(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】屋根裏の暖気管理システム
(51)【国際特許分類】
E04D 13/17 20060101AFI20231023BHJP
E04B 1/76 20060101ALI20231023BHJP
E04B 7/18 20060101ALI20231023BHJP
E04H 9/16 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
E04D13/17
E04B1/76 200A
E04B7/18 B
E04H9/16 M
(21)【出願番号】P 2023135938
(22)【出願日】2023-08-23
【審査請求日】2023-08-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523322210
【氏名又は名称】相川 和弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(72)【発明者】
【氏名】相川 和弘
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-127566(JP,U)
【文献】実開昭59-152015(JP,U)
【文献】特開2005-314983(JP,A)
【文献】特開平10-82210(JP,A)
【文献】特開2001-262867(JP,A)
【文献】特開昭62-133260(JP,A)
【文献】実開昭62-131024(JP,U)
【文献】実開平4-51565(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/17
E04D 13/16
E04B 1/76
E04B 7/18
E04H 9/16
F24F 7/10
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された複数の垂木及び当該垂木に固定される野地板を備える屋根と、当該屋根を支える壁体と、室内の天井と、により区画される屋根裏の暖気管理システムであって、
前記天井には、前記室内と前記屋根裏とに連通する開口部が設けられ、
前記垂木の底部に固定され、前記垂木同士を相互に連結する断熱材落下防止板と、
隣り合う前記垂木の間に前記垂木に沿って配置され、かつ、前記断熱材落下防止板上に載置されるとともに、前記壁体側に配置される方の端部が、前記壁体から所定の間隔を隔てて垂れ下がる帯状の断熱材と、
前記屋根裏内の前記壁体に沿って略水平方向に延設され、上方に向けて開口する複数の吹出穴を備える屋根裏送風管と、
前記屋根裏内に設置され、前記開口部に取り付けられる吸気口および前記屋根裏側に開口する排気口を備える電動式の換気ファンと、
前記屋根裏内に配置され、一端が前記排気口に接続され、他端が前記屋根裏送風管に接続される屋根裏連結管と、
を有し、
前記垂木と前記野地板と前記断熱材とにより暖気が通過する風道空間を形成することを特徴とする屋根裏の暖気管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の屋根裏の暖気管理システムであって、
前記屋根裏側には複数の野縁が前記天井に所定の間隔で設けられており、
前記開口部を前記野縁間に形成し、
前記開口部を囲うように補強用木枠を配置して前記野縁に固定し、
前記補強用木枠上に前記換気ファンを設置することを特徴とする請求項1記載の屋根裏の暖気管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冬季には屋根裏に暖気を供給して屋根への積雪を抑制し、夏季には暖気の流入を規制して屋根裏の温度上昇を抑制することができる、一般家屋向けの屋根裏の暖気管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
豪雪地帯では、冬季の除雪作業が重労働で危険を伴うことから、屋根裏に暖気を供給して屋根への積雪を抑制する技術が開発されているが、次に例示する技術のうち、施工が容易であり建築済みの既存の家屋に適用可能な技術として普及したものは見当たらない。
【0003】
特許文献1は、内部に空洞部を有する二重構造の屋根を設け、この屋根の空洞部全体に亘り温風を強制循環させる温風循環装置と、この温風循環装置を自動制御する制御装置とを設けたことを特徴とする融雪屋根を開示するものである。当該屋根は下屋根と上屋根からなる二重構造をしており、その内部全体に亘って小間隙の空洞部が設けられており、温風は当該空洞部を流れる構成となっている。そのため、本技術を適用するには屋根の葺替工事を施工する必要があり、大改修を必要としコストが嵩むため、既存の家屋に適用することが現実的ではない。
