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7370625部位特異的コンジュゲーションのための志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクター足場、及び細胞標的化分子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】部位特異的コンジュゲーションのための志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクター足場、及び細胞標的化分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231023BHJP
   C07K 14/25 20060101ALI20231023BHJP
   C07K 14/765 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231023BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/25
C07K14/765
A61K38/16
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
C12N15/31
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022076399
(22)【出願日】2022-05-06
(62)【分割の表示】P 2019528111の分割
【原出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2022115979
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】62/431,036
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515238389
【氏名又は名称】モレキュラー テンプレーツ,インク.
【氏名又は名称原語表記】MOLECULAR TEMPLATES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(72)【発明者】
【氏名】ポーマ エリック
(72)【発明者】
【氏名】ウィラート エリン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-512519(JP,A)
【文献】国際公開第2015/191764(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/138452(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/138435(WO,A1)
【文献】Toxicon,2011年,Vol.57, No.4,pp.525-539
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号828のポリペプチド配列を含む、又はそれからなるHER2/neu/ErbB2標的化分子。
【請求項2】
薬学的に許容される溶媒和物又は塩の形態の、請求項1に記載のHER2/neu/ErbB2標的化分子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のHER2/neu/ErbB2標的化分子と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載のHER2/neu/ErbB2標的化分子をコードするポリヌクレオチド、又はその相補体。
【請求項5】
請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項4に記載のポリヌクレオチド又は請求項5に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項7】
請求項1若しくは2に記載のHER2/neu/ErbB2標的化分子又は請求項3に記載の医薬組成物を含む、患者の疾患、障害又は状態の治療剤。
【請求項8】
疾患、障害又は状態が、がん、腫瘍、異常増殖状態、免疫障害若しくは微生物感染症である、請求項7に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、細胞標的化分子による送達のためにカーゴ分子を共有結合で連結するためのものなどの、他の分子を連結するための部位特異的アミノ酸残基を含む細胞標的化分子及び/又は細胞標的化分子の成分に関する。本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、例えば、細胞標的化分子及び/又は送達用カーゴの特性を変化させる薬剤などの、別の分子とコンジュゲートされていてもよい、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、リンカー及び/又は免疫グロブリン型ポリペプチドを含む。本発明の細胞標的化分子、及びそれらの組成物は、例えば、標的発現細胞へのカーゴの選択的送達のために使用され、並びに遺伝性障害、遺伝的素因、感染症、がん、腫瘍、増殖異常及び/又は免疫障害を含む、様々な疾患、障害及び状態の治療のための診断用及び/又は治療用分子として使用される。
【背景技術】
【0002】
下記は、本書に記載される本発明の理解に有用でありうる情報を含む。これは、本書で提供される情報のいずれかが、今般記載される若しくは請求される発明に対する先行技術であるか若しくは当該発明に関連すること、又は本書において明示的若しくは暗示的に参照されるいずれかの刊行物若しくは文献が、先行技術であることを認めるものではない。
【0003】
志賀毒素エフェクターポリペプチドを免疫グロブリンドメイン、リガンド、及び他の標的化部分構造と化合させて、細胞標的化分子を生成することができる(例えば、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開20160177284号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素機能を示すことができる志賀毒素ファミリーの志賀毒素Aサブユニットメンバーに由来するポリペプチドである(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。志賀毒素Aサブユニットは、安定しており、変異させても、トランケーションしても、及び/又は他の分子に融合させても、毒素機能を保持することができる(例えば、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第20160177284号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。志賀毒素機能は、例えば、細胞内在化を増加させること、定義された一連の十分に特徴付けられている細胞内の区画を経由するエンドソーム区画からサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、細胞内分解を回避すること、リボソームを触媒的に不活性化すること、並びに細胞静止及び/又は細胞毒性作用を生じさせることを含む。加えて、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、標的療法のための細胞内在化分子における使用に好適なユニークな特性を有することが高く評価されるようになってきた(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、米国特許出願公開第20150259428号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0004】
生物学的コンジュゲートは、例えば、標的化剤、溶解度を変化させる薬剤、薬物動態を変化させる薬剤、免疫原性を変化させる薬剤、及び薬力学的変化をもたらす薬剤に生物活性剤を連結することなどによる、治療用又は診断用生物学的分子の開発に有用な形式である。生物学的コンジュゲートには、コンジュゲートの非コンジュゲート成分と比較して、例えば、抗体-薬物コンジュゲートによる薬物の細胞型特異的標的化、又は免疫毒素及びリガンド-毒素融合体による毒素の細胞型特異的標的化などの、新規有用性があることが証明されている。加えて、新規有用性がある及び/又は特性を望ましく向上させる生物学的コンジュゲートを、合理的に設計することができる。コンジュゲートの非コンジュゲート成分と比較して、例えば、薬物動態、薬力学、安全性、耐容性、治療濃度域、溶解度、及び免疫原性の向上などの、特性向上を有するように、生物学的コンジュゲートを設計することができる。
【0005】
別の薬剤若しくはカーゴとのコンジュゲーション用に最適化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む志賀毒素エフェクターポリペプチドコンジュゲート及び細胞標的化分子を有することは、治療用及び/又は診断用生物学的分子を開発するために望ましい。例えば、分子カーゴとコンジュゲートされている志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子を有することは、それらのカーゴを細胞に標的送達することができる分子を形成するために望ましい。さらに、分子カーゴとコンジュゲートされている志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子を有することは、志賀毒素エフェクターポリペプチドにより指示される明確に定義された細胞内経路を辿ってそれらのカーゴを正確に細胞内に送達することができる分子を形成するために望ましい(例えば、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、及び国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)。加えて、例えば、溶解度を変化させる薬剤、薬物動態を変化させる薬剤、免疫原性を変化させる薬剤、及び/又は薬力学的変化をもたらす薬剤などの、薬剤とコンジュゲートされた志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子を有することが望ましい。
【0006】
通常、生物学的分子は、生物学的分子の官能基及び薬剤若しくはカーゴの官能基、又は代替的に、生物学的分子と薬剤若しくはカーゴとを架橋するように設計されたリンカーの官能基が関与する化学反応を使用して、他の薬剤又はカーゴとコンジュゲートされる。しかし、例えば、コンジュゲーション部位特異性の制御、コンジュゲートの化学量論組成の管理、所望の均一性の獲得、低収率、バッチ間の一貫性、及び対費用効果などの、その有用性を制限する旧来のコンジュゲーション化学反応に関わる複数の問題がある(例えば、Panowski S et al.,MAbs 6: 34-45 (2014)を参照されたい)。特に、均一性は、コンジ
ュゲート薬製造の鍵でありうる。なぜなら、均一な産物は、より良好な薬物動態プロファイル及び安全性プロファイルを一般に有するため、診療所でより良好に機能する可能性が高いからである。例えば、旧来の方法を使用して溶媒露出アミノ酸残基から生成されたタンパク質コンジュゲートは、様々なコンジュゲート化学量論比及び異なる残基位置結合部位を有するコンジュゲートの不均一な混合物をもたらしうる。さらに、生物学的薬物コンジュゲートの重要な品質基準は、販売のための政府の承認に必要とされうる均一性である(例えば、Kim E, Kim K, Biomol Ther23: 493-509 (2015);Zhou Q, Kim J, Anticancer Agents MedChem 15: 828-36 (2015)を参照されたい)。したがって、例えば、限定数
の既知残基部位との所望のコンジュゲート化学量論組成でのコンジュゲーションを強いる方法を使用することなどにより、タンパク質性生物学的分子へのコンジュゲーションを制御することが、望ましい。しかし、コンジュゲーションが単一の産物に限定される場合でも、コンジュゲートしていない物質からコンジュゲートを分離する精製は、非効率的であり且つ費用がかかりうる。
【0007】
当技術分野では、分子全体の特性(例えば、治療有効性、薬物動態、免疫原性、又は脊椎動物への分子の投与後の治療指数)を向上させるために、例えば、標的送達用カーゴ、又は分子を変化させる薬剤などの、様々な分子の簡便な、制御された、且つ対費用効果が高い、部位特異的コンジュゲーションのための上述のものを含む、志賀毒素Aサブユニット足場及び細胞標的化分子を開発することが必要とされている。例えば、診断及び/又は治療のための細胞標的化分子などの、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む生物学的分子の非常に均一な生物学的コンジュゲートを獲得するための簡便で、より低費用の方法を有することは、望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2014/164693号パンフレット
【文献】国際公開第2015/113005号パンフレット
【文献】国際公開第2015/113007号パンフレット
【文献】国際公開第2015/138435号パンフレット
【文献】国際公開第2015/138452号パンフレット
【文献】国際公開第2015/191764号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第20160177284号明細書
【文献】国際公開第2016/126950号パンフレット
【文献】国際公開第2014/164680号パンフレット
【文献】米国特許出願公開第20150259428号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)
【文献】Panowski S et al., MAbs 6: 34-45 (2014)
【文献】Kim E, Kim K, BiomolTher 23: 493-509 (2015)
【文献】Zhou Q, Kim J, Anticancer Agents Med Chem 15:828-36 (2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、例えばカーゴ分子などの他の分子を連結するための部位特異的アミノ酸残基を各々が含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクター足場(scaffold)、及び細胞標的化分子についての様々な実施形態を提供する。本発明は、例えば特異的システイン又はリジン残基などの部位特異的アミノ酸残基と、直接的に又は間接的にどちらかで、連結されている薬剤又はカーゴを各々が含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクター足場、及び細胞標的化分子についての様々な実施形態も提供する。加えて、本発明は、例えば、細胞標的化分子による送達用のカーゴ分子、又は哺乳動物への投与後に細胞標的化分子に所望の特性を付与する、細胞標的化分子を変化させる薬剤などの、他の分子を連結するための、部位特異的結合アミノ酸残基を含む細胞標的化分子の成分を提供する。
【0011】
本発明は、ユニークな残基及び/又は1つ若しくは2つ以上の異所的なアミノ酸残基を有する志賀毒素Aサブユニットポリペプチドであって、各ポリペプチドが、例えば、細胞内在化を促進すること、効率的な細胞内経路決定、触媒活性、及び細胞毒性などの、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能を示すことができる、志賀毒素Aサブユニットポリペプチドについての様々な実施形態を提供する。本発明は、ユニークな及び/又は異所的なアミノ酸残基を生じさせる、天然に存在する志賀毒素に対する1つ又は2つ以上の変異を有する志賀毒素Aサブユニットポリペプチドであって、各ポリペプチドが1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる志賀毒素Aサブユニットポリペプチドについての様々な実施形態を提供する。
【0012】
細胞標的化結合領域の志賀毒素Aサブユニット由来ポリペプチドへの連結は、ユニークな及び/又は異所的なアミノ酸残基を、例えば、送達用の分子カーゴ、及び/又は細胞標的化分子の特性を変化させる薬剤などの、他の分子を連結するための結合点として利用することができる、細胞標的化分子の改変を可能にする。したがって、本発明のある特定の細胞標的化分子、及びそれらの組成物を使用して、1つ又は2つ以上の他の細胞型の存在下でカーゴを標的発現細胞型に選択的に送達することができる。加えて、本発明のある特定の細胞標的化分子、及びそれらの組成物を使用して、1つ又は2つ以上の他の細胞型の存在下で標的発現細胞を選択的に殺滅することができる。例えば、本発明のある特定の細胞標的化分子は、サイトゾルに有効に経路決定することができる触媒活性、志賀毒素エフェクターポリペプチドを標的発現細胞の内部に効率的に送達するそれらの能力によって、標的発現細胞に対して強力に細胞毒性でありうる。
【0013】
本発明のある特定の実施形態は、ユニークな部位及び/又は位置異所的なアミノ酸残基を生じさせる、野生型志賀毒素に対する1つ又は2つ以上の変異を含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドである。本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドのユニークな部位及び/又は異所的なアミノ酸残基は、例えば、リンカー、細胞標的化部分構造、ペプチド、核酸、タンパク質、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、溶解度を変化させる薬剤、薬物動態を変化させる薬剤、免疫原性を変化させる薬剤、及び薬力学的変化をもたらす薬剤などの、他の分子の、直接的に又は間接的にどちらかでの、制御された部位特異的結合に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、例えば、細胞内在化を促進すること、効率的な細胞内経路決定、触媒活性、及び細胞毒性などの、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能を示すことができる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドのユニークな部位及び/又は異所的なアミノ酸残基を介して別の分子とコンジュゲートされている。本発明は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのユニークな部位及び/又は異所的なアミノ酸残基を介して別の分子とコンジュゲートされていてもよい本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子も提供する。加えて、本発明は、そのような志賀毒素Aサブユニットポリペプチドを含む様々な細胞標的化分子、及びそれらを含む組成物であって、各分子が志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを標的細胞に送達することができ、志賀毒素Aサブユニットが標的細胞に侵入することができる、細胞標的化分子、及びそれらを含む組成物を提供する。
【0014】
本発明のある特定の実施形態は、少なくとも1つの志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及びリンカーを各々が含む、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド足場であって、1つのユニークなアミノ酸残基を含む足場である。本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド足場のユニークなアミノ酸残基は、例えば、細胞標的化部分構造、ペプチド、核酸、タンパク質、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、溶解度を変化させる薬剤、薬物動態を変化させる薬剤、免疫原性を変化させる薬剤、及び薬力学的変化をもたらす薬剤などの、他の分子の、直接的に又は間接的にどちらかでの、制御された部位特異的結合に使用される。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド足場は、例えば、細胞内在化を促進すること、効率的な細胞内経路決定、触媒活性、及び細胞毒性などの、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能を示すことができる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド足場は、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場のユニークなアミノ酸残基を介して別の分子とコンジュゲートされる。本発明は、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場のユニークなアミノ酸残基の部位において別の分子とコンジュゲートされていてもよい本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場を含む細胞標的化分子も提供する。加えて、本発明は、そのような志賀毒素エフェクターポリペプチド足場を含む様々な細胞標的化分子であって、各分子が志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを標的細胞に送達することができ、志賀毒素Aサブユニットが標的細胞に侵入することができる、細胞標的化分子、及びそれらを含む組成物を提供する。
【0015】
本発明のある特定の実施形態は、例えばリンカー又は細胞標的化結合領域などの、細胞標的化分子の成分であって、各々が、他の分子の、直接的に又は間接的にどちらかでの、制御された部位特異的結合のための、ユニークな部位及び/又は異所的に位置するアミノ酸残基を含む、成分である。ある特定のさらなる実施形態は、細胞標的化結合領域(例えば、免疫グロブリン由来ポリペプチド)であって、各々が、リンカー、細胞標的化部分構造、ペプチド、核酸、タンパク質、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、溶解度を変化させる薬剤、薬物動態を変化させる薬剤、免疫原性を変化させる薬剤、及び薬力学的変化をもたらす薬剤などの、他の分子の、直接的に又は間接的にどちらかでの、部位特異的結合のための官能基を有するアミノ酸残基を含む、細胞標的化結合領域である。本発明のある特定の他の実施形態は、他の分子の部位特異的結合のための部位改変型官能基を含むリンカーである。本発明は、そのような成分、例えば、別の分子に連結されていてもよい本発明の細胞標的化結合領域及び/又はリンカーを含む細胞標的化分子も提供する。
【0016】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、例えば、細胞標的化分子及び/又は送達用カーゴの特性を変化させる薬剤などの別の分子とコンジュゲートされていてもよい、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクター足場、リンカー及び/又は免疫グロブリン型ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態については、細胞標的化分子の志賀毒素Aサブユニット成分は、例えば、細胞内在化を促進すること、効率的な細胞内経路決定、触媒活性、及び細胞毒性などの、1つ又は2つ以上の志賀毒素Aサブユニットエフェクター機能を示すことができる。本発明の細胞標的化分子、及びそれらの組成物は、例えば、標的発現細胞へのカーゴの選択的送達のために使用され、並びに遺伝性障害、遺伝的素因、感染症、がん、腫瘍、増殖異常及び/又は免疫障害を含む、様々な疾患、障害及び状態の治療のための診断用及び/又は治療用分子として使用される。
【0017】
実施形態セット#1-志賀毒素エフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットに由来し、ポリペプチド中の他の全てのアミノ酸残基と比べてユニークなアミノ酸残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞内在化を促進すること、細胞侵入後にサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソームの触媒不活性化、及び細胞毒性から選択される、有意なレベルの1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、異所的である。ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、システイン、ヒスチジン、リジン、又は非天然アミノ酸残基である。ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、核酸翻訳過程によって志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれうる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ユニークなアミノ酸残基の官能基を介して、例えば、細胞標的化結合領域、リンカー、追加の外在性物質、カーゴ、細胞標的化を変化させる薬剤などの、異種分子と、共有結合で連結される。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、抗生物質、抗原、抗原性物質、細胞毒性薬剤、放射性核種、細胞標的化分子を変化させる薬剤、検出促進剤、色素、T細胞エピトープ、フルオロフォア、免疫原、免疫原性物質、酵素、ジモキシン(zymoxin)、脂質、ポリマー
、ポリエチレングリコール、血清アルブミン結合剤、小分子化学療法剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、核酸、及びタンパク質-核酸複合体からなる群から選択される。
【0018】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、実質的な配列同一性を有する野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を含み、ここで、アミノ酸置換全体の結果として志賀毒素エフェクターポリペプチド中に、志賀毒素エフェクターポリペプチド中の他の全ての残基と比べてユニークなアミノ酸残基が存在することになり、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。用語「実質的な配列同一性」は、同じサイズのアラインされたポリペプチド配列に対して、又はアラインメントが当技術分野において公知のコンピューター相同性プログラムにより行われる場合にはアラインされた配列と比較されたとき、少なくとも約85%、90%、95%、98%、99%又はそれを超える同一性を有すること(通常、92~99%の同一性を有すること)を意味する。ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、1つ又は2つ以上の置換アミノ酸の1つであり、位置異所的と見なすことができる。位置異所的(Position ectopic)は、ユニークなアミノ酸の位置が、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの全長とアラインメントされたとき、厳密にアラインされた野生型志賀毒素Aサブユニット又はその断片中のその位置に本来見られるアミノ酸のタイプでないことを意味する。ある特性の他の実施形態では、ユニークなアミノ酸は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと実質的な配列同一性を有する野生型志賀毒素Aサブユニットに関する本来の位置にあるアミノ酸である。そのユニークさは、同じタイプの1つ又は2つ以上の他のアミノ酸を除去する1つ又は2つ以上のアミノ酸置換に起因する。
【0019】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ポリペプチドが存在する細胞のゴルジ体への細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体への細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチドが存在する細胞のサイトゾルへの細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチドと直接的に又は間接的に連結されているカーゴで細胞内の経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、及び細胞毒性からなる群から選択される、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、10,000ピコモル濃度以下のIC50値でリボソーム阻害活性を示すことができる。
【0020】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基である。
【0021】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、ポリヌクレオチド翻訳によって、例えば、インビトロでのリボソームの作用によって、又は生細胞、例えば、タンパク質産生に使用される宿主細胞におけるリボソームの作用によって、志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれうる。
【0022】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの内部に位置する(例えば、内部に位置するアミノ残基は、遊離型の第1級アミン基又はカルボキシル基を有するポリペプチド末端のアミノ酸残基などの、ポリペプチドの末端残基でありえない)。その代わりに、ポリペプチドの内部のアミノ酸残基は、他のアミノ酸残基とのペプチド結合に関与するアミノ基とカルボキシ基の両方を有する。
【0023】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、システイン、ヒスチジン、リジン、セレノシステイン、及びピロリン-カルボキシ-リジンからなる群から選択される。
【0024】
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号5~232のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。
【0025】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、その官能基を介して、例えば、抗生物質、抗原、抗原性物質、細胞毒性薬剤、放射性核種、細胞標的化分子を変化させる薬剤、検出促進剤、色素、T細胞エピトープ、フルオロフォア、免疫原、免疫原性物質、酵素、ジモキシン、脂質、ポリマー、ポリエチレングリコール、血清アルブミン結合剤、小分子化学療法剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、核酸、及び/又はタンパク質-核酸複合体などの、異種分子と共有結合で連結される。
【0026】
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドと実質的な配列同一性を有する野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を含み、その結果として、化学反応性基を介した化学的コンジュゲーションに適している位置異所性アミノ酸残基が得られ、この志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。
【0027】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、実質的な配列同一性を有する野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を含み、1つ又は2つ以上のアミノ酸置換の結果として、コンジュゲーションに利用可能な位置異所性アミノ酸残基が得られ、この志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、ポリペプチドが存在する細胞のゴルジ体への細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチドが存在する細胞の小胞体への細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチドが存在する細胞のサイトゾルへの細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチドと直接的に又は間接的に連結されているカーゴで細胞内の経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、及び細胞毒性からなる群から選択される、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、10,000ピコモル濃度以下のIC50値でリボソーム阻害活性を示すことができる。
【0028】
ある特定のさらなる実施形態では、位置異所性アミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基である。
【0029】
ある特定のさらなる実施形態では、位置異所性アミノ酸残基は、ポリヌクレオチド翻訳によって、例えば、インビトロでのリボソームの作用によって、又は生細胞におけるリボソームの作用によって、志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれうる。
【0030】
ある特定のさらなる実施形態では、位置異所性アミノ酸残基は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの内部に位置する。
【0031】
ある特定のさらなる実施形態では、位置異所性アミノ酸残基は、システイン、ヒスチジン、リジン、セレノシステイン、及びピロリン-カルボキシ-リジンからなる群から選択される。
【0032】
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号5~124のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。
【0033】
ある特定のさらなる実施形態では、位置異所性アミノ酸残基は、その官能基を介して、例えば、抗生物質、抗原、抗原性物質、細胞毒性薬剤、放射性核種、細胞標的化分子を変化させる薬剤、検出促進剤、色素、T細胞エピトープ、フルオロフォア、免疫原、免疫原性物質、酵素、ジモキシン、脂質、ポリマー、ポリエチレングリコール、血清アルブミン結合剤、小分子化学療法剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、核酸、及び/又はタンパク質-核酸複合体などの、異種分子と共有結合で連結されている。
【0034】
ある特定のさらなる実施形態では、位置異所性アミノ酸残基は、その官能基を介して、例えば、抗生物質、抗原、抗原性物質、細胞毒性薬剤、放射性核種、細胞標的化分子を変化させる薬剤、検出促進剤、色素、T細胞エピトープ、フルオロフォア、免疫原、免疫原性物質、酵素、ジモキシン、脂質、ポリマー、ポリエチレングリコール、血清アルブミン結合剤、小分子化学療法剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、核酸、及び/又はタンパク質-核酸複合体などの、異種分子と共有結合で連結されている。
【0035】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号5~84、830、832、及び1109~1140のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。
【0036】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するポリペプチドであり、及び(2)官能基を有するアミノ酸残基を含み、該アミノ酸残基は、官能基を介して、志賀毒素に対して異種である異種分子と共有結合で連結されている。ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、アミノ酸残基は、システイン、ヒスチジン、リジン、セレノシステイン、及びピロリン-カルボキシ-リジンである。ある特定のさらなる実施形態では、アミノ酸残基は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対して異所性であり、これは、アミノ酸残基が、野生型志賀毒素中のその位置で天然に見出されないことを意味する。ある特定のさらなる実施形態では、アミノ酸残基は、非天然であり、これは、アミノ酸が20種の通常のアミノ酸の1つでないことを意味する。ある特定のさらなる実施形態では、アミノ酸残基は、核酸翻訳によって志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれうる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号5~84、830、832、及び1109~1140のいずれか1つで示されるポリペプチドを含むか、又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、エンドソーム区画からゴルジ、小胞体、及び/又はサイトゾル区画への、有意な細胞内の経路決定を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、10,000ピコモル濃度若しくはそれ未満のIC50値でリボソーム阻害活性を、及び/又は有意なレベルの志賀毒素触媒活性を、示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、細胞の表面と物理的にカップリングされている少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、細胞標的化ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化ポリペプチドは、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体(sdAb,single-domain antibody)断片、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR,immunoglobulin new antigen receptor)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv,single-chain variable fragment)、抗体可変断片(Fv,variable fragment)、相補性決定領域3(CDR3,complementary determining region 3)断片、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP,small modular immunopharmaceutical)ドメイン、抗原結合性断片(Fab,antigen-binding fragment)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP,Armadillo repeat polypeptide)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3,fibronectin-derived 10thfibronectintype III domain)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3,tenascin type III domain)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A,low-density-lipoprotein-receptor-derivedA-domain)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフ(配列番号1142として開示される「KDEL」)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への志賀毒素エフェクターポリペプチドの投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。生体分子標的発現細胞への本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの投与である、ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる変異を含み、変異は、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4におけるA231E、N75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K及び/又はW203Aなどの、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、触媒活性を低下させるか又は除去するが、例えば細胞内在化を誘導すること及び/又は細胞内経路決定を指示することなどの、少なくとも1つの他の志賀毒素エフェクター機能を保持する、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性を低下させるか又は除去する。
【0037】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するポリペプチドであり、及び(2)官能基を有する異所性アミノ酸残基を含み、該アミノ酸残基は、志賀毒素に対して異種である異種分子への官能基を介した化学的コンジュゲーションに適したものであり、この志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、異所性アミノ酸残基は、塩基性及び/又は強求核性アミノ酸残基であり、システイン、ヒスチジン、リジン、セレノシステイン、又はピロリン-カルボキシ-リジンであってもよい。ある特定のさらなる実施形態では、異所性アミノ酸残基は、非天然であり、これは、アミノ酸が20種の通常のアミノ酸の1つでないことを意味する。ある特定のさらなる実施形態では、異所性アミノ酸残基は、核酸翻訳によって志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれうる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号5~84、830、832、及び1109~1140のいずれか1つで示されるポリペプチドを含むか、又はそのようなポリペプチドから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、エンドソーム区画からゴルジ、小胞体、及び/又はサイトゾル区画への、有意な細胞内の経路決定を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、10,000ピコモル濃度以下のIC50値でリボソーム阻害活性を、及び/又は有意なレベルの志賀毒素触媒活性を、示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、異所性アミノ酸残基を介して異種分子と連結されている。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、細胞の表面と物理的にカップリングされている少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、細胞標的化ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化ポリペプチドは、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への志賀毒素エフェクターポリペプチドの投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。標的発現細胞への志賀毒素エフェクターポリペプチドの投与である、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、ある特定の実施形態については、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる変異を含み、変異は、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4におけるA231E、N75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K及び/又はW203Aなどの、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、触媒活性を低下させるか又は除去するが、例えば細胞内在化を誘導すること及び/又は細胞内経路決定を指示することなどの、少なくとも1つの他の志賀毒素エフェクター機能を保持する、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性を低下させるか又は除去する。
【0038】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するポリペプチドであり、及び官能基を有する内部の異所性アミノ酸残基を含み、該アミノ酸残基は、志賀毒素に対して異種である異種分子への官能基を介した化学的コンジュゲーションに適したものであり、この志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。内部のとは、単一の連続したポリペプチド内のアミノ末端残基もカルボキシ末端残基も表さない位置に組み込まれている異所性アミノ酸残基を指す。ある特定のさらなる実施形態では、異所性アミノ酸残基は、塩基性及び/又は強求核性アミノ酸残基であり、システイン、ヒスチジン、リジン、セレノシステイン、又はピロリン-カルボキシ-リジンであってもよい。ある特定のさらなる実施形態では、異所性アミノ酸残基は、非天然であり、これは、アミノ酸が20種の通常のアミノ酸の1つでないことを意味する。ある特定のさらなる実施形態では、異所性アミノ酸残基は、核酸翻訳によって志賀毒素エフェクターポリペプチドに組み込まれうる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号5~84、830、832、及び1109~1140のいずれか1つで示されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、エンドソーム区画からゴルジ、小胞体、及び/又はサイトゾル区画への、有意な細胞内の経路決定を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、10,000ピコモル濃度以下のIC50値でリボソーム阻害活性を、及び/又は有意なレベルの志賀毒素触媒活性を、示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、異所性アミノ酸残基を介して異種分子と連結される。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、細胞の表面と物理的にカップリングされた少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、細胞標的化ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化ポリペプチドは、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、配列番号844~1100のいずれか1つで示されるペプチド又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への志賀毒素エフェクターポリペプチドの投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。標的発現細胞への志賀毒素エフェクターポリペプチドの投与である、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、ある特定の実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる変異を含み、変異は、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4におけるA231E、N75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K及び/又はW203Aなどの、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、触媒活性を低下させるか又は除去するが、例えば細胞内在化を誘導すること及び/又は細胞内経路決定を指示することなどの、少なくとも1つの他の志賀毒素エフェクター機能を保持する、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性を低下させるか又は除去する。
【0039】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、当業者に公知のリンカーと融合される。
【0040】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、直接的に又は間接的にどちらかで、融合される。
【0041】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域をさらに含み、A1断片領域のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフをさらに含む(例えば国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端のカルボキシ末端側に位置する分子部分構造をさらに含む(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0042】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの挿入された又は埋め込まれた異種T細胞エピトープをさらに含む(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0043】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、脱免疫化される。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、脊索動物への投与後、例えば野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号1~3を参照されたい)などの、参照分子と比較して、抗原性及び/又は免疫原性の可能性の低下を示す。
【0044】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ、2つ又は3つの破壊された内在性のB細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域をさらに含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの挿入された又は埋め込まれた異種エピトープと重複しない、少なくとも1つの破壊された内在性のB細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域をさらに含む(例えば、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1又は配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1又は配列番号2の27~37、配列番号1又は配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の53~66、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218、配列番号3の240~260、配列番号1又は配列番号2の243~257、配列番号1又は配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、配列番号1又は配列番号2の285~293、配列番号1又は配列番号2の4~33、配列番号1又は配列番号2の34~78、配列番号1又は配列番号2の77~103、配列番号1又は配列番号2の128~168、配列番号1又は配列番号2の160~183、配列番号1又は配列番号2の236~258、及び配列番号1又は配列番号2の274~293、並びに志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊を含む。ある特定のさらなる実施形態では、少なくとも1つの破壊された内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又は全てと重複するアミノ酸残基のカルボキシ末端トランケーションである破壊はない。
【0045】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異であって、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニットアミノ酸残基:L49、D197、D198、R204及びR205の群から選択される、B細胞免疫原性アミノ酸残基の変異をさらに含む。
【0046】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)少なくとも1つの破壊されるエピトープ領域の一部又は全てと重複する配列のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号1若しくは配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1若しくは配列番号2の27~37、配列番号1若しくは配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、及び配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3の53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域;(ii)配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218;並びに(iii)
配列番号3の240~260、配列番号1若しくは配列番号2の243~257、配列番号1若しくは配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、及び配列番号1若しくは配列番号2の285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を破壊する、埋め込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープをさらに含む。
【0047】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異であって、(i)少なくとも1つの破壊されるエピトープ領域の一部又は全てと重複する配列のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号1若しくは配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1若しくは配列番号2の27~37、配列番号1若しくは配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、及び配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3の53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域;(ii)配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218;並びに(iii)少なくとも1つの破壊されるエピ
トープ領域の一部又は全てと重複する配列のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号3の240~260、配列番号1若しくは配列番号2の243~257、配列番号1若しくは配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、及び配列番号1若しくは配列番号2の285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における変異をさらに含む。
【0048】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニットの群から選択される、少なくとも1つの内在性エピトープ領域の破壊をさらに含む。
【0049】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上の内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊をさらに含む(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0050】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する複数のアミノ酸残基置換を含む、1つ又は2つ以上の内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域をさらに含む(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0051】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する、内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における複数のアミノ酸残基置換を含む、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの破壊をさらに含む(例えば、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0052】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上のアミノ酸残基置換を含む少なくとも1つの破壊をさらに含み、ここで、少なくとも1つの置換は、配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の6、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の12、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の44、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の46、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の49、配列番号1又は配列番号2の50、配列番号1又は配列番号2の51、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の54、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の56、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の57、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1又は配列番号2の84、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の88、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1又は配列番号2の104、配列番号1又は配列番号2の105、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の107、配列番号1又は配列番号2の108、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の111、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の141、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の147、配列番号1又は配列番号2の154、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の197、配列番号1又は配列番号2の198、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号1又は配列番号2の248、配列番号3の250、配列番号1又は配列番号2の251、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286、並びに志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等のアミノ酸残基からなる群から選択される本来の位置にある志賀毒素Aサブユニットアミノ酸残基に存在してもよい。ある特定のさらなる実施形態では、少なくとも2つの破壊各々は、配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1又は配列番号2の49、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の147、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号3の250、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286、並びに志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等のアミノ酸残基からなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する、少なくとも1つのアミノ酸残基置換を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)少なくとも1つの破壊された内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の一部又は全てと重複するアミノ酸残基のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号1若しくは配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1若しくは配列番号2の27~37、配列番号1若しくは配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、及び配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3の53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域;(ii)配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218;並びに(iii)少なくとも1つの破壊された内在性のB細胞及
び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又は全てと重複するアミノ酸残基のカルボキシ末端トランケーションである破壊がない、配列番号3の240~260、配列番号1若しくは配列番号2の243~257、配列番号1若しくは配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、及び配列番号1若しくは配列番号2の285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域からなる群から選択される、少なくとも3つの、内在性の、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊をさらに含む。
【0054】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも2つの、内在性の、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊をさらに含み、ここで、各破壊は、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含み、内在性の、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域は、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1又は配列番号2の27~37、配列番号1又は配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の53~66、及び志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される。
【0055】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、DからAへの、DからGへの、DからVへの、DからLへの、DからIへの、DからFへの、DからSへの、DからQへの、DからMへの、DからRへの、EからAへの、EからGへの、EからVへの、EからLへの、EからIへの、EからFへの、EからSへの、EからQへの、EからNへの、EからDへの、EからMへの、EからRへの、FからAへの、FからGへの、FからVへの、FからLへの、FからIへの、GからAへの、GからPへの、HからAへの、HからGへの、HからVへの、HからLへの、HからIへの、HからFへの、HからMへの、IからAへの、IからVへの、IからGへの、IからCへの、KからAへの、KからGへの、KからVへの、KからLへの、KからIへの、KからMへの、KからHへの、LからAへの、LからVへの、LからGへの、LからCへの、NからAへの、NからGへの、NからVへの、NからLへの、NからIへの、NからFへの、PからAへの、PからGへの、PからFへの、RからAへの、RからGへの、RからVへの、RからLへの、RからIへの、RからFへの、RからMへの、RからQへの、RからSへの、RからKへの、RからHへの、SからAへの、SからGへの、SからVへの、SからLへの、SからIへの、SからFへの、SからMへの、TからAへの、TからGへの、TからVへの、TからLへの、TからIへの、TからFへの、TからMへの、TからSへの、VからAへの、VからGへの、YからAへの、YからGへの、YからVへの、YからLへの、YからIへの、YからFへの、YからMへの、及びYからTへのアミノ酸残基置換からなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含む、少なくとも1つの破壊をさらに含む。ある特定のさらなる実施形態では、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換は、DからAへの、DからGへの、DからVへの、DからLへの、DからIへの、DからFへの、DからSへの、DからQへの、EからAへの、EからGへの、EからVへの、EからLへの、EからIへの、EからFへの、EからSへの、EからQへの、EからNへの、EからDへの、EからMへの、EからRへの、GからAへの、HからAへの、HからGへの、HからVへの、HからLへの、HからIへの、HからFへの、HからMへの、KからAへの、KからGへの、KからVへの、KからLへの、KからIへの、KからMへの、KからHへの、LからAへの、LからGへの、NからAへの、NからGへの、NからVへの、NからLへの、NからIへの、NからFへの、PからAへの、PからGへの、PからFへの、RからAへの、RからGへの、RからVへの、RからLへの、RからIへの、RからFへの、RからMへの、RからQへの、RからSへの、RからKへの、RからHへの、SからAへの、SからGへの、SからVへの、SからLへの、SからIへの、SからFへの、SからMへの、TからAへの、TからGへの、TからVへの、TからLへの、TからIへの、TからFへの、TからMへの、TからSへの、YからAへの、YからGへの、YからVへの、YからLへの、YからIへの、YからFへの、及びYからMへのアミノ酸残基置換からなる群から選択される。
【0056】
ある特定の実施形態では、少なくとも1つの破壊は、K1のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T4のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D6のA、G、V、L、I、F、S、Q及びRへの、S8のA、G、V、I、L、F及びMへの、T9のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、S9のA、G、V、L、I、F及びMへの、K11のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T12のA、G、V、I、L、F、M、S及びKへの、S12のA、G、V、I、L、F及びMへの、S33のA、G、V、L、I、F、M及びCへの、S43のA、G、V、L、I、F及びMへの、G44のA又はLへの、S45のA、G、V、L、I、F及びMへの、T45のA、G、V、L、I、F及びMへの、G46のA及びPへの、D47のA、G、V、L、I、F、S、M及びQへの、N48のA、G、V、L、M及びFへの、L49のA、V、C及びGへの、Y49のA、G、V、L、I、F、M及びTへの、F50のA、G、V、L、I及びTへの、A51の、D53のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、V54のA、G、I及びLへの、R55のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、G56のA及びPへの、I57のA、G、V及びMへの、L57のA、V、C、G、M及びFへの、D58のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、P59のA、G及びFへの、E60のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、T及びRへの、E61のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、G62のAへの、R84のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、V88のA及びGへの、I88のA、V、C及びGへの、D94のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S96のA、G、V、I、L、F及びMへの、T104のA、G、V、L、I、F、M及びNへの、A105のLへの、T107のA、G、V、L、I、F、M及びPへの、S107のA、G、V、L、I、F、M及びPへの、L108のA、V、C及びGへの、S109のA、G、V、I、L、F及びMへの、T109のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、G110のAへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、D111のA、G、V、L、I、F、S、Q及びTへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、D141のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G147のAへの、V154のA及びGへの、R179のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、T180のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、T181のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D183のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D184のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、L185のA、G、V及びCへの、S186のA、G、V、I、L、F及びMへの、G187のAへの、R188のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S189のA、G、V、I、L、F及びMへの、D197のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D198のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、R204のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R205のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S247のA、G、V、I、L、F及びMへの、Y247のA、G、V、L、I、F及びMへの、R248のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R250のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R251のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D264のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G264のAへの、並びにT286のA、G、V、L、I、F、M及びSへのアミノ酸残基置換からなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含む。
【0057】
ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子を発現する標的発現細胞に細胞標的化分子の成分としての本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを投与すると、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞死を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、標的生体分子陽性細胞である。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。ある特定のさらなる実施形態については、細胞標的化分子の成分としての本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞に導入されたときに300nM以下の半最大阻害濃度(CD50)値で細胞毒性を示すことができ、及び/又は有意なレベルの志賀毒素細胞毒性を示すことができる。
【0058】
実施形態セット#2-志賀毒素エフェクターポリペプチド足場
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、i)志賀毒素エフェクターポリペプチド及びii)追加のタンパク質性構造を含み、追加のタンパク質性(proteinacoues)構造は、志賀毒素エフェクターポリペプチド中に存在
しないアミノ酸残基、例えば、ユニークなアミノ酸残基、及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分(本書では志賀毒素エフェクターポリペプチド領域若しくは志賀毒素エフェクター領域とも称される)にとってユニークな官能基を有するアミノ酸残基を含む。志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットに由来し、志賀ホロトキシンのいかなる細胞標的化ドメインも、志賀毒素Bサブユニットいかなる部分も含む必要がない。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、細胞内在化を促進すること、細胞侵入後にサイトゾルへの細胞内経路決定を指示すること、リボソームを触媒不活性化、及び細胞毒性から選択される、有意なレベルの1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。
【0059】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、(i)ユニークなアミノ酸を有し、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含まないタンパク質性構造と、(ii)ユニークなアミノ酸を含まず、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含み、タンパク質性構造と志賀毒素エフェクターポリペプチドは、共有結合で互いに連結されている。
【0060】
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、ポリペプチド足場が存在する細胞のゴルジ体への細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチド足場が存在する細胞の小胞体への細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチド足場が存在する細胞のサイトゾルへの細胞内の経路決定を指示すること、ポリペプチド足場と直接的に又は間接的に連結されているカーゴで細胞内の経路決定を指示すること、リボソーム機能を阻害すること、リボソームを酵素的に不活性化すること、及び細胞毒性からなる群から選択される、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクター機能を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、10,000ピコモル濃度以下のIC50値でリボソーム阻害活性を示すことができる。
【0061】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、非天然アミノ酸残基である。
【0062】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、ポリヌクレオチド翻訳によって、例えば、インビトロでのリボソームの作用によって、又は生細胞におけるリボソームの作用によって、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場に組み込まれうる。
【0063】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の内部に位置する。
【0064】
ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、システイン、ヒスチジン、リジン、セレノシステイン、及びピロリン-カルボキシ-リジンからなる群から選択される。
【0065】
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号762~767のいずれか1つを含むか、又はそれから本質的になる。
【0066】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定の実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、システイン、ヒスチジン、リジン、又は通常でない/非天然アミノ酸残基である。ある特定のさらなる実施形態では、ユニークなアミノ酸残基は、核酸翻訳過程によって志賀毒素エフェクターポリペプチド足場に組み込まれうる。
【0067】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定の実施形態では、追加のタンパク質性構造は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと融合される。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、核酸翻訳によって産生されうる。
【0068】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、ユニークなアミノ酸残基の官能基を介して、例えば、細胞標的化結合領域、リンカー、追加の外在性物質、カーゴ、細胞標的化を変化させる薬剤などの、異種分子と、共有結合で連結されている。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、抗生物質、抗原、抗原性物質、細胞毒性薬剤、放射性核種、細胞標的化分子を変化させる薬剤、検出促進剤、色素、T細胞エピトープ、フルオロフォア、免疫原、免疫原性物質、酵素、ジモキシン、脂質、ポリマー、ポリエチレングリコール、血清アルブミン結合剤、小分子化学療法剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、核酸、及びタンパク質-核酸複合体からなる群から選択される。
【0069】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号233~756のいずれか1つから選択される。
【0070】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、i)本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びii)リンカーを含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号233~756のいずれか1つから選択され、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、リンカーをさらに含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号233~756のいずれか1つから選択され、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号757~761のいずれか1つから選択されるリンカーをさらに含む。
【0071】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定の実施形態では、リンカーは、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と融合しているペプチド又はポリペプチドを含む。
