(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】タイヤを構築する方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/10 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
B29D30/10
(21)【出願番号】P 2021567930
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2020055683
(87)【国際公開番号】W WO2020261054
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102019000010077
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598164186
【氏名又は名称】ピレリ・タイヤ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】スキアヴォーン,エマヌエーレ ルカ
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-133418(JP,A)
【文献】特表2003-513835(JP,A)
【文献】特表2008-500915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0236726(US,A1)
【文献】特表2002-532285(JP,A)
【文献】特表2007-527327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを構築するための方法であって、
出力エンドエフェクタ(21)を回転可能に動かすための擬人化ロボットアーム(16)を提供することと、
構築ドラム(3)を前記出力エンドエフェクタ(21)に関連付け、それにより前記出力エンドエフェクタ(21)が前記構築ドラム(3)を前記構築ドラム(3)の幾何学的な軸(X)を中心に回転可能に動かすようにすることと、
基本半製品(8)を、所与の線形速度(LS)で、供給装置(14)から供給することと、
処理対象のタイヤ(T)の少なくとも1つの構成要素を形成するように、前記半製品(8)を横に並んだコイルの形態で前記構築ドラム
(3)上に堆積させることと、
前記所与の線形速度(LS)の関数として、前記構築ドラム(3)の回転のための目標速度(TS)を決定するためにプロセッサ(100)を動作させることと、
前記目標速度(TS)の関数として、前記構築ドラム(3)の回転に関連する速度パラメータ(SP)の目標値(TV)を決定するために前記プロセッサ(100)を動作させることと、
前記目標値(TV)が整数でない場合、以下の操作:
前記出力エンドエフェクタ(21)のための擬人化ロボットアーム-構築ドラムシステムの整定時間(ST)よりも短い駆動間隔(DI)を決定すること、
前記目標値(TV)の直前の整数に等しい第1の値(V1)を計算すること、
前記目標値(TV)の直後の整数に等しい第2の値(V2)を計算すること、
前記駆動間隔(DI)において、前記速度パラメータ(SP)のPWMプロファイルを計算することであって、前記PWMプロファイルは、前記第1の値(V1)に等しい最小値(MIN)と、前記第2の値(V2)に等しい最大値(MAX)とを有すること、及び 前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタ(21)を制御すること、
を実行するために前記プロセッサ(100)を動作させることと
を含む方法。
【請求項2】
前記速度パラメータ(SP)が、前記出力エンドエフェクタ(21)の一般回転速度(S*)と前記出力エンドエフェクタ(21)の最大回転速度(Smax)との間の比率を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記速度パラメータ(SP)の前記目標値(TV)が、前記目標速度(TS)と前記出力エンドエフェクタ(21)の最大回転速度(Smax)との間の比率を示す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記駆動間隔(DI)が第1の部分(A)及び第2の部分(B)によって形成され、
前記第1の部分(A)において、前記速度パラメータ(SP)は前記最大値(MAX)に等しく、
前記第2の部分(B)において、前記速度パラメータ(SP)は前記最小値(MIN)に等しい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の部分(A)及び第2の部分(B)のそれぞれが、1つの連続した時間間隔によって定められる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の部分(A)が複数の第1の区間(A1...Ak)によって形成され、前記第2の部分(B)が複数の第2の区間(B1...Bj)によって形成され、前記第1の区間(A1...Ak)は前記第2の区間(B1...Bj)と交互に配置される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の部分(A)の継続時間が、前記駆動間隔(DI)の継続時間と前記目標値(TV)の小数部分(DA)との積に等しく、前記第2の部分(B)の継続時間が、前記駆動間隔(DI)の継続時間と前記小数部分(DA)の1に対する補数との積に等しい、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタ(21)を制御することが、前記速度パラメータ(SP)に前記PWMプロファイルを適用することを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PWMプロファイルが前記速度パラメータ(SP)に連続的かつ反復的に適用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記目標速度(TS)を決定することが、
前記所与の線形速度(LS)に実質的に比例する中間線形速度(ILS)を決定することと、
前記中間線形速度(ILS)を、前記構築ドラムの半径に関連する半径値(RV)で除算することと