【0004】
同様に、特許文献2は、屋根部に融雪用の温風路を設けたことを特徴とする屋根構造を開示するものである。同技術は、屋根裏に太陽熱集熱器Cとストーブ等の補助熱源とを設置するものであり、屋根部の略全面積に取り付けられた箱体を前記温風路として利用する構成となっている。そのため、本技術を適用するには屋根の葺替工事を伴い大改修が必要となるためコストが嵩み、既存の家屋に適用することが現実的ではない。
【0005】
上記特許文献1及び2に示すような屋根の葺替工事を伴う技術は、専らコストの面で既存の家屋に適用することが困難であり広く一般に普及し難い。これに対し、特許文献3に示される技術は、温風を供給する温風供給器を小屋裏内に設置するものであり、屋根の葺替工事を要せず、屋根裏の換気口を開閉するダンパー及びコントローラーを設ける必要があるものの、既存の家屋でも施工しやすいという利点がある。もっとも、同技術によれば、融雪のために屋根裏の空間全体の空気を温める必要があるため、熱効率が悪く、小屋のような屋根裏が小空間の建物を対象とする技術としては有効であるとしても、一般家屋の屋根に積もった雪を溶かすことが困難である。
【0006】
特許文献4は、既存の屋根でも容易に施工できることを解決課題とする、温風循環による屋根の融雪装置等の技術を開示するものである。同文献4に開示される技術は、屋根裏に設置された送風機付熱交換器により屋根裏の空気を温風に換え、ダクトで分配チャンバーに送り、数他の吹出管に温風を等量に分配し、吹出口から、軒先に向けて、温風を吹き出させ、鼻隠し、垂木、野地板を温めながら、棟側の熱交換器に戻ることで温風を循環させることを特徴とする。かかる技術は、一般家屋の屋根に積もった雪を斑なく溶かすために、ダクト、分配チャンバー、調整管、吹出管等を複雑に設置する構成となっており、理論上は既設の家屋に施工可能であるとしても、多数の部品を複雑に連結する必要があり、容易に施工できるものではなく普及し難い技術である。また、専用の送風機付熱交換器や配管を屋根裏に設置するものであり、屋根側の重量が重くなってしまい建物全体の耐久性や寿命への影響も懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭58-045825号公報
【文献】実開昭59-152015号公報
【文献】特開昭61-233154号公報
【文献】特開2005-314983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
豪雪地帯では、屋根に降り積もる雪の除雪作業が重労働で危険を伴うことから、人手によるまでもなく、熱により融解して消雪することが可能な技術が望まれている。特に、屋根の葺替工事のような大規模改修を必要とせず、施工容易性が高く、低コストで導入することができ、既存の家屋に現実的に適用可能な普及性の高い技術が望まれている。
【0009】
特許文献1ないし4に開示される技術は、いずれも屋根裏に暖気を供給するための専用ヒーター(熱源)を要する構成であり、製作コストやメンテナンスコストが嵩む。また、屋根裏に供給される暖気を利用して効率よく積雪を抑制するためには、特許文献3のごとく屋根裏全体を温める方式では非効率であることから、温風(暖気)の通路を区画する等して積雪部(屋根)を効率的に温める必要があるが、特許文献4のごとくダクト、分配チャンバー、調整管、吹出管等を設置する方式ではコストが嵩んでしまう上、屋根側の重量が増えてしまい建物全体の耐久性や寿命への影響も懸念される。
【0010】
夏場は、屋根が太陽熱に曝されて、屋根裏内が高温化する。そこで、夏季には屋根裏への暖気の流入を規制して、屋根裏の温度上昇を抑制できるものが望ましい。すなわち、冬季には消雪対策用の技術として利用し、夏季には高温化対策用の技術として利用することができる技術であれば有用性が高く、普及が期待できる。
【0011】
本出願の発明者は、試行錯誤の末、既設の屋根裏構造と室内の暖気とを効果的に利用することによって、施工容易性が高く建築済みの既存の家屋に低コストで適用することができる技術を開発した。同技術によれば、夏季の屋根裏の温度上昇も抑制することができる。
【0012】
