかしながら、ピクセル画像に対して殆ど効果を及ぼさないアーチファクトが、位相画像に対して有意な効果を及ぼし得る。その結果、従来のアプローチは、依然として、医療治療を損ない得る、欠陥のある熱マップを発生させ得る。
【0010】
故に、効率的かつ安全な医療手技を確実にするように、温度に関連しない因子からもたらされる誤ったMR熱マップを正確かつ確実に識別する必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の種々の実施形態は、MR撮像データから発生された不正確な温度マップを検出するためのシステムおよび方法を提供する。容易な参照のために、以下の説明は、超音波熱治療の間に入手されるMR撮像データに言及するが、しかしながら、同一のアプローチは、概して、例えば、手技の進行を査定するために、着目領域の連続的温度監視を要求する、任意のMR誘導医療手技(診断および外科手術を含む)にも同様に適用されることを理解されたい。
【0012】
いくつかの実施形態では、熱治療に先立って、MR未加工撮像データが、入手され、未加工データは、次いで、標的領域の場所および/または配向を識別し、ベースライン位相画像を発生させるために処理される。MR撮像データは、熱治療の間に再び入手され、標的組織の場所を識別し、治療位相画像を発生させるために処理されてもよい。治療位相画像は、次いで、ピクセル単位で、それらの間の位相差を算出するために、治療に先立って入手されたベースライン位相画像と比較されてもよく、算出された位相差に基づいて、MR撮像データによって測定された温度の点毎の変化を示すMR熱マップが、作成されることができる。種々の実施形態では、熱マップにおける測定されたピクセル単位の温度変化のうちのいくつかまたは全てが、物理モデル(再び、ピクセル単位)を使用して予測された温度変化と比較され、測定された温度変化と予測された温度変化との間の偏差に基づいて、入手された熱マップの正確度が、決定されることができる。例えば、偏差が、(個々のピクセルに関して、またはピクセルのある領域にわたって、例えば、集約ベースで)所定の閾値量を超える場合、入手された熱マップは、不正確として識別されてもよい。その結果、入手された熱マップは、破棄されてもよく、いくつかの実施形態では、超音波治療は、非標的組織への損傷を回避するように、正確な熱マップが取得されるまで、一時停止されてもよい。
【0013】
物理モデルは、例えば、標的および/または非標的領域内に堆積された音響エネルギーおよび標的および/または非標的領域の解剖学的特性(例えば、タイプ、性質、構造、厚さ、密度等)および/または物質特性(例えば、音速)等の組織特性に基づいて、熱治療からもたらされる温度の変化を算出的に予測してもよい。標的および/または非標的領域内に堆積された音響エネルギーは、標的領域に集束帯を発生させる超音波パラメータ値およびトランスデューサと標的領域との間のビーム経路上に位置する介在組織の組織特性に基づいて推定されてもよい。一実装では、標的組織および非標的組織(介在組織および標的領域を囲繞する組織を含む)の組織特性は、MRI装置、コンピュータトモグラフィ(CT)デバイス、陽電子放出トモグラフィ(PET)デバイス、単一光子放出コンピュータトモグラフィ(SPECT)デバイス、または超音波検査デバイス等の撮像デバイスを使用して入手される。加えて、物理モデルはさらに、組織内の熱伝達をシミュレートするため微分方程式(ペンネモデルおよび生体熱方程式等)の形態をとり(またはそれを含み)、それによって、その時間間隔の間の標的/非標的領域における温度増加を予測してもよい。
【0014】
代替として、または加えて、熱治療からもたらされる温度増加は、統計モデルを使用して予測されてもよい。例えば、統計モデルは、同一または異なる患者に対して実施された以前の熱治療の間に測定された蓄積された音響エネルギーまたは温度増加の履歴データを含んでもよい。遡及研究に基づいて、伝送された音響出力および組織特性を標的/非標的領域における蓄積された音響エネルギーまたは温度変化に関連させる統計モデルが、確立されてもよい。現在の患者の組織特性および現在の治療において採用される超音波パラメータ値が、次いで、所与の時間における、またはある時間間隔内の治療の間の蓄積された音響エネルギーまたは温度増加を予測するために、統計モデルに適用されてもよい。
【0015】
熱マップにおける温度増加が、熱治療に対する組織応答またはある外部からのアーチファクトからもたらされているかどうかを決定するための所定の閾値は、固定される、または動的に変動されてもよい。例えば、閾値のサイズは、閾値が、小さい音響エネルギーに関して小さく、より大きい音響エネルギーに関してより大きいように、標的領域に伝送される音響エネルギーの量に正の相関があってもよい。その結果、より高い音響エネルギーにおいて、測定された温度と予測された温度との間のより大きい不一致が、測定された熱マップが不正確であると結論付けるために要求される。一実施形態では、所定の閾値は、入手されたMR撮像データの雑音レベルに基づいて調節される。例えば、より小さい信号対雑音比を有するMR撮像データは、より大きい信号対雑音比を有するMR撮像データと比較して、より大きい閾値に対応し得る。したがって、熱マップが、より高い雑音レベルを含むとき、熱マップにおける測定された温度は、測定された熱マップに欠陥があると決定する前に、予測された温度からのより大きい偏差を有し得る。
【0016】
熱治療の間に温度の変化を予測することは、不正確な熱マップを検出するために必要ではない場合がある。いくつかの実施形態では、不正確なマップの検出は、熱治療の間に入手された履歴撮像データのみに基づく。例えば、伝送された超音波出力が、治療の間に一定のままであると仮定して、標的領域において蓄積されたエネルギー(および結果として生じる温度)は、時間とともに漸進的に増加することが予期され得る。したがって、特定の温度マップにおける標的または非標的領域が、(例えば、以前のいくつかの画像にわたる同一の領域に関する平均的増加または減少と比較して)温度の急激な増加または減少を呈する場合、温度マップは、注目された領域において不正確である可能性が高い。
【0017】
故に、種々の実施形態は、熱治療の間の標的および/または非標的組織の生体内温度を監視し、不正確な熱マップをリアルタイムで検出するためのアプローチを提供する。これは、MR誘導熱療法において特に有用であり、したがって、標的および/または非標的組織の温度が、熱治療の進行を査定し、熱伝導およびエネルギー吸収の局所的差異を補正するために、連続的に監視され、それによって、標的において所望の治療効果を達成し、非標的組織への損傷を回避することができる。
【0018】
故に、一側面では、本発明は、磁気共鳴(MR)温度測定を実施するためのシステムに関する。種々の実施形態では、本システムは、磁気共鳴撮像(MRI)ユニットと、MRIユニットと通信する、コントローラとを含み、コントローラは、(i)MRIユニットに、撮像領域の1つ以上のベースライン位相画像と、撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く撮像領域の1つ以上の治療位相画像とを入手させ、(ii)少なくとも部分的に、入手されたベースライン位相画像および治療位相画像に基づいて、サブ領域の温度変化をピクセル単位で示す熱マップを電子的に発生させ、(iii)発生された熱マップを参照することなく、少なくとも部分的に、治療の間にサブ領域内に堆積されたエネルギーに基づいて、サブ領域の温度変化を算出的に予測し、(iv)少なくとも部分的に、熱マップによって示されるサブ領域の温度変化およびサブ領域の予測された温度変化に基づいて、熱マップが不正確であるかどうかを決定するように構成される。
