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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】放射性医薬
(51)【国際特許分類】
   C07C 43/178 20060101AFI20231023BHJP
   C07B 59/00 20060101ALI20231023BHJP
   C07C 275/16 20060101ALI20231023BHJP
   C07D 319/06 20060101ALI20231023BHJP
   C07D 405/06 20060101ALI20231023BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20231023BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/357 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/4178 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/4192 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/255 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/225 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 51/08 20060101ALI20231023BHJP
   C07K 5/06 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C07C43/178 C
C07B59/00
C07C275/16 CSP
C07D319/06
C07D405/06
C07D405/12
C07D471/04 101
A61K31/357
A61K31/4025
A61K31/4178
A61K31/4192
A61K31/437
A61K31/255
A61K31/225
A61K38/06
A61P35/00
A61K51/04 200
A61K51/08 200
A61K51/04 100
A61K51/08 100
C07K5/06
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019569541
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2019003334
(87)【国際公開番号】W WO2019151384
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2018015904
(32)【優先日】2018-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒野 泰
(72)【発明者】
【氏名】上原 知也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博元
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩士
(72)【発明者】
【氏名】石岡 典子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂樹
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081242(JP,A)
【文献】特開2017-052713(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C,C07D,C07B,A61K
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A1)又は式(B1)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化1】

〔式中、
Xは、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atであり、
1は、式:
【化2】

で表される基、又は
式(a):
【化3】

〔式中、R2は、式(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)又は(a9):
【化4】

〔式中、R211は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、X1は、塩素、臭素、ヨウ素であり、R212は、水素、又はメチル基であり、R213は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R214は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、a20は、1~6の整数である。〕
で表される基、又は、炭素数6~20のアリール基であり、a1は0~6の整数であり、a2は、1であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。〕
【請求項2】
式(A1)又は式(B1)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化5】

〔式中、
Xは、 75 Br、 76 Br、 77 Br、 82 Br、 123 I、 124 I、 125 I、 131 I、 133 I、 209 At、 210 At又は 211 Atであり、
前記R1が、
式(a-11)、(a-12)、(a-13)、(a-14)又は(a15-1):
【化6】

〔式中、a5は、0~6の整数であり、R23,R24,R25,R26及びR27は、それぞれ独立に、水素、フッ素又はニトロ基であり、R28及びR29は、それぞれ独立に、水素、スルホ基又はスルホ基の塩であり、X10は、CH基又は窒素であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。〕
【請求項3】
前記Xが、 123 I、 124 I、 125 I、 131 I、 133 I、 209 At、 210 At又は 211 Atである、請求項1又は2に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩に、標的分子認識素子を結合させてなる化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項5】
式(A2)又は式(B2)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化7】

〔式中、
Xは、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atであり、
1’は、下記式(a2-1):
【化8】

〔式中、a3は0~6の整数であり、 l1 は隣接するメチレン基との結合部位であり、* r1 は隣接する-(L p2 -P 1 基との結合部位であ〕で表される基であり、
1は、連結基であり、
p1は、1であり、
p2は、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子である。〕
【請求項6】
前記P1が、式(b):
【化9】

〔式中、R31及びR32は、水素、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、R33は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、b1は、0~6の整数であり、b2は、0又は1であり、b3は、0又は1であり、但しb2=1の場合b3は0であり、b3=1の場合b2は0であり、*は、結合部位である。〕で表される基である、請求項5に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項7】
前記P1が、式(b-1):
【化10】

〔式中、 35 は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、b5は、0~6の整数であり、b6は、0又は1であり、b7は、0又は1であり、但しb6=1の場合b7は0であり、b7=1の場合b6は0であり、*は、結合部位である。〕で表される基である、請求項5又は6に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項8】
前記P1は、式(b-11):
【化11】

〔式中、b8は、0~6の整数であり、*は、結合部位である。〕で表される基である、請求項7に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項9】
前記P1が、式(e1)又は式(e2):
【化12】

〔式中、R70,R71,R72は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基であり、*は結合部位である。〕で表される基である、請求項5に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項10】
前記L1は、式(a2-2):
【化13】

〔式中、A1は、アミノ酸の残基、又は、エステル化されたカルボキシ基を側鎖に有するアミノ酸の残基であり、a11は、0~5の整数であり、a12は、0又は1であり、 l2 は隣接する-(R ’) p1 -基との結合部位であり、* r2 は隣接する-P 1 基との結合部位である。ただし、A1及びa12で繰り返し単位数が示される単位の配列順序は特に限定されない。〕で表される基である、請求項9に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項11】
標的分子認識素子がポリペプチドである、請求項4又は5に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項12】
標的分子認識素子が抗体又は抗体の抗原結合領域断片である、請求項4又は5に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、放射性医薬。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、放射線治療薬。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、放射線画像診断薬。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩の放射性医薬の製造のための使用。
【請求項17】
式(A3)又は式(B3)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、請求項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む放射性医薬を調製するための調製用薬剤。
【化14】

〔式中、
Lは、式(c):
【化15】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
1は、式:
【化16】

で表される基、又は
式(a):
【化17】

〔式中、R2は、式(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)又は(a9):
【化18】

〔式中、R211は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、X1は、塩素、臭素、ヨウ素であり、R212は、水素、又はメチル基であり、R213は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R214は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、a20は、1~6の整数である。〕
で表される基、又は、炭素数6~20のアリール基であり、a1は0~6の整数であり、a2は、1であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。〕
【請求項18】
式(A3)又は式(B3)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、請求項2に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む放射性医薬を調製するための調製用薬剤。
【化19】

〔式中、
Lは、式(c):
【化20】

〔式中、R 50 は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
前記R1が、
式(a-11)、(a-12)、(a-13)、(a-14)又は(a15-1):
【化21】

〔式中、a5は、前記a1と同定義であり、R23,R24,R25,R26及びR27は、それぞれ独立に、水素、フッ素又はニトロ基であり、R28及びR29は、それぞれ独立に、水素、スルホ基又はスルホ基の塩であり、X10は、CH基又は窒素であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
【請求項19】
前記Lは、式(c-1)、式(c-2)又は式(c-3):
【化22】

〔式中、R 51 は、炭素数1~10のフルオロアルキル基であり、R 52 ,R 53 ,R 54 ,R 55 ,R 56 は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、又は-C(=O)NR 57 58 であり、R 57 ,R 58 は、それぞれ独立に炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基である、請求項17又は18に記載の調製用薬剤。
【請求項20】
式(A4)又は式(B4)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、請求項4~12のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む放射性医薬を調製するための調製用薬剤。
【化23】

〔式中、Lは、式(c):
【化24】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化25】

〔式中、a3は0~6の整数であり、 l1 は隣接するメチレン基との結合部位であり、* r1 は隣接する-(L p2 -P 1 基との結合部位であ〕で表される基であり、
1は、連結基であり、
p1は、1であり、
p2は、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子である。
【請求項21】
前記P1が、式(b’):
【化26】

〔式中、R31及びR32は、水素、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、R33は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、b1は、1~6の整数であり、*は、結合部位である。〕で表される基である、請求項20に記載の調製用薬剤。
【請求項22】
前記P1が、式(e1)又は式(e2):
【化27】

〔式中、R70,R71,R72は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基であり、*は結合部位である。〕で表される基である、請求項20に記載の調製用薬剤。
【請求項23】
前記L1は、式(a2-2):
【化28】

〔式中、A1は、アミノ酸の残基、又は、エステル化されたカルボキシ基を側鎖に有するアミノ酸の残基であり、a11は、0~5の整数であり、a12は、0又は1であり、 l2 は隣接する-(R ’) p1 -基との結合部位であり、* r2 は隣接する-P 1 基との結合部位である。ただし、A1及びa12で繰り返し単位数が示される単位の配列順序は特に限定されない。〕
で表される基である、請求項22に記載の調製用薬剤。
【請求項24】
請求項1~12のいずれか1項に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩の製造方法であって、
式(B3):
【化29】

〔式中、
Lは、式(c):
【化30】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
1は、
式:
【化31】

で表される基、又は
式(a):
【化32】

〔式中、R2は、式(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)又は(a9):
【化33】

〔式中、R211は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、X1は、塩素、臭素、ヨウ素であり、R212は、水素、又はメチル基であり、R213は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R214は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、a20は、1~6の整数である。〕
で表される基、又は、炭素数6~20のアリール基であり、a1は0~6の整数であり、a2は、1であり、*は、結合部位である。〕で表される基、又は
式(a-11)、(a-12)、(a-13)、(a-14)又は(a15-1):
【化34】

〔式中、a5は、前記a1と同定義であり、R 23 ,R 24 ,R 25 ,R 26 及びR 27 は、それぞれ独立に、水素、フッ素又はニトロ基であり、R 28 及びR 29 は、それぞれ独立に、水素、スルホ基又はスルホ基の塩であり、X 10 は、CH基又は窒素であり、*は、結合部位である。〕で表される基である、又は、
式(B4):
【化35】

