(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B60C 15/04 20060101AFI20231020BHJP
B60C 15/00 20060101ALI20231020BHJP
B60C 15/06 20060101ALI20231020BHJP
B60C 9/08 20060101ALI20231020BHJP
B29D 30/48 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B60C15/04 C
B60C15/00 B
B60C15/06 B
B60C15/00 K
B60C15/06 C
B60C9/08 N
B60C15/06 N
B60C15/00 L
B29D30/48
(21)【出願番号】P 2023504713
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(86)【国際出願番号】 CN2021078721
(87)【国際公開番号】W WO2022183377
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-01-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】523024842
【氏名又は名称】山東興達輪胎有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shandong Xingda Tyre Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Xishui Industrial Area, Guangrao County, Dongying, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】本田 裕彰
(72)【発明者】
【氏名】清水 麻里
(72)【発明者】
【氏名】王 明権
(72)【発明者】
【氏名】高 峰
(72)【発明者】
【氏名】黄 景偉
(72)【発明者】
【氏名】王 念存
(72)【発明者】
【氏名】李 玉龍
(72)【発明者】
【氏名】呉 江
(72)【発明者】
【氏名】賈 西泉
(72)【発明者】
【氏名】焦 裕超
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111936327(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111699097(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111712388(CN,A)
【文献】特開2020-163898(JP,A)
【文献】特開2018-114843(JP,A)
【文献】特開2019-151301(JP,A)
【文献】特開2018-118553(JP,A)
【文献】特開2014-172412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/04
B60C 15/00
B60C 15/06
B60C 9/08
B29D 30/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配置される一対のビード部と、
前記ビード部に配置され、ビードワイヤーをリング状に巻いて形成されると共に、タイヤ子午断面における形状が多角形断面で形成されるビードコアと、
一対の前記ビード部同士の間に亘って配置されるカーカス本体部と、前記カーカス本体部から連続して形成され前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部とを有し、カーカスコードをコートゴムによって被覆して形成されるカーカスと、
を備え、
前記ビードコアは、タイヤ子午断面での輪郭におけるタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが、それぞれタイヤ径方向に沿って延びる垂直線で形成され、
前記垂直線は、前記垂直線の長さが、前記ビードコアのタイヤ径方向における高さであるコア高さに対して20%以上30%以下の範囲内になっており、
前記垂直線は、前記ビードコアの内周面であるビードコア底面から前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部までのタイヤ径方向における距離が、前記コア高さに対して30%以上40%以下の範囲内であり、
前記ビードコアは、リング状に巻いて形成される前記ビードワイヤーの複数の周回部分がタイヤ幅方向に並ぶことにより1つの層を形成すると共に、複数の前記層がタイヤ径方向に積層され、
複数の前記層のうち、タイヤ径方向における最内周に位置する前記層である1層目と、前記1層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される2層目と、前記2層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される3層目とは、
タイヤ径方向に隣り合う2つの前記層同士では、相対的にタイヤ径方向外側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数が、タイヤ径方向内側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数よりも2本以上多く、且つ、タイヤ幅方向における片側の端部に位置する前記ビードワイヤー同士のタイヤ幅方向におけるずれ量が前記ビードワイヤーの0.5本分になっており、
前記1層目と前記2層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量が前記ビードワイヤーの0.5本分になる側と、前記2層目と前記3層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量が前記ビードワイヤーの0.5本分になる側とは、タイヤ幅方向において互いに反対側となることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ビードコアは、タイヤ子午断面における前記ビードコア底面の幅が、前記ビードコアの最大幅に対して35%以上45%以下の範囲内である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードコアは、
タイヤ子午断面における外周面であるビードコア上面におけるタイヤ幅方向内側の端部と、タイヤ幅方向内側の前記垂直線とのタイヤ幅方向における距離が、前記ビードコアの最大幅に対して25%以上40%以下の範囲内であり、
前記ビードコア底面におけるタイヤ幅方向内側の端部と、タイヤ幅方向内側の前記垂直線とのタイヤ幅方向における距離が、前記ビードコアの最大幅に対して25%以上40%以下の範囲内であり、
前記ビードコアの最大幅が、前記コア高さに対して0.9倍以上1.3倍以下の範囲内である請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カーカスは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアの外周面であるビードコア上面のタイヤ径方向における位置と同じ位置での前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1pが、80°≦θ1p≦89°の範囲内である請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ビード部には、前記ビードコアのタイヤ径方向外側にロアフィラーとアッパーフィラーとを有するビードフィラーが配置され、
前記ロアフィラーは、100%伸長時のモジュラスが7.5MPa以上10.5MPa以下の範囲内である請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ロアフィラーは、前記ビードコア底面から前記ロアフィラーのタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さが、前記ビードコア底面から前記ターンナップ部のタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さに対して、50%以上70%以下の範囲内である請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ビードフィラーは、前記ターンナップ部のタイヤ径方向外側の端部よりもタイヤ径方向内側の範囲における、タイヤ子午断面における前記ビードフィラーの面積に対する前記ロアフィラーの面積比が、45%以上55%以下の範囲内である請求項5または6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ビード部は、
タイヤ子午断面における前記ビードコアの重心位置からタイヤ幅方向外側に引いた直線上での前記ビードコアと前記ターンナップ部の前記カーカスコードとの距離Dbと、
前記直線上での前記ターンナップ部の前記カーカスコードと前記ビード部のタイヤ幅方向外側の表面であるビード部外表面との距離Dcとの比率Db/Dcが、10%以上15%以下の範囲内である請求項1~7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記ビード部は、
前記ビードコアにおけるタイヤ幅方向最外側に位置する前記ビードワイヤーと
前記ビード部のタイヤ幅方向外側の表面であるビード部外表面との距離Ddと、
前記ビード部の内周面であるビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWとの比率Dd/BWが、20%以上25%以下の範囲内である請求項1~8のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記ビードコアは、タイヤ幅方向外側の前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部と、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部との間に、前記カーカスに近付く方向に突出した中間頂点を有し、
前記カーカスは、前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部と前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部との間の範囲におけるカーカスラインの円弧の曲率半径が、
前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部と前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部と前記中間頂点とを通る円弧の曲率半径に対して、1.0倍以上1.5倍以下の範囲内である請求項1~9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記ビード部は、前記ビードコアのタイヤ径方向内側にリムクッションゴムを有し、
前記リムクッションゴムは、100%伸長時のモジュラスが3.5MPa以上5.5MPa以下の範囲内である請求項1~10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ビード部は、タイヤ子午断面において、
フランジ高さでタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、
前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部の位置でタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、
を結ぶ直線の、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内である請求項1~11のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
前記ビード部は、タイヤ子午断面において、
フランジ高さでタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、
タイヤ径方向において前記フランジ高さの2倍の位置でタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、
を結ぶ直線の、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpuが、50°≦θpu≦70°の範囲内である請求項1~12のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
前記ビード部には、少なくとも前記カーカス本体部のタイヤ幅方向内側に、前記カーカスに沿って補強層が配置される請求項1~13のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記補強層は、スチールコードを有するスチール補強層であり、
前記スチール補強層は、前記カーカスに沿って前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返して配置され、前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に位置する端部と、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する端部とのいずれもが前記ビードコアの外周面であるコア上面よりもタイヤ径方向外側に位置し、
前記スチール補強層が有する前記スチールコードは、タイヤ径方向における位置が前記コア上面のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内である請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
前記スチール補強層は、前記ビードコアのタイヤ幅方向における内側に位置する端部である内側エッジのリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf11が、フランジ高さRhに対して0.55≦Hrf11/Rh≦1.10の範囲内である請求項15に記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
前記スチール補強層は、前記ビードコアのタイヤ幅方向における外側に位置する端部である外側エッジのリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf12が、フランジ高さRhに対して0.40≦Hrf12/Rh≦0.95の範囲内である請求項15または16に記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
前記補強層は、複数のコードを有する複数の前記補強層が重ねて配置され、
複数の前記補強層は、隣接する前記補強層同士で、前記コードのタイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が互いに反対方向になる請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【請求項19】
前記補強層は、3層が配置され、
3層の前記補強層は、タイヤ子午断面において前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ径方向外側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さである内側エッジ高さが互いに異なっており、
3層の前記補強層のうち、前記カーカスに隣接する前記補強層である第1補強層の前記内側エッジ高さをHrf11とし、
前記第1補強層における前記カーカスが位置する側の反対の面側で前記第1補強層に隣接する前記補強層である第2補強層の前記内側エッジ高さをHrf21とし、
前記第2補強層における前記第1補強層が位置する側の反対の面側で前記第2補強層に隣接する前記補強層である第3補強層の前記内側エッジ高さをHrf31とし、
フランジ高さをRhとする場合に、
前記内側エッジ高さと前記フランジ高さとの関係は、
0.55≦Hrf11/Rh≦1.10、
1.05≦Hrf21/Rh≦1.40、
1.25≦Hrf31/Rh≦1.60
をそれぞれ満たす請求項18に記載の空気入りタイヤ。
【請求項20】
前記第1補強層は、前記カーカスに沿って前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置され、
前記第1補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さである外側エッジ高さHrf12は、前記フランジ高さRhとの関係が、0.40≦Hrf12/Rh≦0.95を満たす請求項19に記載の空気入りタイヤ。
【請求項21】
前記第2補強層は、前記第2補強層におけるタイヤ径方向内側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf22と、前記フランジ高さRhとの関係が、0.05≦Hrf22/Rh≦0.35を満たし、
前記第3補強層は、前記第3補強層におけるタイヤ径方向内側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf32と、前記フランジ高さRhとの関係が、0.20≦Hrf32/Rh≦0.50を満たす請求項19または20に記載の空気入りタイヤ。
【請求項22】
前記第1補強層が有する前記コードは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内であり、
前記第2補強層が有する前記コードは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf2が、-65°≦θrf2≦-20°の範囲内であり、
前記第3補強層が有する前記コードは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf3が、20°≦θrf3≦65°の範囲内である請求項19~21のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項23】
前記補強層は、少なくとも2層が配置され、
2層の前記補強層のうち、前記カーカスに隣接する前記補強層である第1補強層は、前記カーカスに沿って前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置されることより、少なくとも前記ビードコアのタイヤ幅方向における最内部のタイヤ径方向における位置と同じ位置と、前記ビードコアのタイヤ幅方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置との間に亘って配置され、
2層の前記補強層のうち、前記第1補強層における前記カーカスが位置する側の反対の面側で前記第1補強層に隣接する前記補強層である第2補強層は、
前記カーカス本体部のタイヤ幅方向内側に位置する部分におけるタイヤ径方向外側の端部が、前記第1補強層における前記カーカス本体部のタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部よりもタイヤ径方向外側に位置し、
前記第2補強層の反対側の端部は、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向内側の端部よりもタイヤ幅方向内側、または前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置する請求項14に記載の空気入りタイヤ。
【請求項24】
前記第1補強層は、スチールコードを有するスチール補強層であり、
前記第2補強層は、有機繊維コードを有する有機繊維補強層である請求項23に記載の空気入りタイヤ。
【請求項25】
前記ビード部は、
前記ビードコアの内径BICが、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内になっており、
前記ビードコアの最大幅CWが、前記ビード部の内周面であるビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内になっており、
前記ビードベース部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が異なる複数のテーパー部を有して形成され、
複数の前記テーパー部のうち、最もタイヤ幅方向外側に位置する前記テーパー部を第1テーパー部とし、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向内側に位置して前記第1テーパー部に連接する前記テーパー部を第2テーパー部とする場合に、
前記第2テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも大きい請求項1~24のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項26】
前記ビードベース部は、前記第1テーパー部と前記第2テーパー部との連接部分である屈曲部が、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向における中心位置よりもタイヤ幅方向内側に位置する請求項25に記載の空気入りタイヤ。
【請求項27】
前記第1テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が5°以上である請求項25または26に記載の空気入りタイヤ。
【請求項28】
前記第1テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が5°以上10°以下の範囲内である請求項27に記載の空気入りタイヤ。
【請求項29】
前記第2テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が10°以上35°以下の範囲内である請求項25~28のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項30】
前記ビードベース部は、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向における幅T1と、前記ビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.45≦T1/BW≦0.85の範囲内である請求項25~29のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項31】
前記ビードベース部は、前記第2テーパー部のタイヤ幅方向における幅T2と、前記ビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.15≦T2/BW≦0.55の範囲内である請求項25~30のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項32】
前記空気入りタイヤを規定リムに装着した場合における、前記ビードコアのタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向における中心位置において40%以上50%以下の範囲内である請求項1~31のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項33】
タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配置される一対のビード部と、
前記ビード部に配置され、ビードワイヤーをリング状に巻いて形成されると共に、タイヤ子午断面における形状が多角形断面で形成されるビードコアと、
一対の前記ビード部同士の間に亘って配置されるカーカス本体部と、前記カーカス本体部から連続して形成され前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部とを有し、カーカスコードをコートゴムによって被覆して形成されるカーカスと、を備える空気入りタイヤの製造方法であって、
前記ビードコアは、タイヤ子午断面での輪郭におけるタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが、それぞれタイヤ径方向に沿って延びる垂直線になるように形成し、
前記垂直線の長さは、前記ビードコアのタイヤ径方向における高さであるコア高さに対して20%以上30%以下の範囲内にし、
前記垂直線は、前記ビードコアの内周面であるビードコア底面から前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部までのタイヤ径方向における距離を、前記コア高さに対して30%以上40%以下の範囲内にし、
前記ビードコアは、リング状に巻く前記ビードワイヤーの複数の周回部分をタイヤ幅方向に並ばせることにより1つの層を形成すると共に、複数の前記層をタイヤ径方向に積層し、
複数の前記層のうち、タイヤ径方向における最内周に位置する前記層である1層目と、前記1層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される2層目と、前記2層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される3層目とは、
タイヤ径方向に隣り合う2つの前記層同士では、相対的にタイヤ径方向外側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数を、タイヤ径方向内側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数よりも2本以上多くし、且つ、タイヤ幅方向における片側の端部に位置する前記ビードワイヤー同士のタイヤ幅方向におけるずれ量を前記ビードワイヤーの0.5本分にし、
前記1層目と前記2層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量を前記ビードワイヤーの0.5本分にする側と、前記2層目と前記3層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量を前記ビードワイヤーの0.5本分にする側とは、タイヤ幅方向において互いに反対側にすることを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
【請求項34】
前記ビードワイヤーは、前記1層目におけるタイヤ幅方向外側の端部から巻き始める請求項33に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項35】
前記ビード部は、
タイヤ子午断面における前記ビードコアの重心位置からタイヤ幅方向外側に引いた直線上での前記ビードコアと前記ターンナップ部の前記カーカスコードとの距離Dbと、
前記直線上での前記ターンナップ部の前記カーカスコードと前記ビード部のタイヤ幅方向外側の表面であるビード部外表面との距離Dcとの比率Db/Dcを、10%以上15%以下の範囲内にする請求項33または34に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項36】
前記ビード部は、タイヤ子午断面において、
フランジ高さでタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、
前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部の位置でタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、
を結ぶ直線の、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpを、60°≦θp≦75°の範囲内にする請求項33~35のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【請求項37】
前記ビード部は、
前記ビードコアの内径BICを、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内にし、
前記ビードコアの最大幅CWを、前記ビード部の内周面であるビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内にし、
前記ビードベース部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が異なる複数のテーパー部を有して形成し、
