(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】異種錠流出リスク管理システム、異種錠流出リスク管理方法及び収容体生産システム
(51)【国際特許分類】
B65B 57/00 20060101AFI20231020BHJP
B65B 57/10 20060101ALI20231020BHJP
B65B 9/04 20060101ALI20231020BHJP
G01N 21/85 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B65B57/00 A
B65B57/10 D
B65B9/04
G01N21/85 A
(21)【出願番号】P 2022154441
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2023-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】大谷 剛将
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-153803(JP,A)
【文献】特開2007-69949(JP,A)
【文献】特開2020-4367(JP,A)
【文献】特開2006-293922(JP,A)
【文献】特開2004-331107(JP,A)
【文献】特開2012-221124(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129526(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 57/00
B65B 9/00
G01N 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容される錠剤の品種を切換可能であるとともに、品種切換の度に、異なる錠剤が収容されてなる錠剤収容体を順次生産することが可能な収容体生産装置に適用される異種錠流出リスク管理システムであって、
前記収容体生産装置による前記錠剤収容体の生産順序に関する情報を含む生産スケジュールを管理するスケジュール管理手段と、
前記生産スケジュールに従って前記錠剤収容体を生産した場合において、次に生産される前記錠剤収容体に対し、該錠剤収容体の直前に生産される前記錠剤収容体に収容される錠剤が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入した前記錠剤収容体が前記収容体生産装置よりも後工程に流出するリスクを評価するリスク評価手段と、
前記リスク評価手段による評価結果に基づき、前記リスクを低減させるための処置を実行可能なリスク低減処置実行手段とを備えることを特徴とする異種錠流出リスク管理システム。
【請求項2】
前記収容体生産装置は、錠剤に関する良否判定を行う検査手段を有し、
前記リスク評価手段は、前記検査手段による錠剤の検査項目を踏まえて、前記リスクを評価可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【請求項3】
前記検査項目には、錠剤の色、形状、印刷、刻印及びスペクトルの少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項2に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【請求項4】
前記収容体生産装置は、錠剤を撮像する撮像手段を有し、
前記検査手段は、前記撮像手段により得られた画像データに基づき、錠剤に関する良否判定を行うように構成されており、
次に生産される前記錠剤収容体に係る錠剤の検査を行うための設定がなされた前記検査手段に対し、該錠剤収容体の直前に生産される前記錠剤収容体に係る錠剤の画像データを利用して生成した仮想異種錠画像データに基づく良否判定を実行させる検査シミュレーション実行手段を備え、
前記リスク評価手段は、前記検査シミュレーション実行手段が前記検査手段に対し前記仮想異種錠画像データに基づく良否判定を実行させたときの良否判定結果に基づき、前記リスクを評価可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【請求項5】
前記錠剤収容体は、容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容されてなるブリスタシートであり、
前記リスク評価手段は、次に生産される前記ブリスタシートの前記ポケット部のサイズと、該ブリスタシートの直前に生産される前記ブリスタシートに収容される錠剤のサイズとに基づき、前記リスクを評価可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【請求項6】
生産予定の複数の前記錠剤収容体についての情報に基づき該錠剤収容体の生産順序に関する情報を含む仮スケジュールを複数生成するとともに、該仮スケジュールに従って該錠剤収容体を生産した場合における前記リスク評価手段による評価結果に基づき、複数の前記仮スケジュールの中から、少なくとも前記リスクを最も低減可能となる前記生産スケジュールを導出可能に構成されたスケジュール導出手段を備え、
前記リスク低減処置実行手段は、前記リスクを低減させるための処置として、前記スケジュール導出手段により導出された前記生産スケジュールを利用した処置を実行可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の異種錠リスク管理システム。
【請求項7】
請求項1に記載の異種錠流出リスク管理システムと、
前記収容体生産装置とを備えた収容体生産システム。
【請求項8】
収容される錠剤の品種を切換可能であるとともに、品種切換の度に、異なる錠剤が収容されてなる錠剤収容体を順次生産することが可能な収容体生産装置に適用される異種錠流出リスク管理方法であって、
前記収容体生産装置による前記錠剤収容体の生産順序に関する情報を含む生産スケジュールに従って前記錠剤収容体を生産した場合において、次に生産される前記錠剤収容体に対し、該錠剤収容体の直前に生産される前記錠剤収容体に収容される錠剤が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入した前記錠剤収容体が前記収容体生産装置よりも後工程に流出するリスクを評価するリスク評価工程と、
前記リスク評価工程による評価結果に基づき、前記リスクを低減させるための処置を実行するリスク低減処置実行工程とを含むことを特徴とする異種錠流出リスク管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種錠が誤って混入した錠剤収容体が後工程に流出するリスクを低減させるためのシステム及び方法、並びに、該システムを備えた収容体の生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に医薬品や食料品等の分野においては、錠剤が収容されてなる錠剤収容体が広く用いられている。錠剤収容体としては、ブリスタシートや錠剤が充填されてなるボトル(瓶)などを挙げることができる。ブリスタシートは、錠剤が充填されるポケット部の形成された容器フィルムと、その容器フィルムに対しポケット部の開口側を密封するように取着されるカバーフィルムとから構成される。
【0003】
また、錠剤収容体は、収容体生産装置によって生産される。ブリスタシートを生産するための収容体生産装置であるブリスタ包装機は、例えば、帯状の容器フィルムにポケット部を形成する装置や、ポケット部に錠剤を充填する装置、容器フィルムにカバーフィルムを取着する装置などを備えている。
【0004】
ところで、一般に収容体生産装置は、収容される錠剤の品種を切換可能であるとともに、品種切換の度に、異なる錠剤が収容されてなる、異なる品種の錠剤収容体を順次生産することが可能に構成されている。ここで、生産する錠剤収容体の品種を切換えるにあたっては、直前に生産されていた錠剤収容体に係る錠剤が次に生産される錠剤収容体に対し、異種錠として誤って混入されることを防止すべく、収容体生産装置の清掃などが行われるが、それでも異種錠の混入が発生する可能性はある。
【0005】
そこで、異種錠の混入した錠剤収容体(以下、「異種錠収容体」という)が、収容体生産装置の後工程に流出することを防止すべく、収容体生産装置に設けられた検査装置によって、色や形状の異なる錠剤を異種錠として検出する手法が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。また、錠剤に係る領域の面積や分光分析を利用して、異種錠を検出する手法も知られている(例えば、特許文献2,3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-200595号公報
【文献】特開2011-112527号公報
【文献】特開2018-179568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、異種錠収容体が収容体生産装置よりも後工程に流出するリスクは低ければ低いほど好ましいところ、上述した各手法は、実際に錠剤の検査を行うことで異種錠を検出する手法に過ぎない。従って、これら手法において、流出リスクをより低減させるためには、従前行われていた検査項目とは別の検査項目についての検査を実行可能な新たな検査装置を追加するなどの必要がある。しかしながら、新たな検査装置の追加による流出リスクの低減にも限度がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、異種錠収容体が後工程に流出するリスクをより効果的に低減させることができる異種錠流出リスク管理システムなどを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を解決するのに適した各手段につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0010】
手段1.収容される錠剤の品種を切換可能であるとともに、品種切換の度に、異なる錠剤が収容されてなる錠剤収容体を順次生産することが可能な収容体生産装置に適用される異種錠流出リスク管理システムであって、
前記収容体生産装置による前記錠剤収容体の生産順序に関する情報を含む生産スケジュールを管理するスケジュール管理手段と、
前記生産スケジュールに従って前記錠剤収容体を生産した場合において、次に生産される前記錠剤収容体に対し、該錠剤収容体の直前に生産される前記錠剤収容体に収容される錠剤が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入した前記錠剤収容体が前記収容体生産装置よりも後工程に流出するリスクを評価するリスク評価手段と、
