(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】車両用乗降ステップ
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20231020BHJP
【FI】
B60R3/02
(21)【出願番号】P 2022174666
(22)【出願日】2022-10-31
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000128544
【氏名又は名称】日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002549
【氏名又は名称】弁理士法人綾田事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 優
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-205853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0231282(US,A1)
【文献】独国実用新案第202016104986(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下方に格納された状態と、前記車体の側方に展開された状態とを切り替え可能なステップ本体部を有する車両用乗降ステップであって、
前記ステップ本体部は、天板、底板、側板、導光部、点光源、保持部および透明部材を有し、
前記天板は、乗員が乗降時に足を載せるものであり、前記ステップ本体部の上端に設けられ、
前記底板は、前記ステップ本体部の下端に設けられ、
前記側板は、前記天板および前記底板の車両外側端同士を閉塞するものであり、
前記導光部は、車両前後方向に同一形状となる前記天板、前記底板および前記側板に囲まれた中空断面を有し、前記中空断面は、先端側が前記天板に開口し、基端側が前記ステップ本体部の内部に位置する鈎形状に形成され、
前記点光源は、拡散性を有し、車両前後方向に複数個配置され、
前記保持部は、前記中空断面の基端側に設けられ、前記点光源をその光軸が車両下向きかつ外向きの斜め下方を向いた状態で保持し、
前記透明部材は、前記中空断面の先端側の開口部に設けられ、光透過性を有し、
前記点光源の照射光は、前記導光部の内壁で反射し、上向きの反射光が前記透明部材を通過して前記天板の上方を照明
し、
前記光軸が前記導光部の内壁を反射して前記透明部材に到達するまでの距離をL5、隣接する前記点光源間の距離をL6、前記点光源の照射光の拡がり角度をθ1としたとき、下記の式(1)、
L5 × tanθ1 ≧ L6 …(1)
を満足するようにL5を設定した、
車両用乗降ステップ。
【請求項2】
車体の下方に格納された状態と、前記車体の側方に展開された状態とを切り替え可能なステップ本体部を有する車両用乗降ステップであって、
前記ステップ本体部は、天板、底板、側板、導光部、点光源、保持部、透明部材および貫通穴を有し、
前記天板は、乗員が乗降時に足を載せるものであり、前記ステップ本体部の上端に設けられ、
前記底板は、前記ステップ本体部の下端に設けられ、
前記側板は、前記天板および前記底板の車両外側端同士を閉塞するものであり、
前記導光部は、車両前後方向に同一形状となる前記天板、前記底板および前記側板に囲まれた中空断面を有し、前記中空断面は、先端側が前記天板に開口し、基端側が前記ステップ本体部の内部に位置する鈎形状に形成され、
前記点光源は、拡散性を有し、車両前後方向に複数個配置され、
前記保持部は、前記中空断面の基端側
、かつ、車両上下方向において前記ステップ本体部の中央よりも上方の位置に設けられ、前記点光源をその光軸が車両下向きかつ外向きの斜め下方を向いた状態で保持し、
前記透明部材は、前記中空断面の先端側の開口部に設けられ、光透過性を有し、
前記貫通穴は、前記点光源の光軸の延長上にある前記導光部の内壁の下方を貫通し、
前記点光源の照射光は、前記導光部の内壁で反射し、上向きの反射光が前記透明部材を通過して前記天板の上方を照明すると共に、前記貫通穴を介して地面を照明する、
車両用乗降ステップ。
【請求項3】
請求項
2に記載の車両用乗降ステップであって、
前記貫通穴の面積の合計は、前記開口部の面積よりも小さい、
車両用乗降ステップ。
【請求項4】
請求項
3に記載の車両用乗降ステップであって、
前記貫通穴は、車両前後方向において、前席側のドア開口の略中央位置、および後席側のドア開口の略中央位置にそれぞれ設けられている、