複数の前記テーパー部のうち、最もタイヤ幅方向外側に位置する前記テーパー部を第1テーパー部とし、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向内側に位置して前記第1テーパー部に連接する前記テーパー部を第2テーパー部とする場合に、
前記第2テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度を、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも大きくする請求項33~36のいずれか1項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、複数のビードワイヤーを束ねてなる環状部材であるビードコアを有するビード部がリムホイールのリムに嵌合することにより、リムホイールに装着される。ビード部は、空気入りタイヤをリムホイールに装着する際に、リムホイールに対して実際に装着される部分であるため、空気入りタイヤの性能確保において重要な部位になっているが、従来の空気入りタイヤの中には、ビード部に種々の工夫を施すことにより、所望の性能の実現を図っているものがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された空気入りタイヤでは、ビードコアが、両側の丸められた端部と接合された実質的に平坦なビード面を備えることにより、ビード領域における損耗を低減している。また、特許文献2に記載された重荷重用空気入りタイヤでは、ビードコアのラジアル方向内側とラジアル方向外側の輪郭はタイヤ軸方向に延びる下方底辺と上方底辺で形成され、タイヤ軸方向外側の輪郭は下方底辺及び上方底辺のタイヤ軸方向外側端からタイヤ軸方向外側に向かって傾斜して延びる上下一対の外側斜辺で形成され、ビードコアのタイヤ軸方向内側の輪郭は、下方底辺及び上方底辺のタイヤ軸方向内側端を結ぶ内側辺で形成されることにより、ビード部耐久性能の向上を図っている。
【0004】
また、特許文献3に記載されたビードコアは、ビードコアの断面中心から内径側の断面形状を、ビードコアの軸方向に平行な底辺と、ビードコアの軸方向に垂直な左右両側の中間側辺と、左右の中間側辺の各内端と底辺の両側とをそれぞれ繋ぐ鈍角の2辺からなる斜辺とから形成することにより、カーカスコードのフレッティングによる破断故障やエア溜まりに起因するタイヤ故障を減少させている。また、特許文献4に記載された空気入りタイヤでは、ワイヤーを複数列及び複数段に隙間なく整列配置させてなる全体として円環形状のビードコアを製造するにあたって、最内周側から最大幅位置に至るまでの各ワイヤー列の幅方向最外側のそれぞれのワイヤーを、その内周側のワイヤー列の幅方向最外側のそれぞれのワイヤーに対し幅方向外側に位置させて、そのずれ量を、最内周側から最大幅位置に向けて傾向的に小さくすることにより、カーカスの破断を防止し、タイヤの製造等にあたってカーカスの巻き上げ端部分への波打ちの発生を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-34784号公報
【文献】特開平9-240223号公報
【文献】特開2005-88793号公報
【文献】特許第4243091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、一般的にビードコアは、タイヤ子午断面における形状が多角形状になっているが、超大型の空気入りタイヤの中には、ビードコアの角によるカーカスへの応力集中を避けるため、ビードコアの周りにナイロンカバーが巻かれたものがある。しかし、ナイロンカバーのみでは、ビードコアの角とカーカス間の距離が十分ではないため、カーカスに大きな張力が作用した際に、ビードコアの角の付近とカーカスとが大きな力を受けながら擦れ易くなる。この場合、ビードコアの角とカーカスとが擦れることにより、カーカスコードが破断してしまう虞がある。このため、従来の空気入りタイヤでは、ビード部の耐久性の観点で改良の余地があった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ビード部の耐久性を向上させることのできる空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配置される一対のビード部と、前記ビード部に配置され、ビードワイヤーをリング状に巻いて形成されると共に、タイヤ子午断面における形状が多角形断面で形成されるビードコアと、一対の前記ビード部同士の間に亘って配置されるカーカス本体部と、前記カーカス本体部から連続して形成され前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部とを有し、カーカスコードをコートゴムによって被覆して形成されるカーカスと、を備え、前記ビードコアは、タイヤ子午断面での輪郭におけるタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが、それぞれタイヤ径方向に沿って延びる垂直線で形成され、前記垂直線は、前記垂直線の長さが、前記ビードコアのタイヤ径方向における高さであるコア高さに対して20%以上30%以下の範囲内になっており、前記垂直線は、前記ビードコアの内周面であるビードコア底面から前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部までのタイヤ径方向における距離が、前記コア高さに対して30%以上40%以下の範囲内であり、前記ビードコアは、リング状に巻いて形成される前記ビードワイヤーの複数の周回部分がタイヤ幅方向に並ぶことにより1つの層を形成すると共に、複数の前記層がタイヤ径方向に積層され、複数の前記層のうち、タイヤ径方向における最内周に位置する前記層である1層目と、前記1層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される2層目と、前記2層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される3層目とは、タイヤ径方向に隣り合う2つの前記層同士では、相対的にタイヤ径方向外側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数が、タイヤ径方向内側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数よりも2本以上多く、且つ、タイヤ幅方向における片側の端部に位置する前記ビードワイヤー同士のタイヤ幅方向におけるずれ量が前記ビードワイヤーの0.5本分になっており、前記1層目と前記2層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量が前記ビードワイヤーの0.5本分になる側と、前記2層目と前記3層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量が前記ビードワイヤーの0.5本分になる側とは、タイヤ幅方向において互いに反対側となることを特徴とする。
【0009】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアは、タイヤ子午断面における前記ビードコア底面の幅が、前記ビードコアの最大幅に対して35%以上45%以下の範囲内であることが好ましい。
【0010】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアは、タイヤ子午断面における外周面であるビードコア上面におけるタイヤ幅方向内側の端部と、タイヤ幅方向内側の前記垂直線とのタイヤ幅方向における距離が、前記ビードコアの最大幅に対して25%以上40%以下の範囲内であり、前記ビードコア底面におけるタイヤ幅方向内側の端部と、タイヤ幅方向内側の前記垂直線とのタイヤ幅方向における距離が、前記ビードコアの最大幅に対して25%以上40%以下の範囲内であり、前記ビードコアの最大幅が、前記コア高さに対して0.9倍以上1.3倍以下の範囲内であることが好ましい。
【0011】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記カーカスは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアの外周面であるビードコア上面のタイヤ径方向における位置と同じ位置での前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1pが、80°≦θ1p≦89°の範囲内であることが好ましい。
【0012】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部には、前記ビードコアのタイヤ径方向外側にロアフィラーとアッパーフィラーとを有するビードフィラーが配置され、前記ロアフィラーは、100%伸長時のモジュラスが7.5MPa以上10.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。
【0013】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ロアフィラーは、前記ビードコア底面から前記ロアフィラーのタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さが、前記ビードコア底面から前記ターンナップ部のタイヤ径方向外側の端部までのタイヤ径方向における高さに対して、50%以上70%以下の範囲内であることが好ましい。
【0014】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードフィラーは、前記ターンナップ部のタイヤ径方向外側の端部よりもタイヤ径方向内側の範囲における、タイヤ子午断面における前記ビードフィラーの面積に対する前記ロアフィラーの面積比が、45%以上55%以下の範囲内であることが好ましい。
【0015】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部は、タイヤ子午断面における前記ビードコアの重心位置からタイヤ幅方向外側に引いた直線上での前記ビードコアと前記ターンナップ部の前記カーカスコードとの距離Dbと、前記直線上での前記ターンナップ部の前記カーカスコードと前記ビード部のタイヤ幅方向外側の表面であるビード部外表面との距離Dcとの比率Db/Dcが、10%以上15%以下の範囲内であることが好ましい。
【0016】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部は、前記ビードコアにおけるタイヤ幅方向最外側に位置する前記ビードワイヤーと前記ビード部外表面との距離Ddと、前記ビード部の内周面であるビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWとの比率Dd/BWが、20%以上25%以下の範囲内であることが好ましい。
【0017】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードコアは、タイヤ幅方向外側の前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部と、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部との間に、前記カーカスに近付く方向に突出した中間頂点を有し、前記カーカスは、前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部と前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部との間の範囲におけるカーカスラインの円弧の曲率半径が、前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部と前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部と前記中間頂点とを通る円弧の曲率半径に対して、1.0倍以上1.5倍以下の範囲内であることが好ましい。
【0018】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部は、前記ビードコアのタイヤ径方向内側にリムクッションゴムを有し、前記リムクッションゴムは、100%伸長時のモジュラスが3.5MPa以上5.5MPa以下の範囲内であることが好ましい。
【0019】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部は、タイヤ子午断面において、フランジ高さでタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部の位置でタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、を結ぶ直線の、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内であることが好ましい。
【0020】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部は、タイヤ子午断面において、前記フランジ高さでタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、タイヤ径方向において前記フランジ高さの2倍の位置でタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、を結ぶ直線の、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpuが、50°≦θpu≦70°の範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部には、少なくとも前記カーカス本体部のタイヤ幅方向内側に、前記カーカスに沿って補強層が配置されることが好ましい。
【0022】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、スチールコードを有するスチール補強層であり、前記スチール補強層は、前記カーカスに沿って前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返して配置され、前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に位置する端部と、前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する端部とのいずれもが前記ビードコアの外周面であるコア上面よりもタイヤ径方向外側に位置し、前記スチール補強層が有する前記スチールコードは、タイヤ径方向における位置が前記コア上面のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内であることが好ましい。
【0023】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スチール補強層は、前記ビードコアのタイヤ幅方向における内側に位置する端部である内側エッジのリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf11が、フランジ高さRhに対して0.55≦Hrf11/Rh≦1.10の範囲内であることが好ましい。
【0024】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記スチール補強層は、前記ビードコアのタイヤ幅方向における外側に位置する端部である外側エッジのリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf12が、フランジ高さRhに対して0.40≦Hrf12/Rh≦0.95の範囲内であることが好ましい。
【0025】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、複数のコードを有する複数の前記補強層が重ねて配置され、複数の前記補強層は、隣接する前記補強層同士で、前記コードのタイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が互いに反対方向になることが好ましい。
【0026】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、3層が配置され、3層の前記補強層は、タイヤ子午断面において前記ビードコアのタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ径方向外側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さである内側エッジ高さが互いに異なっており、3層の前記補強層のうち、前記カーカスに隣接する前記補強層である第1補強層の前記内側エッジ高さをHrf11とし、前記第1補強層における前記カーカスが位置する側の反対の面側で前記第1補強層に隣接する前記補強層である第2補強層の前記内側エッジ高さをHrf21とし、前記第2補強層における前記第1補強層が位置する側の反対の面側で前記第2補強層に隣接する前記補強層である第3補強層の前記内側エッジ高さをHrf31とし、前記フランジ高さをRhとする場合に、前記内側エッジ高さと前記フランジ高さとの関係は、0.55≦Hrf11/Rh≦1.10、1.05≦Hrf21/Rh≦1.40、1.25≦Hrf31/Rh≦1.60をそれぞれ満たすことが好ましい。
【0027】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1補強層は、前記カーカスに沿って前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置され、前記第1補強層における前記ビードコアのタイヤ幅方向外側に位置する側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さである外側エッジ高さHrf12は、前記フランジ高さRhとの関係が、0.40≦Hrf12/Rh≦0.95を満たすことが好ましい。
【0028】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第2補強層は、前記第2補強層におけるタイヤ径方向内側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf22と、前記フランジ高さRhとの関係が、0.05≦Hrf22/Rh≦0.35を満たし、前記第3補強層は、前記第3補強層におけるタイヤ径方向内側の端部のリム径基準位置からのタイヤ径方向における高さHrf32と、前記フランジ高さRhとの関係が、0.20≦Hrf32/Rh≦0.50を満たすことが好ましい。
【0029】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1補強層が有する前記コードは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内であり、前記第2補強層が有する前記コードは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf2が、-65°≦θrf2≦-20°の範囲内であり、前記第3補強層が有する前記コードは、タイヤ径方向における位置が前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf3が、20°≦θrf3≦65°の範囲内であることが好ましい。
【0030】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記補強層は、少なくとも2層が配置され、2層の前記補強層のうち、前記カーカスに隣接する前記補強層である第1補強層は、前記カーカスに沿って前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置されることより、少なくとも前記ビードコアのタイヤ幅方向における最内部のタイヤ径方向における位置と同じ位置と、前記ビードコアのタイヤ幅方向における最外部のタイヤ径方向における位置と同じ位置との間に亘って配置され、2層の前記補強層のうち、前記第1補強層における前記カーカスが位置する側の反対の面側で前記第1補強層に隣接する前記補強層である第2補強層は、前記カーカス本体部のタイヤ幅方向内側に位置する部分におけるタイヤ径方向外側の端部が、前記第1補強層における前記カーカス本体部のタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部よりもタイヤ径方向外側に位置し、前記第2補強層の反対側の端部は、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向内側の端部よりもタイヤ幅方向内側、または前記ビードコア底面のタイヤ幅方向外側の端部よりもタイヤ幅方向外側に位置することが好ましい。
【0031】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1補強層は、スチールコードを有するスチール補強層であり、前記第2補強層は、有機繊維コードを有する有機繊維補強層であることが好ましい。
【0032】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビード部は、前記ビードコアの内径BICが、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内になっており、前記ビードコアの最大幅CWが、前記ビード部の内周面であるビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内になっており、前記ビードベース部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が異なる複数のテーパー部を有して形成され、複数の前記テーパー部のうち、最もタイヤ幅方向外側に位置する前記テーパー部を第1テーパー部とし、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向内側に位置して前記第1テーパー部に連接する前記テーパー部を第2テーパー部とする場合に、前記第2テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも大きいことが好ましい。
【0033】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードベース部は、前記第1テーパー部と前記第2テーパー部との連接部分である屈曲部が、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向における中心位置よりもタイヤ幅方向内側に位置することが好ましい。
【0034】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が5°以上であることが好ましい。
【0035】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第1テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が5°以上10°以下の範囲内であることが好ましい。
【0036】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記第2テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が10°以上35°以下の範囲内であることが好ましい。
【0037】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードベース部は、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向における幅T1と、前記ビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.45≦T1/BW≦0.85の範囲内であることが好ましい。
【0038】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記ビードベース部は、前記第2テーパー部のタイヤ幅方向における幅T2と、前記ビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.15≦T2/BW≦0.55の範囲内であることが好ましい。
【0039】
また、上記空気入りタイヤにおいて、前記空気入りタイヤを規定リムに装着した場合における、前記ビードコアのタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、前記ビードコア底面のタイヤ幅方向における中心位置において40%以上50%以下の範囲内であることが好ましい。
【0040】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤの製造方法は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面の両側に配置される一対のビード部と、前記ビード部に配置され、ビードワイヤーをリング状に巻いて形成されると共に、タイヤ子午断面における形状が多角形断面で形成されるビードコアと、一対の前記ビード部同士の間に亘って配置されるカーカス本体部と、前記カーカス本体部から連続して形成され前記ビードコアのタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部とを有し、カーカスコードをコートゴムによって被覆して形成されるカーカスと、を備える空気入りタイヤの製造方法であって、前記ビードコアは、タイヤ子午断面での輪郭におけるタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが、それぞれタイヤ径方向に沿って延びる垂直線になるように形成し、前記垂直線の長さは、前記ビードコアのタイヤ径方向における高さであるコア高さに対して20%以上30%以下の範囲内にし、前記垂直線は、前記ビードコアの内周面であるビードコア底面から前記垂直線のタイヤ径方向における内側端部までのタイヤ径方向における距離を、前記コア高さに対して30%以上40%以下の範囲内にし、前記ビードコアは、リング状に巻く前記ビードワイヤーの複数の周回部分をタイヤ幅方向に並ばせることにより1つの層を形成すると共に、複数の前記層をタイヤ径方向に積層し、複数の前記層のうち、タイヤ径方向における最内周に位置する前記層である1層目と、前記1層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される2層目と、前記2層目のタイヤ径方向外側に隣り合って積層される3層目とは、タイヤ径方向に隣り合う2つの前記層同士では、相対的にタイヤ径方向外側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数を、タイヤ径方向内側に位置する前記層の前記ビードワイヤーの数よりも2本以上多くし、且つ、タイヤ幅方向における片側の端部に位置する前記ビードワイヤー同士のタイヤ幅方向におけるずれ量を前記ビードワイヤーの0.5本分にし、前記1層目と前記2層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量を前記ビードワイヤーの0.5本分にする側と、前記2層目と前記3層目とにおける前記ビードワイヤー同士のずれ量を前記ビードワイヤーの0.5本分にする側とは、タイヤ幅方向において互いに反対側にすることを特徴とする。
【0041】
また、上記空気入りタイヤの製造方法において、前記ビードワイヤーは、前記1層目におけるタイヤ幅方向外側の端部から巻き始めることが好ましい。
【0042】
また、上記空気入りタイヤの製造方法において、前記ビード部は、タイヤ子午断面における前記ビードコアの重心位置からタイヤ幅方向外側に引いた直線上での前記ビードコアと前記ターンナップ部の前記カーカスコードとの距離Dbと、前記直線上での前記ターンナップ部の前記カーカスコードと前記ビード部のタイヤ幅方向外側の表面であるビード部外表面との距離Dcとの比率Db/Dcを、10%以上15%以下の範囲内にすることが好ましい。
【0043】
また、上記空気入りタイヤの製造方法において、前記ビード部は、タイヤ子午断面において、フランジ高さでタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、前記ビードコアのタイヤ径方向における最外部の位置でタイヤ幅方向に引いた直線と前記カーカス本体部との交点と、を結ぶ直線の、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpを、60°≦θp≦75°の範囲内にすることが好ましい。
【0044】
