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特許7370584研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法及び研削盤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法及び研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20231023BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20231023BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B24B53/00 A
B24B55/06
B24B49/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020011709
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115680
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000150604
【氏名又は名称】株式会社ナガセインテグレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 幸泰
(72)【発明者】
【氏名】板津 武志
(72)【発明者】
【氏名】井村 諒介
(72)【発明者】
【氏名】川下 智幸
(72)【発明者】
【氏名】坂口 彰浩
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-239469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
B24B 55/06
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転砥石による研削加工中に前記回転砥石の砥面の状態を撮影によって監視し、その監視画像の状態に基づいてドレスタイミングを設定し、且つ、
前記砥面を回転砥石の回転方向において複数に割り付けし、その割り付け位置を撮影することによって前記砥面の状態を監視する、
研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法。
【請求項2】
研削加工前に砥面の基準画像を取得し、その基準画像と前記監視画像とを比較して、ドレスタイミングを設定する、
請求項1に記載の研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法。
【請求項3】
砥面の状態のしきい値をあらかじめ定め、そのしきい値と前記監視画像とを比較して、ドレスタイミングを設定する、
請求項に記載の研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法。
【請求項4】
監視画像内の付着物の画像の状態に基づいてドレスタイミングを設定する、
請求項2または3に記載の研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法。
【請求項5】
監視画像内における砥粒の摩耗面の画像の状態に基づいてドレスタイミングを設定する、
請求項2または3に記載の研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法。
【請求項6】
回転砥石によってワークを研削する研削盤において、
研削加工中に前記回転砥石の砥面の状態を撮影によって監視するための監視手段と、その監視画像の状態に基づいてドレスタイミングを設定するドレスタイミング設定手段とを備え
前記砥面の撮影される部分において、その砥面の上方に貯留容器を設けるとともに、前記監視手段を構成するカメラの先端を前記貯留容器内に位置させ、貯留容器内の透明液体を介して前記砥面を撮影するようにした研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転砥石のドレスタイミングを設定するための研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法及び研削盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転砥石の砥面を撮影して、砥粒の砥面からの突出量を算出するようにした技術が開示されている。
特許文献2には、同じく回転砥石の砥面を撮影して、回転砥石の幅方向における砥粒分布ヒストグラムと、砥面全域における砥粒の分布状態を表す三次元マップを生成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-45078号公報
【文献】特開2013-2810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2の技術においては、加工精度の向上に資するために砥粒の状態を撮影するようにしているが、砥面のドレスに関することは開示されていない。
