(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】粘着剤層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231020BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20231020BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2022018358
(22)【出願日】2022-02-09
【審査請求日】2022-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2021076761
(32)【優先日】2021-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】村上 夏紀
(72)【発明者】
【氏名】三田 聡司
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-095264(JP,A)
【文献】特開2005-241771(JP,A)
【文献】特開2018-205490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、偏光子と、樹脂層と、導電性粘着剤層と、をこの順に備え、
該導電性粘着剤層の表面抵抗値が1.0×10
8Ω/□~1.0×10
12Ω/□であり、
該樹脂層が、樹脂と、イソシアネート化合物と、を含み、
該樹脂のガラス転移温度が85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwが25000以上であり、
該イソシアネート化合物が、分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を1種以上含み、
該樹脂と該イソシアネート化合物との含有割合(樹脂/イソシアネート化合物)が90/10~5/95である、粘着剤層付偏光板。
【請求項2】
前記イソシアネート化合物が分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を2種以上含む、請求項1に記載の粘着剤層付偏光板。
【請求項3】
前記イソシアネート化合物が、(A)分子内にイソシアネート基を2以上有し、かつ、芳香族環にイソシアネート基が直接結合しているイソシアネート化合物、および、(B)該イソシアネート化合物(A)以外の分子内にイソシアネート基を2以上有するイソシアネート化合物を含み、
該イソシアネート化合物(A)および該イソシアネート化合物(B)をそれぞれ1種以上含む、請求項2に記載の粘着剤層付偏光板。
【請求項4】
前記イソシアネート化合物(A)とイソシアネート化合物(B)との含有割合(イソシアネート化合物(A)/イソシアネート化合物(B))が50/50~95/5である、請求項3に記載の粘着剤層付偏光板。
【請求項5】
前記樹脂が、50重量部を超える(メタ)アクリル系単量体と0重量部を超えて50重量部未満の式(1)で表される単量体とを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体を含む、請求項1から4のいずれかに記載の粘着剤層付偏光板:
【化1】
(式中、Xはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいヘテロ環基を表し、R
1およびR
2は互いに連結して環を形成してもよい)。
【請求項6】
前記樹脂層の弾性回復評価値が10%以下である、請求項1から5のいずれかに記載の粘着剤層付偏光板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の粘着剤層付偏光板を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層付偏光板およびそれを用いた画像表示装置に関する。
【0002】
偏光子は、代表的には、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性物質で染色することにより製造される(例えば、特許文献1および2)。偏光子は高温高湿環境下では、偏光度が低下して透過率が上昇する(色抜けする)ことが知られている。偏光子は、代表的には、偏光子と該偏光子の両側に備えられた保護層とを含む偏光板として用いられる。近年、薄型化の要求から偏光子および保護層の薄型化が提案されている。このような構成では端部からの水分の吸収がより早くなり、端部の色抜けがより顕著となり得る。
【0003】
偏光板は、通常、粘着剤層を介して所望の被着体に積層される。薄型化の要求から粘着剤層自体に他の層の機能を持たせることが試みられている。例えば、導電剤を含む導電性粘着剤を粘着剤層に用いて、粘着剤層に帯電防止性能を持たせることが試みられている。しかしながら、導電剤を含む粘着剤を用いる場合、偏光子と隣接層(例えば、樹脂層)との密着性が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5048120号公報
【文献】特開2013-156391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、偏光子と隣接層との密着性に優れ、高温高湿環境下における色抜け等の不具合の発生が抑制された粘着剤層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の粘着剤層付偏光板は、保護層と、偏光子と、樹脂層と、導電性粘着剤層と、をこの順に備える。上記導電性粘着剤層の表面抵抗値は1.0×10
8Ω/□~1.0×10
12Ω/□である。上記樹脂層は樹脂と、イソシアネート化合物と、を含み、樹脂のガラス転移温度が85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwが25000以上である。上記イソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を1種以上含み、樹脂とイソシアネート化合物との含有割合(樹脂/イソシアネート化合物)は90/10~5/95である。
1つの実施形態において、上記イソシアネート化合物は分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を2種以上含む。
1つの実施形態において、上記イソシアネート化合物は(A)分子内にイソシアネート基を2以上有し、かつ、芳香族環にイソシアネート基が直接結合しているイソシアネート化合物、および、(B)該イソシアネート化合物(A)以外の分子内にイソシアネート基を2以上有するイソシアネート化合物を含み、イソシアネート化合物(A)およびイソシアネート化合物(B)をそれぞれ1種以上含む。
1つの実施形態において、上記イソシアネート化合物(A)とイソシアネート化合物(B)との含有割合(イソシアネート化合物(A)/イソシアネート化合物(B))は50/50~95/5である。
1つの実施形態において、上記樹脂は、50重量部を超える(メタ)アクリル系単量体と0重量部を超えて50重量部未満の式(1)で表される単量体とを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体を含む:
【化1】
(式中、Xはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいヘテロ環基を表し、R
1およびR
2は互いに連結して環を形成してもよい)。
1つの実施形態において、上記樹脂層の弾性回復評価値が10%以下である。
本発明の別の局面においては、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記粘着剤層付偏光板を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態の粘着剤層付偏光板は、導電性粘着剤を採用した場合であっても、偏光子と隣接層(例えば、樹脂層)との密着性に優れ、高温高湿環境下における色抜け等の不具合の発生が抑制され得る。さらに、本発明の実施形態における粘着剤層付偏光板は、より過酷な条件(例えば、長時間の高温高湿環境)下であっても偏光子と隣接層(例えば、樹脂層)との優れた密着性を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態による粘着剤層付偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
A.粘着剤層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による粘着剤層付偏光板の概略断面図である。図示例の粘着剤層付偏光板100は、偏光子10と、保護層20と、樹脂層30と、導電性粘着剤層40と、をこの順に有する。導電性粘着剤層40は表面抵抗値(代表的には、偏光子と接していない面における表面抵抗値)が1.0×10
8Ω/□~1.0×10
