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特許7370537離型フィルム及び離型フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】離型フィルム及び離型フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20231023BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231023BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231023BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231023BHJP
   B29C 33/68 20060101ALI20231023BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/00 L
B32B27/18 J
B32B27/36
B29C33/68
H01L21/56 T
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020135572
(22)【出願日】2020-08-11
(62)【分割の表示】P 2019189755の分割
【原出願日】2019-10-16
(65)【公開番号】P2021062606
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】酒井 圭介
(72)【発明者】
【氏名】田中 奈名恵
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/080309(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/244447(WO,A1)
【文献】特開2007-065637(JP,A)
【文献】特開2000-066528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 33/00-33/76、39/00-39/44
B29C 43/00-43/58
C09C 1/00- 3/12
C09D 15/00-17/00
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂から形成されている基材層と、
導電性フィラー及び二酸化ケイ素粒子を含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層と
を有し、
前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときに、1μm~15μmであり、
前記四フッ化エチレン系樹脂は、反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体と硬化剤とを含む四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物であり、
前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対する前記二酸化ケイ素粒子の含有量が、5質量部~30質量部であり、
前記導電性フィラーの含有量は、前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、1質量部~25質量部であり、
前記導電性フィラーは、カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックは、DBP吸油量が200ml/100g以下であるファーネスブラックを少なくとも含み、
表面抵抗率Rsが1×10Ω以下である、
離型フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が60℃~95℃である、請求項1又は2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
前記表面層が、前記基材層の2つの面のうちの一方の面に積層されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記基材層の2つの面のうちの他方の面に、フッ素系樹脂から形成されている表面層が積層されている、請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項6】
半導体装置の封止のために用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項7】
前記封止において、前記導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている前記表面層が封止用樹脂に接するように配置される、請求項6に記載の離型フィルム。
【請求項8】
トランスファーモールド成形又はコンプレッションモールド成形のために用いられる、請求項1~7のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項9】
2回以上の成形のために用いられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の離型フィルム。
【請求項10】
ポリエステル系樹脂から形成されている基材層の2つの面のうちの一方の面に、導電性フィラー及び二酸化ケイ素粒子を含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層を形成する表面層形成工程を含み、
前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときに、1μm~15μmであり、
前記四フッ化エチレン系樹脂は、反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体と硬化剤とを含む四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物であり、
前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対する前記二酸化ケイ素粒子の含有量が、5質量部~30質量部であり、
前記導電性フィラーの含有量は、前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、1質量部~25質量部であり、
前記導電性フィラーは、カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックは、DBP吸油量が200ml/100g以下であるファーネスブラックを少なくとも含み、
製造される離型フィルムの表面抵抗率Rsが1×10Ω以下である、
離型フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルム及びその製造方法に関し、より詳しくは半導体装置の封止のために用いられる離型フィルム及びその製造方法、さらにより特にはトランスファーモールド成形又はコンプレッションモールド成形のために用いられる離型フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置を樹脂により封止するために、例えばトランスファーモールド成形法及びコンプレッションモールド成形法などの成形手法が用いられる。前記成形手法において、樹脂が金型内で硬化した後に、金型から成形体を容易にはずすためにしばしば離型フィルムが用いられる。これまで、離型フィルムに関して種々の提案がされている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、官能基Xを含有するフッ素樹脂(A)と離型成分(B)とを含む組成物から形成された塗膜と、非フッ素化ポリマーから形成された層とを含むことを特徴とする離型フィルムが開示されている。
また、下記特許文献2には、少なくとも離型性に優れた離型層(I)と、これを支持するプラスチック支持層(II)とを有する離型フィルムであって、上記プラスチック支持層(II)の170℃における200%伸長時強度が、1MPa~50MPaであり、かつ、当該離型フィルムの170℃におけるキシレンガス透過性が5×10-15(kmol・m/(s・m2・kPa))以下であることを特徴とするガスバリア性半導体樹脂モールド用離型フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-74201号公報
【文献】国際公開第2008/020543号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
離型フィルムは、上記のとおり、金型から成形体を容易にはずすために用いられる。離型フィルムは、樹脂硬化後に成形体から容易に剥がれることが求められる。
【0006】
また、半導体装置の製造において、半導体装置の静電破壊を防ぐことが必要である。静電破壊は、静電気放電(Electrostatic Discharge: ESD)によって発生する。 ESDによる半導体装置の破壊は、帯電した導体(又は半導体装置)が瞬時に放電することによって起こりうる。ESDによって半導体装置内に放電電流が流れ、局部的な発熱及び/又は電界集中により半導体装置が破壊されうる。近年、半導体装置の微細化が急速に進行するのに伴い、半導体装置のESDに対する耐性も低くなってきている。
【0007】
ESDの発生を防ぐために、半導体装置の製造ラインには、例えば帯電防止装置などの静電破壊防止手段が設けられている。しかしながら、静電破壊防止手段を半導体装置の製造ラインに設けることは、製造コストの上昇をもたらしうる。半導体装置の製造工程のうち、例えば半導体装置の封止工程において用いられる離型フィルムに静電気拡散性を付与することができれば、前記封止工程におけるESD対策をより低コストで行うことができると考えられる。
【0008】
以上を踏まえ、本発明は、静電気拡散性を有する離型フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定の構成を有する離型フィルムが、離型性に優れており、且つ、静電気拡散性を有するために適していることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリエステル系樹脂から形成されている基材層と、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層とを有し、且つ表面抵抗率Rsが1×1011Ω以下である離型フィルムを提供する。
本発明の一つの実施態様に従い、前記導電性フィラーがカーボンブラックを含み、且つ、前記四フッ化エチレン系樹脂が、さらにレーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときの平均粒径が1μm~15μmである粒子を含んでよい。
この実施態様において、前記カーボンブラックが、ケッチェンブラックを含みうる。
前記ケッチェンブラックのDBP吸油量が250ml/100g以上でありうる。
前記カーボンブラックが、ファーネスブラックをさらに含んでもよい。
この実施貸与において、前記カーボンブラックが、ファーネスブラックを含みうる。
前記粒子は無機粒子でありうる。
前記無機粒子は二酸化ケイ素粒子でありうる。
本発明の他の実施態様に従い、前記導電性フィラーが、カーボンブラックを含み、当該カーボンブラックが、ケッチェンブラックとファーネスブラックとを含みうる。
前記ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂でありうる。
前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は60℃~95℃でありうる。
前記表面層は、前記基材層の2つの面のうちの一方の面に積層されていてよい。
前記基材層の2つの面のうちの他方の面に、フッ素系樹脂から形成されている表面層が積層されていてよい。
本発明の離型フィルムは、半導体装置の封止のために用いられうる。
前記封止において、前記導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている前記表面層が封止用樹脂に接するように配置されうる。
本発明の離型フィルムは、トランスファーモールド成形又はコンプレッションモールド成形のために用いられうる。
本発明の離型フィルムは、2回以上の成形のために用いられうる。
【0011】
また、本発明は、ポリエステル系樹脂から形成されている基材層の2つの面のうちの一方の面に、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層を形成する表面層形成工程を含み、製造される離型フィルムの表面抵抗率Rsが1×1011Ω以下である、離型フィルムの製造方法も提供する。
また、本発明は、
ポリエステル系樹脂から形成されている基材層と、
導電性フィラー及び二酸化ケイ素粒子を含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層と
を有し、
前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときに、1μm~15μmであり、
前記四フッ化エチレン系樹脂は、反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体と硬化剤とを含む四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物であり、
前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対する前記二酸化ケイ素粒子の含有量が、5質量部~30質量部であり、
前記導電性フィラーの含有量は、前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、1質量部~25質量部であり、
前記導電性フィラーは、カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックは、DBP吸油量が200ml/100g以下であるファーネスブラックを少なくとも含み、
表面抵抗率Rsが1×10Ω以下である、
離型フィルムも提供する。
前記ポリエステル系樹脂が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂であってよい。
前記ポリエステル系樹脂のガラス転移温度が60℃~95℃であってよい。
前記表面層が、前記基材層の2つの面のうちの一方の面に積層されていてよい。
前記基材層の2つの面のうちの他方の面に、フッ素系樹脂から形成されている表面層が積層されていてよい。
前記離型フィルムは、半導体装置の封止のために用いられてよい。
前記離型フィルムは、前記封止において、前記導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている前記表面層が封止用樹脂に接するように配置されてよい。
前記離型フィルムは、トランスファーモールド成形又はコンプレッションモールド成形のために用いられてよい。
前記離型フィルムは、2回以上の成形のために用いられてよい。
また、本発明は、
ポリエステル系樹脂から形成されている基材層の2つの面のうちの一方の面に、導電性フィラー及び二酸化ケイ素粒子を含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層を形成する表面層形成工程を含み、
前記二酸化ケイ素粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときに、1μm~15μmであり、
前記四フッ化エチレン系樹脂は、反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体と硬化剤とを含む四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物であり、
前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対する前記二酸化ケイ素粒子の含有量が、5質量部~30質量部であり、
