(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】キャノピーの形成部材、これを用いたキャノピー、およびキャノピーの製造方法
(51)【国際特許分類】
B64F 1/305 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
B64F1/305
(21)【出願番号】P 2023102183
(22)【出願日】2023-06-22
【審査請求日】2023-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年1月24日、令和5年4月21日に、三菱重工交通・建設エンジニアリング株式会社に販売した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596054652
【氏名又は名称】ニッシンコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】堤(田辺) 智史
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0141681(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0018249(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 1/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピーの蛇腹構造を形成する形成部材であって、
前記形成部材は、
前記キャノピーの天井面を形成する形成部材本体を備え、
前記形成部材本体は、
前記形成部材本体の長手方向と直交する方向の幅が、所定位置から中心側に向かってテーパー状に形成されてなる、形成部材。
【請求項2】
さらに、
前記形成部材は、
前記キャノピーの両側面を形成する側面形成部を備え、
前記側面形成部は、
前記側面形成部の長手方向と直交する方向の中央に、該長手方向に沿って切り欠き部が
形成されてなる、請求項1に記載の形成部材。
【請求項3】
航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピーの蛇腹構造を形成する形成部材を備え、
前記形成部材は、前記キャノピーの天井面を形成するにあたって、
前記蛇腹構造の谷部は、中心部分に位置する箇所の高さが、前記キャノピーの天井面の左右両端部分よりも所定高さ分高くな
り、
前記蛇腹構造の山部は、水平な直線状となるように形成し、これによって、
前記キャノピーの天井面に傾斜部分を形成してなる、キャノピー。
【請求項4】
航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピーの製造方法であって、
前記キャノピーの蛇腹構造を形成する形成部材が備える形成部材本体が、前記キャノピーの天井面を形成し、該形成部材本体の長手方向と直交する方向の幅を、所定位置から中心側に向かってテーパー状となるように形成するステップと、
複数の前記形成部材を、複数つなぎ合わせることにより蛇腹構造を形成するステップと、
を含む、航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャノピーの形成部材、これを用いたキャノピー、およびキャノピーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空港では、飛行機とターミナルビルとの間を乗客が行き来するために、搭乗橋が利用されている。搭乗橋の、飛行機側の先端には、搭乗橋の先端を幌のように覆うキャノピーが設けられる(例えば、特許文献1)。これにより、搭乗橋内への風雨の侵入を防止する。
【0003】
特許文献1の第2図に記載のように、キャノピー(クロージャ11)は、天井面と左右側面とを備え、これら各面は山折りと谷折りの連続からなる蛇腹構造に形成されている。また、特許文献1の第2図に示すように、キャノピーは飛行機の機体に沿って湾曲する必要があるため、柔性のある素材で製作される。柔性のある素材とは、例えば、テトロン(ポリエステル)の基布の裏表両面を軟質PVCでコーティングし、防炎処理したシートである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のようなキャノピーは、雨天時に、天井面の蛇腹構造の谷折りの部分に雨水がたまり、水はけが悪いという問題があった。特に、キャノピーは柔性のある素材で製作されるがために、雨量が多いと、雨水の重みで上面の谷折り部分がポケット構造になってしまい、そこに雨水がたまり、水はけがさらに悪化するという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、水はけのよいキャノピーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