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記半径値(RV)が、現在の堆積地点における、前記構築ドラム(3)によって支持される、処理対象の前記タイヤ(T)の瞬間的な回転半径に依存する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記擬人化ロボットアーム(16)が、少なくとも6つの自由度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記駆動間隔(DI)における前記PWMプロファイルの積分が、前記目標値(TV)と前記駆動間隔(DI)の継続時間との積に実質的に等しい、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
タイヤを構築するための基本半製品を堆積するための作業ステーションであって、前記作業ステーション(1)は、
出力エンドエフェクタ(21)を回転可能に動かすように配置された擬人化ロボットアーム(16)と、
前記出力エンドエフェクタ(21)に関連付けられた構築ドラム(3)であって、かかる関連付けにより前記出力エンドエフェクタ(21)が前記構築ドラム(3)を前記構築ドラム(3)の幾何学的な軸(X)を中心に回転可能に動かす、構築ドラム(3)と、
基本半製品(8)を所与の線形速度(LS)で供給するように構成された供給装置(14)であって、前記基本半製品(8)は、処理対象のタイヤ(T)の少なくとも1つの構成要素を形成するように、横に並んだコイルの形態で前記構築ドラム(3)上に堆積される、供給装置(14)と、
制御装置(30)であって、
前記所与の線形速度(LS)の関数として、前記ドラム(3)の回転の目標速度(TS)を決定し、
前記目標速度(TS)の関数として、前記構築ドラム(3)の回転に関連する速度パラメータ(SP)の目標値(TV)を決定するように構成され、
前記目標値(TV)が整数でない場合、前記制御装置
(30)は、以下の動作: 前記出力エンドエフェクタ(21)の駆動間隔(DI)を決定することと、
前記目標値(TV)の直前の整数に等しい第1の値(V1)を計算することと、
前記目標値(TV)の直後の整数に等しい第2の値(V2)を計算することと、
前記駆動間隔(DI)において、前記速度パラメータ(SP)のPWMプロファイルを計算することであって、前記PWMプロファイルは、前記第1の値(V1)に等しい最小値(MIN)と、前記第2の値(V2)に等しい最大値(MAX)とを有する、計算することと、
前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタ(21)を制御することと
を実行するように構成される、制御装置(30)と
を含む作業ステーション。
【請求項15】
前記速度パラメータ(SP)が、前記出力エンドエフェクタ(21)の一般回転速度(S*)と前記出力エンドエフェクタ(21)の最大回転速度(Smax)との間の比率を示す、請求項14に記載の作業ステーション。
【請求項16】
前記速度パラメータ(SP)の前記目標値(TV)が、前記目標速度(TS)と前記出力エンドエフェクタ(21)の最大回転速度(Smax)との間の比率を示す、請求項14又は15に記載の作業ステーション。
【請求項17】
前記駆動間隔(DI)が第1の部分(A)及び第2の部分(B)によって形成され、
前記第1の部分(A)において、前記速度パラメータ(SP)が前記最大値(MAX)に等しく、
前記第2の部分(B)において、前記速度パラメータ(SP)が前記最小値(MIN)に等しい、
請求項14~16のいずれか一項に記載の作業ステーション。
【請求項18】
前記第1の部分(A)及び第2の部分(B)のそれぞれが、1つの連続した時間間隔によって定められる、請求項17に記載の作業ステーション。
【請求項19】
前記第1の部分(A)が、複数の第1の区間(A1...Ak)によって形成され、前記第2の
部分(B)が、複数の第2の区間(B1...Bj)によって形成され、前記第1の部分(A1...Ak)は、前記第2の区間(B1...Bj)と交互に配置される、請求項17に記載の作業ステーション。
【請求項20】
前記第1の部分(A)の継続時間が、前記駆動間隔(DI)の継続時間と前記目標値(TV)の小数部分(DA)との積に等しく、前記第2の部分(B)の継続時間が、前記駆動間隔(DI)の継続時間と前記小数部分(DA)の1に対する補数との積に等しい、請求項17~19のいずれか一項に記載の作業ステーション。
【請求項21】
前記制御装置(30)が、前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタ(21)を制御するために、前記速度パラメータ(SP)に前記PWMプロファイルを適用するように構成されている、請求項14~20のいずれか一項に記載の作業ステーション。
【請求項22】
前記制御装置(30)が、前記PWMプロファイルを前記速度パラメータ(SP)に連続的かつ反復的に適用するように構成されている、請求項21に記載の作業ステーション。
【請求項23】
前記目標速度(TS)を決定するために、前記制御装置(30)が、
前記所与の線形速度(LS)に実質的に比例する中間線形速度(ILS)を決定し、
前記中間線形速度(ILS)を、現在の堆積地点における、前記構築ドラム(3)によって支持される、処理対象の前記タイヤ(T)の瞬間的な回転半径に関連する半径値(RV)で除算する、
ように構成されている、請求項14~22のいずれか一項に記載の作業ステーション。
【請求項24】
前記擬人化ロボットアーム(16)が、少なくとも6つの自由度を有する、請求項14~23のいずれか一項に記載の作業ステーション。
【請求項25】
前記駆動間隔(DI)における前記PWMプロファイルの積分が、前記目標値(TV)と前記駆動間隔(DI)の継続時間との積に実質的に等しい、請求項14~24のいずれか一項に記載の作業ステーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤを構築する方法に関する。
【0002】
また、本発明は、前記方法に従って動作する、タイヤを構築するための基本半製品を堆積させるための作業ステーションに関する。
【背景技術】
【0003】
