(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】樹脂管用管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 33/23 20060101AFI20231023BHJP
F16L 19/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F16L33/23
F16L19/08
(21)【出願番号】P 2019173706
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390006736
【氏名又は名称】株式会社日邦バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】丸山 晃市
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/058358(WO,A1)
【文献】特開2008-267549(JP,A)
【文献】特開2011-017356(JP,A)
【文献】特開2015-086979(JP,A)
【文献】実開昭58-172178(JP,U)
【文献】特表2008-528890(JP,A)
【文献】特開2009-036239(JP,A)
【文献】米国特許第04229029(US,A)
【文献】特開2010-281411(JP,A)
【文献】米国特許第05498043(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 33/23
F16L 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に雄ねじを有する筒部を備える管継手本体と、
前記筒部の内周側に固定された環状の固定部、および、前記筒部の軸線方向の一方側に位置し径方向に拡縮可能なロック部、を備えるロックリングと、
前記雄ねじに螺合する雌ねじを有するナット部、および、前記軸線方向の一方側に向かって内周側に傾斜して前記ロック部に径方向外側から接触するテーパー内周面を有する袋部、を備える袋ナットと、
前記ロックリングの内周側で前記筒部と同軸に延びる筒状のコア本体を備えるコアと、
を有し、
前記コアは、前記軸線方向に移動不能であり、
前記ロック部は、内側面に周方向に延びる
複数の爪を備え、
前記コア本体は、前記軸線方向の一方側を第1方向、他方側を第2方向とした場合に、前記第1方向の端から前記第2方向に延びる螺旋の突条を有する突条形成部を備え、
前記突条形成部と、前記爪とは、径方向で対向し、
複数の前記爪は、前記軸線方向に所定の間隔で配列されており、
前記所定の間隔は、前記軸線方向における前記突条の間隔以上、かつ、前記軸線方向における前記突条の間隔の2倍よりも小さく、
樹脂管を接続する際には、前記樹脂管の前記第2方向の端部分を前記ロックリングと前記コア本体との間に挿入して前記袋ナットを所定のロック位置まで前記管継手本体に捩じ込み、前記袋ナットが前記ロック位置に捩じ込まれた状態では、前記テーパー内周面が前記ロック部を径方向内側に押して前記爪が前記樹脂管の外周面に食い込むとともに、前記突条が前記樹脂管の内周面に食い込むことを特徴とする樹脂管用管継手。
【請求項2】
前記突条は、外周側の端が尖っていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂管用管継手。
【請求項3】
前記ロックリングは、樹脂製であり、
前記ロック部は、前記固定部と同軸の環状部と、前記環状部から前記第1方向に突出する複数の舌片部と、を備え、
複数の前記舌片部は、前記軸線回りで等角度間隔に設けられ、
各舌片部は、前記第1方向に向かって先細りの形状を備え、
前記爪は、各舌片部に、それぞれ設けられていることを特徴とする請求項
1または2に記載の樹脂管用管継手。
【請求項4】
前記筒部は、内周面に雌ねじを備えるとともに、前記雌ねじの前記第2方向で内周側に突出する環状の内側突部、を備え、
前記固定部は、前記雌ねじに螺合する雄ねじを備え、
前記コアは、前記コア本体の前記第2方向の端部から外周側に突出する環状のフランジを備え、
前記フランジは、前記軸線方向で前記内側突部と前記ロックリングとの間に挟まれていることを特徴とする請求項1から
3のうちのいずれか一項に記載の樹脂管用管継手。
【請求項5】
前記コア本体は、前記突条形成部の前記第2方向に連続する円筒部を備え、