【0072】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、1つだけのシステイン、リジン、セレノシステイン、及び/又はピロリン-カルボキシ-リジンを含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、足場内の志賀毒素エフェクターポリペプチドの外部に存在する単一の、ユニークなシステイン又はリジン残基があることを条件に、足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号233~756のいずれか1つから選択され、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号757~761のいずれか1つから選択されるリンカーをさらに含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号762~767のいずれか1つを含むか、又はそれから本質的になる。
【0073】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、当業者に公知のリンカーと融合される。
【0074】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる結合領域と、直接的に又は間接的にどちらかで、融合される。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場のカルボキシ末端と融合される。
【0075】
ある特定の実施形態については、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、エンドソーム区画からゴルジ、小胞体、及び/又はサイトゾル区画への、有意な細胞内の経路決定を示すことができる。
【0076】
ある特定の実施形態については、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、10,000ピコモル濃度以下のIC50値でリボソーム阻害活性を、及び/又は有意なレベルの志賀毒素触媒活性を、示すことができる。
【0077】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定の実施形態については、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、細胞の表面と物理的にカップリングされている少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、細胞標的化ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化ポリペプチドは、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態については、異種分子は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。生体分子標的発現細胞への本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の投与である、ある特定のさらなる実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0078】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の酵素活性を変化させる変異を含み、変異は、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4におけるA231E、N75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K及び/又はW203Aなどの、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、触媒活性を低下させるか又は除去するが、例えば細胞内在化を誘導すること及び/又は細胞内経路決定を指示することなどの、少なくとも1つの他の志賀毒素エフェクター機能を保持する、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の細胞毒性を低下させるか又は除去する。
【0079】
実施形態セット#3-細胞標的化分子
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、(1)本発明の及び/又は上記の志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化剤又は細胞標的化結合領域とを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、コンジュゲートされている部分構造を含む。ある特定のさらなる実施形態では、コンジュゲートされている部分構造は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定の実施形態では、結合領域は、配列番号844~1100のいずれか1つで示されるペプチド又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、配列番号773~817、835~837、及び1105~1108のいずれか1つで示されるポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0080】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、(1)毒素エフェクタータンパク質と、(2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化剤又は細胞標的化結合領域とを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、配列番号757~761及び768~772のいずれか1つのリンカーを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される部分構造を含む、コンジュゲートされている分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn
3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低
密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、配列番号773~817、835~837、及び844~1108のいずれか1つで示されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0081】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、(1)配列番号1~92、830、832、及び1109~1140のいずれか1つで示されるポリペプチドを含むタンパク質性成分と、(2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化剤又は細胞標的化結合領域とを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、コンジュゲートされている部分構造を含む。ある特定のさらなる実施形態では、コンジュゲートされている部分構造は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、配列番号844~1100のいずれか1つで示されるペプチド又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、配列番号773~817、835~837、及び1105~1108のいずれか1つで示されるポリペプチドから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0082】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、(1)いかなるシステイン残基も含まない志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化結合領域と、(3)連続したポリペプチドを形成するために志賀毒素エフェクターポリペプチドと細胞標的化結合領域の間に融合されているタンパク質性リンカーとを含む。ある特定のさらなる実施形態では、リンカーは、1つ又は2つ以上のシステイン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、リンカーは、配列番号757~760のいずれか1つからなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、1つ又は2つ以上のシステイン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、配列番号807~808及び812~813のいずれか1つのアミノ酸269~499、配列番号814~815及び818~829のいずれか1つのアミノ酸269~519、並びに配列番号816~817のいずれか1つのアミノ酸268~386からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号721~756のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、1つだけの遊離システイン残基(すなわち、異種分子とのコンジュゲーションに利用可能なユニークなシステイン残基)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、システイン残基と、直接的に又は間接的にどちらかで、共有結合で連結されている異種分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定の実施形態では、結合領域は、配列番号844~1100のいずれか1つで示されるペプチド又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0083】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、(1)いかなるシステイン及び/又はセレノシステイン残基も含まない志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化結合領域と、(3)連続したポリペプチドを形成するために志賀毒素エフェクターポリペプチドと細胞標的化結合領域の間に融合されているタンパク質性リンカーとを含む。ある特定のさらなる実施形態では、リンカーは、1つ又は2つ以上のセレノシステイン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、1つ又は2つ以上のセレノシステイン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号721~756のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、1つだけのセレノシステイン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、セレノシステイン残基と、直接的に又は間接的にどちらかで、共有結合で連結されている異種分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定の実施形態では、結合領域は、配列番号844~1100のいずれか1つで示されるペプチド又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0084】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、(1)いかなるリジン残基も含まない志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化結合領域と、(3)連続したポリペプチドを形成するために志賀毒素エフェクターポリペプチドと細胞標的化結合領域の間に融合されているタンパク質性リンカーとを含む。ある特定のさらなる実施形態では、リンカーは、1つ又は2つ以上のリジン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、リンカーは、配列番号757~761及び771~772のいずれか1つからなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、1つ又は2つ以上のリジン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、配列番号807~808及び812~813のいずれか1つのアミノ酸269~499、配列番号814~815及び818~829のいずれか1つのアミノ酸269~519、並びに配列番号816~817のいずれか1つのアミノ酸268~386からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号233~720のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、1つだけのリジン残基(すなわち、異種分子とのコンジュゲーションに利用可能なユニークなリジン残基)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、リジン残基と、直接的に又は間接的にどちらかで、共有結合で連結されている異種分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テ
ネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポ
タンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定の実施形態では、結合領域は、配列番号844~1100のいずれか1つで示されるペプチド又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0085】
ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、(1)いかなるリジン及び/又はピロリン-カルボキシ-リジン残基も含まない志賀毒素エフェクターポリペプチドと、(2)少なくとも1つの細胞外標的生体分子に特異的に結合することができる細胞標的化結合領域と、(3)連続したポリペプチドを形成するために志賀毒素エフェクターポリペプチドと細胞標的化結合領域の間に融合されているタンパク質性リンカーとを含む。ある特定のさらなる実施形態では、リンカーは、1つ又は2つ以上のピロリン-カルボキシ-リジン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、リンカーは、配列番号757~761及び771~772のいずれか1つからなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、1つ又は2つ以上のピロリン-カルボキシ-リジン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、配列番号807~808及び812~813のいずれか1つのアミノ酸269~499、配列番号814~815及び818~829のいずれか1つのアミノ酸269~519、並びに配列番号816~817のいずれか1つのアミノ酸268~386からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号233~720のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、1つだけのピロリン-カルボキシ-リジン残基(すなわち、異種分子とのコンジュゲーションに利用可能なユニークなピロリン-カルボキシ-リジン残基)を含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、ピロリン-カルボキシ-リジン残基と、直接的に又は間接的にどちらかで、共有結合で連結されている異種分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、異種分子は、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質、及び検出促進剤からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、相補性決定領域3断片(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、CD20、PD-L1、CD22、CD40、CD79、CD25、CD30、HER2/neu/ErbB2、EGFR、EpCAM、EphB2、前立腺特異的膜抗原、Cripto、エンドグリン、線維芽細胞活性化タンパク質、Lewis-Y、CD19、CD21、CS1/SLAMF7、CD33、CD52、EpCAM、CEA、gpA33、ムチン、TAG-72、炭酸脱水酵素IX、葉酸結合タンパク質、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、ガングリオシドGM2、ガングリオシドLewis-Y2、VEGFR、アルファVベータ3、アルファ5ベータ1、ErbB1/EGFR、Erb3、c-MET、IGF1R、EphA3、TRAIL-R1、TRAIL-R2、RANKL、FAP、テネイシン、CD64、メソセリン、BRCA1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、NY-ESO-1、CDK-4、ベータ-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE6、SART-1、PRAME、癌胎児抗原、前立腺特異的抗原、前立腺幹細胞抗原、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ、EphA2、HER3/ErbB-3、MUC1、MART-1/MelanA、gp100、チロシナーゼ関連抗原、ヒトチロシナーゼ関連タンパク質1、HPV-E7、エプスタイン・バーウイルス抗原、Bcr-Abl、アルファ-フェトプロテイン抗原、17-A1、膀胱腫瘍抗原、SAIL、CD38、CD15、CD23、CD53、CD88、CD129、CD183、CD191、CD193、CD244、CD294、CD305;C3AR、FceRIa、ガレクチン-9、mrp-14、シグレック-8、シグレック-10、CD49d、CD13、CD44、CD54、CD63、CD69、CD123、TLR4、FceRIa、IgE、CD107a、CD203c、CD14、CD68、CD80、CD86、CD105、CD115、F4/80、ILT-3、ガレクチン-3、CD11a-c、GITRL、MHCクラスII、CD284-TLR4、CD107-Mac3、CD195-CCR5、HLA-DR、CD16/32、CD282-TLR2、及び前述のもののいずれかのあらゆる免疫原性断片からなる群から選択される、細胞外標的生体分子と結合することができる。ある特定の実施形態では、結合領域は、配列番号844~1100のいずれか1つで示されるペプチド又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態では、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞を殺滅することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。
【0086】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、カルボキシ末端を有する志賀毒素A1断片由来領域を有し、A1断片領域のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフをさらに含む。
【0087】
実施形態セット#1及び#3の、ある特定の実施形態では、分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端のカルボキシ末端側に位置する分子部分構造を含む。
【0088】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子、又はそのポリペプチド成分は、KDELファミリーのメンバーのカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフを含む。ある特定のさらなる実施形態については、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフは、KDEL(配列番号1142)、HDEF(配列番号1143)、HDEL(配列番号1144)、RDEF(配列番号1145)、RDEL(配列番号1146)、WDEL(配列番号1147)、YDEL(配列番号1148)、HEEF(配列番号1149)、HEEL(配列番号1150)、KEEL(配列番号1151)、REEL(配列番号1152)、KAEL(配列番号1153)、KCEL(配列番号1154)、KFEL(配列番号1155)、KGEL(配列番号1156)、KHEL(配列番号1157)、KLEL(配列番号1158)、KNEL(配列番号1159)、KQEL(配列番号1160)、KREL(配列番号1161)、KSEL(配列番号1162)、KVEL(配列番号1163)、KWEL(配列番号1164)、KYEL(配列番号1165)、KEDL(配列番号1166)、KIEL(配列番号1167)、DKEL(配列番号1168)、FDEL(配列番号1169)、KDEF(配列番号1170)、KKEL(配列番号1171)、HADL(配列番号1172)、HAEL(配列番号1173)、HIEL(配列番号1174)、HNEL(配列番号1175)、HTEL(配列番号1176)、KTEL(配列番号1177)、HVEL(配列番号1178)、NDEL(配列番号1179)、QDEL(配列番号1180)、REDL(配列番号1181)、RNEL(配列番号1182)、RTDL(配列番号1183)、RTEL(配列番号1184)、SDEL(配列番号1185)、TDEL(配列番号1186)、SKEL(配列番号1187)、STEL(配列番号1188)、及びEDEL(配列番号1189)からなる群から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入されたとき、例えば、KDELファミリーのいかなるカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフも含まないことを除いて細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子などの、参照分子の細胞毒性より強い細胞毒性を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、例えば参照細胞標的化分子などの、参照分子と比較して、例えば、4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれより強い細胞毒性などの、よりよく最適化された細胞毒性強度で、細胞毒性を示す。ある特定のさらなる実施形態では、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によりアッセイして、第二の標的陽性細胞集団に対する参照細胞標的化分子の細胞毒性より3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍又はそれより強い。
【0089】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの挿入された又は埋め込まれた異種エピトープをさらに含む。
【0090】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ、2つ又は3つの破壊された内在性のB細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域をさらに含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つ、2つ又は3つの内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域を含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも1つの破壊された内在性のB細胞及び/又はCD4+T細胞エピトープ領域であって、少なくとも1つの挿入された又は埋め込まれた異種エピトープと重複しないエピトープ領域をさらに含む。
【0091】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1又は配列番号2の1~15;配列番号3の3~14;配列番号3の26~37;配列番号1又は配列番号2の27~37;配列番号1又は配列番号2の39~48;配列番号3の42~48;配列番号1,配列番号2又は配列番号3の53~66;配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115;配列番号1又は配列番号2の141~153;配列番号3の140~156;配列番号1又は配列番号2の179~190;配列番号3の179~191;配列番号3の204;配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218;配列番号3の240~260;配列番号1又は配列番号2の243~257;配列番号1又は配列番号2の254~268;配列番号3の262~278;配列番号3の281~297;配列番号1又は配列番号2の285~293;配列番号1又は配列番号2の4~33;配列番号1又は配列番号2の34~78;配列番号1又は配列番号2の77~103;配列番号1又は配列番号2の128~168;配列番号1又は配列番号2の160~183;配列番号1又は配列番号2の236~258;及び配列番号1又は配列番号2の274~293;並びに志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊をさらに含む。ある特定のさらなる実施形態では、少なくとも1つの破壊された内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又は全てと重複するアミノ酸残基のカルボキシ末端トランケーションである破壊はない。
【0092】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異であって、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニットアミノ酸残基:L49、D197、D198、R204及びR205の群から選択される、B細胞免疫原性アミノ酸残基の変異をさらに含む。
【0093】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、埋め込まれた又は挿入された、異種T細胞エピトープは、(i)少なくとも1つの破壊されるエピトープ領域の一部又は全てと重複する配列のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号1若しくは配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1若しくは配列番号2の27~37、配列番号1若しくは配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、及び配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3の53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域;(ii)配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218;並びに(iii)配列番号3の240~260、配列番号1若しく
は配列番号2の243~257、配列番号1若しくは配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、及び配列番号1若しくは配列番号2の285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を破壊する。
【0094】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する変異であって、(i)少なくとも1つの破壊されるエピトープ領域の一部又は全てと重複する配列のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号1若しくは配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1若しくは配列番号2の27~37、配列番号1若しくは配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、及び配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3の53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域;(ii)配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218;並びに(iii)少なくとも
1つの破壊されるエピトープ領域の一部又は全てと重複する配列のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号3の240~260、配列番号1若しくは配列番号2の243~257、配列番号1若しくは配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、及び配列番号1若しくは配列番号2の285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択されるB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における変異を含む。
【0095】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニットの群から選択される、少なくとも1つの内在性エピトープ領域の破壊を含む。
【0096】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、異種、MHCクラスI限定、T細胞エピトープを含まない。MHCクラスI限定、T細胞エピトープは当技術分野において公知であり、当業者はそのようなT細胞エピトープを予測することができる。異種という用語は、例えば、所望の志賀毒素エフェクターポリペプチドに最も密接に関連している野生型志賀毒素Aサブユニットなどの、野生型志賀毒素Aサブユニット中に本来存在しない、MHCクラスI限定、T細胞エピトープを
指す。
【0097】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上の、内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域を含む。
【0098】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の破壊は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基置換を含む。
【0099】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上の、内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する複数のアミノ酸残基置換を含む。
【0100】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、少なくとも1つ、2つ、3つ、又は4つの破壊は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する、内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域における複数のアミノ酸残基置換を含む。
【0101】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの破壊は、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は9つ以上のアミノ酸残基置換を含み、並びにここでの少なくとも1つの置換は、配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の6、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の12、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の44、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の46、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の49、配列番号1又は配列番号2の50、配列番号1又は配列番号2の51、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の54、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の56、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の57、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1又は配列番号2の84、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の88、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1又は配列番号2の104、配列番号1又は配列番号2の105、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の107、配列番号1又は配列番号2の108、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の111、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の141、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の147、配列番号1又は配列番号2の154、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の197、配列番号1又は配列番号2の198、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号1又は配列番号2の248、配列番号3の250、配列番号1又は配列番号2の251、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286、並び
に志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等のアミノ酸残基からなる群から選択される、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニットアミノ酸残基に存在してもよい。ある特定のさらなる実施形態では、少なくとも2つの破壊各々は、配列番号1又は配列番号2の1、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の4、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の8、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の9、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の11、配列番号1又は配列番号2の33、配列番号1又は配列番号2の43、配列番号1又は配列番号2の45、配列番号1又は配列番号2の47、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の48、配列番号1又は配列番号2の49、配列番号1又は配列番号2の53、配列番号1又は配列番号2の55、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の58、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の59、配列番号1又は配列番号2の60、配列番号1又は配列番号2の61、配列番号1又は配列番号2の62、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の96、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の109、配列番号1又は配列番号2の110、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の112、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の147、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の179、配列番号1又は配列番号2の180、配列番号1又は配列番号2の181、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の183、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の184、配列番号1又は配列番号2の185、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の186、配列番号1又は配列番号2の187、配列番号1又は配列番号2の188、配列番号1又は配列番号2の189、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、配列番号1又は配列番号2の247、配列番号3の247、配列番号3の250、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の264、配列番号1又は配列番号2の265、及び配列番号1又は配列番号2の286、並びに志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等のアミノ酸残基からなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する、少なくとも1つのアミノ酸残基置換を含む。
【0102】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)少なくとも1つの破壊された内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の一部又は全てと重複するアミノ酸残基のアミノ末端トランケーションである破壊がない、配列番号1若しくは配列番号2の1~15、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1若しくは配列番号2の27~37、配列番号1若しくは配列番号2の39~48、配列番号3の42~48、及び配列番号1、配列番号2若しくは配列番号3の53~66、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域;(ii)配列番号1、配列番号2又は配列番号3の94~115、配列番号1又は配列番号2の141~153、配列番号3の140~156、配列番号1又は配列番号2の179~190、配列番号3の179~191、配列番号3の204、配列番号1又は配列番号2の205、及び配列番号3の210~218;並びに(iii)少なくとも1つの破壊さ
れた内在性のB細胞及び/又はT細胞エピトープ及び/又はエピトープ領域の一部又は全てと重複するアミノ酸残基のカルボキシ末端トランケーションである破壊がない、配列番号3の240~260、配列番号1若しくは配列番号2の243~257、配列番号1若しくは配列番号2の254~268、配列番号3の262~278、配列番号3の281~297、及び配列番号1若しくは配列番号2の285~293、又は志賀毒素Aサブユニット若しくはその誘導体中の同等の領域からなる群から選択される、少なくとも3つの内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊を含む。
【0103】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも2つの、内在性の、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域の破壊を含み、ここで、各破壊は、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含み、並びに内在性の、B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域は、配列番号3の3~14、配列番号3の26~37、配列番号1又は配列番号2の27~37、配列番号1又は配列番号2の39~
48、配列番号3の42~48、配列番号1、配列番号2又は配列番号3の53~66、及び志賀毒素Aサブユニット又はその誘導体中の同等の領域からなる、本来の位置にある志賀毒素Aサブユニット領域の群から選択される。
【0104】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、埋め込まれた又は挿入された、異種のT細胞エピトープ領域は、本書に記載されるいかなる内在性B細胞及び/又はT細胞エピトープ領域も破壊しない。
【0105】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの破壊は、DからAへの、DからGへの、DからVへの、DからLへの、DからIへの、DからFへの、DからSへの、DからQへの、DからMへの、DからRへの、EからAへの、EからGへの、EからVへの、EからLへの、EからIへの、EからFへの、EからSへの、EからQへの、EからNへの、EからDへの、EからMへの、EからRへの、FからAへの、FからGへの、FからVへの、FからLへの、FからIへの、GからAへの、GからPへの、HからAへの、HからGへの、HからVへの、HからLへの、HからIへの、HからFへの、HからMへの、IからAへの、IからVへの、IからGへの、IからCへの、KからAへの、KからGへの、KからVへの、KからLへの、KからIへの、KからMへの、KからHへの、LからAへの、LからVへの、LからGへの、LからCへの、NからAへの、NからGへの、NからVへの、NからLへの、NからIへの、NからFへの、PからAへの、PからGへの、PからFへの、RからAへの、RからGへの、RからVへの、RからLへの、RからIへの、RからFへの、RからMへの、RからQへの、RからSへの、RからKへの、RからHへの、SからAへの、SからGへの、SからVへの、SからLへの、SからIへの、SからFへの、SからMへの、TからAへの、TからGへの、TからVへの、TからLへの、TからIへの、TからFへの、TからMへの、TからSへの、VからAへの、VからGへの、YからAへの、YからGへの、YからVへの、YからLへの、YからIへの、YからFへの、YからMへの、及びYからTへのアミノ酸残基置換からなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含む。ある特定のさらなる実施形態では、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換は、DからAへの、DからGへの、DからVへの、DからLへの、DからIへの、DからFへの、DからSへの、DからQへの、EからAへの、EからGへの、EからVへの、EからLへの、EからIへの、EからFへの、EからSへの、EからQへの、EからNへの、EからDへの、EからMへの、EからRへの、GからAへの、HからAへの、HからGへの、HからVへの、HからLへの、HからIへの、HからFへの、HからMへの、KからAへの、KからGへの、KからVへの、KからLへの、KからIへの、KからMへの、KからHへの、LからAへの、LからGへの、NからAへの、NからGへの、NからVへの、NからLへの、NからIへの、NからFへの、PからAへの、PからGへの、PからFへの、RからAへの、RからGへの、RからVへの、RからLへの、RからIへの、RからFへの、RからMへの、RからQへの、RからSへの、RからKへの、RからHへの、SからAへの、SからGへの、SからVへの、SからLへの、SからIへの、SからFへの、SからMへの、TからAへの、TからGへの、TからVへの、TからLへの、TからIへの、TからFへの、TからMへの、TからSへの、YからAへの、YからGへの、YからVへの、YからLへの、YからIへの、YからFへの、及びYからMへのアミノ酸残基置換からなる群から選択される。
【0106】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、少なくとも1つの破壊は、K1のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T4のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D6のA、G、V、L、I、F、S、Q及びRへの、S8のA、G、V、I、L、F及びMへの、T9のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、S9のA、G、V、L、I、F及びMへの、K11のA、G、V、L、I、F、M及びHへの、T12のA、G、V、I、L、F、M、S及びKへの、S12のA、G、V、I、L、F及びMへの、S3
3のA、G、V、L、I、F、M及びCへの、S43のA、G、V、L、I、F及びMへの、G44のA又はLへの、S45のA、G、V、L、I、F及びMへの、T45のA、G、V、L、I、F及びMへの、G46のA及びPへの、D47のA、G、V、L、I、F、S、M及びQへの、N48のA、G、V、L、M及びFへの、L49のA、V、C及びGへの、Y49のA、G、V、L、I、F、M及びTへの、F50のA、G、V、L、I及びTへの、A51への、D53のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、V54のA、G、I及びLへの、R55のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、G56のA及びPへの、I57のA、G、V及びMへの、L57のA、V、C、G、M及びFへの、D58のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、P59のA、G及びFへの、E60のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M、T及びRへの、E61のA、G、V、L、I、F、S、Q、N、D、M及びRへの、G62のAへの、R84のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、V88のA及びGへの、I88のA、V、C及びGへの、D94のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、S96のA、G、V、I、L、F及びMへの、T104のA、G、V、L、I、F、M及びNへの、A105のLへの、T107のA、G、V、L、I、F、M及びPへの、S107のA、G、V、L、I、F、M及びPへの、L108のA、V、C及びGへの、S109のA、G、V、I、L、F及びMへの、T109のA、G、V、I、L、F、M及びSへの、G110のAへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、D111のA、G、V、L、I、F、S、Q及びTへの、S112のA、G、V、L、I、F及びMへの、D141のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G147のAへの、V154のA及びGへの、R179のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、T180のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、T181のA、G、V、L、I、F、M及びSへの、D183のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D184のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、L185のA、G、V及びCへの、S186のA、G、V、I、L、F及びMへの、G187のAへの、R188のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S189のA、G、V、I、L、F及びMへの、D197のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、D198のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、R204のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R205のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、S247のA、G、V、I、L、F及びMへの、Y247のA、G、V、L、I、F及びMへの、R248のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R250のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、R251のA、G、V、L、I、F、M、Q、S、K及びHへの、D264のA、G、V、L、I、F、S及びQへの、G264のAへの、並びにT286のA、G、V、L、I、F、M及びSへのアミノ酸残基置換からなる群から選択される、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を含む。
【0107】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、直接的に又は間接的にどちらかで、互いに連結される。
【0108】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態については、本発明の分子及び/又はその志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素A1断片若しくは野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む参照細胞標的化分子に匹敵する細胞内経路決定効率を示すことができ、並びに/又は細胞のエンドソーム開始位置から小胞体及び/若しくはサイトゾルへの、有意なレベルの、細胞内の経路決定活性を示すことができる。
【0109】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態については、本発明の分子は、(i)野生型志賀毒素A1断片若しくは野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドに匹敵する触媒活性レベルを示すことができ、(ii)10,000ピコモル濃度以下の半最大阻害濃度(IC50)値でリボソーム阻害活性を示すことができ、及び/又は(iii)有意なレ
ベルの志賀毒素触媒活性を示すことができる。
【0110】
実施形態セット#1及び#3の、ある特定の実施形態では、分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と会合している分子部分構造を含む。ある特定の実施形態では、分子部分構造は、結合領域を含むか又はそれからなる。ある特定の実施形態では、分子部分構造は、少なくとも1つのアミノ酸を含み、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、分子部分構造の少なくとも1つのアミノ酸残基に連結されている。ある特定のさらなる実施形態では、分子部分構造及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、融合され、その結果、連続したポリペプチドを形成する。
【0111】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する、最小フーリン切断部位における1つ又は2つ以上の変異を含む。ある特定の実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、最小フーリン切断部位の少なくとも1つのアミノ酸残基の一部又は全てと重複する配列のアミノ末端トランケーションではない。ある特定の実施形態では、最小フーリン切断部位における変異は、R/Y-x-x-Rフーリン切断モチーフにおける少なくとも1つのアミノ酸残基のアミノ酸欠失、挿入及び/又は置換である。ある特定のさらなる実施形態では、破壊されたフーリン切断モチーフは、野生型志賀毒素Aサブユニットに対する少なくとも1つの変異を含み、変異は、1)志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)若しくは志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)の248~251に又は2)志賀様毒素2のAサブユニット(配列番号3)の247~250に本来位置する領域、又は任意の志賀毒素Aサブユニット内の同等のアミノ酸配列位置における、少なくとも1つのアミノ酸残基を変化させるものである。ある特定のさらなる実施形態では、変異は、正電荷を有さないアミノ酸残基でのアルギニン残基のアミノ酸残基置換である。
【0112】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、分子部分構造は、天然に存在する志賀毒素の志賀毒素A2断片に由来するペプチド及び/又はポリペプチドを含む。
【0113】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然に存在するAサブユニットに対する1つ又は2つ以上の変異であって、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を変化させる変異を含み、変異は、少なくとも1つのアミノ酸残基欠失、挿入又は置換から選択される。ある特定のさらなる実施形態では、天然に存在するAサブユニットに対する変異は、志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性活性を低下させるか又は除去するが、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、細胞内在化を促進すること及び/又はある特定の細胞内区画への細胞内の経路決定を指示することなどの、少なくとも1つの他の志賀毒素エフェクター機能を保持する。ある特定のさらなる実施形態では、天然に存在するAサブユニットに対する変異は、例えば、配列番号1、配列番号2又は配列番号3におけるA231E、R75A、Y77S、Y114S、E167D、R170A、R176K、及び/又はW203Aなどの、少なくとも1つのアミノ酸残基置換から選択される。
【0114】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態については、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(i)サイトゾル、小胞体及びリソソームから選択される、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の細胞内区画に、経路決定することができ、(ii)初期エンドソーム区画から、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞のプロテアソームに、エピトープを細胞内送達することができ、及び/又は(iii)志賀毒素エ
フェクターポリペプチドが存在する細胞の初期エンドソーム区画から、MHCクラスI分子に、エピトープを細胞内送達することができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞の表面へのMHCクラスI分子による提示のためにCD8+T細胞エピトープを細胞内送達することができる。
【0115】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、免疫グロブリン型結合領域を含む結合領域を含み、免疫グロブリン型結合領域は、(a)配列番号844、850、857、863、869、875、881、885、891、897、903、909、915、921、927、933、939、948、954、960、966、972、978、984、990、996、1002、1008、1014、1020、1026、1032、1035、1041、1044、1050、1056、1062、1065、1071、1077、1083、1089及び1095のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから本質的になるHCDR1、配列番号845、851、856、858、864、876、886、892、898、904、910、916、922、928、934、940、949、955、961、967、973、979、985、991、997、1003、1009、1015、1021、1027、1036、1042、1045、1051、1057、1063、1066、1072、1078、1084、1090及び1096で示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから本質的になるHCDR2、又は配列番号846、852、859、865、870、872、877、882、887、893、899、905、911、917、923、929、935、941、950、956、962、968、974、980、982、986、992、998、1004、1010、1016、1022、1028、1037、1043、1046、1064、1052、1058、1067、1073、1079、1085、1091及び1097のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから本質的になるHCDR3を含む、重鎖可変(V)ドメイン;及び(b)配列番号847、853、860、866、871、888、894、900、906、912、918、924、930、936、942、947、953、959、965、971、977、983、989、995、1001、1007、1013、1019、1025、1032、1038、1047、1053、1059、1068、1074、1080、1086、1092及び1098のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから本質的になるLCDR1、配列番号848、854、861、867、883、889、895、901、907、913、919、925、931、937、948、954、960、966、972、978、984、990、996、1002、1008、1014、1020、1026、1033、1039、1048、1054、1060、1069、1075、1081、1087、1093及び1099のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから本質的になるLCDR2、又は配列番号849、855、862、868、884、890、896、902、908、914、920、926、932、938、949、955、961、967、973、979、985、991、997、1003、1009、1015、1021、1027、1034、1040、1049、1055、1061、1070、1076、1082、1088、1094及び1100のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはそれらから本質的になるLCDR3を含む、軽鎖可変(V)ドメインからなる群から選択される、ポリペプチドを含む。
【0116】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、配列番号807~808及び812~813のいずれか1つのアミノ酸269~499を含むか若しくはそれらから本質的になる結合領域、配列番号814~815及び818~829のいずれか1つのアミノ酸269~519を含むか若しくはそれらから本質的になる結合領域、又は配列番号816~817のいずれか1つのアミノ酸268~386を含むか若しくはそれらから本質的になる結合領域を含む。
【0117】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端は、細胞標的化分子のポリペプチド成分のアミノ末端にある、及び/又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、志賀毒素エフェクターポ
リペプチドに対して細胞標的化分子のアミノ末端の近位に位置しない。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞標的化分子内で、結合領域が志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端の近位に位置にないように物理的に配置又は配向される。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、細胞標的化分子内の、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端より志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端の近位に位置する。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞毒性でなく、細胞に導入されたとき、例えば、アミノ末端を有し且つ結合領域を含む参照細胞標的化分子、及び前記参照細胞標的化分子のアミノ末端に又はその近位に位置しない志賀毒素エフェクターポリペプチドなどの、参照分子の細胞毒性と比較して、細胞外空間から小胞体の細胞内区画及び/又はサイトゾルへのより高い細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、例えば、参照細胞標的化分子の細胞毒性と比較して4倍、5倍、6倍、9倍、又はそれより強い細胞毒性などの、よりよく最適化された細胞毒性強度で細胞毒性を示す。ある特定のさらなる実施形態については、標的陽性細胞集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性は、CD50値によりアッセイして、第二の標的陽性細胞集団に対する参照細胞標的化分子の細胞毒性より3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍又はそれより強い。ある特定のさらなる実施形態では、参照細胞標的化分子は、KDELファミリーのいかなるカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフも含まない。
【0118】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、脊索動物に導入されたとき、例えば、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の全てについて各々がそのA1断片領域のカルボキシ末端に野生型志賀毒素A1断片及び/又は野生型志賀毒素フーリン切断部位を含むことを除いて細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子などの、参照分子と比較して、インビボで耐容性及び安定性の向上を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞毒性でなく、分子部分構造が細胞毒性である。
【0119】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、少なくとも1つのペプチド及び/又はポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、免疫グロブリン型結合領域であるか又はそれを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、自律Vドメイン、シングルドメイン抗体断片(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン(VH又はVドメイン断片)、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変断片(scFv)、抗体可変断片(Fv)、断片相補性決定領域3(CDR3)、拘束FR3-CDR3-FR4ポリペプチド(FR3-CDR3-FR4)、Fd断片、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、抗原結合性断片(Fab)、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)、テネイシンIII型ドメイン(TNfn3)、アンキリン反復モチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR-A)、リポカリン(アンチカリン)、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ-Bクリスタリン由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド(アフィチン)、Fyn由来SH2ドメイン、ミニタンパク質、C型レクチン様ドメイン足場、改変抗体模倣物、及び結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作されたあらゆる対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む。
【0120】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態、それによる、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への本発明の細胞標的化分子の投与については、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすことができる。細胞外標的
生体分子の存在又はレベルに関して異なる2つの異なる細胞型集団への本発明の細胞標的化分子の投与である、ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞型を、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされていない細胞型に対するCD50の少なくとも1/3又はそれ未満のCD50で、細胞死させることができる。ある特定のさらなる実施形態、それによる、メンバーが細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている第一の細胞集団、及びメンバーが結合領域のいかなる細胞外標的生体分子にも物理的にカップリングされていない第二の細胞集団への、本発明の細胞標的化分子の投与については、前記第二の細胞集団のメンバーと比べて前記第一の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果は、少なくとも3倍大きい。ある特定の実施形態、それによる、メンバーが細胞標的化分子の結合領域の有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている第一の細胞集団、及びメンバーが結合領域の有意な量のいかなる細胞外標的生体分子にも物理的にカップリングされていない第二の細胞集団への、細胞標的化分子の投与については、前記第二の細胞集団のメンバーと比べて前記第一の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果は、少なくとも3倍大きい。ある特定の実施形態、それによる、標的生体分子陽性細胞の第一の集団、及びメンバーが細胞標的化分子の結合領域の有意な量の標的生体分子を細胞表面で発現しない第二の細胞集団への、細胞標的化分子の投与については、第二の細胞集団のメンバーと比べて第一の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果は、少なくとも3倍大きい。
【0121】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、標的生体分子と物理的にカップリングされている第一の細胞集団への、及び第二の細胞集団への、細胞標的化分子の投与時、前記第二の細胞集団のメンバーと比べて前記第一の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果は、少なくとも3倍大きい。ある特定のさらなる実施形態については、第一の細胞集団のメンバーは、標的生体分子陽性細胞である。ある特定の実施形態については、第一の細胞集団のメンバーは、細胞表面で、細胞外標的生体分子を過剰発現する。ある特定の実施形態については、第二の細胞集団のメンバーは、細胞外生体分子と物理的にカップリングされておらず、及び/又は標的生体分子陰性である。本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、メンバーが標的生体分子陽性である第一の細胞集団、及びメンバーが標的生体分子陽性である第二の細胞集団への、細胞標的化分子の投与時、第二の細胞集団のメンバーと比べて第一の細胞集団のメンバーに対する細胞標的化分子の細胞毒性効果は、少なくとも3倍である。
【0122】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、いかなる志賀毒素エフェクターポリペプチド成分も有さない細胞標的化分子からなる参照分子より効率的に細胞内在化を誘導することができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の投与は、次のうちの1つ又は2つ以上をもたらす:(1)細胞内部への細胞標的化分子の内在化、(2)細胞のサイトゾルへの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定、(3)細胞のリボソーム機能の破壊、及び(4)細胞の殺滅。ある特定のさらなる実施形態については、内在化は、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で起こる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞標的化分子は、標的生体分子と結合している該細胞標的化分子を含む分子複合体の細胞内在化を誘導する。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0123】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入されたときに300nM以下の半最大阻害濃度(CD50)値で細胞毒性を示
すことができ、及び/又は有意なレベルの志賀毒素細胞毒性を示すことができる。
【0124】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、埋め込まれた又は挿入された異種D8+T細胞エピトープを、MHCクラスI分子が結合したエピトープの細胞表面提示のために、細胞のMHCクラスI提示経路に送達することができる。
【0125】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端のカルボキシ末端と会合している細胞毒性分子部分構造をさらに含む。ある特定の実施形態では、細胞毒性分子部分構造は、例えば、当業者に公知の及び/又は本書に記載される小分子化学療法剤、抗新生物剤、細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤及び/又はチューブリン阻害剤などの、細胞毒性薬剤である。ある特定のさらなる実施形態では、細胞毒性分子部分構造は、10,000、5,000、1,000、500又は200pM未満の濃度で、細胞毒性である。
【0126】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、ジスルフィド結合でない少なくとも1つの共有結合により志賀毒素エフェクターポリペプチドに、直接的に又は間接的にどちらかで、連結されている。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、単一の連続ポリペプチドを形成するように志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端と、直接的に又は間接的にどちらかで、連結されている。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、免疫グロブリン型結合領域である。
【0127】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞に導入されたとき、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の全てについて各々が野生型志賀毒素A1断片を含むことを除いて細胞標的化分子からなる参照細胞標的化分子などの、参照分子の細胞毒性に匹敵する細胞毒性を示すことができる。
【0128】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。
【0129】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、分子部分構造は、A1断片領域のカルボキシ末端を立体的にカバーする。ある特定のさらなる実施形態では、分子部分構造は、結合領域を含む。
【0130】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端のカルボキシ末端側に位置する結合領域及び/又は分子部分構造を含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域及び/又は分子部分構造の質量は、少なくとも4.5kDa、6、kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれより高い。
【0131】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、該細胞標的化分子が本書で述べられる適切なレベルの志賀毒素生物活性(例えば、細胞毒性及び/又は細胞内の経路決定)を保持することを条件に、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれより高い質量を有する結合領域を含む。
【0132】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、細胞標的化分子が本書
で述べられる適切なレベルの志賀毒素生物活性を保持することを条件に、例えば、少なくとも4.5kDa、6kDa、9kDa、12kDa、15kDa、20kDa、25kDa、28kDa、30kDa、41kDa、50kDa、100kDa、又はそれより高い質量を有する分子部分構造などを含む比較的大きい分子部分構造内に含まれる。
【0133】
実施形態セット#3の、ある特定のさらなる実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、例えば、アミノ末端を有し且つ結合領域を含む参照細胞標的化分子、及び参照細胞標的化分子のアミノ末端に又はその近位に位置しない志賀毒素エフェクターポリペプチドなどの、参照分子の細胞毒性と比較して、低い細胞毒性強度を示し(すなわち、ある特定の陽性標的細胞型に導入されたとき、1000nM、500nM、100nM、75nM、又は50nMの細胞標的化分子濃度で細胞集団の1%細胞死を超える細胞毒性を示すことができず)、細胞に導入されたとき、細胞外空間から小胞体の細胞内区画及び/又はサイトゾルへのより高い細胞内経路決定効率を示すことができる。ある特定のさらなる実施形態では、参照細胞標的化分子は、KDELファミリーのいかなるカルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフも含まない。
【0134】
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の上記志賀毒素エフェクターポリペプチドのいずれか1つ、本発明の上記志賀毒素エフェクターポリペプチド足場のいずれか1つ、及び/又は本発明の上記細胞標的化分子のいずれか1つ、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物がある。
【0135】
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の上記志賀毒素エフェクターポリペプチドのいずれか1つ、本発明の上記志賀毒素エフェクターポリペプチド足場のいずれか1つ、及び/又は本発明の細胞標的化分子、及び検出促進剤を含む、組成物がある。ある特定のさらなる実施形態は、検出促進剤が異種エピトープであり、細胞標的化分子がその異種エピトープを含む、本発明の細胞標的化分子である。
【0136】
ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、1,000ナノモル濃度以下のIC50値で細胞毒性活性を、及び/又は有意なレベルの志賀毒素細胞毒性を、示すことができる。
【0137】
標的発現細胞への細胞標的化分子の投与である、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすこと、すなわち、細胞を殺滅することができる。本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞外標的生体分子を発現する標的発現細胞に細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、標的生体分子陽性細胞である。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。この細胞殺滅活性は、細胞標的化分子の1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性に依存することもあり、しないこともある。
【0138】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、遊離システイン残基を欠いている免疫グロブリン領域のみを含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、いかなるシステイン残基も含まない免疫グロブリン領域のみを含む。
【0139】
本発明の実施形態は、いかなる天然に存在する志賀ホロトキシン又は志賀毒素Aサブユニットも包含するようには意図されていない。実施形態セット#1~3の、ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、天然に存在する志賀毒素Bサブユニットを含まない。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、ネイティブ志賀毒素Bサブユニットの機能性結合ドメインを含むか又はそれから本質的になる、いかなるポ
リペプチドも含まない。むしろ、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、志賀毒素Aサブユニット由来領域は、細胞標的化を果たすために異種結合領域と機能的に会合している。
【0140】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、少なくとも2つの埋め込まれた又は挿入された異種エピトープをさらに含む。
【0141】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、次のセットから選択される野生型志賀毒素Aサブユニットに対するアミノ酸残基置換のセットを含まない:(1)R248H及びR251H、(2)R248G及びR251G、(3)A246G、S247A、A253G及びS254A、並びに(4)A246G、S247A、R248G、R251G、A253G及びS254A。
【0142】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットにおける247~252に本来位置する領域の欠失を含まない。実施形態セット#2~#11の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、野生型志賀毒素Aサブユニットにおける245~247及び253~255に本来位置する領域の欠失を含まない。
【0143】
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端の位置及び/又は志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端にいかなる追加の外在性物質も含まず、この追加の外在性物質は、抗原及び/又は異種のCD8+T細胞エピトープ-ペプチドを表す。
【0144】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、免疫細胞表面受容体の断片を含む、カルボキシ末端の結合領域を含まない。
【0145】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、アミノ酸残基19~183に対応するヒトD4の断片を含まない。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、I型膜貫通糖タンパク質である、ヒトCD4の断片を含まない。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、ヒト免疫細胞表面共受容体の断片を含まない。
【0146】
実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、リガンドを含まない。実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、ケモカイン又はTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL,TNF-related apoptosis-inducing ligand)
も、その受容体結合断片も、含まない。実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、ヒトケモカイン又はヒトTRAILも、その受容体結合断片も、含まない。実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、リガンドも、その受容体結合断片も、含まない。実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、ケモカイン又はTNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)も、それらの受容体結合断片も、含まない。実施形態セット#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、ヒトCCケモカインも、その受容体結合断片も、含まない。実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、ヒトCCケモカインCCL2(Bose S, Cho J et al., Arch Pharm Res 36: 1039-50 (2013)を参照されたい)を含まない。実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、結合領域は、ヒトCCケモカインCCL2も、その受容体結合断片も含まず、StxAのアミノ酸75~247からなるカルボキシ末端志賀毒素エフェクターポリペプチドを含まない。本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、結合領域は、StxA(配列番号2)のアミノ酸75~247からなるカルボキシ末端志賀毒素エフェクターポリペプチドと融合している、ヒトCCケモカインCCL2も、その受容体結合断片も含まない。実施形態セット#3の実施形態では、結合領域は、ヒトTRAILも、その受容体結合断片も、含まない。