車両ホイール用のタイヤは、一般に、内径がそれぞれの取り付けリムに取り付けるためのタイヤのいわゆる「取り付け径」と実質的に一致する、通常「ビード」として識別される領域に一体化された、一般に「ビードコア」と呼ばれるそれぞれの環状アンカー構造と係合する対向エンドフラップを有する少なくとも1つのカーカスプライを含むカーカス構造を備える。また、タイヤは、カーカスプライに対して半径方向外側に位置する少なくとも1つのベルトバンドと、ベルトバンドに対して半径方向外側に位置するトレッドバンドとを含むクラウン構造を備える。トレッドバンドとベルトバンドの間には、エラストマー材料のいわゆる「下地層」が介在し得、その特性はベルトバンドとトレッドバンドの間に安定した結合をもたらすのに適している。さらに、カーカス構造の側面には、エラストマー材料のそれぞれのサイドウォールが適用され、それぞれがトレッドバンドの側縁の1つからそれぞれの環状ビードアンカー構造まで延びている。「チューブレス」タイプのタイヤでは、カーカスプライの内部に、最適な気密性を有し、一方のビードから他方のビードまで延びる、一般に「ライナ」と呼ばれる、エラストマー材料の層、好ましくはブチルベースの材料の層がコーティングされている。
【0004】
「エラストマー材料」という用語は、少なくとも1つのエラストマーポリマーと少なくとも1つの補強剤を含む化合物を指す。好ましくは、前記化合物は、例えば、網状化剤及び/又は可塑剤などの添加剤も含む。網状化剤の存在により、前記材料を加熱して網状化し、最終製品を形成することができる。
【0005】
「基本半製品」という用語は、エラストマー材料で作られた連続的な細長い要素を指す。好ましくは、前記連続的な細長い要素は、細長い要素自体の長手方向に互いに平行に配置された1つ又は複数の補強コード、好ましくは織物又は金属製のコードを含む。より好ましくは、前記連続的な細長い要素は、サイズに合わせて切断される。
【0006】
タイヤの「構成要素」又は「構造部品」とは、特定の機能を果たすことができるタイヤのいずれかの部分、又はその一部を意味する。タイヤの構成要素には、例えば、ライナ、アンダーライナ、サイドウォールインサート、ビードコア、フィラーインサート、摩耗防止層、サイドウォール、カーカスプライ、ベルト層、トレッドバンド、トレッドバンドアンダーレイヤー、アンダーベルトインサート、その他、又はそれらの一部が含まれる。
【0007】
加工中のタイヤの構成要素を形成するために、基本半製品を成形ドラムに巻いて堆積させるプロセスにおいて、「横に並んだコイル」という用語は、前記成形ドラムに対して軸方向に並んで配置された少なくとも2つのコイルであって、接触している、又は接触していない、及び/又は少なくとも部分的に半径方向に重なっているものを指す。
【0008】
1つ又は複数の構成要素で形成されたシステムの「整定時間Ta」とは、ステップ入力を受けた前記システムの構成が、最終出力構成、すなわち前記ステップ入力によって生成される定常状態構成の95%に達するまでの時間のことを指す。好ましくは、前記最終出力構成は、少なくとも1つの量、例えば、位置、速度、加速度、その他の最終出力値を含む。
【0009】
システムの「駆動間隔」とは、整定時間Taよりも短い時間、好ましくはTa/10よりも短い時間、より好ましくはTa/30よりも短い時間のことを指す。
【0010】
所与の量の「パルス幅変調プロファイル」(以下、「PWMプロファイル」という)は、所与の時間間隔において定められた、前記所与の量の、時間に関連付けられた関数であり、ここで前記量は、最大値と最小値との間に厳密には含まれない有限個の値をとる。より好ましくは、所与の時間間隔で所与の量がとる値は整数値である。さらに好ましくは、所与の時間間隔で所与の量がとる値は、前記最大値と前記最小値のみである。
【0011】
「小数」とは、整数部分と小数部分とで形成される数であり、ある小数に関して、その小数が整数部分と小数部分との合計に等しくなるように、小数部分が定められる。
【0012】
本出願人による国際公開第00/35666号には、得ようとするタイヤの形状と一致する剛体トロイダル支持体上で直接タイヤ構成要素を製造することによりタイヤを形成するための方法及び装置が記載されている。タイヤのいくつかの構成要素は、トロイダル支持体が自身の軸の周りを回転している間に、トロイダル支持体上に適切に分配された基本半製品の押出機からの送達によって得られる。同時に、ロボットアームに吊り下げられたトロイダル支持体は、押出機の前に移動して、基本半製品の横方向の分配を決定し、その後、複数の円周方向のコイルを形成し、これらのコイルは、タイヤの構造部品を確定するために、軸方向に並んで配置される、及び/又は半径方向に重ねられる。
【0013】
本出願人による国際公開第01/36185号には、車両用タイヤのエラストマー材料の構成要素を製造する方法が記載されている。7つの作動軸を有するロボットアームが、エラストマー材料のストリップを分配する分配機関の前で、制御された横方向の分配変位と同時に、それ自身の幾何学的な軸を中心とした円周方向の分配運動をトロイダル支持体に付与する。かくしてストリップは複数のターンを形成し、ターンの向きと相互の重ね合わせは、電子コンピュータで事前に設定された所定の敷設スキームに基づいて、製造される構成要素に付与される厚さのバリエーションを制御するように制御される。トロイダル支持体の回転は、ストリップの理論的な供給速度を超える周辺の適用速度が得られるように制御され、必要に応じてその速度を増減させることで、縮小又は拡大された断面を持つターンを形成することができる。
【0014】
本出願人による国際公開第2009/130727号には、タイヤを構築するためのプロセス及び装置が記載されている。エラストマー材料の連続した細長い要素は、線形送出速度で押出機を介して製造され、他の装置を介さずにコンベヤの移動面に直接供給される。連続的な細長い要素は、所定の方向に沿って、線形送出速度とは異なる線形前進速度で、コンベアの近位端まで移動面上を前進させられる。その後、連続的な細長い要素は、成形支持体上に適用され、この成形支持体は、線形送出速度とは異なる周辺速度で、コンベヤの近位端に対して回転し、それにより連続的な細長い要素を変形させ、コイルの形で前記成形支持体上に適用して、タイヤのエラストマー材料の構成要素を形成する。
【0015】
本出願人は、国際公開第00/35666号及び国際公開第01/36185号に記載されているような方法及び装置を採用し、成形ドラム(実質的に円筒形又はトロイダル形状)への堆積によってタイヤ構成要素を形成するために、ストリップ又は連続的な細長い要素とも呼ばれる基本半製品を使用する場合、構築ドラムの回転速度を設定する際には、その速度が供給部材(例えば、押出機、ドロープレート)の分配速度と正確な関係性を維持しなければならないため、精度及び正確さが要求されることを観察している。
【0016】