前記円筒部の外周面は、前記第1方向の端の外形寸法が前記突条の外形寸法と同一の外形寸法であり、前記第2方向に向かって拡径するテーパー面であることを特徴とする請求項1から
4のうちのいずれか一項に記載の樹脂管用管継手。
【請求項6】
前記ロック部における前記爪の前記第2方向に保持された環状のパッキンを備え、
前記パッキンは、前記突条形成部と前記円筒部との境界の径方向外側に位置し、
前記袋ナットが前記ロック位置まで捩じ込まれた状態では、前記パッキンが弾性変形した状態で前記樹脂管の外周面に密着することを特徴とする請求項
5に記載の樹脂管用管継手。
【請求項7】
前記袋ナットが前記ロック位置まで捩じ込まれた状態では、前記コア本体の前記第1方向の端は、前記袋ナットよりも前記第1方向の突出することを特徴とする請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の樹脂管用管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂管を接続するための樹脂管用管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
水道用の配管に用いられる樹脂管を接続する樹脂管用管継手は、特許文献1に記載されている。同文献の管継手は、樹脂管の管端を拡径するテーパー状外面部を有し、樹脂管に打ち込まれるインコアと、樹脂管が挿通され、ナットの胴に対する螺合によって縮径して樹脂管の挿通部分をインコアに締め付けて保持するチャックリングを備える。インコアのテーパー状外面部は、チャックリングから突出する樹脂管の先端部分を当該チャックリングの縮径時内径よりも大径に拡径可能な傾斜角とする。また、インコアのテーパー状外面部は、樹脂管の引き抜きに対して先端部分の内周面に食い込み可能な歯を複数備える。各歯は、インコアの軸線を囲む環状に設けられている。複数の歯は、インコアの軸線方向に所定の間隔で配列されている。
【0003】
同文献の樹脂管用管継手では、樹脂管の接続時に、インコアによって樹脂管の管端がチャックリングの縮径時内径よりも大径に拡径される。従って、拡径した樹脂管の先端部分がチャックリングに引っ掛かり、チャックリングから抜け出ることが防止される。また、拡径した樹脂管の先端部分の内周面にインコアの歯が食い込む。従って、樹脂管の引抜強度が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の樹脂管用管継手では、樹脂管の接続時に、拡径した樹脂管の先端部分の内周面にインコアの歯が食い込む。従って、樹脂管用管継手を用いて仮設した配管を組み直す場合や撤去するなどに、樹脂管とインコアとを分離することが困難である。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、樹脂管の接続を解除する際に、樹脂管とコアとの分離が容易な樹脂管用管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、外周面に雄ねじを有する筒部を備える管継手本体と、前記筒部の内周側に固定された環状の固定部、および、前記筒部の軸線方向の一方側に位置し径方向に拡縮可能なロック部、を備えるロックリングと、前記雄ねじに螺合する雌ねじを有するナット部、および、前記軸線方向の一方側に向かって内周側に傾斜して前記ロック部に径方向外側から接触するテーパー内周面を有する袋部、を備える袋ナットと、前記ロックリングの内周側で前記筒部と同軸に延びる筒状のコア本体を備えるコアと、を有し、前記コアは、前記軸線方向に移動不能であり、前記ロック部は、内側面に周方向に延びる爪を備え、前記コア本体は、前記軸線方向の一方側を第1方向、他方側を第2方向とした場合に、前記第1方向の端から前記第2方向に延びる螺旋の突条を有する突条形成部を備え、前記突条形成部と、前記爪とは、径方向で対向し、樹脂管を接続する際には、前記樹脂管の前記第2方向の端部分を前記ロックリングと前記コア本体との間に挿入して前記袋ナットを所定のロック位置まで前記管継手本体に捩じ込み、前記袋ナットが前記ロック位置に捩じ込まれた状態では、前記テーパー内周面が前記ロック部を径方向内
側に押して前記爪が前記樹脂管の外周面に食い込むとともに、前記突条が前記樹脂管の内周面に食い込むことを特徴とする。
【0008】
