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特許7370437半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/44 20100101AFI20231020BHJP
   H01L 33/14 20100101ALI20231020BHJP
   H01L 33/38 20100101ALI20231020BHJP
   H01L 33/32 20100101ALI20231020BHJP
【FI】
H01L33/44
H01L33/14
H01L33/38
H01L33/32
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022160797
(22)【出願日】2022-10-05
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 紀隆
(72)【発明者】
【氏名】稲津 哲彦
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-106572(JP,A)
【文献】特開2016-171141(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0099821(KR,A)
【文献】中国実用新案第212648266(CN,U)
【文献】特開2018-170524(JP,A)
【文献】特開2020-113741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含むベース層と、
前記ベース層上に設けられ、n型AlGaN系半導体材料から構成され、第1上面および第2上面を有するn型半導体層と、
前記n型半導体層の前記第1上面に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、
前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側被覆電極層と、
前記p側被覆電極層上に設けられる第1p側開口を有し、前記n型半導体層の前記第2上面上に設けられる第1n側開口を有し、前記第1p側開口とは異なる箇所において前記p側被覆電極層を被覆し、前記第1n側開口とは異なる箇所において前記n型半導体層の前記第2上面を被覆し、前記活性層および前記p型半導体層と接触し、SiOから構成される第1保護層と、
前記p側被覆電極層上に設けられる第2p側開口を有し、前記n型半導体層の前記第2上面上に設けられる第2n側開口を有し、前記第2p側開口の形成範囲が前記第1p側開口の形成範囲よりも大きく、前記第2n側開口の形成範囲が前記第1n側開口の形成範囲よりも小さく、前記第2p側開口および前記第2n側開口とは異なる箇所において前記第1保護層を被覆し、Alから構成される第2保護層と、
前記第2n側開口において前記n型半導体層の前記第2上面と接触し、前記第2n側開口の外側において前記第2保護層の上に重なるn側コンタクト電極と、
前記n側コンタクト電極の上面および側面を被覆し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むn側電流拡散層と、
前記第1p側開口において前記p側被覆電極層と接触し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むp側電流拡散層と、を備える半導体発光素子。
【請求項2】
前記第2保護層は、前記第1n側開口を規定する前記第1保護層の内周面を被覆し、前記第1n側開口の内側において前記n型半導体層の前記第2上面と接触する、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第2保護層は、前記第1保護層の外周面を被覆し、前記第1保護層の外側において前記n型半導体層の前記第2上面と接触する、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2保護層は、前記p側被覆電極層と接触しない、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記p側電流拡散層上に設けられる第3p側開口と、前記n側電流拡散層上に設けられる第3n側開口とを有し、前記第3p側開口および前記第3n側開口とは異なる箇所において、前記第2保護層、前記p側電流拡散層および前記n側電流拡散層を被覆し、SiOから構成される第3保護層と、
前記第3p側開口において前記p側電流拡散層と接続するp側パッド電極と、
前記第3n側開口において前記n側電流拡散層と接続するn側パッド電極と、をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第3保護層は、前記第2保護層の外周面を被覆し、前記第2保護層の外側において前記ベース層の上面と接触する、請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記p側電流拡散層上において前記第3p側開口の内側に設けられる第4p側開口と、前記n側電流拡散層上において前記第3n側開口の内側に設けられる第4n側開口とを有し、前記第4p側開口および前記第4n側開口とは異なる箇所において、前記第3保護層、前記p側電流拡散層および前記n側電流拡散層を被覆し、SiNから構成される第4保護層をさらに備え、
前記p側パッド電極は、前記第4p側開口において前記p側電流拡散層と接続し、前記n側パッド電極は、前記第4n側開口において前記n側電流拡散層と接続し、
前記第4保護層は、前記第3保護層の外周面を被覆し、前記第3保護層の外側において前記ベース層の上面と接触する、請求項5に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含むベース層上にn型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層を形成する工程と、
前記n型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、
前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、
前記p型半導体層および前記活性層のそれぞれの一部を除去し、前記n型半導体層の上面を露出させる工程と、
前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を形成する工程と、
前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側被覆電極層を形成する工程と、
前記p側被覆電極層を被覆し、前記n型半導体層の前記上面を被覆し、前記活性層および前記p型半導体層と接触し、SiOから構成される第1保護層を形成する工程と、
前記n型半導体層の前記上面上の前記第1保護層を除去し、前記n型半導体層が露出する第1n側開口を形成する工程と、
前記第1保護層を被覆し、前記第1n側開口において前記n型半導体層と接触し、Alから構成される第2保護層を形成する工程と、
前記p側被覆電極層上の前記第2保護層を除去し、前記第1保護層が露出する第2p側開口を形成する工程と、
前記第1n側開口の内側において前記第2保護層を除去し、前記第1n側開口の形成範囲よりも小さい形成範囲を有する第2n側開口であって、前記n型半導体層が露出する第2n側開口を形成する工程と、
前記第2p側開口の内側において前記第1保護層を除去し、前記第2p側開口の形成範囲よりも小さい形成範囲を有する第1p側開口であって、前記p側被覆電極層が露出する第1p側開口を形成する工程と、
前記第2n側開口において前記n型半導体層の前記上面と接触し、前記第2n側開口の外側において前記第2保護層の上に重なるn側コンタクト電極を形成する工程と、
前記n側コンタクト電極の上面および側面を被覆し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むn側電流拡散層を形成する工程と、
前記第1p側開口において前記p側被覆電極層と接触し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むp側電流拡散層を形成する工程と、を備える半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1n側開口を形成する工程は、前記第1保護層をウェットエッチングによって除去し、
前記第1p側開口を形成する工程は、前記第1保護層をドライエッチングによって除去する、請求項8に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記n型半導体層の前記上面の外周領域にある前記第1保護層を除去し、前記n型半導体層が露出する第1外周開口を形成する工程をさらに備え、
