(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】炭化装置
(51)【国際特許分類】
C10B 53/02 20060101AFI20231023BHJP
C10B 49/04 20060101ALI20231023BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C10B53/02
C10B49/04
F27D17/00 101D
F27D17/00 101G
F27D17/00 104G
(21)【出願番号】P 2019200457
(22)【出願日】2019-11-05
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】391055195
【氏名又は名称】関西産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092727
【氏名又は名称】岸本 忠昭
(74)【代理人】
【識別番号】100146891
【氏名又は名称】松下 ひろ美
(72)【発明者】
【氏名】児島 輝明
(72)【発明者】
【氏名】今谷 浩昭
(72)【発明者】
【氏名】木下 徹
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-327180(JP,A)
【文献】特開2013-257102(JP,A)
【文献】特開2016-145707(JP,A)
【文献】特開2007-232309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 53/00
F27D 17/00
F23G 5/00
B09B 1/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉室を有する炉本体と、
原料を炭化処理するための1次空気と、前記炭化処理により発生した可燃ガスを燃焼するための2次空気を、前記炉室に供給するための給気手段と、を備え、
前記給気手段は、前記炉室を水平方向に横切る複数本の流路と、
第2の流路と、前記複数本の流路
及び前記第2の流路に空気を流す送風手段と、を備え、
前記複数本の流路を流れる空気は、可燃ガスの燃焼によって加熱されて予熱空気となり、
前記1次空気として前記炉室へ供給され、
前記炉本体は側壁を有し、前記側壁には前記2次空気を前記炉室へ供給するための給気孔列が設けられ、前記給気孔列は、前記水平方向に間隔を空けて前記側壁に設けられた複数個の給気孔から成り、
前記第2の流路を流れる空気は、前記2次空気として前記給気孔列を介して前記炉室へ供給され、
前記給気孔列は、前記複数本の流路の近傍に設けられていることを特徴とする炭化装置。
【請求項2】
炉室を有する炉本体と、
原料を炭化処理するための1次空気と、前記炭化処理により発生した可燃ガスを燃焼するための2次空気を、前記炉室に供給するための給気手段と、
原料を移送するための移送手段と、を備え、
前記移送手段は、前記炉室に設けられた管状シャフトと、前記管状シャフトを回転可能に支持する軸受と、を備え、
前記給気手段は、前記炉室を水平方向に横切る複数本の流路と、
第2の流路と、前記複数本の流路
及び前記第2の流路に空気を流す送風手段と、前記複数本の流路と連通する分岐流路と、を備え、
前記複数本の流路を流れる空気は、可燃ガスの燃焼によって加熱されて予熱空気となり、
前記給気手段は、前記予熱空気を前記分岐流路を介して前記軸受に向けて吹き付ける
と共に前記1次空気として前記炉室へ供給し、
前記第2の流路を流れる空気は、前記2次空気として前記炉室へ供給されることを特徴とする炭化装置。
【請求項3】
前記可燃ガスの燃焼により発生した排ガスを排出するための排気筒を更に備え、
前記給気手段は、前記複数本の流路に連通する他の流路を更に備え、
前記給気手段は、前記予熱空気を前記他の流路を介して前記排気筒へ供給し、前記排気筒の温度上昇を促進させることを特徴とする請求項2に記載の炭化装置。
【請求項4】
前記炉本体は側壁を有し、前記側壁には前記2次空気を前記炉室へ供給するための給気孔列が設けられ、前記給気孔列は、前記水平方向に間隔を空けて前記側壁に設けられた複数個の給気孔から成り、
前記給気孔列は、前記複数本の流路の近傍に設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の炭化装置。
【請求項5】
前記炉本体の前記側壁には、前記2次空気を前記炉室へ供給するための第2の給気孔列が更に設けられ、
