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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】弾性波デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/25 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021191618
(22)【出願日】2021-11-25
(65)【公開番号】P2023078039
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-05-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】廉 京日
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩
(72)【発明者】
【氏名】塩井 伸一
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-135959(JP,A)
【文献】特開2013-058911(JP,A)
【文献】特開2012-005148(JP,A)
【文献】特開2021-097313(JP,A)
【文献】特開2015-002375(JP,A)
【文献】特開2017-022744(JP,A)
【文献】特許第6956438(JP,B1)
【文献】特開2011-103645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-H03H3/10
H03H9/00-H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、第1金属層からなる複数の電極指およびバスバーを有する複数のIDT電極と、
前記圧電基板上に形成され、絶縁体からなる複数の橋台と、
前記複数の橋台上に形成された主桁と
を備え、
前記主桁は、前記IDT電極の少なくとも一つと立体的に交差しており、かつ、絶縁体からなり、
前記複数のIDT電極同士を電気的に接続する、前記第1金属層および第2金属層からなる配線パターンと、
前記主桁上に形成された金属層を備え、
前記金属層は、前記配線パターンの少なくとも一部と電気的に接続されており、かつ、グランド電位であり、
前記複数のIDT電極は、送信フィルタと、多重モード型共振器を含む受信フィルタを構成しており、前記主桁は、前記多重モード型共振器を構成する複数のIDT電極が形成された領域を、空間を介して覆うように形成されており、
前記金属層は、前記第2金属層と同じ厚みであり、
前記橋台の少なくとも一部は、前記第1金属層上に形成され、
前記第1金属層上に形成された前記橋台の厚みと前記主桁の厚みの合計の厚みは、前記第2金属層の厚みよりも小さい弾性波デバイス。
【請求項2】
前記橋台の少なくとも一部は、前記バスバー上に形成されている請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記IDT電極の両端に配置された反射器を備え、
前記橋台の少なくとも一部は、前記反射器の前記IDT電極とは反対側に隣接する領域に形成されている請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記主桁上に形成された前記金属層を備え、
前記金属層は、グランド電位であり、前記多重モード型共振器を構成する複数のIDT電極が形成された領域を、空間を介して覆うように形成されており、かつ、前記送信フィルタを構成するIDT電極が形成された領域上には形成されていない請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記主桁は、前記複数のIDT電極のうち隣接する2つのIDT電極が形成された領域を、空間を介して覆うように形成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記受信フィルタは複数の多重モード型共振器を備え、
前記主桁は、前記複数の多重モード型共振器を構成する全てのIDT電極を覆うように形成され、
前記主桁上に、前記複数の多重モード型共振器を構成する全てのIDT電極を覆うように、グランド電位である前記金属層が形成されており、前記金属層は、前記送信フィルタを構成するIDT電極が形成された領域上には形成されていない請求項1~5のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記送信フィルタが形成された領域が前記圧電基板に占める割合は、前記受信フィルタが形成された領域が前記圧電基板に占める割合の2倍以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記圧電基板は、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスからなる支持基板と接合されている請求項1~7のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを備えるモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関連する。
【背景技術】
【0002】
近年の技術的進歩により、移動体通信端末に代表されるスマートフォンなどは、目覚ましく小型化、軽量化されている。
【0003】
このような移動通信端末に用いられるフィルタとしては、小型化が可能な弾性波デバイスが用いられている。
【0004】
また、移動体通信システムとしては、同時送受信する通信システムが急増しデュプレクサ等の需要が急増している。