本出願人は、実際に、ドラムの回転速度が必要な速度よりも遅いか又は速い場合に、基本半製品が予想よりも小さいか又は大きい牽引を受けることを確認した。その結果、基本半製品の断面の面積が増大/縮小し、その結果、製造されるタイヤの形状が不均一になったり、或いは設計とは異なるものになったりする。
【0017】
また、本出願人は、上述の方法及び装置を採用する場合、構築ドラムの回転速度の変化を、滑らかで且つ急激(いわゆる「ステップ状」の移行)ではない移行で制御することが重要であると考えている。例えば、構築ドラムにロードされる物品の直径が増大した場合、接線速度を一定に保つためには、それに応じて回転速度を変化させる必要がある。
【0018】
本出願人は、速度変化が適切に制御されない場合、構築されているタイヤの構造に不連続性/不均一性が発生し、完成したタイヤの性能に悪影響を及ぼすことを確認した。
【0019】
本出願人は、構築ドラムを支持して回転可能に動かすために採用された擬人化ロボットアームが、その出力エンドエフェクタの回転速度を定める目的で、出力エンドエフェクタ自体の最大回転速度のパーセンテージとして表される、いわゆる「オーバーライド」(以下、「OVR」と称する)を適用することによって制御されることを観察している。
【0020】
具体的には、構築ドラムの回転を制御するために、供給部材(例えば押出機)の供給速度を初期速度とし、その速度に基づいてドラムの接線速度を決定する。構築ドラム上で処理対象のタイヤの瞬間的な回転半径を知ることで、構築ドラムの角回転速度、ひいては出力エンドエフェクタの角回転速度を計算することができる。このようにして計算された角回転速度を出力エンドエフェクタの公称最大速度で割ることにより、適用すべき理論的OVRが得られる。
【0021】
また、本出願人は、現在利用可能な擬人化ロボットアームにおいて、OVRは整数値としてのみ設定することができることを観察している。計算の結果、非整数の理論的OVRが得られた場合、最も近い整数への丸めが行われる。
【0022】
この制限が上記の問題を引き起こし得ることを本出願人は確認している。すなわち、整数のOVRしか使用できないため、押出機の供給速度に見合った回転速度をドラムに適用することができず、速度変化を緩やかに制御することができないという問題が発生し得る。いずれの場合も、前述したように、最終製品の品質に関して悪影響が及ぶ可能性がある。
【0023】
本出願人は、国際公開第2009/130727号には、上述の問題を解決するのに適した技術が記載されていないことを観察している。
【0024】
実際、国際公開第2009/130727号は、押出機と成形支持体との間に、移動可能な表面を備えたコンベヤを導入することを提案している。このようにして、連続的な細長い要素の変形が2つの異なる段階に分散され、成形支持体上に堆積が生じるときに所望の断面が得られるようになる。
【0025】
本出願人は、このような解決策は、成形支持体(すなわち、構築ドラム)を回転させる精度を向上させるものではなく、その結果、上述の欠点を克服するものではないと考えている。
【0026】
この文脈において、本出願人は、擬人化ロボットアームの機構、特に、構築ドラムを支持して回転可能に動かす出力エンドエフェクタの機構が、擬人化ロボットアーム自体の電子制御部から得られるものよりも著しく遅い応答時間を有することを観察した。
【0027】
本出願人は、この差を利用して、出力エンドエフェクタを、OVRによって理論的に適用される目標速度に到達せず、連続的な移行状態に留まるように制御することができると認識している。
【0028】
本出願人が認識しているように、出力エンドエフェクタのこの動作モードは、非整数の理論的なOVRにも対応する実際の速度を得、したがって、構築ドラムの回転速度に関して必要な精度を達成するために採用されるべきである。
【0029】
より具体的には、擬人化ロボットアームの出力エンドエフェクタの回転速度を制御するためのPWMプロファイルを、前記出力エンドエフェクタの機械部分の応答が完了するのを防ぐのに十分短い時間間隔で設定することにより、所望の速度により近い速度で構築ドラムを回転させることが可能であることを、本出願人は認識した。
【0030】
最後に、本出願人は、非整数のOVRに対応する速度は、出力エンドエフェクタのための駆動間隔を定め、前記駆動間隔において、出力エンドエフェクタに適用されるOVRのためのPWMプロファイルを定めることによって到達できることを見出した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0031】
第1の態様によれば、本発明は、タイヤを構築する方法に関する。
【0032】
好ましくは、出力エンドエフェクタを回転可能に動かすための擬人化ロボットアームを提供することが想定される。
【0033】
好ましくは、構築ドラムを前記出力エンドエフェクタに関連付けることが想定される。
【0034】
好ましくは、前記出力エンドエフェクタは、前記構築ドラムの幾何学的な軸を中心に前記構築ドラムを回転可能に動かす。
【0035】
好ましくは、供給装置から、所与の線形速度(linear speed)で、基本半製品を供給することが想定される。
【0036】
好ましくは、前記基本半製品を横に並んだコイルの形態で前記構築ドラムに堆積させることが想定される。
【0037】
好ましくは、前記基本半製品を横に並んだコイルの形態で前記構築ドラム上に堆積させる際に、処理対象のタイヤの少なくとも1つの構成要素を形成することが想定される。
【0038】
好ましくは、前記構築ドラムの回転のための目標速度を決定するために、プロセッサを動作させることが想定される。
【0039】
好ましくは、前記目標速度は、前記所与の線形速度の関数として決定される。
【0040】
好ましくは、前記構築ドラムの回転に関連する速度パラメータの目標値を決定するために、プロセッサを動作させることが想定される。
【0041】
好ましくは、前記速度パラメータのための前記目標値は、前記目標速度の関数として決定される。
【0042】
好ましくは、前記目標値が整数でない場合、前記出力エンドエフェクタのための擬人化ロボットアーム-構築ドラムシステムの整定時間よりも短い駆動間隔を決定するために、プロセッサを動作させることが想定される。
【0043】
好ましくは、前記目標値が整数でない場合、前記目標値の直前の整数に等しい第1の値を計算するためにプロセッサを動作させることが想定される。
【0044】
好ましくは、前記目標値が整数でない場合、前記目標値の直後の整数に等しい第2の値を計算するためにプロセッサを動作させることが想定される。