前記第2の給気孔列は、前記給気孔列と平行に延び、前記複数本の流路の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1又は4に記載の炭化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バイオマス等の有機性廃棄物を炭化させて炭化物を生成する炭化装置が提案されている。生成された炭化物は、燃料や肥料(土壌改良剤)、水質浄化剤等として利用できる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示の炭化装置は、炭化室内へ連続的に供給された原料を不完全燃焼(炭化)させて炭化物として排出すると共に、原料の炭化に伴い発生した可燃ガスを炭化室の上部において燃焼させる。炭化室の下部には1次空気の供給口が設けられ、原料は供給口から供給された一次空気によって自燃促進される。また、炭化室に連続的に供給される原料は可燃ガスからの輻射熱によって着火される。炭化室の上方部位には可燃ガスの燃焼に必要な2次空気の供給口が設けられている。
【0004】
可燃ガスの燃焼により発生した排ガスは排気筒を介して外部に排出される。また、炭化室内にはパドル付きのシャフトが設けられており、シャフトを回転させることによって原料を撹拌しながら移送させている。シャフトはパイプ状とされており、内部を水が流れる冷水式とすることで、シャフトや軸受の耐熱性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような炭化装置では、炭化室に供給される1次空気量及び2次空気量と原料の投入量の調整によって燃焼室の温度制御が行われるが、原料特性にバラツキがある等の理由により制御が難しく、燃焼室が高温になり過ぎる恐れがあった。
【0007】
また、炭化装置の起動時においては、可燃ガスや排ガスに含まれる酸成分を含んだ結露がシャフトや軸受、排気筒で発生し、シャフトや軸受、排気筒が腐食する恐れがあった。更に、炭化室の上方部位において可燃ガスを燃焼することから、炉室の高さ寸法が嵩張るという問題があった。
【0008】
本発明は、燃焼室が高温になり過ぎるのを防止できる炭化装置の提供を目的とする。
【0009】
本発明は、結露の発生を抑制できる炭化装置の提供を他の目的とする。
【0010】
本発明は、炉室の高さ寸法を抑えた炭化装置の提供を更に他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る炭化装置は、炉室を有する炉本体と、原料を炭化処理するための1次空気と、前記炭化処理により発生した可燃ガスを燃焼するための2次空気を、前記炉室に供給するための給気手段と、を備え、前記給気手段は、前記炉室を水平方向に横切る複数本の流路と、前記複数本の流路に空気を流す送風手段と、を備え、前記複数本の流路を流れる空気は、可燃ガスの燃焼によって加熱されて予熱空気となる。
【0012】
また、前記可燃ガスの燃焼により発生した排ガスを排出するための排気筒を更に備え、 前記給気手段は、前記予熱空気を、前記排気筒へ供給する。
【0013】
また、前記給気手段は、前記予熱空気を前記1次空気として前記炉室に供給する。
【0014】
炭化装置は、原料を移送するための移送手段を更に備え、前記移送手段は、前記炉室に設けられた管状シャフトと、前記管状シャフトを回転可能に支持する軸受と、を備え、前記給気手段は、前記予熱空気を前記軸受に向けて吹き付ける。
【0015】
更に、前記炉本体には、前記炉室に前記2次空気を供給するための複数個の給気孔が設けられ、前記複数個の給気孔は、前記水平方向に沿って延びる第1給気孔列と、前記第1給気孔列と平行に延びる第2給気孔列と、を成し、前記第1及び第2給気孔列は、前記複数本の流路の近傍に設けられている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の炭化装置は、炉室を水平方向に横切る複数本の流路を有するので、これらを流れる空気は燃焼する可燃ガスとの熱交換によって加熱されて予熱空気となる一方で、炉室における燃焼室内の温度上昇が抑制されて、燃焼室が高温になり過ぎるのを防止できる。
【0017】
また、予熱空気を排気筒へ供給することにより、排気筒における結露の発生を防止して、排気筒の腐食を防止する。また、予熱空気を1次空気として炉室へ供給することで、炉室における原料の自燃量が減少し、炭化率を向上できる。更に、予熱空気を軸受に吹き付けることで、軸受における結露の発生を防止して、軸受の腐食を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る炭化装置の概略正面図。
【
図3】