【0019】
コントローラはさらに、それらの間の偏差を決定するように、発生された熱マップにおける温度変化を予測された温度変化と比較し、偏差を所定の閾値と比較するように構成されてもよい。加えて、コントローラはさらに、偏差が、所定の閾値(固定値である場合とそうではない場合がある)を超えると決定することに応じて、熱マップが、不正確であると決定するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、コントローラはさらに、少なくとも部分的に、サブ領域内に堆積されたエネルギー、ベースライン位相画像および/または治療位相画像と関連付けられる雑音レベル、または発生された熱マップにおける温度変化と予測された温度変化との間の偏差に基づいて、所定の閾値を調節するように構成される。
【0020】
一実施形態では、本システムはさらに、サブ領域の温度変化を引き起こすように構成される、医療デバイスを含む。例えば、医療デバイスは、複数のトランスデューサ要素を有する、超音波トランスデューサを含んでもよい。コントローラはさらに、物理モデルを使用して、サブ領域の温度変化を算出的に予測するように構成されてもよい。一実装では、物理モデルは、少なくとも部分的に、サブ領域において集束帯を発生させるための超音波パラメータ(例えば、トランスデューサ要素と関連付けられる振幅、周波数、位相、方向、またはアクティブ化時間)の値に基づく。
【0021】
種々の実施形態では、コントローラはさらに、発生された熱マップを参照することなく、物理モデルを使用して、サブ領域の温度変化を算出的に予測するように構成される。物理モデルは、少なくとも部分的に、サブ領域および/またはサブ領域と異なる第2のサブ領域と関連付けられる組織特性(例えば、タイプ、構造、厚さ、密度、音速、熱吸収係数、灌流係数、および/または代謝熱発生率)に基づいてもよい。一実装では、コントローラはさらに、少なくとも部分的に、MRIユニットを使用して入手された撮像データに基づいて、組織特性を入手するように構成される。加えて、物理モデルは、生体熱伝達方程式(例えば、ペンネ方程式)に基づいてもよい。
【0022】
コントローラはさらに、統計モデルを使用して、サブ領域の温度変化を予測するように構成されてもよい。加えて、本システムはさらに、サブ領域の温度変化を引き起こすように構成される、医療デバイスを含んでもよく、統計モデルは、次いで、医療デバイスの以前のアクティブ化からもたらされる温度の変化の履歴データを含んでもよい。一実施形態では、コントローラはさらに、MRIユニットに、それぞれ、撮像領域の予想される運動の異なる段階の間の位相背景に対応する、撮像領域の複数のベースライン位相画像を含む、参照ライブラリを入手させるように構成される。コントローラは、次いで、さらに、それらの間の類似性に基づいて、治療位相画像に最良に合致する参照ライブラリ内のベースライン位相画像を識別し、少なくとも部分的に、識別された最良に合致するベースライン位相画像に基づいて、熱マップを発生させるように構成されてもよい。
【0023】
別の側面では、本発明は、MR温度測定を実施する方法に関する。種々の実施形態では、本方法は、撮像領域の1つ以上のベースライン位相画像と、撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く撮像領域の1つ以上の治療位相画像とを入手するステップと、少なくとも部分的に、入手されたベースライン位相画像および治療位相画像に基づいて、サブ領域の温度変化をピクセル単位で示す熱マップを電子的に発生させるステップと、発生された熱マップを参照することなく、少なくとも部分的に、治療の間にサブ領域内に堆積されたエネルギーに基づいて、サブ領域の温度変化を算出的に予測するステップと、少なくとも部分的に、熱マップによって示されるサブ領域の温度変化およびサブ領域の予測された温度変化に基づいて、熱マップが不正確であるかどうかを決定するステップとを含む。
【0024】
本発明の別の側面は、MR温度測定を実施するためのシステムに関する。種々の実施形態では、本システムは、MRIユニットと、MRIユニットと通信する、コントローラとを含み、コントローラは、(i)MRIユニットに、撮像領域の1つ以上のベースライン位相画像と、少なくとも撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く撮像領域の複数の治療位相画像とを入手させ、(ii)少なくとも部分的に、入手されたベースライン位相画像および治療位相画像に基づいて、複数の熱マップを電子的に発生させ、各熱マップは、治療位相画像のうちの1つと関連付けられるサブ領域の温度変化をピクセル単位で示し、(iii)少なくとも部分的に、熱マップのうちの1つと関連付けられる温度変化と熱マップのうちの少なくとも別の1つと関連付けられる温度変化との間の比較に基づいて、熱マップのうちの1つが不正確であるかどうかを決定するように構成される。
本明細書は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
磁気共鳴(MR)温度測定を実施するためのシステムであって、前記システムは、
磁気共鳴撮像(MRI)ユニットと、
コントローラであって、前記コントローラは、前記MRIユニットと通信し、
(i)前記MRIユニットに、撮像領域の少なくとも1つのベースライン位相画像と、前記撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く前記撮像領域の少なくとも1つの治療位相画像とを入手させることと、
(ii)少なくとも部分的に、前記入手されたベースライン位相画像および治療位相画像に基づいて、前記サブ領域の温度変化をピクセル単位で示す熱マップを電子的に発生させることと、
(iii)前記発生された熱マップを参照することなく、少なくとも部分的に、治療の間に前記サブ領域内に堆積されたエネルギーに基づいて、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測することと、
(iv)少なくとも部分的に、前記熱マップによって示される前記サブ領域の温度変化および前記サブ領域の予測された温度変化に基づいて、前記熱マップが不正確であるかどうかを決定することと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、システム。
(項目2)
前記コントローラはさらに、
前記発生された熱マップにおける前記温度変化を前記予測された温度変化と比較することにより、それらの間の偏差を決定することと、
前記偏差を所定の閾値と比較することと
を行うように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記コントローラはさらに、前記偏差が、前記所定の閾値を超えると決定することに応じて、前記熱マップが、不正確であると決定するように構成される、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記所定の閾値は、固定値である、項目3に記載のシステム。
(項目5)
前記コントローラはさらに、少なくとも部分的に、前記サブ領域内に堆積されたエネルギー、前記ベースライン位相画像および/または治療位相画像と関連付けられる雑音レベル、または前記発生された熱マップにおける前記温度変化と前記予測された温度変化との間の前記偏差のうちの少なくとも1つに基づいて、前記所定の閾値を調節するように構成される、項目3に記載のシステム。
(項目6)