【0005】
これらの状況によって、デュプレクサの受信側のフィルタとして不平衡―平衡変換機能を有する多重モード型共振器が使用されている。
【0006】
さらには移動通信システムの変化に伴い、デュプレクサの要求仕様がより厳しくなってきている。
【0007】
すなわち、従来に比してより小型で、かつ、特性に優れたデュプレクサ等の弾性波デバイスが求められている。
【0008】
特許文献1には、弾性波デバイスに関する技術の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2014-120841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、十分に小型で、かつ、特性に優れた弾性波デバイスを提供することができない。
【0011】
本発明は、より小型で、かつ、特性に優れた弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる弾性波デバイスは、
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成され、第1金属層からなる複数の電極指およびバスバーを有する複数のIDT電極と、
前記圧電基板上に形成され、絶縁体からなる複数の橋台と、
前記複数の橋台上に形成された主桁と
を備え、
前記主桁は、前記IDT電極の少なくとも一つと立体的に交差しており、かつ、絶縁体からなり、
前記複数のIDT電極同士を電気的に接続する、前記第1金属層および第2金属層からなる配線パターンと、
前記主桁上に形成された金属層を備え、
前記金属層は、前記配線パターンの少なくとも一部と電気的に接続されており、かつ、グランド電位であり、
前記複数のIDT電極は、送信フィルタと、多重モード型共振器を含む受信フィルタを構成しており、前記主桁は、前記多重モード型共振器を構成する複数のIDT電極が形成された領域を、空間を介して覆うように形成されており、
前記金属層は、前記第2金属層と同じ厚みであり、
前記橋台の少なくとも一部は、前記第1金属層上に形成され、
前記第1金属層上に形成された前記橋台の厚みと前記主桁の厚みの合計の厚みは、前記第2金属層の厚みよりも小さい弾性波デバイスとした。
【0015】
前記橋台の少なくとも一部は、前記バスバー上に形成されていることが、本発明の一形態とされる。
【0016】
前記IDT電極の両端に配置された反射器を備え、
前記橋台の少なくとも一部は、前記反射器の前記IDT電極とは反対側に隣接する領域に形成されていることが、本発明の一形態とされる。
【0018】
前記主桁上に形成された前記金属層を備え、
前記金属層は、グランド電位であり、前記多重モード型共振器を構成する複数のIDT電極が形成された領域を、空間を介して覆うように形成されており、かつ、前記送信フィルタを構成するIDT電極が形成された領域上には形成されていないことが、本発明の一形態とされる。

【0019】
前記主桁は、前記複数のIDT電極のうち隣接する2つのIDT電極が形成された領域を、空間を介して覆うように形成されていることが、本発明の一形態とされる。
【0021】
前記受信フィルタは複数の多重モード型共振器を備え、
前記主桁は、前記複数の多重モード型共振器を構成する全てのIDT電極を覆うように形成され、
前記主桁上に、前記複数の多重モード型共振器を構成する全てのIDT電極を覆うように、グランド電位である前記金属層が形成されており、前記金属層は、前記送信フィルタを構成するIDT電極が形成された領域上には形成されていないことが、本発明の一形態とされる。

【0022】
前記送信フィルタが形成された領域が前記圧電基板に占める割合は、前記受信フィルタが形成された領域が前記圧電基板に占める割合の2倍以上であることが、本発明の一形態とされる。
【0023】
前記圧電基板は、サファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスからなる支持基板と接合されていることが、本発明の一形態とされる。
【0024】
前記弾性波デバイスを備えるモジュールが、本発明の一形態とされる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、より小型で、かつ、特性に優れた弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施の形態1に係る弾性波デバイスの断面図である。
図2】デバイスチップ5の構成例を示す図である。
図3図2の点線枠A内の詳細を示す図である。
図4図3の点線B部分における断面の概略を示す図である。
図5】実施例1と比較例の設計エリアを示す図である。
図6】実施例1と比較例の受信フィルタの通過特性を示す図である。
図7】実施例1と比較例の受信フィルタの広帯域の通過特性を示す図である。
図8】実施例1と比較例のアイソレーション特性を示す図である。
図9】弾性波素子52が弾性表面波共振器である例を示す平面図である。
図10】実施例2に係るモジュール100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施の形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
(実施例1)
図1は、実施例1にかかる弾性波デバイス1の断面図である。
【0029】
図1に示すように、本実施例にかかる弾性波デバイス1は、配線基板3と、配線基板3上に実装された、デバイスチップ5を備える。
【0030】
本実施例では、デバイスチップ5上に、送信フィルタTxと受信フィルタRxが構成されている。本実施例にかかる弾性波デバイス1は、Band12のデュプレクサである。