前記第2保護層は、前記第1外周開口を規定する前記第1保護層の外周面を被覆し、前記第1外周開口において前記n型半導体層と接触する、請求項8または9に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、基板上に積層されるn型半導体層、活性層およびp型半導体層を有し、n型半導体層上にn側電極が設けられ、p型半導体層上にp側電極が設けられる。半導体発光素子の表面には、SiO、Al、SiNなどの誘電体材料から構成される被覆層が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-113741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体発光素子の信頼性をさらに向上させるためには、耐湿性のより優れた保護層が設けられることが好ましい。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、半導体発光素子の信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の半導体発光素子は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含むベース層と、ベース層上に設けられ、n型AlGaN系半導体材料から構成され、第1上面および第2上面を有するn型半導体層と、n型半導体層の第1上面に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、活性層上に設けられるp型半導体層と、p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側被覆電極層と、p側被覆電極層上に設けられる第1p側開口を有し、n型半導体層の第2上面上に設けられる第1n側開口を有し、第1p側開口とは異なる箇所においてp側被覆電極層を被覆し、第1n側開口とは異なる箇所においてn型半導体層の第2上面を被覆し、活性層およびp型半導体層と接触し、SiOから構成される第1保護層と、p側被覆電極層上に設けられる第2p側開口を有し、n型半導体層の第2上面上に設けられる第2n側開口を有し、第2p側開口の形成範囲が第1p側開口の形成範囲よりも大きく、第2n側開口の形成範囲が第1n側開口の形成範囲よりも小さく、第2p側開口および第2n側開口とは異なる箇所において第1保護層を被覆し、Alから構成される第2保護層と、第2n側開口においてn型半導体層の第2上面と接触するn側コンタクト電極と、n側コンタクト電極の上面および側面を被覆し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むn側電流拡散層と、第1p側開口においてp側被覆電極層と接触し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むp側電流拡散層と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含むベース層上にn型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層を形成する工程と、n型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、活性層上にp型半導体層を形成する工程と、p型半導体層および活性層のそれぞれの一部を除去し、n型半導体層の上面を露出させる工程と、p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を形成する工程と、p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側被覆電極層を形成する工程と、p側被覆電極層を被覆し、n型半導体層の上面を被覆し、活性層およびp型半導体層と接触し、SiOから構成される第1保護層を形成する工程と、n型半導体層の上面上の第1保護層を除去し、n型半導体層が露出する第1n側開口を形成する工程と、第1保護層を被覆し、第1n側開口においてn型半導体層と接触し、Alから構成される第2保護層を形成する工程と、p側被覆電極層上の第2保護層を除去し、第1保護層が露出する第2p側開口を形成する工程と、第1n側開口の内側において第2保護層を除去し、第1n側開口の形成範囲よりも小さい形成範囲を有する第2n側開口であって、n型半導体層が露出する第2n側開口を形成する工程と、第2p側開口の内側において第1保護層を除去し、第2p側開口の形成範囲よりも小さい形成範囲を有する第1p側開口であって、p側被覆電極層が露出する第1p側開口を形成する工程と、第2n側開口においてn型半導体層の上面と接触するn側コンタクト電極を形成する工程と、n側コンタクト電極の上面および側面を被覆し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むn側電流拡散層を形成する工程と、第1p側開口においてp側被覆電極層と接触し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むp側電流拡散層を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体発光素子の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
図2】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図3】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図4】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図5】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図6】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図7】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図8】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図9】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図10】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図11】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図12】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図13】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図14】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
図15】実施の形態に係る半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0011】
本実施形態に係る半導体発光素子は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成され、いわゆるDUV-LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施形態では、特に、中心波長λが約240nm~320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0012】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1-x-yAlGaN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」は、例えば、AlNおよびGaNのそれぞれのモル分率が1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0013】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、基板20と、ベース層22と、n型半導体層24と、活性層26と、p型半導体層28と、p側コンタクト電極30と、p側被覆電極層32と、第1保護層34と、第2保護層36と、n側コンタクト電極38と、n側電流拡散層40と、p側電流拡散層42と、第3保護層44と、第4保護層46と、p側パッド電極48と、n側パッド電極50とを備える。
【0015】
図1において、矢印Aで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、基板20から見て、基板20から離れる方向を上側、基板20に向かう方向を下側ということがある。
【0016】
基板20は、第1主面20aと、第1主面20aとは反対側の第2主面20bとを有する。第1主面20aは、ベース層22からp型半導体層28までの各層を成長させるための結晶成長面である。基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する材料から構成され、例えば、サファイア(Al)から構成される。第1主面20aには、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターンが形成される。このような基板20は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取り出し面である。基板20は、AlNから構成されてもよいし、AlGaNから構成されてもよい。基板20は、第1主面20aがパターン化されていない平坦面によって構成される通常の基板であってもよい。