前記サブ領域の温度変化を引き起こすように構成される医療デバイスをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目7)
前記医療デバイスは、複数のトランスデューサ要素を含む超音波トランスデューサを備え、前記コントローラはさらに、物理モデルを使用して、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測するように構成される、項目6に記載のシステム。
(項目8)
前記物理モデルは、少なくとも部分的に、前記サブ領域において集束帯を発生させるための超音波パラメータの値に基づく、項目7に記載のシステム。
(項目9)
前記超音波パラメータは、前記トランスデューサ要素のそれぞれと関連付けられる振幅、周波数、位相、方向、またはアクティブ化時間のうちの少なくとも1つを備える、項目8に記載のシステム。
(項目10)
前記コントローラはさらに、前記発生された熱マップを参照することなく、物理モデルを使用して、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記物理モデルは、少なくとも部分的に、前記サブ領域または前記サブ領域と異なる第2のサブ領域のうちの少なくとも1つと関連付けられる組織特性に基づく、項目10に記載のシステム。
(項目12)
前記コントローラはさらに、少なくとも部分的に、前記MRIユニットを使用して入手された撮像データに基づいて、前記組織特性を入手するように構成される、項目11に記載のシステム。
(項目13)
組織特性は、タイプ、構造、厚さ、密度、音速、熱吸収係数、灌流係数、または代謝熱発生率のうちの少なくとも1つを備える、項目11に記載のシステム。
(項目14)
前記物理モデルは、生体熱伝達方程式に基づく、項目10に記載のシステム。
(項目15)
前記生体熱伝達方程式は、ペンネ方程式を含む、項目14に記載のシステム。
(項目16)
前記コントローラはさらに、統計モデルを使用して、前記サブ領域の温度変化を予測するように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目17)
前記サブ領域の温度変化を引き起こすように構成される医療デバイスをさらに備え、前記統計モデルは、前記医療デバイスの以前のアクティブ化からもたらされる温度の変化の履歴データを含む、項目16に記載のシステム。
(項目18)
前記コントローラはさらに、前記MRIユニットに、それぞれが前記撮像領域の予想される運動の異なる段階の間の位相背景に対応する前記撮像領域の複数のベースライン位相画像を含む参照ライブラリを入手させるように構成される、項目1に記載のシステム。
(項目19)
前記コントローラはさらに、それらの間の類似性に基づいて、前記治療位相画像に最良に合致する前記参照ライブラリ内のベースライン位相画像を識別し、少なくとも部分的に、前記識別された最良に合致するベースライン位相画像に基づいて、前記熱マップを発生させるように構成される、項目18に記載のシステム。
(項目20)
磁気共鳴(MR)温度測定を実施する方法であって、前記方法は、
撮像領域の少なくとも1つのベースライン位相画像と、前記撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く前記撮像領域の少なくとも1つの治療位相画像とを入手することと、
少なくとも部分的に、前記入手されたベースライン位相画像および治療位相画像に基づいて、前記サブ領域の温度変化をピクセル単位で示す熱マップを電子的に発生させることと、
前記発生された熱マップを参照することなく、少なくとも部分的に、治療の間に前記サブ領域内に堆積されたエネルギーに基づいて、前記サブ領域の温度変化を算出的に予測することと、
少なくとも部分的に、前記熱マップによって示される前記サブ領域の温度変化および前記サブ領域の予測された温度変化に基づいて、前記熱マップが不正確であるかどうかを決定することと
を含む、方法。
(項目21)
磁気共鳴(MR)温度測定を実施するためのシステムであって、前記システムは、
磁気共鳴撮像(MRI)ユニットと、
コントローラであって、前記コントローラは、前記MRIユニットと通信し、
(i)前記MRIユニットに、撮像領域の少なくとも1つのベースライン位相画像と、少なくとも前記撮像領域内のサブ領域の温度変化に続く前記撮像領域の複数の治療位相画像とを入手させることと、
(ii)少なくとも部分的に、前記入手されたベースライン位相画像および前記治療位相画像に基づいて、複数の熱マップを電子的に発生させ、各熱マップは、前記治療位相画像のうちの1つと関連付けられる前記サブ領域の温度変化をピクセル単位で示すことと、
(iii)少なくとも部分的に、前記熱マップのうちの1つと関連付けられる前記温度変化と前記熱マップのうちの少なくとも別の1つと関連付けられる前記温度変化との間の比較に基づいて、前記熱マップのうちの1つが不正確であるかどうかを決定することと
を行うように構成される、コントローラと
を備える、システム。
【0025】
本明細書に使用されるように、用語「実質的に」は、±10%を意味し、いくつかの実施形態では、±5%を意味する。本明細書全体を通した「一実施例」、「ある実施例」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の言及は、実施例に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本技術の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通した種々の場所における語句「一実施例では」、「ある実施例では」、「一実施形態」、または「ある実施形態」の表出は、必ずしも、全てが同一の実施例を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、ルーチン、ステップ、または特性は、本技術の1つ以上の実施例において任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。本明細書に提供される見出しは、便宜上のためだけのものであり、請求される技術の範囲または意味を限定または解釈することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図面では、同様の参照文字は、概して、異なる図全体を通して同一の部分を指す。また、図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、概して、本発明の原理を図示することに重点が置かれている。以下の説明では、本発明の種々の実施形態が、以下の図面を参照して説明される。
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の種々の実施形態による、例示的MRI装置を図示する。
【0028】
【
図2A】
図2Aおよび2Bは、本発明の種々の実施形態による、温度増加が、非温度関連因子からもたらされる、不正確なMR熱マップを検出するための例示的アプローチを図示する、フローチャートである。
【
図2B】
図2Aおよび2Bは、本発明の種々の実施形態による、温度増加が、非温度関連因子からもたらされる、不正確なMR熱マップを検出するための例示的アプローチを図示する、フローチャートである。
【0029】
【
図3A】
図3A-3Dは、本発明の種々の実施形態による、標的領域および/または非標的領域における測定された熱マップと予測された熱マップとの間の温度差を図示する、例示的温度偏差マップを描写する。
【
図3B】