請求項1の発明にかかる形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)は、
航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピー(
図1に示すキャノピー1)の蛇腹構造(
図2に示す蛇腹構造2)を形成する形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)であって、
前記形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)は、
前記キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の天井面を形成する形成部材本体(
図4(a)に示す形成部材本体4)を備え、
前記形成部材本体(
図4(a)に示す形成部材本体4)は、
前記形成部材本体(
図4(a)に示す形成部材本体4)の長手方向(
図4(a)に示す長手方向D1)と直交する方向(
図4(a)に示す直交する方向D2)の幅(
図4(a)に示す幅L)が、所定位置(
図4(a)に示すコーナー折り目C)から中心(
図4(a)に示す中心線P)側に向かってテーパー状に形成されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明にかかる形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)は、請求項1に記載の前記形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)であって、
前記キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の両側面を形成する側面形成部(
図4(a)に示す右側面形成部5a、左側面形成部5b)を備え、
前記側面形成部(
図4(a)に示す右側面形成部5a、左側面形成部5b)は、
前記側面形成部(
図4(a)に示す右側面形成部5a、左側面形成部5b)の長手方向(
図4(a)に示す長手方向D1)と直交する方向(
図4(a)に示す直交する方向D2)の中央に、該長手方向(
図4(a)に示す長手方向D1)に沿って切り欠き部(
図4(b)に示す切り欠き部5b1、5b2)が形成されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明にかかるキャノピー(
図1に示すキャノピー1)は、
航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピー(
図1に示すキャノピー1)の蛇腹構造(
図2に示す蛇腹構造2)を形成する形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)を備え、
前記形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)は、前記キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の天井面を形成するにあたって、
前記蛇腹構造の谷部(図1、図6(b)に示す谷線4a1)は、中心(
図1、図6(b)に示す中心線O)部分に位置する箇所の高さが、前記キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の天井面の左右両端部分よりも所定高さ(
図1に示す高さH)分高くな
り、
前記蛇腹構造の山部(図6(b)に示す山部4a2)は、水平な直線状となるように形成し、これによって、
前記キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の天井面に傾斜部分を形成してなることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明にかかるキャノピー(
図1に示すキャノピー1)の製造方法は、
航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピー(