また、上記空気入りタイヤの製造方法において、前記ビード部は、前記ビードコアの内径BICを、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内にし、前記ビードコアの最大幅CWを、前記ビード部の内周面であるビードベース部のタイヤ幅方向における幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内にし、前記ビードベース部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が異なる複数のテーパー部を有して形成し、複数の前記テーパー部のうち、最もタイヤ幅方向外側に位置する前記テーパー部を第1テーパー部とし、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向内側に位置して前記第1テーパー部に連接する前記テーパー部を第2テーパー部とする場合に、前記第2テーパー部は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度を、前記第1テーパー部のタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも大きくすることが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法は、ビード部の耐久性を向上させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。
【
図5】
図5は、ビードコアの中間頂点についての説明図である。
【
図6】
図6は、ビード部におけるビードコアのタイヤ幅方向外側部分の寸法についての説明図である。
【
図7】
図7は、ビードフィラーについての説明図である。
【
図8】
図8は、ビード部におけるカーカスの配置形態についての説明図である。
【
図9】
図9は、
図8をC-C矢視方向に見た場合におけるカーカスコードの模式図である。
【
図10】
図10は、ビード部に配置される補強層についての説明図である。
【
図11】
図11は、
図10をD-D矢視方向に見た場合における補強層のコードの模式図であり、コードの傾斜方向についての説明図である。
【
図12】
図12は、
図10をD-D矢視方向に見た場合における補強層のコードの模式図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係る空気入りタイヤのビード部の詳細図である。
【
図15】
図15は、空気入りタイヤを規定リムに装着した場合におけるゴムの圧縮率についての説明図である。
【
図16】
図16は、実施形態1に係る空気入りタイヤの変形例であり、実施形態とは異なる配置形態で補強層が配置される状態についての説明図である。
【
図17】
図17は、実施形態2に係る空気入りタイヤの変形例であり、テーパー部が3段で形成される場合の説明図である。
【
図18A】
図18Aは、空気入りタイヤの第1の性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図18B】
図18Bは、空気入りタイヤの第1の性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図19A】
図19Aは、空気入りタイヤの第2の性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図19B】
図19Bは、空気入りタイヤの第2の性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図20A】
図20Aは、空気入りタイヤの第3の性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図20B】
図20Bは、空気入りタイヤの第3の性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図21A】
図21Aは、空気入りタイヤの第4の性能評価試験の結果を示す図表である。
【
図21B】
図21Bは、空気入りタイヤの第4の性能評価試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明に係る空気入りタイヤ及び空気入りタイヤの製造方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0048】
[実施形態1]
以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。また、以下の説明では、タイヤ子午断面とは、タイヤ回転軸を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。
【0049】
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の要部を示す子午断面図である。実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、ORタイヤ(Off the Road Tire)と呼ばれる、建設車両用ラジアルタイヤになっている。本実施形態1として
図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ子午断面で見た場合、タイヤ径方向の最も外側となる部分にトレッド部2が配置されており、トレッド部2は、ゴム組成物であるトレッドゴム2aによって構成されている。トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド踏面3として形成されている。
【0050】
トレッド部2のトレッド踏面3には、タイヤ周方向に延びる周方向溝15やタイヤ幅方向に延びるラグ溝等の溝(図示省略)が複数形成されており、トレッド部2には、これらの溝によって複数の陸部10が区画形成されている。
【0051】
タイヤ幅方向におけるトレッド部2の両端は、ショルダー部4として形成されており、ショルダー部4から、タイヤ径方向内側の所定の位置までは、サイドウォール部5が配置されている。つまり、サイドウォール部5は、タイヤ幅方向における空気入りタイヤ1の両側2箇所に配置されている。サイドウォール部5は、ゴム組成物であるサイドウォールゴム5aによって構成されている。また、タイヤ幅方向両側のそれぞれのサイドウォール部5におけるタイヤ径方向内側寄りの位置には、リムチェックライン9が形成されている。リムチェックライン9は、サイドウォール部5の表面から突出し、タイヤ周方向における一周に亘って形成されている。
【0052】
さらに、それぞれのサイドウォール部5のタイヤ径方向内側には、ビード部20が位置しており、ビード部20は、サイドウォール部5と同様に、タイヤ赤道面CLの両側2箇所に配置されている。即ち、ビード部20は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面CLの両側に一対が配置されている。一対のビード部20のそれぞれにはビードコア21が配置されており、それぞれのビードコア21のタイヤ径方向外側にはビードフィラー50が配置されている。ビードコア21は、スチールワイヤーであるビードワイヤー30(
図3参照)をリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー50は、後述するカーカス6のタイヤ幅方向端部がビードコア21の位置でタイヤ幅方向外側に折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。また、ビードフィラー50は、ビードコア21の外周面に当接して配置されるロアフィラー51と、ロアフィラー51よりもタイヤ径方向外側寄りの位置に配置されるアッパーフィラー52とを有している。
【0053】
ビード部20は、5°テーパーの規定リムRを有するリムホイールに装着することができるように構成されている。即ち、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、ビード部20と嵌合する部分がリムホイールの回転軸に対して5°±1°の傾斜角でタイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従ってタイヤ径方向外側に向かう方向に傾斜する規定リムRに装着することが可能になっている。なお、規定リムRとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。
【0054】
トレッド部2のタイヤ径方向内側には、ベルト層7が設けられている。ベルト層7は、3枚以上のベルトプライを積層する多層構造をなし、一般的なORタイヤでは、4枚~8枚のベルトプライが積層される。本実施形態1では、ベルト層7は6層のベルトプライ7a,7b,7c,7d,7e,7fが積層されている。このようにベルト層7を構成するベルトプライ7a,7b,7c,7d,7e,7fは、スチール或いは有機繊維材からなる複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。また、ベルトプライ7a,7b,7c,7d,7e,7fは、タイヤ周方向に対するベルトコードのタイヤ幅方向の傾斜角が互いに異なっており、ベルトコードの傾斜方向を相互に交差させて積層される、いわゆるクロスプライ構造として構成される。これにより、ベルト層7は、構造強度が高められている。6層のベルトプライ7a,7b,7c,7d,7e,7fは、例えば、交差ベルト層7a,7b,7c,7dと保護ベルト層7e,7fとから構成される。
【0055】
このベルト層7のタイヤ径方向内側、及びサイドウォール部5のタイヤ赤道面CL側には、ラジアルプライのコードを内包するカーカス6が連続して設けられている。このカーカス6は、1枚のカーカスプライから成る単層構造、或いは複数のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、タイヤ幅方向の両側に配置されるビードコア21間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。詳しくは、カーカス6は、一対のビード部20間に架け渡されており、タイヤ幅方向における両側に位置する一対のビード部20のうち、一方のビード部20から他方のビード部20にかけて配設されている。また、カーカス6は、ビードコア21及びビードフィラー50を包み込むように、ビード部20でビードコア21のタイヤ幅方向内側からビードコア21のタイヤ径方向内側を通ってタイヤ幅方向外側に折り返されている。即ち、カーカス6はビード部20で、ビードコア21のタイヤ幅方向内側からビードコア21のタイヤ幅方向外側にかけて、ビードコア21周りに折り返されている。
【0056】
このためカーカス6は、一対のビード部20同士の間に亘って配置されるカーカス本体部6aと、カーカス本体部6aから連続して形成されビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返されるターンナップ部6bと、を有している。ここでいうカーカス本体部6aは、カーカス6における一対のビードコア21のタイヤ幅方向内側同士の間に亘って形成される部分になっており、ターンナップ部6bは、ビードコア21のタイヤ幅方向内側でカーカス本体部6aから連続して形成され、ビードコア21のタイヤ径方向内側を通ってタイヤ幅方向外側にかけて折り返される部分になっている。ビードフィラー50は、このようにビードコア21のタイヤ幅方向外側に折り返される部分であるターンナップ部6bのタイヤ幅方向内側で、且つ、ビードコア21のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0057】
このように配置されるカーカス6のカーカスプライは、スチール、或いはアラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨン等の有機繊維材から成るコード部材である複数のカーカスコード6c(
図2参照)をゴム部材であるコートゴム6d(
図2参照)で被覆して圧延加工して構成されている。また、カーカス6は、タイヤ周方向に対するカーカスコード6cの傾斜角であるカーカス角度が、85°以上95°以下となっている。
【0058】
また、カーカス6の内方側、或いは、当該カーカス6の、空気入りタイヤ1における内部側には、インナーライナ8がカーカス6に沿って形成されている。
【0059】
図2は、
図1のA部詳細図である。
図3は、
図2に示すビードコア21の詳細図である。ビードコア21は、タイヤ子午断面で見た場合における形状が、多角形断面で形成されており、本実施形態1では、ビードコア21は、八角形に近い断面形状で形成されている。具体的には、ビードコア21は、ビードコア21全体で見た場合におけるビードコア21の内周面であるビードコア底面23と、ビードコア21の外周面であるビードコア上面22とが略平行に形成されている。また、ビードコア21は、タイヤ子午断面での輪郭におけるタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが、それぞれタイヤ径方向に沿って延びる垂直線25で形成されている。
【0060】
また、ビードコア21は、タイヤ子午断面での輪郭では、タイヤ幅方向内側の垂直線25のタイヤ径方向内側部分とビードコア底面23のタイヤ幅方向における内側の端部とが辺状に結ばれ、タイヤ幅方向内側の垂直線25のタイヤ径方向外側部分とビードコア上面22のタイヤ幅方向における内側の端部とが辺状に結ばれている。また、ビードコア21は、タイヤ子午断面での輪郭では、タイヤ幅方向外側の垂直線25のタイヤ径方向内側部分とビードコア底面23のタイヤ幅方向における外側の端部とが辺状に結ばれ、タイヤ幅方向外側の垂直線25のタイヤ径方向外側部分とビードコア上面22のタイヤ幅方向における外側の端部とが辺状に結ばれている。これにより、ビードコア21は、タイヤ子午断面における形状が略八角形となる形状で形成されている。
【0061】
なお、この場合におけるビードコア21のビードコア底面23とは、タイヤ子午断面において、ビードコア21のタイヤ径方向内側の位置で一列に並んでビードコア21の表面を構成する複数のビードワイヤー30における、ビードコア21の表面側に露出する部分に接する仮想の直線によって示される面をいう。同様に、ビードコア21のビードコア上面22とは、空気入りタイヤ1をタイヤ子午断面で見た場合において、ビードコア21のタイヤ径方向外側の位置で一列に並んでビードコア21の表面を構成する複数のビードワイヤー30における、ビードコア21の表面側に露出する部分に接する仮想の直線によって示される面をいう。
【0062】
また、ビードコア21の垂直線25は、タイヤ子午断面において、タイヤ幅方向をビードコア21の幅方向とする場合における、ビードコア21の幅方向の最も外側に位置する複数のビードワイヤー30における、ビードコア21の幅方向の外側に露出する部分に接する仮想の直線をいう。詳しくは、垂直線25は、タイヤ赤道面CLに対してタイヤ幅方向両側に位置する一対のビード部20のタイヤ幅方向における間隔を、空気入りタイヤ1を規定リムR(
図1参照)に装着した場合における間隔にした状態において、タイヤ径方向に沿って延びて形成されている。
【0063】
換言すると、ビードコア21は、タイヤ赤道面CLに対してタイヤ幅方向両側に位置する一対のビード部20のタイヤ幅方向における間隔を、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における間隔にした状態において、ビードコア21の幅方向の最も外側に位置する複数のビードワイヤー30に接する仮想の直線がタイヤ径方向に延びる形態で、ビードワイヤー30が配置されている。
【0064】
本実施形態1では、タイヤ子午断面におけるビードコア21のタイヤ幅方向内側の垂直線25は、ビードワイヤー30における、最もタイヤ幅内側方向に位置して、離間してタイヤ径方向に並ぶ3か所のビードワイヤー30に接する接線になっている。また、タイヤ子午断面におけるビードコア21のタイヤ幅方向外側の垂直線25は、ビードワイヤー30における、最もタイヤ幅外側方向に位置して、離間してタイヤ径方向に並ぶ4か所のビードワイヤー30に接する接線になっている。
【0065】
なお、以下の説明において、ビード部20周りの形状に関する説明は、垂直線25と同様に、タイヤ赤道面CLに対してタイヤ幅方向両側に位置する一対のビード部20のタイヤ幅方向における間隔を、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における間隔にした状態におけるものになっている。また、ビードコア21の垂直線25は、厳密にタイヤ径方向に延びていなくてもよい。垂直線25は、タイヤ径方向に対して0°以上15°以下の範囲内で形成されていればよい。
【0066】
これらのように、ビードコア21の幅方向における両側に位置する垂直線25は、いずれの垂直線25も垂直線25の長さCVが、ビードコア21のタイヤ径方向における高さであるコア高さCHに対して、20%以上30%以下の範囲内になっている。即ち、垂直線25は、コア高さCHに対する垂直線25の長さCVの比率CV/CHが、20%以上30%以下の範囲内になっている。この場合における垂直線25の長さCVは、垂直線25を構成する複数のビードワイヤー30のうち、最もタイヤ径方向外側に位置するビードワイヤー30のタイヤ径方向外側の端部と、最もタイヤ径方向内側に位置するビードワイヤー30のタイヤ径方向内側の端部との距離になっている。また、この場合におけるコア高さCHは、ビードコア上面22とビードコア底面23との距離になっている。
【0067】
また、垂直線25は、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内になっている。この場合における垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aは、垂直線25を構成する複数のビードワイヤー30のうち、最もタイヤ径方向内側に位置するビードワイヤー30のタイヤ径方向内側の端部になっている。
【0068】
詳しくは、ビードコア21は、ビードコア21の幅方向における両側に垂直線25を有しているが、ビードコア21の幅方向における両側に位置する垂直線25のいずれも、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内になっている。即ち、ビードコア21の幅方向における両側に垂直線25は、いずれもコア高さCHに対する、ビードコア底面23から垂直線25の内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaの比率Va/CHが、30%以上40%以下の範囲内になっている。
【0069】
また、ビードコア21は、タイヤ子午断面において、ビードコア上面22におけるタイヤ幅方向内側の端部22inと、ビードコア21のタイヤ幅方向両側の垂直線25のうちタイヤ幅方向内側の垂直線25とのタイヤ幅方向における距離Vbが、ビードコア21の最大幅CWに対して、25%以上40%以下の範囲内になっている。即ち、ビードコア21は、ビードコア21の最大幅CWに対する、ビードコア上面22のタイヤ幅方向内側の端部22inとタイヤ幅方向内側の垂直線25とのタイヤ幅方向における距離Vbの比率Vb/CWが、25%以上40%以下の範囲内になっている。この場合におけるビードコア21の最大幅CWは、ビードコア21の幅方向における両側に位置する垂直線25同士の距離になっている。また、この場合におけるビードコア上面22のタイヤ幅方向内側の端部22inは、ビードコア上面22を構成する複数のビードワイヤー30のうち、最もタイヤ幅方向内側に位置するビードワイヤー30のタイヤ幅方向内側の端部になっている。
【0070】
同様に、ビードコア21は、ビードコア底面23におけるタイヤ幅方向内側の端部23inと、タイヤ幅方向内側の垂直線25とのタイヤ幅方向における距離Vcが、ビードコア21の最大幅CWに対して、25%以上40%以下の範囲内になっている。即ち、ビードコア21は、ビードコア21の最大幅CWに対する、ビードコア底面23のタイヤ幅方向内側の端部23inとタイヤ幅方向内側の垂直線25とのタイヤ幅方向における距離Vcの比率Vc/CWが、25%以上40%以下の範囲内になっている。この場合におけるビードコア底面23のタイヤ幅方向内側の端部23inは、ビードコア底面23を構成する複数のビードワイヤー30のうち、最もタイヤ幅方向内側に位置するビードワイヤー30のタイヤ幅方向内側の端部になっている。
【0071】
さらに、ビードコア21は、タイヤ子午断面において、ビードコア21の最大幅CWが、コア高さCHに対して、0.9倍以上1.3倍以下の範囲内になっている。また、ビードコア21は、タイヤ子午断面におけるビードコア底面23の幅CBWが、ビードコア21の最大幅CWに対して、35%以上45%以下の範囲内になっている。つまり、ビードコア21は、コア高さCHに対するビードコア21の最大幅CWの比率CW/CHが、0.9倍以上1.3倍以下の範囲内になっており、ビードコア21の最大幅CWに対するビードコア底面23の幅CBWの比率CBW/CWが、35%以上45%以下の範囲内になっている。
【0072】
図4は、
図3のB部詳細図である。ビードコア21は、ビードワイヤー30がリング状に巻かれることにより形成されており、詳しくは、リング状に巻いて形成されるビードワイヤー30の複数の周回部分が、タイヤ幅方向に並ぶことにより1つの層31を形成すると共に、複数の層31がタイヤ径方向に積層されている。その際に、タイヤ径方向に隣り合う層31同士では、それぞれの層31を形成するビードワイヤー30が、タイヤ幅方向にビードワイヤー30の太さの0.5本分、ずれて配置されている。
【0073】
ビードコア21が有する複数の層31のうち、タイヤ径方向内側から数えて、1層目31aと、2層目31bと、3層目31cとは、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31同士では、相対的にタイヤ径方向外側に位置する層31のビードワイヤー30の数が、タイヤ径方向内側に位置する層31のビードワイヤー30の数よりも2本以上多くなっている。この場合における1層目31aは、ビードコア21が有する複数の層31のうち、タイヤ径方向における最内周に位置する層31である。また、2層目31bは、1層目31aのタイヤ径方向外側に隣り合って積層される層31であり、3層目31cは、2層目31bのタイヤ径方向外側に隣り合って積層される層31である。本実施形態1では、2層目31bは、1層目31aよりもビードワイヤー30の数が2本多くなっており、3層目31cは、2層目31bよりもビードワイヤー30の数が2本多くなっている。
【0074】
また、ビードコア21の1層目31aと、2層目31bと、3層目31cとは、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31同士では、タイヤ幅方向における片側の端部に位置するビードワイヤー30同士のタイヤ幅方向におけるずれ量が、ビードワイヤー30の太さの0.5本分になっている。さらに、1層目31aと2層目31bと3層目31cとは、1層目31aと2層目31bとのタイヤ幅方向の端部の位置におけるビードワイヤー30同士のずれ量がビードワイヤー30の0.5本分になる側と、2層目31bと3層目31cとのタイヤ幅方向の端部の位置におけるビードワイヤー30同士のずれ量がビードワイヤー30の0.5本分になる側とは、タイヤ幅方向において互いに反対側になっている。
【0075】
具体的には、1層目31aと2層目31bとは、タイヤ幅方向における内側の端部に位置するビードワイヤー30同士のタイヤ幅方向におけるずれ量が、ビードワイヤー30の太さの0.5本分になっている。これに対し、2層目31bと3層目31cとは、タイヤ幅方向における外側の端部に位置するビードワイヤー30同士のタイヤ幅方向におけるずれ量が、ビードワイヤー30の太さの0.5本分になっている。
【0076】
図5は、ビードコア21の中間頂点28についての説明図である。ビードコア21は、さらに、タイヤ幅方向外側の垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aと、ビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outとの間に、ビードコア21周りに折り返されるカーカス6に近付く方向に突出した中間頂点28を有している。この場合における中間頂点28は、タイヤ子午断面において、ビードコア21のタイヤ幅方向外側の垂直線25の内側端部25aの位置に位置するビードワイヤー30と、ビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outの位置に位置するビードワイヤー30とに接する接線TLを引いた際において、当該接線TLから、ビードコア21の重心位置CCから離れる方向に最も突出する部分になっている。なお、この場合におけるビードコア21の重心位置CCは、タイヤ子午断面でのビードコア21の断面形状における、いわゆる幾何中心の位置になっている。
【0077】
ビードコア21は、このように中間頂点28を有することにより、タイヤ子午断面における、垂直線25の内側端部25aとビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outとの間の部分の形状が、ビードコア21周りに折り返されるカーカス6の形状に近い形状になっている。換言すると、カーカス6は、タイヤ子午断面における、垂直線25の内側端部25aとビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outとの間の範囲に配置される部分が、タイヤ子午断面においてビードコア21に近い形状で、ビードコア21周りに折り返されている。具体的には、カーカス6は、タイヤ子午断面において、垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aとビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outとの間の範囲におけるカーカスラインの円弧の曲率半径RC(
図2参照)が、ビードコア21の垂直線25の内側端部25aと、ビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outと、中間頂点28とを通る円弧RAの曲率半径RBに対して、1.0倍以上1.5倍以下の範囲内になっている。つまり、カーカス6とビードコア21とは、カーカスラインの円弧の曲率半径RCと、ビードコア21側の円弧RAの曲率半径RBとの比率RC/RBが、1.0倍以上1.5倍以下の範囲内となる関係になっている。
【0078】
図6は、ビード部20におけるビードコア21のタイヤ幅方向外側部分の寸法についての説明図である。ビード部20は、タイヤ子午断面におけるビードコア21の重心位置CCからタイヤ幅方向外側に引いた直線HL上でのビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbと、当該直線HL上でのターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面45との距離Dcとの比率Db/Dcが、10%以上15%以下の範囲内になっている。この場合におけるビード部外表面45は、ビード部20のタイヤ幅方向外側の表面になっている。
【0079】
さらに、ビード部20は、ビードコア21におけるタイヤ幅方向最外側に位置するビードワイヤー30とビード部外表面45との距離Ddと、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの比率Dd/BWが、20%以上25%以下の範囲内になっている。
【0080】
ここでいうビードベース部40は、ビード部20の内周面であり、ビード部20における、リムホイールに接触してリムホイールに嵌合する部分になっている。ビードベース部40は、タイヤ幅方向における内端にビードトウ41を有し、タイヤ幅方向における外端にビードヒール42を有しており、ビードトウ41側からビードヒール42側に向かうに従って径が大きくなる、テーパー状に形成されている。ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWは、換言すると、ビードトウ41とビードヒール42とを有するビードベース部40における、ビードトウ41とビードヒール42とのタイヤ幅方向における距離になっている。本実施形態1では、ビードヒール42は、円弧状の面取りが施されているが、ビードヒール42のタイヤ幅方向における位置は、タイヤ子午断面におけるビードベース部40の直線部分をタイヤ幅方向外側に延長した仮想線と、ビード部外表面45をタイヤ径方向内側に延長した仮想線との交点により特定される。
【0081】