本発明は、冬季には屋根への積雪を抑制し、夏季には屋根裏の温度上昇を抑制し、施工が容易なため建築済みの既存の家屋に低コストで適用可能な技術として普及することが期待できる屋根裏の暖気管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するため、並設された複数の垂木及び当該垂木に固定される野地板を備える屋根と、当該屋根を支える壁体と、室内の天井と、により区画される屋根裏の暖気管理システムであって、
前記天井には、前記室内と前記屋根裏とに連通する開口部が設けられ、
前記垂木の底部に固定され、前記垂木同士を相互に連結する断熱材落下防止板と、
隣り合う前記垂木の間に前記垂木に沿って配置され、かつ、前記断熱材落下防止板上に載置されるとともに、前記壁体側に配置される方の端部が、前記壁体から所定の間隔を隔てて垂れ下がる帯状の断熱材と、
前記屋根裏内の前記壁体に沿って略水平方向に延設され、上方に向けて開口する複数の吹出穴を備える屋根裏送風管と、
前記屋根裏内に設置され、前記開口部に取り付けられる吸気口および前記屋根裏側に開口する排気口を備える電動式の換気ファンと、
前記屋根裏内に配置され、一端が前記排気口に接続され、他端が前記屋根裏送風管に接続される屋根裏連結管と、
を有し、
前記垂木と前記野地板と前記断熱材とにより暖気が通過する風道空間を形成することを特徴とする。
【0014】
前記屋根裏の暖気管理システムは、好ましくは、
前記屋根裏側には複数の野縁が前記天井に所定の間隔で設けられており、
前記開口部を前記野縁間に形成し、
前記開口部を囲うように補強用木枠を配置して前記野縁に固定し、
前記補強用木枠上に前記換気ファンを設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、冬季には屋根への積雪を抑制することができ、夏季には屋根裏の温度上昇を抑制することができ、施工が容易なため建築済みの既存の家屋に低コストで適用可能な技術として普及することが期待できる屋根裏の暖気管理システムを提供することができる。
【0016】
従来の技術は、融雪のための専用のヒータを屋根裏に設置したり、複数の配管を複雑に屋根裏に取り付けたりするものであって、融雪性能を重視する余りコスト高となり、施工が困難で現実には広く普及するものではなかった。これに対し、本発明は、屋根の葺替工事を要することなく、既設の屋根にも適用することができるものであるが、特に、既設の屋根裏構造を利用して暖気が流れる風道空間を形成し、断熱材の下端を垂れ下げることにより暖気の導入路を形成する等、可能な限り入手容易な部材を用いて簡易な構成ないし施工技術により実施可能なものとする点に特徴がある。加えて、暖気を生成するための融雪専用の熱源等の特殊な設備を用いるものではなく、天井に開口部を設け室内の暖気を利用して融雪するものであり、屋根裏に暖房設備を設置したり複雑な配管構成としたりしないため屋根側の重量増加が抑えられ、断熱材落下防止板により屋根の強化が図られているため、強度上も問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る屋根裏の暖気管理システムの概略構成図である。
【
図2】
図1のA矢印方向から本システムの概略構成を一部省略して示した参考図である。
【
図3】
図1のB矢印方向から本システムの概略構成を一部省略して示した参考図である。
【
図4】
図1のC矢印方向から本システムの概略構成を一部省略して示した参考図である。
【
図5】
図1に示す屋根裏の暖気管理システムの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
図1は屋根裏の暖気管理システムの概略構成図である。なお、
図1は一方の壁体15側に本システムを適用した図であるが、本システムは家屋の四方にある各壁体側に同様に設置することができる。
図2は、
図1に示すA矢印方向から本システムの概略構成を一部省略して示した参考図であり、
図3は、壁体15を図示省略のうえ、
図1に示すB矢印方向から本システムの概略構成を一部省略して示した参考図であり、
図4は、
図1に示すC矢印方向から本システムの概略構成を一部省略して示した参考図である。
【0020】
本発明は、並設された複数の垂木12及び垂木12に固定される野地板13を備える屋根11と、屋根11を支える壁体15と、室内(本実施例では居室16)の天井17と、により区画される屋根裏の暖気管理システムであり、天井17には居室16(室内)と屋根裏10とに連通する開口部17aを設ける。本発明は、並設された複数の垂木及び当該垂木に固定される野地板を備える屋根と、当該屋根を支える壁体と、居室の天井と、により区画される屋根裏を有する家屋であれば、屋根の種類や、家屋の階数に限らず適用することができる。