車両用乗降ステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用乗降ステップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗員の乗降時にステップ本体部の天板を照明する灯光ユニットを備えた車両用乗降ステップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の車両用乗降ステップにおいて、車両本体から遠いステップや地面をより明るく照明して欲しいとのニーズがあった。
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、車両本体から遠いステップや地面をより明るく照明できる車両用ステップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両用乗降ステップにおいて、ステップ本体部は、天板、底板、側板、導光部、点光源、保持部および透明部材を有し、天板は、乗員が乗降時に足を載せるものであり、ステップ本体部の上端に設けられ、底板は、ステップ本体部の下端に設けられ、側板は、天板および底板の車両外側端同士を閉塞するものであり、導光部は、車両前後方向に同一形状となる前記天板、前記底板および前記側板に囲まれた中空断面を有し、前記中空断面は、先端側が天板に開口し、基端側がステップ本体部の内部に位置する鈎形状を有し、点光源は、拡散性を有し、車両前後方向に複数個配置され、保持部は、導光部の基端側に設けられ、点光源をその光軸が車両下向きかつ外向きの斜め下方を向いた状態で保持し、透明部材は、導光部の先端側の開口部に設けられ、光透過性を有し、点光源の照射光は、導光部の内壁で反射し、上向きの反射光が透明部材を通過して天板の上方を照明する。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、車両本体から遠いステップや地面をより明るく照明できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1の車両用乗降ステップ1を備えた車両100を左側から見た図である。
【
図5】隣接する点光源10,10間の距離と投光円Sとの関係を示す図である。
【
図7】実施形態2の車両用乗降ステップ1を備えた車両100を左側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1の車両用乗降ステップ1を備えた車両100を左側から見た図である。
車両100は、車体の左側部にセンターピラー101を間に挟んで前席用(助手席用)と後席用の各ドア開口102,103が設けられている。前席用のドア開口102は、ヒンジ開閉式のフロントサイドドア104によって開閉可能である。後席用のドア開口103は、スライド開閉式のリアサイドドア105によって開閉可能である。前後のドア開口102,103の下縁に跨る左側のサイドシル106の下面と、フロア下の図示しない車体の骨格部材には、車両用乗降ステップ1が取り付けられている。
【0009】
車両用乗降ステップ1は、車体の下方に格納された格納状態と、車体の(左)側方に展開され、乗員が乗降時に使用可能な使用状態(展開状態)とを切り替え可能なステップ本体部2を有する。ステップ本体部2は、2本のステップアーム107により車体の骨格部材に支持されている。ステップアーム107は、車体側に設けられた図外のドライブユニットによって、鉛直方向に沿う回転軸線周りを揺動することにより、格納状態と使用状態とを切り替える。
【0010】
ドライブユニットは、両ドア104,105の一方が開くと、ステップ本体部2を格納状態から使用状態へ遷移させ、両ドア104,105が共に閉じると、ステップ本体部2を使用状態から格納状態へ遷移させる。なお、ステップ本体部2を格納状態と使用状態とで切り替える構造については、他の公知技術を用いてもよい。
【0011】
図2は
図1のS2-S2線矢視断面図、
図3は
図1のS3-S3線矢視断面図である。なお、以下の説明において、方向等はステップ本体部2の使用状態(
図1の状態)に基づくものである。
ステップ本体部2は、天板3、底板4、側板5および3つの支持梁6,7,8を有し、これらはアルミ押出成形により成形され、車両前後方向に延在する。アルミ押出成形の押出方向は、ステップ本体部2の長手方向、すなわち車両前後方向と一致する。
【0012】
天板3は、乗員が乗降時に足場として使用されるもので、ステップ本体部2の上端に設けられている。天板3は、地面に対して略平行である。底板4は、ステップ本体部2の下端に設けられ、天板3と略平行に配置されている。側板5は、天板3と底板4の車両外側端(左端)同士を閉塞する。3つの支持梁6,7,8は、互いに離間して配置され、天板3と底板4とを接続する。
【0013】