前記リスク評価手段による評価結果に基づき、前記リスクを低減させるための処置を実行可能なリスク低減処置実行手段とを備えることを特徴とする異種錠流出リスク管理システム。
【0011】
尚、スケジュール管理手段が管理する生産スケジュールは、オペレータ等によって予め入力されて記憶されたものであってもよいし、後述する手段6のように、スケジュール導出手段によって自動的に導出(生成)されるものであってもよい。
【0012】
また、「前記リスクを低減させるための処置」としては、例えばアラーム等を用いて生産スケジュールの変更を促す処置や、流出リスクをより低減可能な生産スケジュールを提示する処置、錠剤収容体の品種を切換える際に行われる収容体生産装置の清掃について、清掃時間をより長く確保することを促す処置などを挙げることができる。ここで、「流出リスクをより低減可能な生産スケジュールを提示する処置」は、予め記憶された複数の生産スケジュールの中から1又は複数の生産スケジュールを提示する処置や、生産スケジュールを自動的に導出して、その導出した生産スケジュールを提示する処置を含む。
【0013】
上記手段1によれば、リスク評価手段により、錠剤収容体の生産スケジュールを利用して、異種錠の混入した錠剤収容体(異種錠収容体)が収容体生産装置よりも後工程に流出するリスクを評価することができる。そして、リスク評価手段による評価結果に基づき、リスク低減処置実行手段により、前記リスクを低減させるための処置を実行することができる。このように錠剤収容体の生産スケジュールを利用するため、錠剤の検査のみによって異種錠を検出する構成と比べて、異種錠収容体の流出リスクをより効果的に低減させることができる。
【0014】
尚、通常、生産する錠剤収容体の品種を切換える度に収容体生産装置の清掃などが行われるため、次に生産される錠剤収容体に対し、この錠剤収容体の2つ以上前に生産された錠剤収容体に係る錠剤が誤って混入されるといった事態はほとんど生じない。この点に鑑み、リスク評価手段は、次に生産される錠剤収容体に対し、該錠剤収容体の直前に生産される錠剤収容体に収容される錠剤が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入した錠剤収容体が収容体生産装置よりも後工程に流出するリスクを評価する。従って、リスク評価に係る処理負担の低減を図ることができる。
【0015】
手段2.前記収容体生産装置は、錠剤に関する良否判定を行う検査手段を有し、
前記リスク評価手段は、前記検査手段による錠剤の検査項目を踏まえて、前記リスクを評価可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【0016】
上記手段2によれば、リスク評価手段は、検査手段による錠剤の検査項目を踏まえて、前記リスクを評価可能とされている。例えば、検査手段による錠剤の検査項目の中に「錠剤の色」のみが含まれる場合において、白色の錠剤aw1が収容された錠剤収容体Aw1を生産した後に、赤色の錠剤br2が収容された錠剤収容体Br2を生産するときには、錠剤収容体Br2の生産時に、検査手段によって白色の錠剤aw1を異種錠として検出可能であるため、リスク管理手段は、前記リスクが低いと評価する。一方、検査手段による錠剤の検査項目の中に「錠剤の色」のみが含まれる場合において、白色の錠剤aw1が収容された錠剤収容体Aw1を生産した後に、白色の錠剤bw2が収容された錠剤収容体Bw2を生産するときには、錠剤収容体Bw2の生産時に、検査手段によって錠剤aw1を異種錠として検出することが難しいため、リスク管理手段は、前記リスクが高いと評価する。このように検査手段による錠剤の検査項目を踏まえることで、前記リスクの評価を適切かつ容易に行うことができる。
【0017】
手段3.前記検査項目には、錠剤の色、形状、印刷、刻印及びスペクトルの少なくとも1つが含まれることを特徴とする手段2に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【0018】
上記手段3によれば、基本的には上記手段2と同様の作用効果が奏される。尚、前記リスクの評価をより適切に行うという点では、検査項目の数は多ければ多いほど好ましい。
【0019】
手段4.前記収容体生産装置は、錠剤を撮像する撮像手段を有し、
前記検査手段は、前記撮像手段により得られた画像データに基づき、錠剤に関する良否判定を行うように構成されており、
次に生産される前記錠剤収容体に係る錠剤の検査を行うための設定がなされた前記検査手段に対し、該錠剤収容体の直前に生産される前記錠剤収容体に係る錠剤の画像データを利用して生成した仮想異種錠画像データに基づく良否判定を実行させる検査シミュレーション実行手段を備え、
前記リスク評価手段は、前記検査シミュレーション実行手段が前記検査手段に対し前記仮想異種錠画像データに基づく良否判定を実行させたときの良否判定結果に基づき、前記リスクを評価可能に構成されていることを特徴とする手段2に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【0020】
上記手段4によれば、検査シミュレーション実行手段は、次に生産される錠剤収容体に係る錠剤の検査を行うための設定がなされた検査手段に対し、仮想異種錠画像データを利用した良否判定を行わせることができる。そして、リスク評価手段は、検査シミュレーション実行手段が検査手段に対し仮想異種錠画像データを用いた良否判定を行わせたときの良否判定結果に基づき、前記リスクを評価することができる。従って、検査手段による錠剤に対する良否判定を実際に行うことなく、前もって、検査手段による良否判定の結果として異種錠が適切に検出される(異種錠が不良と判定される)のか否かを確認することができる。これにより、前記リスクを一層適切に評価することができる。
【0021】
手段5.前記錠剤収容体は、容器フィルムに形成されたポケット部に錠剤が収容されてなるブリスタシートであり、
前記リスク評価手段は、次に生産される前記ブリスタシートの前記ポケット部のサイズと、該ブリスタシートの直前に生産される前記ブリスタシートに収容される錠剤のサイズとに基づき、前記リスクを評価可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の異種錠流出リスク管理システム。
【0022】
上記手段5によれば、リスク評価手段は、次に生産されるブリスタシートにおけるポケット部のサイズ(以下では、単に「ポケットサイズ」という)と、該ブリスタシートの直前に生産されるブリスタシートに係る錠剤のサイズ(以下では、単に「錠剤サイズ」という)とに基づき、前記リスクを評価することができる。例えば、ポケットサイズが錠剤サイズよりも小さい場合には、次に生産されるブリスタシートにおけるポケット部に対し、直前に生産されるブリスタシートに係る錠剤を収容することは物理的に不可能であるから、リスク評価手段は、前記リスクが低いと評価する。一方、例えば、ポケットサイズが錠剤サイズよりも大きい場合には、次に生産されるブリスタシートにおけるポケット部に対し、直前に生産されるブリスタシートに係る錠剤を収容することが可能であるため、リスク評価手段は、前記リスクが高いと評価する。従って、上記手段5によれば、前記リスクをより一層適切に評価することができる。
【0023】
また、上記手段5によれば、ポケット部や錠剤のサイズに基づき前記リスクを評価するから、収容体生産装置が検査手段を備えないものであっても、前記リスクを評価することができ、また、その評価結果に基づき前記リスクを低減させるための処置を行うことができる。
【0024】
手段6.生産予定の複数の前記錠剤収容体についての情報に基づき該錠剤収容体の生産順序に関する情報を含む仮スケジュールを複数生成するとともに、該仮スケジュールに従って該錠剤収容体を生産した場合における前記リスク評価手段による評価結果に基づき、複数の前記仮スケジュールの中から、少なくとも前記リスクを最も低減可能となる前記生産スケジュールを導出可能に構成されたスケジュール導出手段を備え、
前記リスク低減処置実行手段は、前記リスクを低減させるための処置として、前記スケジュール導出手段により導出された前記生産スケジュールを利用した処置を実行可能に構成されていることを特徴とする手段1に記載の異種錠リスク管理システム。
【0025】
上記手段6によれば、スケジュール導出手段によって、流出リスクの低い生産スケジュールを自動的に導出することができ、また、リスク低減処置実行手段によって、その導出した生産スケジュールを利用した処置(例えば、導出した生産スケジュールの提示など)を行うことができる。従って、前記リスクの低減をより一層図ることができる。また、オペレータ等による生産スケジュールの作成が必須ではなくなるため、利便性を高めることができる。
【0026】
手段7.手段1に記載の異種錠流出リスク管理システムと、
前記収容体生産装置とを備えた収容体生産システム。
【0027】
上記手段7によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0028】
手段8.収容される錠剤の品種を切換可能であるとともに、品種切換の度に、異なる錠剤が収容されてなる錠剤収容体を順次生産することが可能な収容体生産装置に適用される異種錠流出リスク管理方法であって、
前記収容体生産装置による前記錠剤収容体の生産順序に関する情報を含む生産スケジュールに従って前記錠剤収容体を生産した場合において、次に生産される前記錠剤収容体に対し、該錠剤収容体の直前に生産される前記錠剤収容体に収容される錠剤が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入した前記錠剤収容体が前記収容体生産装置よりも後工程に流出するリスクを評価するリスク評価工程と、
前記リスク評価工程による評価結果に基づき、前記リスクを低減させるための処置を実行するリスク低減処置実行工程とを含むことを特徴とする異種錠流出リスク管理方法。
【0029】
上記手段8によれば、上記手段1と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0030】
尚、上記各手段に係る技術事項を適宜組み合わせてもよい。例えば、上記手段2又は3に係る技術事項と、上記手段4~6に係る技術事項のうちの少なくとも1つとを組み合わせてもよい。また、例えば、上記手段7又は8に係る技術事項に対し、上記手段1~6に係る技術事項のうちの少なくとも1つを組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図5】収容体生産システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図6】PTP包装機の概略構成を示す模式図である。