図1に示すキャノピー1)の製造方法であって、
前記キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の蛇腹構造(
図2に示す蛇腹構造2)を形成する形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)が備える形成部材本体(
図4(a)、(b)に示す形成部材本体4)が、前記キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の天井面を形成し、該形成部材本体(
図4(a)、(b)に示す形成部材本体4)の長手方向(
図4(a)、(b)に示す長手方向D1)と直交する方向(
図4(a)、(b)に示す直交する方向D2)の幅(
図4(a)、(b)に示す幅L)を、所定位置(
図4(a)、(b)に示すコーナー折り目C)から中心(
図4(a)、(b)に示す中心線P)側に向かってテーパー状となるように形成するステップと、
複数の前記形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)を、複数つなぎ合わせることにより蛇腹構造(
図2に示す蛇腹構造2)を形成するステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0013】
請求項1、4に係る発明によれば、形成部材(
図4(a)に示す形成部材3)を用いて製作するキャノピー(
図1に示すキャノピー1)は、天井面の谷線(
図1に示す谷線4a1)が、中心(
図1に示す中心線O)側から所定位置(
図1に示すコーナー折り目C)側に向かって下がるへの字状に形成される。
【0014】
したがって、請求項1、4によれば、キャノピー(
図1に示すキャノピー1)上に降ってきた雨水は、への字状の傾斜により、容易に天井面から流れ落ちることとなる。このため、本発明によれば、水はけのよいキャノピー(
図1に示すキャノピー1)を提供することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、側面形成部(
図4(a)に示す右側面形成部5a、左側面形成部5b)が形成する蛇腹構造が薄くなる(
図1に示す厚みW1、W2)。そのため、キャノピー(
図1に示すキャノピー1)内を移動する乗客や荷物などに、キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の側面が当たる可能性が低減できる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、キャノピー(
図1に示すキャノピー1)の天井面に傾斜部分が
蛇腹構造の谷部(図1、図6(b)に示す谷線4a1)に形成されるから、キャノピー(
図1に示すキャノピー1)上に降ってきた雨水は、傾斜により、容易に天井面から流れ落ちることとなる。このため、本発明によれば、水はけのよいキャノピー(
図1に示すキャノピー1)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るキャノピーの一実施形態を示す正面図である。
【
図2】
図1に二点鎖線の円で示された、キャノピーの天井面の中央部分の拡大斜視図である。
【
図3】
図1に二点鎖線の円で示された、キャノピーの右肩部分の分解斜視図である。
【
図4】(a)は
図3に示す形成部材を展開した図、(b)は(a)の変形例であって、形成部材に切り欠き部を設けた形成部材を示す図である。
【
図5】(a)(b)は
図4(a)に示す形成部材を
図3に示す形成部材のような形状にする方法を示す説明図である。
【
図6】(a)は山部に骨材を差し込んでいない状態のキャノピーを簡略的に示す正面図、(b)は骨材を差し込んだ状態のキャノピーを簡略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るキャノピーの一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0019】
<キャノピーの概要説明>
まず、キャノピー1の概要について説明する。
図1は、搭乗橋(図示せず)の飛行機(図示せず)側の先端に取り付けられたキャノピー1を、飛行機側から見た状態を示す。
図1に示すように、キャノピー1は、搭乗橋の通路の床FLを、幌のように覆っている。
【0020】
図2に示すように、このキャノピー1の天井面は、蛇腹構造2となっている。なお、図示しないが、キャノピー1の両側面も、蛇腹構造となっている。