【0017】
ベース層22は、基板20の第1主面20aの上に設けられる。ベース層22は、n型半導体層24を形成するための下地層(テンプレート層)である。ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT-AlN;High Temperature-AlN)層である。ベース層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層をさらに含んでもよい。基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、ベース層22は、アンドープのAlGaN層のみから構成されてもよい。つまり、ベース層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0018】
n型半導体層24は、ベース層22の上面22aに設けられる。n型半導体層24は、n型のAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、n型の不純物としてSiがドープされる。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように構成される。n型半導体層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように構成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように構成されることがより望ましい。n型半導体層24は、1μm以上3μm以下の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0019】
n型半導体層24は、不純物であるSiの濃度が1×1018/cm以上5×1019/cm以下となるように構成される。n型半導体層24は、Si濃度が5×1018/cm以上3×1019/cm以下となるように構成されることが好ましく、7×1018/cm以上2×1019/cm以下となるように構成されることがより好ましい。ある実施例において、n型半導体層24のSi濃度は、1×1019/cm前後であり、具体的には8×1018/cm以上1.5×1019/cm以下の範囲である。
【0020】
n型半導体層24は、第1上面24aと、第2上面24bと、側面24cとを有する。第1上面24aは、活性層26が形成される部分であり、第2上面24bは、活性層26が形成されない部分である。側面24cは、第1上面24aに対して第1角度θ1で傾斜している。第1角度θ1は、40度より大きく(つまり40度を含まない)、70度以下である。
【0021】
活性層26は、n型半導体層24の第1上面24aに設けられる。活性層26は、AlGaN系半導体材料から構成され、n型半導体層24とp型半導体層28の間に挟まれてダブルへテロ構造を形成する。活性層26は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長320nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0022】
活性層26は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される井戸層とを含む。活性層26は、例えば、n型半導体層24と接触する第1障壁層と、第1障壁層上に設けられる第1井戸層とを含む。第1井戸層とp型半導体層28の間に、障壁層および井戸層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層のそれぞれは、1nm以上20nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上10nm以下の厚さを有する。活性層26は、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)26bを有する。第2角度θ2は、第1角度θ1よりも小さく、40度以下である。
【0023】
活性層26とp型半導体層28の間には、電子ブロック層がさらに設けられてもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように構成される。電子ブロック層は、AlNのモル分率が80%以上となるように構成されてもよく、GaNを含有しないAlN系半導体材料から構成されてもよい。電子ブロック層は、1nm以上10nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上5nm以下の厚さを有する。電子ブロック層は、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)を有する。
【0024】
p型半導体層28は、活性層26の上に形成される。p型半導体層28は、p型のAlGaN系半導体材料層またはp型のGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層またはGaN層である。p型半導体層28は、例えば、20nm以上400nm以下の厚さを有する。p型半導体層28は、第2角度θ2で傾斜する側面(または傾斜面)28bを有する。
【0025】
p型半導体層28は、複数層によって構成されてもよい。p型半導体層28は、例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層を有してもよい。p型クラッド層は、p型コンタクト層と比較してAlN比率の高いp型AlGaN層であり、活性層26と接触するように設けられる。p型コンタクト層は、p型クラッド層と比較してAlN比率の低いp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p型クラッド層の上に設けられ、p側コンタクト電極30と接触するように設けられる。p型クラッド層は、p型第1クラッド層と、p側第2クラッド層とを有してもよい。
【0026】
p型第1クラッド層は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択される。p型第1クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。p型第1クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率と同程度、または、n型半導体層24のAlN比率よりも大きい。p型クラッド層のAlN比率は、70%以上または80%以上であってもよい。p型第1クラッド層は、10nm以上100nm以下の厚さを有し、例えば、15nm以上70nm以下の厚さを有する。
【0027】
p型第2クラッド層は、p型第1クラッド層上に設けられる。p型第2クラッド層は、AlN比率が中程度のp型AlGaN層であり、p型第1クラッド層よりもAlN比率が低く、p型コンタクト層よりもAlN比率が高い。p型第2クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。p型第2クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率の±10%程度となるように形成される。p型第2クラッド層は、5nm以上250nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上150nm以下の厚さを有する。なお、p型第2クラッド層が設けられなくてもよく、p型クラッド層がp型第1クラッド層のみで構成されてもよい。
【0028】
p型コンタクト層は、相対的に低AlN比率のp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p側コンタクト電極30と良好なオーミック接触を得るためにAlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。つまり、p型コンタクト層は、実質的にAlNを含まないp型GaN系半導体材料で形成されうる。その結果、p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光を吸収しうる。p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光の吸収量を小さくするために薄く形成されることが好ましい。p型コンタクト層は、5nm以上30nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上20nm以下の厚さを有する。
【0029】
