IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タピルス株式会社の特許一覧

特許7370510電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法
<>
  • 特許-電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法 図1
  • 特許-電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法 図2
  • 特許-電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法 図3
  • 特許-電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法 図4
  • 特許-電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法 図5
  • 特許-電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/52 20130101AFI20231023BHJP
【FI】
H01G11/52
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020120046
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2021019196
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2019134197
(32)【優先日】2019-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597094215
【氏名又は名称】タピルス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087918
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】安井 隆一
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-170540(JP,A)
【文献】特開2014-056953(JP,A)
【文献】特開2016-125150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜が積層されてなるメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータであって、
前記メルトブロー不織布薄膜積層体を構成する繊維の平均繊維径が0.5~15μmであり、ガーレー透気度が1~40s/φ10/300ccであり、熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後において、MD方向およびCD方向のいずれかの形状の収縮変化を、それぞれ寸法変化率で表わして、1.2%以下であり、電解液保液率が260%以上である
ことを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【請求項2】
前記メルトブロー不織布薄膜積層体を構成する少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜の各層の構成繊維の平均繊維径が互いに実質的に同一または異なるものである請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【請求項3】
前記メルトブロー不織布薄膜積層体が、これを構成する少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜の各層間の界面に存在する繊維の部分的な熱融着により形成された層間密着加工体である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【請求項4】
前記メルトブロー不織布薄膜積層体が有する全細孔のうち、細孔径3~7μmの範囲を占める細孔の割合が50%以上である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【請求項5】
前記メルトブロー不織布薄膜積層体が、次の(1)~(5)を充足する細孔径分布を有する請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
(1)最大細孔径: 15μm以下
(2)最小細孔径: 3μm以下
(3)平均細孔径: 8μm以下
(4)最大細孔径/平均細孔径: 2.00未満
(5)最大細孔径/最小細孔径: 5.00以上
【請求項6】
前記メルトブロー不織布薄膜積層体の構成材質が、耐熱性樹脂である請求項1に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【請求項7】
少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法であって、
(a)少なくとも二枚のメルトブロー不織布原反が重ね合わせられて、金属ロールを有するカレンダ機構により、原料樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下において、カレンダ加工に供される第一カレンダ加工処理工程と、
(b)前記第一カレンダ加工処理工程により得られたカレンダ加工処理中間体が、少なくとも一個の弾性ロールを有するカレンダ機構により、有効な加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ、薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下において、カレンダ加工に供される第二カレンダ加工処理工程とを
少なくとも含有してなるカレンダ加工処理工程を有することを特徴とするメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
【請求項8】
前記第一カレンダ加工処理工程において、前記ガラス転移点以上の加工温度条件が130℃以上の温度である請求項に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
【請求項9】
前記第一カレンダ加工処理工程において、前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件のうち、金属ロールの線圧が200N/mm以下である請求項7に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
【請求項10】
前記第二カレンダ加工処理工程において、前記カレンダ機構が、少なくとも一対の加工ロールの組み合せを含み、前記一対の加工ロールの組み合せが、弾性ロールと金属ロールとの組み合せを備えてなる請求項7に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
【請求項11】
前記第二カレンダ加工処理工程において、前記カレンダ機構が、少なくとも一対の加工ロールの組み合せを含み、前記一対の加工ロールの組み合せが、弾性ロールと弾性ロールとの組み合せを備えてなる請求項7に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
【請求項12】
前記第二カレンダ加工処理工程において、有効な加工温度条件が130℃以下の温度である請求項7に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
【請求項13】
前記第二カレンダ加工処理工程において、前記弾性ロールの弾性材料が合成樹脂である請求項7または12に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。
【請求項14】
次の工程:
(a)少なくとも二枚のメルトブロー不織布原反が重ね合わせられて、金属ロールにより、原料樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供される第一カレンダ加工処理工程と、
(b)前記第一カレンダ加工処理工程により得られたカレンダ加工処理中間体が、弾性ロールを有するカレンダ機構により、有効な加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ、薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供される第二カレンダ加工処理工程
とを含んでなる方法により製造される電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層キャパシタ用セパレータ(以下、「セパレータ」ということがある。)およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、耐熱性樹脂を原料としてメルトブロー法により製造された不織布(以下、「メルトブロー不織布」ということがある。)複数枚を貼り合わせて薄膜化してなるメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、多様化に伴ない、薄型および高性能な蓄電デバイスが求められている。特に、電気自動車等への用途の拡大により電気二重層キャパシタの大容量化、長寿命化が求められ、さらに改善された急速充放電可能な電気二重層キャパシタの開発が切望されている。
かかる電気二重層キャパシタは、正極および負極からなる電極対と、その両極間に配置されたセパレータと、セパレータを含浸する電解液を含む基本構造を有しており、かかるセパレータの性能が電気二重層キャパシタの性能に大きく作用することから、セパレータについて、従来から多数の提案がなされている。例えば、特許文献1には、繊維径が4μm以下の極細繊維と、繊維径が7μm以上の太繊維とを含む繊維層を備えてなる電気二重層キャパシタ用セパレータが開示されている。そして、かかるセパレータによれば、高い圧力が加えられたとしても太繊維の存在により、セパレータの破断を防止することができ、ある程度の空隙を確保することができると共に、極細繊維を含んでいることによって、イオン性溶液の保持性を確保できる旨の記載がある。
また、特許文献2には、ガラス繊維含有層とセルロース繊維層の2層構造の不織布からなる電気二重層キャパシタ用セパレータが開示されている。
【0003】
しかしながら、前記の通りの先行技術によれば、セパレータの厚み方向の3次元空間における繊維と細孔の分散状態の制御については、未だ十分な開示はなく、また、従来の電気二重層キャパシタ用セパレータとして、セルロース系繊維およびガラス繊維が使用されているが、かかる繊維の極細繊維を用いただけでは、3次元空間の細孔分布を有効に制御することができず、その結果、電解液保液性が低く、内部抵抗も高くなるという問題が指摘されてきた。また、これらの材質は、機械的強度が弱いという難点もあった。
【0004】
また、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)のように製造方法の異なる不織布を積層したセパレータも提案されているが、嵩高い不織布を薄膜化および層間密着性の向上のために高温によるカレンダ加工を行うと、表面の細孔分布はある程度制御できても、過度に押しつぶされた部分が生じ、セパレータとして有効な3次元構造を実現することができない。よって、透気性が低く、内部抵抗の高いセパレータが形成されるという問題があった。また、かかる不織布積層体は、製造方法の異なる不織布を同時に圧着処理しているため高温下においては収縮率が大きいという難点もあった。さらに、不織布の性質上、構成繊維の配置構造に濃淡が生じ、基材物性が不均一となることから、前記濃淡を軽減することが求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-45752号公報
【文献】特開2017-168743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、電気絶縁性を有し、正極および負極間の短絡を防止することができると共に、同時に、電解液による濡れ性、電解液の保液性に優れるという相反する特性を両立させることが可能であり、構成繊維の配置構造上において生ずる濃淡が軽減され、特性が均一化されたメルトブロー不織布積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、前記の発明の課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、メルトブロー不織布積層体から構成されるセパレータの表面および厚み方向の3次元空間における繊維と空孔の分散状態、つまり、適切なサイズの繊維および空孔をバランスよく配置させることができれば、本発明の前記課題を解決できることに着目し、かかる知見に基づいて本発明の完成に想到するに至った。
すなわち、課題の解決に鑑み、前記の通り、適切なサイズの繊維と空孔とのバランスの良い配置を実現するため耐熱性樹脂を原料樹脂として採用して製造したメルトブロー不織布薄膜の少なくとも二層からなる積層体であって、目付が50g/m2以下に調整され、厚みが50μm以下であり、平均繊維径が0.5~15μmに制御されると共に細孔径分布が下記の通りの特定範囲に設定されることにより、前記の相反する特性を両立させることができる。そして、かかる特性を両立することができるメルトブロー不織布薄膜積層体は、金属ロールによる高温条件下の第一カレンダ加工処理と弾性ロールを備えた第二カレンダ加工処理の二段階のカレンダ加工処理により得ることができることを見出した。特に、メルトブロー法により製造される不織布のみの不織布薄膜積層体を用いることにより、安定した細孔径分布を維持することができ、前記特性の安定化を図ることができることから、生産工程においても歩留まりも良く、低コスト生産の実施が可能となり産業上の利用価値も極めて大きいものがある。
【0008】
かくして、本発明の要旨は、次の(1)~(14)に示す通りのものである。
尚、本明細書において、(1)~(6)に係る発明を第1の発明、(7)~(13)に係る発明を第2の発明、(14)に係る発明を第3の発明ということがある。