また、ビードコア21におけるタイヤ幅方向最外側に位置するビードワイヤー30とビード部外表面45との距離Ddは、ビードワイヤー30とビード部外表面45との最小距離になっている。
【0082】
図7は、ビードフィラー50についての説明図である。ビードコア21のタイヤ径方向外側には、ロアフィラー51とアッパーフィラー52とを有するビードフィラー50が配置されているが、このうち、ロアフィラー51は、カーカス6が有するカーカス本体部6aとターンナップ部6bとの間に配置されている。また、ロアフィラー51は、ビードコア21の近傍では、タイヤ子午断面でのタイヤ幅方向における幅がビードコア21と同程度になっており、タイヤ径方向外側に向かうに従って幅が狭くなっている。
【0083】
カーカス本体部6aとターンナップ部6bとの間に配置されるロアフィラー51は、ビードコア底面23からロアフィラー51のタイヤ径方向外側の端部であるロアフィラー外端51aまでのタイヤ径方向における高さFHが、ビードコア底面23からターンナップ部6bのタイヤ径方向外側の端部であるターンナップエッジ6baまでのタイヤ径方向における高さTHに対して、50%以上70%以下の範囲内になっている。即ち、ロアフィラー51は、ビードコア底面23からロアフィラー外端51aまでの高さFHと、ビードコア底面23からターンナップエッジ6baまでの高さTHとの比率FH/THが、50%以上70%以下の範囲内になっている。
【0084】
一方、アッパーフィラー52は、タイヤ径方向においてロアフィラー51が配置されている位置から、ロアフィラー51のタイヤ径方向外側の位置に亘って配置されており、アッパーフィラー52のタイヤ径方向における内側端部はビードコア21の近傍に位置している。詳しくは、アッパーフィラー52は、タイヤ径方向においてロアフィラー51が配置される範囲では、ロアフィラー51のタイヤ幅方向外側に位置してカーカス6のターンナップ部6bとロアフィラー51との間に配置されており、ロアフィラー51のタイヤ径方向外側では、カーカス6のカーカス本体部6aとターンナップ部6bとの間に配置されている。
【0085】
これらのように配置されるロアフィラー51とアッパーフィラー52とを有するビードフィラー50は、ターンナップエッジ6baよりもタイヤ径方向内側の範囲における、タイヤ子午断面におけるビードフィラー50全体の面積に対するロアフィラー51の面積比が、45%以上55%以下の範囲内になっている。
【0086】
また、ビードフィラー50が有するロアフィラー51とアッパーフィラー52とは、互いに物性が異なるゴム組成物になっている。例えば、本実施形態1では、アッパーフィラー52は、100%伸長時のモジュラスが2.0MPa以上3.0MPa以下の範囲内になっているのに対し、ロアフィラー51は、100%伸長時のモジュラスが7.5MPa以上10.5MPa以下の範囲内になっている。この場合における100%伸長時のモジュラスは、JIS K6251(3号ダンベル使用)に準拠した23℃での引張り試験により測定され、100%伸長時の引張り応力を示す(以下同様)。
【0087】
また、ビード部20は、ビードコア21のタイヤ径方向内側にリムクッションゴム46を有している。リムクッションゴム46は、ビード部20の内周面であるビードベース部40も形成しており、リムホイールへの嵌合時に、弾性変形しながらリムホールに接触するゴム組成物になっている。このように、ビードベース部40を形成するリムクッションゴム46は、100%伸長時のモジュラスが、3.5MPa以上5.5MPa以下の範囲内になっている。
【0088】
図8は、ビード部20におけるカーカス6の配置形態についての説明図である。カーカス6が配置されるビード部20は、タイヤ子午断面において、フランジ高さRhでタイヤ幅方向に引いた直線L2とカーカス本体部6aとの交点P2と、ビードコア21のタイヤ径方向における最外部の位置でタイヤ幅方向に引いた直線L1とカーカス本体部6aとの交点P1と、を結ぶ直線Lpの、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内になっている。
【0089】
この場合におけるフランジ高さRhは、規定リムRが有するリムフランジにおける、最もタイヤ径方向外側に位置する部分のタイヤ径方向における高さになっており、即ち、JATMA、またはTRA、或いはETRTOの規格に準拠した規定リムRのリムフランジ高さになっている。また、ビードコア21のタイヤ径方向における最外部は、ビードコア21の外周面であるビードコア上面22になっている。
【0090】
さらに、ビード部20は、タイヤ子午断面において、タイヤ径方向においてフランジ高さRhの2倍の位置でタイヤ幅方向に引いた直線L3とカーカス本体部6aとの交点P3と、交点P2とを結ぶ直線Luの、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpuが、50°≦θpu≦70°の範囲内になっている。
【0091】
この場合におけるフランジ高さRhの2倍の位置は、リム径基準位置BLからフランジ高さRhの測定点までのタイヤ径方向における高さに対して、リム径基準位置BLからタイヤ径方向外側に2倍となるタイヤ径方向における位置になっている。また、リム径基準位置BLとは、規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線であり、即ち、JATMA、またはTRA、或いはETRTOの規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線になっている。
【0092】
図9は、
図8をC-C矢視方向に見た場合におけるカーカスコード6cの模式図である。カーカス6が複数有するカーカスコード6cは、タイヤ子午断面においてカーカス6が延在する方向に、概ね沿って配置されているが、厳密には、カーカス6が延在する方向に対して、タイヤ周方向に僅かに傾斜して配置されている。
【0093】
例えば、カーカス6は、タイヤ径方向における位置がビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置での、カーカスコード6cのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1pが、80°≦θ1p≦89°の範囲内になっている。このため、カーカス6は、ターンナップ部6bに配置されるカーカスコード6cの角度も、タイヤ径方向における位置がビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1pが、80°≦θ1p≦89°の範囲内になっている。
【0094】
なお、ターンナップ部6bに配置されるカーカスコード6cは、
図9に示すように、直線状に配置されずに湾曲しながら配置されることもある。この場合、カーカスコード6cの傾斜角度θ1pは、ターンナップ部6bのカーカスコード6cにおける、ビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置と、同じカーカスコード6cにおけるターンナップエッジ6baの位置とを通る直線LCの角度を用いるのが好ましい。即ち、ターンナップ部6bに配置されるカーカスコード6cは、カーカスコード6cにおけるビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置と、当該カーカスコード6cにおけるターンナップエッジ6baの位置とを通る直線LCの傾斜角度θ1pが、80°≦θ1p≦89°の範囲内であるのが好ましい。
【0095】
図10は、ビード部20に配置される補強層60についての説明図である。ビード部20には、カーカス6におけるビードコア21周りに折り返されている部分には、カーカス6を補強する補強層60が配置されている。補強層60は、少なくともカーカス本体部6aのタイヤ幅方向内側に、カーカス6に沿って配置されている。補強層60は、3層が配置されており、これらの3層の補強層60は、内側エッジ60aのリム径基準位置BLからのタイヤ径方向における高さである内側エッジ高さが、互いに異なって配置されている。この場合における内側エッジ60aは、各補強層60における、タイヤ子午断面においてビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する部分のタイヤ径方向外側の端部になっている。
【0096】
詳しくは、3層の補強層60のうち、カーカス6に隣接する補強層60を第1補強層61とする場合に、第1補強層61は、第1補強層61の内側エッジ高さHrf11とフランジ高さRhとの関係が、0.55≦Hrf11/Rh≦1.10を満たしている。この場合における第1補強層61の内側エッジ高さHrf11は、第1補強層61における内側エッジ61aの、リム径基準位置BLからのタイヤ径方向における高さになっている。
【0097】
また、3層の補強層60のうち、第1補強層61におけるカーカス6が位置する側の反対の面側で第1補強層61に隣接する補強層60を第2補強層62とする場合に、第2補強層62は、第2補強層62の内側エッジ高さHrf21とフランジ高さRhとの関係が、1.05≦Hrf21/Rh≦1.40を満たしている。この場合における第2補強層62の内側エッジ高さHrf21は、第2補強層62における内側エッジ62aの、リム径基準位置BLからのタイヤ径方向における高さになっている。
【0098】
また、3層の補強層60のうち、第2補強層62における第1補強層61が位置する側の反対の面側で第2補強層62に隣接する補強層60を第3補強層63とする場合に、第3補強層63は、第3補強層63の内側エッジ高さHrf31とフランジ高さRhとの関係が、1.25≦Hrf31/Rh≦1.60を満たしている。この場合における第3補強層63の内側エッジ高さHrf31は、第3補強層63における内側エッジ63aの、リム径基準位置BLからのタイヤ径方向における高さになっている。
【0099】
つまり、第1補強層61と第2補強層62と第3補強層63とは、第1補強層61の内側エッジ高さHrf11と、第2補強層62の内側エッジ高さHrf21と、第3補強層63の内側エッジ高さHrf31との関係が、Hrf11<Hrf21<Hrf31の関係を満たしている。
【0100】
また、3層の補強層60のうち、第1補強層61は、カーカス6に沿ってビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置されている。即ち、第1補強層61は、カーカス本体部6aの位置からターンナップ部6bの位置にかけて、カーカス6に沿って配置されている。このようにカーカス6に沿って折り返して配置される第1補強層61は、第1補強層61の外側エッジ高さHrf12とフランジ高さRhとの関係が、0.40≦Hrf12/Rh≦0.95を満たしている。この場合における第1補強層61の外側エッジ高さHrf12は、第1補強層61におけるビードコア21のタイヤ幅方向外側に位置する側の端部である外側エッジ61bの、リム径基準位置BLからのタイヤ径方向における高さになっている。
【0101】
第1補強層61が、カーカス6に沿ってビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置されるのに対し、第2補強層62と第3補強層63とは、ビードコア21のタイヤ幅方向外側には配置されていない。即ち、第2補強層62と第3補強層63とは、ターンナップ部6b側には配置されておらず、カーカス6に沿って、カーカス本体部6aが位置する範囲にのみ配置されている。
【0102】
このように配置される第2補強層62と第3補強層63とは、タイヤ子午断面において、第2補強層62における内側エッジ62aの反対側の端部である径方向内側エッジ62bが、第3補強層63における内側エッジ63aの反対側の端部である径方向内側エッジ63bよりも、タイヤ径方向内側に位置している。
【0103】
詳しくは、第2補強層62は、第2補強層62におけるタイヤ径方向内側の端部である径方向内側エッジ62bの、リム径基準位置BLからのタイヤ径方向における高さHrf22と、フランジ高さRhとの関係が、0.05≦Hrf22/Rh≦0.35を満たしている。また、第3補強層63は、第3補強層63におけるタイヤ径方向内側の端部である径方向内側エッジ63bの、リム径基準位置BLからのタイヤ径方向における高さHrf32と、フランジ高さRhとの関係が、0.20≦Hrf32/Rh≦0.50を満たしている。
【0104】
これらのように配置される複数の補強層60は、それぞれ複数のコード65(
図11参照)をコートゴムで被覆して圧延加工して構成される。このうち、第1補強層61は、コード65がスチールコード66(
図11参照)からなる、スチール補強層61になっている。一方、第2補強層62は、コード65が有機繊維コード67(
図11参照)からなる、有機繊維補強層62になっている。第3補強層63も同様に、コード65が有機繊維コード68(
図11参照)からなる、有機繊維補強層63になっている。以下の説明では、第1補強層61はスチール補強層61とも呼び、第2補強層62は有機繊維補強層62とも呼び、第3補強層63も有機繊維補強層63とも呼ぶ。
【0105】
これらのため、第1補強層61として配置されるスチール補強層61は、カーカス6に沿ってビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返して配置されている。また、スチール補強層61は、ビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する端部である内側エッジ61aと、ビードコア21のタイヤ幅方向外側に位置する端部である外側エッジ61bとのいずれもがビードコア21のビードコア上面22よりもタイヤ径方向外側に位置している。
【0106】
図11は、
図10をD-D矢視方向に見た場合における補強層60のコード65の模式図であり、コード65の傾斜方向についての説明図である。ビード部20でカーカス6に沿って配置される補強層60は、複数のコード65を有する複数の補強層60が重ねて配置されているが、複数の補強層60は、隣接する補強層60同士で、コード65のタイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が互いに反対方向になっている。
【0107】
例えば、第1補強層61が有するコード66であるスチールコード66と、第1補強層61に対して隣接して重ねられる第2補強層62が有するコード67である有機繊維コード67とは、タイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、互いに反対方向になっている。同様に、第2補強層62が有するコード67である有機繊維コード67と、第2補強層62に対して隣接して重ねられる第3補強層63が有するコード68である有機繊維コード68とは、タイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が、互いに反対方向になっている。
【0108】
図12は、
図10をD-D矢視方向に見た場合における補強層60のコード65の模式図である。なお、
図12は、補強層60が有するコード65の角度を測定する位置についての説明図になっており便宜上、コード65の傾斜方向は1つの方向になっているが、実際にはコード65の傾斜方向は、第1補強層61と第2補強層62とで互いに反対方向になっており、第2補強層62と第3補強層63とで互いに反対方向になっている。
【0109】
第1補強層61が有するスチールコード66は、タイヤ径方向における位置がビードコア21のタイヤ径方向における最外部であるビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置での、タイヤ周方向に対する傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内になっている。
【0110】
これに対し、第1補強層61とはコード65の傾斜方向が反対方向となる第2補強層62が有する有機繊維コード67は、タイヤ径方向における位置がビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf2が、-65°≦θrf2≦-20°の範囲内になっている。なお、この場合における符号は、タイヤ周方向を0°とする場合において、タイヤ径方向における任意の一方向に傾斜する際の傾斜角度を+とし、タイヤ径方向における他方向に傾斜する際の傾斜角度を-として示している。
【0111】
また、第2補強層62とはコード65の傾斜方向が反対方向となる第3補強層63が有する有機繊維コード68は、タイヤ径方向における位置がビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのタイヤ周方向に対する傾斜角度θrf3が、20°≦θrf3≦65°の範囲内になっている。
【0112】
[空気入りタイヤの製造方法]
次に、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。空気入りタイヤ1の製造時には、まず、空気入りタイヤ1を構成する部材ごとに加工を行い、加工した部材を組み立てる。即ち、トレッドゴム2a等のゴム部材や、カーカス6、ベルト層7、ビードコア21等の各部材をそれぞれ加工し、加工した部材を組み立てる。
【0113】
例えば、ビードコア21は、ビードワイヤー30をリング状に巻いて形成する。その際に、ビードコア21は、タイヤ子午断面での輪郭におけるタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが、それぞれタイヤ径方向に沿って延びる垂直線25になるように形成する。さらに、ビードコア21は、垂直線25の長さCVが、ビードコア21のコア高さCHに対して20%以上30%以下の範囲内になるようにし、垂直線25は、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内になるようにする。
【0114】
また、ビードコア21は、ビードワイヤー30の複数の周回部分をタイヤ幅方向に並ばせることにより1つの層31を形成すると共に、複数の層31をタイヤ径方向に積層する。その際に、ビードコア21のタイヤ径方向における最内周から数えて1層目31a、2層目31b、3層目31cの3つの層31は、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31同士では、相対的にタイヤ径方向外側に位置する層31のビードワイヤー30の数を、タイヤ径方向内側に位置する層31のビードワイヤー30の数よりも2本以上多くし、タイヤ幅方向における片側の端部に位置するビードワイヤー30同士のタイヤ幅方向におけるずれ量を、ビードワイヤー30の太さの0.5本分にする。さらに、この3つの層31は、1層目31aと2層目31bとにおけるビードワイヤー30同士のずれ量をビードワイヤー30の太さの0.5本分にする側と、2層目31bと3層目31cとにおけるビードワイヤー30同士のずれ量をビードワイヤー30の太さの0.5本分にする側とを、タイヤ幅方向において互いに反対側にする。
【0115】
このように、空気入りタイヤ1の製造時に、ビードコア21を形成する際にリング状に巻くビードワイヤー30は、1層目31aにおけるタイヤ幅方向外側の端部から巻き始める。即ち、ビードワイヤー30をリング状に巻いてビードコア21を形成する際には、ビードコア底面23に位置するビードワイヤー30の端部が、ビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部に位置するように巻く。
【0116】
ビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部から巻き始めたビードワイヤー30は、層31ごとに定められた所定の周回数で螺旋状に巻くことによりタイヤ幅方向に配列し、層31を形成する。ビードワイヤー30を巻く回数が層31ごとに定められた所定の周回数になったら、ビードワイヤー30はタイヤ径方向上側に折り返し、タイヤ径方向外側に隣り合う層31の周回数として定められた周回数で螺旋状に巻くことにより、層31を形成する。
【0117】
つまり、ビードワイヤー30は、1層目31aにおけるタイヤ幅方向外側の端部から巻き始め、1層目31aを巻き終えたら、1層目31aに対してタイヤ径方向外側に隣り合う2層目31bを巻き始める。このため、1層目31aと2層目31bとにおけるビードワイヤー30同士のずれ量をビードワイヤー30の太さの0.5本分にする側は、必然的に、1層目31aと2層目31bにおける、タイヤ幅方向内側の端部側に位置することになる。ビードコア21は、これらを繰り返すことにより、ビードワイヤー30の複数の周回部分がタイヤ幅方向に並んで形成される層31をタイヤ径方向に積層し、タイヤ子午断面における形状が多角形断面になるように形成する。
【0118】
このように形成するビードコア21を配置するビード部20では、カーカス6をビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置する。また、ビード部20は、タイヤ子午断面におけるビードコア21の重心位置CCからタイヤ幅方向外側に引いた直線HL上でのビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbと、当該直線HL上でのターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面との距離Dcとの比率Db/Dcを、10%以上15%以下の範囲内に形成する。
【0119】
また、ビード部20は、タイヤ子午断面において、規定リムRにおけるフランジ高さRhでタイヤ幅方向に引いた直線L2とカーカス本体部6aとの交点P2と、ビードコア21のタイヤ径方向における最外部の位置でタイヤ幅方向に引いた直線L1とカーカス本体部6aとの交点P1と、を結ぶ直線Lpの、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内になるように形成する。空気入りタイヤ1の製造は、これらのように行うことにより、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1を製造する。
【0120】
[作用・効果]
本実施形態1に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、まず、リムホイールが有する規定リムRに対して、ビードベース部40を嵌合させることにより、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着し、空気入りタイヤ1をリムホイールに対してリム組みをする。空気入りタイヤ1をリム組みしたらインフレートし、車両には、リム組みしてインフレートした状態の空気入りタイヤ1を装着する。本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、例えば、鉱山で使用される車両等の大型の車両に装着され、負荷が大きい条件下で使用される。
【0121】
空気入りタイヤ1を装着した車両が走行すると、トレッド踏面3のうち下方に位置するトレッド踏面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。車両は、トレッド踏面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。
【0122】
空気入りタイヤ1を装着した車両の走行時は、このように空気入りタイヤ1のトレッド踏面3と路面との間に発生する摩擦力により、車両は走行することが可能となるが、車両の走行時は、空気入りタイヤ1の各部には、様々な方向の荷重が作用する。空気入りタイヤ1に作用する荷重は、内部に充填された空気の圧力や、空気入りタイヤ1の骨格として設けられるカーカス6等によって受ける。
【0123】
例えば、車両の重量や路面の凹凸によって、トレッド部2とビード部20との間でタイヤ径方向に作用する荷重は、主に、空気入りタイヤ1の内部に充填された空気の圧力で受けたり、サイドウォール部5等が撓んだりしながら受ける。特に、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1は、大型の車両に装着され、負荷が大きい条件下で使用されるため、サイドウォール部5やカーカス6では、非常に大きな荷重を受ける。このため、カーカス6には、大きな張力が作用する。
【0124】
カーカス6は、ビード部20でビードコア21周りに折り返されることにより、ビード部20で保持されているため、カーカス6に大きな張力が作用した場合、カーカス6の張力はビードコア21に伝達され、カーカス6とビードコア21との間で、大きな力が作用する。つまり、カーカス6は、ビードコア21周りに折り返されることによりビード部20で保持されているため、カーカス6に対して張力が作用する場合、カーカス本体部6aには、ビード部20側からタイヤ径方向外側に向かう方向の張力が作用する。このため、ビードコア21とカーカス6との間においても、大きな力が作用する。
【0125】
ここで、サイドウォール部5は、ビード部20の位置からタイヤ径方向外側に向かうに従ってタイヤ幅方向外側に向かう方向に、タイヤ径方向に対して傾斜している。このため、カーカス本体部6aに大きな張力が作用した場合、カーカス本体部6aは、タイヤ径方向に引っ張られながら、ビード部20付近ではタイヤ幅方向外側に向かう方向の力を発生する。
【0126】
一方で、車両等の大型の車両に装着されて負荷が大きい条件下で使用される空気入りタイヤでは、ビードコアは、タイヤ子午断面における断面形状が略六角形となって形成されるものが用いられることが多く、この場合、ビードコアは、タイヤ幅方向内側に凸となる角部を有することになる。このため、カーカスに大きな張力が作用し、カーカス本体部がビード部付近で、タイヤ幅方向外側方向への力を発生しながら張力によってタイヤ径方向に移動しようとする場合、カーカス本体部は、ビードコアにおけるタイヤ幅方向内側に凸となる角部に対して大きな荷重を付与しながら擦れることになる。これにより、カーカス本体部は、コートゴムが摩耗してカーカスコードが直接擦れ、カーカスコードが破断する等の故障が発生する虞がある。
【0127】
また、カーカスは、ビードコア周りに折り返されているため、カーカスに大きな張力が作用した場合、カーカスとビードコアとは、ビードコアにおけるタイヤ幅方向内側に凸となる角部以外の位置でも擦れが発生し、カーカスは、この擦れによってカーカスコードが破断する等の故障が発生する虞がある。
【0128】
これに対し、本実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、ビードコア21は、タイヤ子午断面での輪郭におけるタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが、それぞれタイヤ径方向に沿って延びる垂直線25で形成されている。つまり、ビードコア21は、ビードコア21におけるタイヤ幅方向の最大幅となる位置が、タイヤ径方向に沿って延びる垂直線25を形成する形状で形成されているため、タイヤ幅方向に対して凸となる角部を有することなく形成されている。これにより、カーカス6に大きな張力が作用することによって、カーカス6とビードコア21との間で大きな力が作用する場合でも、応力集中が発生することを抑制することができ、カーカス6とビードコア21との間で作用する応力を分散させることができる。従って、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中に起因して、カーカス本体部6aのコートゴム6dが摩耗することを抑制でき、コートゴム6dが摩耗することによってカーカスコード6cが直接擦れて、カーカスコード6cが破断する等の故障が発生することを抑制することができる。
【0129】
また、ビードコア21のタイヤ幅方向における両側に位置する垂直線25は、長さCVがコア高さCHに対して20%以上30%以下の範囲内になっているため、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力を、より確実に分散することができる。つまり、垂直線25の長さCVが、コア高さCHに対して20%未満である場合は、垂直線25の長さCVが短過ぎるため、ビードコア21のタイヤ幅方向両側に垂直線25を形成しても、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中を効果的に抑制し難くなる虞がある。また、垂直線25の長さCVが、コア高さCHに対して30%より大きい場合は、垂直線25の長さCVが長過ぎるため、ビードコア21のタイヤ幅方向両側に垂直線25を形成しても、垂直線25の長さ方向における両端の位置で、カーカス6とビードコア21との間での応力集中が発生してしまう虞がある。
【0130】
