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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】携帯型プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 3/36 20060101AFI20231023BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20231023BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20231023BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B41J3/36 Z
B41J29/13
H05K5/02 L
H05K5/03 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022194585
(22)【出願日】2022-12-06
(62)【分割の表示】P 2018203473の分割
【原出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2023024503
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 仁久
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087534(JP,A)
【文献】特開2016-154431(JP,A)
【文献】特開2011-194576(JP,A)
【文献】実開昭61-003629(JP,U)
【文献】実公昭50-022284(JP,Y1)
【文献】特開平10-063394(JP,A)
【文献】特開2017-114092(JP,A)
【文献】特開2012-045808(JP,A)
【文献】特開2014-188707(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0069786(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02104125(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/36
B41J 29/13
H05K 5/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁および側壁を有し、記録媒体を収容する筐体と、
前記記録媒体に対して印刷を行うヘッドと、
前記ヘッドと対向する位置に配置され、前記ヘッドとの間に前記記録媒体を挟み込んで前記記録媒体を搬送するプラテンローラと、
前記筐体に設けられ、前記ヘッドと前記プラテンローラとを互いに離反させる操作を行うためのボタンであって、前記筐体の前記前壁と前記側壁との境界部分に設けられているボタンと、
を備えた携帯型プリンタであって、
前記携帯型プリンタの携行時に前記ボタンの押下方向が重力方向に対して略直交となる想定携行姿勢において、前記筐体における前記ボタンの周縁のうち少なくとも略重力方向に沿って延設され、前記側壁よりも内方において前記ボタンの押下方向の逆方向に沿ってに突出し、前記筐体の外側よりも内側が高くなるように突出する段部と、
前記段部は、前記筐体の外面に隣接する踊り場と、前記踊り場から突出する突出壁と、を有し、
前記段部のうち前記略重力方向に沿って延設された部分は、前記筐体の前記側壁の外面方向から見た際に露出した状態であり、
前記突出壁の高さは、前記踊り場の幅よりも大きい
ことを特徴とする携帯型プリンタ。
【請求項2】
前記想定携行姿勢において、前記段部は、前記ボタンの鉛直方向に沿った縁部の少なくとも最下部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の携帯型プリンタ。
【請求項3】
前記想定携行姿勢において、前記段部は、前記ボタンの鉛直方向に沿った縁部の全体にわたって設けられていることを特徴とする請求項2に記載の携帯型プリンタ。
【請求項4】
前記突出壁の幅は、前記踊り場の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の携帯型プリンタ。
【請求項5】
前記突出壁と前記ボタンとの間には、隙間が設けられ、
前記踊り場の幅は、前記隙間の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の携帯型プリンタ。
【請求項6】
前記踊り場と前記突出壁とのなす角は、鈍角であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の携帯型プリンタ。
【請求項7】
前記プラテンローラを回転自在に支持するカバーと、
前記筐体に設けられ、前記プラテンローラをロックさせるためのロック機構と、を更に備え、
前記筐体は、前記ヘッドを支持し、