本発明では、樹脂管を接続する際に、樹脂管の端部分をロックリングとコア本体との間に挿入して、袋ナットをロック位置まで管継手本体に捩じ込む。これにより、袋ナットのテーパー内周面がロック部を径方向内側に押し付けるので、ロックリングの爪が樹脂管の外周面に食い込む。言い換えれば、袋ナットをロック位置に配置すると、ロックリングのロック部が袋部によって縮径させられるので、ロック部の爪が樹脂管の外周面に食い込む。また、爪が樹脂管に食い込む際に、ロック部が樹脂管をコア本体に押し付けるので、コア本体に設けた突条が樹脂管の内周面に食い込む。従って、樹脂管の接続時には、樹脂管と樹脂管用管継手との引張強度を確保できる。ここで、樹脂管の内周面に食い込む突条は、螺旋であり、コア本体の第1方向の端から第2方向に延びる。また、コアは、軸線方向に移動不能である。従って、樹脂管の接続を解除する際には、袋ナットをロック位置から第1方向に移動させた後に、樹脂管と樹脂管用管接手とを軸線回りで相対回転させれば、樹脂管をロックリングとコアとの間から引き抜くことができる。すなわち、袋ナットを第1方向に移動させれば、袋部によるロック部の径方向内側への押し付けが緩むので、ロック部が拡径する。これにより、ロック部の爪が樹脂管から外周側に離間するか、或いは、離間しやすくなる。また、樹脂管と樹脂管用管接手とを軸線回りで相対回転させれば、樹脂管とコア本体とは、螺旋の突条に案内されて、離間する方向に移動する。よって、本発明の樹脂管用管継手によれば、樹脂管の接続を解除する際に、樹脂管とコアとの分離が容易である。すなわち、本発明の樹脂管用管継手によれば、樹脂管用管継手と樹脂管との接続の解除が容易である。
【0009】
また、本発明において、前記ロック部は、前記爪を複数備え、複数の前記爪は、前記軸線方向に所定の間隔で配列されており、前記所定の間隔は、前記軸線方向における前記突条の間隔以上、かつ、前記軸線方向における前記突条の間隔の2倍よりも小さいことを特徴とする。従って、ロック部が樹脂管をコア本体に押し付ける際に、軸線方向で隣り合う爪の間に位置する突条の部分が、樹脂管の内周面に食い込みやすい。
【0010】
本発明において、前記突条は、外周側の端が尖っていることが望ましい。このようにすれば、袋ナットをロック位置まで管継手本体に捩じ込んだときに、コアの突条を樹脂管の内周面に食い込ませることが容易である。
【0011】
本発明において、前記ロックリングは、樹脂製であり、前記ロック部は、前記固定部と同軸の環状部と、前記環状部から前記第1方向に突出する複数の舌片部と、を備え、複数の前記舌片部は、前記軸線回りで等角度間隔に設けられ、各舌片部は、前記第1方向に向かって先細りの形状を備え、前記爪は、各舌片部に、それぞれ設けられているものとすることができる。このようにすれば、ロック部を、径方向に拡縮可能とすることが容易である。
【0012】
本発明において、前記筒部は、内周面に雌ねじを備えるとともに、前記雌ねじの前記第2方向で内周側に突出する環状の内側突部、を備え、前記固定部は、前記雌ねじに螺合する雄ねじを備え、前記コアは、前記コア本体の前記第2方向の端部から外周側に突出する環状のフランジを備え、前記フランジは、前記軸線方向で前記内側突部と前記ロックリングとの間に挟まれているものとすることができる。このようにすれば、ロックリングを筒部に固定することが容易である。また、コアを、軸線方向に移動不能とすることが容易である。
【0013】
本発明において、前記コア本体は、前記突条形成部の前記第2方向に連続する円筒部を備え、前記円筒部の外周面は、前記第1方向の端の外形寸法が前記突条の外形寸法と同一
の外形寸法であり、前記第2方向に向かって拡径するテーパー面であるものとすることができる。このようにすれば、円筒部の外周面が樹脂管の内周面に密着するので、樹脂管と樹脂管用管継手との引張強度を高めることができる。
【0014】
本発明において、前記ロック部における前記爪の前記第2方向に保持された環状のパッキンを備え、前記パッキンは、前記突条形成部と前記円筒部との境界の径方向外側に位置し、前記袋ナットが前記ロック位置まで捩じ込まれた状態では、前記パッキンが弾性変形した状態で前記樹脂管の外周面に密着するものとすることができる。このようにすればパッキンにより、樹脂管とロックリングとの間を封止できる。また、パッキンの弾性復帰力により、樹脂管の内周面を突条形成部と円筒部との境界に密着させることができる。これにより、樹脂管と樹脂管用管継手との間で、漏水が発生することを防止或いは抑制できる。
【0015】
