(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20231023BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20231023BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G06T7/00 350C
G01N33/483 C
(21)【出願番号】P 2019183164
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】尾鶴 亮
(72)【発明者】
【氏名】小山田 雄仁
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522825(JP,A)
【文献】国際公開第2018/187548(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の深層学習器を含み、当該第1の深層学習器により、外部より取得される顕微鏡画像の特徴量を計算し、それら特徴量からフリー菌割合を回帰する回帰部であって、適宜の顕微鏡画像データを入力データとし、それら顕微鏡画像データの夫々に付せられるフリー菌割合データを出力データとして、第1の深層学習器に対する学習を実行する回帰部と、
第2の深層学習器を含み、当該第2の深層学習器により、一つの被検血清における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データから、感染の有無を分類する分類部であって、複数の被検血清の各々における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、各々の被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器に対する学習を実行する分類部と
を備える、顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置。
【請求項2】
前記回帰部が、一つの被検血清に関する、複数の希釈度の顕微鏡画像データを、学習済みの第1の深層学習器に入力し、
前記学習済みの第1の深層学習器が、入力された複数の希釈度の顕微鏡画像データの各々におけるフリー菌割合を算出して出力し、
前記分類部が、前記一つの被検血清における、希釈度の個数分の(希釈度、フリー菌割合)データを、学習済みの第2の深層学習器に入力し、
前記学習済みの第2の深層学習器が、入力された、希釈度の個数分の(希釈度、フリー菌割合)データに係る、前記一つの被検血清についてのレプトスピラ症の感染/非感染を判定して、感染/非感染を表すラベルを出力する、
請求項1に記載の顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置。
【請求項3】
前記回帰部が、前記第1の深層学習器を、顕微鏡画像データと、それに対応するフリー菌割合として比較的粒度の粗いものとを用いて予め学習させて、学習済みの第1の深層学習器としており、
更に、
(1)前記回帰部が、感染/非感染が既に明らかである一つの被検血清に関する、複数の希釈度の顕微鏡画像データを、前記学習済みの第1の深層学習器に入力する処理を行い、
(2)前記学習済みの第1の深層学習器が、入力された複数の希釈度の顕微鏡画像データの各々におけるフリー菌割合を算出して出力する処理を行い、及び、
(3)前記分類部が、感染/非感染が既に明らかである前記一つの被検血清における、希釈度の個数分の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、前記一つの被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器に対する学習を実行する処理を行い、並びに、
(4)学習精度に応じて上記の(1)~(3)の処理を繰り返す、
請求項1に記載の顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置。
【請求項4】
前記学習済みの第1の深層学習器を予め学習させるフリー菌割合の数値が、所定の段階の粗さで設定されるに過ぎないものである、
請求項3に記載の顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置。
【請求項5】
第1の深層学習部を含む回帰部と第2の深層学習器を含む分類部とを備える、感染診断装置を用いて行う、
顕微鏡下凝集試験のための方法であって、
適宜の顕微鏡画像データを入力データとし、それら顕微鏡画像データの夫々に付せられるフリー菌割合データを出力データとして、第1の深層学習器に対する学習を実行する第1の学習ステップと、
複数の被検血清の各々における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、各々の被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器に対する学習を実行する第2の学習ステップと、
第1の深層学習器により、外部より取得される顕微鏡画像の特徴量を計算し、それら特徴量からフリー菌割合を回帰する回帰ステップと、及び、
第2の深層学習器により、一つの被検血清における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データから、感染の有無を分類する分類ステップと