【0021】
この蛇腹構造2は、前後方向(
図1の紙面と直交する方向)に伸縮する。ただし、
図2に示すように、この蛇腹構造2は、制限ベルトB2により、伸長できる長さが制限されている。なお、
図1に示すように、キャノピー1は、制限ベルトB2を含め、全部で5本の制限ベルトB1~5を備える。
【0022】
ところで、
図1に示すように、このキャノピー1の天井面(蛇腹構造2の谷線4a1)は、
図1に示すキャノピー1の中心線Oに位置する箇所の高さが、キャノピー1の天井面の左右両端部分より、高さH分、高くなるように形成されている。これにより、キャノピー1の天井面に傾斜部分が形成されるから、キャノピー1上に降ってきた雨水は、容易に天井面から流れ落ちる。
【0023】
上記のようなキャノピー1は、
図3に示すように、主にクッション部材13、連結部材14、形成部材3により構成される。以下、各構成要素について説明する。
【0024】
<クッション部材の説明>
クッション部材13は、
図1に示すように、横材13aと、この横材13a左右両端部に取り付けられる、左右一対の縦材13bとからなる。
【0025】
これら横材13a、縦材13bは、いずれも細長い四角柱状である。これら横材13a、縦材13bは、高張力鋼板等の金属材料で形成される芯材に、四角柱状のゴムスポンジを取り付け、柔性のある素材で覆ったものである。柔性のある素材とは、例えば、テトロン(ポリエステル)の基布の裏表両面を軟質PVCでコーティングし、防炎処理したシートである。さらに、
図1に示すように、横材13aの飛行機側の側面には、横材13aの長手方向(
図1における左右方向)の幅と同じ長さの細い2本のシリコンスポンジ11aが、上下に並列して取り付けられている。一方、左右一対の縦材13bの飛行機側の側面の上部には、縦材13bの長手方向(
図1における上下方向)の幅の5分の1ほどの長さの細いシリコンスポンジ11bが、各々1本ずつ取り付けられている。
【0026】
なお、
図1に示すように、縦材13bの下端部13b1あたりには、裏面(飛行機側と反対側の側面)に、キャノピー1と搭乗橋を接続するための左右一対の器具16aが設けられている。しかしながら、これら左右一対の器具16aは従来周知の構造であるため、詳しい説明は省略する。
【0027】
<連結部材の説明>
図1に示すように、連結部材14は、クッション部材13の周囲を覆うように設けられている。また、
図1に示すように、連結部材14は、横材14aと、この横材14aの左右両端部に取り付けられる、左右一対の縦材14bとを備える。
【0028】
図3を用いて、この連結部材14についてより具体的に説明する。
図3に示すように、連結部材14は、クッション部材13の向こう側(
図3における後側)に配置される。
【0029】
そして、
図3に示す連結部材14の横材14aの、クッション部材13側(
図3における前側)の端辺14a1が、クッション部材13の横材13aに縫合等により連結される。このようにしてクッション部材13と連結される連結部材14の横材14aは、
図2及び
図3に示すように、クッション部材13側(
図3における前側)に下る斜面を形成する。
【0030】
同様にして、
図3に示す連結部材14の縦材14bも、クッション部材13の縦材13bに連結される。なお、連結部材14の縦材14bは、図示しないが、キャノピー1の外側から内側に傾斜するような斜面を形成する。
【0031】
<形成部材の説明>
以下、形成部材3について、形成部材3を展開した状態の説明と、その形成部材3を
図3に示すような形状にする処理の説明と、
図3に示す形成部材3を用いて
図2に示すような蛇腹構造2を形成する方法の説明と、に分けて説明する。
【0032】
<形成部材を展開した状態の説明>
図4(a)に、形成部材3(
図3参照)を展開した状態を示す。
図4(a)に示すように、形成部材3は、形成部材本体4と、右側面形成部5a、左側面形成部5bとを備える。なお、形成部材3には、柔性のある素材が用いられている。柔性のある素材とは、例えば、テトロン(ポリエステル)の基布の裏表両面を軟質PVCでコーティングし、防炎処理したシートである。
【0033】
形成部材本体4は、キャノピー1の天井面の蛇腹構造2を形成する(
図2参照)。そのため、形成部材本体4の長手方向D1(
図4における左右方向)の長さは、キャノピー1の天井面の幅(
図1におけるキャノピー1の天井面の左右方向の長さ)とほぼ等しい。
図4(a)に示すように、この形成部材本体4は、その長手方向D1(
図4における左右方向)と直交する方向D2(
