(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】壁つなぎ伸縮用円筒伝動具、及び壁つなぎの自動伸縮方法
(51)【国際特許分類】
E04G 5/04 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
E04G5/04 C
(21)【出願番号】P 2021070309
(22)【出願日】2021-04-19
【審査請求日】2023-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592171692
【氏名又は名称】株式会社ユハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083655
【氏名又は名称】内藤 哲寛
(72)【発明者】
【氏名】小村 公成
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-221294(JP,A)
【文献】登録実用新案第3166365(JP,U)
【文献】特開平09-125688(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0339864(KR,Y1)
【文献】特開2008-036789(JP,A)
【文献】特開2015-093333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/04
B25B 21/00
B23P 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に第1連結ピンを介して固定ボルトが連結された伸縮用の第1パイプ体と、基端側の頭部がクランプ具に係止されて調整ボルトが内部に挿通されていると共に、先端側において前記第1パイプ体が内挿される基端側の第2パイプ体とを備え、
前記調整ボルトは、前記第1パイプ体の基端部の内周に一体に配置されたナット体に螺合されると共に、第2連結ピンを介して前記第2パイプ体に連結され、前記調整ボルトと前記ナット体との相対回転により前記第2パイプ体に対して前記第1パイプ体が伸縮される構造の壁つなぎにおいて、
電動ドライバーの回転力を前記第1パイプ体に伝達して、前記第2パイプ体に対して当該第1パイプ体を伸縮させるのに使用される円筒伝動具であって、
前記円筒伝動具は、前記固定ボルト及び前記第1連結ピンの双方を被覆可能な長さを有する伝動円筒体の軸心方向の一端部に、前記電動ドライバーの駆動軸と一体回転する被駆動軸部が一体に設けられ、前記伝動円筒体の軸心方向の他端部に、前記第1連結ピンの軸方向の両端の各突出部と係止されるT字状又はL字状の一対の係止孔が、当該伝動円筒体の他端に開口して対向形成されていることを特徴とする壁つなぎ伸縮用円筒伝動具。
【請求項2】
前記円筒伝動具は、
前記第1連結ピンの軸方向の両端の各突出部と係止されるT字状又はL字状の一対の係止孔が、自身の他端に開口して対向形成されている伝動円筒体と、
中心部に角孔が形成されて、前記伝動円筒体の一端の開口を覆った状態で、当該伝動円筒体に溶接により一体化される円板状の伝動円板体と、
当該伝動円板体の前記角孔に挿入される角軸部の軸方向の一端部に、前記電動ドライバーの回転軸に装着されたソケットに回転不能に嵌め込まれる被駆動軸部が一体に連結されて、前記伝動円板体に溶接により一体化される被駆動軸体と、
から成ることを特徴とする請求項1に記載の壁つなぎ伸縮用円筒伝動具。
【請求項3】
前記被駆動軸体には、前記電動ドライバーのソケットから容易に抜け出るのを防止する環状の係止凹部が形成されていることを特徴とする請求項
2に記載の壁つなぎ伸縮用円筒伝動具。
【請求項4】
第1連結ピンを介して先端部に固定ボルトが連結された伸縮用の第1パイプ体と、基端側の頭部がクランプ具の内側に係止された調整ボルトが内部に挿通されて、先端側において前記第1パイプ体が内挿される基端側の第2パイプ体とを備え、