(1)少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜が積層されてなるメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータであって、
前記メルトブロー不織布薄膜積層体を構成する繊維の平均繊維径が0.5~15μmであり、ガーレー透気度が1~40s/φ10/300ccであり、熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後において、MD方向およびCD方向のいずれかの形状の収縮変化を、それぞれ寸法変化率で表わして、1.2%以下であり、電解液保液率が260%以上である
ことを特徴とする電気二重層キャパシタ用セパレータ。

(2)前記メルトブロー不織布薄膜積層体を構成する少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜の各層の構成繊維の平均繊維径が互いに実質的に同一または異なるものである前記(1)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。

(3)前記メルトブロー不織布薄膜積層体が、これを構成する少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜の各層間の界面に存在する繊維の部分的な熱融着により形成された層間密着加工体である前記(1)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。

(4)前記メルトブロー不織布薄膜積層体が有する全細孔のうち、細孔径3~7μmの範囲を占める細孔の割合が50%以上である前記(1)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。

(5)前記メルトブロー不織布薄膜積層体が、次の1~5を充足する細孔径分布を有する前記(1)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
1.最大細孔径: 15μm以下
2.最小細孔径: 3μm以下
3.平均細孔径: 8μm以下
4.最大細孔径/平均細孔径: 2.00未満
5.最大細孔径/最小細孔径: 5.00以上

(6)前記メルトブロー不織布薄膜積層体の構成材質が、耐熱性樹脂である前記(1)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【0009】
(7)少なくとも二層のメルトブロー不織布薄膜が積層されてなるメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法であって、
(a)少なくとも二枚のメルトブロー不織布原反が重ね合わせられて、金属ロールを有するカレンダ機構により、原料樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下において、カレンダ加工に供される第一カレンダ加工処理工程と、
(b)前記第一カレンダ加工処理工程により得られたカレンダ加工処理中間体が、少なくとも一個の弾性ロールを有するカレンダ機構により、有効な加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ、薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下において、カレンダ加工に供される第二カレンダ加工処理工程と
を少なくとも含有してなるカレンダ加工処理工程を有することを特徴とするメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。

(8)前記第一カレンダ加工処理工程において、前記ガラス転移点以上の加工温度条件が130℃以上の温度である前記()に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。

(9)前記第一カレンダ加工処理工程において、前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件のうち、金属ロールの線圧が200N/mm以下である前記(7)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。

(10)前記第二カレンダ加工処理工程において、前記カレンダ機構が、少なくとも一対の加工ロールの組み合せを含み、前記一対の加工ロールの組み合せが、弾性ロールと金属ロールとの組み合せを備えてなる前記(7)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。

(11)前記第二カレンダ加工処理工程において、前記カレンダ機構が、少なくとも一対の加工ロールの組み合せを含み、前記一対の加工ロールの組み合せが、弾性ロールと弾性ロールとの組み合せを備えてなる前記(7)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。

(12)前記第二カレンダ加工処理工程において、有効な加工温度条件が130℃以下の温度である前記(7)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。

(13)前記第二カレンダ加工処理工程において、前記弾性ロールの弾性材料が合成樹脂である前記(7)または(12)に記載の電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法。