前記導電性フィラーの含有量は、前記四フッ化エチレン系樹脂中の反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、1質量部~25質量部であり、
前記導電性フィラーは、カーボンブラックを含み、
前記カーボンブラックは、DBP吸油量が200ml/100g以下であるファーネスブラックを少なくとも含み、
製造される離型フィルムの表面抵抗率Rsが1×10Ω以下である、
離型フィルムの製造方法も提供する。

【発明の効果】
【0012】
本発明により、離型性に優れており且つ静電気拡散性を有する離型フィルムが提供される。
なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の離型フィルムの構造の例を示す図である。
図2】トランスファーモールド成形における本発明の離型フィルムの使用方法の一例を示す図である。
図3】コンプレッションモールド成形における本発明の離型フィルムの使用方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものでない。
【0015】
1.第一の実施形態(離型フィルム)
【0016】
(1)第一の実施形態の説明
【0017】
本発明の離型フィルムは、ポリエステル系樹脂から形成されている基材層と、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層とを有し、且つ、表面抵抗率Rsが1×1011Ω以下である。導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層によって、上記上限値以下の表面抵抗率Rsを実現することができ、すなわち静電気拡散性を離型フィルムに付与することができる。また、本発明の離型フィルムは、当該表面層と当該基材層との組合せによって、優れた離型性を発揮することができ且つ静電気拡散性を有する。
【0018】
本発明の離型フィルムの表面抵抗率Rsは、上記のとおり1×1011Ω以下であり、好ましくは1×1011Ω未満であり、より好ましくは1×1010Ω以下であり、さらにより好ましくは1×10Ω以下であり、特に好ましくは1×10Ω以下、5×10Ω以下、3×10Ω以下、又は1×10Ω以下でありうる。本発明の離型フィルムの表面抵抗率Rsは、例えば1×10Ω以上であり、特には5×10Ω以上であり、より特には1×10Ω以上である。本発明の離型フィルムは、上記数値範囲内の表面抵抗率Rsを有することで、半導体装置の封止工程におけるESD発生を防ぐことができる。表面抵抗率Rsは、IEC(国際電気標準会議、International Electrotechnical Commission)規格61340-5-1に従い測定される。当該測定は、具体的には以下の通りに行われる。すなわち、まず、10cm×10cmの寸法を有する離型フィルムサンプルを得る。当該サンプルの成形体側表面層に、例えばデジタル超高抵抗/微少電流計(ADCMT5451、株式会社エーディーシー)の測定主電極(電極寸法φ50mm)及びガード電極(外径φ80mm、内径φ70mm)を接触させる。これらの電極を接触させた状態で10Vの電圧を印加し、そして表面抵抗率Rsを測定する。
【0019】
例えば単層の離型フィルムに静電気拡散性を付与するためには、当該単層の離型フィルムを形成する樹脂に導電性フィラーを添加することが考えられる。しかしながら、導電性フィラーを単層の離型フィルムに含める場合、例えばフィルム強度などのフィルム物性(特には強度及び伸び性)が低下しやすい。また、この場合において、離型性も低下することがある。前記フィルム物性及び離型性の低下は、例えば単層の離型フィルムの場合に現れやすい。例えば半導体装置封止工程において用いられる離型フィルムに関しては、強度、伸び性、及び離型性が重要な因子であり、これらの低下は特に問題になる。さらに、導電性フィラーを離型フィルム原料に含めることによって、単層の離型フィルムの成膜時における成膜性又は生産性の低下及びコストの増大がもたらされうる。さらには、前記成膜のために用いられる押出機の洗浄も困難を有する。
また、離型フィルムに静電気拡散性を付与するために、例えば表面層などに界面活性剤を加えることが考えられる。しかしながら、界面活性剤は、導電性付与効果が低く、さらに、四フッ化エチレン系樹脂は界面活性剤との相性も悪い。さらに、表面層が界面活性剤を含む場合、例えば離型性及び耐久性などの離型フィルムの物性が低下しうる。さらに、この場合において、界面活性剤のブリードアウトにより、離型フィルムとの接触面における汚染の発生が生じうる。さらに、界面活性剤の静電気拡散性は低湿度では発現しないことがあり、界面活性剤による静電気拡散性の発揮のためには湿度の条件の調整が必要になる場合がある。
本発明の離型フィルムは、上記のとおり、ポリエステル系樹脂から形成されている基材層と四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層という層構造を有し且つ当該表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂が導電性フィラーを含むという構成を有することによって、離型フィルムとしての優れた物性を維持しながら、静電気拡散性を有する。
【0020】
本発明の一つの実施態様に従い、前記導電性フィラーがカーボンブラックを含み、且つ、前記四フッ化エチレン系樹脂が、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときの平均粒径が1μm~15μmである粒子を含みうる。
前記粒子を含むことで、カーボンブラックによる静電気拡散性を向上させることができる。そのため、前記粒子を含む場合において、より少ない量のカーボンブラックで所望の静電気拡散性を離型フィルムに付与することができる。これは、カーボンブラックの離型フィルムへの添加による物性低下を防ぐことにも貢献する。
また、前記粒子が前記表面層に含まれることによって、離型フィルムの離型性が向上する。
また、カーボンブラックに加えて前記粒子を含むことによって、カーボンブラックの前記四フッ化エチレン系樹脂中における分散性が向上し、さらに、離型フィルムの外観を改善することもできる。
【0021】
前記実施態様において、前記カーボンブラックは、好ましくはケッチェンブラックを含む。ケッチェンブラックを含む場合、前記粒子による分散性向上効果が特に発揮されやすい。また、ケッチェンブラックは、他のカーボンブラックと比べて、より少ない量で静電気拡散性を付与することができる。そのため、離型フィルムの物性への影響を抑制しつつ、所望の静電気拡散性を離型フィルムに付与することができる。
【0022】
前記実施態様において、前記カーボンブラックは、特に好ましくは、ファーネスブラックをさらに含む。ケッチェンブラックとファーネスブラックとの組合せを含むことによって、ケッチェンブラックを含む場合に関して上記で述べた効果に加えて、離型フィルムの外観が改善されるという効果が奏される。より具体的には、フィルム表面の黒色がより均一になる。
【0023】
前記実施態様において、前記カーボンブラックは、ファーネスブラックを含んでもよい。ファーネスブラックを含む場合においても、前記粒子による4フッ化エチレン系樹脂中における分散性向上効果が発揮されうる。なお、ファーネスブラックよりも、ケッチェンブラックのほうが、より少ない質量で静電気拡散性を付与することができる。
【0024】
本発明の他の実施態様に従い、前記導電性フィラーが、カーボンブラックを含み、当該カーボンブラックが、ケッチェンブラックとファーネスブラックとを含みうる。この実施態様において、前記一つの実施態様に関して述べた平均粒径が1μm~15μmである前記粒子は含まれなくてよい。ケッチェンブラックとファーネスブラックとの組み合わせによって、前記粒子を含まなくても、カーボンブラックの4フッ化エチレン系樹脂中での分散性を向上させることができる。
【0025】
本発明のさらに他の実施態様に従い、前記導電性フィラーがカーボンブラックを含みうる。この実施態様において、前記一つの実施態様に関して述べた平均粒径が1μm~15μmである前記粒子は含まれなくてよい。この実施態様において、前記カーボンブラックは好ましくはケッチェンブラックである。
【0026】
本発明の離型フィルムは、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層を、一方の表面を構成していてよく、又は、両方の表面を構成していてもよい。
また、前記表面層は、前記基材層の2つの面のうちの一方の面に積層されていてよく(すなわち前記基材層の前記一方の面に直接に前記表面層が積層されていてよい)、又は、前記表面層と前記基材層との間に他の層が存在していてもよい。
【0027】
(2)本発明の離型フィルムの構成例
【0028】
本発明の離型フィルムの構造の一例を図1に示す。図1に示されるとおり、本発明の離型フィルム100は、基材層101と、その両面に積層された表面層102及び103とから構成されている。
基材層101は、ポリエステル系樹脂から形成されている。
表面層102は、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている。離型フィルム100を半導体装置の封止において用いる場合、表面層102が、封止用樹脂に接するように配置される。表面層102によって、離型フィルムに静電気拡散性が付与される。
表面層103は、例えばフッ素系樹脂から形成されてよく、好ましくは四フッ化エチレン系樹脂から形成されていてよい。表面層103を形成するフッ素系樹脂は、導電性フィラーを含まなくてよく、又は、含んでもよい。離型フィルム100を半導体装置の封止において用いる場合、表面層103が、金型に接するように配置される。表面層103がフッ素系樹脂、特には四フッ化エチレン系樹脂から形成されていることによって、離型フィルム100が優れた離型性を発揮するとともに、金型汚染(特にはオリゴマーによる金型汚染)を防ぐことができる。
以上のとおり、本発明の離型フィルムは、例えばポリエステル系樹脂から形成されている基材層と、当該基材層の一方の面に積層されており且つ導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている第一表面層と、当該基材層の他方の面に積層されており且つフッ素系樹脂(好ましくは四フッ化エチレン系樹脂)から形成されている第二表面層とを有しうる。
なお、前記基材層と前記第一表面層及び/又は前記第二表面層との間に、他の層が存在していてもよいが、例えば製造コストを下げるために、本発明の離型フィルムは、前記基材層と当該基材層に積層された前記第一表面層及び前記第二表面層の三層構造を有しうる。
【0029】
(3)本発明の離型フィルムの使用方法
【0030】
本発明の離型フィルムは、半導体装置の封止のために用いられうる。前記封止において、前記導電性フィラーを含む表面層が封止用樹脂に接するように配置される。本発明の離型フィルムは、当該封止におけるESDの発生を抑制することができ、半導体装置の静電破壊を防ぐことができる。そのため、本発明の離型フィルムは、前記封止を行うための金型及び装置の周辺に設けられていた帯電防止装置を不要にすることができ、製造コストの削減に貢献する。
【0031】
半導体装置の封止のための成形手法は、当業者により適宜選択されてよい。当該成形手法として、例えば、トランスファーモールド成形及びコンプレッションモールド成形を挙げることができ、本発明の離型フィルムはこれら成形における使用に適している。本発明の離型フィルムは、例えばトランスファーモールド成形又はコンプレッションモールド成形において、金型と樹脂との間に配置されて使用されうる。これら成形において(特には封止用樹脂が硬化される工程において)、前記導電性フィラーを含む表面層が当該樹脂に接し、且つ、他方の表面層が当該金型に接する。本発明の離型フィルムが使用される成形における成形温度は、例えば100℃~250℃であり、好ましくは120℃~200℃でありうる。
【0032】
トランスファーモールド成形における本発明の離型フィルムの使用方法の一例を、図2を参照して説明する。
図2(A)に示されるとおり、本発明の離型フィルム100が、上側金型201及び半導体素子搭載基板202を載せられた下側金型203との間に配置される。ここで、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層102が後述の樹脂204に接するように且つ他方の表面層103が後述の上側金型201の内面に接するように、離型フィルム100は配置される。
次に、図2(B)に示されるとおり、離型フィルム100が金型201の内面に張り付いた状態で、上側金型201を基板202及び下側金型203に接触させる。この状態において、表面層103が上側金型201の内面に接触している。
次に、図2(C)に示されるとおり、樹脂204が、上側金型201と基板202との間に導入され、その後、樹脂204が硬化する。この段階において、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層102が樹脂204に接触している。
硬化後に、図2(D)に示されるとおりに、上側金型201を基板202から離す。本発明の離型フィルムは、離型性に優れているので、図2(D)の工程において、硬化した樹脂204を上側金型201からスムーズに離型することを可能にする。
離型フィルムの離型性が良好でない場合、例えば図2(E)に示されるように、離型フィルム250が、硬化した樹脂204にくっついてしまうことがある。
【0033】
コンプレッションモールド成形における本発明の離型フィルムの使用方法の一例を、図3を参照して説明する。
図3(A)に示されるとおり、本発明の離型フィルム100が、下側金型301及び半導体素子が搭載された基板302が取り付けられた上側金型303との間に配置される。ここで、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層102が後述の樹脂304に接するように且つ他方の表面層103が後述の下側金型301の内面に接するように、離型フィルム100は配置される。
次に、図3(B)に示されるとおり、離型フィルム100が下側金型301の内面に張り付いた状態で、下側金型301の窪み内に樹脂304が配置される。この段階において、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層102が樹脂304に接触しており、且つ、表面層103が下側金型301の内面に接触している。
図3(C)に示されるとおり、上側金型303を移動させて下側金型301に接触させる。その後、樹脂304が硬化する。
硬化後に、図3(D)に示されるとおりに、上側金型303を下側金型301から離す。本発明の離型フィルムは、離型性に優れているので、図3(D)の工程において、硬化した樹脂304を、下側金型301からスムーズに離型することを可能にする。
【0034】
本発明の離型フィルムは、種々の樹脂の成形のために用いられてよく、例えばエポキシ樹脂又はシリコーン樹脂の成形のために用いられうる。成形体を形成するための樹脂の種類は当業者により適宜選択されてよい。
【0035】
本発明の離型フィルムは、例えば2回以上、好ましくは4回以上、より好ましくは5回以上、より好ましくは6回以上、さらにより好ましくは8回以上の成形のために用いられうる。本発明の離型フィルムは、例えば2回~20回、好ましくは4回~15回、より好ましくは5回~15回、より好ましくは6回~15回、さらにより好ましくは8回~12回の成形のために用いられうる。本発明の離型フィルムは複数回の離型を通じてその性能を維持し且つ破れにくい。そのため、複数回の成形に本発明の離型フィルムを用いることができる。これにより、成形コストを削減することができる。
【0036】
(4)本発明の離型フィルムを構成する層の詳細
【0037】
(4-1)基材層
【0038】