12Ω/□である。樹脂層30は、樹脂とイソシアネート化合物とを含む。この樹脂はガラス転移温度が85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwが25000以上である。イソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を1種以上含む。樹脂層30(実質的には樹脂層を形成する組成物)において、樹脂とイソシアネート化合物との含有割合(樹脂/イソシアネート化合物)は90/10~5/95である。このような樹脂層30を偏光子10と導電性粘着剤層40との間に配置することにより、粘着剤層として導電性粘着剤層を採用した場合であっても、偏光子と隣接層との密着性に優れ、色抜け等の不具合の発生が抑制され得る。
【0011】
1つの実施形態において、樹脂層30は有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物である。樹脂層30が有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物であることにより、樹脂層30を偏光子10に直接(すなわち、接着剤層または粘着剤層を介することなく)形成することができる。そのため、粘着剤層付偏光板100の薄型化に寄与し得る。
【0012】
粘着剤層付偏光板100は目的に応じて、保護層20、樹脂層30および導電性粘着剤層40以外の任意の適切な機能層をさらに含んでいてもよい。機能層としては、位相差層、光拡散層、反射防止層、反射型偏光子等が挙げられる。また、複数の機能層を含んでいてもよい。
【0013】
実用的には、導電性粘着剤層40の表面には、粘着剤層付偏光板が使用に供されるまで、剥離フィルムが仮着されていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、粘着剤層付偏光板のロール形成が可能となる。
【0014】
粘着剤層付偏光板の総厚みは、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは75μm以下であり、さらに好ましくは70μm以下であり、特に好ましくは50μm以下である。総厚みは、例えば、48μm以上であり得る。本発明の実施形態によれば、このような総厚みが薄く、かつ、粘着剤層として導電性粘着剤層を採用した場合であっても、偏光子と隣接層との密着性に優れ、色抜け等の不具合の発生が抑制され得る。さらに、本発明の実施形態における粘着剤層付偏光板は、より過酷な条件下であっても優れた密着性を発揮し得る。
【0015】
以下、粘着剤層付偏光板の構成要素について、より詳細に説明する。
【0016】
B.偏光子
偏光子10は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成される。偏光子の厚みは、好ましくは1μm~8μmであり、より好ましくは1μm~7μmであり、さらに好ましくは2μm~5μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、粘着剤層付偏光板の薄型化に大きく貢献し得る。さらに、このような偏光子を用いる薄型の粘着剤層付偏光板において、本発明の効果が顕著である。
【0017】
1つの実施形態において、偏光子はホウ酸をさらに含む。偏光子のホウ酸含有量は、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは13重量%~25重量%である。偏光子のホウ酸含有量がこのような範囲であれば、後述のヨウ素含有量との相乗的な効果により、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。ホウ酸含有量は、例えば、中和法から下記式を用いて、単位重量当たりの偏光子に含まれるホウ酸量として算出することができる。
【数1】
【0018】
偏光子のヨウ素含有量は、好ましくは2重量%以上であり、より好ましくは2重量%~10重量%である。偏光子のヨウ素含有量がこのような範囲であれば、上記のホウ酸含有量との相乗的な効果により、貼り合わせ時のカール調整の容易性を良好に維持し、かつ、加熱時のカールを良好に抑制しつつ、加熱時の外観耐久性を改善することができる。本明細書において「ヨウ素含有量」とは、偏光子(PVA系樹脂フィルム)中に含まれるすべてのヨウ素の量を意味する。より具体的には、偏光子中においてヨウ素はヨウ素イオン(I-)、ヨウ素分子(I2)、ポリヨウ素イオン(I3
-、I5
-)等の形態で存在するところ、本明細書におけるヨウ素含有量は、これらの形態をすべて包含したヨウ素の量を意味する。ヨウ素含有量は、例えば、蛍光X線分析の検量線法により算出することができる。なお、ポリヨウ素イオンは、偏光子中でPVA-ヨウ素錯体を形成した状態で存在している。このような錯体が形成されることにより、可視光の波長範囲において吸収二色性が発現し得る。具体的には、PVAと三ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I3
-)は470nm付近に吸光ピークを有し、PVAと五ヨウ化物イオンとの錯体(PVA・I5
-)は600nm付近に吸光ピークを有する。結果として、ポリヨウ素イオンは、その形態に応じて可視光の幅広い範囲で光を吸収し得る。一方、ヨウ素イオン(I-)は230nm付近に吸光ピークを有し、可視光の吸収には実質的には関与しない。したがって、PVAとの錯体の状態で存在するポリヨウ素イオンが、主として偏光子の吸収性能に関与し得る。
【0019】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率Tsは、好ましくは40%~48%であり、より好ましくは41%~46%である。偏光子の偏光度Pは、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。上記単体透過率は、代表的には、紫外可視分光光度計を用いて測定し、視感度補正を行なったY値である。上記偏光度は、代表的には、紫外可視分光光度計を用いて測定して視感度補正を行なった平行透過率Tpおよび直交透過率Tcに基づいて、下記式により求められる。
偏光度(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
【0020】
上記二層以上の積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0021】
C.保護層
保護層20は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0022】
粘着剤層付偏光板は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層20は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層20には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0023】
保護層20の厚みは、好ましくは10μm~50μm、より好ましくは10μm~30μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層20の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0024】
D.樹脂層
樹脂層30は、樹脂とイソシアネート化合物とを含む。樹脂はガラス転移温度が85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwが25000以上である樹脂である。イソシアネート化合物は分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を1種以上含む。樹脂層30における樹脂とイソシアネート化合物との含有割合(樹脂/イソシアネート化合物)は、90/10~5/95である。このような樹脂層が導電性粘着剤層と偏光子との間に配置されることにより、偏光子と隣接層(例えば、樹脂層)との密着性に優れ、色抜け等の不具合の発生が抑制され得る。さらに、本発明の実施形態における粘着剤層付偏光板は、より過酷な条件下であっても優れた密着性を発揮し得る。
【0025】
樹脂とイソシアネート化合物との含有割合(樹脂/イソシアネート化合物)は、上記のとおり90/10~5/95であり、好ましくは85/15~10/90、より好ましくは80/20~15/85、さらに好ましくは75/25~20/80である。このような構成であれば、粘着剤層として導電性粘着剤層を採用した場合であっても、偏光子と隣接層との密着性に優れ、色抜け等の不具合の発生が抑制された粘着剤層付偏光板を提供することができる。
【0026】
樹脂層30は好ましくは弾性回復評価値が10%以下であり、より好ましくは9%以下であり、さらに好ましくは8%以下である。弾性回復評価値が上記範囲にあることにより、より過酷な条件下であっても、偏光子と隣接層との密着性に優れる。本明細書において、弾性回復評価値は以下の方法により、測定、算出した値をいう。