【0045】
好ましくは、前記目標値が整数値でない場合、前記駆動間隔において、前記速度パラメータのPWMプロファイルを計算するためにプロセッサを動作させることが想定される。
【0046】
好ましくは、前記PWMプロファイルは、前記第1の値に等しい最小値を有する。
【0047】
好ましくは、前記PWMプロファイルは、前記第2の値に等しい最大値を有する。
【0048】
好ましくは、前記目標値が整数値でない場合、前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタを制御するためにプロセッサを動作させることが想定される。
【0049】
本出願人は、このようにして、設計仕様に準拠し、期待される特性を有する最終製品を得るために、構築ドラムの回転速度を精密かつ正確に適用することができると考えている。
【0050】
別の態様によれば、本発明は、タイヤを構築するための基本半製品を堆積させるための作業ステーションに関する。
【0051】
好ましくは、擬人化ロボットアームが採用される。
【0052】
好ましくは、前記擬人化ロボットアームは、出力エンドエフェクタを回転可能に動かすために配置される。
【0053】
好ましくは、前記出力エンドエフェクタに関連する構築ドラムを採用することが想定される。
【0054】
好ましくは、前記出力エンドエフェクタが、前記構築ドラムの幾何学的な軸を中心に前記構築ドラムを回転可能に動かすことが想定される。
【0055】
好ましくは、供給装置が採用される。
【0056】
好ましくは、前記供給装置は、所与の線形速度で基本半製品を供給するように構成されている。
【0057】
好ましくは、前記基本半製品は、横に並んだコイルの形態で前記構築ドラム上に堆積される。
【0058】
好ましくは、前記基本半製品は、処理対象のタイヤの少なくとも1つの構成要素を形成する。
【0059】
好ましくは、制御装置が採用される。
【0060】
好ましくは、前記制御装置は、前記構築ドラムの回転のための目標速度を決定するように構成される。
【0061】
好ましくは、前記目標速度は、前記所与の線形速度の関数として決定される。
【0062】
好ましくは、前記制御装置は、前記構築ドラムの回転に関連する速度パラメータの目標値を決定するように構成される。
【0063】
好ましくは、前記速度パラメータのための前記目標値は、前記目標速度の関数として決定される。
【0064】
好ましくは、前記目標値が整数でない場合、前記制御装置は、前記出力エンドエフェクタの駆動間隔を決定するように構成される。
【0065】
好ましくは、前記目標値が整数でない場合、前記制御装置は、前記目標値の直前の整数に等しい第1の値を計算するように構成される。
【0066】
好ましくは、前記目標値が整数でない場合、前記制御装置は、前記目標値の直後の整数に等しい第2の値を計算するように構成される。
【0067】
好ましくは、前記目標値が整数値でない場合、前記制御装置は、前記駆動間隔において、前記速度パラメータのPWMプロファイルを計算するように構成される。
【0068】
好ましくは、前記PWMプロファイルは、前記第1の値に等しい最小値を有する。
【0069】
好ましくは、前記PWMプロファイルは、前記第2の値に等しい最大値を有する。
【0070】
好ましくは、前記目標値が整数でない場合、前記制御装置は、前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタを制御するように構成される。
【0071】
上記の態様の少なくとも1つにおいて、本発明は、以下の好ましい特徴の少なくとも1つを有し得る。
【0072】
好ましくは、前記速度パラメータは、前記出力エンドエフェクタの一般回転速度と、前記出力エンドエフェクタの最大回転速度との間の比率を示す。
【0073】
好ましくは、前記速度パラメータの目標値は、前記出力エンドエフェクタの前記目標速度と最大回転速度との間の比率を示す。
【0074】
好ましくは、前記駆動間隔は、第1の部分と第2の部分とで形成される。
【0075】
好ましくは、第1の部分において、速度パラメータは、前記最大値に等しい。
【0076】
好ましくは、第2の部分において、速度パラメータは、前記最小値に等しい。
【0077】
好ましくは、第1の部分は1つの連続した時間間隔によって定められる。
【0078】
好ましくは、第2の部分は1つの連続した時間間隔によって定められる。
【0079】
好ましくは、前記第の1部分は、複数の第1の区間によって形成される。
【0080】
好ましくは、前記第2の部分は、複数の第2の区間によって形成される。
【0081】
好ましくは、前記第1の区間は、前記第2の区間と交互に配置される。
【0082】
好ましくは、第1の部分の継続時間は、駆動間隔の継続時間と目標値の小数部分との積に等しい。
【0083】
好ましくは、第2の部分の継続時間は、駆動間隔の継続時間と前記小数部分の1に対する補数との積に等しい。
【0084】
好ましくは、前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタを制御するために、前記速度パラメータに前記PWMプロファイルを適用することが想定される。
【0085】
好ましくは、前記PWMプロファイルを前記速度パラメータに連続的且つ反復的に適用することが想定される。
【0086】
好ましくは、前記目標速度を決定するために、前記所与の線形速度に実質的に比例する中間線形速度を決定することが想定される。
【0087】
好ましくは、前記目標速度を決定するために、前記中間線形速度を、前記構築ドラムの半径に関連する半径値で除算することが想定される。
【0088】
好ましくは、前記半径値は、現在の堆積地点における、前記構築ドラムによって支持される、処理対象の前記タイヤの瞬間的な回転半径に依存する。
【0089】
好ましくは、前記擬人化ロボットアームは、少なくとも6つの自由度を有する。
【0090】
好ましくは、前記PWMプロファイルの関数として前記出力エンドエフェクタを制御するために、前記制御装置は、前記PWMプロファイルを前記速度パラメータに適用するように構成される。
【0091】
好ましくは、前記制御装置は、前記PWMプロファイルを前記速度パラメータに連続的且つ反復的に適用するように構成される。
【0092】
好ましくは、前記目標速度を決定するために、前記制御装置は、前記所与の線形速度に実質的に比例する中間線形速度を決定するように構成される。
【0093】