本発明において、前記袋ナットが前記ロック位置まで捩じ込まれた状態では、前記コア本体の前記第1方向の端は、前記袋ナットよりも前記第1方向の突出するものとすることができる。このようにすれば、コア本体の第1方向の端がナットよりも第1方向に突出していない場合と比較して、樹脂管の内周面とコア本体との接触面積を増加させることができる。よって、樹脂管と樹脂管用管継手との引張強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂管の端部分をロックリングとコア本体との間に挿入して袋ナットをロック位置まで管継手本体に捩じ込むと、ロックリングのロック部が袋部によって内周側に押されて、爪が樹脂管の外周面に食い込む。また、ロックナットの爪が樹脂管に食い込む際に、ロック部が樹脂管をコアに押し付けるので、コア本体の第1方向の端部分に設けた突条が樹脂管の内周面に食い込む。従って、樹脂管の接続時には、樹脂管と樹脂管用管継手との引張強度を確保できる。ここで、樹脂管の内周面に食い込む突条は、螺旋である。また、コアは、軸線方向に移動不能である。従って、樹脂管の接続を解除する際には、袋ナットをロック位置から第1方向に移動させ、しかる後に、樹脂管を軸線回りの所定の方向に回転させれば、樹脂管をロックリングとコアとの間から引き抜くことができる。よって、樹脂管とコアとの分離が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した樹脂管用管継手の断面図である。
【
図3】樹脂管を樹脂管用管継手に接続した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態である樹脂管用管継手を説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用した樹脂管用管継手の断面図である。
図2は
図1の樹脂管用管継手の分解斜視図である。なお、
図1では、コアのみ、側面図で示す。本例の樹脂管用管継手1は、水道用の配管の施工に際して、樹脂管の接続に用いられる。樹脂管は、例えば、ポリエチレン製である。
【0020】
図1に示すように、樹脂管用管継手1は、大径筒部11(筒部)を備える管継手本体10と、大径筒部11に捩じ込まれた袋ナット20と、大径筒部11および袋ナット20の内側に位置するロックリング30と、ロックリング30の内側に位置するコア50と、を備える。また、樹脂管用管継手1は、ロックリング30と管継手本体10との間に介在するOリング61と、ロックリング30に保持されたパッキン62とを備える。以下の説明では、大径筒部11の軸線Lに沿った方向を軸線方向Xとする。また、軸線方向Xの一方
側を第1方向X1、他方側を第2方向X2とする。第1方向X1は、管継手本体10に対して袋ナット20が位置する側である。第2方向X2は、その反対側であり、袋ナット20を管継手本体10に捻じ込む方向である。
【0021】
管継手本体10は、筒状である。管継手本体10は、大径筒部11と、大径筒部11の第2方向X2の端部から内周側に延びる環状壁部12と、環状壁部12の内周側の端部から第2方向X2に延びる小径筒部13と、を備える。大径筒部11は、外周面に雄ねじ11aを備える。また、大径筒部11は、雄ねじ11aの第2方向X2で外周側に突出する環状の外側突部15を備える。さらに、大径筒部11は、内周面に雌ねじ11bを備える。大径筒部11は、雌ねじ11bの第2方向X2で内周側に突出する環状の内側突部16、を備える。内側突部16は、外側突部15よりも第1方向X1に位置する。小径筒部13は、大径筒部11の第2方向X2に位置する。小径筒部13は、大径筒部11と同軸である。小径筒部13は、大径筒部11よりも、外形寸法が小さい。小径筒部13の外周面には、樹脂管用管継手1を他の配管部材に接続するための雄ねじ13aが設けられている。なお、雄ねじ13aは、樹脂管用管継手1を他の配管部材に接続する接続構造の一例である。従って、小径筒部13の外周面には、雄ねじ13aが設けられていない場合もある。
【0022】
ロックリング30は、樹脂製である。ロックリング30は、大径筒部11の内周側に位置する環状の固定部31、および、大径筒部11の第1方向X1に位置し径方向に拡縮可能なロック部32を備える。
【0023】
固定部31は、大径筒部11の雌ねじ11bに螺合する雄ねじ31aを備える。また、固定部31は、第2方向X2の端に、内周側に突出する環状の厚肉部分33を備える。厚肉部分33は、第1方向X1を向く環状端面33aと、内周側を向く内周壁面33bとを備える。厚肉部分33には、内周側に突出する環状突出部34が設けられている。また、固定部31は、第2方向X2の端の外周側に、第1方向X1および内周側に窪む面取り部35を備える。
【0024】