【0147】
実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、SLT-1A(配列番号1)若しくはStxA(配列番号2)の本来の位置242、又はSLT-1A(配列番号1)及び/若しくはStxA(配列番号2)のどちらかに由来する志賀毒素エフェクターポリペプチドにおける同等の位置に、アミノ酸置換を含まない。実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、C242A、C261A、C242S及び/又はC261Sの、いかなる組合せも含まない。ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは全て、その内在性のネイティブシステイン残基を、それらの本来の位置、又はSLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)又はSLT-2(配列番号3)に由来する志賀毒素エフェクターポリペプチドにおける同等の位置に含む。
【0148】
本発明の分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチド足場が、異種分子(例えば、カーゴ、又は細胞標的化分子を変化させる薬剤)と連結されている、実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、異種分子は、本発明の分子のポリペプチドのアミノ末端の遊離アミン基と連結されていない。
【0149】
本発明の分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチド足場が、異種分子(例えば、カーゴ、又は細胞標的化分子を変化させる薬剤)と連結されている、実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、異種分子は、本発明の分子のポリペプチドのカルボキシ末端の遊離カルボキシル基と連結されていない。
【0150】
本発明の分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチド足場が、ユニークなアミノ酸残基の官能基を介して異種分子と連結されている、実施形態セット#1~#3の、ある特定の実施形態では、官能基は、アミン基又はカルボキシル基でない。
【0151】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、例えば、免疫系因子、細胞及び/又は組織への細胞外シグナル伝達に関与することなどの、Fc領域機能を保持する免疫グロブリンFc領域又はFc領域エフェクターを含まない。Fc領域機能の非限定的な例は、T細胞を活性化すること、TNF-アルファのようなサイトカインなどの炎症性メディエーターの放出を刺激すること、補体依存性細胞毒性(CDC,complement dependent
cytotoxicity)、抗体依存性細胞毒性(ADCC,antibody-dependentcytotoxicity)、及びFc領域を含む分子が細胞外結合している細胞の貪食を開始させることを含む。
【0152】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、いかなる免疫グロブリン重鎖定常領域、免疫グロブリン軽鎖定常領域、免疫グロブリンCドメイン、免疫グロブリンC1ドメイン、免疫グロブリンC2ドメイン、及び/又は免疫グロブリンC3ドメインも、含まない。ある特定のさらなる実施形態では、細胞標的化分子は、(1)CDR、(2)ABR、並びに/又は(3)自律Vドメイン、シングルドメイン抗体(sdAb)ドメイン、重鎖抗体ドメイン断片(VH断片若しくはVドメイン断片)及び一本鎖可変断片(scFv)中に存在するあらゆる免疫グロブリンドメイン、から選択される免疫グロブリンドメイン以外の、いかなる免疫グロブリンドメインも含まない。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、いかなる免疫グロブリンドメインも、又は免疫グロブリンに由来するいかなるポリペプチドも含まない。
【0153】
細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞標的化分子は、細胞への追加
の外在性物質の送達に利用されうる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、コンジュゲートされている分子を含み、このコンジュゲートされている分子は、追加の外在性物質を表す。追加の外在性物質を含む、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている1つ又は2つ以上の細胞に細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分、若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で、1つ又は2つ以上の細胞に内在化する。ある特定のさらなる実施形態については、1つ又は2つ以上の細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、1つ又は2つ以上の細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0154】
追加の外在性物質を含む、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている1つ又は2つ以上の細胞に細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、1つ又は2つ以上の細胞に、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分、若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で内在化し、追加の外在性物質を細胞の内部に送達する。ある特定のさらなる実施形態については、1つ又は2つ以上の細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、1つ又は2つ以上の細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0155】
追加の外在性物質を含む、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている複数の細胞に、細胞標的化分子を、細胞表面占有率5又は38パーセント~50パーセントに相当する多細胞標的化分子濃度で投与すると、細胞標的化分子の大部分が、複数の細胞に、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で、内在化する。ある特定のさらなる実施形態については、複数の細胞のメンバーは、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、複数の細胞のメンバーは、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0156】
追加の外在性物質を含む、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている1つ又は2つ以上の細胞に細胞標的化分子を投与すると、細胞標的化分子は、1つ又は2つ以上の細胞に、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分、若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で内在化し、追加の外在性物質を細胞の内部に送達する。ある特定のさらなる実施形態については、1つ又は2つ以上の細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、1つ又は2つ以上の細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0157】
追加の外在性物質を含む、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている複数の細胞に、細胞標的化分子の、細胞表面占有率5又は38パーセント~50パーセントに相当する多細胞標的化分子濃度で投与すると、細胞標的化分子の大部分が、複数の細胞に、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で内在化し、追加の外在性物質を細胞の内部に送達する。ある特定のさらなる実施形態については、複数の細胞のメンバーは、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、複数の細胞のメンバーは、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0158】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、コンジュゲートされている分子を含み、このコンジュゲートされている分子は、抗生物質、細胞毒性薬剤、検出促進剤、
ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、及びタンパク質-核酸複合体からなる群から選択される、追加の外在性物質を表す。ある特定のさらなる実施形態では、追加の外在性物質は、酵素を含むタンパク質である。ある特定の他の実施形態では、追加の外在性物質は、低分子阻害RNA(siRNA,small inhibiting RNA)又はマイクロRNA(miRNA,microRNA)として機能するポリヌクレオチドである。ある特定の実施形態では、追加の外在性物質は、例えば病原体からの抗原などの抗原である、ペプチドである。ある特定の実施形態では、抗原は、細菌タンパク質、がんの際に変異されるタンパク質、がんの際に異常に発現されるタンパク質、T細胞相補性決定領域ポリペプチド、及びウイルスタンパク質からなる群から選択される、分子に由来する。ある特定の実施形態では、細胞毒性薬剤は、化学療法剤、細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、及び/又はチューブリン阻害剤である。
【0159】
本発明は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は本発明の細胞標的化分子を含み且つ少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体を含む医薬組成物、並びにそのような医薬組成物の製造における及び本書にさらに記載されるような本発明の方法におけるそのような細胞標的化分子の又はそれを含む組成物の使用も提供する。本発明のある特定の実施形態は、本発明の任意の細胞標的化分子と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物である。
【0160】
本発明のある特定の実施形態の中には、細胞、細胞型、組織、器官、疾患、障害、状態、対象及び/又は患者についての情報を収集するための検出促進剤をさらに含む、本発明の細胞標的化分子を含む診断用組成物がある。
【0161】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子、並びにそれらの組成物以外に、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは細胞標的化分子又はそれらのポリペプチド成分をコードすることができるポリヌクレオチドは、本発明の範囲内であり、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も、本発明の範囲内である。本発明の発現ベクターを含む宿主細胞は、例えば、本発明の細胞標的化分子又はそのポリペプチド成分若しくは断片を組換え発現により産生する方法において、使用されうる。同様に、本発明の発現ベクターを含む宿主細胞は、例えば、本発明の組成物又はそのポリペプチド成分を産生する方法において、使用されうる。
【0162】
本発明は、固体支持体上に固定化されている本発明のあらゆる物の組成物も包含する。本発明の物の組成物のそのような配置は、例えば、本書に記載の分子をスクリーニングする方法において、利用されうる。
【0163】
加えて、本発明は、細胞を殺滅する方法であって、細胞を本発明の細胞標的化分子及び/又は本発明の医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。ある特定の実施形態については、細胞を接触させるステップは、インビトロで行われる。ある特定の他の実施形態については、細胞を接触させるステップは、インビボで行われる。本発明の細胞殺滅方法の、ある特定の実施形態については、方法は、細胞標的化分子の結合領域が結合した細胞外標的生体分子の細胞表面存在及び/発現レベルに関して異なる、異なる細胞を含む細胞の混合物を接触させたとき、細胞及び/又は細胞型を他の細胞及び/又は細胞型より優先的に選択的に殺滅することができる。
【0164】
加えて、本発明は、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞への細胞標的化分子の細胞内在化を誘導する方法であって、細胞を、本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、及び/又は本発明の診断用組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。細胞内在化誘導方法の、ある特定のさらなる実施形態については、細胞を接
触させるステップは、インビトロで行われる。ある特定の他の実施形態については、細胞を接触させるステップは、例えば患者体内などの、インビボで行われる。細胞内在化誘導方法の、ある特定のさらなる実施形態については、細胞標的化分子の細胞内在化は、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で行われる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0165】
ある特定の実施形態については、本発明は、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている複数の細胞への細胞標的化分子の細胞内在化を誘導する方法であって、複数の細胞を、本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、及び/又は本発明の診断用組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。細胞内在化誘導方法の、ある特定のさらなる実施形態については、細胞を接触させるステップは、インビトロで行われる。ある特定の他の実施形態については、細胞を接触させるステップは、例えば患者体内などの、インビボで行われる。細胞内在化誘導方法の、ある特定のさらなる実施形態については、細胞標的化分子の細胞内在化は、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で行われる。ある特定の実施形態については、複数の細胞のメンバーは、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0166】
同様に、本発明は、本発明の細胞標的化分子が結合した、細胞表面に局在する標的を内在化する方法であって、標的生体分子が細胞表面に局在している細胞を、本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、及び/又は本発明の診断用組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。細胞表面に局在する標的を内在化する方法の、ある特定のさらなる実施形態については、細胞を接触させるステップは、インビトロで行われる。ある特定の他の実施形態については、細胞を接触させるステップは、例えば患者体内などの、インビボで行われる。細胞表面に局在する標的を内在化する方法の、ある特定のさらなる実施形態については、細胞表面に局在する標的生体分子の内在化は、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で行われる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされる。
【0167】
ある特定の実施形態については、本発明は、本発明の細胞標的化分子が結合した、細胞表面に局在する標的生体分子を内在化する方法であって、標的生体分子が細胞表面に局在している複数の細胞を、本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、及び/又は本発明の診断用組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。細胞表面に局在する標的生体分子を内在化する方法の、ある特定のさらなる実施形態については、複数の細胞を接触させるステップは、インビトロで行われる。ある特定の他の実施形態については、複数の細胞を接触させるステップは、例えば患者体内などの、インビボで行われる。細胞表面に局在する標的生体分子を内在化する方法の、ある特定のさらなる実施形態については、細胞表面に局在する標的生体分子の内在化は、複数の細胞の大部分の細胞で、約5時間、4時間、3時間、2時間、1時間、30分若しくはそれ未満で、細胞に適した生理的温度で、及び/又は約摂氏37度で行われる。ある特定のさらなる実施形態については、複数の細胞のメンバーは、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、複数の細胞のメンバーは、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0168】
ある特定の実施形態については、本発明は、対象において、細胞標的化分子が結合した、細胞表面に局在する標的生体分子の内在化を誘導する方法であって、本発明の細胞標的化分子、本発明の医薬組成物、及び/又は本発明の診断用組成物を対象に投与するステッ
プを含む方法を提供する。
【0169】
加えて、本発明は、細胞内部に外在性物質を送達するための方法であって、追加の外在性物質を含む本発明の細胞標的化分子、追加の外在性物質を含む本発明の細胞標的化分子を含む本発明の医薬組成物、及び/又は追加の外在性物質を含む本発明の細胞標的化分子を含む本発明の診断用組成物と細胞をインビトロ又はインビボどちらかで接触させるステップを含む方法を提供する。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0170】
ある特定の実施形態については、本発明は、細胞内部に外在性物質を送達する方法であって、追加の外在性物質を含む本発明の細胞標的化分子、追加の外在性物質を含む本発明の細胞標的化分子を含む本発明の医薬組成物、及び/又は追加の外在性物質を含む本発明の細胞標的化分子を含む本発明の診断用組成物を対象に投与するステップを含む方法を提供する。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。ある特定のさらなる実施形態については、細胞は、標的陽性細胞である。ある特定の実施形態については、細胞は、有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている。
【0171】
ある特定のさらなる実施形態については、(1)「細胞」、(2)「標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞」、(3)「細胞表面で標的生体分子を発現する細胞」、(4)「標的陽性細胞」、(5)「複数の細胞」、(6)「標的生体分子と物理的にカップリングされている複数の細胞」、(7)「細胞の集団」、(8)「標的陽性細胞の集団」、又は(9)「1つ又は2つ以上の細胞」と称される、細胞(単数)、細胞(複数)、及び細胞の集団は、(a)細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている、(b)細胞表面で、(i)細胞外部分に細胞標的化分子の結合領域が結合している、(ii)膜貫通ドメインを有する、及び(iii)依然として細胞と物理的にカップリングされている標的生体分子を発現する、(c)標的陽性である、並びに/又は(d)細胞外部分に細胞標的化分子の結合領域が結合している有意な量の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞(単数)、細胞(複数)、及び細胞の集団である。
【0172】
疾患、障害及び/又は状態の診断、予後予測、及び/又は特徴付けのための本発明のいかなる組成物の使用も、本発明の範囲内である。本発明の特定の実施形態の中には、がん、腫瘍、異常増殖状態又は免疫障害の治療又は予防における本発明の1つ又は2つ以上の物の組成物(例えば、本発明の医薬組成物)の使用がある。本発明のある特定の実施形態の中には、がん、腫瘍、異常増殖状態又は免疫障害の治療又は予防のための医薬品の製造における本発明の1つ又は2つ以上の物の組成物(例えば、本発明の医薬組成物)の使用がある。
【0173】
本発明は、対象における疾患、障害及び/又は状態を治療する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の本発明の細胞標的化分子及び/又は本発明の医薬組成物を投与するステップを含む方法をさらに提供する。本発明のこれらの治療方法の、ある特定の実施形態については、本発明の方法を使用して治療される疾患、障害又は状態は、細胞表面で標的生体分子を発現する、細胞、がん細胞、腫瘍細胞及び/又は免疫細胞に関わる。
本発明のこれらの治療方法の、ある特定の実施形態については、本発明の 方法を使用して治療される疾患、障害又は状態は、がん、腫瘍、異常増殖状態、及び/又は免疫障害である。本発明のこれらの治療方法の、ある特定の実施形態については、治療される疾患は、骨がん(例えば、多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(例えば、脳がん、神経線維腫症、又は神経膠芽腫)、消化器がん(例えば、胃がん又は結腸直腸がん)、胚細胞がん(例えば、卵巣がん及び精巣がん)、腺がん(例えば、膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば、上咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓・尿路がん(例えば、腎がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば、中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、又はメラノーマ)、子宮がん、AIDS、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、自閉症、心臓発生、クローン病、糖尿病、エリテマトーデス、胃炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病(GVHD,graft-versus-host disease)、グレーブス病、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、ループスエリテマトーデス、リンパ増殖性障害、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、全身性ループスエリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、血管炎、細胞増殖、炎症、白血球活性化、白血球接着、白血球走化性、白血球成熟、白血球遊走、ニューロン分化、急性リンパ芽球性白血病(ALL,acute lymphoblastic leukemia)、T細胞急性リンパ球性白血病/リンパ腫(ALL,acute lymphocytic leukemia/lymphoma)、急性骨髄性白血病、急性骨髄系白血病(AML,acutemyeloid leukemia)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL,B-cell chroniclymphocytic leukemia)、B細胞前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫(BL,Burkitt’s lymphoma)、慢性リンパ球性白血病(CLL,chroniclymphocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病(CML-BP,chronicmyelogenous leukemia)、慢性骨髄系白血病(CML,chronic myeloidleukemia)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病(HCL,hairycell leukemia)、ホジキンリンパ腫(HL,Hodgkin’s Lymphoma)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM,multiplemyeloma)、ナチュラルキラー細胞白血病、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(nodal marginalB-cell lymphoma)、非ホジキンリンパ腫(NHL,Non-Hodgkin’s lymphoma)、形質細胞白血病、形質細胞腫、原発性滲出性リンパ腫、前リンパ球性白血病、前骨髄球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(TCL,T-cell lymphoma)、重鎖病、単クローン性免疫グロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン沈着症、骨髄異形成症候群(MDS,myelodusplastic syndromes)、くすぶり型多発性骨髄腫、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症からなる群から選択される。本発明のこれらの治療方法の、ある特定の実施形態については、治療される疾患は、血液がん、白血病、リンパ腫、メラノーマ及び骨髄腫からなる群から選択される。本発明のこれらの治療方法の、ある特定の実施形態については、治療される免疫障害は、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、グレーブス病、グレーブス眼症、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、ループスエリテマトーデス、多発性硬化症、視神経脊髄炎スペクトラム障害、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA,N-methyl D-aspartate)受容体脳炎、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS,opsoclonus myoclonus syndrome)、発作性夜間ヘモグロビン尿症、結節性多発動脈炎、多発性関節炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強膜炎、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎からなる群から選択される。本発明のこれらの治療方法の、ある特定の実施形態については、治療されるがんは、急性骨髄系白血病(急性骨髄性白血病又はAML)、急性非リンパ球性白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病(B細胞CLL,B-cell chronic lymphocytic leukemia)、B細胞リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫(B細胞NHL,B-cell non-Hodgkin’s lymphoma)、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(BCP-ALL,B-cell precursor acute lymphoblastic leukemia、又はB-ALL)、B細胞前リンパ球性白血病(B-PLL,B-cell prolymphocytic leukemia)、バーキットリンパ腫(BL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄系白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL,diffuse large B-cell lymphoma、又はDLBL)、濾胞性リンパ腫(FL,follicular lymphoma)、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL又はHD)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL,mantle celllymphoma)、多発性骨髄腫(MM)、結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(NLPHL,nodularlymphocyte predominant Hodgkin’s lymphoma)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質芽球性リンパ腫、形質細胞新生物(plasma cell neoplasma)、形質細胞性骨髄腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫(B-LBL,precursorB-lymphoblastic lymphoma)、小リンパ球性リンパ腫(SLL,smalllymphocytic lymphoma)、T細胞大顆粒リンパ球性白血病(T-LGLL,T-celllarge granular lymphocyte leukemia)、T細胞リンパ腫(TCL)、T細胞前リンパ球性白血病(T-PLL,T-cell prolymphocytic leukemia)、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症(WM,Waldenstrom’smacroglobulinemia)からなる群から選択される。
【0174】
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の細胞標的化分子、及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドコンジュゲートを産生する方法であって、本発明の細胞標的化分子又は志賀毒素エフェクターポリペプチドを異種分子及び/又は追加の外在性物質とコンジュゲートさせるステップを含む方法がある。
【0175】
本発明のある特定の実施形態の中には、疾患、障害又は状態の診断、予後予測又は特徴付けに有用な情報を収集するための検出促進剤を含む本発明の細胞標的化分子を使用する方法がある。本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の細胞標的化分子及び/又は診断用組成物を使用して細胞を検出する方法であって、細胞を本発明の細胞標的化分子及び/又は診断用組成物と接触させるステップと、細胞標的化分子及び/又は診断用組成物の存在を検出するステップとを含む方法がある。ある特定の実施形態については、細胞を接触させるステップは、インビトロ及び/又はエクスビボで行われる。ある特定の実施形態については、細胞を接触させるステップは、インビボで行われる。ある特定の実施形態については、細胞を検出するステップは、インビトロ及び/又はエクスビボで行われる。ある特定の実施形態については、細胞を検出するステップは、インビボで行われる。ある特定のさらなる実施形態については、情報は、次のうちの1つ又は2つ以上についての診断、予後予測、又は特徴付けに有用である:骨がん(例えば、多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(例えば、脳がん、神経線維腫症、又は神経膠芽腫)、消化器がん(例えば、胃がん又は結腸直腸がん)、胚細胞がん(例えば、卵巣がん及び精巣がん)、腺がん(例えば、膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば、上咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓・尿路がん(例えば、腎がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば、中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、又はメラノーマ)、子宮がん、AIDS、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、自閉症、心臓発生、クローン病、糖尿病、エリテマトーデス、胃炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、ループスエリテマトーデス、リンパ増殖性障害、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、全身性ループスエリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、血管炎、細胞増殖、炎症、白血球活性化、白血球接着、白血球走化性、白血球成熟、白血球遊走、ニューロン分化、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、T細胞急性リンパ球性白血病/リンパ腫(ALL)、急性骨髄性白血病、急性骨髄系白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、B細胞前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫(BL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML-BP)、慢性骨髄系白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM)、ナチュラルキラー細胞白血病、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(nodal marginal B-cell lymphoma)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞白血病、形質細胞腫、原発性滲出性リンパ腫、前リンパ球性白血病、前骨髄球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(TCL)、重鎖病、単クローン性免疫グロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン沈着症、骨髄異形成症候群(MDS)、くすぶり型多発性骨髄腫、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症。
【0176】
本発明のある特定の実施形態の中には、本発明の物の組成物を含むキットであって、使用説明書、追加の試薬、及び/又は医薬送達デバイスを含んでいてもよいキットがある。キットは、試料又は対象における細胞型(例えば、腫瘍細胞)を検出するための試薬及び他のツールをさらに含むこともある。
【0177】
本発明のこれら及び他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び付属の図に関連してよりよく理解されることになる。本発明の上述の要素を個々に組み合わせて又は自由に除去して、以降にそのような組合せ又は除去に反対するいかなる記述もなければ、本発明の他の実施形態を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
図1】本発明の例示的な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド;それらを含む細胞標的化分子;本発明のリンカー及び/又は細胞標的化結合領域を含む細胞標的化分子;並びに本発明のコンジュゲート連結細胞標的化分子を描示する図である。図1中の例示的分子の描示は、本発明の限られた実施形態セットの構造的特徴についてのある特定の一般的な配置の例証を目的としたものである。これらの例示的分子は、本発明の分子のいずれか構造的特徴及び/又は成分の配置に関しても完全に確定的であるように意図されたものでなく、いずれもそのように見なされるべきでものでないことを、理解されたい。図1の概略図に示されている特徴要素の相対的なサイズ、位置又は数は、単純化されたものである。例えば、特徴要素X、Y及びZの相対位置は、固定されない。同様に、特徴要素X、Y及びZの総数は、固定されない。図1における概略図は、本発明のいずれかの実施形態における分子構造の相対サイズ、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは細胞標的化分子に対するY若しくはZの相対サイズ、又は細胞標的化結合ドメインに対する志賀毒素エフェクタードメインに対するリンカーの相対サイズに関するいかなる情報も正確に表現するようには意図されていない。図1-Aは、例えば、システイン、リジン及び/又はヒスチジン残基などの、部位特異的コンジュゲーションのための1つ又は2つ以上の改変アミノ酸残基を有する志賀毒素Aサブユニットエフェクタードメインを描示する。図1-A中の「X」は、野生型志賀毒素に対して位置異所性の及び/又はユニークなアミノ酸残基であって、志賀毒素エフェクタードメインに改変により導入されたものだが、志賀毒素エフェクタードメインの必要機能を損なわせない、アミノ酸残基を表す。図1-Aは、例えば、血清アルブミン及び/又はポリエチレングリコール分子のような、薬物又は特性を変化させる薬剤のような、カーゴなどの、1つ又は2つ以上の分子(「Y」又は「Z」と表示されている)とコンジュゲートされている、志賀毒素Aサブユニットエフェクタードメインも描示する。図1-Bは、部位特異的コンジュゲーションのための1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を各々が含む、本発明の例示的な細胞標的化分子であって、例えば、残基が、志賀毒素エフェクタードメイン、リンカー、及び/又は細胞標的化結合ドメイン内に位置する、細胞標的化分子を描示する図である。図1-Aの場合と同様に、図1-Bもまた、例えば、血清アルブミン及び/又はポリエチレングリコール分子のような、薬物又は特性を変化させる薬剤のような、カーゴなどの、「Y」又は「Z」と表示されている、1つ又は2つ以上の他の分子とコンジュゲートされている分子を描示する。図1-B中の「X」は、部位特異的コンジュゲーションのために分子に改変により導入された、及び/又はそれに対して、ユニークさのために同じ型の他のアミノ酸残基が分子から改変により除去された、例えば部位特異的システイン、リジン、ヒスチジン又はセレノシステイン残基などの、アミノ酸残基だが、細胞標的化分子の必要機能を損なわせないアミノ酸残基を表す。
図2】本発明の例示的な細胞標的化分子STL-1A-Cys(p)::scFv1が、細胞に標的化された強力且つ特異的な細胞毒性を示したことを図示する図である。各細胞株についての細胞の生存パーセントを、それぞれの細胞に投与した(nMでの)細胞標的化分子濃度の常用対数に対してプロットした。図2は、本発明の細胞標的化分子STL-1A-Cys(p)::scFv1が、試験された濃度で標的陰性細胞型に対して細胞毒性を示さなかったことを示す。標的化されていない野生型志賀毒素A1断片についてのこのアッセイからの細胞毒性結果も示されている。
図3】本発明の例示的な細胞標的化分子STL-1A-Cys(p)-D1::scFv2が、参照分子STL-1A-D1::scFv2(配列番号838)の細胞毒性強度に匹敵する強力な細胞毒性を示したことを図示する図である。細胞の生存パーセントを、細胞に投与した(nMでの)細胞標的化分子濃度の常用対数に対してプロットした。0個のシステイン残基を有する、標的化されていない、脱免疫化された志賀毒素A1断片についてのこのアッセイからの細胞毒性結果も、示されている。
図4】本発明の例示的な細胞標的化分子SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、及びSLT-1A-D1::scFv2-結合ドメイン-Cys2(配列番号812)が、標的陽性細胞型に対して、参照細胞標的化分子SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)に匹敵する細胞毒性を示したことを図示する図である。細胞の生存パーセントを、細胞に投与した(nMでの)細胞標的化分子濃度の常用対数に対してプロットした。0個のシステイン残基を有する、標的化されていない、脱免疫化された志賀毒素A1断片についてのこのアッセイからの細胞毒性結果も、示されている。
図5-6】様々な試料中に存在する共有結合還元性種に対する非共有結合還元性種の存在を分析するための還元試料又は非還元試料のどちらかの電気泳動後の、反復、クマシー染色、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS,sodium dodecyl sulfate)、ポリアクリルアミドゲルの写真を示す図である。図5~6中、左側は、還元及び変性条件下で泳動された、クマシー染色SDS-PAGEゲルを示し、右側は、非還元、変性条件下で泳動された、反復クマシー染色SDS-PAGEゲルを示す。図の説明文に、反復ゲルレーン各々にロードされて泳動された試料が列挙されている。「MWマーカー」と記されている第一のレーンは、タンパク質分子量ラダーの泳動パターンを示し、各ラダータンパク質バンドの近似サイズが、キロダルトン(kDa)で表示されている。還元されていないゲルに見られるが還元されたゲルには見られない、より大きい分子を表す分子量バンドは、試料中のタンパク質種間で形成された還元性ジスルフィド結合を示す。これは、ある分子のユニークなシステイン残基が、ホモ二量体及び多量体複合体を形成するための第二の分子の別のユニークなシステイン残基との分子間結合に利用可能であることを示す。 図5は、本発明の種々の例示的な組成物中に存在するタンパク質性分子のゲル電気泳動により分析された、本発明の例示的な細胞標的化分子組成物中に存在する種々のタンパク質性種についてのサイズを示す。図5中の、2~6の番号が付けられたレーンにロードされて泳動された試料は、図の説明文に示されている(レーン番号#n)細胞標的化分子の調製物名-x):#2)SLT-1A-D1::scFv3(配列番号839)、#3)SLT-1A-D1-C242::scFv3(配列番号837)、#4)SLT-1A-Cys5-D1::scFv3(配列番号778)、#5)SLT-1A-Cys3-D1::scFv3(配列番号779)、及び#6)SLT-1A-Cys2-D1::scFv3(配列番号780)。 図6は、本発明の種々の例示的な組成物中に存在するタンパク質性分子のゲル電気泳動により分析された、本発明の例示的な細胞標的化分子組成物中に存在する種々のタンパク質性種についてのサイズを示す。図6中の、2~10の番号が付けられたレーンにロードされて泳動された試料は、図の説明文に示されている(レーン番号#n)細胞標的化分子の調製物名-x):#2)SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)、#3)SLT-1A-Cys6-D1::scFv2(配列番号774)、#4)SLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号776)、#5)SLT-1A-Cys9-D1::scFv2(配列番号777)、#6)SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、#7)SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、#8)SLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2(配列番号812)、#9)SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)、及び#10)SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)。図6は、分析されたSLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)試料が、主として、非共有結合性二量体複合体に含まれていたこと、及びSLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)試料中のタンパク質が、主として、酸化還元感受性のものに含まれていたことを示す。
図7】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC,size exclusion chromatography)により分析された、本発明の例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)を含む本発明の例示的な組成物の試料中に存在する種々の分子種のサイズを図示する図である。図7は、x軸の下の表示により示される溶出体積(mL)に対してプロットされた、SECカラムに流された後に溶出した物質の280ナノメートル(nm)での紫外線の吸光度を、ミリ吸光度単位(mAU,milli-absorbanceunit)で示す。x軸の上の番号付けは、画分番号を示した。加えて、図7は、SECにより分析された、本発明のこの例示的な組成物の細胞標的化分子純度を示す。
図8】サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した、本発明の例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)を含む本発明の例示的な組成物の試料中に存在する種々の分子種のサイズを図示する図である。図7は、x軸の下の表示により示される溶出体積(mL)に対してプロットされた、SECカラムに流された後に溶出した物質の280ナノメートル(nm)での紫外線の吸光度を、ミリ吸光度単位(mAU)で示す。x軸の上の番号付けは、画分番号を示す。加えて、図8は、SECにより分析された、本発明のこの例示的な組成物の細胞標的化分子純度を示す。
図9-11】本発明の例示的なカーゴ連結細胞標的化分子、又は対照分子で処置した細胞試料の蛍光活性化細胞選別(FACS, fluorescence-activated cell sorting)プロファイルオーバーレイを図示する図である。平均蛍光強度(MFI,mean fluorescent intensity)として測定した、FACS FL1-Aチャネルにより検出された相対蛍光単位(RFU,relative fluoresecent unit)での蛍光強度(x軸)に対して、細胞数又は「イベント」(y軸)をプロットした。黒色の線は、カーゴ連結細胞標的化分子又は抗体対照で処置した細胞からのデータを示し、灰色の線は、陰性細胞集団(アイソタイプ対照試料)からのデータを示す。図9~10は、触媒活性であっても、損なわれていても、カーゴ連結SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)のバリアントが、2つの異なる細胞型の標的-2陽性細胞と結合したことを示す。加えて、図9~10は、触媒活性であっても、損なわれていても、カーゴ連結SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)のバリアントが、標的-2陽性細胞と結合し、モノクローナル抗体陽性対照「抗標的mAb-FITC」と同様の特性を有したことを示す。図11は、触媒活性であっても、損なわれていても、カーゴ連結SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)のバリアントが、アイソタイプ陰性対照に匹敵する標的-2陰性細胞と結合したこと、すなわち、これらの分子が、この細胞型との特異的結合を示さなかったことを示す。
図12-14】異なる細胞型への投与後の本発明の色素連結細胞標的化分子SLT-1A-Cys5-D1::scFv2_Alexa-555及びIA-SLT-1A-Cys5-D1::scFv2_Alexa-555の局在の顕微鏡画像を示す図である。画像は、青色で示されている4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)の発光を検出するためのものと、赤色で示されているAlexa Fluor(登録商標)555(Alexa-555)の発光を検出するためのものである、2つの蛍光シグナルの融合画像である。図12中の試験された細胞は、細胞株Cの標的-2陽性細胞であった。図13中の試験された細胞は、細胞株Gの標的-2陽性細胞であった。図12~13の画像は、両方の細胞標的化分子が、細胞株C及び細胞株Gの細胞である2つの標的-2陽性細胞型の投与から1時間以内に、標的細胞に侵入したことを示す。図14中の試験された細胞は、細胞株Hの標的-2陰性細胞であった。図14は、これらの細胞標的化分子が、試験された条件下で、検出可能な量で、標的陰性細胞に結合も侵入もしなかったことを示す。
図15】カーゴ分子のコンジュゲーション前及び後の本発明の例示的な細胞標的化分子(SLT-1A-Cys5-D1::scFv2)の電気泳動後の、クマシー染色SDSポリアクリルアミドゲルの写真を示す図である。図の説明文に、ゲルレーン各々にロードされて泳動された試料が列挙されている。最初と最後のレーンは、タンパク質分子量ラダーの泳動パターンを示し、各ラダータンパク質バンドの近似サイズが、左側にキロダルトン(kDa)で表示されている。レーン#4は、単独の細胞標的化分子を示し、レーン#3及び#5は、2つの異なるカーゴと連結されている同じ細胞標的化分子を示す。
図16】本発明の例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)が、カーゴと連結されていても、いなくても、参照分子SLT-1A- D1::scFv2(配列番号838)の細胞毒性強度及び特異性に匹敵する、細胞に標的化された強力且つ特異的な細胞毒性を示したことを図示する図である。各細胞株についての細胞の生存パーセントを、それぞれの細胞に投与した(ng/nMでの)細胞標的化分子濃度の常用対数に対してプロットした。図16は、本発明の細胞標的化分子SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)が、カーゴに連結されていても、いなくても、試験した濃度で、標的陰性細胞型に対して、参照分子SLT-1A- D1::scFv2(配列番号838)と同様の細胞毒性を示さなかったことを図示する図である。
図17】本発明の例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Lys1-D3-バリアント-1::scFv4(配列番号818)、SLT-1A-Lys1-D3-バリアント-2::scFv4(配列番号819)、SLT-1A-Lys1-D3-バリアント4::scFv4(配列番号820)、SLT-1A-Lys2-D3-バリアント-1::scFv4(配列番号821)、SLT-1A-Lys2-D3-バリアント2::scFv4(配列番号822)及びSLT-1A-Lys2-D3-バリアント-5::scFv4(配列番号823)が、参照分子SLT-1A-D3::scFv4(配列番号828)の細胞毒性強度及び特異性に匹敵する、細胞に標的化された強力且つ特異的な細胞毒性を示したことを図示する図である。加えて、図17は、本発明の例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-21::scFv4(配列番号824)、SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-27::scFv4(配列番号825)及びSLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-40::scFv4(配列番号826)が、参照分子SLT-1A-D3::scFv4(配列番号828)の細胞毒性強度及び特異性に匹敵する、細胞に標的化された強力且つ特異的な細胞毒性を示したことを図示する。各細胞株についての細胞の生存パーセントを、それぞれの細胞に投与した(ng/nMでの)細胞標的化分子濃度の常用対数に対してプロットした。
図18】本発明の細胞標的化分子SLT-1A-Lys1-D3-バリアント-1::scFv4(配列番号818)、SLT-1A-Lys1-D3-バリアント-2::scFv4(配列番号819)、SLT-1A-Lys1-D3-バリアント4::scFv4(配列番号820)、SLT-1A-Lys2-D3-バリアント-1::scFv4(配列番号821)、SLT-1A-Lys2-D3-バリアント2::scFv4(配列番号822)、SLT-1A-Lys2-D3-バリアント-5::scFv4(配列番号823)、SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-21::scFv4(配列番号824)、SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-27::scFv4(配列番号825)及びSLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-40::scFv4(配列番号826)が、試験された濃度で、標的陰性細胞型に対して、参照分子SLT-1A-D3::scFv4(配列番号828)と同様の細胞毒性を示さなかったことを示す図である。各細胞株についての細胞の生存パーセントを、それぞれの細胞に投与した(ng/nMでの)細胞標的化分子濃度の常用対数に対してプロットした。
図19】本発明の例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Lys(null)-D4-バリアント-42::scFv4(配列番号827)が、参照分子SLT-1A-D3::scFv4(配列番号828)及びSLT-1A-D5::scFv4(配列番号829)の細胞毒性強度及び特異性に匹敵する、細胞に標的化された強力且つ特異的な細胞毒性を示したことを図示する図である。各細胞株についての細胞の生存パーセントを、それぞれの細胞に投与した(ng/nMでの)細胞標的化分子濃度の常用対数に対してプロットした。
【発明を実施するための形態】
【0179】
本発明は、例証となる非限定的な実施形態、及び付属の図への参照を使用して、以降、より詳細に説明される。しかし、本発明を多くの異なる形態で実施することができ、下記に示す実施形態に限定されるとみなすべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が行き届いたものになるように、また本発明の範囲を当業者に知らせるために提供される。
【0180】
本発明をより容易に理解することができるように、ある特定の用語が下記で定義される。さらなる定義が、発明の詳細な説明の中で見いだされることもある。
【0181】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1
つの(an)」及び「その(the)」は、文脈による別段の明白な指図がない限り、単数及
び複数両方の指示対象を含む。
【0182】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、2つの種、A及びB、に言及するときの用語「及び/又は」は、A及びBの少なくとも一方を意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、2つより多くの種、例えばA、B及びC、に言及するときの用語「及び/又は」は、A、B若しくはCのうちの少なくとも1つ、又はA、B若しくはCのあらゆる組み合わせ(この場合は各々の種に単数の可能性又は複数の可能性がある)のうちの少なくとも1つを意味する。
【0183】
本明細書全体を通して、語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しく
は「含むこと(comprising)」などの語尾変化形は、述べられている整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)群の包含を含意するが、他のいかなる整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)群の除外も含意しないと解されるものとする。
【0184】
本明細書を通して、用語「含む(including)」は、「含むがこれらに限定されない(including but not limited to)」を意味するために使用される。「含む」及び「含むが
これらに限定されない」は、同義で使用される。
【0185】
用語「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドに組み込まれているアミノ酸への言及を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸又はアミノ酸残基のあらゆるポリマーを含む。用語「ポリペプチド配列」は、ポリペプチドを物理的に構成する一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。「タンパク質」は、1本又は2本以上のポリペプチド又はポリペプチド「鎖」を含む高分子である。「ペプチド」は、約1
5~20アミノ酸残基未満のサイズの小さいポリペプチドである。用語「アミノ酸配列」は、その長さに依存してペプチド又はポリペプチドを物理的に含む一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。別段の指示がない限り、本書において開示されるポリペプチド及びタンパク質配列は、アミノ末端からカルボキシ末端へのそれらの順序を表すように左から右に記載される。
【0186】
請求項記載の本発明の目的では、及び志賀毒素タンパク質配列又は志賀毒素由来ポリペプチドに関して、用語「野生型」は、例えば病原菌などの、生存種において見出される天然に存在する志賀毒素タンパク質配列であって、存在頻度が最も高いバリアントの1つである志賀毒素タンパク質配列を指す。これは、少なくとも1つの志賀毒素タンパク質バリアントを含むその種の天然に存在する個々の生物の統計的検出力がある数を試料採取する際、やはり天然に存在するが、その同じ種の生物のうちの所与の種の個々の生物の1パーセント未満に見出される、存在頻度の低い志賀毒素タンパク質配列とは対照的である。その天然環境外での天然分離株のクローン増殖は(分離株が、生物学的配列情報を含む生物又は分子であるどうかを問わず)、前記クローン増殖が、その種の天然に存在する集団に存在しない新たな配列多様体を導入しない限り、及び/又は配列バリアントの互いの相対的割合を変化させない限り、天然に存在する要件を変えない。
【0187】
用語「アミノ酸」、「アミノ酸残基」、「アミノ酸配列」又はポリペプチド配列は、天然に存在するアミノ酸(L及びD立体異性体を含む)を含み、別段の制限がない限り、例えば、セレノシステイン、ピロリシン、N-ホルミルメチオニン、ガンマ-カルボキシグルタメート、ヒドロキシプロリン、ハイプシン(hydroxyprolinehypusine)、ピログルタミン酸及びセレノメチオニンなどの、同様に機能することができる20種の通常の天然アミノ酸の公知類似体も含む(例えば、Nagata K et al., Bioinformatics 30: 1681-9 (2014)を参照されたい)。本書で言及されるアミノ酸は、表A中の以下のような簡略表記名
により記載される:
【0188】
【表1】
【0189】
タンパク質、ポリペプチド、又はポリペプチド領域に関して、句「保存的置換」は、全タンパク質、ポリペプチド、又はポリペプチド領域の機能及び構造を実質的に変えない、ポリペプチドの機能及び構造の変化を指す(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties(W. H. Freeman and Company, New York(2nd ed.,1992)を参照され
たい)。
【0190】
本書において使用される場合、用語「発現した/された/される(expressed)」、「
発現すること/させること(expressing)」又は「発現する/させる(express)」及び
その文法上の異形は、ポリヌクレオチド又は核酸のタンパク質への翻訳を指す。発現されたタンパク質は、細胞内に残存し、細胞表面膜の成分になることもあり、又は細胞外空間に分泌されることもある。
【0191】
本書において使用される場合、句「標的発現細胞」は、本発明の細胞標的化分子の結合領域が結合した標的生体分子を細胞表面で発現するあらゆる細胞を包含する。
【0192】
本書において使用される場合、少なくとも1つの細胞表面で有意な量の細胞外標的生体分子を発現する細胞は、「標的陽性細胞」又は「標的+細胞」であり、明記される細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞である。
【0193】
本書において使用される場合、少なくとも1つの細胞表面で有意な量の標的生体分子を発現する細胞は、「標的陽性細胞」又は「標的+細胞」であり、細胞外標的生体分子と物
理的にカップリングされている細胞である。標的生体分子の有意な量は、下記で定義される。
【0194】
本書において使用される場合、記号「α」は、この記号の後に続く生体分子と結合することができる免疫グロブリン型結合領域の簡略表記である。記号「α」は、10-5以下の解離定数(K)により説明される結合親和性でこの記号の後に続く生体分子と結合するその能力に基づく、免疫グロブリン型結合領域の機能的特徴を指すために使用される。
【0195】
請求項記載の本発明に関して、用語「会合した/している/された/されている/される(associated)」、「会合すること/会合させること(associating)」、「連結した
/している/された/されている/される(linked)」、又は「連結すること/させること(linking)」は、単一の分子を形成するように接合、結合、接続、若しくは別様にカ
ップリングした/している/された/されている/される分子の2つ又は3つ以上の成分の状態、又は2分子間の会合、連結、結合及び/若しくは任意の他の接続を生じさせることにより単一分子を形成するように2つの分子を互いに会合させる行為を指す。例えば、用語「連結した/している/された/されている/される」は、単一の分子を形成するように1つ又は2つ以上の原子相互作用により会合した/している/された/されている/される2つ又は3つ以上の成分を指し、原子相互作用は、共有結合性及び/又は非共有結合性でありうる。2成分間の共有結合性会合の非限定的な例は、ペプチド結合及びシステイン-システインジスルフィド結合を含む。2分子成分間の非共有結合性会合の非限定的な例は、イオン結合を含む。
【0196】
本発明の目的では、用語「連結した/している/された/されている/される」は、単一の分子を形成するように1つ又は2つ以上の原子相互作用により会合した/している/された/されている/される2つ又は3つ以上の分子成分を指し、原子相互作用は、少なくとも1つの共有結合を含む。本発明の目的では、用語「連結すること/させること」は、上で説明したような連結した/している/された/されている/される分子を生成する行為を指す。
【0197】
本発明の目的では、用語「融合した/している/された/されている/される(fused
)」は、ペプチド結合が、カルボキシル酸基の炭素原子の関与を伴うのか、それとも例えばα-炭素、β-炭素、γ-炭素、δ-炭素などの、別の炭素原子を伴うのかを問わず、ペプチド結合である少なくとも1つの共有結合により会合した/している/された/されている/される、2つ又は3つ以上のタンパク質性成分を指す。互いに融合した/している/された/されている/される2つのタンパク質性成分の非限定的な例は、例えば、結果として得られる分子が単一の連続したポリペプチドになるようにペプチド結合によってポリペプチドに融合した/している/された/されている/される、アミノ酸、ペプチド又はポリペプチドを含む。本発明の目的では、用語「融合すること/させること(fusing)」は、例えば、翻訳されたときに単一のタンパク質性分子を産生する遺伝領域の組換え融合から生じた融合タンパク質などの、上で説明したような融合タンパク質を生成する行為を指す。
【0198】
記号「::」は、この記号の前後のタンパク質性分子が、連続したポリペプチドを形成するように互いに物理的に連結されていることを意味する。
【0199】
細胞標的化分子に関して、記号「_」は、この記号の前後の分子が、直接的に又は間接的にどちらかで、互いに共有結合で連結されていることを意味する。
【0200】
本発明の目的では、用語「エフェクター」は、1つ若しくは2つ以上の因子の動員及び/又はアロステリック効果をもたらす、細胞毒性、生体シグナル伝達、酵素的触媒、細胞
内経路決定及び/又は分子間結合などの、生物活性を提供することを意味する。例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素、志賀毒素成分、及び/又はその断片中に存在する1つ又は2つ以上の生物活性を提供する。
【0201】
本書において使用される場合、句「多価標的結合分子」は、例えば、2つ又は3つ以上の結合領域を含むタンパク質であって、個々の結合領域各々が標的生体分子の細胞外部分に対して1リットル当たり10-5~10-12モル濃度の解離定数を有するタンパク質などの、2つ又は3つ以上の高親和性結合領域を含む、1つの標的結合分子又は複数の標的結合分子を指す。
【0202】
本発明の目的では、ポリペプチド又はポリペプチド領域に言及するときの句「~に由来する」は、ポリポリペプチド又はペプチド領域が、「親」タンパク質中で元来見出されるアミノ酸配列であって、「親」分子についてのある特定の機能及び構造が実質的に保存されることを条件に、元のポリペプチド又はポリペプチド配列に対するある特定のアミノ酸残基付加、欠失、トランケーション、再配列又は他の変化を今では含みうる、アミノ酸配列を含むことを意味する。当業者は、ポリペプチド又はペプチド領域が由来した親分子を、当技術分野において公知の技術、例えば、タンパク質配列アラインメントソフトウェアを使用して、同定することができるであろう。
【0203】
本発明の目的では、志賀毒素エフェクター機能は、志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチド領域によりもたらされる生物活性である。志賀毒素エフェクター機能の非限定的な例は、細胞内在化、細胞内経路決定、触媒活性、及び細胞毒性を含む。志賀毒素触媒活性は、例えば、リボソーム不活性化、タンパク質合成阻害、N-グリコシダーゼ活性、ポリヌクレオチド:アデノシングリコシダーゼ活性、RNAase活性、及びDNAase活性を含む。志賀毒素は、リボソーム不活性化タンパク質(RIP、ribosome inactivating protein)である。RIPは、核酸、ポリヌクレオシド、ポリヌクレオチド、r
RNA、ssDNA、dsDNA、mRNA(及びポリA)、及びウイルス核酸を脱プリン化することができる(例えば、Brigotti M et al.,Toxicon 39: 341-8 (2001);Brigotti M et al., FASEB J 16: 365-72 (2002)を参照されたい)。一部のRIPは、抗ウイ
ルス活性及びスーパーオキシドジムスターゼ活性を示す。志賀毒素触媒活性は、インビトロでもインビボでも観察されている。志賀毒素エフェクター活性についてのアッセイの非限定的な例は、タンパク質合成阻害活性、脱プリン化活性、細胞増殖の阻害、細胞毒性、スーパーコイルDNA弛緩活性、及びヌクレアーゼ活性を測定するものである。
【0204】
本書において使用される場合、志賀毒素エフェクター機能の保持は、再現性のある適切な定量的アッセイにより測定して、同じ条件下で、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド対照(例えば、志賀毒素A1断片)に匹敵する、又は野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、志賀毒素A1断片)を含む細胞標的化分子に匹敵する、志賀毒素機能活性レベルを示すことができることを指す。リボソーム不活性化又はリボソーム阻害の志賀毒素エフェクター機能について、保持された志賀毒素エフェクター機能は、例えば、当業者に公知の及び/又は本書に記載されるアッセイを使用することによるものなどの、インビトロ設定で、10,000ピコモル濃度(pM)以下のIC50を示すことである。標的陽性細胞殺滅アッセイにおける細胞毒性の志賀毒素エフェクター機能について、保持された志賀毒素エフェクター機能は、例えば、当業者に公知の及び/又は本書に記載されるアッセイを使用することにより示されるような、細胞型、及び適切な細胞外標的生体分子のその発現に依存して、1,000ナノモル濃度(nM)以下のCD50を示すことである。
【0205】
本書において使用される場合、「有意な」志賀毒素エフェクター機能の保持は、再現性のある適切な定量的アッセイにより測定して、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド
対照に匹敵する志賀毒素機能活性レベルを指す。インビトロでのリボソーム阻害について、有意な志賀毒素エフェクター機能は、リボソーム源(例えば、細菌、古細菌、又は真核生物(藻類、真菌、植物、若しくは動物))に依存して300pM以下のIC50を示すことである。これは、触媒不活性SLT-1A 1-251二重変異体(Y77S/E167D)についての100,000pMの近似的IC50と比較して有意に大きい阻害である。実験室細胞培養での標的陽性細胞殺滅アッセイにおける毒性について、有意な志賀毒素エフェクター機能は、細胞株、及び適切な細胞外標的生体分子のその発現に依存して、100、50若しくは30nM、又はそれ未満のCD50を示すことである。これは、細胞株に依存して100~10,000nMのCD50を有する、細胞標的化結合領域のない単独のSLT-1Aサブユニットと比較して、適切な標的細胞株に対する有意に大きい細胞毒性である。
【0206】
一部の試料については、正確な曲線フィッティングに必要なデータ点を収集することができないため、IC50又はCD50のどちらについても正確な値を得ることができない可能性がある。例えば、理論的には、50%より高いリボソーム阻害又は細胞死が所与の試料の濃度系列でそれぞれ起こらなかった場合、IC50もCD50も決定することができない。例えば、実施例において記載されるアッセイなどの、例示的な志賀毒素エフェクター機能アッセイからのデータの分析に関して記載されるような、曲線への正確なフィッティングに不十分なデータを、実際の志賀毒素エフェクター機能の代表とみなすべきではない。
【0207】
志賀毒素エフェクター機能の活性を検出できないことは、細胞侵入、細胞内経路決定及び/又は酵素活性の欠如ではなく、不適切な発現、ポリペプチドフォールディング及び/又はポリペプチド安定性に起因することもある。志賀毒素エフェクター機能についてのアッセイは、本発明の細胞標的化分子をさほど必要とせずに有意な量の志賀毒素エフェクター機能活性を測定することができる。エフェクター機能が低い又はないことの根本原因がタンパク質発現又は安定性と関係すると実験により判定された場合には、当業者は、当技術分野において公知のタンパク質化学及び分子工学技術を使用してそのような因子を補償することができることがあり、その結果、志賀毒素機能性エフェクター活性が回復され、測定されることもある。例として、不適切な細胞ベースの発現は、種々の発現制御配列を使用することにより補償されることがあり、不適切なポリペプチドフォールディング及び/又は安定性は、末端配列を安定させること、又はタンパク質の三次元構造を安定させる非エフェクター領域の補償変異などから、恩恵を受けることがある。個々の志賀毒素機能についての新たなアッセイが利用できるようになると、志賀毒素エフェクター領域又はポリペプチドを、それらの志賀毒素エフェクター機能の任意のレベルについて、例えば、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性のある特定の倍率以内の活性であることについて分析することができる。有意義な活性差の例は、例えば、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの1000倍若しくは100倍若しくはそれ未満の活性を有する志賀毒素エフェクター領域、又は機能的ノックダウン若しくはノックアウト志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較して3倍~30倍、若しくは31倍以上大きい活性を有する志賀毒素エフェクター領域である。
【0208】
ある特定の志賀毒素エフェクター機能、例えば、細胞内経路決定機能は、容易に測定できない。現在、志賀毒素エフェクターポリペプチドが細胞毒性であることができないことが、不適切な細胞内経路決定に起因するかどうかを識別するための通例の定量的アッセイはないが、試験が利用できれば、志賀毒素エフェクターポリペプチドを、適切な野生型志賀毒素エフェクター領域と比較して任意の有意な細胞内経路決定レベルについて分析することができる。
【0209】
志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性が、野生型と比べて低下されたとしても
、実際には、弱毒化された志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用する応用は、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用するもの以上に有効でありうることに留意されたい。なぜなら、最高作用強度のバリアントは、望ましくない作用を示す可能性があり、作用強度が低下されたバリアントではそれが最小化又は低下されるからである。野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドは非常に強力であり、たった1分子がサイトゾルに達することで、又はことによると40分子が内在化されることで殺滅することができる(Tam P, Lingwood C, Microbiology 153:2700-10 (2007))。志賀毒素エフェクターポリペプ
チドは、例えば細胞内経路決定又は細胞毒性などの、志賀毒素エフェクター機能が、野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドと比較してかなり低下されていたとしても、標的細胞殺滅及び/又は特異的細胞型のある特定の細胞内区画の検出を伴う実際の応用に十分な作用強度を依然として有しうる。またそのようなエフェクターポリペプチドは、ある特定の細胞内の位置又は細胞内区画へのカーゴ(例えば、追加の外在性物質)の送達にも有用でありうる。
【0210】
細胞毒性細胞標的化分子の細胞毒性活性に関して、用語「選択的細胞毒性」は、選択性の測定基準として標的細胞型の細胞殺滅の優先性を明らかにするために、標的細胞型の半最大細胞毒性濃度(CD50、half-maximal cytotoxic concentration)の非標的細胞型のCD50に対する比として表現されうる、標的細胞集団と非標的バイスタンダー細胞集団間の相対細胞毒性レベルを指す。
【0211】
本書における明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、句「細胞に適した生理的温度」は、その特定の細胞又は細胞型の健常な増殖、繁殖及び/若しくは機能に適している範囲内である、細胞が由来する種のコア温度に相当する、並びに/又は細胞を含む健常生存生物に対応する、当技術分野において公知の及び/又は当業者より特定可能な温度を指す。例えば、種に依存して37℃辺りの温度が多くの哺乳動物細胞には適している。
【0212】
本発明の目的では、句「標的生体分子と結合した細胞標的化分子を含む分子複合体の内在化」は、内在化が、細胞標的化分子と細胞表面標的生体分子が細胞外位置で複合体を形成することで始まり、細胞標的化分子と標的生体分子の両方が細胞に侵入し、その後、細胞標的化分子が結合した標的生体分子からのその細胞標的化分子が解離することで終わることから、細胞標的化分子の細胞内在化が標的媒介型であることを意味する。
【0213】
本発明の目的では、句「細胞の表面に本来に存在する標的生体分子」は、細胞が、その固有の内部機構を使用して標的生体分子を発現し、その固有の内部機構を使用して標的生体分子を細胞表面に局在させることを意味し、したがって、標的生体分子は、前記細胞と物理的にカップリングされており、細胞外空間から、すなわち細胞の表面で、標的生体分子の少なくとも一部に到達可能である。
【0214】
本発明の目的では、句「細胞標的化分子を変化させる薬剤」は、本発明の分子の1つ又は2つ以上の特性を変化させるために本発明の分子とコンジュゲートされうる、当業者に公知の及び/又は本書に記載される多数の異なるタイプの原子又は分子のいずれかを指す。
【0215】
本発明のある特定の実施形態の目的では、細胞内在化は、同じ温度で同じ細胞型を使用する同じアッセイにより判定して、本発明の細胞標的化分子の結合に起因して起こる内在化の時間が、同じ細胞標的化分子占有パーセントで先行技術参照分子の内在化の時間と比較して短縮される場合、迅速とみなされる。
【0216】
本書における明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、句「迅速な細胞内在
化」は、当技術分野において公知の又は本書に記載される多数の細胞内在化アッセイのいずれか1つにより測定して、本発明の細胞標的化分子が、細胞外標的抗原又は細胞表面局在標的生体分子の細胞内在化の平均時間を、細胞外標的抗原又は細胞表面局在標的生体分子の細胞内在化に必要とされる平均時間と比較して減少させることができることを指す。
【0217】
本書において明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、句「迅速な内在化」は、基本標的生体分子内在化速度と比較して及び/又は標的生体分子の細胞外部分に結合することが当技術分野において公知の免疫グロブリン型結合分子(例えばモノクローナル抗体)の投与後の分子結合誘導標的生体分子内在化速度と比較してアッセイされうる内在化を含む。句「迅速な細胞内在化」の範囲は、標的特異的抗体を試験したとき又はFc領域を有する免疫グロブリン由来タンパク質分子を試験したときに観察されるものより平均して速い内在化速度を包含するように意図されている。一般に、内在化速度定数は、標的陽性細胞への所望の標的特異的結合分子の投与後、細胞表面標的抗原、標的生体分子及び/又は標的特異的結合分子の50%が、所与の投与濃度、質量、容積モル濃度、又は標的生体分子占有率調整濃度で特定の細胞型に特定の温度で内在化される時間と定義されうる。細胞表面標的生体分子内在化は、基本的にであっても、標的結合分子の投与に応じてあっても、当業者に公知の様々な方法によりアッセイすることができる。
【0218】
本発明のある特定の実施形態の目的では、細胞内在化は、本発明の細胞標的化分子の結合に起因して起こる内在化の時間が、細胞外標的生体分子抗原を認識する十分に特徴付けられている抗体の結合に伴う標的生体分子の内在化の時間と比較して短縮される場合、迅速とみなされる。本明細書を通して、用語「迅速な」は、使用される場合、本発明の細胞標的化分子が1つ又は2つ以上の標的発現及び/又は標的陽性細胞に6時間未満で侵入することを示すように意図されている。ある特定の実施形態では、「迅速な」は、約30分未満ほども「急速に」であることもあるが、約1時間~約2時間、~約3時間、~約4時間、~約5時間の範囲、約2時間~約3時間、~約4時間、~約5時間の範囲、約3時間~約4時間、~約5時間の範囲、及び約4時間~約5時間の範囲も包含しうる。
【0219】
本発明の目的では、互いに連結している2つ又は3つ以上の成分を含む分子に関して、句「1つ又は2つ以上の非共有結合性連結」は、ある特定の分子では該分子をネイティブタンパク質フォールディング条件からタンパク質変性条件に変えると除去される(すなわち、2つ又は3つ以上の成分をもはや接続しない)ように観察されうる、成分を接続する連結のタイプを含む。例えば、例えば電気泳動及び/又はクロマトグラフィーアッセイなどの、当技術分野において公知の及び/又は本書に記載される技術をタンパク質性分子サイズのアッセイに使用したとき、ネイティブタンパク質フォールディング条件(例えば、真核細胞の小胞体の内腔に又は生物体内の細胞外環境に類似するように意図されたpH緩衝環境)下では単一サイズの種のように見える多成分分子は、変性条件下で、及び/又は変性条件に付した後、2つ又は3つ以上のより小さいサイズのタンパク質性分子で構成されているように観察されうる。「タンパク質変性」条件は当業者に公知であり、例えば、高温を有する(例えば摂氏50度より高い)環境、並びに/又は例えば、1~10%ドデシル硫酸ナトリウム、ポリソルベート、Triton(登録商標)X-100、サルコシル、並びに
イオン性、非イオン性、双性イオン性及び/若しくはカオトロピックにかかわらず他の界面活性剤などの、化学的変性剤及び/若しくは界面活性剤の存在を特徴とするものなどの、ネイティブタンパク質フォールディング条件とは著しく異なる条件を含む。
【0220】
本書において使用される場合、タンパク質及び/又はタンパク質性分子の説明に関して、用語「単量体(の)」は、後に環状構造になる連続した直鎖状のポリペプチドを含む、単一ポリヌクレオチドテンプレートからリボソームにより合成されうる、その二次構造か三次構造かを問わず、単一の連続したポリペプチドからなる1つのポリペプチド成分のみを含む分子を指す。対照的に、多量体分子は、単一ポリヌクレオチドテンプレートからリ
ボソームにより合成されうる単一の連続したポリペプチドを共に形成しない、2つ又は3つ以上のポリペプチド(例えば、サブユニット)を含む。
【0221】
本書において使用される場合、タンパク質及び/又はタンパク質性分子の説明に関して、用語「多量体(の)」は、例えば、各々がその固有の連続ポリペプチドである2つの成分からなる分子などの、互いに会合している及び/又は互いに連結している2つ又は3つ以上の個々のポリペプチド成分を含む分子を指す。例えば、分子の成分間の会合又は連結は、2つ又は3つ以上のポリペプチド成分の配置の結果として生じる、例えば分岐状又は環状ポリペプチド構造などの、非直鎖状ポリペプチドを含む単一分子をもたらす、1)1つ若しくは2つ以上の非共有結合性相互作用、2)1つ若しくは2つ以上の翻訳後共有結合性相互作用、3)1つ若しくは2つ以上の共有結合性化学コンジュゲーション、及び/又は4)1つ若しくは2つ以上の共有結合性相互作用を含みうる。単一ポリヌクレオチドテンプレートからリボソームにより合成される単一の連続したポリペプチド中の1つ又は2つ以上のペプチド結合のタンパク質切断の結果として2つの不連続のポリペプチドを含む分子は、「多量体」であり、「単量体」ではない。
【0222】
