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特許7370493試料の顕微鏡分析を行うためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】試料の顕微鏡分析を行うためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/36 20060101AFI20231020BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20231020BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20231020BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
G02B21/36
G02B21/06
G01N21/17 630
G01N21/27 E
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023504278
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-13
(86)【国際出願番号】 EP2021068661
(87)【国際公開番号】W WO2022017784
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】2007700
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522222146
【氏名又は名称】ダマエ メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オジャン,ジョナス
(72)【発明者】
【氏名】レベク,オリヴィエ
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/139712(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/004388(WO,A1)
【文献】特表2004-509370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡分析経路(140)と、
照準経路(150)と、
前記分析経路と前記照準経路とを分離するために前記顕微鏡用対物レンズの上流に配置されたビームスプリッタ素子(145)と、
照準画像を表示し、かつ、前記照準画像上に、検出パターンの位置を示す画像要素(530)を表示するように構成された表示モジュール(170)と、
を含む、試料(S)の顕微鏡分析用のシステム(101~103)であって、
前記顕微鏡分析経路(140)は、
所定の視野(401)で所定の公称開口数(NA)の顕微鏡用対物レンズ(110)と、
第1の照明パターンに従って、かつ、第1のスペクトル帯域で、前記顕微鏡用対物レンズを通して前記試料を照明するように構成された照明経路(120)と、
前記顕微鏡用対物レンズを含む検出経路(130)であって、前記視野内で、前記検出パターン(431~433)に従って、前記試料の前記照明に応答して前記試料によって放射される光ビームを検出し、検出信号を生成するように構成された前記検出経路(130)と、
前記検出信号から前記試料の顕微鏡分析に関する情報を生成するように構成された処理ユニット(160)と、を含み、
前記照準経路(150)は、
前記顕微鏡用対物レンズ(110)と、
第2のスペクトル帯域で前記試料を照明するように構成されたフルフィールド照明装置(158)と、
二次元検出器(155)と、
前記顕微鏡用対物レンズ(110)とともに、前記視野を包含する前記試料の所定の有効視野を、前記二次元検出器(155)の検出領域(156)と光学的に共役にして、前記有効視野の表面反射で前記照準画像を形成するように構成されたフルフィールドイメージング装置(250)を形成する1つ以上のイメージング素子(251~253)と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記フルフィールドイメージング装置は、前記顕微鏡用対物レンズの物体空間において、開口数が前記顕微鏡用対物レンズの公称開口数未満である、請求項1に記載の試料分析システム。
【請求項3】
前記照準経路は、前記フルフィールドイメージング装置の前記開口数を制限するための絞り(255)をさらに含む、請求項2に記載の試料分析システム。
【請求項4】
前記照準経路の前記フルフィールドイメージング装置は、焦点の調整が可能なものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の試料分析システム。
【請求項5】
前記照準経路の前記フルフィールド照明装置は、前記顕微鏡用対物レンズの遠位面の周囲に配置された複数の光源(158)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の試料分析システム。
【請求項6】
前記第2のスペクトル帯域は、前記第1のスペクトル帯域と少なくとも部分的に異なり、前記照準経路は、少なくとも前記第1のスペクトル帯域において光パワーを減少させるための手段を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の試料分析システム。
【請求項7】
前記第2のスペクトル帯域は、前記第1のスペクトル帯域と少なくとも部分的に異なり
、前記ビームスプリッタ素子は、前記第1のスペクトル帯域および前記第2のスペクトル帯域のそれぞれにおいてビームを分割するように構成されたダイクロイック素子を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の試料分析システム。
【請求項8】
前記検出パターンの位置を示す前記画像要素は、事前の較正によって決定された図形要素を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の試料分析システム。
【請求項9】
前記顕微鏡分析経路は、共焦点イメージング経路および/または光コヒーレンストモグラフィイメージング経路であり、前記試料の顕微鏡分析に関する前記情報は、前記試料の少なくとも1つの画像を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の試料分析システム。
【請求項10】
前記顕微鏡分析経路は分光分析経路であり、前記試料の顕微鏡分析に関する前記情報は、前記試料の少なくとも1つの点で前記試料によって放射される前記光ビームの少なくとも1つのスペクトルを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の試料分析システム。
【請求項11】
試料(S)を分析するための方法であって、
所定の視野(401)で所定の公称開口数(NA)の顕微鏡用対物レンズ(110)を含む顕微鏡分析経路によって前記試料の顕微鏡分析を実施し、
前記顕微鏡用対物レンズと、二次元検出器(155)と、前記顕微鏡用対物レンズとともにフルフィールドイメージング装置(250)を形成するように構成された1つ以上のイメージング素子と、を含む照準経路(150)によって、前記視野を包含する前記試料の所定の有効視野の表面反射で照準画像を形成し、
前記照準画像を表示するとともに、前記照準画像上に、検出パターンの位置を示す画像要素(530)を表示することを含み、
前記顕微鏡分析は、
第1の所定の照明パターン(431~433)に従って、かつ、第1のスペクトル帯域で、前記顕微鏡用対物レンズを通して前記試料を照明し、
検出信号を形成するために、前記視野内で、かつ、前記検出パターンに従って、前記試料の前記照明に応答して前記試料によって放射された光ビームを検出し、
前記試料の顕微鏡分析に関する情報を生成するために、前記検出信号を処理することを含み、
前記照準画像の形成は、
第2のスペクトル帯域での前記試料のフルフィールド照明と、
前記照準画像を形成するために、前記フルフィールドイメージング装置によって、前記試料の有効視野と前記二次元検出器(155)の検出領域(156)とを光学的に共役させることと、
を含む、方法。
【請求項12】
前記試料の前記顕微鏡分析と照準画像の前記形成とを連続して行う、請求項11に記載の試料分析方法。
【請求項13】
前記顕微鏡分析経路を照明することなく、前記試料の照準画像を形成する第1の工程と、
前記試料の前記照準画像における着目分析ゾーンの前記検出と、
前記着目ゾーンにおける前記試料の前記顕微鏡分析と、
を含む、請求項11に記載の試料分析方法。
【請求項14】
前記試料の前記顕微鏡分析時、前記照準経路の前記照明をオフにする、請求項13に記載の試料分析方法。
【請求項15】
前記試料の前記顕微鏡分析は、前記試料の共焦点イメージングおよび/または光コヒーレンストモグラフィイメージングを含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の試料分析方法。
【請求項16】
前記試料の前記顕微鏡分析は、所定のイメージング速度でBスキャン画像を形成することを含み、前記イメージング速度は、前記照準画像の取得速度と同期している、請求項15に記載の試料分析方法。
【請求項17】
前記試料の前記顕微鏡分析は、前記試料の分光分析を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の試料分析方法。
【請求項18】
前記画像要素について、前記検出パターンの位置を示す図形要素を決定することを可能にする事前の較正工程を含む、請求項11~17のいずれか1項に記載の試料分析方法。
【請求項19】
前記照準画像の前記画像要素に重ねてマーカー(640、740)を表示することをさらに含み、前記マーカーは、ユーザが前記検出パターンにおいて着目点をターゲットにできるようにする、請求項11~18のいずれか1項に記載の試料分析方法。