〔式中、Lは、式(c):
【化36】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化37】

〔式中、a3は0~6の整数であり、 l1 は隣接するメチレン基との結合部位であり、* r1 は隣接する-(L p2 -P 1 基との結合部位である〕
で表される基であり、
1は、連結基であり、
p1は、1であり、
p2は、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子である。〕で表される化合物若しくはその薬理学的に許容可能な塩を、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atのイオンと反応させることを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物、それを含む放射性医薬、及び当該放射性医薬の調製用薬剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性ヨウ素(I)及びアスタチン(At)で標識化された化合物は、病気の診断及び治療に用いられている。例えば、123Iと131Iは、Single Photon Emission Computed Tomography (SPECT)、124Iは、Positron Emission Tomography (PET)、131Iは治療に用いられている。アルファ線を放出する211Atは、治療用の放射性核種として最近、大きな注目を集めている。放射性ヨウ素標識は、主に芳香族化合物に酸化的条件下で導入する方法が用いられている。しかし、放射性ヨウ素で安定な標識体を与える母体を用いた場合でも、生体内で安定な211At標識体を作製するのが困難であり、生体内で安定な結合を維持する標識母体の探索が進められている(例えば、非特許文献1)。その1つとしてボロンケージに導入する方法が開発されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Chemical Society Reviews 34: 153-163, 2005
【文献】Current Radiopharmaceuticals 1: 144-176, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射性標識化された化合物は、体内で非特異的な集積が少なく、選択的に目的部位に集積し、且つ生体内で安定であることが好ましい。さらに、汎用性の高い導入反応が存在することが好ましい。また、これまで開発されてきた芳香族アスタチン誘導体は生体内における安定性が不十分である。さらに、芳香環へのこれらのハロゲン導入には、酸化的条件を用いるため、酸化条件に不安定な化合物への導入が困難である。
一方、ボロンケージは、生体内で安定なアスタチン誘導体を供給できる水溶性の高い構造を有するものの、標的患部への選択的集積の制御が困難であり、また正常組織における滞留性が高いことが問題となる。
そこで、本発明の一実施形態は、新規物質に関する。
本発明の一実施形態は、高い生体内安定性を示す化合物等に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、以下の事項に関する。
〔1〕式(A1)又は式(B1)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化1】

〔式中、
Xは、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atであり、
1は、式(a):
【化2】

〔式中、R2は、標的分子認識素子と結合可能な官能基を有する基、標的分子認識素子の連結基と結合可能な官能基を有する基、又は、炭素数6~20のアリール基であり、a1は、0~6の整数であり、a2は、0又は1であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。〕
〔2〕式(A2)又は式(B2)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化3】

〔式中、Xは、式(A1)、式(B1)と同定義であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化4】

〔式中、a3は、0~6の整数であり、*は結合部位である〕で表される基であり、
1は、連結基であり、
p1は、0又は1であり、
p2は、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子である。〕
〔3〕式(A3)又は式(B3)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化5】

〔式中、
Lは、式(c):
【化6】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
1は、式(a):
【化7】

〔式中、R2は、標的分子認識素子と結合可能な官能基を有する基、又は標的分子認識素子の連結基と結合可能な官能基を有する基であり、a1は、0~6の整数であり、a2は、0又は1であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。〕
〔4〕式(A4)又は式(B4)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化8】

〔式中、Lは、式(c):
【化9】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化10】

〔式中、a3は、0~6の整数であり、*は結合部位である〕で表される基であり、
1は、連結基であり、
p1は、0又は1であり、
p2は、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子であり、
但し、P1が、式(b-51):
【化11】

〔式中、b9は、0又は1であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、且つ、p1=p2=0である場合を除く。〕
〔5〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、放射性医薬。
〔6〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、放射線治療薬。
〔7〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、放射線画像診断薬。
〔8〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩の放射性医薬の製造のための使用。
〔9〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩の放射線治療のための使用。
〔10〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩の放射線画像診断のための使用。
〔11〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を投与する放射線治療方法。
〔12〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を投与する放射線画像診断方法。
〔13〕上記〔3〕又は〔4〕に記載の化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩を含む、放射性医薬の調製用薬剤。
〔14〕上記〔3〕又は〔4〕に記載の化合物又はその薬理学的に許容可能な塩と、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atを含む薬剤とを、別々の包装単位として含む、キット。
〔15〕上記〔1〕又は〔2〕に記載の化合物又はその薬理学的に許容可能な塩の製造方法であって、
式(B3)で表される化合物若しくはその薬理学的に許容可能な塩、又は、
式(B4):
【化12】

〔式中、Lは、式(c):
【化13】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化14】

〔式中、a3は、0~6の整数であり、*は結合部位である〕で表される基であり、
1は、連結基であり、
pは、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子である。〕で表される化合物若しくはその薬理学的に許容可能な塩を、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atのイオンと反応させることを含む、製造方法。
〔16〕式(B5)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化15】

〔式中、R80は、ヒドロキシ基、*-OCH281(式中、R81は、置換又は無置換の2-ナフチル基、又はp-メトキシフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基、又は、*-OSi(R823(式中、R82は、炭素数1~4のアルキル基、又はフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基であり、
1は、式(a-11)、(a-12)、(a-13)又は(a-14):
【化16】
〔式中、a5は、前記a1と同定義であり、R23,R24,R25,R26及びR27は、それぞれ独立に、水素、フッ素又はニトロ基であり、R28及びR29は、それぞれ独立に、水素、スルホ基又はスルホ基の塩であり、X10は、CH基又は窒素であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。〕
〔17〕式(B6)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩。
【化17】

〔式中、R80は、式(B5)と同定義であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化18】

〔式中、a3は、0~6の整数であり、*は結合部位である〕で表される基であり、
1は、連結基であり、
p1は、0又は1であり、
p2は、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子であり、
但し、P1が、式(b-51):
【化19】

〔式中、b9は、0又は1であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、且つ、p1=p2=0である場合を除く。〕
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態は、新規物質を提供する。
本発明の一実施形態は、高い生体内安定を示す化合物等に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、標識体3投与後の尿分析の結果である。
図2図2は、標識体4投与後の尿分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[用語の定義等]
はじめに、本願明細書において使用する各種用語の意味を説明する。
「At」は、アスタチンである。
「*」は、結合部位を意味する。
「標的分子認識素子と結合可能な官能基を有する基」とは、官能基を介してポリペプチド等の標的分子認識素子を本発明の化合物に結合することができる官能基を有する基を意味する。
「標的分子認識素子の連結基と結合可能な官能基を有する基」とは、官能基を介してポリペプチド等の標的分子認識素子の連結基と本発明の化合物とを結合することができる官能基を有する基を意味する。
【0009】
各基の炭素数は、置換基の炭素を含む総炭素数である。
アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれのアルキル基であってもよい。
炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、ヘキサコシル基、オクタコシル基、トリアコンチル基が挙げられる。
炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基が挙げられる。
炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。
【0010】
炭素数1~4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基が挙げられる。
【0011】
アリール基は、無置換若しくは置換のアリール基であってもよく、単環若しくは縮合多環のアリール基であってもよい。
炭素数6~20のアリール基である場合、置換基としては、例えば、炭素数1~4のアルキル基、フッ素、ニトロ基が挙げられる。
炭素数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-ニトロフェニル基、m-ニトロフェニル基、p-ニトロフェニル基、o-フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
【0012】
炭素数6~60のアリール基である場合、置換基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、アルキル基の炭素数が1~30であるジアルキルカルバモイル基、アリール基の炭素数が6~20であるジアリールカルバモイル基、フッ素が挙げられる。
炭素数6~60のアリール基は、好ましくは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、アルキル基の炭素数が1~30であるジアルキルカルバモイル基、アリール基の炭素数が6~20であるジアリールカルバモイル基、及びフッ素から選ばれる少なくとも1種の基が置換した炭素数6~20のアリール基、又は、無置換の炭素数6~20のアリール基である。
炭素数6~60のアリール基としては、例えば、フェニル基、p-メチルフェニル基、p-ドデシルフェニル基、p-ドデシルフェニル基、p-(ジブチルカルバモイル)フェニル基、p-(ジオクチルカルバモイル)フェニル基、p-(ジヘプタデシルカルバモイル)フェニル基、p-(ジドコシルカルバモイル)フェニル基、p-([(1-ナフタレニル)メチル]メチルカルバモイル)フェニル基、p-(ジ-[(1-ナフタレニル)メチル]カルバモイル)フェニル基、p-(ジナフタレニルカルバモイル)フェニル基が挙げられる。
【0013】
置換又は無置換の2-ナフチル基の置換基としては、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基が挙げられる。
【0014】
炭素数1~10の脂肪族炭化水素エステル基は、式:*-C(=O)OR61(式中、R61は、炭素数1~8のアルキル基であり、*は結合部位である)で表される基である。
炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が挙げられる。
【0015】
炭素数8~20の芳香族炭化水素エステル基は、式:*-C(=O)OR62(式中、R62は、炭素数6~18のアリール基であり、*は結合部位である)で表される基である。
炭素数6~18のアリール基としては、例えば、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-ニトロフェニル基、m-ニトロフェニル基、p-ニトロフェニル基、o-フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0016】
フルオロアルキル基は、1以上の水素がフッ素に置換したアルキル基を意味する。フルオロアルキル基は、好ましくはパーフルオロアルキル基である。なお、パーフルオロアルキル基とは、すべての水素がフッ素に置換したアルキル基を意味する。
炭素数1~20のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロn-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロn-ブチル基、パーフルオロsec-ブチル基、パーフルオロtert-ブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロテトラデシル基、パーフルオロヘキサデシル基、パーフルオロオクタデシル基、パーフルオロイコシル基が挙げられる。
炭素数1~10のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロn-プロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロn-ブチル基、パーフルオロsec-ブチル基、パーフルオロtert-ブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基が挙げられる。
【0017】
[化合物A1、化合物B1等]
本発明の一実施形態は、式(A1)又は式(B1)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩(以下、化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩の意味で「化合物等」ともいう。式(A1)で表される化合物を「化合物A1」ともいう。式(B1)で表される化合物を「化合物B1」ともいう。)に関する。
【化20】
【0018】
本発明の一実施形態によれば、新規物質が提供される。本発明の一実施形態によれば、汎用性の高い導入反応により、放射性ヨウ素、アスタチンによる標識が可能である。
本発明の一実施形態によれば、高い生体内安定性を示す化合物等が提供される。本発明の一実施形態によれば、芳香環でない炭素上に放射性ヨウ素、アスタチンによる標識が可能である。通常、アルキル鎖のようなSP3炭素上にヨウ素、アスタチン等のハロゲン化合物が置換すると、これらが脱離しやすく、生体内の安定性が損なわれると考えられるところ、化合物A1の構造部位:
【化21】