試料を60℃90%RHの環境下に3日間投入(エージング)し、次いで室温(25℃、55%RH)で1日放置する。次いで、ナノインデンテーション測定を行い、弾性回復率を求める。エージングを行わなかった試料についても同様に室温(25℃、55%RH)でナノインデンテーション測定を行い、弾性回復率を求める。これらの弾性回復率の値から下記式を用いて算出した値をいう。
弾性回復評価値=|(エージングした試料の弾性回復率(%))-(エージングを行わなかった試料の弾性回復率(%))|
【0027】
1つの実施形態において、好ましくは樹脂層30は、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物である。このような構成であることにより、樹脂層30の厚みを非常に薄く(例えば、10μm以下に)することができる。樹脂層の厚みは、好ましくは0.05μm~10μmであり、より好ましくは0.08μm~5μmであり、さらに好ましくは0.1μm~1μmであり、特に好ましくは0.2μm~0.7μmである。
【0028】
樹脂層30が樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物である場合、樹脂層を偏光子に直接(すなわち、接着剤層または粘着剤層を介することなく)形成することができる。本発明の実施形態によれば、上記のとおり偏光子および樹脂層が非常に薄く、かつ、樹脂層を積層するための接着剤層または粘着剤層を省略することができるので、粘着剤層付偏光板の総厚みをきわめて薄くすることができる。さらに、このような樹脂層は、水溶液または水分散体のような水系の塗布膜の固化物に比べて吸湿性および透湿性が小さいので加湿耐久性に優れるという利点を有する。その結果、高温高湿環境下においても光学特性を維持し得る、耐久性に優れた粘着剤層付偏光板を実現することができる。また、このような樹脂層は、例えば紫外線硬化性樹脂の硬化物に比べて紫外線照射による偏光子に対する悪影響を抑制することができる。樹脂層は、好ましくは有機溶媒溶液の塗布膜の固化物である。固化物は、硬化物に比べてフィルム成形時の収縮が小さい、および、残存モノマー等が含まれないのでフィルム自体の劣化が抑制され、かつ、残存モノマー等に起因する偏光板(偏光子)に対する悪影響を抑制することができる。以下、有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または硬化物である樹脂層について詳細に説明する。
【0029】
D-1.樹脂
樹脂層を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は85℃以上であり、かつ、重量平均分子量Mwは25000以上である。当該樹脂のTgおよびMwがこのような範囲であれば、非常に薄いにもかかわらず、偏光子と隣接層(例えば、樹脂層)との密着性に優れ、色抜け等の不具合の発生が抑制され得る。さらに、より過酷な条件下であっても優れた密着性を発揮し得る。
【0030】
樹脂のTgは85℃以上であり、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上であり、特に好ましくは120℃以上である。Tgは、例えば200℃以下であり得る。樹脂のMwは、25000以上であり、好ましくは30000以上であり、より好ましくは35000以上であり、さらに好ましくは40000以上である。Mwは、例えば150000以下であり得る。
【0031】
樹脂層を構成する樹脂としては、有機溶媒溶液の塗布膜の固化物または熱硬化物を形成可能であり、かつ、上記のようなTgおよびMwを有する限りにおいて、任意の適切な熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。好ましくは、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。エポキシ系樹脂とアクリル系樹脂とを組み合わせて用いてもよい。以下、樹脂層に用いられ得るエポキシ系樹脂およびアクリル系樹脂の代表例を説明する。
【0032】
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、好ましくは芳香族環を有するエポキシ樹脂が用いられる。芳香族環を有するエポキシ樹脂をエポキシ樹脂として用いることにより、樹脂層を偏光子に隣接して配置した場合に偏光子との密着性が向上し得る。さらに、樹脂層に隣接して粘着剤層(導電性粘着剤層)を配置した場合に、粘着剤層の投錨力が向上し得る。芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂などのノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル、エポキシ化ポリビニルフェノールなどの多官能型のエポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などが挙げられる。好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が用いられる。エポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
<アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、代表的には、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の繰り返し単位を主成分として含有する。本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルをいう。アクリル系樹脂は、目的に応じた任意の適切な共重合単量体由来の繰り返し単位を含有し得る。共重合単量体(共重合モノマー)としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。モノマー単位の種類、数、組み合わせおよび共重合比等を適切に設定することにより、上記所定のTgおよびMwを有するアクリル系樹脂が得られ得る。
【0034】
<ホウ素含有アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、1つの実施形態においては、50重量部を超える(メタ)アクリル系単量体と0重量部を超えて50重量部未満の式(1)で表される単量体(以下、共重合単量体と称する場合がある)とを含むモノマー混合物を重合することにより得られる共重合体(以下、ホウ素含有アクリル系樹脂と称する場合がある)を含む:
【化2】
(式中、Xはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよいアリール基、または、置換基を有していてもよいヘテロ環基を表し、R
1およびR
2は互いに連結して環を形成してもよい)。
【0035】
ホウ素含有アクリル系樹脂は、代表的には下記式で表される繰り返し単位を有する。式(1)で表される共重合単量体と(メタ)アクリル系単量体とを含むモノマー混合物を重合することにより、ホウ素含有アクリル系樹脂は側鎖にホウ素を含む置換基(例えば、下記式中kの繰り返し単位)を有する。これにより、樹脂層を偏光子に隣接して配置した場合に偏光子との密着性が向上し得る。このホウ素を含む置換基は、ホウ素含有アクリル系樹脂に連続して(すなわち、ブロック状に)含まれていてもよく、ランダムに含まれていてもよい。
【化3】
(式中、R
6は任意の官能基を表し、jおよびkは1以上の整数を表す)。
【0036】
<(メタ)アクリル系単量体>
(メタ)アクリル系単量体としては任意の適切な(メタ)アクリル系単量体を用いることができる。例えば、直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体、および、環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。
【0037】
直鎖または分岐構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸メチル2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸メチルが用いられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