(14)次の工程:
(a)少なくとも二枚のメルトブロー不織布原反が重ね合わせられて、金属ロールにより、原料樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供される第一カレンダ加工処理工程と、
(b)前記第一カレンダ加工処理工程により得られたカレンダ加工処理中間体が、少なくとも一個の弾性ロールを有するカレンダ機構により、有効な加工温度条件および前記不織布原反の構成繊維の潰れが抑制され、かつ、薄膜化が可能な条件に調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供される第二カレンダ加工処理工程とを含んでなる方法により製造される電気二重層キャパシタ用セパレータ。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記の通りの構成からなるものであり、第一の発明によれば、メルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータは、特定の細孔径分布を有することから、厚みが小さいにも拘らず、不織布の構成繊維に著しい変形が生ずることが抑制され、また交絡部分のフィルム化による透明班の形成もなく、ガーレー透気度が良好な範囲にあり、高温における熱収縮率も小さいという効果を奏する。
また、同一または異なる平均繊維径の繊維を有する不織布層の積層組み合わせにより、特定の細孔径分布を有するものとなり、特に、電解液の吸液性および保液性を改善することができる。かかる特性を有するメルトブロー不織布薄膜積層体をセパレータとして用いることにより電気二重層キャパシタ(EDLC)への適用に成功したものであり、これにより、電気二重層キャパシタの安定した性能を実現し、安全性を確保することができ、その生産性向上を図ることができる。
第二の発明によれば、第一カレンダ加工処理と第二カレンダ加工処理工程との二工程の組合せによるカレンダ加工処理工程が提供され、特に、メルトブロー不織布原反を少なくとも二枚重ね合わせて、かかる二工程のカレンダ加工処理工程に供することにより、後述の実施例、比較例において示すように、はじめて、第一の発明および第二の発明により得られる前記の通りの性能を有するメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータを提供することができるなど、著しく顕著な効果を奏することができる。
さらに第三の発明によれば、第一の発明および第二の発明の効果と同等の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1により製造されたPBTメルトブロー不織布薄膜二層積層体の細孔径分布を示すグラフである。
図2】実施例2により製造されたPBTメルトブロー不織布薄膜三層積層体の細孔径分布を示すグラフである。
図3】比較例1の方法により製造されたPBT不織布薄膜単層体a(単層比較品(a))の細孔径分布を示すグラフである。
図4】比較例4の方法により製造されたPBT不織布薄膜単層体d(単層比較品(d))の細孔径分布を示すグラフである。
図5】比較例5の方法により製造されたPP不織布薄膜単層体e(単層比較品(e))の細孔径分布を示すグラフである。
図6】バブルポイント法により平均細孔径、最大細孔径および最小細孔径を求めるための圧力-透過流量曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、詳細に説明する。
A.第1の発明
1.メルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータ:
第1の発明によれば、耐熱性樹脂を構成材料とするメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータが提供される。かかるメルトブロー不織布薄膜積層体は、少なくとも次の物性値を有するものである。
すなわち、
・厚みが50μm以下であり、
・目付が5~100g/m2であり、
・平均繊維径が0.5~15μmであり、
・ガーレー透気度が1~40s/φ10/300ccであり、
・熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後においても、MD方向およびCD方向のいずれかの形状の収縮変化を、それぞれ寸法変化率で表して1.2%以下である。
さらに、前記の通り、厚みが50μm以下に薄膜化されたにも拘らず、電解液吸液性能および電解液保液性能に優れたものであり、具体的には後述の実施例および表1で示す通り、電解液吸液速度15秒以下、電解液保液率280%以上に達するものも実現可能である。
また、本発明に係る電気二重層キャパシタを構成するメルトブロー不織布薄膜の開孔度は、SEMで観察されたメルトブロー不織布薄膜積層体を構成する繊維の隙間に存在する細孔の存在により十分維持されたものである。
【0013】
2.メルトブロー不織布薄膜積層体の構造:
(1)特性
本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体は、少なくとも二層の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布積層加工体である。特に、少なくとも二層以上の不織布層が積層され貼り合せられてなる不織布積層加工体が、単層に比較して下記の如く特色を有する効果を奏する点から用途に応じて採用することが好ましい。かかるメルトブロー不織布薄膜積層体としては、(A)同一物性の不織布層が貼り合せられてなるものと、(B)物性のうち、少なくとも平均繊維径の異なる繊維を有する不織布層が貼り合せられてなるものを挙げることができる。
【0014】
前記の「貼り合せられてなる不織布積層加工体」は、後述の通り、例えば、高温条件下の第一カレンダ加工処理及び特殊条件下の第二カレンダ加工処理により不織布層が互いに圧着形成されることにより得られた加工品を包含するものである。圧着形成により、不織布層を構成する繊維の一部が互いに熱融着により結合された層間密着加工体が形成される。熱融着部分は、不織布層の各界面に存在する繊維の50%以下を占めるものでもよく、不織布薄膜積層体の形成維持の観点から適宜選択することができる。
(A)同一物性の不織布層が貼り合せられてなる不織布積層加工体は、少なくとも二層の各層の不織布層の構成繊維の平均繊維径の値が実質的に同一の場合であり、その他の物性値、例えば、目付、引張強度、引張伸度等の少なくとも二種以上の物性値が実質的に同一のものでもよい。かかる構成によれば、例えば、平均繊維径が同一の場合、特に細繊維同士の積層体の貼り合せにより、単層と比較して物性値のバラツキが均一化され、電気二重層キャパシタ用セパレータに使用した場合、短絡を防止することができると共に、引張強度の向上および電解液保液性の改善を図ることができる。
【0015】
一方、(B)異なる平均繊維径の繊維を有する少なくとも二層からなる不織布層の貼り合わせによれば、得られたメルトブロー不織布薄膜積層体は、実施例にも示すように引張強度およびガーレー透気度が改善され、また、電解液の吸液性能および保液性能も良好とすることができる。特に、細繊維と太繊維をそれぞれ有する不織布層の組み合せにより得られる貼り合せによる不織布積層加工体は、引張強度、ガーレー透気度、電解液吸液性能および保液性能を改善することができる。
【0016】
前記細繊維としては、具体的には、平均繊維径0.5~10μm、好ましくは1~5μm、さらに好ましくは、1.5~4μmのものであり、一方、前記太繊維としては具体的には、平均繊維径1~15μm、好ましくは、1.5~10μm、さらに好ましくは、2~5μmであり、これらの平均繊維径が互いに重複することがない細繊維と太繊維を有する不織布層の組合せが好ましい。
【0017】
(2)メルトブロー不織布薄膜積層体の細孔構造
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体は、その表面と厚み方向の三次元空間内に配置された繊維群と、前記繊維群の配置により、その間隙部に形成された細孔とから形成されたものである。かかるメルトブロー不織布薄膜積層体は、材質が合成樹脂であることから、電気絶縁性を有すると共に、その細孔構造から、電解液保液性のほか、相反する特性を両立させたものであり、基材物性を均一化させたものであって、下記の通り、少なくとも次の2点の制御された細孔径分布を有するものである。
【0018】
ア.第一点は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体は、その全細孔のうち、細孔径3~7μmの範囲の細孔が50%以上を占める点である。
前記細孔径3~7μmの範囲の細孔の割合は、好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上であり、細孔径の均一性が極めて高いものである。
後掲の図1および図2には、それぞれ実施例1および実施例2に係るPBTメルトブロー不織布薄膜積層体二層品および三層品の細孔径分布が示されているが、かかる細孔径分布によれば、細孔径の大きさが極めて制御された点にあり、その結果、外観ムラの形成が制御され、透気性が維持されると共に、電解液保液性に優れたものである。
一方、前記細孔径3~7μmの範囲以下においては、特性のバラツキは軽減されるが、透気性が低下するのに対し、前記細孔径3~7μmの範囲以上においては、透気性は改良されるが、特性のバラツキは大きくなり、外観、その他の物性が不安定となる問題が生ずる。
また、図3図4および図5には、比較例1、比較例4および比較例5により、それぞれ製造された不織布単層体の細孔径分布を示したが、図3で示すように、比較例1に係るPBTメルトブロー不織布単層体の細孔径は広範にバラツキを示し、実施例1および2のメルトブロー不織布積層体と対比して細孔径の均一性が著しく低いことが示された。
また、図4により、比較例4に係るメルトブロー不織布単層体の細孔径分布も、図1および図2で示すように、本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体が有する3~7μmのピーク範囲を逸脱するものである。
【0019】
イ.第二点は、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体は、下記の細孔径分布の(1)~(5):
(1)最大細孔径: 15μm以下
(2)最小細孔径: 3μm以下
(3)平均細孔径: 8μm以下
(4)最大細孔径/平均細孔径: 2.00未満
(5)最大細孔径/最小細孔径: 5.00以上
を充足したものである点にあり、特に、(4)の「最大細孔径/平均細孔径」が2.00未満である点、および(5)の「最大細孔径/最小細孔径」が5.00以上である点に特異性がある。
【0020】
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の最大細孔径は、15μm以下であることが好ましい。最大細孔径が15μm以下であると、細孔径の均一性が優れたものとなり、電気絶縁性を確保し、短絡の可能性を制御することができる。また、電解液保液性を改良することができ、その観点から、さらに好ましくは13μm以下であり、特に好ましくは11μm以下である。
【0021】
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の最小細孔径は、3μm以下であることが好ましい。最小細孔径が3μm以下であると、電解液保液性を維持することができると共に、短絡の可能性の低減を図ることができる。最小細孔径の下限値は特に限定されないが、電解液保液性の観点からは、1μm以上、好ましくは1.5μm以上である。
【0022】
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の平均細孔径は、8μm以下であることが好ましい。平均細孔径が8μm以下であると短絡の可能性が低減される。また8μm以下であると電解液保液性にも優れる。
【0023】
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の平均細孔径に対する最大細孔径の比(最大細孔径/平均細孔径)は、2.00未満であり、好ましくは、1.50以上である。最大細孔径/平均細孔径が2.00未満であり、1.50以上であると、細孔径分布が特定細孔径範囲において均一となり、電解液保液性が予期に反して著しく改善されることが多数の実験の結果から見い出された。電解液保液性の観点から、好ましくは、1.90以下、さらに好ましくは1.85以下、特に好ましくは1.75以下であり、1.50以上の範囲である。
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の最小細孔径に対する最大細孔径の比(最大細孔径/最小細孔径)は、5.00以上である。最大細孔径/最小細孔径が5.00以上であると、細孔径分布が、特定の細孔径の範囲内において均一となり、電解液保液性が予期に反して著しく改善される。電解液保液性の観点からは、好ましくは、5.30以上、さらに好ましくは5.50以上、特に好ましくは5.70以上である。一方、上限値は7.00であり、好ましくは、6.00以下である。
【0024】
3.メルトブロー不織布薄膜積層体の構成材質
本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体の構成材質は、耐熱性樹脂を含有する成分であり、2種以上の耐熱性樹脂の混合体のものでもよく、メルトブロー不織布原反の成分に由来する。具体例としては、次の通りである。
【0025】
本発明に係るメルトブロー不織布原反の原料樹脂としては、高温安定性を維持する観点から耐熱性樹脂が選択される。
耐熱性樹脂としては、融点200℃以上の熱可塑性合成樹脂が好適であり、具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアリーレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリフタルアミド、ポリオレフィン等を挙げることができる。
【0026】
前記ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと略すことがある。)、ポリブチレンイソフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリ(1,6-ヘキサメチレンテレフタレート、ポリ(エチレン-2,6-ナフタレート)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンメチレンテレフタレート)等が挙げられる。これらは単独重合体でもよく、または、共重合体、またはこれらの混合物でもよい。これらのポリエステルの中では、特にポリブチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレートとポリブチレンイソフタレートとの混合物等が本発明に関するメルトブロー不織布薄膜積層体の原料樹脂として好ましく、これらを用いることにより、メルトブロー紡糸性を向上し、メルトブロー不織布薄膜積層体の引張強度を増大させることができる。また、ポリブチレンテレフタレートの数平均分子量は、5,000~20,000のものが好ましく用いられる。さらに、IV値0.6~0.9のものが好適である。
【0027】