図3A-3Dは、本発明の種々の実施形態による、標的領域および/または非標的領域における測定された熱マップと予測された熱マップとの間の温度差を図示する、例示的温度偏差マップを描写する。
【
図3C】
図3A-3Dは、本発明の種々の実施形態による、標的領域および/または非標的領域における測定された熱マップと予測された熱マップとの間の温度差を図示する、例示的温度偏差マップを描写する。
【
図3D】
図3A-3Dは、本発明の種々の実施形態による、標的領域および/または非標的領域における測定された熱マップと予測された熱マップとの間の温度差を図示する、例示的温度偏差マップを描写する。
【0030】
【
図4】
図4は、本発明の種々の実施形態による、医療手技の間の標的/非標的領域における温度の変化を予測するための例示的アプローチを図示する、フローチャートである。
【0031】
【
図5A】
図5Aは、本発明の種々の実施形態による、標的領域における温度変化と音響エネルギーの印加時間との間の関係を描写する。
【0032】
【
図5B】
図5Bは、本発明の種々の実施形態による、標的領域における温度変化と印加される超音波の振幅との間の関係を描写する。
【0033】
【
図6】
図6は、本発明の種々の実施形態による、温度増加が、非温度関連因子からもたらされる、不正確なMR熱マップを検出するための別の例示的アプローチを図示する、フローチャートである。
【0034】
【
図7】
図7は、本発明の種々の実施形態による、標的および非標的領域における温度変化と音響エネルギーの印加時間との間の種々の関係を描写する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、それにおいて、またはそれに関して、本発明の種々の実施形態による、MR温度測定を実施し、MR温度測定における測定アーチファクトを検出するための技法が実装され得る、例示的MRIシステムを示す。図示されるMRIシステム100は、MRI機械102を備える。MR誘導手技が、実施されている場合、医療デバイス(例えば、超音波トランスデューサ)104が、MRI機械102のボア内に配置されてもよい。MRI機械の構成要素および動作は、当技術分野で周知であるため、システム100およびその動作の理解において有用ないくつかの基本的構成要素のみが、本明細書に説明されるであろう。
【0036】
MRI機械102は、典型的には、円筒形電磁石106を備え、これは、電磁石106のボア108内で静的磁場を発生させる。電磁石106は、磁石ボア108の内側の撮像領域110内で実質的に均質な磁場を発生させる。電磁石106は、磁石筐体112内に封入されてもよい。その上に患者116が横たわる、支持台114が、磁石ボア108内に配置される。患者116内の着目領域118が、識別され、MRI機械102の撮像領域110内に位置付けられてもよい。
【0037】
円筒形磁場勾配コイル120のセットもまた、磁石ボア108内に提供されてもよい。勾配コイル120もまた、患者116を囲繞する。勾配コイル120は、所定の時間に、磁石ボア108内の3つの相互に直交する方向において、所定の大きさの磁場勾配を発生させることができる。磁場勾配を用いて、異なる空間場所が、異なる歳差運動周波数と関連付けられ、それによって、MR画像にその空間分解能を与えることができる。RF送信機コイル122が、撮像領域110および着目領域118を囲繞する。RF送信機コイル122は、磁場の形態におけるRFエネルギーを、着目領域118の中を含む、撮像領域110の中に放出する。
【0038】
RF送信機コイル122はまた、着目領域118から放出されたMR応答信号を受信することができる。MR応答信号は、当業者によって公知であるように、コントローラ124を使用して、未加工k空間データに増幅、調整、およびデジタル化される。コントローラ124はさらに、高速フーリエ変換(FFT)を含む、公知の算出方法を使用して、未加工k空間データを画像データのアレイに処理する。画像データは、次いで、コンピュータCRT、LCDディスプレイ、または他の好適なディスプレイ等のモニタ126上で表示されてもよい。
【0039】
典型的なMR撮像手技では、RF励起パルスの放出、種々の方向における磁場勾配の印加、RF応答信号の入手が、所定のシーケンスにおいて行われる。例えば、いくつかの撮像シーケンスでは、静的磁場に平行な線形磁場勾配が、撮像のための3次元組織内のスライスを選択するために、励起パルスと同時に印加される。続けて、撮像面に平行な時間依存性勾配が、磁化ベクトルに対して位置依存性位相および周波数を付与するために使用されてもよい。代替として、撮像シーケンスは、3次元撮像領域のために設計されてもよい。PRF温度測定のために好適な時間シーケンスは、例えば、勾配再呼出しエコー(GRE)およびスピンエコーシーケンスを含む。
【0040】
撮像領域全体(2または3次元)にわたって積分される時変RF応答信号は、未加工画像データを構成する時系列の応答信号を生成するためにサンプリングされる。本時系列における各データ点は、k空間内の特定の点における位置依存性局所磁化のフーリエ変換の値として解釈されることができ、kは、勾配磁場の時間発展の関数である。したがって、時系列の応答信号を入手し、これをフーリエ変換することによって、組織の実空間画像(すなわち、空間座標の関数として測定された磁化が影響を及ぼす組織性質を示す画像)が、未加工データから再構成されることができる。未加工データから実空間画像データを構築するための算出方法(例えば、高速フーリエ変換を含む)は、概して、当業者に公知であり、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組み合わせにおけるコントローラ124において過度の実験を伴わずに容易に実装されることができる。
【0041】
超音波誘発温度変化の存在下では、水プロトンの共鳴周波数は、温度の増加とともに減少するため、ホットスポットが、画像データの位相において出現し得る。故に、PRF温度測定の目的のために、コントローラ124はさらに、実空間画像データから位相情報を抽出し、標的組織の加熱前および後に(またはその間に)入手された画像(すなわち、ベースラインおよび治療画像)に基づいて、温度誘発位相偏移の実空間マップを算出するための機能性を含む。位相偏移マップから、温度変化のマップ(Δ℃の単位)が、以下によって与えられる定数cとの乗算を介して算出され得、
【化1】
式中、αは、適用可能なPRF変化係数(水性組織に関して約0.01ppm/℃である)であり、γは、プロトン磁気回転比であり、B
0は、主要な磁場強度であり、TEは、GREまたは他の撮像シーケンスのエコー時間である。
【0042】
医療デバイス104はまた、MRI機械102の撮像領域110内またはその近傍に設置されてもよい。
図1に示される実施例では、医療デバイス104は、筋腫または癌性(または非癌性)組織等の組織をアブレーションするために、血管内の閉塞を粉砕するために、血液脳関門を開放するために、または患者116上またはその中の組織の他の治療を実施するために使用される、超音波器具であってもよい。実際には、医療デバイス104は、針、カテーテル、ガイドワイヤ、放射線送信機、内視鏡、腹腔鏡、または他の器具等の任意のタイプの医療器具であり得る。加えて、医療デバイス104は、患者116の外側への設置または患者の身体の中への挿入のいずれかのために構成されることができる。
【0043】
領域110のMR熱撮像(またはMR温度マッピングを伴う任意の医療手技)の間、典型的には、患者の身体の一部である、着目領域118は、患者の身体の移動に起因して、その形状および/または位置を変化させ得る。例えば、