を含む、
顕微鏡下凝集試験のための方法。
【請求項6】
前記回帰部が、前記第1の深層学習器を、顕微鏡画像データと、それに対応するフリー菌割合として比較的粒度の粗いものとを用いて予め学習させて、学習済みの第1の深層学習器としており、
更に、
(1)前記回帰部が、感染/非感染が既に明らかである一つの被検血清に関する、複数の希釈度の顕微鏡画像データを、前記学習済みの第1の深層学習器に入力する処理を行い、
(2)前記学習済みの第1の深層学習器が、入力された複数の希釈度の顕微鏡画像データの各々におけるフリー菌割合を算出して出力する処理を行い、及び、
(3)前記分類部が、感染/非感染が既に明らかである前記一つの被検血清における、希釈度の個数分の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、前記一つの被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器に対する学習を実行する処理を行い、並びに、
(4)学習精度に応じて上記の(1)~(3)の処理を繰り返す、
請求項5に記載の
顕微鏡下凝集試験のための方法。
【請求項7】
前記学習済みの第1の深層学習器を予め学習させるフリー菌割合の数値が、所定の段階の粗さで設定されるに過ぎないものである、
請求項6に記載の
顕微鏡下凝集試験のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顕微鏡下凝集試験(Microscopic Agglutination Test;MAT)は、レプトスピラ症診断の標準的な確定診断方法として臨床的に広く用いられている。レプトスピラ症は、ワイル病、秋疫などとも称される、病原性レプトスピラ感染に起因する人獣共通の細菌感染症である。
【0003】
顕微鏡下凝集試験(MAT)は、患者血清とレプトスピラ生菌を混合し、37℃で3時間静置して、菌の凝集を暗視野顕微鏡下で観察する試験であり、血清型特異的な抗体を検出する。顕微鏡下凝集試験はレプトスピラ症の確定診断に必要な試験であるとされている。
【0004】
顕微鏡下凝集試験(MAT)における診断は、診断医の技術に依存するものである。顕微鏡画像には、参照用画像と希釈度の異なる複数の血清希釈画像が含まれるが、まず、診断医は、参照用画像と各血清希釈画像とを比較し、各血清希釈画像内に観測されるフリー菌の割合を目視で算出する。診断医は、一つの血清(検体)における、希釈度の異なる複数の血清希釈画像の各々におけるフリー菌割合を目視で算出し、その後、複数組の(希釈度、フリー菌割合)の関係から、感染の有無を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フリー菌割合を目視により算出すること、及び、複数組の(希釈度、フリー菌割合)の関係から感染の有無を判定することは、診断医の経験に基づくものであり、いずれも習熟が要求される。経験を欠く医師が算出及び判定することは、非常に困難である。
【0007】
本開示は、正確かつ迅速に顕微鏡下凝集試験における判定を行う、顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置は、
第1の深層学習器を含み、当該第1の深層学習器により、外部より取得される顕微鏡画像の特徴量を計算し、それら特徴量からフリー菌割合を回帰する回帰部であって、適宜の顕微鏡画像データを入力データとし、それら顕微鏡画像データの夫々に付せられるフリー菌割合データを出力データとして、第1の深層学習器に対する学習を実行する回帰部と、
第2の深層学習器を含み、当該第2の深層学習器により、一つの被検血清における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データから、感染の有無を分類する分類部であって、複数の被検血清の各々における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、各々の被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器に対する学習を実行する分類部と
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置及び方法は、属人性を排除した正確かつ迅速な、顕微鏡下凝集試験における判断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る画像処理装置のシステム構成図である。
【
図2】回帰部における第1の深層学習器の構成を示すブロック図である。
【
図3】分類部における第2の深層学習器の構成を示すブロック図である。
【
図4】回帰部における第1の深層学習器を学習させる処理のフローチャートである。
【
図5】分類部における第2の深層学習器を学習させる処理のフローチャートである。
【
図6】回帰部における第1の深層学習器を学習させる処理と、これに続いて、分類部における第2の深層学習器を学習させる処理との、フローチャートである。
【
図7】感染の有無を判定する処理のフローチャートである。
【
図8】分類部における第2の深層学習器を、疑似的に粒度の細かい学習データで学習させる処理のフローチャートである。
【
図9】
図9(a)は、分類部における第2の深層学習器のための粒度の細かい学習データである。
図9(b)は、分類部における第2の深層学習器のための粒度の粗い学習データである。
【