図4における上下方向)の幅Lが、コーナー折り目Cから形成部材3の中心線Pに向かってテーパー状に形成されている。
【0034】
一方、右側面形成部5a、左側面形成部5bは、
図1に示すキャノピー1の両側面の蛇腹構造(図示せず)を形成する。そのため、右側面形成部5a、左側面形成部5bの長手方向D1(
図4における左右方向)の長さは、各々、キャノピー1の側面の高さ(
図1におけるキャノピー1の側面の上下方向の長さ)とほぼ等しい。
【0035】
なお、右側面形成部5a、左側面形成部5bには切り欠き部5b1、切り欠き部5b2を設けることもできる(
図4(b)参照)が、これについては後述する。
【0036】
<形成部材の処理の説明>
キャノピー1を製作するにあたっては、形成部材3に処理を施し、
図3に示すような形状にする。この処理を、
図5(a)(b)を用いて説明する。
【0037】
図5(a)に示す右側面形成部5aは、
図4(a)に示す右側面形成部5aを、矢印Y1で示すように、形成部材3をコーナー折り目Cに沿って折り曲げた状態である。この右側面形成部5aに、コーナー折り目Cに沿ってつまみ縫いを施す。すなわち、形成部材3を、コーナー折り目Cに沿って折り曲げ、輪を縫い合わせる。これにより、形成部材3が、コーナー折り目Cで折れ曲がった状態(
図5(b)参照)を維持できるよう癖づける。
【0038】
同様に、
図5(a)に示すコーナー折り目Cの一端Caから他端Cbに向かって折返し折り目C2に沿って山形につまみ縫いを施す。これにより、形成部材3が、折返し折り目C2で折れ曲がった状態(
図5(b)参照)を維持できるよう癖づける。
【0039】
次いで、
図5(a)に二点鎖線で示す位置に谷線4a1(
図5(b)参照)が形成されるように、コーナー折り目CをV字状に折り曲げる(
図5(b)参照)とともに、山型の折返し折り目C2の頂点の部分が谷線4a1に下側から接する(
図5(b)参照)ように、矢印Y2で示すように折返し折り目C2に沿って折り返す。
【0040】
上記のようにすれば、
図5(b)に示すような形状の形成部材3を得ることができる。
【0041】
上記の処理を左側面形成部5bに対しても行う。これにより、
図3に示す形状の形成部材3を得ることができる。なお、図示しないが、上記のように処理された形成部材3も、クッション部材13や連結部材14と同様の、下側が開口する下向きコ字状をしている。
【0042】
<形成部材による蛇腹構造の形成の説明>
上記のように処理した形成部材3を用いて、蛇腹構造2(
図2参照)を形成する方法を説明する。
【0043】
まず、
図3に示す形成部材3を、連結部材14に縫い合わせる。具体的には、
図3に示す形成部材3の、形成部材本体4の長手方向(
図3における左右方向)の端辺4b1、端辺4b2のうち、手前側(
図3における前側)の端辺4b1を、
図3に示す連結部材14の向こう側(
図3における後ろ側)の端辺14a2と縫い合わせる。同様に、形成部材3の右側面形成部5a、左側面形成部5bも、連結部材14の左右の縦材14bと縫い合わせる。
【0044】
ここで、形成部材3と連結部材14を縫い合わせるにあたっては、
図3に示すように、形成部材3と連結部材14との間に、一対のロープ固定部ブラケットR1、R2を挟み、一緒に縫い込んでおく。
【0045】
ロープ固定部ブラケットR1、R2は、後述する骨材15(
図6(b)参照)を、ロープを用いて保持するためのものである。ロープ固定部ブラケットR1、R2の先端には、ロープを挿通するためのロープ孔hが形成されている。また、ロープ固定部ブラケットR1、R2は、形成部材3と同様の柔性のある素材で形成されている。このようなロープ固定部ブラケットR1、R2は、
図3に示す4セット(8個)のロープ固定部ブラケットR1、R2を含め、合計14セット(合計28個)が、所定間隔ごとに配置され、基端側が形成部材3と連結部材14との間に一緒に縫い込まれる。
【0046】
次に、
図3に示す形成部材3の向こう側(
図3における後ろ側)に、さらに複数個の形成部材3を縫い合わせる。例えば、8つの山部4a2(
図2参照)を備える蛇腹構造2を形成するには、
図3に示す連結部材14と縫い合わせた形成部材3を含め、全部で7個の形成部材3を縫い合わせることとなる。
【0047】
具体的には、まず、
図3に示す形成部材3(1個目の形成部材3)と、その形成部材3の向こう側(
図3における後側)に配置した図示しない形成部材3(2個目の形成部材3)とを縫い合わせる。縫い合わせるにあたっては、これら形成部材3の隣り合う端辺、すなわち、1つ目の形成部材3の向こう側(