環状構造を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ビフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシエチルアクリレート、p-ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート、o-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、p-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、m-ビフェニルオキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-p-ビフェニル=カルバマート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチル-m-ビフェニル=カルバマート、o-フェニルフェノールグリシジルエーテルアクリレート等のビフェニル基含有モノマー、ターフェニル(メタ)アクリレート、o-ターフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルが用いられる。これらの単量体を用いることにより、ガラス転移温度の高い重合体が得られる。これらの単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体に代えて、(メタ)アクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物を用いてもよい。シルセスキオキサン化合物を用いることにより、ガラス転移温度が高いアクリル系重合体が得られる。シルセスキオキサン化合物は、種々の骨格構造、例えば、カゴ型構造、ハシゴ型構造、ランダム構造などの骨格を持つものが知られている。シルセスキオキサン化合物は、これらの構造を1種のみを有するものでもよく、2種以上を有するものでもよい。シルセスキオキサン化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
(メタ)アクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物として、例えば、東亜合成株式会社SQシリーズのMACグレード、および、ACグレードを用いることができる。MACグレードは、メタクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物であり、具体的には、例えば、MAC-SQ TM-100、MAC-SQ SI-20、MAC-SQ HDM等が挙げられる。ACグレードは、アクリロイル基を含有するシルセスキオキサン化合物であり、具体的には、例えば、AC-SQ TA-100、AC-SQ SI-20等が挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル系単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、50重量部を超えて用いられる。
【0042】
<共重合単量体>
共重合単量体としては、上記式(1)で表される単量体が用いられる。このような共重合単量体を用いることにより、得られる重合体の側鎖にホウ素を含む置換基が導入される。共重合単量体は1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記式(1)における脂肪族炭化水素基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~20の直鎖または分岐のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~20の環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられる。上記アリール基としては、置換基を有していてもよい炭素数6~20のフェニル基、置換基を有していてもよい炭素数10~20のナフチル基等が挙げられる。ヘテロ環基としては、置換基を有していてもよい少なくとも1つのヘテロ原子を含む5員環基または6員環基が挙げられる。なお、R1およびR2は互いに連結して環を形成してもよい。R1およびR2は、好ましくは水素原子、もしくは、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0044】
Xで表される官能基が含む反応性基は、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種である。好ましくは、反応性基は(メタ)アクリル基および/または(メタ)アクリルアミド基である。これらの反応性基を有することにより、樹脂層を偏光子に隣接して配置した場合に偏光子との密着性がさらに向上し得る。
【0045】
1つの実施形態においては、Xで表される官能基は、Z-Y-で表される官能基であることが好ましい。ここで、Zはビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、および、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基を含む官能基を表し、Yはフェニレン基またはアルキレン基を表す。
【0046】
共重合単量体としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。
【化4】
【化5】
【0047】
共重合単量体は、モノマー混合物100重量部に対して、0重量部を超えて50重量部未満の含有量で用いられる。好ましくは0.01重量部以上50重量部未満であり、より好ましくは0.05重量部~20重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部~10重量部であり、特に好ましくは0.5重量部~5重量部である。
【0048】
<ラクトン環等含有アクリル系樹脂>
アクリル系樹脂は、別の実施形態においては、ラクトン環単位、無水グルタル酸単位、グルタルイミド単位、無水マレイン酸単位およびマレイミド(N-置換マレイミド)単位から選択される環構造を含む繰り返し単位を有する。環構造を含む繰り返し単位は、1種類のみがアクリル系樹脂の繰り返し単位に含まれていてもよく、2種類以上が含まれていてもよい。
【0049】
ラクトン環単位は、好ましくは、下記一般式(2)で表される:
【0050】
【化6】
一般式(2)において、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。アクリル系樹脂には、単一のラクトン環単位のみが含まれていてもよく、上記一般式(2)におけるR
3、R
4およびR
5が異なる複数のラクトン環単位が含まれていてもよい。ラクトン環単位を有するアクリル系樹脂は、例えば特開2008-181078号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0051】
グルタルイミド単位は、好ましくは、下記一般式(3)で表される:
【0052】
【0053】
一般式(3)において、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素または炭素数1~8のアルキル基を示し、R13は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、または炭素数6~10のアリール基を示す。一般式(3)において、好ましくは、R11およびR12は、それぞれ独立して水素またはメチル基であり、R13は水素、メチル基、ブチル基またはシクロヘキシル基である。より好ましくは、R11はメチル基であり、R12は水素であり、R13はメチル基である。アクリル系樹脂には、単一のグルタルイミド単位のみが含まれていてもよく、上記一般式(3)におけるR11、R12およびR13が異なる複数のグルタルイミド単位が含まれていてもよい。グルタルイミド単位を有するアクリル系樹脂は、例えば、特開2006-309033号公報、特開2006-317560号公報、特開2006-328334号公報、特開2006-337491号公報、特開2006-337492号公報、特開2006-337493号公報、特開2006-337569号公報に記載されており、当該公報の記載は本明細書に参考として援用される。なお、無水グルタル酸単位については、上記一般式(3)におけるR13で置換された窒素原子が酸素原子となること以外は、グルタルイミド単位に関する上記の説明が適用される。
【0054】
無水マレイン酸単位およびマレイミド(N-置換マレイミド)単位については、名称から構造が特定されるので、具体的な説明は省略する。
【0055】
アクリル系樹脂における環構造を含む繰り返し単位の含有割合は、好ましくは1モル%~50モル%、より好ましくは10モル%~40モル%、さらに好ましくは20モル%~30モル%である。なお、アクリル系樹脂は、主たる繰り返し単位として、上記の(メタ)アクリル系単量体由来の繰り返し単位を含む。
【0056】
D-2.イソシアネート化合物
イソシアネート化合物としては分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物が用いられる。樹脂層が分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を1種以上含むことにより、偏光子と隣接層(例えば、樹脂層)との間により安定した架橋構造が形成され得る。そのため、導電性粘着剤層を採用した粘着剤層付偏光板であっても、偏光子と隣接層との密着性に優れた粘着剤層付偏光板を提供することができる。
【0057】