本発明の離型フィルムに含まれる基材層は、ポリエステル系樹脂から形成されている。ポリエステル系樹脂は、ポリエステルを主たる成分として含む樹脂であってよい。前記ポリエステルは、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PBN(ポリブチレンナフタレート)、PCT(ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、PEB(ポリエチレン-p-オキシベンゾエート)、及びポリエチレンビスフェノキシカルボキシレートのうちの1種又は2種以上の混合物であってよい。
好ましくは、前記ポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂である。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを主たる成分として含む樹脂であってよい。
本明細書内において、「主たる成分」とは、樹脂を構成する成分のうち最も含有割合が高い成分であることを意味する。例えば樹脂の主たる成分がポリエステルであることは、樹脂中のポリエステルの含有割合が例えば当該樹脂の質量に対して50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、若しくは98質量%以上であることを意味してよく、又は、当該樹脂がポリエステルのみから構成されることを意味してもよい。樹脂の主たる成分がポリエチレンテレフタレートである場合についても同様である。
【0039】
本発明の好ましい実施態様の一つに従い、前記離型フィルムに含まれる基材層は、易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成されていてよい。易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂(易成型PET樹脂ともいう)は、通常のポリエチレンテレフタレート樹脂よりも優れた成形性を有するPET樹脂を言うために用いられる語である。前記基材層が前記易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂により形成されていることが、本発明の離型フィルムの低汚染性に特に寄与する。
【0040】
本発明の好ましい実施態様の一つに従い、前記基材層を形成するポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、好ましくは60℃~95℃であり、より好ましくは65℃~90℃でありうる。例えば、前記易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂は、上記数値範囲内のガラス転移温度を有する。基材層を形成する樹脂が当該数値範囲内のガラス転移温度を有することが、本発明の離型フィルムを複数回の成形において使用可能とすることに寄与する。
通常のポリエチレンテレフタレートは、一般的に100℃以上のガラス転移温度を有する。前記易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のガラス転移温度は、汎用ポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度よりも低い。
前記ガラス転移温度は、示差熱分析(DTA)により測定される。
【0041】
前記易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂は、例えば共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂であってよい。共重合ポリエチレンテレフタレートは、例えばテレフタル酸とエチレングリコールと共重合成分とを反応させることにより得られてよく、又は、共重合成分のポリマーとポリエチレンテレフタレートとを混合及び溶融し次に分配反応をさせることにより得られてもよい。
前記共重合成分は、例えば酸成分であってよく又はアルコール成分であってもよい。前記酸成分として、芳香族二塩基酸(例えばイソフタル酸、フタル酸、及びナフタレンジカルボン酸など)、脂肪族ジカルボン酸(例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びデカンジカルボン酸など)、及び脂環族ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸など)を挙げることができる。前記アルコール成分として、脂肪族ジオール(例えばブタンジオール、ヘキサンジオール、及びネオペンチルグリコールなど)及び脂環族ジオール(例えばシクロヘキサンジメタノールなど)を挙げることができる。前記共重合成分として、これらの化合物のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせが用いられてよい。前記酸成分は、特にはイソフタル酸及び/又はセバシン酸でありうる。
【0042】
前記易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成される基材層として、市販入手可能なものを用いてもよい。例えば、前記基材層として、テフレックス(商標)FT、テフレックス(商標)FT3、及びテフレックス(商標)FW2(いずれも帝人フィルムソリューション株式会社製)を用いることができる。また、前記基材層として、エンブレットCTK-38(ユニチカ株式会社製)が用いられてよい。
前記易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成される基材層は、例えば特開平2-305827号公報、特開平3-86729号公報、又は特開平3-110124号公報に記載された方法により製造されてもよい。本発明の一つの好ましい実施態様に従い、前記基材層は、これらの公報のいずれかに記載されるように、面配向係数が好ましくは0.06~0.16、より好ましくは0.07~0.15となるように、易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂を二軸延伸したものであってよい。
【0043】
前記基材層の引張破断強度は、JIS K7127に従い175℃で測定された場合に、好ましくは40MPa~200MPaであり、より好ましくは40MPa~120MPaであり、さらにより好ましくは40MPa~110MPaであり、特に好ましくは45MPa~100MPaでありうる。
前記基材層の引張破断伸びは、JIS K7127に従い175℃で測定された場合に、好ましくは200%~500%であり、より好ましくは250%~450%であり、さらにより好ましくは300%~400%でありうる。
前記基材層が上記数値範囲内の引張破断強度及び/又は引張破断伸びを有することが、本発明の離型フィルムを複数回の成形において使用可能とすることに寄与する。上記数値範囲内の引張破断強度及び引張破断伸びは、例えば基材層を易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成することによって得られうる。易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂は、汎用のPET樹脂よりも伸張性に優れている。
【0044】
前記基材層のポリエステル系樹脂が易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂であることによって、本発明の離型フィルムは、成形における汚染性が低い。さらに、本発明の離型フィルムは、複数回の成形のために使用することができる。本発明の離型フィルムにより奏される効果を、以下でより詳細に説明する。
【0045】
ポリエチレンテレフタレート樹脂には、その製造において生じる重合度の低いオリゴマーが含まれている。ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成される層を含む離型フィルムを用いて成形を行うと、当該オリゴマーが当該離型フィルム表面に移行し、そして、成形体及び/又は金型表面を汚染する場合がある。当該汚染は、ポリエチレンテレフタレート樹脂層の表面に例えばフッ素樹脂層を積層しても起こり得る。これは、当該オリゴマーが当該フッ素樹脂層を通過するためであると考えられる。また、当該汚染は、1枚の離型フィルムを複数回の成形において用いた場合に特に発生しやすい。これはおそらく、成形において熱がポリエチレンテレフタレート樹脂に付与されることで、当該オリゴマーが当該樹脂内部から表面へと移行する為であると考えられる。
易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂も当該オリゴマーを含む。しかしながら、本発明の離型フィルムが易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成されている基材層と導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層が積層されているという構成を有する場合、静電気拡散性を離型フィルムに付与することができるだけでなく、当該オリゴマーによる汚染も低減又は解消される。さらに、本発明の離型フィルムの静電気拡散性及び低汚染性は、複数回の成形を通じて維持される。
【0046】
また、一般的には、離型フィルムは、成形が1回行われる毎に新しいものに交換される。これは、成形に一度使用した離型フィルムを再度成形に用いると、当該離型フィルムが破れる可能性が高まるためである。離型フィルムが破れることは成形にとって致命的であり、例えば成形体の形の異常をもたらし又は金型が成形体と接着しうる。
本発明の離型フィルムが易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成されている基材層と導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層が積層されているという構成を有する場合、当該離型フィルムを複数回の成形のために用いても、破れにくく且つその離型性、静電気拡散性、及び低汚染性を維持する。そのため、本発明に従う離型フィルムは複数回の成形のために用いられることができ、これにより成形コストが削減される。
【0047】
前記基材層の厚みは、例えば10μm~80μm、好ましくは15μm~75μm、より好ましくは20μm~70μmでありうる。当該厚みが、本発明の離型フィルムを複数回の成形において使用可能とすることに寄与する。
【0048】
(4-2)導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層
【0049】
(4-2-1)四フッ化エチレン系樹脂
【0050】
本発明の離型フィルムは、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層を含む。当該四フッ化エチレン系樹脂は、好ましくは塩素を含まない。塩素を含まないことによって、当該層の耐久性及び/又は防汚性が向上する。当該四フッ化エチレン系樹脂は、例えば反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体と硬化剤とを含む四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物でありうる。
【0051】
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物に含まれる前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、前記硬化剤によって硬化可能である四フッ化エチレン系重合体であってよい。前記反応性官能基と前記硬化剤とは当業者により適宜選択されてよい。
前記反応性官能基は、例えば水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、アミノ基、又はシリル基であってよく、好ましくは水酸基である。これらの基によって、前記硬化物を得るための反応が良好に進行する。
これらの反応性官能基のうち、水酸基が、前記硬化物を得るための反応に特に適している。すなわち、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、好ましくは水酸基含有四フッ化エチレン系重合体でありうる。
【0052】
前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体のフッ素含有単位は、好ましくはパーフルオロオレフィンに基づくフッ素含有単位である。当該パーフルオロオレフィンに基づくフッ素含有単位は、より好ましくはテトラフルオロエチレン(四フッ化エチレン、本明細書内以下において「TFE」ともいう)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)から選ばれる1つ、2つ、又は3つに基づくものであってよい。好ましくは、当該パーフルオロオレフィンに基づくフッ素含有単位のうち、TFEに基づくフッ素含有単位が最も多い。
【0053】
前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体の水酸基価(特には水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の水酸基価)は、好ましくは10mgKOH/g~300mgKOH/gであり、より好ましくは10mgKOH/g~200mgKOH/gであり、さらにより好ましくは10mgKOH/g~150mgKOH/gでありうる。前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体の水酸基価が上記数値範囲の下限値以上であることによって、樹脂組成物の硬化性が良好になりうる。また、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体の水酸基価が上記数値範囲の上限値以下であることが、当該樹脂組成物の硬化物を複数回の成形に適したものとすることに寄与しうる。当該水酸基価は、JIS K 0070に準拠する方法により測定して得られる。
【0054】
前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体の酸価(特には水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の酸価)は、好ましくは0.5mgKOH/g~100mgKOH/gであり、より好ましくは0.5mgKOH/g~50mgKOH/gでありうる。前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体の酸価が上記数値範囲の下限値以上であることによって、樹脂組成物の硬化性が良好になりうる。また、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体の酸価が上記数値範囲の上限値以下であることが、当該樹脂組成物の硬化物を複数回の成形に適したものとすることに寄与しうる。
【0055】
前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体の反応性官能基は、当該反応性官能基を有するモノマーを、フッ素含有モノマー(特には上記パーフルオロオレフィン)と共重合することにより、当該四フッ化エチレン系重合体に導入されてよい。すなわち、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とフッ素含有モノマー(特には上記パーフルオロオレフィン)に基づく重合単位とを含みうる。
【0056】
前記反応性官能基が水酸基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、好ましくは水酸基含有ビニルエーテル又は水酸基含有アリルエーテルでありうる。水酸基含有ビニルエーテルとして、例えば2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、及び6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルを挙げることができ、水酸基含有アリルエーテルとして、例えば2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、及びグリセロールモノアリルエーテルを挙げることができる。代替的には、前記反応性官能基を有するモノマーは、例えばアクリル酸2-ヒドロキシエチル及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルであってもよい。前記反応性官能基を有するモノマーとして、これらの化合物のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせが用いられてよい。前記反応性官能基が水酸基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、前記樹脂組成物の硬化性の観点から、より好ましくは水酸基含有ビニルエーテルであり、特に好ましくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル及び/又は2-ヒドロキシエチルビニルエーテルでありうる。