を有することで、高い生体内安定性を示すことが明らかになった。なお、化合物B1は、生体内で分解され、化合物A1の形態となると考えられる。
【0019】
式(A1)又は式(B1)中、各置換基は以下のとおりである。
Xは、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atであり、好ましくは、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atであり、より好ましくは、209At、210At又は211Atである。
【0020】
1は、式(a)で表される基である。
【0021】
〔式(a)の基〕
1は、誘導体の合成の観点から、好ましくは式(a):
【化22】

〔式中、R2は、標的分子認識素子と結合可能な官能基を有する基、標的分子認識素子の連結基と結合可能な官能基を有する基、又は、炭素数6~20のアリール基でありであり、a1は、0~6の整数であり、a2は、0又は1であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
標的分子認識素子と結合可能な官能基、又は、標的分子認識素子の連結基と結合可能な官能基(つまり、「標的分子認識素子若しくはその連結基と結合可能な官能基」であり、以下「官能基a」ともいう)としては、例えば、カルボキシ基又はその活性エステル;マレイミド基、アクリロイル基等のC=C結合を有する基;カルバモイル基、イソチオシアナート基、及びアミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基が挙げられる。カルボキシ基の活性エステルとしては、例えば、炭素数1~10の脂肪族炭化水素エステル基、炭素数8~20の芳香族炭化水素エステル基、クロロアセチル基、ブロモアセチル基、ヨードアセチル基が挙げられる。
【0022】
標的分子認識素子と結合可能な官能基、又は、標的分子認識素子の連結基と結合可能な官能基としては、例えば、式(a1)、(a2)、(a3)、(a4)、(a5)、(a6)、(a7)、(a8)又は(a9):
【化23】

〔式中、R211は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、X1は、塩素、臭素、ヨウ素であり、R212は、水素、又はメチル基であり、R213は、水素、炭素数1~10のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、R214は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、a20は、1~6の整数である。〕で表される基である。
【0023】
a1は、0~6の整数であり、好ましくは1である。
a2は、0又は1であり、好ましくは1である。
【0024】
1は、例えば、式:
【化24】

で表される基であってもよい。
1は、好ましくは式(a-1):
【化25】

〔式中、R21は、水素、標的分子認識素子若しくはその連結基と結合可能な官能基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、又は、標的分子認識素子若しくはその連結基と結合可能な官能基を有していてもよい炭素数6~20のアリール基であり、a3は、前記a1と同定義であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
【0025】
1は、より好ましくは式(a-11)、(a-12)、(a-13)又は(a-14):
【化26】
〔式中、a5は、前記a1と同定義であり、R23,R24,R25,R26及びR27は、それぞれ独立に、水素、フッ素又はニトロ基であり、R28及びR29は、それぞれ独立に、水素、スルホ基又はスルホ基の塩であり、X10は、CH基又は窒素であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
23、R24、R25、R26及びR27のうち少なくとも1つが、フッ素又はニトロ基であることが好ましく、ニトロ基であることがより好ましい。
24、及びR26が水素であり、且つR23、R25、及びR27のうち少なくとも1つが、ニトロ基であることが好ましく、R23、R2426、及びR27が水素であり、且つR25がニトロ基であることが好ましい。
【0026】
1としては、例えば、
【化27】

〔式中、*は結合部位である。〕が挙げられる。
【0027】
上記化合物A1又はB1の具体例として、例えば、下記の化合物A1-1~化合物A1-18,化合物B1-1~B1-18が挙げられる。
【0028】
【化28】
【0029】
【化29】
【0030】
【化30】
【0031】
化合物A1又は化合物B1等は、公知の方法を用いて合成することができ、例えば、本明細書の実施例に記載された方法により製造することができる。
【0032】
化合物A1、化合物B1、又はその薬理学的に許容可能な塩の使用方法としては、例えば、化合物A1、化合物B1、又はその薬理学的に許容可能な塩に、標的分子認識素子を結合させてなる化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩とすることが挙げられる。当該化合物へと誘導することで、化合物A2又は化合物B2等と同様に、放射線治療薬、放射線画像診断薬等の放射性医薬として使用することが可能である。
【0033】
化合物A1又は化合物B1は、上記化合物の薬理学的に許容可能な塩であってもよい。
薬理学的に許容可能な塩としては、例えば、酸付加塩、塩基付加塩が挙げられる。
酸付加塩としては、無機酸塩、有機酸塩のいずれであってもよい。
無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩が挙げられる。
有機酸塩としては、例えば、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩が挙げられる。
塩基付加塩としては、無機塩基塩、有機塩基塩のいずれであってもよい。
無機塩基塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
有機塩基塩としては、例えば、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩が挙げられる。
【0034】
[化合物A2又は化合物B2等]
化合物A2又は化合物B2等は、化合物A1、化合物B1、又はその薬理学的に許容可能な塩に、標的分子認識素子を結合させてなる化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩である。
標的分子認識素子は、式:
【化31】

若しくは
式:
【化32】

で表される基と、連結基を介して結合していてもよいし、直接結合していてもよい。
連結基としては、2-イミノチオランから誘導されるイミノチオールが挙げられる。
【0035】
〔標的分子認識素子〕
「標的分子認識素子」とは、生体内において、標的分子に結合する等の標的分子を認識可能な分子、置換基、官能基又は原子団である。
標的分子認識素子としては、例えば、ポリペプチド、その他、標的分子に結合するリガンドが挙げられる。
ポリペプチドは、通常、標的分子に結合するポリペプチドであり、好ましくは標的分子に特異的に結合するポリペプチドである。特異的に結合するとは、標的分子に結合するが、標的分子以外の分子には結合しないか、弱い結合であることをいう。
その他、標的分子に結合するリガンドとしては、例えば、ニトロイミダゾール基等が挙げられる。
標的分子とは、放射性薬剤による診断の対象となる標的部位、例えば、組織や細胞に存在する分子、好ましくは特異的に発現する分子をいう。「特異的に発現する」とは、標的部位に発現するが、標的部位以外の部位には発現しないか、低い発現であることをいう。
【0036】
標的分子認識素子としては、例えば、炎症や腫瘍細胞浸潤等に伴う組織構築において高い発現が認められるタンパク質や腫瘍細胞に特異的に発現するタンパク質に結合するリガンド、並びに、抗体及び抗体の抗原結合領域断片が挙げられる。
【0037】
抗体としては、例えば、抗CD25抗体、抗CD20抗体等のモノクローナル抗体が挙げられる。
抗体の抗原結合領域断片としては、例えば、Fab断片(以下単に「Fab」ともいう)、F(ab')2断片、F(ab)2断片、可変領域断片(以下、「Fv断片」ともいう)が挙げられる。
Fab断片とは、抗体のパパイン分解により生ずるN末端側の産物及びこれと同様のドメイン構造を有する断片を意味する。
F(ab')2断片とは、抗体のF(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を還元することにより得られる断片及びこれと同様のドメイン構造を有する断片を意味する。
F(ab)2断片とは、2分子のFab断片が互いにジスルフィド結合で結合した二量体を意味する。
Fv断片とは、抗体の断片であって抗原との結合活性を有する最小の断片を意味する。
抗体の抗原結合領域断片としては、より具体的には、特定のがん細胞に特異的に発現するタンパク質に対する抗体、及び、そのFab断片若しくはFv断片が挙げられる。
【0038】
その他の標的分子認識素子としては、がんの新生血管に高発現が認められるインテグリンに親和性を有する環状ペンタペプチド、例えばシクロ-Arg-Gly-Asp-D-Phe-Lys(以下、「c(RGDfK)」ともいう)が挙げられる。その他、造骨性のがん(骨転移)に多く存在するヒドロキシアパタイトへの親和性を有するビスフォスフォン酸やオリゴアスパラギン酸、オリゴグルタミン酸、マクロファージの表面に存在する走査因子の受容体と親和性があるペプチドであるfMet-Leu-Phe(fMLP)、がん細胞に発現が認められる葉酸受容体と結合する葉酸とその誘導体等が挙げられる。
なお、標的分子認識素子は、これら例示されたポリペプチドに限定されず、標的分子に結合するポリペプチドであればいずれを使用することもできる。
【0039】
標的分子認識素子は、例えば、2-イミノチオラン等のチオール化試薬を用いて、化合物の官能基と反応する連結基を導入して結合させてもよい。Fab断片への当該連結基の導入は、上記チオール化試薬をpH7-9の条件で反応させることによって、Fab断面のアミノ基に対してするスルフヒドリル基を付加させることができる。
【0040】
標的分子認識素子としては、例えば、Asp-urea-Lys 部位又はGlu-urea-Lys 部位を有するリガンドを用いてもよい。当該リガンドによれば、前立腺がんにおいて発現が著しく上昇する前立腺特異的膜抗原(prostate specific membrane antigen) のレセプターに選択的に結合する。
Asp-urea-Lys 部位とは、式(e1):
【化33】

〔式中、R70,R71,R72は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基であり、*は結合部位である。〕で表される基である。
Glu-urea-Lys 部位とは、式(e2):
【化34】