これに対し、垂直線25の長さCVが、コア高さCHに対して20%以上30%以下の範囲内である場合は、ビードコア21のタイヤ幅方向両側に形成する垂直線25によって、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力を、より確実に分散することができる。これにより、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中に起因する、カーカスコード6cの破断等の故障の発生を、より確実に抑制することができる。
【0131】
また、ビードコア21の垂直線25は、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内であるため、カーカス6とビードコア21との間での応力集中の発生を、より確実に抑制することができる。つまり、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaが、コア高さCHに対して30%未満である場合は、垂直線25の位置が、タイヤ径方向における内側に寄り過ぎる虞がある。
【0132】
また、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaが、コア高さCHに対して40%より大きい場合は、垂直線25の位置が、タイヤ径方向における外側に寄り過ぎる虞がある。これらの場合、タイヤ幅方向における両側に垂直線25が形成されるビードコア21の形状が、ビード部20で折り返されるカーカス6の形状に沿った形状になり難くなる虞があり、これに起因してカーカス6とビードコア21との間で応力集中が発生し、カーカスコード6cの破断等の故障の発生を招き易くなる虞がある。
【0133】
これ対し、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内である場合は、タイヤ幅方向における両側に垂直線25が形成されるビードコア21の形状を、ビード部20で折り返されるカーカス6の形状に沿った形状に近付けることができる。これにより、カーカス6とビードコア21との間での応力集中の発生を、より確実に抑制することができ、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中に起因する、カーカスコード6cの破断等の故障の発生を、より確実に抑制することができる。
【0134】
また、ビードコア21は、ビードワイヤー30により形成される複数の層31のうち、タイヤ径方向における最内周から数えた1層目31aと2層目31bと3層目31cとは、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31同士では、相対的にタイヤ径方向外側に位置する層31のビードワイヤー30の数が、タイヤ径方向内側に位置する層31のビードワイヤー30の数よりも2本以上多くなっている。これにより、タイヤ子午断面における、1層目31aから3層目31cまでのビードコア21の輪郭形状を、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が小さい形状にすることができる。従って、ビードコア21におけるビードコア底面23寄りの位置の断面形状を、ビード部20で折り返されるカーカス6の形状に沿った形状に、より近付けることができる。
【0135】
また、ビードワイヤー30により形成される複数の層31のうち、1層目31aと2層目31bと3層目31cとは、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31同士では、タイヤ幅方向における片側の端部に位置するビードワイヤー30同士のタイヤ幅方向におけるずれ量が、ビードワイヤー30の太さの0.5本分になっている。これにより、ビードワイヤー30が、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31に跨ぐ部分でのタイヤ幅方向におけるずれ量が大きくなり過ぎることを抑制でき、ビードワイヤー30が、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31に跨ぐ部分でのずれ量が大きくなり過ぎることに起因して、ビードコア21の形状が崩れることを抑制できる。
【0136】
さらに、1層目31aと2層目31bとにおけるビードワイヤー30同士のずれ量がビードワイヤー30の太さの0.5本分になる側と、2層目31bと3層目31cとにおけるビードワイヤー30同士のずれ量がビードワイヤー30の太さの0.5本分になる側とは、タイヤ幅方向において互いに反対側となっている。これにより、タイヤ子午断面における、ビードコア21の1層目31aから3層目31cまでのビードコア21の輪郭形状を、タイヤ幅方向における両側でバランス良く、ビード部20で折り返されるカーカス6の形状に沿った形状に近付けることができる。従って、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力を、より確実に分散することができ、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中に起因するカーカスコード6cの破断等の故障の発生を、より確実に抑制することができる。これらの結果、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0137】
また、ビードコア21は、タイヤ幅方向外側に垂直線25が形成される形状で形成されるため、ビードコアが、略六角形の断面形状である場合と比較して、リムホイールとビード部外表面45との接触圧を均一に近付けることができる。つまり、ビードコアが、略六角形の断面形状である場合は、ビードコアは、タイヤ幅方向外側の部分がタイヤ幅方向外側に凸となる角部を有して形成されるため、角部の部分では、リムホイールとビード部外表面との接触圧は高くなるが、角部以外の部分では、リムホイールとビード部外表面との接触圧は低くなり易くなる。この場合、空気入りタイヤをリムホイールにリム組みしてインフレートした際における、リムホイールとビード部外表面の部分でのエアシール性を確保し難くなる虞がある。
【0138】
これに対し、本実施形態1では、ビードコア21は、タイヤ幅方向外側に垂直線25が形成される形状で形成されるため、ビードコア21とビード部外表面45との距離の変化を小さくすることができる。換言すると、ビードコア21からリムホイールに対して、接触圧を高めることができる部分の面積を大きくすることができる。これにより、リムホイールとビード部外表面45との接触圧を均一に近付けることができる。この結果、ビード部20でのエアシール性を向上させることができる。
【0139】
また、タイヤ子午断面におけるビードコア底面23の幅CBWが、ビードコア21の最大幅CWに対して35%以上45%以下の範囲内であるため、ビードコア底面23とカーカス6との間で、応力集中が発生することを抑制することができる。つまり、ビードコア底面23の幅CBWが、ビードコア21の最大幅CWに対して35%未満である場合は、ビードコア底面23の幅CBWが狭過ぎるため、タイヤ子午断面におけるビードコア21の形状が、タイヤ径方向下側に向かって凸となり過ぎる虞がある。この場合、ビードコア21におけるビードコア底面23付近で、カーカス6とビードコア21との間で、応力集中が発生し易くなる虞がある。また、ビードコア底面23の幅CBWが、ビードコア21の最大幅CWに対して45%より大きい場合は、ビードコア底面23の幅CBWが広過ぎるため、ビードコア底面23の幅方向における両端の位置で、カーカス6とビードコア21との間で応力集中が発生し易くなる虞がある。
【0140】
これに対し、ビードコア底面23の幅CBWが、ビードコア21の最大幅CWに対して35%以上45%以下の範囲内である場合は、ビードコア底面23とカーカス6との間での応力集中の発生を、効果的に抑制することができる。これにより、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中に起因する、カーカスコード6cの破断等の故障の発生を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0141】
また、ビードコア21は、ビードコア上面22におけるタイヤ幅方向内側の端部22inと、タイヤ幅方向内側の垂直線25とのタイヤ幅方向における距離Vbが、ビードコア21の最大幅CWに対して25%以上40%以下の範囲内であり、ビードコア底面23におけるタイヤ幅方向内側の端部23inと、タイヤ幅方向内側の垂直線25とのタイヤ幅方向における距離Vcが、ビードコア21の最大幅CWに対して25%以上40%以下の範囲内であるため、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中を、より確実に抑制することができる。つまり、ビードコア上面22のタイヤ幅方向内側端部22inとタイヤ幅方向内側の垂直線25との距離Vbや、ビードコア底面23のタイヤ幅方向内側端部23inとタイヤ幅方向内側の垂直線25との距離Vcが、ビードコア21の最大幅CWに対して25%未満である場合は、ビードコア上面22やビードコア底面23の位置から、タイヤ幅方向内側へのビードコア21の突出量が小さくなり過ぎる虞がある。この場合、タイヤ子午断面におけるビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する面の形状が、カーカス6におけるビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する部分の湾曲形状に沿った形状になり難くなり、これに起因してカーカス6とビードコア21との間で応力集中が発生し易くなる虞がある。
【0142】
また、ビードコア上面22のタイヤ幅方向内側端部22inとタイヤ幅方向内側の垂直線25との距離Vbや、ビードコア底面23のタイヤ幅方向内側端部23inとタイヤ幅方向内側の垂直線25との距離Vcが、ビードコア21の最大幅CWに対して40%より大きい場合は、ビードコア上面22やビードコア底面23の位置から、タイヤ幅方向内側へのビードコア21の突出量が大きくなり過ぎる虞がある。この場合も、タイヤ子午断面におけるビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する面の形状が、カーカス6におけるビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する部分の湾曲形状に沿った形状になり難くなるため、カーカス6とビードコア21との間で応力集中が発生し易くなる虞がある。
【0143】
これに対し、ビードコア上面22のタイヤ幅方向内側端部22inとタイヤ幅方向内側の垂直線25との距離Vbや、ビードコア底面23のタイヤ幅方向内側端部23inとタイヤ幅方向内側の垂直線25との距離Vcが、ビードコア21の最大幅CWに対して25%以上40%以下の範囲内であるため、タイヤ子午断面におけるビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する面の形状を、カーカス6におけるビードコア21のタイヤ幅方向内側に位置する部分の湾曲形状に沿った形状にし易くすることができる。これにより、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0144】
また、ビードコア21は、ビードコア21の最大幅CWが、コア高さCHに対して0.9倍以上1.3倍以下の範囲内であるため、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中を、より確実に抑制することができる。つまり、ビードコア21の最大幅CWが、コア高さCHに対して0.9倍未満である場合は、ビードコア21の最大幅CWが狭過ぎるため、タイヤ子午断面におけるビードコア21の形状を、ビードコア21周りに折り返されるカーカス6の形状に沿った形状にし難くなり、カーカス6とビードコア21との間で応力集中が発生し易くなる虞がある。具体的には、ビードコア21の最大幅CWが狭過ぎることにより、ビードコア21周りに折り返されるカーカス6における、ビードコア底面23付近に位置する部分とビードコア21との間で、応力集中が発生し易くなる虞がある。
【0145】
また、ビードコア21の最大幅CWが、コア高さCHに対して1.3倍より大きい場合は、ビードコア21の最大幅CWが広過ぎるため、この場合も、タイヤ子午断面におけるビードコア21の形状をカーカス6の形状に沿った形状にし難くなり、カーカス6とビードコア21との間で応力集中が発生し易くなる虞がある。具体的には、ビードコア21の最大幅CWが広狭過ぎることにより、ビードコア21周りに折り返されるカーカス6における、ビードコア21のタイヤ幅方向両側付近に位置する部分とビードコア21との間で、応力集中が発生し易くなる虞がある。
【0146】
これに対し、ビードコア21の最大幅CWが、コア高さCHに対して0.9倍以上1.3倍以下の範囲内である場合は、タイヤ子午断面におけるビードコア21の形状を、ビードコア21周りに折り返されるカーカス6の形状に沿った形状に近付けることができる。これにより、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中を、より確実に抑制することができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0147】
また、カーカス6は、タイヤ径方向における位置がビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのカーカスコード6cのタイヤ周方向に対する傾斜角度θ1pが、80°≦θ1p≦89°の範囲内であるため、カーカス6の剛性を適度に確保することができる。つまり、タイヤ周方向に対するカーカスコード6cの傾斜角度θ1pが、θ1p<80°である場合は、タイヤ周方向に対するカーカスコード6cの傾斜角度θ1pが小さ過ぎるため、カーカス6のタイヤ径方向に対する剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、例えば、空気入りタイヤ1が大きな荷重を受けることにより、カーカス6のターンナップ部6bがリムフランジから大きな力を受けた際に、ターンナップ部6bは、この力を広い範囲で受け難くなるため、この力による圧縮応力が局部的に発生し易くなる虞がある。これにより、ターンナップ部6bのカーカスコード6cに、損傷が発生し易くなる虞がある。
【0148】
また、タイヤ周方向に対するカーカスコード6cの傾斜角度θ1pが、θ1p>89°である場合は、タイヤ周方向に対するカーカスコード6cの傾斜角度θ1pが大き過ぎるため、カーカス6のタイヤ径方向に対する剛性が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、ターンナップ部6bのターンナップエッジ6baと周辺の部材との間での剛性差が大きくなり過ぎ、ターンナップエッジ6ba付近で、セパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0149】
これに対し、タイヤ径方向における位置がビードコア上面22のタイヤ径方向における位置と同じ位置でのカーカスコード6cの傾斜角度θ1pが、80°≦θ1p≦89°の範囲内である場合は、カーカス6の剛性を適度に確保することができ、特に、ターンナップ部6bの剛性を適度に確保することができる。これにより、ターンナップ部6bで圧縮応力が局部的に発生し易くなることを抑制できるため、カーカスコード6cに損傷が発生し易くなることを抑制することができ、また、ターンナップエッジ6baと周辺の部材との間での剛性差に起因するターンナップエッジ6ba付近でのセパレーションの発生を抑制することができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0150】
また、ビードフィラー50が有するロアフィラー51は、100%伸長時のモジュラスが7.5MPa以上10.5MPa以下の範囲内であるため、ロアフィラー51と周囲の部材との間の剛性差が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、ビード部20の剛性を確保することができる。つまり、ビード部20には、カーカス6からの張力により、ビードベース部40のビードトウ41側がリムホイールから浮き上がる方向の力が作用し易くなっており、ビードトウ41側がリムホイールから浮き上がった場合、ビードベース部40には、ビードトウ41以外の部分に大きな力が作用する。特に、ロアフィラー51の100%伸長時のモジュラスが、7.5MPa未満である場合は、ロアフィラー51のモジュラスが低いことにより、カーカス6からの張力により、ビードベース部40は、ビードトウ41側がリムホイールから浮き上がり易くなる。この場合、ビードベース部40には、ビードトウ41以外の部分に大きな力が作用するため、ビードトウ41以外の部分に大きな負荷がかかり、この負荷により、ビードベース部40の耐久性が低下し易くなる虞がある。
【0151】
一方、ロアフィラー51の100%伸長時のモジュラスが、10.5MPaより大きい場合は、ロアフィラー51の剛性が高過ぎるため、ロアフィラー51と周囲の部材との間の剛性差が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、剛性差に起因して、ロアフィラー51と周囲の部材との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0152】
これに対し、ロアフィラー51の100%伸長時のモジュラスが、7.5MPa以上10.5MPa以下の範囲内である場合は、ビード部20の剛性をロアフィラー51により確保することができ、カーカス6からの張力による、ビードベース部40のビードトウ41側の浮き上がりを抑制できる。これにより、ビードベース部40におけるビードトウ41以外の部分に大きな負荷がかかることを抑制でき、ビードベース部40の耐久性が低下することを抑制することができる。また、ロアフィラー51の100%伸長時のモジュラスが、7.5MPa以上10.5MPa以下の範囲内である場合は、ロアフィラー51の剛性が高くなり過ぎることも抑制できるため、ロアフィラー51と周囲の部材との間でのセパレーションの発生を抑制することができる。これらの結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0153】
また、ロアフィラー51は、ビードコア底面23からロアフィラー外端51aまでのタイヤ径方向における高さFHが、ビードコア底面23からターンナップエッジ6baまでのタイヤ径方向における高さTHに対して、50%以上70%以下の範囲内であるため、ターンナップ部6bにおけるロアフィラー外端51a付近で発生する応力集中を抑制すると共に、ビードベース部40の耐久性を向上させることができる。つまり、ビードコア底面23からロアフィラー外端51aまでの高さFHが、ビードコア底面23からターンナップエッジ6baまでの高さTHに対して、50%未満である場合は、ロアフィラー51のタイヤ径方向における高さが低過ぎるため、ロアフィラー51を配置しても、ビード部20の剛性を効果的に向上させ難くなる虞がある。この場合、ロアフィラー51を配置しても、ビードベース部40の耐久性を効果的に向上させ難くなる虞がある。
【0154】
また、ビードコア底面23からロアフィラー外端51aまでの高さFHが、ビードコア底面23からターンナップエッジ6baまでの高さTHに対して、70%より大きい場合は、ロアフィラー51のタイヤ径方向における高さが高過ぎるため、カーカス6のターンナップ部6bに歪が発生し易くなる虞がある。詳しくは、ビードコア底面23からタイヤ径方向における外側に離れた位置は、サイドウォール部5に近くなるが、サイドウォール部5は、空気入りタイヤ1に作用する荷重に応じて、撓みが発生し易い部位になっている。このため、ロアフィラー51の高さが高い場合は、ロアフィラー51は、ロアフィラー外端51aがサイドウォール部5に近付くことになり、撓みが発生し易い部分にロアフィラー51が入り込むことになる。一方で、ロアフィラー51は、比較的剛性が高いゴム部材であるため、空気入りタイヤ1に大きな荷重が作用した場合、ロアフィラー51が配置される部分とロアフィラー51が配置されない部分とで、撓み方に大きな差が発生する虞がある。このような撓み方の差により、カーカス6におけるロアフィラー51のタイヤ幅方向外側に配置されるターンナップ部6bには、ロアフィラー外端51a付近に歪が発生し、応力集中が発生し易くなる虞がある。
【0155】
これに対し、ビードコア底面23からロアフィラー外端51aまでの高さFHが、ビードコア底面23からターンナップエッジ6baまでの高さTHに対して、50%以上70%以下の範囲内である場合は、ロアフィラー外端51a付近で撓み方に大きな差が発生することを抑制しつつ、ロアフィラー51によってビード部20の剛性を効果的に向上させることができる。これにより、ターンナップ部6bにおけるロアフィラー外端51a付近で発生する応力集中を抑制すると共に、ビードベース部40の耐久性を向上させることができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0156】
また、ビードフィラー50は、ターンナップエッジ6baよりもタイヤ径方向内側の範囲における、タイヤ子午断面におけるビードフィラー50の面積に対するロアフィラー51の面積比が、45%以上55%以下の範囲内であるため、ターンナップ部6bにおけるロアフィラー外端51a付近で発生する応力集中を抑制すると共に、ビードベース部40の耐久性を向上させることができる。つまり、ターンナップエッジ6baよりもタイヤ径方向内側の範囲における、ビードフィラー50の面積に対するロアフィラー51の面積比が、45%未満である場合は、ビードフィラー50におけるロアフィラー51の比率が小さ過ぎるため、ビード部20の剛性を効果的に確保し難くなる虞がある。この場合、ビードベース部40の耐久性を、ロアフィラー51によって効果的に向上させ難くなる虞がある。
【0157】
また、ターンナップエッジ6baよりもタイヤ径方向内側の範囲における、ビードフィラー50の面積に対するロアフィラー51の面積比が、55%より大きい場合は、ビードフィラー50におけるロアフィラー51の比率が大き過ぎるため、ロアフィラー51が配置されている部分の剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、ロアフィラー51が配置される部分とロアフィラー51が配置されない部分とで、撓み方に大きな差が発生し易くなるため、このような撓み方の差に起因して、ターンナップ部6bにおけるロアフィラー外端51aが位置する部分付近で、応力集中が発生し易くなる虞がある。
【0158】
これに対し、ターンナップエッジ6baよりもタイヤ径方向内側の範囲における、ビードフィラー50の面積に対するロアフィラー51の面積比が、45%以上55%以下の範囲内である場合は、ロアフィラー51が配置される部分とロアフィラー51が配置されない部分とで、撓み方に大きな差が発生することを抑制しつつ、ロアフィラー51によってビード部20の剛性を効果的に向上させることができる。これにより、ターンナップ部6bにおけるロアフィラー外端51a付近で発生する応力集中を抑制すると共に、ビードベース部40の耐久性を向上させることができる。この結果、より確実にビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0159】
また、ビード部20は、ビードコア21の重心位置CCからタイヤ幅方向外側に引いた直線HL上でのビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbと、当該直線HL上でのターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面45との距離Dcとの比率Db/Dcが、10%以上15%以下の範囲内であるため、カーカスコード6cへの負荷が大きくなり過ぎること抑制しつつ、リムホイールとビード部外表面45との接触圧を効果的に高めることができる。つまり、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbと、ターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面45との距離Dcとの比率Db/Dcが、10%未満である場合は、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbが小さ過ぎるため、カーカスコード6cへの負荷が大きくなり過ぎ、カーカスコード6cの破断等の故障が発生し易くなる虞がある。
【0160】
また、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbと、ターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面45との距離Dcとの比率Db/Dcが、15%より大きい場合は、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbが大き過ぎるため、リムホイールとビード部外表面45との接触圧を、効果的に高め難くなる虞がある。即ち、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbが大き過ぎる場合は、双方の間に位置するゴム部材が多く、緩衝材が多いことになる。この場合、リムホイールにおけるビード部外表面45に接触する部分に対して、ビードコア21から作用する押圧力は、緩衝材であるゴム部材により緩和されるため、リムホイールとビード部外表面45との接触圧が高くなり難くなる虞がある。
【0161】
これに対し、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbと、ターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面45との距離Dcとの比率Db/Dcが、10%以上15%以下の範囲内である場合は、カーカスコード6cへの負荷が大きくなり過ぎること抑制しつつ、リムホイールとビード部外表面45との接触圧を効果的に高めることができる。この結果、ビード部20の耐久性を向上させることができると共に、ビード部20でのエアシール性を向上させることができる。
【0162】
また、ビード部20は、ビードコア21におけるタイヤ幅方向最外側に位置するビードワイヤー30とビード部外表面45との距離Ddと、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの比率Dd/BWが、20%以上25%以下の範囲内であるため、ビードベース部40とビード部外表面45とのいずれの位置においても、リムホイールに対する接触圧を適切に高めることができる。つまり、ビードコア21のタイヤ幅方向最外側のビードワイヤー30とビード部外表面45との距離Ddと、ビードベース部40の幅BWとの比率Dd/BWが、20%未満である場合は、ビードコア21のタイヤ幅方向における位置が、タイヤ幅方向外側に寄り過ぎる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリムホイールにリム組みした際における、ビードベース部40のビードトウ41寄りの位置でのリムホイールに対する接触圧を確保し難くなる虞があり、エアシール性を確保し難くなる虞がある。
【0163】
また、ビードコア21のタイヤ幅方向最外側のビードワイヤー30とビード部外表面45との距離Ddと、ビードベース部40の幅BWとの比率Dd/BWが、25%より大きい場合は、ビードコア21のタイヤ幅方向における位置が、タイヤ幅方向内側に寄り過ぎる虞がある。この場合、空気入りタイヤ1をリムホイールにリム組みした際における、ビード部外表面45とリムホイールとの接触圧や、ビードベース部40のビードヒール42寄りの位置でのリムホイールに対する接触圧を確保し難くなる虞があり、エアシール性を確保し難くなる虞がある。
【0164】
これに対し、ビードコア21のタイヤ幅方向最外側のビードワイヤー30とビード部外表面45との距離Ddと、ビードベース部40の幅BWとの比率Dd/BWが、20%以上25%以下の範囲内である場合は、ビードコア21のタイヤ幅方向における位置を、より適切な位置に配置することができる。これにより、ビードベース部40とビード部外表面45とのいずれの位置においても、リムホイールに対する接触圧を適切に高めることができる。この結果、より確実にビード部20でのエアシール性を向上させることができる。
【0165】