前記調整ボルトは、前記第1パイプ体の基端部内周に一体配置されたナット体に螺合されると共に、第2連結ピンを介して前記第2パイプ体に連結され、前記調整ボルトと前記ナット体との相対回転により前記第2パイプ体に対して前記第1パイプ体が伸縮される構造の壁つなぎを外部動力により自動伸縮させる方法であって、
前記固定ボルト及び前記第1連結ピンの双方を被覆可能な長さを有する円筒状の円筒伝動具を、当該第1連結ピンの両端の突出部にそれぞれ係止させることで、電動ドライバーの動力を前記円筒伝動具及び前記第1連結ピンを介して前記第1パイプ体に伝達させて、当該第1パイプ体を伸縮させることを特徴とする壁つなぎの自動伸縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築中の建物の周囲に組み立てられる足場を構成する部材を、その周辺の建物類の壁部等に連結することで、当該足場の自立強度を確保するのに使用される壁つなぎにおいて、当該壁つなぎの伸縮を電動ドライバーにより自動的に行える壁つなぎ伸縮用円筒伝動具、及び壁つなぎの自動伸縮方法に関するものである。
なお、本明細書で使用の「縮長」とは、伸縮する部材の長さを短くする(縮める)ことを意味し、「伸長」に対峙する概念である。
【背景技術】
【0002】
上記用途に使用される壁つなぎA
1 として、特許文献1に開示のものが知られており、その基本構成を、本発明に係る図面である
図1を参照して説明する。基端端及び先端側にそれぞれ配置される第1及び第2の各パイプ体P
1 ,P
2 の径サイズは、基端側の第2パイプ体P
2 の先端部に、先端側の伸縮用の第1パイプ体P
1 が、がたつくことなくスライドできる関係になっている。
【0003】
先端側の伸縮用の第1パイプ体P1 の先端部には、固定ボルトB1 の基端部の球状の連結部31が挿入されて、当該第1パイプ体P1 と、固定ボルトB1 の連結部31とは、第1連結ピンK1 を介して連結されている。よって、固定ボルトB1 は、第1連結ピンK1 の軸心に対して一定範囲内において前後及び左右に回動可能な構造になっており、この構造が、足場の周辺の建物類の壁等に固定されたアンカーボルト(図示せず)に対する連結を容易にしている。第1連結ピンK1 は、軸部32の軸方向の一端部に把持部33が一体に設けられ、当該軸部32は、第1パイプ体P1 及び固定ボルトB1 を直径方向に沿って貫通して、他端側に突出していて、当該他端部に突出した部分は、かしめて偏平化されることで、抜止め部34となる。伸縮用の第1パイプ体P1 の基端部の内周(内側)には、後述の調整ボルトB2 と螺合されるナット体Nが溶接等により一体に挿入配置されている。
【0004】
基端側の第2パイプ体P2 には、調整ボルトB2 が挿通されて、当該調整ボルトB2 は、伸縮用の前記第1パイプ体P1 の基端部の内側に一体化されたナット体Nに螺合される。足場の構成部材にクランプされるクランプ具Cは、2分割構造であって、第1分割体41の一端部に対して第2分割体42の一端部がピン43で連結されていると共に、当該第1分割体41の他端部にピン44を介して連結されたクランプボルト45は、前記第2分割体42の他端部の挿通溝(図示せず)に挿通されて、当該第2分割体42の外側に配置されたナット体46と螺合され、前記クランプボルト45とナット体46との螺合により締め上げて、第1及び第2の各分割体41,42の間に配置された足場の構成部材であるパイプ体をクランプする構成である。
【0005】
前記第1分割体41の前面の平板部41aの中央部に設けられた貫通孔41bの周縁部は、外側に切り起こされて外側フランジ部41cとなっている。前記第2パイプ体P2 に対して調整ボルトB2 は、クランプ具Cの側から挿通されて、その頭部48は、前記外側フランジ部41cの内側に嵌り込んだ形態で当接している。一方、当該調整ボルトB2 を内部に挿通している第2パイプ体P2 の基端部は、前記外側フランジ部41cの外側に嵌め込まれた形態で配置されて、当該配置形態を保持して、当該第2パイプ体P2 と調整ボルトB2 とは、前記第1連結ピンK1 と同一構造の第2連結ピンK2 により連結されている。これにより、第2パイプ体P2 と調整ボルトB2 とは、第2連結ピンK2 を介して連結されることで、クランプ具Cに対して一体となって回転可能であるが、当該クランプ具Cに対して当該調整ボルトB2 の軸方向に移動不能となる。