本書において使用される場合、ポリペプチド領域又はポリペプチド内の特徴要素に関して、用語「破壊された」又は「破壊」又は「破壊すること」、及びその文法上の異形は、領域内の、又は破壊された特徴要素を構成する、少なくとも1つのアミノ酸の変化を指す。アミノ酸変化は、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させる様々な変異、例えば、欠失、反転、挿入又は置換などを含む。アミノ酸変化は、例えば、アミノ酸官能基の1つ又は2つ以上の原子の変化、又はアミノ酸官能基への1つ又は2つ以上の原子の付加などの、化学的変化も含む。
【0223】
本書において使用される場合、「脱免疫化された/される(de-immunized)」は、脊索動物への投与後の、例えば、野生型ペプチド領域、ポリペプチド領域又はポリペプチドなどの、参照分子と比較して、抗原性の及び/又は免疫原性の可能性の低下を意味する。これは、1つ又は2つ以上の新規抗原性及び/又は免疫原性エピトープの導入にもかかわらず、参照分子と比較しての全般的な抗原性の及び/又は免疫原性の可能性の低下を含む。ある特定の実施形態については、「脱免疫化された」は、分子が、哺乳動物への投与後に、例えば野生型志賀毒素A1断片などの、それが由来した「親」分子と比較して抗原性及び/又は免疫原性の低下を示したことを意味する。ある特定の実施形態では、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、同じ条件下で、同じアッセイ、例えば、定量的ELISA又はウェスタンブロット分析のような当業者に公知の及び/又は本書に記載されるアッセイなどにより測定される、参照分子と比較される相対抗原性であって、参照分子の抗原性より10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又はそれより大きく低下される相対抗原性を示すことができる。ある特定の実施形態では、本発明の脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドは、同じ条件下で、同じアッセイ、例えば、哺乳動物において、分子の皮下投与を受けた後、所与の時点で産生される抗分子抗体の定量的測定のような当業者に公知の及び/又は本書に記載されるアッセイなどにより測定される、参照分子と比較される相対免疫原性であって、参照分子の免疫原性より10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、99%、又はそれより大きく低下される、相対免疫原性を示すことができる。例示的な細胞標的化分子の相対免疫原性は、長期間にわたっての反復非経口投与後の細胞標的化分子に対するインビボでの抗体応答についてのアッセイを使用して、判定することができる。
【0224】
本発明の目的では、細胞標的化分子に関して、用語「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」は、細胞標的化分子のポリペプチド鎖(例えば、単一の連続したポリペプチド鎖)の最後のアミノ酸残基を一般に指す。細胞標的化分子は、1つより多くのポリ
ペプチド又はタンパク質を含むことがあり、したがって、本発明の細胞標的化分子は、複数のアミノ末端及びカルボキシ末端を含むことがある。例えば、細胞標的化分子の「アミノ末端」は、出発アミノ酸残基の第一級アミノ基を伴うか又はN-アルキル化アルファアミノ酸残基のクラスのメンバーである出発アミノ酸残基についてのものと同等の窒素を伴ういかなるアミノ酸残基ともペプチド結合していない出発アミノ酸残基を一般に特徴とする、ポリペプチドのアミノ末端に相当するポリペプチド鎖の最初のアミノ酸残基により定義されうる。同様に、細胞標的化分子の「カルボキシ末端」は、その第一級カルボキシル基とペプチド結合により連結されているいかなるアミノ酸残基も有さない最後のアミノ酸残基を一般に特徴とする、ポリペプチドのカルボキシル末端に相当するポリペプチドの最後のアミノ酸残基により定義されうる。
【0225】
本発明の目的では、ポリペプチド領域に関して、用語「末端」、「アミノ末端」、又は「カルボキシ末端」は、追加のアミノ酸残基がその領域外でペプチド結合により連結されているかどうかを問わず、その領域の境界領域を指す。言い換えると、その領域が他のペプチド又はポリペプチドと融合しているかどうかを問わず、ポリペプチド領域の末端。例えば、2つのタンパク質性領域、例えば、ペプチド又はポリペプチドを含む結合領域と志賀毒素エフェクターポリペプチドとを含む、融合タンパク質は、別のタンパク質性領域、例えば結合領域、の始点に相当する252位におけるアミノ酸残基との、残基251が関与するペプチド結合にもかかわらず、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域のアミノ酸残基251で終わる、カルボキシ末端を有する志賀毒素エフェクターポリペプチドを有しうる。この例では、志賀毒素エフェクターポリペプチドのカルボキシ末端は、融合タンパク質の末端ではなくむしろ内部の領域境界である、残基251を指す。したがって、ポリペプチド領域については、用語「末端」、「アミノ末端」、及び「カルボキシ末端」は、境界が、物理的に末端であっても、より大きいポリペプチド鎖内に埋め込まれた内部の位置であっても、ポリペプチド領域の境界を指す。
【0226】
本発明の目的では、句「フーリン切断耐性」は、本書に記載される方法を使用することによるものを含む、当業者に利用可能な任意の手段によりアッセイして、分子又はその特異的ポリペプチド領域が、(i)野生型志賀毒素Aサブユニット内の志賀毒素A1断片のカルボキシ末端又は(ii)A1断片とA2断片の接合部に本来位置する天然に存在するフーリン切断部位が破壊されていない構築物の志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端より低い再現性でフーリン切断を示すことを意味する。
【0227】
本発明の目的では、句「破壊されたフーリン切断モチーフ」は、(i)本書中のセクションI-Bに記載の特異的フーリン切断モチーフ、並びに(ii)同じアッセイにおいて同じ条件下で観察される参照分子のフーリン切断に比べて30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、又はそれ未満(切断なしについての100%を含む)であることが再現性よく観察されるフーリン切断の低減などの、参照分子と比較してフーリン切断の低減を分子に付与することができる変異及び/又はトランケーションを含むフーリン切断モチーフを指す。参照分子と比較してのフーリン切断のパーセンテージは、参照分子の切断:非切断材料で割った、所望の分子の切断:非切断材料の比として表すことができる(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)。適切な参照分子の非限定的な例は、野生型志賀毒素フーリン切断モチーフ、及び/又は国際公開第2015/191764号パンフレット及び国際公開第2016/196344パンフレットに記載されているフーリン切断部位を含むある特定の分子を含む。
【0228】
序論
本発明は、他の分子とのコンジュゲーションのための特異的結合部位を含む、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子を提供する。志賀毒素エフェクターポリペ
プチド又は細胞標的化分子足場中の、溶媒に露出しているユニークな官能基を有するユニークなアミノ酸残基、及び/又は1つ若しくは2つ以上の位置異所性の残基は、様々な原子及び分子の部位特異的連結のための結合点を提供する。原子又は分子は、(1)一旦標的細胞内部に入ると、制御遊離用を含む、細胞内送達用に設計されたカーゴとして機能することができ、並びに/又は(2)例えば、脊椎動物において半減期を延長する、足場の免疫原性部分を隠蔽する、及び/若しくはタンパク質切断を阻止する、生物学的に不活性な部分などの、細胞外機能を有する薬剤として機能することができる。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子を、通例の方法を使用して、制御された簡便な手法で、様々な原子及び分子とコンジュゲートさせて、均一な産物を得ることができる。
【0229】
本発明は、例えば、細胞内送達のための分子カーゴ、又は細胞標的化分子を変化させる薬剤などの、他の分子とコンジュゲートされている、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子も提供する。本発明のある特定の細胞標的化分子及びそれらの組成物を使用して、例えば所望の細胞内機能を有するカーゴなどの、コンジュゲートされているカーゴを、その細胞標的化及び細胞内在化活性に基づいて1つ又は2つ以上の他の細胞型の存在下で、標的発現細胞型に選択的に送達することができる。加えて、本発明のある特定の細胞標的化分子及びそれらの組成物を使用して、例えば、標的とする標的発現細胞の内部に、細胞内位置で細胞毒性である細胞標的化分子の成分を送達することなどにより、その細胞標的化活性及び細胞内在化活性に基づいて1つ又は2つ以上の他の細胞型の存在下で標的発現細胞を選択的に殺滅することができる。本発明における使用に適していると考えられる、コンジュゲートされる原子、分子、カーゴ、及び細胞標的化分子を変化させる薬剤は、リンカー、細胞標的化部分構造、抗生物質、ペプチド、核酸、タンパク質、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、溶解度を変化させる薬剤、薬物動態を変化させる薬剤、免疫原性を変化させる薬剤、及び薬力学的変化をもたらす薬剤を含む。
【0230】
本発明の分子、及びそれらの組成物は、例えば、標的発現細胞へのカーゴの選択的送達のために使用され、並びにがん、様々な疾患、障害及び状態の治療のための治療薬として使用される。
【0231】
I.本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子の一般構造
本発明のある特定の実施形態は、例えば、(1)異種分子にコンジュゲートされた志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び(2)野生型志賀毒素ポリペプチドと比べて1つ又は2つ以上の異所性アミノ酸残基を含む志賀毒素エフェクターポリペプチドなどの、志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドである。本発明は、(1)細胞標的化部分構造(例えば、細胞標的化剤及び/又は結合領域)及び(2)毒素エフェクターポリペプチド領域を含む細胞標的化分子を提供する。ある特定のさらなる実施形態は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子である。加えて、本発明は、いかなる志賀毒素エフェクターポリペプチドも欠いているが、他の分子の部位特異的結合のための官能基を含むリンカー又は結合領域(例えば、免疫グロブリン型ポリペプチド)を含む細胞標的化分子を提供する。本発明の分子の全ては、例えば、細胞を標的とした送達のためのカーゴ、細胞標的化分子を変化させる薬剤、及び/又は追加の外在性物質などの、別の分子とコンジュゲートされていることがあってもよい。
【0232】
A.本発明の志賀毒素エフェクターAサブユニットポリペプチド
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーの志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドであって、志賀毒素エフェクター領域が、少なくとも1つの志賀毒素機能を示すことができるポリペプチドである。志賀毒素機能は、例えば、細胞侵入を促進すること、脂質膜を変形させること、クラスリン媒介エンドサイトーシスを刺激すること、逆行輸送を指示すること、細胞内経路決定を
指示すること、細胞内での分解を回避すること、リボソームを触媒不活性化すること、細胞毒性を果たすこと、及び細胞静止作用を果たすことを含む。
【0233】
本発明における使用に適している、又は当技術分野において公知の技術を使用して修飾して本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドにするための親ポリペプチドとして使用するのに適している、当業者に公知の非常に多くの志賀毒素エフェクターポリペプチドがある(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010);国際公開第2014/164693号パンフレット;国際公開第2015/113005号パンフレット;国際公開第2015/113007号パンフレット;米国特許出願公開第20150259428号明細書;国際公開第2015/191764号パンフレット;米国特許出願公開第20160177284号明細書;国際公開第2016/126950を号パンフレット参照されたい)。
【0234】
本発明における志賀毒素エフェクターポリペプチドは、そのネイティブ志賀毒素Bサブユニットのいずれかの形態から解離された志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドを含むか又はそれから本質的になる。加えて、本発明の細胞標的化分子は、ネイティブ志賀毒素Bサブユニットの機能性結合ドメインを含むか又はそれから本質的になる、いかなるポリペプチドも含む必要がない。むしろ、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを異種結合領域と機能的に会合させて、細胞標的化を果たすことができる。
【0235】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、完全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)、若しくはSLT-2A(配列番号3))を含むこともあり、又はそれから本質的なることもあるが、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットは、成熟志賀毒素Aサブユニットを産生するために除去される、当業者には認識できる、約22アミノ酸のシグナル配列をそれらのアミノ末端に含有する、前駆形態を含みうることに言及しておく。他の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、完全腸志賀毒素Aサブユニットより短い、例えば当技術分野において公知のトランケーションなどの、トランケーションのある志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はそれからなる(例えば、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第20160177284号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0236】
本発明の分子の、ある特定の実施形態については、野生型志賀毒素Aサブユニットポリペプチドに由来するが、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、天然に存在する志賀毒素Aサブユニットとは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40又は41以上のアミノ酸残基が(しかし、少なくとも85%、90%、95%、99%又はそれより高いアミノ酸配列同一性を保持する程度に)異なる。
【0237】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、1つだけのリジン残基を含む。SLT-1ホロトキシンの細胞毒性活性は、Aサブユニットからの全ての残基の除去による影響を受けなかった(McCluskey, AJ, “Shiga-like Toxin 1:Molecular Mechanism of Toxicity and Discovery of Inhibitors”, thesis, University of Toronto, (2012), Appendix B)。さらに、SLT-1のAサブユニットの両方のアミ
ノ末端リジンの除去は、その細胞毒性に影響を与えなかった(McCluskey, AJ, “Shiga-like Toxin 1: Molecular Mechanism of Toxicity and Discovery ofInhibitors”, thesis, University of Toronto, (2012),Appendix B)。したがって、SLT-1A、St
xA、及び/又はSLT-2A中の天然に存在するリジン残基の1つを除く全てをアミノ
酸残基置換により除去することによって、志賀毒素エフェクターポリペプチド中に本来存在するリジン残基1つだけを残すことができる。あるいは、SLT-1A、StxA、及び/又はSLT-2A中の天然に存在するリジン残基の全てをアミノ酸残基置換により志賀毒素エフェクターポリペプチドから除去することができ、部位特異的コンジュゲーション及び1つ又は2つ以上の志賀毒素機能の保持に適している位置内に異所性リジン残基を設計することができる。
【0238】
B.本発明の細胞標的化分子
本発明の細胞標的化分子は全て、例えば、本書に記載される結合領域などの、細胞標的化剤又は部分構造を含む。本発明の細胞標的化分子の細胞標的化剤又は部分構造は、各々の部分構造が、本発明のポリペプチドと連結されているとき、細胞標的化分子を特異的細胞に極めて接近した範囲内で、それらの特異的細胞の表面での分子相互作用に基づいて架橋させることができる、分子構造を含む。細胞標的化部分構造は、リガンドと、細胞表面標的と結合するポリペプチドとを含む。
【0239】
細胞標的化部分構造の1つのタイプは、タンパク質性結合領域である。本発明の細胞標的化された分子の結合領域は、細胞外標的生体分子に選択的に且つ特異的に結合することができる1つ又は2つ以上のポリペプチドを含む。結合領域は、合成リガンドであるか、天然に存在するリガンドであるかにかかわらずリガンド、及びそれらの誘導体、免疫グロブリン由来ドメイン、免疫グロブリンの代替物として合成により改変された足場、並びにこれらに類するものなどの、1つ又は2つ以上の様々なポリペプチド部分構造を含みうる。本発明の細胞標的化分子においてタンパク質性結合領域を使用することにより、一本鎖細胞標的化タンパク質である細胞標的化分子の生成が可能になる。
【0240】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、細胞と物理的にカップリグされている標的生体分子の細胞外部分と特異的に結合することができる細胞標的化結合領域を含む。本発明の細胞標的化分子の結合領域は、標的生体分子と特異的に結合することができるペプチド又はポリペプチド領域を含む。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、細胞外標的生体分子に選択的に且つ特異的に結合することができる1つ又は2つ以上のポリペプチドを含む。結合領域は、例えば、ランダムに生成されたペプチド配列、それらの天然に存在するリガンド又は誘導体、免疫グロブリン由来ドメイン、免疫グロブリンドメインの代替物として合成により改変された足場、及びこれらに類するものなどの、1つ又は2つ以上の様々なペプチド性又はポリペプチド部分構造を含みうる。
【0241】
それらの結合特性によってポリペプチドを特異的細胞型に標的化するのに有用である、非常に多くの結合領域、例えば、リガンド、モノクローナル抗体、改変抗体誘導体、及び抗体の改変代替物が、当技術分野において公知である(例えば、Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010)、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開20150259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開20160177284号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0242】
1つの特異的な、しかし非限定的な態様によれば、本発明の分子の結合領域は、一般には細胞表面受容体である、細胞外標的生体分子との結合機能性を保持する天然に存在するリガンド又はその誘導体を含む。例えば、当技術分野において公知の様々なサイトカイン、増殖因子及びホルモンを使用して、コグネートサイトカイン受容体、増殖因子受容体又
はホルモン受容体を発現する特異的細胞型の細胞表面に細胞標的化分子を標的化することができる。
【0243】
ある特定の他の実施形態によれば、結合領域は、細胞外標的生体分子に結合することができる合成リガンドを含む。
【0244】
1つの特異的な、しかし非限定的な態様によれば、結合領域は、免疫グロブリン型結合領域を含みうる。用語「免疫グロブリン型結合領域」は、本書において使用される場合、抗原又はエピトープなどの1つ又は2つ以上の標的生体分子に結合することができるポリペプチド領域を指す。結合領域は、標的分子と結合するそれらの能力により、機能的に定義されうる。免疫グロブリン型結合領域は、一般に、抗体又は抗体様構造に由来するが、他の源からの代替足場がこの用語の範囲内で考えられる。
【0245】
免疫グロブリン(Ig,Immunoglobulin)タンパク質は、Igドメインとして公知の構造ドメインを有する。Igドメインは、約70~110アミノ酸残基長の範囲であり、通常7~9本の逆平行ベータ鎖が、2つのベータシートとして配置され、これらがサンドイッチ様構造を形成する、特徴的なIgフォールドを有する。このIgフォールドは、サンドイッチの内面での疎水性アミノ酸相互作用、及び鎖内のシステイン残基間の高度に保存されたジスルフィド結合により、安定化される。Igドメインは、可変的(IgV又はVセット)であることもあり、定常的(IgC又はCセット)であることもあり、又は中間的(IgI又はIセット)であることもある。一部のIgドメインには、抗体がそのエピトープに結合する特異性にとって重要である相補性決定(complementarity determining)領域又は相補性決定(complementary determining)領域(CDR)が付随することがある。Ig様ドメインは、非免疫グロブリンタンパク質においても見出され、それに基づいてタンパク質のIgスーパーファミリーのメンバーとして分類される。HUGO遺伝子命名法委員会(HGNC,HUGO Gene Nomenclature Committee)は、Ig様ドメイン含有ファミリーのメンバーのリストを提供している。
【0246】
本書において使用される場合、用語「重鎖可変(V)ドメイン」又は「軽鎖可変(V)ドメイン」は、それぞれ、抗体V又はVドメイン(例えば、ヒトV又はVドメイン)はもちろん、対応するネイティブ抗体の抗原結合能力と少なくとも同等の抗原結合能力を保持するそれらの誘導体(例えば、ネイティブマウスV又はVドメインに由来するヒト化V又はVドメイン)も指す。V又はVドメインは、3つのCDR又はABRが割り込んでいる「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープとの特異的結合のためにCDRを整列させるのに役立つ。VドメインとVドメインは両方とも、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、次のフレームワーク(FR、framework)及びCDR領域を含む:FR1、CDR1、FR2、CDR2、
FR3、CDR3、及びFR4。ラクダ科動物VH断片、軟骨魚類のIgNAR、VNAR断片、及びそれらの誘導体には、同じ基礎配置:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む、単一の重鎖可変ドメインがある。
【0247】
免疫グロブリン型結合領域は、アミノ酸配列が、例えば分子工学により又はライブラリースクリーニングによる選択により、ネイティブ抗体のアミノ酸配列又は非免疫グロブリンタンパク質のIg様ドメインのアミノ酸配列から変更された、抗体又はその抗原結合断片のポリペプチド配列でありうる。免疫グロブリン型結合領域の生成における組換えDNA技術及びインビトロでのライブラリースクリーニングの妥当性のため、抗体を再設計して、より小さいサイズ、細胞侵入又は他の治療上の改善などの所望の特性を得ることができる。可能な変形形態は多く、アミノ酸を1つだけ変化させることから、例えば可変領域の、完全再設計まで、様々でありうる。通常、抗原結合特性を向上させるように、可変領
域の安定性を向上させるように、又は免疫原性応答の可能性を低下させるように、可変領域を変化させることになる。
【0248】
例えば、本発明の細胞標的化分子などの、本発明の分子の成分として考えられる、非常に多くの免疫グロブリン型結合領域がある。免疫グロブリン結合領域は、一般に、1つ又は2つ以上のCDRを含む。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、細胞外標的生体分子に結合することができる抗体パラトープなどの、免疫グロブリン結合領域に由来する。ある特定の他の実施形態では、免疫グロブリン型結合領域は、いずれの免疫グロブリンドメインにも由来しないが細胞外標的生体分子との高親和性結合をもたらすことにより免疫グロブリン結合領域のように機能する、改変ポリペプチドを含む。この改変ポリペプチドは、本書に記載の免疫グロブリンからの相補性決定領域を含むか又はそれから本質的になる、ポリペプチド足場を含むことがあってもよい。
【0249】
それらの高親和性結合特性によってポリペプチドを特異的細胞型に標的化するのに有用である、非常に多くの結合領域も、先行技術にもある。ある特定の実施形態では、本発明の結合領域は、シングルドメイン抗体ドメイン(sdAb)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH断片)、二価ナノボディ、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv)断片、Vドメイン、シングルドメイン抗体ドメイン(sdAb)、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VH断片又はVHドメイン断片)、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメインであるVH断片又はVHドメイン断片、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新規抗原受容体(IgNAR)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv)断片、ナノボディ、重鎖及びC1ドメインからなるFd断片、一本鎖Fv-C3ミニボディ、二量体C2ドメイン断片(C2D)、Fc抗原結合(Fcab、Fc antigen binding)ドメイン、単離された相補性決定領域3(CDR3)断片、拘束フレームワーク領域3,CDR3,フレームワーク領域4(FR3-CDR3-FR4)ポリペプチド、小モジュラー免疫薬(SMIP)ドメイン、多量体化VH断片、scFv-Fc融合体、多量体化scFv断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、V、V、C及びC1ドメインからなるジルフィド安定化抗原結合(Fab)断片、二価ナノボディ、二価ミニボディ、二価F(ab’)断片(Fab二量体)、二重特異性タンデムVH断片、二重特異性タンデムscFv断片、二重特異性ナノボディ、二重特異性ミニボディ、並びにそのパラトープ及び結合機能を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(例えば、Ward E et al., Nature 341: 544-6 (1989);DaviesJ, Riechmann L, Biotechnology (NY) 13: 475-9 (1995);Reiter Y et al., Mol Biol
290: 685-98 (1999);Riechmann L, Muyldermans S, J Immunol Methods 231:25-38 (1999);Tanha J et al., J Immunol Methods 263:97-109 (2002);Vranken W et al., Biochemistry 41: 8570-9 (2002);Tet al., Biochemistry 43: 622-8 (2004);Jespers L
et al., J Mol Biol 337: 893-903 (2004);Jespers L et al., Nat Biotechnol 22: 1161-5 (2004);To Ret al., J Biol Chem 280: 41395-403 (2005);Spinelli S etal., FEBS Lett 564: 35-40 (2004);Saerens D et al., Curr OpinPharmacol 8: 600-8 (2008);DimitrovD, MAbs 1: 26-8 (2009);Baral T et al., PLoSOne 7: e30149 (2012);Ahmad Z et al., Clin Dev Immunol2012: 980250 (2012);Weiner L, Cell 148: 1081-4
(2012);Richard G et al., PLoSOne 8: e69495 (2013)を参照されたい)。例えば、改変二量体Fcドメイン、単量体Fc(mFc,monomericFc)、VH-Fc融合体、scFv-Fc融合体、C2ドメイン、単量体C3sドメイン(mC3,monomeric CH3)、合成により再プログラムされた免疫グロブリンドメイン、及び/又は免疫グロブ
リンドメインとリガンドのハイブリッド融合体などの、免疫グロブリンの定常領域に由来するポリペプチドを含む様々な結合領域がある(Hofer T et al., Proc Natl Acad Sci USA105: 12451-6 (2008);Xiao J et al., J Am Chem Soc 131:13616-13618 (2009);Xi
ao X et al., Biochem Biophys Res Commun 387: 387-92(2009);Wozniak-Knopp G etal., Protein Eng Des Sel 23289-97 (2010);Gong R et al., PLoSONE 7: e42288 (2012);Wozniak-KnoppG et al., PLoS ONE 7: e30083 (2012);Ying T et al., J Biol Chem 287: 19399-408 (2012);Ying T et al., J Biol Chem 288: 25154-64 (2013);Chiang
M et al., J Am Chem Soc 136: 3370-3 (2014);Rader C,Trends Biotechnol 32: 186-97 (2014);Ying T et al., Biochimica Biophys Acta 1844: 1977-82 (2014))。
【0250】
ある特定の他の実施形態に従って、結合領域は、免疫グロブリンドメインの改変代替足場であって、標的生体分子の高親和性且つ特異的結合などの、同様の機能特性を示し、より大きい安定性又は免疫原性低下などの、特性の向上に関する改変を可能にする代替足場を含む。本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、結合領域は、改変された、アルマジロ反復ポリペプチド(ArmRP)、改変された、フィブロネクチン由来III型(10Fn3)ドメイン(モノボディ、AdNectins(商標)、又はAd
Nexins(商標))、改変された、テネイシン由来、テネイシンIII型ドメイン(C
entryns(商標))、改変された、アンキリン反復モチーフ含有ポリペプチド(DARPins(商標))、改変された、低密度リポタンパク質受容体由来、Aドメイン(LDLR-A)(Avimers(商標))、リポカリン(アンチカリン)、改変された、プロテアーゼ阻害剤由来、Kunitzドメイン、改変された、プロテインA由来、Zドメイン(Affibodies(商標))、改変された、ガンマ-Bクリスタリン由来足場又は改変された、ユビキチン由来足場(アフィリン)、Sac7d由来ポリペプチド(Nanoffitins(登録商標)又はアフィチン)、改変された、Fyn由来、SH2ドメイン(Fynomers(登録商標))、及び改変抗体模倣物、並びにその結合機能性を保持する前述のもののいずれかの遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305:989-1010 (2001);Xu L et al., Chem Biol
9: 933-42 (2002);Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004);Binz H et al., Nat Biotechnol 23: 1257-68 (2005);Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36 (2005);GillD, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8 (2006);Koide
A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109 (2007);Byla P et al., J Biol Chem 285: 12096(2010);Zoller F et al., Molecules 16: 2467-85 (2011);Alfarano P et al.,Protein Sci 21: 1298-314 (2012);Madhurantakam C et al., Protein Sci 21: 1015-28 (2012);Varadamsetty G et al., J Mol Biol424: 68-87 (2012))。
【0251】
本発明のある特定の実施形態の中で、免疫グロブリン型結合領域は、ナノボディ又はシングルドメイン免疫グロブリン由来領域VHに由来する。一般に、ナノボディは、ラクダ科動物及び軟骨魚類(軟骨魚綱(Chondrichthyes))において見出されるような天然に存在する単一の単量体可変ドメイン抗体(sdAb)の断片から構成される。ナノボディは、これらの天然に存在する抗体から、その単一の単量体性変ドメインをトランケーションすることにより、例えば、IgNAR、VH、及びVNAR構築物などの、より小さい、より安定性の高い分子を生成するように改変される。それらの小さいサイズのため、ナノボディは、全抗体に到達できない抗原と結合することができる。
【0252】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、結合領域は、a)(i)HABR1若しくはHCDR1、(ii)HABR2若しくはHCDR2、及び(iii)HABR
3若しくはHCDR3を含む、重鎖可変(V)ドメイン、並びにb)(i)LABR1若しくはLCDR1、(ii)LABR2若しくはLCDR2、及び(iii)LABR3若
しくはLCDR3を含む、軽鎖可変(V)ドメインからなる群から選択される、ポリペプチドであって、前述のABR及び/又はCDRの各々が、配列番号844~1100で示されるようなアミノ酸配列の1つを含むか又はそれから本質的になる、ポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、配列番号807~808及び812~813のいずれか1つの269~499を含むか若しくはそれらから本質的になり、
配列番号814~815及び818~829のいずれか1つの269~519のアミノ酸を含むか若しくはそれらから本質的になり、又は配列番号816~817のいずれか1つの268~386のアミノ酸を含むか若しくはそれらから本質的になる。
【0253】
本発明のある特定の実施形態では、結合領域ポリペプチドは、別の分子とのコンジュゲーションに適している遊離システイン残基を含み、システインは、結合領域ポリペプチドのカルボキシ末端にあるか又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、(X)n-C-X又は(X)n-C(式中、Xは、任意のアミノ酸を指し、(X)nは、結合ドメインを含むポリペプチドを指し、Cは、システイン残基を指す)により表される一連のアミノ酸残基を含む。
【0254】
本発明のある特定の実施形態では、結合領域ポリペプチドは、別の分子とのコンジュゲーションに適している遊離システイン残基を含み、システインは、結合領域ポリペプチドのアミノ末端にあるか又はその近位にある。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子の結合領域は、C-(X)n又はM-C-(X)n(式中、Xは、任意のアミノ酸を指し、(X)nは、結合ドメインを含むポリペプチドを指し、Cは、システイン残基を指し、Mは、出発メチオニンを指す)により表される一連のアミノ酸残基を含む。
【0255】
本発明のある特定の実施形態では、本発明の分子は、システイン残基を欠いている免疫グロブリン領域を含む。そのような免疫グロブリン結合領域構造は、当業者に公知であり、及び/又は通例の方法を使用して生成することができる(例えば、Proba K, J MolBiol 275: 245-53 (1998)を参照されたい)。
【0256】
結合領域成分が、細胞外標的生体分子に対して、1リットル当たり10-5~10-12モル濃度、好ましくは200ナノモル濃度(nM)未満の解離定数を有することを条件に、上記結合領域のいずれを本発明の細胞標的化分子の成分として使用してもよい。
【0257】
細胞型特異的標的化は、本発明の分子を、例えば、リポソーム、ポリマー、ナノ担体、マイクロスフェア、ナノスフェア、デンドリマー、高分子ミセル、ケイ素又は炭素材料(例えば、ナノチューブ、ナノロッド及びナノホーンなど)、磁性ナノ粒子、マイクロエマルジョン及び他のナノ構造などの、細胞標的化担体に結合させることにより、遂行することができる(Sinha R et al., Molecular Cancer Therapeutics 5: 1909-17 (2006);L Brinton et al., Journal of the National Cancer Institute 100:1643-8 (2008);Tanaka T et al., Biomed Micro Devices 11:49-63 (2009))。結合は、1つ又は2つ以上の共有結合及び/又はカプセル化を使用して遂行することができる。
【0258】
細胞外標的生体分子
本発明の分子の結合領域は、細胞外標的生体分子と特異的に結合することができるポリペプチド領域、好ましくは、がん細胞、腫瘍細胞、形質細胞、感染細胞、又は細胞内病原体を内部に持つ宿主細胞などの、所望の細胞型の表面と物理的にカップリングされているポリペプチド領域を含む。
【0259】
用語「標的生体分子」は、タンパク質を生物体内の特異的細胞型又は位置に標的化するために結合領域が結合しうる生体分子であって、一般には、タンパク質、又はグリコシル化などの翻訳後修飾により修飾されたタンパク質を指す。細胞外標的生体分子は、未修飾ポリペプチド、生化学的官能基の付加により修飾されたポリペプチド、及び糖脂質を含む、様々なエピトープを含みうる。
【0260】
本発明の細胞標的化分子の結合領域により標的化されうる、当業者に公知の非常に多数
の細胞外標的生体分子、及びそのような標的生体分子に結合することが公知のポリペプチド結合ドメインがある(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開第20150259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第20160177284号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0261】
本発明の目的では、標的生体分子の修飾に関して、用語「細胞外」は、その構造の少なくとも一部分が細胞外環境に露出されている生体分子を指す。細胞外標的生体分子は、細胞膜成分、膜貫通タンパク質、細胞膜に係留されている生体分子、細胞表面に結合した生体分子、及び分泌された生体分子を含む。
【0262】
本発明に関して、標的生体分子を説明するために使用されるときの句「物理的にカップリングされている」は、標的生体分子又はその一部分を細胞の外部とカップリングさせる、共有結合性及び/又は非共有結合性両方の分子間相互作用、例えば、単一の相互作用各々のエネルギーがおおよそ約1~5キロカロリーである、標的生体分子と細胞との複数の非共有結合性相互作用(例えば、静電結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水力など)を意味する。表在性膜タンパク質はもちろん、全ての膜内在性タンパク質は、細胞膜と物理的にカップリングされている状態で見いだすことができる。例えば、細胞外標的生体分子は、膜貫通領域、脂質アンカー、糖脂質アンカーを含むことがあり、及び/又は前述のもののいずれか1つを含む因子と(例えば、非特異的疎水性相互作用及び/又は脂質結合相互作用によって)非共有結合的に会合していることもある。
【0263】
本発明の細胞標的化分子の結合領域は、それらの標的生体分子の細胞型特異的発現、及び/又は特異的細胞型に対するそれらの標的生体分子の物理的局在などの、非常に多くの基準に基づいて設計又は選択されうる。例えば、本発明のある特定の細胞標的化分子は、1つだけの細胞型により排他的に発現される細胞表面標的を細胞表面と結合させることができる、結合ドメインを含む。
【0264】
本発明のある特定の実施形態の中で、細胞標的化分子は、がん細胞の細胞表面の表面抗原であって、発現ががん細胞に限定される、抗原との特異的な高親和性結合のために選択される、免疫グロブリン型ポリペプチドに由来する結合領域を含む(例えば、Glokler J et al.,Molecules 15: 2478-90 (2010);Liu Y et al., Lab Chip 9:1033-6 (2009)を
参照されたい)。他の実施形態に従って、結合領域は、がん細胞の細胞表面の表面抗原であって、非がん細胞と比較してがん細胞により過剰発現されるか又は優先的に発現される抗原との特異的な高親和性結合のために選択される。一部の代表的標的生体分子は、がん及び/又は特異的免疫細胞型に関連する下記に列挙される標的を含むが、それらに限定されない。
【0265】
がん細胞に関連するエピトープを認識する多くの免疫グロブリン型結合領域、例えば、アネキシンAI、B3メラノーマ抗原、B4メラノーマ抗原、B7-H3(CD276、B7RP-2)、B細胞成熟抗原(BCMA、BCM、TNRSF17、CD269)、CD2、CD3、CD4、CD19、CD20(Bリンパ球抗原タンパク質CD20)、CD22、CD25(インターロイキン-2受容体IL2R)、CD30(TNFRSF8)、CD37、CD38(サイクリックADPリボースヒドラーゼ)、CD40、CD44(ヒアルロナン受容体)、タンパク質チロシンホスファターゼ受容体C型(CD45、PTPRC、LCA)、ITGAV(CD51)、CD56、CD66、CD70、CD71(トランスフェリン受容体)、CD73、CD74(HLA-DR抗原関連インバ
リアント鎖)、CD79(例えば、CD79a又はCD79b)、CD98、エンドグリン(END、CD105)、CD106(VCAM-1)、CD138、ケモカイン受容体4型(CDCR-4、フーシン、CD184)、CD200、インスリン様増殖因子1(CD221)ムチン1(MUC1、CD227、CA6、CanAg)、基底細胞接着分子(B-CAM、CD239)、CD248(エンドシアリン、TEM1)、腫瘍壊死因子受容体10b(TNFRSF10B、CD262)、腫瘍壊死因子受容体13B(TNFRSF13B、TACI)、血管内皮増殖因子受容体2(KDR、CD309)、上皮細胞接着分子(EpCAM、CD326)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER2,human epidermal growth factor receptor 2 、Neu、ErbB2、CD340)、がん
抗原15-3(CA15-3)、がん抗原(CA19-9)、がん抗原125(CA125、MUC16)、CA242、癌胎児抗原関連細胞接着分子(例えば、CEACAM3(CD66d)及びCEACAM5)、癌胎児抗原(CEA,carcinoembryonic antigen)タンパク質、コリン輸送体様タンパク質4(SLC44A4)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSP4,chondroitin sulfate proteoglycan 4、MCSP、NG2)、CTLA4、デルタ様タンパク質(例えば、DLL3、DLL4)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼタンパク質(例えば、ENPP3)、エンドセリン(ETBR)、上皮増殖因子受容体(EGFR,epidermal growth factor receptor、ErbB1)、エプスタイン・バーウイルス潜伏感染膜タンパク質1(LMP1,latent membrane protein 1)、葉酸受容体(FOLR、例えば、FRα)、G-28
、ガングリオシドGD2、ガングリオシドGD3、HLA-Dr10、HLA-DRB、ヒト上皮増殖因子受容体1(HER1,human epidermal growth factor receptor 1)、HER3/ErbB-3、エフリンB型受容体2(EphB2,Ephrin type-B receptor
2)、上皮細胞接着分子(EpCAM,epithelial cell adhesion molecule)、線維芽
細胞活性化タンパク質(FAP,fibroblast activation protein/セプラーゼ)、グア
ニリルシクラーゼc(GCC,guanylyl cyclase c)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF1R,insulin-like growth factor 1 receptor)、インターロイキン2受容体(
IL-2R)、インターロイキン6受容体(IL-6R)、インテグリンアルファ-Vベータ-3(αβ)、インテグリンアルファ-Vベータ-5(αvβ5)、インテグリンアルファ-5ベータ-1(αβ)、L6、亜鉛輸送体(LIV-1)、MPG、メラノーマ関連抗原1タンパク質(MAGE-1)、メラノーマ関連抗原3(MAGE-3)、メソテリン(MSLN)、メタロレダクターゼSTEAP1、MPG、MS4A、NaPi2b、ネクチン(例えば、ネクチン-4)、p21、p97、ポリオウイルス受容体様4(PVRL4,polio virus receptor-like 4)、プロテアーゼ活性化受容体(例
えば、PAR1)、前立腺特異的膜抗原(PSMA,prostate-specific membraneantigen)タンパク質、SAIL(C16orf54)、SLIT及びNTRK様タンパク質(例えば、SLITRK6)、Thomas-Friedenreich抗原、膜貫通糖タンパク質(GPNMB)、栄養膜糖タンパク質(TPGB、5T4、WAIF1)、及び腫瘍関連カルシウムシグナル伝達因子(TACSTD,tumor-associated calcium signal transducer、例えば、Trop-2、EGP-1など)を標的とする結合領域は、先行技術の中に存在する(例えば、Lui B et al., Cancer Res 64: 704-10 (2004);NovellinoL et al., Cancer Immunol Immunother 54: 187-207(2005);Bagley R et al., Int J
Oncol 34: 619-27 (2009);Gerber H et al., mAbs 1: 247-53 (2009);Beck A et al.,
Nat Rev Immunol 10: 345-52 (2010);Andersen J et al., JBiol Chem 287: 22927-37
(2012);Nolan-Stevaux O etal., PLoS One 7: e50920 (2012);Rust S et al., Mol Cancer 12: 11 (2013);KimS et al., Blood Cancer Journal 5: e316 (2015)を参照されたい)。標的生体分子このリストは、非限定的であるように意図されている。本発明の細胞標的化分子を産生するために、毒素エフェクターポリペプチドとカップリングさせる結合領域を、がん細胞又は他の所望の細胞型に関連する任意の所望の標的生体分子を使用して設計又は選択することができることは、当業者には理解されるであろう。
【0266】
がん細胞に強く関連している他の標的生体分子、及びそれらと結合することが公知の免疫グロブリン型結合領域の例は、BAGEタンパク質(B黒色腫抗原)、基底細胞接着分子(BCAM,basal cell adhesion molecule、又はLutheran式血液型糖タンパク質)、膀胱腫瘍抗原(BTA,bladder tumor antigen)、がん-精巣抗原NY-ESO-1、
がん-精巣抗原LAGEタンパク質、CD19(Bリンパ球抗原タンパク質CD19)、CD21(補体受容体-2又は補体3d受容体)、CD26(ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)又はアデノシンでアミラーゼ複合体形成受容体2)、CD33(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン-3)、CD52(CAMPATH-1抗原)、CD56、CS1(SLAMファミリーメンバー7又はSLAMF7)、細胞表面A33抗原タンパク質(gpA33)、エプスタイン・バーウイルス抗原タンパク質、GAGE/PAGEタンパク質(メラノーマ関連がん/精巣抗原)、肝細胞増殖因子受容体(HGFR,hepatocyte growth factor receptor、又はc-Met)、MAGEタンパク質、T細胞
1タンパク質により認識されるメラノーマ抗原(MART-1/MelanA、MARTI)、ムチン、優先的に発現されるメラノーマ抗原(PRAME,Preferentially Expressed Antigen of Melanoma)タンパク質、前立腺特異的抗原(PSA,prostate specific antigen)タンパク質、前立腺幹細胞抗原(PSCA,prostate stem cell antigen)
タンパク質、終末糖化産物受容体(RAGE,Receptor for Advanced Glycation Endroduct)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72,tumor-associatedglycoprotein 72
)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR,vascular endothelial growth factorreceptor)、ウィルムス腫瘍抗原を含む。
【0267】
がん細胞に強く関連している他の標的生体分子の例は、炭酸脱水酵素IX(CA9/CAIX,carbonic anhydrase IX)、クローディンタンパク質(CLDN3、CLDN4)
、エフリンA型受容体3(EphA3,ephrin type-A receptor 3)、葉酸結合タンパク質(FBP,folate binding protein)、ガングリオシドGM2,インスリン様増殖因子受容体、インテグリン(例えばCD11a~c)、核因子カッパB活性化受容体(RANK)、受容体型チロシンプロテインキナーゼerB-3、SAIL(c16orf54)、腫瘍壊死因子受容体10A(TRAIL-R1/DR4)、腫瘍壊死因子受容体10B(TRAIL-R2)、テネイシンC、及びCD64(FcγRI)である(Hough C et
al., Cancer Res 60: 6281-7 (2000);Thepen T et al., Nat Biotechnol 18: 48-51 (2000);Pastan I et al.,Nat Rev Cancer 6: 559-65 (2006);Pastan, Annu Rev Med 58:
221-37 (2007);Fitzgerald D et al., Cancer Res 71:6300-9 (2011);Scott A et al., Cancer Immun 12: 14-22 (2012);Kim S etal., Blood Cancer Journal 5: e316 (2015)を参照されたい)。標的生体分子このリストは、非限定的であるように意図されてい
る。
【0268】
加えて、ADAMメタロプロテイナーゼ(例えばADAM-9、ADAM-10、ADAM-12、ADAM-15、ADAM-17)、ADP-リボシルトランスフェラーゼ(ART1、ART4)、抗原F4/80、骨髄間質抗原(BST,bone marrow stroma
antigen,1、BST2)、破断点クラスター領域-c-abl(BCR-ABL,break pointcluster region-c-abl)がん遺伝子タンパク質、補体成分3a受容体(C3aR,complement component 3a receptor)、CD7、CD13、CD14、CD15(Lewis X又はステージ特異的胎児抗原1)、CD23(FCイプシロンRII)、CD49d、CD53、CD54(細胞間接着分子1)、CD63(テトラスパニン)、CD69、CD80、CD86、CD88(補体成分5a受容体1)、CD115(コロニー刺激因子1受容体)、IL-1R(インターロイキン-1受容体)、CD123(インターロイキン-3受容体)、CD129(インターロイキン9受容体)、CD183(ケモカイン受容体CXCR3)、CD191(CCR1)、CD193(CCR3)、CD195(ケモカイン受容体CCR5)、CD203c、CD225(インターフェロン誘導膜貫通タンパク質1)、CD244(ナチュラルキラー細胞受容体2B4)、CD282(
Toll様受容体2)、CD284(Toll様受容体4)、CD294(GPR44)、CD305(白血球関連免疫グロブリン様受容体1)、エフリンA型受容体2(EphA2,ephrin type-A receptor 2)、FceRIa、ガレクチン-9、アルファ-フェトプロテイン抗原17-A1タンパク質、ヒトアスパルチル(アスパラギニル)ベータ-ヒドロキシラーゼ(HAAH)、免疫グロブリン様転写物ILT-3、リゾホスファチジルグリセロールアセチルトランスフェラーゼ1(LPGAT1,lysophosphatidlglycerol acyltransferase 1/IAA0205)、リソソーム膜タンパク質(LAMP,lysosome-associated membrane protein、例えばCD107)、メラニン細胞タンパク質PMEL
(gp100)、骨髄関連タンパク質-14(mrp-14,myeloid-related protein-14)、NKG2Dリガンド(例えば、MICA、MICB、ULBP1、ULBP2、UL-16結合タンパク質、H-60、Rae-1、及びそれらのホモログ)、受容体型チロシンプロテインキナーゼerbB-3、SARTタンパク質、スカベンジャー受容体(例えばCD64及びCD68)、シグレック(シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン)、シンデカン(例えばSDC1又はCD138)、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質1(TRP-1,tyrosinease-relatedprotein 1)、チロシナーゼ関連タンパク
質2(TRP-2,tyrosinease-related protein 2)、チロシナーゼ関連抗原(TAA
,tyrosinase associated antigen)、APO-3、BCMA、CD2、CD3、CD4
、CD8、CD18、CD27、CD28、CD29、CD41、CD49、CD90、CD95(Fas)、CD103、CD104、CD134(OX40)、CD137(4-1BB)、CD152(CTLA-4)、ケモカイン受容体、補体タンパク質、サイトカイン受容体、組織適合性タンパク質、ICOS、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、c-myc、破骨細胞分化抑制因子、PD-1、RANK、TACI、TNF受容体スーパーファミリーメンバー(TNF-R1、TNFR-2)、Apo2/TRAIL-R1、TRAIL-R2、TRAIL-R3及びTRAIL-R4などの、考えられる標的生体分子の非常に多くの他の例がある(標的生体分子については、Scott A et al., Cancer Immunity 12: 14 (2012);Cheever M et al., Clin Cancer Res
15: 5323-37 (2009)を参照されたく、そこに記載されている標的分子は、非限定的な例
であることに留意されたい)。本発明の細胞標的化分子を産生するために、毒素エフェクターポリペプチドとカップリングさせる結合領域を、任意の所望の標的生体分子を使用して設計又は選択することができることは、当業者には理解されるであろう。
【0269】
ある特定の実施形態では、結合領域は、免疫系の細胞型の細胞表面との特異的な高親和性結合のために選択される免疫グロブリン型ポリペプチドを含むか、又はそれから本質的になる。例えば、プログラム死リガンド1(PD-L1,programmed death ligand 1)
、CD1、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11、CD12、CD13、CD14、CD15、CD16、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD40、CD41、CD56、CD61、CD62、CD66、CD95、CD117、CD123、CD235、CD146、CD326、インターロイキン-2受容体(IL-2R)、核因子カッパB活性化受容体(RANKL)、SLAM結合タンパク質(SAP)及びTNFSF18(腫瘍壊死因子リガンド18又はGITRL)と結合する免疫グロブリン型結合ドメインは公知である。
【0270】
本発明の細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子は、がん細胞、免疫細胞、及び細胞内病原体(例えば、ウイルス、細菌、真菌、プリオン又は原生動物)に感染した細胞上に不釣り合いなほど多く又は排他的に存在するバイオマーカーを含みうる。
【0271】
この一般構造は、本発明の細胞標的化分子及びその組成物を産生させるために、任意の数のそれぞれ異なる細胞標的化結合領域を1つ又は2つ以上の毒素エフェクターポリペプ
チドと連結させることができる点で、モジュラーである。
【0272】
C.毒素に由来する毒素エフェクターポリペプチド
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素以外のタンパク質性毒素に由来する毒素エフェクターポリペプチド領域を含む。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含まない。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、例えば、志賀毒素以外のABx毒素、志賀毒素以外のリボソーム不活性化タンパク質毒素、アブリン、炭疽毒素、Aspf1、ブーゲニン、ブリオジン、コリックス毒素、クローディン、ジフテリア毒素、ゲロニン、易熱性エンテロトキシン、ミトギリン、百日咳毒素、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、プルケリン、緑膿菌(Pseudomonas)外毒素A、レストリクトシン、リシン、サポリン、サルシン、
及びスブチラーゼ細胞毒素に由来するものなど、志賀毒素ファミリーのメンバー以外の毒素に由来する毒素エフェクター領域を含む(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/120058号パンフレットを参照されたい)。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、毒素エフェクター領域も、毒素に由来するいかなるポリペプチドも含まない。
【0273】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドでない毒素エフェクターポリペプチドを含む。本発明は、毒素に由来する様々なポリペプチドを毒素エフェクターポリペプチドとして使用することを企図している。例えば、多くの毒素は、それらの細胞内の経路決定挙動についての豊富な知識のため、最適な、細胞毒性ポリペプチド及び/又はプロテアソーム送達エフェクターポリペプチド源となる(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照されたい)。初期エンドソーム区画からサイトゾル又はERのどちらかへ細胞内の経路を決定する固有の能力を有するいずれの毒素も、本発明のために、例えば、本発明において修飾のための出発成分として又はより小さいプロテアソーム送達エフェクター領域をマッピングするための源として活用することができるプロテアソーム送達エフェクターポリペプチドの源となる。
【0274】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、あらゆるリジン残基を欠いているか又は部位特異的コンジュゲーションのために正確に1つのリジン残基を含む、毒素エフェクターを含む。多くの毒素、特に小胞体経由の経路の逆行性経路決定を使用する毒素、の触媒ドメインには、リジン残基がない(DeLange R et al.,Proc Natl Acad Sci USA
73: 69-72 (1976);London E, LuongoC, Biochem Biophys Res Commun 160: 333-9 (1989);Hazes B,Read R, Biochemistry 36: 11051-4 (1997);Deeks E et al., Biochemistry 41:3405-13 (2002);Worthington Z, CarbonettiN, Infect Immun 75: 2946-53 (2007))。
【0275】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドである毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、SLT-1A-Cys1-バリアント(例えば、配列番号5、15、25、35、45、55、65及び75)である。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、細胞標的化分子の別のタンパク質性成分(例えば、細胞標的化結合領域又は出発メチオニン)のカルボキシ末端側にあり、したがって、該志賀毒素エフェクターポリペプチドの1位のシステイン残基(C1)は、そのアミノ基を介してペプチド結合を形成する。
【0276】
本発明の細胞標的化分子の一般構造は、様々な細胞外標的生体分子のそれぞれ異なる標的化、したがって、様々なそれぞれ異なる細胞型への細胞毒性、細胞分裂停止、及び/又は外在性物質の送達の標的化をもたらすために、様々な、それぞれ異なる結合領域を、同じ毒素エフェクターポリペプチド(例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド)とともに使用することができる点で、モジュラーである。本発明の細胞標的化分子において、結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、互いに直接連結されていることもあり、及び/又は当技術分野において周知の1つ若しくは2つ以上のリンカーによって適切に連結されていることもある。本発明の細胞標的化分子の目的では、毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化結合領域について、互いとの関連で、特定の順序に固定されず、特定の配向にも固定されない(例えば図1-Bを参照されたい)。細胞毒性でない毒素エフェクターポリペプチドは、それでも、細胞、ある特定の細胞内区画に外在性物質を送達するのに、及び/又はサイトゾルへの効率的細胞内経路決定をもたらすのに、有用でありうる。本発明の細胞標的化分子は、例えば、細胞標的化分子のタンパク質性成分のカルボキシ末端におけるアミノ酸KDEL(配列番号1142)などの、カルボキシ末端小胞体保留/回収シグナルモチーフをさらに含むことがあってもよい(例えば、国際公開第2015/138435号パンフレットを参照されたい)。
【0277】
D.部位特異的コンジュゲーションに適用可能なアミノ酸残基及び構造
生体直交型反応性部分構造(例えば、側鎖又は官能基)を有するいずれのアミノ酸残基も、本発明の分子におけるコンジュゲーション部位として適切でありうる。当業者は、先行技術から適用可能な且つ適切なアミノ酸を選択することができ、又は通例の技術を使用して、実験によって、本発明の分子における使用に適用可能且つ適切である新規アミノ酸を同定することができる。ある特定の実施形態では、本発明の分子は、異所性位置にあることもあり又はその位置に天然に存在することもあるユニークなアミノ酸残基を有する志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む。ある特定の他の実施形態では、本発明は、ユニークなアミノ酸、又はユニークに到達可能である、すなわち、同じアミノ酸タイプの他の全ての残基のようにタンパク質性構造の内部に埋まってはいない、ユニークでないアミノ酸残基を含みうる。
【0278】
本発明のある特定の実施形態では、単一のリジン、ヒスチジン又はシステインが、別の分子のコンジュゲーションのための特異的残基部位を設けるために細胞標的化分子に改変により導入される。一般に、アミノ酸リジン、ヒスチジン及びシステインの強求核性官能基が、これら3つのアミノ酸残基を、原子又は分子のタンパク質との化学的コンジュゲーションに最もよく適用することができる結合点にする。しかし、リジン、ヒスチジン及び/又はシステインの数はタンパク質によって異なり、このことが、部位特異的結合の適切性、及び/又はコンジュゲート化学量論組成の制御に影響を与える。下記の例では、システイン残基全てを、親の志賀毒素Aサブユニットポリペプチドから除去した。次いで、制御されたコンジュゲーションのためのユニークな結合点を設けるために、異所性システイン残基をポリペプチドに改変により導入した。これを異なる位置で繰り返して、一群のシステイン改変志賀毒素エフェクターポリペプチドを得た。これらのポリペプチドは、志賀毒素エフェクター機能の保持、及びコンジュゲートされた分子を細胞の内部に送達する能力について試験される。
【0279】
本発明のある特定の実施形態では、単一の非天然アミノ酸残基が、別の分子のコンジュゲーションのための特異的残基部位を設けるために、細胞標的化分子に改変により導入される(例えば、Liu W et al., Nat Methods 4: 239-44 (2007);LiuC, Schultz P, Annu
Rev Biochem 79: 413-44 (2010);Young T et al., J Mol Biol 395: 361-74 (2010);Young T, Schultz P, J Biol Chem 285: 11039-44 (2010);Young D et al., Biochemistry 50: 1894-900 (2011);Hoesl M, Budisa N, Curr Opin Biotechnol 23: 751-7 (2012)
;Ozawa K et al., Biochem Biophys Res Commun 418: 652-6(2012);Chin J, Annu Rev
Biochem 83: 379-408 (2014);OzawaK, Loh C, Methods Mol Biol 1118: 189-203 (2014)を参照されたい)。例えば、セレノシステイン及びパラ-アセチルフェニルアラニンなどの、非天然アミノ酸残基は、有用なコンジュゲーション部位をもたらすことが当技術分野において公知である。同様に、アジド基を有するアミノ酸残基を部位特異的コンジュゲ
ーションに使用することができる。
【0280】
本発明のある特定の実施形態では、部位特異的結合部位は、本発明の細胞標的化分子のポリペプチド成分の第一級アミン又はカルボキシ末端である。
【0281】
本発明のある特定の実施形態では、短いポリペプチドモチーフが、別の分子のコンジュゲーションのための特異的残基部位を設けるために、細胞標的化分子に改変により導入される。例えば、CxPxRのようなある特定のモチーフ中のシステイン残基をホルミルグリシン生成酵素により修飾してホルミルグリシンにすることができ、次いで、結果として生じるアルデヒド官能基を、ヒドラジノ-ピクテ・スペングラーケミストリーを使用して別の分子とコンジュゲートさせてもよい(例えば、Carrico I et al., Nat Chem Biol 3:
321-2 (2007);Rabuka D, et al., Nat Protoc 7: 1052-67 (2012)を参照されたい)。
【0282】
改変残基の溶媒露出度が、適切なコンジュゲーション部位をもたらすその能力に影響を与えることがあることに留意することは重要であるが、適切性は、コンジュゲートされる分子、及び結果として得られるコンジュゲートの具体的な応用によって、変わりうる。例えば、コンジュゲートされる分子のサイズ及び立体障害は、コンジュゲートした最終産物の安定性に影響を与えるので、ある特定の改変部位及び/又は異所性残基は、ある特定のコンジュゲートされる分子に適しているが、他のものには適していない。溶媒露出度が高いアミノ酸残基は、より良好なコンジュゲーション部位をもたらすと予想されうるが、最大の治療的有用性を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子は、可能性のある他のコンジュゲーション部位より溶媒露出度が低いコンジュゲーション部位を必要としうる(例えば、Shen B et al., Nat Biotechnol 30: 184-9(2012)を参照されたい)。
【0283】
タンパク質性分子を別の分子と連結させるための幾つかの一般的なコンジュゲーション戦略、例えば、タンパク質中のリジンを介してのアミン反応性リンカー若しくは分子とのコンジュゲーション戦略、タンパク質中のシステインによるスルフヒドリル反応性リンカー若しくは分子(例えば、活性化マレイミド基を含むもの)へのコンジュゲーション戦略、酵素媒介コンジュゲーションによるコンジュゲーション戦略、及び/又はパラ-アセチルフェニルアラニンなどの、非天然アミノ酸の組込みによるコンジュゲーション戦略などがある(例えば、Kline T et al., Pharm Res 32: 3480-93 (2015)を参照されたい)。例えば、スルフヒドリル反応性化学基は、アルキル化(通常は、チオエーテル結合の形成)又はジスルフィド交換(ジスルフィド結合の形成)によるものなどの、コンジュゲーション化学反応に非常に適している。スルフヒドリル反応性基の非限定的な例は、ハロアセチル、マレイミド、アジリジン、アクリロリル、アリール化剤、ビニルスルホン、ピリジルジスルフィド、TNB-チオール及びジスルフィド還元剤を含む。例えば、システイン残基は、例えば、リンカー若しくはカーゴ上のマレイミド若しくはブロモアセトアミド基を使用して、及び/又はクリックケミストリーを使用して、別の分子とコンジュゲートさせることができる。リンカー若しくはカーゴ上のオキシム基を使用して、及び/又はクリックケミストリーによって、非天然アミノ酸残基をコンジュゲートさせることができる。例えば、パラ-アセチルフェニルアラニンを、オキシムライゲーションによって、アルコキシ-アミンを含む別の分子とコンジュゲートさせることができる。例えば、マレイミド基及び/又はクリックケミストリーを使用して、セレノシステインを別の分子とコンジュゲートさせることができる(例えば、Hofer T et al., Biochemistry 48: 12047-57 (2009);Young T et al., J Mol Biol 395: 361-74 (2010);Kiick K et al.,Proc Natl Acad Sci USA 99: 19-24 (2002)を参照されたい)。
【0284】
ある特定の実施形態については、本発明の分子は、本発明の分子のポリペプチド成分中に存在するシステイン、メチオニン及び/又はヒスチジン残基とカーゴを連結させるため
に、カーゴ又はリンカー中に存在する、例えばヨードアセトアミド又はマレイミドなどの、ハロアルキル誘導体を使用して、作製される。ある特定の実施形態では、チロシン、ヒスチジン及び/又はメチオニン残基とのコンジュゲーションを回避するために、マレイミド剤が特に使用される。
【0285】
本発明の分子のポリペプチド成分中に既に存在するシステイン残基を使用すること、例えば、そのチオール基を遊離させ、それをコンジュゲーションに利用可能にするために、還元反応後に使用ことなどができる。当業者は、当技術分野において公知の方法を使用して、例えば、TCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩、ジチオトレイトール(DTT)、及び/又はベータ-メルカプトエタノール(BME)などを使用して、チオール連結を還元することができる。
【0286】
ある特定の実施形態については、本発明の分子は、本発明の分子のポリペプチド成分中に存在するシステイン、メチオニン及び/又はヒスチジン残基とカーゴを連結させるために、カーゴ又はリンカー中に存在する、例えばチオスルフェートなどの、ニトロシル化チオール誘導体を使用して、作製される。
【0287】
ある特定の実施形態については、ホモ二官能性マレイミド、ホモ二官能性スルフヒドリル反応性マレイミド、ヘテロ二官能性マレイミド、及び/又はヘテロ二官能性アミン基-スルフヒドリル基間マレイミド架橋剤。
【0288】
ある特定の実施形態については、例えばヨードアセチル若しくはブロモアセチル基を含有するハロアセチル架橋剤など、ハロアセチル試薬が使用され、及び/又はNHSエステルアミン基-スルフヒドリル基間架橋剤が使用される。ある特定の実施形態については、例えば、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性ヨードアセチル架橋剤などの、ヨードアセチル反応性基が、スルフヒドリル基との化学的コンジュゲーションに使用される。ある特定の実施形態については、例えば、ホモ二官能性又はヘテロ二官能性ブロモアセチル架橋剤などの、ブロモアセチル反応性基が、スルフヒドリル基との化学的コンジュゲーションに使用される。
【0289】
ある特定の実施形態については、スルフヒドリル基は、例えば、2-イミノチオラン、SATA、SATP、SAT(PEG)、又はピリジルジスルフィドを使用するものなどの、化学反応を使用して、付加される。ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、スルフヒドリル基を第一級アミン部位に付加させるためにトラウト試薬(2-イミノチオラン、2-IT)又はSATAで処理される。
【0290】
ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドとの連結には化学反応が関与し、この化学反応には、志賀毒素エフェクターポリペプチドのシステイン、メチオニン、N-ホルミルメチオニン、ホモシステイン若しくはタウリン残基のスルフヒドリル基などの、スルフヒドリル基、志賀毒素エフェクターポリペプチドを細胞標的化結合領域と接続するためのリンカー、又はコンジュゲートされるカーゴが関与する。
【0291】
原子又は分子を本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分とコンジュゲートさせる際の使用に適している化学反応は、カルボジイミド媒介反応、EDC媒介アミド結合形成、ヒドラジド活性化反応、ピリジルジスルフィド反応、ヨードアセチル反応、及び/又はマンニッヒ反応を含む。
【0292】
例えば、本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分のカルボキシル基は、カーゴのアミノ、アミン及びヒドラジン基とアミド結合を形成する結果となる、例えば水溶性カルボジイミド架橋剤を使用するものなどの、カルボジイミド媒介反応によって、カーゴと連結
させることができる。ポリペプチドのカルボキシル基は、例えば、カルボキシ末端残基、アスパラギン酸、及び/又はグルタミン酸などの、表面露出アミノ酸残基の一部でありうる。
【0293】
例えば、EDC媒介アミド結合形成は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分のアミノ末端アミン基の第一級アミン基とカーゴのカルボキシレート基の連結に使用することができる。あるいは、EDC媒介アミド結合形成は、本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分のカルボキシ末端カルボキシレート基とカーゴのアミン基の連結に使用することができる。当業者は、次いで、精製ステップを使用して、所望のコンジュゲート分子をさらに単離及び精製することができる。
【0294】
例えば、マンニッヒ反応は、カーゴのアルデヒド基と、例えば、本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分の、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリン若しくはトリプトファン残基のアミン基及び/又はアミノ末端アミン基などの、アミノ酸残基のアミン基の活性水素との縮合に、使用することができる。当業者は、次いで、精製ステップを使用して、所望のコンジュゲート分子をさらに単離及び精製することができる。
【0295】
例えば、カーゴ又はリンカーのピリジルジスルフィドを使用して、本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分のスルフヒドリル基と反応させることができる。カーゴと本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分と間のカップリング反応の前に、他の化学反応によってピリジルジスルフィドを予備活性化してもよい。
【0296】
例えば、カーゴのヨードアセチルを使用して、本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分のスルフヒドリル基と反応させることができる。カーゴと本発明のポリペプチド又はポリペプチド成分と間のカップリング反応の前に、他の化学反応によってピリジルジスルフィドを予備活性化してもよい。
【0297】
ある特定の実施形態では、本発明のカーゴ及び志賀毒素エフェクターポリペプチドは、スベリン酸ジスクシンイミジル(DSS,disuccinimidyl suberate)リンカーを介して
連結される。
【0298】
E.本発明のポリペプチド成分を異種分子、カーゴ、及び/又は追加の外在性物質とコンジュゲートさせるためのリンカー
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、例えば、異種分子、カーゴ、追加の外在性物質、及び/又は細胞標的化分子を変化させる薬剤などの、コンジュゲートされている分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の分子は、1つ又は2つ以上のリンカーを介して間接的にコンジュゲートされ、リンカーは、本書では「コンジュゲーションリンカー」と称される。当業者は、先行技術からコンジュゲーションリカーを選択することができ、又は通例の技術を使用して、実験によって、本発明の分子における使用に適している新規コンジュゲーションリンカーを同定することができる。ある特定の実施形態では、コンジュゲーション連結には、アミン反応性化合物及び/又はスルフヒドリル反応性化合物、例えばチオールなど、が関与する。
【0299】
コンジュゲーションリンカーは、一般に、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及び/又は細胞標的化分子のタンパク質性成分とコンジュゲート分子の安定した連結を可能にするものである。この意味での安定性は、保管中の安定性と脊椎動物の循環系における安定性の両方を指すが、ある特定の実施形態では、コンジュゲーションリンカーにより、リンカーからの及び/若しくは細胞標的化分子の残部からのコンジュゲート分子の選択的解離、並びに/又はリンカーの分解、それによるコンジュゲート分子と細胞標的化分
子の残部との間の連結の破断が可能になる。
【0300】
例えば、当業者に公知の適切なコンジュゲーションリンカーは、ヒドラゾン連結、チオエーテル連結、ジスルフィド連結、タンパク質分解的に切断されるリンカー、バリン-シトルリンリンカー、β-グルクロニドリンカー、自壊性連結、可逆的アミノ-チオール連結、及びSpaceLinkリンカーを含むか又はそれに関与する(例えば、Hojfeldt J et al.,J Org Chem 71: 9556-9 (2006);Ducry L, Stump B, Bioconjugate Chem 21: 5-13 (2010)を参照されたい)。
【0301】
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、ホモ二官能性であるコンジュゲーションリンカーを含むが、他の実施形態では、コンジュゲーションリカーは、ヘテロ二官能性である。本発明のある特定の実施形態での使用に適しているホモ二官能性リンカーの例は、NHSエステル、ハロアセチル、アリールアジド、ジアジリン、イミドエステル、カルボジイミド、マレイミド、ヒドラジン、ピリジルジチオール、イソシアネート、ソラレンを含む。ある特定の実施形態では、コンジュゲーションリンカーは、ポリエチレングリコール(PEG,polyethylene glycol)スペーサーを含む。本発明のある特定の実施形態での
使用に適しているホモ二官能性及び/又はヘテロ二官能性リンカーの例は、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)、スベリン酸ジスクシンイミジル、ビス(スクシンイミジル)ペンタ(エチレングリコール)、ビス(スクシンイミジル)ノナ(エチレングリコール)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、2-ピリジルジチオール-テトラオキサオクタトリアコンタン-N-ヒドロスクシンイミド、及びスクシンイミジル-[(N-マレイミドプロピオンアミド)-テトラコサエチレングリコール]エステルを含む。
【0302】
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、マレイミド型コンジュゲーションリンカーを含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の分子は、カーゴ分子を細胞標的化分子のタンパク質性成分と(例えば、前記タンパク質性成分中のシステイン残基を介してなど)連結させる、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)マレイミドリンカーを含む。
【0303】
ある特定の実施形態では、コンジュゲーションリンカーは、硫黄原子付近に立体障害炭素を有するジスルフィド結合によって、別の分子にコンジュゲートされる(例えば、Erickson H et al., Cancer Res 66: 4426-33 (2006)を参照されたい)。
【0304】