【請求項20】
前記試料は、例えば皮膚などの生体組織である、請求項11~19のいずれか1項に記載の試料分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、試料の顕微鏡分析用のシステムおよび方法に関し、特に、生体組織、特に皮膚の顕微鏡分析に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚科における検査では、特に、ダーモスコピック検査、すなわち拡大用の光学機器を用いた皮膚表面の観察を行った上で、ダーモスコピック検査で得られた広視野画像の観察結果に応じて局所的な顕微鏡分析を行うことが知られている。
【0003】
この顕微鏡分析には、例えば、顕微鏡イメージングまたは分光分析が含まれる。
【0004】
【0005】
より具体的には、特許出願WO2015/092019号[参考文献4]に、顕微鏡用対物レンズの焦点に配置された半透明の物体、例えば生体組織の表面に直交する垂直断面すなわちBスキャンを、軸方向と横方向の両方で1μm前後の高い空間分解能で(1秒間に数断面という)高速に取得するとともに、1mm前後の満足できる侵入深さを得るために、当該物体の内部構造を可視化する技術が記載されている。この技術は、光コヒーレンス顕微鏡検査法に基づくものではあるが、共焦点フィルター構成が線形すなわち一次元(一方向)であるため、特に顕微鏡用対物レンズによって、照明線が線形検出器と光学的に共役になる。そして、この線形検出器の検出領域の幅が線の画像の幅とほぼ等しいことから、結果的に観察対象となる物体の領域の空間フィルタリングが行われる。よって、このような技術は、ラインフィールド共焦点光コヒーレンストモグラフィ(LC-OCT)として知られている。
【0006】
Y. Chenらによる論文[参考文献5]でも、ライン走査型光コヒーレンストモグラフィ顕微鏡検査装置が提案されているが、これは顕微鏡用対物レンズの光軸に垂直な面内で、照明線に垂直な方向に試料を移動させ、試料のen-face画像(すなわちCスキャン)を形成することができるようにした装置である。
【0007】
試料、特に皮膚などの生体組織の分光分析用の技術としては、非限定的に、例えばラマン分光法が知られている。この分光法を用いると、例えばSchleusenerら[参考文献6]に記載されているように、生体組織の分子指紋を形成することができる。E. Drakakiらによるレビュー[参考文献7]では、主に皮膚の顕微鏡分析に適用される異なる分光法の技術が提示されている。
【0008】
イメージング用であれ分光用であれ、上述した顕微鏡分析技術ではいずれも、所定の視野、一般に約0.2mm~約1.5mmの視野に対して、かなり大きな公称開口数の顕微鏡用対物レンズ、一般に公称開口数0.5以上のものが使用される。
【0009】
実用上、顕微鏡分析の間に関連する情報を取得するために、この顕微鏡分析の際に、ダーモスコピック検査で得られた画像で疑わしいと思われるゾーンを見つけることが、施術者にとって重要である。
【0010】
しかしながら、ダーモスコピーで特定された疑わしいゾーンを顕微鏡分析で正確に見つけることは、複雑な問題である。なぜなら、目視のために頼ることができる画像は、ダーモスコピーの場合よりもはるかに小さなフィールドで得られ、見た目も極めて異なるためである。これは、例えばラマン顕微分光法など、顕微鏡分析で画像が生成されない場合には、さらに重要である。
【0011】
施術者が、ダーモスコピー画像上で、顕微鏡分析用の分析フィールドを特定できるようにするために、異なる解決策が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許出願WO2017/139712号[参考文献8]には、例えば、共焦点顕微鏡検査法(または反射率共焦点顕微鏡検査法(RCM))と広視野ダーモスコピー(WFD)とを組み合わせたシステムが記載されている。そこでは、広視野反射で表面画像を形成するために、顕微鏡用対物レンズに直接マイクロカメラが組み込まれている。しかしながら、このようなシステムは、製造や組み込みが複雑であり、さらに、マイクロカメラによって得られる画像は品質面で劣っている。
【0013】
米国特許第7864996号[参考文献9]には、ダーマトスコープと結合された共焦点イメージングシステムが記載されている。ダーマトスコープは、皮膚に固定されたモジュールに搭載され、同じモジュールに固定可能な共焦点顕微鏡と同一ゾーンのイメージングを可能にしている。ダーモスコピー画像(または「巨視的な」画像)を取得し、その上で、共焦点画像を取得する。このとき、共焦点画像システムによって形成された画像の位置をダーモスコピー画像上に表すために、画像間の正確な相関がとられる。しかしながら、そこに記載されたシステムでは、2つの別々のプローブを固定するためのモジュールを追加する必要があり、このモジュールを皮膚上の任意の位置に固定することが困難な場合がある。また、ダーモスコピー画像と共焦点画像との相関を得るために、画像の取得用に複雑な手順に従わなければならない。
【0014】
ラマン顕微分光法の場合、Z. Wuら[参考文献10]には、反射共焦点顕微鏡検査イメージングによって、単一のレーザー源を使用して、組織においてマイクロラマン信号を取得し、局在化する方法について述べられている。しかしながら、施術者用の参照画像としては、共焦点画像はダーモスコピー画像より使いにくい。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書は、ユーザが、簡単な取得方法によって、広視野表面反射画像において顕微鏡分析のフィールドの位置を正確に特定できるようにする顕微鏡分析装置および方法を提案し、この場合、画質は、ダーマトスコピー画像の画質に近いものである。
【0016】
本明細書において、「含む(comprise)」という語は、「含む(include)」、「含む(contain)」と同じものを意味し、包括的または開放的であり、記載または図示されていない他の要素を排除するものではない。また、本明細書において、「約」または「実質的に」という語は、それぞれの値の上限および/または下限の10%、例えば5%と同義である(同じものを意味する)。
第1の観点によれば、本明細書は、顕微鏡分析経路と、照準経路と、前記分析経路と前記照準経路とを分離するために前記顕微鏡用対物レンズの上流に配置されたビームスプリッタ素子と、前記照準画像を表示し、かつ、前記照準画像上に、前記検出パターンの位置を示す画像要素を表示するように構成された表示モジュールと、を含む、試料の顕微鏡分析用のシステムであって、前記顕微鏡分析経路は、所定の視野で所定の公称開口数の顕微鏡用対物レンズと、第1の照明パターンに従って、かつ、第1のスペクトル帯域で、前記顕微鏡用対物レンズを通して前記試料を照明するように構成された照明経路と、前記顕微鏡用対物レンズを含む検出経路であって、前記視野内で、検出パターンに従って、前記試料の前記照明に応答して前記試料によって放射される光ビームを検出し、検出信号を生成するように構成された前記検出経路と、前記検出信号から前記試料の顕微鏡分析に関する情報を生成するように構成された処理ユニットと、を含み、前記照準経路は、前記顕微鏡用対物レンズと、第2のスペクトル帯域で前記試料を照明するように構成されたフルフィールド照明装置と、二次元検出器と、前記顕微鏡用対物レンズとともに、前記視野を包含する前記試料の所定の有効視野を、前記二次元検出器の検出領域と光学的に共役にして、前記有効視野の表面反射で照準画像を形成するように構成されたフルフィールドイメージング装置を形成する1つ以上のイメージング素子と、を含む、システムに関連する。
【0017】
本明細書において、顕微鏡用対物レンズの「視野」という用語は、製造業者が公称開口数を保証する物体空間(試料空間)に位置する、顕微鏡用対物レンズの焦点面の領域をいう。公称開口数は、例えば、約0.1~約1.4、例えば、約0.5~約0.9である。視野は、直径約100μm~約5mm、例えば約500μm~約1.5mmの円によって定義することができる。
【0018】
顕微鏡用対物レンズの有効視野という用語は、顕微鏡用対物レンズの全視野に含まれ、前記視野を包含し、その寸法が照準経路のフルフィールドイメージング装置によって制限される物体空間(試料空間)のフィールドである。有効視野は、直径約1mm~約10mm、例えば約2mm~約5mmの円によって定義することができる。
【0019】
本明細書において、照明パターンは、顕微鏡分析経路の照明経路に依存し、照明点、照明線または照明面、例えば、照明点または照明線の走査によって生じる長方形の面を含み得る。照明点は、より正確には、顕微鏡分析経路の顕微鏡用対物レンズによって、前記対物レンズに入射するコリメート光ビームが集束して生じる回折パターンとして定義される。照明パターンに、走査によらない照明面、例えば、フルフィールド顕微鏡分析経路の場合には円形の形状を有する照明面を含むことも可能である。試料の照明に応答して試料によって放射される光ビームは、反射ビーム、後方散乱ビーム、あるいは別の波長での発光プロセス(例えば蛍光、ラマン散乱など)から生じるビームであってもよい。
【0020】
さらに、検出パターンは、視野に含まれ、照明パターンに含まれ、あるいは桁数が同じであり、顕微鏡分析経路の検出経路に依存する。検出パターンには、検出点、検出線または検出面、例えば線を走査して生じる矩形面、あるいは、フルフィールド顕微鏡分析経路の場合には検出器の検出領域と光学的に共役な面を含んでもよい。検出点は、ここでは、物体空間において、顕微鏡分析チャネルの検出経路の検出器のエレメンタリー検出器と光学的に共役なエレメンタリー領域によって定義される。
【0021】