前記ボタンは、前記ロック機構のロックを解除可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の携帯型プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
ホスト機器(例えば、PDA(Personal Digital Assistant)等)に入力された情報を、外出先等で出力(印刷)するための携帯型プリンタが知られている。携帯型プリンタは、防滴性能が求められる屋外などの環境下で使用されることがある。携帯型プリンタは、筐体と、筐体に設けられたボタン等(例えば、開閉カバー等の開放のために操作するイジェクトボタン等)の可動部品と、を備える。例えば、防滴性能が求められる環境下では、屋外作業時の雨水、使用者の手に付着した水などの液体が、筐体と可動部品との境界部分からプリンタ内部に浸入し、ロール紙、基板等に付着するおそれがある。ロール紙、基板等への液体の付着は、印刷不良、電子部品の故障の要因となる。したがって、携帯型プリンタには、プリンタ内部への液体の浸入を防止する構造が要求される。
このようなプリンタとして、イジェクトボタンとハウジングとの間の隙間からハウジング内部への水の浸入をしにくくするための構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、イジェクトボタンの周縁部に防水用密着面を形成し、防水用密着面がハウジングの内壁面に密着するようにイジェクトボタンを付勢可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-188707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、イジェクトボタンをハウジングの内側から組み立てるため、水滴がハウジングとイジェクトボタンとの段差に溜まることがある。特許文献1では、ハウジングに対しイジェクトボタンをオーバーラップさせることができず、イジェクトボタンが水滴の浸入を防止する傘のような役割を果たすことは困難である。段差に溜まった水は、イジェクトボタンを押したときにハウジングの内部に浸入する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、外部からプリンタ内部に液体が浸入することを抑制することができる携帯型プリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る携帯型プリンタは、記録媒体を収容する筐体と、前記記録媒体に対して印刷を行うヘッドと、前記ヘッドと対向する位置に配置され、前記ヘッドとの間に前記記録媒体を挟み込んで前記記録媒体を搬送するプラテンローラと、前記筐体に設けられ、前記ヘッドと前記プラテンローラとを互いに離反させる操作を行うためのボタンと、前記筐体における前記ボタンの周縁に設けられ、前記筐体の外側よりも内側が高くなるように突出する段部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、筐体におけるボタンの周縁に、筐体の外側よりも内側が高くなるように突出する段部が設けられることにより、外部から筐体内部に液体が浸入することを遮ることができる。したがって、外部からプリンタ内部に液体が浸入することを抑制することができる。加えて、防水用のカバー、撥水オイルなどを使用する場合と比較して、低コストで防滴性能を高めることができる。加えて、撥水オイルを使用する場合に対して、経年劣化により防止効果が薄れることはないため、好適である。
【0008】
上記の携帯型プリンタでは、前記ボタンの押下面が前記筐体の前壁に位置する想定携行姿勢において、前記段部は、前記ボタンの鉛直方向に沿った縁部の少なくとも最下部に設けられていてもよい。
【0009】
この構成によれば、段部がボタンの鉛直方向に沿った縁部の少なくとも最下部に設けられることにより、重力の作用により最も液体が溜まりやすい部分において、外部から筐体内部に液体が浸入することを遮ることができる。したがって、外部からプリンタ内部に液体が浸入することをより一層効果的に抑制することができる。
【0010】
上記の携帯型プリンタでは、前記想定携行姿勢において、前記段部は、前記ボタンの鉛直方向に沿った縁部の全体にわたって設けられていてもよい。
【0011】
この構成によれば、段部がボタンの鉛直方向に沿った縁部の一部のみに設けられている場合と比較して、外部から筐体内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0012】
上記の携帯型プリンタでは、前記想定携行姿勢において、前記ボタンは、前記筐体の前壁と側壁との境界部分に設けられていてもよい。
【0013】
この構成によれば、液体が筐体の前壁または側壁をつたってボタンに向けて流れてきても、段部により、筐体内部に液体が浸入することを遮ることができる。加えて、ボタンが筐体の前壁または側壁のいずれか一方のみに設けられている場合と比較して、ボタンの操作性向上に寄与する。加えて、ボタンが筐体の前壁のみに設けられている場合と比較して、記録媒体の排出性向上に寄与する。
