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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】建具枠及び建具枠の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
E06B1/56 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022055254
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023147626
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕一
(72)【発明者】
【氏名】平林 茂
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実公昭55-043267(JP,Y2)
【文献】特許第6902741(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向及び左右方向に延びる壁の開口に設置される建具の建具枠であって、
上記開口の左端及び右端を区画する上記壁の端部に取り付けられる2つの縦枠材と、
上記開口の上端を区画する上記壁の端部に取り付けられる横枠材とを備え、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、それぞれ前側部材と該前側部材の後側に設けられる後側部材とからなり、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記前側部材は、
上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う前枠部と、
上記前枠部の前側に設けられ、上記前枠部の前側と上記前枠部が取り付けられる上記壁の端部の前面とを覆う第1見切部とを有し、
上記後側部材は、
上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う後枠部と、
上記後枠部の後側に設けられ、上記後枠部の後側と上記後枠部が取り付けられる上記壁の端部の後面とを覆う第2見切部とを有し、
上記2つの縦枠材の上記前枠部及び上記横枠材の上記前枠部は、上記2つの縦枠材の上記前枠部の上端部が上記横枠材の上記前枠部によって連結され、
上記2つの縦枠材の上記後枠部及び上記横枠材の上記後枠部は、上記2つの縦枠材の上記後枠部の上端部が上記横枠材の上記後枠部によって連結され、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記第1見切部は、上記前枠部と一体に形成され、
上記第2見切部は、上記後枠部と別体に形成され、
上記後枠部は、ビスによって上記前枠部又は上記壁の端部に取り付けられ、
上記ビスは、頭部が上記第2見切部によって覆われる位置に打ち込まれている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項2】
請求項に記載の建具枠において、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記第2見切部は、上記第1見切部と長さ及び幅が等しく、前後方向において上記第1見切部と重なる位置に設けられている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項3】
上下方向及び左右方向に延びる壁の開口に設置される建具の建具枠であって、
上記開口の左端及び右端を区画する上記壁の端部に取り付けられる2つの縦枠材と、
上記開口の上端を区画する上記壁の端部に取り付けられる横枠材とを備え、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、それぞれ前側部材と該前側部材の後側に設けられる後側部材とからなり、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記前側部材は、
上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う前枠部と、
上記前枠部の前側に設けられ、上記前枠部の前側と上記前枠部が取り付けられる上記壁の端部の前面とを覆う第1見切部とを有し、
上記後側部材は、
上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う後枠部と、
上記後枠部の後側に設けられ、上記後枠部の後側と上記後枠部が取り付けられる上記壁の端部の後面とを覆う第2見切部とを有し、
上記2つの縦枠材の上記前枠部及び上記横枠材の上記前枠部は、上記2つの縦枠材の上記前枠部の上端部が上記横枠材の上記前枠部によって連結され、
上記2つの縦枠材の上記後枠部及び上記横枠材の上記後枠部は、上記2つの縦枠材の上記後枠部の上端部が上記横枠材の上記後枠部によって連結され、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記後側部材は、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記建具枠との隙間を後側から覆う遮蔽部をさらに有し、
上記遮蔽部は、上記後枠部と一体に形成されている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の建具枠において、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記後側部材は、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記建具枠との隙間を後側から覆う遮蔽部をさらに有し、
上記遮蔽部は、上記後枠部と一体に形成されている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項5】
上下方向及び左右方向に延びる壁の開口に設置される建具の建具枠であって、
上記開口の左端及び右端を区画する上記壁の端部に取り付けられる2つの縦枠材と、
上記開口の上端を区画する上記壁の端部に取り付けられる横枠材とを備え、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、それぞれ前側部材と該前側部材の後側に設けられる後側部材とからなり、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記前側部材は、