ステップ本体部2は、導光部(中空断面部)9、点光源10、保持部11、透明部材12および貫通穴13を有する。
導光部9は、ステップ本体部2の車両外側付近に設けられ、車両前後方向に同一形状となる中空断面を有する。中空断面は、天板3、底板4、側板5および第3支持梁8に囲まれた空間であって、先端側が天板3に開口し、基端側がステップ本体部2の内部に位置する鈎形状に形成されている。開口部9aは、ステップ本体部2の外側端(左端)付近に位置し、車両前後方向において、ステップ本体部2のほぼ全域に亘って設けられている。
【0014】
点光源10は、拡散性を有する光源、例えば白色LEDであって、車両前後方向に等間隔で複数個配置されている。点光源10は、導光部9の中空断面の基端側に形成された保持部11に保持されている。保持部11は、車両上下方向において、ステップ本体部2の中央よりも上方の位置に設けられている。点光源10の発光回路(不図示)は、車両のバッテリから電力が供給される。点光源10の光軸14は、車両下向きかつ外向き(左向き)の斜め下方を向くように設置されている。
【0015】
透明部材12は、導光部9の中空断面の先端側の開口部9aに設けられ、導光部9を閉塞する。透明部材12は、光透過性樹脂により平板形状に成形されている。なお、有機ガラス等を用いてもよい。
図1のAは、点光源10から照射された光が透明部材12を透過して天板3を照明する状態を示している。
【0016】
貫通穴13は、点光源10の光軸14の延長上にある導光部9の内壁の下方、すなわち底板4を貫通する。貫通穴13は、車両前後方向において、ステップ本体部2の全長に対し、等間隔で4つ設けられている。貫通穴13は、透明部材15により閉塞されている。透明部材15は、光透過性樹脂により形成されている。
図1のB,C,D,Eは、点光源10から照射された光が4つの貫通穴13を介して地面を照明する状態を示している。
【0017】
図4は、
図2の要部拡大図である。
図4において、点光源10の光軸14は、導光部9の内壁を3度反射して透明部材12に達する。このとき、点光源10の光軸14が導光部9の内壁を反射して透明部材12に到達するまでの距離L5は、L5=L1+L2+L3+L4となる。また、
図5(a)のように、隣接する点光源10,10間の距離をL6、点光源10の照射光の拡がり角度をθ1としたとき、実施形態1では、下記の式(1)が成立するように、L5の長さを確保している。
L5 × tanθ1 ≧ L6 …(1)
すなわち、
図5(b)に示すように、点光源10の照射光が透明部材12に到達したときの投光円Sの有効半径r1が、隣接する点光源10,10間の距離L6もよりも長くなるように、光軸14が導光部9の内壁を反射して透明部材12に到達するまでの距離L5を確保している。
【0018】
図6は、
図3の要部拡大図である。
貫通穴13は、車両上方側から順に、小径部13aおよび大径部13bを有する。透明部材15は、中央のくびれ部分が小径部13bと嵌合し、貫通穴13の内部に保持されている。点光源10の照射光が、貫通穴13を通過して地面を照明する際、その光量は、貫通穴13の面積に応じて制限を受ける。ここで、実施形態1の貫通穴13の場合、
図6に示すように、地面側の光量(拡がり角度)は小径部13aの面積に依存する。実施形態1では、4つの貫通穴13の小径部13aの面積の合計が、天板3側の開口部9aの面積よりも小さく設定されている。具体的には、4つの貫通穴13の小径部13aの面積の合計は、天板3側の開口部9aの面積の5~10%に設定されている。
【0019】
次に、実施形態1の作用効果を説明する。
実施形態1のステップ本体部2は、先端側が天板3に開口し、基端側がステップ本体部2の内部に位置する鈎形状を有する導光部9と、導光部9の基端側で点光源10をその光軸14が下向きかつ外向きの斜め下方を向いた状態で保持する保持部11と、導光部9の先端側の開口部9aを塞ぐ透明部材12と、点光源10の光軸14の延長上にある導光部9の内壁9bを貫通する貫通穴13と、を有する。
【0020】
点光源10の照射光は、導光部9の内壁9bで反射し、上向きの反射光が透明部材12を通過して天板3を照明する。導光部9の内壁9bによる反射を利用することにより、ステップ本体部2の内部に設けられた点光源10を用いて、車両本体から遠い天板3の先端部分をより明るく照明できる。また、ステップ本体部2はアルミ製であるため、内壁9bの反射率が他の金属や樹脂等に比べて比較的高い。よって、光量減衰を抑制できると共に、内壁9bの鏡面加工や反射率の高い部材の追加が不要であり、製造コスト抑制を図れる。
【0021】
また、光軸14の延長上に貫通穴13がある点光源10の照射光は、貫通穴13を通して地面を照明する。貫通穴13は、点光源10の光軸14の延長上に設けられているため、点光源10を用いて、車両本体から遠い地面(ステップ本体部2の外側端の下方)をより明るく照明できる。