イソシアネート化合物としては分子内にイソシアネート基を2以上有する任意の適切なイソシアネート化合物を用いることができる。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、および、これらのジイソシアネートの多量体(2量体、3量体、5量体など)等が挙げられる。また、上記ポリイソシアネート化合物のトリメチロールプロパン付加物等であってもよい。
【0058】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0059】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0060】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソソアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0061】
イソシアネート化合物としては市販品を用いてもよい。イソシアネート化合物の市販品としては、例えば、東ソー(株)製の商品名「ミリオネートMT」、「ミリオネートMTL」、「ミリオネートMR-200」、「ミリオネートMR-400」、「コロネートL」、「コロネートHL」、「コロネートHX」、三井化学(株)製の商品名「タケネートD-110N」、「タケネートD-120N」、「タケネートD-140N」、「タケネートD-160N」、「タケネートD-165N」、「タケネートD-170HN」、「タケネートD-178N」、「タケネート500」、「タケネート600」が挙げられる。
【0062】
本発明の実施形態において、樹脂層は好ましくは分子内にイソシアネート基を2以上有する化合物を2種以上含む。2種以上のイソシアネート化合物を組み合わせて用いることにより、偏光子と隣接層との間に2種以上の架橋構造が形成され、より安定した架橋構造とすることができる。そのため、過酷な条件(例えば、長時間の高温高湿環境)下であっても偏光子と隣接層とが優れた密着性を有し得る。
【0063】
1つの実施形態において、イソシアネート化合物は(A)分子内にイソシアネート基を2以上有し、かつ、芳香族環にイソシアネート基が直接結合しているイソシアネート化合物(以下、イソシアネート化合物(A)ともいう)、および、(B)分子内にイソシアネート基を2以上有する、イソシアネート化合物(A)以外のイソシアネート化合物(イソシアネート化合物(B))をそれぞれ1種以上含む。イソシアネート化合物(A)は反応速度が速く、イソシアネート化合物(B)は反応速度が遅いことが知られている。イソシアネート化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを組み合わせて用いることにより、イソシアネート化合物(A)を単独で用いる場合よりも反応速度が速くなり、より速やかに隣接層との間に架橋構造が形成され、偏光子と隣接層との密着性を速やかに確保し得る。さらに、イソシアネート化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを組み合わせて用いることにより、加水分解を受けにくいイソシアネートの多量体構造がより多く形成され得る。そのため、より過酷な条件(例えば、長時間の高温高湿環境)下における偏光子と隣接層との密着性がさらに向上し得る。
【0064】
イソシアネート化合物(A)は分子内にイソシアネート基を2以上有し、かつ、芳香族環にイソシアネート基が直接結合しているイソシアネート化合物であればよく、任意の適切なイソシアネート化合物が用いられる。イソシアネート化合物(A)において、イソシアネート化合物が有するイソシアネート基のうち、少なくとも1つが芳香族環に直接結合していればよく、芳香族環に直接結合していないイソシアネート基が含まれていてもよい。イソシアネート化合物(A)としては、好ましくはトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、ジフェニルメタンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物が用いられる。これらをイソシアネート化合物(A)として用いることにより、樹脂層の形成工程(例えば、乾燥工程)において、架橋構造が速やかに形成され、樹脂層と隣接層との密着性を担保することができる。
【0065】
イソシアネート化合物(B)としては、分子内にイソシアネート基を2以上有する、上記イソシアネート化合物(A)以外のイソシアネート化合物が用いられる。具体的には、上記脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、エチレン基およびメチレン基等のアルキレン基を介してイソシアネート基が芳香族環に結合している芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。イソシアネート化合物(B)としては好ましくはキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物が用いられる。これらをイソシアネート化合物(B)として用いることにより、高温耐久性および耐湿耐水性に優れた架橋構造を形成することができる。
【0066】
上記イソシアネート化合物(A)とイソシアネート化合物(B)との含有割合(イソシアネート化合物(A)/イソシアネート化合物(B))は好ましくは50/50~95/5であり、より好ましくは600/40~90/10であり、さらに好ましくは65/35~85/15である。イソシアネート化合物(A)とイソシアネート化合物(B)とを上記含有割合で用いることにより、過酷な条件(例えば、長時間の高温高湿環境)下における偏光子と隣接層(例えば、樹脂層)との密着性がさらに向上し得る。
【0067】
1つの実施形態において、樹脂層は、上記樹脂とイソシアネート化合物とを含む有機溶媒溶液を塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜を固化または熱硬化させることにより形成され得る。有機溶媒としては、上記樹脂を溶解または均一に分散し得る任意の適切な有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。溶液の樹脂濃度は、溶媒100重量部に対して、好ましくは3重量部~20重量部である。このような樹脂濃度であれば、均一な塗布膜を形成することができる。
【0068】
溶液は、任意の適切な基材に塗布してもよく、偏光子に塗布してもよい。溶液を基材に塗布する場合には、基材上に形成された塗布膜の固化物(樹脂層)が偏光子に転写される。溶液を偏光子に塗布する場合には、塗布膜を乾燥(固化)させることにより、偏光子上に保護層が直接形成される。好ましくは、溶液は偏光子に塗布され、偏光子上に保護層が直接形成される。このような構成であれば、転写に必要とされる接着剤層または粘着剤層を省略することができるので、粘着剤層付偏光板をさらに薄くすることができる。溶液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。具体例としては、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)が挙げられる。
【0069】
溶液の塗布膜を固化または熱硬化させることにより、樹脂層が形成され得る。固化または熱硬化の加熱温度は、好ましくは100℃以下であり、より好ましくは50℃~70℃である。加熱温度がこのような範囲であれば、偏光子に対する悪影響を防止することができる。加熱時間は、加熱温度に応じて変化し得る。加熱時間は、例えば1分~10分であり得る。
【0070】
樹脂層(実質的には、上記樹脂の有機溶媒溶液)は、目的に応じて任意の適切な添加剤を含んでいてもよい。添加剤の具体例としては、紫外線吸収剤;レベリング剤;ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料等の着色剤;有機フィラーまたは無機フィラー;樹脂改質剤;有機充填剤や無機充填剤;可塑剤;滑剤;難燃剤;などが挙げられる。添加剤の種類、数、組み合わせ、添加量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0071】
E.導電性粘着剤層
導電性粘着剤層40の表面抵抗値は、代表的には上記のとおり1.0×108Ω/□~1.0×1012Ω/□であり、好ましくは1.0×108Ω/□~1.0×1011Ω/□であり、より好ましくは1.0×108Ω/□~1.0×1010Ω/□であり、さらに好ましくは1.0×108Ω/□~1.0×109Ω/□である。導電性粘着剤層の表面抵抗値がこのような範囲であれば、偏光板を画像表示装置に適用した場合に所望の帯電防止性能を実現することができる。その結果、偏光板は、狭額縁(好ましくは、ベゼルレス)の画像表示装置、表示パネル内にタッチパネル用導電層を組み込んだいわゆるインセル型画像表示装置等にも好適に適用され得る。
【0072】