本発明の目的は、回転砥石の砥面の状態を監視することにより、適切なドレスタイミングを設定できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、研削盤における回転砥石のドレスタイミング設定方法に関する発明においては、回転砥石による研削加工中に前記回転砥石の砥面の状態を撮影によって監視し、その監視画像の状態に基づいてドレスタイミングを設定することを特徴とする。
【0006】
研削盤に関する発明においては、回転砥石によってワークを研削する研削盤において、研削加工中に前記回転砥石の砥面の状態を撮影によって監視するための監視手段と、その監視画像の状態に基づいてドレスタイミングを設定するドレスタイミング設定手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
従って、本発明においては、砥面の状態が撮影によって監視され、砥面の砥粒や付着物の状態が加工精度や加工効率に影響があると判断された場合に、ドレスタイミングが設定される。従って、加工精度や加工効率を維持できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、砥面の状態において、適切なドレスタイミングを設定できて、高精度加工を維持できるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の研削盤を示す正面図。
図2】第1実施形態の電気的構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態の研削盤の撮像装置を示す正面図。
図4】砥面のクーラントの有無による撮影画像の相違を示す説明図。
図5】回転砥石の速度の相違による撮影画像の相違を示す説明図。
図6】撮像装置のシャッタの開放タイミング及び回転砥石の速度の相違による砥粒と付着物との撮影画像の変化を示す説明図。
図7】ハイパースペクトルカメラによる撮影画像を示す説明図。
図8】バンドパスフィルタによる処理結果を示すグラフ。
図9】ハイパスフィルタによる処理結果を示すグラフ。
図10】回転砥石による加工過程を示す説明図。
図11】研削加工時における付着物の変化を示す説明図。
図12】ドレッサによるドレス過程を示す説明図。
図13】第1実施形態の動作を示すフローチャート。
図14】第2実施形態を示す正面図。
図15】第2実施形態を示す断面図。
図16】第3実施形態を示す正面図。
図17】第3実施形態を示す断面図。
図18】第4実施形態において研削加工の状態を示すグラフ。
図19】第4実施形態においてドレス加工の状態を示すグラフ。
図20】第4実施形態において研削加工の動作を示すフローチャート。
図21】第4実施形態においてドレス加工の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を説明する。
はじめに、研削盤の構成を説明する。
【0011】
図1及び図2に示すように、研削盤11は、ベッド12上にX軸方向に移動可能にしたテーブル13を備えており、テーブル13の上面にはワーク14が支持される。研削盤11には、全体の動作を制御するための制御装置15が備えられている。テーブル13は、X軸モータ16によって前記X軸方向に往復移動される。制御装置15は監視手段を構成している。
【0012】
研削盤11のベッド12には、コラム17が立設されており、そのコラム17には昇降部材22が支持されている。コラム17はZ軸モータ20によってZ軸方向に移動される。昇降部材22は、Y軸モータ25によってY軸方向に昇降移動される。昇降部材22には、回転モータ18によって図1の矢印方向に回転される回転砥石19が支持されており、回転砥石19の外周面がワーク14を研削するための砥面19aになっている。従って、回転される回転砥石19とワーク14との間には、X軸,Y軸及びZ軸の3軸方向における相対移動が実行される。そして、この3軸方向への相対移動により、ワーク14の上面が回転砥石19の砥面19aによって研削加工される。
【0013】
前記回転砥石19と一体に昇降移動される昇降部材22には、前記回転砥石19の砥面19aに対向するドレッサ23が支持されている。このドレッサ23は、複数のピエゾ素子の積層体24の端部に位置しており、ピエゾ素子に対する電圧の印加及び印加停止により、積層体24全体が伸縮する。このため、ドレッサ23の先端が前記砥面19aに対して進退動作する。積層体24はドレッサモータ26によって単独でZ軸方向に往復移動される。そして、回転砥石19の回転中に、積層体24が伸長して、ドレッサ23が砥面19aに接した状態で、そのドレッサ23がZ軸方向に往復移動されることにより、砥面19a全体がドレスされる。
【0014】