前記ポリアミド(以下、PAと略すことがある。)としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6-66共重合体、ナイロン12、ナイロン6-12共重合体、ナイロン46等が挙げられる。メルトブロー不織布では、なるべく低い分子量のものが紡糸性がよく、細い繊維が得られるので好ましく、例えば、10,000~25,000の数平均分子量のPAが好ましい。
【0028】
前記ポリアリーレンスルフィドとしては、耐熱性、耐薬品性に優れた樹脂で、構成単位の90モル%以上が[C6H4S]で構成される重合体が挙げられ、特に、溶融粘度(V6)が200~500ポイズのポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略すことがある。)が好ましい。
【0029】
ポリフタルアミドとしては、特に限定されるものではないが、テレフタルアミド単位およびイソフタルアミド単位等を含有するものであり、例えば、ヘキサメチレンテレフタルアミド―イソフタルアミド―アジポアミドターポリマー(モル比65:25:10)等を例示することができる。メルトブロー不織布薄膜積層体の原料樹脂として溶融粘度が、100~1000Pasであるものを挙げることができる。
また、前記ポリオレフィンとしては、ポリメチルペンテン,環状オレフィンポリマー等が挙げられる。
【0030】
4.メルトブロー不織布薄膜積層体の物性
次に、本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体が具備すべき物性値について、説明する。
尚、かかる物性値は、メルトブロー不織布薄膜積層体が、二層以上の物性値の異なる不織布層薄膜から構成されるものである場合は、かかる不織布薄膜層全部の平均値である。
【0031】
(1)平均繊維径
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の各不織布層の繊維の平均繊維径は、0.5~15μm、好ましくは1.0~10μm、さらに好ましくは1.5~8μmである。平均繊維径が0.5μm未満では、引張強度が弱くなるばかりではなく、セパレータとしては、電気二重層キャパシタの内部抵抗が大きくなりすぎるという難点が生ずる。一方、平均繊維径が15μmを超えると、セパレータとしては、内部短絡の危険性が高まるおそれが生ずる。
【0032】
(2)目付
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の目付は、5~100g/m2、好ましくは7~50g/m2、さらに好ましくは10~40g/m2である。目付が5g/m2未満では、引張強度が不足することから、電池のアセンブリでの信頼性が低下し、セパレータとしては、ショ-トが起こりやすいため好ましくない。一方、目付が100g/m2を超えると、セパレータとしては、内部抵抗が上昇するおそれがある。
【0033】
(3)厚み
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の厚みは、電気二重層キャパシタ用セパレータおよびリチウム二次電池用セパレータとして50μm以下であり、好ましくは1~45μm、特に好ましくは、5~40μm、さらに好ましくは10~35μmである。厚みが1μmを超えると、セパレータとして、内部短絡の危険性が抑制され、一方、50μmを超えると、電池容量が低下するおそれがある。
【0034】
(4)ガーレー透気度
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体のガーレー透気度は、1~40s/φ10/300cc、好ましくは5~30s/φ10/300ccである。ガーレー透気度が1s/φ10/300cc未満であると、セパレータとして内部短絡の危険性が高まり、一方40s/φ10/300ccを超えるとセパレータとして内部抵抗が大きくなるという問題が生ずる。
尚、「ガーレー透気度」は、後述のように、JIS P8117(2009)「紙及び
板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法」(中間領域)-ガーレー法」に準じた測定方法により得られる結果を意味するものである。
【0035】
(5)引張強度
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の引張強度は、2~50N/25mm幅であり、好ましくは5~40N/25mm幅である。引張強度が2N/25mm幅未満であれば、電池のアセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張強度が50N/25mm幅を超えると、極端に伸度が低下し、アセンブリの際に自由度の低下から不具合が生じやすくなるおそれがある。
【0036】
(6)引張伸度
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の引張伸度は、1~100%であり、好ましくは5~80%である。引張伸度が1%未満であれば、アセンブリ時に切れが生じ易くなる。一方、引張伸度が100%以上であると、ネッキングが起こりやすく、安定してアセンブリすることができにくくなるおそれが生ずる。
【0037】
(7)熱収縮率
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の高温下での熱収縮率は、120℃で1時間の加熱環境下で1.0%以下、好ましくは0.5%以下であり、150℃で1時間加熱環境下では1.2%以下、好ましくは1.0%以下である。この値は少なくともMD方向またはCD方向の片方、より好ましくは両方を満たすことが望ましい。熱収縮率が高いと高温環境下での電気二重層キャパシタの異常発生時による内部の昇温により端部のセパレータが収縮し、正極、負極の接触により、内部短絡などの問題が生じることがある。
【0038】
(8)電解液吸液率
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の電解液吸液性は、細孔構造から前記セパレータとして電解液、例えば、プロピレンカーボネートを円滑に含浸可能な性能を有するものであり、本発明によれば、後述の測定方法により求められるように電解液吸液速度が20秒以下、さらには10秒以下を示すものを提供することができる。
(9)電解液保液率
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体は、その構成繊維の分散状態および細孔構造の特異性からセパレータとして電解液の吸液後の保液性に優れており、後述の測定方法により260%以上を示し、360%以上、さらには380%程度のもを提供することができる。
(10)静電気
本発明に係る電気二重層キャパシタを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体の静電気量は、表1に示すように小さく、製造ラインの貼り付き等が軽減され、電池生産性向上に寄与することができる。
以上説明したように第1の発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布積層体は、耐熱樹脂からなる少なくとも2層以上のメルトブロー不織布が積層されてなる積層体であって、
全細孔のうち、孔径3~7μmの範囲を占める細孔の割合が50%以上、好ましくは、60%以上であり、
かつ、下記の(1)~(5):
(1)最大細孔径: 15μm以下
(2)最小細孔径: 3μm以下
(3)平均細孔径: 8μm以下
(4)最大細孔径/平均細孔径: 2.00未満
(5)最大細孔径/最小細孔径: 5.00以上
を充足する細孔径分布を有するものであり、
少なくとも次の物性;
・厚みが50μm以下、
・目付が5~100g/m2、
・平均繊維径が0.5~15μm、
・ガーレー透気度が1~40s/φ10/300cc、
・熱収縮率が、150℃で1時間の加熱条件下における熱処理後においても、MD方向およびCD方向のいずれかの形状の収縮変化をそれぞれ寸法変化率で表わして、1.2%以下である。
かかるメルトブロー不織布薄膜積層体は、一つの方法として、次のカレンダ加工処理工程を経て製造することができる。
すなわち、(a)メルトブロー不織布原反を積層して得られる積層体を、金属ロールにより前記耐熱性樹脂のガラス転移点以上の加工温度条件および前記メルトブロー不織布原反の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する第一カレンダ加工処理工程と、
(b)前記第一カレンダ加工処理工程により得られたカレンダ加工処理中間体を、弾性ロールにより、有効な加工温度条件および前記不織布の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件下においてカレンダ加工に供する第二カレンダ加工処理工程とからなるカレンダ加工により、少なくとも前記物性を有するメルトブロー不織布積層体を得ることができる。
【0039】
B.第2の発明
第2の発明によれば、メルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法が提供される。
すなわち、耐熱性樹脂を原料樹脂として製造されるメルトブロー不織布原反が積層され、薄膜化されてなるメルトブロー不織布薄膜積層体から構成される電気二重層キャパシタ用セパレータの製造方法であって、
前記メルトブロー不織布が積層され、少なくとも
(a)第一カレンダ加工処理工程
および
(b)第二カレンダ加工処理工程
に供することを特徴とするメルトブロー不織布積層体の製造方法が提供される。
尚、ここで、「メルトブロー不織布原反」とは、メルトブロー法により製造された不織布であって、不織布薄膜積層体に薄膜化される対象の不織布を意味する。
【0040】
1.メルトブロー不織布原反
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布積層体の製造基材として使用されるメルトブロー不織布の物性値および、かかる物性値を有するメルトブロー不織布原反の製造方法について以下に説明する。
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布原反は、耐熱性樹脂を原料樹脂としてメルトブロー法により製造される。
耐熱性樹脂としては、前記の通りであり、かかる耐熱性樹脂から適宜選択して使用することができるが、本発明の目的には前記の通りポリブチレンテレフタレートが好適であり、以下に説明するメルトブロー不織布原反の製造条件については、耐熱性樹脂としてポリブチレンテレフタレートを使用する場合をベースとしたものである。
【0041】
メルトブロー不織布原反は、本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体の製造にとって重要な要素であり、少なくとも次の物性を有していることが好ましい。
(1)目付
本発明に係るメルトブロー不織布原反の目付は、4~80g/m2であり、好ましくは、5~50g/m2であり、さらに好ましくは6~40g/m2である。目付が4g/m2に達しないとカレンダ加工処理後に得られるメルトブロー不織布薄膜積層体の引張強度が不足し、一方、目付が80g/m2を超えると、ケバ立ちが多くなり、安定的に不織布薄膜積層体を製造することが困難となるなどの問題が生ずるおそれがある。
(2)厚み
本発明に係るメルトブロー不織布原反の厚みは、原料樹脂の種類、製造条件等により変動するが、50~800μm、好ましくは60~400μm、さらに好ましくは、70~300μmであり、特に本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータとしては、300μm以下、特に好ましくは、250μm以下の厚みに調整されたメルトブロー不織布原反が好ましい。
(3)通気度
本発明に係るメルトブロー不織布原反の通気度は、10~400cc/cm2/sであり、好ましくは、20~300cc/cm2/sである。通気度が10cc/cm2/s未満の場合は、第一カレンダ加工処理後に得られるメルトブロー不織布薄膜積層体のガーレー透気度が高くなり、40s/φ10/300ccを超え、一方、通気度が400cc/cm2/sを超えると、メルトブロー不織布薄膜積層体のガーレー透気度が低下し、1s/φ10/300cc未満となるなど、前記の如く、特定範囲のガーレー透気度を有するメルトブロー不織布薄膜積層体を製造することができないおそれが大きくなるという問題が生ずる。
(4)引張強度
本発明に係るメルトブロー不織布原反の引張強度は、2~50N/25mm幅の引張強度を有するメルトブロー不織布薄膜積層体が提供されるように、少なくとも1N/25mm幅以上であり、好ましくは、3N/25mm幅以上である。メルトブロー不織布原反の引張強度が1N/25mm幅に達しないと、十分な引張強度を有するメルトブロー不織布薄膜積層体を得ることができないという問題が生ずる。
(5)引張伸度
本発明に係るメルトブロー不織布原反の引張伸度は、1~150%、好ましくは、10~100%である。
(6)平均繊維径
本発明に係るメルトブロー不織布原反を構成する繊維の平均繊維径は、0.5~15μmであり、好ましくは、1~10μmであり、さらに好ましくは1.3~5μmである。
【0042】
2.メルトブロー方法
本発明に係るメルトブロー不織布原反を製造するためのメルトブロー方法については、特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第3650866号,米国特許第3978185号(エクソンモービル社)に記載の方法を用いることが好ましく、これらに準じた方法として以下に記載のメルトブロー方法を採用することができる。
メルトブロー方法として、溶融した原料樹脂を、一列に配列した複数のノズル孔から溶融ポリマーとして吐出させ、オリフィスダイに隣接して設置された噴射ガス口から高温高速の空気を噴射させて吐出された溶融ポリマーを細繊維化し、繊維流を捕集する方法が採用される。具体的には、次の方法が採用される。
【0043】
原料樹脂を210~380℃の押出機温度で溶融した後、250~380℃に設定したダイに送り込み、ダイノズルから吐出させると同時に、260~380℃の高温エアブローガスにより、延伸して微細繊維化し、ノズルから離れた位置に設置したコレクタに補集する。
【0044】
メルトブロー装置ダイにおいて、ノズル孔径は、0.1~1mmφが好ましく、0.2~0.8mmφがさらに好ましい。ノズル個数は、5~20個/cmであるのが好ましく、10~15個/cmがさらに好ましい。ノズル孔径が0.1mmφ未満では、吐出樹脂圧力が高くなり、一方、ノズル孔径が1mmφを超えると、繊維を細くすることが出来ない。また、ノズル個数が5個/cm未満では、原料樹脂の吐出圧力が高くなり、一方、ノズル個数が20個/cmを超えると、繊維同士が融着しすぎて、不織布の均一性を失うこととなる。
【0045】
また、メルトブロー法の製造条件としては、耐熱性樹脂、例えば、ポリブチレンテレフタレート樹脂を原料とするメルトブロー不織布の製造において、押出温度は、210~350℃、好ましくは230~330℃、また、ダイの温度は、250~350℃、好ましくは280~330℃、さらに、高速空気温度は、260℃~380℃、好ましくは300~350℃である。押出機・ダイおよびエア温度が前記範囲を下回ると、吐出樹脂圧力が高くなり、また、細い繊維が得られない。一方、前記範囲を超えると、樹脂のゲル化が促進され、劣化する。また、コンベアネットを傷つけるばかりでなく、できた不織布のコンベアネットからの剥離性が悪く、安定的に生産することが困難である。樹脂吐出量は、0.05~3g/min/hole、好ましくは0.1~1g/min/holeである。樹脂吐出量が少ないと、吐出樹脂圧力が前記範囲を下回るとともに、均一な不織布が得られず、一方、樹脂吐出量が前記範囲を超えると、吐出樹脂圧力が高くなるとともに、細い繊維が得られない。