【0031】
当然のことながら、本発明の適用対象として、デバイスチップ5が一つのバンドパスフィルタが形成された弾性波デバイスでもよいし、クワトロプレクサとしてもよい。また、2つのデバイスチップを用意して、デュプレクサを実現することもできる。
【0032】
配線基板3は、例えば、樹脂からなる多層基板、または、複数の誘電体層からなる低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)多層基板等が用いられる。また、配線基板3は、複数の外部接続端子31を備える。
【0033】
デバイスチップ5上には、所望の周波数帯域の電気信号が通過するように構成されたバンドパスフィルタが形成されている。より具体的には、デバイスチップ5上には、多重モード型共振器を含む受信フィルタRxが形成されている。
【0034】
デバイスチップ5上には、さらに、ラダー型フィルタが形成されている。本実施例において、ラダー型フィルタは、送信フィルタTxである。
【0035】
デバイスチップ5は、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムまたは水晶などの圧電単結晶、あるいは圧電セラミックスからなる基板を用いることができる。
【0036】
また、デバイスチップ5は、圧電基板と支持基板が接合された基板を用いてもよい。支持基板は、例えば、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板またはシリコン基板を用いることができる。
【0037】
配線基板3上に、複数の電極パッド9が形成されている。電極パッド9は、例えば、銅または銅を含む合金を用いることができる。また、電極パッド9は、例えば、10μm~20μmの厚みとすることができる。
【0038】
デバイスチップ5を覆うように、封止部17が形成されている。封止部17は、例えば、合成樹脂等の絶縁体により形成してもよく、金属を用いてもよい。
【0039】
合成樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミドなどを用いることができるが、これらに限るものではない。好ましくは、エポキシ樹脂を用い、低温硬化プロセスを用いて封止部17を形成する。
【0040】
デバイスチップ5は、バンプ15を介して、配線基板3にフリップチップボンディングにより実装されている。
【0041】
バンプ15は、例えば、金バンプを用いることができる。バンプ15の高さは、例えば、20μmから50μmである。
【0042】
電極パッド9は、バンプ15を介して、デバイスチップ5と電気的に接続されている。
【0043】
図2は、デバイスチップ5の構成例を示す図である。
【0044】
図2に示すように、デバイスチップ5上に、弾性波素子52および配線パターン54が形成されている。
【0045】
弾性波素子52は、複数形成されており、その一部に、多重モード型共振器(図2においては図示しない)を含む。弾性波素子52は、IDT電極を含んでもよい。弾性波素子52は、IDT電極に隣接する反射器を含んでもよい。
【0046】
配線パターン54は、第1金属層のみの部分と、第1金属層と第2金属層を含む部分がある。
【0047】
多重モード型共振器(図2においては図示しない)を覆うように、主桁62が形成されている。
【0048】
主桁62は、複数の橋台60(図2においては図示しない)上に、多重モード型共振器と所定の空間を介して立体交差するように配置される。
【0049】
主桁62は、例えば、ポリイミドを用いて形成することができる。主桁62は、例えば、1000nmの膜厚で形成する絶縁体としてもよい。
【0050】
主桁62は、金属層からなってもよい。主桁62が金属層により形成される場合、弾性波素子52との電気的干渉により、弾性波デバイスの特性に悪影響が出ない程度に空間を確保することが望ましい。
【0051】
主桁62が金属層により形成される場合、主桁62をグランド電位とすることが望ましい。これにより、グランドが強化され、挿入損失の低下、広帯域における減衰特性の向上、広帯域におけるアイソレーション特性の向上が得られる。
【0052】
主桁62が絶縁体からなる場合、主桁62上に、金属層を形成してもよい。主桁62上に形成された金属層は、グランド電位とすることが望ましい。
【0053】
これにより、グランドが強化され、挿入損失の低下、広帯域における減衰特性の向上、広帯域におけるアイソレーション特性の向上が得られる。
【0054】
配線パターン54は、絶縁体を介して第1金属層および/または第2金属層と、絶縁体上に形成された金属層とが立体的に交差するように配線される、立体配線部58を有する。絶縁体は、例えば、ポリイミドを用いることができる。絶縁体は、例えば、1000nmの膜厚で形成する。
【0055】
弾性波素子52および配線パターン54は、例えば、銀、アルミニウム、銅、チタン、パラジウムなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。また、これらの金属パターンは、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成されてもよい。弾性波素子52および配線パターン54は、その厚みが、例えば、150nmから8000nmとすることができる。
【0056】
配線パターン54は、アンテナパッドANT、送信信号の入力パッドTxIn、受信信号の出力パッドRxOutおよびグランドパッドGNDを構成する配線を含んでいる。また、配線パターン54は、弾性波素子52と電気的に接続されている。
【0057】
