(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】マンゴーのシフト栽培方法とマンゴーの果実
(51)【国際特許分類】
A01G 2/00 20180101AFI20231020BHJP
A01G 7/06 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A01G2/00
A01G7/06 Z
(21)【出願番号】P 2022045792
(22)【出願日】2022-03-22
【審査請求日】2023-03-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522116719
【氏名又は名称】鈴木 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111512869(CN,A)
【文献】特開2006-309327(JP,A)
【文献】〔マンゴー栽培〕良い品質のマンゴーづくりの為に「花芽」の整理をするぞ!,花徳マンゴー,2016年03月15日,p.1-8,http://kedokumango.com/20160315/6552
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 2/00- 2/38
A01G 5/00- 7/06
A01G 9/28
A01G 17/00-17/02
A01G 17/18
A01G 20/00-22/67
A01G 24/00-24/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンゴーの木の枝のそれぞれから生える花穂群に対し当該花穂群の枝をその根元で切除する第1の工程と、
前記第1の工程後においてその根元の切断部分から新たな枝および新たな葉が生え、そして当該新たな枝および当該新たな葉に対して当該新しい枝から当該新しい葉を切除する第2の工程と、
前記第2の工程後において当該新しい葉に係る切断部分から再度生える花穂の新芽が生育して新たな花穂群となり、そして当該新たな花穂群に対してその一部を間引くように切除する第3の工程と、を含む、
マンゴーのシフト栽培方法。
【請求項2】
前記第2の工程において、前記新しい葉をその根元から切除する、
請求項1に記載のマンゴーのシフト栽培方法。
【請求項3】
前記第1の工程は、3月1日から3月15日の間に実行され、
前記第2の工程は、8月1日から8月15日の間に実行される、
請求項1に記載のマンゴーのシフト栽培方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンゴーの収穫時期をシフト制御できる栽培方法とシフト栽培したマンゴーの果実に関する。
【背景技術】
【0002】
クリスマスの時期に合わせて花の出荷時期を調節する栽培方法が行われている。似たような発想で時季外れの冬場にマンコーを出荷できると希少価値が有り、高価で販売できる。このような時季外れにマンコーを出荷できるようにシフト栽培できると好都合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は、マンゴーの栽培容器を冷却すること及び雰囲気温度を下げることによって、マンゴー生産者の意のままに花芽分化を行い、通常収穫期以外でもマンゴーを収穫でき、また果実肥大期における加温を可能とする。
なお、マンゴーを植え付ける栽培容器において、該容器の全部又は一部が良熱伝導性を有し、かつ、ペルチェモジュールを着装していることを特徴とするマンゴーの栽培容器である。また、前記栽培容器に植えられたマンゴーの木が花芽分化を迎えた時期に、前記栽培容器に植え付けられたマンゴーの木をフイルムで覆うマンゴーの栽培方法である。
【0005】
しかしながら、容器を冷却しても、栽培期間を延長したり収穫時季を来年にシフトしたりは出来ない。また、マンゴーの木をフイルムで覆うのは、設備が複雑で高価となり、収穫したマンゴーも高価となりメリットが半減する。
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、栽培方法を工夫することでマンゴーをシフト栽培し、翌年の時季外れに収穫可能とすることで、付加価値を高めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の技術的課題は、次のような手段によって解決される。
本発明に係る第1の発明は、マンゴーの木の枝のそれぞれから生える花穂群に対し当該花穂群の枝をその根元で切除する第1の工程と、前記第1の工程後においてその根元の切断部分から新たな枝および新たな葉が生え、そして当該新たな枝および当該新たな葉に対して当該新しい枝から当該新しい葉を切除する第2の工程と、前記第2の工程後において当該新しい葉に係る切断部分から再度生える花穂の新芽が生育して新たな花穂群となり、そして当該新たな花穂群に対してその一部を間引くように切除する第3の工程と、を含む、
マンゴーのシフト栽培方法である。
本発明に係る第2の発明は、前記第2の工程において、前記新しい葉をその根元から切除する、第1の発明に記載のマンゴーのシフト栽培方法である。
本発明に係る第3の発明は、前記第1の工程は、3月1日から3月15日の間に実行され、前記第2の工程は、8月1日から8月15日の間に実行される、第1の発明に記載のマンゴーのシフト栽培方法である。
本発明に係る第4の発明は、マンゴーの木の各枝に出来た花穂群をそれぞれ根本から切除し、切除後に切除部分のすぐ下の枝と葉の付け根部分から生えた新芽が成長し、新葉が生え、その新葉を切除することにより再度花穂を結実させ、さらに間引くことを特徴とするマンゴーのシフト栽培方法である。
【0007】