【0057】
前記反応性官能基がカルボキシル基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、好ましくは不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、又は不飽和カルボン酸の酸無水物であってよい。
前記反応性官能基がアミノ基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、例えばアミノビニルエーテル又はアリルアミンであってよい。
前記反応性官能基がシリル基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、好ましくはシリコーン系ビニルモノマーでありうる。
【0058】
前記フッ素含有モノマーは、好ましくはパーフルオロオレフィンである。パーフルオロオレフィンとして、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)を挙げることができる。好ましくは、前記フッ素含有モノマーはTFEを含む。
【0059】
好ましくは、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位及びフッ素含有モノマーに基づく重合単位に加えて、フッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位も含みうる。当該フッ素非含有ビニルモノマーは、例えばカルボン酸ビニルエステル、アルキルビニルエーテル、及び非フッ素化オレフィンからなる群から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
カルボン酸ビニルエステルとして、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、及びパラ-t-ブチル安息香酸ビニルを挙げることができる。
アルキルビニルエーテルとして、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテルを挙げることができる。
非フッ素化オレフィンとして例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテンを挙げることができる。
また、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位及びパーフルオロオレフィンであるフッ素含有モノマーに基づく重合単位に加えて、例えばビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、及びフルオロビニルエーテルなどの、パーフルオロオレフィン以外のフッ素系単量体に基づく重合単位を含んでもよい。
【0060】
前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、例えば、TFE/非フッ素化オレフィン/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、TFE/カルボン酸ビニルエステル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、又はTFE/アルキルビニルエーテル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体でありうる。
より具体的には、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、又はTFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体でありうる。前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体は、特に好ましくは、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体又はTFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体でありうる。
前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体として、例えばゼッフルGKシリーズの製品を使用することができる。
【0061】
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物に含まれる前記硬化剤は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体に含まれる反応性官能基の種類に応じて当業者により適宜選択されてよい。
前記反応性官能基が水酸基である場合、前記硬化剤は、好ましくはイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、及びイソシアネート基含有シラン化合物から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
前記反応性官能基がカルボキシル基である場合、前記硬化剤は、好ましくはアミノ系硬化剤及びエポキシ系硬化剤から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
前記反応性官能基がアミノ基である場合、前記硬化剤は、カルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記硬化剤の含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば15質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部、より好ましくは23質量部~35質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記硬化剤の含有量についても当てはまる。
前記硬化剤の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフ(Py-GC/MS)法により測定されてよい。
【0062】
本発明の1つの実施態様において、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体に含まれる反応性官能基は水酸基であり且つ前記硬化剤がイソシアネート系硬化剤でありうる。この実施態様において、前記イソシアネート系硬化剤は、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネートである。
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記HDI系ポリイソシアネートの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば15質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部、より好ましくは23質量部~35質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記HDI系ポリイソシアネートの含有量についても当てはまる。
【0063】
HDI系ポリイソシアネートとして、例えばイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、及びビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせを用いることができる。本発明において、前記イソシアネート系硬化剤は、好ましくはイソシアヌレート型ポリイソシアネート及び/又はアダクト型ポリイソシアネート、より好ましくはイソシアヌレート型ポリイソシアネートとアダクト型ポリイソシアネートとの組み合わせでありうる。
前記硬化剤としてイソシアヌレート型ポリイソシアネートとアダクト型ポリイソシアネートとの組み合わせが用いられる場合、両者の質量比は例えば10:6~10:10、好ましくは10:7~10:9である。両者の合計量が、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば15質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部、より好ましくは25質量部~35質量部でありうる。
これら硬化剤の含有比率は、熱分解ガスクロマトグラフ(Py-GC/MS)法により決定されてよい。
【0064】
(4-2-2)導電性フィラー
【0065】
前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂は、導電性フィラーを含む。前記導電性フィラーは、例えば金属系導電性フィラー、炭素系導電性フィラー、金属酸化物系導電性フィラー、及び金属メッキされた導電性フィラーから選ばれる1つ又は2つ以上の組合せであってよい。
前記金属系導電性フィラーの例として、例えば銀、銅、ニッケル、錫、及び銀メッキ銅粉などの粉末状導電性フィラー、並びに、例えば銅、ステンレス鋼、アルミニウム、黄銅、及び鉄繊維などの繊維状導電性フィラーを挙げることができる。前記炭素系導電性フィラーの例として、例えばカーボンブラック及び黒鉛などの粉末状導電性フィラー、並びに、例えばカーボンナノチューブ(CNT)及び炭素繊維などの繊維状導電性フィラーを挙げることができる。前記金属酸化物系導電性フィラーの例として、例えば酸化錫、酸化インジウム、及び酸化亜鉛粉などの粉末状導電性フィラーを挙げることができる。前記金属メッキされた導電性フィラーとして、例えばガラスビーズ又はマイカ粉などが金属メッキされた粉末状導電性フィラー、及び、例えばガラスファイバー又は炭素繊維などが金属メッキされた繊維状導電性フィラーを挙げることができる。
前記導電性フィラーは、好ましくは前記炭素系導電性フィラーであり、例えば上記で述べたとおりの炭素系の粉末状導電性フィラー又は炭素系の繊維状導電性フィラーであってよい。
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記導電性フィラーの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば1質量部~25質量部、好ましくは1質量部~23質量部であってよい。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記導電性フィラーの含有量についても当てはまる。
【0066】
前記導電性フィラーは、好ましくはカーボンブラックを含む。前記導電性フィラーは、カーボンブラックのみであってもよい。カーボンブラックとして、例えばケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、及びランプブラックから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせが用いられてよい。前記導電性フィラーは、好ましくはケッチェンブラック及びファーネスブラックのうちのいずれか一つ又は両方を含む。ケッチェンブラック及びファーネスブラックは、本発明の離型フィルムに静電気拡散性を付与するために特に適している。
ケッチェンブラックは、一次粒子径が小さく、且つ、中空構造を有するため、単位重量当たりの充填量が大きい。そのため、少量のケッチェンブラックによって静電気拡散性が離型フィルムに付与される。
【0067】
本発明の好ましい実施態様の一つに従い、前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂に含まれる前記カーボンブラックは、ケッチェンブラックを含む。前記カーボンブラックは、例えばケッチェンブラックのみであってもよい。
前記導電性フィラーがケッチェンブラックを含む場合において、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記ケッチェンブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば1質量部~25質量部、好ましくは1質量部~10質量部、より好ましくは3質量部~8質量部であってよい。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記ケッチェンブラックの含有量についても当てはまる。
【0068】
前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂がケッチェンブラックを含むが以下「(4-2-3)粒子」で説明する粒子を含まない場合において、前記ケッチェンブラックの含有量は、好ましくは前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して3質量部以上である。これにより、表面抵抗率Rsを例えば1×10Ω以下、特には5×10Ω以下、とすることができる。この場合において、前記ケッチェンブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば3質量部~15質量部、より好ましくは5質量部~10質量部である。
【0069】
前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂が、ケッチェンブラックを含み且つ以下「(4-2-3)粒子」で説明する粒子(特には二酸化ケイ素粒子)を含む場合において、前記ケッチェンブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して1質量部以上であってよい。前記粒子と前記ケッチェンブラックとの組合せにより、より少ないケッチェンブラック含有量で、表面抵抗率Rsを例えば1×10Ω以下、特には5×10Ω以下、とすることができる。また、前記粒子と前記ケッチェンブラックとの組合せにより、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中における前記ケッチェンブラックの分散性を高めることができる。これにより、離型フィルム表面のより良い外観が得られる。
【0070】
本発明の特に好ましい実施態様の一つに従い、前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂に含まれる前記カーボンブラックは、ケッチェンブラック及びファーネスブラックを含む。前記カーボンブラックは、例えばケッチェンブラック及びファーネスブラックの組合せのみであってもよい。
前記導電性フィラーがケッチェンブラック及びファーネスブラックを含む場合において、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記ケッチェンブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、好ましくは1質量部~10質量部、より好ましくは2質量部~9質量部、さらにより好ましくは3質量部~8質量部であってよい。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記ケッチェンブラックの含有量についても当てはまる。前記場合において、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記ファーネスブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば1質量部~25質量部、好ましくは3質量部~20質量部、より好ましくは5質量部~18質量部であってよい。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記ファーネスブラックの含有量についても当てはまる。