〔式中、R70,R71,R72は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基であり、*は結合部位である。〕で表される基である。
【0041】
Asp-urea-Lys 部位としては、例えば、下記の式の基が挙げられる。
【化35】
【0042】
Glu-urea-Lys 部位としては、例えば、下記の式の基が挙げられる。
【化36】
【0043】
上述の他、例えば、特定の官能基f1を導入した上述のポリペプチド、その他、標的分子に結合するリガンドを、炎症や腫瘍細胞浸潤等に伴う組織構築において高い発現が認められるタンパク質や腫瘍細胞に特異的に発現するタンパク質等の標的分子に結合させ、標的分子認識素子として、官能基f1と反応し結合を形成する官能基f2を有する化合物(2)等を投与し、標的分子を認識する方法が挙げられる[Chemical Society Reviews 45: 6409-6658, 2016, Chemical Society Reviews 42: 5131-5142, 2013]。
【0044】
官能基f1としては、例えば、下記の式(f1-1),式(f1-2),又は式(f1-3)で表される基が挙げられる。
【化37】

〔式中、*は結合部位である。〕
【0045】
官能基f2としては、例えば、下記の式(f2-1),式(f2-2),式(f2-3),式(f2-4),又は式(f2-5)で表される基が挙げられる。
【化38】

〔式中、*は結合部位である。〕
【0046】
化合物A2又はB2は、例えば、以下の式(A2)又は式(B2)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0047】
【化39】

〔式中、Xは、式(A1)、式(B1)と同定義であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化40】

〔式中、a3は上記式(a-1)と同様であり、*は結合部位である〕で表される基であり、
1は、連結基であり、
p1は、0又は1であり、
p2は、0又は1であり、
1は、標的分子認識素子である。〕
1は、
(1)R1’とP1を連結する連結基、又は
(2)式:
【化41】

若しくは
式:
【化42】

で表される基とP1を連結する連結基である。
1は、例えば、R1’の連結基と連結可能な官能基により結合を形成し、P1の標的分子認識素子とも結合を形成する。
【0048】
〔式(b)の基〕
1は、臓器特異性を高める観点から、好ましくは式(b):
【化43】

〔式中、R31及びR32は、水素、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、R33は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、b1は、0~6の整数であり、b2は、0又は1であり、b3は、0又は1であり、但しb2=1の場合b3は0であり、b3=1の場合b2は0であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
式(b)中、R31及びR32は、好ましくは水素である。
33は、好ましくは水素である。
b1は、0~6の整数であり、好ましくは0である。
b2は、0又は1であり、好ましくは0である。
b3は、0又は1であり、但しb2=1の場合b3は0であり、b3=1の場合b2は0である。b3は、好ましくは0である。
1が、式(b)で表される基である場合、p1は、好ましくは0である。
【0049】
1は、好ましくは式(b-1):
【化44】

〔式中、b5は、b1と同定義であり、b6は、b2と同定義であり、b7は、b3と同定義であり、R35は、R33と同定義であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、より好ましくは式(b-11):
【化45】

〔式中、b8は、b1と同定義であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
【0050】
1としては、例えば、下記の置換基(b-1)~(b-3)が挙げられる。
【化46】

これらの中でも置換基(b-1)が好ましい。
【0051】
1は、好ましくは、式(e1)又は式(e2):
【化47】

〔式中、R70,R71,R72は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~4のアルキル基であり、*は結合部位である。〕で表される基である。
【0052】
1が、式(e1)又は式(e2)で表される基である場合、L1は、好ましくは、式(a2-2):
【化48】

〔式中、A1は、アミノ酸の残基、又は、エステル化されたカルボキシ基を側鎖に有するアミノ酸の残基であり、a11は0~5の整数であり、a12は、0又は1であり、*は結合部位である。ただし、A1及びa12で繰り返し単位数が示される単位の配列順序は特に限定されない。〕
1のアミノ酸の残基は、例えば、天然アミノ酸の残基であり、好ましくはグルタミン酸である。
エステル化されたカルボキシ基を側鎖に有するアミノ酸の残基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸のように側鎖にカルボキシ基を有するアミノ酸であって当該カルボキシ基がエステル化されたアミノ酸の残基を意味する。なお当該エステル化は、炭素数1~4のアルコールでエステル化されていることが好ましい。炭素数1~4のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールが挙げられる。
p1は、好ましくは0であり、p2は、好ましくは1である。
1末端は、R1’、又は、式:
【化49】

又は
式:
【化50】

で表される基と結合することが好ましい。
a12で繰り返し単位数が示される単位は、上記式(e1)又は式(e2)で表される基と結合することが好ましい。
【0053】
式(a2-2)で表される基としては、例えば、以下の置換基(a22-1)~(a22-3)が挙げられる。
【化51】
【0054】
上記化合物A2又はB2の具体例として、例えば、下記の化合物A2-1~化合物A2-2,化合物B2-1~B2-2,化合物A2-11~化合物A2-18,化合物B2-11~B2-18が挙げられる。
【化52】

【化53】
【0055】
【化54】
【0056】
【化55】
【0057】
化合物A2又は化合物B2等は、公知の方法を用いて合成することができ、例えば、本明細書の実施例に記載された方法により製造することができる。
【0058】
[用途]
化合物A2又は化合物B2等を放射性医薬等の医薬に用いることができる。
放射性医薬は、化合物A2又は化合物B2を有効成分として含む他、必要に応じて、1種類又は2種類以上の医薬的に許容される担体(医薬用担体)を含む医薬組成物として調製できる。医薬用担体として、水性緩衝液、酸、及び塩基等のpH調節剤、アスコルビン酸やp-アミノ安息香酸等の安定化剤、D-マンニトール等の賦形剤、等張化剤、並びに保存剤等を例示できる。また、放射化学的純度を改良するのに役立つクエン酸、酒石酸、マロン酸、グルコン酸ナトリウム、グルコヘプトン酸ナトリウム等の化合物を添加してもよい。放射性医薬は、水溶液の形態、凍結溶液の形態、及び凍結乾燥品のいずれでも提供が可能である。
【0059】
〔用法容量〕
化合物A2又は化合物B2等は、例えば、放射線治療又は放射線画像診断に用いられる放射性薬剤として使用される。
【0060】
化合物A2又は化合物B2等は、その有効量をヒトを含む哺乳動物に投与することによってがんを抑制する放射線治療に使用することができる。抗がん剤として使用する場合、例えば、がんの発生、又は転移・着床、再発を防止するという予防的作用、並びにがん細胞の増殖を抑制したり、がんを縮小することによってがんの進行を阻止したり、症状を改善させるという治療的作用の両方を含む最も広い意味を有し、いかなる場合においても限定的に解釈されるものではない。
放射線治療薬として用いられる、置換基Xは、例えば、アルファ線放出核種、ベータ線放出核種、ガンマ線放出核種、ポジトロン放出核種が挙げられる。これらの中でも、放射線治療の用途では、アルファ線放出核種(即ち、α線を放出する核種)が好ましく、209At、210At又は211Atがより好ましい。
【0061】
放射線画像診断としては、例えば、単一光子放射断層撮影(Single Photon Emission Computed Tomography, 以下単に「SPECT」ともいう)、陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography, 以下単に「PET」ともいう)等が挙げられる。
診断としては、特に限定されず、腫瘍、炎症、感染症、心循環器疾患、脳・中枢系疾患等の各種疾患及び臓器・組織の放射線画像診断等に用いられ、好ましくは、がんの放射線画像診断に使用される。
診断の対象となる標的の特性にしたがって、標的分子認識素子を選択することにより、多種類多様な標的の診断や治療が可能であり、本発明の放射性薬剤は診断の分野で放射線画像診断薬として広く使用できる。
【0062】
本発明の放射性薬剤の投与経路としては、例えば、静脈内投与若しくは動脈内投与等の非経口投与、経口投与が挙げられ、静脈内投与が好ましい。
投与経路はこれら経路に限定されず、放射性薬剤の投与後に、その作用が有効に発現し得る経路であればいずれも利用できる。
【0063】
放射性薬剤の放射活性強度は、本薬剤を投与することにより目的を達成し得る強度であり、且つ、被験者の放射線被爆が可能な限り低い臨床投与量である限りにおいて任意である。
放射性強度は、放射性薬剤を使用する一般的な診断方法や治療方法で使用されている放射活性強度を参考にして決定できる。その投与量は患者の年齢、体重、適当な放射線イメージング装置、及び対象疾患の状態等の諸条件を考慮し、イメージングが可能と考えられる放射能及び投与量が決定される。
【0064】
ヒトを対象とする場合、放射性薬剤における放射能量は、以下のとおりである。
通常、放射線治療に使用されることが想定され、その診断薬剤の投与量は、特に限定されないが、例えば、放射性元素(例えば211At)の放射能量として1.0MBq/kg~3.0MBq/kgである。
【0065】
以上、化合物A1,化合物A2,化合物B1,化合物B2によれば、生体内で高い安定性を示す化合物が提供できる。
【0066】
[化合物A3又は化合物B3等]
本発明の一実施形態は、式(A3)又は式(B3)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩(以下、化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩の意味で「化合物等」ともいう。式(A3)で表される化合物を「化合物A3」ともいう。式(B3)で表される化合物を「化合物B3」ともいう。)に関する。
当該化合物A3、化合物B3は、穏和な反応により、上述の化合物A1、化合物B1へと誘導することができる。
【化56】
【0067】
Lは、式(c):
【化57】

〔式中、R50は、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のフルオロアルキル基、炭素数6~60のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
【0068】
Lは、好ましくは、式(c-1)、式(c-2)又は式(c-3):
【化58】

〔式中、R51は、炭素数1~10のフルオロアルキル基であり、R52,R53,R54,R55,R56は、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、又は-C(=O)NR5758であり、R57,R58は、それぞれ独立に炭素数1~30のアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
51としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロn-ブチル基、パーフルオロn-オクチル基、p-ニトロフェニル基、p-フルオロフェニル基が好ましい。
52,R53,R55,R56は、好ましくは水素である。
54は、好ましくは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のフルオロアルキル基、又は*-C(=O)NR5758であり、より好ましくは*-C(=O)NR5758である。
【0069】
Lとしては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化59】
【0070】
なお、式(A3)又は式(B3)中、R1は、式(a)で表される基である。
式(A3)又は式(B3)で表される化合物としては、例えば、下記の化合物B3-1~B3-11が挙げられる。
【化60】