【
図7】検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】第三検査装置における検査用カメラの概略構成を示す模式図である。
【
図9】各検査装置にて行われる錠剤の検査項目を示す表図である。
【
図10】検査データ管理装置に記憶される各種データを示す表図である。
【
図13】表示装置にて表示される情報の一例を示す模式図である。
【
図14】検査シミュレーション処理のフローチャートである。
【
図15】品種K1から品種K2へと切換えるときのリスク点数を説明するための説明図である。
【
図16】品種K2から品種K3へと切換えるときのリスク点数を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず、PTPシートの構成について説明する。
【0033】
図1,2に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルム4とを有している。本実施形態では、PTPシート1が「錠剤包装体」及び「ブリスタシート」に相当する。
【0034】
容器フィルム3は、例えばPP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の透明又は半透明の熱可塑性樹脂材料により形成されている。一方、カバーフィルム4は、例えばポリプロピレン樹脂等からなるシーラントが表面に設けられた不透明材料(例えばアルミニウム箔等)により構成されている。勿論、各フィルム3,4の材料は、これらに限定されるものではなく、他の材質のものを採用してもよい。
【0035】
PTPシート1は、帯状の容器フィルム3及び帯状のカバーフィルム4から形成された帯状のPTPフィルム6(
図4参照)がシート状に打抜かれることによって製造されるものであり、平面視略矩形状に形成されている。
【0036】
また、PTPシート1には、その長手方向に沿って配列された5個のポケット部2からなるポケット列が、その短手方向に2列形成されている。つまり、計10個のポケット部2が形成されている。また、各ポケット部2には、錠剤5が1つずつ収容されている。錠剤5は、PTPシート1の表側(ポケット部2の突出側)から見たときに、ポケット部2を通して視認可能とされている。
【0037】
錠剤5は、平面視円形状をなす円盤状の素錠であって、側面5aと、該側面5aを挟む表面5b及び裏面5cとを有した構成となっている。そして、表面5b及び裏面5cには、錠剤5に関する製品情報を示す文字や記号、数字、図形などが印刷されてなる印刷部5k(
図3参照)が設けられている。錠剤5に関する製品情報としては、「製品名」、「含量」、「剤形」、「製造元」及び「ロット番号」などを挙げることができる。
【0038】
尚、上述したPTPシート1の構成はあくまで一例であり、PTPシート1の構成は適宜変更可能である。従って、例えば、ポケット部2の数や形状、ポケット部2に収容される錠剤5の品種(色、形状、印刷部5kの有無及び成分など)は適宜変更され得る。
【0039】
次に、
図5などを参照して、PTPシート1を製造するためのPTP包装機10と、該PTP包装機10に適用される異種錠流出リスク管理システム70(以下、単に「流出リスク管理システム70」という)とを備えた収容体生産システム100の構成について説明する。本実施形態では、PTP包装機10が「収容体生産装置」を構成する。まず、PTP包装機10について説明する。
【0040】
PTP包装機10は、ポケット部2に収容される錠剤5の品種などを切換可能であるとともに、品種切換の度に、異なる錠剤5が収容されてなるPTPシート1を順次生産することが可能な装置である。但し、錠剤5の品種を切換えて、製造されるPTPシート1の品種を変更する際には、PTP包装機10に対し、清掃や部品(例えば、後述するポケット部形成装置16の構成部品など)の交換などが行われる。
【0041】
図6に示すように、PTP包装機10の最上流側では、帯状の容器フィルム3の原反がロール状に巻回されている。ロール状に巻回された容器フィルム3の引出し端側は、ガイドロール11,12に案内されている。容器フィルム3は、ガイドロール11,12の下流側において間欠送りロール13に掛装されている。間欠送りロール13は、間欠的に回転するモータに連結されており、容器フィルム3を間欠的に搬送する。
【0042】
ガイドロール12と間欠送りロール13との間には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、加熱装置15及びポケット部形成装置16が順に配設されている。そして、加熱装置15によって容器フィルム3が加熱されて該容器フィルム3が比較的柔軟になった状態において、ポケット部形成装置16によって容器フィルム3の所定位置に複数のポケット部2が形成される。ポケット部2の形成は、間欠送りロール13による容器フィルム3の搬送動作間のインターバルの際に行われる。
【0043】
間欠送りロール13から送り出された容器フィルム3は、ガイドロール17、テンションロール18及びフィルム受けロール20の順に掛装されている。フィルム受けロール20は、一定回転するモータに連結されているため、容器フィルム3を連続的に且つ一定速度で搬送する。テンションロール18は、容器フィルム3を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール13とフィルム受けロール20との搬送動作の相違による容器フィルム3の弛みを防止して容器フィルム3を常時緊張状態に保持する。
【0044】
フィルム受けロール20の上流には、容器フィルム3の搬送経路に沿って、充填装置21、第一検査装置22、第二検査装置23及び第三検査装置24が順に配設されている。本実施形態では、第一検査装置22、第二検査装置23及び第三検査装置24がそれぞれ「検査手段」を構成する。
【0045】
充填装置21は、例えば、錠剤5を一列に並んだ状態で収容する筒状のシュート、及び、該シュートの出口を開閉可能なシャッタ(それぞれ不図示)を備えており、所定のタイミングにて前記シャッタを開くことでポケット部2に錠剤5を充填(収容)する。
【0046】
第一検査装置22、第二検査装置23及び第三検査装置24は、それぞれ少なくとも錠剤5に関する良否判定を行う。検査装置22~24のより詳細な構成に関しては後述する。
【0047】
一方、帯状に形成されたカバーフィルム4の原反は、最上流側においてロール状に巻回されている。ロール状に巻回されたカバーフィルム4の引出し端は、ガイドロール25によって加熱ロール26の方へと案内されている。
【0048】
加熱ロール26は、前記フィルム受けロール20に圧接可能となっており、両ロール20,26間に容器フィルム3及びカバーフィルム4が送り込まれるようになっている。そして、両フィルム3,4が両ロール20,26間を加熱圧接状態で通過することにより、両フィルム3,4が取着され、ポケット部2がカバーフィルム4で塞がれる。これにより、錠剤5が各ポケット部2に収容された帯状のPTPフィルム6が製造される。
【0049】
フィルム受けロール20から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール27及び間欠送りロール28の順に掛装されている。間欠送りロール28は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール27は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、フィルム受けロール20と間欠送りロール28との搬送動作の相違によるPTPフィルム6の弛みを防止してPTPフィルム6を常時緊張状態に保持する。
【0050】
間欠送りロール28から送り出されたPTPフィルム6は、テンションロール31及び間欠送りロール32の順に掛装されている。間欠送りロール32は、間欠的に回転するモータに連結されているため、PTPフィルム6を間欠的に搬送する。テンションロール31は、PTPフィルム6を弾性力によって緊張する側へ引っ張った状態とされており、間欠送りロール28,32間でのPTPフィルム6の弛みを防止する。
【0051】
間欠送りロール28とテンションロール31との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、スリット形成装置33及び刻印装置34が順に配設されている。スリット形成装置33は、PTPフィルム6の所定位置に切離用スリットを形成する機能を有する。刻印装置34は、PTPフィルム6における所定位置に刻印を付す機能を有する。尚、
図1等では、切離用スリットや刻印の図示を省略している。
【0052】
間欠送りロール32から送り出されたPTPフィルム6は、その下流側においてテンションロール35及び連続送りロール36の順に掛装されている。間欠送りロール32とテンションロール35との間には、PTPフィルム6の搬送経路に沿って、シート打抜装置37が配設されている。シート打抜装置37は、PTPフィルム6をPTPシート1単位にその外縁を打抜く。これにより、PTPシート1が得られる。
【0053】
得られたPTPシート1は、コンベア39によって搬送され、完成品用ホッパ40に一旦貯留される。但し、上記検査装置22,23,24のうちの少なくとも1つによって不良品判定された錠剤5を収容するPTPシート1は、完成品用ホッパ40へ送られることなく、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0054】
前記連続送りロール36の下流側には、裁断装置41が配設されている。そして、シート打抜装置37による打抜き後に帯状に残った残材部(スクラップ部)を構成する不要フィルム部42は、テンションロール35及び連続送りロール36に案内された後、裁断装置41に導かれる。裁断装置41は、不要フィルム部42を所定寸法に裁断する。裁断された不要フィルム部42(スクラップ)はスクラップ用ホッパ43に貯留された後、別途廃棄処理される。
【0055】
次に、上記検査装置22~24のより具体的な構成について
図7を参照しつつ説明する。各検査装置22~24は、それぞれ照明装置50、検査用カメラ51及び良否判定装置52を備えている。本実施形態では、検査用カメラ51が「撮像手段」を構成する。
【0056】
照明装置50は、ポケット部2の開口部側又は突出部側から、容器フィルム3や錠剤5に対し所定の光(例えば近赤外光や可視光)を照射する。尚、第三検査装置24の照明装置50は、近赤外光を照射可能なものであり、容器フィルム3の所定領域に対し斜め上方から近赤外光を照射する。第三検査装置24の照明装置50としては、例えば、連続スペクトルを持つ近赤外光(例えば波長700~2500nmの近赤外領域)を出射可能なハロゲンランプを採用することができる。尚、ハロゲンランプ以外の光源として、重水素放電管、タングステンランプ、キセノンランプなどを採用することができる。