図2のIII―III線断面を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態に係る炭化装置について説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態の炭化装置1は、炉室21を有する炉本体2と、移送手段3と、給気手段4と、排気筒5と、を備える。炉室21には図示しない原料供給手段によって原料が順次供給される。原料としては、籾殻や木屑等のバイオマス原料の他、炭素を含有する下水汚泥等の廃棄物を用いることができる。
【0020】
炉室21に供給された原料は炭化処理され、炭化物となって排出される。また、炭化処理により発生した可燃ガスは炉室21内で燃焼され、これによって発生した排ガスは排気筒5を介して排気される。給気手段4は、炭化処理に必要な1次空気及び可燃ガスの燃焼に必要な2次空気を炉室21に供給する。なお、炉本体2には原料に着火するためのバーナ等の着火手段(図示せず)が設けられている。
【0021】
以下、各部についてより具体的に説明する。炉本体2(炉室21)の所定の側壁(
図2に示す例では前壁)22は、上方に向かうに従い外方(ここでは前方)に傾斜する下部22aと、上下方向D2に沿って延びる上部22bとを有する。これにより、炉室21の下方部位における幅寸法(前後幅)は上方に向かうに従い漸増する。
【0022】
また、前壁22の下方部位には、複数個の第1給気孔23が左右方向D1に沿って設けられている。上述の1次空気は複数個の第1給気孔23から炉室21に供給される。炉本体2の前壁22には更に、複数個の第2給気孔24が設けられている。これら複数個の第2給気孔24は、左右方向D1に沿って3列に配列されており、上述の2次空気はこれら3つの第2給気孔列L1,L2,L3(
図3)から炉室21に供給される。ここで、下段及び中段の第2給気孔列L1,L2は前壁22の下部22aにおける上下方向D2略中央部に位置し、上段の第2給気孔列L3は前壁22の上部22bの上下方向D2略中央部に位置している。
【0023】
移送手段3は、炉室21内に設けられた管状シャフト31と、炉室21(炉本体2)の外側に設けられて管状シャフト31をその両端部で回転可能に支持する一対の軸受32と、管状シャフト31を回転させるための駆動手段(図示せず)と、を備える。管状シャフト31は左右方向D1に沿って延び、その外周面には複数枚のパドル33が設けられている。各パドル33は、その幅広面が管状シャフト31の長手方向(左右方向D1)に対して傾斜するように斜めを向いて設けられており、これにより管状シャフト31がパドル33と共に所定方向に回転すると原料が撹拌されつつ所定方向Tに移送される。また、管状シャフト31及び軸受32は、管状シャフト31の内部を流れる冷却水によって冷却されて耐熱性を確保している。
【0024】
給気手段4は、空気が流れる第1給気管6と、第1給気管6に空気を送る第1送風ファン7と、空気が流れる第2給気管8と、第2給気管8に空気を送る第2送風ファン9と、を有し、第1及び第2送風ファン7,9が送風手段を構成している。
【0025】
第1給気管6は、第1送風ファン7に接続された第1流路61と、第1流路61に接続されて炉室21を左右方向D1(水平方向)に横切る複数本の第2流路62と、複数本の第2流路62を流れた空気の一部を第1給気孔23を介して1次空気として炉室21へ送る第3流路63と、複数本の第2流路62を流れた空気の一部を排気筒5に供給する第4流路64と、第2~第4流路61~64を相互に連通する連通路65と、を構成している。ここで、後述するように、第2流路62を流れる空気は可燃ガスの燃焼によって温められ、予熱空気となる。
【0026】
複数本の第2流路62は相互に間隔を空けて平行に延び、管群スクリーンSを構成している。本実施形態の管群スクリーンSは、上下方向D2に2段、前後方向D3に4列に配置された合計8本の第2流路62から構成されている(
図2)。かかる構成によって、管群スクリーンSは炉室21を炉室下部と炉室上部に区画し、炉室下部と炉室上部とは管群スクリーンSの隙間を介して連通している。後述の様に、原料の炭化処理は炉室下部において行われるため、炉室下部は炭化炉として機能する。また、可燃ガスは管群スクリーンS及び炉室上部において燃焼され、これらの部位は燃焼室として機能する。
【0027】
ここで、上述した下段及び中段の第2給気孔列L1,L2は、上下方向D2において管群スクリーンSの近傍に位置するように設けられている。
【0028】