本発明に係る第5の発明は、マンゴーの木の各枝に出来た花穂群をそれぞれ根本から切除し、切除後に切除部分のすぐ下の枝と葉の付け根部分から生えた新芽が成長し、新葉が生え、その新葉を切除することにより再度花穂を結実させ、さらに間引くことを特徴とするシフト栽培されたマンゴーの果実である。
本発明に係る第6の発明は、切除されずに残った花穂又は稚マンゴーの果実を単数又は複数切除して間引きし、残った花穂の栽培期間を延長し、かつマンゴーの果実を肥大化させることを特徴とする第4の発明に記載のマンゴーのシフト栽培方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マンゴーの木の各枝に出来た花穂群を根本から切除し、切除後に切除部分のすぐ下の枝と葉の付け根部分から生えた新芽が成長し、新葉が生え、その新葉を切除することで再度花穂を結実させ、マンゴーの栽培期間をより長くしてシフト出来るので、マンゴーの果実を時季外れに完熟させて出荷出来、希少価値が出て高価で発売できる。
【0009】
本発明によれば、マンゴーの木の各枝に出来た花穂群を根本から切除し、切除後に切除部分のすぐ下の枝と葉の付け根部分から生えた新芽が成長し、新葉が生え、その新葉を切除することにより新たな花穂を結実させ、さらに間引くことを特徴とするシフト栽培されたマンゴーの果実は収穫するマンゴー以外の未熟なマンゴーや花穂を切除して間引くので、生産者の好みに応じて栽培期間即ちシフト期間を任意に選べるし、自由度が高くなる。
【0010】
本発明によれば、切除されずに残った花穂を単数又は複数切除して間引きし、残った花穂の栽培期間を延長し、かつマンゴーの果実を肥大化させるので、シフト栽培が可能でマンゴーの果実を時期外れに完熟させて出荷でき、希少価値がでて、高価で販売出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】マンゴーの木の一般構成を示す正面図である。
【
図2】マンゴーの木の1本の枝の花穂を切除する際の正面図であり、(1)は切除前、(2)は切除して花穂を切り落とした状態である。
【
図3】最初の花穂の切除後の新規な新枝を示す斜視図である。
【
図5】前記新葉を切り取った後に花穂の芽ができる。
【
図6】切断した葉の後から再度芽生えた新規な花穂群。
【
図7】前記の新規な花穂から間引き後のマンゴーの成育途中を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
先ず、本発明の基となる概要を説明する。通常のマンゴーの収穫時期が夏場の7、8月頃であるのに対し本発明では、例えば、収穫を真冬にしたい場合、開花したマンゴーの花穂を3月1日から3月15日前後に切り落とす。その後、3月から8月頃にかけて新葉が出てくる。その新葉を8月1日から8月15日前後に切り落とす。9月15日前後に切り落とした葉の付け根のあたりから開花が始まり、10月15日頃まで続くそれ以降は開花しない。
切り落とした葉の付け根から花の芽でなく葉が出てくる場合もあるが、その時は再度葉を切り落として花の芽が出るのを待つ。開花して約1週間後には、稚マンゴーが多数出始まり10月から11月頃にはタマゴ大に成長し、12月には、手のひら大になり成熟へと育っていく。
【0013】
マンゴーの開花した花穂を切除して、切除後に切除したすぐ下の枝の茎と葉の根本との間から生えた新芽が成長して新葉が生え、その新葉を付け根から切除することにより花穂ができこの新しく生えた花穂を結実させる。
このように花穂と、新葉を切り落した後、再度花穂を生育させ結実させる事が収穫の時期を遅らせ、任意の時期に収穫を調整する方法がシフト栽培である。
【0014】
次に本発明によるマンゴーのシフト栽培方法が実際上どのように具体化されるか実施形態で説明する。
図1は、花穂を切除す前の普通のマンゴーの木の正面図である。
図1のように、マンゴーの木に複数の枝1をつけ、枝1ごとに花穂群2ができる。本発明では、各花穂群2を
図2の鎖線3のように枝毎に根元から切除するが、切除後は、
図3のように、切断部分の下の葉の付け根の部分から新たな枝N1と新葉5が生えて来る。
図4は、新枝N1から新葉5を切断した図である。これは、切除後に新たな花穂が生まれ易いように各葉の根本から切り落とす。この葉を切り落とす作業をしなければ、花穂の芽はできず、単に葉として成熟するだけであるが、このように、各葉の根元から切除すると、2度目の花穂の新芽が
図5のように、新たな花穂の新芽7が生まれ出る。
【0015】
図6は、この新芽が生育して新たな花穂群N2となる。この新たな花穂の全体を生かすと、養分の消費が大きいので、不要な花穂を切除して間引く必要がある。
以上のようにし、
図7は、この2度目の花穂が開花して遂に結実して、稚マンゴー8となり、次第に肥大化していく。
【0016】
元から有る花穂群2を根元から切除して新たな花穂群N2を再生させて生育し、マンゴーの果実を得るので、翌年の時季より遅れたシフト栽培されたマンゴーが完熟して、出荷可能となり、時季外れの希少価値が高く高価で発売できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上のように、マンゴーの木の各枝に出来た花穂群を根本から切除し、切除後に残された葉と茎との間から生えた新芽が成長し、新たな葉になり、その葉を切除することにより花穂の芽ができ、花穂の芽が成長して、結実させてマンゴーとなり、それを完熟させて収穫出荷するので、時季を十分にシフトして、希少価値に富んだ、時季外れの高価なマンゴーを実現できる。
【符号の説明】
【0018】
1. 枝
2. 花穂群
3. 切断鎖線
4. 切断口
N1. 新枝
5. 新葉
6. 新葉の切除後
7. 花穂の新芽
N2.新花穂群
8. 稚マンゴー