【0021】
本システムは、垂木12の底部に固定され垂木12同士を相互に連結する断熱材落下防止板1と、隣り合う垂木12の間に垂木12に沿って配置され、かつ、断熱材落下防止板1上に載置されるとともに、壁体15側に配置される端部2aが、壁体15から所定の間隔を隔てて垂れ下がる帯状の断熱材2と、屋根裏10内の壁体15に沿って略水平方向に延設され、上方に向けて開口する複数の吹出穴3aを備える屋根裏送風管3と、屋根裏10内に設置され、開口部17aに取り付けられる吸気口4aおよび屋根裏10側に開口する排気口4bを備える電動式の換気ファン4と、屋根裏10内に配置され、一端が排気口4bに接続され、他端が屋根裏送風管3に接続される屋根裏連結管5と、を有し、垂木12と野地板13と断熱材2とにより暖気が通過する風道空間7を形成することを特徴する。以下、本発明の構成について詳細に説明する。
【0022】
屋根裏10は、壁体15を含む四方に設置された壁体と、居室16の天井17と、屋根11とにより区画される。屋根11は、複数の垂木12と、垂木12の上面側に固定される野地板13と、野地板13に固定される屋根材14(スレート)とを有する。垂木12は棟から軒に向けて傾斜して配置される。本発明は、傾斜して配置される垂木12の軒先(下端)側から暖気を供給するものであり、本発明が構成される位置は、各家屋の垂木の配置や暖気の供給源である居室(室内)の位置等に応じて決定される。垂木12や野地板13、屋根材14の構成は一般的な家屋の屋根の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。なお、野地板13には防水処理材を施しても良い。
【0023】
居室16と屋根裏10とは天井17により隔てられる。天井17の屋根裏10側には複数の野縁18が設けられる。この天井17の一部に開口部17aを設ける。開口部の形状は換気ファンの吸気口の形状に対応して決定される。後述のとおり、本発明は、居室16内の暖気を利用して融雪する。従って、好ましくは、ヒータ等の暖房器具を使用する居室の天井に開口部17aを設ける。開口部17aは、好ましくは、野縁18と野縁18の間、即ち、野縁18を切断しないように設ける。例えば、野縁18が300mmないし450mm間隔で設けられている場合、開口部は野縁18を避けるように300mm×300mmの寸法で形成される。本実施例においては、補強用木枠8を、開口部17aを囲うように配置し、野縁18に打ち付けて固定する。換気ファン4は補強用木枠8上に設置し、安定させる。
【0024】
断熱材落下防止板1は、垂木12の底部(底面)に固定され、垂木12同士を相互に連結する。断熱材落下防止板1は、概ね垂木12に直交する方向に配置され、複数の垂木12に架け渡されて固定されることにより、断熱材2の落下を防止するとともに、垂木12同士のねじれを防止し、屋根全体の強度を高める。断熱材落下防止板1としては、例えば100mm、90mm幅の板を用いる。断熱材落下防止板1は、30cmから40cmの間隔で、垂木12に固定して取り付ける。
【0025】
断熱材2は、帯状の部材である。断熱材2は、垂木12とこれに隣り合う垂木12との間であって、かつ、断熱材落下防止板1上に載置する。断熱材2としては、垂木12の厚さに応じ、風道空間7を形成できる適宜の厚さのものを選択する。また、断熱材2は、垂木12と垂木12の間に垂木との間で隙間が生じないように取り付ける。垂木12は、野地板13が固定される部材であり、屋根11の形状に応じて、斜めに配置される。断熱材2はこれらの垂木12の延伸方向に沿って配置される帯状の部材であり、上端部側が棟側に配置され、軒側、即ち、下端部側が壁体15側に配置される。
【0026】
断熱材2は、その下端部側、即ち壁体15側に配置される方の端部2a側が、壁体15から所定の間隔(20cmから30cm位)を隔てて、暖簾状に垂れ下がるように配置される。すなわち、軒側に配置される断熱材落下防止板1aは、壁体15から所定の間隔(20から30cm位)を隔てた箇所に位置するように垂木12に固定されており(
図1参照)、この断熱材落下防止板1aに対して載置された断熱材2の壁体15側の端部2a側が暖簾上に垂れ下がるように取り付けられる。断熱材2の端部2aは、屋根裏送風管3の近傍まで垂れ下がる。断熱材2の端部2a側を垂れ下げるという簡易な手段により、断熱材2の下端部側と壁体15との間に、暖気の取り入れ口となる通路を形成する。屋根裏送風管3から噴き出した暖気が、断熱材の下端部側と壁体15との間の空間を上昇し、風道空間7に入り込んで、野地板13を温めながら上昇する。なお、断熱材2の端部2aは、屋根裏送風管3よりも下側にまで垂れ下がるようにしても良い。