図3における後ろ側)の端辺4b2と、2つ目の形成部材3の手前側(
図3における前側)の端辺4b1とを縫い合わせる。同様に、
図3に示す右側面形成部5a、左側面形成部5bも、隣り合う辺を縫い合わせる。
【0048】
このとき、1個目の形成部材3と2個目の形成部材3との間にも、14セットのロープ固定ブラケットR1、R2(
図3参照)が、所定間隔ごとに挟み込まれ、基端側が一緒に縫い込まれる。
【0049】
このようにして、連結部材14、および、複数個の形成部材3を縫い合わせることにより、
図2に示すような蛇腹構造2が形成される。なお、
図2では天井部の山部4a2のみが表されているが、山部4a2は天井および左右側面にわたって形成される。また、蛇腹構造2を内側から見ると、天井および左右側面の山部4a2から、複数の一対のロープ固定部ブラケットR1,R2が対になってぶら下がっていることとなる(図示せず)。
【0050】
なお、
図6(a)に示すように、この時点では、谷線4a1は傾斜していない。そこで、蛇腹構造2の内側から、
図6(b)に示すように、各山部4a2(
図2参照)に骨材15を差し込む。この骨材15は、高張力鋼板等の金属材料で芯材を形成し、その芯材を形成部材3と同様の柔性のある素材で覆ったものである。
図6(b)に示すように、蛇腹構造2、クッション部材13や連結部材14と同様の、下側が開口する下向きコ字状をしている。
【0051】
このような骨材15を、蛇腹構造2の内側から、天井および左右側面にわたって形成されている山部4a2からぶら下がっている複数のロープ固定部ブラケットR1,R2の、各対の間に差し込む。例えば、8つの山部4a2(
図2参照)を備える蛇腹構造2を形成するには、山部4a2(
図2参照)の各々に各1個、合計8個の骨材15が差し込まれることとなる。
【0052】
そして、各対のうち一方のロープ固定部ブラケットR1に、ロープ(図示せず)の一端を固定し、他端は骨材15の下をくぐらせ、他方のロープ固定部ブラケットR2に固定する。このようにして、1個の骨材15は、14セットのロープ固定ブラケットR1、R2(
図3参照)により、蛇腹構造2の山部4a2に対して固定される。その結果、
図6(b)に示すように、骨材15によって山部4a2が上方へ引っ張られ、山部4a2は水平な直線状になる。これに伴い、
図6(b)に示すように、谷線4a1も上方へ引っ張られる。
【0053】
ここで、
図4(a)に示すように、形成部材本体4が中心線P側に向かってテーパー状に形成されている。このため、
図6(b)に示すように、谷線4a1の中心線Oに位置する箇所が、最も高く引っ張られる。かくして、
図1に示すように、キャノピー1の天井面の谷線4a1は、
図1に示すキャノピー1の中心線Oに位置する箇所の高さが、キャノピー1の天井面の左右両端部分より、高さH分、高くなるように形成されることとなる。すなわち、キャノピー1の天井面に傾斜部分が形成されることとなる。
【0054】
以上説明したとおり、従来のキャノピーは、天井面の蛇腹構造の谷折りの部分に雨水がたまってしまい、水はけが悪いという問題があった。しかし、本実施形態によれば、天井面にヘの字状の傾斜を形成することができるため、天井から容易に雨水が落ちるキャノピーを提供することができる。
【0055】
また、本実施形態に示す形成部材3のような構成にすれば、天井面に傾斜をつけるために、骨材の形状を複雑にしたり、別の金属材料を用いたりする必要がない。このため、キャノピーが飛行機の機体に沿って湾曲しても、局所的な応力が生じて破損してしまうという問題が生じにくい。
【0056】
以上のことより、本実施形態によれば、水はけのよいキャノピーを提供することができる。
【0057】
<切り欠き部の説明>
ところで、上記の説明では、
図4(a)に示すような形成部材3を用いて製作する場合について説明したが、
図4(b)に示すような形成部材3Aを用いることもできるので、これについて説明する。
【0058】
図4(b)に示す形成部材3Aの構成のうち、
図4(a)に示す形成部材3と同じ構成については、同一の符号を付し説明は省略する。
図4(b)に示す形成部材3Aが、
図4(a)に示す形成部材3と異なる点は、左側面形成部5b及び右側面形成部5aの中央に、切り欠き部5b1、切り欠き部5b2が形成されている点である。より詳しくは、
図4(b)に示す左側面形成部5bの中央(長手方向D1(
図4における左右方向)と直交する方向D2(
図4における上下方向))に、長手方向D1(