【0006】
そして、壁つなぎA1 は、基端側のクランプ具Cを、足場を構成するパイプ体51にクランプ固定して、その先端側の固定ボルトB1 を、当該足場に隣接する建物類の壁等に打設されたアンカーボルトに連結ナット体(いずれも図示せず)を介して連結することで、前記パイプ体51を、当該壁つなぎA1 及び前記アンカーボルトを介して前記建物類の壁部等に連結することで、足場の組立て強度を確保している。足場に隣接する建物類の壁部等との間隔は、種々様々であって、前記パイプ体51と、建物類の壁部等に打設されたアンカーボルトとの間隔に対応するように、当該壁つなぎA1 の全長を調整する必要があり、当該調整は、第2パイプ体P2 に対して第1パイプ体P1 を伸縮させて行っており、当該伸縮は、第2パイプ体P2 に対して第1パイプ体P1 を所定方向に回転させるか、又は前記調整ボルトB2 を第2パイプ体P2 と一体にして所定方向に回転させて行っている。
【0007】
足場を構成する各部材は、リース業者が建築業者に対してリース契約により貸与する形態が殆どであり、壁つなぎA
1 の使用後においては、リース業者は、建築現場から多数の壁つなぎA
1 を回収して、自己の保管庫に保管して次のリースに備える。しかし、多数の壁つなぎA
1 は、第2パイプ体P
2 に対して第1パイプ体P
1 が所定長だけ突出した使用状態のままであると、嵩張って運搬及び保管に支障を来すので、第2パイプ体P
2 に対して第1パイプ体P
1 を縮長(第2パイプ体に対する当該第1パイプ体の突出長を短くすること)させて、運搬・保管を行っていた。第2パイプ体P
2 に対して第1パイプ体P
1 の縮長は、作業者が第1連結ピンK
1 を把持して、第1パイプ体P
1 を回転させて行うことが殆どであり、この第1パイプ体P
1 の縮長作業は、大変に面倒で、しかも時間を要する作業であった。特に、
図1に示される壁つなぎA
1 は、図示の関係で、そのストロークS
1 が比較的短いものが選択されているが、現実には、
図2に示されるように、第1パイプ体P
1'のストロークS
2 が250mm程度の壁つなぎA
2 も存在するので、手作業により第1パイプ体P
1'を回転させて行う第2パイプ体P
2'に対する当該第1パイプ体P
1'の縮長作業は大変なものであった。なお、各壁つなぎA
1 ,A
2 における第1連結ピンK
1 の中心から、固定ボルトB
1 の先端までの長さLは、同一である。
【0008】
また、市販されている壁つなぎの多くは、
図1及び
図3に示されるように、調整ボルトB
3 の頭部48は存在するが、円形状のものがあり、このタイプの壁つなぎに対しては、電動ドライバーによる調整ボルトB
3 の回転はできず、上記した第1パイプ体P
1 を手作業により回転させて行うより他はなかった。
【0009】
一方、種々のストロークの第1パイプ体を有する壁つなぎでは、当該ストロークの伸長量が大きい(長い)場合には、作業現場において当該伸長に係る作業を行うのは、手間と時間を要するので、特に長いストロークを有する壁つなぎでは、作業現場に搬入する前に、予定される長さだけ第1パイプ体を伸長させることもあり、この場合においても、当該伸長作業の時間の短縮化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した壁つなぎの第1連結ピンに対して伝動円筒体を介して動力を伝達して、第1パイプ体を駆動回転させることで、壁つなぎの伸縮を自動的に行うことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、先端部に第1連結ピンを介して固定ボルトが連結された伸縮用の第1パイプ体と、基端側の頭部がクランプ具に係止されて調整ボルトが内部に挿通されていると共に、先端側において前記第1パイプ体が内挿される基端側の第2パイプ体とを備え、