【0014】
上記の携帯型プリンタにおいて、前記段部は、前記筐体の外面に隣接する踊り場と、 前記踊り場から突出する突出壁と、を備えてもよい。
【0015】
この構成によれば、段部が踊り場と突出壁とを備えた簡単な構成で、外部から筐体内部に液体が浸入することを遮ることができる。
【0016】
上記の携帯型プリンタにおいて、前記突出壁の高さは、前記踊り場の幅よりも大きくてもよい。
【0017】
この構成によれば、突出壁の高さが踊り場の幅以下の場合と比較して、液体が突出壁を乗り越えにくい。液体は、突出壁を乗り越える前に踊り場から溢れやすいため、外部から筐体内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0018】
上記の携帯型プリンタにおいて、前記突出壁の幅は、前記踊り場の幅よりも大きくてもよい。
【0019】
この構成によれば、突出壁の幅が踊り場の幅以下の場合と比較して、液体が突出壁を乗り越えにくい。液体は、突出壁を乗り越える前に踊り場から溢れやすいため、外部から筐体内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0020】
上記の携帯型プリンタにおいて、前記突出壁と前記ボタンとの間には、隙間が設けられ、前記踊り場の幅は、前記隙間の幅よりも大きくてもよい。
【0021】
この構成によれば、踊り場の幅が隙間の幅以下の場合と比較して、液体が隙間に浸入しにくい。液体は、隙間に浸入する前に踊り場から溢れやすいため、外部から筐体内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0022】
上記の携帯型プリンタにおいて、前記踊り場と前記突出壁とのなす角は、鈍角であってもよい。
【0023】
この構成によれば、踊り場と突出壁とのなす角が鋭角である場合と比較して、液体が踊り場に溜まりにくい。液体は、踊り場の傾斜に沿って流れ落ちやすくなるため、外部から筐体内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0024】
上記の携帯型プリンタにおいて、前記プラテンローラを回転自在に支持するカバーと、前記筐体に設けられ、前記プラテンローラをロックさせるためのロック機構と、を更に備え、前記筐体は、前記ヘッドを支持し、前記ボタンは、前記ロック機構のロックを解除可能であってもよい。
【0025】
この構成によれば、カバーの開閉に伴いヘッド及びプラテンローラが分離可能な構成において、外部からプリンタ内部に液体が浸入することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、外部からプリンタ内部に液体が浸入することを抑制することができる携帯型プリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態の携帯型プリンタにおいてカバーが閉位置の状態を示す斜視図である。
図2図1の側面図である。
図3】実施形態の携帯型プリンタにおいてカバーが開位置の状態を示す側面図である。
図4】実施形態の携帯型プリンタにおいてカバーを取り外した分解斜視図である。
図5】実施形態の携帯型プリンタにおけるボタンの側面図である。
図6】実施形態の携帯型プリンタにおいてボタンを取り外した状態を示す斜視図である。
図7図6のVII-VII断面を含む斜視図である。
図8図5のVIII-VIII断面を含む、実施形態の段部の説明図である。
図9】比較例のボタン周縁部の説明図である。
図10】実施形態の変形例の段部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、携帯型プリンタとして、使用者により携行可能とされたサーマルプリンタを例に挙げて説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。図中において、FRは前方を、LHは左方を、UPは上方をそれぞれ示す。以下の実施形態では、サーマルプリンタが図1に示す前後上下左右方向を向いた状態を携行時の姿勢として想定された想定携行姿勢とし、この想定携行姿勢にあるサーマルプリンタについて説明する。
【0029】
<サーマルプリンタ1>
図1に示すように、サーマルプリンタ1は、筐体2、カバー3、印字ユニット4(図3参照)およびボタン5を備える。サーマルプリンタ1は、記録媒体である記録紙P(図4参照)に対して情報を印刷するとともに、排出口24を通して記録紙Pを排出する。
【0030】
<筐体2>
例えば、筐体2は、ポリカーボネート等の樹脂材料、または金属材料により形成されている。筐体2の上部は、前壁10および側壁14を有する直方体状に形成されている。筐体2の下部は、前方に向けて開口する開口部9(図4参照)を有する箱型形状に形成されている。
【0031】