上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う前枠部と、
上記前枠部の前側に設けられ、上記前枠部の前側と上記前枠部が取り付けられる上記壁の端部の前面とを覆う第1見切部とを有し、
上記後側部材は、
上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う後枠部と、
上記後枠部の後側に設けられ、上記後枠部の後側と上記後枠部が取り付けられる上記壁の端部の後面とを覆う第2見切部とを有し、
上記2つの縦枠材の上記前枠部及び上記横枠材の上記前枠部は、上記2つの縦枠材の上記前枠部の上端部が上記横枠材の上記前枠部によって連結され、
上記2つの縦枠材の上記後枠部及び上記横枠材の上記後枠部は、上記2つの縦枠材の上記後枠部の上端部が上記横枠材の上記後枠部によって連結され、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記後側部材は、
上記後枠部と別体に形成され、上記第2見切部と該第2見切部の内端部から前方に延びて上記後枠部と係合する係合部とが一体に形成されてなる見切部材と、
上記後枠部と別体に形成され、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記建具枠との隙間を後側から覆う遮蔽部材とをそれぞれ有し、
上記後枠部の後面と内面との角部には、上記係合部が嵌まる切り欠きが形成され、
上記遮蔽部材は、上記切り欠きを覆うように上記後枠部の内面に固定され、
上記見切部材は、上記係合部が上記後枠部と上記遮蔽部材との間に挟み込まれた状態で上記後枠部及び上記壁の端部に固定されている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の建具枠において、
上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、
上記後側部材は、
上記後枠部と別体に形成され、上記第2見切部と該第2見切部の内端部から前方に延びて上記後枠部と係合する係合部とが一体に形成されてなる見切部材と、
上記後枠部と別体に形成され、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記建具枠との隙間を後側から覆う遮蔽部材とをそれぞれ有し、
上記後枠部の後面と内面との角部には、上記係合部が嵌まる切り欠きが形成され、
上記遮蔽部材は、上記切り欠きを覆うように上記後枠部の内面に固定され、
上記見切部材は、上記係合部が上記後枠部と上記遮蔽部材との間に挟み込まれた状態で上記後枠部及び上記壁の端部に固定されている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載の建具枠において、
上記開口は、上記壁の一部を構成する控え壁によって左右方向の一方側の後側の領域が閉塞された上記建具として引戸が取り付けられる引戸用の開口であり、
上記引戸の戸尻側に設置される上記縦枠材では、
上記前側部材は、上記開口の上記控え壁の前側の領域の左右方向の上記一方側の端を区画する上記壁の端部に取り付けられ、
上記後側部材は、上記控え壁の端部に取り付けられている
ことを特徴とする建具枠。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載の建具枠の施工方法であって、
上記2つの縦枠材の上記前枠部と上記横枠材の上記前枠部とを組み立てて門型の前枠を形成する前枠組立工程と、
上記2つの縦枠材の上記後枠部と上記横枠材の上記後枠部とを組み立てて門型の後枠を形成する後枠組立工程と、
上記前枠組立工程で組み立てられた上記前枠を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける前枠施工工程と、
上記後枠組立工程で組み立てられた上記後枠を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける後枠施工工程とを備えている
ことを特徴とする建具枠の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口に設置され、建具が取り付けられる建具枠及び建具枠の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の開口に建具を取り付ける場合、通常は、壁の施工後、クロスを貼る前に、開口に建具枠を設置し、その後、壁にクロスを貼りつける。しかしながら、壁及びクロスの施工作業と建具枠の設置作業とは、施工者が異なることが多く、上記工程順では、作業に無駄が多かった。そこで、従来、壁の仕上げ(クロス)施工後に設置可能な建具枠が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された建具枠は、左右の縦枠材と上方の横枠材とを有し、3つの枠材がそれぞれ略コ字形状の断面を有するように形成されている。建具枠をこのような形状とすることにより、建具枠によって壁の端部(開口の周囲)と共にクロスの端部も覆われることとなるため、建具枠の設置後に壁にクロスを貼り付け、隙間をコーキングで埋める等の作業を行うことなく、クロス施工後の壁の開口部に建具枠を設置することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-70426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記建具枠では、3つの枠材の断面がコ字形状であるため、それぞれ別個に開口部に取り付ける必要があった。また、上記建具枠では、枠材を開口部に取り付ける際に、縦枠材と上方枠材とが垂直に組み立てられるように角度を調整する必要もあり、設置作業を容易に行うことができなかった。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的は、クロス施工後に設置可能で設置容易な建具枠と建具枠の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明では、建具枠の3つの枠材を、それぞれ前後に見切部を有するように構成すると共に、それぞれ前後に分離された2つの部材で構成することとした。
【0008】
具体的には、第1の発明は、上下方向及び左右方向に延びる壁の開口に設置される建具の建具枠を前提とするものである。
【0009】