p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aに設けられる。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28(例えば、p型コンタクト層)とオーミック接触可能であり、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aと接触するRh層を含む。p側コンタクト電極30は、例えばRh層のみからなる。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の厚さは、50nm以上200nm以下であり、例えば70nm以上150nm以下である。
【0030】
p側被覆電極層32は、p側コンタクト電極30の上面および側面と接触し、p側コンタクト電極30の全体を被覆するように設けられる。p側被覆電極層32は、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含む。p側被覆電極層32のTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側被覆電極層32のRh層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。p側被覆電極層32のTiN層は、導電性を有するTiNから構成される。p側被覆電極層32のTiN層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0031】
第1保護層34は、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28およびp側被覆電極層32と接触し、これらを被覆する。第1保護層34は、n型半導体層24の第2上面24b上に設けられる第1n側開口34nを有し、第1n側開口34nとは異なる箇所においてn型半導体層24の第2上面24bを被覆する。第1保護層34は、p側被覆電極層32上に設けられる第1p側開口34pを有し、第1p側開口34pとは異なる箇所においてp側被覆電極層32の上面および側面を被覆する。
【0032】
第1保護層34は、SiO、Al、HfOなどの酸化物誘電体材料から構成される。第1保護層34は、好ましくはSiOから構成される。第1保護層34の厚さは、50nm以上であり、例えば100nm以上500nm以下である。
【0033】
第2保護層36は、第1保護層34と接触し、第1保護層34を被覆する。第2保護層36は、n型半導体層24の第2上面24b上に設けられる第2n側開口36nを有し、p側被覆電極層32の上に設けられる第2p側開口36pを有する。第2保護層36は、第2n側開口36nおよび第2p側開口36pとは異なる箇所において第1保護層34を被覆する。第2保護層36は、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28、p側コンタクト電極30およびp側被覆電極層32の上に重なるように設けられる。
【0034】
第2保護層36の第2n側開口36nの形成範囲W2nは、第1保護層34の第1n側開口34nの形成範囲W1nよりも小さい。第2n側開口36nは、第1n側開口34nの内側に位置し、第1n側開口34nと連通する。第2保護層36は、第1n側開口34nを規定する第1保護層34の内周面34bを被覆する。第2保護層36は、第1n側開口34nの内側において、n型半導体層24の第2上面24bと接触する。第2保護層36は、第1保護層34の外周を規定する外周面34cをさらに被覆する。第2保護層36は、第1保護層34の外周面34cの外側において、n型半導体層24の第2上面24bと接触する。
【0035】
第2保護層36の第2p側開口36pの形成範囲W2pは、第1保護層34の第1p側開口34pの形成範囲W1pよりも大きい。第1p側開口34pは、第2p側開口36pの内側に位置し、第2p側開口36pと連通する。第2保護層36は、第1p側開口34pを規定する第1保護層34の内周面34dを被覆しない。第2保護層36は、第1p側開口34pにおいてp側被覆電極層32と接触しない。
【0036】
第2保護層36は、SiO、Al、HfOなどの酸化物誘電体材料から構成され、第1保護層34とは異なる材料から構成される。第2保護層36は、好ましくはAlから構成される。第2保護層36の厚さは、10nm以上100nm以下であり、例えば20nm以上50nm以下である。
【0037】
n側コンタクト電極38は、第2n側開口36nにおいてn型半導体層24の第2上面24bと接触する。n側コンタクト電極38は、第2n側開口36nを塞ぐように設けられ、第2n側開口36nの外側において第2保護層36の上に重なる。n側コンタクト電極38は、第2n側開口36nの外側において第2保護層36と接触する。n側コンタクト電極38の形成範囲は、第2n側開口36nの形成範囲W2nよりも大きい。n側コンタクト電極38の形成範囲は、第1n側開口34nの形成範囲W1nより大きくてもよい。n側コンタクト電極38は、第1保護層34とは接触しない。
【0038】
n側コンタクト電極38は、例えば、第1Ti層、Al層、第2Ti層、TiN層を順に積層させたTi/Al/Ti/TiNの積層構造を有する。n側コンタクト電極38の第1Ti層は、n型半導体層24の第2上面24bと接触する。n側コンタクト電極38の第1Ti層の厚さは、1nm以上10nm以下であり、好ましくは5nm以下または2nm以下である。n側コンタクト電極38のAl層は、第1Ti層上に設けられ、第1Ti層と接触する。n側コンタクト電極38のAl層の厚さは、200nm以上であり、例えば300nm以上1000nm以下である。n側コンタクト電極38の第2Ti層は、Al層上に設けられ、Al層と接触する。n側コンタクト電極38の第2Ti層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側コンタクト電極38のTiN層は、第2Ti層上に設けられ、第2Ti層と接触する。n側コンタクト電極38のTiN層は、導電性を有するTiNから構成される。n側コンタクト電極38のTiN層の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0039】
n側電流拡散層40は、n側コンタクト電極38の上面および側面と接触し、n側電流拡散層40の全体を被覆する。n側電流拡散層40は、第1TiN層、金属層および第2TiN層を順に積層させた構造を有する。n側電流拡散層40は、第1TiN層の下に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。n側電流拡散層40は、第2TiN層の上に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。n側電流拡散層40は、例えば、Ti層、第1TiN層、Ti層、Rh層、第2TiN層、Ti層、Au層を順に積層させたTi/TiN/Ti/Rh/TiN/Ti/Auの積層構造を有する。
【0040】
n側電流拡散層40の第1TiN層および第2TiN層は、導電性を有するTiNから構成される。n側電流拡散層40の第1TiN層および第2TiN層のそれぞれ厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。n側電流拡散層40の第1TiN層および第2TiN層の間に設けられるTi層およびRh層のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。n側電流拡散層40は、第1TiN層と第2TiN層の間において、交互に積層される複数のTi層および複数のRh層を有してもよい。n側電流拡散層40の第1TiN層の下に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側電流拡散層40の第2TiN層の上に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側電流拡散層40のAu層の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。
【0041】
p側電流拡散層42は、p側被覆電極層32上に設けられ、第1p側開口34pおよび第2p側開口36pにおいてp側被覆電極層32と接続する。p側電流拡散層42は、p側被覆電極層32を介してp側コンタクト電極30と電気的に接続する。p側電流拡散層42は、第1p側開口34pおよび第2p側開口36pを塞ぐように設けられ、第2p側開口36pの外側において第2保護層36の上に重なる。p側電流拡散層42の形成範囲は、第2p側開口36pの形成範囲W2pよりも大きい。p側電流拡散層42は、第1p側開口34pを規定する第1保護層34の内周面34dを被覆し、内周面34dと接触する。
【0042】
p側電流拡散層42は、n側電流拡散層40と同様の構成を有し、第1TiN層、金属層および第2TiN層を順に積層させた構造を有する。p側電流拡散層42は、第1TiN層の下に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。p側電流拡散層42は、第2TiN層の上に設けられる追加の金属層をさらに有してもよい。p側電流拡散層42は、例えば、Ti層、第1TiN層、Ti層、Rh層、第2TiN層、Ti層、Au層を順に積層させたTi/TiN/Ti/Rh/TiN/Ti/Auの積層構造を有する。