【化61】
【0071】
化合物A3又は化合物B3等は、公知の方法を用いて合成することができ、例えば、本明細書の実施例に記載された方法により製造することができる。
化合物A3又は化合物B3は、NaX〔式中のXは、式(A1)と同定義である。〕等の塩と反応させることによって、LがXに置換するため、化合物A1及び化合物B1を合成することを容易にする。
【0072】
化合物A3又は化合物B3等は、公知の方法を用いて合成することができ、例えば、本明細書の実施例に記載された方法により製造することができる。
【0073】
化合物A3、化合物B3、又はその薬理学的に許容可能な塩の使用方法としては、例えば、化合物A4、化合物B4、又はその薬理学的に許容可能な塩に、標的分子認識素子を結合させてなる化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩とすることが挙げられる。当該化合物等に、更に放射性原子を導入して用いてもよい。当該化合物へと誘導することで、化合物A2又は化合物B2等と同様に、放射線治療薬、放射線画像診断薬等の放射性医薬として使用することが可能である。
【0074】
[化合物A4又は化合物B4等]
化合物A4又は化合物B4等は、化合物A3、化合物B3、又はその薬理学的に許容可能な塩に、標的分子認識素子を結合させてなる化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩である。
標的分子認識素子は、式:
【化62】

若しくは
式:
【化63】

で表される基と、連結基を介して結合していてもよいし、直接結合していてもよい。
連結基としては、2-イミノチオランから誘導されるイミノチオールが挙げられる。
標的分子認識素子の例は、上述のとおりである。
【0075】
化合物A4又はB4は、例えば、以下の式(A4)又は式(B4)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0076】
【化64】

〔式中、Lは、式(A3)、式(B3)と同様であり、
1’は、下記式(a2-1):
【化65】

〔式中、a3は上記式(a-1)と同定義であり、*は結合部位である〕で表される基であり、L1,p1,p2,P1は、式(A2)、式(B2)と同定義である。〕
但し、化合物A4及びB4のうち、新規性を有する化合物A4又はB4は、上述の化合物A4及びB4において、P1が、式(b-51):
【化66】

〔式中、b9は、0又は1であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、且つ、p1=p2=0である場合を除く。
新規性を有する化合物A4又はB4は、上述の化合物A4及びB4において、好ましくは、P1が、式(b-52):
【化67】

〔式中、b9は、0又は1であり、R38は、水素、メチル基、ヒドロキシメチル基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、且つ、p1=p2=0である場合を除く。
【0077】
1は、好ましくは式(b’):
【化68】

〔式中、R31及びR32は、水素、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、R33は、水素、又は炭素数1~4のアルキル基であり、b1は、1~6の整数であり、*は、結合部位である。〕で表される基である。
式(b’)で表される基としては、例えば、下記の基が挙げられる。
【化69】
【0078】
上記化合物A4又はB4の具体例として、例えば、下記の化合物A4-1~化合物A4-8,化合物B4-1~B4-8が挙げられる。
【0079】
【化70】
【0080】
【化71】
【0081】
【化72】
【0082】
化合物A4又は化合物B4等は、公知の方法を用いて合成することができ、例えば、本明細書の実施例に記載された方法により製造することができる。
化合物A4又は化合物B4は、NaX〔式中のXは、式(A1)と同定義である。〕等の塩と反応させることによって、LがXに置換するため、化合物A2及び化合物B2を合成することを容易にする。
【0083】
[化合物A1等、化合物B1等、化合物A2等、又は、化合物B2等の製造方法]
本発明の一実施形態に係る製造方法について以下に説明する。
化合物A1等、化合物B1等、化合物A2等、又は、化合物B2等の製造方法は、化合物B3等、又は、化合物B4等を、75Br、76Br、77Br、82Br、123I、124I、125I、131I、133I、209At、210At又は211Atのイオンと反応させることを含む。
【0084】
化合物A1等、化合物B1等、化合物A2等、又は、化合物B2等の製造方法は、好ましくは、
(i)化合物B3等、又は、化合物B4等をNaX〔式中のXは、式(A1)と同定義である。〕と反応させること、
(ii)酸性物質と混合すること、
を含む。
【0085】
上記の製造方法においては以下の反応が想定される。
【化73】
【0086】
上記(i)により、化合物B3、化合物B4のLがXと置換する。
出発物質として化合物B3等を用いた場合、(i)では、化合物B1が得られる。
出発物質として化合物B4等を用いた場合、(i)では、化合物B2が得られる。
化合物B3等又は化合物B4等のモル量に対するNaXのモル量の比率〔NaX/化合物B3等又は化合物B4等〕は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは5以上、更に好ましくは8以上であり、そして、好ましく20以下、より好ましく18以下、更に好ましく15以下、更に好ましく12以下である。
上記(i)の反応の温度は、好ましくは60~140℃であり、より好ましくは80~120℃であり、更に好ましくは90~110℃である。
【0087】
続いて、(ii)により、化合物中の保護基が脱保護され、化合物A1等又は化合物A2等が得られる。
出発物質として化合物B3等を用いた場合、(ii)では、化合物A1が得られる。
出発物質として化合物B4等を用いた場合、(ii)では、化合物A2が得られる。
(ii)は、好ましくは(i)の後に行う。
酸性物質としては、有機酸、無機酸のいずれであってもよい。
有機酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、パラトルエンスルホン酸が挙げられる。
上記(ii)の反応の温度は、好ましくは10~100℃であり、より好ましくは20~80℃であり、更に好ましくは20~70℃である。
【0088】
製造方法は、(iii)pHを調整することを含んでいてもよい。また、(i)、(ii)、(iii)の間に精製する工程を含んでいてもよい。
【0089】
[化合物B5等]
本発明の一実施形態は、式(B5)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩(以下、式(B5)で表される化合物を「化合物B5」ともいう。)に関する。化合物B5等は、上述の化合物A3等を合成する、或いは、上述の標的分子認識素子を導入し化合物B4を合成することを容易にする。
【化74】
【0090】
式(B5)中、各置換基は以下のとおりである。
式中、R80は、ヒドロキシ基、*-OCH281(式中、R81は、置換又は無置換の2-ナフチル基、又はp-メトキシフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基、又は、*-OSi(R823(式中、R82は、炭素数1~4のアルキル基、又はフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基である。
式(B5)中、R80がヒドロキシ基である化合物(以下、「化合物B5-OH」ともいう)は、上述のL基を導入しやすくし、化合物B3の合成を容易にする。
式(B5)中、R80が*-OCH281(式中、R81は、置換又は無置換の2-ナフチル基、又はp-メトキシフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基、又は、*-OSi(R823(式中、R82は、炭素数1~4のアルキル基、又はフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基である化合物(以下、「化合物B5-OR」ともいう)は、標的分子認識素子を導入することを容易にする。
また、化合物B5-ORは、上述のR80基をOH基へと誘導しやすくし、化合物B5-OHの合成を容易にする。
【0091】
*-OCH281で表される基としては、例えば、
【化75】

が挙げられる。
*-OSi(R823で表される基としては、例えば、
【化76】

が挙げられる。
1は、式(a-11)、(a-12)、(a-13)又は(a-14)で表される基である。式(a-11)、(a-12)、(a-13)又は(a-14)は、上述と同定義である。
【0092】
上記化合物B5の具体例として、例えば、下記の化合物B5-1~B5-8,B5-11~B5-18が挙げられる。
【化77】
【0093】
【化78】
【0094】
化合物B5等に、標的分子認識素子を結合させてなる化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩としてもよい。当該化合物等に、更に放射性原子を導入して用いてもよい。
【0095】
[化合物B6等]
本発明の一実施形態は、式(B6)で表される化合物、又はその薬理学的に許容可能な塩(以下、式(B6)で表される化合物を「化合物B6」ともいう。)に関する。化合物B6等は、上述の化合物A4等を合成することを容易にする。
【化79】

80は、式(B5)と同定義である。
1’は、式(A4)、式(B4)と同定義であり、L1,p1,p2,P1は、式(A2)、式(B2)と同定義である。
但し、化合物B6のうち、新規性を有する化合物B6は、上述の化合物A6において、P1が、式(b-51):
【化80】

〔式中、b9は、0又は1であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、且つ、p1=p2=0である場合を除く。
新規性を有する化合物B6は、上述の化合物B6において、好ましくは、P1が、式(b-52):
【化81】