【0071】
前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂がケッチェンブラック及びファーネスブラックを含むが以下「(4-2-3)粒子」で説明する粒子を含まない場合において、前記ケッチェンブラックの含有量は、好ましくは前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、好ましくは1質量部~10質量部、より好ましくは2質量部~9質量部、さらにより好ましくは3質量部~8質量部であってよい。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記ケッチェンブラックの含有量についても当てはまる。前記場合において、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記ファーネスブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば1質量部~25質量部、好ましくは3質量部~20質量部、より好ましくは5質量部~18質量部であってよい。これらの数値範囲内の含有量を採用することにより、表面抵抗率Rsを例えば1×10Ω以下、特には5×10Ω以下、とすることができる。
【0072】
前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂が、ケッチェンブラック及びファーネスブラックを含み且つ以下「(4-2-3)粒子」で説明する粒子(特には二酸化ケイ素粒子)を含む場合において、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記ケッチェンブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、好ましくは1質量部~8質量部、より好ましくは2質量部~7質量部、さらにより好ましくは3質量部~6質量部であってよい。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記ケッチェンブラックの含有量についても当てはまる。前記場合において、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記ファーネスブラックの含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば1質量部~25質量部、好ましくは3質量部~20質量部、より好ましくは5質量部~18質量部であってよい。これらの数値範囲内の含有量を採用することにより、表面抵抗率Rsを例えば1×10Ω以下、特には5×10Ω以下、とすることができる。
【0073】
前記ケッチェンブラックのDBP吸油量は、好ましくは250ml/100g以上であり、より好ましくは280ml/100g以上であり、さらにより好ましくは300ml/100g以上である。ケッチェンブラックのDBP吸油量は、例えば1000ml/100g以下であり、特には800ml/100g以下であり、より特には600ml/100g以下であってよい。
本明細書内において、DBP吸油量は、JIS K6217-4に準拠した方法により測定された値である。
【0074】
前記ケッチェンブラックのヨウ素吸着量は、好ましくは500mg/g以上であり、より好ましくは600mg/g以上であり、さらにより好ましくは700mg/g以上である。前記ケッチェンブラックのヨウ素吸着量は、好ましくは1500mg/g以下であり、より好ましくは1400mg/g以下であり、さらにより好ましくは1200mg/g以下である。
本明細書内において、ヨウ素吸着量は、JIS K6217-1に準拠した方法より測定された値である。
【0075】
前記ケッチェンブラックは、粉末状であることが好ましい。粉末状であることによって、表面層の外観が向上する。前記粉末状のケッチェンブラックの平均粒径は、好ましくは、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定された平均粒径が1μm~20μm、より好ましくは3μm~17μm、さらにより好ましくは5μm~15μm、特に好ましくは7μm~13μmでありうる。前記平均粒径は、体積で重みづけされた体積平均径であり、JIS Z8825に従い測定されるものである。前記平均粒径は、例えば粒度分析測定装置(SALD-2200、株式会社島津製作所)を用いて測定されうる。このように細かい粒子を上記数値範囲内の含有割合で含むことが、分散性の向上及び/又は外観の向上に寄与すると考えられる。
【0076】
前記ケッチェンブラックの空隙率は、好ましくは50体積%以上であり、より好ましくは52体積%以上であり、さらにより好ましくは55体積%以上である。前記ケッチェンブラックの空隙率は、例えば90体積%以下であり、特には85体積%以下であり、より特には80体積%以下である。本明細書内において、前記空隙率は、カーボン容積と細孔容積の合計に対する細孔容積の割合であり、以下の式で表される。
空隙率(体積%)=A÷(A+B)×100
(A:単位質量あたりの細孔容積(cm3/g)、B:単位質量あたりのカーボン容積(cm3/g))
Aは、細孔分布測定装置により測定されるガス吸着(物理吸着)量である。Bは真密度(g/cm3)の逆数であり、当該真密度はピクノメーター法により測定される。
【0077】
好ましい実施態様の一つに従い、前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂に含まれる前記カーボンブラックは、ケッチェンブラックに加えてファーネスブラックを含む。前記カーボンブラックは、例えばケッチェンブラック及びファーネスブラックのみであってよい。カーボンブラックがケッチェンブラック及びファーネスブラックを含むことによって、離型フィルムの外観が改善される。より具体的には、離型フィルム表面の黒色がより均一になる。
【0078】
前記ファーネスブラックのDBP吸油量は、好ましくは200ml/100g以下であり、より好ましくは150ml/100g以下であり、さらにより好ましくは100ml/100g以下である。ファーネスブラックのDBP吸油量は、例えば40ml/100g以上であり、特には50ml/100g以上であり、より特には60ml/100g以上であってよい。当該DBP吸油量は、JIS K6217-4に準拠した方法により測定された値である。
【0079】
前記ファーネスブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2に従い測定されたときに、好ましくは10m/g~70m/gであり、より好ましくは15m/g~50m/gであり、さらにより好ましくは20m/g~40m/gである。
【0080】
前記ファーネスブラックは、粉末状であることが好ましい。粉末状であることによって、表面層の外観が向上する。前記粉末状のファーネスブラックの平均粒径は、好ましくは、電子顕微鏡法により測定された平均粒径が30nm~150nm、より好ましくは50nm~100nm、さらにより好ましく60nm~90nm、特に好ましくは70nm~80nmでありうる。前記平均粒径は、体積で重みづけされた体積平均径であり、JIS Z8825に従い測定されるものである。前記平均粒径は、例えば粒度分析測定装置(SALD-2200、株式会社島津製作所)を用いて測定されうる。このように細かい粒子を上記数値範囲内の含有割合で含むことが、分散性の向上及び/又は外観の向上に寄与すると考えられる。
【0081】
前記ファーネスブラックを蒸留水と混合して得た混合液をガラス電極pHメーターで測定したときのpHが、好ましくは5.5~8.5であり、より好ましくは6~8であり、さらにより好ましくは6.5~7.5であってよい。
【0082】
(4-2-3)粒子
【0083】
前記表面層を形成する四フッ化エチレン系樹脂は、好ましくはレーザー回折式粒度分析測定法に従い測定された平均粒径が1μm~15μmであり、より好ましくは1μm~12μm、さらにより好ましくは2μm~10μmである粒子を含む。当該粒子は、導電性フィラー以外の粒子であり、例えばカーボンブラック以外の粒子である。前記平均粒径は、体積で重みづけされた体積平均径であり、JIS Z8825に従い測定されるものである。前記平均粒径は、例えば粒度分析測定装置(SALD-2200、株式会社島津製作所)を用いて測定されうる。当該粒子を含むことによって、より少ない量のカーボンブラックによって所望の静電気拡散性を離型フィルムに付与することができる。当該粒子を含むことによって、導電性フィラーの四フッ化エチレン系樹脂における分散性を向上することができる。当該分散性の向上は、離型フィルム表面の外観の向上をもたらす。また、当該粒子を含むことによって、前記離型フィルムの離型性を高めることもできる。
【0084】
前記粒子は、好ましくは無機粒子又は有機粒子である。無機粒子として、例えば二酸化ケイ素(特には非晶質二酸化ケイ素)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、及び硫化モリブデンを挙げることができる。有機粒子として、例えば架橋高分子粒子及びシュウ酸カルシウムを挙げることができる。本発明において、前記粒子は好ましくは無機粒子であり、より好ましくは二酸化ケイ素粒子であり、さらにより好ましくは非晶質二酸化ケイ素である。非晶質二酸化ケイ素はゾルゲルタイプのシリカでありうる。非晶質二酸化ケイ素として、例えばサイリシアシリーズの非晶質二酸化ケイ素を用いることができる。
【0085】
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物中の前記粒子の含有量は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば3質量部~30質量部、好ましくは4質量部~25質量部、より好ましくは5質量部~20質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記粒子の含有量についても当てはまる。
前記粒子の含有量は、熱重量分析法(TGA)により測定されてよい。
【0086】
(4-2-4)他の成分
【0087】
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物は、溶剤を含みうる。溶剤の種類は当業者により適宜選択されてよい。溶剤として、例えば酢酸ブチル、酢酸エチル、及びメチルエチルケトン(MEKともいう)を挙げることができる。例えば、これら3種の混合物が、前記溶剤として用いられうる。
【0088】
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物は、離型促進剤を含みうる。離型促進剤として、例えば、アミノ変性メチルポリシロキサン、エポキシ変性メチルポリシロキサン、カルボキシ変性メチルポリシロキサン、及びカルビノール変性メチルポリシロキサンを挙げることができる。好ましくは、離型促進剤はアミノ変性メチルポリシロキサンである。
離型促進剤は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、例えば0.01質量部~3質量部、好ましくは0.05質量部~2質量部、より好ましくは0.1質量部~1質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物中の前記離型促進剤の含有量についても当てはまる。
【0089】
(4-2-5)表面層の形成
【0090】
前記表面層の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは2~9μmであり、より好ましくは3μm~8μmでありうる。
【0091】
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物は、以上で説明した成分を当業者に既知の手段により混合及び撹拌することによって製造することができる。前記混合及び撹拌のために、例えばハイスピードミキサー、ホモミキサー、及びペイントシェーカーなどのミキサーを用いることができる。前記混合及び撹拌のために、例えばエッジタービン型の高速ディゾルバーなどのディゾルバーが用いられてもよい。
前記四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物は、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物を前記基材層の表面に塗布し、例えば100℃~200℃、好ましくは120℃~180℃で、例えば10秒間~240秒間、好ましくは30秒間~120秒間加熱することにより得られる。当該硬化物が、前記表面層を形成する。塗布される前記四フッ化エチレン系樹脂組成物の量は、形成されるべき表面層の厚みに応じて、当業者により適宜設定されてよい。
【0092】
前記導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成される表面層は、成形体の製造において成形体と接触する。本明細書内において、当該表面層を成形体側表面層ともいう。他方の表面層(成形体の製造において金型と接触する表面層)を、金型側表面層ともいう。
【0093】
本技術の一つの好ましい実施態様において、前記成形体側表面層は、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体(特には水酸基含有四フッ化エチレン系重合体)と前記硬化剤と前記粒子と前記離型促進剤と前記導電性フィラーを含むフッ素系樹脂組成物の硬化物から形成されている。
より好ましくは、前記成形体側表面層は、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とHDI系ポリイソシアネートと二酸化ケイ素粒子とアミノ変性メチルポリシロキサンとカーボンブラックを含む四フッ化エチレン系樹脂組成物の硬化物から形成されている。
この成形体側表面層を有することが、本発明の離型フィルムに優れた静電気拡散性及び離型性を与えることに特に寄与する。
【0094】
(4-3)金型側表面層
【0095】
(4-3-1)フッ素系樹脂
【0096】
本発明の離型フィルムの金型側表面層は、例えばフッ素系樹脂から形成されていてよい。本発明の好ましい実施態様に従い、前記フッ素系樹脂は塩素を含まない。塩素を含まないことによって、当該層の耐久性及び/又は防汚性が向上する。当該フッ素系樹脂は、例えば反応性官能基含有フッ素系重合体と硬化剤とを含むフッ素系樹脂組成物の硬化物でありうる。
当該フッ素系樹脂は、好ましくは四フッ化エチレン系樹脂を含み、より好ましくは四フッ化エチレン系樹脂を主成分として含む。本明細書内において、前記四フッ化エチレン系樹脂は、以下で述べる反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体と硬化剤との硬化反応により得られる成分をいう。四フッ化エチレン系樹脂が主成分であるとは、当該フッ素系樹脂が四フッ化エチレン系樹脂のみからなること、又は、当該フッ素系樹脂に含まれる成分のうち四フッ化エチレン系樹脂の量が最も多いことを意味する。例えば、当該フッ素系樹脂中の四フッ化エチレン系樹脂の含有割合は、当該フッ素系樹脂の全質量に対して例えば70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上であってよい。当該含有割合は、当該フッ素系樹脂の全質量に対して例えば99質量%以下、特には98質量%以下、より特には97質量%以下でありうる。
当該フッ素系樹脂が四フッ化エチレン系樹脂である場合、金型側表面層は、例えば上記「(4-2)導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層」において述べた、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層と同じであってもよい。
【0097】
前記フッ素系樹脂組成物に含まれる前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、前記硬化剤によって硬化可能であるフッ素系重合体であってよい。前記反応性官能基と前記硬化剤とは当業者により適宜選択されてよい。