【0043】
p側電流拡散層42の第1TiN層および第2TiN層は、導電性を有するTiNから構成される。p側電流拡散層42の第1TiN層および第2TiN層のそれぞれ厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。p側電流拡散層42の第1TiN層および第2TiN層の間に設けられるTi層およびRh層のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。p側電流拡散層42は、第1TiN層と第2TiN層の間において、交互に積層される複数のTi層および複数のRh層を有してもよい。p側電流拡散層42の第1TiN層の下に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側電流拡散層42の第2TiN層の上に設けられるTi層の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側電流拡散層42のAu層の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。
【0044】
第3保護層44は、素子上部の全体を被覆する。第3保護層44は、n型半導体層24、第2保護層36、n側電流拡散層40およびp側電流拡散層42を被覆する。第3保護層44は、n側電流拡散層40の上に設けられる第3n側開口44nと、p側電流拡散層42の上に設けられる第3p側開口44pとを有する。第3保護層44は、第3n側開口44nとは異なる箇所においてn側電流拡散層40を被覆し、第3p側開口44pと異なる箇所においてp側電流拡散層42を被覆する。第3保護層44は、n型半導体層24の外周よりも外側においてベース層22と接触する。第3保護層44は、ベース層22の上面22aと接触し、n型半導体層24の側面24cと接触し、第2保護層36と接触し、n側電流拡散層40と接触し、p側電流拡散層42と接触する。第3保護層44は、第2保護層36の外周を規定する外周面36cと接触し、外周面36cを被覆する。第3保護層44は、第1保護層34とは接触しない。
【0045】
第3保護層44は、酸化シリコン(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)などの酸化物誘電体材料から構成される。第3保護層44は、好ましくはSiOから構成される。第3保護層44の厚さは、300nm以上1500nm以下であり、例えば600nm以上1000nm以下である。
【0046】
第4保護層46は、素子上部の全体を被覆し、第3保護層44の表面全体を被覆する。第4保護層46は、p側電流拡散層42の上に設けられる第4p側開口46pと、n側電流拡散層40の上に設けられる第4n側開口46nとを有する。第4保護層46は、第4p側開口46pおよび第4n側開口46nとは異なる箇所において第3保護層44を被覆する。第4保護層46は、第3p側開口44pおよび第3n側開口44nのそれぞれの内側にも設けられる。第4保護層46は、第3p側開口44pを規定する第3保護層44の内周面44cを被覆し、第3n側開口44nを規定する第3保護層44の内周面44dを被覆する。第4p側開口46pは、第3p側開口44pの内側にあり、第4p側開口46pの形成範囲は、第3p側開口44pの形成範囲よりも小さい。同様に、第4n側開口46nは、第3n側開口44nの内側にあり、第4n側開口46nの形成範囲は、第3n側開口44nの形成範囲よりも小さい。第4保護層46は、第3保護層44の外周を規定する外周面44eよりも外側においてベース層22と接触する。第4保護層46は、ベース層22の上面22aに接触し、第3保護層44の上面44aおよび側面44bに接触し、第3保護層44の内周面44c,44dに接触し、第3保護層44の外周面44eに接触し、p側電流拡散層42に接触し、n側電流拡散層40に接触する。
【0047】
第4保護層46は、耐湿性に優れた誘電体材料である窒化シリコン(SiN)から構成される。第4保護層46の厚さは、50nm以上500nm以下であり、例えば100nm以上400nm以下である。
【0048】
p側パッド電極48およびn側パッド電極50は、半導体発光素子10をサブマウント基板などに実装する際に接合される部分である。p側パッド電極48およびn側パッド電極50は、例えば、Ni/Au、Ti/AuまたはTi/Pt/Auの積層構造を含む。p側パッド電極48およびn側パッド電極50のそれぞれの厚さは、100nm以上であり、例えば200nm以上1000nm以下である。
【0049】
p側パッド電極48は、p側電流拡散層42の上に設けられ、第4p側開口46pにおいてp側電流拡散層42と接続する。p側パッド電極48は、第4p側開口46pを塞ぐように設けられ、第4p側開口46pの外側において第4保護層46の上に重なる。p側パッド電極48の形成範囲は、第4p側開口46pの形成範囲よりも大きい。p側パッド電極48は、第3p側開口44pの外側において第3保護層44の上に重なってもよい。p側パッド電極48の形成範囲は、第3p側開口44pの形成範囲より大きくてもよい。p側パッド電極48は、p側電流拡散層42を介してp側コンタクト電極30と電気的に接続される。
【0050】
n側パッド電極50は、n側電流拡散層40の上に設けられ、第4n側開口46nにおいてn側電流拡散層40と接続する。n側パッド電極50は、第4n側開口46nを塞ぐように設けられ、第4n側開口46nの外側において第4保護層46の上に重なる。n側パッド電極50の形成範囲は、第4n側開口46nの形成範囲よりも大きい。n側パッド電極50は、第3n側開口44nの外側において第3保護層44の上に重なってもよい。n側パッド電極50の形成範囲は、第3n側開口44nの形成範囲より大きくてもよい。n側パッド電極50は、n側電流拡散層40を介してn側コンタクト電極38と電気的に接続される。
【0051】
つづいて、実施の形態に係る半導体発光素子10の製造方法について説明する。図2図15は、実施の形態に係る半導体発光素子10の製造工程を概略的に示す。まず、図2において、基板20の第1主面20aの上にベース層22、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28を順に形成する。
【0052】
基板20は、例えばパターン化サファイア基板である。ベース層22は、例えばHT-AlN層と、アンドープのAlGaN層とを含む。n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28は、AlGaN系半導体材料、AlN系半導体材料またはGaN系半導体材料から構成される半導体層であり、有機金属化学気相成長(MOVPE;Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法や、分子線エピタキシ(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0053】
つづいて、図2に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層28の上面28aにマスク80を形成する。マスク80を形成した状態において、マスク80と重ならない領域にあるp型半導体層28および活性層26をドライエッチングなどにより除去し、n型半導体層24の第2上面24bを露出させる。このエッチング工程により、p型半導体層28の側面28b、活性層26の側面26bおよびn型半導体層24の第2上面24bが形成される。その後、マスク80が除去される。
【0054】
次に、図3に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層28の上面28aにp側コンタクト電極30を形成する。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aと接触するRh層を含む。p側コンタクト電極30のRh層は、例えば、蒸着法により100℃以下の温度で形成される。蒸着法によりRh層を形成することにより、スパッタリング法を用いる場合に比べて、p型半導体層28の上面28aに対するダメージを抑制でき、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗を向上できる。
【0055】
p側コンタクト電極30の形成後、p側コンタクト電極30をアニールする。p側コンタクト電極30は、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。p側コンタクト電極30のアニール処理により、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗が低下する。p側コンタクト電極30のアニール処理により、p側コンタクト電極30の膜密度が上がり、p側コンタクト電極30の反射率が向上する。アニール処理後におけるp側コンタクト電極30のRh層の波長280nmに対する反射率は、65%以上であり、例えば67%である。
【0056】