前記調整ボルトは、前記第1パイプ体の基端部の内周に一体に配置されたナット体に螺合されると共に、第2連結ピンを介して前記第2パイプ体に連結され、前記調整ボルトと前記ナット体との相対回転により前記第2パイプ体に対して前記第1パイプ体が伸縮される構造の壁つなぎにおいて、
電動ドライバーの回転力を前記第1パイプ体に伝達して、前記第2パイプ体に対して当該第1パイプ体を伸縮させるのに使用される円筒伝動具であって、
前記円筒伝動具は、前記固定ボルト及び前記第1連結ピンの双方を被覆可能な長さを有する伝動円筒体の軸心方向の一端部に、前記電動ドライバーの駆動軸と一体回転する被駆動軸部が一体に設けられ、前記伝動円筒体の軸心方向の他端部に、前記第1連結ピンの軸方向の両端の各突出部と係止されるT字状又はL字状の一対の係止孔が、当該伝動円筒体の他端に開口して対向形成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項1の発明によれば、壁つなぎの先端部の固定ボルト及び第1連結ピンの部分に円筒状の円筒伝動具を覆い被せて、当該円筒伝動具の他端の開口側に形成されているT字状又はL字状の一対の係止孔に対して前記1連結ピンの両端の突出部を係止させ、この状態で、当該円筒伝動具の基端側に設けられた被駆動軸部を電動ドライバーにより回転させると、当該電動ドライバーの回転動力は、当該円筒伝動具及び第1連結ピンを介して第1パイプ体に伝達されて、当該第1パイプ体が駆動回転させられる。これにより、壁つなぎの第2パイプ体に対して第1パイプ体が瞬時に伸縮される。
【0014】
このように、壁つなぎの先端側の固定ボルト及び第1連結ピンの部分に、請求項1の発明に係る円筒伝動具を覆い被せて、その先端側のT字状又はL字状の一対の係止孔に、円筒伝動具の軸方向の両端部の各突出部を係止させる操作をワンタッチで行える。そして、作業現場から回収された多数の壁つなぎを運搬して保管する場合には、第1パイプ体を縮長させればよいし、作業現場における使用開始前においては、目的に近い長さとなるまで、第1パイプ体を伸長させればよく、いずれの場合においても、壁つなぎの伸縮操作を瞬時に行えるので、当該壁つなぎの伸縮に要する時間を大幅に短縮できる。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記円筒伝動具は、
前記第1連結ピンの軸方向の両端の各突出部と係止されるT字状又はL字状の一対の係止孔が、自身の他端に開口して対向形成されている伝動円筒体と、
中心部に角孔が形成されて、前記伝動円筒体の一端の開口を覆った状態で、当該伝動円筒体に溶接により一体化される円板状の伝動円板体と、
当該伝動円板体の前記角孔に挿入される角軸部の軸方向の一端部に、前記電動ドライバーの回転軸に装着されたソケットに回転不能に嵌め込まれる被駆動軸部が一体に連結されて、前記伝動円板体に溶接により一体化される被駆動軸体と、
から成ることを特徴としている。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、円筒伝動具は、壁つなぎの固定ボルト及び第1連結ピンの部分を外側から覆うようにして配置されて、第1連結ピンの軸方向の両端の各突出部に係止されるT字状又はL字状の一対の係止孔が、自身の他端に開口して対向形成されている伝動円筒体と、当該伝動円筒体の一端の開口を覆う伝動円板体と、当該伝動円板体の中心部の角孔に対して挿入される角軸部を備えた被駆動軸体とから成り、当該被駆動軸体と前記伝動円板体とは、角軸・角孔の構造で連結されているので、被駆動軸体から伝動円板体への動力の伝達が確実に行われて、長期の使用によっても、動力伝達を確実に行える。