導電性粘着剤層のガラスに対する粘着力は、好ましくは1.5N/25mm以上5.5N/25mm未満であり、より好ましくは2.5N/25mm以上4.5N/25mm以下であり、さらに好ましくは3.0N/25mm以上4.0N/25mm以下である。粘着力がこのような範囲であれば、画像表示パネルに対する密着性に優れ、かつ、リワーク性に優れる。
【0073】
導電性粘着剤層は、25℃における貯蔵弾性率が、好ましくは1.0×104Pa~1.0×106Paであり、より好ましくは1.0×104Pa~1.0×105Paである。導電性粘着剤層の貯蔵弾性率がこのような範囲であれば、高温高湿環境下における偏光板の外観不良を抑制することができる。なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定により得られ得る。
【0074】
導電性粘着剤層は、70℃におけるクリープ量ΔCrが、例えば65μm以下であり、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、さらには15μm以下であってもよい。クリープ量ΔCrの下限は、例えば0.5μmである。クリープ量がこのような範囲であれば、貯蔵弾性率の場合と同様に、高温高湿環境下における偏光板の外観不良を抑制することができる。なお、クリープ値は、例えば以下の手順で測定され得る:縦20mm×横20mmの接合面にてステンレス製試験板に貼り付けた粘着剤層に対して、試験板を固定した状態で500gfの荷重を鉛直下方に加える。荷重を加え始めてから100秒後及び3600秒後の各時点における試験板に対する粘着剤層のクリープ量(ずれ量)を測定し、それぞれCr100及びCr3600とする。測定したCr100及びCr3600から、式ΔCr=Cr3600-Cr100によりクリープ量ΔCrが求められ得る。
【0075】
導電性粘着剤層の厚みは、好ましくは2μm~55μmであり、より好ましくは2μm~30μmであり、さらに好ましくは5μm~25μmであり、特に好ましくは10μm~20μmである。
【0076】
導電性粘着剤層を構成する粘着剤組成物は、代表的には、ベースポリマーと導電成分(例えば、導電剤)とを含む。
【0077】
ベースポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ゴム系ポリマー挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル系ポリマーである。本明細書においては、ベースポリマーとしての(メタ)アクリル系ポリマーを、(メタ)アクリル系ベースポリマーと称する場合がある。
【0078】
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、代表的には、モノマー成分としてアルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基としては、例えば、1個~18個の炭素原子を有する直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。当該アルキル基の平均炭素数は、好ましくは3個~9個であり、より好ましくは3個~6個である。好ましいアルキル(メタ)アクリレートは、ブチルアクリレートである。ベースポリマーにおけるアルコキシ基含有モノマーの含有量は、全モノマー成分100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは60重量部以上、さらに好ましくは70重量部以上、特に好ましくは80重量部以上である。アルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0079】
(メタ)アクリル系ベースポリマーは、代表的には、アルキル(メタ)アクリレートと共重合し得るモノマー成分(共重合モノマー成分)を含有する。共重合モノマー成分としては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アルコキシ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、芳香環含有(メタ)アクリレート、複素環含有ビニル系モノマーが挙げられる。共重合モノマーの種類、数、組み合わせ、配合量(含有量)等を適切に調整することにより、所望の特性を有するベースポリマー(結果として、粘着剤層)が得られ得る。
【0080】
(メタ)アクリル系ベースポリマーの重量平均分子量Mwは、好ましくは100万~300万であり、より好ましくは200万~300万であり、さらに好ましくは200万~280万である。重量平均分子量Mwが100万未満であれば、クラックの抑制が不十分となる場合がある。重量平均分子量Mwが300万を超えると、粘度の上昇および/またはポリマー重合中におけるゲル化が生じる場合がある。
【0081】
導電成分としては、代表的には、無機カチオン塩、有機カチオン塩が挙げられる。
【0082】
無機カチオン塩は、具体的には、無機カチオン-アニオン塩である。無機カチオン塩のカチオン部を構成するカチオンとしては、代表的には、アルカリ金属イオンが挙げられる。具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが挙げられる。好ましくは、リチウムイオンである。したがって、好ましい無機カチオン塩は、リチウム塩である。
【0083】
無機カチオン塩のアニオン部を構成するアニオンとしては、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4
-、Al2Cl7
-、BF4
-、PF6
-、ClO4
-、NO3
-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)3C-、AsF6
-、SbF6
-、NbF6
-、TaF6
-、(CN)2N-、C4F9SO3
-、C3F7COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、-O3S(CF2)3SO3
-、および、下記一般式(1)~(4)
(1):(CnF2n+1SO2)2N- (nは1~10の整数)、
(2):CF2(CmF2mSO2)2N- (mは1~10の整数)、
(3):-O3S(CF2)lSO3
- (lは1~10の整数)、
(4):(CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2) (p、qは1~10の整数)、
で表わされるアニオンが挙げられる。フッ素含有アニオンが好ましく、フッ素含有イミドアニオンがより好ましい。
【0084】
フッ素含有イミドアニオンとしては、例えば、ペルフルオロアルキル基を有するイミドアニオンが挙げられる。具体例としては、上記の(CF3SO2)(CF3CO)N-、ならびに、一般式(1)、(2)および(4)
(1):(CnF2n+1SO2)2N- (nは1~10の整数)、
(2):CF2(CmF2mSO2)2N- (mは1~10の整数)、
(4):(CpF2p+1SO2)N-(CqF2q+1SO2) (p、qは1~10の整数)、
で表わされるアニオンが挙げられる。好ましくは、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-等の一般式(1)で表わされる(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドであり、より好ましくは、(CF3SO2)2N-で表わされるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。したがって、本発明の実施形態において用いられ得る好ましい無機カチオン塩は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
【0085】
有機カチオン塩は、具体的には、有機カチオン-アニオン塩である。有機カチオン塩のカチオン部を構成するカチオンとしては、代表的には、有機基による置換によってオニウムイオンを形成した有機オニウムが挙げられる。有機オニウムにおけるオニウムとしては、例えば、含窒素オニウム、含硫黄オニウム、含リンオニウムが挙げられる。好ましくは、含窒素オニウム、含硫黄オニウムである。含窒素オニウムとしては、アンモニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオンが挙げられる。含硫黄オニウムとしては、例えばスルホニウムカチオンが挙げられる。含リンオニウムとしては、例えばホスホニウムカチオンが挙げられる。有機オニウムにおける有機基としては、例えば、アルキル基、アルコキシル基、アルケニル基が挙げられる。好ましい有機オニウムの具体例としては、テトラアルキルアンモニウムカチオン(例えば、トリメチルブチルアンモニウムカチオン)、アルキルピペリジニウムカチオン、アルキルピロリジニウムカチオンが挙げられる。有機カチオン塩のアニオン部を構成するアニオンは、無機カチオンのアニオン部を構成するアニオンに関して説明したとおりである。本発明の実施形態において用いられ得る好ましい有機カチオン塩は、メチルプロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリメチルブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである。