図10】一つの被検血清に関する複数の(希釈度、フリー菌割合)データから示される、希釈度-フリー菌割合の関係のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
1.本発明に至る経緯
ワイル病、秋疫などとも称されるレプトスピラ症は、標準的に顕微鏡下凝集試験(MAT)によって診断される。しかし特に凝集の判定には習熟が必要であり、世界的な標準化が難しい、とされている。
【0014】
顕微鏡下凝集試験(MAT)の概要(例)は、以下(1)~(10)のようなものである。
(1)被検血清をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で5倍に希釈する。
(2)(例えば)96穴マイクロプレートの第2穴から最終穴までPBSを25μlずつ入れる。
(3)上記(1)にて5倍希釈した血清50μlを第1穴に入れる。
(4)第1穴から血清25μlを分取し、PBSを用いつつ第2穴から順に2倍連続希釈していく。最終穴には血清を加えず最終穴をコントロールとする。
(5)レプトスピラ培養液25μlを全穴に入れる。
(6)プレートミキサーで混合する。
(7)37℃における3時間の反応の後、各穴の上清5μlをスライドガラスに分取し、暗視野顕微鏡下(倍率100倍)での画像を撮像する。暗視野顕微鏡画像は、希釈度の(個)数分だけ生成される。
(8)夫々の希釈度の暗視野顕微鏡画像において、凝集していないフリーの菌数の割合を算出する。
(9)
図10に示すように、被検血清に関する、複数の(希釈度、フリー菌割合)データを座標平面上にプロットする。即ち、複数の(希釈度、フリー菌割合)データから、希釈度-フリー菌割合の関係をグラフにて示す。なお、希釈度は対数で表されている。
(10)上記(9)で作成した、希釈度-フリー菌割合の関係を示すグラフの形状(
図10参照)により、感染/非感染を判定する。
【0015】
上述のような顕微鏡下凝集試験(MAT)では、次のような困難性が指摘されている。つまり、判定や算出が診断医の技術に依存していることである。まず、希釈度-フリー菌割合の関係から、感染の有無を判定することは、習得に時間を要する経験的技術に依存するものである。また、暗視野顕微鏡画像におけるフリー菌の割合の算出は、診断医の目視に拠るものであり、やはり経験を要するものである。このような困難性のために、診断医がレプトスピラ症診断を正確かつ迅速に行うことができない、という問題点が存在する。
【0016】
本開示に係る実施の形態は、上述の問題点を解決するものである。要するに、本発明に係る実施の形態は、画像解析によるMAT診断を機械学習により実現するものであり、希釈された血清に対応する顕微鏡画像のフリー菌割合を算出すること、及び、希釈度-フリー菌割合の関係から感染の有無を判定することを、機械学習器、特に、ディープニューラルネットワーク、即ち、深層学習器を用いて実現する。
【0017】
2.[実施の形態1]
以下、
図1~
図7を参照して、本発明の好ましい実施の形態1を説明する。
【0018】
2.1.[システム構成]
実施の形態1に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置は、或る被検血清について、様々な希釈度の当該被検血清とレプトスピラ培養液との混合液の暗視野顕微鏡画像を取得し、当該取得した顕微鏡画像に基づいて、被検血清が感染しているか否かを判定する装置である。
図1は、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2のシステム構成図である。
【0019】
顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2は、画像取得部4、回帰部6、分類部8、データ取得編集部10、及び出力部12から構成される。
【0020】
画像取得部4は、装置の外部から画像を取得する手段であり、典型的には、暗視野顕微鏡画像を撮影する外部のカメラとのインタフェースからなる。以降、画像とは、暗視野顕微鏡画像を指すものとする。なお、画像取得部4は、必ずしも外部のカメラから画像を取得する必要はなく、例えば、装置の外部から有線または無線ネットワークを介して画像を取得してもよい。また、ディスクドライブやフラッシュメモリ等の記憶装置に記憶された画像を取得するようにしてもよい。
【0021】
回帰部6は、ディープニューラルネットワークにより構成される第1の深層学習器6aを含み、当該第1の深層学習器6aにより、取得される暗視野顕微鏡画像の特徴量を計算し、それら特徴量からフリー菌割合を回帰する。回帰部6は、適宜の顕微鏡画像データを入力データとし、夫々の顕微鏡画像データに付せられるフリー菌割合データを出力データとして、第1の深層学習器6aに対する学習(トレーニング)を行う。第1の深層学習器6aを学習する方法、及び、利用する方法についての詳細は後述する。
【0022】
分類部8は、ディープニューラルネットワークにより構成される第2の深層学習器8aを含み、当該第2の深層学習器8aにより、一つの被検血清における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データから、感染の有無を分類する。分類部8は、複数の被検血清の各々における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、各々の被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器8aに対する学習(トレーニング)を行う。第2の深層学習器8aを学習する方法、及び、利用する方法についての詳細は後述する。