【0017】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記被駆動軸体には、前記電動ドライバーのソケットから容易に抜け出るのを防止する環状の係止凹部が形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項3の発明によれば、電動ドライバーの使用中において、円筒伝動具の被駆動軸体が、電動ドライバーのソケットから容易には抜け出ないので、前記ソケットと前記被駆動軸体との連結の解除を気にすることなく、第1パイプ体の伸縮作業に集中できて、作業能率が高まる。また、壁つなぎの全長が比較的短い場合には、当該壁つなぎを地面に立てて行う場合もあり、この場合においても、前記連結の解除を気にすることなく、作業を行える。
【0019】
請求項4の発明は、第1連結ピンを介して先端部に固定ボルトが連結された伸縮用の第1パイプ体と、基端側の頭部がクランプ具の内側に係止された調整ボルトが内部に挿通されて、先端側において前記第1パイプ体が内挿される基端側の第2パイプ体とを備え、
前記調整ボルトは、前記第1パイプ体の基端部内周に一体配置されたナット体に螺合されると共に、第2連結ピンを介して前記第2パイプ体に連結され、前記調整ボルトと前記ナット体との相対回転により前記第2パイプ体に対して前記第1パイプ体が伸縮される構造の壁つなぎを外部動力により自動伸縮させる方法であって、
前記固定ボルト及び前記第1連結ピンの双方を被覆可能な長さを有する円筒状の円筒伝動具を、当該第1連結ピンの両端の突出部にそれぞれ係止させることで、電動ドライバーの動力を前記円筒伝動具及び前記第1連結ピンを介して前記第1パイプ体に伝達させて、当該第1パイプ体を伸縮させることを特徴としている。
【0020】
請求項4の発明によれば、電動ドライバーの回転動力を、壁つなぎの先端側の固定ボルト及び第1連結ピンの部分にワンタッチで装着可能な円筒状の円筒伝動具を介して第1パイプ体に伝達させて、当該第1パイプ体を回転させて、壁つなぎの第1パイプ体の伸縮を行えるので、調整ボルトの頭部が六角形状でなくて、円盤状の調整ボルトを備えた壁つなぎであっても、第1パイプ体の伸縮を自動的に行える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、壁つなぎの先端部の固定ボルト及び第1連結ピンの部分に円筒状の円筒伝動具を覆い被せて、当該円筒伝動具の他端の開口側に形成されているT字状又はL字状の一対の係止孔に対して前記1連結ピンの両端の突出部を係止させ、この状態で、当該円筒伝動具の基端側に設けられた被駆動軸部を電動ドライバーにより回転させると、当該電動ドライバーの回転動力は、当該円筒伝動具及び第1連結ピンを介して第1パイプ体に伝達されて、当該第1パイプ体が所定方向に回転されて、壁つなぎの第2パイプ体に対して第1パイプ体が短時間で伸縮される。これに加えて、壁つなぎの第1パイプ体と固定ボルトとを連結している第1連結ピンの部分に本発明の円筒伝動具を係止状態で装着する操作は、ワンタッチで行えるので、壁つなぎの伸縮に要する時間の短縮と相俟って、壁つなぎの伸縮操作を大幅に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(a)は、壁つなぎA
1 の固定ボルトB
1 の部分に、本発明に係る円筒伝動具E
1 を嵌め込んだ状態の正面断面図であり、(b)は、(a)のX-X線断面図である。
【
図2】(a),(b)は、ぞれぞれ壁つなぎA
2 の固定ボルトB
1 の部分に、本発明に係る円筒伝動具E
1 を嵌め込んだ状態における第2パイプ体P
2'の縮長の前後の正面図である。
【
図4】(a),(b)は、それぞれ本発明に係る円筒伝動具E
1 を異なる方向から見た斜視図である。
【
図5】(a)~(c)は、それぞれ本発明に係る円筒伝動具E
1 の正面図、右側面図及び左側面図であり、(d),(e)は、それぞれ(a)のY
1 -Y
1 線及びY
2 -Y
2 線の断面図であり、(f)は、円筒伝動具E
1 の縦断面図である。
【
図7】(a),(b)は、それぞれ電動ドライバーDのソケット21に、円筒伝動具E
1 の被駆動軸部6を嵌め込む前後の斜視図である。
【
図8】(a),(b)は、それぞれ電動ドライバーDのソケット21に嵌め込まれた円筒伝動具E