そして、第1の発明は、上記開口の左端及び右端を区画する上記壁の端部に取り付けられる2つの縦枠材と、上記開口の上端を区画する上記壁の端部に取り付けられる横枠材とを備え、上記2つの縦枠材及び上記横枠材は、それぞれ前側部材と該前側部材の後側に設けられる後側部材とからなり、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記前側部材は、上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う前枠部と、上記前枠部の前側に設けられ、上記前枠部の前側と上記前枠部が取り付けられる上記壁の端部の前面とを覆う第1見切部とを有し、上記後側部材は、上記開口内に設けられて取り付けられる上記壁の端部の端面を覆う後枠部と、上記後枠部の後側に設けられ、上記後枠部の後側と上記後枠部が取り付けられる上記壁の端部の後面とを覆う第2見切部とを有し、上記2つの縦枠材の上記前枠部及び上記横枠材の上記前枠部は、上記2つの縦枠材の上記前枠部の上端部が上記横枠材の上記前枠部によって連結され、上記2つの縦枠材の上記後枠部及び上記横枠材の上記後枠部は、上記2つの縦枠材の上記後枠部の上端部が上記横枠材の上記後枠部によって連結されていることを特徴とするものである。
【0010】
第1の発明では、建具枠の3つの枠材が、開口内に設けられる枠部の前後に設けられて、枠部と壁の端部の前後の面をそれぞれ一体的に覆う2つの見切部を有するように構成されている。そのため、建具枠によって開口を区画する壁の端部と共にクロスの端部も覆われることとなるため、建具枠の設置後に壁にクロスを貼り付け、隙間をコーキングで埋める等の作業を行うことなく、クロス施工後の壁の開口に建具枠を設置することが可能となる。
【0011】
また、第1の発明では、建具枠の3つの枠材を、前後に分離された前側部材と後側部材とで構成し、3つの枠材の前側部材の前枠部と後側部材の後枠部をそれぞれ門型に連結することとしている。そのため、第1の発明によれば、前後に見切部を有する建具枠であっても、3つの枠材の前枠部及び後枠部を門型に組み立ててから開口に設置することができる。従って、第1の発明によれば、3つの枠材を個別に壁の端部に取り付ける際に枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がないため、容易に建具枠を開口に設置することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記第1見切部は、上記前枠部と一体に形成され、上記第2見切部は、上記後枠部と別体に形成され、上記後枠部は、ビスによって上記前枠部又は上記壁の端部に取り付けられ、上記ビスは、頭部が上記第2見切部によって覆われる位置に打ち込まれていることを特徴とするものである。
【0013】
第2の発明では、建具枠の3つの枠材が有する第2見切部が、壁の端部の後面(クロスの端部)を覆う役割を有するだけでなく、後枠部を取り付けるためのビスを隠す役割も果たす。このような構成によれば、建具枠の施工後、後枠部を取り付けるためのビスが第2見切部によって隠された意匠性に優れた建具枠を提供することができる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記第2見切部は、上記第1見切部と長さ及び幅が等しく、前後方向において上記第1見切部と重なる位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
第3の発明では、後枠部と別体に形成された第2見切部が、前枠部と一体に形成された第1見切部と同じ大きさに形成されて、前後方向に重なる位置に設けられている。このような構成によれば、建具枠を前側から見たときと後側から見たときの意匠が同様で統一感のあるものとなるため、建具枠の意匠性を向上することができる。また、2つの見切部が前後方向に重なることにより、建具枠の各枠材の内面における段差が少なくなる点からも建具枠の意匠性を向上することができる。
【0016】
第4の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記後側部材は、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記建具枠との隙間を後側から覆う遮蔽部をさらに有し、上記遮蔽部は、上記後枠部と一体に形成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第4の発明では、建具枠の3つの枠材が、それぞれ遮蔽部を有するように構成されているため、建具が開口を閉鎖する位置にあるときに建具と建具枠との間の隙間が遮蔽部によって後側から覆われる。よって、第4の発明によれば、建具と建具枠との間の隙間からの明かり漏れを抑制することができる。また、遮蔽部は、後枠部と一体に形成されているため、建具枠の3つの枠材の後枠部を門型に組み立てて開口に設置するだけで、建具枠の3つの枠材の遮蔽部も開口内に設けることができる。
【0018】
第5の発明は、第1~第3のいずれか1つの発明において、上記2つの縦枠材及び上記横枠材のそれぞれにおいて、上記後側部材は、上記後枠部と別体に形成され、上記第2見切部と該第2見切部の内端部から前方に延びて上記後枠部と係合する係合部とが一体に形成されてなる見切部材と、上記後枠部と別体に形成され、上記建具が上記開口を閉鎖する位置にあるときに上記建具と上記建具枠との隙間を後側から覆う遮蔽部材とをそれぞれ有し、上記後枠部の後面と内面との角部には、上記係合部が嵌まる切り欠きが形成され、上記遮蔽部材は、上記切り欠きを覆うように上記後枠部の内面に固定され、上記見切部材は、上記係合部が上記後枠部と上記遮蔽部材との間に挟み込まれた状態で上記後枠部及び上記壁の端部に固定されていることを特徴とするものである。
【0019】
第5の発明では、建具枠の3つの枠材が、それぞれ遮蔽部材を有するように構成されているため、建具が開口を閉鎖する位置にあるときに建具と建具枠との間の隙間が遮蔽部材によって後側から覆われる。よって、第5の発明によれば、建具と建具枠との間の隙間からの明かり漏れを抑制することができる。また、第5の発明では、遮蔽部材は、後枠部の切り欠きを覆うように後枠部の内面に固定され、切り欠きに嵌まる見切部材の係合部を後枠部とで挟持している。つまり、第5の発明では、遮蔽部材は、明かり漏れを抑制する役割を有するだけでなく、第2見切部を有する見切部材の係合部を後枠部とで挟持する役割を兼ねている。このような構成によれば、第2見切部を所望の位置に容易に取り付けることができる。
【0020】