【0023】
データ取得編集部10は、装置の外部から若しくは内部から、データを取得し、必要に応じて編集する手段である。データ取得編集部10は、例えば、キーボード(図示せず)などの入力手段から、ディスクドライブやフラッシュメモリ等の記憶装置から、又は、外部の有線または無線ネットワークから、データを取得し得る。このようにして取得されるデータは、データ取得編集部10により、必要に応じて、例えば、様々な形式に編集され得る。
【0024】
また、出力部12は、ユーザに対して情報を提示する手段である。典型的には、液晶ディスプレイとその制御手段から構成される。なお、出力部12は、ユーザに対して情報を伝達することができれば、ディスプレイ以外の手段であってもよい。例えば、音声を出力する装置であってもよいし、電子メールやインスタントメッセージ等を送信するための通信装置であってもよい。
【0025】
画像取得部4、回帰部6、分類部8、及びデータ取得編集部10の機能は、制御プログラムをCPUなどの処理装置が実行することによって実現される。また、当該機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などによって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0026】
2.1.1.[第1の深層学習器の構成]
図2は、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2の回帰部6における第1の深層学習器6aの構成を示すブロック図である。第1の深層学習器6aはディープニューラルネットワークにより構成される。
図2に示すように、第1の深層学習器6aは、画像データ、特に、所定の希釈度を有する被検血清についての暗視野顕微鏡画像データを入力し、当該の所定の希釈度を有する被検血清についてのフリー菌割合を出力する。
【0027】
2.1.2.[第2の深層学習器の構成]
図3は、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2の分類部8における第2の深層学習器8aの構成を示すブロック図である。第2の深層学習器8aも、ディープニューラルネットワークにより構成される。
図3に示すように、第2の深層学習器8aは、一つの被検血清における複数組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力し、当該被検血清についてのレプトスピラ症の感染/非感染を表すラベルをデータとして出力する。
【0028】
2.2.[システム動作]
2.2.1.[回帰部の学習フェーズ]
次に、回帰部6における第1の深層学習器6aを学習させる方法について説明する。
図4は、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2が行う処理のうち、回帰部6における第1の深層学習器6aを学習させる処理のフローチャートである。当該処理は、ユーザの操作(例えば、学習の開始を指示する操作)によって開始される(ステップS02)。
【0029】
先ず、画像取得部4が、一つの顕微鏡画像データを取得する(ステップS04)。本実施の形態では、カメラ(図示せず)を用いて顕微鏡画像を撮像してもよいし、通信手段を介して画像を取得してもよいし、記憶手段に記憶されている画像を取得してもよい。なお、顕微鏡画像データの夫々は、ラベルとしてのフリー菌割合データが既に明らかなもの(診断医などによって予め与えられたもの)である。
【0030】
ステップS04にて取得された顕微鏡画像は、所定の希釈度を有する、被検血清とレプトスピラ生菌との混合液の顕微鏡画像であるので、次に、対応するラベルであるフリー菌割合を取得する(ステップS06)。このラベルであるフリー菌割合は、ステップS04にて取得された顕微鏡画像に付されているものであってもよいし、データ取得編集部10により取得されるものであってもよい。
【0031】
次に、取得された顕微鏡画像データを入力データとし、夫々の顕微鏡画像データに対応するフリー菌割合データを出力データとして、回帰部6における第1の深層学習器6aの学習(トレーニング)を実行する(ステップS08)。
【0032】
次に、学習精度が十分で無ければ(ステップS10・No)、ステップS04の直前に戻り、続いての顕微鏡画像による学習の処理を行う(ステップS04~)。学習精度が十分であれば(ステップS10・Yes)、回帰部6における第1の深層学習器6aを学習させる処理を終了する(ステップS12)。
【0033】
図4に示す処理は、学習のために必要な十分な量のデータを得るため、繰り返し実行されることが好ましい。また、当該処理は、ユーザの操作以外によって開始されるようにしてもよい。例えば、前回の実行から所定の時間が経過するごとに自動的に開始されるようにしてもよい。また、ユーザの操作等によって、追加で一つないし複数のデータを読み込んで、更なる学習を行わせるようにしてもよい。
【0034】
2.2.2.[分類部の学習フェーズ]
次に、分類部8における第2の深層学習器8aを学習させる方法について説明する。
図5は、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2が行う処理のうち、分類部8における第2の深層学習器8aを学習させる処理のフローチャートである。当該処理は、ユーザの操作(例えば、学習の開始を指示する操作)によって開始される(ステップS20)。