図1では、着目領域118は、患者の頭部であり、これは、熱撮像プロセスの間に左または右のいずれかにわずかに転回し得る。着目領域118が、患者の腹部面積の一部である場合、その形状は、患者の呼吸サイクルとともに収縮または拡張し得る。着目領域118の形状および/または位置の変化は、磁場を擾乱させ、それによって、MR撮像データと関連付けられる位相を改変し得、その結果、それから発生される熱マップは、不正確であり得る。
【0044】
同様に、領域110のMR温度マッピングを伴う医療手技の間、医療デバイス104は、動的プロトコルに従って、1回以上の回数にわたって再位置付けおよび/または再配向され得る。再位置付けおよび/または再配向からもたらされる医療デバイス104の移動は、磁場を変化させ、それによって、MR撮像データの位相を変化させ得、これは、ひいては、不正確な熱マップをもたらす。
【0045】
本発明は、医療手技(例えば、超音波治療)の間に非温度関連因子(患者または近傍の物体の移動等)からもたらされる不正確なMR熱マップを検出することに対する種々のアプローチを提供する。これらのアプローチは、概して、医療手技に先立って、およびその間にMR温度測定を使用して着目領域118における温度を監視し、手技からもたらされる温度増加を算出的に予測することを伴う。測定された温度増加(個々のピクセルに関する、または集約ピクセルを有する領域における)が、算出的に予測された温度増加を所定の閾値量を上回って超える場合、後の時間に入手される熱マップにおけるそのようなピクセルに対応する、またはそのような領域内の温度マップは、不正確であり得、すなわち、そのようなピクセルに関する、またはそのような領域内の温度増加は、医療手技に対する真の組織応答ではなく、ある外部からのアーチファクトに起因する。
【0046】
図2Aは、種々の実施形態による、温度増加が、医療手技の間に非温度関連因子から(少なくとも部分的に)もたらされる、不正確なMR熱マップを検出するための例示的アプローチ200を図示する、フローチャートである。第1のステップ202において、医療手技(例えば、熱治療)に先立って、MR撮像シーケンスが、撮像領域110から応答信号を入手するために実行され、これは、続けて、未加工画像データ(すなわち、「k空間データ」)に変換される。第2のステップ204において、未加工画像データが、(高速フーリエ変換を使用して)撮像領域の実空間MR画像に変換され、実空間画像と関連付けられるPRFベースライン位相画像が、次いで、発生されることができ、実空間画像内の標的組織(ROI118に対応する)が、選択されてもよい。いくつかの実施形態では、本選択は、手動である、すなわち、ユーザ入力(例えば、画像内の標的を包囲するようにマウスを用いて描かれる線)に基づく一方、他の実施形態では、選択は、コンピュータアルゴリズム(例えば、標的と周辺組織との間のMR画像内のコントラストを活用して、ピクセル値を二値化する従来のアルゴリズム)によって自動的に遂行される。ステップ202、204は、随意に、一連のベースライン参照画像を有する参照ライブラリを作成するために、複数回、例えば、運動の周期的サイクル(心臓または呼吸サイクル等)の間の異なる段階において繰り返されてもよい。
【0047】
第3のステップ206において、手技と関連付けられる1つ以上の医療デバイス(例えば、熱治療のための超音波トランスデューサ104)が、標的組織を治療するためにアクティブ化されてもよい。治療の間、標的領域の未加工画像データが、上記に説明されるように、MRI装置100を使用して入手される(ステップ208)。再び、未加工治療画像は、実空間画像に変換され、標的組織の場所を識別し、PRF治療位相画像を発生させるために処理されてもよい(ステップ210)。ステップ212において、PRF治療位相画像は、ピクセル単位で、それらの間の位相差を算出するために、熱治療に先立って入手されたPRFベースライン位相画像と比較され、算出された位相差に基づいて、撮像領域内の治療画像と関連付けられるMR熱マップが、作成されることができる。随意に、ステップ208-212は、医療手技の間の標的および/または非標的組織の生体内温度を監視するために繰り返されてもよい。これは、標的および/または非標的組織の温度が、熱治療の進行を査定し、熱伝導およびエネルギー吸収の局所的差異を補正するために、連続的に監視され、MR誘導熱療法(例えば、MRgFUS治療)において特に有用である。
【0048】
運動の予想される範囲を網羅するベースライン画像の参照ライブラリが、上記に説明されるように取得される場合、入手された治療画像に最良に合致するライブラリ内の参照ベースライン画像が、それらの間の類似性に基づいて選択されてもよい。選択されたベースラインおよび治療画像は、次いで、標的/非標的領域における温度の変化を図示する熱マップを発生させるために処理される。本アプローチは、多くの場合、マルチベースライン温度測定と称され、マルチベースライン温度測定を実施するための例示的アプローチが、米国特許第9,814,909号(その全開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明されている。
【0049】
入手された熱マップが不正確であるかどうかを決定するために、種々の実施形態では、ステップ212におけるMRI測定から発生された熱マップは、下記にさらに説明されるような物理モデルを使用して予測される熱マップと比較されてもよい(ステップ214)。測定された熱マップと予測された熱マップとの間の偏差が、(個々のピクセルに関して、またはそれにわたってピクセル値が集約される領域において)所定の閾値量ΔTthを超える場合、熱マップは、不正確と見なされる(ステップ216)。不正確な熱マップは、次いで、破棄されてもよく、新しいMR撮像データが、新しい熱マップを発生させるために入手されてもよい(ステップ218)。加えて、または代替として、医療デバイス104は、非標的組織への損傷を回避するように、正確な熱マップが発生されるまで、一時停止されてもよい(ステップ220)。対照的に、測定された熱マップと予測された熱マップとの間の偏差が、所定の閾値に等しい、またはそれを下回る場合、ステップ212において入手された熱マップは、正確と見なされる(ステップ222)。
【0050】
例えば、
図3Aを参照すると、コントローラ124は、ベースライン画像302および治療画像304に対応する位相画像の間の位相差を比較し、それに基づいて、位相差を熱マップ306における温度差に変換してもよい。加えて、標的領域308は、標的ピクセルT
1-T
3を含み、標的領域を囲繞する非標的領域310は、マップ306において非標的ピクセルNT
1-NT
7を含む。いくつかの実施形態では、コントローラはさらに、下記にさらに説明されるように、熱治療からもたらされる予測された温度増加を示す熱マップ312を作成する。測定および予測された熱マップ306、312の間の差異は、次いで、ピクセル単位で(偏差マップ314に示されるように)決定され、所定の閾値と比較されてもよい。例えば、標的領域T
1-T
3および非標的領域NT
1-NT
7内の個々のピクセルに対応する差異に関する所定の閾値は、それぞれ、0.5℃および0.1℃であり、集約ピクセルを有する標的および非標的領域内の偏差に関する閾値は、それぞれ、1.2℃および0.5℃である。
図3Bを参照すると、標的ピクセルT
1-T
3および非標的ピクセルNT
1-NT
7のそれぞれに関する測定された温度と予測された温度との間の偏差は、所定の閾値よりも小さく、標的ピクセルおよび非標的ピクセルに関する集約温度偏差は、それぞれ、0.4℃および0.1℃である(両方が所定の閾値よりも小さい)ため、測定された熱マップ306は、正確と見なされる。