図1及び図3に示すように、前記回転砥石19の上方において、前記昇降部材22には撮像装置31が装設されている。従って、撮像装置31は回転砥石19と一体に昇降される。この撮像装置31は、管状の部材よりなる経路32を有しており、その経路32は、上下方向に延びる第1経路32aと、その第1経路32aと交差する第2経路32bとを有している。第1経路32aの上端にはCCD(固体撮像素子)を有するハイパースペクトルカメラ(以下、単にカメラという)38が設けられている。カメラ38は撮像手段及び監視手段を構成している。なお、図3において、カメラ38を図1よりも簡略化して模式的に描いている。
【0015】
前記第1経路32aと第2経路32bとの間には、プリズムなどの光反射機能と光透過機能とを有する反射透光部材36が配置されている。第2経路32bの先端にはランプ37が設けられている。
【0016】
そして、ランプ37からのビーム状の光が反射透光部材36で反射されて、開口34を通過して砥面19aに照射される。そして、その照射された光による反射画像が反射透光部材36を透過して、前記カメラ38に到達することにより、砥面19aの撮影画像として取得される。その撮影画像のデータは、制御装置15の記憶部46に記憶される。回転砥石19の回転時には、エンコーダ40が回転砥石19の所定の回転角度ごとに割り付けパルスを発生し、そのパルス発生されるごとに、図6の上部に示すように、カメラ38がシャッタを開放する。本実施形態において、割り付けパルスは、回転砥石19の1回転につき、500~1500程度である。
【0017】
図1に示すように、前記昇降部材22には、クーラント除去手段としてのエアノズル41が配置されており、このエアノズル41により、前記ワーク14の加工位置の下流側であって、第1経路32aの下端の上流側において、回転砥石19の砥面19aに対してその回転方向下流側に向かって高圧エアが吹き付けられる。前記ワーク14の加工位置の下流側であって、高圧エアが吹き付けられる砥面19aの回転方向の上流側の位置には、クーラント除去手段としての堰部材42が配置されており、この堰部材42により、回転砥石19の回転にともなって砥面19aに随伴するクーラントが堰き止められる。そして、わずかに残留した随伴クーラントが前記エアノズル41からの高圧エアによって吹き飛ばされる。
【0018】
次に、図13に示すフローチャートに基づいて、以上のように構成された実施形態の作用である研削盤におけるドレスタイミング設定方法を説明する。このフローチャートは、制御装置15の記憶部46に格納されたプログラムが同制御装置15の中央処理装置45の制御のもとに進行するものである。
【0019】
図13において、研削盤11が始動されると、回転砥石19が回転される。そして、図13のステップ(以下、Sという)1において、その回転砥石19の回転が高速定常回転に達する前である低速回転のときに、回転砥石19の砥面19aがエンコーダ40で割り付けられた回転砥石19の回転角度ごとに、カメラ38によって撮影される。その撮影データは加工前の基準画像として記憶部46に記憶される。このとき、クーラントの供給前であるとともに、回転砥石19の回転速度が低速であるため、高精度画像が得られる。
【0020】
回転砥石19が高速定常回転に達した段階で、クーラントの供給開始を経て、S2において、回転砥石19がワーク14の上面位置まで下降し、ワーク14を支持したテーブル13がX軸方向に往復するとともに、回転砥石19がZ軸方向に往復移動されて、ワーク14に対する研削加工が開始される。
【0021】
次いで、S3においては、エンコーダ40で割り付けられた回転角度ごとの砥面19aの撮影が開始されて、ランプ37からの光による反射画像の撮影データが監視画像として記憶部46に記憶される。従って、砥粒100及び付着物101の状態が画像によって監視される。このとき、図4の上部側の図から明らかなように、砥面19aにクーラント27が付着していると、砥粒100や付着物101の画像が不鮮明になる。しかし、本実施形態においては、撮影位置の上流側において、加工位置から回転砥石19の回転に随伴してきたクーラントが堰部材42によって掻き取られ、さらに、わずかに残留したクーラントがノズル41からの高圧エアによって吹き飛ばされる。このため、砥面19aにはクーラント27がほとんど残留しないため、図4の下部側の図から明らかなように、良好な撮影画像を取得できる。
【0022】
S4において、砥面19aの取得画像が補正される。すなわち、図5及び図6の下部に示すように、監視画像の取得時には、回転砥石19の回転速度が基準画像の取得時より速いために、このステップにおける砥粒100や付着物101の画像は回転方向に流れるようにして延長される。このため、制御装置15は、砥粒100及び付着物101の画像データに対して回転砥石19の回転速度の変化分の補正を加えて、画像データを補正する。この補正は、砥粒100及び付着物101の回転方向の長さを前記回転速度変化分の割合だけ縮小し、その縮小データを砥粒100及び付着物101の監視画像のデータとして記憶するものである。
【0023】