【0046】
3.カレンダ加工処理
本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体は、次に示す二段階からなるカレンダ加工処理工程により製造される。かかるメルトブロー不織布薄膜の物性値は、下記の通り各加工処理工程の加工温度条件、加工圧力条件(ロール線圧・ロール間クリアランスを含む。)および加工速度条件を選択することにより調整することができる。
【0047】
(a)第一カレンダ加工処理工程
第一カレンダ加工処理工程においては、少なくとも二個の金属ロールの組み合わせからなるカレンダ機構を利用するものであり、具体的には耐熱性樹脂を原料としてメルトブロー方法で製造されたメルトブロー不織布原反が積層されて、金属ロールにより前記耐熱性樹脂のガラス転移点以上の温度条件および前記不織布原反積層体の構成繊維の潰れが抑制されるように調整された加圧条件下においてカレンダ加工処理される。前記金属カレンダロールとしては、通常使用されるものを採用することができるが、特に鋼および鋼と同等の合金材料のものが好ましい。カレンダの形式とロールの配列として、逆L形、Z形、直立2本形等(実用プラスチック用語辞典第151頁((株)プラスチックス・エージ発行))を採用することもできる。
【0048】
耐熱性樹脂のガラス転移点以上の温度としては、耐熱性樹脂の種類にもよるが、ポリエステル系樹脂については130℃以上、好ましくは140℃以上の温度が採用される。温度条件は、組み合わせる二個の金属ロールの両者の加熱温度をそれぞれ設定することにより調整される。
第一カレンダ加工処理における加工温度の上限は、当該耐熱性樹脂の融点以下の温度であり、具体的には融点から30~100℃低い温度を採用することが好ましい。第一カレンダ加工処理により、不織布原反製造時の残留歪が緩和されると共に、原料樹脂の結晶化が促進されるものと推定される。その結果、高温安定性が改善され、高温収縮性の改善を図ることができる。結晶化の定量的な測定は困難であり、測定することは、非実際的でもある。また、加圧条件としては、ロール線圧の他、ロール間に設けられるクリアランスも薄膜化に影響を与える要素として包含される。クリアランスの大きさは第一カレンダ加工処理後のカレンダ加工処理中間体の厚みが所定のレベルになるように、設定されると共に、メルトブロー不織布原反中の繊維の潰れまたは変形が抑制可能なように調整されたものである。ロールの線圧としては、200N/mm以下、好ましくは30~170N/mm、さらに好ましくは50~150N/mmの加工圧力が採用されることが好ましい。
かかるカレンダ加工条件により、メルトブロー不織布薄膜積層体の高温条件下での収縮率が小さく、ガーレー透気度も小さく、内部抵抗の小さいメルトブロー不織布薄膜積層体を得ることができる。ロール間のクリアランスとしては、少なくとも二層のメルトブロー不織布原反層の密着と結晶化促進可能な温度の伝達に必要な範囲で選択することができる。
【0049】
また、加工速度条件としては1~50m/minであり、好ましくは、2~30m/min、さらに好ましくは、3~20m/minである。1m/min未満では生産性が低く、一方、50m/minを超えると歪の緩和・結晶化促進のための熱が十分に伝わらないという問題が生ずる。
【0050】
(b)第二カレンダ加工処理工程
本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体の製造工程の一つの要素である第二カレンダ加工処理工程においては、カレンダ機構として、弾性ロールを使用するものであり、1対の加工ロールの組合せが弾性ロールと弾性ロールとの2個の弾性ロールの組合せ、または、弾性ロールと金属ロールとの組合せを選択することができる。これらの加工ロールの組合せのなかで、特に、金属ロールと弾性ロールとの組合せを利用するものが好ましい。加工ロールと加工ロールとの組合せについては2個のロールからなる一対の組合せのほか4個~6個の複数の組合せも利用することができる。カレンダの形式およびロールの配置については、前記第一カレンダ加工処理工程にて使用可能な形式と同一の形式を採用することができ、金属ロールの配置については金属ロールと弾性ロールを適宜組み合わせればよい。金属ロールとしては、前記の第一カレンダ加工処理工程で使用されるものと同一のものを使用することができ、鋼および鋼と同等の合金材料のものが好ましい。金属ロールと組合せる弾性ロールの材質としては、摩擦係数の高い材質であり、硬質の合成樹脂を材料とするものが好ましく、例えば、合成ゴム等を使用することができる。かかるロールの硬度としては、本発明のメルトブロー不織布薄膜積層体の厚み調整と平滑性の目的からショアD硬度60以上であり、70~90のものが好ましい。
【0051】
第二カレンダ加工処理工程においては、第一カレンダ加工処理工程にて得られたカレンダ加工処理中間体を前記金属ロールと弾性ロールとの間に挟持し、130℃以下、好ましくは120℃以下、さらに好ましくは110℃以下の加工温度条件および前記中間体中の繊維の潰れの制御可能な加圧条件において加工処理する。第二カレンダ加工処理工程において、加工温度の下限値としては、ガラス転移点以上であって、原料樹脂の種類にもよるが、例えば、60℃以上の温度が好ましく、さらに好ましくは80℃以上の温度である。
【0052】
加圧条件としては、加工ロールの線圧のほか、加工ロール間のクリアランスも包含されるが、第二カレンダ加工処理工程においては、形成されるメルトブロー不織布薄膜積層体の厚みが調整されるように加工ロール同士がピンチされた状態とすることが好ましい。加工ロールの線圧としては、15~130N/mmであり、好ましくは20~100N/mm、さらに好ましくは30~70N/mmの加工圧力が採用される。
【0053】
また、加工速度条件は、第一加工処理工程における加工速度条件と同一条件を採用することができる。具体的には、1~50m/minであり、好ましくは2~30m/min、さらに好ましくは3~20m/minである。
【0054】
本発明に係る第二カレンダ加工処理工程において、1対の加工ロールを組合せる各加工ロールに対し、通常、それぞれ加熱されるが、金属ロールと弾性ロールの組合せに対しては、加熱は金属ロールに対して供され、常温の弾性ロールと加熱された金属ロールとの組合せ加工処理が提供される。また、金属ロールの加熱と共に、弾性ロールの加熱も必要に応じて行うことができる。金属ロールおよび弾性ロール共に加熱する場合は、金属ロールについては、40~130℃、好ましくは60~120℃、さらに好ましくは80~110℃、弾性ロールについては、40~200℃、好ましくは50~150℃、さらに好ましくは、80~120℃の温度条件を適宜採用することができる。
かかる弾性ロールを用いた特殊カレンダ加工処理によりメルトブロー不織布薄膜積層体の厚み調整のほか厚みの均一性および表面平滑性の効果を奏することができる。
前記の第一カレンダ加工処理工程および第二カレンダ加工処理工程を経て得られたメルトブロー不織布薄膜積層体は高い開孔度を維持して超薄型であることが可能であり、高温条件下での熱収縮も改善できると共にガーレー透気度も低抵抗度となり、引張強度においても優れた効果を奏する。
【0055】
本発明に係るメルトブロー不織布薄膜積層体の製造方法としてのカレンダ加工処理は、前記の通り第一カレンダ加工処理工程を前段とし、第二カレンダ加工処理工程を後段に設定することにより、前記の通りの効果を奏するものであり、第二カレンダ加工処理工程を前段とし、第一カレンダ加工処理工程を後段としたのでは、最初の加工段階で、不織布薄膜積層体の厚みが設定されてしまい、後段の金属ロール間に隙間のある加工処理においては加工処理対象物が薄すぎて加工ロールへの接触がゆるやかになり、高温の熱による結晶化を十分に促進させることができず、また、残留歪の緩和も後段にて行われることから、加工製品たる不織布薄膜積層体が幅方向において緩和して縮むという難点が生じ、形状の問題から製品として使用することができないという問題があり、本発明が求める品質のメルトブロー不織布薄膜積層体を得ることができない。
【0056】
C.第3の発明
第3の発明によれば、前記第2の発明に係る第一加工処理工程と、第二加工処理工程とを少なくとも含んでなる方法により製造された電気二重層キャパシタ用セパレータが提供される。
かかるプロダクトバイプロセス発明については、第一加工処理工程により、メルトブロー不織布原反の製造時に発生した残留歪が緩和され、同時に原料樹脂成分の結晶化が進行したメルトブロー不織布薄膜積層体が形成されるが、かかる残留歪の緩和および結晶化の測定および定量化は、技術的には完全には不可能であり、また、仮に可能であったとしても、それらを実施することは、労力、時間の観点から非実際的であることから、プロダクトバイプロセス発明として保護されるべきものである。
本発明に係る電気二重層キャパシタ用セパレータを構成するメルトブロー不織布薄膜積層体は、前記の如き特性を有するが、残留歪の緩和および結晶化との具体的な関連については、立証データは得られていないという事情がある。
かかる観点から、第3の発明であるプロダクトバイプロセスによる発明は認められるべきものと指摘されている。
【実施例
【0057】
以下、本発明について実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は、これらの実施例等により限定されるものではない。
なお、実施例および比較例中に記載のメルトブロー不織布原反およびメルトブロー不織布薄膜積層体の各物性値は、それぞれ下記の方法により測定して求めたものである。
1.各種物性値測定方法
【0058】
(1)目付:試料の長さ方向から、100mm×100mmの試験片を採取し、水分平衡状態の重さを測定し、1m2当たりの目付重量に換算して求めた。
【0059】
(2)厚み:試料の長さ方向より、100mm×100mmの試験片を採取し、ダイヤルシックネスゲージで測定した。
【0060】
(3)通気度:試料長さ方向から、100mm×100mmの試験片を採取し、JIS L1096「一般織物試験方法」の「通気性A法(フラジール形法)」に準拠し、フラジール型試験機を用いて測定した。
【0061】
(4)ガーレー透気度:JIS P8117(2009)+に準拠し、測定した。測定装置としてガーレーデンソーメータ(東洋精機社製)を使用し、試料片を直径10mm、面積78.5mm2の円孔に締め付ける。内筒質量567gにより、筒内の空気を試験円筒部から筒外へ通過させる。空気300ccが通過する時間を測定しガーレー値とした。
【0062】
(5)引張強度、引張伸度:JIS L1085「不織布しん地試験方法」の「引張強さ及び伸び率」に準拠し、サンプル幅25mm、つかみ間隔100mm、引張速度300mm/分にて測定した。
【0063】
(6)平均繊維径:試験片の任意な5箇所について電子顕微鏡で5枚の写真撮影を行い、1枚の写真につき20本の繊維の直径を測定し、これら5枚の写真について行い、合計100本の繊維径を平均して求めた。
【0064】
(7)熱収縮率;200mm角の試料の中心および端部にMD方向(長さ方向)、CD方向(幅方向)に100mmの線を引き、120℃および150℃にそれぞれ設定したオーブンで1時間加熱後、線長を測定し、その寸法変化率を求めた。
【0065】
(8)電解液吸液性:JIS L1907「繊維製品の吸水性試験方法」に準拠し、試験片上に10mmの高さからPC(プロピレンカーボネート)を1滴摘下し、液滴が試験片に到達してから液滴の鏡面反射が完全になくなるまでの時間をストップウォッチで測定し、その測定値を電解液の吸液速度とした。
【0066】
(9)電解液保液性:100mm×100mmの試験片を採取し、60分間PC(プロピレンカーボネート)中に浸漬させた後、試験片を取り出し、10分間吊るし放置する。その保液した試験片を天秤にて重量測定し、下記計算式にて保液率を計算した。
保液率計算式:(B)-(A)/(A)×100=保液率(%)
(ただし、式中、(A):試料重量 (B):浸漬後の試料重量)
【0067】
(10)外観:
試料片100cm2中に直径0.5mm以上の透明班の形成の有無によりフィルム化の有無を判定した。
(11)最大細孔径、最小細孔径、平均細孔径の測定方法
平均細孔径及び最大細孔径は、以下に示すバブルポイント法(ASTM F316-86、JIS K3832)により測定した。まず自動細孔径分布測定器(型式「CFP-1200AX」、ポーラス・マテリアルズ社製)に、乾燥した直径25mmのメルトブロー不織布試験片をセットし、一方の面にかける空気圧を徐々に増大させて、空気が乾燥試験片を透過し始めたときの圧力P1を求めるとともに、図3に示すドライ流量曲線を作成し、それから透過流量を1/2としたハーフドライ流量曲線を作成した。同様に、表面張力16dyne/cmの溶媒(商品名「POREWICK」、ポーラス・マテリアルズ社製)で細孔を満たした直径25mmのメルトブロー不織布試験片の一方の面にかける空気圧を徐々に増大させて、空気が湿潤試験片を透過し始めたときの圧力P2を求めるとともに、図6に示すウェット流量曲線を作成した。
平均細孔径Davは、ハーフドライ流量曲線とウェット流量曲線との交点における圧力Pcrossから、下記式により求めた。
Dav = 4γcosα / (Pcross-P1 )
[ ただし、γ は溶媒の表面張力であり、α はポリブチレンテレフタレートに対する溶媒の接触角である。]
最大細孔径Dmaxは、下記式により求めた。
Dmax = 4γcosα / (P2 -P1)
最小細孔径Dminは、ウェット流量曲線とドライ流量曲線が一致した時の圧力値を上記Dmaxを表した式であるP2に代入することによって求めた。
(12)細孔径分布グラフの作成方法
細孔径の分布を調べるため、細孔径の測定によって得られたデータを0.5μm単位の区間で区切り、各区間の度数を集計して、ヒストグラムを作成した。
(13)静電気
試験片に対し、シシド静電気社製のスタチロンDZ4を直角30mmの距離で当てて赤色LEDの焦点を合わせて焦点が合った際の極性値を確認することにより測定する。
【0068】
2.メルトブロー不織布原反の製造用原料樹脂
メルトブロー不織布原反の製造用原料樹脂等は、下記のものを使用した。
・ポリブチレンテレフタレート(PBT);融点225℃(ポリプラスチックス社製)
・ポリプロピレン(PP);融点165℃(日本ポリプロ社製)
・ポリメチルペンテン(PMP);融点232℃(三井化学社製)
【0069】
実施例1
本明細書段落[0042]に記載のメルトブロー法により、原料樹脂として前記ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」ということがある。)を使用し、PBTメルトブロー不織布原反(A)および(B)をそれぞれ製造した。具体的には、原料樹脂を290℃の押出機温度で溶融し、300℃に設定したダイに送り込み、ダイノズルから吐出させると同時に、310℃の高温エアブローガスにより延伸して微細繊維化し、ノズルから離れた位置に設置したコレクタに捕集した。ノズル口径、吐出量等は、溶融温度、ダイ温度と共に所望の不織布原反が得られるように適宜選択した。
前記製造方法により製造された下記の平均繊維径1.8μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反(A)と、平均繊維径1.8μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反(B)の二種類のメルトブロー不織布原反を用意した。