好ましくは、前記目標速度を決定するために、前記制御装置は、前記中間線形速度を、現在の堆積地点における、前記構築ドラムによって支持される、処理対象の前記タイヤの瞬間的な回転半径に関連する半径値で除算するように構成される。
【0094】
好ましくは、前記駆動間隔における前記PWMプロファイルの積分値は、前記目標値と前記駆動間隔の継続時間との積に実質的に等しい。
【0095】
さらなる特徴及び利点は、本発明の好ましいが非限定的な実施形態の以下の詳細な記載に照らして、より明らかになるであろう。このような記載は、非限定的な例として提供される添付の図面を参照して本明細書に提供される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】本発明を実施することができる、擬人化ロボットアームを備える作業ステーションを概略的に示す。
【
図2】
図1の作業ステーションの一部を概略的に示す。
【
図3】
図1の作業ステーションの一部を概略的に示す。
【
図4】
図1の作業ステーションに含まれる制御装置のブロック図を示す。
【
図5】本発明で使用される機能の1つの実施形態を示す。
【
図6】本発明で使用される機能の1つの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
添付図面を参照すると、1は、本発明を実施することができる、タイヤを構築するための基本半製品を堆積させるための作業ステーションを全体として示している。
【0098】
好ましくは、作業ステーション1は、基本半製品8(
図2、3)を供給するための少なくとも1つの供給装置14を備える。
【0099】
より詳細には、供給装置14は、それぞれの供給部材14aを介して、基本半製品8を供給するように配置されている。
【0100】
基本半製品8は、所与の線形速度LSで供給される。
【0101】
好ましくは、作業ステーション1は、構築ドラム3も備えている。好ましくは、構築ドラム3は、実質的に円筒形又はトロイダル形状を有する。
【0102】
構築ドラム3は、タイヤの1つ又は複数の構成要素を製造するために基本半製品8が堆積される半径方向の外面3aを有する。
【0103】
好ましくは、作業ステーション1は、構築ドラム3に関連付けられた擬人化ロボットアーム16を備える。好ましくは、擬人化ロボットアーム16は、少なくとも6つの回転軸を有する。
【0104】
一例として、
図1に示す擬人化ロボットアーム16は、7つの回転軸:「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「X」を有する。
【0105】
特に、擬人化ロボットアーム16は、水平に配置された第1の揺動軸「A」と、垂直に又は第1の揺動軸「A」にとにかく垂直に配置された第2の軸「B」とを介して、支持プラットフォーム18に回転可能に接続された第1の端部17aを有する第1のセクション17を備える。
【0106】
擬人化ロボットアーム16は、第1のセクション17の第2の端部17bに拘束された第2のセクション19であって、好ましくは第1の軸「A」に平行な第3の軸「C」と、第3の軸「C」に垂直で、好ましくは第2のセクション19自体に対して長手方向に配置された第4の揺動軸「D」とを中心に揺動する可能性を有する、第2のセクション19をさらに備える。
【0107】
構築ドラム3と取り外し可能に係合するように適合されたターミナルヘッド20が、第2のセクション19の一端と動作可能に関連している。ターミナルヘッド20は、出力エンドエフェクタ21(
図3)を備えており、この出力エンドエフェクタ21は、構築ドラム3自体の幾何学的な軸Xを中心に構築ドラム3を回転可能に移動させる。
【0108】
例えば、出力エンドエフェクタ21は、構築ドラム3の両方の側面から同軸上に突出する取り付けスピゴット3cに結合することができる。
【0109】
図3では、擬人化ロボットアーム16は完全には示されておらず、実際には、単純化のために、ターミナルヘッド20と出力エンドエフェクタ21のみが概略的に示されていることに留意すべきである。
【0110】
ターミナルヘッド20は、第4の揺動軸「D」に垂直な第5の軸「E」を中心に揺動することもできる。
【0111】
好ましい実装ソリューションでは、第5の軸「E」は、第4の軸「D」と同一平面状にあり、ターミナルヘッド20は、それぞれのモータ(図示せず)によって駆動されて、構築ドラム3に対して垂直に、また、第5の揺動軸「E」に対しても垂直に向けられた第6の軸「F」を中心に揺動することもできる。
【0112】
第1のセクション17、第2のセクション19、及びターミナルヘッド20の、それぞれの揺動軸「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」周りの動きは、それぞれのモータによって処理され、そのうち、
図1では数字21、22、23、24で示されたものだけを見ることができ、それぞれ第1の軸「A」、第2の軸「B」、第3の軸「C」、及び第4の軸「D」周りの動きを提供している。
【0113】
第5の軸「E」周りの動きのためのモータは、図面には示されていないが、他のモータと同様に、当業者に知られている任意の有利な方法で実装することができる。
【0114】
有利には、構築ドラム3は、擬人化ロボットアーム16によって、ピックアップ位置4からピックアップされる。その後、擬人化ロボットアーム16は、基本半製品8を堆積させるための供給装置14の近くに構築ドラム3を運ぶ。構築ドラム3は、最終的に堆積位置5に横たえられる。
【0115】
特に、擬人化ロボットアーム16は、供給装置14が基本半製品8を供給している間に構築ドラム3を移動させるように構成されている。このようにして、処理対象のタイヤTの少なくとも1つの構成要素を作るために、基本半製品8は、並んで配置されたコイルの状態で、構築ドラム3の半径方向外面3aに横たえられる。
【0116】
より詳細には、処理対象のタイヤTの少なくとも1つの構成要素の形成中、構築ドラム3は、擬人化ロボットアーム16と係合したままであり、このアームは、供給装置14に対してドラムを適切に方向付け、基本半製品8の堆積を達成するために、供給装置14と同期して幾何学的な軸「X」を中心にドラムを回転させる。
【0117】
6つの揺動軸「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」を中心とした構築ドラム3の移動と、幾何学的な軸「X」を中心とした同ドラムの回転は、供給装置14から来る基本半製品8の正しい堆積を保証する。