また、カーカス6のカーカスラインの円弧の曲率半径RCが、ビードコア21の垂直線25の内側端部25aとビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outと中間頂点28とを通る円弧RAの曲率半径RBに対して、1.0倍以上1.5倍以下の範囲内であるため、ビード部20とリムホイールとの接触圧が不均一になることを抑制することができる。つまり、カーカス6のカーカスラインの円弧の曲率半径RCが、ビードコア21側の円弧RAの曲率半径RBに対して、1.0倍未満である場合や、1.5倍より大きい場合は、タイヤ子午断面におけるビードコア21の断面形状が、カーカスラインから大きく乖離し過ぎる虞がある。この場合、ビードコア21とカーカス6との間に介在するゴム部材が多くなるため、これに起因してビード部20とリムホイールとの接触圧が不均一になり、エアシール性が低下し易くなる虞がある。
【0166】
これに対し、カーカスラインの円弧の曲率半径RCと、ビードコア21側の円弧RAの曲率半径RBとの比率RC/RBが、1.0倍以上1.5倍以下の範囲内である場合は、タイヤ子午断面におけるビードコア21の断面形状を、カーカスラインに沿った形状にすることができる。これにより、ビードコア21とカーカス6との間に介在するゴム部材の量を少なくすることができ、ビード部20とリムホイールとの接触圧が不均一になることを抑制することができる。この結果、より確実にビード部20でのエアシール性を向上させることができる。
【0167】
また、リムクッションゴム46は、100%伸長時のモジュラスが、3.5MPa以上5.5MPa以下の範囲内であるため、リムクッションゴム46に欠けが発生することを抑制すると共に、リムクッションゴム46が変形し易くなることを抑制することができる。つまり、リムクッションゴム46のモジュラスが、3.5MPa未満である場合は、リムクッションゴム46が柔らか過ぎるため、空気入りタイヤ1をリムホイールにリム組みした後、走行を重ねた際に、リムクッションゴム46が変形し易くなる虞がある。この場合、リムホイールとの接触圧が小さくなる部分が発生する虞があり、接触圧が小さくなった部分から、エアが漏れ易くなる虞がある。また、リムクッションゴム46のモジュラスが、5.5MPaより大きい場合は、リムクッションゴム46が硬過ぎるため、空気入りタイヤ1のリム組み時等にリムクッションゴム46に大きな力が加えられた際に、リムクッションゴム46に欠けが発生し易くなる虞がある。
【0168】
これに対し、リムクッションゴム46は、100%伸長時のモジュラスが、3.5MPa以上5.5MPa以下の範囲内である場合は、リムホイールが嵌合するリムクッションゴム46の硬さを、適度な硬さにすることができる。これにより、リムクッションゴム46に欠けが発生することを抑制すると共に、リムクッションゴム46が変形し易くなることを抑制することができ、リムホイールとの接触圧が小さくなる部分が発生することを抑制することができる。この結果、より確実にビード部20でのエアシール性を向上させることができる。
【0169】
また、ビード部20は、タイヤ子午断面において、カーカス本体部6aにおけるフランジ高さRhに対応する交点P2とビードコア上面22に対応する交点P1とを結ぶ直線Lpの、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内であるため、カーカス本体部6aと周囲の部材との間のセパレーションの発生を抑制することができる。つまり、直線Lpの傾斜角度θpが、θp<60°である場合は、直線Lpの傾斜角度θpが小さ過ぎるため、カーカス本体部6aが、ビードコア21に近付く方向に倒れ過ぎる虞がある。この場合、カーカス本体部6aとビードフィラー50の間で作用する圧力が大きくなり過ぎる虞があり、カーカス本体部6aとビードフィラー50との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。また、直線Lpの傾斜角度θpが、θp>75°である場合は、直線Lpの傾斜角度θpが大き過ぎるため、空気入りタイヤ1にタイヤ径方向の荷重が作用した際に、カーカス本体部6aに対しては、タイヤ子午断面におけるカーカス本体部6aの延在方向に沿った方向の力が作用し易くなる虞がある。この場合、カーカス本体部6aは、座屈状の変形をし易くなり、これに起因して、カーカス本体部6aと、カーカス本体部6aのタイヤ幅方向内側に位置するゴム部材との間で、セパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0170】
これに対し、直線Lpの傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内である場合は、カーカス本体部6aが、ビードコア21に近付く方向に倒れ過ぎたり、座屈状に変形したりすることを抑制することができる。この結果、カーカス6が有するカーカス本体部6aと周囲の部材との間のセパレーションの発生を抑制することができ、カーカス6の耐セパレーション性能である耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0171】
また、ビード部20は、タイヤ子午断面において、カーカス本体部6aにおけるフランジ高さRhに対応する交点P2とフランジ高さRhの2倍の位置に対応する交点P3とを結ぶ直線Luの、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpuが、50°≦θpu≦70°の範囲内であるため、カーカス本体部6aと周囲の部材との間のセパレーションの発生を抑制することができる。つまり、直線Luの傾斜角度θpuが、θpu<50°である場合は、直線Luの傾斜角度θpuが小さ過ぎるため、カーカス本体部6aが、リムフランジに近付く方向に倒れ過ぎる虞がある。この場合、カーカス本体部6aとビードフィラー50の間で作用する圧力が大きくなり過ぎる虞があり、カーカス本体部6aとビードフィラー50との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。また、直線Luの傾斜角度θpuが、θpu>70°である場合は、直線Luの傾斜角度θpuが大き過ぎるため、空気入りタイヤ1にタイヤ径方向の荷重が作用した際に、カーカス本体部6aに対しては、タイヤ子午断面におけるカーカス本体部6aの延在方向に沿った方向の力が作用し易くなる虞がある。この場合、カーカス本体部6aは、座屈状の変形をし易くなり、これに起因して、カーカス本体部6aと、カーカス本体部6aのタイヤ幅方向内側に位置するゴム部材との間で、セパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0172】
これに対し、直線Luの傾斜角度θpuが、50°≦θpu≦70°の範囲内である場合は、カーカス本体部6aが、リムフランジに近付く方向に倒れ過ぎたり、座屈状に変形したりすることを抑制することができる。この結果、より確実に耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0173】
また、ビード部20には、少なくともカーカス本体部6aのタイヤ幅方向内側に、カーカス6に沿って補強層60が配置されるため、ビード部20の剛性を、補強層60によって高めることができる。これにより、空気入りタイヤ1に荷重が作用した際におけるビード部20の動きを、補強層60によって抑えることができ、カーカス6の動きを抑えることができる。従って、カーカス6と、カーカス6の周囲に位置するゴム部材との間でセパレーションが発生することを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0174】
また、補強層60は、複数のコード65を有する複数の補強層60が重ねて配置され、複数の補強層60は、隣接する補強層60同士で、コード65のタイヤ径方向に対するタイヤ周方向への傾斜方向が互いに反対方向になるため、補強層60全体の剛性を、より確実に高めることができる。これにより、ビード部20の剛性を、補強層60によってより確実に高めることができ、カーカス6の動きを含むビード部20の動きを、補強層60によってより確実に抑えることができる。従って、カーカス6と、カーカス6の周囲に位置するゴム部材との間でセパレーションが発生することを、より確実に抑制することができる。この結果、より確実に耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0175】
また、補強層60は、カーカス6側から数えて第1補強層61と、第2補強層62と、第3補強層63との3層が配置され、3層の補強層60は、リム径基準位置BLを基準とする第1補強層61の内側エッジ高さHrf11、第2補強層62の内側エッジ高さHrf21、第3補強層63の内側エッジ高さHrf31と、フランジ高さRhとの関係が、0.55≦Hrf11/Rh≦1.10、1.05≦Hrf21/Rh≦1.40、1.25≦Hrf31/Rh≦1.60をそれぞれ満たしているため、カーカス6と補強層60との間でのセパレーションの発生を抑制することができる。つまり、第1補強層61の内側エッジ高さHrf11がHrf11/Rh<0.55であったり、第2補強層62の内側エッジ高さHrf21がHrf21/Rh<1.05であったり、第3補強層63の内側エッジ高さHrf31がHrf31/Rh<1.25であったりする場合は、各補強層60の内側エッジ60aがタイヤ径方向内側に位置し過ぎる虞がある。この場合、ビードコア21周りに作用する大きな力により、内側エッジ60a付近に応力集中が発生し易くなり、これに起因して、カーカス6と補強層60との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0176】
また、第1補強層61の内側エッジ高さHrf11がHrf11/Rh>1.10であったり、第2補強層62の内側エッジ高さHrf21がHrf21/Rh>1.40であったり、第3補強層63の内側エッジ高さHrf31がHrf31/Rh>1.60であったりする場合は、各補強層60の内側エッジ60aがタイヤ径方向外側に位置し過ぎる虞がある。この場合、補強層60と周囲のゴム部材との間での剛性差が大きくなり易くなるため、剛性差によって内側エッジ60a付近に応力集中が発生し易くなり、これに起因して、カーカス6と補強層60との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0177】
これに対し、リム径基準位置BLを基準とする第1補強層61の内側エッジ高さHrf11、第2補強層62の内側エッジ高さHrf21、第3補強層63の内側エッジ高さHrf31と、フランジ高さRhとの関係が、0.55≦Hrf11/Rh≦1.10、1.05≦Hrf21/Rh≦1.40、1.25≦Hrf31/Rh≦1.60をそれぞれ満たす場合は、各補強層60の内側エッジ60aを、タイヤ径方向において適度な位置に配置することができる。これにより、各補強層60の内側エッジ60a付近で応力集中が発生することを抑制でき、カーカス6と補強層60との間でセパレーションが発生することを抑制することができる。この結果、より確実に耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0178】
また、第1補強層61は、カーカス6に沿ってビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置され、第1補強層61は、リム径基準位置BLを基準とする外側エッジ高さHrf12とフランジ高さRhとの関係が、0.40≦Hrf12/Rh≦0.95を満たすため、カーカス6と第1補強層61との間でのセパレーションの発生を抑制することができる。つまり、第1補強層61の外側エッジ高さHrf12が、Hrf12/Rh<0.40である場合は、第1補強層61の外側エッジ61bがタイヤ径方向内側に位置し過ぎる虞がある。この場合、リムフランジやビードコア21周りに作用する大きな力により、第1補強層61の外側エッジ61b付近に応力集中が発生し易くなり、これに起因して、カーカス6と第1補強層61との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。また、第1補強層61の外側エッジ高さHrf12が、Hrf12/Rh>0.95である場合は、第1補強層61の外側エッジ61bがタイヤ径方向外側に位置し過ぎる虞がある。この場合、第1補強層61と周囲のゴム部材との間での剛性差が大きくなり易くなるため、剛性差によって外側エッジ61b付近に応力集中が発生し易くなり、これに起因して、カーカス6と第1補強層61との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0179】
これに対し、リム径基準位置BLを基準とする第1補強層61の外側エッジ高さHrf12とフランジ高さRhとの関係が、0.40≦Hrf12/Rh≦0.95を満たす場合は、第1補強層61の外側エッジ61bを、タイヤ径方向において適度な位置に配置することができる。これにより、第1補強層61の外側エッジ61b付近で応力集中が発生することを抑制でき、カーカス6と第1補強層61との間でセパレーションが発生することを抑制することができる。この結果、より確実に耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0180】
また、リム径基準位置BLを基準とする第2補強層62の径方向内側エッジ62bの高さHrf22とフランジ高さRhとの関係が、0.05≦Hrf22/Rh≦0.35を満たし、リム径基準位置BLを基準とする第3補強層63の径方向内側エッジ63bの高さHrf32とフランジ高さRhとの関係が、0.20≦Hrf32/Rh≦0.50を満たすため、第2補強層62や第3補強層63と周囲の部材との間でセパレーションが発生することを抑制することができる。つまり、第2補強層62の径方向内側エッジ62bの高さHrf22がHrf22/Rh<0.05であったり、第3補強層63の径方向内側エッジ63bの高さHrf32がHrf32/Rh<0.20であったりする場合は、第2補強層62の径方向内側エッジ62bや第3補強層63の径方向内側エッジ63bが、タイヤ径方向内側に位置し過ぎる虞がある。この場合、ビードベース部40付近に作用する大きな力により、第2補強層62の径方向内側エッジ62bや第3補強層63の径方向内側エッジ63bで応力集中が発生し易くなり、これに起因して、第2補強層62や第3補強層63と周囲の部材との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0181】
また、第2補強層62の径方向内側エッジ62bの高さHrf22がHrf22/Rh>0.35であったり、第3補強層63の径方向内側エッジ63bの高さHrf32がHrf32/Rh>0.50であったりする場合は、第2補強層62の径方向内側エッジ62bや第3補強層63の径方向内側エッジ63bが、タイヤ径方向外側に位置し過ぎる虞がある。この場合、第2補強層62や第3補強層63と周囲のゴム部材との間での剛性差が大きくなり易くなるため、剛性差によって第2補強層62の径方向内側エッジ62bや第3補強層63の径方向内側エッジ63b付近に応力集中が発生し易くなり、これに起因して、第2補強層62や第3補強層63と周囲の部材との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0182】
これに対し、リム径基準位置BLを基準とする第2補強層62の径方向内側エッジ62bの高さHrf22や第3補強層63の径方向内側エッジ63bの高さHrf32と、フランジ高さRhとの関係が、0.05≦Hrf22/Rh≦0.35、0.20≦Hrf32/Rh≦0.50をそれぞれ満たす場合は、第2補強層62の径方向内側エッジ62bや第3補強層63の径方向内側エッジ63bを、タイヤ径方向において適度な位置に配置することができる。これにより、第2補強層62の径方向内側エッジ62bや第3補強層63の径方向内側エッジ63b付近で応力集中が発生することを抑制でき、第2補強層62や第3補強層63と周囲の部材との間でセパレーションが発生することを抑制することができる。この結果、補強層60周りのセパレーションの発生を抑制することができる。
【0183】
また、第1補強層61が有するコード66は、タイヤ周方向に対する傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内であり、第2補強層62が有するコード67は、タイヤ周方向に対する傾斜角度θrf2が、-65°≦θrf2≦-20°の範囲内であり、第3補強層63が有するコード68は、タイヤ周方向に対する傾斜角度θrf3が、20°≦θrf3≦65°の範囲内であるため、より確実にカーカス6や補強層60周りのセパレーションの発生を抑制することができる。つまり、第1補強層61が有するコード66の傾斜角度θrf1が、θrf1<20°であったり、第2補強層62が有するコード67の傾斜角度θrf2が、θrf2>-20°であったり、第3補強層63が有するコード68の傾斜角度θrf3が、θrf3<20°であったりする場合は、各補強層60のコード65の延在方向がタイヤ周方向に近付き過ぎるため、タイヤ径方向に対する補強層60の剛性を確保し難くなる虞がある。この場合、ビード部20に補強層60を配置しても、ビード部20の剛性を、補強層60によって効果的に高め難くなり、カーカス6と、カーカス6の周囲に位置するゴム部材との間でセパレーションが発生することを抑制し難くなる虞がある。
【0184】
また、第1補強層61が有するコード66の傾斜角度θrf1が、θrf1>65°であったり、第2補強層62が有するコード67の傾斜角度θrf2が、θrf2<-65°であったり、第3補強層63が有するコード68の傾斜角度θrf3が、θrf3>65°であったりする場合は、各補強層60のコード65の延在方向がタイヤ径方向に近付き過ぎるため、タイヤ径方向に対する補強層60の剛性が高くなり過ぎる虞がある。この場合、補強層60の内側エッジ60aや径方向内側エッジ62b、63bと、周辺の部材との間での剛性差が大きくなり過ぎ、補強層60のこれらのエッジ付近で、補強層60と周囲の部材との間でセパレーションが発生し易くなる虞がある。
【0185】
これに対し、第1補強層61が有するコード66の傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内であり、第2補強層62が有するコード67の傾斜角度θrf2が、-65°≦θrf2≦-20°の範囲内であり、第3補強層63が有するコード68の傾斜角度θrf3が、20°≦θrf3≦65°の範囲内である場合は、タイヤ径方向に対する補強層60の剛性を適度に確保することができる。これにより、補強層60の内側エッジ60aや径方向内側エッジ62b、63bと、周辺の部材との間での剛性差が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、ビード部20の剛性を、補強層60によって効果的に高めることができる。この結果、より確実にカーカス6や補強層60周りのセパレーションの発生を抑制することができる。
【0186】
また、第1補強層61は、スチールコード66を有するスチール補強層61であり、スチール補強層61が有するスチールコード66の傾斜角度θrf1が、20°≦θrf1≦65°の範囲内であるため、スチール補強層61の内側エッジ61aと周辺の部材との間で剛性差が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、ビード部20の剛性を、剛性が高いスチール補強層61によってより効果的に高めることができる。この結果、より確実にカーカス6や第1補強層61周りのセパレーションの発生を抑制することができる。
【0187】
また、スチール補強層61の、リム径基準位置BLからの内側エッジ61aのタイヤ径方向における高さHrf11が、フランジ高さRhに対して0.55≦Hrf11/Rh≦1.10の範囲内であるため、スチール補強層61の内側エッジ61aを、タイヤ径方向において適度な位置に配置することができる。これにより、剛性が高いスチール補強層61の内側エッジ61a付近で応力集中が発生することをより確実に抑制でき、カーカス6とスチール補強層61との間でセパレーションが発生することを抑制することができる。この結果、より確実に耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0188】
また、スチール補強層61の、リム径基準位置BLからの外側エッジ61bのタイヤ径方向における高さHrf12が、フランジ高さRhに対して0.40≦Hrf12/Rh≦0.95の範囲内であるため、スチール補強層61の外側エッジ61bを、タイヤ径方向において適度な位置に配置することができる。これにより、剛性が高いスチール補強層61の外側エッジ61b付近で応力集中が発生することを抑制でき、カーカス6とスチール補強層61との間でセパレーションが発生することを抑制することができる。この結果、より確実に耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0189】
また、第2補強層62は、有機繊維コード67を有する有機繊維補強層62であり、第3補強層63も、有機繊維コード68を有する有機繊維補強層63であるため、第2補強層62や第3補強層63と周囲の部材との間でのセパレーションの発生を抑えつつ、有機繊維補強層62、63である第2補強層62と第3補強層63とにより、ビード部20の剛性を適切に高めることができる。この結果、より確実にカーカス6や補強層60周りのセパレーションの発生を抑制することができる。
【0190】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードコア21のタイヤ幅方向最内側に位置する部分とタイヤ幅方向最外側に位置する部分とが垂直線25になるようにビードコア21を形成するため、カーカス6に大きな張力が作用することによって、カーカス6とビードコア21との間で大きな力が作用する場合でも、応力集中が発生することを抑制することができる。従って、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中に起因して、カーカスコード6cが破断する等の故障が発生することを抑制することができる。
【0191】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、垂直線25の長さCVを、コア高さCHに対して20%以上30%以下の範囲内にするため、ビードコア21のタイヤ幅方向両側に形成する垂直線25によって、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力を、より確実に分散することができる。これにより、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中に起因する、カーカスコード6cの破断等の故障の発生を、より確実に抑制することができる。
【0192】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードコア底面23から垂直線25のタイヤ径方向における内側端部25aまでのタイヤ径方向における距離Vaを、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内にするため、ビードコア21の形状を、ビード部20で折り返されるカーカス6の形状に沿った形状に近付けることができる。これにより、カーカス6とビードコア21との間での応力集中の発生を、より確実に抑制することができる。
【0193】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードワイヤー30により形成される複数の層31のうち、1層目31aと2層目31bと3層目31cとは、隣り合う2つの層31同士では、タイヤ幅方向における片側の端部に位置するビードワイヤー30同士のタイヤ幅方向におけるずれ量を、ビードワイヤー30の太さの0.5本分にする。このため、ビードワイヤー30が、タイヤ径方向に隣り合う2つの層31に跨ぐ部分でのタイヤ幅方向におけるずれ量が大きくなり過ぎることを抑制でき、ビードコア21の形状が崩れることを抑制することができる。
【0194】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、1層目31aと2層目31bとにおけるビードワイヤー30同士のずれ量をビードワイヤー30の太さの0.5本分にする側と、2層目31bと3層目31cとにおけるビードワイヤー30同士のずれ量をビードワイヤー30の太さの0.5本分にする側とを、タイヤ幅方向において互いに反対側にする。これにより、タイヤ子午断面におけるビードコア21の形状を、タイヤ幅方向における両側でバランス良く、カーカス6の形状に沿った形状に近付けることができ、カーカス6とビードコア21との間で発生する応力集中を抑制できるため、カーカスコード6cの破断等の故障の発生を、より確実に抑制することができる。これらの結果、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0195】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードワイヤー30は、1層目31aにおけるタイヤ幅方向外側の端部から巻き始めるため、ビードコア21の耐久性を確保することができる。つまり、空気入りタイヤ1のインフレート時は、ビードコア21に対しては、ビードコア底面23におけるタイヤ幅方向内側の端部23inの位置に、最も強度が要求される。このため、ビードコア底面23におけるタイヤ幅方向内側の端部23inの位置に、ビードワイヤー30の端部が位置すると、ビードコア21の耐久性が低下し、ビードコア21の形状が崩れ易くなる虞がある。
【0196】
これに対し、1層目31aにおけるタイヤ幅方向外側の端部からビードワイヤー30を巻き始めた場合は、最も強度が要求される、ビードコア底面23におけるタイヤ幅方向内側の端部23inの位置の強度を確保することができるため、ビードコア21の形状が崩れ易くなることを抑制することができる。この結果、ビードコア21の耐久性を確保することができる。
【0197】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbと、ターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面45との距離Dcとの比率Db/Dcを、10%以上15%以下の範囲内にするため、カーカスコード6cへの負荷が大きくなり過ぎること抑制しつつ、リムホイールとビード部外表面45との接触圧を効果的に高めることができる。この結果、ビード部20の耐久性を向上させることができると共に、ビード部20でのエアシール性を向上させることができる。
【0198】
また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、タイヤ子午断面において、カーカス本体部6aにおけるフランジ高さRhに対応する交点P2とビードコア上面22に対応する交点P1とを結ぶ直線Lpの、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θpを、60°≦θp≦75°の範囲内にするため、カーカス本体部6aが、ビードコア21に近付く方向に倒れ過ぎたり、座屈状に変形したりすることを抑制することができる。この結果、カーカス6が有するカーカス本体部6aと周囲の部材との間のセパレーションの発生を抑制することができ、耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0199】
[実施形態2]
実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1と略同様の構成であるが、ビード部20のビードベース部40が複数のテーパー部43を有する点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
【0200】
図13は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1のビード部20の詳細図である。実施形態2に係る空気入りタイヤ1のビード部20には、実施形態1に係る空気入りタイヤ1のビード部20に配置されるビードコア21と同等に構成されるビードコア21が配置されている。ビード部20に配置されるビードコア21は、内径BICが、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内になっている。この場合における規定リム径RDは、規格で定められるリム径になっており、タイヤ回転軸を中心とする、リム径基準位置BLの直径になっている。つまり、規定リム径RDは、JATMA、またはTRA、或いはETRTOの規格で定められるリム径になっている。また、ビードコア21の内径BICは、タイヤ回転軸を中心とする、ビードコア底面23の直径になっている。
【0201】