【0027】
屋根裏送風管3は、屋根裏10内の壁体15に沿って略水平方向に延設され、上方に向けて開口する複数の吹出穴3aを備える。屋根裏送風管3はアルミ製のダクトで蛇腹状の中腹部を備え、伸縮自在であり任意の方向に曲げることができる。本実施の形態においては、屋根裏連結管5の立ち上がり部5bの他端(上端)にT型のエルボが接続され、当該エルボの両端部のそれぞれに屋根裏送風管3が接続される。屋根裏送風管3の他端部は閉じられており、屋根裏連結管5を介して屋根裏送風管3に供給された暖気は、それぞれの吹出穴3aから吹き出る。吹出穴3aの穴径は例えば8mm~10mm程度である。
【0028】
電動送風機としての換気ファン4は、シロッコファンであり、屋根裏10内に設置する。換気ファン4は、居室16側に開口する吸気口4aと、屋根裏10側に開口する排気口4bとを備える。換気ファン4は、居室16内のコンセントに接続された電源ケーブル(図示しない)を通じて電気の供給を受けて作動し、吸気口4aから居室16内の空気を取り込んで排気口4bから排出する。排気口4bには樹脂製のアダプター9を装着し、アダプター9に屋根裏連結管5の連結部5aを差し込んで接続する。接続を確実にするために、アダプター9と屋根裏連結管5の連結部5aとはアルミテープにより固着する。なお、開口部17aには、開閉扉を設けるようにしても良い。 電源ケーブルは、天井に10mm程度の貫通穴を設けて通すようにしても良く、吸気口から通すようにしても良い。換気ファンは、シロッコファン以外のタイプを使用しても良い。
【0029】
屋根裏連結管5は、アルミ製のダクトであり、蛇腹部を備え伸縮自在であり、任意の方向に曲げることができる。屋根裏連結管5は屋根裏10内に配置する。屋根裏連結管5は、壁体15に向かって側方に伸びる連結部5aと壁体15に沿って上方に延びる立ち上がり部5bとにより構成され、一端が排気口4bに接続され、他端がT型エルボを介して屋根裏送風管3に接続される。排気口4bから排出された空気は、屋根裏連結管5を介して、屋根裏送風管3に供給される。なお、T型エルボに変えてY型エルボ等を用いても良く、一つの湾曲自在の管により屋根裏連結管と屋根裏送風管とを一体として構成するようにしても良い。
【0030】
冬季は、人が生活する居室16内は、通常、暖房6により暖められて屋根裏10よりも暖かい。本発明は、雪を溶かすためのヒーター(熱源)を屋根裏の空間内に設置せず、居室16等の室内に設置された暖房等により温められた室内の暖気を利用することから、熱源のメンテナンスや温度調整が容易である。暖房6は、居室16等の室内に設置され居室16等の室内に暖気を供給するヒータであるが、電熱式でも温水式でもガス式でも灯油式でも良い。なお、降雪期に暖気が供給されて暖められる室内であれば、居間や台所、寝室といった居室に限らず、洗面所、トイレ、納戸、押し入れ等の天井に上記開口部を設け、本発明を適用することも可能である。
【0031】
風道空間7は、隣り合う垂木12と野地板13と断熱材2とにより区画される空間であり、当該空間内を暖気が通過する。風道空間7は、
図2及び
図3に示すように、複数並列して設けられる。本発明は、既存の屋根の構造、即ち垂木と野地板とにより区画された空間を利用して暖気が通過する風道空間7を形成したり、断熱材2の壁体15の端部2a側を垂れ下げることで暖気の取り込み口を設けたりする等、可能な限り簡易な構成ないし施工技術により実施可能なものとする点に特徴があり、これにより施工容易性と低コストとが図られる。
【0032】
以下、冬季における屋根裏の暖気管理システムの作動について説明する。居室16内は、冬季中は、暖房6により暖められている。この状態で、換気ファン4を作動させると、居室16内の暖気が換気ファン4に取り込まれ、屋根裏連結管5を通って屋根裏送風管3内に供給され、吹出穴3aから上方に向けて吹き出る。吹き出た暖気は、断熱材2の端部2a側と壁体15との間の通路を上昇して、風道空間7内に入り込み、野地板13を温めながら、上昇し、屋根全体を温める。これにより、屋根11に落ちた雪を効率よく溶かして消失させることができる。
【0033】