1 を壁つなぎA
1 の固定ボルトB
1 の外側に嵌め込んで、その一対の係止孔8に第1連結ピンK
1 の把持部33及び抜止め部34をそれぞれ挿入した直後の状態、及び当該挿入後に円筒伝動具E
1 を僅かに回転させた状態の各斜視図である。
【
図9】(a),(b)は、壁つなぎA
1 (A
2 )の第1パイプ体P
1 (P
1') の縮長時及び伸長時における第1連結ピンK
1 の部分の横断面図である。
【
図10】(a),(b)は、逆L字状又はL字状の係止孔8’,8”を備えた円筒伝動具E
2 ,E
3 の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、最良の実施例を挙げて、本発明について更に詳細に説明する。
【0024】
最初に、
図4~
図6を参照して、本発明に係る円筒伝動具E
1 について説明し、その後に、当該円筒伝動具E
1 を用いた壁つなぎA
1(A
2)の伸縮作業について説明する。当該円筒伝動具E
1 は、壁つなぎA
1(A
2)の第1パイプ体P
1(P
1')の外側に嵌め込まれる伝動円筒体1と、中心部に断面正方形状の角孔2が形成されて、前記伝動円筒体1の一端の開口を覆った状態で、当該伝動円筒体1の一端に溶接より一体化される伝動円板体3と、当該伝動円板体3の角孔2に挿入される角軸部4の軸方向の一端部に、電動ドライバーDの回転軸に装着されたソケット21に回転不能に嵌め込まれる被駆動軸部6が短円柱状の溶接固定部5を介して一体に連結されて、前記伝動円板体3に対して溶接により一体化される被駆動軸体7と、から成る。前記被駆動軸部6の軸方向の中央部には、前記ソケット21内の係止ボール(図示せず)に係止されて、当該ソケット21から当該被駆動軸部6が容易には行け出ないようにする環状の係止凹部6aが形成されている。前記伝動円筒体1における伝動円板体3が一体化される側の反対の他端部には、壁つなぎA
1(A
2)の第1パイプ体P
1(P
1')に対して固定ボルトB
1 を連結している第1連結ピンK
1 の把持部33及び抜止め部34を係止させるための一対のT字状の係止孔8が対向して形成されている。
【0025】
前記伝動円筒体1の係止孔8は、当該伝動円筒体1の他端に開口した形態で、その軸方向に形成された挿脱孔部8aと、当該挿脱孔部8aと連通して、当該伝動円筒体1の周方向に形成されて係止孔部8bとから成り、当該係止孔部8bの周方向に沿った中央部に前記挿脱孔部8aが連通して形成されている。また、伝動円板体3の外周部には、当該伝動円板体3を伝動円筒体1の端面に溶接固定する際の溶接代用凹部3aが周方向に所定間隔をおいて複数形成されている。
【0026】
そして、上記した円筒伝動具E
1 を使用した壁つなぎA
1(A
2)の縮長及び伸長は、以下のようにして行う。即ち、
図7に示されるように、電動ドライバーDのソケット21に、円筒伝動具E
1 の軸方向の一端部に一体に設けられた被駆動軸部6を嵌め込んだ後に、
図8に示されるように、円筒伝動具E
1 の伝動円筒体1の他端の開口を通して、その内部に壁つなぎA
1 の固定ボルトB
1 及び第1連結ピンK
1 の把持部33及び抜止め部34を挿入させる。第1連結ピンK
1 の把持部33及び抜止め部34の挿入は、
図8(a)に示されるように、伝動円筒体1の他端部に対向状態で形成された一対の係止孔8の挿脱孔部8aを通して前記把持部33及び抜止め部34を挿入した後に、当該壁つなぎA
1 に対して円筒伝動具E
1 を必要方向(第1パイプ体P
1 の縮長時には、一対の係止孔8が形成された側から見て反時計方向)に僅かに回動させると、図 8(b)に示されるように、第1連結ピンK
1 の把持部33は、一対の係止孔8の係止孔部8bの一方側の端部に当接する。
【0027】
その後に、作業者の一方の手で電動ドライバーDを把持すると共に、第2パイプ体P
2 の共廻りを防止すべく、他方の手で壁つなぎA
1 の第2パイプ体P
2 を把持した状態で、当該電動ドライバーDを駆動させると、当該電動ドライバーDの回転動力は、円筒伝動具E