〔式中、b9は、0又は1であり、R38は、水素、メチル基、ヒドロキシメチル基であり、*は、結合部位である。〕で表される基であり、且つ、p1=p2=0である場合を除く。
【0096】
式(B6)中、R80がヒドロキシ基である化合物(以下、「化合物B6-OH」ともいう)は、上述のL基を導入しやすくし、化合物B4の合成を容易にする。
式(B6)中、R80が*-OCH281(式中、R81は、置換又は無置換の2-ナフチル基、又はp-メトキシフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基、又は、*-OSi(R823(式中、R82は、炭素数1~4のアルキル基、又はフェニル基であり、*は、結合部位である。)で表される基である化合物(以下、「化合物B6-OR」ともいう)は、上述のR80基をOH基へと誘導しやすくし、化合物B6-OHの合成を容易にする。
【0097】
上記化合物B6の具体例として、例えば、下記の化合物B6-1~B6-2,B6-11~B6-18が挙げられる。
【化82】
【0098】
【化83】
【0099】
【化84】
【0100】
[化合物A3等、化合物B3等、化合物A4等、又は、化合物B4等の製造方法]
本発明の一実施形態に係る製造方法について以下に説明する。
化合物A3等、又は化合物B3等の製造方法は、化合物B5-OHとスルホン酸無水とを反応させることを含む。
【0101】
化合物A3等の製造方法は、
(i)化合物B5-OHとスルホン酸無水とを反応させること
(ii)酸性物質と混合すること、
を含む。
スルホン酸無水としては、化合物A3等、又は化合物B3等に導入するL基の種類に応じて選択でき、例えば、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物が挙げられる。
【0102】
化合物A4等、又は化合物B4等の製造方法は、化合物B6-OHとスルホン酸無水又はスルホニルクロリドとを反応させることを含む。
【0103】
化合物A4等の製造方法は、
(i)化合物B6-OHとスルホン酸無水又はスルホニルクロリドとを反応させること
(ii)酸性物質と混合すること、
を含む。
スルホン酸無水としては、上述の方法と同様である。
スルホニルクロリドとしては、化合物A4等、又は化合物B4に導入するL基の種類に応じて選択でき、例えば、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、p-トルエンスルホニルクロライドが挙げられる。
【0104】
[キット]
本発明のキットは、上記化合物と、上記金属を含む薬剤とを、別々の包装単位として含む。
本発明のキットは、例えば、化合物B3又は化合物B4等と、放射性原子を含む薬剤とを、別々の包装単位として含む。
キットに含まれる化合物及び薬剤はいずれも、必要に応じて、上記のような1種類又は2種類以上の医薬的に許容される担体(医薬用担体)を含むことができる。
【実施例
【0105】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、以下の実験は、千葉大学の動物倫理委員会によって承認された後に実施された。
【0106】
下記実施例及び比較例で、置換基、化合物、及び有機溶媒について、下記の略号を使用した。
tBu:ターシャリーブチル基
TfO:トリフルオロメタンスルホナート基
Fmoc:フルオレニルメトキシカルボニル基
DMF:ジメチルホルムアミド
TFA:トリフルオロ酢酸
MeCN:アセトニトリル
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール
PBS:リン酸緩衝生理食塩液
EDC.HCl:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩
【0107】
[測定方法、実験動物]
下記実施例及び比較例において、各種物性等の測定方法は下記の方法で行った。
【0108】
〔NMR(核磁気共鳴)〕
1H-NMRによる分析はJEOL ECS - 400 spectrometer (日本電子株式会社)を使用した。
【0109】
〔ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)〕
ESI-MSによる分析はHPLC1200 series-6130 quadrupole LC/MS mass spectrometer (アジレント・テクノロジー株式会社)を使用した。
【0110】
〔逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)及び分子ふるい高速液体クロマトグラフィ(SE-HPLC)〕
逆相高速液体クロマトグラフィ(以下「RP-HPLC」ともいう)による分析はUV検出器として「L-7405」(株式会社日立製作所)、送液ポンプとして「L-7100」(株式会社日立製作所)、分析用カラムとして「Imtakt US C-18」(4.6 mm x 150 mm, インタクト株式会社)を用いた。
移動相に水(A相)、メタノール(B相)を用い、0-25 minでA相40% (v/v)、B相60% (v/v)からA相0% (v/v)、B相100% (v/v)まで変化させる直線グラジエント法 (system A)、移動相に0.01 Mリン酸緩衝液 (pH 7.0)(A相)、メタノール(B相)を用い、0-25 minでA相40% (v/v)、B相60% (v/v) からA相0% (v/v)、B相100% (v/v)まで変化させる方法、移動相に水(A相)、アセトニトリル(B相)を用い、0-25 minでA相40% (v/v)、B相60% (v/v)からA相0% (v/v)、B相100% (v/v)まで変化させる直線グラジエント法 (system C)、移動相に水(A相)、アセトニトリル(B相)を用い、0-20 minでA相90% (v/v)、B相10% (v/v)からA相70% (v/v)、B相30% (v/v)まで変化させ、20-30 minでA相0% (v/v)、B相100% (v/v)まで変化させる直線グラジエント法 (system D)、又は、移動相に水(A相)、アセトニトリル(B相)を用い、0-5 minをA相95% (v/v)、B相5% (v/v)で維持し、5-20 minでA相70% (v/v)、B相30% (v/v)まで変化させ、20-30 minでA相0% (v/v)、B相100% (v/v)まで変化させる直線グラジエント法 (system E)により流速1.0 mL/minで溶出した。
溶出液は254 nmの吸光度を計測し、125I標識化合物の分析にはγ線検出器 Gabi star (Raytest社) をオンラインで接続することで分析した。
【0111】
〔実験動物〕
動物実験は、雄性のddY系SPFマウス6週齢 雄性のICR系SPFマウス6週齢 (日本エスエルシー株式会社)を使用した。
【0112】
[化合物B1(標識体1),化合物A1(標識体2)の合成]
合成例A1:化合物A1及び化合物B1の合成
【化85】
【0113】
合成例A1(a): 標識体1の合成
化合物1(100 μg)をアセトニトリル50 μLに溶解した後、[125I]NaIを1.0 μL加え、110℃で1時間反応した。溶液を室温に戻した後、反応液をHPLCにて精製し、目的物を含む画分を減圧濃縮し、標識体1の水溶液を得た。(放射化学的収率91.9%)
HPLCの保持時間:24.5 min (system A)
TLCのRf値:0.75-0.8 (ヘキサン/酢酸エチル=1/2)
【0114】
合成例A1(b): 標識体2の合成
標識体(1)の濃縮液にアセトニトリル50 μLを加えた後、パラトルエンスルホン酸水溶液(0.2 mg/10 μL)を加えて、60 μCで30分間反応した。溶液を室温に戻した後、溶液を中和し、HPLCにて精製した。溶液を減圧濃縮し、標識体2の水溶液を得た。(放射化学的収率>99%、放射化学的純度>99%)
HPLCの保持時間:15.7 min (system B)
TLCのRf値:0.55-0.6 (ヘキサン/酢酸エチル=1/4)
【0115】
[化合物B2(標識体3),化合物A2(標識体4)の合成]
合成例B1:化合物3及び化合物4の合成
【化86】
【0116】
合成例B1(a): 標識体3の合成
化合物21(1 mg)をアセトニトリル100 μLに溶解した後、[125I]NaIを0.5 μL加え、120 μCで1時間反応した。溶液を室温に戻した後、TLCで分析することで反応終了を確認した。メタノール、次いで水によって平衡化した固相抽出カラム「Sep-pak C-18」(日本ウォーターズ株式会社)に反応液をアプライし、水による洗浄後、メタノールで溶出した画分を減圧濃縮し、標識体3を得た。(放射化学的収率87.3%)
なお、化合物21は、特開2017-052713に記載の方法に従って合成できる。
HPLCの保持時間:9.6 min (system C)
TLCのRf値:0.5-0.55 (トルエン/酢酸エチル=1/1)
【0117】
合成例B1(b): 標識体4の合成
標識体3の濃縮液にパラトルエンスルホン酸水溶液を加えて、60℃で30分間反応した。溶液を室温に戻した後、TLCで分析することで反応終了を確認したうえで、溶液を中和し、HPLCにて精製した。溶液を減圧濃縮し、標識体4の水溶液を得た。(放射化学的収率>99%)
HPLCの保持時間:16.2 min (system D)
TLCのRf値:0.55-0.6 (トルエン/酢酸エチル=2/1)
【0118】
合成例B2:標識体5の合成
211Atのクロロホルム溶液から、窒素気流でクロロホルムを留去した容器に0.1 N NaOH (0.5 μL)を加えた。化合物21 (20 μg)をアセトニトリル100 μLに溶解し、211At水溶液に加え、120℃で1時間反応した。溶液を室温に戻した後、パラトルエンスルホン酸水溶液を加えて、60℃で30分間反応した。溶液を室温に戻した後、中和し、HPLCにて精製した。精製画分の溶液に対して、その半量のエタノールを加えた後、減圧濃縮し、標識体5の水溶液を得た。(放射化学的収率13.9%、放射化学的純度98.1%)
HPLCの保持時間:16.3 min (system D)
【0119】
[化合物B5(化合物25)の合成]
合成例C1:化合物25の合成
【化87】
【0120】
合成例C1(a):化合物22の合成