【0051】
対照的に、標的および/または非標的領域内の個々のピクセルおよび/または集約ピクセルに関する測定された熱マップと予測された熱マップとの間の偏差が、所定の閾値を超えるとき、熱マップ306は、不正確と決定される。例えば、
図3Cを参照すると、標的ピクセルT
1におけるマップ324における温度偏差は、所定の閾値(0.5℃)を超えるため、熱マップ306は、不正確と見なされる。同様に、
図3Dを参照すると、測定された熱マップと予測された熱マップとの間の偏差が、マップ334において描写される。標的ピクセルT
1-T
3および非標的ピクセルNT
1-NT
7のそれぞれに関する偏差は、所定の閾値(それぞれ、0.5℃および0.1℃)を超えないが、標的ピクセルにおける集約温度差は、1.5℃であり、所定の集約閾値1.2℃を超え、その結果、熱マップ306は、不正確と見なされる。
【0052】
熱マップ306が、発生された後、温度の変化を決定し、測定された温度変化を予測された値と比較し、それらの間の偏差を決定し、偏差が所定の閾値を超えるかどうかを決定するための処理時間は、比較的に(MR撮像データの入手と比較して)高速である。故に、上記に説明されるアプローチは、有利なこととして、医療手技の間にリアルタイムで(または実質的にリアルタイムで)新しく入手された熱マップの正確度を決定し得る。
【0053】
図2Bは、種々の実施形態による、医療手技の間に温度に関連しない1つ以上の因子からもたらされる不正確なMR熱マップを検出するための別の方法250を図示する、フローチャートである。
図2Aに示される方法200と同様に、ステップ202-212が、方法250において実施される。しかし、本方法では、医療手技の間の異なる時間に入手される2つの熱マップが、それらの間の温度差ΔT
mを決定するために、ピクセル単位で分析され(ステップ252)、算出された差異は、次いで、予測された温度増加ΔT
pと比較される(ステップ254)。算出された温度差ΔT
mが、(個々のピクセルに関して、または集約ピクセルを有する領域において)所定の閾値量ΔT
thを上回って予測された温度増加ΔT
pを超える場合、後の時間に入手される熱マップは、不正確として識別され、そのようなピクセルに対応する、またはそのような領域における温度増加が、医療手技に対する真の組織応答ではなく、ある外部からのアーチファクトに起因することを示し得る(ステップ256)。2つの熱マップの間の算出された温度差が、予測された温度増加から有意に逸脱しない(すなわち、これが、集約または個々のピクセルに関する所定の閾値量を下回る、すなわち、|ΔT
m-ΔT
p|≦ΔT
th))場合、後の時間に入手される熱マップは、正確と見なされる(ステップ258)。
【0054】
種々の実施形態では、医療手技の間の所与の時間t=t
1における、または時間t=t
1およびt=t
2において入手された2つの熱マップの間の温度増加は、標的および/または非標的領域の組織特性および関連する時間間隔Δt(例えば、熱治療を開始する時間から熱マップの入手まで、またはt=t
1からt=t
2まで)の間の標的および/または非標的領域内に堆積されたエネルギー(例えば、超音波治療における音響エネルギー)に基づいて予測される。
図4は、種々の実施形態による、熱治療からもたらされる温度増加を予測するための例示的アプローチを描写する。典型的な超音波治療では、上記に説明されるアプローチを使用して標的領域の場所および/または配向を決定すること(例えば、
図2Aのステップ204)に応じて、超音波パラメータ値(例えば、トランスデューサ要素と関連付けられる振幅、周波数、位相、および/または方向、または連続する一連の超音波処理の間の時間間隔)が、集束帯が、標的領域に作成されるように算出されてもよい(ステップ406において)。本ステップは、概して、物理モデルを適用し、標的領域に対する超音波トランスデューサの幾何学形状および位置および配向を考慮するステップを伴う。加えて、トランスデューサと標的領域との間のビーム経路上に位置する介在組織の解剖学的特性(例えば、タイプ、性質、構造、厚さ、密度等)および/または物質特性(例えば、音速)等の組織特性が、それからもたらされるビーム収差を予測および補正するために、物理モデル内に含まれてもよい。一実装では、介在組織の解剖学的特性は、MRI装置100(
図1に描写されるような)、CTデバイス、PETデバイス、SPECTデバイス、または超音波検査デバイス等の撮像デバイスを使用して入手される。例えば、入手された画像に基づいて、介在組織の物質特性を特徴付ける組織モデルが、確立されてもよい。組織モデルは、概して、複数の組織タイプまたは層(例えば、頭蓋骨、皮質骨の層、骨髄、および軟質脳組織に集束する超音波に関して)を含み、その個別の解剖学的および/または物質性質を特徴付ける。組織モデルは、標的および/または非標的組織を表すボクセルに対応するセルの3Dテーブルの形態をとってもよく、セルは、ビームが組織を横断するときに起こる収差に関連する、その値が音速等の組織の特性を表す属性を有する。ボクセルは、撮像デバイスによって断層的に取得され、各ボクセルが表す組織のタイプは、従来の組織分析ソフトウェアによって自動的に決定されることができる。決定された組織タイプおよび組織パラメータ(例えば、組織のタイプ別の音速)のルックアップテーブルを使用して、組織モデルのセルは、取り込まれてもよい。種々の組織の音速、熱感度、および/または熱エネルギー耐性を識別する組織モデルの作成に関するさらなる詳細が、米国特許公開第2012/0029396号(その全開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に見出され得る。
【0055】
集束帯内のビームの音響出力は、標的組織によって(少なくとも部分的に)吸収され、それによって、熱を発生させ、組織の温度を、細胞が変性および/またはアブレーションされる点まで上昇させる。組織内の伝搬距離にわたる超音波吸収の程度は、周波数の関数であり、以下によって与えられる、。
【化2】
式中、P
0は、トランスデューサから放出される超音波ビームの初期音響出力を表し、fは、超音波の伝送周波数(MHzにおいて測定される)を表し、αは、関連する周波数範囲における吸収係数(cm
-1・MHz
-1において測定される)を表し、公知の文献から取得され得、zは、焦点距離、すなわち、超音波ビームが標的に到達することに先立って組織を通して伝搬する、cmにおいて測定される距離であり、P
tは、標的領域における音響出力を表す。故に、種々の実施形態では、コントローラ124は、入手された画像を処理し、標的および/または非標的組織の解剖学的および/または物質性質をさらに特徴付け、それらを組織モデル内に含める(ステップ408において)。例えば、組織モデル内のセルの3Dテーブルはさらに、その値が、標的/非標的組織と関連付けられる吸収係数を表す属性を含んでもよい。
【0056】
したがって、組織モデルによって特徴付けられる標的/非標的組織の解剖学的および/または物質性質および採用される超音波パラメータ値に基づいて、物理モデルは、超音波ビーム経路、組織を通した誘発される効果の伝搬、時間間隔Δtの間に標的領域および/または非標的領域に送達される超音波エネルギー、および標的領域および/または非標的領域における熱への超音波エネルギーまたは圧力の変換を予測してもよい(ステップ410において)。いくつかの実施形態では、算出的物理モデルはさらに、組織内の熱伝達をシミュレートするための微分方程式(ペンネモデルおよび生体熱方程式等)の形態をとり(またはそれを含み)、それによって、時間間隔Δtの間の標的/非標的領域における温度増加を予測する(ステップ412において)。