【0057】
検査用カメラ51は、容器フィルム3や錠剤5を撮像する。本実施形態では、検査用カメラ51として、照明装置50から照射される光の波長領域に感度を有するCCDカメラが採用されている。また、第二検査装置23の検査用カメラ51として、色識別可能なようにカラーCCDカメラが採用されている。尚、CCDカメラに代えて、CMOSカメラを採用してもよい。本実施形態では、第一検査装置22の検査用カメラ51によって輝度画像データが得られ、第二検査装置23の検査用カメラ51によってカラー画像データが得られる。
【0058】
加えて、第三検査装置24の検査用カメラ51は、錠剤5に係るスペクトル画像データを得るためのものであり、光学レンズ511、二次元分光器512及び撮像素子513を備えている(
図8参照)。
【0059】
光学レンズ511は、図示しない複数のレンズ等により構成され、入射光を平行光化可能に構成されている。光学レンズ511は、その光軸が鉛直方向に沿って設定されている。また、光学レンズ511は、入射光を、二次元分光器512の後述するスリット512aの位置に結像可能に設定されている。
【0060】
二次元分光器512は、スリット512aと、入射側レンズ512bと、分光部512cと、出射側レンズ512dとから構成されている。分光部512cは、入射側プリズム512caと、透過型回折格子512cbと、出射側プリズム512ccとから構成されている。
【0061】
スリット512aは、一対の略平板状のスリット板514間に形成されている。スリット512aは、細長い略矩形状(線状)に開口形成され、その幅方向(短手方向)が容器フィルム3の搬送方向に沿って配設され、その長手方向が前記搬送方向と直交する方向に沿って配設されている。
【0062】
かかる構成の下、スリット512aを通過した光は、入射側レンズ512bにより平行光化された後、分光部512cにより分光され、出射側レンズ512dによって撮像素子513に対し二次元分光画像(分光スペクトル)として結像される。
【0063】
撮像素子513は、複数の受光素子(画素)515が二次元配列されてなる受光面513aを有する。撮像素子513としては、近赤外領域のうち例えば波長900~1700nmの波長範囲に対して十分な感度を有したCCDエリアセンサを採用することができる。勿論、撮像素子は、これに限定されるものではなく、近赤外領域に感度を持つ他のセンサ〔例えばCMOSセンサやMCT(HgCdTe)センサ等〕を採用してもよい。
【0064】
容器フィルム3や錠剤5を反射した反射光の分光(波長成分光)は、撮像素子513の各受光素子(各画素)515により受光される。そして、受光した光の強度に応じた分光画像データが良否判定装置52に入力される。
【0065】
尚、検査用カメラ51の撮像により得られた画像データ(輝度画像データやカラー画像データ、分光画像データ)は、検査用カメラ51内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で良否判定装置52に入力される。
【0066】
良否判定装置52は、演算手段としてのCPUや、各種プログラムを記憶するROM、演算データや入出力データなどの各種データを一時的に記憶するRAM、各種データを長期記憶する記憶媒体などを備えた、いわゆるコンピュータシステムとして構成されている。良否判定装置52は、画像メモリ53、検査結果記憶装置54、判定用メモリ55、検査条件記憶装置56、カメラタイミング制御装置57及びCPU及び入出力インターフェース58を備えている。
【0067】
画像メモリ53は、検査用カメラ51により得られた画像データを記憶する。尚、良否判定装置52では、分光画像データを基にスペクトルデータが生成されるとともに、該スペクトルデータが、画像メモリ53に対し時系列で順次記憶されていく。これにより、画素毎にスペクトルデータを有した二次元的な画像データ(スペクトル画像データ)が得られる。そして、画像メモリ53に記憶された画像データ(輝度画像データやカラー画像データ、スペクトル画像データ)に基づいて検査が実行される。勿論、検査の実行に際し、画像データに対し加工処理(例えば二値化処理など)を施してもよい。尚、加工処理が行われた画像データも画像メモリ53に記憶される。
【0068】
検査結果記憶装置54は、良否判定結果のデータや該データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶する。
【0069】
判定用メモリ55は、判定に用いられる各種情報を記憶するためのものである。各種情報には、良否を判定するための判定基準(例えば閾値等)や二値化処理を行うための二値化用閾値、検査対象範囲を画定するためのデータ(例えば、画像データ中における錠剤5部分を特定するための情報など)などが含まれる。
【0070】
判定用メモリ55に対しては、後述する検査データ管理装置74から、検査対象となる錠剤5の品種に応じた情報が入力される。従って、判定用メモリ55には、少なくとも検査対象となる錠剤5の良否判定を行うために必要な情報(検査条件データ)が記憶される。判定用メモリ55に記憶された情報は、検査データ管理装置74によって変更、追加及び消去することが可能である。
【0071】
検査条件記憶装置56は、不良判定の日時や検査に用いられた検査条件等を記憶する。
【0072】
カメラタイミング制御装置57は、検査用カメラ51の撮像タイミングを制御する。かかる撮像タイミングはPTP包装機10に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとに検査用カメラ51による撮像が行われる。
【0073】
CPU及び入出力インターフェース58は、検査装置22~24における各種制御を司る。CPU及び入出力インターフェース58は、PTP包装機10の構成装置との間で情報を送受信可能とされている。これにより、上述した不良シート排出機構などを制御すること等が可能となる。さらに、CPU及び入出力インターフェース58は、流出リスク管理システム70との間で情報の送受信を行うことが可能とされている。
【0074】
上記のように構成された良否判定装置52は、検査用カメラ51により得られた画像データに基づき、少なくとも錠剤5の良否判定を実行する。良否判定装置52では、例えば、画像データに対する二値化処理や二値化画像データに対する塊処理などを行うとともに、判定用メモリ55に記憶された各種情報に基づき錠剤5などの良否を判定する。
【0075】
次に、各検査装置22~24で行われる検査の項目についてより詳しく説明する。
【0076】
第一検査装置22は、検査用カメラ51により得られた画像データ(輝度画像データ)に基づき、「錠剤の形状」という検査項目について、錠剤5の良否判定を行う(
図9参照)。「錠剤5の形状」に関する良否判定では、錠剤5に割れや欠けが発生しているか、錠剤5の形状や大きさ(サイズ)が製造品種と適合しているかなどについての判定が行われる。
【0077】
第二検査装置23は、検査用カメラ51により得られた画像データ(カラー画像データ)に基づき、上述した「錠剤の形状」に加えて、「印刷部の態様」及び「錠剤の色」という検査項目について、錠剤5の良否判定を行う(
図9参照)。「印刷部の態様」に関する良否判定では、印刷部5kの有無や、印刷部5kの形状や色などについての判定が行われる。尚、錠剤5に刻印を設ける場合には、「印刷部の態様」に関する良否判定において、刻印の態様に関する良否判定を合わせて行ってもよい。「錠剤の色」に関する良否判定では、錠剤5の色が製造品種と適合しているか否かが判定される。
【0078】
第三検査装置24は、検査用カメラ51により得られた画像データ(スペクトル画像データ)に基づき、「錠剤のスペクトル」という検査項目について、錠剤5の良否判定を行う(
図9参照)。「錠剤のスペクトル」に関する良否判定では、検査用カメラ51により得られたスペクトル画像データに対し主成分分析(PCA)を行うことによって、錠剤5の成分が製造品種と適合しているか否かが判定される。
【0079】
上述した錠剤5に関する各検査項目の全てで良判定された場合には、錠剤5が良品であると判定され、各検査項目のうちの少なくとも1つで不良判定された場合には、錠剤5が不良品であると判定される。そして、錠剤5が不良品であると判定された場合には、前記不良シート排出機構によって、該不良品の錠剤5を含むPTPシート1が不良品として排出される。
【0080】
次に、流出リスク管理システム70について説明する。流出リスク管理システム70は、異なる品種のPTPシート1を順次製造する場合におけるスケジュールに基づき、PTPシート1に本来収容されるべきでない不適切な錠剤5(異種錠)が収容されるリスクを評価するとともに、その評価に基づき、リスクを低減させるための処置を行うものである。
【0081】
流出リスク管理システム70は、
図5に示すように、表示装置71、入力装置72、スケジュール管理装置73、検査データ管理装置74及び処理装置75を備えている。本実施形態では、スケジュール管理装置73が「スケジュール管理手段」を構成する。スケジュール管理装置73、検査データ管理装置74及び処理装置75は、CPUやROM、RAM及び記憶媒体などを備えたコンピュータシステム等により構成されている。
【0082】
表示装置71は、流出リスク管理システム70に記憶された情報を表示する。本実施形態において、表示装置71では、オペレータ等によって入力された生産スケジュール(入力スケジュール)や、後述するリスク低減処置実行部753によって提示された生産スケジュール(提案スケジュール)が表示される(
図13参照)。また、表示装置71では、後述するスケジュール導出部731によって導出された生産スケジュール(導出スケジュール)、生産予定のPTPシート1の品種、提案スケジュールの中からオペレータ等によって選択・決定された生産スケジュール(決定スケジュール)なども表示される。但し、表示装置71において表示される情報については、適宜変更可能である。また、後述するように、スケジュール導出部731による生産スケジュールの導出機能が無効とされる場合には、導出スケジュールを表示しないようにしてもよい。
【0083】
入力装置72は、流出リスク管理システム70に対する情報の入力に用いられる。オペレータ等は、入力装置72によって、生産予定のPTPシート1の品種や生産スケジュールを入力することができる。また、オペレータ等は、入力装置72によって、提案スケジュールの中から最終的な(実際の生産で利用する)生産スケジュールを選択し、決定することができる。入力された情報は、スケジュール管理装置73に記憶される。