本出願人は、第1の態様に係る試料の顕微鏡分析のためのシステムによって、ユーザが、広視野表面反射画像または「照準画像」において顕微鏡分析のフィールドの位置を正確に特定することができることを示した。前記広視野表面反射画像では、照準経路が離れて移動されるがゆえに、ダーモスコピー画像の品質に近い画質を提示することができる。しかしながら、このシステムは、2つのプローブを必要とする先行技術のシステム(例えば[参考文献9])と比較して、極めて良いコンパクトさを保持している。
【0022】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、照準経路のフルフィールドイメージング装置は、顕微鏡用対物レンズの物体空間において、開口数が顕微鏡用対物レンズの公称開口数未満である。これにより、照準経路は、収差と潜在的なヴィネッティングを抑制しつつ、同時にフルフィールドイメージング装置を形成するイメージング素子の寸法を制限し、視野よりも大きな有効視野の恩恵を受けることができる。したがって、照準画像の品質がさらに改善される。
【0023】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記照準経路は、フルフィールドイメージング素子の開口数を制限できるようにする絞りをさらに含む。他の例示的な実施形態によれば、フルフィールドイメージング装置の開口数を制限するための絞りを追加で形成するように構成されているのは、直接的に、フルフィールドイメージング装置を形成する前記イメージング素子のうちの1つである。
【0024】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記照準経路のフルフィールドイメージング装置では、フォーカシングの調整が可能である。これにより、顕微鏡分析経路が試料の奥まで撮像する場合(例えばOCMイメージングの場合)でも、試料の表面反射で照準画像を形成することができるようになる。
【0025】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、照準経路のフルフィールド照明装置は、顕微鏡用対物レンズの遠位面の周囲、すなわち試料空間における顕微鏡用対物レンズの面上に配置された複数の光源を含む。この構成により、試料を直接照明することができる。あるいは、照準経路のフルフィールド照明装置には、顕微鏡用対物レンズの上流に配置された光源と、顕微鏡用対物レンズを通る照明ビームを試料に向けるように構成されたビームスプリッタ素子、例えばスプリッタキューブと、を含んでもよい。
【0026】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第2のスペクトル帯域は、第1のスペクトル帯域と少なくとも部分的に異なり、前記照準経路は、少なくとも前記第1のスペクトル帯域において光パワーを減少させるための手段を含む。実際にいくつかの場合において、顕微鏡分析経路の照明経路における試料の照明ビームが、照準経路の検出器を圧倒するだけの十分強い光パワーを持つ場合がある。少なくとも前記第1のスペクトル帯域で光パワーを減少させることにより、そのような眩しさのリスクが抑制される。
【0027】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第2のスペクトル帯域は、第1のスペクトル帯域と少なくとも部分的に異なり、前記ビームスプリッタ素子は、前記第1および第2のスペクトル帯域のそれぞれにおいてビームを分離するように構成されたプレートまたはダイクロイックキューブを含む。この場合、ダイクロイックプレートは、前記第1のスペクトル帯域における光パワーを減少させるための手段を形成する。1つ以上の例示的な実施形態によれば、顕微鏡分析経路は、試料の照明ビームと、試料の前記照明に応答して試料によって放射されるビームとを走査する装置を備え、前記ビームスプリッタ素子は、走査装置の一部を形成している。
【0028】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記検出パターンの位置を示す前記画像要素は、事前の較正によって決定された図形要素を含む。この構成は、例えば、照準経路の検出器が第1のスペクトル帯域で感度がないか、グレアを制限するために照準経路の第1のスペクトル帯域がカットされることが理由で、照準経路の検出器で照明パターンが検出されない場合に、特に好都合である。また、この構成は、照準画像で照明パターンを識別するのが困難である場合や、検出パターンが照明パターンと実質的に異なる場合にも好都合である。
【0029】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記顕微鏡分析経路は共焦点および/または光コヒーレンストモグラフィイメージング経路であり、前記試料の顕微鏡分析に関する情報は、試料の少なくとも1つの画像を含む。例えば、顕微鏡分析経路は、先行技術に記載の光コヒーレンストモグラフィイメージング経路であり、試料のBスキャン、Cスキャン(すなわちen face画像)または試料の3D画像を形成するように構成されている。公知の態様において、Bスキャンと呼ばれる試料の断面画像は、顕微鏡用対物レンズの光軸に平行な平面に形成される画像であり、Cスキャンと呼ばれる試料の断面画像すなわちen face画像は、顕微鏡用対物レンズの光軸に垂直な平面に形成される画像であり、試料の3D画像は複数のBスキャン画像またはCスキャン画像の取得から得られ、したがってボリューム内の試料の分析を可能にする。
【0030】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、前記顕微鏡分析経路は分光分析経路であり、前記試料の顕微鏡分析に関する情報は、前記試料の少なくとも1つの点で前記試料によって放射される前記光ビームの少なくとも1つのスペクトルを含む。
【0031】
第2の観点によれば、本命清書は、試料を分析するための方法であって、所定の視野で所定の公称開口数の顕微鏡用対物レンズを含む顕微鏡分析経路によって前記試料の顕微鏡分析を実施し、前記顕微鏡用対物レンズと、二次元検出器と、前記顕微鏡用対物レンズとともにフルフィールドイメージング装置を形成するように構成された1つ以上のイメージング素子と、を含む照準経路によって、前記視野を包含する前記試料の所定の有効視野の表面反射で照準画像を形成し、前記照準画像を表示するとともに、前記照準画像上に、前記検出パターンの位置を示す画像要素を表示することを含み、前記顕微鏡分析は、第1の所定の照明パターンに従って、かつ、第1のスペクトル帯域で、前記顕微鏡用対物レンズを通して前記試料を照明し、検出信号を形成するために、前記視野内で、かつ、検出パターンに従って、前記試料の前記照明に応答して前記試料によって放射された光ビームを検出し、前記試料の顕微鏡分析に関する情報を生成するために、前記検出信号を処理することを含み、前記照準画像の形成は、第2のスペクトル帯域での前記試料のフルフィールド照明と、前記照準画像を形成するために、前記フルフィールドイメージング装置によって、前記試料の有効視野と前記二次元検出器の検出領域とを光学的に共役させることと、を含む、方法に関連する。
【0032】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、試料の顕微鏡分析および照準画像の形成は連続的に行われ、このことは、顕微鏡分析システムの使用時に分析経路の照明源と照準経路の照明源がどちらも動作中であることを意味する。この構成は、特に、顕微鏡分析経路における試料の照明ビームが照準経路において非常に減衰されるか見えない場合、あるいは、より一般的には、顕微鏡分析経路における試料の照明ビームが照準画像の取得を妨げない場合に可能である。
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第1の態様による試料の分析方法は、
顕微鏡分析経路を照明することなく、試料の照準画像を形成する第1の工程と、
試料の照準画像における着目分析ゾーンの検出と、
前記着目ゾーンにおける前記試料の顕微鏡分析と、を含む。
【0033】
この構成は、特に、顕微鏡分析経路における試料の照明ビームが照準経路における検出を妨害し得るが、照準経路における試料の照明が顕微鏡分析経路における検出を妨害しない場合において興味深いものである。
【0034】
また、照準経路における試料の照明が顕微鏡分析経路における検出を妨げる場合、試料の顕微鏡分析時に照準経路の照明をオフにすることも可能である。この場合、試料の顕微鏡分析と照準画像の形成が連続して行われる。
【0035】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、試料の顕微鏡分析は、試料の共焦点および/または光コヒーレンストモグラフィイメージングを含み、試料のBスキャン、Cスキャンまたは3D画像を形成することが可能になる。
【0036】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、本方法は、前記Bスキャン画像およびCスキャン画像のうちの少なくとも1つを表示することおよび/または3D画像を形成する場合、3D画像から抽出された前記Bスキャン画像およびCスキャン画像のうちの少なくとも1つを表示することをさらに含む。
【0037】
例えば、試料の顕微鏡分析は、所定のイメージング速度でBスキャン画像を形成することを含み、前記イメージング速度は、照準画像の取得速度と同期している。Bスキャン画像の取得には、例えば顕微鏡用対物レンズを軸方向に変位させることによって、試料の深部で照明ビームの走査が必要になる場合があるため、同期化によって、試料の表面に対する顕微鏡用対物レンズの同一の位置で確実に照準画像を取得することができる。
【0038】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、試料の顕微鏡分析は、試料の分光分析を含む。