図4における左右方向)に沿って切り欠き部5b1が形成されている。そして。
図4(b)に示す右側面形成部5aの中央(長手方向D1(
図4における左右方向)と直交する方向D2(
図4における上下方向))に、長手方向D1(
図4における左右方向)に沿って切り欠き部5b2が形成されている点である。
【0059】
このような形状の形成部材3Aを用いて、
図3に示すような形状にするにあたっては、
図4(b)に示すように、右側面形成部5aに切り欠き部5b2があることから、まず切り欠き部5b1、5b2の両辺5b31、5b32を縫い合わせる。あとは、
図4(a)に示す形成部材3と同様の処理を行うことにより、
図5(b)に示すような形状の形成部材3を得ることができる。
【0060】
ただし、
図5(b)に示す右側面形成部5aの厚みWは、
図4(b)に示す形成部材3Aを用いたほうが、
図4(a)に示す形成部材3を用いた場合より薄いものとなる。この点を、
図1を用いてより詳しく説明する。
図4(a)に示す形成部材3を用いると、蛇腹構造2の厚み(通路の床FL側に突き出す谷線と、外側に突き出す稜線との間の距離)は、
図1に示す厚みW1を有する。一方、
図4(b)に示す形成部材3Aを用いると、蛇腹構造2の厚みは、切り欠き部5b2の分だけ薄くなり、
図1に示す厚みW2となる。
【0061】
このため、形成部材3Aを用いてキャノピー1を製作すれば、キャノピー1内を移動する乗客や荷物などに、キャノピー1の左右両側面の蛇腹構造2が当たる可能性が低減できる。
【0062】
なお、キャノピー1の天井面に形成されるへの字状の傾斜の角度を大きくするために、
図4(a)に示す右側面形成部5a、左側面形成部5bの部分の幅Lをより長くすることで、テーパーの角度を大きくすることができる。ただし、そうすると、
図1に示す厚みW1がより大きくなってしまう。しかしながら、その様な場合にも、
図4(b)に示すような切り欠き部5b1、切り欠き部5b2を形成することで、厚みW1を抑えることができる。
【0063】
<変形例の説明>
なお、本実施形態において示した形成部材、キャノピーはあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、形成部材本体4、右側面形成部5a、左側面形成部5bが一体的に形成された形成部材3を用いたが、これに限らず、形成部材本体4、右側面形成部5a、左側面形成部5bが別体となった形成部材3を用いてもよい。
【0064】
また、形成部材3の幅Lは、コーナー折り目Cから中心線Pまでテーパー状に形成されている(
図4(a)参照)が、形成範囲はこれに限らない。例えば、左右両端部から、あるいはコーナー折り目Cより中心線P側に寄った位置から中心線Pに向かって形成されても良い。
【0065】
また、本実施形態においては、形成部材3を用いて、キャノピー1の天井面を形成する例を示したが、それに限らず、
図1に示すキャノピー1の中心線Oに位置する箇所の高さが、キャノピー1の天井面の左右両端部分より、高さH分、高くなるように形成されていれば、どのような形成部材を用いても良い。しかしながら、形成部材3を用いた方が好ましい。天井面に傾斜をつけるために、骨材の形状を複雑にしたり、別の金属材料を用いたりする必要がなく、キャノピーが飛行機の機体に沿って湾曲しても、局所的な応力が生じて破損してしまうという問題が生じにくいためである。
【0066】
また、本実施形態においては、形成部材3は左右対照な形状である例を示したが、それに限らず、左右が非対称な形状であっても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 キャノピー
2 蛇腹構造
3、3A 形成部材
4 形成部材本体
D1 長手方向
D2 直交する方向
L 幅
C コーナー折り目(所定位置)
P 中心線
5a 右側面形成部(側面形成部)
5b 左側面形成部(側面形成部)
5b1 切り欠き部
5b2 切り欠き部
H 高さ(所定高さ)
【要約】
【課題】水はけのよいキャノピーを提供する。
【解決手段】航空機用乗客搭乗橋の先端に設けられるキャノピーの蛇腹構造を形成する形成部材(3)であって、キャノピーの天井面を形成する形成部材本(4)を備え、形成部材本体(4)は、形成部材本体(4)の長手方向(D1)と直交する方向(D2)の幅(L)が、所定位置(例えばコーナー折り目C)から中心線(P)側に向かってテーパー状に形成されてなる。このような形成部材(3)を用いてキャノピーを製作することによりキャノピーの天井にへの字状の傾斜をつけ、水はけのよいキャノピーとする。
【選択図】
図4