【0035】
先ず、データ取得編集部10が、一つの被検血清における複数の(希釈度、フリー菌割合)データを、希釈度の個数(ここでは、k個とする)分、取得する(ステップS22)。この、一つの被検血清におけるk個(k組)の(希釈度、フリー菌割合)データは、装置の外部から与えられるものであってもよいし、特に、「フリー菌割合」は、回帰部6により算出されるものであってもよい。なお、一つの被検血清における、希釈度の個数(k個)分の(希釈度、フリー菌割合)データに対しては、被検血清についての感染/非感染を表すラベルの内容が既に明らかなもの(診断医などによって予め与えられたもの)である。
【0036】
ステップS22にて取得された、希釈度の個数(k個)分の(希釈度、フリー菌割合)データは、一つの被検血清におけるものであるので、次に、対応する感染/非感染を表すラベルを取得する(ステップS24)。この感染/非感染を表すラベルは、データ取得編集部10により取得されるものであればよい。
【0037】
次に、k組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、k組の(希釈度、フリー菌割合)データに対応する感染/非感染を表すラベルを出力データとして、分類部8における第2の深層学習器8aの学習(トレーニング)を実行する(ステップS26)。
【0038】
次に、学習精度が十分で無ければ(ステップS28・No)、ステップS22の直前に戻り、続いての、被検血清における複数の(希釈度、フリー菌割合)データ、及び感染/非感染を表すラベルによる学習の処理を行う(ステップS22~)。学習精度が十分であれば(ステップS28・Yes)、分類部8における第2の深層学習器8aを学習させる処理を終了する(ステップS30)。
【0039】
図5に示す処理も、学習のために必要な十分な量のデータを得るため、繰り返し実行されることが好ましい。また、当該処理は、ユーザの操作以外によって開始されるようにしてもよい。例えば、前回の実行から所定の時間が経過するごとに自動的に開始されるようにしてもよい。また、ユーザの操作等によって、追加で一つないし複数のデータを読み込んで、更なる学習を行わせるようにしてもよい。
【0040】
2.2.3.[回帰部と分類部との同時学習動作]
次に、複数の被検血清についての画像データ、各画像データに対するフリー菌割合、及び、複数の被検血清における複数の(希釈度、フリー菌割合)データ、各被検血清における感染/非感染を表すラベルを用いて、回帰部6における第1の深層学習器6aと、分類部8における第2の深層学習器8aとを同時に学習させる方法について説明する。
図6は、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2が行う処理のうち、複数の被検血清についての画像データ、各画像データに対するフリー菌割合、及び、複数の被検血清における複数の(希釈度、フリー菌割合)データ、各被検血清における感染/非感染を表すラベルを用いて、回帰部6における第1の深層学習器6aと、分類部8における第2の深層学習器8aとを同時に学習させる処理のフローチャートである。当該処理は、ユーザの操作(例えば、学習の開始を指示する操作)によって開始される(ステップS40)。
【0041】
先ず、画像取得部4が、1検体(1被検血清)の画像(顕微鏡画像)データを纏めて取得する(ステップS42)。1検体(1被検血清)に関して、複数の希釈度の顕微鏡画像があるものとする。ここでは、k個あるとする。顕微鏡画像データは、カメラ(図示せず)を用いて撮像されてもよいし、通信手段を介して取得されてもよいし、記憶手段に記憶されているものから取得されてもよい。なお、顕微鏡画像データの夫々は、ラベルとしてのフリー菌割合データが既に明らかなもの(診断医などによって予め与えられたもの)である。
【0042】
次に、画像取得部4が、k個のうちの、一つの顕微鏡画像データを取得する(ステップS44)。
【0043】
ステップS44にて取得された顕微鏡画像に対応する、ラベルであるフリー菌割合が取得される(ステップS46)。このラベルであるフリー菌割合は、ステップS44にて取得された顕微鏡画像に付されているものであってもよいし、データ取得編集部10により取得されるものであってもよい。
【0044】
次に、取得された顕微鏡画像データを入力データとし、夫々の顕微鏡画像データに対応するフリー菌割合データを出力データとして、回帰部6における第1の深層学習器6aの学習(トレーニング)を実行する(ステップS48)。
【0045】
次に、対象とする顕微鏡画像データがk個目のデータで無ければ(ステップS50・No)、ステップS44の直前に戻り、続いての顕微鏡画像による学習の処理を行う(ステップS44~)。対象とする顕微鏡画像データがk個目のデータであれば(ステップS50・Yes)、学習精度が十分であるか否か判断される(ステップS51)。学習精度が十分で無ければ(ステップS51・No)、ステップS42の直前に戻り、続いての検体(被検血清)の画像による学習の処理を行う(ステップS42~)。学習精度が十分であれば(ステップS51・Yes)、分類部8における第2の深層学習器8aを学習させる処理(ステップS52~S56)に進む。
【0046】