本発明によれば、屋根裏10に形成された風道空間7内に、居室16内(室内)の暖気を供給することにより、効率的に屋根を温めて、屋根への積雪を抑制することができる。この点、雪は、一般に棟側よりも軒先側に積もりやすいが、軒先側の方がより温まるように構成されている。本発明は、室内の暖気を利用することから効率的な融雪が可能であり、ランニングコストを低く抑える効果もある。
【0034】
夏季における屋根裏の暖気管理システムの作動について説明する。すなわち、夏季は、太陽光により屋根が高温化し、その熱が屋根材14から野地板13に伝わる。この点、本発明によれば、断熱材2が敷設されているため、屋根から伝達された熱が屋根裏に伝わり難い。また、断熱材2の端部2a側を垂れ下げることで、風道空間7内の暖気が屋根裏10に流出しにくい構成となっており、屋根裏10の温度上昇を防ぐことができる。これにより、室内の冷房効率を上げることができる。なお、屋根裏10の換気のため、適宜、換気ファンを回すようにしても良い。
【0035】
図5は
図1に係るシステムの変形例である屋根裏の暖気管理システムを示す図である。壁体15Bは、壁体15Aに相対する反対面側に配置される壁体である。なお、
図5において、
図1に示す部品ないし部分と共通する部品ないし部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図5に示す白抜き矢印は、屋根裏連結管5内の暖気が流れる方向を示す。
【0036】
換気ファン4の排気口4bに接続される屋根裏連結管5は、
図5に示すように、T字又はY字に分岐させるようにしても良い。
図5に示す屋根裏連結管5は、屋根裏内に配置され、一端が換気ファン4の排気口に接続されるが、中腹部がT字に分岐しており、一方が屋根裏送風管3Aに接続され、他方が屋根裏送風管3Bに接続される。
【0037】
屋根裏送風管3Bは、屋根裏送風管3(3A)と同様、屋根裏10内の壁体15Bに沿って略水平方向に延設され、上方に向けて開口する複数の吹出穴3bを備える。屋根裏連結管5は、壁体15Bに向けて延びる連結部5cと、エルボ(90度)を介して垂直方向に伸びる立ち上がり部5dとを備え、立ち上がり部5cが屋根裏送風管3Bに接続される。従って、1台の換気ファン4を作動させることにより、室内の暖気が、分岐して、連結部5a、5cのそれぞれに流れ、立ち上がり部5b、5dを通って、屋根裏送風管3A、3Bのそれぞれに設けられた吹出穴から噴出することにより、切妻屋根の両面全体を暖めることができる。
【0038】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、その発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施が可能である。例えば、本発明は、既設屋根に適用できる点に特徴があるが、新築時の屋根裏に適用しても良い。また、屋根裏送風管や屋根裏連結管は蛇腹状のものでなくても良い。また、図示しないが、複数の居室(室内)のそれぞれに開口部を設け、それぞれの開口部に換気ファンを取り付けて、それぞれの換気ファンの排気口を複数の屋根裏送風管により連結して結合することにより、複数の室内の暖気を集めて、屋根裏送風管に送り込むようにしても良い。すなわち、本発明に係る屋根裏連結管は、換気ファンや屋根裏送風管の取付け位置や台数等に応じて、
図5に示すように分岐させるようにしても良く、適宜結合させて使用するようにしても良い。
【符号の説明】
【0039】
1 断熱材落下防止板
2 断熱材
3 屋根裏送風管
3a 吹出穴
4 換気ファン
5 屋根裏連結管
6 暖房
7 風道空間
8 補強用木枠
9 アダプター
10 屋根裏
11 屋根
12 垂木
13 野地板
14 屋根材
15 壁体
16 居室
17 天井
17a 開口部
18 野縁
【要約】
【課題】施工が容易で既存の家屋に低コストで適用可能な屋根裏の暖気管理システムを提供する。
【解決手段】天井17には居室16(室内)と屋根裏10とに連通する開口部17aが設けられ、垂木12の底部に固定され垂木12同士を相互に連結する断熱材落下防止板1と、隣り合う垂木12の間に垂木12に沿って配置され、かつ、断熱材落下防止板1上に載置されるとともに、壁体15側に配置される端部2aが、壁体15から所定の間隔を隔てて垂れ下がる帯状の断熱材2と、壁体15に沿って略水平方向に延設され上方に向けて開口する吹出穴3aを備える屋根裏送風管3と、開口部17aに取り付けられる電動式の換気ファン4と、一端が排気口4bに接続され他端が屋根裏送風管3に接続される屋根裏連結管5と、を有し、垂木12と野地板13と断熱材2とにより暖気が通過する風道空間7を形成する。
【選択図】
図1