【0039】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第2の態様に係る方法は、前記画像要素について、前記検出パターンの位置を示す図形要素を決定することを可能にする事前較正工程を含む。
【0040】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、第2の態様による方法は、照準画像の前記画像要素に重ねてマーカーを表示することをさらに備え、前記マーカーは、ユーザが検出パターンにおいて着目点をターゲットにすることができるようにする。したがって、ある実施形態では、ユーザは、前記画像要素上にマーカーを配置して、前記マーカーのレベルで試料内の顕微鏡分析情報を得ることができる。また、ある例示的な実施形態において、ユーザは、顕微鏡分析情報のレベルで着目点を選択し、画像要素の対応する場所でマーカーの位置自体を見ることができる。したがって、例えば、試料の顕微鏡分析が試料のBスキャンおよび/またはCスキャン画像の形成を含む場合、ユーザは、例えばレチクルによって、照準画像と同時に表示される前記画像のうちの1つにおける点をターゲットにすることができ、照準画像でマーカーの位置自体を見ることができ、マーカーは、試料の表面上のターゲットとされた点の投影と対応する。また、ユーザは、ターゲット画像上にマーカーを配置し、マーカーの位置に対応する位置で、前記画像のうちの1つにレクチル位置自体を見ることができるようになる。
【0041】
1つ以上の例示的な実施形態によれば、試料は、例えば皮膚などの生体組織である。
【0042】
本発明の他の利点および特徴は、以下の図面によって示される説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1A】本明細書による、試料の顕微鏡分析用のシステムの第1の例を示す図である。
図1B】本明細書による、試料の顕微鏡分析用のシステムの第2の例を示す図である。
図1C】本明細書による、試料の顕微鏡分析用のシステムの第3の例を示す図である。
図2】本明細書による、試料の顕微鏡分析用のシステムの照準経路の一例を示す図である。
図3A】本明細書による、顕微鏡分析システムの照準経路のフルフィールドイメージング用の装置の第1の例を示す図である。
図3B】本明細書による、顕微鏡分析システムの照準経路のフルフィールドイメージング用の装置の第2の例を示す図である。
図4】顕微鏡用対物レンズの視野、有効視野および全視野の異なる例と、異なる検出パターンを示す図である。
図5A】顕微鏡イメージングに適用される一例による、前記画像要素について、前記検出パターンの位置を示す図形要素を決定するための較正工程を示す図である。
図5B】分光分析に適用される一例による、前記画像要素について、前記検出パターンの位置を示す図形要素を決定するための較正工程を示す図である。
図6A】本明細書による方法によって得られる照準画像と顕微鏡画像(Bスキャン)の表示の一例を示す第1の画像である。
図6B】本明細書による方法によって得られる照準画像と顕微鏡画像(Bスキャン)の表示と同じ例を示す第2の画像である。
図7】本明細書による方法によって得られる照準画像と顕微鏡画像(Bスキャン、Cスキャン)の表示例を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本明細書に対するより深い理解を提供するために、以下の詳細な説明において、多くの詳細を具体的に述べる。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても本明細書を実施できることは、当業者には明らかであろう。他の場合では、説明を不必要に複雑にすることがないように、周知の特徴については詳細には説明していない。
【0045】
さらに、より明瞭にするために、図では特徴を縮尺通りに示していない。
【0046】
図1Aに、試料Sの顕微鏡分析のための第1のシステム101を示す。図中、顕微鏡分析経路は走査(点または線)による共焦点イメージング経路であり、イメージングは、場合によっては非線形イメージングであってもよい。
【0047】
顕微鏡分析システム101は、所定の視野で所定の公称開口数NAの顕微鏡用対物レンズ110と、走査型共焦点イメージング経路である顕微鏡分析経路140と、照準チャネル150と、を含む。
【0048】
この例では、顕微鏡分析経路140は、所定の照明パターンに従って、顕微鏡用対物レンズ110を通して第1のスペクトル帯域で試料を照明するように構成された照明経路120と、前記顕微鏡用対物レンズ110を含む検出経路130と、を含み、前記検出経路は、試料の前記照明に応答して、試料によって放射される光ビームを、視野内で、所定の検出パターンに従って検出するように構成されている。また、顕微鏡分析経路140は、処理ユニット160と、表示モジュール170と、を含む。
【0049】
この例では、顕微鏡分析経路140の照明経路120は、照明源121と、シリンドリカルレンズまたは偏向ミラー122(任意)と、を含む。また、照明経路は、照明源121によって放射される照明ビームを顕微鏡用対物レンズ110に向けて送るように構成された、スプリッタ素子141(スプリッタキューブまたはスプリッタプレート)および反射素子142(任意)と、一次元または二次元に沿って照明ビームを走査するように構成された照明ビーム走査用装置143と、を含む。スプリッタ素子145が、照準経路150と顕微鏡分析経路140とを分離するように構成されている。スプリッタ素子145は、例えば、反射/透過比が10/90~90/10であるスプリッタキューブまたはスプリッタプレートであり、反射/透過比は約50/50であってもよい。さらに、顕微鏡用対物レンズ110にしっかりと接続されたプラットフォーム111(任意)によって、試料に対する対物レンズの軸方向の変位112が許容される。照明源121には、例えば、コヒーレントな(空間的に)単色のコリメート光源が含まれていてもよい。光学系および/または空間フィルター(図示せず)によって、光源をコリメートおよび/またはコヒーレントおよび/または単色にすることができる。光源の波長は、用途に依存する。試料からの照明ビーム反射を利用する共焦点顕微鏡検査ならびに、皮膚のイメージングに適用する場合、照明光源の一般的な波長は約800nmである。蛍光顕微鏡検査や非線形顕微鏡検査を用いた共焦点顕微鏡検査の場合、波長を試料の蛍光励起波長や非線形発光波長に合わせるようにしてもよい。用途によっては、ポリクロマティック光源を使用することも可能である。さらに、非線形顕微鏡検査、例えばCARSまたはSRS顕微鏡検査では、照明源121に、キューブまたはプレートを介して結合される複数の異なる発光源(空間的にコヒーレントで単色かつコリメート)を含んでもよい。
【0050】
蛍光/非線形顕微鏡検査の場合、試料の励起波長を反射し、発光波長を透過する(またはその逆)ダイクロイックスプリッタ素子141を用いると都合がよいであろう。
【0051】
シリンドリカル光学素子122は任意であり、線に沿った照明による顕微鏡検査(いわゆるラインフィールド顕微鏡検査)を可能にする。
【0052】
照明点を走査して画像を形成するために、照明ビームスキャナ143を二次元走査用に構成してもよい。シリンドリカルレンズまたは偏向ミラー122を有するラインフィールドシステムの場合、照明ビームスキャナ143を一次元走査用に構成することができるようになる。走査装置には、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、電気的または音響光学的偏向システムまたはこれらの様々な素子の組み合わせ(二次元走査の場合)から選択される1つ以上の走査素子が含まれていてもよい。走査装置には、例えばヴィネッティングを回避するために、前記走査素子の少なくとも1つを顕微鏡用対物レンズ110の入射瞳と共役にするための光学系も含むことができる。
【0053】
この例では、顕微鏡分析経路140の検出経路130は、検出器138と、顕微鏡用対物レンズ110と、走査装置143と、試料の前記照明に応答して試料Sによって放射されたビームを検出器138に向けて送るように構成された反射素子または部分反射素子145、142(任意)、141と、を含む。この例では、検出経路130は、顕微鏡用対物レンズで、試料Sの平面を検出器138の検出領域と光学的に共役にするように構成されたレンズ131をさらに備える。もちろん、レンズ131または「チューブレンズ」を複数の光学レンズで構成してもよく、1つ以上の反射素子、例えば、球面鏡または放物面鏡で置き換えてもよい。
【0054】
検出器138は、検出領域を有する光学センサを含み、検出領域の寸法がゆえに共焦点検出が保証されない場合は共焦点検出用の空間フィルターおよび/または蛍光/非線形顕微鏡検査システムの場合には検出される波長帯域を試料の発光帯域に限定するためのスペクトルフィルターも含むことができる。センサには、点走査方式の場合はエレメンタリー検出面(例えばフォトダイオード)、ラインフィールド方式の場合は一次元センサ(例えばリニアカメラ)、あるいは、エレメンタリー検出領域または一次元センサとして機能するように着目領域だけが考慮される二次元センサを含んでもよい。装置143と類似の第2の走査装置をセンサの上流に配置する場合、二次元センサを「従来の」方法で使用してもよいことが留意されるであろう。処理ユニット160は、公知の方法で、検出器138によって生成された検出信号を受信し、検出信号から顕微鏡画像、例えば点照明パターンまたは線照明パターンの走査によって生じる検出信号から、二次元en face画像を再構成する。
【0055】
処理ユニットは表示モジュール170に接続されている。表示モジュール170は、詳細については後述するように、照準画像を表すとともに、照準画像上に検出パターンの位置を示す画像要素を表すように構成されている。また、処理ユニットは、生成された画像および/または映像を保存するための記憶装置(図示せず)に接続されていてもよい。