ある特定の実施形態では、コンジュゲーションリンカーは、ジスルフィド型リンカーである(例えば、HamiltonG, Biologicals 43: 318-32 (2015)を参照されたい)。
【0305】
本発明のある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドの成分(例えば、カーゴ、若しくは志賀毒素エフェクターポリペプチドへのもの)又は細胞標的化分子の成分(例えば、毒素エフェクターポリペプチドとの結合領域)を、例えば、本発明の細胞標的化分子の他のタンパク質性成分どうしを遺伝子融合させることができるタンパク質性リンカーなどの、当技術分野において周知の及び/又は本書に記載される1つ又は2つ以上のリンカーによって、互いに適切に連結させることができる。
【0306】
適切なリンカーは、一般に、いずれのリンカー又は他の成分もなしに個々に産生されたポリペプチド成分と非常に類似した三次元構造での、本発明の各ポリペプチド成分のフォールディングを可能にするものである。適切なリンカーは、単一のアミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及び前述のものを一切欠いているリンカー、例えば、分岐状か環状かにかかわらず様々な非タンパク質性炭素鎖を含む(例えば、Alley S et al., Bioconjug Chem
19: 759-65 (2008) Ducry L, Stump B, Bioconjug Chem 21: 5-13 (2010);ChenX et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。
【0307】
適切なリンカーは、タンパク質性であってもよく、1つ又は2つ以上アミノ酸、ペプチド及び/又はポリペプチドを含んでいてでもよい。タンパク質性リンカーは、組換え融合タンパク質と、化学的に連結されたコンジュゲートの両方に、適している。タンパク質性リンカーは、例えば約5~約30、又は約6~約25アミノ酸残基などの、約2~約50アミノ酸残基を通常有する。選択されるリンカーの長さは、例えば、そのためにリンカーが選択されることになる所望の特性(単数又は複数)などの、様々な因子に依存することとなる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)を参照されたい)。
【0308】
適切なリンカーは、例えば化学的リンカーなどの、非タンパク質性であってもよい(例えば、Dosio F et al., Toxins 3: 848-83(2011);Feld J et al., Oncotarget4: 397-412 (2013)を参照されたい)。免疫グロブリン由来ポリペプチドを異種ポリペプチドとコンジュゲートさせるために一般に使用されるリンカーなどの、当技術分野において公知の様々な非タンパク質性リンカーを使用して、細胞標的化部分構造を毒素エフェクターポリペプチド及び他の成分と連結させて、本発明の細胞標的化分子を形成することができる。例えば、本発明の細胞標的化分子のポリペプチド領域を、それらのアミノ酸残基及び糖鎖部分の官能性側鎖、例えば、カルボキシ、アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、カルボニル、ヒドロキシル及び/又は環式環基などを使用して、連結させることができる。例えば、ジスルフィド結合及びチオエーテル結合を使用して、2つ又は3つ以上のポリペプチドを連結させることができる(例えば、Fitzgerald D et al., Bioconjugate Chem 1: 264-8 (1990);Pasqualucci L etal., Haematologica 80: 546-56 (1995)を参照されたい
)。加えて、非天然アミノ酸残基を、例えばケトンなどの、他の官能性側鎖とともに使用することができる(例えば、Axup J et al., Proc Natl Acad Sci U.S.A. 109: 16101-6 (2012);Sun S et al., ChembiochemJul 18 (2014);Tian F et al., Proc Natl Acad Sci USA 111: 1766-71 (2014)を参照されたい)。非タンパク質性の化学的リンカーの例は、N-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート、S-(N-スクシンイミジル)チオアセテート(SATA)、N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-cu-メチル-a-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)、N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルジチオ)-ペンタノエート(SPP)、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC又はMCC)、スルホスクシンイミジル(4-ヨードアセチル)-アミノベンゾエート、4-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン、スルホスクシンイミジル-6-(α-メチル-α-(ピリジルジチオール)-トルアミド)ヘキサノエート、N-スクシンイミジル-3-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド)ヘキサノエート、スルホスクシンイミジル6(3(-(-2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド)ヘキサノエート、マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-P-アミノベンジルオキシカルボニル(MC-vc-PAB)、3-マレイミド安息香酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、アルファ-アルキル誘導体、スルホNHS-ATMBA(スルホスクシンイミジルN-[3-(アセチルチオ)-3-メチルブチリル-ベータ-アラニン])、スルホジクロロフェノール、2-イミノチオラン、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオニルヒドラジド、エルマン試薬、ジクロロトリアジン酸、及びS-(2-ジピリジル)-L-システインを含むが、これらに限定されない(例えば、Thorpe P et al., Eur J Biochem147: 197-206 (1985);Thorpe P et al., Cancer Res 47:5924-31 (1987);Thorpe P et al., Cancer Res 48: 6396-403(1988);Grossbard M et al., Blood 79: 576-85 (1992);Lui C etal., Proc Natl Acad Sci
USA 93: 8618-23 (1996);Doronina S et al., Nat Biotechnol 21: 778-84(2003);Feld J et al., Oncotarget4: 397-412 (2013)を参照されたい)。
【0309】
タンパク質性であるか非タンパク性であるかにかかわらず、適切なリンカーは、例えば、プロテアーゼ感受性、環境酸化還元電位感受性、pH感受性、酸切断性、光切断性及び/又は熱感受性リンカーを含みうる(例えば、Dosio F et al.,Toxins 3: 848-83 (2011);Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013);Feld Jet al., Oncotarget 4: 397-412 (2013)を参照されたい)。
【0310】
タンパク質性リンカーを、本発明の組換え、融合タンパク質、細胞標的化分子への組み込みに選択してもよい。本発明の組換え融合細胞標的化タンパク質のためのリンカーは、通常、約2~50アミノ酸残基、好ましくは約5~30アミノ酸残基を含む(Argos P, J
Mol Biol 211: 943-58 (1990);Williamson M, Biochem J 297: 240-60 (1994);George
R, Heringa J, Protein Eng15: 871-9 (2002);Kreitman R, AAPS J 8: E532-51 (2006))。一般に、タンパク質性リンカーは、例えばトレオニン、プロリン、グルタミン、グリシン及びアラニンなどの、極性、非荷電及び/又は荷電残基を伴う、アミノ酸残基の大部分を含む(例えば、HustonJ et al. Proc Natl Acad Sci U.S.A. 85: 5879-83 (1988);Pastan I et al., Annu Rev Med 58: 221-37 (2007);Li Jet al., Cell Immunol 118: 85-99 (1989);Cumber A et al. Bioconj Chem 3: 397-401 (1992);FriedmanP et al., Cancer Res 53: 334-9 (1993);Whitlow M et al.,Protein Engineering 6: 989-95 (1993);Siegall C et al., J Immunol 152:2377-84 (1994);Newton et al. Biochemistry 35: 545-53(1996);Ladurner et al. J Mol Biol 273: 330-7 (1997);Kreitman R et al., Leuk Lymphoma 52:82-6 (2011);米国特許第4,894,443号明細書を参照されたい)。タンパク質性リンカーの非限定的な例は、アラニン-セリン-グリシン-グリシン-プロリン-グルタメート(ASGGPE)(配列番号1190)、バリン-メチオニン(VM)、アラニン-メチオニン(AM)、AM(G2-4S)AM(配列番号1191)(式中、Gはグリシンであり、Sはセリンであり、xは1~10の整数である)を含む。
【0311】
タンパク質性リンカーは、所望される特性に基づいて選択されうる。当業者は、特異的特徴を念頭に置いて、例えば、融合タンパク質のフォールディング、安定性、発現、溶解度、薬物動態特性、薬力学的特性、及び/又は融合構築物との関連で同じドメイン単独での活性と比較したときの融合ドメインの活性、のうちの1つ又は2つ以上を最適化するように、タンパク質性リンカーを選択することができる。例えば、タンパク質性リンカーを可動性、剛直性及び/又は切断性に基づいて選択することができる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)を参照されたい)。当業者は、リンカーを選択する際にデータベース及びリンカー設計ソフトウェアツールを利用することができる。ある特定のリンカーは、発現を最適化するために選択されうる(例えば、Turner D et al., J Immunol Methods 205: 43-54 (1997)を参照されたい)。ある特定のリンカーは、ホモ多量体を形成するために同一のポリペプチド若しくはタンパク質間の又はヘテロ多量体を形成するために異なるポリペプチド若しくはタンパク質間の分子間相互負作用を促進するために選択されうる。例えば、本発明の細胞標的化タンパク質のポリペプチド成分間の所望の非共有結合性相互作用、例えば、二量体及び他のより高次の多量体の形成に関連する相互作用などを可能にする、タンパク質性リンカーを、選択してもよい(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい)。
【0312】
可動性のタンパク質性リンカーは、多くの場合、12アミノ酸残基長より長く、小さい非極性アミノ酸残基、極性アミノ酸残基及び/又は親水性アミノ酸残基、例えばグリシン、セリン及びトレオニンなどを多く含んでいる(例えば、Bird R et al., Science 242: 423-6 (1988);FriedmanP et al., Cancer Res 53: 334-9 (1993);Siegall C et al., J Immunol 152:2377-84 (1994)を参照されたい)。可動性のタンパク質性リンカーは、成分間の空間的離隔を増大させるために選択されることもあり、及び/又は成分間の分子間相互作用を可能にするために選択されることもある。例えば、様々な「GS」リンカーは当業者に公知であり、複数のグリシン及び/又は1つ若しくは2つ以上セリンで構成され、例えば(GS)(配列番号1192)、(SG)(配列番号1193)、(GGGGS)(配列番号1194)及び(G)(配列番号1195)(式中、xは1~6であり、nは1~30である)などの反復単位の状態であることもある(例えば、国際公開第96/06641号パンフレットを参照されたい)。可動性のタンパク質性リンカーの非限定的な例は、GKSSGSGSESKS(配列番号1196)、GSTSGSGKSSEGKG(配列番号1197)、GSTSGSGKSSEGSGSTKG(配列番号1198)、GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1199)、EGKSSGSGSESKEF(配列番号1200)、SRSSG(配列番号1201)、及びSGSSC(配列番号1202)を含む。
【0313】
剛直なタンパク質性リンカーは、多くの場合、堅いアルファヘリックス構造であり、プロリン残基及び/又は1つ若しくは2つ以上の戦略的に配置されたプロリンを多く含んでいる(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013)を参照されたい)。剛直なリンカーは、連結されている成分間の分子間相互作用を防止するために選択されうる。
【0314】
例えば、切断及び/又は環境特異的不安定性に起因する成分のインビボ分離などの、成分のインビボでの分離を可能にするために、適切なリンカーを選択することができる(例えば、Dosio F et al.,Toxins 3: 848-83 (2011);Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev
65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。特に脊索動物の循環系の血漿中のような細胞外
環境では安定しているが、ユニークな特性を有するある特定の細胞内環境では、例えば、ある特定の細胞型及び/又は細胞内の区画などでは、ある特定のタンパク質分解活性、酸化還元環境、及び/又はpH環境の存在に起因して切断され、それによって本発明の分子の連結されている成分を分離するように設計されたリンカーを作製及び使用する方法は、当業者には公知である。
【0315】
インビボで切断性のタンパク質性リンカーは、多くの場合、生物体内の又はある特定の細胞型の内部の特異的部位において、タンパク質分解性プロセシングにより連結を解除す
ること及び/又は環境を還元することができる(例えば、Doronina S et al., Bioconjug
Chem 17: 144-24 (2006);Erickson H et al., Cancer Res66: 4426-33 (2006)を参照
されたい)。インビボで切断性のタンパク質性リンカーは、1つ又は2つ以上システイン対により形成されたプロテアーゼ感受性モチーフ及び/又はジスルフィド結合を含むことが多い(例えば、Pietersz G et al.,Cancer Res 48: 4469-76 (1998);The J et al., J ImmunolMethods 110: 101-9 (1998)を参照されたい;Chen X et al., AdvDrug Deliv
Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。インビボで切断性のタンパク質性リンカー
を、生物体内のある特定の位置、細胞内の区画、のみに存在する、及び/又はある特定の生理的若しくは病的条件下でのみ活性になる、プロテアーゼ(例えば、異常に高レベルのプロテアーゼ、ある特定の患部で過剰発現されるプロテアーゼ、及び病原性微生物により特異的に発現されるプロテアーゼなど)に対して、感受性であるように設計することができる。例えば、細胞内のみに存在するプロテアーゼ、特異的細胞型内にのみ存在するプロテアーゼ、及びがん若しくは炎症のような病的条件下でのみ存在するプロテアーゼにより切断されるタンパク質性リンカー、例えば、R-x-x-Rモチーフ、及びAMGRSGGGCAGNRVGSSLSCGGLNLQAM(配列番号1203)などは、当技術分野において公知である。
【0316】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、標的細胞内に存在するプロテアーゼによる切断をもたらすために1つ又は2つ以上のプロテアーゼ感受性部位を含むリンカーが使用されうる。本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、脊椎動物生物への投与後の望ましくない毒性を低下させるために、切断性でないリンカーが使用されうる(例えば、Polson et al., Cancer Res 69: 2358- (2009)を参照されたい)。
【0317】
適切なリンカーは、例えば、プロテアーゼ感受性、環境酸化還元電位感受性、pH感受性、酸切断性、光切断性及び/又は熱感受性リンカーを、タンパク質性であるか非タンパ
ク性であるかにかかわらず、含みうる(Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65: 1357-69 (2013)を参照されたい)。
【0318】
適切な切断性リンカーは、例えば、Zarling D et al., J Immunol 124: 913-20 (1980);JungS, Moroi M, Biochem Biophys Acta 761: 152-62 (1983);Bouizar Z et al., EurJ Biochem 155: 141-7 (1986);ParkL et al., J Biol Chem 261: 205-10 (1986);Browning J, Ribolini A, J Immunol 143: 1859-67 (1989);Joshi S, Burrows R, J Biol Chem 265: 14518-25 (1990);Choi W et al., J Bioact Compat Polym 14: 447-56 (1999);Jensen K etal., Bioconjug Chem 13: 975-84 (2002);Christie R, Grainger, D, Adv Drug DelivRev 55: 421-37 (2003)により記述されたリンカーなどの、当技術分野に
おいて公知である切断性基を含むリンカーを含みうる。
【0319】
適切なリンカーは、pH感受性リンカーを含みうる。例えば、標的細胞の細胞内区画の内部での解離をもたらすために、ある特定の適切なリンカーが、より低いpH環境でのそれらの不安定性のために選択されることもある。例えば、1つ又は2つ以上トリチル基、誘導体化トリチル基、ビスマレイミドエトキシプロパン基、アジピン酸ジヒドラジド基及び/又は酸不安定性基を含むリンカーは、特異的pH範囲を有する環境で本発明の細胞標的化分子の成分、例えばポリペプチド成分の放出をもたらすことができる(例えば、Welhoner H et al.,J Biol Chem 266: 4309-14 (1991);Fattom A et al., Infect Immun 60: 584-9 (1992)を参照されたい)。例えば、健常組織におけるpHより低い腫瘍組織のpHなどの、組織間の生理的pH差に対応するpH範囲で切断される、ある特定のリンカーが選択されることもある(例えば、米国特許第5,612,474号明細書を参照されたい)。
【0320】
光切断性リンカーは、可視領域の光などの、ある特定の波長領域の電磁放射線への曝露時に切断されるリンカーである(例えば、Goldmacher V etal., Bioconj Chem 3: 104-7
(1992)を参照されたい)。光切断性リンカーを使用して、本発明の細胞標的化分子の成
分、例えばポリペプチド成分を、ある特定の波長の光への曝露時に放出させることができる。光切断性リンカーの非限定的な例は、システインの光切断性保護基のようなニトロベンジル基、ニトロベンジルオキシカルボニルクロリド架橋剤、ヒドロキシプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセインコポリマー、及びメチルローダミンコポリマーを含む(Hazum E et al., Pept Proc Eur PeptSymp, 16th, Brunfeldt K,ed., 105-110 (1981);Senter et al., Photochem Photobiol42: 231-7 (1985);Yen et al., MakromolChem 190: 69-82 (1989);Goldmacher V et al., Bioconj Chem 3: 104-7 (1992))。光切断性リンカーは、ファイバーオプティクスを使用して光に曝露することができる疾患、障害及び状態を治療するために設計される本発明の細胞標的化分子を形成するための連結成分において特に使用されうる。
【0321】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、細胞標的化結合領域は、共有結合性連結と非共有結合性連結の両方を含む、当業者に公知の、任意の数の、手段を使用して、毒素エフェクターポリペプチドと連結される(例えば、Chen X et al., Adv Drug Deliv Rev 65:1357-69 (2013);Behrens C, Liu B, MAbs6: 46-53 (2014)を参照されたい)。
【0322】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、タンパク質は、重鎖可変(V)ドメインと軽鎖可変(V)ドメインを接続するリンカーを伴うscFvである結合領域を含む。例えば15残基(Gly4Ser)ペプチド(配列番号1204)などの、この目的に適している、当技術分野において公知の非常に多くのリンカーがある。非共有結合性多価構造の形成において使用することができる適切なscFvリンカーは、GGS、GGGS(Gly3Ser又はG3S)(配列番号1205)、GGGGS(Gly4Ser又はG4S)(配列番号1206)、GGGGSGGG(配列番号1207)、GGSGGGG(配列番号1208)、GSTSGGGSGGGSGGGGSS(配列番号1209)、及びGSTSGSGKPGSSEGSTKG(配列番号1210)を含む(Pluckthun A, PackP, Immunotechnology 3: 83-105 (1997);Atwell J et al., Protein Eng 12: 597-604 (1999);Wu Aet al., Protein Eng 14: 1025-33 (2001);Yazaki P et al., J Immunol Methods 253: 195-208 (2001);Carmichael J et al., J Mol Biol 326: 341-51 (2003);Arndt M et al., FEBS Lett 578: 257-61 (2004);Bie C et al.,World J Hepatol 2: 185-91 (2010))。
【0323】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、分子は、志賀毒素エフェクターポリペプチドと結合領域の間にリンカーを含み、リンカーは、1つ又は2つ以上のシステイン残基を有する。ある特定のさらなる実施形態には、そのスルフヒドリル官能基を介してシステイン残基と共有結合で連結されている分子がある。
【0324】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、配列番号757~761及び768~772のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる、リンカーを含む。
【0325】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、分子は、例えば、GGGGCGG(配列番号1212)、GGGGSGGGGCGG(配列番号1213)、GGGGCGGGGSGG(配列番号1214)、GGGGSGGGGSGGGGC(配列番号1215)、GGGGSGGGGCGGGGS(配列番号1216)、GGGGCGGGGCSGGGS(配列番号1217)、GGGGSGGGGCGGGGSSGGGGSSGGGGS(配列番号1218)、GGGGCGGGGSGGGGSSGGGGSSGGGGS(配列番号1219)、GGGGSGGGGSGGGGCSGGGGSSGGGGS(配列番号1220)、GGGGSGGGGSGGGGSCGGGGSSGGGGS(配列番号1221)、GGGGSGGGGSGGGGSSGGGGCSGGGGS(配列番号1222)、GGGGSGGGGSGGGGSSGGGGSCGGGGS(配列番号1223)、若しくはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSSGGGGC(配列番号1224)を含むか又はこれらから本質的になるリンカーなどの、ポリペプチドGGGC(配列番号1211)を含むリンカーを含む。
【0326】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、分子は、例えば、GGGGKGG(配列番号1226)、GGGGSGGGGKGG(配列番号1227)、GGGGKGGGGSGG(配列番号1228)、GGGGSGGGGSGGGGK(配列番号1229)、GGGGSGGGGKGGGGS(配列番号1230)、GGGGKGGGGCSGGGS(配列番号1231)、GGGGCGGGGKSGGGS(配列番号1232)、GGGGSGGGGKGGGGSSGGGGSSGGGGS(配列番号1233)、GGGGKGGGGSGGGGSSGGGGSSGGGGS(配列番号1234)、GGGGSGGGGSGGGGKSGGGGSSGGGGS(配列番号1235)、GGGGSGGGGSGGGGSKGGGGSSGGGGS(配列番号1236)、GGGGSGGGGSGGGGSSGGGGKSGGGGS(配列番号1237)、GGGGSGGGGSGGGGSSGGGGSKGGGGS(配列番号1238)、若しくはGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSSGGGGK(配列番号1239)を含むか又はこれらから本質的になるリンカーなどの、ポリペプチドGGGK(配列番号1225)を含むリンカーを含む。
【0327】
本発明の細胞標的化分子の成分の適切な連結方法は、そのような連結を遂行するための当技術分野において現在公知のいずれの方法によるものであってもよいが、その結合が、細胞標的化剤若しくは結合領域の結合能力、細胞標的化分子の細胞内在化、細胞内区画若しくは特異的位置へのカーゴの細胞内送達、及び/又は毒素エフェクターポリペプチドの細胞内経路決定を実質的に妨げないことを条件とし、これらの各々は、本書に記載されるアッセイを含む、適切なアッセイにより判定することができる。
【0328】
F.カーゴ、異種の物、コンジュゲートされる部分構造、細胞標的化分子を変化させる薬剤、及び追加の外在性物質
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、例えば、カーゴ、コンジュゲートされている分子、追加の外在性物質、及び/又は細胞標的化分子を変化させる薬剤などの、志賀毒素にとって異種の物を含む。細胞標的化分子とコンジュゲートされる分子は、コンジュゲートされる部分構造に相当する。志賀毒素エフェクターポリペプチドと連結されるそのよ
うな異種の物(例えば、原子又は分子)は、標的細胞にとって異物である物、及び/又は対象となる細胞中に望ましい量で存在しない物であることもある。ある特定の実施形態では、コンジュゲートされる物は、原子若しくは分子カーゴ、異種分子、追加の外在性物質、及び/又は細胞標的化分子を変化させる薬剤、例えば、CD8+T細胞エピトープ及び/若しくは抗原、放射性核種、ペプチド、検出促進剤、タンパク質、小分子化学療法剤、及び/又はポリヌクレオチドなどである。
【0329】
ある特定の実施形態では、コンジュゲートされる物は、放射性核種などの原子であるか又はそれを含む。ある特定の実施形態では、放射性核種は、211At、131I、125I、90Y、111In、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、60C、及び/又はルテチウムの放射性同位体である。
【0330】
ある特定の実施形態では、コンジュゲートされる物は、脂質、血清アルブミン結合分子、抗生物質、細胞毒性薬剤、検出促進剤、ペプチド、タンパク質、酵素、核酸、及び/又はタンパク質-核酸複合体である(例えば、Liu B, Brief Funct Genomic Proteomic 6:112-9 (2007);Endoh T, Ohtsuki T, Adv Drug Deliv Rev 61: 704-9 (2009)を参照され
たい)。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子の標的細胞内在化前又は中に機能するように意図された、分子を変化させる薬剤である、コンジュゲートされている物を含む。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子の標的細胞内在化後に機能するように意図された、カーゴ(例えば、追加の外在性物質)である、コンジュゲートされている物を含む。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、例えば、例えばカスパーゼ-3、カスパーゼ-6、グランザイムB、tBid、及びアポトーシス誘導因子(AIF,apoptosis inducing factor)のよ
うな、アポトーシス促進エフェクターを含むポリペプチドなどの、追加の外在性物質又はカーゴである、コンジュゲートされている物を含む(例えば、Jia L et al., Cancer Res
63: 3257-62 (2003);Xu Y et al., J Immunol 173: 61-7(2004);Wang T et al., Cancer Res 67: 11830-9 (2007);Shan L et al., Cancer Biol Ther 11:1717-22 (2008);Qiu X et al., Mol Cancer Ther 7: 1890-9(2008)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、コンジュゲートされる物は、CD8+T細胞エピトープ及び/若しくは抗原を含むか又はそれらから本質的になる、ペプチドである。
【0331】
細胞標的化分子を変化させる薬剤の非限定的な例は、様々なポリエチレングリコール分子、脂質、及びリポソームを含む。なぜなら、これらの薬剤は、例えば、細胞標的化分子の免疫原性及び/又は薬物動態を変化させることができるからである。
【0332】
ある特定の実施形態では、コンジュゲートされる物は、非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンである(例えば、米国特許第4,179,337号、同第4,301,144号、同第4,640,835号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、及び同第4,496,689号明細書を参照されたい)。これらのいずれか1つは、細胞標的化分子を変化させる薬剤として機能することができる。
【0333】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子のタンパク質性成分中のアミノ酸残基と共有結合でコンジュゲートされているカーゴ分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子中のシステイン、リジン又はヒスチジン残基と共有結合でコンジュゲートされているカーゴ分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分と、志賀毒素エフェクターポリペプチド中のシステイン、リジン又はヒスチジン残基を介して共有結合でコンジュゲートされているカーゴ分子を含む。ある特定のさらなる実施形態では、カーゴは、そのスルフヒドリル官能基を介して
システイン残基と共有結合で連結されている。ある特定のさらなる実施形態では、カーゴ分子は、小胞体又は還元環境を有する別の区画への到達時に、カーゴと志賀毒素エフェクターポリペプチド間のジスルフィド結合の還元に起因して細胞標的化分子から放出される(例えば、El Alaoui A et al., AngewChem Int Ed Engl 46: 6469-72 (2007)を参照さ
れたい)。
【0334】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子のタンパク質性成分とジスルフィド結合によってコンジュゲートされている核酸カーゴを含む(例えば、Muratovska A,Eccles M, FEBS Lett 558: 63-8 (2004);Ishihara T et al.,Drug Deliv 16: 153-9 (2009)を参照されたい)。
【0335】
ある特定の実施形態では、カーゴは、酵素を含む、タンパク質又はポリペプチドである。ある特定の他の実施形態では、カーゴは、例えば、低分子阻害RNA(siRNA)又はマイクロRNA(miRNA)として機能するリボ核酸などの、核酸である。ある特定の実施形態では、カーゴは、病原体に由来する抗原などの抗原、細菌タンパク質、ウイルスタンパク質、がんの際に変異されるタンパク質、がんの際に異常に発現されるタンパク質、又はT細胞相補性決定領域である。例えば、カーゴは、細菌に感染した抗原提示細胞により提示される抗原などの抗原、及び外因性抗原として機能することができるT細胞相補性決定領域を含みうる。ポリペプチド又はタンパク質を含むカーゴ分子は、当業者に公知であるか、未知であるかにかかわらず、1つ又は2つ以上の抗原を含むことがあってもよい。
【0336】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合している全ての異種抗原及び/又はエピトープは、細胞標的化分子内の、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端のアミノ末端側に、配置されている。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチドと会合された全ての異種抗原及び/又はエピトープは、志賀毒素エフェクターポリペプチドの志賀毒素A1断片領域のカルボキシ末端のアミノ末端側の位置で、志賀毒素エフェクターポリペプチドと直接的に又は間接的にどちらかで、会合している。ある特定のさらなる実施形態では、抗原である全ての追加の外在性物質は、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端と直接的に又は間接的に融合しているなど、志賀毒素エフェクターポリペプチドのアミノ末端側に配置されている。
【0337】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子のタンパク質性成分とジスルフィド結合によってコンジュゲートされているタンパク質-核酸複合体カーゴを含む。
【0338】
ある特定の実施形態では、カーゴ及び/又は検出促進剤は、本発明の分子のアミノ酸残基のチオール官能基とのコンジュゲーションのための、例えば、Alexa Fluor(登録商標)フルオロフォアのマレイミド誘導体などの、フルオロフォアである。
【0339】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、タンパク質切断により活性化されうる不活性ウイルス酵素であるジモキシンを含む(例えば、Shapira A et al., PLoS One 6: e15916(2011)を参照されたい)。
【0340】
ある特定の実施形態では、カーゴは、例えば、BCL-2、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-3又はカスパーゼ-6の断片)、シトクロム、グランザイムB、アポトーシス誘導因子(AIF)、BAX、tBid(トランケーション型Bid)、及びこれらのアポトーシス促進性の断片又は誘導体などの、アポトーシス促進性ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質である(例えば、Ellerby H et al.,Nat Med 5: 1032-8 (1999);Mai J et
al., Cancer Res 61: 7709-12 (2001);Jia L et al., CancerRes 63: 3257-62 (2003);Liu Y et al., Mol Cancer Ther 2: 1341-50 (2003);Perea S et al., Cancer Res 64: 7127-9(2004);Xu Y et al., J Immunol 173: 61-7 (2004);Dalken B et al.,Cell Death Differ 13: 576-85 (2006);Wang T et al.,Cancer Res 67: 11830-9 (2007);Kwon M et al., Mol CancerTher 7: 1514-22 (2008);Qiu X et al., Mol Cancer Ther 7:
1890-9 (2008);Shan L et al., Cancer Biol Ther 11: 1717-22 (2008);Wang F etal., Clin Cancer Res 16: 2284-94 (2010);Kim J et al., JVirol 85: 1507-16 (2011)
を参照されたい)。
【0341】
ある特定の実施形態では、カーゴは、例えば、小分子化学療法剤、抗新生物剤、細胞毒性抗生物質、アルキル化剤、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤及び/又はチューブリン阻害剤などの、細胞毒性薬剤である。本発明とともに使用するのに適している細胞毒性薬剤の非限定的な例は、アジリジン、シスプラチン、テトラジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ビンカアルカロイド、タキサン、カンプトテシン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、アクラルビシン、アントラサイクリン、アクチノマイシン、アマニチン、アマトキシン、ブレオマイシン、センタナマイシン(centanamycin)(インドールカルボキサミド)、プリカマイシン、マイトマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ドラスタチン、メイタンシン、メイタンシノイド、デューロマイシン(duromycin)、ドセタキセル、デュオカルマイシン
、アドリアマイシン、カリケアマイシン、アウリスタチン、ピロロベンゾジアゼピン、ピロロベンゾジアゼピン二量体(PBD,pyrrolobenzodiazepine dimers)、カルボプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、カペシタビン、マイトマイシンC、パクリタキセル、1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソウレア(BCNU)、リファンピシン、シスプラチン、メトトレキサート、ゲムシタビン、アセグラトン、アセトゲニン(例えば、ブラタシン及びブラタシノン)、アクラシノマイシン(aclacinomysin)、A
G1478、AG1571、アルドホスファミドグリコシド、アルキルスルホン酸(例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン)、アルキル化剤(例えば、チオテパ及びシクロホスファミド)、アミノレブリン酸、アミノプテリン、アムサクリン、アンシタビン、アントラマイシン、アラビノシド、アザシチジン、アザセリン、アジリジン(例えば、ベンゾデパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ(uredopa))、
アザウリジン、ベストラブシル、ビサントレン、ビスホスホネート(例えば、クロドロネート)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブリオスタチン、カクチノマイシン、カリスタチン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルモフール、カルムスチン、カ
ルジノフィリン、CC-1065、クロラムブシル、クロランブシル(chloranbucil)、クロルナファジン、クロロゾトシン、クロモマイシン、色素タンパク質エンジイン抗生物質クロモフォア、CPT-11、クリプトフィシン(例えば、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノマイシン、デフォファミン(defofamine)、デメコルシン、デトルビシン、ジアジクオン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ジデオキシウリジン、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、ドキシフルリジン、ドキソルビシン(例えば、モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロロリノドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシン)、ダイネマイシン、エダトラキサート(edatraxate)、エダトレキサート、エリュテロビン、エルフォルミチン(elformithine)、酢酸エリプチニウム、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン)、エニルウラシル、エノシタビン、エピルビシン、エポチロン、エソルビシン、エスペラミシン、エストラムスチン、エチレンイミン、2-エチルヒドラジド、エトグルシド、フルダラビン、葉酸アナログ(例えば、デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、及びトリメトレキサート)、葉酸補充薬(例えば、フォリン酸(frolinic acid))、ホテムスチン、フルベス
トラント、ガシトシン(gacytosine)、硝酸ガリウム、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イバンドロネート、イホスファミド、イマチニブメシル酸塩、エルロチニ
ブ、フルベストラント、レトロゾール、PTK787/ZK 222584(Novartis社製、Basel、CH)、オキサリプラチン、ロイコボリン、ラパマイシン、ラパチニブ、ロナ
ファルニブ、ソラフェニブ、メチルメラミン(例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン(triethy lenemelamine)、トリエチレンホスホルアミド(triethy lenephosphoramide)、トリエチレンチオホルホルアミド及びトリメチロメラミン)、パンクラチスタ
チン、サルコジクチン(sarcodictyin)、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、及びウラシルマスタード)、ニトロソウレア(nitrosurea)(例えば、カルムスチン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン(ranimnustine))、ダイネマイシン、ネオカルジノスタチンクロモフォア、アントラマイシン、デトルビシン、エピルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(例えば、マイトマイシンC)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィオマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン(rodorubicin)、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、プリン類似体
(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、及びチオグアニン)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、及びフロクスウリジン)、アセグラトン、レンチナン、ロニダミン(lonidainine)、メイタンシノイド(例えば、メイタンシン
及びアンサマイトシン)、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール(mopidanmol)、ニトラエリン(nitraerine)、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジン、リゾキシン、シゾフィラン(sizofuran)、スピ
ロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”トリクロロトリエチルアミン、トリコテセン(例えば、T-2トキシン、ベルカリンA(verracurin A)、ロジン、及びアングイジン)、ウレタン、ビンデシン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、アラビノシド、シクロホスファミド、トキソイド(例えば、パクリタキセル及びドキセタキセル)、6-チオグアニン、メルカプトプリン、白金、白金類似体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、エトポシド(VP-16)、ミトキサントロン、ビノレルビン、ノバントロン、ダウノマイシン、ゼローダ、トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000、レチノイド(例えば、レチノイン酸)、カペシタビン、ロムスチン、ロソキサントロン、メルカプトプリン、ニムスチン、ニトラエリン(nitraerine)、ラパマイシン、ラゾキサン、ロリジンA、スポンギスタチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スーテント、T-2トキシン、チアミプリン、チオテパ、トキソイド(例えば、パクリタキセル及びドキセタキセル)、ツベルシジン、ベルカリンA(verracurin A)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、並びに前述のもののいずれかについての構造類似体(例えば、合成類似体)、及び/又は前述のもののいずれかについての誘導体を含む(例えば、Lindell T et al., Science 170: 447-9 (1970);Remillard S etal., Science 189: 1002-5 (1975);Ravry M et al., Am J Clin Oncol 8: 148-50 (1985);Ravry M et al.,Cancer Treat Rep 69: 1457-8 (1985);Sternberg C et al.,Cancer 64: 2448-58 (1989);Bai R et al., Biochem Pharmacol 39: 1941-9(1990);Boger D, Johnson D, Proc Natl Acad Sci USA 92: 3642-9 (1995);BeckJ et al., Leuk Lymphoma 41: 117-24 (2001);Cassady J etal., Chem Pharm Bull(Tokyo) 52: 1-26 (2004);Sapra P et al.,Clin Cancer Res 11: 5257-64 (2005);Okeley N et al., Clinc Cancer Res 16: 888-97(2010);Oroudjev E et al., Mol Cancer Ther 9: 2700-13(2010)
;Ellestad G, Chirality 23: 660-71 (2011);Kantarjian H et al., Lancet Oncol 13:
403-11 (2012);Moldenhauer G et al., J Natl Cancer Inst104: 622-34 (2012);Gromek S, Balunas M, CurrTop Med Chem 14: 2822-34 (2015);Meulendijks D et al., Invest New Drugs 34: 119-28 (2016)を参照されたい)。
【0342】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、追加の外在性物質は、細胞への
様々な分子の送達効率が高いと見なされているポリペプチドであり、そのようなポリペプチドは、「細胞膜透過性ペプチド」(CPP,cell penetrating peptide)又は「タンパク質形質導入ドメイン」(PTD,protein transduction domain)としても公知である
(Futaki S et al., Biochemistry 41: 7925-30 (2002);Wender P et al., JAm Chem Soc 124: 13382-3 (2002);Dietz G, Bahr M, MolCell Neurosci 27: 85-131 (2004);Vives E, J Control Release 109: 77-85 (2005);Vives E et al., Biochim Biophys Acta
17866: 126-38 (2008);van den Berg A, Dowdy S, Curr Opin Biotechnol22: 888-93 (2011);Copolovici D et al., ACS Nano 8: 1972-94 (2014);KauffmanW et al., Trends Biochem Sci 40: 749-64 (2015);国際公開第2003106491号パフレット;米国特許第7,579,318号明細書;米国特許第7,943,581号明細書;米国特許第8,242,081号明細書を参照されたい)。ある特定の実施形態では、追加の外在性物質は、CPP及び/又はPTDと核酸の両方を含み、カチオン性ペプチドを含んでもよい(例えば、Lehto T et al.,Expert Opin Drug Deliv 9:823-36 (2012);Shukla R et al., Mol Pharm 11: 3395-408(2014);Beloor J et al., Ther Deliv6: 491-507 (2015);Chuah J et al., Biomacromolecules 10.1021/acs.biomac.6b01056 (2016);Cerrato C et al., Expert Opin Drug Deliv 1-11 (2016);Tai W, Gao X, AdvDrug Deliv Rev pii:S0169-409X: 30236-8 (2016);Wada S et al., Bioorg Med Chem 15: 4478-85 (2016)を参照されたい)。ある特定の実施形態では、追加の外在性物質は、別の追加の外在性物質の細胞内標的化のためのCPP及び/又はPTDを含む(例えば、Sakhrani N, Padh H, Drug Des Devel Ther 7: 585-99 (2013);Li H et al.,Int J Mol Sci 16: 19518-36 (2015);Cerrato C et al.,Expert Opin Drug Deliv 1-11(2016)を参照されたい)。
【0343】
II.本発明の細胞標的化分子の構造バリアントの例
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、結合領域、リンカー及び/又は毒素エフェクターポリペプチドなどの、分子の成分の多くは、既に記載されている(例えば、国際公開第2005/092917号パンフレット、国際公開第2007/033497号パンフレット、米国特許出願公開第2009/0156417号明細書、特許第4339511号公報、欧州特許第1727827号明細書、ドイツ特許第602004027168号明細書、欧州特許第1945660号明細書、特許第4934761号公報、欧州特許第2228383号明細書、米国特許出願公開第2013/0196928号明細書、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、米国特許出願公開第20150259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。
【0344】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子、並びに前のもののいずれかをコードするポリヌクレオチドに、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドの全体構造及び総合的機能を維持することにより、それらの生物学的活性を減少させることなく、変化、例えば、1つ又は2つの1)抗原性及び/又は免疫原子性の可能性を低下させる内在性エピトープ破壊、2)タンパク質切断を低減させるフーリン切断モチーフ破壊、並びに/或いは3)抗原性及び/若しくは免疫原性の可能性を低下させる並びに/又は細胞表面への提示のためにMHC I分子に送達されうるエピトープの埋め込み又は挿入に関連する変化を加えることができることは、当業者には分かるであろう。例えば、幾つかの修飾は、発現を助長することができ、精製を助長することができ、薬物動態特性を向上させることができ、及び/又は免疫原性を向上させることができる。そのような修飾は、当業者に周知であり、例えば、開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されるメチオニン、便利な位置にある制限部位又は終止コドンを生成するためにどちらかの末端に配
置される追加のアミノ酸、並びに簡便な検出及び/又は精製をもたらすためにどちらかの末端と融合される生化学的親和性タグを含む。非脊索動物系(例えば、原核細胞)を使用して産生されるポリペプチドの免疫原性を向上させるための一般的な修飾は、例えば細菌宿主系における産生などの産生中にホルミル化されうる出発メチオニン残基の、ポリペプチドの産生後の除去である。なぜなら、例えば、N-ホルミルメチオニン(fMet)は、脊索動物における望ましくない免疫応答を低減させる可能性があるからである。
【0345】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、本発明の細胞標的化分子又は本発明の細胞標的化分子のタンパク質性成分の、アミノ及び/又はカルボキシ末端における追加のアミノ酸残基、例えば、エピトープタグ若しくは他の部分構造の配列の組入れも、本書において企図される。追加のアミノ酸残基は、例えば、クローニングの助長、発現の助長、翻訳後修飾、修飾、合成の助長、精製、検出の助長、及び投与を含む、様々な目的に使用されうる。エピトープタグ及び部分構造の非限定的な例は、キチン結合タンパク質ドメイン、エンテロペプチダーゼ切断部位、第Xa因子切断部位、FIAsHタグ、FLAGタグ、緑色蛍光タンパク質(GFP,green fluorescent protein)、グルタチオン-S-トラ
ンスフェラーゼ部分構造、HAタグ、マルトース結合タンパク質ドメイン、mycタグ、ポリヒスチジンタグ、ReAsHタグ、strep-tag、strep-tag II、TEVプロテアーゼ部位、チオレドキシンドメイン、トロンビン切断部位、及びV5エピトープタグである。
【0346】
上記実施形態の幾つかにおいて、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞標的化分子のポリペプチド配列は、全ての必要な構造的特徴が依然として存在し、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、単独で、又は細胞標的化分子の成分として、どちらかで、いずれかの必要機能を示すことができることを条件に、ポリペプチド領域に導入される1つ又は2つ以上の保存的アミノ酸置換により変更される。本書において使用される場合、用語「保存的置換」は、1つ又は2つ以上のアミノ酸が、別の、生物学的に類似したアミノ酸残基により、置き換えられることを示す。例は、アミノ酸残基の、同様の特性を有するアミノ酸残基、例えば、小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び芳香族アミノ酸での、置換を含む(例えば、表Bを参照されたい)。内在性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質中で通常は見出されない残基での保存的置換の例は、アルギニン又はリジン残基の、例えば、オルニチン、カナバニン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸での、保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型サイレント置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。
【0347】
【表2】
【0348】
表Bにおける保存的置換スキームでは、アミノ酸の例示的な保存的置換は、物理化学特性により分類されている-I:中性、親水性;II:酸及びアミド;III;塩基性;IV:疎
水性;V:芳香族の嵩高いアミノ酸;VI:親水性非荷電、VII 脂肪族非荷電、VIII 非
極性非荷電、IX シクロアルケニル会合、X 疎水性、XI 極性、XII 小型、XIII 回
転許容;及びXIV 柔軟。例えば、保存的アミノ酸置換は、以下を含む:1)SをCで置
換することができる;2)M又はLをFで置換することができる、3)YをMで置換することができる、4)Q又はEをKで置換することができる、5)N又はQをHで置換することができる;及び6)HをNで置換することができる。
【0349】
さらなる保存的アミノ酸置換は、以下を含む:1)SをCで置換することができる;2)M又はLをFで置換することができる、3)YをMで置換することができる、4)Q又はEをKで置換することができる、5)N又はQをHで置換することができる;及び6)HをNで置換することができる。
【0350】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、本書に列挙されるポリペプチド配列と比較して最大で20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1つのアミノ酸置換を有する、本書に記載される本発明のポリペプチド領域の機能性断片又はバリアントを含んでいてもよいが、それが、(1)少なくとも1つの埋め込まれた若しくは挿入された異種T細胞エピトープを含み、実施例(例えば、表1~7及び/若しくは12を参照されたい)で提供される内在性B細胞及び/若しくはCD4+T細胞エピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されており、破壊されているアミノ酸が、埋め込まれた若しくは挿入されたエピトープと重複しないこと;(2)少なくとも1つの埋め込まれた若しくは挿入された異種T細胞エピトープを含み、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフを含むこと;又は(3)志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフを含み、実施例(例えば、表1~7及び/若しくは12を参照されたい)で提供される内在性B細胞及び/若しくはCD4+T細胞エピトープ領域が破壊されている少なくとも1つのアミノ酸を含み、破壊されているアミノ酸が、破壊されたフーリン切断モチーフと重複しないことを条件とする。細胞毒性の変更、細胞静止作用の変更、免疫原性の変更及び/又は血清半減期の変更などの所望の特性を達成するために、例えば、結合領域又は志賀毒素エフェクターポリペプチド領域内で、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸
残基を変化させること、又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸残基を欠失させるか若しくは挿入することによる、本書に記載されるポリペプチドの変更の結果としての、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子のバリアントは、本発明の範囲内である。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、さらに、シグナル配列を伴うこともあり、又は伴わないこともある。
【0351】
したがって、ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、SLT-1A(配列番号1)、StxA(配列番号2)及び/若しくはSLT-2A(配列番号3)などの志賀毒素Aサブユニットなどの、天然に存在する志賀毒素Aサブユニット若しくはその断片に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%若しくは99%の全体的な配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれらから本質的になり、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、(1)少なくとも1つの埋め込まれた若しくは挿入された異種T細胞エピトープを含み、実施例(例えば、表1~7及び/若しくは12を参照されたい)で提供される内在性B細胞及び/若しくはCD4+T細胞エピトープ領域内の少なくとも1つのアミノ酸が破壊されており、破壊されているアミノ酸が、埋め込まれた若しくは挿入されたエピトープと重複しないものであるか;(2)少なくとも1つの埋め込まれた若しくは挿入された異種T細胞エピトープを含み、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフを含むか;又は(3)志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフを含み、実施例(例えば、表1~7及び/若しくは12を参照されたい)で提供される内在性B細胞及び/若しくはCD4+T細胞エピトープ領域内に破壊されている少なくとも1つのアミノ酸を含み、破壊されているアミノ酸が、破壊されたフーリン切断モチーフと重複しないものである。
【0352】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を変異させて、挿入して、又は欠失させて、志賀毒素エフェクターポリペプチドの酵素活性を増大させることができる。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、ある特定の実施形態では、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基を変異又は欠失させて、志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性及び/又は細胞毒性活性を低下させること又は除去することができる。例えば、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの触媒活性及び/又は細胞毒性活性を、変異又はトランケーションにより減少又は除去することができる。
【0353】
志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性を、変異及び/又はトランケーションにより変化させること、低下させること、又は除去することができる。チロシン-77、グルタメート-167、アルギニン-170、チロシン-114及びトリプトファン-203と表示される位置は、Stx、Stx1及びStx2の触媒活性にとって重要であることが証明されている(Hovde C et al.,Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988);Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992);Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993);Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993);Cao C etal., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994);Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9(1998))。グルタメート-167とアルギニン-170の両方を変異させることにより、無細胞リボソーム不活性化アッセイにおいてSlt-I A1の酵素活性が除去された(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
小胞体におけるSlt-I A1の新規発現を使用する別の手法では、グルタメート-167とアルギニン-170の両方を変異させることにより、その発現レベルでSlt-I
A1断片細胞毒性が除去された(LaPointe P et al., J Biol Chem 280:23310-18 (2005))。トランケーション分析により、残基75~268のStxAの断片はインビトロ
で有意な触媒活性を依然として保持することが実証された(Haddad J et al., J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1~239を含有するSlt-I A1のトランケーシ
ョンされた断片は、サイトゾルにおける新規発現により、有意な酵素活性をインビトロで呈し、細胞毒性を呈した(LaPointeP et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
トランケーションされて残基1~239となったSlt-I A1断片の小胞体における発現は、それを逆行輸送することができないので、細胞毒性でなかった(LaPointe P et al., J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
【0354】
志賀毒素Aサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性のために最も肝要な残基は、次の残基位置にマッピングされた:特に、アスパラギン-75、チロシン-77、チロシン-114、グルタメート-167、アルギニン-170、アルギニン-176、及びトリプトファン-203(Di R et al., Toxicon 57: 525-39 (2011))。特に、グルタメート-E167からリジンへの変異及びアルギニン-176からリジンへの変異を有するStx2Aの二重変異型構築物は、完全に不活性化され、これに対して、Stx1及びStx2における多くの単一変異は、細胞毒性の1/10への低下を示した。さらに、1~239又は1~240となるStx1Aのトランケーションは、その細胞毒性を低下させ、同様に、保存疎水性残基となるStx2Aのトランケーションは、その細胞毒性を低下させた。志賀毒素Aサブユニットにおいて真核生物リボソームの結合及び/又は真核生物リボソーム阻害に最も肝要な残基は、次の残基位置にマッピングされている:特に、アルギニン-172、アルギニン-176、アルギニン-179、アルギニン-188、チロシン-189、バリン-191、及びロイシン-233(McCluskey A et al., PLoS One 7: e31191(2012))。しかし、ある特定の修飾は、本発明の志賀毒素エフェクターポ
リペプチドにより示される志賀毒素機能活性を増大させることができる。例えば、Stx1Aにおける残基位置アラニン-231からグルタメートへの変異は、Stx1Aの酵素活性をインビトロで増大させた(Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9(1998))。
【0355】
SLT-1A(配列番号1)又はStxA(配列番号2)に由来する本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドの、ある特定の実施形態では、変異される1つ又は2つ以上のアミノ酸残基は、75位におけるアスパラギンの置換、77位におけるチロシン、114位におけるチロシン、167位におけるグルタメート、170位におけるアルギニン、176位におけるアルギニン、及び/又は203位におけるトリプトファンの置換を含む。そのような置換の例、例えば、75位におけるアスパラギンからアラニン;77位におけるチロシンからセリン;114位におけるチロシンのセリンへの置換;167位におけるグルタメートからグルタメート、グルタミン若しくはリジンへの置換;170位におけるアルギニンのアラニン、グリシン若しくはリジンへの置換;176位におけるアルギニンのリジンへの置換;203位におけるトリプトファンのアラニンへの置換;及び/又は231位におけるアラニンのグルタメートでの置換は、先行技術に基づいて当業者には公知であろう。志賀毒素酵素活性及び/又は細胞毒性を増強するか又は低下させるどちらかの他の変異は、本発明の範囲内であり、周知の技術及び本書において開示されるアッセイを使用してそのような変異を判定することができる。
【0356】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定の実施形態では、足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号233~756のいずれか1つから選択される。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号233~756のいずれか1つから選択され、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、リンカーをさらに含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号233~756のいずれか1つから選択され、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号757~761のいずれか1つから選択されるリンカーをさらに含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、足場内の志賀毒素エフェクタ
ーポリペプチドの外部に存在する単一のユニークなシステイン又はリジン残基があることを条件に、足場の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分は、配列番号233~756のいずれか1つから選択され、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号757~761のいずれか1つから選択されるリンカーをさらに含む。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の、ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号762~767のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。
【0357】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、配列番号5~756のいずれか1つから選択される志賀毒素エフェクターポリペプチド成分を含む。
【0358】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド足場を含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、1つだけのシステイン及び/又はリジン残基を含む。ある特定のさらなる実施形態では、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場は、配列番号762~767のいずれか1つから選択される。
【0359】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、配列番号757~761及び768~772のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0360】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、配列番号773~829のいずれか1つを含むか又はそれから本質的になる。
【0361】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、細胞標的化分子は、免疫グロブリンドメインを含む結合領域を含む。本発明の細胞標的化分子の、ある特定のさらなる実施形態では、結合領域は、(a)配列場号844、850、857、863、869、875、881、885、891、897、903、909、915、921、927、933、939、948、954、960、966、972、978、984、990、996、1002、1008、1014、1020、1026、1032、1035、1041、1044、1050、1056、1062、1065、1071、1077、1083、1089及び1095のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはこれから本質的になるHCDR1と、配列番号845、851、856、858、864、876、886、892、898、904、910、916、922、928、934、940、949、955、961、967、973、979、985、991、997、1003、1009、1015、1021、1027、1036、1042、1045、1051、1057、1063、1066、1072、1078、1084、1090及び1096で示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはこれらから本質的になるHCDR2と、配列番号846、852、859、865、870、872、877、882、887、893、899、905、911、917、923、929、935、941、950、956、962、968、974、980、982、986、992、998、1004、1010、1016、1022、1028、1037、1043、1046、1064、1052、1058、1067、1073、1079、1085、1091及び1097のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはこれから本質的になるHCDR3とを含む、重鎖可変(V)ドメイン;及び(b)配列番号847、853、860、866、871、888、894、900、906、912、918、924、930、936、942、947、953、959、965、971、977、983、989、995、1001、1007、1013、1019、1025、1032、1038、1047、1053、1059、1068、1074、1080、1086、1092及び1098のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはこれから本質的になるHCDR1と、配列番号848、854、861、86
7、883、889、895、901、907、913、919、925、931、937、948、954、960、966、972、978、984、990、996、1002、1008、1014、1020、1026、1033、1039、1048、1054、1060、1069、1075、1081、1087、1093及び1099のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはこれから本質的になるLCDR2と、配列番号849、855、862、868、884、890、896、902、908、914、920、926、932、938、949、955、961、967、973、979、985、991、997、1003、1009、1015、1021、1027、1034、1040、1049、1055、1061、1070、1076、1082、1088、1094及び1100のいずれか1つで示されるようなアミノ酸配列を含むか若しくはこれらから本質的になるLCDR3とを含む、軽鎖可変(V)ドメインからなる群から選択されるポリペプチドを含む。
【0362】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場及び細胞標的化分子は、治療剤、診断剤、及び/又は当技術分野において公知の他の追加の外在性物質(本書に記載されるような、そのような薬剤を含む)を含みうる、1つ又は2つ以上の追加の薬剤とコンジュゲートされていることがあってもよい。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場又は細胞標的化分子は、例えば、例えば、脱免疫化をもたらすこと、志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端における伸長ループ及び/若しくはフーリン切断モチーフを隠蔽することによりフーリン切断を破壊すること、薬物動態特性を向上させること、並びに/又は免疫原性を向上させることなどのために、PEG化又はアルブミン化される(例えば、Wang Q et al., Cancer Res 53: 4588-94 (1993);Tsutsumi Y et al.,Proc Natl Acad Sci USA 97: 8548-53 (2000);Buse J, El-Aneed A, Nanomed5: 1237-60 (2010);Lim S et al., J Control Release207-93 (2015)を参照されたい)。
【0363】
III.本発明の細胞標的化分子の一般機能
本発明の分子は、細胞標的化分子が関与する様々な応用に有用である(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/120058号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第2016/177284明細書、国際公開第2016/126950号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び国際公開第2017/019623号パンフレットを参照されたい)。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、結合領域ポリペプチド及びリンカーは、特性が向上された細胞標的化分子を生成するための成分として使用することができる(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/120058号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第2016/177284明細書、国際公開第2016/126950号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び国際公開第2017/019623号パンフレットを参照されたい)。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、結合領域ポリペプチド及びリンカーは、例えば、リガンド-毒素融合体、免疫毒素、及びイムノコンジュゲートなどの、様々な治療用及び/又は診断用分子の成分として有用である(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレッ
ト、国際公開第2015/138435号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第2016/177284明細書、国際公開第2016/126950号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び国際公開第2017/019623号パンフレットを参照されたい)。志賀毒素エフェクターポリペプチドと細胞標的化結合領域の機能的会合は、特異的細胞型を選択的に殺滅する、それらの増殖を阻害する、それらに外在性物質を送達する、及び/又はそれらを検出する、細胞標的化分子の生成を可能にする。例えば、本発明のある特定の細胞標的化分子は、サイトゾルに有効に経路決定することができる触媒活性志賀毒素エフェクターポリペプチドを、標的発現細胞の内部に効率的に送達するそれらの能力によって、標的発現細胞に対して強力に細胞毒性でありうる。
【0364】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、例えば、細胞殺滅、細胞増殖阻害、細胞内のカーゴ送達、生物学的情報の収集、免疫応答刺激、及び/又は健康状態の改善を含む、多様な応用に有用である。本発明の細胞標的化分子は、治療用及び/又は診断用分子として、例えば、細胞を標的とする細胞毒性の治療用分子、細胞を標的とする非毒性の送達媒体、及び/又は細胞を標的とする診断用分子などとして、例えば、がん、免疫障害、及び微生物感染症を含む、様々な疾患の診断又は治療のための特異的細胞型へのインビボでの標的化を含む用途に有用である。
【0365】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、分子カーゴの、それらのカーゴを細胞に標的送達することができる細胞標的化分子を形成するための、制御された部位特異的なコンジュゲーションを可能にする。例えば、改変システイン残基、非天然アミノ酸残基及び/又は酵素的コンジュゲーションなどの戦略を使用して、単一のアミノ酸残基又はそれに結合されているリンカーで起るようにコンジュゲーションを化学的に制限して、被定義コンジュゲート化学量論組成を有する均一な産物を産生することができる。同様に、本発明の細胞標的化分子は、例えば、治療用分子、免疫原性低下剤、半減期延長剤及び様々な他のカーゴを伴うコンジュゲートなどの、有用な細胞標的化分子コンジュゲートを形成するための、制御された部位特異的な異種分子のコンジュゲーションを可能にする。
【0366】
本発明の細胞標的化分子、及びそれらの組成物は、例えば、標的発現細胞へのカーゴの選択的送達のために使用され、並びに遺伝性障害、遺伝的素因、感染症、がん、腫瘍、増殖異常、及び/又は免疫障害を含む、様々な疾患、障害及び状態の治療のための治療薬として使用される。本発明のある特定の細胞標的化分子及びそれらの組成物を使用して、その細胞標的化及び細胞内在化活性に基づいて1つ又は2つ以上の他の細胞型の存在下で、標的発現細胞型に、例えば所望の細胞内機能を有するカーゴなどの、コンジュゲートされているカーゴを選択的に送達することができる。加えて、本発明のある特定の細胞標的化分子及びそれらの組成物を使用して、例えば、標的とする標的発現細胞の内部に、細胞内位置で細胞毒性である細胞標的化分子の成分を送達することなどにより、その細胞標的化活性及び細胞内在化活性に基づいて1つ又は2つ以上の他の細胞型の存在下で標的発現細胞を選択的に殺滅することができる。