前記反応性官能基は、例えば水酸基、カルボキシル基、-COOCO-で表される基、アミノ基、又はシリル基であってよく、好ましくは水酸基である。これらの基によって、前記硬化物を得るための反応が良好に進行する。
これらの反応性官能基のうち、水酸基が、前記硬化物を得るための反応に特に適している。すなわち、前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、好ましくは水酸基含有フッ素系重合体であり、より好ましくは水酸基含有四フッ化エチレン系重合体でありうる。
【0098】
前記反応性官能基含有フッ素系重合体のフッ素含有単位は、好ましくはパーフルオロオレフィンに基づくフッ素含有単位である。当該パーフルオロオレフィンに基づくフッ素含有単位は、より好ましくはテトラフルオロエチレン(四フッ化エチレン、本明細書内以下において「TFE」ともいう)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)から選ばれる1つ、2つ、又は3つに基づくものであってよい。好ましくは、当該パーフルオロオレフィンに基づくフッ素含有単位のうち、TFEに基づくフッ素含有単位が最も多い。
【0099】
前記反応性官能基含有フッ素系重合体の水酸基価(特には水酸基含有フッ素系重合体の水酸基価)は、好ましくは10mgKOH/g~300mgKOH/gであり、より好ましくは10mgKOH/g~200mgKOH/gであり、さらにより好ましくは10mgKOH/g~150mgKOH/gでありうる。前記反応性官能基含有フッ素系重合体の水酸基価が上記数値範囲の下限値以上であることによって、樹脂組成物の硬化性が良好になりうる。また、前記反応性官能基含有フッ素系重合体の水酸基価が上記数値範囲の上限値以下であることが、当該樹脂組成物の硬化物を複数回の成形に適したものとすることに寄与しうる。当該水酸基価は、JIS K 0070に準拠する方法により測定して得られる。
【0100】
前記反応性官能基含有フッ素系重合体の酸価(特には水酸基含有フッ素系重合体の酸価)は、好ましくは0.5mgKOH/g~100mgKOH/gであり、より好ましくは0.5mgKOH/g~50mgKOH/gでありうる。前記反応性官能基含有フッ素系重合体の酸価が上記数値範囲の下限値以上であることによって、樹脂組成物の硬化性が良好になりうる。また、前記反応性官能基含有フッ素系重合体の酸価が上記数値範囲の上限値以下であることが、当該樹脂組成物の硬化物を複数回の成形に適したものとすることに寄与しうる。
【0101】
前記反応性官能基含有フッ素系重合体の反応性官能基は、当該反応性官能基を有するモノマーを、フッ素含有モノマー(特には上記パーフルオロオレフィン)と共重合することにより、当該フッ素系重合体に導入されてよい。すなわち、前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位とフッ素含有モノマー(特には上記パーフルオロオレフィン)に基づく重合単位とを含みうる。
【0102】
前記反応性官能基が水酸基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、好ましくは水酸基含有ビニルエーテル又は水酸基含有アリルエーテルでありうる。水酸基含有ビニルエーテルとして、例えば2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシ-2-メチルブチルビニルエーテル、5-ヒドロキシペンチルビニルエーテル、及び6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテルを挙げることができ、水酸基含有アリルエーテルとして、例えば2-ヒドロキシエチルアリルエーテル、4-ヒドロキシブチルアリルエーテル、及びグリセロールモノアリルエーテルを挙げることができる。代替的には、前記反応性官能基を有するモノマーは、例えばアクリル酸2-ヒドロキシエチル及びメタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルであってもよい。前記反応性官能基を有するモノマーとして、これらの化合物のうちの1つ又は2つ以上の組み合わせが用いられてよい。前記反応性官能基が水酸基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、前記樹脂組成物の硬化性の観点から、より好ましくは水酸基含有ビニルエーテルであり、特に好ましくは4-ヒドロキシブチルビニルエーテル及び/又は2-ヒドロキシエチルビニルエーテルでありうる。
【0103】
前記反応性官能基がカルボキシル基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、好ましくは不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のエステル、又は不飽和カルボン酸の酸無水物であってよい。
前記反応性官能基がアミノ基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、例えばアミノビニルエーテル又はアリルアミンであってよい。
前記反応性官能基がシリル基である場合、前記反応性官能基を有するモノマーは、好ましくはシリコーン系ビニルモノマーでありうる。
【0104】
前記フッ素含有モノマーは、好ましくはパーフルオロオレフィンである。パーフルオロオレフィンとして、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、及びパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)を挙げることができる。好ましくは、前記フッ素含有モノマーはTFEを含む。
【0105】
好ましくは、前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位及びフッ素含有モノマーに基づく重合単位に加えて、フッ素非含有ビニルモノマーに基づく重合単位も含みうる。当該フッ素非含有ビニルモノマーは、例えばカルボン酸ビニルエステル、アルキルビニルエーテル、及び非フッ素化オレフィンからなる群から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
カルボン酸ビニルエステルとして、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、及びパラ-t-ブチル安息香酸ビニルを挙げることができる。
アルキルビニルエーテルとして、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテルを挙げることができる。
非フッ素化オレフィンとして例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテンを挙げることができる。
また、前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、反応性官能基含有モノマーに基づく重合単位及びパーフルオロオレフィンであるフッ素含有モノマーに基づく重合単位に加えて、例えばビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、及びフルオロビニルエーテルなどの、パーフルオロオレフィン以外のフッ素系単量体に基づく重合単位を含んでもよい。
【0106】
前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、例えば、TFE/非フッ素化オレフィン/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、TFE/カルボン酸ビニルエステル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、又はTFE/アルキルビニルエーテル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体でありうる。
より具体的には、前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体、又はTFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体でありうる。前記反応性官能基含有フッ素系重合体は、特に好ましくは、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体又はTFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル系共重合体でありうる。
前記反応性官能基含有フッ素系重合体として、例えばゼッフルGKシリーズの製品を使用することができる。
【0107】
前記フッ素系樹脂組成物に含まれる前記硬化剤は、前記反応性官能基含有フッ素系重合体に含まれる反応性官能基の種類に応じて当業者により適宜選択されてよい。
前記反応性官能基が水酸基である場合、前記硬化剤は、好ましくはイソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、及びイソシアネート基含有シラン化合物から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
前記反応性官能基がカルボキシル基である場合、前記硬化剤は、好ましくはアミノ系硬化剤及びエポキシ系硬化剤から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
前記反応性官能基がアミノ基である場合、前記硬化剤は、カルボニル基含有硬化剤、エポキシ系硬化剤、及び酸無水物系硬化剤から選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせでありうる。
前記フッ素系樹脂組成物中の前記硬化剤の含有量は、前記反応性官能基含有フッ素系重合体100質量部に対して、例えば15質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部、より好ましくは23質量部~35質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該フッ素系樹脂組成物の硬化物中の前記硬化剤の含有量についても当てはまる。
前記硬化剤の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフ(Py-GC/MS)法により測定されてよい。
【0108】
本発明の1つの実施態様において、前記反応性官能基含有フッ素系重合体に含まれる反応性官能基は水酸基であり且つ前記硬化剤がイソシアネート系硬化剤でありうる。この実施態様において、前記イソシアネート系硬化剤は、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)系ポリイソシアネートである。
前記フッ素系樹脂組成物中の前記HDI系ポリイソシアネートの含有量は、前記反応性官能基含有フッ素系重合体100質量部に対して、例えば15質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部、より好ましくは23質量部~35質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該フッ素樹脂組成物の硬化物中の前記HDI系ポリイソシアネートの含有量についても当てはまる。
【0109】
HDI系ポリイソシアネートとして、例えばイソシアヌレート型ポリイソシアネート、アダクト型ポリイソシアネート、及びビウレット型ポリイソシアネートから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせを用いることができる。本発明において、前記イソシアネート系硬化剤は、好ましくはイソシアヌレート型ポリイソシアネート及び/又はアダクト型ポリイソシアネート、より好ましくはイソシアヌレート型ポリイソシアネートとアダクト型ポリイソシアネートとの組み合わせでありうる。
前記硬化剤としてイソシアヌレート型ポリイソシアネートとアダクト型ポリイソシアネートとの組み合わせが用いられる場合、両者の質量比は例えば10:6~10:10、好ましくは10:7~10:9である。両者の合計量が、前記反応性官能基含有フッ素系重合体100質量部に対して、例えば15質量部~50質量部、好ましくは20質量部~40質量部、より好ましくは25質量部~35質量部でありうる。
これら硬化剤の含有比率は、熱分解ガスクロマトグラフ(Py-GC/MS)法により決定されてよい。
【0110】
(4-3-2)粒子
【0111】
前記表面層を形成するフッ素系樹脂は、好ましくはレーザー回折式粒度分析測定法に従い測定された平均粒径が1μm~15μmであり、より好ましくは1μm~12μm、さらにより好ましくは2μm~10μmである粒子を含む。前記平均粒径は、体積で重みづけされた体積平均径であり、JIS Z8825に従い測定されるものである。前記平均粒径は、例えば粒度分析測定装置(SALD-2200、株式会社島津製作所)を用いて測定されうる。当該粒子を含むことによって、前記離型フィルムの離型性を高めることができる。
【0112】
前記粒子の種類は、上記「(4-2-3)粒子」において述べたとおりであり、その説明が、金型側表面層に含まれる粒子についても当てはまる。そのため、前記粒子についての説明は省略する。
【0113】
前記フッ素系樹脂組成物中の前記粒子の含有量は、前記反応性官能基含有フッ素系重合体100質量部に対して、例えば10質量部~30質量部、好ましくは12質量部~25質量部、より好ましくは15質量部~20質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該フッ素樹脂組成物の硬化物中の前記粒子の含有量についても当てはまる。
前記粒子の含有量は、熱重量分析法(TGA)により測定されてよい。
【0114】
(4-3-3)他の成分
【0115】
前記フッ素系樹脂組成物は、溶剤を含みうる。溶剤の種類は、上記「(4-2-4)他の成分」において述べたとおりであり、その説明が、金型側表面層に含まれる溶剤についても当てはまる。
【0116】
前記フッ素系樹脂組成物は、離型促進剤を含みうる。離型促進剤の種類は、上記「(4-2-4)他の成分」において述べたとおりであり、その説明が、金型側表面層に含まれる溶剤についても当てはまる。離型促進剤は、前記反応性官能基含有フッ素系重合体100質量部に対して、例えば0.01質量部~3質量部、好ましくは0.05質量部~2質量部、より好ましくは0.1質量部~1質量部でありうる。これらの数値範囲は、当該フッ素樹脂組成物の硬化物中の前記離型促進剤の含有量についても当てはまる。
【0117】
(4-3-4)金型側表面層の形成
【0118】
前記金型側表面層の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは2~9μmであり、より好ましくは3μm~8μmでありうる。
【0119】
前記フッ素系樹脂組成物は、以上で説明した成分を当業者に既知の手段により混合及び撹拌することによって製造することができる。前記混合及び撹拌のために、例えばハイスピードミキサー、ホモミキサー、及びペイントシェーカーなどのミキサーを用いることができる。前記混合及び撹拌のために、例えばエッジタービン型の高速ディゾルバーなどのディゾルバーが用いられてもよい。
前記フッ素系樹脂組成物の硬化物は、前記フッ素系樹脂組成物を前記基材層の表面に塗布し、例えば100℃~200℃、好ましくは120℃~180℃で、例えば10秒間~240秒間、好ましくは30秒間~120秒間加熱することにより得られる。当該硬化物が、前記表面層を形成する。塗布される前記フッ素系樹脂組成物の量は、形成されるべき表面層の厚みに応じて、当業者により適宜設定されてよい。
【0120】
本技術の一つの好ましい実施態様において、前記金型側表面層は、前記反応性官能基含有フッ素系重合体と前記硬化剤と前記粒子とを含むフッ素系樹脂組成物の硬化物から形成されている。