図2に示すように、弾性波素子52を複数形成することで、バンドパスフィルタを構成することができる。バンドパスフィルタは、アンテナパッドANTまたは送信信号の入力パッドTxInから入力された電気信号のうち、所望の周波数帯域のみの電気信号を通過させるように設計されている。
【0058】
アンテナパッドANTまたは送信信号の入力パッドTxInから入力された電気信号は、バンドパスフィルタを通過し、所望の周波数帯域の電気信号が、アンテナパッドANTまたは受信信号の出力パッドRxOutに出力される。
【0059】
アンテナパッドANTまたは受信信号の出力パッドRxOutに出力された電気信号は、バンプ15および電極パッド9を介して、配線基板3の外部接続端子31から出力される。
【0060】
図3は、図2の点線枠A内の詳細を示す図である。
【0061】
図3に示すように、デバイスチップ5上に、4つの弾性波素子52が形成されている。これら4つの弾性波素子52は、いずれも3つのIDT電極が連設した多重モード型共振器である。
【0062】
図3に示すように、デバイスチップ5上に、複数の橋台60が配置されている。橋台60は、例えば、ポリイミドを用いて形成することができる。橋台60は、例えば、1000nmの膜厚で形成する絶縁体としてもよい。
【0063】
橋台60が絶縁体からなるときは、橋台60は、配線パターン54またはバスバー上に形成されてもよい。
【0064】
弾性波素子52は反射器を含んでおり、図3に示すように、橋台60の一部は、反射器のIDT電極とは反対側に隣接する領域に形成されている。
【0065】
なお、図3においては、橋台60の配置例を明らかにするため、主桁62および主桁62上に配置される金属層を省略して記載しているが、本実施例にかかる弾性波デバイス1は、4つの多重モード型共振器のすべてのIDT電極が主桁62に覆われ、立体交差するように配置されている。
【0066】
また、4つの多重モード型共振器のすべてのIDT電極は、主桁62上に配置されたグランド電位である金属層に覆われている。
【0067】
主桁62上の全面に金属層を設けて、グランド強化を図ってもよい。
【0068】
主桁62上にマイクロストリップラインを設けて、インダクタンス素子を形成してもよい。主桁62上に櫛形電極を設けて、容量素子を形成してもよい。また、これらを組み合わせてもよい。
【0069】
図4は、図3の点線B部分における断面の概略を示す図である。
【0070】
図4に示すように、デバイスチップ5上に、弾性波素子52および配線パターン54(第1金属層541)が形成されている。
【0071】
第1金属層541上に、橋台60が形成されている。橋台60は、厚み1000nmのポリイミドとした。
【0072】
橋台60上に、主桁62が形成されている。主桁62は、厚み1000nmのポリイミドとした。
【0073】
主桁62上に、金属層Mが形成されている。金属層Mは、厚み4000nmとし、グランド電位とした。
【0074】
また、金属層Mは、主桁62が形成される領域以外の領域の配線パターン54の第1金属層541上に、配線パターン54を構成する第2金属層542と、同時に形成した。
【0075】
図5は、実施例1と比較例の設計エリアを示す図である。
【0076】
図5(a)は、比較例にかかるデュプレクサである。比較例にかかるデュプレクサは、橋台、主桁および主桁上に形成されたグランド電位である金属層を含まない。比較例にかかるデュプレクサは、デバイスチップのサイズと基本的な設計は実施例1にかかる弾性波デバイスと同等であるが、橋台、主桁および主桁上に形成されたグランド電位である金属層を含まない構成を前提として最適化された設計がされている。
【0077】
図5(a)の点線で囲われた領域RxDA(a)は、比較例におけるデュプレクサとして設計を最適化した場合の受信フィルタの設計領域を示す。領域RxDA(a)は、487136.2マイクロ平米であった。
【0078】
図5(b)は、実施例1にかかるデュプレクサである。図5(b)の点線で囲われた領域RxDA(b)は、実施例1におけるデュプレクサとして設計を最適化した場合の受信フィルタの設計領域を示す。領域RxDA(a)は、446246.2マイクロ平米であった。
【0079】
実施例1のデュプレクサは、受信フィルタの設計エリアを比較例に比べて約8.4%縮小することができた。
【0080】
これにより、実施例1のデュプレクサは、送信フィルタが形成された領域がデバイスチップ5の全領域に占める割合は、受信フィルタが形成された領域が占める割合の2倍以上となった。
【0081】
送信フィルタの設計エリアを大きくとれることにより、より耐電力等を向上させた弾性波デバイスを提供することができる。
【0082】
また、これにより、従来よりも特性を向上しつつ、弾性波デバイスの小型化を図ることもできる。
【0083】
図6は、実施例1と比較例の受信フィルタの通過特性を示す図である。
【0084】
図6に示すように、実線で示された波形は、本実施例である弾性波デバイスに含まれる受信フィルタの通過特性を示す。
【0085】
また、破線で示された波形は、比較例の弾性波デバイスに含まれる受信フィルタの通過特性を示す。比較例の弾性波デバイスは、図5で比較例として示した弾性波デバイスと同じである。
【0086】
図6に示すように、受信フィルタの通過帯域の特性は、本実施例が比較例よりも優れていることがわかる。
【0087】
図7は、実施例1と比較例の受信フィルタの広帯域の通過特性を示す図である。
【0088】
図7に示すように、実線で示された波形は本実施例である弾性波デバイスに含まれる受信フィルタの広帯域における通過特性を示す。
【0089】
また、破線で示された波形は、比較例の弾性波デバイスに含まれる受信フィルタの広帯域における通過特性を示す。比較例の弾性波デバイスは、図5で比較例として示した弾性波デバイスと同じである。