水素化ナトリウム(55%, 4.33g, 105 mmol)を乾燥ヘキサンで洗浄し、アルゴン雰囲気下、DMF (10.0 mL) に懸濁させた。その懸濁液に、DMF (46 mL)に溶かした化合物21(14.0 g, 87.4 mmol)を氷冷却下滴下した。1時間攪拌した後、その反応溶液中に、DMF (20 mL)に溶かした2-(ブロモメチル)ナフタレンを同じ温度で滴下した。TLC分析(トルエン/アセトン=7/3)により反応の終了を確認した後、エタノール及び水を加えて反応を停止させた。その後、NaCl水溶液を加えた後、水相を酢酸エチルを用いて抽出した。得られた有機相を減圧濃縮し、されに、トルエンと共沸させることにより、DMFを除去した。得られた残渣をメタノール(100 mL) に溶解させた後、3 M HCl水溶液 (10.0 mL)を加え、40℃で加熱した。TLC分析(ヘキサン/酢酸エチル=4/1又はクロロホルム/メタノール=9/1)により、反応の終了を確認後、反応溶液を減圧濃縮、最後に、トルエンを加え、メタノールを共沸により減圧下した。得られた残渣をジエチルエーテルとメタノールを用いて再結晶することにより、化合物22(22.3 g, 70.4 mmol, 収率81%)を得た。
13C NMR (400 MHz CD3OD): δ 137.5, 134.8, 134.4, 129.2, 129.0, 128.8, 127.2, 127.1, 126.8, 126.7, 74.6, 71.1, 63.3, 46.9
【0121】
合成例C1(b):化合物23の合成
化合物22(2.98 g, 10.9 mmol) と(-)-カンファースルホン酸(0.199 mmol, 46.2 mg)をアルゴン置換し、DMF(21.8 mL)に溶解させた。混合溶液に2,2-ジメトキシプロパン(1.40 m, 14.2 mmol)を氷冷下滴下した。室温下、撹拌した後、TLC分析(クロロホルム/メタノール=9/1、又は、ヘキサン/酢酸エチル=1/1)により、反応の終了を確認した後、トリエチルアミンを用いて中和し、反応溶液を飽和食塩水にに注いた後、酢酸エチルを用いて水相を抽出した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、硫酸マグネシウムをろ別した。得られた溶液を減圧し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 4/1)より精製し、得られた残渣を、クロロホルム:ジクロロメタン:酢酸エチル:ヘキサン溶液を用いて、再結晶することにより、化合物23(1.93 g, 6.65 mmol, 収率61%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 7.90-1.83 (m, 3H), 7.75 (brs, 1H), 7.50-7.45 (m, 2H), 7.43 (d, 1H, J = 8.4 Hz), 4.70, (s, 2H), 3.78 (s, 4H), 3.70 (s, 2H), 3.61 (s, 2H), 1.41 (s, 3H), 1.39 (s, 3H); 13C NMR (400 MHz CD3Cl): δ 135.4, 133.3, 133.2, 128.5, 128.0, 127.8, 126.7, 126.3, 126.1, 125.6, 98.6, 74.0,72.3, 65.1, 63.0, 39.1, 24.2, 23.5
【0122】
合成例C1(c):化合物24の合成
水素化ナトリウム(55%, 566 mg, 12.6 mmol)を乾燥ヘキサンで洗浄し、アルゴン雰囲気下、DMFに懸濁させた。その懸濁液に、DMF (17.6 mL)に溶かした化合物23(2.0 g, 6.32 mmol)を氷冷却下滴下した。30分間攪拌した後、その反応溶液中に、ブロモ酢酸tert-ブチル (1.39 mL, 9.48 mmol) を氷冷下滴下した。室温下1時間反応させた後、エタノール、水を加え反応を停止させた後、水相を酢酸エチルを用いて抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させた。硫酸ナトリウムをろ別した溶液を減圧下濃縮してえられた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5/2)用いて精製することにより、化合物24(1.55g , 3.60 mmol, 収率57%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 7.83-7.80 (m, 3H), 7.76 (brs, 1H), 7.48-7.43 (m, 3H), 4.68 (s, 2H), 3.94 (s, 2H), 3.83 (s, 4H), 3.57 (d, 2H, J = 15 Hz), 3.56 (d, 2H, J = 15 Hz), 1.47 (s, 9H), 1.42 (s, 3H), 1.40 (s, 3H)
【0123】
合成例C1(d):化合物25の合成
化合物24 (450 mg, 1.04 mmol)をジオキサン(3.50 mL)と 1 M NaOH水溶液の混合溶液に溶解させ、100℃に加熱した。TLC分析(ヘキサン/酢酸エチル=5/2、又は、クロロホルム/メタノール=9/1)により反応の終了を確認したら、トルエンを加え、減圧下濃縮することにより、水及びジオキサンを完全に除去した。残渣を水に溶解させた後、酢酸エチルとの2相系にした後、氷冷下1 M 塩酸を加え中和した。pHが6.0程度になったことを確認した後、水相を酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を減圧下濃縮した後、得られた残渣をエーテル及びヘキサンで再結晶することにより、化合物25(274 mg, 0.733 mmol, 収率70%)で得た。
1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 7.85-7.83 (m, 3H), 7.75 (brs, 1H), 7.50-7.43 (m, 3H), 4.70 (s, 2H), 4.09 (s, 2H), 3.74 (s, 4H), 3.66 (s, 2H), 3.50 (s, 2H), 1.40 (s, 3H), 1.38 (s, 3H)
【0124】
[化合物B3(化合物28)の合成]
合成例C2:化合物28の合成
【化88】
【0125】
合成例C2(a):化合物26の合成
4-ニトロフェノール(18.5 mg, 0.133 mmol)のジクロロメタン溶液(0.55 mL)中に、ジイロプロピルエチルアミン(0.05 mL, 0.290 mmol)、化合物25 (29.3 mg, 0.0783 mmol)及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(20.3 mg, 0.106 mmol)を室温下、加えた。室温下反応させた後、反応溶液を飽和塩化アンモニム水溶液に注ぎ、水相を酢酸エチルで抽出した後、有機相を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧下濃縮して得られる残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)を用いて精製した。得られた混合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて更に精製することにより、化合物26(5.70 mg, 0.015 mmol, 収率15%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 8.21 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 7.83-7.75 (m, 3H), 7.38 (s, 1H), 7.45-7.41 (m, 3H), 7.25 (d, 2H, J = 8.0 Hz), 4.67 (s, 2H), 4.33 (s, 2H), 3.84 (s, 4H), 3.74 (s, 2H), 3.55 (s, 2H), 4.46 (s, 6H).
【0126】
合成例C2(b):化合物27の合成
化合物26(86.9 mg, 0.175 mmol)の塩化メチレン(1.60 mL)溶液に水(0.20mL)を加えた。さらに、ジクロロジシアノキノン(50.2 mg, 0.221 mmol)を氷冷下加えた。TLC分析(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により反応の終了を確認した後に、反応溶液を重曹水に注いだ。水相をジクロロメタンで抽出した後、硫酸マグネシウムで有機相を乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別し、減圧下濃縮することに寄って得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製することにより、化合物27(34 mg,0.0957 mmol, 収率55%)で得た。
1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 8.30 (d, 2H, 9.2 Hz), 7.34 (d, 2H, J = 9.2 Hz), 4.41 (s, 2H), 3.78 (s, 2H), 3.76 (d, 2H, J = 12.0 Hz), 3.75 (d, 2H, J = 12.0 Hz)
【0127】
合成例C2(c):化合物28の合成
化合物27(8.3mg, 0.0234 mmol)の塩化メチレン溶液(0.315 mL)に2,6-ルチジン(0.00712 mL, 0.0618 mmol)を加えた。さらに、その溶液中に氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.00599 mL, 0.0355 mmol)を加えた。TLC分析(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)により反応の終了を確認した後、反応溶液水に注いだ。水相を酢酸エチルで抽出した後、飽和食塩水で有機相を洗浄した。えられた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムをろ別して、減圧下濃縮して得られた残渣を、渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製することにより、化合物28(6.2mg, 0.0127 mmol, 54%)で得た。
1H NMR (400 MHz, CD3Cl): δ 8.30 (d, 2H, 9.2 Hz), 7.33 (d, 2H, J = 9.2 Hz), 4.74 (s, 2H), 4.38 (s, 2H), 3.87 (d, 2H, J = 12.4 Hz), 3.76 (d, 2H, J = 12.4 Hz), 3.61 (s, 2H), 1.44 (s, 3H), 1.42 (s, 3H)
【0128】
[化合物35、化合物36の合成]
合成例D1:化合物35、化合物36の合成