より好ましくは、前記金型側表面層は、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とHDI系ポリイソシアネートと二酸化ケイ素粒子とを含むフッ素系樹脂組成物の硬化物から形成されている。
この金型側表面層を有することが、本発明の離型フィルムに優れた離型性を与えることに特に寄与する。
【0121】
(5)離型フィルムの物性
【0122】
本発明の好ましい実施態様に従い、本発明の離型フィルムの引張破断強度は、JIS K7127に従い175℃で測定された場合に、40MPa~200MPaであり、より好ましくは40MPa~120MPaであり、さらにより好ましくは40MPa~110MPaであり、特に好ましくは45MPa~100MPaであり、且つ、前記離型フィルムの引張破断伸びが、JIS K7127に従い175℃で測定された場合に、200%~500%であり、より好ましくは250%~450%であり、さらにより好ましくは300%~400%でありうる。
本発明の離型フィルムの引張破断強度及び引張破断伸びが上記数値範囲内にあることが、本発明の離型フィルムを複数回の成形において使用可能とすることに寄与する。
【0123】
本発明の離型フィルムのガス(O2)透過性は、JIS K7126-1に従い175℃で測定された場合に、例えば5000~50000cc/m2・24hr・atmであり、特には5000~30000cc/m2・24hr・atmであり、より特には5000~20000cc/m2・24hr・atm以下でありうる。本発明の離型フィルムは、このような低いガス透過性を有する。そのため、本発明の離型フィルムを用いて成形を行うことで、樹脂から生じるガスによる金型汚染が抑制される。
【0124】
本発明の離型フィルムの厚みは、例えば30μm~100μmであり、好ましくは35μm~90μmであり、より好ましくは40~80μmでありうる。本発明の離型フィルムの厚みが上記数値範囲内にあることによって、当該離型フィルムが金型の形状に従い変形しやすくなる。
【0125】
2.第二の実施形態(離型フィルムの製造方法)
【0126】
本発明は、上記「1.第一の実施形態(離型フィルム)」において述べた離型フィルムの製造方法も提供する。当該製造方法は、ポリエステル系樹脂から形成されている基材層の2つの面のうちの一方の面に、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂から形成されている表面層を形成する表面層形成工程を含み、製造される離型フィルムの表面抵抗率Rsが1×1011Ω以下である。
【0127】
前記表面層形成工程は、例えば、ポリエステル系樹脂から形成されている基材層の2つの面のうちの一方の面に、導電性フィラーを含む四フッ化エチレン系樹脂組成物を塗布する塗布工程と、当該塗布工程後に、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む。
塗布工程において用いられる基材層及び四フッ化エチレン系樹脂組成物については、上記「1.第一の実施形態(離型フィルム)」において述べた内容が当てはまるので、これらについての説明は省略する。
前記塗布工程は、所望の層厚を達成するように当業者により適宜行われてよい。例えば、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物は、グラビアロール法、リバースロール法、オフセットグラビア法、キスコート法、リバースキスコート法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、又は含浸法により前記基材層の2つの面に塗布されうる。これらの方法による塗布を行うための装置は、当業者により適宜選択されてよい。
当該硬化工程は、前記フッ素系樹脂組成物を、例えば100℃~200℃、好ましくは120℃
~180℃で、例えば10秒間~240秒間、好ましくは30秒間~120秒間加熱することを含む。
当該加熱によって、前記フッ素系樹脂組成物が硬化される。
【0128】
当該2つの面のうちの他方の面には、四フッ化エチレン系樹脂組成物が塗布され、そして硬化されてよく、又は、前記四フッ化エチレン系樹脂組成物と異なるフッ素系樹脂組成物が塗布され、そして硬化されてもよい。前記四フッ化エチレン系樹脂組成物及びフッ素系樹脂組成物については、上記「1.第一の実施形態(離型フィルム)」において述べた内容があてはまる。当該硬化工程は、前記一方の面に関して述べた硬化工程についての説明があてはまる。
【0129】
3.実施例
【0130】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
【0131】
(比較例1)
【0132】
基材層として、易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成されているフィルム(テフレックスFT、帝人株式会社、厚み50μm、ガラス転移温度90℃)を用意した。
次に、当該フィルムに塗布するための2種類のフッ素系樹脂組成物(以下、金型側表面層用樹脂組成物及び成形体側表面層用樹脂組成物という)を調製した。金型側表面層用樹脂組成物は、半導体装置の封止工程において、金型に接する表面層を形成するものである。成形体側表面層用樹脂組成物は、当該封止工程において、封止用樹脂(成形体)に接する表面層を形成するものである。
金型側表面層用樹脂組成物は、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体溶液100質量部(ゼッフルGK570、ダイキン工業株式会社、このうち65質量%が水酸基含有四フッ化エチレン系重合体である)、非晶質二酸化ケイ素11.47質量部(サイリシア380、富士シリシア化学株式会社)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート10質量部(硬化剤、スミジュールN3300、住友バイエルウレタン株式会社)、アダクト型ポリイソシアネート7.79質量部(硬化剤、デュラネートAE700-100)、酢酸ブチル6.18質量部、酢酸エチル44.62質量部、及びMEK89.25質量部を混合及び撹拌することにより調製された。前記非晶質二酸化ケイ素の平均粒径(上記体積平均径である)は、粒度分析測定装置(SALD-2200、株式会社島津製作所)を用いてレーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときに、9.0μmであった。
成形体側表面層用樹脂組成物は、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体溶液100質量部(ゼッフルGK570、ダイキン工業株式会社、このうち65質量%が水酸基含有四フッ化エチレン系重合体である)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート10質量部(硬化剤、スミジュールN3300、住友バイエルウレタン株式会社)、アダクト型ポリイソシアネート7.79質量部(硬化剤、デュラネートAE700-100)、アミノ変性メチルポリシロキサン0.31質量部(離型促進剤、信越化学工業株式会社)、酢酸ブチル6.18質量部、酢酸エチル44.62質量部、及びMEK89.25質量部を混合及び撹拌することにより調製された。
【0133】
前記フィルムの一方の面に、前記金型側表面層用樹脂組成物を塗布し、且つ、前記フィルムの他方の面に、前記成形体側表面層用樹脂組成物を塗布した。これらの塗布は、キスリバース方式の塗布装置を用いて行われた。前記塗布後に、これらの組成物を150℃にて60秒間加熱することによって硬化して、易成型PET樹脂フィルムの両面にフッ素系樹脂
層が積層された離型フィルム(以下、「比較例1の離型フィルム」という)を得た。
【0134】
比較例1の離型フィルムの厚みは70±5μmであった。比較例1の離型フィルム中の基材層の厚みは50±5μmであった。比較例1の離型フィルムの2つの表面層のうち、金型側表面層用樹脂組成物の硬化物から形成されている金型側表面層の厚みは5.5±0.5μmであった。成形体側表面層用樹脂組成物の硬化物から形成されている成形体側表面層の厚みは5.5±0.5μmであった。
【0135】
金型側表面層用樹脂組成物の硬化物は、前記水酸基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、前記非晶質二酸化ケイ素を17.65質量部含み、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートを15.39質量部含み、且つ、前記アダクト型ポリイソシアネートを11.98質量部含んでいた。
【0136】
成形体側表面層用樹脂組成物の硬化物は、前記水酸基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して、前記非晶質二酸化ケイ素を17.65質量部含み、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネートを15.39質量部含み、前記アダクト型ポリイソシアネートを11.98質量部含み、且つ、アミノ変性メチルポリシロキサンを0.48質量部含んでいた。
【0137】
(比較例2)
【0138】
成形体側表面層用樹脂組成物中の前記水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量を1質量%だけ減らし、減った質量分だけケッチェンブラック(ECP600JD、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、粉末状)を加えたこと以外は比較例1と同じ方法で離型フィルム(比較例2の離型フィルム)を得た。当該ケッチェンブラックについて、DBP吸油量は495ml/100gであり、且つ、ヨウ素吸着量は1050mg/gであった。当該ケッチェンブラックの平均粒径は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときに、10μmであった。
すなわち、比較例2の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は99質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラックの量は1質量部である。
また、比較例2の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラックの量は1.01質量部である。
【0139】
(参考例1)
なお、以下において、「実施例1」~「実施例9」はそれぞれ「参考例1」「参考例9」と読み替えるものとする。また、「実施例14」~「実施例19」もそれぞれ「参考例14」~「参考例19」と読み替えるものとする。
【0140】
成形体側表面層用樹脂組成物中の前記水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量を3質量%だけ減らし、減った質量分だけケッチェンブラック(ECP600JP、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、粉末状)を加えたこと以外は比較例1と同じ方法で離型フィルム(実施例1の離型フィルム)を得た。
すなわち、実施例1の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は97質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラックの量は3質量部である。
また、実施例1の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラックの量は3.09質量部である。
【0141】
(実施例2)
【0142】
成形体側表面層用樹脂組成物中の前記水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量を5質量%だけ減らし、減った質量分だけケッチェンブラック(ECP600JP、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社、粉末状)を加えたこと以外は比較例1と同じ方法で離型フィルム(実施例2の離型フィルム)を得た。
すなわち、実施例2の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は95質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラックの量は5質量部である。
また、実施例2の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラックの量は5.26質量部である。
【0143】
(実施例3)
【0144】
成形体側表面層用樹脂組成物に、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部に対して15質量部の割合で、非晶質二酸化ケイ素(サイリシア380、富士シリシア化学株式会社)をさらに加えたこと以外は、比較例2と同じ方法で離型フィルム(実施例3の離型フィルム)を得た。
すなわち、実施例3の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は99質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラックの量は1質量部である。
また、実施例3の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラックの量は1.01質量部である。実施例3の成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりの非晶質二酸化ケイ素粒子の量は15.15質量部である。
【0145】
(実施例4及び5)
【0146】
成形体側表面層用樹脂組成物に、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部に対して5質量部又は15質量部の割合で、非晶質二酸化ケイ素(サイリシア380、富士シリシア化学株式会社)をさらに加えたこと以外は、実施例1と同じ方法で離型フィルム(実施例4の離型フィルム及び実施例5の離型フィルム)を得た。
すなわち、実施例4及び5の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は97質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラックの量は3質量部である。
また、実施例4及び5の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラックの量はいずれも3.09質量部である。実施例4及び5の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりの非晶質二酸化ケイ素粒子の量は、それぞれ5.15質量部及び15.46質量部である。
【0147】
(実施例6及び7)
【0148】
ケッチェンブラックとして、ECP600JPの代わりにカーボンECP(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)を用いたこと以外は、実施例4及び5と同じ方法で離型フィルム(実施例6の離型フィルム及び実施例7の離型フィルム)を得た。カーボンECPについて、DBP吸油量は365ml/100gであり、且つ、ヨウ素吸着量は790mg/gであった。当該ケッチェンブラックの平均粒径は、レーザー回折式粒度分析測定法に従い測定されたときに、10μmであった。
【0149】
(実施例8及び9)
【0150】
成形体側表面層用樹脂組成物に、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部に対して5質量部又は15質量部の割合で、非晶質二酸化ケイ素(サイリシア380、富士シリシア化学株式会社)をさらに加えたこと以外は、実施例2と同じ方法で離型フィルム(実施例8の離型フィルム及び実施例9の離型フィルム)を得た。