分類部8における第2の深層学習器8aを学習させる処理では、先ず、データ取得編集部10が、1検体(1被検血清)における、複数の(希釈度、フリー菌割合)データを、希釈度の個数(ここでは、k個である)分、取得する(ステップS52)。なお、ここでの1検体(1被検血清)における、希釈度の個数(k個)分の(希釈度、フリー菌割合)データに対しては、被検血清についての感染/非感染を表すラベルの内容が既に明らかなもの(診断医などによって予め与えられたもの)である。
【0047】
続いてデータ取得編集部10は、ステップS52にて希釈度の個数(k個)分の(希釈度、フリー菌割合)データが取得された1検体(1被検血清)に対応する、感染/非感染を表すラベルを、取得する(ステップS54)。
【0048】
次に、上述の1検体(1被検血清)における、k組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、k組の(希釈度、フリー菌割合)データに対応する感染/非感染を表すラベルを出力データとして、分類部8における第2の深層学習器8aの学習(トレーニング)を実行する(ステップS56)。
【0049】
次に、学習精度が十分で無ければ(ステップS58・No)、ステップS52の直前に戻り、続いての、1検体(1被検血清)におけるデータによる学習の処理を行う(ステップS52~)。学習精度が十分であれば(ステップS58・Yes)、回帰部6における第1の深層学習器6aと、分類部8における第2の深層学習器8aとを同時に学習させる処理を終了する(ステップS59)。
【0050】
図6に示す処理も、学習のために必要な十分な量のデータを得るため、繰り返し実行されるのが好ましい。また、当該処理は、ユーザの操作以外によって開始されるようにしてもよい。例えば、前回の実行から所定の時間が経過するごとに自動的に開始されるようにしてもよい。また、ユーザの操作等によって、追加で一つないし複数のデータを読み込んで、更なる学習を行わせるようにしてもよい。
【0051】
2.2.4.[回帰部及び分類部の利用フェーズ]
次に、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2における回帰部6及び分類部8を利用して、顕微鏡画像からレプトスピラ症の感染の有無を判定する処理を説明する。
図7は、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2が行う処理のうち、1検体(1被検血清)についての顕微鏡画像データから、当該検体のレプトスピラ症の感染の有無を判定する処理のフローチャートである。当該処理は、ユーザの操作(例えば、判定の開始を指示する操作)によって開始される(ステップS60)。
【0052】
先ず、画像取得部4が、1検体(1被検血清)の画像(顕微鏡画像)データを纏めて取得する(ステップS62)。1検体(1被検血清)に関して、複数(ここでは、k個)の希釈度の顕微鏡画像があるものとする。顕微鏡画像データは、カメラ(図示せず)を用いて撮像されてもよいし、通信手段を介して取得されてもよいし、記憶手段に記憶されているものから取得されてもよい。
【0053】
次に、k個のうちの、1画像(顕微鏡画像)データが、回帰部6の学習済みの第1の深層学習器6aに入力される(ステップS64)。
【0054】
続いて回帰部6の学習済みの第1の深層学習器6aが、入力された顕微鏡画像におけるフリー菌割合を算出して出力する(ステップS66)。出力されたフリー菌割合データは、記憶部(図示せず)に一時的に格納される。
【0055】
次に、対象とする顕微鏡画像データがk個目のデータで無ければ(ステップS68・No)、ステップS64の直前に戻り、続いての顕微鏡画像におけるフリー菌割合の算出の処理を行う(ステップS64~)。対象とする顕微鏡画像データがk個目のデータであれば(ステップS68・Yes)、分類部8における判定処理(ステップS70~S72)に進む。
【0056】
分類部8における判定処理では、画像取得部4が纏めて画像データを取得した1検体(1被検血清)における、希釈度の個数(k個)分の(希釈度、フリー菌割合)データが、分類部8の学習済みの第2の深層学習器8aに入力される(ステップS70)。
【0057】
続いて分類部8の学習済みの第2の深層学習器8aが、入力された、希釈度の個数分の(希釈度、フリー菌割合)データに係る検体(被検血清)についてのレプトスピラ症の感染/非感染を判定して、感染/非感染を表すラベルを、出力部12を介して出力する(ステップS72)。このとき出力部12は、被検血清に関する、複数(k個)の(希釈度、フリー菌割合)データを座標平面上にプロットした、希釈度-フリー菌割合の関係のグラフ(
図10参照)を、出力してもよい。検体(被検血清)に関する感染/非感染の判定結果を出力して、処理は終了する(ステップS74)。
【0058】
2.3.[まとめ]
以上のように、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2は、第1の深層学習器6aを含み、当該第1の深層学習器6aにより、外部より取得される顕微鏡画像の特徴量を計算し、それら特徴量からフリー菌割合を回帰する回帰部6であって、適宜の顕微鏡画像データを入力データとし、それら顕微鏡画像データの夫々に付せられるフリー菌割合データを出力データとして、第1の深層学習器6aに対する学習を実行する回帰部6を備える。感染診断装置2は更に、第2の深層学習器8aを含み、当該第2の深層学習器8aにより、一つの被検血清における複数の(希釈度、フリー菌割合)データから、感染の有無を分類する分類部8であって、複数の被検血清の各々における複数の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、各々の被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器8aに対する学習を実行する分類部8を備える。