【0367】
実施形態に依存して、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子は、次の特性又は機能性のうちの1つ又は2つ以上を有すること又は提供することができる:(1)脱免疫化(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレットを参照されたい)、(2)プロテアーゼ切断耐性(例えば、国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)、(3)ある特定の濃度での強力な細胞毒性、(4)追加の物質(例えば、異種T細胞エピトープ)からなるカーゴの細胞内送達(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照されたい)、(4)選択的細胞毒性、(6)ある特定の用量若しくは投
薬量での多細胞生物における低いオフターゲット毒性(国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)、(7)標的細胞のMHCクラスI提示経路への異種T細胞エピトープの送達(例えば、国際公開2015/113005号パンフレットを参照されたい)、及び/又は(8)CD8+T細胞免疫応答の刺激。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、分子が、本書に記載される特性又は機能性の2つ又は3つ以上を有するため、多機能性である。
【0368】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子は、特定の細胞型の細胞表面と会合している細胞外標的生体分子に結合することができ、それらの細胞に侵入することができる。標的とした細胞型に内在化されると、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、酵素的に活性な細胞毒性の志賀毒素エフェクターポリペプチド断片を標的細胞のサイトゾルに経路決定することができ、最終的には細胞を殺滅することができる。或いは、本発明の細胞標的化分子の非毒性又は毒性低下バリアントを使用して、B細胞又はT細胞エピトープ、ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド及び検出促進剤などの、追加の外在性物質を、標的細胞に送達することができる。この系は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドを様々なそれぞれ異なる細胞型に標的化するために、任意の数のそれぞれ異なる結合領域を使用することができる点で、モジュラーである。
【0369】
A.志賀毒素Aサブユニット細胞毒性による細胞殺滅
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、細胞毒性である。本発明の細胞標的化分子の、ある特定のさらなる実施形態は、1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の存在に専ら起因して、細胞毒性である。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットは各々、真核細胞を、ひとたび細胞のサイトゾルに入れば、殺滅することができる、酵素的に活性なポリペプチド領域を含む。志賀毒素ファミリーのメンバーは、真核細胞の殺滅に適応するため、例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドのある特定の実施形態を含む分子などの、志賀毒素に由来する分子は、強力な細胞殺滅活性を示すことができる。
【0370】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞(例えば、標的陽性細胞)の接触時、細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすことができる。ある特定のさらなる実施形態については、細胞標的化分子のCD50値は、5、2.5、1、0.5、又は0.25nM未満であり、これは、標的化されていない野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(配列番号830)よりはるかに強力である。
【0371】
細胞殺滅は、例えば、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料中の標的細胞、又は多細胞生物体内のようなインビトロ設定での標的細胞などの、標的細胞の多様な条件下で、本発明の分子を使用して遂行することができる。
【0372】
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、(1)脱免疫化された志賀毒素エフェクター小領域、(2)志賀毒素A1断片由来領域のカルボキシ末端付近のプロテアーゼ切断耐性領域、(3)カルボキシ末端の小胞体保留/回収シグナルモチーフ、及び/又は(4)異種Tエピトープ埋込み若しくは挿入領域を含むが、ある特定のさらなる実施形態については、これらの構造修飾は、例えば野生型志賀毒素A1断片などの、野生型志賀毒素Aサブユニットポリペプチドを含む参照分子と比較して志賀毒素細胞毒性強度を有意に変化させない。したがって、脱免疫化されている、プロテアーゼ切断耐性である、及び/又は埋め込まれた若しくは挿入された異種エピトープを保有している、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、強力な細胞毒性を維持する上に1つ又は2つ以上の様々な他の機能性又は特性を提
供することができる。
【0373】
志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む既に細胞毒性の細胞標的化分子を、当業者は、本書において提供される情報及び方法を使用して、より強い細胞毒性になるように、及び/又は完全に異なる機序によって動作する冗長なバックアップ細胞毒性を有するように、改変することができる。これらの複数の細胞毒性機序は、それらの多様な機能により互いを補完することが(例えば、直接的及び間接的な、2つの細胞殺滅機序による強力な殺滅をもたらすこと、並びに局所領域に対する免疫賦活機序をもたらすにより)でき、互いを冗長にバックアップすることが(例えば、標的細胞が、以前活性であった機序のサブセットに対して耐性であるか又は多少の免疫を獲得している場合-例えば、他の機序の非存在下で1つの細胞殺滅機序をもたらすことにより)でき、及び/又は発生した耐性から保護することが(複数の異なる細胞殺滅機序を同時に遮断する悪性又は感染細胞の発生確率の低い状況に耐性を制限することにより)できる。
【0374】
B.細胞表面へのMHCクラスI提示のためのT細胞エピトープの送達
ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、T細胞エピトープを含み、これにより、送達及び有核脊索動物細胞による細胞表面提示のためのエピトープ-ペプチドカーゴの事実上無制限の選択肢がある「T細胞エピトープ送達」分子の改変が可能になる。ある特定の実施形態については、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は各々、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞標的化分子と会合している1つ又は2つ以上のT細胞エピトープを、細胞のプロテアソームに送達することができる。すると、送達されたT細胞エピトープは、タンパク質分解性プロセシングを受け、MHCクラスI経路により細胞の表面に提示される。MHCクラスIエピトープを細胞標的化分子とコンジュゲートさせることにより、免疫賦活抗原の標的送達及び提示を遂行して、脊索動物免疫系の有益な機能を利用すること及び指示することができる。
【0375】
ある特定の実施形態については、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子は、細胞表面提示のために細胞のMHCクラスI分子にT細胞エピトープを送達することができる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子は、追加の外在性物質としてであるか、志賀毒素エフェクターポリペプチドの中に埋め込まれている又は挿入されているのかにかかわらず、異種T細胞エピトープを含む。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子は、埋め込まれた又は挿入されたT細胞エピトープを、細胞表面提示のためにMHCクラスI分子に送達することができる。
【0376】
ある特定の実施形態については、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドとコンジュゲートされているT細胞エピトープを、志賀毒素エフェクターポリペプチドが存在する細胞のMHCクラスI分子に、細胞上へのMHCクラスI分子によるT細胞エピトープの提示のために送達することができる。ある特定のさらなる実施形態については、T細胞エピトープは、異種T細胞エピトープである。ある特定のさらなる実施形態については、T細胞エピトープは、当業者にとって既知であるのか、当業者にとって現在通例である方法を使用して将来同定されるのかにかかわらず、CD8+T細胞エピトープとして機能する。
【0377】
ある特定の実施形態について、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子と会合しているT細胞エピトープを、細胞のMHCクラスI分子に、細胞上へのMHCクラスI分子によるT細胞エピトープの提示のために送達することができる。ある特定のさらなる実施形態については、T細胞エピトープは、志賀毒素エフェクターポリペプチドとコンジュゲートされている異種T細胞エピトープである。ある特定のさらなる実施形態については、
T細胞エピトープは、当業者にとって既知であるのか、当業者にとって現在通例である方法を使用して将来同定されるのかにかかわらず、CD8+T細胞エピトープとして機能する。
【0378】
ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子と細胞の接触時、細胞標的化分子は、細胞標的化分子と会合しているT細胞エピトープ-ペプチドを、細胞のMHCクラスI分子に、細胞の表面へのMHCクラスI分子によるT細胞エピトープペプチドの提示のために送達することができる。ある特定のさらなる実施形態については、T細胞エピトープ-ペプチドは、志賀毒素エフェクターポリペプチドとコンジュゲートされている異種エピトープである。ある特定のさらなる実施形態については、T細胞エピトープ-ペプチドは、当業者にとって既知であるのか、当業者にとって現在通例である方法を使用して将来同定されるのかにかかわらず、CD8+T細胞エピトープとして機能する。
【0379】
追加の外在性物質としてであっても、志賀毒素エフェクターポリペプチドの中に埋め込まれている又は挿入されていても、本発明の細胞標的化分子への異種エピトープの付加、又は本発明の細胞標的化分子中の異種エピトープの存在は、脊索動物体内の有核標的細胞による細胞表面提示のための、選ばれたエピトープの、細胞への標的送達のために、そのような細胞標的化分子を使用する方法を可能にする。
【0380】
本発明のある特定の、CD8+T細胞高度免疫化志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子の1つの機能は、細胞によるMHCクラスI提示のためのMHCクラスI分子への1つ又は2つ以上のT細胞エピトープ-ペプチドの送達である。標的細胞のMHCクラスI系への外在性T細胞エピトープ-ペプチドの送達を使用して、MHCクラスI分子と会合しているT細胞エピトープ-ペプチドを細胞表面に提示するように標的細胞を誘導することができ、これにより、その後、CD8+エフェクターT細胞が活性化して標的細胞を攻撃することになる。
【0381】
当業者は、当技術分野において公知の技術を使用して本発明のある特定の志賀毒素エフェクターポリペプチドを様々な他の細胞標的化結合領域と会合、カップリグ及び/又は連結させて、細胞と物理的にカップリングされている特異的な細胞外標的生体分子を標的とする本発明の細胞標的化分子を生成すること、及びこれらの細胞標的化分子の標的細胞内在化を促進することができる。全ての有核脊椎動物細胞は、MHCクラスI系を使用して細胞内エピトープを提示することができると考えられている。したがって、本発明の細胞標的化分子の細胞外標的生体分子は、原理上は、いかなる有核脊椎動物細胞も、そのような細胞のMHCクラスI提示経路へのT細胞エピトープ送達の標的とすることができる。
【0382】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子のエピトープ送達機能は、当技術分野において当業者に公知の及び/又は本書に記載される様々な標準的方法により検出及びモニターすることができる(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照されたい)。
【0383】
本発明のポリペプチド及び分子のこの機能をモニターするための、ある特定のアッセイは、特異的MHCクラスI/ペプチド抗原複合体のインビトロ又はエクスビボでの直接的検出を伴う。ペプチド-MHCクラスI複合体の直接的可視化及び定量の一般的方法は、当業者に公知の様々な免疫検出試薬を伴う。例えば、特定のMHC/クラスI/ペプチド抗原複合体を認識するための特異的モノクローナル抗体を生じさせることができる。同様に、TCR-STAR試薬(Altor Bioscience社、Mirmar、FL、U.S.)などの、可溶性多量体T細胞受容体を使用して、特異的MHC I/抗原複合体を直接的に可視化又は定量することができる(Zhu X et al., J Immunol 176: 3223-32 (2006))。これらの特異的mAb又
は可溶性多量体T細胞受容体は、例えば、免疫組織化学的検査、フローサイトメトリー、
及び酵素結合イムノアッセイ(ELISA、enzyme-linked immunoassay)を含む、様々な検出方法とともに使用することができる。
【0384】
MHC I/ペプチド複合体の直接的同定及び定量のための代替方法は、例えば、ペプチド-MCHクラスI複合体を細胞表面から抽出し、次いで、シークエンシング質量分析によりペプチドを精製及び同定する、ProPresent Antigen Presentation Assay(ProImmune社、Sarasota、FL、U.S.)などの、質量分析
を含む(Falk K et al., Nature 351: 290-6 (1991))。
【0385】
本発明のポリペプチド及び分子のT細胞エピトープ送達及びMHCクラスI提示機能をモニターするための、ある特定のアッセイは、MHCクラスIとペプチド結合の結合及び安定性をモニターする計算方法及び/又は実験方法を伴う。MHCクラスIアレルに対するペプチドの結合応答を予測するために、当業者は、例えば、免疫エピトープデータベース及び分析資源(IEDB,The Immune Epitope Database and Analysis Resource)分
析資源MHC-I結合予測コンセンサスツール(Kim Y et al., Nucleic Acid Res40: W525-30 (2012))などの、幾つかのソフトウェアプログラムを使用することができる。例
えば、細胞表面結合アッセイ及び/又は表面プラズモン共鳴アッセイなどの、幾つかの実験アッセイは、結合反応速度を定量及び/又は比較するために、日常的に使用されている(Miles K et al., Mol Immunol 48: 728-32 (2011))。加えて、公知対照との比較とし
て、所与のMHCクラスIアレルについて三元MHC-ペプチド複合体を安定させるペプチドの能力の程度に基づく他のMHC-ペプチド結合アッセイ(例えば、ProImmmune社からのMHC-ペプチド結合アッセイ)が、開発された。
【0386】
或いは、特異的複合体に対する細胞毒性T細胞(CTL,cytotoxic T-cell)応答をモニターすることにより、細胞表面へのMHCクラスI/ペプチド抗原複合体提示の結果の測定を行うことができる。これらの測定は、MHCクラスI四量体又は五量体試薬でのCTLの直接的標識を含む。四量体又は五量体は、特定の特異性のT細胞受容体と直接的に結合し、その特異性は、主要組織適合複合体(MHC,Major Histocompatibility Complex)アレルとペプチドの複合体により決定される。加えて、ELISA又は酵素免疫スポット(ELIspot,enzyme-linked immunospot)によるインターフェロンガンマ又はインターロイキンなどの放出サイトカインの定量は、一般に、特異的CTL応答を同定するためにアッセイされる。CTLの細胞毒性能は、古典的クロム51(Cr)放出アッセイ若しくは代替的非放射性細胞毒性アッセイ(例えば、Promega社、Madison、WI、U.S.から入手可能なCytoTox96(登録商標)非放射性キット及びCellTox(商標)CellTiter-GLO
(登録商標)キット)、グランザイムB ELISpot、カスパーゼ活性アッセイ又はLAMP-1転移フローサイトメトリー分析を含む、多数のアッセイを使用して測定することができる。標的細胞の殺滅を特異的にモニターするために、カルボキシフルオレセイン二酢酸スクシンイミジルエステル(CFSE)を使用して、インビトロ又はインビボでの研究のために所望の細胞集団を容易且つ迅速に標識して、エピトープ特異的CSFE標識標的細胞の殺滅をモニターすることができる(Durward M et al., J Vis Exp 45 pii 2250(2010))。
【0387】
MHCクラスI提示に対するインビボでの応答後に、MHCクラスI/抗原促進剤(例えば、免疫原性ペプチド、タンパク質又は不活性化/弱毒ウイルスワクチン)を投与し、続いて、活性薬剤(例えば、ウイルス)で追加免疫し、その薬剤に対する応答を、通常は、ワクチン接種が施されていない対照と比較して、モニターすることができる。エクスビボの試料を、前に説明したもの(例えば、CTL細胞毒性アッセイ、及びサイトカイン放出の定量)と同様の方法で、CTL活性についてモニターすることができる。
【0388】
HLA-A、HLA-B、及び/又はHLA-C分子は、免疫親和性を使用する溶解後
に中毒細胞から単離され(例えば、抗MHC抗体「プルダウン」精製)、会合しているペプチド(すなわち、単離されたMHC分子により提示されるペプチド)が、精製複合体から回収される。回収されたペプチドは、シークエンシング質量分析により分析される。質量分析データは、外在性(非自己)ペプチド(T細胞エピトープX)の配列及びヒトについての国際タンパク質インデックス(international protein index)からなるタンパク
質データベースと比較される(「自己」又は非免疫原性ペプチドを表す)。ペプチドは、確率データベースに従って有意性により順位付けされる。検出された全ての抗原性(非自己)ペプチド配列が列挙される。データは、偽ヒットを低減させるためにスクランブルデコイデータベースに対する検索により検証される(例えば、Ma B, Johnson R, Mol Cell Proteomics 11: O111.014902 (2012)を参照されたい)。それらの結果により、T細胞エ
ピトープXからのペプチドはMHC複合体で中毒標的細胞の表面に提示されることが実証されるであろう。
【0389】
提示されるペプチド-抗原-MHC複合体のセットは、発現される抗原特異的HLA分子に起因して細胞によって異なりうる。その場合、T細胞は、異なる抗原特異性を有する異なるTCR分子を使用して、細胞表面に提示された特異的ペプチド-抗原-MHC複合体を認識することができる。
【0390】
例えば、単一のプロテアソーム送達エフェクターポリペプチドに2つ又は3つ以上の異なるT細胞エピトープを埋め込むことなどにより、複数のT細胞エピトープを本発明の細胞標的化分子により送達することができるため、本発明の単一の細胞標的化分子は、異なるMHCクラスバリアントを有する同じ種の脊索動物、例えば、異なるHLAアレルを有するヒトなどにおいて、有効でありうる。これは、MHC複合体タンパク質多様性及び多型性に基づき対象の異なる部分母集団において異なる有効性を有する異なるT細胞エピトープを単一の分子内に併せ持つことを可能にしうる。例えば、ヒトMHC複合体タンパク質、HLAタンパク質は、遺伝的祖先に基づいてヒト、例えば、アフリカ人(サハラ以南)、アメリカ先住民、白人種、蒙古人種、ニューギニア人及びオーストラリア人、又は太平洋諸島の住民によって異なる。
【0391】
本発明のT細胞エピトープ送達ポリペプチド及び分子を伴う応用は、膨大である。哺乳類生物におけるあらゆる有核細胞は、MHCクラスI分子と複合体を形成しているそれらの細胞の外面に免疫原性T細胞エピトープ-ペプチドをMHCクラスI経路で提示することが可能でありうる。加えて、T細胞エピトープ認識感度は、非常に優れているので、免疫応答をもたらすためにほんの小数のMHC-Iペプチド複合体の提示しか必要としない、例えば、単一の複合体の提示であってもエフェクターT細胞による認識に十分でありうる(Sykulev Y et al.,Immunity 4: 565-71 (1996))。
【0392】
T細胞応答の活性化は、標的とした細胞に対して患者自身の免疫系を刺激するための、ある特定の抗がん薬、抗新生物薬、抗腫瘍薬及び/又は抗微生物薬の、望ましい特性である。強固な強いT細胞応答の活性化もまた、多くのワクチンの望ましい特性である。生物体内の標的細胞によるT細胞エピトープの提示は、標的細胞及び/又は生物体内のその通常の位置に対する強固な免疫応答の活性化をもたらしうる。したがって、提示のためのT細胞エピトープの標的送達を、治療レジメン中にT細胞応答を活性化するための活性化機序として利用することができる。
【0393】
MHCクラスI系によるT細胞免疫原性エピトープ-ペプチドの提示は、提示細胞をCTL媒介溶解による殺滅の標的とし、及びまた局所微小環境において免疫刺激を誘発する。標的細胞内在化治療用分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分中の免疫原性エピトープ配列を改変することにより、免疫賦活抗原の標的送達及び提示を遂行することができる。標的細胞による、例えば、高い免疫原性を有する公知ウイルス抗原などの、免疫賦
活自己抗原の提示は、他の免疫細胞に、標的細胞を破壊するように、及びより多くの免疫細胞をその領域に動員するように、シグナル伝達する。
【0394】
MHCクラスI複合体による免疫原性T細胞エピトープ-ペプチドの提示は、提示細胞をCTL媒介細胞溶解による殺滅の標的とする。標的とした細胞による、例えば、高い免疫原性を有する公知ウイルスエピトープ-ペプチドなどの、免疫賦活非自己抗原の提示は、他の免疫細胞に、標的細胞を破壊するように、及びより多くの免疫細胞を脊索動物体内の標的細胞部位に動員するように、シグナル伝達することができる。
【0395】
したがって、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む治療用分子又は潜在的治療用分子などの、既に細胞毒性の分子を、本発明の方法を使用して改変して細胞毒性がより強い分子にすることができ、及び/又はT細胞エピトープの送達、提示、及びエフェクターT細胞の刺激によって動作する追加の細胞毒性機序を有するように改変することができる。これらの複数の細胞毒性機序は、互いを補完することが(例えば、直接的標的細胞殺滅と間接的(CTL媒介)殺滅の両方をもたらすことにより)でき、互いを冗長にバックアップすることが(例えば、一方の細胞殺滅機序を他方の非存在下でもたらすことにより)でき、及び/又は発生した治療耐性から保護することが(2つの異なる細胞殺滅機序を同時に遮断するように進化する悪性又は感染細胞の発生確率の低い状況に耐性を制限することにより)できる。
【0396】
加えて、触媒作用に基づく細胞毒性を示す志賀毒素エフェクターポリペプチド成分を含む細胞毒性分子を、当業者は、通例の方法を使用して改変して、酵素的に不活性なバリアントにすることができる。例えば、結果として得られる分子が、標的細胞のMHCクラスI系にT細胞エピトープを送達するその能力及びその後の標的細胞の表面への提示によって、依然として細胞毒性であることができるように、変異及び/又はトランケーションの一方(one or mutations and/or truncations)の導入により、細胞毒性分子の細胞毒性
志賀毒素エフェクターポリペプチド成分に活性低下をもたらすこと及び/又は成分を不活性にさせることができる。別の例では、T細胞エピトープを志賀毒素エフェクターポリペプチドに挿入する又は埋め込むことができ、その結果、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、付加されたエピトープにより不活性化される(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照されたい)。この手法は、一方の細胞毒性機序を除去する一方で、もう一方の細胞毒性機序を保持又は付加し、そしてまた、送達されたT細胞エピトープの提示又は「抗原播種(antigen seeding)」によって生物体内の標的細胞の局所
領域に対する免疫賦活を示すことができる分子を提供する。さらに、埋め込まれた又は挿入された異種T細胞エピトープを含む本発明の細胞標的化分子の非細胞毒性バリアントは、脊索動物体内の免疫刺激、及び/又はMHCクラスI分子により提示されるエピトープでの脊索動物体内の標的細胞の標識を伴う応用に有用でありうる。
【0397】
本発明のある特定の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子のT細胞エピトープを送達する能力は、多様な条件下で、及び例えば、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料中の標的細胞、又は多細胞成分体内のようなインビトロ設定での標的細胞などの、非標的バイスタンダー細胞の存在下で、遂行されうる。
【0398】
C.標的化された細胞毒性による細胞殺滅及び/又は細胞毒性T細胞の関与
ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、1)標的細胞によるMHCクラスI提示のためのT細胞エピトープの送達、及び/又は2)強力な細胞毒性、をもたらすことができる。本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞標的化結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞の接触時、本発明の細胞標的化分子は、細胞死を引き起こすことができる。細胞殺滅の機序は、例え
ば、毒素エフェクターポリペプチド領域の酵素活性による、直接的なものであることもあり、又はCTL媒介細胞溶解による間接的なものであることもある。
【0399】
1.T細胞エピトープ送達及びMHCクラスI提示による間接的細胞殺滅
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、標的細胞のMHCクラスI提示経路に送達されて標的細胞の細胞表面で提示されうるCD8+T細胞エピトープを含むため、細胞毒性である。例えば、内在性エピトープの脱免疫化を伴う又は伴わない本発明のT細胞エピトープ送達志賀毒素エフェクターポリペプチドは、間接的細胞殺滅を伴う応用に細胞標的化分子の成分として使用することができる(例えば、国際公開第2015/113005号パンフレットを参照されたい)。
【0400】
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態では、細胞標的化結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞の接触時、本発明の細胞標的化分子は、例えば、標的細胞による1つ又は2つ以上のT細胞エピトープの提示、及び標的細胞を殺滅するCTLのその後の動員によって、間接的に細胞死を引き起こすことができる。
【0401】
MHCクラスI分子と複合体を形成している抗原ペプチドの細胞による提示は、アポトーシス、溶解及び/又は壊死の導入による細胞毒性T細胞による標的殺滅に対して提示細胞を感作させる。加えて、標的細胞を認識するCTLは、例えば、インターフェロンガンマ(INF-ガンマ)、腫瘍壊死因子(TNF,tumor necrosis factor)アルファ、マ
クロファージ炎症性タンパク質-1ベータ(MIP-1ベータ,macrophage inflammatoryprotein-1 beta)、並びにインターロイキン、例えばIL-17、IL-4及びIL-22などの、免疫賦活性サイトカインを放出しうる。さらに、提示されたエピトープの認識により活性化されたCTLは、提示細胞の近位の他の細胞を、それらの近位の細胞により提示されるペプチド-MHCクラスI複合体レパートリーを問わず、無差別に殺滅しうる(Wiedemann A et al., Proc Natl Acad Sci USA103: 10985-90 (2006))。
【0402】
異なる種内のMHCアレル多様性のため、単一のエピトープしか含まない本発明の細胞標的化分子は、同じ種の異なる患者又は対象に対して多様な有効性を示すことができる。しかし、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は各々、標的細胞のMHCクラスI系に同時に送達されうる複数のT細胞エピトープを含むことができる。したがって、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞標的化分子を使用して、彼らのMHC分子のエピトープ-ペプチド結合親和性にかなりの差(すなわち、彼らのMHCアレル及び/又はMHC遺伝子型にかなりの差)がある異なる対象を治療することができる。加えて、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、複数の細胞殺滅機序を同時に(例えば、複数の異なるT細胞エピトープによって直接的殺滅及び間接的殺滅を同時に)使用することにより、殺滅を免れることへの標的細胞の適応(例えば、治療有効性を免れるように変異、すなわち「変異エスケープ」、する標的がん細胞)を低減させるか、又は防止する。
【0403】
2.細胞に標的化された志賀毒素細胞毒性による直接的細胞殺滅
本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態は、触媒活性志賀毒素エフェクターポリペプチドを含むため、また分子中のいかなる細胞毒性剤又は免疫原性CD8+T細胞エピトープの存在にも関係なく、細胞毒性である。例えば、内在性エピトープの脱免疫化を伴う又は伴わない本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチドのリボ毒性(ribotoxic)、酵素活性、又は非触媒機序に起因する
リボソーム結合及びリボソーム機能への干渉などの、間接的細胞殺滅を伴う応用に、細胞標的化分子の成分として使用することができる。本発明のCD8+T細胞高度免疫化細胞標的化分子の、ある特定の実施形態については、細胞標的化結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞の接触時、本発明の細胞標的化分子は、直接的
にそれらの細胞を、例えば、標的でない細胞毒性T細胞エピトープを巻き込むことなく、死滅させることができる(上記セクションIII-Dを参照されたい)。
【0404】
D.細胞型間の選択的細胞毒性
本発明のある特定の細胞標的化分子は、標的でないバイスタンダー細胞の存在下での特異的細胞の選択的殺滅に使用される。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド送達を細胞標的化結合領域によって特異的細胞に標的化することにより、本発明の細胞標的化分子は、選択された細胞型を標的でない細胞の存在下で排他的又は優先的に殺滅する結果となる、細胞型特異的な限定的細胞殺滅活性を示すことができる。同様に、免疫原性T細胞エピトープの送達を標的細胞のMHCクラスI経路に標的化することにより、本発明の細胞標的化分子により誘導される標的細胞のその後のT細胞エピトープ提示及びCTL媒介細胞溶解を、標的でない細胞の存在下での、選択された細胞型の排他的又は優先的殺滅に限定することができる。加えて、細胞毒性志賀毒素エフェクターポリペプチド領域及び免疫原性T細胞エピトープの細胞への標的送達両方を、本発明の単一の細胞標的化分子により遂行することができ、その結果、両方の潜在的細胞毒性成分の送達は、標的でない細胞の存在下で標的細胞に排他的又は優先的に限定される。
【0405】
ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、ある特定の濃度で細胞毒性である。ある特定の実施形態では、細胞型の混合物に本発明の細胞標的化分子を投与すると、細胞毒性細胞標的化分子は、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされていない細胞型と比較して、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞を選択的に殺滅することができる。ある特定の実施形態については、本発明の細胞毒性細胞標的化分子は、2つ又は3つ以上の異なる細胞型の混合物中の特異的細胞型を選択的又は優先的に死滅させることができる。このことにより、標的生体分子を発現しない「バイスタンダー」細胞型と比べて、高い優先性、例えば、3倍の細胞毒性効果で、特異的細胞型への細胞毒性活性の標的化が可能になる。或いは、結合領域の標的生体分子の発現は、標的生体分子が、標的とされることにならないほど少ない量で発現されるか、又は標的とされることにならない少量で細胞型と物理的にカップリングされている場合、1つの細胞型に対して非排他的でありうる。このことにより、有意な量の標的生体分子を発現しないか又は有意な量の標的生体分子と物理的にカップリングされていない「バイスタンダー」細胞型と比べて、高い優先性、例えば、3倍の細胞毒性効果で、特異的細胞型に標的化された細胞殺滅が可能になる。
【0406】
ある特定のさらなる実施形態については、2つの異なる細胞型集団に細胞毒性細胞標的化分子を投与すると、細胞毒性細胞標的化分子は、半最大細胞毒性濃度(CD50)により定義して、メンバーが細胞毒性細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子を発現する標的細胞の集団に対して、メンバーが細胞毒性細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子を発現しない細胞の集団への同じ細胞標的化分子のCD50用量の少なくとも1/3の用量で、細胞死を引き起こすことができる。
【0407】
ある特定の実施形態について、細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞型の集団に対する本発明の細胞標的化分子の細胞毒性活性は、結合領域のいかなる細胞外標的生体分子とも物理的にカップリングされていない細胞型の集団に対する細胞毒性活性の少なくとも1/3である。本発明によれば、選択的細胞毒性は、(a)結合領域の標的生体分子と物理的にカップリングされている特異的細胞型の細胞集団に対する細胞毒性の、(b)結合領域の標的生体分子と物理的にカップリングされていない細胞型の細胞集団に対する細胞毒性に対する比(a/b)によって定量されうる。ある特定の実施形態では、細胞毒性比は、結合領域の標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞又は細胞型の集団についての、結合領域の標的生体分子と物理的にカップリングされていない細胞又は細胞型の集団と比較して少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、2
5倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は1000倍高い、選択的細胞毒性を示す。
【0408】
ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子の優先的細胞殺滅機能又は選択的細胞毒性は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド中に存在する追加の外在性物質(例えば、細胞毒性物質)及び/又は異種T細胞エピトープに起因し、必ずしも志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性の結果でない。
【0409】
この優先的細胞殺滅機能により、様々な条件下での、及び非標的バイスタンダー細胞、例えば、エクスビボで操作された細胞型混合物、インビトロで培養された組織と細胞型混合物、の存在下での、又はインビボで複数の細胞型の存在下での(例えば、生体内原位置で、若しくは多細胞生物体内の本来の位置での)、本発明の細胞毒性細胞標的化分子による、標的とする細胞の殺滅が可能になる。
【0410】
E.標的細胞の内部区画への分子カーゴの送達
細胞毒性、細胞分裂停止、及び免疫刺激応用に加えて、本発明の細胞標的化分子を、標的化された細胞送達機能のために、例えば、情報収集及び診断機能を伴う応用に、使用することができる。
【0411】
それらの細胞毒性低下形態及び/又は非毒性形態を含む、本発明の細胞標的化分子は、細胞標的化分子の結合領域により認識される細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞に侵入することができるので、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実施形態を使用して、標的とした細胞型の内部に追加の外在性物質又は「カーゴ」(例えば、コンジュゲートされている分子)を送達することができる。例えば、本発明の細胞毒性細胞標的化分子の非毒性バリアント、又は細胞毒性であってもよいバリアントを使用して、細胞標的化分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞の内部に追加の外在性物質を送達すること及び/又は内部を標識することができる。少なくとも1つの細胞表面に標的細胞分子を発現する様々な型の細胞及び/又は細胞集団を、本発明の細胞標的化分子は、外在性物質を受け取る標的とすることができる。本発明の機能性成分は、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチド、追加の外在性物質、及び結合領域が、互いに関連して、例えば、腫瘍細胞の非侵襲的なインビボでのイメージングなどの、カーゴ送達を伴う多様な用途に適している細胞標的化分子を提供することができる点で、モジュラーである。
【0412】
本発明のある特定の細胞標的化分子の外在性物質機能のこの送達は、多様な条件下で、及び例えば、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料中の標的細胞、又は多細胞生物体内のようなインビトロ設定での標的細胞などの、非標的バイスタンダー細胞の存在下で、遂行されうる。さらに、本発明のある特定の細胞標的化分子による、ある特定の細胞への外在性物質の選択的送達は、様々な条件下で、及び非標的バイスタンダー細胞、例えば、エクスビボで操作された細胞型混合物、インビトロで培養された組織と細胞型混合物の存在下で、又はインビボで複数の細胞型の存在下で(例えば、生体内原位置で、若しくは多細胞生物体内の本来の位置で)、遂行されうる。
【0413】
標的細胞を殺滅すること及び/又は埋め込まれた又は挿入されたエピトープを標的細胞のMHC分子による細胞表面提示のために送達することができない、例えば、ある特定の濃度範囲でない、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子は、それでも、例えば検出促進剤などの外在性物質の細胞への送達に有用でありうる。
【0414】
ある特定の実施形態については、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、低い
乃至ゼロの細胞毒性を示し、したがって、本書では「非細胞毒性(の)及び/又は細胞毒性低下(の)」と称される。ある特定の実施形態については、本発明の細胞標的化分子は、低い乃至ゼロの細胞毒性を示し、したがって、「非細胞毒性」及び/又は「細胞毒性低下バリアント」と称されることもある。例えば、本発明の分子の、ある特定の実施形態は、志賀毒素に基づく有意なレベルの細胞毒性を示さず、1,000nM未満、500nM、100nM、75nM、50nMの用量では、例えば、当業者に公知の及び/又は本書に記載されるアッセイにより測定されたときなどの、適切な参照分子と比較されたときに、有意な量の細胞死がない。ある特定のさらなる実施形態については、本発明の分子は、哺乳動物レシピエント1キログラム(kg)当り1~100マイクログラム(μg)の投薬量で、いかなる毒性も示さない。毒性低下バリアントは、それでも、ある特定の濃度又は投薬量では細胞毒性であることもあるが、例えば、ある特定の状況では有意な志賀毒素細胞毒性レベルを示すことができないなどの、細胞毒性低下を示す。
【0415】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、及びそれを含むある特定の細胞標的化分子を、非細胞毒性にすることができ、例えば、本書に記載される例示的置換を含む、当業者に公知の1つ又は2つ以上のアミノ酸置換を加えることによって、志賀毒素Aサブユニット及び/又は志賀毒素エフェクターポリペプチドを不活性化することなどができる。本発明の細胞標的化分子の非毒性及び細胞毒性低下バリアントは、ある特定の状況では、より細胞毒性が強いバリアントよりも追加の外在性物質の送達に適していることがある。
【0416】
F.診断機能についての情報収集
本発明のある特定の細胞標的化分子は、特異的細胞、細胞型及び/又は細胞集団、並びに前述のもののいずれかの特異的細胞内区画のインビトロ及び/又はインビボでの検出に使用される。検出促進剤とコンジュゲートされている本発明の細胞毒性細胞標的化分子の細胞毒性低下及び/又は非毒性形態は、診断機能に、例えば、同じ結合領域、又は関連結合領域、例えば、同じ標的生体分子、重複エピトープ、及び/若しくは同じエピトープと高親和性で結合する結合領域などを含む、治療レジメンとともに使用されるコンパニオン診断に使用されることがあってもよい。
【0417】
ある特定の実施形態では、本書に記載される細胞標的化分子は、診断と治療の両方に、又は診断単独に使用される。同じ細胞毒性細胞標的化分子が、診断と治療の両方に使用される場合、本発明のある特定の実施形態については、診断のための検出促進剤を含む細胞標的化分子バリアントは、本書に記載される例示的置換を含む、1つ又は2つ以上のアミノ酸置換によるその志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の触媒不活性化により、その細胞毒性が低下されていることもあり、又は非毒性にされることもある。例えば、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の非毒性バリアントは、1mg/kg未満の用量の投与後、標的細胞の5%、4%、3%、2%又は1%未満の死滅を示す。細胞毒性低下バリアントは、それでも、ある特定の濃度又は投薬量では細胞毒性であることもあるが、例えば、本書に記載されるような有意な志賀毒素細胞毒性レベルを示すことができないなどの、細胞毒性低下を示す。
【0418】
当技術分野において公知の検出促進剤を本発明の様々な細胞標的化分子とコンジュゲートさせることができることにより、例えば、がん、腫瘍、免疫及び/又は感染細胞などの、ある特定の細胞の検出に有用な組成物が得られる。本発明の細胞標的化分子のこれらの診断実施形態は、当技術分野において公知の様々な技術及びアッセイによる情報収集のために使用することができる。例えば、本発明の細胞標的化分子の診断実施形態は、患者又は生検試料における個々のがん細胞、免疫細胞及び/又は感染細胞の細胞内小器官(例えば、エンドサイトーシス区画、ゴルジ体区画、小胞体区画及びサイトゾル区画)のイメージングによる情報収集に使用することができる。
【0419】
診断使用のためにせよ、他の使用のためにせよ、本発明の細胞標的化分子の診断実施形態を使用して、様々なタイプの情報を収集することができる。この情報は、例えば、新生物細胞型の診断、患者の治療感受性の判定、抗新生物療法の進行の経時的アッセイ、免疫調節療法の進行の経時的アッセイ、抗微生物療法の進行の経時的アッセイ、移植材中の感染細胞の存在の評価、移植材中の望ましくない細胞型の存在の評価、及び/又は腫瘍塊の外科的切除後の残留腫瘍細胞の存在の評価に有用でありうる。
【0420】
例えば、本発明の細胞標的化分子の診断用バリアントを使用して収集した情報を使用して患者の部分母集団を突き止められる可能性があり、次いで、個々の患者を、それらの診断実施形態を使用して解明された彼らのユニークな特徴に基づいて、部分母集団にさらに大別することができるだろう。例えば、特異的な薬剤又は治療法の有効性は、患者の部分母集団を定義するために使用される基準になる可能性がある。例えば、本発明の特定の細胞毒性細胞標的化分子の非毒性診断用バリアントを使用して、どの患者が、本発明のその細胞標的化分子の細胞毒性バリアントに対して陽性応答すると予測される患者のクラス又は部分母集団の者であるのかを区別することができる。したがって、本発明の細胞毒性細胞標的化分子の非毒性バリアントを含む、本発明の細胞標的化分子を使用する、関連する患者同定、患者層別化及び診断方法は、本発明の範囲内であると見なされる。
【0421】
細胞による標的生体分子の発現は、例えば、直接的細胞殺滅、間接的細胞殺滅、T細胞エピトープのような外在性物質の送達、及び/又は情報収集などのための、本発明の細胞標的化分子による細胞標的化のために、ネイティブである必要はない。標的生体分子の細胞表面発現は、感染、病原体の存在、及び/又は細胞内微生物病原体の存在の結果であることもある。標的生体分子の発現は、例えば、ウイルス発現ベクターでの感染後の強制又は誘導発現(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス及びレトロウイルス系を参照されたい)などによる、人工的なものであることもある。標的生体分子の発現の誘導の例は、全トランス型レチノイン酸及び様々な合成レチノイドのようなレチノイド、又は任意のレチノイン酸受容体(RAR,retinoic acid receptor)アゴニストに曝露された細胞のCD38発現のアップレギュレーションである(Drach J et al.,Cancer Res 54: 1746-52 (1994)、Uruno A et al., J Leukoc Biol 90: 235-47 (2011))。CD30の発現を、B細胞とT細胞の両方において、マイトジェン、植物性血液凝集素(PHA)、ブドウ球菌(staphylococcal)プロテインA、EBVウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス1又は2(HTLV-1又はHTLV-2)への曝露により誘導することができる(例えば、Stein H et al., Blood 66: 848-58 (1985)を参照されたい)。別の例では、CD20、
HER2及びEGFR発現を細胞の電離放射線への曝露により誘導することができる(Wattenberg M etal., Br J Cancer 110: 1472-80 (2014))。さらに、PSMA発現は、アンドロゲン枯渇に応答してアップレギュレートされる(例えば、Chang S et al., Cancer
88: 407-15 (2000);Meller B et al., EJNMMI Res 5: 66 (2015)を参照されたい)。
【0422】
ある特定の実施形態では、本発明の分子は、例えば、インビボでの、組織培養での、及び/又は実験室センサーによる追跡などの、不活性志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞標的化分子の挙動の追跡に有用である。例えば、本発明の色素コンジュゲート型志賀毒素エフェクターポリペプチドを、実験中、例えば、抗志賀毒素抗体インキュベーションステップの前及び後に、光センサーを使用して追跡することができる。
【0423】
IV.本発明の細胞標的化分子を含む医薬組成物及び診断用組成物
本発明は、下記でより詳細に説明される状態、疾患、障害又は症状(例えば、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染症)の治療又は発症予防のために、医薬組成物において、単独で又は1つ若しくは2つ以上の治療剤と組み合わせて使用するための、志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子を提供する。本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤又は媒体とともに、本発明に従
って、本発明の志賀毒素ポリペプチド若しくは細胞標的化分子、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む、本発明による医薬組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子のホモ多量体及び/又はヘテロ多量体形態を含みうる。本発明の医薬組成物は、下記でさらに詳細に説明される疾患、状態、障害又は症状を治療、改善又は予防する方法に有用である。各々のそのような疾患、状態、障害又は症状は、本発明による医薬組成物の使用に関する別の実施形態であると考えられる。本発明は、下記でより詳細に説明されるような、本発明による少なくとも1つの治療方法において使用するための医薬組成物をさらに提供する。
【0424】
本書において使用される場合、用語「患者」及び「対象」は、少なくとも1つの疾患、障害又は状態の症状、兆候及び/又は徴候を呈するあらゆる生物、一般には、脊椎動物、例えばヒト及び動物を指すために同義で使用される。これらの用語は、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌなど)及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラットなど)の非限定的な例などの、哺乳動物を含む。
【0425】
本書において使用される場合、「治療する」、「治療すること」又は「治療」及びその文法上の異形は、有益な又は所望の臨床結果を得るための手法を指す。これらの用語は、状態、障害若しくは疾患の発症の若しくは発生速度を緩徐化すること、それに関連する症状を軽減若しくは緩和すること、状態の完全若しくは部分的退縮を生じさせること、又は上記のいずれかについての幾つかの組合せを指しうる。本発明の目的では、有益な又は所望の臨床結果は、検出可能であるか、検出不能であるかにかかわらず、症状の軽減又は緩和、疾患の程度の低下、病状の安定化(例えば、悪化しないこと)、疾患進行の遅延又は緩徐化、病状の改善又は緩和、及び寛解(部分寛解であるか完全寛解あるかに関わらず)を含むが、これらに限定されない。「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、治療をうけない場合の予想生存期間に対して生存期間を延長することも意味しうる。したがって、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題の疾患又は障害で既に苦しんでいる対象でありうる。用語「治療する」、「治療すること」、又は「治療」は、治療の非存在に関連する病的状態又は症状についての重症度上昇の、抑制又は低下を含み、関連疾患、障害又は状態の完全休止を含意するようには必ずしも意図されない。腫瘍及び/又はがんに関して、治療は、全腫瘍量及び/又は個々の腫瘍サイズの低下を含む。
【0426】
本書において使用される場合、用語「予防する」、「予防すること」、「予防」、及びその文法上の異形は、状態、疾患若しくは障害の発生を予防するための、又は状態、疾患若しくは障害の病態を変化させるための手法を指す。したがって、本発明の目的では、「予防」は、発症予防対策、又は予防対策を指しうる。本発明の目的では、有益な又は所望の臨床結果は、検出可能であるか、検出不能であるかに関わらず、疾患の症状、進行又は発生の予防又は緩徐化を含むが、これらに限定されない。したがって、予防を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題の疾患又は障害で未だ苦しんでいない対象でありうる。用語「予防」は、治療の非存在に関連する疾患発症の緩徐化を含み、関連疾患、障害又は状態の永久的予防を含意するようには必ずしも意図されない。したがって、状態を「予防すること」又は状態の「予防」は、ある特定の状況では、状態が発生するリスクを低下させること、又は状態に関連する症状の発生を予防すること若しくは遅延させることを指しうる。
【0427】
本書において使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」は、対象において、標的状態を予防すること若しくは治療すること、又は状態に関連する症状を有益に緩和することなどの、少なくとも1つの所望の治療効果を生じさせる組成物(例えば、治療用組成物、治療用化合物、又は治療剤)の量又は用量である。最も望ましい治療有効量は、それを
必要とする所与の対象のために当業者により選択された特定の治療の所望の有効性を生じさせることになる量である。この量は、当業者により理解されている様々な因子に依存して変わることになり、そのような因子は、治療用組成物の特性(活性、薬物動態、薬力学、及びバイオアベイラビリティを含む)、対象の生理的状態(年齢、性別、病型、病期、全身健康状態、所与の投薬量に対する応答性、及び薬物療法の種類を含む)、製剤中の薬学的に許容される担体(単数又は複数)の性質、及び投与経路を含むが、これらに限定されない。臨床及び薬理学技術分野の当業者は、通例の実験によって、すなわち、組成物の投与に対する対象の応答をモニターし、それに応じて投薬量を調整することにより、治療有効量を決定することができるであろう(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro A, ed.,Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed., 1995)を参照されたい)。
【0428】
本発明の診断用組成物は、本発明の細胞標的化分子、及び1つ又は2つ以上の検出促進剤を含む。本発明の診断用組成物を生産又は製造する際、本発明の細胞標的化分子を1つ又は2つ以上の検出促進剤と直接的又は間接的に連結させることができる。様々な検出促進剤を、分子のタンパク質又はタンパク質性成分に、特に、免疫グロブリン及び免疫グロブリン由来ドメインに、組み込む、取り付ける及び/又はコンジュゲートさせるための、当業者に公知の非常に多数の標準的技術がある。
【0429】
生物の疾患、障害又は状態に対する診断及び/又は治療応用のためのものなどの、情報収集方法のための、本発明のポリペプチド又は細胞標的化分子と作動可能に連結させることができる、当業者に公知の非常に多くの検出促進剤、例えば、同位体、色素、比色分析剤、造影補助剤、蛍光剤、生物発光剤及び磁性剤がある(例えば、Cai W et al., J Nucl
Med 48: 304-10 (2007);Nayak T, BrechbielM, Bioconjug Chem 20: 825-41 (2009);Paudyal P et al.,Oncol Rep 22: 115-9 (2009);Qiao J et al., PLoS ONE 6: e18103 (2011);Sano K et al., Breast Cancer Res 14: R61 (2012)を参照されたい)。これら
の薬剤を、任意の適切な位置で本発明のポリペプチド又は細胞標的化分子と会合させてもよく、それに連結させること及び/又はその中に組み込むことができる。例えば、検出促進剤の連結又は組込みは、本発明の分子のアミノ酸残残基を介してであってもよく、又はリンカー及び/若しくはキレーターを介するものを含む、当技術分野において公知の何らかの種類の連結を介してであってもよい。薬剤の組込みは、スクリーニング、アッセイ、診断手順、及び/又はイメージング技術での診断用組成物の存在の検出を可能にするような方法での組込みである。
【0430】
同様に、医学分野で一般に使用されるインビボでの非侵襲的イメージング技術、例えば、コンピューター断層撮影(CT,computed tomography)イメージング(CTスキャン
)、光学イメージング(ダイレクト、蛍光及び生物発光イメージングを含む)、磁気共鳴イメージング(MRI,magneticresonance imaging)、ポジトロン放出断層撮影(PET,positron emissiontomography)、単一光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT,single-photonemission computed tomography)、超音波、及びX線コンピューター断層撮影イメージングなどの、当業者に公知の非常に多くのイメージング手法がある。
【0431】
V.固体支持体上に固定化された本発明の分子
本発明のある特定の実施形態は、固体支持体上に固定化された本発明の分子(例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場、細胞標的化分子、融合タンパク質、若しくはポリヌクレオチド)又はそれらのあらゆるエフェクター断片を含む。本明細書において企図される固体支持体は、マイクロビーズ、ナノ粒子、ポリマー、マトリックス材料、マイクロアレイ、マイクロタイタープレート、又は当技術分野において公知の任意の固体表面を含むが、これらに限定されない(例えば、米国特許第7,771,955号明細書を参照されたい)。これらの実施形態に従って、
当業者に公知の技術を使用して、本発明の分子を、例えばビーズ、粒子又はプレートなどの、固体支持体に、共有結合又は非共有結合で連結させることができる(例えば、Jung Y
et al., Analyst 133: 697-701 (2008)を参照されたい)。本発明の固定化された分子は、当技術分野において公知の技術を使用するスクリーニング応用に使用することができる(例えば、Bradbury A et al., Nat Biotechnol 29:245-54 (2011);Sutton C, Br J Pharmacol166: 457-75 (2012);Diamante L et al., Protein Eng Des Sel 26: 713-24 (2013);Houlihan G et al., J Immunol Methods 405: 47-56 (2014)を参照されたい)。
【0432】
本発明の分子を固定化することができる固体支持体の非限定的な例は、
マイクロビーズ、ナノ粒子、ポリマー、ナノポリマー、ナノチューブ、磁性ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、ストレプトアビジン被覆ビーズ、逆相磁性ビーズ、カルボキシ末端基を有するビーズ、ヒドラジン末端基を有するビーズ、シリカ(ナトリウムシリカ)ビーズ及びイミノ二酢酸(IDA)修飾ビーズ、アルデヒド修飾ビーズ、エポキシ活性化ビーズ、ジアミノジプロピルアミン(DADPA)修飾ビーズ(第一級アミン表面基を有するビーズ)、生分解性ポリマービーズ、ポリスチレン支持体、アミノ-ポリスチレン粒子、カルボキシル-ポリスチレン粒子、エポキシ-ポリスチレン粒子、ジメチルアミノ-ポリスチレン粒子、ヒドロキシ-ポリスチレン粒子、着色粒子、フローサイトメトリー粒子、スルホネート-ポリスチレン粒子、ニトロセルロース表面、強化ニトロセルロース膜、ナイロン膜、ガラス表面、活性化ガラス表面、活性化石英表面、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜、ポリアクリルアミド系支持体、ポリ塩化ビニル支持体、ポリメチルメタクリレート支持体、ポリ(ジメチルシロキサン)支持体、及び共有結合性連結を形成できる光活性種(例えばニトレン、カルベン及びケチルラジカル)を含有するフォトポリマーを含む。本発明の分子を固定化することができる固体支持体の他の例、例えば、細胞表面、ファージ及びウイルス粒子などは、分子ディスプレイシステムで一般に使用される。
【0433】
VI.本発明の細胞標的化分子を含む医薬組成物及び診断用組成物の生産又は製造
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、志賀毒素エフェクターポリペプチド足場、及び細胞標的化分子のいずれかについての薬学的に許容される塩又は溶媒和物は、本発明の範囲内である。加えて、本発明の細胞標的化分子の塩又は溶媒和物を含む医薬組成物は、本発明の範囲内である。
【0434】
本発明に関して、用語「溶媒和物」は、溶質(すなわち、本発明によるタンパク質性化合物又はその薬学的に許容される塩)と溶媒との間で形成される被定義化学量論組成の複合体を指す。これに関連して、溶媒は、例えば、水、エタノール、又は別の薬学的に許容される、通常小分子の有機種、例えば、これらに限定されないが、酢酸若しくは乳酸でありうる。問題の溶媒が水である場合、そのような溶媒和物は、通常は水和物と称される。
【0435】
本発明のポリペプチド及びタンパク質、又はその塩を、保管又は投与用に調製される医薬組成物として製剤化することができ、そのような医薬組成物は、通常、薬学的に許容される担体中の治療有効量の本発明の分子又はその塩を含む。用語「薬学的に許容される担体」は、あらゆる標準的医薬担体を含む。治療分子使用に薬学的に許容される担体は、製薬技術分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(MackPublishing社(A. R. Gennaro ed. 1985))に記載されている。本書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、任意の及び全ての生理的に許容される、すなわち適合性の、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗微生物剤、等張剤、及び吸収遅延剤、並びにこれらに類するものを含む。薬学的に許容される担体又は希釈剤は、経口、直腸、経鼻又は非経口投与(皮下、筋肉内、静脈内、皮内及び経皮投与)に適している製剤において使用されるものを含む。例示的な薬学的に許容される担体は、滅菌水溶液又は水性分散液、及び無菌注射用液剤又は懸濁剤の即時調製のための無菌粉末を含む。本発明の医薬組成
物に利用することができる適切な水性及び非水性担体の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、及びこれらに類するもの)、及びそれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを含む。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合は必要粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持することができる。ある特定の実施形態では、担体は、(例えば、注射又は注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与に適している。選択される投与経路に依存して、タンパク質又は他の医薬成分は、低pHの作用から、及び活性タンパク質が特定の投与経路により患者に投与されたときに遭遇することがある他の自然不活性化条件から、化合物を保護することを目的とする材料で、コーティングされうる。
【0436】
本発明の治療用組成物は、通常、無菌であり、製造及び保管条件下で安定している。組成物は、溶液、溶媒和物、塩、粉末、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に適している他の規則構造として、製剤化されうる。担体は、例えば、水、アルコール、例えばエタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、又は任意の適切な混合物を含有する、溶媒又は分散媒であることもある。適正な流動体は、例えば、当技術分野において周知の製剤化学に従って、レシチンなどのコーティング剤の使用により、分散液の場合は必要粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持することができる。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、糖、多価アルコール、並びに/又はマンニトール、ソルビトール及び塩化ナトリウムのようなイオンなどの、1つ又は2つ以上の等張剤を含むこともある。
【0437】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含んでいてもよい。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、アルギニン、硫酸アルギニン、グリセロール、マンニトール、メチオニン、ポリソルベート、塩化ナトリウム、ソルビトール、スクロース、及び/又はトレハロースを含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、水性担体及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む。ある特定の他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含むフリーズドライ、凍結乾燥、脱水及び/又は昇華乾燥組成物などの、塩及び/又は粉末を含む。本発明の医薬組成物の、ある特定の実施形態では、賦形剤は、例えば、哺乳動物への投与及び/又は反復投与後などに、細胞標的化分子の免疫原性を及び/又は免疫原性の可能性を低下させる及び/又は制限するように機能する。
【0438】
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上のアジュバント、例えば、緩衝剤、等張性調整剤(等張剤)、抗酸化剤、界面活性剤、安定剤、保存薬、乳化剤、凍結保護剤、湿潤剤及び/若しくは分散剤、又は当業者に周知の他の添加剤、例えば結合剤など、を含むこともある。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容されるアジュバント又は他の添加剤を含む。ある特定の他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、薬学的に許容されるアジュバント又は他の添加剤を含むフリーズドライ、凍結乾燥、脱水及び/又は昇華乾燥組成物などの、塩及び/又は粉末を含む。薬学的に適切な安定剤の非限定的な例は、ヒトアルブミンである。
【0439】
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される緩衝剤を含むことがある。適切な緩衝剤の非限定的な例は、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩及びコハク酸塩緩衝剤である。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される緩衝剤を含む、水性担体を含む。ある特定の他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される緩衝剤を含むフリーズドライ、凍結乾燥、脱水及び/又は昇華乾燥組成物などの、塩及び/又は粉末を含む。
【0440】
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される等張剤又は等張性調整剤を含むことがある。適切な等張剤の非限定的な例は、糖(例えば、デキストロース)、糖アルコール、塩化ナトリウム及びこれらに類するものを含む。適切な糖のさらなる例は、スクロース及びトレハロースのような、二糖類を含む。例示的な薬学的に許容される糖アルコールは、グリセロール、マンニトール及びソルビトールを含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容される等張剤を含む。ある特定の他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される等張剤を含むフリーズドライ、凍結乾燥、脱水及び/又は昇華乾燥組成物などの、塩及び/又は粉末を含む。
【0441】
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される抗酸化剤を含むことがある。例示的な薬学的に許容される抗酸化剤は、水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、メチオニン、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びこれらに類するものなど;油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール及びこれらに類するものなど;並びに金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸及びこれらに類するものなど、を含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容される抗酸化剤を含む。ある特定の他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される抗酸化剤を含むフリーズドライ、凍結乾燥、脱水及び/又は昇華乾燥組成物などの、塩及び/又は粉末を含む。
【0442】
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される界面活性剤及び/又は乳化剤(emulsifyingagent/emulsifier)を含むことがある。適切な界面活性剤及び/
又は乳化剤の非限定的な例は、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリン酸エステル(ポリソルベート20)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウリパルミチン酸エステル(ポリソルベート40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル(ポリソルベート60)、及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレイン酸エステル(ポリソルベート80)などの、ポリソルベートを含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、水性担体、並びに薬学的に許容される界面活性剤及び/又は乳化剤を含む。ある特定の他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される界面活性剤及び/又は乳化剤を含むフリーズドライ、凍結乾燥、脱水及び/又は昇華乾燥組成物などの、塩及び/又は粉末を含む。本発明の細胞標的化分子の凝集を防止するために役立つように、本発明の医薬組成物において1つ又は2つ以上の界面活性剤及び/又は乳化剤が望ましいこともありうる。
【0443】
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される保存剤を含むことがある。例えば、滅菌手順と、本発明の組成物に、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸及びこれらに類するものなどの、様々な抗菌及び抗真菌剤を組み入れることとの、両方により、微生物の存在を確実に防止することができる。
【0444】
本発明の医薬組成物は、1つ又は2つ以上の薬学的に許容される凍結防止剤(抗凍結剤)を含むことがある。適切な抗凍結剤の非限定的な例は、エチレングリコール、グリセロール、スクロース、及びトレハロースを含む。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、水性担体及び薬学的に許容される抗凍結剤を含む。ある特定の他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、薬学的に許容される抗凍結剤を含むフリーズドライ、凍結乾燥、脱水及び/又は昇華乾燥組成物などの、塩及び/又は粉末を含む。
【0445】
加えて、例えば、モノステアリン酸塩、モノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンなどの、吸収を遅らせる薬剤を組み入れることにより、注射用医薬品形態の持続的吸収をもたらすことができる。
【0446】
別の態様では、本発明は、本発明の種々のポリペプチド及び/若しくは細胞標的化分子、又は前述のもののいずれかについてのエステル、塩若しくはアミド、の1つ又は組合せと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0447】
本発明の医薬組成物のpHは、塩酸若しくは水酸化ナトリウムなどの、酸又は塩基で、又は酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン、コハク酸塩、リン酸塩及びこれらに類するものを有する緩衝剤で、調整することができる。本発明の医薬組成物における使用のための薬学的に許容される溶媒又は担体の非限定的な例は、本発明の細胞標的化分子と、例えば、pH5.0、6.0、7.0又は4.0にそれぞれ調整されたクエン酸塩、ヒスチジン、リン酸塩又はクエン酸塩などの、緩衝剤とを含む、水溶液を含む。本発明のある特定の実施形態は、本発明の上述の溶媒及び/又は担体のうちの1つを含む組成物を含む。
【0448】
皮内又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液である、本発明の医薬組成物は、通常、次のもののうちの1つ又は2つ以上を含む:滅菌希釈剤、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、メチオニン、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸及びリン酸;界面活性剤、例えば、ソルベート;緩衝剤、例えば、酢酸塩、クエン酸塩、ヒスチジン及びリン酸塩緩衝剤;並びに等張性調整剤、例えば、デキストロース、グリセロール、マンニトール、塩化ナトリウム、ソルビトール、スクロース及びトレハロースなど。そのような調製物を、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は複数回投与用バイアルに封入してもよい。
【0449】
無菌注射用液剤は、適切な溶媒中の必要量の本発明のタンパク質又は細胞標的化分子を、必要に応じて、上記成分の1つ又は組合せと併せ、その後、滅菌精密濾過(sterilization microfiltration)を行うことにより、調製することができる。分散液は、分散媒と
上記のものなどの他の必要成分とを含有する滅菌媒体に活性化合物を混ぜ入れることにより調製することができる。滅菌注射用液剤の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、任意の追加の所望成分に加えて活性成分の粉末をそれらの滅菌濾過溶液から生じさせる、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ソルビトール、トレハロース、クエン酸ナトリウム、及びポリソルベート-20を含む粉末を含み、さらにグリセロール及び/又はメチオニンを含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、クエン酸ナトリウム、トレハロース、及びポリソルベート-20を含み、さらにグリセロール及び/又はメチオニンを含んでいてもよい。
【0450】
治療有効量の本発明のポリペプチド及び/又は細胞標的化分子が、例えば、静脈内、皮膚又は皮下注射により投与されるように計画される場合、結合剤は、発熱物質不含の非経口的に許容される水溶液の形態となる。適切なpH、等張性、安定性及びこれらに類することを考慮に入れて、非経口的に許容されるタンパク質溶液を調製するための方法は、当技術分野における技能の範囲内である。静脈内、皮膚又は皮下注射に好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、等張媒体、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル注射液、又は当技術分野において公知であるような他の媒体を含有することになる。
【0451】
ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ソルビトール、クエン酸ナトリウム、及びポリソルベート-20を含み、さらにアルブミン、グリセロール及び/又はメチオニンを含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、ソルビトール、ヒスチジン、及びポリソルベート-20を含み、さらにアルブミン、グリセロール及び/又はメチオニンを含んでいてもよい。
【0452】
本発明の医薬組成物の製剤は、単位剤形で適便に提供することができ、薬学技術分野において周知の方法のいずれかにより調製することができる。そのような形の場合、組成物は、適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位剤形は、包装された調製物、個別量の調製物が入っているパッケージ、例えば、バイアル又はアンプル中の小包装錠剤、カプセル及び粉末であってもよい。単位剤形はまた、カプセル、カシェー若しくは錠剤自体であってもよく、又は適切な数のこれらのいずれかの包装形態であってもよい。それを、単一用量注射用形態で、例えば、自己注射又はペンの形態で提供することができる。本発明の組成物を任意の適切な投与経路及び投与手段用に製剤化することができる。皮下又は経皮投与方法は、本書に記載される治療用分子に特に適しているだろう。
【0453】
本書の他の箇所に記載されるように、本発明のポリペプチド又は細胞標的化分子を、活性治療剤が急速に放出されないように保護することになる担体を用いて、例えば、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達系を含む、放出制御製剤として調製することができる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤の多くの調製方法が、特許を受けており、一般に当業者に公知である(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (Robinson
J, ed., Marcel Dekker社、NY, U.S., 1978)を参照されたい)。
【0454】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物(例えば、医薬組成物及び/又は診断用組成物)を、本発明の細胞標的化分子がインビボで確実に望ましく分布するように、製剤化することができる。例えば、血液脳関門は、多くの大きい及び/又は親水性の化合物を排除する。本発明の治療用分子又は組成物を特定のインビボでの位置に標的化するために、それらを、例えば、特異的細胞又は器官に選択的に輸送される、1つ又は2つ以上の部分構造を含むことができるリポソームに製剤化し、かくて薬物の標的送達を増進することができる。例示的な標的化部分構造は、葉酸塩又はビオチン、マンノシド、抗体、界面活性剤プロテインA受容体、p120、及びこれらに類するものを含む。
【0455】
医薬組成物は、インプラント又は微粒子系として使用されるように設計された非経口製剤を含む。インプラントの例は、エマルジョン、イオン交換樹脂及び可溶性塩溶液などの、高分子又は疎水性成分で構成されているデポー製剤である。微粒子系の例は、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノカプセル、ナノスフェア、及びナノ粒子である(例えば、Honda M et al., Int J Nanomedicine 8: 495-503 (2013);Sharma A et al., Biomed Res Int 2013: 960821 (2013);Ramishetti S,Huang L, Ther Deliv 3:1429-45 (2012)を参照されたい)。放出制御製剤は、例えば、リポソーム、ポロクサマー407及びヒドロキシアパタイトなどの、イオンに対して感受性のポリマーを使用して調製することができる。
【0456】
VII.本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター及び宿主細胞
本発明のポリペプチド及び細胞標的化分子に加えて、本発明のポリペプチド、タンパク質及び細胞標的化分子又はそれらの機能性部分をコードするポリヌクレオチドも、本発明の範囲内である。用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と同意義であり、これらの各々は、デオキシリボ核酸(DNA)のポリマー、リボ核酸(RNA)のポリマー、ヌクレオチド類似体を使用して生成されたこれらのDNA又はRNAの類似体、並びにそれら
の誘導体、断片及びホモログのうちの1つ又は2つ以上を含む。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖状であってもよく、二本鎖状であってもよく、又は三本鎖状であってもよい。具体的には、例示的タンパク質をコードすることができる、例えば、RNAコドンの第3位において許容されることが公知のゆらぎを考慮に入れて、異なるRNAコドンと同じアミノ酸をさらにコードすることができる、全てのポリヌクレオチドを含むようなポリヌクレオチドが開示される(例えば、Stothard P,Biotechniques 28: 1102-4 (2000)を参
照されたい)。
【0457】
一態様では、本発明は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは細胞標的化分子又はその断片若しくは誘導体をコードする、ポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、例えば、本発明のポリペプチド又は細胞標的化分子のアミノ酸配列のうちの1つを含むポリペプチドと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又はそれを超えて同一のポリペプチドをコードする核酸配列を含みうる。本発明は、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/若しくは細胞標的化分子又はその断片若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、又はあらゆるそのような配列のアンチセンス若しくは相補配列、を含むポリヌクレオチドも含む。
【0458】