そして、S5及びS6において、監視画像がスペクトル分析を利用して解析される。すなわち、図7図9に示すように、S5のスペクトル分析においては、砥面19aの監視画像から特定の波長域のみを抽出することで、砥粒100及び付着物101を強調した画像を取得して、その砥粒100及び付着物101の状態を認識するものである。図7の左側の砥面19aの図は、分析前の画像を示し、右側の砥面19aの図は分析後の画像を示す。この場合、摩耗されていない砥粒100は黒色を呈し、付着物101はワーク14の研削屑であるため、明るい色を呈し、砥粒100の摩耗面100aはさらに明るい色を呈する。このような、砥粒100,付着物101及び砥粒100の摩耗面100aを、図8に示すように、バンドパスフィルタによってフィルタリングすれば、それらの色彩の差異を明確に認識できて、砥粒100及び付着物101の大きさ,位置,数などの状態を認識できる。
【0024】
また、図9に示すように、分析においてバンドパスフィルタに代えてハイパスフィルタを用いることも可能であり、さらには、図示しないがローパスフィルタを用いてもよい。
前記S6においては、監視画像のデータから、砥粒100,付着物101及び砥粒100の摩耗面などの判別が解析され、この解析されたデータが記憶部46においてそれぞれ砥粒100,付着物101及び砥粒100の摩耗面として、回転砥石19の1回転の割り付け角度ごとに、その数,位置,大きさ及びそれらの各推移が記憶される。図10は、研削加工の経過とともに砥粒100の摩耗面及び付着物101が成長する過程を示す。
【0025】
そして、S7~S9のルーチンにおいて砥粒100や付着物101の解析に基づく判断が実行される。
すなわち、S7において、基準画像の付着物101のデータと監視画像のデータとが比較される。比較の結果、監視画像の付着物101が基準画像の付着物より多い場合、あるいは、監視画像の付着物101があらかじめ定められたしきい値より大きい場合は、プログラムがS8に進む。逆に、基準画像の付着物101より少ない場合、あるいは、付着物101があらかじめ定められたしきい値より小さい場合は、プログラムがS9に進む。
【0026】
S8においては、図11に示すように、研削加工の進行にともなう付着物101の脱落状態が確認される。そして、付着物101の脱落割合が少ない場合は、プログラムはS10に進む。そして、S10において、ピエゾ積層体24に電圧が印加されて、ドレッサ23が突出される。これと同時に、ドレッサ23がドレッサモータ26によりZ軸方向に往復移動される。従って、回転砥石19の回転にともなって、砥面19aに対するドレスが実行されて、付着物101が除去または縮小化される。このため、付着物101による研削加工に対する悪影響が除去される。
【0027】
これに対し、S8において、付着物101の脱落が高い割合であると判別された場合、すなわち、図11に示すように、付着物101が付いたり、取れたりする場合は、加工精度への影響は少ないので、ドレスは不要である。逆に、大きな付着物101が存在し続けたり、成長し続けたりする場合は、加工精度に対する影響が大きくなるため、前記のようなドレス処理が実行される。
【0028】
前記S7の判別において、付着物101の大きさがしきい値あるいは基準画像の付着物101の数量より少ないと判別された場合及びS9の判断において付着物101が脱落したと判別された場合は、S9において砥粒100の摩耗面の大きさが判別される。砥粒100の摩耗面の大きさがしきい値より大きいと判別された場合には、S10において前述したドレスが実行される。このため、図12に示すように、新たな砥粒100が表出して、研削能力が維持される。
【0029】
そして、S11において、研削加工の終了の有無が判別され、終了されない場合は、プログラムがS2に戻り、研削加工中における砥面19aの監視と必要に応じたドレスとが実行される。研削加工終了が判別された場合は、プログラムが終了する。
【0030】
以上のように、本実施形態においては、ワーク14の研削加工中において、砥面19aの砥粒100及び付着物101の状態が画像によって監視される。そして、付着物101が脱落することなく、付着物101の数が多くなったり、その付着物101が大きく成長したりするタイミング及び砥粒100の摩耗面が大きくなったタイミングにおいて、研削加工中に砥面19aのドレスが実行される。
【0031】
従って、本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(1)前記のように、研削加工中において、付着物101が脱落することなく、付着物101の数が大きくなったり、その付着物101が大きく成長したりするタイミング及び砥粒100の摩耗面が大きくなったタイミングにおいて、研削加工が中断されることなく、砥面19aのドレスが実行される。つまり、砥面19aの砥粒100や付着物101の状態が研削の加工精度や加工効率に対して影響があると判断された場合にドレスが実行される。そして、砥粒100及び付着物101が研削加工において支障が存在しない状態に復帰すれば、ドレスが停止される。このように、研削加工しながらドレスが実行されて、砥面19aが適正な状態に維持される。従って、高精度加工を効率よく実行できる。
【0032】