【0059】
以上の、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置は、属人性を排除した正確かつ迅速な、顕微鏡下凝集試験における判断を行うことができる。
【0060】
3.[実施の形態2]
続いて、本発明の好ましい実施の形態2を説明する。
【0061】
実施の形態1に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2では、以下のような課題が想定され得る。それは、学習データにおけるラベルとしての、顕微鏡画像におけるフリー菌割合の作成のジレンマとして表される。即ち、顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2により、感染/非感染についての精度の高い判定を実現するためには、学習データにおけるラベルとしての、フリー菌割合の数値に粒度の細かさが要求される。しかしながら、学習データにおけるラベルであるフリー菌割合の作成は、現状では診断医の目視に依存するものであるため、細かい値を設定することが不可能である。つまり、フリー菌割合の数値として、精々、4段階(0.0、0.25、0.5、0.75、1.0)や、5段階(0.0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0)の粗さで設定できるに過ぎない。
【0062】
図9(a-1)は、粒度の細かい2シリーズの学習データをプロットしたグラフであり、
図9(b-1)は、粒度の粗い2シリーズの学習データをプロットしたグラフである。いずれにおいても、縦軸はフリー菌割合を、横軸は希釈度(対数)を表す。更に、いずれにおいても、2シリーズのうち白丸○のプロットは感染ありの学習データであり、黒丸●のプロットは感染なしの学習データを表す。
【0063】
これらに対して、
図9(a-2)は、
図9(a-1)のグラフ上に、白抜きの×で表される感染ありのテストデータと、黒塗りの×で表される感染なしのテストデータとをプロットしたものである。一般的にテストデータは距離が近い学習データと同じグループに分類されるため、粒度の細かい2シリーズの学習データと比較された白抜きの×で表されるテストデータは感染ありと評価され、黒塗りの×で表されるテストデータは感染なしと評価されることが、想定される。
同様に、
図9(b-2)は、
図9(b-1)のグラフ上に、白抜きの×で表される感染ありのテストデータと、黒塗りの×で表される感染なしのテストデータとをプロットしたものである。粒度の粗い2シリーズの学習データと比較された白抜きの×で表されるテストデータは感染ありと評価されることが想定される一方で、黒塗りの×で表されるテストデータは、感染ありと誤評価される可能性が高いと想定される。
このように、比較的粒度の粗い学習データのみで学習をして、期待通りの精度を実現することは不可能であり、感染/非感染を誤認識する可能性が高くなる。
【0064】
そこで、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2では、
(1)まず、顕微鏡画像データと、それに対応するフリー菌割合として比較的粒度の粗い数値データとを用いて、回帰部6の第1の深層学習器6aを学習させ、
(2)そのようして作成した学習済みの第1の深層学習器6aに対して、更に別の顕微鏡画像データを入力して、粒度の細かいフリー菌割合の数値を出力させ、
(3)そのようにして出力した粒度の細かいフリー菌割合と希釈度との組み合わせを入力データとし、感染/非感染を表すラベルを入力データに対応する出力データとして用いて、分類部8の第2の深層学習器8aを学習させる。
即ち、先ず、回帰部6の第1の深層学習器6aを学習させ、それに別の顕微鏡画像データを与えて、分類部8の第2の深層学習器8aのための学習データであるフリー菌割合の粒度を疑似的に細かくする。
【0065】
3.1.[システム動作]
本実施の形態に係る、分類部8における第2の深層学習器8aを疑似的に粒度の細かい学習データで学習させる処理を具体的に説明する。
【0066】
まず、上述にて説明した
図4に示すフローチャートに従って、回帰部6における第1の深層学習器6aを予め学習させる処理を行う。このとき、フリー菌割合の作成が診断医の目視に依存するものであることを踏まえて、フリー菌割合の数値の粒度は比較的粗いものでよい。例えば、5段階(0.0、0.2、0.4、0.6、0.8、1.0)の程度で表されるものでもよい。
【0067】
このような学習済みの第1の深層学習器6aを用いて、分類部8における第2の深層学習器8aを粒度の細かい学習データで学習させる。
図8は、分類部8における第2の深層学習器8aを、上記(1)~(3)のように、疑似的に粒度の細かい学習データで学習させる処理のフローチャートである。当該処理は、ユーザの操作(例えば、学習の開始を指示する操作)によって開始される(ステップS80)。
【0068】
先ず、画像取得部4が、1検体(1被検血清)の画像(顕微鏡画像)データを纏めて取得する(ステップS82)。1検体(1被検血清)に関して、複数(k個)の希釈度の顕微鏡画像があるものとする。なお、ここでの検体(被検血清)は、感染/非感染を表すラベルの内容が既に明らかなものである。