筐体2の前壁10における上部には、サーマルプリンタ1の各種操作を行う操作部11が設けられている。操作部11には、電源スイッチ、FEEDスイッチ等の各種機能スイッチ12、電源スイッチのON/OFFの情報を知らせるPOWERランプ、サーマルプリンタ1のエラー等を知らせるERRORランプ等の各種ランプ13が含まれる。
【0032】
図4に示すように、筐体2の下部には、開口部9を通してロール紙Rが収容されるロール紙収容部21が画成されている。ロール紙収容部21は、ロール紙Rを保持するガイドプレート22を備える。ガイドプレート22とカバー3(図1参照)の内面との間でロール紙Rを覆うように保持している。ガイドプレート22は、左右方向から見た断面視で弧状を有する。ガイドプレート22は、弧状の内周面にロール紙Rの外周面が接触した状態でロール紙Rを保持する。ガイドプレート22は、ロール紙Rから引き出された記録紙Pを印字ユニット4まで案内する。
【0033】
実施形態において、記録紙Pは、感熱紙である。例えば、記録紙Pは、各種ラベル、レシート、チケットの印刷等に好適に使用される。記録紙Pは、ロール状に巻回されることで、中空孔を有するロール紙Rを構成している。
【0034】
<カバー3>
図1に示すように、カバー3は、サーマルプリンタ1の下部前面を形成する。例えば、カバー3は、ポリカーボネート等の樹脂材料により形成されている。カバー3は、開口部9(図4参照)を開閉する覆い部(ペーパーカバー)である。カバー3は、筐体2に回動可能に支持されている。図3に示すように、カバー3は、カバー3下方のヒンジ構造15により、筐体2に対して回動可能とされている。ヒンジ構造15は、筐体2に設けられたヒンジ板16(図4参照)と、カバー3に設けられたヒンジシャフト17とが回動可能に連結されることにより形成されている。
【0035】
カバー3の上端は、プラテンユニット32を介して筐体2に係止可能とされている。カバー3は、プラテンローラ36を回転自在に支持する。カバー3の閉位置において、カバー3の上端縁と筐体2の前壁10における下端縁との間に形成された隙間は、印字ユニット4によって印字される記録紙Pが排出される排出口24を構成している(図1参照)。
【0036】
図1に示すように、排出口24の開口縁には、排出口24から排出される記録紙Pを切断する切断刃25が設けられている。切断刃25は、筐体2の前壁10における下端縁(開口縁のうち、上側に位置する部分)、及びカバー3の上端縁にそれぞれ一体で形成されている。例えば、記録紙Pを切断刃25に向けて引き倒すことにより、記録紙Pが切断される。
【0037】
図2に示すように、筐体2における裏側上部には、ストラップ、ベルト等が取り付け可能なフック19が設けられている。例えば、使用者がサーマルプリンタ1を携行する場合、肩にかけたストラップ、または腰ベルトをフック19に取り付ける等してサーマルプリンタ1を携行することが多いと想定される。このため、図1に示す前後上下左右方向を向いた状態が、サーマルプリンタ1の想定携行状態となる。
【0038】
<印字ユニット4>
図3に示すように、印字ユニット4は、筐体2に収容されている。印字ユニット4は、ヘッドユニット31と、プラテンユニット32と、を備える。印字ユニット4は、記録紙Pのうち、ロール紙Rから引き出された部分に対して印刷を行う(図4参照)。
【0039】
ヘッドユニット31は、筐体2の前壁10における下端部に設けられている。ヘッドユニット31は、複数の発熱素子を有するサーマルヘッド33を備える。サーマルヘッド33は、不図示のフレキシブル基板を介して制御部等に接続されている。サーマルヘッド33では、サーマルヘッド33上に搭載された不図示のドライバICが制御部からの信号に基づいて発熱素子の発熱が制御される。そして、記録紙Pが発熱素子を通過する際に、記録紙Pに対して印刷が行われる。
【0040】
プラテンユニット32は、カバー3の上端部(先端部)に設けられている。プラテンユニット32は、カバー3の開閉操作に伴いヘッドユニット31に対して着脱可能に組み合わされる。プラテンユニット32は、カバー3に取り付けられるプラテンフレーム(不図示)と、プラテンフレームに回転可能に支持されたプラテンローラ36と、を備える。
【0041】
プラテンローラ36は、カバー3の閉状態において、サーマルヘッド33と対向する位置に配置される。プラテンローラ36は、サーマルヘッド33との間に記録紙Pを挟み込んで記録紙Pを搬送する。
【0042】
プラテンローラ36は、左右方向に沿って延びるプラテン軸37と、プラテン軸37に外装されたゴム等からなるローラ本体38と、を備える。プラテン軸37の両端部には、プラテン軸37を回転可能に支持する軸受(不図示)がそれぞれ外装されている。プラテンローラ36は、不図示の軸受を介してプラテンフレームに回転可能に支持されている。
【0043】