(2)ノズル41及び堰部材42により、砥面19aからクーラントを除去して、その砥面19aを撮影できるため、明瞭な画像を取得できて、適切なドレスを実行できる。その結果、ドレス回数を無駄に多くすることなく、高精度な研削加工を効率よく実行できる。これとは逆に、明瞭な画像を確保できない場合は、安全度を見込んで、ドレス回数を多くする必要があって、加工効率が低下する結果となる。
【0033】
(3)回転砥石19の砥面19aの明瞭な画像を取得できるため、その砥面19aの状態を適切に判断できる。従って、ワーク14の加工仕上げ面には、砥面19aの状態が転写されるので、ワーク14の送り速度と砥面19aの周速度を把握することにより、砥面19aの画像から、ワーク14に対しする加工仕上げ面の精度を判断できて、加工精度の管理が可能になる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態の各実施形態及び変更例については、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0035】
第2実施形態は撮像装置31及びその関連構成を変更したものである。
すなわち、図14及び図15に示すように、昇降部材22には貯留容器51が支持されている。この貯留容器51は上端及び下端が開放されており、下端の開放部は回転砥石19の上部に被せられている。貯留容器51の下端開放部の内縁は、回転砥石19の外側面とは接触することなく、その外側面と狭い隙間を隔てて位置している。貯留容器51の外周には、溢水樋52が設けられるとともに、その溢水樋52の一部には排水管(図示しない)が接続されている。貯留容器51の上端開口には供給管54が臨んでいる。
【0036】
そして、この供給管54から貯留容器51内にクーラントが供給されて貯留され、貯留容器51内に満たされる。本実施形態において、クーラントは透明なものが用いられる。従って、クーラントは透明液体となる。そして、供給管54から貯留容器51に供給されるクーラントの大部分は貯留容器51の上端開口から溢れて、溢水樋52によって受けられ、前記排水管から排出される。従って、貯留容器51の内部は透明なクーラントによって満水状態に維持される。
【0037】
経路32の下端は透明板38cによって閉塞されており、その下端が貯留容器51内のクーラント中に浸漬される。
砥面19aの撮影においては、貯留容器51内に透明なクーラントが貯留される。このとき、経路32の下端が貯留クーラント中に浸漬されるため、砥面19aは貯留クーラントを介して撮影される。従って、砥面19aの画像は歪んだり、乱反射したりすることなく、明瞭に撮影される。
【0038】
なお、本実施形態においては、貯留容器51の上流側の位置のエアノズル41及び堰部材42は必ずしも必要ではないが、それらのうちの少なくとも一方を設けて、随伴クーラントに含まれる切り屑などを撮影位置の手前で除去するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、撮像装置31の第1経路32aの下端に透明板38cを設け、その透明板38cを貯留容器51内において、砥面19aに微小間隙を隔てて対向させるようにしてもよい。この場合、前記微小間隙にクーラントが導入されるように、透明板の回転砥石19の回転方向上流側にクーラント導入用の傾斜開口を形成してもよい。
【0040】
さらに、本実施形態においては、透明なクーラントに代えて、水道水などの透明なクリーン水を貯留容器51内に貯留するようにしてもよい。
(第3実施形態)
本実施形態においては、図16及び図17に示すように、第1経路32aの下端に照明ドーム39を有する。照明ドーム39には第1経路32aと連通する開口34が形成されている。照明ドーム39の内面には照明ドーム39の下方を面照明するための複数のランプ35が設けられている。
【0041】
そして、前記複数のランプ35からの光が回転砥石19の砥面19aを含む広い面積範囲に照射される。また、ランプ37からのビーム状の光が反射透光部材36で反射されて、開口34を通過して砥面19aにスポット的に照射される。そして、その照射された光によるスポット的な反射画像が反射透光部材36を透過して、前記カメラ38によって撮影される。
【0042】
従って、本実施形態においては、面照明中にスポット照明部分が存在する。このため、回転砥石19の砥面19aの砥粒100及び付着物101と、それらの周囲の砥石の結合材の差異を際立たせることができて、砥粒100及び付着物101を明瞭に撮影できて、適切なドレスタイミングの確保に寄与できる。
【0043】
(第4実施形態)
本実施形態においては、研削盤11を動作させるためのプログラムが前記第1実施形態と異なるものであって、ドレスタイミングを設定するに当たって、研削加工を中断させるものである。また、本実施形態においては、研削盤11の機械的構成は、前記第1~第3実施形態のうちのいずれかの構成が採用されている。
【0044】