【0118】
好ましくは、作業ステーション1は、制御装置30(
図3、4)を備える。
【0119】
制御装置30は、少なくとも擬人化ロボットアーム16の動きを制御するように構成されている。
【0120】
実用的な観点から、制御装置30は、パーソナルコンピュータ、PLC、又は後述する動作を実行できる任意の他の電子装置として実装することができる。
【0121】
有利には、制御装置30は、少なくとも1つのプロセッサ100と、それに関連するメモリMとを備える。また、制御装置30は、作業ステーション1及び/又は作業ステーション1を備えるプラントに含まれる可能性のある他の電子装置との通信を可能にするために必要な入力/出力接続を備えている。
【0122】
制御装置30、特にプロセッサ100は、線形速度LSの関数として、構築ドラム3の回転のための目標速度TSを決定するために動作される。
【0123】
線形速度LSは、例えば、供給装置14と通信することによって取得することができる。
【0124】
好ましくは、目標速度TSを決定するために、まず、線形速度LSに実質的に比例する中間線形速度ILSが決定される。所与の線形速度LSと中間線形速度ILSとの間の比例係数Wは、例えば、事前に定められ、前記メモリMに記憶されていてもよい。
【0125】
所与の線形速度LSと中間線形速度ILSとの間の比率は、基本半製品8が構築ドラム3上に堆積される際に受ける牽引力の関数である。
【0126】
次いで、中間線形速度ILSは、構築ドラム3の半径に関連する半径値RVで除算される。特に、このような半径値RVは、現在の堆積地点における、構築ドラム3によって支持される、処理対象タイヤTの瞬間的な回転半径Yに依存する。
【0127】
実用的な観点において、半径値RVは、構築ドラム3と処理対象タイヤTとからなるアセンブリによって形成されるシリンダの半径を表す。
【0128】
一実施形態では、中間線形速度ILSは計算されず、目標速度TSは、線形速度LSを半径値VRで直接割ることによって決定される。
【0129】
目標速度TSは、設計データに準拠するために必要な牽引力の下で、基本半製品8を構築ドラム3上に堆積するために、構築ドラム3を回転させなければならない角速度を表している。
【0130】
構築ドラム3は、擬人化ロボットアーム16の出力エンドエフェクタ21と一体的に取り付けられているので、目標速度TSは、出力エンドエフェクタ21を回転させなければならない角速度も表している。
【0131】
目標速度TSが決定されると、制御装置30(特に、プロセッサ100)は、目標速度TSの関数として、構築ドラム3の回転に関連する速度パラメータSPの目標値TVを決定する。
【0132】
好ましくは、速度パラメータSPは、いわゆる「オーバーライド」、すなわち、擬人化ロボットアーム16の出力エンドエフェクタ21を回転させなければならない速度(この速度は、目標速度TSによって表される)と、同じ出力エンドエフェクタ21の最大回転速度Smaxとの間の比率であり、当該比率に100を乗じたものである。
【0133】
一般に、速度パラメータSPは、次のように表すことができる:
【数1】
式中、S
*は、エンドエフェクタ21の一般回転速度である。
【0134】
最大回転速度Smaxは、事前に設定されたデータであり、例えば、プロセッサ100に関連付けられたメモリMに記憶されている。
【0135】
速度パラメータSPの目標値TVは、S
*が目標速度TSに等しいことを仮定して計算される、すなわち:
【数2】
【0136】
この時点で、目標値TVが整数であるか、又は整数ではないという2つのケースが実質的に発生する。
【0137】
この点に関して、本出願人は、「整数」という表現は、例えば、所望の精度レベルに応じて、所定の近似/丸めに基づいて理解されるべきであると考えている。例えば、小数点以下2桁の精度が必要な場合、小数72.999は73に近似することができ、したがって整数とみなされる(同様に、72.003は72に近似することができ、したがって整数とみなされる)。一方、72.992は72.99に近似することができ、すなわち小数点以下2桁の小数である。
【0138】
目標値TVが整数である場合には、かかる整数に基づいて、出力エンドエフェクタ21の回転に関するコマンドを擬人化ロボットアーム16に直接付与することが可能となる。
【0139】
逆に、目標値TVが整数でない場合には、システムの動作をそのような非整数に対応するものに可能な限り近づけるために、一連の操作を実行することが有利に想定されている。
【0140】
より詳細には、擬人化ロボットアーム16と構築ドラム3とを含むアセンブリからなるシステムの整定時間STを実験的に決定することが可能である。
【0141】
これに関連して、本出願人は、擬人化ロボットアーム16の出力エンドエフェクタ21に対する速度コマンドを入力とし、出力エンドエフェクタ21の角回転速度(すなわち、構築ドラム3の角回転速度)を出力とする前記システムの伝達関数を分離して分析することにより、そのような関数を一次系に近似することが可能であることを観察している。
【0142】
次いで、前記整定時間STよりも短い駆動間隔DIが決定される。好ましくは、駆動間隔DIは、整定時間STの1/10よりも短く、より好ましくは、整定時間STの1/30よりも短い。
【0143】
実用的な観点から、選択された駆動間隔DIは、当該時間間隔内に、出力エンドエフェクタ21が、制御電子機器によって(すなわち、制御装置30/プロセッサ100によって)適用された値に等しい速度に達することができないが、そのような値に従いながら加速/減速するように、十分に短くなければならない。
【0144】
本出願人は、擬人化ロボットアーム16と構築ドラム3とからなる実質的に機械的なシステムが、制御電子機器の典型的な時間よりも著しく長い応答時間を有するという事実によって、これが可能になることを観察している。このことは、制御装置30(特にプロセッサ100)が、出力エンドエフェクタ21に向けられたコマンド信号を、当該コマンド信号に対応する動作を完全に実行するために出力エンドエフェクタ21が必要とする時間よりもはるかに短い時間で修正できることを意味する。
【0145】
以下で明らかになるように、この態様は、非整数の速度パラメータSPを適用することができる場合と実質的に同じように擬人化ロボットアーム16を動作させるために利用することができる。
【0146】
好ましくは、駆動間隔DIは、80ms~120msの間に含まれる継続時間を有してもよく、例えば、駆動間隔DIは、約100msの継続時間を有してもよい。