【化89】
【0129】
合成例D1(a):化合物32の合成
化合物25 (27.3 mg, 73.0 μmol), 化合物31 (50.0 mg, 73.0 μmol), HOBt.H2O (11.2 mg, 73.0 μmol)をクロロホルムに溶解した溶液に氷冷下でEDC.HCl (14.0 mg, 73.0 μmol)を加えた。室温に戻し、1.5時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチルに再溶解し、5質量%クエン酸水溶液で3回、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール=30/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物32を得た(53.3 mg, 収率70.1%)。
なお、化合物31は、Journal of Medicinal Chemistry 2009, 52, 347-357に従って合成した。(ESI-MS: [M + H]+: 685.4, Found 685.5)
【0130】
合成例D1(b):化合物33の合成
化合物32(61.1 mg, 58.7 μmol)を塩化メチレン(3 mL)に溶解し、水(0.15 mL)を加えた溶液に2,3-dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone (26.6 mg, 117 μmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応液に5質量%クエン酸水溶液を加え、有機層を回収した後、クロロホルムで2回抽出した。有機層を混合し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール=20/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物33を得た(42.6 mg, 収率80.6%)。
【0131】
合成例D1(c):化合物34の合成
化合物33(15.3 mg, 17.0 μmol)を塩化メチレン(51.8 μL)に溶解し、トリエチルアミン(3.6 μL, 25.8 μmol)を加えた後、アルゴン雰囲気下、-20 ℃でmethanesulfonyl chloride (1.4 μL, 18.7 μmol)を加えた。溶液を室温に戻し、1.5時間撹拌した後、溶液に酢酸エチル(40 μL)と水(2 mL)を加え、10分程度撹拌した。その後、有機層を水、飽和食塩水で一回ずつ洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去することで化合物34を得た(11.6 mg, 収率69.7%)。
【0132】
合成例D1(d):化合物35の合成
化合物34 (22.6 mg, 23.1 μmol)をアセトニトリル (1 mL)に溶解し、NaI (34.6 mg, 0.231 mmol)を加え、100 ℃で24時間撹拌した。アセトニトリルを留去後、酢酸エチルに再溶解した。その後、飽和チオ硫酸ナトリウムで3回、飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、化合物35を得た。本化合物は精製を行わずに、そのまま次の反応に用いた。ESI-MS: [M+H]+: 1011, Found 1011
【0133】
合成例D1(e):化合物36の合成
化合物36をTFA (900 μL)、水(50 μL)、トリエチルシラン(50 μL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。N2ガスにより溶媒を留去し、RP-HPLCにより精製し、化合物36を得た。
ESI-MS: [M-H]-: 801, Found 801
【0134】
[化合物B2(標識体6)、化合物A2(標識体7)の合成]
【化90】
【0135】
合成例D2(a):標識体6の合成
化合物34(0.45 mg)をアセトニトリル (49 μL)に溶解し、[125I]NaI (1 μL)を加えた後、100 ℃に加熱し3時間静置した。その後、RP-HPLCにより精製し、標識体6(放射化学的収率88.1%)を得た。
RP-HPLC: Cadenza 5CW-C18 (150×10 mm)を用い、流速2 mL/minで水:アセトニトリル(40 : 60)を40分かけて(0 : 100)へと変更させた。本分析系において、標識体6の保持時間は21.68分であった。
【0136】
合成例D2(b):標識体7の合成
標識体6をTFA (900 μL)、水 (50 μL)、トリエチルシラン (50 μL)に溶解し、室温で1時間静置した。N2ガスにより溶媒を留去し、RP-HPLCにより精製し、標識体7 (放射化学的収率95.3%、放射化学的純度100%)を得た。
RP-HPLC: Cadenza 5CW-C18 (150×10 mm)を用い、流速2 mL/minで0.1% TFAを含む水:0.1% TFAを含むアセトニトリル(10 : 90)を40分かけて(60 : 40)へと変更させた。本分析系において、標識体7の保持時間は29.40分であった。
【0137】
[化合物49、化合物50の合成]
合成例E1:化合物50の合成
【化91】
【0138】
【化92】
【0139】
合成例E1(a):化合物42の合成
化合物41はJournal of Medicinal Chemistry 2009, 52, 347-357に従って合成した。(ESI-MS: [M + H]+: 685.4, Found 685.5)
化合物41(200 mg, 0.410 mmol), N-α-(9-Fluorenylmethoxycarbonyl)-β-(2-naphthyl)-L-alanine (179 mg, 0.410 mmol), HOBt.H2O (62.8 mg, 0.410 mmol)をDMF(5 mL)に溶解した溶液に氷冷下でEDC.HCl (78.6 mg, 0.410 mmol)を加えた。室温に戻し、2時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチルに再溶解し、5%クエン酸水溶液で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール=30/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物42を得た(262 mg, 70.5%)。
ESI-MS: [M + Na]+: 1114.6, Found 1114.7
【0140】
合成例E1(b):化合物43の合成
化合物42 (262 mg, 0.289 mmol)を20%ピペリジン/DMF (5 mL)に溶解し、室温で0.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、クロロホルム/メタノール=15/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物43を得た(198 mg, 91.3%)。
ESI-MS: [M + H]+:870.5 , Found 870.6
【0141】
合成例E1(c):化合物44の合成
化合物43(75.1 mg, 86.3 μmol), N-α-(9-Fluorenylmethoxycarbonyl)-β-(2-naphthyl)-L-alanine (38.3 mg, 86.3 μmol), HOBt・H2O (13.2 mg, 86.3 μmol)をクロロホルム (2 mL) に溶解した溶液に氷冷下でEDC・HCl (16.5 mg, 86.3 μmol)を加えた。室温に戻し、2時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチルに再溶解し、5%クエン酸水溶液で3回、5%炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール=20/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物44を得た (54.4 mg, 52.6%)。
ESI-MS: [M + Na]+: 1299.7, Found 1299.8
【0142】
合成例E1(d):化合物45の合成
化合物44 (48.4 mg, 37.9 μmol)を20%ピペリジン/DMF (2 mL)に溶解し、室温で0.5時間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、クロロホルム/メタノール=15/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物45(34.7 mg, 86.8%)を得た。
ESI-MS: [M+H]+: 1055.6, Found 1055.8
【0143】
合成例E1(e):化合物46の合成
化合物25 (10.2 mg, 27.2 μmol), 化合物45(34.8 mg, 27.2 μmol), HOBt.H2O (4.2 mg, 27.2 μmol)をクロロホルム(1 mL)に溶解した溶液に氷冷下でEDC.HCl (5.2 mg, 27.2 μmol)を加えた。室温に戻し、1.5時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残渣を酢酸エチルに再溶解し、5質量%クエン酸水溶液で3回、5質量%炭酸水素ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール=30/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物46を得た(34.7 mg, 65.7%)。
ESI-MS: [M + Na]+: 1433.8, Found 1434.1
【0144】
合成例E1(f):化合物47の合成
化合物46 (30.5 mg, 21.6 μmol)を塩化メチレン(3 mL)に溶解し、水(0.15 mL)を加えた溶液に2,3-dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone (9.8 mg, 43.2 μmol)を加え、室温で4時間撹拌した。反応液に5質量%クエン酸水溶液を加え、有機層を回収した後、クロロホルムで2回抽出した。有機層を混合し、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、クロロホルム/メタノール=20/1を展開溶媒とする分取用TLCで精製することで化合物47を得た(15.3 mg, 55.7%)。ESI-MS: [M + Na]+:1293.7, Found 1293.9
【0145】
合成例E1(g):化合物48の合成
化合物47 (15.3 mg, 17.0 μmol)を塩化メチレン(51.8 μL)に溶解し、トリエチルアミン(3.6 μL, 25.8 μmol)を加えた後、アルゴン雰囲気下、-20 °Cでmethanesulfonyl chloride (1.4 μL, 18.7 μmol)を加えた。溶液を室温に戻し、1.5時間撹拌した後、溶液に酢酸エチル(40 μL)と水(2 mL)を加え、10分程度撹拌した。その後、有機層を水、飽和食塩水で一回ずつ洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去することで化合物48を得た(11.6 mg, 71.4%)。
ESI-MS: [M + Na]+: 1371.7, Found 1371.8
【0146】
合成例E1(h):化合物49の合成
化合物48(22.6 mg, 23.1 μmol)をアセトニトリル (1 mL)に溶解し、NaI (34.6 mg, 0.231 mmol)を加え、100 ℃で24時間撹拌した。アセトニトリルを留去後、酢酸エチルに再溶解した。その後、飽和チオ硫酸ナトリウムで3回、飽和食塩水で3回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。無水硫酸ナトリウムを除去後、溶媒を減圧留去し、化合物49を得た。本化合物は精製を行わずに、そのまま次の反応に用いた。ESI-MS: [M + Na]+: 1403.6, Found 1403.8
【0147】
合成例E1(i):化合物50の合成
化合物49をTFA (900 μL)、水(50 μL)、トリエチルシラン(50 μL)に溶解し、室温で1時間撹拌した。N2ガスにより溶媒を留去し、RP-HPLCにより精製し、化合物50を得た。
ESI-MS: [M - H]-:1059.3 , Found 1059.3
【0148】
[化合物B2(標識体11)、化合物A2(標識体12)の合成]
【化93】
【0149】
合成例E2(h):標識体11の合成
化合物48(0.45 mg)をアセトニトリル (49 μL)に溶解し、[125I]NaI (1.0 μL)を加えた後、100 ℃に加熱し3時間静置した。その後、RP-HPLCにより精製し、標識体11(放射化学的収率41.6%)を得た。
RP-HPLC: Cadenza 5CW-C18 (150×10 mm)を用い、流速2 mL/minで水:アセトニトリル(40 : 60)を40分かけて(0 : 100)へと変更させた。本分析系において、標識体11の保持時間は19.9分であった。
【0150】
合成例E2(i):標識体12の合成
標識体11をTFA (900 μL)、水 (100 μL)に溶解し、室温で1時間静置した。N2ガスにより溶媒を留去し、RP-HPLCにより精製し、標識体12 (放射化学的収率54.7%、放射化学的純度 91.0%)を得た。
RP-HPLC: Cadenza 5CW-C18 (150×10 mm)を用い、流速1 mL/minで0.1% TFAを含む水:0.1% TFAを含むアセトニトリル(90 : 10)を30分かけて(60 : 40)へと変更させた後、さらに10分かけて(0 : 100)へ変更させた。本分析系において、標識体12の保持時間は26.1分であった。
【0151】
[特性の検討]
125I標識体の正常マウス体内動態の検討〕
125I標識体溶液をPBSにて希釈し、マウス一匹当たり11.1 kBq/100 μLを投与した。標識体2は投与後、10 min, 1, 3, 24 h (n=3)、標識体3は投与後、1, 3, 24 h (n=3)、標識体4は投与後、10 min, 1, 3, 24 h (n=5)で、標識体7は投与後、1 h (n=3)、標識体12は投与後、10 min, 1, 3, 6 h (n=3)マウスを屠殺後、関心臓器を摘出し、重量及び放射活性を測定した。また、370 kBq/100 μLを投与して6時間後までに集めた尿をMicrocon (10kDa)による限外ろ過を行った後、逆相HPLC (System E)にて分析した。
担がんモデルマウスは、LNCap細胞をヌードマウス(Balbc nu/nu、雄5週齢)の左足に5x 105個(100 μL, RPMI培地/マトリゲル:1/1)を移植し、2ヶ月後に標識体(12)をマウス一匹当たり11.1 kBq/100 μL投与した。投与後1 h後にマウスを屠殺し、関心臓器を摘出し、重量及び放射活性を測定した。
結果を図1及び図2に示す。図1は、標識体3投与後の尿分析の結果である。図2は、標識体4投与後の尿分析の結果である。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
【表6】
【0158】
211At標識体の正常マウス体内動態の検討〕
211At標識体5の水溶液をPBSにて希釈し、マウス一匹当たり50 kBq/100 μLを投与した。投与後、10 min, 1, 3, 24 h (n=3) でマウスを屠殺後、関心臓器を摘出し、重量及び放射活性を測定した。
【0159】
【表7】
【0160】
上記の尿分析を実施した標識体4と類似した動態をとること、遊離したAtが集積することが知られている臓器への集積が少ないことから、標識体5は、高い生体内安定性を示すと理解できる。
図1
図2