【0056】
顕微鏡分析システム101は、照準経路150をさらに含む。図1Aに示すように、照準経路150は、顕微鏡用対物レンズ110と、ビームスプリッタ145と、第2のスペクトル帯域で試料を照明するように構成されたフルフィールド照明装置158と、検出領域156を有する二次元検出器155と、前記顕微鏡用対物レンズ110とともに、試料の所定の有効視野を二次元検出器155の検出領域156と光学的に共役にするフルフィールドイメージング装置を形成するよう構成された、図1Aでは素子151、152で表された1つ以上のイメージング素子と、を含む。このように、照準経路によって、以下に詳述するように顕微鏡用対物レンズの視野を包含する有効視野の表面反射における照準画像を形成することができるようになる。
【0057】
この例では、フルフィールド照明装置158は、顕微鏡用対物レンズ110の遠位面の周辺に配置されて試料Sの直接照明を可能にする複数の光源を含む。この光源は、例えば、約400nm~約800nmの波長で光を放射する発光ダイオードである。もちろん、例えば、顕微鏡用対物レンズの上流に配置された光源、顕微鏡用対物レンズを通る照明ビームを試料に向けるように構成されたビームスプリッタ素子、例えばスプリッタキューブなど、他の照明装置も可能である。
【0058】
図1Aに示すように、二次元検出器155は、この例では、表示モジュール170上の照準画像の取得と表示のための処理ユニット160に接続されている。
【0059】
このため、動作時には、照準経路150によって、顕微鏡用対物レンズの視野より大きなフィールドで、試料の表面反射で照準画像を生成することができるようになる。さらに、検出パターンの位置を示す画像要素が照準画像上に示されている。この検出パターンについては、点、線または面とすることが可能である。したがって、ユーザ、例えば施術者は、広視野の照準画像で、顕微鏡分析のフィールドを正確に特定することができる。
【0060】
図1Bに、試料Sの顕微鏡分析のためのシステム102の第2の例を示す。図中、顕微鏡分析経路は、例えば[参考文献4]または[参考文献5]に記載されているようなLC-OCTタイプの光コヒーレンストモグラフィ(OCT)顕微鏡検査経路、例えば共焦点OCTチャネルである。
【0061】
先の例と同様に、顕微鏡分析システム102は、所定の視野で所定の公称開口数(NA)の顕微鏡用対物レンズ110と、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)経路である顕微鏡分析経路140と、照準チャネル150と、処理ユニット160と、表示モジュール170と、を含む。
【0062】
この例では、照準経路150は、顕微鏡分析経路140だけが異なる、図1Aを参照して説明した照準経路と同様のものであってもよい。
【0063】
図1Bの例では、顕微鏡分析経路140は、所定の照明パターンに従って、顕微鏡用対物レンズ110を通して試料を照明するように構成された照明経路120を含む。この例では、照明経路は、照明源121と、シリンドリカルレンズまたは偏向ミラー122(任意)と、照明源121によって放射される照明ビームを顕微鏡用対物レンズ110に向けて送るように構成された、スプリッタ素子141(スプリッタキューブまたはスプリッタプレート)および反射素子142(任意)と、を含む。この例では、照明経路120はさらに、一次元または二次元に沿って照明ビームを走査するように構成された照明ビーム走査用装置143と、照準チャネル150と顕微鏡分析チャネル140とを分離するように構成されたスプリッタ素子145と、顕微鏡用対物レンズ110と(例えば)スプリッタ素子141に対してしっかりと接続され、試料に対して対物レンズを軸方向に変位112させるように構成された、(任意の)プラットフォーム111と、を含む。
【0064】
【0065】
公知の方法で、いわゆるBスキャン試料の断面画像、すなわち顕微鏡用対物レンズの光軸に平行な面における画像、Cスキャンと呼ばれる試料の断面画像、すなわち顕微鏡用対物レンズの光軸に垂直な面におけるen face画像、あるいは、複数のBスキャン画像またはCスキャン画像を取得して得られる試料の3D画像を形成するために、照明ビーム用の走査装置143を、点または線の一次元走査用または二次元走査用に構成することが可能である。上述したものと同様に、走査装置には、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、電気的または音響光学的偏向システムまたはこれらの異なる素子の組み合わせ(二次元走査の場合)から選択される1つ以上の走査素子が含まれていてもよい。走査装置には、例えばヴィネッティングを回避するために、前記走査素子の少なくとも1つを顕微鏡用対物レンズ110の入射瞳と共役にするための光学系も含むことができる。
【0066】
顕微鏡分析経路の検出経路130は、所定の検出パターンに従って、試料の前記照明に応答して試料によって放射される光ビームを検出するように構成されているが、図1Aに示す顕微鏡分析経路の検出経路とは異なる。特に、この検出経路は、光コヒーレンストモグラフィ顕微鏡検査を実施するための干渉計を含む。より正確には、干渉計は、顕微鏡用対物レンズ110と、走査装置143と、試料の前記照明に応答して試料Sによって放射されるビームを検出器138に向けて送るように構成された反射素子または部分反射素子145、142、141と、を有する物体アームを含む。
【0067】
検出経路の干渉計は、参照アームをさらに含む。参照アームは、この例ではスプリッタキューブ141によって物体アームから分離され、公知の方法で、分散補償を提供するために例えば顕微鏡用対物レンズ110と同様の顕微鏡用対物レンズ133(任意)と、分散補償システム(任意であり、図1Bでは図示されず、特に顕微鏡用対物レンズ133がない場合)と、参照ミラー135と、例えば参照アーム上の光路の調整が必要な場合に参照ミラー135を移動させるように構成されているプラットフォーム134(任意)と、を含む。この例では、検出経路はさらに、顕微鏡用対物レンズで、試料Sの平面を検出器138の検出領域と光学的に共役にするように構成された対物レンズ131を含む。
【0068】
先の例と同様に、検出器138は、検出領域を有する光学センサを含み、検出領域の寸法がゆえに共焦点検出が保証されない場合は共焦点検出用の空間フィルターおよび/または検出される波長帯域を制限するためのスペクトルフィルターも含むことができる。センサには、点走査方式の場合はエレメンタリー検出面(例えばフォトダイオード)、ラインフィールド方式の場合は一次元センサ(例えばリニアカメラ)、あるいは、エレメンタリー検出領域または一次元センサとして機能するように着目領域だけが考慮される二次元センサを含んでもよい。FF-OCT用途の場合、二次元センサを従来通り使用することができる。
【0069】
動作時、断層画像、特にen face画像を形成するために、検出器138の検出領域において、任意かつ公知の方法で試料の参照アームと物体アームとの間の経路長差を変化させて、参照アームから来る光と照明パターンに従って照明された試料によって後方散乱された光との間に干渉を生じさせる。処理ユニット160は、公知の方法で、検出器138によって生成され、干渉を検出した結果である検出信号を受信し、この検出信号から顕微鏡画像、例えば二次元断面の画像(BスキャンまたはCスキャン)を再構成するように構成されている。処理ユニット160は、表示モジュール170に接続されている。表示モジュール170は、詳細については後述するように、照準画像を表すとともに、照準画像上に検出パターンの位置を示す画像要素を表すように構成されている。また、処理ユニット160は、生成された画像および/または映像を保存するための記憶装置(図示せず)に接続されていてもよい。
【0070】
よって、このような顕微鏡分析経路140は、先行技術で知られている光コヒーレンストモグラフィ顕微鏡検査チャネルとして機能する。図1Bには特定の例を示したが、光コヒーレンストモグラフィ顕微鏡検査用として先行技術で知られている任意のアセンブリに本明細書による顕微鏡分析システムを適用し、それに合わせて図1Bに示す光学機械要素を調整すればよいことを、当業者であれば理解するであろう。
【0071】
例示的な実施形態によれば、深さ方向に線を走査して試料の垂直断面画像(Bスキャン)を形成するのに適した顕微鏡分析経路の場合、Bスキャン画像の形成と、照準画像の取得速度とを同期させることができるようになる。実際、Bスキャン画像の取得が、例えば顕微鏡用対物レンズの位置を変えて試料で深さ方向に照明ビームを走査することを含む場合、この同期によって、試料の表面を基準とした顕微鏡用対物レンズの同一位置で確実に照準画像を取得することができるようになる。
【0072】
図1Cに、試料Sの顕微鏡分析のためのシステム103の第3の例を示す。図中、顕微鏡分析経路は、例えばラマン分光などの分光経路である。
【0073】
先の例と同様に、顕微鏡分析システム103は、所定の視野で所定の公称開口数NAの顕微鏡用対物レンズ110と、分光経路である顕微鏡分析経路140と、照準経路150と、を含む。
【0074】
この例では、照準経路150は、顕微鏡分析経路140だけが異なる、図1Aを参照して説明した照準経路と同様のものであってもよい。
【0075】
顕微鏡分析経路140は、照明経路120を含む。この例では、照明経路120は、照明源121と、シリンドリカルレンズまたは偏向ミラー122(任意)と、照明源121によって放射される照明ビームを顕微鏡用対物レンズ110に向けて送るように構成された、スプリッタ素子141(スプリッタキューブまたはスプリッタプレート)および反射素子142(任意)と、を含む。この例では、照明経路120はさらに、一次元または二次元に沿って照明ビームを走査するように構成された照明ビーム用の走査装置143(任意)と、照準経路150と顕微鏡分析経路140とを分離するように構成されたスプリッタ素子145と、顕微鏡用対物レンズ110にしっかりと接続され、試料に対して対物レンズを軸方向に変位112させるように構成された、(任意の)プラットフォーム111と、を含む。