第6の発明は、第1~第5のいずれか1つの発明において、上記開口は、上記壁の一部を構成する控え壁によって左右方向の一方側の後側の領域が閉塞された上記建具として引戸が取り付けられる引戸用の開口であり、上記引戸の戸尻側に設置される上記縦枠材では、上記前側部材は、上記開口の上記控え壁の前側の領域の左右方向の上記一方側の端を区画する上記壁の端部に取り付けられ、上記後側部材は、上記控え壁の端部に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0021】
第6の発明では、戸尻側の縦枠材の前側部材と後側部材とを異なる壁の端部に取り付けることとしている。具体的には、戸尻側の縦枠材の前側部材を、開口の控え壁の前側の領域の戸尻側端を区画する壁の端部に取り付け、後側部材を控え壁の端部に取り付けることとしている。このように戸尻側の縦枠材の前側部材と後側部材とを異なる壁の端部に取り付けることにより、引戸用の開口に対しても上記構成の建具枠を適用することができる。また、前側部材と後側部材とが異なる壁の端部に取り付けられる戸尻側の縦枠材だけでなく、横枠材と戸先側の縦枠材についても、戸尻側の縦枠材と同様に前側部材と後側部材とで枠材を構成することにより、建具枠の3つの枠材の前枠部と後枠部とをそれぞれ門型に組み立ててから開口に設置することができる。よって、第6の発明によれば、引戸用の開口に対しても容易に建具枠を開口に設置することができる。
【0022】
第7の発明は、第1~第6のいずれか1つの発明に係る建具枠の施工方法であって、上記2つの縦枠材の上記前枠部と上記横枠材の上記前枠部とを組み立てて門型の前枠を形成する前枠組立工程と、上記2つの縦枠材の上記後枠部と上記横枠材の上記後枠部とを組み立てて門型の後枠を形成する後枠組立工程と、上記前枠組立工程で組み立てられた上記前枠を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける前枠施工工程と、上記後枠組立工程で組み立てられた上記後枠を、上記開口を区画する上記壁の端部に取り付ける後枠施工工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0023】
第7の発明によれば、開口に設置する前に、建具枠の3つの枠材の前枠部と後枠部とを予め組み立てて門型の前枠と後枠とした上で開口に設置することとしている。このような施工方法によれば、従来の建具枠のように3つの枠材を個別に壁の端部に取り付ける際に枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がない。よって、第7の発明によれば、前後に見切部を有する建具枠であっても容易に建具枠を開口に設置することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明した如く、本発明によると、建具枠の3つの枠材を、それぞれ前後に見切部を有するように構成すると共に、それぞれ前後に分離された2つの部材で構成することとしたため、クロス施工後に設置可能で設置容易な建具枠を提供することができる。
【0025】
また、本発明によると、開口に設置する前に、建具枠の3つの枠材の前枠部と後枠部とを予め組み立てた上で開口に設置することとしたため、クロス施工後に設置可能で設置容易な建具枠の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る建具枠を備えた建具装置の正面図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る建具枠を備えた建具装置の背面図である。
図3図3は、図1の建具装置の横断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV線断面図である。
図5図5は、図1のV-V線断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態2に係る建具枠を備えた建具装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0028】
《発明の実施形態1》
-建具装置の概略構成-
図1は、壁1の開口2に設置された本発明の実施形態1に係る建具枠10を備えた建具装置100の正面図、図2は建具装置100の背面図である。以下では、説明の便宜上、図1の左側、右側、上側、下側を、それぞれ「左」、「右」、「上」、「下」として説明する。また、図1の紙面直交方向において手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0029】
図1図5に示すように、壁1には、正面視において矩形状の切り欠きに控え壁40が形成されることにより、右後側の領域が閉塞された引戸用の開口2が形成されている。開口2は、左右方向の幅の広い前側領域と、控え壁40によって前側領域よりも左右方向の幅が狭くなるように形成された後側領域とで構成され、平面視においてL字形状に形成されている。
【0030】
壁1は、開口2の左右両側に位置する躯体としての柱3,3と、開口2の上側に位置して柱3,3間に横架された躯体としてのまぐさ4と、複数の壁下地材5,…,5とを有している。壁1は、柱3及びまぐさ4からなる壁1の躯体の前後両側に、複数の壁下地材5,…,5が施工された大壁構造となっている。
【0031】
-建具装置の詳細構成-
本実施形態1では、建具装置100は、控え壁40と、引戸(建具)60と、壁1の開口2に設置されて引戸60が組み込まれる建具枠10とを備えている。
【0032】
[控え壁]
図2及び図4に示すように、控え壁40は、控え壁下地41と固定部材42とを備え、固定部材42を用いて床と壁1の端部とに取り付けた控え壁下地41の前面及び後面にクロスを貼り付けることによって形成されている。
【0033】
控え壁下地41は、壁下地材5よりも分厚い板状体で構成され、引戸60の戸尻側に位置する右端部及び上端部の前側に、矩形状の断面を有する切り欠き41aが形成されている。切り欠き41aは、控え壁下地41の右端部及び上端部においてそれぞれ長さ方向の一端から他端に亘って形成されている。控え壁下地41の右端部及び上端部の切り欠き41aの後側部分は、控え壁下地41が取り付けられる壁1に向かって延びるつば部41bとなっている。切り欠き41aは、各つば部41bが、壁下地材5と同じ厚さになる大きさに形成されている。
【0034】
また、控え壁下地41の下端部の後面には、固定部材42の後側部分が嵌まる切り欠き41cが形成されている。切り欠き41cは、固定部材42の後側部分が嵌め込まれた際に、固定部材42の後面と控え壁下地41の後面とが面一となるように、固定部材42の後側部分の厚さと等しい深さ及び固定部材42の後側部分の大きさと等しい大きさに形成されている。
【0035】