【0069】
次に、k個のうちの、1画像(顕微鏡画像)データが、回帰部6の学習済みの第1の深層学習器6aに入力される(ステップS84)。この学習済みの第1の深層学習器6aは、粒度の粗いフリー菌割合の数値を学習データとして作成されたものでよい。
【0070】
続いて回帰部6の学習済みの第1の深層学習器6aが、入力された顕微鏡画像におけるフリー菌割合を算出して出力する(ステップS86)。出力されたフリー菌割合データは、記憶部(図示せず)に一時的に格納される。更に出力されたフリー菌割合について、粒度の細かいフリー菌割合への数値変換を行う(ステップS87)。
【0071】
次に、対象とする顕微鏡画像データがk個目のデータで無ければ(ステップS88・No)、ステップS84の直前に戻り、続いての顕微鏡画像におけるフリー菌割合の算出の処理を行う(ステップS84~)。対象とする顕微鏡画像データがk個目のデータであれば(ステップS88・Yes)、分類部8における第2の深層学習器8aを学習させる処理(ステップS90~S94)に進む。
【0072】
分類部8における第2の深層学習器8aを学習させる処理では、先ず、データ取得編集部10が、画像取得部4が纏めて画像データを取得した1検体(1被検血清)における、複数の(希釈度、フリー菌割合)データを、希釈度の個数(ここでは、k個である)分、用意する(ステップS90)。上述のように、ここでの1検体(1被検血清)における、希釈度の個数(k個)分の(希釈度、フリー菌割合)データに対しては、被検血清についての感染/非感染を表すラベルの内容は、既に明らかである。
【0073】
続いてデータ取得編集部10は、ステップS90にて希釈度の個数(k個)分の(希釈度、フリー菌割合)データが用意された1検体(1被検血清)に対応する、感染/非感染を表すラベルを、取得する(ステップS92)。
【0074】
次に、上述の1検体(1被検血清)における、k組の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、夫々の(希釈度、フリー菌割合)データに対応する感染/非感染を表すラベルを出力データとして、分類部8における第2の深層学習器8aの学習(トレーニング)を実行する(ステップS94)。
【0075】
次に、学習精度が十分で無ければ(ステップS96・No)、ステップS82の直前に戻り、続いての1検体(1被検血清)におけるデータに基づく、分類部8の第2の深層学習器8aを疑似的に粒度の細かい学習データで学習させる処理を、行う(ステップS82~)。学習精度が十分であれば(ステップS96・Yes)、分類部8の第2の深層学習器8aを疑似的に粒度の細かい学習データで学習させる処理を終了する(ステップS98)。
【0076】
3.2.[まとめ]
以上のように、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置2では、回帰部6が、第1の深層学習器6aを、顕微鏡画像データと、それに対応するフリー菌割合として比較的粒度の粗いものとを用いて予め学習させて、学習済みの第1の深層学習器6aとしている。更に、(1)回帰部6が、感染/非感染が既に明らかである一つの被検血清に関する、複数の希釈度の顕微鏡画像データを、学習済みの第1の深層学習器6aに入力する処理を行い、(2)学習済みの第1の深層学習器6aが、入力された複数の希釈度の顕微鏡画像データの各々におけるフリー菌割合を算出して出力する処理を行い、及び、(3)分類部8が、感染/非感染が既に明らかである一つの被検血清における、希釈度の個数分の(希釈度、フリー菌割合)データを入力データとし、一つの被検血清についての感染/非感染を表すラベルを出力データとして、第2の深層学習器8aに対する学習を実行する処理を行い、並びに、(4)学習精度に応じて上記の(1)~(3)の処理を繰り返す。
【0077】
以上の、本実施の形態に係る顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置は、属人性を排除した正確かつ迅速な、顕微鏡下凝集試験における判断を行うことができる。更に、粒度の粗いフリー菌割合のデータにより回帰部6の第1の深層学習器6aを学習させたとしても、レプトスピラ症の感染/非感染の精度の高い判定を実現することができる。
【0078】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1及び実施の形態2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0079】
本開示に係る感染診断装置は、特にレプトスピラ症を診断するものであるが、本開示に係る感染診断装置は、顕微鏡下凝集試験により感染の有無が判断され得る疾病の診断に用いることができる。更に、本開示に係る診断装置は、複数の暗視野顕微鏡画像に基づいて感染の有無が判断される疾病の診断に用いられ得る。
【0080】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0081】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
2・・・顕微鏡下凝集試験のための感染診断装置、4・・・画像取得部、6・・・回帰部、6a・・・第1の深層学習器、8・・・分類部、8a・・・第2の深層学習器、10・・・データ取得編集部、12・・・出力部。