【0086】
無機カチオン塩と有機カチオン塩とを組み合わせて用いてもよい。
【0087】
導電成分は、固体であってもよく液体(すなわち、イオン性液体)であってもよい。
【0088】
粘着剤組成物における導電成分の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは5重量部~15重量部であり、より好ましくは8重量部~12重量部である。導電成分の含有量がこのような範囲であれば、他の特性に悪影響を与えることなく、所望の帯電防止性能が得られ得る。
【0089】
粘着剤組成物は、代表的には、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有する。シランカップリング剤としては、代表的には、官能基含有シランカップリング剤が挙げられる。官能基としては、例えば、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、スチリル基、アセトアセチル基、ウレイド基、チオウレア基、(メタ)アクリル基、複素環基、酸無水物基およびこれらの組み合わせが挙げられる。官能基含有シランカップリング剤は単独でまたは組み合わせて使用できる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。架橋剤もまた、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0090】
粘着剤組成物は、添加剤を含有していてもよい。添加剤の具体例としては、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物が挙げられる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0091】
F.画像表示装置
上記粘着剤層付偏光板は、任意の適切な用途に用いられる。本発明の実施形態において、粘着剤層付偏光板は画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような粘着剤層付偏光板を用いた画像表示装置を包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)が挙げられる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
【0093】
(1)厚み
10μm以下の厚みは、干渉膜厚計(大塚電子社製、製品名「MCPD-3000」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
【0094】
(2)表面抵抗値
JIS K 6911に準拠し、粘着剤層の表面抵抗値を測定した。具体的には、粘着剤層付偏光板の粘着剤層にプローブを押し付け、30秒経過後の安定した値を読み取った。測定は以下の測定条件で行った。
<測定条件>
抵抗計:ハイレスター
プローブ:URS
温度:23±2℃
湿度:50±5%RH
【0095】
(3)弾性回復評価値
実施例および比較例で得られた粘着剤層付偏光板を3cm×3cmに切り出し試料とした。試料を60℃90%RHの環境下に3日間投入(エージング)し、次いで室温(25℃、55%RH)で1日放置した。その後、試料をエポキシ樹脂で包埋し、ウルトラミクロトームで断面を作製した。作製した断面を支持体に固定し、以下の条件でナノインデンテーション測定を行い、以下の式から弾性回復率を求めた。エージングを行わなかった試料についても同様に室温(25℃、55%RH)でナノインデンテーション測定を行い、弾性回復率を求めた。
<分析装置および条件>
装置:Hysitron Inc.製、製品名:Triboindenter
使用圧子:Berkovich(三角錐型)
測定方法:単一押し込み測定
押し込み深さ:50nm
測定位置:偏光子界面から500nm離れた位置
<弾性回復率の算出方法>
弾性回復率(%)={最大変位(最も深く押し込んだ時の変位量)(hmax)-塑性変形量(hf)}/最大変位(hmax)
【0096】
エージングした試料の弾性回復率およびエージングを行わなかった試料の弾性回復率を用いて以下の式から弾性回復評価値を算出した。
弾性回復評価値=|(エージングした試料の弾性回復率(%))-(エージングを行わなかった試料の弾性回復率(%))|
【0097】
(4)剥がれ試験
実施例および比較例で得られた粘着剤層付偏光板を50mm×50mmに切り出し、切り出しサイズよりも大きいガラス板に貼り合わせ、試験サンプルとした。この試験サンプルを、60℃の温水へ浸漬させた。樹脂層の剥がれ距離が最も大きい箇所の剥がれ距離が3mm以上になった時点の浸漬時間から以下の基準で評価した。
A:3時間ではがれ無し
B:2時間以上3時間未満
C:1時間以上2時間未満
D:30分以上1時間未満
E:30分未満
【0098】
[製造例1:ホウ素含有アクリル系樹脂の作製]
メタクリル酸メチル(MMA、富士フイルム和光純薬製、商品名:メタクリル酸メチルモノマー)99.0重量部、一般式(1e)の単量体1.0重量部、重合開始剤(富士フイルム和光純薬社製、商品名:2,2´-アゾビス(イソブチロニトリル))0.2重量部をトルエン100重量部に溶解した。次いで、窒素雰囲気下で70℃に加熱しながら5時間重合反応を行い、共重合体1(固形分濃度:50重量%)を得た。共重合体1のTgは110℃、重量平均分子量は80,000であった。
【0099】
[製造例2:偏光板の作製]
1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用いた。樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ410」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.4倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が43.0%以上となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4.0重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに約2秒接触させた(乾燥収縮処理)。乾燥収縮処理による積層体の幅方向の収縮率は5.2%であった。
このようにして、樹脂基材上に厚み5μmの偏光子を形成した。
【0100】
2.偏光板の作製
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)の一方の面にハードコート(HC)層(厚み7μm)を形成した。具体的には以下のとおりであった。紫外線硬化型アクリレート樹脂(東亜合成(株)製、商品名「M-920」、固形分100%)40重量部、紫外線硬化型アクリレート樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「UV-1700TL」、固形分80%)60重量部を準備した。樹脂の樹脂固形分100重量部あたり、光重合開始剤(BASF社製、商品名「OMNIRAD907」)を3重量部、レベリング剤(共栄社化学(株)製、商品名「LE-303」、固形分40%)を0.12重量部混合した。この混合物を固形分濃度が30%となるように、MIBK/シクロペンタノン混合溶媒(重量比70/30)で希釈して、ハードコート層形成用塗工液を調製した。このハードコート層形成用塗工液を、バーコータを用いてTACフィルムに塗工し、塗工層を形成した。塗工層が形成されたTACフィルムを80℃で1分間加熱することにより、塗工層を乾燥させて塗膜を形成した。得られた塗膜に高圧水銀ランプにて積算光量240mJ/cm2の紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み7μmのHC層を形成した。
上記1.で得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、HC層/TACフィルムの積層体を、紫外線硬化型接着剤を介して貼り合せた。具体的には、硬化型接着剤の総厚みが1.0μmになるように塗工し、ロール機を使用して貼り合わせた。その後、UV光線を保護層側から照射して接着剤を硬化させ、樹脂基材/偏光子/TACフィルム/HC層の積層体(偏光板)を得た。
【0101】