PBTメルトブロー不織布原反(A)
目付(g/m2): 8
厚み(μm): 86
通気度(cc/cm2/s): 113.4
引張強度(N/25mm幅): 4.7
引張伸度(%): 32.8
平均繊維径(μm): 1.8

PBTメルトブロー不織布原反(B)
目付(g/m2): 12
厚み(μm): 103
通気度(cc/cm2/s): 70.6
引張強度(N/25mm幅): 5.5
引張伸度(%): 37.3
平均繊維径(μm): 1.8

前記のメルトブロー不織布原反(A)とメルトブロー不織布原反(B)とを重ね合わせて、150℃にそれぞれ加熱された二個の金属ロール/金属ロールの間に挟持し、加圧条件のうち、ロール圧をロールの線圧として130N/mmの圧力条件下で第一カレンダ加工処理に供した。金属ロール間には、第一カレンダ加工処理後のカレンダ加工処理中間体の厚みが約50~70μmのレベルとなるように調整されたクリアランスを設けた。金属ロールの材質としてはスチールを用いた。
【0070】
前記の第一カレンダ加工処理により不織布原反(A)と不織布原反(B)の各層の界面に存在する繊維の一部が熱融着することにより得られた二層の密着層を有するカレンダ加工処理中間体を、弾性ロールと、100℃に加熱された金属ロールとの間に挟持し、ロール圧をロールの線圧として30N/mmの圧力条件下でさらに第二カレンダ加工処理に供し、二種の不織布原反(A)と不織布原反(B)の各薄膜からなる積層体のメルトブロー不織布薄膜積層体を得た。
弾性ロールとしては、ショアD硬度;80を有するポリアミド系合成樹脂製のものを用いた。得られたPBTメルトブロー不織布薄膜積層体(二層品(1))の物性は、次の通りである。