すなわち、実施例8及び9の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体とケッチェンブラックとの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は95質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラックの量は5質量部である。
また、実施例8及び9の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラックの量はいずれも5.26質量部である。実施例4及び5の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりの非晶質二酸化ケイ素粒子の量は、それぞれ5.26質量部及び15.79質量部である。
【0151】
(実施例10)
【0152】
基材層として、易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成されているフィルム(テフレックスFT、帝人株式会社、厚み50μm、ガラス転移温度90℃)を用意した。
次に、当該フィルムに塗布するための2種類のフッ素系樹脂組成物(以下、金型側表面層用樹脂組成物及び成形体側表面層用樹脂組成物という)を調製した。金型側表面層用樹脂組成物は、半導体装置の封止工程において、金型に接する表面層を形成するものである。成形体側表面層用樹脂組成物は、当該封止工程において、封止用樹脂(成形体)に接する表面層を形成するものである。
金型側表面層用樹脂組成物は、比較例1のものと同じであった。
成形体側表面層用樹脂組成物は、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体溶液100質量部(ゼッフルGK570、ダイキン工業株式会社、このうち65質量%が水酸基含有四フッ化エチレン系重合体である)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート10質量部(硬化剤、スミジュールN3300、住友バイエルウレタン株式会社)、アダクト型ポリイソシアネート7.8質量部(硬化剤、デュラネートAE700-100)、ケッチェンブラック2.78質量部(ECP600JD、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)、ファーネスブラック11.1質量部(三菱ブラック#10、三菱化学株式会社、平均粒径75nm、DBP吸油量86ml/100g)、非晶質二酸化ケイ素13.9質量部(サイリシア380、富士シリシア化学株式会社)、アミノ変性メチルポリシロキサン0.6質量部(離型促進剤、信越化学工業株式会社)、酢酸エチル56.9質量部、及びMEK113.8質量部を混合及び撹拌することにより調製された。
【0153】
比較例1と同じように、前記金型側表面層用樹脂組成物及び前記成形体側表面層用樹脂組成物をフィルムに塗布し、そして、加熱を行ってこれら組成物を硬化して、易成型PET樹脂フィルムの両面にフッ素系樹脂層が積層された離型フィルム(以下、「実施例10の離型フィルム」という)を得た。
【0154】
実施例10の離型フィルムの厚みは70±5μmであった。実施例10の離型フィルム中の基材層の厚みは50±5μmであった。実施例10の離型フィルムの2つの表面層のうち、金型側表面層用樹脂組成物の硬化物から形成されている金型側表面層の厚みは5.5±0.5μmであった。成形体側表面層用樹脂組成物の硬化物から形成されている成形体側表面層の厚みは5.5±0.5μmであった。
【0155】
実施例10の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、及び二酸化ケイ素粒子の合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は70質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラック、ファーネスブラック、及び二酸化ケイ素粒子の量はそれぞれ3質量部、12質量部、及び15質量部である。
また、実施例10の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラック、ファーネスブラック、及び二酸化ケイ素粒子の量はそれぞれ4.29質量部、17.14質量部、及び21.43質量部である。
【0156】
(実施例11及び12)
【0157】
ケッチェンブラックとして、ECP600JDの代わりにカーボンECP及びECP200L(いずれもライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)を用いたこと以外は、実施例10と同じ方法で離型フィルム(実施例11の離型フィルム及び実施例12の離型フィルム)を得た。
【0158】
(実施例13)
【0159】
水酸基含有四フッ化エチレン系重合体、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、及び二酸化ケイ素粒子の合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラック及び当該ファーネスブラックの量をそれぞれ0質量部及び15質量部に変更したこと以外は、実施例10と同じ方法で離型フィルムを得た。
実施例13の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラック及びファーネスブラックの量はそれぞれ0質量部及び21.43質量部である。
【0160】
(実施例14)
【0161】
基材層として、易成型ポリエチレンテレフタレート樹脂から形成されているフィルム(テフレックスFT、帝人株式会社、厚み50μm、ガラス転移温度90℃)を用意した。
次に、当該フィルムに塗布するための2種類のフッ素系樹脂組成物(以下、金型側表面層用樹脂組成物及び成形体側表面層用樹脂組成物という)を調製した。金型側表面層用樹脂組成物は、半導体装置の封止工程において、金型に接する表面層を形成するものである。成形体側表面層用樹脂組成物は、当該封止工程において、封止用樹脂(成形体)に接する表面層を形成するものである。
金型側表面層用樹脂組成物は、比較例1のものである。
成形体側表面層用樹脂組成物は、水酸基含有四フッ化エチレン系重合体溶液100質量部(ゼッフルGK570、ダイキン工業株式会社、このうち65質量%が水酸基含有四フッ化エチレン系重合体である)、イソシアヌレート型ポリイソシアネート10質量部(硬化剤、スミジュールN3300、住友バイエルウレタン株式会社)、アダクト型ポリイソシアネート7.8質量部(硬化剤、デュラネートAE700-100)、ケッチェンブラック2.78質量部(ECP600JD、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社)、ファーネスブラック11.1質量部(三菱ブラック♯10、三菱化学株式会社)、アミノ変性メチルポリシロキサン0.6質量部(離型促進剤、信越化学工業株式会社)、酢酸エチル48.6質量部、及びMEK97.1質量部を混合及び撹拌することにより調製された。
【0162】
比較例1と同じように、前記金型側表面層用樹脂組成物及び前記成形体側表面層用樹脂組成物をフィルムに塗布し、そして、加熱を行ってこれら組成物を硬化して、易成型PET樹脂フィルムの両面にフッ素系樹脂層が積層された離型フィルム(以下、「実施例14の離型フィルム」という)を得た。
【0163】
実施例14の離型フィルムの厚みは70±5μmであった。実施例14の離型フィルム中の基材層の厚みは50±5μmであった。実施例14の離型フィルムの2つの表面層のうち、金型側表面層用樹脂組成物の硬化物から形成されている金型側表面層の厚みは5.5±0.5μmであった。成形体側表面層用樹脂組成物の硬化物から形成されている成形体側表面層の厚みは5.5±0.5μmであった。
【0164】
実施例14の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体、ケッチェンブラック、及びファーネスブラックの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量は85質量部であり、且つ、同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラック及びファーネスブラックの量はそれぞれ3質量部及び12質量部である。
また、実施例14の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラック及びファーネスブラックの量はそれぞれ3.53質量部及び14.12質量部である。
【0165】
(実施例15)
【0166】
成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体、ケッチェンブラック、及びファーネスブラックの合計量100質量部当たりの当該水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量を92質量部に変更し且つ同合計量100質量部当たりの当該ケッチェンブラック及びファーネスブラックの量はそれぞれ3質量部及び5質量部に変更したこと以外は、実施例14と同じ方法で離型フィルム(実施例15の離型フィルム)を得た。
実施例15の離型フィルムの成形体側表面層に含まれる水酸基含有四フッ化エチレン系重合体の量100質量部当たりのケッチェンブラック及びファーネスブラックの量はそれぞれ3.26質量部及び5.43質量部である。
【0167】
(実施例16及び17)
【0168】
ケッチェンブラックとして、ECP600JDの代わりにカーボンECPを用いたこと以外は、実施例14及び15と同じ方法で離型フィルム(実施例16の離型フィルム及び実施例17の離型フィルム)を得た。
【0169】
(実施例18及び19)
【0170】
ケッチェンブラックとして、ECP600JDの代わりにECP200Lを用いたこと以外は、実施例14及び15と同じ方法で離型フィルム(実施例18の離型フィルム及び実施例19の離型フィルム)を得た。
【0171】
比較例1及び2並びに実施例1~19の離型フィルムの成形体側表面層の組成を表1~3に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
【表2】
【0174】
【表3】
【0175】
比較例1及び2並びに実施例1~19の離型フィルムについて、成形体側表面層の表面抵抗率Rsを測定し、以下の基準に従い評価した。なお、表中の表面抵抗率Rsに関する「E+」は、10のべき乗を意味し、例えば実施例3の「4.9.E+09」は、4.9×10を意味する。他の例の表面抵抗率Rsについても同様である。評価結果が上記表1~3に示されている。
A:Rsが1×10Ω以下である
B:Rsが1×10Ω超且つ1×1011Ω以下である
C:Rsが1×1011Ω超である
【0176】
また、比較例1及び2並びに実施例1~19の離型フィルムの製造における成形体側表面層用樹脂組成物の調製における、カーボンブラックの当該組成物への分散性を評価した。分散性の評価は、グラインドゲージ(エリクセン株式合資会社製のModel232型グラインドゲージ)を用いて、JIS K5600-2-5に準拠して行った。評価結果が上記表1~3に示されている。
A:スジが現れない
B:溝深さ35μm以下でスジが現れる
C:溝深さ40μm以下でスジが現れる
【0177】
比較例1及び2並びに実施例1~19の離型フィルムについて、成形体側表面の外観を目視により評価した。評価基準は以下のとおりである。評価結果が上記表1~3に示されている。
A:表面の黒色にムラがない。
B:表面の黒色にムラがわずかにある。
C:表面の黒色にムラがある。
【0178】
上記表1~3に示される評価結果から以下が分かる。
【0179】
実施例1~19の離型フィルムはいずれも表面抵抗率Rsが1×1011Ω以下であり、静電気拡散性を有することが分かる。
【0180】
比較例1の離型フィルムの成形体側表面層はカーボンブラックを含まず、表面抵抗率Rsが1×1011Ω超であった。また、比較例2の離型フィルムの成形体側表面層はケッチェンブラックを含むが、表面抵抗率Rsが1×1011Ω超であった。一方で、比較例2よりもケッチェンブラックの含有量が高い実施例1及び2では、表面抵抗率Rsが1×1011Ω以下であった。これらの結果から、導電性フィラーがケッチェンブラックである場合、前記ケッチェンブラックの含有量を、前記反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して例えば3質量部以上とすることによって、静電気拡散性を離型フィルムに付与することができると分かる。
【0181】
比較例2の離型フィルムの成形体側表面層はケッチェンブラックを含むが、表面抵抗率Rsが1×1011Ω超であった。一方で、ケッチェンブラック量は同じであるがさらに二酸化ケイ素粒子を含む実施例3の離型フィルムでは、表面抵抗率Rsが1×1011Ω以下であった。これらの結果から、ケッチェンブラックと二酸化ケイ素粒子との組合せによって、静電気拡散性を離型フィルムに付与することができると分かる。また、二酸化ケイ素粒子を含む場合、より少ないケッチェンブラック量で、静電気拡散性を離型フィルムに付与することができると分かる。例えば、二酸化ケイ素粒子を含む場合、ケッチェンブラック量は、反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して1質量部以上であってよい。
【0182】
実施例3と5の離型フィルムの比較から、二酸化ケイ素粒子を含む場合、ケッチェンブラック量は、反応性官能基含有四フッ化エチレン系重合体100質量部に対して3質量部以上とすることによって、離型フィルムの静電気拡散性を向上することができると分かる。
【0183】
実施例4及び5と実施例6及び7の離型フィルムの比較から、ケッチェンブラックの種類を変えても、良好な静電気拡散性が得られることが分かる。
また、実施例4及び5と実施例8及び9の離型フィルムの比較から、ケッチェンブラックの量を増やしても、良好な静電気拡散性が得られることが分かる。
【0184】
実施例1と5の離型フィルムの比較から、ケッチェンブラックに加えて二酸化ケイ素粒子を含むことで、成形体側表面層調製用組成物の分散性を向上させることができること、及び、得られる成形体側表面層の外観を改善することができることが分かる。
【0185】
実施例3~9では静電気拡散性の評価結果がAであるのに対し、分散性及び外観の評価がBであった。一方で、実施例10~12では、静電気拡散性の評価結果がAであり、さらに分散性及び外観の評価もAであった。これらの結果より、ケッチェンブラックと二酸化ケイ素粒子に加えてファーネスブラックを含むことによって、良好な静電気拡散性を得ること、且つ、成形体側表面層調製用組成物の分散性を向上し且つ得られる成形体側表面層の外観の改善が可能であることが分かる。
【0186】
実施例10~12と実施例13の比較から、ファーネスブラックと二酸化ケイ素粒子の組合せによっても、良好な静電気拡散性を得ること、且つ、成形体側表面層調製用組成物の分散性を向上し且つ得られる成形体側表面層の外観の改善が可能であることが分かる。
【0187】
実施例14~18の結果から、ケッチェンブラックとファーネスブラックとの組合せによっても、良好な静電気拡散性を得ることができると分かる。また、当該組合せは、成形体側表面層調製用組成物の分散性を向上することができることも分かる。なお、二酸化ケイ素粒子を含む実施例10~12よりも改善の程度は劣るものの、実施例14~18の結果から、当該組合せにより、成形体側表面層の外観の改善が可能であることが分かる。
【0188】
また、比較例1及び2並びに実施例1~19の離型フィルムを用いて、エポキシ樹脂のトランスファーモールド成形による成形を行った。当該成形は、図2に示されたとおりに行われた。その結果、いずれの離型フィルムを用いた場合であっても、エポキシ樹脂の成形体は、離型フィルムからスムーズに剥離された。従って、本発明の離型フィルムの成形体側表面層は導電性フィラーを含んでいるが、含んでいない場合と同様の離型性を有することが分かる。また、比較例1及び2並びに実施例1~19の離型フィルムの離型性は、複数回の成形を通じて維持された。
【符号の説明】
【0189】
100 離型フィルム
101 基材層
102 表面層
103 表面層
図1
図2
図3