【0022】
さらに、光軸14の延長上に貫通穴13がある点光源10の照射光のうち、貫通穴13を通過しないものは、導光部9の内壁9bで反射し、透明部材12を通過して天板3を照明する。つまり、1つの光源で天板3と地面の両方を照明できるため、天板3と地面とを別々の光源で照明する場合と比べて、製造コストを低減できる。
【0023】
点光源10は、導光部9において開口部9aから最も遠い位置であって、車両上下方向において、ステップ本体部2の中央よりも上方の位置に設置されている。このため、外部からの入力、水、埃等から点光源10を保護できる。さらに、雨水がステップ本体部2の内部に浸入した場合であっても、点光源10が浸水するのを抑制できる。
【0024】
実施形態1では、点光源10の光軸14が透明部材12に到達したときの投光円Sの有効半径r1が、隣接する点光源10,10間の距離L6よりも長くなるように、光軸14が導光部9の内壁9bを反射して透明部材12に到達するまでの距離L5を確保した。これにより、隣接する投光円S,S同士のラップ量L7が、投光円Sの有効半径r1以上となるため、輝度が均一な面光源に近い天板3の照明が得られる。
【0025】
実施形態1では、4つの貫通穴13(の小径部13a)の面積の合計が、天板3側の開口部9aの面積よりも小さい。ここで、仮に各貫通穴13の面積の合計を、開口部9aの面積よりも大きくした場合、上向き照明の光量が不足するおそれがある。これに対し、各貫通穴13の面積の合計を、開口部9aの面積よりも小さくすることにより、乗降に必要な上向き照明の光量および下向き照明の光量をバランスよく確保でき、天板3および地面を共に明るく照明できる。
一般的に、底板4に設けた貫通穴13は、機械加工で穴開けするため、その個数を少なくすることはコスト面で有利である。実施形態1では、4つの貫通穴13のみで地面を効果的に照明できるため、製造コストを抑制できる。
【0026】
〔実施形態2〕
実施形態2の基本的な構成は実施形態1と同様であるため、実施形態1と相違する部分のみ説明する。
図7は、実施形態2の車両用乗降ステップ1を備えた車両100を左側から見た図である。
実施形態2では、貫通穴13が、車両前後方向において、前席側のドア開口102の略中央位置、および後席側のドア開口103の略中央位置に、所定の間隔を開けてそれぞれ2箇所ずつ配置されている。より具体的には、前後各ドア開口102,103において、地面に照射された投影形状の前端と後端が、ドア開口位置の前後中心線から、前後に各々250mm以内となるように各貫通穴13が設けられている。
図7のB,C,D,Eは、点光源10から照射された光が4つの貫通穴13を介して地面を照明する状態を示している。実施形態2では、乗員が乗り降りする付近の地面を集中的に明るく照明できると共に、乗降時の導線を誘導できる。また、上向き照明の光量を優先したことにより、下向き照明の光量が減少した場合でも、乗降時着地する地面への照明を確保できる、という効果を奏する。
【0027】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の車両用乗降ステップを実施形態に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施形態1では、天板3と地面とを1つの点光源10で照明する例を示したが、どちらか一方のみを照明する構成としてもよい。
実施形態1では、4つの貫通穴13(の小径部13a)の面積の合計は、天板3側の開口部9aの面積の5~10%程度であればよい。
【符号の説明】
【0028】
1 車両用乗降ステップ
2 ステップ本体部
3 天板
4 底板
5 側板
6,7,8 支持梁
9 導光部(中空断面部)
9a 開口部
9b 内壁
10 点光源
11 保持部
12 透明部材
13 貫通穴
13a 小径部
13b 大径部
14 光軸
15 透明部材
100 車両
101 センターピラー
102 ドア開口
103 ドア開口
104 フロントサイドドア
105 リアサイドドア
106 サイドシル
107 ステップアーム
【要約】
【課題】 車両本体から遠いステップや地面をより明るく照明できる車両用乗降ステップを提供する。
【解決手段】 ステップ本体部2は、先端側が天板3に開口し、基端側がステップ本体部2の内部に位置する鈎形状を有する導光部9と、導光部9の基端側で点光源10をその光軸14が下向きかつ外向きの斜め下方を向いた状態で保持する保持部11と、導光部9の先端側の開口部9aを塞ぐ透明部材12と、点光源10の光軸14の延長上にある導光部9の内壁9bを貫通する貫通穴13と、を有する。
【選択図】
図3