本発明の分子の誘導体又は類似体(例えば、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及びそれを含む細胞標的化分子)は、特に、ポリヌクレオチド(又は本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子)と、例えば、同じサイズのポリヌクレオチド(若しくはポリペプチド)配列に対して、又はアラインされた配列(このアラインメントは当技術分野において公知のコンピューター相同性プログラムにより行われる)と比較されたとき、少なくとも約45%、50%、70%、80%、95%、98%又はさらには99%の同一性(80~99%の同一異性が好ましい)により、実質的に相当である領域を有する、ポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子を含む。例示的プログラムは、デフォルト設定を使用するGAPプログラム(UNIXのWisconsin Sequence Analysis Package、バージョン8、Genetics Computer Group社、University ResearchPark、Madison、WI、U.S.)であり、これは、Smith T, Waterman M, Adv ApplMath 2: 482-9 (1981)のアルゴリズムを使用する。本発明の細胞標的化タンパク質をコードする配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドも含まれる(例えば、Ausubel F et al.,Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, NY,U.S., 1993)、及び下記を参照されたい)。ストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、例えば、CurrentProtocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons,NY, U.S., Ch. Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989))の中で見つけることができる。
【0459】
本発明は、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターをさらに提供する。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞標的化分子をコードすることができるポリヌクレオチドは、発現ベクターを作製するための当技術分野において周知の材料及び方法を使用して、細菌プラスミド、ウイルスベクター及びファージベクターを含む、当技術分野において公知のベクターに、挿入することができる。そのような発現ベクターは、選ばれた任意の宿主細胞内又は無細胞発現系(例えば、pTxb1及びpIVEX2.3)内への本発明の企図される志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞標的化分子の産生を支持するために必要なポリヌクレオチドを含むであろう。特異的な種類の宿主細胞又は無細胞発現系とともに使用するための発現ベクターを含む特異的ポリヌクレオチドは、当業者に周知であり、通例の実験を使用してそのようなポリヌクレオチドを決定することができ、及び/又はそのようなポリヌクレオチドを購入してもよい。
【0460】
用語「発現ベクター」は、本書において使用される場合、1つ又は2つ以上の発現ユニ
ットを含む、直鎖状又は環状の、ポリヌクレオチドを指す。用語「発現ユニット」は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドセグメントであって、宿主細胞において核酸セグメントの発現をもたらすことができるポリヌクレオチドセグメントを示す。発現ユニットは、通常、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターを、全て、作動可能構造で含む。発現ベクターは、1つ又は2つ以上の発現ユニットを含有する。したがって、本発明に関して、単一のポリペプチド鎖を含む本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又は細胞標的化分子をコードする発現ベクターは、その単一のポリペプチド鎖についての発現ユニットを少なくとも含むが、例えば2本又は3本以上のポリペプチド鎖(例えば、Vドメインを含む1本の鎖、及び毒素エフェクターポリペプチドと連結されているVドメインを含む第2の鎖)を含む、タンパク質は、そのタンパク質の2本のポリペプチド鎖の各々に1つずつ、少なくとも2つの発現ユニットを含む。本発明の多鎖細胞標的化タンパク質の発現のために、各ポリペプチド鎖についての発現ユニットが、異なる発現ベクター上に別々に含有されることもある(例えば、各ポリペプチド鎖の発現ベクターを導入した単一の宿主細胞で発現を果たすことができる)。
【0461】
ポリペプチド及びタンパク質の一過的又は安定的発現を指示することができる発現ベクターは、当技術分野において周知である。発現ベクターは、一般に、異種シグナル配列又はペプチド、複製起点、1つ又は2つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ又は2つ以上を、これらに限定されないが含み、これらの各々が当技術分野において周知である。利用することができる任意の調節制御配列、組込み配列及び有用なマーカーは、当技術分野において公知である。
【0462】
用語「宿主細胞」は、発現ベクターの複製又は発現を支持することができる細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌(E.coli)などの原核細胞であってもよく、又は真核細胞(例え
ば、酵母、昆虫、両生類、鳥類若しくは哺乳類の細胞)であってもよい。本発明のポリヌクレオチドを含む又は本発明のポリペプチド及び/若しくは細胞標的化分子を産生することができる宿主細胞株の生成及び単離は、当技術分野において公知の標準的技術を使用して遂行することができる。
【0463】
本発明の範囲内の志賀毒素エフェクターポリペプチド及び/又はタンパク質は、1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を変化させること又は1つ若しくは2つ以上のアミノ酸を欠失させる若しくは挿入することによる、細胞標的化分子のポリペプチド及び/又はタンパク質性成分をコードするポリヌクレオチドの修飾であって、そのポリヌクレオチドを宿主細胞によるより最適な発現などの所望の特性の達成により適するようにさせることができる修飾によって産生される、本書に記載されるポリペプチド及び分子のバリアント又は誘導体でありうる。
【0464】
VIII.送達デバイス及びキット
ある特定の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に送達するための本発明の1つ又は2つ以上の物の組成物、例えば医薬組成物又は診断用組成物、を含むデバイスに関する。例えば、本発明の1つ又は2つ以上の組成物を含む送達デバイスを使用して、静脈内、皮下、筋肉内若しくは腹腔内注射、経口投与、経皮投与、肺若しくは経粘膜投与、インプラント、浸透圧ポンプ、カートリッジ若しくはマイクロポンプによる又は当業者に認知されている他の手段による投与を含む、様々な送達方法により本発明の物の組成物を患者に投与することができる。
【0465】
本発明の少なくとも1つの物の組成物を含むキットであって、包装容器及び使用説明書を含んでいてもよいキットも、本発明の範囲内である。キットは、薬物投与及び/又は診断情報収集に有用でありうる。本発明のキットは、少なくとも1つの追加の試薬(例えば
、基準物質、マーカー及びこれらに類するもの)を含むことがあってもよい。キットは、通常、キットの内容の使用目的を示すラベルを含む。キットは、試料中又は対象体内の細胞型(例えば、腫瘍細胞)を検出するための、又は本発明の化合物、組成物、若しくは本発明の関連方法、例えば本書に記載される方法など、を使用する治療戦略に対して反応する群に患者が属するのかを診断するための、試薬及び他のツールをさらに含むこともある。
【0466】
IX.本発明の細胞標的化分子並びに/又はそれらを含む医薬組成物及び/若しくは診断用組成物を使用する方法
一般に、ある特定のがん、腫瘍、増殖異常、免疫障害、又は本書において言及されるさらなる病的状態などの、疾患、障害及び状態の予防及び/又は治療に使用することができる薬理活性薬剤及びそれらを含む組成物を提供することが、本発明の目的である。したがって、本発明は、細胞の標的殺滅のために、標的とする細胞に追加の外在性物質を送達するために、標的とする細胞の内部を標識するために、診断情報を収集するために、標的細胞のMHCクラスI提示経路にT細胞エピトープを送達するために、並びに本書に記載されるような疾患、障害及び状態を治療するために、本発明のポリペプチド、細胞標的化分子及び医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、本発明の方法を使用して、がん、がん発生、腫瘍発生、転移、及び/又は疾患再発を予防又は治療することができる。
【0467】
特に、当技術分野において現在公知である薬剤、組成物及び/又は方法と比較して、ある特定の利点がある、そのような薬理活性薬剤、組成物及び/又は方法を提供することが、本発明の目的である。したがって、本発明は、特異的タンパク質配列を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド及び細胞標的化分子並びにそれらの医薬組成物を使用する方法を提供する。例えば、配列番号4~1140のアミノ酸配列のいずれかを、下記の方法において、又は例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開第20150259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第20160177284明細書及び国際公開第2016/126950号パンフレットに記載されている様々な方法などの、当業者に公知の細胞標的化分子のいずれかの使用方法において使用される、細胞標的化分子の成分として、特に利用することができる。
【0468】
本発明は、細胞を殺滅する方法であって、細胞を、インビボ又はインビトロのどちらかで、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子及び医薬組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子又は医薬組成物を使用して、細胞(単数又は複数)を請求項記載の物の組成物の1つと接触させると、特異的細胞型を殺滅することができる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物を使用して、がん細胞、感染細胞及び/又は血液細胞を含む混合物などの、異なる細胞型の混合物中の、特異的細胞型を殺滅することができる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物を使用して、異なる細胞型の混合物中のがん細胞を殺滅することができる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞毒性志賀毒素細胞標的化分子又は医薬組成物を使用して、事前移植組織などの、異なる細胞型の混合物中の、特異的細胞型を殺滅することができる。ある特定の実施形態では、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子又は医薬組成物を使用して、治療を目的とした事前投与材料などの、異なる細胞型の混合物中の、特異的細胞型を殺滅することができる。ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物を使用して、ウイルス若しくは微生物に感染した細胞を選択的に殺滅するこ
とができ、又は細胞表面生体分子などの特定の細胞外標的生体分子を発現する細胞を別様に選択的に殺滅することができる。本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子、及び医薬組成物には、例えば、インビトロ又はインビボどちらかで組織から望ましくない細胞型を枯渇させる際の使用、移植片対宿主を治療するために免疫応答を調節する際の使用、抗ウイルス剤としての使用、抗寄生虫剤としての使用、及び望ましくない細胞型の移植組織を一掃する際の使用を含む、多様な応用がある。
【0469】
ある特定の実施形態では、単独での、又は他の化合物若しくは医薬組成物と組み合わせでの、本発明のある特定の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子及び医薬組成物は、対象における、例えば、治療を必要とする患者における、細胞集団にインビトロ又はインビボで投与されたとき、強力な細胞殺滅活性を示すことができる。特異的細胞型との高親和性結合領域を使用して酵素的に活性な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド及び/又はT細胞エピトープの送達を標的化することにより、生物体内のある特定の細胞型、例えば、ある特定のがん細胞、新生物細胞、悪性細胞、非悪性腫瘍細胞及び/又は感染細胞を特異的且つ選択的に殺滅するように細胞殺滅活性を限定することができる。
【0470】
本発明は、それを必要とする患者における細胞を殺滅する方法であって、本発明の少なくとも1つの細胞標的化分子又はその医薬組成物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0471】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物を使用して、がん又は腫瘍細胞と物理的にカップリングした状態で見出される細胞外標的生体分子に標的化することにより、患者におけるがん細胞を殺滅することができる。用語「がん細胞」又は「がん性細胞」は、異常に加速された及び/又は無秩序な様式で増殖し分裂する、当業者には明白であるだろう、様々な新生物細胞を指す。用語「腫瘍細胞」は、悪性細胞と非悪性細胞の両方を含む。一般に、がん及び/又は腫瘍は、治療及び/又は予防可能である疾患、障害又は状態と定義されうる。本発明の方法及び組成物の恩恵を受けうるがん細胞及び/又は腫瘍細胞からなるがん及び腫瘍(悪性又は非悪性どちらか)は、当業者には明白であるだろう。新生物細胞は、次のうちの1つ又は2つ以上を伴うことが多い:増殖のアップレギュレション、分化の欠如、局所組織浸潤、血管新生、及び転移。ある特定のがん細胞及び/又は腫瘍細胞を標的とする本発明の方法及び組成物の恩恵を受けうる、がん及び/腫瘍(悪性若しくは非悪性のどちらか)の結果として生じる疾患、障害及び状態は、当業者は明白であるだろう。
【0472】
本発明の細胞標的化分子及び組成物の、ある特定の実施形態を使用して、一般に、ゆっくりと分裂し、化学療法及び放射線のようながん療法に耐性である、がん幹細胞、腫瘍幹細胞、前悪性がん始原細胞、及び腫瘍始原細胞を殺滅することができる。例えば、本発明でAML幹細胞及び/又は休止状態のAML前駆細胞を殺滅することにより、急性骨髄性白血病(AML)を治療することができる(例えば、Shlush L et al.,Blood 120: 603-12 (2012)を参照されたい)。がん幹細胞は、本発明の細胞標的化分子の、ある特定の実
施形態の、ある特定の結合領域の標的でありうる、例えばCD44、CD200及び本書に列挙される他のものなどの、細胞表面標的を過剰発現することが多い(例えば、Kawasaki B et al., Biochem Biophys Res Commun 364:778-82(2007);Reim F et al., CancerRes 69: 8058-66 (2009)を参照されたい)。
【0473】
志賀毒素Aサブユニットに基づく作用機序のため、本発明の物の組成物は、例えば、化学療法、免疫療法、放射線、幹細胞移植、及び免疫チェックポイント阻害剤などの、他の治療法とのそれらの組合せを含む方法、若しくはそのような他の治療法と補完的様式での方法において、より有効に使用することができ、並びに/又は化学療法抵抗性/放射線耐
性及び/若しくは休止腫瘍細胞/腫瘍始原細胞/幹細胞に対して有効である。同様に、同じ疾患、障害又は状態のための、同じエピトープ以外の標的、重複しない標的又は異なる標的を標的とする他の細胞標的療法と組み合わせでのものを含む方法で、本発明の物の組成物をより有効に使用することができる。
【0474】
本発明の細胞標的化分子又はそれらの医薬組成物の、ある特定の実施形態を使用して、免疫細胞と物理的にカップリングした状態で見出される細胞外標的生体分子に標的化することにより、患者における免疫細胞(健常であっても、悪性であっても)を殺滅することができる。
【0475】
悪性、新生物性又は別様に望ましくないT細胞及び/又はB細胞の患者細胞集団(例えば、骨髄)を一掃し、その後、その患者にT細胞及び/又はB細胞枯渇物質を再注入することを目的として、本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物を利用することは、本発明の範囲内である(例えば、van Heeckeren W et al., Br J Haematol 132: 42-55 (2006)を参照されたい;例えば、Alpdogan O, vanden Brink M, Semin Oncol 39: 629-42 (2012)を参照されたい)。
【0476】
患者から取り出された単離された細胞集団からT細胞及び/又はB細胞をエクスビボで枯渇させることを目的として、本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物を利用することは、本発明の範囲内である。1つの非限定的な例では、ドナー臓器又は組織を、移植前に、本発明の細胞毒性細胞標的化分子又はその医薬組成物で潅流して、その臓器からドナーT細胞及び/又はB細胞を一掃する、臓器及び/又は組織移植拒絶反応の発症予防方法において、本発明の細胞標的化分子を使用することができる(例えば、Alpdogan O, vanden Brink M, Semin Oncol 39: 629-42 (2012)を参照されたい)。
【0477】
骨髄及び/又は幹細胞移植を受ける患者における、移植片対宿主病に対する発症予防としてのドナー細胞集団からT細胞及び/又はB細胞の枯渇、及び寛容の誘導を目的として、本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物を利用することも、本発明の範囲内である(例えば、van Heeckeren W et al., Br J Haematol 132: 42-55 (2006)を参照されたい
;例えば、Alpdogan O, van den Brink M, Semin Oncol 39: 629-42 (2012)を参照されたい)。
【0478】
本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド若しくは細胞標的化分子、又はその医薬組成物の、ある特定の実施形態を使用して、感染細胞と物理的にカップリングした状態で見出される細胞外標的生体分子に標的化することにより、患者における感染細胞を殺滅することができる。
【0479】
本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物の、ある特定の実施形態を使用して、脊索動物体内の部位に非自己T細胞エピトープ-ペプチド提示細胞を「播種」して、免疫系を活性化して、その部位の監視を強化することができる。本発明のこの「播種」方法の、ある特定のさらなる実施形態では、その部位は、腫瘍塊又は感染組織部位である。本発明のこの「播種」方法の好ましい実施形態では、非自己T細胞エピトープ-ペプチドは、細胞標的化分子の標的細胞によりまだ提示されていないペプチド、標的細胞により発現されるいかなるタンパク質中にも存在しないペプチド、標的細胞のプロテオソーム又はトランスクリプトーム内に存在しないペプチド、播種される部位の細胞外微小環境に存在しないペプチド、及び標的とされる腫瘍塊又は感染組織部位に存在しないペプチドからなる群から選択される。
【0480】
この「播種」方法は、エフェクターT細胞による認識及び下流の免疫応答の活性化のために、脊索動物体内の1つ又は2つ以上の標的細胞を、1つ又は2つ以上のMHCクラス
I提示T細胞エピトープで標識するように働く。本発明の細胞標的化分子の細胞内在化機能、細胞内の経路決定機能、及びT細胞エピトープ送達機能を活用することにより、送達されたT細胞エピトープを提示する標的細胞を利用して、宿主T細胞による提示T細胞の認識、及びCTLによる標的細胞殺滅を含む、さらなる免疫応答の誘導を誘導することができる。本発明の細胞標的化分子を使用するこの「播種」方法は、例えば、腫瘍塊又は感染組織部位などの、播種された微小環境内の細胞を、細胞標的化分子により送達されたT細胞エピトープを提示しているか否かに関わらず、攻撃するように適応免疫を誘導することにより、一時的なワクチン接種効果をもたらすことができる。この「播種」方法は、脊索動物体内の標的細胞集団、腫瘍塊、及び/又は感染組織部位に対する免疫寛容の破綻も誘導することができる。
【0481】
脊索動物体内の部位に対する1つ又は2つ以上の抗原性及び/又は免疫原性エピトープの播種を含む、本発明のある特定の方法は、ある特定の抗原に対する免疫応答を刺激するために、局所投与されるのか、全身投与されるのかにかかわらず、免疫原性アジュバントの投与と組み合わせること(例えば、サイトカイン、細菌産物又は植物サポニンのような1つ又は2つ以上の免疫原性アジュバントと本発明の組成物の併用投与など)ができる。本発明の方法における使用に適切でありうる免疫アジュバントの他の例は、アルミニウム塩及び油、例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム、鉱油、スクアレン、パラフィン油、ピーナッツ油、及びチメロサールなどを含む。
【0482】
加えて、本発明は、患者における疾患、障害及び/又は状態を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の細胞標的化分子又はそれらの医薬組成物の少なくとも1つを投与するステップを含む方法を提供する。この方法を使用して治療することができる、考えられる疾患、障害及び状態は、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染症を含む。本発明の組成物の「治療有効投薬量」の投与は、疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度及び継続期間の増加、又は疾患の苦痛に起因する機能障害又は身体障害の予防をもたらすことができる。
【0483】
本発明の組成物の治療有効量は、投与経路、治療される生物の種類、及び考察中の特定の患者の身体的特徴に依存することになる。この量を決定するためのこれらの因子及びそれらの関係は、医学技術分野における当業者に周知である。この量及び投与方法は、最適な有効性を達成するように調整することができ、体重、食事、併用薬物療法、及び医学技術分野における当業者に周知の他の因子に依存しうる。ヒトへの使用に最も適した投薬量サイズ及び投薬レジメンを、本発明により得られる結果によって導くことができ、適切に設計された臨床試験で確認することができる。有効な投薬量及び治療プロトコールは、実験動物において低用量で開始し、その後、効果をモニターしながら投薬量を漸増させ、そしてまた投薬レジメンを系統的に変化させる、従来の手段により決定することができる。所与の対象に最適な投薬量を決定するとき、非常に多くの因子が臨床医により考慮されうる。そのような考慮事項は、当業者に公知である。
【0484】
許容される投与経路は、これらに限定されないが、エアロゾル、経腸、経鼻、眼科的、経口、非経口、直腸、経膣、又は経皮(例えば、クリーム、ゲル若しくは軟膏の、又は経皮パッチによる、局所投与)を含む、当技術分野において公知のあらゆる投与経路を指しうる。「非経口投与」は、通常、眼窩下、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、クモ膜下、嚢下、皮下、経粘膜、又は経気管投与を含む、目標作用部位に対する又はその部位と接続されている注射を伴う。
【0485】
本発明の医薬組成物の投与については、投薬量範囲は、一般に、対象の体重1キログラム当り約0.001~10ミリグラム(mg/kg)であり、及びさらに通常は0.00
1~0.5mg/kgである。例示的投薬量は、体重1kg当り0.01mg、体重1kg当り0.03mg、体重0.07mg、体重1kg当り0.9mg、若しくは体重1kg当り0.1mgでありうる、又は0.01~0.1mg/kgの範囲内でありうる。例示的投薬レジメンは、1日1回若しくは2回の投与、又は週に1回若しくは2回の投与、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1カ月に1回、2若しくは3カ月に1回、又は3~6カ月に1回である。投薬量は、熟練した医療専門家により、必要に応じて、特定の患者についての治療的有用性を最大にするように、選択及び再調整されうる。
【0486】
本発明の医薬組成物は、通常は、同じ患者に何度も投与されることになる。単一投薬量間の間隔は、例えば、2~5日、週1回、月1回、2~3カ月に1回、6カ月に1回、又は年1回でありうる。投与間の間隔は、対象又は患者における血中レベル又は他のマーカーの調節に基づき、不規則であることもある。本発明の組成物の投薬レジメンは、組成物の6回分の投薬量が2~4週間に1回投与される、体重1kg当り1mg又は体重1kg当り3mgの静脈内投与、その後、3カ月に1回、体重1kg当り3mg又は体重1kg当り1mgでの静脈内投与を含む。
【0487】
本発明の医薬組成物は、当技術分野において公知の様々な方法の1つ又は2つ以上を使用して、1又は2つ以上の投与経路によって投与することができる。当業者には理解されるであろうが、投与経路及び/又は投与方法は、所望の結果に依存して変わるであろう。本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物についての投与経路は、例えば、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、又は他の非経口、例えば注射若しくは注入による、投与経路を含む。他の実施形態については、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物を、非経口経路でない経路、例えば、局所、表皮又は粘膜投与経路により投与することができ、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下又は局所投与することができる。
【0488】
本発明の治療用細胞標的化分子又は医薬組成物は、当技術分野において公知の様々な医療デバイスの1つ又は2つ以上で投与することができる。例えば、一実施形態では、本発明の医薬組成物を、無針皮下注射デバイスで投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例が、当技術分野にあり、例えば、速度制御送達のための移植可能な微量注入ポンプ、皮膚を通して投与するためのデバイス、正確な注入速度で送達するための注入ポンプ、連続薬物送達のための移植可能な可変流量注入デバイス、及び浸透圧薬物送達システムを含む。これらの及び他のそのようなインプラント、送達システム、及びモジュールは、当業者に公知である。
【0489】
本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物を、単独で投与してもよく、又は1つ若しくは2つ以上の他の治療剤若しくは診断剤と組み合わせて投与してもよい。併用療法は、治療される特定の患者、疾患又は状態に基づいて選択される少なくとも1つの他の治療剤と組み合わせられた、本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物を含みうる。他のそのような薬剤の例は、特に、細胞毒性抗がん若しくは化学療法剤、抗炎症若しくは抗増殖剤、抗微生物若しくは抗ウイルス剤、増殖因子、サイトカイン、鎮痛薬、治療活性小分子若しくはポリペプチド、単鎖抗体、古典的抗体若しくはその断片、又は1つ若しくは2つ以上のシグナル伝達経路を調節する核酸分子、及び補完することができる又は治療的若しくは発症予防的処置レジメンにおいて別様に有益でありうる同様の調節治療分子を含む。
【0490】
本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物での患者の治療は、好ましくは、標的とした細胞の細胞死、及び/又は標的とした細胞の増殖阻害をもたらす。したがって、本発明の細胞毒性細胞標的化分子、及びそれらを含む医薬組成物は、標的細胞を殺滅又は枯渇することが有益でありうる様々な病的障害、例えば、特に、がん、腫瘍、他の増殖異常、免疫障害、及び感染細胞を治療する方法において有用であるであろう。本発明は、細胞増殖を抑制するための、並びに新形成、過剰活性B細胞及び過剰活性T細胞を含む、細胞障害を治
療するための、方法を提供する。
【0491】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物を使用して、がん、腫瘍(悪性及び非悪性)、増殖異常、免疫障害、及び微生物感染症を治療又は予防することができる。さらなる態様では、上記のエクスビボでの方法を上記のインビボでの方法と組み合わせて、骨髄移植レシピエントにおける拒絶反応を治療又は予防する方法、及び免疫学的寛容を達成するための方法を提供することができる。
【0492】
ある特定の実施形態では、本発明は、ヒトなどの哺乳動物対象における悪性疾患又は新生物及び他の血液細胞関連がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の細胞毒性細胞標的化分子又は医薬組成物を投与するステップを含む方法を提供する。
【0493】
本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物には、例えば、望ましくないT細胞を除去する際の使用、移植片対宿主を治療するために免疫応答を調節する際の使用、抗ウイルス剤としての使用、抗微生物剤としての使用、及び望ましくない細胞型の移植組織を一掃する際の使用を含む、多様な応用がある。本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物は、一般に、抗新生物剤であり、これは、それらが、がん若しくは腫瘍細胞の増殖を阻害すること及び/又はそれらの死滅を引き起こすことにより、新生物細胞又は悪性細胞の発生、成熟又は拡散を治療及び/又は予防することができることを意味する。
【0494】
ある特定の実施形態では、本発明の細胞標的化分子又は医薬組成物は、例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、ヒト免疫不全ウイルス関連疾患、アミロイドーシス、溶血性尿毒症症候群、多発動脈炎、敗血症性ショック、クローン病、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、乾癬、喘息、シェーグレン症候群、移植片対宿主病、移植片拒絶反応、糖尿病、血管炎、強皮症、及び全身性ループスエリテマトーデスなどの、B細胞媒介、形質細胞媒介又は抗体媒介疾患又は障害を治療するために使用される。
【0495】
別の態様では、本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物の、ある特定の実施形態は、抗微生物剤であり、これは、それらが、ウイルス、細菌、真菌、プリオン又は原虫により引き起こされるものなどの、微生物病原性感染症の獲得、発生又は結果を治療及び/又は予防することができることを意味する。
【0496】
T細胞又はB細胞により媒介される疾患又は状態の発症予防又は治療であって、患者におけるT細胞及び/又はB細胞の殺滅を目的として本発明の細胞標的化分子又はその医薬組成物を患者に投与することを含む発症予防又は治療は、本発明の範囲内である。この利用は、移植材料源、例えば、ヒト又は非ヒト源を問わず、骨髄移植、幹細胞移植、組織移植、又は臓器移植のための患者の準備又は前処置に適合する。
【0497】
本発明の細胞毒性細胞標的化分子又は医薬組成物を使用する宿主T細胞の標的化された細胞殺滅による移植片対宿主病の発症予防又は治療のための骨髄レシピエントを提供することは、本発明の範囲内である。
【0498】
本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物の、ある特定の実施形態を、がんを治療する方法に利用することができ、この方法は、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物を投与することを含む。本発明の方法の、ある特定の実施形態では、治療されることになるがんは、骨がん(例えば、多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(例えば、脳がん、神経線維腫症、又は神経膠芽腫)、消化器がん(例えば、胃がん又は結腸直腸がん)、胚細胞がん(例えば、卵
巣がん及び精巣がん)、腺がん(例えば、膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば、上咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓・尿路がん(例えば、腎がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば、中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、又はメラノーマ)、及び子宮がんからなる群から選択される。
【0499】
本発明の細胞標的化分子及び医薬組成物の、ある特定の実施形態を、免疫障害を治療する方法に利用することができ、この方法は、それを必要とする患者に、治療有効量の本発明の細胞標的化分子及び/又は医薬組成物を投与することを含む。本発明の方法の、ある特定の実施形態では、免疫障害は、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶反応、移植片体宿主病、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、ループスエリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎及び血管炎からなる群から選択される疾患に関連する炎症に関連している。
【0500】
本発明のある特定の実施形態の中には、がん、腫瘍、他の増殖異常、免疫障害、及び/又は微生物感染症の治療又は予防のための医薬組成物又は医薬品の成分としての、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子の使用がある。例えば、患者の皮膚に症状が見つかる免疫障害を、炎症を軽減するために、そのような医薬品で治療することができる。別の例では、皮膚腫瘍を、腫瘍サイズを低下させるために又は腫瘍を完全に除去するために、そのような医薬品で治療することができる。
【0501】
本発明のある特定の細胞毒性細胞標的化分子及びそれらの組成物は、免疫破壊(immunolesioning)及びニューロントレーシングなどの、分子脳外科応用に使用することができ
る。例えば、標的化ドメインは、神経回路特異的Gタンパク質共役型受容体などの、ニューロン表面受容体に結合することにより特異的神経細胞型を標的とする、神経伝達物質及び神経ペプチドなどの、様々なリガンドから選択してもよく、又はそれらに由来してもよい。同様に、標的化ドメインは、ニューロン表面受容体に結合する抗体から選択してもよく、又はそれらに由来してもよい。ある特定の志賀毒素エフェクターポリペプチドは、それら自体の逆行軸索輸送を強固に指示するため、本発明のある特定の細胞標的化分子を使用して、細胞体から離れた細胞毒性タンパク質注射部位で細胞外標的を発現するニューロンを殺滅することができる。神経細胞型を特異的に標的とする、本発明のこれらの標的化された細胞毒性分子は、神経科学研究において、例えば、知覚の機序を解明するために、並びにパーキンソン病及びアルツハイマー病などの神経変性疾患のモデルシステムを作出するために使用される。
【0502】
本発明の特定の実施形態の中には、新生物細胞及び/又は免疫細胞型の内部を標識又は検出するために、本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子、医薬組成物及び/又は診断用組成物を使用する方法がある。この方法は、特異的細胞型に侵入し、検出のために標識しようとしている特異的細胞型の内部区画への細胞内逆行輸送による細胞内の経路を決定する、本発明のある特定の細胞標的化分子の能力に基づきうる。これを、患者体内の生体内原位置の細胞に対して、又は生物から除去した細胞及び組織、例えば、生検試料に対して行うことができる。
【0503】
本発明のある特定の実施形態の中には、疾患、状態及び/又は障害に関する情報収集を目的として細胞型の存在を検出ために本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子、医薬組成物、及び/又は診断用組成物を使用する方法がある。この方法は、
本発明の細胞標的化分子の診断的に十分な量と細胞を接触させて、アッセイ又は診断技術により分子を検出するステップを含む。句「診断的に十分な量」は、利用される特定のアッセイ又は診断技術による情報収集のために妥当な検出及び正確な測定を行える量を指す。一般に、全生物のインビボでの診断使用のための診断的に十分な量は、1対象につき、対象1kg当り、検出促進剤が連結された本発明の細胞標的化分子0.001~10ミリグラムの非累積用量であるであろう。通常、これらの情報収集方法において使用される本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド又は細胞標的化分子の量は、可能な限り低い量であろうが、それでも診断的に十分な量であることを条件とする。例えば、生物におけるインビボでの検出のために、対象に投与される本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子物又は医薬組成物の量は、実行可能な限り低いであろう。
【0504】
検出促進剤と組合せられた本発明の細胞標的化分子の細胞型特異的標的化は、本発明の分子の結合領域の細胞外標的生体分子と物理的にカップリングされている細胞の検出及びイメージング方法をもたらす。本発明の細胞標的化分子を使用する細胞のイメージングは、当技術分野において公知の任意の適切な技術により、インビトロで又はインビボで行うことができる。生物の全身イメージングを含む、当技術分野において公知の様々な方法を使用して、又は生物から採取した試料をエクスビボで使用して、診断情報を収集することができる。本書において使用される用語「試料」は、任意の数の物、これらに限定されないが、流体、例えば、血液、尿、血清、リンパ液、唾液、肛門分泌液、膣分泌液及び精液、並びに生検手順により得られる組織を指す。例えば、様々な検出促進剤を、磁気共鳴イメージング(MRI)、光学的方法(例えば、ダイレクト、蛍光及び生物発光イメージング)、ポジトロン放出断層撮影(PET)、単一光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)、超音波、X線コンピューター断層撮影、及び前述のものの組合せなどの技術による、インビボでの非侵襲的腫瘍イメージングに利用することができる(総説については、例えば、Kaur S et al., Cancer Lett 315: 97-111 (2012)を参照されたい)。
【0505】
本発明のある特定の実施形態の中には、血液細胞、がん細胞、腫瘍細胞、感染細胞及び/又は免疫細胞の内部を標識又は検出するための診断用組成物に本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、細胞標的化分子又は医薬組成物を使用する方法がある(例えば、Koyama Y et al., Clin Cancer Res 13: 2936-45 (2007);Ogawa M et al., Cancer Res 69: 1268-72 (2009);Yang L et al., Small 5: 235-43 (2009)を参照されたい)。特異的
細胞型に侵入し、細胞内逆行輸送による細胞内の経路を決定する本発明のある特定の細胞標的化分子の能力に基づいて、特異的細胞型の内部区画が、検出のために標識される。これを、患者体内の生体内原位置の細胞に対して、又は生物から除去した細胞及び組織、例えば、生検試料に対して行うことができる。
【0506】
本発明の診断用組成物を使用して、疾患、障害又は状態を、本発明の関連医薬組成物により治療できる可能があると特徴付けることができる。本発明のある特定の物の組成物を使用して、本書に記載されるような本発明の化合物、組成物若しくは関連方法を使用する治療戦略又は本発明の送達デバイスの使用によく適している治療戦略に応答する群に患者が属するかどうかを判定することができる
【0507】
本発明の診断用組成物を、疾患、例えばがんが検出された後に使用してそれをよりよく特徴付けること、例えば、遠隔転移、不均一性、及びがんの進行度をモニターすることができる。疾患、障害又は感染症の表現型評定は、治療決定中の予想及び予測に役立ちうる。疾患再発の際に、本発明のある特定の方法を使用して、局所性の問題であるのか、全身性の問題であるのかを判定することができる。
【0508】
本発明の診断用組成物を使用して、治療の種類、例えば、小分子薬、生物学的製剤、又は細胞療法を問わず、治療に対する応答を評定することができる。例えば、本発明の診断
法の、ある特定の実施形態を使用して、腫瘍サイズの変化を測定すること、数及び分布を含む、抗原陽性細胞集団の変化を測定すること、又は既に患者に投与した治療により標的とされた抗原以外の、異なるマーカーをモニタリングすることができる(例えば、Smith-Jones P et al., Nat. Biotechnol 22:701-6 (2004);Evans M et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA108: 9578-82 (2011)を参照されたい)。
【0509】
細胞型の存在を検出するために使用される方法の、ある特定の実施形態を使用して、例えば、骨がん(例えば、多発性骨髄腫又はユーイング肉腫)、乳がん、中枢/末梢神経系がん(例えば、脳がん、神経線維腫症、又は神経膠芽腫)、消化器がん(例えば、胃がん又は結腸直腸がん)、胚細胞がん(例えば、卵巣がん及び精巣がん)、腺がん(例えば、膵臓がん、副甲状腺がん、褐色細胞腫、唾液腺がん、又は甲状腺がん)、頭頸部がん(例えば、上咽頭がん、口腔がん、又は咽頭がん)、血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、又は骨髄腫)、腎臓・尿路がん(例えば、腎がん及び膀胱がん)、肝臓がん、肺/胸膜がん(例えば、中皮腫、小細胞肺癌、又は非小細胞肺癌)、前立腺がん、肉腫(例えば、血管肉腫、線維肉腫、カポジ肉腫、又は滑膜肉腫)、皮膚がん(例えば、基底細胞癌、扁平上皮癌、又はメラノーマ)、子宮がん、AIDS、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、自閉症、心臓発生、クローン病、糖尿病、エリテマトーデス、胃炎、移植片拒絶反応、移植片対宿主病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、ループスエリテマトーデス、リンパ増殖性障害(移植後リンパ増殖性障害を含む)、多発性硬化症、重症筋無力症、神経炎症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血症性ショック、シェーグレン症候群、全身性ループスエリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、血管炎、細胞増殖、炎症、白血球活性化、白血球接着、白血球走化性、白血球成熟、白血球遊走、ニューロン分化、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、T細胞急性リンパ球性白血病/リンパ腫(ALL)、急性骨髄性白血病、急性骨髄系白血病(AML)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、B細胞前リンパ球性白血病、バーキットリンパ腫(BL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML-BP)、慢性骨髄系白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、リンパ形質細胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、多発性骨髄腫(MM)、ナチュラルキラー細胞白血病、節性辺縁帯B細胞リンパ腫(nodal marginal B-cell lymphoma)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞白血病、形質細胞腫、原発性滲出性リンパ腫、前リンパ球性白血病、前骨髄球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(TCL)、重鎖病、単クローン性免疫グロブリン血症、単クローン性免疫グロブリン沈着症、骨髄異形成症候群(MDS)、くすぶり型多発性骨髄腫、及びワルデンシュトレームマクログロブリン血症などの、疾患、障害及び状態に関する情報を収集することができる。
【0510】
本発明は、上述のポリペプチドを含み、ある特定の細胞型に特異的に標的化することができる、1)本発明の志賀毒素エフェクターポリペプチド、2)本発明の細胞標的化分子、及び3)本発明の細胞毒性細胞標的化分子についての以下の非限定的な例により、さらに例証される。
[実施例]
【0511】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を実証するものである。しかし、これらの実施例は、例証を目的としたものに過ぎず、本発明の条件及び範囲に関して完全に確定的であるように意図されたものでも、そのように見なされるべきものでもないことを、理解されたい。以下の実施例における実験は、別段の詳細な説明がある場合を除き、当業者にとって周知であり、通例である、標準的技術を使用して行った。
【0512】
ユニークなアミノ酸残基に基づく部位特異的コンジュゲーション戦略は、例えば、改変されたシステイン残基、非天然アミノ酸残基、及び/又は酵素的コンジュゲーションを使用する戦略などの、コンジュゲーション反応の産物の均一性を制御するのに役立ちうる。ユニークなコンジュゲーション部位を使用することにより、不均一性を最小にすることができ、結果として得られる組成物は、バッチ間の一貫性がより高くなり、予測通りの特性を有する。
【0513】
これらの実施例は、各々が、様々な分子との部位特異的コンジュゲーションのためのアミノ酸残基、例えば、志賀毒素エフェクターポリペプチド又は志賀毒素エフェクターポリペプチド足場中のユニークな遊離システイン又はリジン残基などを、ユニークな遊離システイン又はリジン残基が、異所性の位置にあるのか、天然に存在する位置にあるのかに関わらず含む、様々な分子の生成及び試験を説明するものである。ある特定の実施例では、志賀毒素エフェクターポリペプチドを、国際公開第2015/113007号パンフレットに記載されているように脱免疫化する。ある特定の実施例では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、国際公開第2015/113005号パンフレットに記載されているような、埋め込まれた異種のCD8+T細胞エピトープを含む。ある特定の実施例では、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、国際公開第2015/191764号パンフレットに記載されているように、ある特定の分子の成分としての志賀毒素エフェクターポリペプチドにプロテアーゼ切断感受性の低下をもたらす破壊されたフーリン切断モチーフを志賀毒素A1断片由来の領域のカルボキシ末端に含む。ある特定の実施例では、国際公開第2016/196344号パンフレットに記載されているように、志賀毒素エフェクターポリペプチドを脱免疫化し、志賀毒素エフェクターポリペプチドは、埋め込まれた異種のCD8+T細胞エピトープを含み、志賀毒素A1断片のカルボキシ末端に破壊されたフーリン切断モチーフを含む。
【0514】
例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチドを、本発明の例示的な細胞標的化分子の成分としての志賀毒素エフェクター機能の保持について試験した。細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分による強力な細胞毒性の保持は、志賀毒素エフェクターポリペプチドが、ある特定の、最小レベルの、サイトゾルへの逆行性の細胞内の経路決定を保持することを含意する。例示的な細胞標的化分子中の遊離システイン残基の存在を、細胞標的化タンパク質単量体を連結する分子間ジスルフィド結合の形成により実証した。
【0515】
志賀毒素Aサブユニットエフェクター足場中の遊離システイン残基及び/又はユニークなリジン残基の存在は、様々な分子を制御された様式で志賀毒素エフェクターポリペプチド足場の特異的残基と連結させるための適用可能な結合点をもたらす。そのような連結される分子は、(1)細胞標的化剤、(2)細胞標的化、タンパク質性分子、(3)遊離制御のためのものを含む、細胞内送達用に設計されたカーゴ、並びに/又は(4)例えば、脊椎動物体内での半減期を延長する及び/若しくは足場の免疫原性部分を隠蔽する生物学的不活性部分構造などの、細胞外機能を有する薬剤でありうる。志賀毒素Aサブユニットエフェクターを含む細胞標的化分子のカーゴ(例えば、細胞毒性「ペイロード」)とのコンジュゲーションにより、標的細胞の内部位置へのカーゴ又は「ペイロード」の標的送達が可能になる。カーゴの例は、DNA、RNA、核酸複合体、酵素、タンパク質、ペプチド、蛍光タンパク質又はペプチド、及び細胞毒性小分子を含む。ある特定の実施例は、標準的技術を使用して、例えば、ペプチド、核酸、タンパク質、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤、抗生物質及び/又は検出促進剤などの、カーゴとコンジュゲートさせた異所性システイン残基を有する志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、例示的な細胞標的化分子を示す。
【実施例1】
【0516】
部位特異的コンジュゲーションのためのシステイン残基を含む本発明の例示的な志賀毒
素エフェクターポリペプチド
この実施例では、1つの異所性システイン残基を各々が含む、本発明の例示的な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(SLT-1A-Cys(p)-バリアント(ここで、Cys(p)は、ユニークな位置における改変されたシステイン残基を表す))を、本発明の例示的な細胞標的化分子の成分として生成し、試験した。
【0517】
A.アミノ酸残基置換による遊離システイン残基の付加による本発明の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチドの構築
このセクションは、1つの異所性システイン残基を各々が含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、様々な足場の生成を説明する。異所性システイン残基を、ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数を変化させない遺伝的にコードされた置換として、志賀毒素エフェクターポリペプチドに改変により導入した。これらの志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子(例えば、SLT-1A-Cys(p)-バリアント::scFv(n))を生成した。
【0518】
この実施例では、1つの異所性システイン残基を有する志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを各々が含む細胞標的化分子を生成し、試験した。これらの細胞標的化分子各々は、細胞外標的生体分子と高い親和性で結合することができるポリペプチドを含む、細胞標的化、免疫グロブリン型、結合領域を含んだ。
【0519】
この実施例の親志賀毒素エフェクターポリペプチドは、内在性システイン残基のみを除去するための置換C242Sを含む、志賀様毒素のA1断片(SLT-1A1)(配列番号4)である。242位におけるシステインのセリンへの変異(C242S)は、A1断片の触媒活性に対して明確な作用を及ぼさなかった。標準的技術を使用し、親志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、各々が1つの異所性システイン残基を有し、他のシステイン残基を有さない、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを作製する(例えば、表1を参照されたい)。表1に記載する、正確に1つの異所性システイン残基を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号5~84を参照されたい)を含む細胞標的化分子(例えば、配列番号773~783を参照されたい)を、標準的技術を使用して作製し、下で説明する実験の1つ又は2つ以上で試験した。
【0520】
【表3】
【0521】
B.志賀毒素機能の保持についての志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの試験
志賀毒素エフェクターポリペプチド及びそれらを含む分子を、当業者に公知の技術を使用して志賀毒素機能について試験することができる(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開20160177284号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)。例示的な細胞標的化分子を、志賀毒素Aサブユニット機能について試験した。分析した志賀毒素Aサブユニット機能は、触媒活性、真核生物リボソーム機能の阻害、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの自律的細胞内経路決定であった。
【0522】
1.志賀毒素触媒活性、及びリボソーム機能を阻害する能力の試験
例示的な細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性を、リボソーム阻害アッセイを使用して試験した。本発明の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド(配列番号9、11及び14)を含む例示的な細胞標的化分子についての触媒活性
を試験した。
【0523】
この実施例の例示的な細胞標的化分子のリボソーム不活性化能力は、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translation Kit(L1170、Promega社、Madison、WI、U.S.)に基づく、無細胞の、インビトロでの、タンパク質翻訳アッセイを使用して判定した。リボソーム活性反応を、製造業者の使用説明書に従って準備した。試験することになる細胞標的化分子の10倍希釈系列を、適切な緩衝剤で調製し、一連の同一TNT反応混合物を希釈度ごとに生成した。希釈系列の各試料を、Luciferase T7 Control DNA(L4821、Promega社、Madison, WI, U.S.)とともに各々のTNT反応混合物と合わせた。被検試料を1.5時間、摂氏30度(℃)でインキュベートした。インキュベーション後、Luciferase Assay Reagent(E1483、Promega社、Madison, WI, U.S.)を全ての被検試料に添加し、存在するルシフェラーゼタンパク質の量を製造業者の使用説明書に従って発光により測定した。陽性対照を試験した:野生型志賀毒素A1断片((SLT-1A1-WT)(配列番号830)。この無細胞の、インビトロでの、タンパク質翻訳アッセイを使用して、SLT-1A-Cys5::scFv1(配列番号781)、SLT-1A-Cys7::scFv1(配列番号782)、及びSLT-1A-Cys10::scFv1(配列番号783)のリボソーム不活性化能力を判定した。
【0524】
翻訳阻害レベルは、相対発光単位(RLU,relative luminescence unit)に対する全タンパク質の対数変換濃度の非線形回帰解析により決定した。Prismソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を使用し、用量-応答-阻害という見出しの下にある、応答に対する対数(阻害)のPrismソフトウェア関数(3変数)[Y=最低値+((最高値-最低値)/(1+10^(X-LogIC50)))]を使用して、半最大阻害濃度(IC50)値を試料ごとに算出した。1回又は2回以上の実験から各細胞標的化分子のIC50値を計算した。それらを表2にピコモル濃度(pM)で示す。このアッセイでは、タンパク質合成阻害の測定値は、志賀毒素エフェクターポリペプチド触媒活性の1つの測定基準である、試料分子のリボソーム不活性化活性を表す。参照分子の10倍以内のIC50を示すいずれの分子も、本書では、参照分子に匹敵するリボソーム阻害活性を示すと見なす。実施例で報告する場合、参照分子により示されるIC50の10パーセント未満又は以内のIC50を示す分子を、参照分子と同等のリボソーム阻害活性を示すと見なす。
【0525】
【表4】
【0526】
細胞標的化分子に関して試験した全ての志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Cys(p)のリボソーム不活性化活性は、野生型志賀毒素A1断片の触媒活性と同等であった(表2)。表2に示した通り、配列番号781、782及び783を含むか又はこれらからなる例示的な細胞標的化分子は、野生型志賀毒素A1断片(配列番号830)からなる単離された志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドの陽性対照と同等の強力なリボソーム阻害を示した。このアッセイの結果は、本発明の複数の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド(配列番号9、11及び14)が、細胞標的化分子に関して、単一の内在性システイン残基を242位に含む野生型志賀毒素エフェクターポリペプチドの活性と同等の触媒活性を示すことを示した(表2)。他の実験では、242位の内在性システイン残基である、システイン残基を有さない、又は単一の遊離システイン残基のみを有する、志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、野生型SLT-1A1(配列番号1のアミノ酸1~251))の変異を含む細胞標的化分子が、互いの活性に匹敵する、及び野生型志賀毒素エフェクターポリペプチド(配列番号1のアミノ酸1~251)を含む細胞標的化分子の活性に匹敵する、触媒活性を示すことを実証した。
【0527】
2.本発明の例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性の試験
例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性の作用強度及び特異性を試験して、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の機能を評定した。志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Cys(p)を各々が含む例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性を、当業者に公知の組織培養細胞に基づく細胞毒性アッセイ(「細胞殺滅アッセイ」)を使用して判定した。例示的な細胞標的化分子の細胞毒性を、結合領域scFv1、scFv2、scFv3及び/又はscFv4の標的などの適切な細胞外標的生体分子の有意な量を細胞表面で発現する細胞を使用して判定した。この実施例で使用した細胞は、ATCC(Manassas VA、U.S.)、米国国立がん研究所(National Cancer Institute of the U.S.)(Frederick、MD、U.S.)、及び/又はDSZM(Braunschweig、DE)から入手可能な
、不死化、ヒト腫瘍細胞であった。下で言及する細胞は、HCC-1954、MDA-MB-231、H929、ST486、L1236、HCC827、Daudi、HDLM-2、及びU-266、又はより単純に、それぞれ、細胞株A、B、C、D、E、F、G、H及びIであった。各細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子に対して陽性の標的生体分子と陰性の標的生体分子の両方を含む細胞殺滅アッセイを使用して、ある特定の細胞標的化分子を試験した。
【0528】
細胞毒性アッセイは、次のように行った。ある特定のヒト腫瘍細胞株を384ウェルプレートの20μL細胞培養培地に播種した(概して、接着細胞については1ウェル当たり細胞2×10個で細胞標的化分子添加の前日に播種した、又は浮遊細胞については1ウェル当たり細胞7.5×10個で細胞標的化分子添加と同じ日に播種した)。試験する分子の10倍系列希釈物を適切な緩衝剤で調製し、5μLの希釈物又は緩衝剤対照を播種細胞に添加した。細胞培養培地のみを含有する対照ウェルをベースライン補正に使用した。細胞試料を細胞標的化分子とともに又は緩衝剤のみとともに3又は5日間、37℃で、5%二酸化炭素(CO)雰囲気で、インキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay又はRealTime-Glo(登録商標)MT Cell Viability Assay(Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造業者の使用説明書に従って使用し、発光の読出し情報を使用して、総細胞生存数又は生存パーセントを決定した。
【0529】
実験ウェルの生存パーセントは、次の等式を使用して算出した:(試験RLU-平均培地RLU)÷ (平均細胞RLU-平均培地RLU)×100。Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)で細胞標的化分子タンパク質濃度の対数を生存パーセントに
対してプロットし、log(阻害剤)対応答(3変数)解析及びlog(阻害剤)対正規化応答解析を使用して、被験分子の半最大細胞毒性濃度(CD50)を決定した。試験した各分子のCD50値を、可能な場合、算出し、表3に示した。試験した濃度についての
曲線の形状に基づいてCD50値を算出できなかった場合には、最大CD50値は、試験した最大値を超える、例えば、試験した最高試料濃度、例えば100又は200ナノモル濃度(nM)で細胞の50%を殺滅しなかった試料については100ナノモル濃度より高い(「>100nM」)又は200ナノモル濃度より高い(「>200nM」)、と記した。一部の実験では、細胞標的化分子の最大濃度で処理した生体分子標的陰性細胞は、緩衝剤だけの対照と比較して生存率のいかなる変化も示さなかった。本書において実施例で報告する場合、参照分子により示されるCD50の10倍以内のCD50を示す分子は、その参照分子に匹敵する細胞毒性性を示すと見なす。生体分子標的陽性細胞集団に対して、同じ結合領域と、いかなるシステイン残基も欠いている関連志賀毒素エフェクターポリペプチド成分とを含む参照分子の100倍~10倍以内のCD50を示した細胞標的化分子を、本書では、「弱毒化されている」が活性と言う。例示的な細胞標的化分子についてのCD50値を表3に示し、関連する細胞殺滅アッセイデータを図2~3に示す。この実施例において細胞毒性活性について試験した分子は、SLT-1A-Cys5::scFv1(配列番号781)、SLT-1A-Cys7::scFv1(配列番号782)、SLT-1A-Cys10::scFv1(配列番号783)、SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)、SLT-1A-Cys2-D1::scFv3(配列番号780)、SLT-1A-Cys3-D1::scFv3(配列番号779)、SLT-1A-Cys5-D1::scFv3(配列番号778)、SLT-1A-Cys6-D1::scFv2(配列番号774)、SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)、SLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号776)、SLT-1A-Cys9-D1::scFv2(配列番号777)、SLT-1A1-WT(配列番号830)、SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)、SLT-1A-D1(配列番号831)、SLT-1A-D1-C242::scFv3(配列番号837)、及びSLT-1A-D1::scFv3(配列番号839)を含むか又はこれらからなる細胞標的化分子を含んだ。
【0530】
【表5】
【0531】
SLT-1A-Cys5::scFv1(配列番号781)、SLT-1A-Cys7::scFv1(配列番号782)、SLT-1A-Cys10::scFv1(配列番号783)、SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)、SLT
-1A-Cys2-D1::scFv3(配列番号780)、SLT-1A-Cys3-D1::scFv3(配列番号779)、SLT-1A-Cys5-D1::scFv3(配列番号778)、SLT-1A-Cys6-D1::scFv2(配列番号774)、SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)、SLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号776)、及びSLT-1A-Cys9-D1::scFv2(配列番号777)により表される本発明の例示的な細胞標的化分子は、各々、標的陽性細胞に対して毒性であり、一般に、100nM未満のCD50値を示した。表3で報告した結果は、志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Cys5(配列番号9)、SLT-1A-Cys7(配列番号11)、SLT-1A-Cys10(配列番号14)のいずれかを含む細胞標的化分子が、試験した細胞株に依存して一般に100nM~5マイクロモル濃度(μM)未満のCD50値を伴う作用強度で、標的陽性細胞に対して細胞毒性であったことを示す(表3;図2~3を参照されたい)。細胞標的化分子の成分として試験した志賀毒素エフェクターポリペプチドの多くについての細胞毒性は、関連細胞標的化分子(配列番号837)の成分としての関連志賀毒素エフェクターポリペプチド(いかなるシステイン残基も欠いている(配列番号831)か、又は242位に内在性システインを有する(配列番号832)、どちらか)の細胞毒性に匹敵した(表3;図2~3)。
【0532】
図2は、本発明の3つの異なる例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Cys5::scFv1(配列番号781)、SLT-1A-Cys7::scFv1(配列番号782)、及びSLT-1A-Cys10::scFv1(配列番号783)により示された標的陽性細胞に対する強力な細胞毒性活性を、標的化されていないSLT-1A1-WT単独(配列番号830)と比較して(上のパネル)、及び標的陰性細胞に対するそれらの活性と比較して(下のパネル)を示す。
【0533】
図3は、本発明の3つの異なる例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)、SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)、及びSLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号776)により示された細胞毒性活性を示すものであり、図3に示した細胞毒性活性は、いかなるシステイン残基も欠いている志賀毒素エフェクターポリペプチド(配列番号831)を含む関連細胞標的化分子(SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)により提示された活性に匹敵した。
【0534】
所与の細胞標的化分子の細胞毒性活性の特異性は、細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子の有意な量を発現する細胞(標的陽性細胞)に対する細胞殺滅活性を、いかなる細胞表面とも物理的にカップリングされている、細胞に標的化された分子の結合領域のいかなる標的生体分子のいかなる有意な量も有さない細胞(標的陰性細胞)に対する細胞殺滅活性と比較することにより、判定することができる。これは、分析した細胞標的化分子の標的生体分子の細胞表面発現について陽性であった細胞集団に対する所与の細胞標的化分子のCD50値を、分析した分子のいかなる標的生体分子の細胞表面発現についても陰性であった細胞集団に対する同じ分子のCD50値と比較することにより遂行した。
【0535】
上で説明し、表3及び図2~3に示した、細胞殺滅アッセイの結果は、触媒活性の志賀毒素Aサブユニット機能、真核生物リボソームの触媒不活性化、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの推定自律細胞内経路決定を、有意に損なうことなく、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチド足場への様々な異所性システイン残基の導入が可能であることを示した。
【実施例2】
【0536】
毒素エフェクター領域の外部に遊離システイン残基を含む本発明の例示的な細胞標的化
分子
この実施例では、いずれかの毒素エフェクター領域の外部に1つの遊離システイン残基を各々が含む本発明の例示的な細胞標的化分子を生成し、試験した。
【0537】
A.全ての志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の外部に遊離システイン残基を含む本発明の例示的な細胞標的化分子の構築
このセクションは、遊離システイン残基を含む様々な細胞標的化分子の生成を説明する。標準的技術を使用して、システイン残基を、細胞標的化タンパク質中のアミノ酸残基の総数を変化させない遺伝的にコードされた置換として、細胞標的化タンパク質に改変により導入した。この実施例では、試験した各細胞標的化分子は、細胞外標的生体分子と高い親和性で結合することができるポリペプチドを含む、細胞標的化、免疫グロブリン型、結合領域を含んだ(表4を参照されたい)。当業者に公知の及び/又は以前に記載されたような標準的技術(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、及び国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)を使用して、例えばCapto(商標)-L(GE Healthcare社、Marlborough、MA、U.S.)を使用して、これらの細胞標的化分子のタンパク質発現及び精製を行った。
【0538】
【表6】
【0539】
B.本発明の例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性の試験
本発明の例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性の作用強度及び特異性を試験して、そ
れらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の機能性を評定した。リンカー-Cys(p)、scFv(n)-リンカー-Cys(p)、又はscFv(n)-Cys(p)成分の1つを各々が含む例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性を、実施例1(上記)で説明した細胞殺滅アッセイを使用して判定した。scFv2の適切な細胞外標的生体分子の有意な量を細胞表面で発現する細胞を使用して、例示的な細胞標的化分子の細胞毒性を判定した。細胞毒性アッセイを使用して、試験した各分子のCD50値を算出した(表5)。関連する細胞殺滅アッセイデータを図4に示す。試験した濃度についての曲線の形状に基づいてCD50値を算出できなかった場合には、最大CD50値は、試験した最大値を超える、例えば、試験した最高試料濃度、例えば100nMで細胞の50%を殺滅しなかった試料については100nMより高い(「>100nM」)、と記した。例えば、配列番号803、807及び812を含むか又はそれらからなる細胞標的化分子などの、本発明の例示的な細胞標的化分子について、細胞毒性活性を試験した。
【0540】
【表7】
【0541】
表5及び図4は、いずれか志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の外部に遊離システイン残基を含む細胞標的化分子の例(例えば、SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、及びSLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2(配列番号812))からの実験結果を示す。SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、及びSLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2(配列番号812)の細胞毒性活性は、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分中のいかなるシステイン残基も欠いている親分子SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)の活性に匹敵した。表5で報告した結果は、SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2、SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1及びSLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2を含むか又はそれらからなる細胞標的化分子が全て、30pM未満のCD50値で、標的陽性細胞に対して細胞毒性であったこと
を示す。これらの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分(SLT-1A-D1(配列番号831))の細胞毒性は、陽性対照、参照分子SLT-1A-D1::scFv2(配列番号837)の成分と同一の志賀毒素エフェクターポリペプチド(SLT-1A-D1(配列番号831))の細胞毒性に匹敵した(表5;図4を参照されたい)。
【実施例3】
【0542】
精製細胞標的化分子の分子間ジスルフィド結合についての試験
当業者に公知の通例の方法を使用して、この実施例の、ある特定の例示的な細胞標的化分子を、産生し、精製し、次いで、分子間ジスルフィド結合について分析した。この実施例において試験した細胞標的化分子は、単一の遊離システイン残基を含むもの、例えば、#1)SLT-1A-D1-C242::scFv3(配列番号838)、#2)SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)、#3)SLT-1A-Cys2-D1::scFv3(配列番号780)、#4)SLT-1A-Cys3-D1::scFv3(配列番号779)、#5)SLT-1A-Cys5-D1::scFv3(配列番号778)、#6)SLT-1A-Cys6-D1::scFv2(配列番号774)、#7)SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)、#8)SLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号776)、#9)SLT-1A-Cys9-D1::scFv2(配列番号777)、#10)SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、#11)SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、及び#12)SLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2(配列番号812)、並びに様々な対照として使用した他の細胞標的化分子、例えば、SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)及びSLT-1A-D1::scFv3(配列番号839)を含んだ。
【0543】
例示的な細胞標的化分子調製物をドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により分析した。例示的な細胞標的化分子及び参照分子SLT-1A-D1::scFv(n)を、等しい濃度で、反復、4~20%、SDS-PAGEゲル(Lonza社、Basel、CH)にロードし、変性条件下、又は変性及び還元条件下で電気泳動させた。得られたゲルを、クマシー染色により、ジスルフィド結合形成を示す分子間会合について分析した(図5及び6に示す)。
【0544】
図5~6中、左側は、還元及び変性条件下で泳動させた、クマシー染色SDS-PAGEゲルを示し、右側は、非還元、変性条件下で泳動させた、反復クマシー染色SDS-PAGEゲルを示す。図の説明文に、反復ゲルの各レーンにロードして泳動させた試料を列挙する。「MWマーカー」と記された第一のレーンは、タンパク質分子量ラダーの泳動パターンを示し、各ラダータンパク質バンドの近似サイズが、キロダルトン(kDa)で表示されている。
【0545】
図5中の2~6の番号を付けたレーンにロードして泳動させた試料が、図の説明文に示されている:#2)SLT-1A-D1::scFv3(配列番号839)、#3)SLT-1A-D1-C242::scFv3(配列番号837)、#4)SLT-1A-Cys5-D1::scFv3(配列番号778)、#5)SLT-1A-Cys3-D1::scFv3(配列番号779)、及び#6)SLT-1A-Cys2-D1::scFv3(配列番号780)。
【0546】
図6中の、2~10の番号を付けたレーンにロードして泳動させた試料が、図の説明文に示されている:#2)SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)、#3)SLT-1A-Cys6-D1::scFv2(配列番号774)、#4)SLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号776)、#5)SLT-1A-
Cys9-D1::scFv2(配列番号777)、#6)SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、#7)SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、#8)SLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2(配列番号812)、#9)SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)、及び#10)SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)。
【0547】
この分析の及び図5~6に示したような結果は、分子間ジスルフィド結合に基づく多量体形成が、SLT-1A-Cys5-D1::scFv3(配列番号778)、SLT-1A-Cys6-D1::scFv2(配列番号774)、SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)、SLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号776)、及びSLT-1A-Cys9-D1::scFv2(配列番号777)に関する試料で起ったことであった。加えて、ある特定の細胞標的化分子のトランケーションが分析した試料の一部に認められた。トランケーションのサイズは、精製中間体の予想サイズと一致する。
【0548】
精製した例示的な細胞標的化分子間で形成された分子間会合の性質をさらに分析するために、2つの試料をさらに精製し、分析した。上記実験で使用した例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Cys2-D1::scFv2及びSLT-1A-Cys7-D1::scFv2の試料を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラム(Superdex 200 Increase、GE Healthcare社、Marlborough、MA、U.S.)に流し、市販の分子サイズ移動参照標準物質と比較してサイズを推定した(例えば、図7~8を参照されたい)。分子サイズ移動標準物質、及び試料中に存在する可能性のある分子種の知識を使用することによって、ピーク中の分子種のサイズを推定することができ、ピーク中の分子種の正体を推測することができる。或いは、又は加えて、当業者に公知の及び/又は本書に記載される補完的方法(例えば、SDS-PAGE又は質量分析)を使用して、ある特定のピークの構成分子をより明確に決定することができる。
【0549】
サイズ及び移動特性が分かっている分子(標準物質)を分析して較正し、どの滞留時間時間が、どのタンパク質サイズに対応するのかを、分析した試料中に存在する精製タンパク質のアミノ酸組成及び/又はSDS-PAGE分析から予測した。市販のサイズ標準物質から収集したクロマトグラフィーデータを使用して較正曲線を作成して、試料中の分子種のサイズの推定に役立て、分析の的を特定の滞留時間範囲に絞った。
【0550】
図6及び7に示す実験結果は、SLT-1A-Cys2-D1::scFv2(配列番号773)試料中二量体タンパク質が、主に共有結合性二量体により構成されず、その代わりに、主に非共有結合性二量体複合体により構成されたことを示す。これは、配列番号26の8位のシステイン残基が、単に、配列番号26の8位の他のシステイン残基との分子間対合に利用不能であったこと、或いは、より一般的には、配列番号26の8位のシステイン残基が、ある特定のサイズの分子(例えば、25アミノ酸残基より大きいポリペプチド)との対合に利用不能であるか又はいかなる分子との対合にも全く利用不能である(例えば、タンパク質の疎水性コアの中に埋まっている、及び/若しくは二次構造の中に密充填されている)ことを示しうる。
【0551】
図6及び8に示す実験結果は、SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号775)試料中のタンパク質が、非共有結合性二量体複合体によってばかりでなく、酸化還元感受性の共有結合性二量体複合体によっても構成されたことを示し、これは、配列番号31の45位のシステイン残基が、比較的大きい(例えば、約50~60kDaの質量を有する)ペプチド及びタンパク質を含むタンパク質性分子との対合に利用可能であることを示す。志賀毒素エフェクターポリペプチドの45位の異所性システインは、SLT
-1A-Cys7-D1:scFv2の2分子間の共有結合性相互作用を媒介した。したがって、志賀毒素エフェクターポリペプチドの45位のシステイン残基が表面露出性であり、より一般的には、他の分子中のシステイン残基との対合に利用不能であると、推測することができる。
【実施例4】
【0552】
本発明の例示的な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む、カーゴ連結細胞標的化分子の構築
当業者に公知の常例的方法を使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子(配列番号789、791~793、804、808、813、及び1141)を産生し、精製し、マレイミド活性化蛍光色素とコンジュゲートさせた。使用したマレイミド活性化蛍光色素は、Alexa Fluor(商標)488 C5マレイミド及びAlexa Fluor(商標)555 C2マレイミド(Thermo FisherScientific社、Waltham、MA、U.S.)