すなわち、図20に示すS21において回転砥石19の回転が開始される。そして、S22において、図18に示すように、回転砥石19の回転の加速時に、割り付け角度ごとに砥面19aが撮影されて、その画像データが基準画像として制御装置15の記憶部46に記憶される。次いで、S23においてクーラントの供給が開始される。
【0045】
そして、S24において、回転砥石19が高速の定常回転に移行したか否かが判別される。定常回転への移行により、S25において、前記第1実施形態と同様に、回転砥石19が下降されるとともに、回転砥石19のZ軸方向の往復移動及びテーブル13のX軸方向の往復移動により、ワーク14の研削加工が開始される。それとともに、S26において、割り付け角度ごとに、砥面19aの監視画像が取得されて、S27において砥粒100及び付着物101の状態が第1実施形態と同様にして解析される。この解析は、第1実施形態のプログラムにおいて、S6~S9のルーチンに対応する。その解析の結果がS28において判別される。この判別は、第1実施形態のプログラムにおいて、S7~S9のルーチンに対応する。砥粒100及び付着物101に問題がない場合は、プログラムがS25に戻る。
【0046】
S28における判別の結果、砥粒100及び付着物101のうちの少なくとも一方に問題がある場合は、S29において、回転砥石19がワーク14から退避するとともに、減速が開始される。そして、S30においてクーラントの供給が停止され、S31において、回転砥石19の減速に際して、砥面19aの画像が取得される。この画像は、研削加工の結果を確認するためのものである。そして、回転砥石19の停止がS32において判別されると、プログラムがいったん終了する。
【0047】
次いで、図19及び図21に示すように、砥面19aのドレス加工が開始される。このドレス加工の内容は、図20に示すワーク14の研削加工の順序とほぼ同様であって、研削加工に代えてドレス加工が行われるものである。
【0048】
すなわち、図21に示すS51において、ピエゾ積層体24に電圧が印加されるとともに、回転砥石19の回転が開始され、S52において、回転砥石19の回転の加速時に、割り付け角度ごとに砥面19aが撮影されて、その画像データが基準画像として取得され、S53においてクーラントの供給が開始される。
【0049】
そして、S54において、回転砥石19の高速の定常回転への移行にともない、S55においてドレス加工が開始される。S56において、割り付け角度ごとに、砥面19aの監視画像が取得されて、S57において、図20と同様にして解析される。そして、S58において砥面19aの状態が判別され、問題が継続している場合は、プログラムがS55に戻る。従って、このS58の判断は、図20のS28の場合と逆である。
【0050】
S58における判別の結果、砥粒100及び付着物101の双方に問題がなくなった場合は、S59において、ドレッサ23が回転砥石19から退避するとともに、回転砥石19の減速が開始される。そして、S60においてクーラントの供給が停止され、S61において、砥面19aの画像が取得される。この画像は、ドレス結果の確認のために用いられる。そして、回転砥石19の停止がS62において判別されると、ドレス加工のプログラムが終了する。
【0051】
その後、図20に示すプログラムが再開されて、ワーク14の研削加工が継続される。
従って、本実施形態においては、研削加工中に砥面19aの状態が監視されて、砥面19aの状態が低下したタイミングにおいて、研削加工が中断されて、ドレス加工に移行される、そして、ドレス加工中にそのドレス加工の状態が監視され、砥面19aの状態が回復したタイミングでドレス加工が終了されて、研削加工に移行することが可能になる。
【0052】
(変更例)
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することもできる。そして、前記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0053】
・砥粒100と付着物101との区別をそれらの画像のアスペクト比の相違に基づいて行うようにすること。付着物101は、一方向に回転している砥面19aに付着するものであるため、実際の長さが砥粒100よりも回転方向に長くなることが多い。このため、付着物101は、そのほとんどが砥粒100に対してアスペクト比がかなり異なるものとなる。
【0054】
・ドレッサとして、目立て用のドレッサと、付着物101のみを除去するいわゆるソフトドレスを行うドレッサとの2種類を設け、それらのドレッサを砥面19aの状態に応じて使い分けるようにすること。
【0055】
・ドレスタイミングやドレス終了タイミングの判別を、基準画像を撮影することなく、監視画像のデータとあらかじめ定められたしきい値との比較に基づいて行うようにすること。
【符号の説明】
【0056】
11…研削盤
14…ワーク
16…制御装置
19…回転砥石
19a…砥面
21…下部ドレッサ
23…ドレッサ
27…クーラント
31…撮像装置
38…カメラ
100…砥粒
100a…摩耗面
101付着物。
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