環状突出部34は、厚肉部分33の第1方向X1の端から内周側に突出する。環状突出部34の第1方向X1の端面は、厚肉部分33の環状端面33aと段差なく連続している。また、環状突出部34は、厚肉部分33の第2方向X2の端から第1方向X1に離間する位置に設けられている。従って、環状突出部34の第2方向X2の端面の外周側の端からは、厚肉部分33の内周壁面33bが第2方向X2に向かって延びる。ここで、環状突出部34の第1方向X1の端面には、周方向の4か所に、第2方向X2に窪む係合凹部34aが設けられている。4つの係合凹部34aは、等角度間隔に形成されている。
【0025】
ロックリング30は、固定部31の雄ねじ31aと大径筒部11の雌ねじ11bとが螺合することにより、管継手本体10に固定される。ロックリング30を管継手本体10に固定する際には、まず、第2方向X2の端部分に係合凹部34aと係合可能な4つの係合突起を備える棒状の治具(不図示)を用意する。次に、治具をロックリング30の内側に挿入して、治具の係合突起を係合凹部34aに係合させる。しかる後に、治具を管継手本体10に対して回転させることによりロックリング30を回転させて、ロックリング30の雄ねじ31aを管継手本体10の雌ねじ11bに締め付ける。これにより、ロックリング30と管継手本体10とは、強固に固定される。
【0026】
なお、ロックリング30が管継手本体10に固定される際には、面取り部35にOリング61が配置される。ロックリング30が管継手本体10に固定されると、Oリング61は、ロックリング30と管継手本体10との間で圧縮された状態となる。ロックリング30が管継手本体10に固定された状態では、固定部31の第2方向X2の端面が内側突部
16と狭い隙間を開けて対向する。
【0027】
また、ロックリング30の管継手本体10への固定は、コア50がロックリング30の内周側に配置された状態で行われる。ロックリング30が管継手本体10に固定された状態では、詳細を後述するように、環状突出部34がコア50のコア本体51に外周側から接触する。また、コア50のフランジ52が、管継手本体10の内側突部16とロックリング30の環状突出部34との間に挟まれた状態となる。
【0028】
次に、ロック部32は、固定部31と同軸の環状部36と、環状部36から第1方向X1に突出する複数の舌片部37と、を備える。本例では、環状部36から6枚の舌片部37が突出する。複数の舌片部37は、軸線L回りで等角度間隔に設けられている。各舌片部37を軸線方向Xから見た場合に、円弧形状を備える。また、各舌片部37は、第1方向X1に向かって先細りの形状を備える。
【0029】
また、ロック部32は、内側面に、周方向に延びる爪38を複数備える。複数の爪38は、軸線方向Xに所定の間隔で配列されている。複数の爪38は、各舌片部37に、それぞれ設けられている。すなわち、各舌片部37は、その内周面に、軸線方向Xに所定の間隔Mで配列された複数の爪38を備える、各爪38の内周側の端は尖っている。
【0030】
さらに、ロック部32は、爪38の第2方向X2に、外周側に窪む環状凹部39を備える。環状凹部39は、環状部36の第1方向X1の端部分から各舌片部37の第2方向X2の端部分に渡って設けられている。環状凹部39には、環状のパッキン62が挿入されている。パッキン62は、ゴムなどの弾性部材からなる。パッキン62において、径方向外側を向く外周面は、第2方向X2に向かって外周側に傾斜するテーパー面62aを備える。
【0031】
袋ナット20は、大径筒部11の雄ねじ11aに螺合する雌ねじ21aを有するナット部21と、ナット部21の第1方向X1に位置する袋部22と、を備える。袋部22は、第1方向X1に向かって内周側に傾斜してロック部32に径方向外側から接触するテーパー内周面22aを有する。
【0032】
コア50は、ロックリング30の内周側で大径筒部11と同軸に延びる筒状のコア本体51と、コア本体51の第2方向X2の端部から外周側に突出する環状のフランジ52と、を備える。
【0033】
コア本体51は、第1方向X1の端から第2方向X2に延びる一本の螺旋の突条53を有する突条形成部54と、突条形成部54の第2方向X2に連続する円筒部55と、を備える。突条53は、軸線Lに沿った平面で切断した形状が山型である。突条53は、外周側の端が尖っている。突条形成部54と、ロックリング30の複数の爪38とは、径方向で対向する。軸線方向Xにおける突条53の間隔Nは、軸線方向Xで隣に位置する爪38が互いに離間する所定の間隔M以下である。言い換えれば、軸線方向Xで隣に位置する爪38が互いに離間する所定の間隔Mは、軸線方向Xにおける突条53の間隔N以上、かつ、軸線方向Xにおける突条53の間隔Nの2倍よりも小さい
【0034】