つづいて、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p側コンタクト電極30の全体を被覆するようにp側被覆電極層32を形成する。p側被覆電極層32は、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bと接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含む。p側被覆電極層32は、スパッタリング法により形成できる。
【0057】
次に、図4に示すように、素子上部の全体を被覆するように第1保護層34を形成する。第1保護層34は、例えばSiOから構成され、プラズマ励起化学気相成長(PECVD;Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により形成できる。第1保護層34は、n型半導体層24の第2上面24bを被覆し、活性層26の側面26bを被覆し、p型半導体層28の上面28aおよび側面28bを被覆し、p側被覆電極層32の上面32aおよび側面32bを被覆する。
【0058】
次に、図5に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第1保護層34の上にマスク82を形成する。マスク82は、第1n側開口34nの形成範囲W1nと、第1外周開口34eの形成範囲W1eとを除いて形成される。マスク82を形成した状態において、マスク82と重ならない領域にある第1保護層34をウェットエッチングまたはドライエッチングにより除去する。第1保護層34をウェットエッチングする場合、ドライエッチングに比べて、n型半導体層24の第2上面24bへのダメージを抑制できる。n型半導体層24の第2上面24bの外周領域において第1保護層34を除去することにより、n型半導体層24の第2上面24bが露出する第1外周開口34eが形成される。また、n型半導体層24の第2上面24bの外周領域よりも内側の領域において第1保護層34を除去することにより、n型半導体層24の第2上面24bが露出する第1n側開口34nが形成される。これにより、第1n側開口34nを規定する第1保護層34の内周面34bが形成され、第1保護層34の外周を規定する外周面34cが形成される。その後、マスク82が除去される。なお、第1n側開口34nと第1外周開口34eは、同時に形成されなくてもよく、別々のマスクを用いて個別に形成されてもよい。
【0059】
次に、図6に示すように、素子上部の全体を被覆するように第2保護層36を形成する。第2保護層36は、例えばAlから構成され、原子堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法により形成できる。第2保護層36は、第1保護層34の全体を被覆し、n型半導体層24の第2上面24bを被覆する。第2保護層36は、第1n側開口34nにおいて、n型半導体層24の第2上面24bを被覆し、第1保護層34の内周面34bを被覆する。第2保護層36は、第1外周開口34eにおいて、n型半導体層24の第2上面24bを被覆し、第1保護層34の外周面34cを被覆する。
【0060】
次に、図7に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第2保護層36の上にマスク84を形成する。マスク84は、第2n側開口36nの形成範囲W2nと、第2p側開口36pの形成範囲W2pとを除いて形成される。マスク84を形成した状態において、マスク84と重ならない領域にある第2保護層36をドライエッチングにより除去する。第2保護層36を部分的に除去することにより、n型半導体層24の第2上面24bが露出する第2n側開口36nと、第1保護層34の上面34aが露出する第2p側開口36pとが形成される。その後、マスク84が除去される。なお、第2n側開口36nと第2p側開口36pは、同時に形成されなくてもよく、別々のマスクを用いて個別に形成されてもよい。
【0061】
次に、図8に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、n型半導体層24、第1保護層34および第2保護層36の上にマスク86を形成する。マスク86は、第1p側開口34pの形成範囲W1pを除いて形成される。マスク86を形成した状態において、マスク86と重ならない領域にある第1保護層34をドライエッチングにより除去する。第1保護層34を部分的に除去することにより、p側被覆電極層32の上面32aが露出する第1p側開口34pが形成される。その後、マスク86が除去される。
【0062】
次に、図9に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、n側コンタクト電極38を形成する。n側コンタクト電極38は、第2n側開口36nの内側においてn型半導体層24の第2上面24bに接触し、第2n側開口36nの外側において第2保護層36に接触する。n側コンタクト電極38の形成範囲は、第2n側開口36nの形成範囲W2nより大きい。n側コンタクト電極38の形成範囲は、第1n側開口34nの形成範囲W1nより大きくてもよい。n側コンタクト電極38は、順に積層される第1Ti層、Al層、第2Ti層およびTiN層を含む。n側コンタクト電極38を構成する第1Ti層、Al層、第2Ti層およびTiN層は、スパッタリング法により形成できる。
【0063】
n側コンタクト電極38の形成後、n側コンタクト電極38をアニールする。n側コンタクト電極38は、例えば、RTA法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。n側コンタクト電極38のアニール処理により、n側コンタクト電極38のn型半導体層24に対するコンタクト抵抗が低下する。
【0064】
次に、図10に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、n側電流拡散層40およびp側電流拡散層42を形成する。n側電流拡散層40は、n側コンタクト電極38の上面および側面を被覆するように形成される。n側電流拡散層40は、第2n側開口36nの外側において第2保護層36に接触する。n側電流拡散層40の形成範囲は、第2n側開口36nの形成範囲W2nよりも大きい。n側電流拡散層40の形成範囲は、第1n側開口34nの形成範囲W1nより大きくてもよい。p側電流拡散層42は、第1p側開口34pの内側において、p側被覆電極層32の上面32aと接触する。p側電流拡散層42は、第1p側開口34pの外側かつ第2n側開口36nの内側において第1保護層34に接触し、第2p側開口36pの外側において第2保護層36に接触する。p側電流拡散層42は、第1p側開口34pおよび第2p側開口36pを塞ぐように形成される。p側電流拡散層42の形成範囲は、第2p側開口36pの形成範囲W2pより大きい。n側電流拡散層40およびp側電流拡散層42は、例えば、順に積層されるTi層、第1TiN層、Ti層、Rh層、第2TiN層、Ti層およびAu層を含む。n側電流拡散層40およびp側電流拡散層42は、スパッタリング法を用いて100℃以下の温度で形成できる。n側電流拡散層40およびp側電流拡散層42は、同時に形成できるが、別々に形成されてもよい。
【0065】
次に、図11に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第2保護層36、n側電流拡散層40およびp側電流拡散層42の上にマスク88を形成する。マスク88を形成した状態において、マスク88と重ならない外周領域にあるn型半導体層24および第2保護層36をドライエッチングなどにより除去し、ベース層22の上面22aを露出させる。このエッチング工程により、n型半導体層24の側面24cおよび第2保護層36の外周面36cが形成される。第2保護層36の外周面36cは、第1保護層34の外周面34cよりも外側に位置するように形成される。そのため、第1保護層34の外周面34cは、第2保護層36によって被覆されたままである。その後、マスク88が除去される。
【0066】
次に、図12に示すように、素子上部の全体を被覆するように第3保護層44を形成する。第3保護層44は、SiOから構成されることができ、PECVD法を用いて形成できる。第3保護層44は、ベース層22の上面22aと、n型半導体層24の側面24cと、第2保護層36と、n側電流拡散層40と、p側電流拡散層42とに接触し、これらを被覆するように形成される。第3保護層44は、第2保護層36の外周面36cと接触し、これを被覆する。第3保護層44は、第1保護層34とは接触しない。
【0067】
次に、図13に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第3保護層44の上にマスク90を形成する。マスク90は、第3p側開口44pの形成範囲W3pと、第3n側開口44nの形成範囲W3nと、ベース層22の上面22aを露出させるための外周範囲W3eとを除いて形成される。マスク90を形成した状態において、マスク90と重ならない領域にある第3保護層44をドライエッチングなどにより除去する。p側電流拡散層42上の第3保護層44を除去することにより、p側電流拡散層42の上面42aが露出する第3p側開口44pが形成される。n側電流拡散層40上の第3保護層44を除去することにより、n側電流拡散層40の上面40aが露出する第3n側開口44nが形成される。また、外周範囲W3eにある第3保護層44を除去することにより、ベース層22の上面22aが露出し、第3保護層44の外周を規定する外周面44eが形成される。その後、マスク90が除去される。