第2流路62を流れた空気(予熱空気)は連通路65を介して第3及び第4流路63,64へ流れ込む。第3流路63に流れ込んだ予熱空気は主に、分岐流路65を介して第1給気孔23から炉室21へ供給され、第3流路63に流れ込んだ予熱空気の一部は分岐流路66を介して軸受32に吹き付けられる。第4流路64に流れ込んだ予熱空気は排気筒5内に供給される。
【0029】
第2給気管8は、左右方向D1に沿って延びる3本の流路(第1流路81,第2流路82,第3流路83)と、これら第1~第3流路81~83と第2送風ファン9とを連通させる連通路84と、を構成している。第2給気ファン9により発生した気流は連通路84を通って第1~第3流路81~83に流れ込み、2次空気として第2給気孔24を介して炉室21に供給される。
【0030】
このような構成を有する炭化装置1において、炉室21に供給されて着火された原料は移送手段3により撹拌されながら1次空気によって炭化され、炭化物となって所定方向Tに移送されて排出される。このときの炭化温度としては例えば600℃程度に制御される。
【0031】
また、原料が炭化される過程では可燃ガスが発生する。このように発生した可燃ガスは2次空気によって燃焼され、可燃ガスの燃焼によって発生した排ガスは排気筒5を介して排気される。ここで、原料の炭化処理により生じた可燃ガスは炉室21内を上昇して上昇流を形成するが、このように上昇流を形成する可燃ガスは主に管群スクリーンSにおいて燃焼(管巣燃焼)する。即ち、管群スクリーンSにおいてカルマン渦等の渦流が発生し、可燃ガスと2次空気(主に、第2給気孔列L1,L2から供給された2次空気)との混合が促進され、管群スクリーンSにおいて可燃ガスが効率よく安定して燃焼する。管群スクリーンSにおいて燃焼しきれなかった僅かな可燃ガスも、第2給気孔列L3から供給された2次空気によって炉室上部において燃焼する。
【0032】
このように、炉室21に管群スクリーンSを配置することで可燃ガスの燃焼が安定するため、可燃ガスの燃焼制御を容易にできると共に、可燃ガスの燃焼効率を向上できる。これにより、従来の炭化装置と比較して炉室21の高さを抑えることができ、炭化装置1全
体を小型化できる。また、炉室21の高さを抑えることによって炉室21の壁面積を抑制できるので、外部への放熱量を減少して燃焼効率を向上できる。
【0033】
ここで、管群スクリーンSを有しない従来の炭化装置において炉室の高さ寸法を抑制すると、可燃ガスが炉室内で燃焼しきれずに排気筒内でも燃焼してしまい、このような排気筒内での燃焼を回避するためには炭化装置の処理能力を抑制する必要が生じる。この点、本実施形態の炭化装置1によれば、炉室21の高さを抑えても可燃ガスは炉室21で確実に燃焼されるため、処理能力が犠牲になることがない。
【0034】
また、管群スクリーンS(管群スクリーンSを構成する第2流路62)を流れる空気との間で熱交換が行われるため、燃焼室の温度を制御することができる。例えば、燃焼ガスの燃焼温度は1000℃程度であるところ、熱交換によって管群スクリーンS内の空気は常温であったものが200℃程度に暖められて予熱空気となり、その結果燃焼室内の温度は800℃程度に抑制される。燃焼室の温度が高温になりすぎると有害物質が発生する恐れがあるが、このように燃焼室の温度を抑制することによって有害物質の発生を予防できる。
【0035】
更に、熱交換によって暖められた予熱空気の一部を排気筒5に供給するため、炭化装置1の起動直後における排気筒5の温度上昇が促進され、排気筒5における結露の発生を防止して、排気筒5の腐食を防止できる。同様に、予熱空気の一部を1次空気として炉室21に供給すると共に軸受32に向けて吹き付けるため、管状シャフト31及び軸受32における結露の発生を防止して、これらの腐食も防止できる。
【0036】
また、例えば200℃程度の予熱空気を1次空気として用いるので、25℃程度の室温の1次空気を利用する場合と比較して原料の自燃量が減少し、炭収率を向上できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態に係る炭化装置について添付の図面を参照して説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形、修正が可能である。
【0038】
例えば、上記実施形態においては、管群スクリーンSを2段×4列の合計8本の第2流路62から構成したが、管群スクリーンSを構成する第2流路62の本数及び配置はこれに限定されず、炉室21の大きさに応じて適宜調整すれば良い。
【符号の説明】
【0039】
1 炭化装置
2 炉本体
3 移送手段
4 給気手段
5 排気筒
7,9 送風ファン(送風手段)
21 炉室
24 第2給気孔(給気孔)
31 管状シャフト
32 軸受
33 パドル
62 第2流路(流路)
S 管群スクリーン