【0147】
制御装置30(特に、プロセッサ100)は、目標値TVの直前の整数に等しい第1の値V1を計算することを提供する。
【0148】
例えば、速度パラメータSPの目標値TVが72.7である場合、第1の値V1は72となる。
【0149】
制御装置30(特に、プロセッサ100)は、目標値TVの直後の整数に等しい第2の値V2を計算することを提供する。
【0150】
上述した例をなおも参照すると、目標値TVが72.7である場合、第2の値V2は73となる。
【0151】
制御装置30(特に、プロセッサ100)は、駆動間隔DIにおいて、速度パラメータSPのPWMプロファイルを計算することを提供する。
【0152】
このPWMプロファイルは、第1の値V1に等しい最小値MINと、第2の値V2に等しい最大値MAXとを有する。
【0153】
PWMプロファイルは、駆動間隔DIにおけるPWMプロファイルの積分値が、目標値TVに駆動間隔DIの継続時間を乗じた値に実質的に等しくなるように決定される。
【0154】
簡単に言えば、この関係は以下の式で表すことができる:
【数3】
式中、T1及びT2は、それぞれ、駆動間隔DIの初期の瞬間と最終の瞬間を表している。
【0155】
図5~6は、72.7という目標値に基づいて作成されたPWMプロファイルを概略的に示している。見て分かるように、PWMプロファイルの最小値MINは72(すなわち、前記第1の値V1に等しい)であり、PWMプロファイルの最大値MAXは73(すなわち、前記第2の値V2に等しい)である。
【0156】
より詳細には、駆動間隔DIは、第1の部分Aと第2の部分Bとによって形成される。第1の部分Aと第2の部分Bとの組み合わせが駆動間隔DIを定める。
【0157】
第1の部分Aでは、速度パラメータSPが最大値MAX(
図5~6の例では73)に等しい。
【0158】
第2の部分Bでは、速度パラメータSPは、最小値MIN(
図5~6の例では72)に等しい。
【0159】
好ましくは、第1の部分Aの継続時間は、駆動間隔DIの継続時間と目標値TVの小数部分DAとの積に等しい。
【0160】
好ましくは、第2の部分Bの継続時間は、駆動間隔DIの継続時間と、目標値TVの小数部分DAの1に対する補数との積に等しい。
【0161】
図5~6の例では、目標値TVの小数部分DAは0.7である。したがって、第1の部分Aの継続時間は0.7×DIであり、第2の部分Bの継続時間は0.3×DIである。
【0162】
一実施形態(
図5)では、第1の部分A及び第2の部分Bのそれぞれは、単一の連続した時間間隔によって定義される。本出願人は、この解決策が計算上の観点から有利であると考えている。
【0163】
一実施形態(
図6)では、第1の部分Aは、複数の第1の区間A1...Akによって形成され、第2の区間Bは、複数の第2の部分B1...Bjによって形成され、第1の区間(A1...Ak)と第2の区間(B1...Bj)とは交互に配置されている。
図6の例では、k=4、及びj=3である。ただし、kとjは同じ値であってもよいし、kがjよりも小さくてもよい。
【0164】
なお、
図5~6は、上述のPWMプロファイルを概略的に表したものであり、ここで例として挙げた値を分析的に反映したものではないことに留意されたい。
【0165】
計算上の観点から、目標値TV及び駆動間隔DIが定められると、後者はN個のセグメントに細分化され、好ましくはすべて同じ継続時間を有する。最大値MAXは、N個のセグメントの一部(例えば、「m」個のセグメント、ここでm<N)に関連付けられる。最小値MINは、残りのセグメント(「n」個のセグメント、ここでn=N-m)に関連付けられる。
【0166】
最大値MAXを有する「m」個のセグメントのセットは、第1の部分Aを形成する。
【0167】
最小値MINを有する「n」個のセグメントのセットは、第2の部分Bを形成する。
【0168】
図5は、最大値MAXを有する「m」個のセグメントが1つの連続した間隔を形成し、最小値MINを有する「n」個のセグメントが1つの連続した間隔を形成している実施形態を示している。
【0169】
一方、
図6は、最大値MAXを有する「m」個のセグメントが第1の区間A1...Akを形成し、最小値MINを有する「n」個のセグメントが第2の区間B1...Bjを形成し、第1の区間A1...Akと第2の区間B1...Bjとが交互に配置されている実施形態を示す。
【0170】
各第1の区間A1...Akは、最大値MAXを有する1つ又は複数の「m」個のセグメントによって形成されてもよい。
【0171】
各第2の区間B1...Bjは、最小値MINを有する1つ又は複数の「n」個のセグメントによって形成されてもよい。
【0172】
セグメントの数Nは、所望の精度に依存する。
【0173】
例えば、N=10とすると、小数点以下1桁、すなわち1桁の小数部分DAを有する目標値TVを正確に管理することができる。
【0174】
また、N=100とすることで、小数点以下2桁、すなわち2桁の小数部分DAを有する目標値TVを正確に管理することができる。
【0175】
PWMプロファイルが決定されると、当該PWMプロファイルに従って擬人化ロボットアームの出力エンドエフェクタ21を制御することができる。具体的には、PWMプロファイルは、速度パラメータSPに適用される。実用的な観点から、PWMプロファイルに従って、速度パラメータSPに値MAX及び値MINが適用される。これは好ましくは、特に構築ドラム3の目標速度TSが変更されるまで、連続して繰り返し行われる。
【0176】
このようにして、擬人化ロボットアーム16の出力エンドエフェクタ21は、出力エンドエフェクタ21が自身の回転速度を変化させるよりも速く変化する信号によって制御される。これは、出力エンドエフェクタ21が、制御装置30、すなわちプロセッサ100から来るコマンド信号によって適用される速度値に到達できず、PWMプロファイルの最大値MAXと最小値MINとの間で自身の回転速度を維持することを意味する。上述のように、最大値MAX及び最小値MIN、並びにPWMプロファイルがそのような値をとる時間間隔の継続時間を適切に設定することにより、出力エンドエフェクタ21に、速度パラメータSPの整数値に関連付けられたシステム固有のものとは異なる回転速度を適用することが可能である。特に、目標速度TSにより正確に対応する回転速度を適用することが可能であり、これにより、基本半製品8は期待される牽引力の下で堆積され、得られるタイヤは設計仕様によって指示された構造的特性を有する。