1 を介して壁つなぎA
1 の第1連結ピンK
1 に伝達されて、壁つなぎA
1 の第1パイプ体P
1 は、
図9に示されるように、円筒伝動具E
1 と一体となって、クランプ具Cの側から見て反時計方向に回転して、壁つなぎA
1 の第1パイプ体P
1 は短時間で縮長される。
【0028】
また、壁つなぎA1 の第1パイプ体P1 を伸縮させる操作は、当該壁つなぎA1 を水平配置させる場合に限られず、クランプ具Cを地面に突き当てた垂直姿勢で行うこともあり、この垂直姿勢での操作では、電動ドライバーDのソケット21から円筒伝動具E1 の被駆動軸部6が抜け易いが、当該被駆動軸部6の軸方向の中央部の環状の係止凹部6aが、前記ソケット21の内部の係止ボール(図示せず)と係止しているので、前記円筒伝動具E1 の被駆動軸部6が前記ソケット21から抜け出る恐れはなく、壁つなぎA1 の伸縮作業に集中できる。
【0029】
一方、壁つなぎA
1 を伸長させる場合には、電動ドライバーDを上記と逆方向(クランプ具Cの側から見て時計方向)に回転させることで、
図9(b)に示されるように、第1連結ピンK
1 の把持部33は、一対の係止孔8の係止孔部8bの他方側の端部に当接して、壁つなぎA
1 の第1パイプ体P
1 は短時間で伸長される。
【0030】
また、壁つなぎA2 のように、全長が長い場合には、一方の手で電動ドライバーDを把持している作業者の他方の手で、第2パイプ体P2 を把持できないので、この場合には、第2パイプ体P2 の把持は、補助者が行う。また、本発明の円筒伝動具E1 を使用した壁つなぎの自動伸縮は、壁つなぎA2 のように、そのストロークS2 が長い場合に、より大きな伸縮時間の短縮の効果が奏される。
【0031】
また、壁つなぎA1(A2)の第1連結ピンK1 の軸心から固定ボルトB1 の先端までの長さ(L)は、当該壁つなぎの全長が長くなると、これに対応して長くなる壁つなぎもあるが、この場合には、前記長さ(L)が最長の壁つなぎに対応して、円筒伝動具E1 の伝動円筒体1の長さを選択することで、前記長さ(L)の異なる全ての壁つなぎに対して、同一の円筒伝動具E1 の使用が可能となり、長さの異なる複数の円筒伝動具の製作が不用となる。
【0032】
また、上記した円筒伝動具E
1 は、係止孔8がT字状であるため、第1パイプ体P
1 の縮長時及び伸長時のいずれに対しても動力伝達が可能となる利点があるが、
図10(a),(b)に示されるように、係止孔8’,8”を逆L字状又はL字状とすることで、第1パイプ体P
1 の縮長時又は伸長時のみに動力が伝達されるような円筒伝動具E
2 ,E
3 の使用も可能である。なお、
図10において、8a’,8a”は、係止孔8’,8”の挿脱孔部を示し、8b’,8b”は、係止孔8’,8”の係止孔部を示す。
【0033】
なお、各円筒伝動具E1 ~E3 において、伝動円筒体1と被駆動軸部6を一体化させる構成は、当該伝動円筒体1に対して溶接により一体化される伝動円板体3に対して被駆動軸部6を溶接により一体化させているが、当該伝動円筒体1に対してビス固定される部材に対してキーを介して被駆動軸部6を一体化させる構造であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
A1 ,A2 :壁つなぎ
B1 :固定ボルト
B2 ,B3 :調整ボルト
C:クランプ具
D:電動ドライバー
E1 ~E3 :円筒伝動具
K1 :第1連結ピン
K2 :第2連結ピン
L:第1連結ピンの軸心と固定ボルトの先端までの長さ N:ナット体
P1 :第1パイプ体
P2 :第2パイプ体
S1 ,S2 :第1パイプ体のストローク
1:伝動円筒体
2:角孔
3:伝動円板体
3a:溶接代用凹部
4:角軸部
5:溶接固定部
6:被駆動軸部
6a:係止凹部
7:被駆動軸体
8,8',8”:係止孔
8a,8a',8a" :挿脱孔部
8b,8b',8b" :係止孔部
21:電動ドライバーのソケット
32:第1連結ピンの軸部
33:第1連結ピンの把持部
34:第1連結ピンの抜止め部