さらに、控え壁下地41の端部の後面には、後述する縦枠材12の後側枠部材32を控え壁40の端部に取り付けるためのビス46の頭部が収容される溝41dが形成されている。溝41dは、控え壁下地41の上端から下端に亘って延びている。
【0036】
固定部材42は、水平板部42aと鉛直板部42bとを有するL型アルミチャネルによって構成されている。固定部材42(水平板部42a及び鉛直板部42b)は、控え壁下地41の左端から切り欠き41aの底面までの長さと同様の長さに形成されている。固定部材42は、水平板部42aの上方から床面に向かってビスを打ち込むことにより、控え壁40を設置する床面に固定されている。固定部材42は、水平板部42aの後端部から上方に立ち上がる鉛直板部42bの後面が、壁1の後面と面一となる位置に設けられている。固定部材42の鉛直板部42bには、控え壁下地41の下端部が固定されている。固定部材42の鉛直板部42bは、控え壁下地41の切り欠き41cに嵌め込まれた状態で控え壁下地41と固定されており、固定部材42の後面と控え壁下地41の後面とが面一となる。
【0037】
控え壁40は、固定部材42を床面に固定した後、控え壁下地41を固定部材42と壁1の端部に固定した上で、控え壁下地41の前面及び後面にクロスを貼り付けることによって施工される。
【0038】
具体的には、固定部材42の水平板部42aをビス(図示省略)で床面に固定する。そして、控え壁下地41を、固定部材42の鉛直板部42bと壁1の端部とにビス(図示省略)で固定する。
【0039】
なお、控え壁下地41が取り付けられる壁1の端部(開口2の右側端部と、開口2の上方端部の控え壁下地41が取り付けられる範囲)では、躯体の後側の壁下地材5が、内側端面(開口2側の端面)が躯体の内側端面よりも外側(開口2から離れる側)に位置付けられるように配置され、躯体の後面を露出させている。
【0040】
控え壁下地41は、つば部41bの前面が壁1の端部の露出した躯体の後面に当接し、切り欠き41cに固定部材42の後側部分が嵌まる位置に配置された後、ビス45で固定部材42の後側部分と壁1の端部とに固定される。控え壁下地41をこのような位置に配置して固定することにより、控え壁下地41の後面は、壁1の端部の後面(躯体の後側の壁下地材5の後面)及び固定部材42の後面と面一になる。そして、面一に配置された控え壁下地41の後面、壁1の後面及び固定部材42の後面に一体的にクロスが貼り付けられる。同様に、控え壁下地41の前面にもクロスを貼り付ける。以上の作業により、控え壁40が施工される。
【0041】
[引戸]
引戸60は、前面及び後面に開閉操作用の取っ手61が取り付けられ、建具枠10の上部(横枠材13)に取り付けられた吊り装置62によって左右方向に移動可能に吊り下げられている。吊り装置62は、建具枠10の横枠材13の下端面に形成されたスライド溝31e内に設けられている。また、引戸60の下端部には、床面に取り付けられたガイド64が嵌め込まれるガイド溝63が形成されている。ガイド溝63は、下方の床面に向かって開口し、引戸60の戸先側端部から戸尻側の端面に亘って形成されている。引戸60は、下端部のガイド溝63にガイド64が嵌まり込むように設置される。ガイド64は、引戸60を左右方向に移動させる際に、引戸60の下端部が前後方向に振れずに、一直線上に移動するように引戸60を案内する。
【0042】
[建具枠]
本発明の特徴は、建具枠10にある。建具枠10は、開口2を区画する壁1の端部(控え壁40の端部を含む)に取り付けられている。なお、本実施形態1では、壁1の躯体(柱3,3とまぐさ4)の内面(開口2側の面)にはスペーサ7が取り付けられている。スペーサ7は、壁1の厚さ以下の幅を有する厚さ10~20mmの長尺の木質板材からなっている。建具枠10は、スペーサ7を含む壁1の端部に取り付けられている。なお、スペーサ7の素材は、木質材料に限られず、ビスが貫通する素材であればいかなる素材であってもよい。また、スペーサ7は、複数の短尺の板材で構成されていてもよい。
【0043】
図1及び図2に示すように、建具枠10は、開口2の左端及び右端を区画する壁1の端部(控え壁40の端部を含む)に取り付けられる左右の縦枠材11,12と、開口2の上端を区画する壁1の端部に取り付けられる水平方向の横枠材13とを備えた三方枠である。
【0044】
縦枠材11,12及び横枠材13(以下、単に枠材11~13という。)は、いずれも例えば木質材からなっている。枠材11~13は、基本的には同様の構成部材で構成されている。
【0045】
図3図6に示すように、枠材11~13は、前側部材30Aと、後側部材30Bとを備えている。引戸60の戸先側に設置される縦枠材11では、前側部材30A及び後側部材30Bは、開口2の左端を区画する壁1の端部に取り付けられ、横枠材13でも同様に、前側部材30A及び後側部材30Bは、開口2の上端を区画する壁1の端部に取り付けられている。一方、引戸60の戸尻側に設置される縦枠材12では、前側部材30Aは、開口2の前側領域(控え壁40の前側の領域)の戸尻側の端を区画する壁1の端部に取り付けられ、後側部材30Bは、壁1の端部の一部を構成する控え壁40の端部に取り付けられている。
【0046】
各枠材11~13において前側部材30A及び後側部材30Bは、基本的には同じ断面構造を有している。2つの縦枠材11,12では、前側部材30A及び後側部材30Bは、同じ長さに形成されているが、横枠材13では、後側領域に設けられる後側部材30Bが、前側領域に設けられる前側部材30Aよりも短尺(略半分程度の長さ)に形成されている。以下、各枠材11~13において基本的には同様に構成された前側部材30Aと後側部材30Bについて詳述する。
【0047】
[前側部材]
前側部材30Aは、前側枠部材31を有している。前側枠部材31は、断面がL字形状の長尺の木質板状部材からなる。前側枠部材31は、前枠部31aと、前側見切部(第1見切部)31bとを有している。
【0048】
前枠部31aは、壁1の厚さと控え壁40の厚さの差分と略等しい幅を有する厚さ20~30mmの断面略矩形状の長尺の板状部分である。前枠部31aは、壁1の端部の端面(本実施形態1では、スペーサ7の内面)に取り付けられて該端面の前側部分(開口2の前側領域に対応する部分)を覆っている。前枠部31aの内面(開口2側の面)、外面(壁1の端部側の面)、前面及び後面はそれぞれ平坦面に形成されている。
【0049】
前側見切部31bは、前枠部31aの厚さとスペーサ7の厚さを足し合わせた長さより大きい幅(35~55mm)を有する厚さ5~15mmの断面略矩形状の長尺の板状部分である。前側見切部31bは、前枠部31aの前側に設けられ、前枠部31aの前側と前枠部31aが取り付けられる壁1の端部の前面とを覆っている。前側見切部31bは、前枠部31aと一体に形成され、前側見切部31bの内面と前枠部31aの内面とは段差なく連続している。言い換えると、前側見切部31bの内面と前枠部31aの内面とで構成される前側枠部材31の内面は、平坦面に構成されている。