【0084】
スケジュール管理装置73は、PTP包装機10によるPTPシート1の生産順序に関する情報を含む生産スケジュールを管理する。本実施形態において、スケジュール管理装置73は、上述の入力スケジュールや導出スケジュールなどの各種生産スケジュール、及び、生産予定のPTPシート1の品種などを記憶する機能を備えている。オペレータ等によって入力された生産スケジュール(入力スケジュール)は、オペレータ等が設定した優先順位と関連付けられた上で、スケジュール管理装置73に記憶される。例えば、それぞれ異なる錠剤5が収容されてなる品種K1、K2又はK3(
図10等参照)のPTPシート1を生産する場合、オペレータ等は、優先順位とともに、「K1→K2→K3」や「K2→K1→K3」、「K1→K3→K2」などといった生産スケジュールを入力する。その結果、例えば、第一優先の生産スケジュールとして「K1→K2→K3」が、第二優先の生産スケジュールとして「K2→K1→K3」が、第三優先の生産スケジュールとして「K1→K3→K2」が、それぞれスケジュール管理装置73に記憶される。
【0085】
また、本実施形態におけるスケジュール管理装置73は、スケジュール導出部731を備えている。本実施形態では、スケジュール導出部731が「スケジュール導出手段」を構成する。スケジュール導出部731は、生産予定のPTPシート1の品種に係る情報を利用して、生産スケジュールを自動的に導出する工程(スケジュール導出工程)を行う。
【0086】
より詳しくは、スケジュール管理装置73は、オペレータ等によって入力された生産予定のPTPシート1の品種に基づき、これらPTPシート1の生産順序に関する情報を含む仮スケジュールを複数生成する。例えば、生産予定のPTPシート1の品種として、品種K1、K2、K3がスケジュール管理装置73に記憶されているとする。この場合、スケジュール導出部731は、「K1→K2→K3」、「K1→K3→K2」、「K2→K1→K3」、「K2→K3→K1」、「K3→K1→K2」、「K3→K2→K1」といった計6種類の仮スケジュールを生成する。
【0087】
その上で、スケジュール導出部731は、これら仮スケジュールに従ってPTPシート1を生産した場合における、後述するリスク評価部752による評価結果に基づき、複数の仮スケジュールの中から、少なくとも次述する「リスク」を最も低減可能となる生産スケジュールを導出する。導出された生産スケジュールは、スケジュール管理装置73にて記憶される。
【0088】
ここで、「リスク」とは、次に生産されるPTPシート1に対し、該PTPシート1の直前に生産されるPTPシート1に収容される錠剤5が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入したPTPシート1がPTP包装機10よりも後工程に流出するリスクをいう。
【0089】
本実施形態では、後述するように、リスク評価部752により「リスク」の総合的な評価として合計リスク点数が算出されるところ、スケジュール導出部731は、オペレータ等の要求(例えば、入力装置72による要求の入力)を契機として、複数の仮スケジュールの中から合計リスク点数が最小となるスケジュールを、「リスク」を最も低減可能となる生産スケジュールとして導出する。
【0090】
例えば、品種K1~K3に係る錠剤5が、それぞれ
図11に示すような形状データ等で表される形状などを備えるものである場合、合計リスク点数は、例えば、仮スケジュールが「K1→K2→K3」である場合には40点となり、仮スケジュールが「K1→K3→K2」である場合には10点となる。尚、合計リスク点数の算出方法については後述する。また、合計リスク点数は、仮スケジュールが「K2→K1→K3」である場合には30点となり、仮スケジュールが「K2→K3→K1」である場合には10点となる。さらに、仮スケジュールが「K3→K1→K2」である場合には30点となり、仮スケジュールが「K3→K2→K1」である場合には20点となる。従って、スケジュール導出部731は、複数の仮スケジュールの中から、「K1→K3→K2」及び「K2→K3→K1」を、「リスク」を最も低減可能となる生産スケジュールとして導出する。
【0091】
尚、スケジュール導出部731は、合計リスク点数が最小となる生産スケジュールの他に、合計リスク点数が所定値よりも低いものとなる生産スケジュールを導出するものであってもよい。
【0092】
また、本実施形態では、オペレータ等の操作によって、スケジュール導出部731による生産スケジュールの導出機能を有効と無効とで切換えることができる。生産スケジュールの導出機能が有効であれば、表示装置71において、オペレータ等によって入力された生産スケジュール(入力スケジュール)とともに、スケジュール導出部731によって導出された生産スケジュール(導出スケジュール)が表示される(
図13参照)。一方、生産スケジュール導出機能が無効であれば、スケジュール導出部731による生産スケジュールの導出は行われず、表示装置71においては、オペレータ等によって入力された生産スケジュールのみが表示される。
【0093】
検査データ管理装置74は、錠剤5の良否判定に用いる検査条件データの管理などを行う。検査データ管理装置74は、各検査装置22~24が良否判定を行うために必要な検査条件データを記憶している。本実施形態では、検査条件データとして、錠剤5の形状に関するデータIF1,IF2…IFn、印刷部5kに関するデータIM1,IM2…IMn、錠剤5の色に関するデータIC1,IC2…ICn及び錠剤5のスペクトルに関するデータIS1,IS2…ISn(
図10参照)などが記憶されている。尚、データIF1,IM1,IC1,IS1は品種K1に係る錠剤5の良否判定に、データIF2,IM2,IC2,IS2は品種K2に係る錠剤5の良否判定に、データIF3,IM3,IC3,IS3は品種K3に係る錠剤5の良否判定に、それぞれ用いられる。
【0094】
また、検査データ管理装置74は、検査条件データのうちの必要なデータを、PTPシート1の品種切換に合わせて各検査装置22~24へと出力する。例えば、品種K1のPTPシート1を生産するとき、第一検査装置22は「錠剤の形状」という検査項目についての良否判定を行うから、検査条件データとして、錠剤5の形状に関するデータIF1が第一検査装置22へと出力される。各検査装置22~24では、検査データ管理装置74から入力された検査条件データに基づき、生産されるPTPシート1の品種に応じた設定が行われる。
【0095】
さらに、検査データ管理装置74は、各品種K1~Knについて、錠剤画像データTP1,TP2…TPn及びベースデータPP1,PP2…PPnを記憶している(
図10参照)。本実施形態において、錠剤画像データTP1~TPnは、錠剤5の画像データである。ベースデータPP1~PPnは、錠剤5がポケット部2に収容されていない状態の容器フィルム3(ポケット部2を含む)を示す画像データである。尚、ベースデータPP1~PPnは、錠剤5がポケット部2に収容された状態の容器フィルム3を示す画像データであってもよい。ベースデータPP1~PPn及び錠剤画像データTP1~TPnとしては、検査装置22~24の各検査用カメラ51で取得される複数種類の画像データ(輝度画像データやカラー画像データ、スペクトル画像データ)に対応するものがそれぞれ記憶されている。例えば、ベースデータPP1は、品種K1に係る計三種類の画像データからなる。
【0096】
さらに、検査データ管理装置74は、生産予定のPTPシート1の品種K1,K2…Knに係る錠剤5及びポケット部2についてのデータを記憶している。錠剤5についてのデータには、形状データTS1,TS2…TSnと、印刷データTM1,TM2…TMnと、色データTC1,TC2…TCnと、スペクトルデータSP1,SP2…SPnとが含まれる。また、ポケット部2についてのデータには、形状データPS1,PS2…PSnが含まれる。
【0097】
図11に示すように、本実施形態において、形状データTS1は、平面視円形であって外径が4mmであることを示し、形状データTS2は、平面視円形であって外径が6.5mmであることを示し、形状データTS3は、平面視円形であって外径が9mmであることを示す。錠剤5の形状データは、例えば錠剤5の厚さや割線などについての情報を含むものであってもよい。
【0098】
印刷データTM1は、印刷部5kが錠剤5の両面(表面5b及び裏面5c)に設けられ、印刷内容がデータAであることを示し、印刷データTM2は、印刷部5kが錠剤5の片面(表面5b又は裏面5c)に設けられ、印刷内容がデータBであることを示し、印刷データTM3は、印刷部5kが設けられていないことを示す。
【0099】
色データTC1,TC2は、錠剤5が白色であることを示し、色データTC3は、錠剤5が赤色であることを示す。
【0100】
スペクトルデータSP1,SP2は、錠剤5を分光分析したときに得られるスペクトルデータがデータYであることを示し、スペクトルデータSP3は、錠剤5を分光分析したときに得られるスペクトルデータがデータZであることを示す。
【0101】
ポケット部2の形状データPS1は、平面視円形であって外径(特に開口部の外径)が5.5mmであることを示し、形状データPS2は、平面視円形であって外径が8mmであることを示し、形状データPS3は、平面視円形であって外径が10.5mmであることを示す。尚、ポケット部2の形状データは、例えばポケット部2の深さなどを含むものであってもよい。
【0102】
処理装置75は、異種錠の混入したPTPシート1がPTP包装機10よりも後工程に流出する「リスク」を評価するとともに、その評価結果に基づき、「リスク」を低減させるため処置を実行する。
【0103】
処理装置75は、
図5に示すように、検査シミュレーション実行部751、リスク評価部752及びリスク低減処置実行部753を備えている。本実施形態では、検査シミュレーション実行部751が「検査シミュレーション実行手段」を構成し、同様に、リスク評価部752が「リスク評価手段」を、リスク低減処置実行部753が「リスク低減処置実行手段」を、それぞれ構成する。
【0104】
検査シミュレーション実行部751は、次に生産されるPTPシート1に係る錠剤5の検査を行うための設定がなされた検査装置22~24に対し、該PTPシート1の直前に生産されるPTPシート1に係る錠剤5の画像データを利用して生成した仮想異種錠画像データに基づく良否判定を実行させるものである。すなわち、検査シミュレーション実行部751は、生産スケジュールや仮スケジュールに従ってPTPシート1を生産した場合に、検査装置22~24によって、異種錠(直前に生産されたPTPシート1に係る錠剤5)を検出することができるか否かの確認を模擬的に行うものである。具体的には、検査シミュレーション実行部751は、次のような検査シミュレーション処理(検査シミュレーション実行工程)を行うことで、異種錠の検出についての確認を行う。