また、ビードコア21は、最大幅CWが、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅であるビードベース幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内になっている。この場合におけるビードコア21の最大幅CWは、タイヤ幅方向におけるビードコア21の最大幅となっており、即ち、タイヤ子午断面においてビードコア21のタイヤ幅方向における両側に位置する垂直線25同士の、タイヤ幅方向における距離になっている。
【0202】
また、実施形態2に係る空気入りタイヤ1では、ビード部20の内周面であるビードベース部40は、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が異なる複数のテーパー部43を有して形成されている。詳しくは、ビードベース部40は、タイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従って内径が大きくなる方向に、タイヤ幅方向に対して傾斜して形成されている。ビードベース部40は、このようにタイヤ幅方向に対して傾斜する際における傾斜角度が変化する部分を有しており、タイヤ幅方向に対する傾斜角度が互いに異なるそれぞれの部分が、それぞれテーパー部43になっている。
【0203】
ビードベース部40が有するテーパー部43は、第1テーパー部43aと、第2テーパー部43bとを有している。第1テーパー部43aは、複数のテーパー部43のうち、最もタイヤ幅方向外側に位置するテーパー部43になっており、また、第2テーパー部43bは、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向内側に位置して第1テーパー部43aに連接するテーパー部43になっている。これらの第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとのうち、第2テーパー部43bは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも大きくなっている。このため、第2テーパー部43bは、第1テーパー部43aと比較して、タイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従って内径が大きくなる度合いが大きくなっている。
【0204】
ビードベース部40は、このように傾斜角度が互いに異なる第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとの連接部分である屈曲部44が、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cよりも、タイヤ幅方向内側に位置している。つまり、屈曲部44は、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cよりも、タイヤ幅方向における位置がビードトウ41寄りの位置に配置されている。第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとは、屈曲部44で連接されるため、換言すると、第1テーパー部43aは、屈曲部44とビードヒール42との間に配置され、第2テーパー部43bは、ビードトウ41と屈曲部44との間に配置されている。
【0205】
また、第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとは、いずれもタイヤ幅方向における内側から外側に向かうに従って内径が大きくなる方向に、タイヤ幅方向に対して傾斜している。このため、第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとの連接部分である屈曲部44は、第1テーパー部43aにおいて内径が最も小さくなる部分になっており、第2テーパー部43bにおいて内径が最も大きくなる部分になっている。
【0206】
図14は、
図13に示すテーパー部43の詳細説明図である。ビードベース部40が有する第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとのうち、相対的に傾斜角度が小さい側のテーパー部43である第1テーパー部43aは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt1が、5°以上になっている。詳しくは、第1テーパー部43aは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt1が、5°以上10°以下の範囲内になっている。また、第2テーパー部43bは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt2が、10°以上35°以下の範囲内になっている。
【0207】
また、ビードベース部40は、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向における幅T1と、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.45≦T1/BW≦0.85の範囲内になっている。この場合における第1テーパー部43aのタイヤ幅方向における幅T1は、本実施形態2では、屈曲部44とビードヒール42とのタイヤ幅方向における距離になっている。
【0208】
また、ビードベース部40は、第2テーパー部43bのタイヤ幅方向における幅T2と、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.15≦T2/BW≦0.55の範囲内になっている。この場合における第2テーパー部43bのタイヤ幅方向における幅T2は、本実施形態2では、屈曲部44とビードトウ41とのタイヤ幅方向における距離になっている。
【0209】
図15は、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合におけるゴムの圧縮率についての説明図である。空気入りタイヤ1を規定リムRへ装着する際には、ビード部20を規定リムRに嵌合するが、ビード部20の内周面の径は、規定リムRにおけるビード部20に対する嵌合面の径よりも小さくなっている。このため、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着する際には、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するリムクッションゴム46等のゴム部材が弾性変形して圧縮されることにより、ビード部20の内周面の径が大きくなる。これにより、ビード部20は、規定リムRに嵌合する。
【0210】
空気入りタイヤ1を規定リムRに装着する際には、このようにビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムが弾性変形して圧縮された状態になるため、ビード部20は、規定リムRに対して、タイヤ径方向における外側から内側への押圧力を付与することができる。これにより、ビード部20は、規定リムRに対する締め付け力を発生することが可能になっている。このように、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率は、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cのタイヤ径方向内側の位置で、40%以上50%以下の範囲内になっている。
【0211】
この場合におけるゴムの圧縮率は、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着する前のタイヤ子午断面における、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cとビードベース部40とのタイヤ径方向における距離BDから、カーカス6のカーカスコード6c等のゴム部材以外の部材の厚さを引いた厚さGa1に対する、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着時にタイヤ径方向に圧縮されるゴム部材の厚さGa2になっている。つまり、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率Zは、下記の式(1)で算出する値になっている。本実施形態2に係る空気入りタイヤ1は、下記の式(1)で算出する圧縮率Zが、40%以上50%以下の範囲内になっている。
圧縮率Z=(Ga2/Ga1)×100・・・(1)
【0212】
なお、式(1)で用いる、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着時にタイヤ径方向に圧縮されるゴム部材の厚さGa2は、具体的には、ビードベース部40における、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cのタイヤ幅方向における同じ位置となる部分である基準位置47の、規定リムRへの空気入りタイヤ1の装着前と装着後のタイヤ径方向の変位量になっている。ビード部20は、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するリムクッションゴム46の厚さのみでなく、カーカス6が有するコートゴム6d等のゴム部材の厚さや、カーカス6のカーカスコード6c等のゴム部材以外の部材の厚さを考慮して、圧縮率Zが40%以上50%以下の範囲内になるように形成されるのが好ましい。
【0213】
[空気入りタイヤの製造方法]
次に、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の製造方法について説明する。実施形態2に係る空気入りタイヤ1の製造時は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の製造時と同様に、空気入りタイヤ1を構成する部材ごとに加工を行い、加工した部材を組み立てる。その際に、ビードコア21は、実施形態1と同様の方法で製造する。
【0214】
また、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードコア21の内径BICを、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内にし、ビードコア21の最大幅CWを、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内にする。
【0215】
また、ビードベース部40には、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が異なる複数のテーパー部43を形成し、複数のテーパー部43として、最もタイヤ幅方向外側に位置する第1テーパー部43aと、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向内側に位置して第1テーパー部43aに連接する第2テーパー部43bとを形成する。このうち、第2テーパー部43bは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt2を、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt1よりも大きくする。空気入りタイヤ1の製造は、これらのように行うことにより、本実施形態2に係る空気入りタイヤ1を製造する。
【0216】
[作用・効果]
本実施形態2に係る空気入りタイヤ1を車両に装着する際には、実施形態1と同様に、リムホイールが有する規定リムRに対して、ビードベース部40を嵌合させることにより、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着し、空気入りタイヤ1をリムホイールに対してリム組みをする。ここで、規定リムRへのビード部20の嵌合は、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力が重要になるが、ビードコア21の締め付け力が大き過ぎると、規定リムRに対してビード部20を嵌合させ難くなり、リム組みが困難になる虞がある。一方で、ビードコア21の締め付け力が小さ過ぎると、規定リムRに対してビード部20を嵌合した際における嵌合が弱くなり、嵌合後におけるビード部20と規定リムRとの間のタイヤ周方向における滑りである、リム滑りが発生し易くなる虞がある。
【0217】
これに対し、本実施形態2に係る空気入りタイヤ1では、ビードコア21の内径BICが、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内になっているため、リム滑りを抑制しつつ、容易なリム組みを可能とすることができる。つまり、ビードコア21の内径BICと規定リム径RDとの関係が、BIC/RD<1.01である場合は、ビードコア21の内径BICが小さ過ぎるため、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力が大きくなり過ぎ、リム組みが困難になる虞がある。また、ビードコア21の内径BICと規定リム径RDとの関係が、BIC/RD>1.03である場合は、ビードコア21の内径BICが大き過ぎるため、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力が小さくなり過ぎ、規定リムRに対してビード部20を嵌合した際における締め付け力を確保し難くなる虞がある。この場合、締め付け力不足に起因して、リム滑りが発生し易くなる虞がある。
【0218】
これに対し、ビードコア21の内径BICと規定リム径RDとの関係が、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内である場合は、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力を、リム滑りの発生を抑制でき、且つ、リム組みが困難にならない程度の、適切な大きさにすることができる。この結果、リム滑りを抑制しつつ、容易なリム組みを可能とすることができる。
【0219】
また、ビードコア21の最大幅CWが、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内になっているため、リム滑りを抑制しつつ、ビード部20の耐久性を向上させることができる。つまり、ビードコア21の最大幅CWと、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、CW/BW<0.45である場合は、ビードベース部40の幅BWに対して、ビードコア21の最大幅CWが小さ過ぎるため、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力が有効的に作用する範囲が、狭くなり過ぎる虞がある。この場合、規定リムRに対してビード部20を嵌合した際における締め付け力を確保し難くなる虞があり、これに起因してリム滑りが発生し易くなる虞がある。
【0220】
また、ビードコア21の最大幅CWと、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、CW/BW>0.52である場合は、ビードベース部40の幅BWに対して、ビードコア21の最大幅CWが大き過ぎるため、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力が作用する範囲が、広くなり過ぎる虞がある。この場合、規定リムRにビード部20を嵌合した際に、ビードベース部40を構成するリムクッションゴム46に過度な力が作用し、過剰な圧縮応力が発生する虞があり、過剰な圧縮応力により、ビードベース部40が損傷し易くなる虞がある。
【0221】
これに対し、ビードコア21の最大幅CWと、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内である場合は、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力が作用する範囲を、ビード部20の締め付け力を確保でき、且つ、リムクッションゴム46に過度な力が作用しない程度の、適切な大きさにすることができる。この結果、リム滑りを抑制しつつ、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0222】
また、ビードベース部40は、第1テーパー部43aと、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向内側に位置する第2テーパー部43bとを有し、第2テーパー部43bは、傾斜角度θt2が第1テーパー部43aの傾斜角度θt1よりも大きいため、エアシール性を確保することができる。つまり、空気入りタイヤ1をリム組みしてインフレートした場合、カーカス本体部6aには、タイヤ径方向外側への張力が作用するが、この張力は、ビードベース部40に対しては、ビードトウ41寄りの位置をタイヤ径方向外側に向かわせる方向の力として作用する。この場合、ビードベース部40におけるビードトウ41寄りの位置での締め付け力が低下し、エアシール性が低下し易くなる虞がある。
【0223】
特に、本実施形態2では、タイヤ子午断面におけるビードコア21のタイヤ幅方向最内側に位置する部分が垂直線25で形成されており、ビードコア21には、カーカス本体部6aに対して引っ掛かる角部が無いため、カーカス本体部6aのタイヤ径方向外側への張力は、ビード部20に伝わり易くなっている。このため、ビードベース部40におけるビードトウ41寄りの位置には、タイヤ径方向外側に向かわせる方向の力が作用し易くなっており、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力が低下し易くなっている。
【0224】
これに対し、本実施形態2のビードベース部40は、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向内側に位置する第2テーパー部43bの傾斜角度θt2が、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1よりも大きいため、ビードトウ41寄りの位置をタイヤ径方向外側に向かわせる方向の力が作用しても、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力が低下することを抑制することができる。この結果、エアシール性を確保することができる。
【0225】
また、ビードベース部40は、第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとの連接部分である屈曲部44が、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cよりもタイヤ幅方向内側に位置するため、リムクッションゴム46の体積の増加量を抑えつつ、第1テーパー部43aよりも傾斜角度が大きい第2テーパー部43bを形成することができる。これにより、規定リムRにビード部20を嵌合した際に、リムクッションゴム46で過剰な圧縮応力が発生してビードベース部40が損傷し易くなることを抑制しつつ、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を確保することができる。この結果、ビード部20の耐久性を低下させることなく、エアシール性を確保することができる。
【0226】
また、第1テーパー部43aは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt1が5°以上であるため、5°テーパーの規定リムRに対して、適切に締め付け力を発揮することができる。この結果、より確実にエアシール性を向上させることができる。
【0227】
また、第1テーパー部43aは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt1が5°以上10°以下の範囲内であるため、リム組み性を低下させることなく、エアシール性を向上させることができる。つまり、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1が、5°未満である場合は、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1が小さ過ぎるため、5°テーパーの規定リムRに対して適切な締め付け力を発揮し難くなり、エアシール性を向上させ難くなる虞がある。また、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1が、10°より大きい場合は、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1が大き過ぎるため、規定リムRに対する第1テーパー部43aでの締め付け力が大きくなり過ぎ、リム組みが困難になる虞がある。
【0228】
これに対し、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1が、5°以上10°以下の範囲内である場合は、規定リムRに対する第1テーパー部43aでの締め付け力が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、第1テーパー部43aの位置で、規定リムRに対して適切な締め付け力を発揮することができる。この結果、リム組み性を低下させることなく、より確実にエアシール性を向上させることができる。
【0229】
また、第2テーパー部43bは、タイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度θt2が10°以上35°以下の範囲内であるため、リム組み性を低下させることなく、エアシール性を向上させることができる。つまり、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2が、10°未満である場合は、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2が小さ過ぎるため、ビードベース部40に第2テーパー部43bを形成しても、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を効果的に確保し難くなる虞がある。この場合、ビードベース部40に第2テーパー部43bを形成しても、エアシール性を効果的に向上させ難くなる虞がある。また、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2が、35°より大きい場合は、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2が大き過ぎるため、規定リムRに対する第2テーパー部43bでの締め付け力が大きくなり過ぎ、リム組みが困難になる虞がある。
【0230】
これに対し、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2が、10°以上35°以下の範囲内である場合は、第2テーパー部43bでの締め付け力が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、第2テーパー部43bによりビードトウ41寄りの位置での締め付け力を、効果的に確保することができる。この結果、リム組み性を低下させることなく、より確実にエアシール性を向上させることができる。
【0231】
また、ビードベース部40は、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向における幅T1と、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.45≦T1/BW≦0.85の範囲内であるため、リム組み性を低下させることなく、エアシール性を向上させることができる。つまり、第1テーパー部43aの幅T1と、ビードベース部40の幅BWとの関係が、T1/BW<0.45である場合は、第1テーパー部43aの幅T1が小さ過ぎるため、ビードベース部40における第2テーパー部43bの比率が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、ビードベース部40において、規定リムRに対する締め付け力が大きい部分の割合が大きくなるため、ビードベース部40全体として、規定リムRに対するビード部20の締め付け力が大きくなり過ぎ、リム組み性が低下し易くなる虞がある。
【0232】
また、第1テーパー部43aの幅T1と、ビードベース部40の幅BWとの関係が、T1/BW>0.85である場合は、第1テーパー部43aの幅T1が大き過ぎるため、ビードベース部40における第2テーパー部43bの比率が小さくなり過ぎる虞がある。この場合、ビードベース部40において、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を確保する第2テーパー部43bの割合が小さくなるため、ビードベース部40に第2テーパー部43bを形成しても、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を効果的に確保し難くなる虞がある。
【0233】
これに対し、第1テーパー部43aの幅T1と、ビードベース部40の幅BWとの関係が、0.45≦T1/BW≦0.85の範囲内である場合は、ビードベース部40全体として、規定リムRに対する締め付け力が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を、効果的に確保することができる。この結果、リム組み性を低下させることなく、より確実にエアシール性を向上させることができる。
【0234】
また、ビードベース部40は、第2テーパー部43bのタイヤ幅方向における幅T2と、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWとの関係が、0.15≦T2/BW≦0.55の範囲内であるため、リム組み性を低下させることなく、エアシール性を向上させることができる。つまり、第2テーパー部43bの幅T2と、ビードベース部40の幅BWとの関係が、T2/BW<0.15である場合は、第2テーパー部43bの幅T2が小さ過ぎるため、ビードベース部40において、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を確保する第2テーパー部43bの割合が小さくなり過ぎる虞がある。この場合、ビードベース部40に第2テーパー部43bを形成しても、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を効果的に確保し難くなり、エアシール性を効果的に向上させ難くなる虞がある。また、第2テーパー部43bの幅T2と、ビードベース部40の幅BWとの関係が、T2/BW>0.55である場合は、第2テーパー部43bの幅T2が大き過ぎるため、ビードベース部40において、規定リムRに対する締め付け力が大きい部分の割合が大きくなり過ぎ、リム組み性が低下し易くなる虞がある。
【0235】
これに対し、第2テーパー部43bの幅T2と、ビードベース部40の幅BWとの関係が、0.15≦T2/BW≦0.55の範囲内である場合は、ビードベース部40において規定リムRに対する締め付け力が大きい部分の割合が大きくなり過ぎることを抑制し、規定リムRに対する締め付け力が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力を、効果的に確保することができる。この結果、リム組み性を低下させることなく、より確実にエアシール性を向上させることができる。
【0236】
また、ビード部20は、空気入りタイヤ1を規定リムRに装着した場合における、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するゴムの圧縮率Zが、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cにおいて40%以上50%以下の範囲内であるため、リム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。つまり、圧縮率Zが40%未満である場合は、圧縮率Zが低過ぎるため、ビード部20での締め付け力を確保し難くなる虞がある。この場合、ビード部20と規定リムRとの間の滑りを、効果的に抑制するのが困難になる虞がある。また、圧縮率Zが50%を超える場合は、圧縮率Zが高過ぎるため、ビードコア21のタイヤ径方向内側に位置するリムクッションゴム46の弾性変形が過大になり、ビード部20の締め付け力が大きくなり過ぎる虞がある。この場合、ビード部20の締め付け力が大きくなり過ぎることに起因して、リム組み性が低下し易くなる虞がある。
【0237】
これに対し、圧縮率Zが40%以上50%以下の範囲内である場合は、規定リムRに対するビード部20の締め付け力が大きくなり過ぎることを抑制しつつ、ビード部20の締め付け力を適切な大きさで確保することができる。この結果、より確実にリム組み性を確保しつつ、リム滑りを抑制することができる。
【0238】