【0076】
照明源121には、例えば、コヒーレントな(空間的に)単色のコリメート光源が含まれていてもよい。例えば拡散反射マイクロ分光法では、多色光源も使用することができる。光学系および/または空間フィルター(図示せず)によって、光源をコリメートおよび/またはコヒーレントおよび/または単色にすることができる。光源の波長は、用途に依存する。例えば皮膚のイメージングに適用されるラマン顕微分光法では、照明源の一般的な波長は約780nm~約830nmであればよい。
【0077】
シリンドリカル光学素子122は任意であり、線に沿った照明(ラインフィールド)を用いた顕微鏡検査を可能にする。
【0078】
顕微鏡分析経路の検出経路130は、所定の検出パターンに従って、試料の前記照明に応答して試料によって放射される光ビームを検出するように構成されているが、図1Aまたは図1Bに示す顕微鏡分析経路の検出経路とは異なる。特に、この検出経路は、顕微鏡用対物レンズ110、走査装置143(任意)および反射素子または部分反射素子145、142、141に加えて、分光器を含む。分光器は、この例では、公知の方法で、分光分散素子132、例えばグレーティングと、対物レンズ133と、一次元または二次元の検出領域を有するセンサを含む検出器134と、を含む。二次元センサを用いることで、ラインフィールド構成で、検出パターンの各点に対するスペクトルを測定することができるようになる(複数のスペクトルが並列に測定されるため、二次元センサの各ラインは、検出パターンの点のスペクトルに対応する)。
【0079】
処理ユニット160は、試料の1つ以上の点における分光信号の再構成のために、公知の方法で、分光器の検出器134によって生成された検出信号を受信する。処理ユニット160は、表示モジュール170に接続されている。表示モジュール170は、詳細については後述するように、照準画像を表すとともに、照準画像上に検出パターンの位置を示す画像要素を表すように構成されている。また、処理ユニット160は、生成された画像および/または映像を保存するための記憶装置(図示せず)に接続されていてもよい。
【0080】
よって、このような顕微鏡分析経路140は、先行技術で知られている分光経路として機能する。図1Cには特定の例を示したが、分光法、特にラマン分光法について先行技術で知られている任意のアセンブリに本明細書による顕微鏡分析システムを適用し、それに合わせて図1Cに示す光学機械要素を調整すればよいことを、当業者であれば理解するであろう。
【0081】
上述したように、動作時には、照準経路150によって、顕微鏡用対物レンズの視野より大きなフィールドで、試料Sの表面反射で照準画像を生成することができるようになる。また、顕微鏡分析経路の検出パターンの位置を示す画像要素が照準画像上に表現されている。この検出パターンについては、点、線、面のいずれも可能である。したがって、ユーザ、例えば施術者は、広視野の照準画像で、顕微鏡分析のフィールドを正確に特定することができる。
【0082】
図1A図1Bまたは図1Cに示す各例において、照準経路150と顕微鏡分析経路140とを分離するように構成されたスプリッタ素子145は、照準経路の照明装置158による試料の前記照明に応答して試料によって放射されるビームを二次元検出器155に向けて透過し、顕微鏡分析経路の照明経路120による試料の前記照明に応答して試料によって放射されるビームを検出経路140に向けて反射するように配置されている。もちろん、スプリッタ素子145を、照準経路では反射、顕微鏡分析経路では透過で動作させることも可能であろう。さらに、顕微鏡分析経路が走査装置(143、図1A図1C)を含む場合、ビームスプリッタ素子が走査装置の一部を構成してもよい。
【0083】
複数の構成のうち1つまたは他のいずれであっても、スプリッタ素子を、顕微鏡分析経路の照明経路120から入射して試料によって反射される光の照準経路150における光パワーを制限するように構成することができる。実際、例えばレーザー光源からの光は強力であって照準経路でグレアを引き起こす可能性が高い。このため、反射係数が透過係数とは異なるスプリッタ素子(例えばスライドガラス)を使用することが可能である。また、照準経路の光パワーを減少させるために、照準経路150(スプリッタ素子145の下流側)に光学密度を加えることも可能である。
【0084】
顕微鏡分析経路の照明経路120の照明源121のスペクトル帯域が、照準経路の照明装置158のスペクトル帯域と少なくとも部分的に異なる場合、スプリッタ素子はさらに、例えばプレートまたはダイクロイックキューブなどのダイクロイック素子を含んでもよい。
【0085】
照準経路の光パワーを減少させるための手段を設けることも可能であり、これらの光パワー削減手段には、顕微鏡分析経路の照明経路120の照明源121のスペクトル帯域が照準経路の照明装置158のスペクトル帯域と少なくとも部分的に異なる場合に、周波数フィルタリング素子を含むことも可能である。
【0086】
また、一方の経路の照明が他方の経路での検出の妨げとなる可能性がある場合、照準経路および顕微鏡分析経路の照明を連続的に作動させないようにすることも可能である。
【0087】
このように、実用上、試料の顕微鏡分析と照準画像の形成を連続的に実施することができる。これは、画像要素が直接、顕微鏡分析経路の照明パターンの照準経路の広視野イメージング装置によって形成された画像の場合である。また、画像要素が検出パターンの位置を示す図形要素であり、かつ、顕微鏡分析経路の照明が、例えば照準経路において大きく減衰するため照準経路の検出を妨げない場合や、その逆の場合も考えられる。
【0088】
他の例示的な実施形態では、本方法には、顕微鏡分析経路の照明をオフにした状態で試料の照準画像を形成する第1の工程と、試料の照準画像における着目分析ゾーンの検出と、その後、例えば、検出ゾーンを示すように予め較正された図形要素を着目分析ゾーンのレベルまで持っていくために試料を移動することによる、前記着目ゾーンにおける試料の顕微鏡分析と、を含んでもよい。
【0089】
この構成は、顕微鏡分析経路の照明が照準経路における検出の妨げとなる可能性がある場合に、興味深いものである。
【0090】
場合によっては、照準経路の照明が顕微鏡分析経路の検出を妨げないのであれば、照準チャネルが照明と取得の両方で連続的に動作することが可能である。このようにすることで、顕微鏡分析経路の照明が作動している間に劣化しても、連続的な照準画像を持つことができる。
【0091】
他の場合、例えば、一方の経路の照明が他方の経路での検出を妨げ、使用可能な結果を得るために両方の経路の照明を同時に維持することが不可能である場合、試料の顕微鏡分析時に照準経路の照明をオフにすることができる。
【0092】
図2に、本明細書による試料の顕微鏡分析のためのシステムの照準経路の一例を示す。図2に示す照準経路は、特に、図1A図1Bまたは図1Cに例として示したシステムのいずれでも動作するように構成されている。図2では、照準経路の検出部分だけを示してあり、照明は、場合によっては、図1A図1Cに示すように、顕微鏡用対物レンズの遠位部分に配置された一組の光源、あるいは、試料Sのフルフィールド照明のための他の任意の装置を含む。
【0093】
図2に示すように、照準経路は、射出瞳を参照符号115で示す顕微鏡用対物レンズ110と、図2では検出領域156によって表されている二次元検出器と、対物レンズ253と、を含む。
【0094】
この例では、照準経路はさらに、チューブレンズ251と、接眼レンズ252と、を含む。これらのイメージング素子は、対物レンズ253および顕微鏡用対物レンズ110とともに、前記視野を包含する試料の所定の有効視野を二次元検出器の検出領域156と光学的に共役にするように構成されたフルフィールドイメージング装置250を形成している。
【0095】
このように、先行技術で知られているシステム、特に顕微鏡用対物レンズの物体空間に統合されたマイクロカメラについて述べている[参考文献8]とは異なり、本明細書による照準経路では、物体空間から離れて移動することで、顕微鏡用対物レンズの視野を含む、本明細書では有効視野と呼ぶ試料のフィールドの表面反射で照準画像を形成することが可能になる。照準画像は、対物レンズの物体空間に影響することなく非常に良い光学品質を持つことができる。有効視野の寸法は、照準経路のフルフィールドイメージング装置によって制限される。有効視野については、直径約2mm~約5mmの円によって定義することができる。
【0096】
照準画像の光学的品質をさらに向上させるために、フルフィールドイメージング装置は、顕微鏡用対物レンズの物体空間で測定した場合の開口数が顕微鏡用対物レンズの公称開口数未満であると都合がよい。
【0097】
実際、従来の顕微鏡分析経路では、例えば開口数NAが約0.5~約1.25であるなど開口数(NA)が大きい顕微鏡用対物レンズを使用することが知られている。この開口数は、本明細書で視野と呼ぶ公称視野について製造業者により保証されており、約500μm~約1.5mmとすることができる。
【0098】
しかしながら、公称の使用条件下では顕微鏡用対物レンズ110は照準経路に使用されないため、照準経路のレベルでアクセス可能な解像度が対物レンズの仕様で発表されたものとは異なる場合がある。特に、有効視野が公称視野より大きい顕微鏡用対物レンズを使用することで、収差および/またはヴィネッティングが画質に悪影響をおよぼす可能性がある。したがって、照準経路で一層良好な画質を得るために、例えば開口数約0.05~0.1など、開口数が顕微鏡用対物レンズの公称開口数未満であるフルフィールドイメージング装置を設計することが可能である。