【0068】
次に、図14に示すように、素子上部の全体を被覆するように第4保護層46を形成する。第4保護層46は、SiNから構成されることができ、PECVD法を用いて形成できる。第4保護層46は、ベース層22の上面22aと、第3保護層44の上面44aおよび側面44bと接触し、これらを被覆するように形成される。第4保護層46は、第3p側開口44pにおいて、第3p側開口44pを規定する第3保護層44の内周面44cと接触し、p側電流拡散層42の上面42aと接触し、これらを被覆する。第4保護層46は、第3n側開口44nにおいて、第3n側開口44nを規定する第3保護層44の内周面44dと接触し、n側電流拡散層40の上面40aと接触し、これらを被覆する。第4保護層46は、第3保護層44の外周面44eと接触し、これを被覆する。
【0069】
次に、図15に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第4保護層46の上にマスク92を形成する。マスク92は、第4p側開口46pの形成範囲W4pと、第4n側開口46nの形成範囲W4nと、ベース層22の上面22aを露出させる外周範囲W4eとを除いて形成される。マスク92を形成した状態において、マスク92と重ならない領域にある第4保護層46をドライエッチングなどにより除去する。p側電流拡散層42上の第4保護層46を除去することにより、p側電流拡散層42の上面42aが露出する第4p側開口46pが形成される。n側電流拡散層40上の第4保護層46を除去することにより、n側電流拡散層40の上面40aが露出する第4n側開口46nが形成される。また、外周範囲W2eにある第4保護層46を除去することにより、ベース層22の上面22aが露出する。外周範囲W2eは、基板20およびベース層22を切断して素子を個片化するための素子分離領域となる。第4保護層46が除去される外周範囲W2eは、第3保護層44の外周面44eよりも外側に位置する。そのため、第3保護層44の外周面44eは、第4保護層46によって被覆されたままである。その後、マスク92が除去される。
【0070】
次に、図1に示すように、第4p側開口46pにおいてp側電流拡散層42と接続するp側パッド電極48を形成し、第4n側開口46nにおいてn側電流拡散層40と接続するn側パッド電極50を形成する。p側パッド電極48は、第4p側開口46pの外側において第4保護層46の上に重なるように形成される。n側パッド電極50は、第4n側開口46nの外側において第4保護層46の上に重なるように形成される。p側パッド電極48およびn側パッド電極50は、同時に形成できるが、別々に形成されてもよい。
【0071】
以上の工程により、図1に示す半導体発光素子10ができあがる。
【0072】
本実施形態によれば、第1保護層34および第2保護層36を含む積層構造によって、n型半導体層24の第2上面24b、活性層26およびp型半導体層28を被覆できるため、n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28の封止性を高めることができる。第1n側開口34nにおいて第1保護層34の内周面34bを第2保護層36で被覆することにより、封止性を向上できる。また、第1保護層34の外周面34cを第2保護層36で被覆することにより、封止性を向上できる。
【0073】
本実施形態によれば、第1保護層34が第3保護層44と直接接触せず、第1保護層34と第3保護層44の間に第2保護層36が挿入される素子構造を実現できる。そのため、第1保護層34と第3保護層44の材料が同じ場合に、第1保護層34に形成されるピンホールが第3保護層44に引き継がれることを防止でき、第3保護層44による封止性を向上できる。
【0074】
本実施形態によれば、第1保護層34、第2保護層36、第3保護層44および第4保護層46を含む4層構造によって、素子上部を被覆することにより、半導体発光素子10の耐湿性を向上できる。特に、SiOから構成される第3保護層44と、SiNから構成される第4保護層46とを組み合わせることにより、半導体発光素子10の耐湿性を向上できる。また、第3p側開口44pおよび第3n側開口44nを規定する第3保護層44の内周面44c,44dを第4保護層46によって被覆することにより、半導体発光素子10の耐湿性を向上できる。
【0075】
本実施形態によれば、第3保護層44の側面44bの全体および外周面44eを第4保護層46によって被覆することにより、半導体発光素子10の耐湿性をさらに向上できる。言い換えれば、第4保護層46がベース層22と接触することにより、第3保護層44の外周において第3保護層44が第4保護層46によって被覆されずに外部に露出することを防ぐことができる。
【0076】
本実施形態によれば、p側パッド電極48およびn側パッド電極50のそれぞれは、第4保護層46と接触し、第3保護層44と接触しないため、第3保護層44の上に第4保護層46が重なる箇所にp側パッド電極48およびn側パッド電極50を形成できる。そのため、p側パッド電極48およびn側パッド電極50の形成箇所における封止性を高め、半導体発光素子10の耐湿性をさらに向上できる。
【0077】
本実施形態に係る半導体発光素子10は、耐湿性に優れるため、パッケージ内に封止することなく使用できる。半導体発光素子10は、第4保護層46が外部環境に露出した状態のまま通電使用でき、例えば、チップオンサブマウント(CoS;Chip on Submount)の形態で使用できる。
【0078】
本実施形態によれば、第2保護層36がp側被覆電極層32と直接接触しない構造とすることにより、第2保護層36を除去して第2p側開口36pを形成するエッチング工程において、p側被覆電極層32にダメージが生じることを防止できる。第2保護層36がAlから構成される場合、AlがSiOよりもエッチングされにくい材料であるため、第2保護層36のドライエッチング工程におけるパワーや処理時間を増やす必要がある。そのため、第2保護層36の除去によって露出する表面へのダメージが大きくなりやすい。本実施形態によれば、第2保護層36を除去して第2p側開口36pを形成する際に第1保護層34が露出するため、p側被覆電極層32へのダメージを防止できる。その結果、p側コンタクト電極30およびp側被覆電極層32の劣化を抑制し、p側コンタクト電極30の反射特性の低下を抑制できる。
【0079】
本実施形態によれば、第1保護層34をウェットエッチングにより除去して第1n側開口34nを形成することにより、ドライエッチングに比べて、n型半導体層24へのダメージを抑制できる。また、第1保護層34をドライエッチングにより除去して第1p側開口34pを形成することにより、ウェットエッチングに比べて、p側被覆電極層32へのダメージを抑制できる。
【0080】
以上、本発明を実施形態にもとづいて説明した。本発明は上述の実施形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0081】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0082】
本発明の第1の態様は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含むベース層と、前記ベース層上に設けられ、n型AlGaN系半導体材料から構成され、第1上面および第2上面を有するn型半導体層と、前記n型半導体層の前記第1上面に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、前記活性層上に設けられるp型半導体層と、前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側被覆電極層と、前記p側被覆電極層上に設けられる第1p側開口を有し、前記n型半導体層の前記第2上面上に設けられる第1n側開口を有し、前記第1p側開口とは異なる箇所において前記p側被覆電極層を被覆し、前記第1n側開口とは異なる箇所において前記n型半導体層の前記第2上面を被覆し、前記活性層および前記p型半導体層と接触し、SiOから構成される第1保護層と、前記p側被覆電極層上に設けられる第2p側開口を有し、前記n型半導体層の前記第2上面上に設けられる第2n側開口を有し、前記第2p側開口の形成範囲が前記第1p側開口の形成範囲よりも大きく、前記第2n側開口の形成範囲が前記第1n側開口の形成範囲よりも小さく、前記第2p側開口および前記第2n側開口とは異なる箇所において前記第1保護層を被覆し、Alから構成される第2保護層と、前記第2n側開口において前記n型半導体層の前記第2上面と接触するn側コンタクト電極と、前記n側コンタクト電極の上面および側面を被覆し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むn側電流拡散層と、前記第1p側開口において前記p側被覆電極層と接触し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むp側電流拡散層と、を備える半導体発光素子である。第1の態様によれば、第1保護層および第2保護層の積層構造によって、n型半導体層の第2上面、活性層およびp型半導体層を被覆できるため、封止性を向上できる。