また、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードコア21の内径BICを、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内にするため、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力を、リム滑りの発生を抑制でき、且つ、リム組みが困難にならない程度の、適切な大きさにすることができる。この結果、リム滑りを抑制しつつ、容易なリム組みを可能とすることができる。
【0239】
また、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードコア21の最大幅CWを、ビードベース部40の幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内にするため、ビードコア21により発生する規定リムRへの締め付け力が作用する範囲を、ビード部20の締め付け力を確保でき、且つ、リムクッションゴム46に過度な力が作用しない程度の、適切な大きさにすることができる。この結果、リム滑りを抑制しつつ、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0240】
また、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の製造方法では、ビードベース部40に、第1テーパー部43aと、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向内側に位置する第2テーパー部43bとを形成し、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2を、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1よりも大きくしている。これにより、カーカス本体部6aに作用する張力により、ビードベース部40に対してビードトウ41寄りの位置をタイヤ径方向外側に向かわせる方向の力が作用しても、ビードトウ41寄りの位置での締め付け力が低下することを抑制することができる。この結果、エアシール性を確保することができる。
【0241】
[変形例]
なお、上述した実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、第1補強層61は、内側エッジ61aと外側エッジ61bとのいずれもが、ビードコア上面22よりもタイヤ径方向外側に位置しているが、第1補強層61の内側エッジ61aと外側エッジ61bとは、必ずしもビードコア上面22よりもタイヤ径方向外側に位置していなくてもよい。また、実施形態1に係る空気入りタイヤ1では、補強層60は3層が配置されているが、補強層60は、3層以外で配置されていてもよい。
【0242】
図16は、実施形態1に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、実施形態1とは異なる配置形態で補強層60が配置される状態についての説明図である。補強層60は、例えば、
図16に示すように、2層が配置されていてもよい。この場合、2層の補強層60のうち、カーカス6に隣接する補強層60である第1補強層61は、カーカス6に沿ってビードコア21のタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側にかけて折り返して配置されるのが好ましい。この場合、第1補強層61は、少なくともビードコア21のタイヤ幅方向における最内部であるビードコア最内部26のタイヤ径方向における位置と同じ位置と、ビードコア21のタイヤ幅方向における最外部であるビードコア最外部27のタイヤ径方向における位置と同じ位置との間に亘って配置されるのが好ましい。換言すると、第1補強層61は、内側エッジ61aのタイヤ径方向における位置が、ビードコア最内部26のタイヤ径方向における位置よりもタイヤ径方向外側に位置し、外側エッジ61bのタイヤ径方向における位置が、ビードコア最外部27のタイヤ径方向における位置よりもタイヤ径方向外側に位置するのが好ましい。
【0243】
また、2層の補強層60のうち、第1補強層61におけるカーカス6が位置する側の反対の面側で第1補強層61に隣接する補強層60である第2補強層62は、内側エッジ62aが、第1補強層61の内側エッジ61aよりもタイヤ径方向外側に位置するのが好ましい。即ち、第1補強層61と第2補強層62とは、カーカス本体部6aのタイヤ幅方向内側に位置する部分における、それぞれの補強層60のタイヤ径方向外側の端部を比較した場合に、第2補強層62の内側エッジ62aが、第1補強層61の内側エッジ61aよりもタイヤ径方向外側に位置するのが好ましい。
【0244】
また、第2補強層62における内側エッジ62aの反対側の端部である径方向内側エッジ62bは、ビードコア底面23のタイヤ幅方向内側の端部23inよりもタイヤ幅方向内側、またはビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outよりもタイヤ幅方向外側に位置するのが好ましい。
図16では、第2補強層62の径方向内側エッジ62bが、ビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outよりもタイヤ幅方向外側に位置する形態を図示している。
【0245】
また、積層される複数の補強層60のうち、第1補強層61は、スチール補強層61であるのが好ましく、第2補強層62は、有機繊維補強層62であるのが好ましい。スチール補強層61を、少なくともビードコア最内部26のタイヤ径方向における位置と同じ位置と、ビードコア最外部27のタイヤ径方向における位置と同じ位置との間に亘って配置することにより、ビード部20の剛性を、スチール補強層61によって高めることができる。これにより、空気入りタイヤ1に荷重が作用した際におけるカーカス6の動きを、スチール補強層61によって抑えることができるため、カーカス6と、カーカス6の周囲に位置するゴム部材との間でセパレーションが発生することを、より確実に抑制することができる。
【0246】
また、スチール補強層61に対して有機繊維補強層62を重ねて配置することにより、規定リムRに対するビード部20の締め付け力を調節することができ、リム滑りを抑制することができる。また、有機繊維補強層62の径方向内側エッジ62bを、ビードコア底面23のタイヤ径方向内側の位置からずらすことにより、規定リムRに対するビード部20の締め付け力が、タイヤ幅方向において径方向内側エッジ62bが配置される位置で急変することを抑制できる。これにより、より確実にリム滑りを抑制することができる。
【0247】
また、上述した実施形態2に係る空気入りタイヤ1では、ビードベース部40に形成されるテーパー部43は、2段になっているが、テーパー部43は2段以外であってもよい。
図17は、実施形態2に係る空気入りタイヤ1の変形例であり、テーパー部43が3段で形成される場合の説明図である。ビードベース部40に形成されるテーパー部43は、例えば、
図17に示すように、3段で形成されていてもよい。即ち、テーパー部43は、最もタイヤ幅方向外側に位置する第1テーパー部43aと、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向内側に位置して第1テーパー部43aに連接する第2テーパー部43bと、第2テーパー部43bのタイヤ幅方向内側に位置して第2テーパー部43bに連接する第3テーパー部43cとの3段で形成されていてもよい。
図17に示す変形例では、第2テーパー部43bのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度は、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも大きくなっており、第3テーパー部43cのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度は、第2テーパー部43bのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも小さくなっている。このため、第2テーパー部43bと第3テーパー部43cとの連接部分である、第2テーパー部43bと第3テーパー部43cとの間に位置する屈曲部44は、第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとの間に位置する屈曲部44に対して、屈曲の方向が反対方向になっている。
【0248】
ビードベース部40に形成されるテーパー部43は、テーパー部43の段数に関わらず、第2テーパー部43bのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度が、第1テーパー部43aのタイヤ幅方向に対するタイヤ径方向への傾斜角度よりも大きくなって形成されることにより、ビードトウ41寄りの位置で締め付け力が低下することを抑制でき、エアシール性を確保することができる。
【0249】
また、上述した実施形態1、2や、変形例は、適宜組み合わせてもよい。ビード部20は、補強層60の構成やビードベース部40の形態に関わらず、少なくともビードコア21を、実施形態1で用いられるビードコア21と同等のものを用いることにより、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0250】
[実施例]
図18A、
図18Bは、空気入りタイヤの第1の性能評価試験の結果を示す図表である。
図19A、
図19Bは、空気入りタイヤの第2の性能評価試験の結果を示す図表である。
図20A、
図20Bは、空気入りタイヤの第3の性能評価試験の結果を示す図表である。
図21A、
図21Bは、空気入りタイヤの第4の性能評価試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤとについて行なった第1~第4の性能評価試験について説明する。第1~第4の性能評価試験は、空気入りタイヤ1の耐久性、エアシール性、リム滑り性を評価する耐久試験を行った。
【0251】
これらの第1~第4の性能評価試験は、タイヤの呼びが46/90R57サイズの空気入りタイヤ1を試験タイヤとして使用し、この試験タイヤをTRA規格に準拠するリムホイールにリム組みし、空気圧をTRA規格で規定される空気圧に調整して、TRA規格で規定される荷重を付与する条件下で行った。
【0252】
第1~第4の性能評価試験のうち、第1の性能評価試験では、耐久性についての評価を行った。耐久性についての評価方法は、室内ドラム試験機を使用し、荷重をTRAで規定される最大負荷荷重の85%、速度を15km/hに設定して走行試験を行い、空気入りタイヤを目標走行時間として設定した30日間走行させた後、耐久試験走行を止めて、ビード部でのカーカスの損傷の程度と、ビード部でのカーカスコードの破断の有無に基づいて評価を行った。ビード部でのカーカスコードの破断の有無は、室内ドラム試験機での走行試験後の空気入りタイヤに対して、ビード部にてカーカスとビードコアを剥離し、カーカスコードの損傷及び破断の程度を確認し、カーカスコードの破断の有無を確認した。ビード部の耐久性を示す、ビード部でのカーカスの損傷の程度は、カーカスコード損傷及び破断の程度を指数化し、指数の逆数を後述する比較例1-1を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほどビード部におけるカーカスコードの損傷が少なく、耐久性に優れていることを示している。なお、第1の性能評価試験における従来例1は、ビード部におけるカーカス破断のためにビードバーストが生じたことで走行不能となったため、指数は記載していない。
【0253】
また、第2の性能評価試験では、第1の性能評価試験と同様に行う耐久性についての評価と、エアシール性についての評価を行った。第2の性能評価試験における、空気入りタイヤのカーカスコード損傷及び破断の程度は、カーカスコード損傷及び破断の程度を指数化し、指数の逆数を第1の性能評価試験における比較例1-1を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほどビード部におけるカーカスコードの損傷が少なく、耐久性に優れていることを示している。なお、第2の性能評価試験における従来例2は、ビード部におけるカーカス破断のためにビードバーストが生じたことで走行不能となったため、指数は記載していない。また、エアシール性についての評価は、耐久性についての試験と同様の試験で、室内ドラム試験機を用いた走行試験で72時間走行した後、24時間経過後の空気圧を測定することにより行った。エアシール性は、測定した空気圧の逆数を、後述する従来例2を100とする指数で表し、数値が大きいほど空気圧の低下が少なく、エアシール性に優れていることを示している。
【0254】
また、第3の性能評価試験では、第1の性能評価試験と同様に行う耐久性についての評価と、耐カーカスセパ性についての評価を行った。第3の性能評価試験における、空気入りタイヤのカーカスコード損傷及び破断の程度は、カーカスコード損傷及び破断の程度を指数化し、指数の逆数を第1の性能評価試験における比較例1-1を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほどビード部におけるカーカスコードの損傷が少なく、耐久性に優れていることを示している。なお、第3の性能評価試験における従来例3と比較例3は、ビード部におけるカーカス破断のためにビードバーストが生じたことで走行不能となったため、指数は記載していない。また、耐カーカスセパ性についての評価は、室内ドラム試験機での走行試験後の空気入りタイヤに対して、ビード部におけるカーカスのセパレーションの発生数を測定することにより行った。耐カーカスセパ性は、カーカスのセパレーションの発生数の逆数を、後述する従来例3を100とする指数で表し、数値が大きいほどセパレーションの発生数が少なく、耐カーカスセパ性に優れていることを示している。
【0255】
また、第4の性能評価試験では、第1の性能評価試験と同様に行う耐久性についての評価とエアシール性についての評価と、リム滑り性についての評価を行った。第4の性能評価試験における、空気入りタイヤのカーカスコード損傷及び破断の程度は、カーカスコード損傷及び破断の程度を指数化し、指数の逆数を第1の性能評価試験における比較例1-1を100とする指数で表すことにより評価した。数値が大きいほどビード部におけるカーカスコードの損傷が少なく、耐久性に優れていることを示している。なお、第4の性能評価試験における従来例4は、ビード部におけるカーカス破断のためにビードバーストが生じたことで走行不能となったため、指数は記載していない。また、エアシール性についての評価は、耐久性についての試験と同様の試験で、室内ドラム試験機を用いた走行試験で72時間走行した後、24時間経過後の空気圧を測定することにより行った。エアシール性は、測定した空気圧の逆数を、後述する実施例4-1を100とする指数で表し、数値が大きいほど空気圧の低下が少なく、エアシール性に優れていることを示している。また、リム滑り性についての評価は、リムスリップトルク試験によって評価した。リムスリップトルク試験では、リム組みした試験タイヤとリムホイールとに対してタイヤ周方向の相対的なトルクをかけると共に、試験タイヤとリムホイールとの間のずれ量を目視確認しながら徐々にトルクを大きくし、リムスリップが発生したと判断できる大きさのずれが発生した際のトルク値を測定した。リム滑り性は、測定したトルク値を後述する実施例4-1を100とする指数で表し、数値が大きいほど試験タイヤとリムホイールとの間でタイヤ周方向のずれが発生し難く、リム滑り性が優れていることを示している。なお、第4の性能評価試験における従来例4は、エアシール性についての評価ではエア漏れが発生し、リム滑り性についての評価ではスリップが発生したと評価された。
【0256】
第1の性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例1の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1-1~1-15と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例1-1、1-2との18種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例1の空気入りタイヤは、ビードコアのタイヤ子午断面における断面形状が略六角形になっており、ビードコアがタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線を有していない。また、比較例1-1、1-2の空気入りタイヤは、ビードコアの垂直線の長さCVが、ビードコアのコア高さCHに対して20%以上30%以下の範囲内になっておらず、また、ビードコア底面から垂直線の内側端部までの距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内になっていない。
【0257】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1-1~1-15は、全てビードコア21がタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線25を有しており、ビードコア21の垂直線25の長さCVが、ビードコア21のコア高さCHに対して20%以上30%以下の範囲内になっており、ビードコア底面23から垂直線25の内側端部25aまでの距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内になっている。さらに、実施例1-1~1-15に係る空気入りタイヤ1は、ビードコア21の最大幅CWに対するビードコア底面23の幅CBWの比率(CBW/CW)や、ビードコア21の最大幅CWに対する、タイヤ幅方向における内側の垂直線25とビードコア上面22の端部22inとの距離Vbの比率(Vb/CW)、ビードコア21の最大幅CWに対する、タイヤ幅方向における内側の垂直線25とビードコア底面23の端部23inとの距離Vcの比率(Vc/CW)、コア高さCHに対するビードコアの最大幅CWの比率(CW/CH)が、それぞれ異なっている。
【0258】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図18A、
図18Bに示すように、実施例1-1~1-15に係る空気入りタイヤ1は、従来例1とは異なりビード部20でのカーカスコード6cの破断が発生せず、比較例1-1、1-2に対しても、ビード部20でのカーカスコード6cの損傷が少ないことが分かった。つまり、実施例1-1~1-15に係る空気入りタイヤ1は、ビード部20の耐久性を向上させることができる。
【0259】
また、第2の性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例2の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例2-1~2-14との15種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例2の空気入りタイヤは、ビードコアのタイヤ子午断面における断面形状が略六角形になっており、ビードコアがタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線を有していない。また、従来例2の空気入りタイヤは、ターンナップ部のカーカスコードとビード部外表面との距離Dcに対する、ビードコアとターンナップ部のカーカスコードとの距離Dbの比率(Db/Dc)が、10%以上15%以下の範囲内になっていない。
【0260】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例2-1~2-14は、全てビードコア21がタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線25を有しており、ビードコア21の垂直線25の長さCVが、ビードコア21のコア高さCHに対して20%以上30%以下の範囲内になっており、ビードコア底面23から垂直線25の内側端部25aまでの距離Vaが、コア高さCHに対して30%以上40%以下の範囲内になっており、ターンナップ部6bのカーカスコード6cとビード部外表面45との距離Dcに対する、ビードコア21とターンナップ部6bのカーカスコード6cとの距離Dbの比率(Db/Dc)が、10%以上15%以下の範囲内になっている。さらに、実施例2-1~2-14に係る空気入りタイヤ1は、ビードベース部40の幅BWに対する、ビードコア21のタイヤ幅方向最外側位置とビード部外表面45との距離Ddの比率(Dd/BW)や、ビードコア21の垂直線25の内側端部25aとビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outと中間頂点28とを通る円弧RAの曲率半径RBに対するカーカスラインの円弧の曲率半径RCの比率(RC/RB)、リムクッションゴム46の100%伸長時のモジュラスが、それぞれ異なっている。
【0261】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図19A、
図19Bに示すように、実施例2-1~2-14に係る空気入りタイヤ1は、従来例2とは異なりビード部20でのカーカスコード6cの破断が発生せず、エアシール性も従来例2より優れていることが分かった。つまり、実施例2-1~2-14に係る空気入りタイヤ1は、ビード部20の耐久性を向上させることができると共に、ビード部20でのエアシール性を向上させることができる。
【0262】
また、第3の性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例3の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例3-1~1-16と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する空気入りタイヤである比較例3との18種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例3及び比較例3の空気入りタイヤは、ビードコアのタイヤ子午断面における断面形状が略六角形になっており、ビードコアがタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線を有していない。また、従来例3及び比較例3の空気入りタイヤは、カーカス本体部の傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内になっていない。
【0263】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例3-1~1-16は、全てビードコア21がタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線25を有しており、カーカス本体部6aの傾斜角度θpが、60°≦θp≦75°の範囲内になっている。さらに、実施例3-1~1-16に係る空気入りタイヤ1は、補強層60の有無や、補強層60が3層以上であるか否か、補強層60に関するHrf11/Rh、Hrf21/Rh、Hrf31/Rh、Hrf12/Rh、Hrf22/Rh、Hrf32/Rhの各比率、第1補強層61が有するコード66の傾斜角度θrf1、第2補強層62が有するコード67の傾斜角度θrf2、第3補強層63が有するコード68の傾斜角度θrf3が、それぞれ異なっている。
【0264】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図20A、
図20Bに示すように、実施例3-1~1-16に係る空気入りタイヤ1は、従来例3や比較例3とは異なりビード部20でのカーカスコード6cの破断が発生せず、また、従来例3や比較例3と比較してビード部20でのカーカス6のセパレーションが発生し難いことが分かった。つまり、実施例3-1~1-16に係る空気入りタイヤ1は、ビード部20の耐久性を向上させることができると共に、耐カーカスセパ性を向上させることができる。
【0265】
また、第4の性能評価試験は、従来の空気入りタイヤの一例である従来例4の空気入りタイヤと、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例4-1~4-17との18種類の空気入りタイヤについて行った。このうち、従来例4の空気入りタイヤは、ビードコアのタイヤ子午断面における断面形状が略六角形になっており、ビードコアがタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線を有していない。また、従来例4の空気入りタイヤは、ビードコアの最大幅CWがビードベース部40の幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内になっておらず、第2テーパー部の傾斜角度θt2が、第1テーパー部の傾斜角度θt1よりも大きくなっていない。
【0266】
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例4-1~4-17は、全てビードコア21がタイヤ幅方向最内側と最外側に垂直線25を有しており、ビードコア21の内径BICが、規定リム径RDに対して、1.01≦BIC/RD≦1.03の範囲内になっており、ビードコア21の最大幅CWが、ビードベース部40のタイヤ幅方向における幅BWに対して、0.45≦CW/BW≦0.52の範囲内になっており、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2が、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1よりも大きくなっている。さらに、実施例4-1~4-17に係る空気入りタイヤ1は、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cにおけるゴムの圧縮率や、第1テーパー部43aと第2テーパー部43bとの連接部分である屈曲部44が、ビードコア底面23のタイヤ幅方向における中心位置23cよりもタイヤ幅方向内側に位置するか否か、第1補強層61が、ビードコア21のビードコア最内部26とビードコア最外部27との間に亘って配置されているか否か、第2補強層62の径方向内側エッジ62bが、ビードコア底面23のタイヤ幅方向内側の端部23inよりもタイヤ幅方向内側、またはビードコア底面23のタイヤ幅方向外側の端部23outよりもタイヤ幅方向外側に位置するか否か、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1が5°以上であるか否か、第1テーパー部43aの傾斜角度θt1、第2テーパー部43bの傾斜角度θt2、ビードベース部40の幅BWに対する第1テーパー部43aの幅T1の比率(T1/BW)、ビードベース部40の幅BWに対する第2テーパー部43bの幅T2の比率(T2/BW)が、それぞれ異なっている。
【0267】
これらの空気入りタイヤ1を用いて性能評価試験を行った結果、
図21A、
図21Bに示すように、実施例4-1~4-17に係る空気入りタイヤ1は、従来例4とは異なりビード部20でのカーカスコード6cの破断が発生せず、また、従来例4と比較してエアシール性に優れ、さらに、リム滑りが発生し難いことが分かった。つまり、実施例4-1~4-17に係る空気入りタイヤ1は、ビード部20の耐久性を向上させることができると共に、ビード部20でのエアシール性を向上させることができ、さらに、リム滑りを抑制することができる。
【符号の説明】
【0268】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
2a トレッドゴム
3 トレッド踏面
4 ショルダー部
5 サイドウォール部
6 カーカス
6a カーカス本体部
6b ターンナップ部
6c カーカスコード
6d コートゴム
7 ベルト層
10 陸部
15 周方向溝
20 ビード部
21 ビードコア
22 ビードコア上面
23 ビードコア底面
23c 中心位置
25 垂直線
26 ビードコア最内部
27 ビードコア最外部
28 中間頂点
30 ビードワイヤー
31 層
31a 1層目
31b 2層目
31c 3層目
40 ビードベース部
41 ビードトウ
42 ビードヒール
43 テーパー部
43a 第1テーパー部
43b 第2テーパー部
43c 第3テーパー部
44 屈曲部
45 ビード部外表面
46 リムクッションゴム
47 基準位置
50 ビードフィラー
51 ロアフィラー
52 アッパーフィラー
60 補強層
61 第1補強層
62 第2補強層
63 第3補強層
65 コード