【0105】
図14に示すように、検査シミュレーション処理では、まず、ステップS11において、仮想異種錠画像データが生成される。仮想異種錠画像データは、次に生産されるPTPシート1に係るベースデータPP1~PPnと、直前に生産されるPTPシート1に係る錠剤5の錠剤画像データTP1~TPnとを用いて生成される。
【0106】
より詳しくは、ベースデータPP1,PP2…PPnにおけるポケット部2領域に対し、錠剤画像データTP1,TP2…TPnを貼り付けることによって、仮想異種錠画像データが生成される。例えば、品種K1に続いて品種K2を生産する場合についての検査シミュレーション処理では、ベースデータPP2におけるポケット部2領域に対し、錠剤画像データTP1を貼り付けることによって、仮想異種錠画像データが生成される。仮想異種錠画像データとしては、第一検査装置22による検査を想定したものと、第二検査装置23による検査を想定したものと、第三検査装置24による検査を想定したものとがそれぞれ生成される。尚、ベースデータにおけるポケット部2領域のサイズなどによっては、仮想異種錠画像データにおいて、ポケット部2領域から錠剤画像データがはみ出すことがある。
【0107】
また、ベースデータとして、錠剤5がポケット部2に収容された画像データを用いる場合、ベースデータにおける錠剤5領域に対し、錠剤画像データを貼り付けることで、仮想異種錠画像データを生成することができる。但し、貼り付けられた錠剤画像データから、ベースデータにおける錠剤5領域がはみ出す場合には、そのはみ出し部分を消去して、錠剤画像データの背景に当たる領域を自然な状態とするための処理を行うことが好ましい。このような処理としては、はみ出し領域を構成する画素の輝度値を、該はみ出し領域の周囲に位置する画素の輝度値と同一値又は近似値に変更する処理や、該はみ出し領域の周囲に位置する領域を膨張させる処理などを挙げることができる。
【0108】
次いで、ステップS12において、検査プログラムを実行する。このプログラムの実行により、まず、検査データ管理装置74から各検査装置22~24へと必要な検査条件データが出力される。また、検査装置22~24においては、入力された検査条件データを用いて、次に生産されるPTPシート1に係る錠剤5の検査を行うための設定が行われる。
【0109】
さらに、検査プログラムの実行によって、各検査装置22~24に対し仮想異種錠画像データが入力される。例えば、第一検査装置22に対しては、第一検査装置22による検査を想定した仮想異種錠画像データが入力される。
【0110】
そして、各検査装置22~24によって仮想異種錠画像データに基づく良否判定が行われる。この良否判定は、検査項目ごとに行われる。検査シミュレーション実行部751は、検査装置22~24から検査項目ごとの良否判定結果を受取る。
【0111】
次いで、ステップS13にて、検査項目ごとに、受取った良否判定結果が良判定であったか否かを判定する。ステップS13にて否定判定された場合、つまり、ある検査項目において異種錠(貼付けられた錠剤画像データ)の全てが不良品と判定された場合、検査シミュレーション実行部751は、検査シミュレーション処理による、該検査項目に関する最終的な判定結果を“検出可能”として、検査シミュレーション処理を終了する。一方、ステップS13にて肯定判定がなされた場合、つまり、ある検査項目において異種錠の少なくとも1つが良品と判定された場合、検査シミュレーション実行部751は、必要に応じて、ステップS14のリスク回避処理を行う。
【0112】
リスク回避処理では、検査データ管理装置74に記憶された、該当の検査項目に関する検査条件データ(例えば閾値など)を変更した上で、検査プログラム(ステップS12)を再度実行する。つまり、例えば検査精度がより高くなるように検査条件データを変更した上で、検査装置22~24に対し、該当の検査項目について、その検査条件データを利用した良否判定を行わせる。尚、検査装置22~24によって実際の錠剤5を検査するときに、良品の錠剤5が誤って不良品と判定されるケースが過度に発生しないように、検査条件データの変更可能範囲が予め定められている。
【0113】
検査シミュレーション実行部751は、検査条件データを変更するとともに、検査装置22~24に対し変更後の検査条件データを用いた良否判定を行わせることを、該当の検査項目において異種錠の全てが不良品と判定されるまで、或いは、検査条件データが変更可能範囲の限度に変更されるまで、繰り返し行う。
【0114】
そして最終的に、該当の検査項目において異種錠の全てが不良品と判定された場合、検査シミュレーション実行部751は、検査シミュレーション処理による、該検査項目に関する最終的な判定結果を“検出可能”として、検査シミュレーション処理を終了する。検査データ記憶装置74には、変更後の検査条件データが記憶される。
【0115】
一方、検査条件データが変更可能範囲の限度に変更されたにも関わらず、該当の検査項目において異種錠の少なくとも1つが良品と判定された場合、検査シミュレーション実行部751は、検査シミュレーション処理による、該検査項目に関する最終的な判定結果を“検出不能”として、検査シミュレーション処理を終了する。
【0116】
尚、検査シミュレーション実行部751は、上述した複数の検査項目のうちの一部のみについて、検査装置22~24に対し良否判定を実行させることができる。例えば、検査装置23に対し、錠剤5の形状に係る良否判定のみを実行させることができる。
【0117】
リスク評価部752は、生産スケジュールに従ってPTPシート1を生産した場合において、次に生産されるPTPシート1に対し、該PTPシート1の直前に生産されるPTPシート1に収容される錠剤5が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入したPTPシート1がPTP包装機10よりも後工程に流出する「リスク」を評価する。本実施形態において、リスク評価部752は、オペレータ等によって入力されたり、スケジュール導出部731によって導出されたりした生産スケジュール(入力スケジュール及び導出スケジュール)に係る「リスク」を評価する機能と、スケジュール導出部731により生成された仮スケジュールに係る「リスク」を評価する機能とを有する。リスク評価部752によって「リスク」を評価する工程が「リスク評価工程」に相当する。
【0118】
リスク評価部752は、検査装置22~24による錠剤5の検査項目(本実施形態では、錠剤5の形状、色、印刷及びスペクトル)を踏まえて「リスク」を評価する。すなわち、リスク評価部752は、次に生産されるPTPシート1に対し異種錠が誤って混入された場合であっても、ある検査項目の点で該異種錠を不良品として検出可能であれば、その検査項目の点で「リスク」は低いと評価する。一方、リスク評価部752は、次に生産されるPTPシート1に対し異種錠が誤って混入された場合に、ある検査項目の点で該異種錠を不良品として検出不能であれば、その検査項目の点で「リスク」は高いと評価する。尚、リスク評価部752は、検査データ管理装置74に記憶された検査条件データを利用して、検査装置22~24による錠剤5の検査項目を把握可能である。
【0119】
また、リスク評価部752は、検査シミュレーション実行部751が検査装置22~24に対し仮想異種錠画像データに基づく良否判定を実行させたときの良否判定結果に基づき、「リスク」を評価する。すなわち、リスク評価部752は、検査シミュレーション処理による最終的な判定結果に基づき、「リスク」を評価する。
【0120】
ここで、リスク評価部752による「リスク」の評価手法について、より具体的に説明する。
【0121】
リスク評価部752は、検査装置22,23によって錠剤5の形状についての良否判定が行われることを踏まえて、錠剤5の形状に着目した「リスク」の評価を行う。すなわち、リスク評価部752は、検査シミュレーション処理を実行し、形状という検査項目に関する最終的な判定結果を確認する。そして、リスク評価部752は、判定結果が“検出可能”であれば、錠剤5の形状の点で「リスク」は低いと評価し、判定結果が“検出不能”であれば、錠剤5の形状の点で「リスク」は高いと評価する。
【0122】
例えば、品種K1に係る錠剤5の形状データTS1と、品種K2に係る錠剤5の形状データTS2とは十分に(例えば、それぞれの外径が1.0mm以上)相違している。そのため、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、検査シミュレーション処理による、形状という検査項目に関する最終的な判定結果は“検出可能”となる。そのため、リスク評価部752は、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、錠剤5の形状の点で「リスク」は低いと評価する。
【0123】
一方、例えば、
図12に示す例のように、品種K1に係る錠剤5の形状データTS1と、品種K2´に係る錠剤5の形状データTS2´とが同一であるとする。このような場合、品種K1に続いて品種K2を生産しようとするときには、検査シミュレーション処理による、形状という検査項目に関する最終的な判定結果は“検出不能”となる。そのため、リスク評価部752は、品種K1に続いて品種K2´を生産しようとする場合、錠剤5の形状の点で「リスク」は高いと評価する。
【0124】
さらに、リスク評価部752は、検査装置23によって印刷部5kについての良否判定が行われることを踏まえて、印刷部5kに着目した「リスク」の評価を行う。この「リスク」の評価も、上記同様に、検査シミュレーション処理による判定結果に基づき行われる。すなわち、リスク評価部752は、検査シミュレーション処理を実行し、印刷という検査項目に関する最終的な判定結果を確認する。そして、リスク評価部752は、判定結果が“検出可能”であれば、印刷部5kの点で「リスク」は低いと評価し、判定結果が“検出不能”であれば、印刷部5kの点で「リスク」は高いと評価する。
【0125】
例えば、品種K1に係る錠剤5の印刷データTM1と、品種K2に係る錠剤5の印刷データTM2とは、印刷部5kを設ける面や印刷内容の点で十分に相違している。そのため、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、検査シミュレーション処理による、印刷という検査項目に関する最終的な判定結果は“検出可能”となる。そのため、リスク評価部752は、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、印刷部5kの点で「リスク」は低いと評価する。