【0083】
本発明の第2の態様は、前記第2保護層は、前記第1n側開口を規定する前記第1保護層の内周面を被覆し、前記第1n側開口の内側において前記n型半導体層の前記第2上面と接触する、第1の態様に記載の半導体発光素子である。第2の態様によれば、第1保護層の内周面を第2保護層によって被覆できるため、封止性をさらに向上できる。
【0084】
本発明の第3の態様は、前記第2保護層は、前記第1保護層の外周面を被覆し、前記第1保護層の外側において前記n型半導体層の前記第2上面と接触する、第1または第2の態様に記載の半導体発光素子である。第3の態様によれば、第1保護層の外周面を第2保護層で被覆できるため、封止性をさらに向上できる。
【0085】
本発明の第4の態様は、前記第2保護層は、前記p側被覆電極層と接触しない、第1から第3のいずれか一つの態様に記載の半導体発光素子である。第4の態様によれば、第2保護層がp側被覆電極層と直接接触しないため、第2保護層を除去して第2p側開口を形成する際にp側被覆電極層へダメージが生じることを防止できる。これにより、反射電極として機能するp側コンタクト電極およびp側被覆電極層の劣化を抑制し、半導体発光素子の外部取り出し効率を向上できる。
【0086】
本発明の第5の態様は、前記p側電流拡散層上に設けられる第3p側開口と、前記n側電流拡散層上に設けられる第3n側開口とを有し、前記第3p側開口および前記第3n側開口とは異なる箇所において、前記第2保護層、前記p側電流拡散層および前記n側電流拡散層を被覆し、SiOから構成される第3保護層と、前記第3p側開口において前記p側電流拡散層と接続するp側パッド電極と、前記第3n側開口において前記n側電流拡散層と接続するn側パッド電極と、をさらに備える、第1から第4のいずれか一つの態様に記載の半導体発光素子である。第5の態様によれば、第3保護層をさらに設けることにより、封止性をさらに向上できる。
【0087】
本発明の第6の態様は、前記第3保護層は、前記第2保護層の外周面を被覆し、前記第2保護層の外側において前記ベース層の上面と接触する、第5の態様に記載の半導体発光素子である。第6の態様によれば、第2保護層の外周面を第3保護層で被覆できるため、封止性をさらに向上できる。
【0088】
本発明の第7の態様は、前記p側電流拡散層上において前記第3p側開口の内側に設けられる第4p側開口と、前記n側電流拡散層上において前記第3n側開口の内側に設けられる第4n側開口とを有し、前記第4p側開口および前記第4n側開口とは異なる箇所において、前記第3保護層、前記p側電流拡散層および前記n側電流拡散層を被覆し、SiNから構成される第4保護層をさらに備え、前記p側パッド電極は、前記第4p側開口において前記p側電流拡散層と接続し、前記n側パッド電極は、前記第4n側開口において前記n側電流拡散層と接続し、前記第4保護層は、前記第3保護層の外周面を被覆し、前記第3保護層の外側において前記ベース層の上面と接触する、第5または第6の態様に記載の半導体発光素子である。第7の態様によれば、第4保護層をさらに設けることにより、封止性をさらに向上できる。また、第3保護層の外周面を第4保護層で被覆できるため、封止性をさらに向上できる。
【0089】
本発明の第8の態様は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含むベース層上にn型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層を形成する工程と、前記n型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、前記p型半導体層および前記活性層のそれぞれの一部を除去し、前記n型半導体層の上面を露出させる工程と、前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を形成する工程と、前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側被覆電極層を形成する工程と、前記p側被覆電極層を被覆し、前記n型半導体層の前記上面を被覆し、前記活性層および前記p型半導体層と接触し、SiOから構成される第1保護層を形成する工程と、前記n型半導体層の前記上面上の前記第1保護層を除去し、前記n型半導体層が露出する第1n側開口を形成する工程と、前記第1保護層を被覆し、前記第1n側開口において前記n型半導体層と接触し、Alから構成される第2保護層を形成する工程と、前記p側被覆電極層上の前記第2保護層を除去し、前記第1保護層が露出する第2p側開口を形成する工程と、前記第1n側開口の内側において前記第2保護層を除去し、前記第1n側開口の形成範囲よりも小さい形成範囲を有する第2n側開口であって、前記n型半導体層が露出する第2n側開口を形成する工程と、前記第2p側開口の内側において前記第1保護層を除去し、前記第2p側開口の形成範囲よりも小さい形成範囲を有する第1p側開口であって、前記p側被覆電極層が露出する第1p側開口を形成する工程と、前記第2n側開口において前記n型半導体層の前記上面と接触するn側コンタクト電極を形成する工程と、前記n側コンタクト電極の上面および側面を被覆し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むn側電流拡散層を形成する工程と、前記第1p側開口において前記p側被覆電極層と接触し、順に積層されるTiN層、金属層およびTiN層を含むp側電流拡散層を形成する工程と、を備える半導体発光素子の製造方法である。第8の態様によれば、第1保護層および第2保護層の積層構造によって、n型半導体層の第2上面、活性層およびp型半導体層を被覆できるため、封止性を向上できる。また、第1保護層によってp側被覆電極層32が被覆されている状態で第2p側開口を形成できるため、第2p側開口の形成時におけるp側被覆電極層32へのダメージを防止できる。
【0090】
本発明の第9の態様は、前記第1n側開口を形成する工程は、前記第1保護層をウェットエッチングによって除去し、前記第1p側開口を形成する工程は、前記第1保護層をドライエッチングによって除去する、第8の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第9の態様によれば、第1保護層をウェットエッチングして前記第1n側開口を形成することによって、n型半導体層24へのダメージを抑制できる。また、第1保護層をドライエッチングして第1p側開口を形成することにより、p側被覆電極層32へのダメージを抑制できる。
【0091】
本発明の第10の態様は、前記n型半導体層の前記上面の外周領域にある前記第1保護層を除去し、前記n型半導体層が露出する第1外周開口を形成する工程をさらに備え、前記第2保護層は、前記第1外周開口を規定する前記第1保護層の外周面を被覆し、前記第1外周開口において前記n型半導体層と接触する、第8または第9の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第10の態様によれば、第1保護層の外周面を第2保護層で被覆することにより、封止性をさらに向上できる。
【符号の説明】
【0092】
10…半導体発光素子、22…ベース層、22a…上面、24…n型半導体層、24a…第1上面、24b…第2上面、24c…側面、26…活性層、26b…側面、28…p型半導体層、28a…上面、28b…側面、30…p側コンタクト電極、30a…上面、30b…側面、32…p側被覆電極層、32a…上面、32b…側面、34…第1保護層、34n…第1n側開口、34p…第1p側開口、34e…第1外周開口、36…第2保護層、36n…第2n側開口、36p…第2p側開口、38…n側コンタクト電極、40…n側電流拡散層、42…p側電流拡散層、44…第3保護層、44n…第3n側開口、44p…第3p側開口、48…p側パッド電極、50…n側パッド電極。
【要約】
【課題】半導体発光素子の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体発光素子10は、第1保護層34および第2保護層36を備える。第1保護層34は、p側被覆電極層32上に設けられる第1p側開口34pとは異なる箇所においてp側被覆電極層32を被覆し、n型半導体層24の第2上面24b上に設けられる第1n側開口34nとは異なる箇所においてn型半導体層24の第2上面24bを被覆し、活性層26およびp型半導体層28と接触する。第2保護層36は、p側被覆電極層32上に設けられる第2p側開口36pの形成範囲W2pが第1p側開口34pの形成範囲W1pよりも大きく、n型半導体層24の第2上面24b上に設けられる第2n側開口36nの形成範囲W2nが第1n側開口34nの形成範囲W1nよりも小さく、第2p側開口36pおよび第2n側開口36nとは異なる箇所において第1保護層34を被覆する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15