円筒部55の外周面55aは、第2方向X2に向かって拡径するテーパー面である。円筒部55の外周面55aの第1方向X1の端の外形寸法は、突条53の外形寸法と同一である。ここで、突条形成部54と円筒部55との境界は、径方向でパッキン62と対向する。言い換えれば、パッキン62は、突条形成部54と円筒部55の径方向外側に位置する。また、円筒部55の外周面55aにおける第2方向X2の端部分は、環状突出部34に当接している。
【0035】
フランジ52は、軸線方向Xにおいて、管継手本体10の内側突部16と、ロックリング30の環状突出部34と、の間に挟まれている。より詳細には、フランジ52の第1方向X1の端面は、ロックリング30の環状突出部34に当接している。フランジ52の第2方向X2の端面は、管継手本体10の内側突部16に当接している。また、フランジ52の外周側の端面は、ロックリング30の厚肉部分33の内周壁面33bに当接している。これにより、コア50は、軸線方向Xに移動不能な状態、および、径方向に移動不能な状態で、大径筒部11およびロックリング30に支持されている。
【0036】
(樹脂管と樹脂管用管継手との接続)
図3は、樹脂管を樹脂管用管継手1に接続した場合の断面図である。
図3では、コア50のみ側面図で示す。樹脂管100を接続する際には、樹脂管用管継手1は、
図1に示す状態である。すなわち、袋ナット20は、管継手本体10に捩じ込まれているが、管継手本体10に最も捩じ込まれたロック位置よりも第1方向X1に配置されている。
【0037】
この状態において、樹脂管100の第2方向X2の端部分を、ロックリング30とコア本体51との間に挿入する。そして、樹脂管100の第2方向X2の端面を、ロックリング30の厚肉部分33の環状端面33aおよび環状突出部34に当接させる。
【0038】
ここで、本例では、突条形成部54の外径寸法(突条53の外形寸法)は、樹脂管100に挿入可能な寸法であり、樹脂管100の内径寸法と実質的に同一の寸法である。また、突条形成部54の第2方向X2に連続する円筒部55の外周面55aは、第2方向X2に向かって拡径するテーパー面であるが、第1方向X1の端の外形寸法は突条形成部54の外径寸法(突条53の外形寸法)と同一である。従って、樹脂管100を第2方向X2に押し込むことによって、樹脂管100の第2方向X2の端部分をロックリング30とコア本体51との間に挿入することができる。また、樹脂管100を第2方向X2に押し込むことによって、樹脂管100の第2方向X2の端面を、ロックリング30の厚肉部分33の環状端面33aおよび環状突出部34に当接させることができる。さらに、コア50の円筒部55の外周面55aは第2方向X2に向かって拡径するテーパー面である。従って、樹脂管100の端部分をロックリング30の厚肉部分33の環状端面33aおよび環状突出部34に当接させたときに、円筒部55の外周面55aと樹脂管100の内周面100bとを密着させることができる。よって、樹脂管100と樹脂管用管継手1との引張強度を高めることができる。
【0039】
次に、袋ナット20をロック位置20Aまで管継手本体10に捩じ込む。袋ナット20をロック位置20Aまで捩じ込むと、テーパー内周面22aがロック部32を径方向内側に押す。これにより、ロック部32が袋ナット20の袋部22によって縮径させられるので、ロック部32の複数の爪38が樹脂管100の外周面100aに食い込む。また、ロックナットの爪38が樹脂管100に食い込む際に、ロック部32が樹脂管100をコア本体51に押し付けるので、コア本体51に設けた突条53が樹脂管100の内周面100bに食い込む。従って、樹脂管100と樹脂管用管継手1との引張強度が確保される。
【0040】
ここで、軸線方向Xにおける突条53の間隔Nは、軸線方向Xで隣に位置する爪38が互いに離間する所定の間隔M以下である。すなわち、軸線方向Xで隣に位置する爪38が互いに離間する所定の間隔Mは、軸線方向Xにおける突条53の間隔N以上、かつ、軸線方向Xにおける突条53の間隔Nの2倍よりも小さい。従って、ロック部32が樹脂管100をコア本体51に押し付ける際に、軸線方向Xで隣り合う爪38の間に位置する突条53の部分が、樹脂管の内周面に食い込みやすい。
【0041】
また、ロックリング30は、樹脂製である。さらに、ロック部32は、固定部31と同
軸の環状部36と、環状部36から第1方向X1に突出する複数の舌片部37と、を備える。また、複数の舌片部37は、軸線L回りで等角度間隔に設けられている。さらに、各舌片部37は、第1方向X1に向かって先細りの形状を備える。従って、ロック部32を、径方向に拡縮可能とすることが容易である。