PBT/PBTメルトブロー不織布薄膜二層積層体(二層品1)
目付(g/m2): 20
厚み(μm): 33
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 13.6
通気度T(cc/cm2/s): 5.10
引張強度(N/25mm幅): 13.8
引張伸度(%): 22.5
平均繊維径(μm): 2.6
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 9.72
電解液保液率(%): 365
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:0.5
CD:0.5
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:1.2
CD:0.5
細孔径分布
(1)最大細孔径(μm) 12.27
(2)最小細孔径(μm) 2.285
(3)平均細孔径(μm) 6.673
(4)最大細孔径/平均細孔径 1.84
(5)最大細孔径/最小細孔径 5.37
(6)細孔径3~7μmの範囲を
占める細孔の割合(%): 70

前記の結果に示す通り、構成繊維の平均繊維径が同一の二層の不織布を積層し貼り合せることにより、厚み33μmの薄膜でありながら、ガーレー透気度が13.6s/φ10/300ccであり、高い開孔度を維持し、繊維の潰れを抑制し、フィルムの透明班の形成も抑制することができた。また、高温条件下における熱収縮率についても120℃に設定したオーブンで1時間加熱後、MD、CD方向共にそれぞれ寸法変化率0.5%であり、150℃に設定したオーブンで1時間加熱後も寸法変化率は、MD方向1.2%、CD方向0.5%であり、良好な結果が得られた。また、電解液吸液速度については、9秒72であり、電解液保液率についても365%という顕著な効果を奏し、電気二重層キャパシタ用セパレータとして極めて高い優位性が示された。
かかる特性を実現させた不織布積層体の孔径分布は、図1のグラフで示すように、著しく制御されていることが示された。
【0071】
実施例2
前記PBTを原料樹脂としてメルトブロー法で製造された下記の平均繊維径1.8μmの繊維を有するメルトブロー不織布原反(C):

PBTメルトブロー不織布原反(C)
目付(g/m2): 7
厚み(μm): 84
通気度(cc/cm2/s): 121.5
引張強度(N/25mm幅): 4.3
引張伸度(%): 41.8
平均繊維径(μm): 1.8

を三枚重ね合わせて、それぞれ150℃に加熱された二個の金属ロール/金属ロールの間に挟持し、加圧条件のうち、ロール圧を加工ロールの線圧として130N/mmの圧力条件下で第一カレンダ加工処理に供した。前記2個の金属ロール間には、カレンダ加工処理中間体の厚みが約50~70μmのレベルとなるように調整されたクリアランスを設けた。金属ロールの材質としてはスチールを用いた。
【0072】
前記の第一カレンダ加工処理により、得られた三層の密着層からなるカレンダ加工処理中間体を、弾性ロールと、100℃に加熱された金属ロールとの間に挟持し、ロール圧を加工ロールの線圧として30N/mmの圧力条件下でさらに第二カレンダ加工処理に供し、三層の不織布からなる積層品のメルトブロー不織布薄膜積層体を得た。弾性ロールとしては、前記の硬度(ショアD硬度80)を有するポリアミド系合成樹脂製のものを用いた。得られたPBTメルトブロー不織布薄膜三層積層体(三層品(1))の物性は、次の通りである。

PBT/PBT/PBTメルトブロー不織布薄膜三層積層体(三層品1)
目付(g/m2): 21
厚み(μm): 31
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 26.1
通気度T(cc/cm2/s): 2.78
引張強度(N/25mm幅): 11.1
引張伸度(%): 42.5
平均繊維径(μm): 2.9
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 9.97
電解液保液率(%): 380
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:0.5
CD:0.5
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:1.2
CD:0.5
細孔径分布
(1)最大細孔径(μm) 10.75
(2)最小細孔径(μm) 1.865
(3)平均細孔径(μm) 6.145
(4)最大細孔径/平均細孔径 1.75
(5)最大細孔径/最小細孔径 5.76
(6)細孔径3~7μmの範囲を
占める細孔の割合(%): 85

前記の結果に示す通り、構成繊維の平均繊維径が同一の三層からなる不織布薄膜積層体は、厚み31μmでありながら、ガーレー透気度が26.1s/φ10/300ccであり、高い開孔度を維持し、繊維の潰れを抑制し、フィルムの透明班の形成も抑制することができた。また、高温条件下における熱収縮率についても120℃に設定したオーブンで1時間加熱後、MD、CD共にそれぞれ寸法変化率0.5%であり、150℃に設定したオーブンで1時間加熱後も寸法変化率は、MD方向1.2%、CD方向0.5%であり、良好な結果が得られた。また、電解液吸液速度については、9秒97であり、電解液保液率についても380%という顕著な効果を奏し、電気二重層キャパシタ用セパレータとして極めて高い優位性が示された。
かかる特性を実現させた不織布薄膜積層体は、細孔径分布(1)~(6)を有するものであり、図2のグラフで示すように細孔径分布は、前記の通り著しく制御されていることが示された。
【0073】
実施例3
実施例2において用いた平均繊維径が1.8μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反(C)と、次に示す平均繊維径2.9μmの繊維を有するPMPメルトブロー不織布原反(D):
PMPメルトブロー不織布原反(D):
目付(g/m2): 8
厚み(μm): 208
通気度(cc/cm2/s): 273
引張強度(N/25mm幅): 2.7
引張伸度(%): 29.8
平均繊維径(μm): 2.9

を用いて、PBTメルトブロー不織布原反(C)/PMPメルトブロー不織布原反(D)/PBTメルトブロー不織布原反(C)の三層になるように重ね合わせて実施例2と同一の条件および操作により、第一カレンダ加工処理および第二カレンダ加工処理に供し、下記に示すPBTメルトブロー不織布薄膜/PMPメルトブロー不織布薄膜/PBTメルトブロー不織布薄膜三層積層体(三層品2)を得た。

PBTメルトブロー不織布薄膜/PMPメルトブロー不織布薄膜/PBTメルトブロー不織布薄膜三層積層体(三層品2)
目付(g): 22
厚み(μm): 40
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 22.1
通気度T(cc/cm2/s): 3.17
引張強度(N/25mm幅): 12.7
引張伸度(%): 27.6
平均繊維径: 2.4
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 18.72
電解液保液率(%): 280
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:0
CD:0
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:0.5
CD:0.5
細孔径分布
(1)最大細孔径: 14.58
(2)最小細孔径: 2.885
(3)平均細孔径: 7.964
(4)最大細孔径/平均細孔径: 1.83
(5)最大細孔径/最小細孔径: 5.05

前記の通り、PBT/PMP/PBTの三層構造とすることにより、実施例1のPBT/PBTの二層構造体、実施例2のPBT/PBT/PBTの三層構造体と同様に、最大細孔径/平均細孔径が2.00未満、最大細孔径/最小細孔径が5.00以上の特異な細孔径分布を示し、また、特性についてもガーレー透気度が高く、特に、熱収縮率が小さく、優れた高温安定性が得られた。
【0074】
比較例1
次に示す平均繊維径1.8μmの繊維を有するPBTメルトブロー不織布原反():