例えば、プラテン軸37の右側端部には、プラテン用ギヤ(不図示)が装着されている。ヘッドユニット31には、不図示のプラテン用ギヤに組み合わされる輪列機構および輪列機構に接続されたモータが設けられている。プラテン用ギヤは、プラテンユニット32とヘッドユニット31とが組み合わされたとき、ヘッドユニット31側に設けられた輪列機構に噛合して、モータの回転駆動力をプラテンローラ36に伝達する。プラテンユニット32とヘッドユニット31とが組み合わされたとき、プラテンローラ36の外周面にヘッドユニット31におけるサーマルヘッド33が圧接される。
【0044】
<ボタン5>
図1に示すように、ボタン5は、筐体2の前壁10と側壁14との境界部分に設けられている。ボタン5は、押下面40を前面に有する。ボタン5は、サーマルヘッド33とプラテンローラ36とを互いに離反させる操作を行うための操作部である。ボタン5は、筐体2とカバー3との係止を解除し、筐体2の開口部9(図4参照)を開放するための操作部である。
【0045】
例えば、ボタン5を押下する(想定携行姿勢において後方に押す)ことにより、筐体2とカバー3との係止が解除される。これにより、カバー3が図2に示す閉位置から図3に示す開位置へ回動する。
【0046】
図6に示すように、筐体2には、ボタン5(図5参照)が収容される収容部45が設けられている。収容部45は、ボタン5の基部41(図5参照)の外周縁に沿う縁部46を有する。収容部45は、ボタン5によって内部機構(不図示)と連動させるため、空洞となっている。収容部45は、筐体2内部とつながっている。筐体2内部には、プリンタメカニズム、電子部品などが実装された制御基板(不図示)が設けられている。制御基板は、筐体2の前壁10の後方(例えば、図1に示す操作部11の後方)に配置されている。図中符号42は、ボタン5の基部41(図5参照)を前後方向に案内するためのガイドピンを示す。
【0047】
<ロック機構47>
図3に示すように、筐体2には、プラテンローラ36をロックさせるためのロック機構47が設けられている。ロック機構47は、ローラ挿入溝49に挿入されたプラテンローラ36を保持するロックアーム48を備える。例えば、ボタン5を押下すると、不図示の付勢部材に抗してロックアーム48が矢印Q1方向に回動する。すると、ロックアーム48がプラテン軸37の軸受(不図示)から外れるため、プラテンローラ36がローラ挿入溝49から外れる。これにより、カバー3を開くことができる。
【0048】
<段部50>
図5に示すように、筐体2におけるボタン5の周縁には、筐体2の外側よりも内側が高くなるように突出する段部50が設けられている。段部50は、筐体2の側壁14(外面)よりも内方(左方)において前方に突出している。段部50は、ボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の少なくとも最下部に設けられている。段部50は、ボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の全体にわたって設けられている。
【0049】
図7に示すように、段部50は、踊り場51と、突出壁52と、を備える。
踊り場51は、筐体2の外面(側壁14)に隣接している。踊り場51は、ボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の全体にわたって延在している(図6参照)。踊り場51は、左右方向と実質的に平行な平坦面を有する(図8参照)。
【0050】
突出壁52は、踊り場51から前方に突出する凸部である。突出壁52は、ボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の全体にわたって延在している(図6参照)。突出壁52は、踊り場51と同一の部材で一体に形成されている。図8の断面視で、突出壁52は踊り場51と共にL字状をなしている。
【0051】
図8に示すように、突出壁52とボタン5の基部41との間には、筐体内部に連通する隙間53が設けられている。隙間53は、突出壁52とボタン5の基部41との間を前方に開放している。例えば、隙間53(隙間53の幅W3)は、ボタン5の押下動作(想定携行姿勢における前後変更への移動)がスムーズに行われる程度の大きさを有する。
【0052】
実施形態において、突出壁52の高さH1は、踊り場51の幅W2よりも大きい(H1>W2)。ここで、突出壁52の高さH1は、想定携行姿勢において踊り場51から前方に突出する突出壁52の突出量を意味する。踊り場51の幅W2は、想定携行姿勢における踊り場51の平坦面の左右方向の長さを意味する。
【0053】
実施形態において、突出壁52の幅W1は、踊り場51の幅W2よりも大きい(W1>W2)。ここで、突出壁52の幅W1は、想定携行姿勢における突出壁52の左右方向の長さ(厚み)を意味する。
【0054】
実施形態において、踊り場51の幅W2は、隙間53の幅W3よりも大きい(W2>W3)。ここで、隙間53の幅W3は、想定携行姿勢における突出壁52とボタン5の基部41との間の左右方向の間隔を意味する。
【0055】
実施形態において、踊り場51と突出壁52とのなす角A1は、実質的に直角をなしている(A1≒90°)。ここで、角A1は、想定携行姿勢における踊り場51の平坦面と突出壁52の外面とのなす角を意味する。