であった。
【0553】
試料ごとに、200マイクログラム(μg)の例示的な細胞標的化分子を、2mM TCEPとともに、pH7及び室温で、20分間インキュベートした。5倍モル過剰の488マレイミド活性化色素又は555マレイミド活性化色素のどちらかを各試料に添加し、化学反応を室温で1時間、進行させた。次いで、試料ごとに、精製用樹脂(Antibody Conjugate Purification Kit、カタログ番号A33088、Thermo FisherScientific社、Waltham、MA、U.S.)を製造業者の使用説明書に従
って使用して未結合色素からタンパク質を分離し、280nMの波長に光に対する各試料の吸光度を測定することによりタンパク質濃度を推定した。
【0554】
使用したコンジュゲーション方法(すなわち、1時間のインキュベーション期間中の化学反応)は、色素のマレイミド官能基を細胞標的化分子のポリペプチド成分の遊離システイン残基と連結させることを意図したものであった。対照として、いかなる遊離システインも欠いている関連細胞標的化分子を、上で説明した同じ化学反応及び方法ステップに付した。
【0555】
ある特定の実施形態では、本発明の例示的な細胞標的化分子は、細胞標的化分子の毒素エフェクター成分中の不活性化を引き起こすことが当技術分野において公知の変異を含む。例えば、変異E167Dを含む志賀毒素エフェクターポリペプチド(ここで、167は、志賀毒素Aサブユニットの本来の位置を指す)を、本書の実施例では、IA-SLT-1Aと言い、このIAは、科学文献の記載と一致して、また当業者に認知されているように、著しく低下した触媒活性の結果として非細胞毒性又は細胞毒性低下バリアントについて触媒的に不活性であるか又は触媒的に損なわれていることを示す(例えば、Hovde C et
al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988);Jackson M et al., J Bacteriol 172: 3346-50(1990);Gordon V et al., Infect Immun60: 485-90 (1992);Ohmura M et
al., Microb Pathog 15:169-76 (1993)を参照されたい)。E167D変異を含む志賀
毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子:IA-SLT-1A-D1(配列番号834)、IA-SLT-1A-Cys5-D1バリアント2(配列番号1101)、IA-SLT-1A-Cys7-D1(配列番号1102)、IA-SLT-1A-Cys8-D1(配列番号1103)、又はIA-SLT-1A-Cys9-D1(配列番号1104))を含む、例示的な細胞標的化分子を生成し、実施例5で試験した。
【実施例5】
【0556】
部位特異的遊離システイン残基と連結されているカーゴを含む本発明のカーゴ連結細胞標的化分子の試験
当業者に公知の標準的技術を使用して、カーゴ連結細胞標的化分子を細胞標的化分子機
能(例えば、標的結合、細胞結合、細胞内在化、細胞内の経路決定効率、及び細胞殺滅)について試験した(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開2015/0259428号明細書、及び国際公開第2015/191764号パンフレットを参照されたい)。例示的な細胞標的化分子を、細胞内在化及び細胞毒性、並びに推論により触媒活性、真核生物リボソーム機能の阻害、及びサイトゾルへの自律細胞内経路決定の、志賀毒素Aサブユニット機能について試験した。本発明の例示的なカーゴ連結細胞標的化分子の細胞毒性活性の作用強度及び特異性を、配列番号789を含むか又はそれからなる例示的な細胞標的化分子に基づいて試験した。加えて、カーゴ連結細胞標的化分子によるカーゴの細胞内在化を、特異的システイン残基と連結されているカーゴを各々が含む細胞標的化分子のカーゴ送達機能性を実証するために、試験した。
【0557】
A.細胞標的化の保持についてのカーゴ連結細胞標的化分子の試験
当業者に公知の通例の技術を使用して、例示的なカーゴ連結細胞標的化分子を、細胞結合、及び推論により標的生体分子結合機能について試験した。細胞標的化分子の標的を細胞表面でどちらかが発現する不死化ヒト細胞株(細胞株C及びG)、又は陰性対照として、試験した細胞標的化分子の標的を細胞表面で発現しない細胞株(細胞株H)を使用して、当業者に公知の標準的フローサイトメトリーアッセイ(例えば、蛍光標識細胞分取(FACS))により、各々の色素連結細胞標的化分子の細胞結合能力を測定した。
【0558】
試験した細胞試料及び細胞型ごとに、細胞300,000個を、氷上で、1時間、200nMの各々の色素連結細胞標的化分子試料を含有する培地中でインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、PBSに再懸濁させ、BD Accuri(商標)C6フローサイトメーターをその製造業者の(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)の使用説明書に従って使用して分析した。各々の特異的標的についてのアッセイ対照として、各々の細胞株を、同じアッセイで、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)とコンジュゲートされている同じ標的に特異的なモノクローナル抗体を陽性対照として、及びFITCとコンジュゲートされている同じ標的に特異的なアイソタイプ陰性モノクローナル抗体を陰性対照として使用して、試験した。例えば、試験した各細胞株からの細胞300,000個を、氷上で1時間、1μgの陽性対照抗体又は陰性対照抗体のどちらかを含有する培地中でインキュベートし、同じ方法及びパラメーターで分析した。各試料のFACS分析は、側方散乱に対する前方散乱に基づいてゲートを設定することによる生細胞の選別を含んだ。陽性についてのFACSゲートは、アイソタイプ陰性対照試料(陰性集団を包含する)に基づくものであり、そのゲートを陽性対照モノクローナル抗体(例えば、抗標的2 mAb-FITC)で確認した。
【0559】
このアッセイで試験した例示的な細胞標的化分子は、IA-SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号1141)、SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)、IA-SLT-1A-Cys7-D1::scFv2(配列番号793)、IA-SLT-1A-Cys8-D1::scFv2(配列番号791)、IA-SLT-1A-Cys9-D1::scFv2(配列番号792)、IA-SLT-1A-DI::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号804)、IA-SLT-1A-DI::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号808)、及びIA-SLT-1A-DI::scFv2-Cys1(配列番号813)を含んだ。200nMの細胞標的化分子又は対照抗体とともにインキュベートした細胞についてのFACS細胞結合アッセイ測定の結果を表6に収載し、幾つかの代表FACSヒストグラムオーバーレイデータを図9~11に示す。図9~11には、計数した細胞の数(細胞数)を、FL1-Aチャネルにおける蛍光強度に対してプロットする。図9~11中の灰色の線は、アイソタイ
プ陰性対照試料を使用して測定したときの陰性集団を示し、黒色の線は、色素連結細胞標的化分子又は抗体陽性対照(抗抗体2 mAb-FITC)を示す。表6には、陽性ゲートで計数した細胞のパーセンテージを、試験した細胞株ごとに「陽性パーセント」として示す。表6には、試験した各標的陽性細胞株についての、MFIと陽性パーセンテージの積である、蛍光強度の指標(iMFI,indexed mean fluorescent intensity)も収載する。表6中の、「N/A」は、「該当せず」を指す。ここに収載したモノクローナル抗体は、実験細胞標的化分子の標的生体分子との細胞表面結合についての陽性対照として使用したからである。
【0560】
【表8】
【0561】
表6における結果は、例示的なカーゴ連結細胞標的化分子が、標的陽性細胞と結合し、それらの細胞をそれらの色素-カーゴで標識することを実証した。しかし、いかなる遊離システイン残基も欠いている対照タンパク質IA-SLT-1A-D1::scFv2(配列番号843)は、同じ色素コンジュゲーション手順に付した後、細胞を標識することができなかった(表6)。例示的なカーゴ連結細胞標的化分子は、認識できる数の標的陰性細胞を標識しなかった(表6)。
【0562】
加えて、表6に要約した細胞結合結果は、幾つかのカーゴと細胞標的化分子のペアが、他のものほどうまくいかなかったことを示す。例えば、標的陽性細胞株についてのより低いMFI値及びiMFIをもたらした試料は、これらの試料が、試験した他の試料より、効率の低いマレイミド-システインコンジュゲーション反応及び/又は効果の低い細胞結合特性を有したことを示唆する。
【0563】
200nMの細胞標的化分子又は抗体とともにインキュベートした細胞についてのFACS細胞結合アッセイ測定の結果を図9~11にヒストグラムオーバーレイで示す。表9~11は、同じ色素カーゴと連結された、同じシステイン残基(Cys5)を各々が含む2つの異なる例示的なカーゴ連結細胞標的化分子(配列番号789及び1141)についての細胞結合アッセイ結果を示す。これら2つの分子は、一方が志賀毒素エフェクターポリペプチド成分においてアミノ酸残基置換E167Dにより触媒的に損なわれていた点のみが異なる。図9~11に示した結果は、本発明の2つのカーゴ連結細胞標的化分子の異なる細胞型との結合能力を実証する。
【0564】
これらのFACS結果は、例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)及びIA-SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号1141)が、Alexa Fluor色素カーゴとのコンジュゲーション後に、標的陽性細胞に結合することを示す(表6;図9~11)。同様の結果が、Alexa Fluor色素カーゴとのコンジュゲーション後の本発明の他の例示的なカーゴ連結細胞標的化分子、例えば、Alexa-488又はAlexa-555とコンジュゲートされた配列番号791、792、804、808、813、793及び1141のいずれか1つを含むか又はそれからなる細胞標的化分子などについて、観察された。
【0565】
B.カーゴ連結細胞標的化分子のそれらのカーゴの細胞内在化についての試験
例示的なカーゴ連結細胞標的化分子を、当業者に公知の通例の顕微鏡法に基づく蛍光技術を使用して細胞内在化について試験した(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開第20150259428号明細書を参照されたい)。細胞に投与した蛍光分子の挙動及び局在を、蛍光顕微鏡法を使用して観察した。本発明の例示的な細胞標的化分子の細胞内在化を検査するために、蛍光顕微鏡法に基づくアッセイを使用して、細胞への投与後のカーゴ連結細胞標的化分子の局在を観察した。このセクションで試験した分子は、Alexa-488又はAlexa-555などのAlexa Fluor色素とコンジュゲートされたSLT-1A-Cys5-D1(配列番号29)又はIA-SLT-1A-Cys5-D1バリアント2(配列番号1101)のどちらかの志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、scFv2標的化分子の活性又は不活性バージョン(SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)及びIA-SLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号1141))であった。
【0566】
この細胞内在化アッセイでは、1試料当り細胞おおよそ500,000個を、37℃で1時間、200nMの例示的な色素連結細胞標的化分子、プロテアーゼ阻害剤カクテル、及びヒトBD Fc Block(商標)とともにインキュベートした。次いで、細胞試料を洗浄し
、BD Cytofix/Cytoperm(商標)(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)で固定した。次いで、細胞試料をPBSに再懸濁させ、ポリL-リジン被覆スライドガラスに塗り広げた。スライドごとに、4’,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)含有VECTASHIELD(登録商標)溶液(カタログ番号NC9524612、Fisher Scientific社、Waltham、MA、U.S.)を使用してカバースリップを封入し、蛍光顕微鏡法を使用してスライドを見た。
【0567】
図12~14は、このアッセイからの細胞内在化結果の一部、具体的には、標的陽性細胞株(C及びG)及び標的陰性細胞株(H)を使用して観察したSLT-1A-Cys5-D1::scFv2-Alexa-555及びIA-SLT-1A-Cys5-D1::scFv2-Alexa-555を含むものを示す。図12~14は、青色で示されたDAPIのものと、赤色で示されたAlexa-555についてのものである、2つの異なるフルオロフォア測定の融合画像を示す。
【0568】
Alexa-488とコンジュゲートさせた細胞標的化分子、及びAlexa-555とコンジュゲートさせた細胞標的化分子、両方が、同様の定性的結果を生じたが、Alexa-555シグナルは、Alexa-488シグナルより強いように見えた。幾つかを図12~14に示す、この細胞内在化アッセイからの結果は、SLT-1A-Cys5-D1::scFv2_Alexa-555、IA-SLT-1A-Cys5-D1::scFv2_Alexa-555、SLT-1A-Cys5-D1::scFv2_Alexa-488、及びIA-SLT-1A-Cys5-D1::scFv2_Alexa-488の各々が、1時間以下のうちに標的陽性細胞と結合し、それらの細胞に内在化したことを示す(図12~14)。
【0569】
C.サイズシフトを使用するコンジュゲーションについての細胞標的化分子の試験
コンジュゲートしていない分子より大きい質量を有するコンジュゲートを観察する試みの中で、カーゴ連結細胞標的化分子試料をSDS-PAGEにより分析した。
【0570】
図15は、カーゴAlexa-488又Alexa-555と連結させる前及びさせた後のSLT-1A-Cys5-D1::scFv2(配列番号789)の試料についてのSDS-PAGE分析の結果を示す。図15の結果は、1,000ダルトンの色素分子とのコンジュゲーション後に、予測通りの、標的バンドの質量の変化を示した。SDS-PAGE分析は、存在するタンパク質種の大部分が色素-カーゴとコンジュゲートされている、本発明の例示的なカーゴ連結細胞標的化分子の比較的純粋な試料を示す(図15)。
【0571】
D.細胞毒性の保持についてのカーゴ連結細胞標的化分子の試験
例示的なカーゴ連結細胞標的化分子を、細胞に標的化された細胞毒性、並びに推論により触媒活性、真核生物リボソーム機能の阻害、及びサイトゾルへの自律細胞内経路決定の、志賀毒素Aサブユニット機能について試験した。細胞毒性アッセイは、実施例1及び実施例2で説明した通りに行った。表7及び図16は、本発明の例示的なカーゴ連結細胞標的化分子についての細胞殺滅アッセイの結果を示す。実施例1~2の場合とは異なり、カーゴ連結細胞標的化分子の試料の細胞毒性を、コンジュゲートされたいかなるカーゴも欠いている同じ細胞標的化分子の試料の細胞毒性と比較した。
【0572】
【表9】
【0573】
図16及び表7に示した細胞毒性アッセイ結果は、この実施例のカーゴ連結細胞標的化分子が、標的陽性細胞に対して強力且つ特異的な細胞毒性を保持したことを実証する。色素連結細胞標的化分子は、それらの対応するコンジュゲートされていない細胞標的化分子の6倍以内の、及び遊離システイン残基を含有しない関連細胞標的化分子の細胞毒性と同様の、細胞毒性を示した(表7)。
【0574】
実施例4~5における実験の結果は、カーゴ分子を、本発明の細胞標的化分子の遊離システイン残基と、有意なレベルの、(1)結合領域成分の細胞を標的として標的に結合する機能が存在する、(2)標的陽性細胞の内部へのカーゴ分子送達、及び/又は(3)志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド成分の細胞毒性機能が存在するように、コンジュゲートさせることができることを実証した。
【実施例6】
【0575】
部位特異的コンジュゲーションのためのユニークなリジン残基を含む本発明の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド
この実施例は、1つのユニークなリジン残基を各々が含有する志賀毒素エフェクターポリペプチド(SLT-1A-Lys(p)-バリアント(ここで、Lys(p)は、ユニークな位置のリジン残基を表す))を含む様々な足場の生成を説明するものであり、これらの足場を生成し、本発明の例示的な細胞標的化分子の成分として試験した。全ての他のリジン残基を、ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数を変化させない遺伝的にコードされた置換として、志賀毒素エフェクターポリペプチドから除去した。これらの志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子(例えば、SLT-1A-Lys(p)::scFv(n))を生成した。
【0576】
この実施例の親志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)である。標準的技術を使用し、親志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、各々が1つのユニークなリジン残基を有する様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを作製する(表8を参照されたい)。表8に記載する、正確に1つのユニークなリジン残基を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号197、198
、200~202、及び205を参照されたい)を含む細胞標的化分子(例えば、配列番号818~823を参照されたい)を、標準的技術を使用して作製し、実施例1で説明したように志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験した。
【0577】
【表10】
【0578】
本発明の例示的な細胞標的化分子を、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分から内在性リジン残基の除去後、実施例1で説明したように志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験した。分析した志賀毒素Aサブユニット機能は、真核生物リボソーム機能の阻害、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの自律的細胞内経路決定であった。
【0579】
志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Lys(p)を各々が含む、この実施例の例示的な細胞標的化分子の、細胞毒性活性の作用強度及び特異性を、当業者に公知の組織培養細胞に基づく細胞毒性アッセイを使用して判定して、主として、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の機能を評定した。例示的な細胞標的化分子の細胞毒性を、結合領域scFv4の標的などの適切な細胞外標的生体分子の有意な量を細胞表面で発現する細胞を使用して判定した。この実施例で使用した細胞は、ATCC(Manassas
VA、U.S.)、米国国立がん研究所(Frederick、MD、U.S.)、及び/又はDSZM(Braunschweig、DE)から入手可能な、不死化、ヒト腫瘍細胞、例えば、HCC-1954、MDA-MB-231、Daudi、及びU-266細胞、又はより単純に、それぞれ、細胞株A、B、G及びIであった。各細胞標的化分子の結合領域の標的生体分子に対して、陽性の標的生体分子と陰性の標的生体分子の両方を含むある特定の細胞標的化分子を、細胞殺滅アッセイを使用して試験した。
【0580】
細胞毒性アッセイは、次のように行った。ある特定の、ヒト腫瘍細胞株を、384ウェルプレートの20μL細胞培養培地に播種した(概して、接着細胞については1ウェル当たり細胞2×10個で細胞標的化分子添加の前日に播種した、又は浮遊細胞については1ウェル当たり細胞7.5×10個で細胞標的化分子添加と同じ日に播種した)。試験する分子の10倍系列希釈物を適切な緩衝剤で調製し、5μLの希釈物又は緩衝剤対照を播種細胞に添加した。細胞培養培地だけを含有する対照ウェルをベースライン補正に使用した。細胞試料を細胞標的化分子とともに又は緩衝剤のみとともに3又は5日間、37℃で、5%二酸化炭素(CO)雰囲気で、インキュベートした。CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay
又はRealTime-Glo(登録商標)MT Cell Viability Assay(Promega社、Madison、WI、U.S.)を製造業者の使用説明書に従って使用して、発光の読出し情報を使用して、総細胞生存数又は生存パーセントを決定した。
【0581】
実験ウェルの生存パーセントは、次の等式を使用して算出した:(試験RLU-平均培地RLU)÷(平均細胞RLU-平均培地RLU)×100。Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)で細胞標的化分子タンパク質濃度の対数を生存パーセントに対してプロットし、log(阻害剤)対応答(3変数)解析及びlog(阻害剤)対正規化応答解析を使用して、被験分子の半最大細胞毒性濃度(CD50)を決定した。試験した各分子のCD50値を、可能な場合、算出し、表9に示した。試験した濃度についての曲線の形状に基づいてCD50値を算出できなかった場合には、最大CD50値は、試験した最大値を超える、例えば、試験した最高試料濃度、例えば100又は200ナノモル濃度(nM)で細胞の50%を殺滅しなかった試料については20,000ナノグラム/ミリリットルより高い(「>20,000ng/mL」)、と記した。一部の実験では、細胞標的化分子の最大濃度で試験した生体分子標的陰性細胞は、緩衝剤だけの対照と比較して生存率のいかなる変化も示さなかった。例示的な細胞標的化分子についてのCD50値を表9に示し、関連する細胞殺滅アッセイデータを図17~18に示す。
【0582】
【表11】
【0583】
この実施例で細胞毒性活性について試験した分子は、SLT-1A-Lys1-D3-バリアント-1::scFv4(配列番号818)、SLT-1A-Lys1-D3-バリアント-2::scFv4(配列番号819)、SLT-1A-Lys1-D3-バリアント4::scFv4(配列番号820)、SLT-1A-Lys2-D3-バリアント-1::scFv4(配列番号821)、SLT-1A-Lys2-D3-バリアント2::scFv4(配列番号822)及びSLT-1A-Lys2-D3-バリアント-5::scFv4(配列番号823)を含むか又はこれらからなる、細胞標的化分子を含んだ。配列番号818~823により表される本発明の例示的な細胞標的化分子は、各々、標的陽性細胞に対して細胞毒性であり、試験した細胞株に依存して、一般に3ng/mL未満のCD50値を示した。細胞標的化分子の成分として試験した志賀毒素エフェクターポリペプチド(配列番号197、198、200~202、及び205)の細胞毒性は、2つ又は3つ以上の内在性リジン残基を有する関連志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性に匹敵した(例えば、表9及び図17~18におけるSLT-1A-D3::scFv4(配列番号828)について測定した細胞毒性を参照されたい)。
【0584】
実施例1~5におけるシステイン残基の使用と同様に、ユニークなリジン残基を、当業者に公知のコンジュゲーション化学反応を使用する他の分子の部位特異的結合に使用することができる。一般に、2つの分子が、リジンの官能基のアシル化によって連結される。
【実施例7】
【0585】
アミノ酸残基置換によるリジン残基除去による本発明の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチドの構築
この実施例は、1つのユニークなリジン残基を各々が含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、様々な足場の生成を説明する。全ての他のリジン残基を、ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数を変化させなかった遺伝的にコードされた置換として、志賀毒素エフェクターポリペプチドから除去する。これらの志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子(例えば、scFv(n)::SLT-1A-Lys(p)及びSLT-1A-Lys(p)::scFv(n)(ここで、「p」は、ユニークなリジン残基に番号を付ける)を生成する。
【0586】
この実施例の親志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)及び志賀様毒素2のAサブユニット(SLT-2A)(配列番号3)である。標準的技術を使用し、親志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、各々が1つのユニークなリジン残基を有する様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを作製する(例えば、表10を参照されたい)。表10に記載する、正確に1つのユニークなリジン残基を有する志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号125~232、1109~1140を参照されたい)を含む細胞標的化分子(例えば、配列番号773~783を参照されたい)を、標準的技術を使用して作製し、実施例1で説明したように志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験する。
【0587】
【表12】
【0588】
本発明の例示的な細胞標的化分子を、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分から内在性リジン残基の除去後、志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験する。分析する志賀毒素Aサブユニット機能は、触媒活性、真核生物リボソーム機能の阻害、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの自律的細胞内経路決定である。
【0589】
この実施例の例示的な細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性を、リボソーム阻害アッセイを使用して試験する。細胞標的化分子に関して試験した全ての志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Lys(p)のリボソーム不活性化活性は、全ての本来存在するリジン残基及び/又は野生型志賀毒素A1断片(配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸1~251、又は配列番号3のアミノ酸1~250)を含む、同様に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性と同等である。
【0590】
志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Lys(p)を各々が含む、この実施例の例示的な細胞標的化分子の、細胞毒性活性の作用強度及び特異性を、当業者に公知の組織培養細胞に基づく細胞毒性アッセイを使用して判定する。本発明の例示的な細胞標的化分子は、各々、標的陽性細胞に対して細胞毒性であり、試験する細胞株に依存して、一般に100nM未満のCD50値を示す。細胞標的化分子の成分として試験する志賀毒素エフェクターポリペプチドの多くについての細胞毒性は、2つ又は3つ以上の内在性リジン残基を有する関連志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性に匹敵する。
【0591】
この実施例の例示的な細胞標的化分子を、当業者に公知の通例の方法を使用して、産生し、精製し、細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のリジン残基を介して別の分子と(例えば、この他の分子が、スクシンイミジルエステル-蛍光色素又はイソシアネート/イソチオシアネート-蛍光色素を含む場合など)コンジュゲートさせる。これらの細胞標的化分子を、実施例5で説明したように、細胞標的化、内在化、多量体化及び/又は細胞毒性について試験する。細胞毒性アッセイの結果は、この実施例のカーゴ
連結細胞標的化分子が、作用強度及び活性の点でこれらの細胞標的化分子のコンジュゲートしていないバリアントに匹敵する、標的陽性細胞に対する強力且つ特異的な細胞毒性を保持することを示す。この実施例における実験の結果は、カーゴ分子を、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドのユニークなリジン残基とコンジュゲートさせることができること、並びにさらに、そのようなコンジュゲートさせた細胞標的化分子が、標的陽性細胞の内部へのカーゴ分子の有用な送達レベル及び/又は標的とした細胞に対する有用な細胞毒性レベルを示すことを実証する。
【実施例8】
【0592】
アミノ酸残基置換によるリジン残基除去による本発明の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチドの構築
この実施例は、ゼロ個のリジン残基を各々が含む志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、様々な足場の生成を説明する。全ての他のリジン残基それぞれを、ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数を変化させなかった遺伝的にコードされた置換として、志賀毒素エフェクターポリペプチドから除去する。これらの志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子(例えば、SLT-1A-Lys(null)::scFv(n)(ここで、「null」は、志賀毒素Aサブユニット成分中の一切のリジン残基の欠如を指す))を生成する。
【0593】
この実施例における親志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)及び志賀様毒素2のAサブユニット(SLT-2A)(配列番号3)である。標準的技術を使用し、親志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、各々がいかなるリジン残基も欠いている様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを作製する(例えば、表11を参照されたい)。志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、配列番号233~720を参照されたい)を含む細胞標的化分子(例えば、配列番号773~783、及び824~827を参照されたい)を、標準的技術を使用して作製し、実施例1及び6の場合と同様に志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験する。
【0594】
【表13】
【0595】
本発明の例示的な細胞標的化分子を、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分から全てのリジン残基の除去後、志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験した。分析した志賀毒素Aサブユニット機能は、触媒活性、真核生物リボソーム機能の阻害、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの自律的細胞内経路決定である。
【0596】
この実施例の例示的な細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性を、リボソーム阻害アッセイを使用して試験する。志賀毒素エフェクターポリペプチドStxA-Lys(null)バリアント、SLT-1A-Lys(null)バリアント及びSLT-2A-Lys(null)バリアントのリボソーム不活性化活性を、細胞標的化分子に関して試験し、全ての内在性の本来存在するリジン残基及び/又は野生型志賀毒素A1断片(例えば、配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸1~251、又は配列番号3のアミノ酸1~250など)を含む、同様に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性と同等であることが判明する。
【0597】
志賀毒素エフェクターポリペプチドStxA-Lys(null)、SLT-1A-Lys(null)、又はSLT-2A-Lys(null)を各々が含む、この実施例の例示的な細胞標的化分子の、細胞毒性活性の作用強度及び特異性を、当業者に公知の組織培養細胞に基づく細胞毒性アッセイを使用して判定する。
【0598】
本発明の例示的な細胞標的化分子を、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分から全ての内在性リジン残基の除去後、実施例6で説明したように志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験した。分析した志賀毒素Aサブユニット機能は、真核生物リボソーム機能の阻害、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの自律的細胞内経路決定であった。表11に記載したような志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Lys(null)バリアントを各々が含む、この実施例の例示的な細胞標的化分子の、細胞毒性活性の作用強度及び特異性を、当業者に公知の組織培養細胞に基づく細胞毒性アッセイを使用して判定して、主として、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の機能
を評定した。例示的な細胞標的化分子についてのCD50値を表12に示し、関連する細胞殺滅アッセイデータを図17~19に示す。
【0599】
【表14】
【0600】
本発明の例示的な細胞標的化分子(配列番号824~827)は、各々、標的陽性細胞に対して細胞毒性であり、試験した細胞株に依存して、一般に10ng/mL未満のCD50値を示す(表12及び図17~19を参照されたい)。細胞標的化分子の成分として試験した志賀毒素エフェクターポリペプチドの多く(配列番号639、645、658及び679)についての細胞毒性は、2つ又は3つ以上の内在性リジン残基を有する関連志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性に匹敵した(例えば、表12及び図18におけるSLT-1A-D3::scFv4(配列番号828)及びSLT-1A-D5::scFv4(配列番号829)について測定した細胞毒性を参照されたい)。
【0601】
この実施例の例示的な細胞標的化分子を、当業者に公知の通例の方法を使用して、産生し、精製し、細胞標的化分子のリジン残基を介して別の分子(例えば、この他の分子が、スクシンイミジルエステル-蛍光色素又はイソシアネート/イソチオシアネート-蛍光色素を含む場合など)とコンジュゲートさせる。これらの細胞標的化分子を、実施例5で説明したように、細胞標的化、内在化、多量体化及び/又は細胞毒性について試験する。細胞毒性アッセイの結果は、この実施例のカーゴ連結細胞標的化分子が、作用強度及び活性の点でこれらの細胞標的化分子のコンジュゲートしていないバリアントに匹敵する、標的陽性細胞に対する強力且つ特異的な細胞毒性を保持することを示す。この実施例における実験の結果は、カーゴ分子を、リジン残基を欠いている志賀毒素エフェクターポリペプチ
ドだけを含む本発明の細胞標的化分子の成分の遊離リジン残基とコンジュゲートさせることができること、並びにさらに、そのようなコンジュゲートさせた細胞標的化分子が、標的陽性細胞の内部へのカーゴ分子の有用な送達レベル及び/又は標的とした細胞に対する有用な細胞毒性レベルを示すことを実証する。
【実施例9】
【0602】
毒素エフェクター領域の外部に部位特異的コンジュゲーションのためのリジン又は遊離システインを含む本発明の例示的な細胞標的化分子
この実施例は、各々がいかなるシステイン残基も又はいかなるリジン残基も欠いている、志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む、様々な足場の生成を説明する。これらの足場の多くは、いかなるシステイン又はリジン残基も欠いている志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドと直接融合しているペプチド又はポリペプチドからなる、リンカー又は伸長部を含む。この実施例で使用する場合、「リンカー」は、細胞外標的生体分子に結合することができる細胞標的化結合領域と志賀毒素エフェクターポリペプチドを連結する細胞標的化分子における構造を表し、この場合のリンカーは、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域構造の一部でも、細胞標的化結合領域構造の一部でもない。
【0603】
この実施例では、いかなるシステイン及び/又はリジン残基も欠いている志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(例えば、実施例8で説明したSLT-1A-Lys(null)バリアントなど)を生成し、細胞標的化部分構造と融合させた。これにより、毒素エフェクター領域の外部にユニークなリジン又は遊離システインが存在する、そのような志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子の生成が可能になる。毒素エフェクター領域からの全てのシステイン又はリジン残基の除去は、そのような細胞標的化分子を用いてある特定のコンジュゲーション反応を行うときに他のコンジュゲーション部位が利用されうることを防止する。本発明の細胞標的化分子の志賀毒素成分の外部の遊離システイン又はユニークなリジン残基は、当業者に公知のコンジュゲーション化学反応を使用する他の分子の部位特異的結合に使用することができる。
【0604】
当業者に公知の通例の技術を使用して、ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数を変化させなかった遺伝的にコードされた置換のような、1つ又は2つ以上のアミノ酸残基置換を導入することにより、全てのシステイン及び/又はリジン残基を志賀毒素エフェクターポリペプチドから除去する。この実施例の親志賀毒素エフェクターポリペプチドは、志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)及び志賀様毒素2のAサブユニット(SLT-2A)(配列番号3)である。親志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを作製する(例えば、表11を参照されたい)。そのような「null」志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(例えば、配列番号233~756を参照されたい)を含む細胞標的化分子(例えば、配列番号773~783、及び824~827を参照されたい)を、標準的技術を使用して作製し、実施例1及び6の場合と同様に志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験する。
【0605】
標準的技術を使用して、この実施例の志賀毒素エフェクターポリペプチドを、正確に1つのシステイン又はリジン残基を含むリンカーと融合させて、本発明の例示的な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド足場(本書では「志賀毒素エフェクター足場」とも言う)を生成した。どちらかアミノ酸残基の志賀毒素エフェクターポリペプチドに非存在であるほう(例えば、システイン又はリジン)を、志賀毒素エフェクターポリペプチド中の単一のユニークな位置に組み入れた。
【0606】
1つ又は2つ以上のリジン及び/又は遊離システイン残基をいずれかの毒素エフェクター領域の外部に各々が含む本発明の例示的な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペ
プチド足場を生成し、細胞標的化分子に関して、実施例1及び6の場合のように志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験した。この実施例において試験した本発明の各々の例示的な志賀毒素エフェクター足場は、志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の外部の追加のタンパク質性構造を含んだ(表13を参照されたい)。
【0607】
【表15】
【0608】
標準的技術を使用し、「null」志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、SLT-1A-Lys(null)又はSLT-1A-Cys(null)(ここで、「null」は、それぞれ、一切のリジン又はシステイン残基の欠如を示す))を使用して、いずれかの毒素エフェクター領域の外部に1つ又は2つ以上のリジン及び/又は遊離システイン残基を各々が含む本発明の例示的な細胞標的化分子(例えば、SLT-1A-Lys(null)::scFv(n)又はSLT-1A-Cys(null)::scFv(n)という名称のもの)を生成した。この実施例の例示的な細胞標的化分子の幾つかは、この実施例の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド足場(配列番号762~767から選択されるもの;表13も参照されたい)を含む。
【0609】
そのような「null」志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(配列番号233~756)に基づく細胞標的化分子(例えば、配列番号773~783、及び824~827を参照されたい)を、標準的技術を使用して作製し、実施例1及び6の場合と同様に志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験した。この実施例で試験した各細胞標的化分子は、細胞外標的生体分子と高い親和性で結合することができるポリペプチドを含む、細胞標的化、免疫グロブリン型、結合領域を含んだ(表13~15を参照されたい)。当業者に公知の及び/又は以前に記載されたような標準的技術(例えば、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、国際公開第2015/191764号パンフレット、及び国際公開第2016/126950号パンフレットを参照されたい)を使用して、例えばCapto(商標)-L(GE Healthcare社、Marlborough、MA、U.S.)を使用して、これらの
細胞標的化分子のタンパク質発現及び精製を行った。
【0610】
【表16】
【0611】
適切な細胞外標的生体分子の有意な量を細胞表面で発現する細胞を使用して、例示的な細胞標的化分子の細胞毒性を判定した。細胞毒性アッセイを使用して、試験した各分子のCD50値を算出(及び表15で報告)した。関連する細胞殺滅アッセイデータを図4、及び17~18に示す。試験した濃度についての曲線の形状に基づいてCD50値を算出できなかった場合には、CD50値は、試験した最大値を超える、例えば、試験した最高試料濃度、例えば100nMで細胞の50%を殺滅しなかった試料については100nMより高い(「>100nM」)、と記した。各々が、次の成分:SLT-1A-Lys(null)足場バリアント、リンカー-Cys(p)、scFv(n)-リンカー-Cys(p)、又はscFv(n)-Cys(p)のうちの1つを含む、本発明の例示的な細胞標的化分子について、細胞毒性活性を試験した。これらの実験は、配列番号803、807、812、及び824~826を含むか又はこれらからなる本発明の例示的な細胞標的化分子の細胞毒性活性の測定を含んだ。例示的な細胞標的化分子SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-21::scFv4(配列番号824)、SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-27::scFv4(配列番号825)、及びSLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-40::scFv4(配列番号826)は、志賀毒素エフェクター足場配列番号764、765及び766をそれぞれ含む(例えば、表13を参照されたい)。
【0612】
【表17】
【0613】
表15及び図4は、いずれかの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の外部に遊離システイン残基を含む細胞標的化分子の例(例えば、SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、及びSLT-1A-D1::scFv2-Cys-C
2(配列番号812))からの実験結果を示す。SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2(配列番号803)、SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1(配列番号807)、及びSLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2(配列番号812)の細胞毒性活性は、その志賀毒素エフェクターポリペプチド成分中のいかなるシステイン残基も欠いている親分子SLT-1A-D1::scFv2(配列番号838)の活性に匹敵した。表15で報告した結果は、SLT-1A-D1::リンカー-Cys1::scFv2、SLT-1A-D1::scFv2-リンカー-Cys1及びSLT-1A-D1::scFv2-Cys-C2を含むか又はそれらからなる細胞標的化分子が全て、30pM未満のCD50値で、標的陽性細胞に対して細胞毒性であったことを示す。これらの細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分(SLT-1A-D1(配列番号831))の細胞毒性は、陽性対照、参照分子SLT-1A-D1::scFv2(配列番号837)の成分と同一の志賀毒素エフェクターポリペプチド(SLT-1A-D1(配列番号831))の細胞毒性に匹敵した(表15;図4を参照されたい)。
【0614】
表15及び図17~18は、本発明のリジンnull志賀毒素エフェクターポリペプチド(例えば、SLT-1A-Lys(null)-バリアント)に基づく本発明の志賀毒素エフェクター足場(配列番号764、765又は766)を各々が含む例示的な細胞標的化分子(配列番号824~826)の試験からの実験結果を示す。これらの各分子SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-21::scFv4(配列番号824)、SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-27::scFv4(配列番号825)、及びSLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-40::scFv4(配列番号826)は、いずれかの志賀毒素エフェクターポリペプチド領域の外部である256位にリジンを含む。SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-21::scFv4(配列番号824)、SLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-27::scFv4(配列番号825)、及びSLT-1A-Lys(null)-D3-バリアント-40::scFv4(配列番号826)の細胞毒性活性を、参照分子SLT-1A-D3::scFv4(配列番号828)及びSLT-1A-D3::scFv4バリアント2(配列番号829)(これらは、両方とも、野生型SLT-1A1断片中に存在する全ての内在性の本来存在するリジン含む)の活性に匹敵した。表15で報告した結果は、配列番号824、825又は826を含むか又はそれからなる細胞標的化分子が、各々、10ng/mL未満のCD50値で標的陽性細胞に対して細胞毒性であったことを示す(表15;図17~18を参照されたい)。したがって、配列番号764、765又は766を含む細胞標的化分子は、細胞標的化分子に関して、10ng/mL未満のCD50値で標的陽性細胞に対して細胞毒性を示すことができる。
【実施例10】
【0615】
部位特異的コンジュゲーションのためのユニークなセレノシステイン残基を含む本発明の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド
この実施例では、1つの異所性セレノシステイン残基を各々が含む、本発明の例示的な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(SLT-1A-Sec(p)-バリアント(ここで、Sec(p)は、ユニークな位置における改変されたセレノシステイン残基を表す))を、本発明の例示的な細胞標的化分子の成分として生成し、試験する。異所性セレノシステイン残基を、ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数を変化させなかった遺伝的にコードされた置換として、志賀毒素エフェクターポリペプチドに改変により導入する。これらの志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子(例えば、SLT-1A-Sec(p)-バリアント::scFv(n)、scFv(n)::SLT-1A-Sec(p)-バリアント、StxA-Sec(p)-バリアント::scFv(n)、及びscFv(n)::StxA-Sec(p)-バリアント)を生成する。
【0616】
この実施例では、1つの異所性セレノシステイン残基を有する志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを各々が含む細胞標的化分子を生成し、試験する。これらの細胞標的化分子各々は、細胞外標的生体分子と高い親和性で結合することができるポリペプチドを含む、細胞標的化、免疫グロブリン型、結合領域を含んだ。
【0617】
この実施例の親志賀毒素エフェクターポリペプチドは、親分子における唯一の内在性システイン残基を除去するための置換C241S又はC242Sを含んでいてもよい、志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)及び志賀様毒素2のAサブユニット(SLT-2A)(配列番号3)のA1断片である。標準的技術を使用し、親志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、各々が1つのユニークな異所性のセレノシステイン残基を有し、システイン残基を有さなくてもよい、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを作製する(表16を参照されたい)。表16に記載する、正確に1つの異所性セレノシステイン残基を有する志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子を、標準的技術を使用して生成し、上記実施例で説明したように試験する。表16中のコード「Se-C」は、セレノシステインを指す。
【0618】
【表18】
【0619】
本発明の例示的な細胞標的化分子を、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分へのセレノシステイン残基の導入後、志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験する。分析する志賀毒素Aサブユニット機能は、触媒活性、真核生物リボソーム機能の阻害、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの自律的細胞内経路決定である。
【0620】
この実施例の例示的な細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性を、リボソーム阻害アッセイを使用して試験する。細胞標的化分子に関して試験した全ての志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Sec(p)のリボソーム不活性化活性は、全ての本来存在するシステイン残基及び/又は野生型志賀毒素A1断片(配
列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸1~251、又は配列番号3のアミノ酸1~250)を含む、同様に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性と同等である。
【0621】
志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Sec(p)を各々が含む、この実施例の例示的な細胞標的化分子の、細胞毒性活性の作用強度及び特異性を、当業者に公知の組織培養細胞に基づく細胞毒性アッセイを使用して判定する。本発明の例示的な細胞標的化分子は、各々、標的陽性細胞に対して細胞毒性であり、試験する細胞株に依存して、一般に100nM未満のCD50値を示す。細胞標的化分子の成分として試験する志賀毒素エフェクターポリペプチドの多くについての細胞毒性は、全てのその内在性システイン残基を有する関連志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性に匹敵する。
【0622】
この実施例の例示的な細胞標的化分子を、当業者に公知の通例の方法を使用して、産生し、精製し、細胞標的化分子のセレノシステインを介して別の分子(例えば、この他の分子が、スクシンイミジルエステル-蛍光色素又はイソシアネート/イソチオシアネート-蛍光色素を含む場合など)とコンジュゲートさせる。これらの細胞標的化分子を、実施例5で説明したように、細胞標的化、内在化、多量体化及び/又は細胞毒性について試験する。細胞毒性アッセイの結果は、この実施例のカーゴ連結細胞標的化分子が、作用強度及び活性の点でこれらの細胞標的化分子のコンジュゲートしていないバリアントに匹敵する、標的陽性細胞に対する強力且つ特異的な細胞毒性を保持することを示す。この実施例における実験の結果は、カーゴ分子を、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分のセレノシステイン残基とコンジュゲートさせることができること、並びにさらに、そのようなコンジュゲートさせた細胞標的化分子が、標的陽性細胞の内部へのカーゴ分子の有用な送達レベル及び/又は標的とした細胞に対する有用な細胞毒性レベルを示すことを実証する。
【実施例11】
【0623】
部位特異的コンジュゲーションのためのユニークなピロリン-カルボキシ-リジン残基を含む本発明の例示的な志賀毒素エフェクターポリペプチド
この実施例では、1つの異所性ピロリン-カルボキシ-リジン残基を各々が含む、本発明の例示的な志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチド(SLT-1A-Pcl(p)-バリアント(ここで、Pcl(p)は、ユニークな位置における改変されたピロリン-カルボキシ-リジン残基を表す))を、本発明の例示的な細胞標的化分子の成分として生成し、試験する。異所性ピロリン-カルボキシ-リジン残基を、ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数を変化させなかった遺伝的にコードされた置換として、志賀毒素エフェクターポリペプチドに改変により導入する。これらの志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、本発明の例示的な細胞標的化分子(例えば、SLT-1A-Pcl(p)-バリアント::scFv(n)、scFv(n)::SLT-1A-Pcl(p)-バリアント)、StxA-Pcl(p)-バリアント::scFv(n)、及びscFv(n)::StxA-Pcl(p)-バリアント)を生成する。
【0624】
この実施例では、1つの異所性ピロリン-カルボキシ-リジン残基を有する志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを各々が含む細胞標的化分子を生成し、試験する。これらの細胞標的化分子各々は、細胞外標的生体分子と高い親和性で結合することができるポリペプチドを含む、細胞標的化、免疫グロブリン型、結合領域を含んだ。
【0625】
この実施例の親志賀毒素エフェクターポリペプチドは、親分子の唯一の内在性システイン残基を除去するための置換C241S又はC242Sを含んでいてもよい、志賀毒素のAサブユニット(配列番号2)、志賀様毒素1のAサブユニット(配列番号1)及び志賀様毒素2のAサブユニット(SLT-2A)(配列番号3)のA1断片である。標準的技
術を使用し、親志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、各々が1つのユニークな異所性のピロリン-カルボキシ-リジン残基を有し、リジン残基を有さなくてもよい、様々な志賀毒素エフェクターポリペプチドを作製する(表17を参照されたい)。表17に記載する、正確に1つの異所性ピロリン-カルボキシ-リジン残基を有する志賀毒素エフェクターポリペプチドを含む細胞標的化分子を、標準的技術を使用して生成し、上記実施例で説明したように試験する。表17中のコード「Pcl」は、ピロリン-カルボキシ-リジンを指す。
【0626】
【表19】
【0627】
本発明の例示的な細胞標的化分子を、それらの志賀毒素エフェクターポリペプチド成分へのピロリン-カルボキシ-リジン残基の導入後、志賀毒素Aサブユニット機能の保持について試験する。分析する志賀毒素Aサブユニット機能は、触媒活性、真核生物リボソーム機能の阻害、細胞毒性、及び推論によりサイトゾルへの自律的細胞内経路決定である。
【0628】
この実施例の例示的な細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチド成分の触媒活性を、リボソーム阻害アッセイを使用して試験する。細胞標的化分子に関して試験した全ての志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Pcl(p)のリボソーム不活性化活性は、全ての本来存在するリジン残基及び/又は野生型志賀毒素A1断片(配列番号1若しくは配列番号2のアミノ酸1~251、又は配列番号3のアミノ酸1~250)を含む、同様に脱免疫化された志賀毒素エフェクターポリペプチドの触媒活性と同等である。
【0629】
志賀毒素エフェクターポリペプチドSLT-1A-Pcl(p)を各々が含む、この実施例の例示的な細胞標的化分子の、細胞毒性活性の作用強度及び特異性を、当業者に公知の組織培養細胞に基づく細胞毒性アッセイを使用して判定する。本発明の例示的な細胞標的化分子は、各々、標的陽性細胞に対して細胞毒性であり、試験する細胞株に依存して、一般に100nM未満のCD50値を示す。細胞標的化分子の成分として試験した志賀毒素エフェクターポリペプチドの多くについての細胞毒性は、全ての本来存在するリジン残基を含みピロリン-カルボキシ-リジン残基又は代替的に野生型志賀毒素A1断片を含まない、関連志賀毒素エフェクターポリペプチドの細胞毒性に匹敵する。
【0630】
この実施例の例示的な細胞標的化分子を、当業者に公知の通例の方法を使用して、産生し、精製し、細胞標的化分子のピロリン-カルボキシ-リジン残基を介して別の分子(例えば、この他の分子が、スクシンイミジルエステル-蛍光色素又はイソシアネート/イソチオシアネート-蛍光色素を含む場合など)とコンジュゲートさせる。これらの細胞標的化分子を、実施例5で説明したように、細胞標的化、内在化、多量体化及び/又は細胞毒性について試験する。細胞毒性アッセイの結果は、この実施例のカーゴ連結細胞標的化分子が、作用強度及び活性の点でこれらの細胞標的化分子のコンジュゲートしていないバリアントに匹敵する、標的陽性細胞に対する強力且つ特異的な細胞毒性を保持することを示す。この実施例における実験の結果は、カーゴ分子を、本発明の細胞標的化分子の志賀毒素エフェクターポリペプチドのピロリン-カルボキシ-リジン残基とコンジュゲートさせることができること、並びにさらに、そのようなコンジュゲートさせた細胞標的化分子が、標的陽性細胞の内部へのカーゴ分子の有用な送達レベル及び/又は標的とした細胞に対する有用な細胞毒性レベルを示すことを実証する。
【実施例12】
【0631】
本発明の志賀毒素Aサブユニットエフェクターポリペプチドを各々が含む、様々な細胞型を標的とする細胞標的化分子
この実施例では、本発明の細胞標的化分子を、本書に記載する1つ又は2つ以上の志賀毒素エフェクターポリペプチドを使用して、カーゴ、及び/又は細胞標的化分子を変化させる薬剤の、部位特異的結合のための、ユニークなアミノ酸残基をもたらすように生成し、ここで、志賀毒素エフェクターポリペプチドはまた、1)脱免疫化、2)プロテアーゼ切断耐性、及び/又は3)埋め込まれた若しくは挿入された異種T細胞エピトープのうちの2つ又は3つ以上ももたらす。免疫グロブリン型結合領域は、表18の縦列1から選択される分子に由来し、表18の縦列2に示す細胞外標的生体分子に結合する。選択された免疫グロブリン型結合領域及び志賀毒素エフェクターポリペプチドを互いに会合させる。この実施例の例示的タンパク質を、当技術分野において公知の技術を使用して、カルボキシ末端KDEL型シグナルモチーフ(配列番号1142として開示される「KDEL」)とともに生成してもよく、追加の外在性物質、例えば、有用な薬剤:ポリエチレングリコール若しくは血清アルブミンのような、検出促進剤、溶解度を変化させる薬剤、薬物動態を変化させる薬剤、免疫原性を変化させる薬剤、及び/若しくは薬力学的変化をもたらす薬剤など、並びに/又は追加の外在性物質:抗原、酵素若しくはメッセンジャーRNAのような、ペプチド、タンパク質、核酸、タンパク質-核酸複合体、細胞毒性薬剤若しくは抗生物質と、連結させてもよい。得られた分子を、適切な細胞外標的生体分子を発現する細胞を使用して、前の実施例で説明したような、本発明の細胞標的化分子としてカテゴリー化されるのに必要な任意の機能について試験する。
【0632】

【表20】




【0633】
本発明の一部の実施形態を例証により説明してきたが、本発明の趣旨を逸脱することなく、又は特許請求の範囲を超えることなく、多くの修飾形態、変形形態及び適応形態を用いて、並びに当業者の範囲内である非常に多数の均等物又は代替解決方法を使用して、本発明を実施することができることは、明らかであろう。
【0634】
全ての刊行物、特許及び特許出願は、個々の公表文献、特許又は特許出願各々が、その全体が参照により組み込まれると具体的かつ個々に示されている場合と同程度に、それら全体が参照により本書に組み込まれる。特許出願公開文献である国際公開2005/092917号パンフレット、国際公開第2007/033497号パンフレット、米国特許出願公開第2013/196928号明細書、国際公開第2014/164680号パンフレット、国際公開第2014/164693号パンフレット、国際公開第2015/113005号パンフレット、国際公開第2015/113007号パンフレット、国際公開第2015/120058号パンフレット、国際公開第2015/138435号パンフレット、国際公開第2015/138452号パンフレット、米国特許出願公開第2015/0259428号明細書、国際公開第2015/191764号パンフレット、米国特許出願公開第2016/177284号明細書、国際公開第2016/126950号パンフレット、国際公開第2016/196344号パンフレット、及び国際公開第2017/019623号パンフレットは、各々、その全体が参照により本書に組み込まれる。米国特許出願第62/431,036号明細書の開示は、その全体が参照により本書に組み込まれる。本書で言及するアミノ酸及びヌクレオチド配列についてのGenBank(米国国立生物学情報センター(National Center for Biotechnology Information)、U.S.)から電子的に入手可能な全ての生物学的配列情報の完全な開示は、各々、それら全体が、参照により本書に組み込まれる。
【0635】

【表21】























































































































図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
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