PBTメルトブロー不織布原反(E):
目付(g/m2): 15
厚み(μm): 154
通気度(cc/cm2/s): 29.6
引張強度(N/25mm幅): 8.1
引張伸度(%): 14.7
平均繊維径(μm): 1.8

を用い、実施例1と同一の条件および操作により、第一カレンダ加工処理および第二カレンダ加工処理に供し、PBTメルトブロー不織布薄膜単層体(単層比較品(a))を得た。得られたPBTメルトブロー不織布薄膜単層体(単層比較品(a))の物性は次の通りであり、電解液保液率および熱収縮率が本発明の範囲を逸脱したものとなった。

PBTメルトブロー不織布薄膜単層体a(単層比較品(a))
目付(g/m2): 15
厚み(μm): 28
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 8.7
通気度T(cc/cm2/s): 5.24
引張強度(N/25mm幅): 10.2
引張伸度(%): 22.6
平均繊維径(μm): 2.3
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 8.95
電解液保液率(%): 250
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:1.0
CD:0.5
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:1.5
CD:1.0
また、メルトブロー不織布薄膜単層体a(単層比較品(a))の細孔径分布は、次の(1)~(6)で示す通りである。
細孔径分布
(1)最大細孔径(μm) 18.14
(2)最小細孔径(μm) 4.552
(3)平均細孔径(μm) 8.766
(4)最大細孔径/平均細孔径 2.07
(5)最大細孔径/最小細孔径 3.99
(6)細孔径3~7μmの範囲を
占める細孔の割合(%): 33

前記細孔径分布において示すように、(1)最大細孔径、(2)最小細孔径、(3)平均細孔径、(4)最大細孔径/平均細孔径および(5)最大細孔径/最小細孔径のすべてが、本発明の範囲を逸脱したものであり、また、高温安定性、電解液保液性についても十分な効果は得られなかった。

比較例2
実施例1において用いたメルトブロー不織布原反(A)と(B)とを第一カレンダ加工処理に供することなく、第二カレンダ加工処理のみに供した。第二カレンダ加工処理の条件および操作は、実施例1の第二カレンダ加工処理の条件および操作と同一とした。
前記カレンダ加工処理により、下記の物性を有するPBTメルトブロー不織布薄膜二層積層体b(二層比較品(b))を得た。

PBTメルトブロー不織布薄膜二層積層体b(二層比較品(b))
目付(g/m2): 20
厚み(μm): 45
ガーレー透気度(cc/cm2/s): 3.5
通気度(cc/cm2/s): 13.47
引張強度(N/25mm幅): 9.3
引張伸度(%): 38.8
平均繊維径(μm): 3.0
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 9.39
電解液保液率(%): 390
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:2.0
CD:1.5
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:4.5
CD:3.0
細孔径分布
(1)最大細孔径(μm) 19.35
(2)最小細孔径(μm) 5.217
(3)平均細孔径(μm) 13.38
(4)最大細孔径/平均細孔径 1.45
(5)最大細孔径/最小細孔径 3.71

前記の通り、比較例2により得られるPBTメルトブロー不織布二層積層体b(二層比較品(b))は、実施例1のPBTメルトブロー不織布薄膜二層積層体でありながら、第一カレンダ加工処理を省いた結果、細孔径分布(1)~(3)、(5)は、本発明の範囲を逸脱し、熱収縮率が高く、高温安定性を欠如するものとなった。

比較例3
下記の物性を有するPBTメルトブロー不織布原反(F):

PBTメルトブロー不織布原反(F)
目付(g/m2): 20
厚み(μm): 175
通気度(cc/cm2/s): 38.7
引張強度(N/25mm幅): 9.6
引張伸度(%): 15.8
平均繊維径(μm): 1.8

を第二加工処理の温度180℃に設定したこと以外すべて比較例2の条件および操作と同一の条件および操作にて、第一カレンダ加工処理に供することなく、第二カレンダ加工処理のみに供した。
得られたPBTメルトブロー不織布薄膜単層体c(単層比較品(c))は次の物性を有する。

PBTメルトブロー不織布薄膜単層体c(単層比較品(c))
目付(g/m2): 20
厚み(μm): 30
ガーレー透気度(cc/φ10/300cc): 210
通気度T(cc/cm2/s): 1.17
引張強度(N/25mm幅): 14.8
引張伸度(%): 19.4
平均繊維径(μm): 3.0
外観(透明斑の形成によるフィルム化): あり
電解液吸液速度(秒): 11.2
電解液保液率(%): 245
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:0
CD:0
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:1.0
CD:0.5
細孔径分布
(1)最大細孔径(μm) 12.13
(2)最小細孔径(μm) 2.84
(3)平均細孔径(μm) 6.007
(4)最大細孔径/平均細孔径 2.02
(5)最大細孔径/最小細孔径 4.27

前記の通り、第一カレンダ加工処理を省略し、第二カレンダ加工処理のみであり、しかも高温加工処理では、透明斑によるフィルム化が発生し、透気度が低下するなど、セパレータとして使用できる十分な特性を有する不織布薄膜は得られなかった。

比較例4
比較例3において用いたPBTメルトブロー不織布原反(F)と同一のPBTメルトブロー不織布原反を第二カレンダ加工処理に供することなく、第一カレンダ加工処理のみに供したこと以外、比較例1と同一の条件および操作によりカレンダ加工処理に供したところ、次の物性を有するPBTメルトブロー不織布薄膜単層体d(単層比較品(d))を得た。

PBTメルトブロー不織布薄膜単層体d(単層比較品(d))
目付(g/m2): 20
厚み(μm): 42
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 87
通気度(cc/cm2/s): 4.42
引張強度(N/25mm幅): 20.5
引張伸度(%): 12.9
平均繊維径(μm): 3.6
外観(透明斑の形成によるフィルム化): あり
電解液吸液速度(秒): 14.18
電解液保液率(%): 155
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:1.5
CD:1.0
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:2.5
CD:1.5
細孔径分布
(1)最大細孔径(μm): 14.65
(2)最小細孔径(μm): 5.355
(3)平均細孔径(μm): 9.982
(4)最大細孔径/平均細孔径: 1.47
(5)最大細孔径/最小細孔径: 2.74
(6)細孔径3~7μmの範囲を
占める細孔の割合(%): 1

前記の通り、第一カレンダ加工処理のみでは、透明斑の形成によるフィルム化が発生し、透気度の低下、熱収縮率の増加など、セパレータとしての必要な特性は得られなかった。

比較例5
前記ポリプロピレンを原料樹脂としてメルトブロー法により製造された下記のPPメルトブロー不織布原反(G):

PPメルトブロー不織布原反(G)
目付(g/m2): 7
厚み(μm): 111
通気度(cc/cm2/s): 103
引張強度(N/25mm幅): 2.7
引張伸度(%): 42.7
平均繊維径(μm): 3.2

を加工温度65℃の第二カレンダ加工処理のみに供したこと以外、すべて比較例2のカレンダ加工条件および操作と同一のカレンダ加工条件および操作を採用して下記の物性を有するPPメルトブロー不織布薄膜単層体e(単層比較品(e))を得た。

PPメルトブロー不織布薄膜単層体e(単層比較品(e))
目付(g/m2): 7
厚み(μm): 20
ガーレー透気度(s/φ10/300cc): 8.8
通気度(cc/cm2/s): 6.7
引張強度(N/25mm幅): 3.8
引張伸度(%): 23.5
平均繊維径(μm): 3.6
外観(透明斑の形成によるフィルム化): なし
電解液吸液速度(秒): 30以上
電解液保液率(%): 65
熱収縮率(%):
(120℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:5.5
CD:5.0
(150℃のオーブンにて
1時間加熱後の寸法変化率) MD:12.5
CD:10.0
細孔分布
(1)最大細孔径(μm): 13.33
(2)最小細孔径(μm): 1.566
(3)平均細孔径(μm): 4.568
(4)最大細孔径/平均細孔径: 2.92
(5)最大細孔径/最小細孔径: 8.51
(6)細孔径3~7μmの範囲を占める細孔の割合(%): 70

前記の通り、第二カレンダ加工処理のみにより得られるポリプロピレンを原料とするメルトブロー不織布薄膜単層体は、細孔分布において(1)~(6)のすべての要件を満たすものではなく、熱収縮率が著しく高く、電解液保液性も低く、セパレータとして要求される特性を欠くものであった。

以上の実施例および比較例の内容については、表1にまとめた。
実施例、比較例の結果から、耐熱性樹脂を原料樹脂として製造されたメルトブロー不織布薄膜の2層以上のメルトブロー不織布薄膜積層体は、前記の通り、特異な細孔径分布を有し、電解液保液性、高温安定性に優れるものであり、第一カレンダ加工処理および第二カレンダ加工処理によって実現され、電気二重層キャパシタ用セパレータとして極めて高性能を有することが判明した。

【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6