【0056】
<段部50の作用>
次に、段部50の作用について比較例と併せて説明する。
図9は、比較例のボタン周縁部の説明図である。比較例は、実施形態の段部50(図8参照)を有しない。
例えば、屋外作業時の雨水、使用者の手に付着した水などの液体(水滴60X)が、筐体2Xとボタン5Xとの境界部分に留まることがある。比較例において、水滴60Xは、筐体2Xとボタン5Xとに接触している。水滴60Xは、表面張力により、筐体2Xおよびボタン5Xに接触しながら球形状を維持する。筐体2Xとボタン5Xとの境界部分に留まる水滴60Xは、筐体2Xとボタン5Xとの隙間53Xを通って、筐体2X内部へ流入する可能性がある。
【0057】
図8は、実施形態の段部50の説明図である。
実施形態において、段部50は、筐体2の外面(側壁14)に隣接する踊り場51と、踊り場51から前方に突出する突出壁52と、を備える。そのため、屋外作業時の雨水、使用者の手に付着した水などの液体(水滴60)は、踊り場51と突出壁52との境界部分に留まろうとする。実施形態において、水滴60は、ボタン5には接触せず、踊り場51と突出壁52とに接触している。踊り場51と突出壁52との境界部分に留まる水滴60は、踊り場51に沿って下方に流れ落ちる。そのため、水滴60が突出壁52とボタン5との隙間53に浸入する可能性(筐体2内部へ流入する可能性)は低い。
【0058】
以上説明したように、本実施形態のサーマルプリンタ1は、記録紙を収容する筐体2と、記録紙に対して印刷を行うヘッド33と、ヘッド33と対向する位置に配置され、ヘッド33との間に記録紙を挟み込んで記録紙を搬送するプラテンローラ36と、筐体2に設けられ、ヘッド33とプラテンローラ36とを互いに離反させる操作を行うためのボタン5と、筐体2におけるボタン5の周縁に設けられ、筐体2の外側よりも内側が高くなるように突出する段部50と、を備える。
【0059】
本実施形態によれば、筐体2におけるボタン5の周縁に、筐体2の外側よりも内側が高くなるように突出する段部50が設けられることにより、外部から筐体2内部に液体が浸入することを遮ることができる。したがって、外部からプリンタ内部に液体が浸入することを抑制することができる。加えて、防水用のカバー、撥水オイルなどを使用する場合と比較して、低コストで防滴性能を高めることができる。加えて、撥水オイルを使用する場合に対して、経年劣化により防止効果が薄れることはないため、好適である。
【0060】
また、本実施形態では、ボタン5の押下面40が筐体2の前壁10に位置する想定携行姿勢において、段部50は、ボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の少なくとも最下部に設けられている。
【0061】
本実施形態によれば、段部50がボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の少なくとも最下部に設けられることにより、重力の作用により最も液体が溜まりやすい部分において、外部から筐体2内部に液体が浸入することを遮ることができる。したがって、外部からプリンタ内部に液体が浸入することをより一層効果的に抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、想定携行姿勢において、段部50は、ボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の全体にわたって設けられている。
【0063】
本実施形態によれば、段部50がボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の一部のみに設けられている場合と比較して、外部から筐体2内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、想定携行姿勢において、ボタン5は、筐体2の前壁10と側壁14との境界部分に設けられている。
【0065】
本実施形態によれば、液体が筐体2の前壁10または側壁14をつたってボタン5に向けて流れてきても、段部50により、筐体2内部に液体が浸入することを遮ることができる。加えて、ボタン5が筐体2の前壁10または側壁14のいずれか一方のみに設けられている場合と比較して、ボタン5の操作性向上に寄与する。加えて、ボタン5が筐体2の前壁10のみに設けられている場合と比較して、記録紙の排出性向上に寄与する。
【0066】
また、本実施形態では、段部50は、筐体2の外面に隣接する踊り場51と、踊り場51から突出する突出壁52と、を備える。
【0067】
本実施形態によれば、段部50が踊り場51と突出壁52とを備えた簡単な構成で、外部から筐体2内部に液体が浸入することを遮ることができる。
【0068】
また、本実施形態では、突出壁52の高さH1は、踊り場51の幅W2よりも大きい。
【0069】