【0090】
図7に示すように、広帯域における通過特性は、減衰帯域において、本実施例が比較例よりも優れていることがわかる。
【0091】
図8は、実施例1と比較例のアイソレーション特性を示す図である。
【0092】
図8に示すように、実線で示された波形は本実施例である弾性波デバイスのアイソレーション特性を示す。
【0093】
また、破線で示された波形は、比較例の弾性波デバイスのアイソレーション特性を示す。比較例の弾性波デバイスは、図5で比較例として示した弾性波デバイスと同じである。
【0094】
図8に示すように、アイソレーション特性は、本実施例が比較例よりも優れていることがわかる。
【0095】
すなわち、本発明によれば、より小型で、かつ、特性に優れた弾性波デバイスを提供することができる。
【0096】
図9は、弾性波素子52が弾性表面波共振器である例を示す平面図である。
【0097】
図9に示すように、デバイスチップ5上に、弾性表面波を励振するIDT(Interdigital Transducer)52aと反射器52bが形成されている。IDT52aは、互いに対向する一対の櫛形電極52cを有する。
【0098】
櫛形電極52cは、複数の電極指52dと複数の電極指52dを接続するバスバー52eを有する。反射器52bは、IDT52aの両側に設けられている。
【0099】
IDT52aおよび反射器52bは、例えば、アルミニウムと銅の合金からなる。IDT52aおよび反射器52bは、その厚みが、例えば、150nmから400nmの薄膜である。
【0100】
IDT52aおよび反射器52bは、他の金属、例えば、チタン、パラジウム、銀などの適宜の金属もしくはこれらの合金を含んでもよく、これらの合金により形成されてもよい。
【0101】
また、IDT52aおよび反射器52bは、複数の金属層を積層してなる積層金属膜により形成されてもよい。
【0102】
弾性波素子52は、所望のバンドパスフィルタとしての特性が得られるよう、適宜、多重モード型フィルタやラダー型フィルタに採用されることができる。
【0103】
(実施例2)
次に、本発明の別の実施形態である実施例2について説明する。
【0104】
図10は、本発明の実施例2にかかるモジュール100の断面図である。
【0105】
図10に示すように、配線基板130の主面上に、弾性波デバイス1が実装されている。
【0106】
弾性波デバイス1は、例えば、実施例1または実施例2で説明した構成を採用したデュプレクサであるとすることができる。
【0107】
配線基板130は、複数の外部接続端子131を有している。複数の外部接続端子131は、所定の移動通信端末のマザーボードに実装される構成となっている。
【0108】
配線基板130の主面上に、インピーダンスマッチングのため、インダクタ111が実装されている。インダクタ111は、Integrated Passive Device(IPD)とすることができる。
【0109】
モジュール100は、弾性波デバイス1を含む複数の電子部品を封止するための封止部117により、封止されている。
【0110】
配線基板130の内部に、集積回路部品ICが実装されている。集積回路部品ICは、図示はしないが、スイッチング回路、ローノイズアンプを含む。
【0111】
その他の構成は、実施例1または実施例2で説明した内容と重複するため、省略する。
【0112】
以上説明した本発明の実施形態によれば、より小型で、かつ、特性に優れた弾性波デバイスを含むモジュールを提供することができる。
【0113】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【0114】
また、少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面を上述したが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。
【0115】
かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0116】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。
【0117】
方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0118】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0119】
また、ここで使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。
【0120】
ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0121】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0122】
前後左右、頂底上下、および横縦への言及はいずれも、記載の便宜を意図しており、本発明の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は例示にすぎない。
【符号の説明】
【0123】
1 弾性波デバイス
3 130 配線基板
5 105 デバイスチップ
9 電極パッド
15 バンプ
17 117 封止部
31 131 外部接続端子
52 弾性波素子
54 配線パターン
541 第1金属層
542 第2金属層
100 モジュール
111 インダクタ
112 第2のインダクタ
IC 集積回路部品



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10