【0057】
概して、ペンネモデルは、血液と組織との間の熱伝達の率h
bが、血液灌流率W
b(kg/(sm
3)において測定される)および動脈血液温度T
aと局所組織温度T(x,y,z)との間の差異の積に比例するという仮定に基づき、すなわち、
hb=W
bC
b(T
a-T)であり、式中、C
bは、血液の比熱(J/(Kkg)において測定される)である。組織内の熱伝導に起因する熱伝達寄与を追加し、率Q
mにおける代謝熱発生(J/(sm
3)において測定される)を考慮して、ペンネ方程式は、以下の形態において灌流される組織に関する熱エネルギー平衡を表す。
【化3】
式中、ρ、C、およびkは、組織の密度、熱容量、および熱伝導率(J/(s m K)において測定される)であり、Q
extは、熱治療からの組織の単位体積あたりの抽出される熱出力を表す。したがって、当業者に公知の種々の方法(有限差分および有限要素方法等)のうちのいずれかを使用して数値的にペンネ方程式を解くことによって、所与の時点における温度マップが、算出されることができる。故に、所与の時間における、または2つの時間t=t
1およびt=t
2の間の熱治療の適用後の温度の変化を示す熱マップが、決定されることができる。超音波治療の間の温度増加を算出的に予測することに対するアプローチが、例えば、米国特許公開第2012/0071746号および第2015/0359603号(その全開示は、参照することによって本明細書に組み込まれる)に提供されている。
【0058】
代替として、または加えて、熱治療からもたらされる温度変化は、統計モデルを使用して予測されてもよい。例えば、統計モデルは、以前に同一または異なる患者に対して実施された治療間隔Δtの間の蓄積された音響エネルギーまたは温度増加の履歴データを含んでもよい。一実施形態では、同一のタイプの標的組織および/または非標的組織に対する以前の熱治療において入手されたMR画像が、標的/非標的組織において吸収された熱を決定するために、遡及的に研究される。加えて、以前の治療のために採用された超音波パラメータ値が、標的/非標的組織に伝送された音響出力を決定するために分析される。これらの遡及研究に基づいて、伝送された音響出力を標的/非標的領域における蓄積された音響エネルギーまたは温度増加に関連させる統計モデルが、簡単に確立されてもよい。現在の治療において採用される超音波パラメータ値が、次いで、治療間隔Δtの間の蓄積された音響エネルギーまたは温度増加を予測するために、統計モデルに適用されてもよい。例えば、
図5Aを参照すると、遡及研究は、タイプA組織を有する標的領域における温度の増加が、音響エネルギーの印加時間に正の相関があることを図示し得る。統計モデルは、したがって、超音波印加時間の持続時間に対する測定された温度に対して実施される回帰502を含んでもよく、回帰502は、次いで、超音波印加時間t=t
1およびt=t
2におけるタイプA標的組織の温度を予測するために適用されてもよい。続けて、t=t
0(すなわち、超音波治療が開始されるとき)からt=t
1までの(またはt=t
1からt=t
2までの)標的組織における温度増加ΔTが、算出されることができる。同様に、
図5Bを参照すると、遡及研究は、時間間隔Δt内の標的領域における温度増加ΔTが、超音波の振幅に正の相関があることを示し得る。超音波振幅に対する測定された温度増加に対して回帰504を実施することによって、標的組織における温度増加が、現在適用される超音波処理の振幅に基づいて算出されることができる。
【0059】
標的/非標的領域における蓄積されたエネルギーおよび/または温度増加を予測するための本明細書に説明されるアプローチは、例示的にすぎず、熱治療の間の蓄積されたエネルギーおよび/または温度増加を予測するための任意の好適なアプローチが、上記に説明されるような不正確なMR熱マップを検出するために、方法200、250において使用され得、したがって、本発明の範囲内であることに留意されたい。
【0060】
加えて、熱マップにおける温度増加が、熱治療に対する組織応答またはある外部からのアーチファクトからもたらされているかどうかを決定するための所定の閾値(ステップ216、222、256、258に説明される)は、固定される、または動的に変動されてもよい。概して、閾値は、医療手技からもたらされる標的/非標的組織に対する有意な臨床効果を表し得る。本明細書に使用されるように、「有意な臨床効果」は、臨床医によって有意と見なされる、組織に対する所望されない効果(および時として、所望の効果の欠如)、例えば、一時的であるか恒久的であるかにかかわらず、それへの損傷の発生または他の臨床的に有害な効果を有することを意味する。いくつかの実施形態では、閾値は、標的/非標的組織のタイプ、物質性質、および/または場所に基づいて決定される。例えば、標的組織は、超音波治療においてアブレーションされるべきであるため、標的組織に対応する温度増加の閾値は、非標的組織に対応するものよりも大きくてもよい。加えて、標的領域に隣り合う非標的組織が、敏感および/または重要な器官である場合、非標的器官を損傷させるリスクは、高く、敏感/重要な非標的器官を保護する必要性が、高められる。その結果、本状況では、非標的組織における温度増加に対応する所定の閾値は、敏感ではない、および/または臨床的に重要ではない非標的組織が標的領域を囲繞する状況に関してよりも小さくてもよい。したがって、一実装では、閾値は、コントローラ124によって、例えば、撮像デバイスを使用して入手される標的/非標的組織の解剖学的性質および/または上記に説明されるような標的および/または非標的組織の物質性質を特徴付ける組織モデルに基づいて事前決定される。
【0061】
いくつかの実施形態では、閾値のサイズは、閾値が、比較的に小さい音響エネルギーに関して小さく、比較的により大きい音響エネルギーに関してより大きい(例えば、10%または20%より大きい)ように、標的領域に伝送される音響エネルギーの量に正の相関がある。例えば、熱治療の間、標的に伝送される音響エネルギーは、E1からE2(E2=E1+ΔE)に増加し得、標的領域における個々のピクセルと関連付けられる閾値は、T1℃からT2℃(T2=T1+ΔT)に動的に増加され得る。その結果、より高い音響エネルギーにおいて、測定された温度と予測された温度との間のより大きい不一致が、測定された熱マップが不正確であると決定するために要求される。
【0062】
閾値は、温度測定に関連する他のパラメータに基づいて調節されてもよい。例えば、ステップ202、208において受信される、より小さい信号対雑音比(すなわち、より高い雑音レベル)を有するMR応答信号は、より大きい信号対雑音比(すなわち、より低い雑音レベル)を有するMR応答信号と比較して、より大きい閾値に対応し得る。したがって、熱マップが、より高い雑音レベルを有する場合、測定された温度と予測された温度との間のより大きい不一致が、測定された熱マップに欠陥があると決定するために要求される。いくつかの実施形態では、閾値は、測定された温度と予測された温度との間の差異に基づいて、動的に変動されてもよい。例えば、標的領域における各測定された熱マップは、予測された熱マップからの温度差を有し得、閾値は、平均温度差、例えば、測定された熱マップ全体の平均温度差からの1/2または1標準偏差の観点から統計的に定義されることができる。
【0063】
図6は、種々の実施形態による、医療手技の間の温度の増加が、非温度関連因子からもたらされる、不正確なMR熱マップを検出するための別の例示的アプローチ600を図示する、フローチャートである。