本実施形態によれば、突出壁52の高さH1が踊り場51の幅W2以下の場合と比較して、液体が突出壁52を乗り越えにくい。液体は、突出壁52を乗り越える前に踊り場51から溢れやすいため、外部から筐体2内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、突出壁52の幅W1は、踊り場51の幅W2よりも大きい。
【0071】
本実施形態によれば、突出壁52の幅W1が踊り場51の幅W2以下の場合と比較して、液体が突出壁52を乗り越えにくい。液体は、突出壁52を乗り越える前に踊り場51から溢れやすいため、外部から筐体2内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0072】
また、本実施形態では、突出壁52とボタン5との間には、隙間53が設けられ、踊り場51の幅W2は、隙間53の幅W3よりも大きい。
【0073】
本実施形態によれば、踊り場51の幅W2が隙間53の幅W3以下の場合と比較して、液体が隙間53に浸入しにくい。液体は、隙間53に浸入する前に踊り場51から溢れやすいため、外部から筐体2内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0074】
また、本実施形態では、プラテンローラ36を回転自在に支持するカバー3と、筐体2に設けられ、プラテンローラ36をロックさせるためのロック機構47と、を更に備え、筐体2は、ヘッド33を支持し、ボタン5は、ロック機構47のロックを解除可能である。
【0075】
この構成によれば、カバー3の開閉に伴いヘッド33及びプラテンローラ36が分離可能な構成において、外部からプリンタ内部に液体が浸入することを抑制することができる。
【0076】
(変形例)
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0077】
上述した実施形態では、踊り場51と突出壁52とのなす角A1が直角である構成について説明したが、これに限らない。
例えば、図10に示すように、踊り場151と突出壁52とのなす角A1は、鈍角であってもよい。断面視で、踊り場151は、踊り場151(平坦面)の左端が前方に位置し、かつ、踊り場151(平坦面)の右端が後方に位置するように傾斜していてもよい。これにより、水滴60は、踊り場151の傾斜に沿って流れやすい。
【0078】
本変形例では、踊り場151と突出壁52とのなす角A1は、鈍角である。
【0079】
本変形例によれば、踊り場51と突出壁52とのなす角A1が鋭角である場合と比較して、液体が踊り場151に溜まりにくい。液体は、踊り場151の傾斜に沿って流れ落ちやすくなるため、外部から筐体2内部に液体が浸入することをより一層効果的に遮ることができる。
【0080】
上述した実施形態では、想定携行姿勢において、段部50がボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の全体にわたって設けられている構成について説明したが、これに限らない。例えば、段部50は、ボタン5の鉛直方向に沿った縁部46の最下部のみに設けられていてもよい。加えて、段部50は、ボタン5の周縁部において、ボタン5の水平方向に沿った上縁部および下縁部の少なくとも一方に設けられていてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、突出壁52の幅W1が踊り場51の幅W2よりも大きい構成(W1>W2)について説明したが、これに限らない。例えば、突出壁52の幅W1は、踊り場51の幅W2以下であってもよい(W1≦W2)。
【0082】
上述した実施形態では、段部50が踊り場51から突出する1つの突出壁52を備える構成(1つの段部50のみ備える構成)について説明したが、これに限らない。例えば、段部は、踊り場から突出する複数の突出壁を備えていてもよい。すなわち、段部は、階段状の段構造を有していてもよい。
【0083】
上述した実施形態では、突出壁52が踊り場51と同一の部材で一体に形成されている構成について説明したが、これに限らない。例えば、突出壁52は、踊り場51と異なる部材で一体に設けられていてもよい。
【0084】
上述した実施形態では、携帯型プリンタの一例としてサーマルプリンタを用いた場合について説明したが、これに限らない。例えば、携帯型プリンタは、ドットインパクト式等のサーマルプリンタ以外の種々のプリンタに適用してもよい。
【0085】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【符号の説明】
【0086】
1…サーマルプリンタ(携帯型プリンタ)
2…筐体
10…前壁
14…側壁
33…サーマルヘッド(ヘッド)
36…プラテンローラ
40…押下面
46…縁部
47…ロック機構
50…段部
51,151…踊り場
52…突出壁
53…隙間
A1…踊り場と突出壁とのなす角
H1…突出壁の高さ
P…記録紙(記録媒体)
W1…突出壁の幅
W2…踊り場の幅
W3…隙間の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10