【0099】
このように、本明細書による顕微鏡分析システムの独自性は、同一の顕微鏡用対物レンズを、場合によって異なる開口数で、2つの異なる光学経路すなわち、顕微鏡用対物レンズを公称条件(開口数が大きく、高解像度でフィールドが小さい)で使用する顕微鏡分析経路と、顕微鏡用対物レンズを他の光学素子と組み合わせて、任意に開口数が例えば約0.08と小さく、低解像度でフィールドが広いフルフィールドイメージング装置を形成する照準経路で使用することができる点にある。よって、本明細書による顕微鏡分析システムは、1つの顕微鏡用対物レンズを介して並行して動作する2つの顕微鏡とみなすことができる。
【0100】
実際には、例えば顕微鏡用対物レンズの射出瞳115の平面と実質的に共役な平面で、照準経路に絞り255を配置することによって、照準経路のフルフィールドイメージング装置250の開口数を制限することが可能である。
【0101】
図3Aおよび図3Bは、このように、フルフィールドイメージング装置250の開口数を小さくするための2つの例を示している。これらの例では、顕微鏡用対物レンズ110は示されていない。
【0102】
図3Aに、照準経路がフルフィールドイメージング装置の開口数を制限できるようにする絞り255を含む第1の例を説明する図を示す。
【0103】
図3Bに、照準経路のフルフィールドイメージング装置250の開口数が、フルフィールドイメージング装置の光学素子のうちの1つ、この例ではカメラの対物レンズ253によって制限される第2の例を示す。この構成を用いると、フルフィールドイメージング装置250の大きさを小さくすることが可能であり、したがって非常にコンパクトな照準経路を得ることができるため、特に興味深い。もちろん、フルフィールドイメージング装置の光学素子のうちの別のもの、例えば接眼レンズ252によって、照準経路のフルフィールドイメージング装置250の開口数を制限することも可能であろう。
【0104】
絞り(図3Aの255または図3Bの253)が顕微鏡用対物レンズの瞳の平面と完全に共役であることは必須でない点に留意されたい。しかしながら、(例えば図2に示すように)絞りの平面が顕微鏡用対物レンズの射出瞳の平面と実質的に共役であれば、顕微鏡用対物レンズのテレセントリック性を失わず、顕微鏡用対物レンズ110で光線がヴィネッティングを起こすのを防ぐことが可能になる。
【0105】
さらに、フルフィールドイメージング装置250は、照準経路の設計の一例を示しているが、他の例も可能である。例えば、照準経路のフルフィールドイメージング装置250は、接眼レンズ252を含まなくてもよく、カメラの対物レンズ253が有限距離をイメージング、あるいは、接眼レンズ252が光線を無限に戻さない場合もあろう。いずれにしろ、上述したように、照準経路に追加された絞りによって、あるいは、絞りを形成するように構成された照準経路の光学素子のうちの1つによって、顕微鏡用対物レンズの物体空間において、装置250の開口数(NA)を顕微鏡用対物レンズの公称NAよりも小さくすると都合がよい。
【0106】
さらに、照準経路のフルフィールドイメージング
装置では、焦点を調整することも可能である。これによって、顕微鏡分析経路が試料の深部に画像を形成するように構成されている場合(例えば図1Bに示すようなOCMイメージングの場合)であっても、試料の表面反射において照準画像を形成することが可能となる。
【0107】
実際、顕微鏡分析経路が例えばLC-OCT経路である場合、顕微鏡用対物レンズ110は、垂直方向すなわち当該レンズの光軸に沿って平行移動される。この平行移動については、(Bスキャンを得る)照明線の垂直走査のモードすなわち顕微鏡用対物レンズの光軸に平行な方向で動的に行うことができ、あるいは、(Cスキャンを得る)照明線の水平走査のモードすなわち顕微鏡用対物レンズの光軸に垂直な平面に含まれる方向で、ユーザが制御することもできる。しかしながら、照準経路では、顕微鏡用対物レンズには、平行移動された場合であっても、例えば皮膚の表面など同じ位置にある試料の表面を撮影しつづけることが望まれる。したがって、照準画像の最適な画質を維持するには、試料Sの表面と検出領域156(図2)との間の光学的共役を維持するために、照準経路の広視野イメージング装置250の焦点を修正できると有用な場合がある。
【0108】
これを行うために、光学要素のうちの1つ、例えば対物レンズ253に、焦点距離が可変のレンズを設けることが可能であり、あるいは、この対物レンズを、例えば圧電モータを用いて移動させることができ、かつ、検出領域を固定したままにすることが可能である。実用上、焦点の調整は自動(オートフォーカス)にすることが可能であり、これによって、ユーザが行わなければならない調整を制限することが可能である。しかしながら、試料が皮膚などの場合、オートフォーカスを効果的に行えるほど明瞭な構造があるとは限らない。その場合、別の可能性として、顕微鏡用対物レンズの移動範囲内にある位置ごとに正しい焦点位置を関連付けるように、照準経路の広視野イメージング装置250の調節可能な焦点を較正することがあげられる。
【0109】
説明のために、製造者によって公称開口数が保証されている顕微鏡用対物レンズ110の視野401、照準経路の有効視野402、顕微鏡用対物レンズの全視野403を示す様々な例を、図4に示す。顕微鏡用対物レンズの全視野とは、対物レンズが光線を集めることができる全ての点を含む、顕微鏡用対物レンズの焦点面の領域である。実際には、十分な光学的品質の照準画像を維持するために、有効視野402は、広視野の照準画像を得るのに十分な大きさであるが、全視野よりも小さくなるように選択される。
【0110】
これらの3つの例では、顕微鏡分析経路の3つの検出パターン、すなわち線431、面432、点433が示されている。いずれの場合も、検出パターンは顕微鏡用対物レンズの視野に含まれる。
【0111】
本明細書による顕微鏡分析方法は、例えば、図1A図1Bおよび図1Cをそれぞれ参照して説明したシステム101、102、103のうちの1つによって、非限定的に説明したような顕微鏡分析システムによって実施することが可能である。
【0112】
本方法は、例えば図1A図1Bまたは図1Cを参照して説明したような顕微鏡分析経路140による試料S、例えば皮膚などの生体組織の顕微鏡分析と、例えば上記図1A図1C図2図3A図3Bを参照して説明したような照準経路150による試料の照準画像の形成と、を含む。照準画像は、上述したように、視野401を含む試料の有効視野402(図4)の反射画像である。
【0113】
本明細書による顕微鏡分析方法は、さらに、照準画像上に、検出パターン(例えば、図4に示すような検出パターン431、432または433)の位置を示す画像要素を表示することを含む。
【0114】
本明細書による方法の例示的な実施形態では、画像要素は、直接的に、照準経路の広視野イメージング装置によって顕微鏡分析経路140の照明経路120により試料上に形成された照明パターンから形成された画像であってもよい(図1A図1Bおよび図1Cを参照のこと)。
【0115】
しかしながら、特定の例示的な実施形態では、画像要素は、検出パターンの位置を示す図形要素であってもよく、事前の較正工程によって決定されてもよい。
【0116】
この構成は、照準経路の検出器によって照明パターンが検出されない場合に特に好都合である。なぜなら、例えば、照準経路の検出器が顕微鏡分析経路の照明源のスペクトル帯域で感度がないか、そうでなければ、グレアを制限するために照準経路において第1のスペクトル帯域がカットされるためである。この構成は、照準画像において照明パターンを識別しにくい場合や、検出パターンが照明パターンと実質的に異なる場合にも好都合である。
【0117】
よって、図5Aに、顕微鏡イメージングに適用される第1の例示的な実施形態に従って、前記画像要素について、顕微鏡イメージング経路の検出パターン、この例では矩形の表面で形成された検出パターンの位置を示す図形要素を決定するための較正工程を示す。この較正方法は、例えば、直角にカットされたスライドガラスのエッジ、あるいはスライドガラスにフォトリソグラフィで印刷されたパターンのエッジなど、鋭いエッジを有する較正試料を用いて実施される。
【0118】
第1の工程501では、照準画像上で視認可能な試料の鋭いエッジが、顕微鏡画像520のエッジ、この例では右側のエッジ上に見えるように、較正試料の照準画像510と、顕微鏡のen face画像520とを取得することを含む。その後、照準画像の線531が、顕微鏡分析経路の検出領域の右端として記録される。この方法は、第2の工程502において、試料の鋭いエッジが今度は顕微鏡画像の別の側、この例では左側のエッジに位置するように、試料を移動させることによって繰り返される。同様にして、照準画像の画像532が、顕微鏡分析経路の検出領域の左端として記録される。この方法は、工程503、504で同様に繰り返され、そのたびに、顕微鏡画像520の新たな側に鋭いエッジを出現させるために試料を移動させる。そのつど、対応する線534、535が照準画像上に記録される。図505に示すように、照準画像上に記録された4本の線から出発して、検出パターンの位置を示す図形要素、この例では顕微鏡画像の取得時に照準画像上に長方形によって具体化することができる長方形の表面を再構成することが可能である。このように、較正を行うことで、照準経路における顕微鏡分析経路の検出パターンを完全に特定することが可能となり、これは分析対象となる試料とは無関係である。較正は、線または点の検出パターンに適合させることができる。
【0119】
図5Bに、分光分析、例えばラマン分光分析に適用される第2の例に従って、前記画像要素について、検出パターン、この例では検出点の位置を示す図形要素を決定するための較正工程を示す。
【0120】
第1の工程541において、較正試料の照準画像510が取得され、同時にラマン信号(561)が測定される。
【0121】