【0050】
なお、図4及び図5に示すように、横枠材13の前側枠部材31のみ、前枠部31aの下端面に、吊り装置62が内部にスライド自在に設けられるスライド溝31eが形成されている。
【0051】
前側枠部材31の前枠部31aの内面(開口2側の面)には、前側枠部材31を壁1の端部に取り付けるためのビス35を、前枠部31aの内面側から打ち込むためのビス穴31cが形成されている。ビス穴31cは、前枠部31aの内面の開口2を閉鎖する位置にある引戸60の戸先側端面が当接する部分に形成され、前枠部31aを厚さ方向に貫いている。ビス穴31cは、前枠部31aの内面側が壁1側よりも内径が大きい段付き構造(段堀構造)を有している。ビス穴31cは、大径部分にビス35の頭部全体を収容できる大きさに形成されている。ビス穴31cには、キャップ31dが設けられている。キャップ31dは、ビス35の締結後、ビス穴31cを閉塞して目立たなくするものであればいかなるものであってもよい。ビス穴31cは、複数設けられ、前枠部31aの長さ方向に間隔を空けて設けられている。前側枠部材31は、前枠部31aの内面側から壁1の端部に向かってビス35を打ち込むことにより、壁1の端部に取り付けられている。
【0052】
[後側部材]
後側部材30Bは、後側枠部材32と、見切部材33とを有している。後側枠部材32は、長尺の木質板状部材からなり、後枠部32aと、遮蔽部32bとを有している。
【0053】
後枠部32aは、控え壁40の厚さと略等しい幅を有し、前側枠部材31の前枠部31aと等しい厚さ(20~30mm)の断面略矩形状の長尺の板状部分である。後枠部32aは、壁1の端部の端面(本実施形態1では、スペーサ7の内面)に取り付けられて該端面の後側部分(開口2の後側領域に対応する部分)を覆っている。後枠部32aの内面(開口2側の面)、外面(壁1の端部側の面)、前面及び後面はそれぞれ平坦面に形成されている。後枠部32aの内面と後面との間の角部には、断面矩形状の切り欠き溝32cが形成されている。切り欠き溝32cは、幅(縦枠材11,12では左右方向の幅、横枠材13では上下方向の幅)が5~15mm、前後方向の深さが10~15mmとなるように形成されている。切り欠き溝32cは、後述する見切部材33の係合部33bが挿入されることにより、係合部33bと係合する。切り欠き溝32cの内側は遮蔽部32bによって閉塞されている。
【0054】
遮蔽部32bは、断面が矩形状の長尺の木質板状部材からなる。遮蔽部32bは、後側枠部材32の後枠部32aの幅よりも僅かに大きい幅を有する厚さ5~20mmの長尺の板状部材であり、後側枠部材32の後枠部32aの内側に後枠部32aと一体に形成されている。
【0055】
図3及び図5に示すように、遮蔽部32bの厚さ(5~20mm)は、引戸60が開口2を閉鎖する位置にあるときに引戸60と建具枠10との間に形成される隙間の間隔(3~8mm)よりも厚い。そのため、引戸60が開口2を閉鎖する位置にあるときに引戸60と建具枠10との間に形成される隙間が、遮蔽部32bによって後側から覆われるため、建具枠10と引戸60との間の隙間からの明かり漏れが抑制される。つまり、遮蔽部32bは、建具枠10と引戸60との間の隙間からの明かり漏れを抑制する役割を有している。
【0056】
また、図3に示すように、右側の縦枠材12の後側枠部材32のみ、後枠部32a及び遮蔽部32bの他に、前側見切部(第3見切部)32dを有している。前側見切部32dは、幅20~25mmを有する厚さ6mm以下の断面略矩形状の長尺の板状部分である。前側見切部32dは、後枠部32aの前側に設けられ、後枠部32aの前側と後枠部32aが取り付けられる壁1の端部(控え壁下地41の端部)の前面とを覆っている。前側見切部32dは、後枠部32aの前側に後枠部32aと一体に形成され、前側見切部32dの前面と遮蔽部32bの前面とは段差なく連続している。
【0057】
後側枠部材32は、後側からビス36,46を打ち込むことにより、前側枠部材31又は壁1の端部(控え壁40の端部を含む)に取り付けられている。具体的には、引戸60の戸先側の縦枠材11と横枠材13とでは、後側枠部材32は、後枠部32aの後面側から前方に向かってビス36を打ち込むことにより、前側枠部材31の前枠部31aに取り付けられている。また、引戸60の戸尻側の縦枠材12では、後側枠部材32は、控え壁下地41の溝41d内から斜め前方の後側枠部材32に向かってビス46を打ち込むことにより、控え壁40の端部(控え壁下地41の端部)に取り付けられている。後側枠部材32を前側枠部材31又は壁1の端部に取り付けるためのビス36,46は、頭部が見切部材33の後側見切部33aによって覆われる位置に打ち込まれている。
【0058】
見切部材33は、断面がL字形状の長尺の木質板状部材からなる。見切部材33は、後側見切部(第2見切部)33aと係合部33bとを有している。後側見切部33aは、前側見切部31bと等しい長さ及び幅(35~55mm)を有する厚さ5~15mmの長尺の板状部分であり、後側枠部材32の後枠部32aの後側に設けられ、後枠部32aの後側と後枠部32aが取り付けられる壁1の端部の後面とを覆っている。係合部33bは、後側見切部33aの内側端部から前側に突出する突出高さが10~15mmで厚さ5~15mmの長尺の板状部分であり、後側枠部材32の後枠部32aの切り欠き溝32cに挿入される。係合部33bは、厚さが切り欠き溝32cの幅と略等しくなるように形成されている。
【0059】
見切部材33は、係合部33bが後側枠部材32の切り欠き溝32cに挿入された状態で、接着剤及びピンネイル等の小径の釘部材で、壁1の端部及び後側枠部材32に固定されている。なお、前側枠部材31の前側見切部31bと見切部材33の後側見切部33aとは、長さ及び幅が等しく、見切部材33は、係合部33bを後側枠部材32の切り欠き溝32cに挿入すると、見切部材33の内面(後側見切部33aの内面と係合部33bの内面)が前側枠部材31の内面と同一平面上に位置付けられ、前側見切部31bと後側見切部33aとが前後方向において重なる位置に設けられるように構成されている。
【0060】
なお、係合部33bの前後方向の突出高さは、切り欠き溝32cの前後方向の深さよりも低くなるように形成されている。このような構成により、係合部33bの切り欠き溝32c内への挿入長さを変えることができ、壁1の厚さが前側枠部材31の前枠部31aの幅と後側枠部材32の後枠部32aの幅を足し合わせた長さよりも厚い場合にも、係合部33bを切り欠き溝32c内に浅く挿入することにより、枠材11~13を壁1の端部に取り付けることができる。