[製造例3:導電性粘着剤1の調製]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート99部、および、アクリル酸4-ヒドロキシルブチル1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、該モノマー混合物(固形分)100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチルと共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って7時間重合反応を行った。その後、得られた反応液に、酢酸エチルを加えて固形分濃度30%に調整した、重量平均分子量140万のアクリル系ポリマーの溶液を調整した。得られたアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して導電成分として1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(東京化成工業製)0.2部を配合し、さらに、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート(三井化学社製:タケネートD110N)0.1部と、ジベンゾイルパーオキサイド0.3部と、γ-グリシドキシプロピルメトキシシラン(信越化学工業社製:KBM-403)0.075部を配合して、導電性粘着剤1を調製した。
【0102】
[製造例4:導電性粘着剤2の調製]
1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを10部用いた以外は製造例3と同様にして導電性粘着剤2を調製した。
【0103】
[実施例1]
共重合体1(ホウ素含有アクリル系樹脂)90部に対してイソシアネート化合物(東ソー社製、「コロネートL」:トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)10部を加えた。この混合物を酢酸エチル/シクロペンタノン(70/30)の混合溶媒80部に溶解し、樹脂溶液(20%)を得た。上記偏光板から樹脂基材を剥離し、この樹脂溶液を、上記で得られた偏光板の剥離面にワイヤーバーを用いて塗布し、塗布膜を60℃で5分間乾燥して、樹脂の有機溶媒溶液の塗布膜の固化物として構成される樹脂層(厚み0.5μm)を形成した。次いで、樹脂層表面に製造例3で得られた導電性粘着剤を用いて粘着剤層(厚み15μm)を設け、保護層(HC層/TACフィルム)/接着剤層/偏光子/樹脂層/導電性粘着剤層の構成を有する粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板の総厚みは53.5μmであった。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0104】
[実施例2]
ホウ素含有アクリル系樹脂80部とイソシアネート化合物20部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0105】
[実施例3]
ホウ素含有アクリル系樹脂5部とイソシアネート化合物95部を用いた以外は実施例1と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0106】
[実施例4]
イソシアネート化合物として、コロネートLに代えてタケネートD110N(三井化学社製、:m-キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)を用いた以外は実施例2と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0107】
[実施例5]
イソシアネート化合物として、コロネートLに代えてタケネートD160N(三井化学社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体)を用いた以外は実施例2と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0108】
[実施例6]
イソシアネート化合物として、コロネートLを10部、タケネートD160Nを10部用いた以外は実施例2と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0109】
[実施例7]
イソシアネート化合物として、コロネートLを15部、タケネートD160Nを5部用いた以外は実施例2と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0110】
[実施例8]
ホウ素含有アクリル系樹脂に代えて、製造例1で得られた共重合体1(ホウ素含有アクリル系樹脂)15部(固形分換算)および熱可塑性エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER(登録商標)YX6954BH30」)85部(固形分換算)のブレンド80部を用いた以外は実施例7と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0111】
[実施例9]
イソシアネート化合物として、コロネートLを19部、タケネートD160Nを1部用いた以外は実施例2と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0112】
[実施例10]
タケネートD160Nに代えて、タケネートD110Nを用いた以外は実施例6と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0113】
[実施例11]
タケネートD160Nに代えて、タケネートD110Nを用いた以外は実施例7と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0114】
[実施例12]
タケネートD160Nに代えて、タケネートD110Nを用いた以外は実施例9と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0115】
[実施例13]
ホウ素含有アクリル系樹脂を70部、コロネートLを22.5部、タケネートD160Nを7.5部用いた以外は実施例6と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0116】
[実施例14]
導電性粘着剤1に代えて導電性粘着剤2を用いた以外は実施例7と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0117】
[実施例15]
導電性粘着剤1に代えて導電性粘着剤2を用いた以外は実施例13と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0118】
(比較例1)
ホウ素含有アクリル系樹脂100部のみを用いた(すなわち、イソシアネート化合物を含まない)こと以外は実施例1と同様にして粘着剤層付偏光板を作製した。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0119】
(比較例2)
イソシアネート化合物に代えて有機シラン(信越化学工業製、商品名:KBM-603)を用いたこと以外は実施例2と同様にして粘着剤層付偏光板を作製した。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0120】
(比較例3)
イソシアネート化合物に代えて有機チタン(松本ファインケミカル製、商品名:TA-21)を用いたこと以外は実施例2と同様にして粘着剤層付偏光板を作製した。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0121】
[参考例1]
導電成分である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを添加しなかったこと以外は製造例3と同様にして粘着剤組成物を得た。導電性粘着剤に代えて得られた粘着剤組成物を用いた以外は比較例1と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0122】
[参考例2]
樹脂層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層付偏光板を得た。得られた粘着剤層付偏光板を上記(3)~(4)の評価に供した。結果を表1に示す。
【0123】
【0124】
なお、表1において、構成樹脂の欄の「エポキシ/アクリル」はエポキシ系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンドを意味する。
【0125】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例の粘着剤層付偏光板は温水に浸漬した場合であっても、偏光子と樹脂層とが密着した状態を維持していた。他方、比較例1~3の粘着剤層付偏光板では温水浸漬後30分以内に樹脂層が偏光子から剥離した。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の粘着剤層付偏光板は、液晶表示装置、有機EL表示装置および無機EL表示装置等の画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0127】
10 偏光子
20 保護層
30 樹脂層
40 導電性粘着剤層
100 粘着剤層付偏光板