強いラマン信号(562)が観察されるまで、参照試料を例えば左から右へ移動させる。これは、記録される較正試料551の最初の鋭いエッジに対応する。この方法は、第2の工程542において、再び強いラマン信号が現れるまで(スペクトル562)、例えば下から上へ較正試料を移動させることによって繰り返される。これは、記録される較正試料552の第2の鋭いエッジに対応する。工程543に示すように、記録された2本の直線551、552から出発して、検出パターン530を代表し、2本の直線の交点に位置する図形要素(ここでは検出点を中心とする円盤)を決定することが可能である。工程541、542を繰り返してはいるが、例えば右から左、その後に上から下へと進むことによって、較正の精度を確保することが可能である。このように、較正を行うことで、照準経路における顕微鏡分析経路の検出パターンを完全に特定することが可能となり、これは分析対象となる試料とは無関係である。
【0122】
実用上、試料の顕微鏡分析、例えば患者の皮膚を分析するための方法は、本明細書による方法の工程を実施することによって、施術者、例えば皮膚科医によって、以下の方法で実施することができる。
【0123】
第1の工程では、皮膚の目視検査を実施する。身体のスケールで「疑わしい」構造の位置を特定するために、臨床画像(写真)を撮影してもよい。続いて、ダーモスコピック検査を実施する。皮膚科医は、拡大光学システム、例えば、デジタルまたは非デジタルで照明が内蔵された、光学的には拡大鏡に相当するダーマトスコープを用いて、疑わしい構造の画像を撮影する。ダーマトスコープの視野は、一般に1~3cmである。ダーモスコピー画像は、デジタルダーマトスコープで直接記録することも、カメラの助けを借りて記録することもできる。
【0124】
ダーモスコピック検査時に疑問が残った場合、皮膚科医は、例えば図1Bに示すようなシステムによって、例えばLC-OCTタイプの顕微鏡分析経路を用いて、皮膚の顕微鏡分析に進む。皮膚科医は、手動プローブヘッド(すなわち、イメージング用に皮膚と接触するシステムの一部)を、疑わしい構造のできるだけ近くに配置する。そして、照準経路に導かれながら、ダーモスコピーですでに特定された病変の位置を正確に定めるまで、プローブ全体を(皮膚に接触させたまま)移動させる。
【0125】
照準画像上で構造が特定されると、皮膚科医は、LC-OCT顕微鏡分析経路によって、皮膚を細胞レベルで深さ方向に分析することを進める。
【0126】
検査は、例えば、構造の深さ全体に直接アクセスできる垂直断面イメージングモード(Bスキャン)から開始される。検出パターン(断面イメージングモードの場合は線)の位置を示すマクロ画像上に表示される画像要素によって、施術者は、細胞スケールで垂直断面を観察している過程で、構造のどのレベルにいるのかを完全に把握することができる。
【0127】
皮膚科医は、ダーモスコピーによってすでに得られた情報を充実させるために、細胞レベル/皮膚の深部における病理学的マーカーを検索するために、LC-OCT画像に関心を持つ場合もある。この段階では、これらの病理学的マーカーを探したり、それらを研究したりするために、構造内を移動することが可能である。
【0128】
この移動は、2つの方法で行うことができる。装置内に存在する走査装置(図1Bの143)によって横方向に、これは検出パターンの走査を可能にする。この走査の振幅はかなり低く(約500μm)、一方向のみである。2つ目の方法としては、プローブ全体またはプローブの下の皮膚を動かすことがあげられる。この移動は先験的にそれほど細かくはないが(精度は、ユーザが行使できる制御に依存する)、皮膚科医は、LC-OCTの任意のゾーンをターゲットにするために望むだけの振幅を持つことになる。このタイプの動作のためには、照準画像が重要である。なぜなら、照準画像があることで、プローブまたは皮膚を動かす動作の間、皮膚科医が常に構造のレベルにとどまり続けることができるためである。
【0129】
LC-OCTによってマーカーが特定されると、いくつかのオプションが可能である。皮膚科医は、構造についての理解を深めるために、水平断面モード(C-スキャンすなわちen face)に切り替えることができる(垂直断面モードと同じ手法で構造をナビゲートする)。
【0130】
また、着目領域における病理学的マーカーを3Dで研究するために、試料のボリューム内の情報を取得することも可能である。1つ以上のボリュームの取得に続いて、皮膚科医は、取得システムを停止し、分析用に取得したボリュームについて検討することができる。ボリュームの記録には、3D取得時に取得された一定数の照準画像の記録を伴うことに留意すべきである(同様に、任意の画像/映像の記録には、関連する照準画像/映像の記録を伴う)。取得時に施術者が移動した場合、3D取得には複数の照準画像が記録される(3D取得は比較的長くなる可能性がある)。
【0131】
図6A図6Bおよび図7に、本明細書による方法によってボリュームの取得時に記録された照準画像および顕微鏡によるBスキャン画像およびCスキャン画像の例を示す。
【0132】
これらの例では、顕微鏡分析経路は、3D画像の取得のために構成された、例えば図1Bに示すようなLC-OCTタイプの分析経路である。これらの画像を得るために、使用する光源(図1Bの121)は、約800nmでの発光用に光ファイバによってフィルタリングされ、軸外放物面鏡によってコリメート化されたスーパーコンティニウムレーザーである。顕微鏡用対物レンズ110は、シリコーンオイル浸対物レンズであり、倍率20倍、開口数NA=0.5である。焦点距離50mmのシリンドリカルレンズ122によって、皮膚レベルでの約1.5mm~1.5μmの線に沿って約10mWの出力での照明が可能になる。照明線の横方向での走査には、ガルバノスキャナ(図1Bの143)が使用される。Cスキャン画像を生成するための干渉を変化させるために、圧電アクチュエータにフォールドミラー142が取り付けられている。参照アームでは分散補償のために対物レンズ110と同一の顕微鏡用対物レンズ133が使用される。干渉計の参照面135は、溶融シリカで作られたスライドガラスの空気/ガラス界面である。チューブレンズ131は焦点距離が150mmであり、検出器138は、CMOSラインスキャンカメラを含む。顕微鏡経路と照準経路とを分離するために、走査装置143には90:10のスプリッタプレート(145)が取り付けられている。照準経路150は、図3Bで説明したように、絞りとして機能する数mmの小型光学系を備えたカメラ155を含む。このカメラには、フォーカス/オートフォーカスの調整が備えられている。
【0133】
よって、図6Aおよび図6Bに、一例として、照準画像610とともに表示されるBスキャン画像620を示す。照準画像610上では、図形要素630が、顕微鏡分析経路の検出パターン(線)の位置を示す。図形要素は、例えば図5Aを参照して説明したように、事前の較正によって決定される。
【0134】
ユーザがBスキャン画像620内の点をターゲットにして、こうしてターゲットにされた点の位置を照準画像上の試料の表面のレベルで視覚化できるように、図形要素上、あるいはより一般的には画像要素上の点をマークするために、さらにマーカー640を照準画像610に重ねることができる。例えば、画像620内のターゲットとされた点は、レチクル641によって示される。マーカーは、試料の表面に投影された、レチクルを介してターゲットとされた点の位置に対応するレベルに位置するように較正される。同様に、Bスキャン画像内の検出パターンの点(この場合、レチクルの縦軸によってマークされる)がどの位置に対応するかを視覚化するように、直接的にマーカー640を介して、検出パターン内で、照準画像内の点をターゲットにする可能性をユーザに委ねることも可能である。
【0135】
図6Bは、マーカー640およびレチクル641の移動を伴う同一の画像を示し、ユーザは、照準画像610上でマーカーの再配置自体を見るようにレチクル641を動かすか、Bスキャン画像620上でレチクルの再配置自体を見るようにマーカー640を動かすことが可能である。
【0136】
図7に、ボリュームから抽出された2つの画像、すなわちBスキャン画像721およびCスキャン画像722を示す。照準画像710は、Cスキャンの検出面に対応する検出パターン730と同時に表示される。
【0137】
Bスキャン画像(図6Aおよび図6B)の場合と同様に、照準画像の図形要素、より一般的には画像要素にマーカー740を重ねることが可能である。マーカーは、ここではレチクル741によってマークされたボリュームの点と、試料の表面のレベルでマーカーによってマークされた検出パターンの点とを関連付けることができるように、較正される。そうすれば、ユーザは、それぞれレチクル741を介して、試料の表面に投影されたボリュームの点がどの位置に対応するか、検出パターン内で、この場合はボリュームから抽出されたCスキャン画像で見ることができるレチクルの軸によって示される、それぞれボリューム内の検出パターンの点がどの位置に対応するか、を視覚化することができるように、マーカー740を介して、点をターゲットにすることができる。
【0138】
これらの画像に示されているように、本明細書による方法は、施術者が、ダーモスコピー画像の品質に近い画質の照準画像で顕微鏡分析のフィールド(この例ではBスキャンおよびCスキャン)を正確に特定することができるようにする。
【0139】
以上、本明細書による顕微鏡分析のための方法およびシステムを、いくつかの例示的な実施形態を通して説明したが、これらの方法およびシステムには当業者にとって明白な変形、改変および改良を含み、これらの変形、改変および改良は、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲の一部を形成することが、理解されよう。
参考文献
【0140】
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7