図2Aおよび2Bの方法200、250と同様に、ステップ202-212が、治療からもたらされる温度の変化を示す熱マップを発生させるために、アプローチ600において実施される。しかしながら、アプローチ600は、方法200、250において要求されるような温度増加の予測を要求しない。むしろ、不正確なマップの検出は、医療手技の間に入手される履歴撮像データに基づく。例えば、
図7を参照すると、伝送された超音波出力が、治療の間に一定のままであると仮定して、標的領域において蓄積されたエネルギー(およびそれによって、温度)は、(線702に示されるように)時間とともに漸進的に増加することが予期され得、同様に、非標的領域における温度は、一定のままである(例えば、線704)、または時間とともに増加するが、標的領域における温度増加のものよりも緩慢な増加率を有し得る(例えば、線706)。したがって、特定の温度マップにおける標的または非標的領域が、(例えば、以前のいくつかの画像にわたる同一の領域に関する平均的増加または減少と比較して)温度の急激な増加または減少を有する場合、これは、温度マップが、注目された領域において不正確であることを示す。例えば、時間t=t
3において、非標的領域Bにおける温度は、急激な増加708を示し、これは、非標的領域Bにおける熱マップに欠陥があることを示す。同様に、時間t=t
5における標的領域における急激な温度減少710は、時間t=t
5において入手された標的領域における熱マップが、不正確であることを示す。再び、
図7に描写されるような治療の間の標的/非標的組織における温度発展は、標的/非標的領域と関連付けられる個々のピクセルおよび/または集約ピクセル値に基づいて監視されてもよい。故に、再び、
図6を参照すると、複数の熱マップが、熱治療の間に入手された後、コントローラは、新しく入手された熱マップにおいて示される温度変化を、以前に入手された熱マップにおいて測定される温度変化と比較してもよい(ステップ602)。新しく入手された熱マップが、急激な温度変化を示す場合、これは、熱マップが、不正確であり得ることを示す(ステップ604)。いかなる急激な温度変化も、検出されない場合、これは、新しく入手された熱マップが、正確であることを示す(ステップ606)。
【0064】
本発明は、医療手技(例えば、超音波熱治療)の間の標的および/または非標的領域における温度を監視するためにMR温度測定を利用することを参照して説明されているが、本配列が、本発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、温度センサが、治療の間の温度を測定するために実装されてもよい。さらに、本明細書に説明される種々の実施形態の特徴は、必ずしも相互に排他的ではなく、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、そのような組み合わせまたは並べ替えが、本明細書で明白にされない場合であっても、種々の組み合わせおよび並べ替えにおいて存在し得ることを理解されたい。実際には、本明細書に説明される内容の変形例、修正、および他の実装が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に想起されるであろう。
【0065】
一般に、上記に説明されるように、例えば、医療手技に先立って、および/またはその間に、1つ以上の撮像モダリティ(例えば、MR撮像)を使用して入手される標的および/または非標的領域の撮像データを分析するステップと、標的場所を決定するステップと、撮像データに基づいて、ベースライン位相画像を発生させるステップと、MR熱マップを発生させるステップと、2つの熱マップの間の温度差を算出するステップと、算出的物理モデルおよび/または統計モデルを確立し、治療の間の温度増加を予測するステップと、測定された温度(または温度変化)を予測された温度(または温度増加)と比較するステップと、比較および/または履歴撮像データに基づいて、後の時間に入手される熱マップが、不正確であるかどうかを決定するステップと、標的領域において集束帯を発生させるための超音波パラメータ値を算出するステップと、決定されたパラメータ値に基づいて、医療デバイス(例えば、超音波トランスデューサ)をアクティブ化するステップと、標的および/または非標的組織の解剖学的および/または物質性質を入手するステップと、超音波ビーム経路を算出的に予測するステップと、組織を通した誘発される効果の伝搬を算出的に予測するステップと、ある時間間隔の間に標的領域および/または非標的領域に送達される超音波エネルギーを算出的に予測するステップと、標的領域および/または非標的領域における熱への超音波エネルギーまたは圧力の変換を算出的に予測するステップとを含む、MR温度測定を実施し、MR温度測定における不正確な熱マップを検出するための機能性は、撮像デバイス(例えば、MRI装置100)のコントローラ124内に統合される、および/または別個の外部コントローラまたは他の算出エンティティまたは複数のエンティティによって提供されるかどうかにかかわらず、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組み合わせにおいて実装される1つ以上のモジュールにおいて構造化されてもよい。コントローラ124は、ハードウェア、ソフトウェア、または両方の組み合わせにおいて実装される1つ以上のモジュールを含んでもよい。機能が、1つ以上のソフトウェアプログラムとして提供される実施形態に関して、プログラムは、PYTHON、FORTRAN、PASCAL、JAVA(登録商標)、C、C++、C#、BASIC、種々のスクリプト言語、および/またはHTML等のいくつかの高レベル言語のうちのいずれかで書き込まれてもよい。加えて、ソフトウェアは、標的コンピュータ上に常駐するマイクロプロセッサを対象とするアセンブリ言語で実装されることができ、例えば、ソフトウェアは、これが、IBM PCまたはPCクローン上で起動するように構成される場合、Intel 80x86アセンブリ言語で実装されてもよい。ソフトウェアは、限定ではないが、フロッピー(登録商標)ディスク、ジャンプドライブ、ハードディスク、光学ディスク、磁気テープ、PROM、EPROM、EEPROM、フィールドプログラマブルゲートアレイ、またはCD-ROMを含む、製造品上で具現化されてもよい。ハードウェア回路を使用する実施形態は、例えば、1つ以上のFPGA、CPLD、またはASICプロセッサを使用して実装されてもよい。
【0066】
加えて、本明細書に使用される用語「コントローラ」は、上記に説明されるような任意の機能性を実施するために利用される全ての必要なハードウェア構成要素および/またはソフトウェアモジュールを広く含み、コントローラは、複数のハードウェア構成要素および/またはソフトウェアモジュールを含んでもよく、機能性は、異なる構成要素および/またはモジュール間で分散されることができる。
【0067】
本明細書に採用される用語および表現は、限定ではなく、説明の用語および表現として使用され、そのような用語および表現の使用において、示され、説明される特徴のいずれかの均等物またはその一部を除外するいかなる意図も、存在しない。加えて、本発明のある実施形態を説明したが、本明細書に開示される概念を組み込む他の実施形態も、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、使用され得ることが、当業者に明白となるであろう。故に、説明される実施形態は、あらゆる点で、制限的ではなく、例証的にすぎないと見なされるものである。
【0068】
特許請求の範囲