【0126】
加えて、リスク評価部752は、検査装置23によって錠剤5の色についての良否判定が行われることを踏まえて、錠剤5の色に着目した「リスク」の評価を行う。この「リスク」の評価も、上記同様に、検査シミュレーション処理による判定結果に基づき行われる。すなわち、リスク評価部752は、検査シミュレーション処理を実行し、錠剤5の色という検査項目に関する最終的な判定結果を確認する。そして、リスク評価部752は、判定結果が“検出可能”であれば、錠剤5の色の点で「リスク」は低いと評価し、判定結果が“検出不能”であれば、錠剤5の色の点で「リスク」は高いと評価する。
【0127】
例えば、品種K1に係る錠剤5の色データTC1と、品種K2に係る錠剤5の色データTC2とは、それぞれ錠剤5が白色であることを示すものであり、両データTC1,TC2に大きな違いはない。そのため、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、検査シミュレーション処理による、錠剤5の色という検査項目に関する最終的な判定結果は“検出不能”となる。そのため、リスク評価部752は、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、錠剤5の色の点で「リスク」は高いと評価する。
【0128】
併せて、リスク評価部752は、検査装置24によって錠剤5のスペクトル(成分)についての良否判定が行われることを踏まえて、錠剤5のスペクトルに着目した「リスク」の評価を行う。この「リスク」の評価も、上記同様に、検査シミュレーション処理による判定結果に基づき行われる。すなわち、リスク評価部752は、検査シミュレーション処理を実行し、錠剤5のスペクトルという検査項目に関する最終的な判定結果を確認する。そして、リスク評価部752は、判定結果が“検出可能”であれば、錠剤5のスペクトル(成分)の点で「リスク」は低いと評価し、判定結果が“検出不能”であれば、錠剤5のスペクトルの点で「リスク」は高いと評価する。
【0129】
例えば、品種K1に係る錠剤5のスペクトルデータSP1と、品種K2に係る錠剤5のスペクトルデータSP2とは、それぞれデータYであり、両データSP1,SP2に大きな違いはない。そのため、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、検査シミュレーション処理による、錠剤5のスペクトルという検査項目に関する最終的な判定結果は“検出不能”となる。そのため、リスク評価部752は、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、錠剤5のスペクトルの点で「リスク」は高いと評価する。
【0130】
また、リスク評価部752は、検査項目を踏まえた「リスク」の評価に加えて、次のような「リスク」の評価も行う。すなわち、リスク評価部752は、次に生産されるPTPシート1のポケット部2のサイズ(「ポケットサイズ」という)と、該PTPシート1の直前に生産されるPTPシート1に収容される錠剤5のサイズ(「錠剤サイズ」という)とに基づき、「リスク」を評価する。
【0131】
本実施形態において、リスク評価部752は、ポケットサイズが錠剤サイズよりも小さく、次に生産されるPTPシート1のポケット部2に対し、直前に生産されるPTPシート1に係る錠剤5が物理的に収容し得ない場合、「リスク」は低いと評価する。一方、リスク評価部752は、ポケットサイズが錠剤サイズよりも大きく、次に生産されるPTPシート1のポケット部2に対し、直前に生産されるPTPシート1に係る錠剤5が収容され得る場合、「リスク」は高いと評価する。
【0132】
例えば、品種K2に係るポケットサイズは、品種K1に係る錠剤サイズよりも大きいため、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、品種K2に係るポケット部2に対し、品種K1に係る錠剤5は物理的に収容し得る。そのため、リスク評価部752は、錠剤5及びポケット部2のサイズ比較の点で「リスク」は高いと評価する。
【0133】
リスク評価部752は、生産スケジュールや仮スケジュールにおける品種切換ごとに、上記のような「リスク」の評価を行う。例えば、生産スケジュールが「K1→K2→K3」である場合、リスク評価部752は、品種K1から品種K2に切換えるときの「リスク」と、品種K2から品種K3に切換えるときの「リスク」とをそれぞれ評価する。
【0134】
そして、リスク評価部752は、評価した「リスク」に応じた点数付けを行う。本実施形態において、リスク評価部752は、「リスク」が低いと評価した場合、リスク点数を0点とする一方、「リスク」が高いと評価した場合、リスク点数を10点とする。
【0135】
例えば、生産スケジュールが「K1→K2→K3」であるとする。この場合において、品種K1から品種K2に切換えようとする場合、
図15に示すように、リスク点数は、錠剤5の形状の点(a1)では0点となり、印刷部5kの点(b1)では0点となり、錠剤5の色の点(c1)では10点となり、錠剤5のスペクトルの点(d1)では10点となり、錠剤5及びポケット部2のサイズ比較の点(e1)では10点となる。
【0136】
また、品種K2から品種K3に切換えようとする場合、
図16に示すように、リスク点数は、錠剤5の形状の点(a2)では0点となり、印刷部5kの点(b2)では0点となり、錠剤5の色の点(c2)では0点となり、錠剤5のスペクトルの点(d2)では0点となり、錠剤5及びポケット部2のサイズ比較の点(e2)では10点となる。
【0137】
そして、リスク評価部752は、最終的にリスク点数の合計点(合計リスク点数)を算出する。例えば、上記例では、40点となる。算出された合計リスク点数に基づき、上記の通り、スケジュール導出部731は、複数の仮スケジュールの中から、「リスク」を最も低減可能となる生産スケジュールを導出する。また、算出された合計リスク点数に基づき、次述するリスク低減処置実行部753による処置が実行される。
【0138】
リスク低減処置実行部753は、リスク評価部752による評価結果に基づき、「リスク」を低減させるための処置を実行する。リスク低減処置実行部753によって該処置を実行する工程が「リスク低減処置実行工程」に相当する。
【0139】
本実施形態では、オペレータ等の要求(例えば、入力装置72による要求の入力)を契機として、リスク評価部752によって、オペレータ等によって入力された生産スケジュール(入力スケジュール)及びスケジュール導出部731によって導出された生産スケジュール(導出スケジュール)に係る「リスク」が評価される。そして、リスク低減処置実行部753は、入力スケジュール及び導出スケジュールの中から、少なくとも合計リスク点数が最も低くなる生産スケジュールを、提案スケジュールとして決定する。その上で、リスク低減処置実行部753は、決定した提案スケジュールを、スケジュール管理装置73に記憶するとともに、表示装置71を用いてオペレータ等に対し提示する。従って、リスク低減処置実行部753は、「リスク」を低減する処置として、スケジュール導出部731によって導出された生産スケジュールを利用した処置を実行可能である。
【0140】
尚、リスク低減処置実行部753は、合計リスク点数が最も低くなる生産スケジュールが複数存在する場合、合計リスク点数が最も低くなる生産スケジュールのうち、オペレータ等によって入力された生産スケジュール(入力スケジュール)と一致するものを優先的に提示する。また、リスク低減処置実行部753は、例えば、合計リスク点数が一定の点数以下となった複数の生産スケジュールを提示するように構成されていてもよい。
【0141】
尚、スケジュール導出部731による生産スケジュールの導出機能を無効とした場合、リスク低減処置実行部753は、オペレータ等によって入力された生産スケジュール(入力スケジュール)の中から、少なくとも合計リスク点数が最も低くなる生産スケジュールを、提案スケジュールとして提示する。
【0142】
オペレータ等は、入力装置72を用いて、提示された生産スケジュール(提案スケジュール)の中から、実際の生産で用いる生産スケジュールを選択・決定することができる。選択・決定された生産スケジュール(決定スケジュール)は、表示装置71にて表示されるとともに、スケジュール管理装置73にて記憶される。PTP包装機10では、決定された生産スケジュールに従って、PTPシート1の生産が行われる。尚、PTPシート1の生産時には、必要に応じて、上述のリスク回避処理(ステップS14)にて変更された検査条件データが用いられる。
【0143】
尚、合計リスク点数が最も低くなる生産スケジュールにおける該合計リスク点数が予め設定された基準点数よりも高い場合、リスク低減処置実行部753は、生産スケジュールの提示に加えて又は代えて、PTPシート1の品種を切換える際に行われるPTP包装機10の清掃について、清掃時間をより長く確保することを促す処置を行ってもよい。また、生産スケジュールの提示に加えて又は代えて、アラーム等を用いて、入力された生産スケジュールの変更を促す処置などを行ってもよい。勿論、これら以外の処置を実行してもよい。
【0144】
以上詳述したように、本実施形態によれば、リスク評価部752により、PTPシート1の生産スケジュールを利用して、異種錠の混入したPTPシート1(異種錠収容体)がPTP包装機10よりも後工程に流出する「リスク」を評価することができる。そして、リスク評価部752による評価結果に基づき、リスク低減処置実行部753により、「リスク」を低減させるための処置を実行することができる。このようにPTPシート1の生産スケジュールを利用するため、錠剤5の検査のみによって異種錠を検出する構成と比べて、異種錠収容体の流出リスクをより効果的に低減させることができる。
【0145】
また、リスク評価部752は、次に生産されるPTPシート1に対し、該PTPシート1の直前に生産されるPTPシート1に収容される錠剤が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入したPTPシートが収容体生産装置よりも後工程に流出する「リスク」を評価する。従って、リスク評価部752は、次に生産されるPTPシート1に対し、該PTPシート1の2つ以上前に生産されるPTPシート1に収容される錠剤が異種錠として誤って混入されることに係る「リスク」の評価を行わない。そのため、リスク評価に係る処理負担の低減を図ることができる。
【0146】
さらに、リスク評価部752は、検査装置22~24による錠剤5の検査項目を踏まえて、「リスク」を評価する。従って、「リスク」の評価を適切かつ容易に行うことができる。
【0147】