【0061】
-建具枠の施工方法-
次に、建具枠10の施工方法について説明する。
【0062】
まず、枠材11~13の前側枠部材31を組み立てて門型の前枠を形成する(前枠組み立て工程)。具体的には、左右の縦枠材11,12の前側枠部材31の上端部間に、横枠材13の前側枠部材31を、横枠材13の前側枠部材31の木口面が左右の縦枠材11,12の前側枠部材31の上端部の内側面に当接するように差し渡し、ビス(図示省略)で固定する。このようにして枠材11~13の前側枠部材31は、いわゆる縦勝ちの配置で門型に組み立てられる。
【0063】
前枠組み立て工程の後、組み立てられた門型の前枠を、開口2を区画する壁1の端部に取り付ける(前枠施工工程)。具体的には、まず、前枠を、壁1の前側から開口2に向かって後退させて、各前側枠部材31の前側見切部31bの後面が壁1の端部の前面に当接する位置に配置する。次に、各前側枠部材31と壁1の躯体(柱3及びまぐさ4)との間に、スペーサ7を差し込む。スペーサ7は、壁1の後側から差し込む。そして、各前側枠部材31の前枠部31aの内面側から壁1の端部に向かってビス穴31c内にビス35を打ち込み、各前側枠部材31を壁1の端部に取り付ける(固定する)。ビス35を打ち込んだ後、ビス穴31cはキャップ31dで閉塞する。
【0064】
次に、枠材11~13の後側枠部材32を組み立てて門型の後枠を形成する(後枠組み立て工程)。具体的には、左右の縦枠材11,12の後側枠部材32の上端部間に、横枠材13の後側枠部材32を、横枠材13の後側枠部材32の木口面が左右の縦枠材11,12の後側枠部材32の上端部の内側面に当接するように差し渡し、ビス(図示省略)で固定する。このようにして枠材11~13の後側枠部材32は、いわゆる縦勝ちの配置で門型に組み立てられる。
【0065】
後枠組み立て工程の後、組み立てられた門型の後枠を、開口2を区画する壁1の端部(控え壁40の端部を含む)に取り付ける(後枠施工工程)。具体的には、まず、後枠を、壁1の後側から開口2に向かって前進させて、左側の縦枠材11及び横枠材13の各後側枠部材32の後枠部32aの前面が前側枠部材31の前枠部31aの後面に当接し、右側の縦枠材12の後側枠部材32の後枠部32aが控え壁40の左端面を覆う位置に配置する。このとき、右側の縦枠材12の後側枠部材32の前側見切部32dが控え壁40の端部に引っ掛からないように、右側の縦枠材12の後側枠部材32が左側の縦枠材11の後側枠部材32よりも前側に位置するように後枠を斜め姿勢で前進させる。そして、後枠の各後側枠部材32にビス36,46を打ち込み、後枠を前枠及び控え壁40に取り付ける(固定する)。具体的には、左側の縦枠材11及び横枠材13の各後側枠部材32は、後枠部32aの後面側から前側枠部材31の前枠部31aに向かってビス36を打ち込むことにより、前側枠部材31に取り付けられる(固定される)。一方、右側の縦枠材12の後側枠部材32は、控え壁40の後面側から後枠部32aに至るように左斜め前方に向かってビス46を打ち込むことにより、控え壁40の端部に取り付けられる(固定される)。なお、本実施形態1では、ビス46は、控え壁下地41の端部の後面に形成された溝41d内に頭部が収容されるように溝41dに向かって打ち込まれる。
【0066】
後枠施工工程の後、後枠の各後側枠部材32にそれぞれ見切部材33を取り付ける(見切施工工程)。具体的には、まず、見切部材33の壁1の端部及び後側枠部材32との当接部分に接着剤を塗布する。そして、見切部材33を、壁1の後側から前進させて、見切部材33の係合部33bを後側枠部材32の切り欠き溝32cに挿入し、見切部材33の後側見切部33aが壁1の端部の後面に当接する位置に配置する。その後、見切部材33に対して後側からピンネイル等の小径の釘部材を打ち込むことにより、見切部材33を壁1の端部と後側枠部材32とに取り付ける(固定する)。
【0067】
以上の工程により、建具枠10が開口2に施工される。
【0068】
-実施形態1の効果-
本実施形態1の建具枠10では、建具枠10を構成する3つの枠材11~13が、開口2内に設けられる前枠部31aと後枠部32aとからなる枠部の前後に設けられて、枠部と壁1の端部の前後の面をそれぞれ一体的に覆う2つの見切部(前側見切部31bと後側見切部33a)を有するように構成されている。そのため、建具枠10によって開口2を区画する壁1の端部と共にクロスの端部も覆われることとなるため、従来の建具枠のように、建具枠の設置後に壁にクロスを貼り付け、隙間をコーキングで埋める等の作業を行うことなく、クロス施工後の壁1の開口2に建具枠10を設置することが可能となる。
【0069】
また、本実施形態1では、建具枠10の3つの枠材11~13を、前後に分離された前側部材30Aと後側部材30Bとで構成し、3つの枠材11~13の前側部材30Aの前側枠部材31(前枠部31aを備える)と後側部材30Bの後側枠部材32(後枠部32aを備える)をそれぞれ門型に連結することとしている。そのため、本実施形態1によれば、前後に見切部31b,33aを有する建具枠10であっても、3つの枠材11~13の前側枠部材31及び後側枠部材32を門型に組み立ててから開口に設置することができる。従って、本実施形態1によれば、従来の建具枠のように、3つの枠材を個別に壁の端部に取り付ける際に枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がないため、容易に建具枠10を開口2に設置することができる。
【0070】
また、本実施形態1では、後側枠部材32(後枠部32aを備える)を前側枠部材31又は壁1の端部(控え壁40の端部)に取り付けるためのビス36,46が、頭部が後側見切部33aによって覆われる位置に打ち込まれている。つまり、本実施形態1では、建具枠10の3つの枠材11~13が有する後側見切部33aが、壁1の端部の後面(クロスの端部)を覆う役割を有するだけでなく、後枠部32aを取り付けるためのビス36,46を隠す役割も果たす。このような構成によれば、建具枠10の施工後、後側枠部材32を取り付けるためのビス36,46が後側見切部33aによって隠された意匠性に優れた建具枠10を提供することができる。
【0071】