【0042】
さらに、突条53は、外周側の端が尖っている。従って、袋ナット20をロック位置20Aまで管継手本体10に捩じ込んだときに、コア50の突条53は樹脂管100の内周面100bに、容易に食い込む。
【0043】
また、袋ナット20がロック位置20Aまで捩じ込まれた状態では、パッキン62が弾性変形した状態で樹脂管100の外周面100aに密着する。従って、パッキン62により、樹脂管100とロックリング30との間を封止できる。さらに、パッキン62は、突条形成部54と円筒部55の径方向外側に位置する。従って、パッキン62の弾性復帰力により、樹脂管100の内周面100bを突条形成部54と円筒部55との境界に密着させることができる。これにより、樹脂管100と樹脂管用管継手1との間で、漏水が発生することを防止或いは抑制できる。
【0044】
さらに、袋ナット20がロック位置20Aまで捩じ込まれた状態では、コア本体51の第1方向X1の端51aは、袋ナット20よりも第1方向X1に突出する。従って、コア本体51の第1方向X1の端51aが袋ナット20よりも第1方向X1に突出していない場合と比較して、樹脂管100の内周面100bとコア本体51との接触面積を増加させることができる。よって、樹脂管100と樹脂管用管継手1との引張強度を高めることができる。
【0045】
(樹脂管と樹脂管用管継手との接続の解除)
樹脂管用管継手1を用いて仮設した配管を組み直す場合や撤去する場合などにおいて、樹脂管100の接続を解除する際には、まず、袋ナット20をロック位置20Aから第1方向X1に移動させる。ここで、袋ナット20を第1方向X1に移動させれば、袋部22によるロック部32の径方向内側への押し付けが緩むので、ロック部32が拡径する。これにより、ロック部32の爪38は、樹脂管100から外周側に離間する。或いは、ロック部32の爪38は、樹脂管100から外周側に離間しやすくなる。
【0046】
次に、
図3に矢印で示すように、樹脂管用管継手1を軸線L回りの所定の方向Rに回転させる。ここで、樹脂管100の内周面100bに食い込んだコア50の突条53は、螺旋であり、コア本体51の第1方向X1の端51aから第2方向X2に延びている。また、コア50は、軸線方向Xに移動不能である。従って、樹脂管用管継手1を軸線L回りの所定の方向Rに回転させれば、樹脂管用管継手1は、螺旋の突条53に案内されて、第2方向X2に移動する。よって、本例の樹脂管用管継手1によれば、樹脂管100の接続を解除する際に、樹脂管100とコア50との分離が容易である。すなわち、本例の樹脂管用管継手1によれば、樹脂管100と樹脂管用管継手1との接続の解除が容易である。
【0047】
なお、ロックリング30は、固定部31が大径筒部11の内周側に固定されていればよく、ロックリング30を大径筒部11に固定する固定方法は、ロックリング30の雄ねじ11aと大径筒部11の雌ねじ11bとの螺合に限られるものではない。また、コア50は、軸線方向Xに移動不能な状態で大径筒部11の筒部の内周側に保持されていればよい。従って、コア50は、軸線方向Xに移動不能な状態で管継手本体10に支持されていてもよい。或いは、軸線方向Xに移動不能な状態でロックリング30に支持されていてもよい。さらに、コア50は、管継手本体10と一体に設けられていてもよい。
【0048】
また、袋ナット20がロック位置20Aまで捩じ込まれた状態において、コア本体51
の先端51aは袋ナット20の径方向内側に位置してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…樹脂管用管継手、10…管継手本体、11…大径筒部(筒部)、11a…雄ねじ、11b…雌ねじ、12…環状壁部、13…小径筒部、15…外側突部、16…内側突部、20…袋ナット、20A…ロック位置、21…ナット部、21a…雌ねじ、22…袋部、22a…テーパー内周面、30…ロックリング、31…固定部、32…ロック部、33…厚肉部分、33a…環状端面、33b…内周壁面、34…環状突出部、34a…係合凹部、35…面取り部、36…環状部、37…舌片部、38…爪、39…環状凹部、50…コア、51…コア本体、52…フランジ、53…突条、54…突条形成部、55…円筒部、55a…円筒部の外周面、61…Oリング、62…パッキン、100…樹脂管、100a…樹脂管の外周面、100b…樹脂管の内周面、L…軸線、M…軸線方向における爪の間隔、N…軸線方向における螺旋の突条の間隔、X…軸線方向、X1…第1方向、X2…第2方向