加えて、リスク評価部752は、検査シミュレーション実行部751が検査装置22~24に対し仮想異種錠画像データを用いた良否判定を行わせたときの良否判定結果に基づき、「リスク」を評価する。従って、検査装置22~24による錠剤5に対する良否判定を実際に行うことなく、前もって、検査装置22~24による良否判定の結果として異種錠が適切に検出される(異種錠が不良と判定される)のか否かを確認することができる。これにより、「リスク」を一層適切に評価することができる。
【0148】
併せて、リスク評価部752は、次に生産されるPTPシート1におけるポケット部2のサイズ(ポケットサイズ)と、該PTPシート1の直前に生産されるPTPシート1に係る錠剤5のサイズ(錠剤サイズ)とに基づき、「リスク」を評価する。従って、「リスク」をより一層適切に評価することができる。
【0149】
また、スケジュール導出部731によって、「リスク」の低い生産スケジュールを自動的に導出することができ、また、リスク低減処置実行部753によって、その導出した生産スケジュールを利用した処置(例えば、導出した生産スケジュールの提示など)を行うことができる。従って、「リスク」の低減をより一層図ることができる。
【0150】
さらに、スケジュール導出部731によって生産スケジュールを自動的に導出可能であるため、オペレータ等による生産スケジュールの作成が必須ではなくなる。そのため、利便性を高めることができる。例えば、本実施形態では、オペレータ等が生産予定のPTPシート1の品種のみを入力した場合には、スケジュール導出部731によって、「リスク」が低い生産スケジュールを自動的に導出し、リスク低減処置実行部753によって、オペレータ等に対し、提案スケジュールとして、導出した生産スケジュールを提示することができる。この場合、入力スケジュールや導出スケジュールの中から提案スケジュールを決定するための「リスク」の評価を行うことなく、導出スケジュールを提案スケジュールとしてそのまま提示してもよい。
【0151】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0152】
(a)上記実施形態において、リスク低減処置実行部753によって提示される生産スケジュール(提案スケジュール)や、スケジュール導出部731によって導出される生産スケジュール(導出スケジュール)は、合計リスク点数に基づき決定されているが、その他の指標に基づき決定されてもよい。
【0153】
例えば、生産スケジュール(入力スケジュール等)又は仮スケジュールにおいて、PTPシート1の品種を一度切換えるときのリスク点数の合計点を、品種切換ごとに算出し、算出した複数の合計点に基づき、提案スケジュールや導出スケジュールを決定してもよい。この場合、算出された複数の合計点のうちの最大値が最も低くなる生産スケジュールや仮スケジュールを、提案スケジュールや導出スケジュールとして決定してもよい。
【0154】
より具体的に説明すると、
図11に示す例において、生産スケジュール(入力スケジュール等)や仮スケジュールが「K1→K2→K3」である場合、1回目の品種切換に係るリスク点数の合計点(第一合計点)は30点となり、2回目の品種切換に係りリスク点数の合計点(第二合計点)は10点となる。これに対し、ある生産スケジュールX(仮スケジュールX)において、第一合計点及び第二合計点がそれぞれ20点になるとする。この場合、最大値がより低い後者の生産スケジュールX(仮スケジュールX)を提案スケジュールや導出スケジュールとしてもよい。
【0155】
また、上述したリスク点数の数値(0点や10点)は例示であって、この数値を適宜変更してもよい。勿論、「リスク」の評価に用いる項目ごとに、リスク点数を変動させてもよい。例えば、錠剤5の形状の点で「リスク」が高ければ、リスク点数を10点とする一方、印刷部5kの点で「リスク」が高ければ、リスク点数を5点とするといった構成としてもよい。
【0156】
さらに、上記実施形態では、リスク点数を二段階としているが、三段階以上の多段階としてもよい。つまり、「リスク」の評価を、高低の二段階ではなく、三段階以上の多段階で行ってもよい。
【0157】
また、1の検査項目又は錠剤5及びポケット部2のサイズ比較により異種錠を不良品として検出可能な場合に、品種切換に係る「リスク」は低いと評価する一方、そうでない場合に、品種切換に係る「リスク」は高いと評価するように構成してもよい。例えば、上記実施形態では、品種K1に続いて品種K2を生産しようとする場合、形状や印刷といった検査項目で異種錠を不良品として検出可能であるから、色などの検査項目で異種錠を不良品として検出することができないとしても、この品種切換に係る「リスク」は低いと評価するようにしてもよい。
【0158】
(b)上記実施形態では、検査項目を踏まえた「リスク」の評価にあたって、検査シミュレーション実行部751が利用されているが、必ずしも検査シミュレーション実行部751を利用する必要はない。
【0159】
従って、直前に生産されるPTPシート1に係る錠剤5と、次に生産されるPTPシート1に係る錠剤5とに関する、それぞれの形状、印刷部5k、色及びスペクトル等に関する各データ(例えば、検査データ管理装置74に記憶された形状データTS1,TS2など)を比較することで、検査項目を踏まえた「リスク」の評価を行うようにしてもよい。
【0160】
(c)上記実施形態において、流出リスク管理システム70は、生産スケジュールを自動的に導出するスケジュール導出部731を備えているが、スケジュール導出部731を備えないものであってもよい。この場合、流出リスク管理システム70は、オペレータ等が入力した生産スケジュールのみを利用して「リスク」を評価するとともに、その評価結果に基づき、「リスク」を低減させるための処置を実行する。
【0161】
(d)上記実施形態では、「錠剤収容体」としてPTPシート1を挙げているが、錠剤収容体はこれに限定されるものではない。従って、錠剤収容体は、PTPシート以外のブリスタシートや、錠剤5が収容されてなるボトルなどであってもよい。
【0162】
錠剤収容体が上記のようなボトルである場合、ボトルを生産するための収容体生産装置は、錠剤5を搬送する搬送手段(例えば、錠剤5を吸着しつつ搬送する吸着ベルト等)と、搬送される錠剤5を撮像して画像データを得るための撮像手段と、撮像手段により得られた画像データに基づき、錠剤5に関する良否判定を行う検査手段と、検査後の錠剤5をボトル内に収容する収容手段とを備えたものであってもよい。勿論、収容体生産装置は、必要に応じて、錠剤5に対し印刷部5kを設けるための印刷手段を備えていてもよい。このような収容体生産装置を用いる場合、リスク評価部752は、前記検査手段による錠剤5の検査項目を踏まえて、「リスク」を評価可能であり、また、リスク低減処置実行部753は、評価結果に基づき、「リスク」を低減させるための処置を行うことができる。
【0163】
尚、錠剤収容体が上記のようなボトルである場合、仮想異種錠画像データは、ベースデータとしての背景の画像データ(例えば、撮像手段により取得された搬送手段の画像データ)に対し、錠剤画像データを貼付けることで生成することができる。
【0164】
(e)上記実施形態において、流出リスク管理システム70は、1のPTP包装機10に対応するものとされている。これに対し、流出リスク管理システム70を、複数のPTP包装機10に対応するものであってもよい。この場合、流出リスク管理システム70は、各PTP包装機10の設定(例えば、錠剤5の検査項目)に合わせて、PTP包装機10ごとに「リスク」を評価する。
【0165】
(f)PTP包装機10に設けられる検査装置の数や配置位置などについても特に限定される訳ではない。従って、例えば、PTPフィルム6の搬送経路に対応する検査装置を設けてもよい。
【0166】
また、上記実施形態において、PTP包装機10における錠剤5の検査項目は、形状、印刷部5k、色及びスペクトルとされているが、PTP包装機10における錠剤5の検査項目は、これらに限定される訳ではない。
【0167】
従って、例えば、PTP包装機10が1の検査装置を有し、該検査装置が錠剤5の形状に関する良否判定のみを行うものであってもよい。この場合、流出リスク管理システム70は、錠剤5の形状に着目して「リスク」の評価を行うことができる。
【0168】
また、PTP包装機10は、検査装置を備えず、錠剤5の良否判定を行わないものであってもよい。この場合、次に生産されるPTPシート1におけるポケット部2のサイズ(ポケットサイズ)と、該PTPシート1の直前に生産されるPTPシート1に係る錠剤5のサイズ(錠剤サイズ)とに基づき、「リスク」を評価することで、PTP包装機10が検査装置を備えないものであっても、「リスク」を評価することができる。
【0169】
(g)上記実施形態では、平面視円形状をなす円盤状の錠剤5を挙げているが、錠剤の形状は、平面視円形状に限定されるものではない。従って、錠剤は、例えば、平面視多角形状、平面視楕円形状、平面視長円形状等であってもよい。
【0170】
また、錠剤には、医薬のみならず、例えば飲食用に用いられる錠剤なども含まれる。さらに、錠剤には、素錠のみならず、例えば、糖衣錠やフィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、カプセル錠などが含まれる。
【符号の説明】
【0171】
1…PTPシート(錠剤収容体、ブリスタシート)、2…ポケット部、3…容器フィルム、5…錠剤、10…PTP包装機(収容体生産装置)、22…第一検査装置(検査手段)、23…第二検査装置(検査手段)、24…第三検査装置(検査手段)、51…検査用カメラ(撮像手段)、70…異種錠流出リスク管理システム、73…スケジュール管理装置(スケジュール管理手段)、100…収容体生産システム、731…スケジュール導出部(スケジュール導出手段)、751…検査シミュレーション実行部(検査シミュレーション実行手段)、752…リスク評価部(リスク評価手段)、753…リスク低減処置実行部(リスク低減処置実行手段)。
【要約】
【課題】異種錠収容体が後工程に流出するリスクをより効果的に低減させることができる異種錠流出リスク管理システムなどを提供する。
【解決手段】流出リスク管理システム70は、リスク評価部752及びリスク低減処置実行部753を備える。リスク評価部752は、生産スケジュールに従ってPTPシートを生産した場合において、次に生産されるPTPシートに対し、該PTPシートの直前に生産されるPTPシートに収容される錠剤が異種錠として誤って混入されて、該異種錠の混入したPTPシートがPTP包装機10よりも後工程に流出するリスクを評価する。リスク低減処置実行部753は、リスク評価部752による評価結果に基づき、前記リスクを低減させるための処置を実行可能とされる。
【選択図】
図5