また、本実施形態1では、後枠部32aと別体に形成された後側見切部33aが、前枠部31aと一体に形成された前側見切部31bと同じ大きさに形成されて、前後方向に重なる位置に設けられている。このような構成によれば、建具枠10を前側から見たときと後側から見たときの意匠が同様で統一感のあるものとなるため、建具枠10の意匠性を向上することができる。また、2つの見切部31b,33aが前後方向に重なることにより、建具枠10の各枠材11~13の内面における段差が少なくなる点からも建具枠10の意匠性を向上することができる。
【0072】
また、実施形態1では、建具枠10の3つの枠材11~13が、それぞれ遮蔽部32bを有するように構成されているため、引戸60が開口2を閉鎖する位置にあるときに引戸60と建具枠10との間の隙間が遮蔽部32bによって後側から覆われる。よって、本実施形態1によれば、引戸60と建具枠10との間の隙間からの明かり漏れを抑制することができる。また、遮蔽部32bは、後枠部32aと一体に形成されているため、建具枠10の3つの枠材11~13の後側枠部材32(後枠部32aを備える)を門型に組み立てて開口2に設置するだけで、建具枠10の3つの枠材11~13の遮蔽部32bも開口2内に設けることができる。
【0073】
また、本実施形態1では、開口2は、壁1の一部を構成する控え壁40によって左右方向の一方側(本実施形態1では右側)の後側の領域が閉塞された引戸60が取り付けられる引戸用の開口であり、引戸60の戸尻側に設置される縦枠材12では、前側部材30Aは、開口2の控え壁40の前側の領域の左右方向の上記一方側(本実施形態1では右側)の端を区画する壁1の端部(右側端部)に取り付けられ、後側部材30Bは、控え壁40の端部に取り付けられている。つまり、本実施形態1では、戸尻側の縦枠材12の前側部材30Aと後側部材30Bとを異なる壁1の端部に取り付けることとしている。本実施形態1では、このように戸尻側の縦枠材12の前側部材30Aと後側部材30Bとを異なる壁1の端部に取り付けることにより、引戸用の開口2に対しても上記構成の建具枠10を適用することができる。また、本実施形態1では、前側部材30Aと後側部材30Bとが異なる壁1の端部に取り付けられる戸尻側の縦枠材12だけでなく、横枠材13と戸先側の縦枠材11についても、戸尻側の縦枠材12と同様に前側部材30Aと後側部材30Bとで枠材を構成することにより、建具枠10の3つの枠材11~13の前側枠部材31と後側枠部材32とをそれぞれ門型に組み立ててから開口2に設置することができる。よって、本実施形態1によれば、引戸用の開口2に対しても容易に建具枠10を開口2に設置することができる。
【0074】
さらに、本実施形態1によれば、開口2に設置する前に、建具枠10の3つの枠材11~13の前側枠部材31と後側枠部材32とを予め組み立てて門型の前枠と後枠とした上で開口2に設置することとしている。このような施工方法によれば、従来の建具枠のように3つの枠材を個別に壁の端部に取り付ける際に枠材どうしの角度を調整しながら連結するという煩雑な作業を開口内で行う必要がない。よって、本実施形態1によれば、前後に見切部31b,33aを有する建具枠であっても容易に建具枠を開口2に設置することができる。
【0075】
《発明の実施形態2》
本発明に係る実施形態2は、実施形態1の建具装置100において、建具枠10の一部の構成を変更したものである。具体的には、実施形態2では、図6に示すように、枠材11~13の後側枠部材32は、遮蔽部を有さず、後側部材30Bは、後側枠部材32と、後側枠部材(後枠部)32とは別体に形成された遮蔽部材34とを有している。遮蔽部材34は、実施形態1の遮蔽部が、後側枠部材(後枠部)32とは別体に形成されたものである。互いに当接する後側枠部材(後枠部)32の内面と遮蔽部材34の外面とには、雇い実37を収容する実溝がそれぞれ形成されている。実溝は、後枠部材(後枠部)32及び遮蔽部材34の上端から下端に亘るように形成されている。雇い実37は、後枠部材(後枠部)32及び遮蔽部材34の実溝によって形成される空洞内に嵌まる大きさの板状部材によって形成されている。遮蔽部材34は、雇い実37と接着剤とによって後側枠部材(後枠部)32に取り付けられる。なお、遮蔽部材34の後枠部材(後枠部)32への取り付け手法は雇い実継ぎに限られない。ダボで接合することとしてもよく、雄実及び雌実を形成して接合することとしてもよい。
【0076】
このような構成の実施形態2の建具枠10によっても、実施形態1の建具枠10と同様の効果を奏することができる。
【0077】
また、実施形態2の建具枠10によれば、建具枠10の3つの枠材11~13が、それぞれ遮蔽部材34を有するように構成されているため、引戸60が開口2を閉鎖する位置にあるときに引戸60と建具枠10との間の隙間が遮蔽部材34によって後側から覆われるため、引戸60と建具枠10との間の隙間からの明かり漏れを抑制することができる。また、実施形態2では、遮蔽部材34は、後側枠部材(後枠部)32と別体に形成され、後側枠部材(後枠部)32の切り欠き溝(切り欠き)32cを覆うように後側枠部材(後枠部)32の内面に固定され、切り欠き32溝cに嵌まる見切部材33の係合部33bを後側枠部材(後枠部)32とで挟持している。つまり、実施形態2では、遮蔽部材34は、明かり漏れを抑制する役割を有するだけでなく、後側見切部33aを有する見切部材33の係合部33bを後側枠部材(後枠部)32とで挟持する役割を兼ねている。このような構成によれば、後側見切部33aを所望の位置に容易に取り付けることができる。
【0078】
《その他の実施形態》
上記実施形態1,2では、建具枠10を引戸用の開口2に設けていたが、本発明に係る建具枠10は、開戸用の開口にも設けることができる。建具枠10を開戸用の開口に設ける場合、実施形態1,2で用いた戸尻側の縦枠材12ではなく、実施形態1,2の戸先側の縦枠材11を左右反転させたものを、戸尻側の縦枠材12として用いればよい。また、建具枠10を開戸用の開口に設ける場合、後側部材30Bの後側枠部材32と見切部材33とが一体に形成されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、建物の開口に設置され、建具が取り付けられる建具枠及び建具枠の施工方法に有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 壁
2 開口
10 建具枠
11 縦枠材
12 縦枠材
12 横枠材
30A 前側部材
30B 後側部材
31a 前枠部
31b 前側見切部(第1見切部)
32a 後枠部
32b 遮蔽部
32c 切り欠き溝
33 見切部材
33a 後側見切部(第2見切部)
33b 係合部
34 遮蔽部材
36 ビス
40 控え壁
46 ビス
60 引戸(建具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6