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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】放電検出システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20231023BHJP
   G01R 31/50 20200101ALI20231023BHJP
【FI】
G01R31/12 B
G01R31/50
G01R31/12 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019199501
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021071426
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 淳史
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-185223(JP,A)
【文献】特開2019-184479(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198791(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線経路に流れる電流を検出する電流検出部と、
放電事象により重畳された高周波帯域のノイズの検出を行うために用いられるハイパスフィルタと、
ハイパスフィルタを通過した高周波ノイズの出力から放電事象発生を判定した場合に、配線経路に流れる電流の放電事象発生時の増減を検出して、放電事象の要因を判定する判定部と、
判定部から送られる遮断信号により配線経路を開くように動作する開閉部と、
を備え
電流検出部で検出した放電電流の大きさによって、放電事象発生を判定してから開閉部に遮断信号を送るまでの時間を変化させる放電検出システム。
【請求項2】
配線経路に流れる電流を検出する電流検出部と、
放電事象により重畳された高周波帯域のノイズの検出を行うために用いられるハイパスフィルタと、
ハイパスフィルタを通過した高周波ノイズの出力から放電事象発生を判定した場合に、配線経路に流れる電流の放電事象発生時の増減を検出して、放電事象の要因を判定する判定部と、
を備え、
判定部は、放電事象発生時の電流が増大した場合には、異極間放電事象が生じたと判定し、放電事象発生時の電流が減少した場合には、同極間放電事象が生じたと判定する放電検出システム。
【請求項3】
ハイパスフィルタを接続し高周波帯域の出力を判定部に入力させる第1回路と、電流検出部の出力を直接判定部に入力させる第2回路とを備え、
判定部は、第1回路からの入力により放電事象の有無を特定し、第2回路からの入力により電流の増減を特定する請求項1又は2に記載の放電検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、電源と負荷などの間に設けたフィルタ回路により、電流波形や電圧波形における特定の周波数帯域の波形を除去し、検知されたノイズ出力より放電事象の発生と判定し、ブレーカを遮断させる処理を行うことが知られている。その場合、放電事象を検出したら、どのような出力であっても、所定時間後に遮断信号を出力するような処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-173008号公報
【0004】
ところで、このような遮断は放電事象の原因が分からないまま行っている。したがって、遮断後に、放電事象の原因を一から特定する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、放電事象の要因を判別可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、配線経路に流れる電流を検出する電流検出部と、放電事象により重畳された高周波帯域のノイズの検出を行うために用いられるハイパスフィルタと、ハイパスフィルタを通過した高周波ノイズの出力から放電事象発生を判定した場合に、配線経路に流れる電流の放電事象発生時の増減を検出して、放電事象の要因を判定する判定部と、を備えた放電検出システムとする。
【0007】
また、判定部から送られる遮断信号により配線経路を開くように動作する開閉部を備え、電流検出部で検出した放電電流の大きさによって、放電事象発生を判定してから開閉部に遮断信号を送るまでの時間を変化させるものとすることが好ましい。
【0008】
また、ハイパスフィルタを接続し高周波帯域の出力を判定部に入力させる第1回路と、電流検出部の出力を直接判定部に入力させる第2回路とを備え、判定部は、第1回路からの入力により放電事象の有無を特定し、第2回路からの入力により電流の増減を特定するものとすることが好ましい。
【0009】
また、判定部は、放電事象発生時の電流が増大した場合には、異極間放電事象が生じたと判定し、放電事象発生時の電流が減少した場合には、同極間放電事象が生じたと判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、放電事象の要因が判別可能となるため、対応が容易にとれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】放電検出システムを備えたブレーカの例を示した図である。
図2】ハイパスフィルタ通過時の電流波形と電流検出部で検出された電流波形の比較のイメージを示した図である。
図3】コンセントに負荷のプラグを接続した状態を示す図である。ただし、(a)は機器などの接続形態が分かるように示した図であり、(b)は要素を単純化して表した図である。
図4図3に示すプラグと負荷の間に断線が生じた状態を示す図である。ただし、(a)は機器などの接続形態が分かるように示した図であり、(b)は要素を単純化して表した図である。
図5図4に示すような断線が瞬間的に複数回生じた際に電流検出部で検出される電流波形の例を示す図である。
図6図3に示すプラグ付近で微小な短絡が生じた状態を示す図である。ただし、(a)は機器などの接続形態が分かるように示した図であり、(b)は要素を単純化して表した図である。
図7図4に示すような微小短絡が瞬間的に複数回生じた際に電流検出部で検出される電流波形の例を示す図である。
図8図1とは異なる放電検出システムを備えたブレーカの例を示した図である。
図9】放電検出システムをブレーカとは別に設けた例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に発明を実施するための形態を示す。図1に示されていることから理解されるように、本実施形態の放電検出システムは、配線経路51に流れる電流を検出する電流検出部11と、放電事象により重畳された高周波帯域のノイズの検出を行うために用いられるハイパスフィルタ12と、ハイパスフィルタ12を通過した高周波ノイズの出力から放電事象発生を判定した場合に、配線経路51に流れる電流の放電事象発生時の増減を検出して、放電事象の要因を判定する判定部13と、を備えている。このため、放電事象の要因が判別可能となる。また、放電事象の要因の特定をすることができるため、製品を変更するのか、配線を変えるのかなどの判断がしやすくなる。
【0013】
ここで、電流検出部11とハイパスフィルタ12を合わせて利用する意味について説明する。電流検出部11は、交流電流を検出しており、電流値がなす通常の正弦波を検出することができる。これに対してハイパスフィルタ12を用いると、高周波数帯域におけるノイズ出力の有無を選別することができる。電流検出部11は、負荷62の機器のオンオフなどによるノイズなども拾ってしまうため、きれいな正弦波とならないことも多い。このため、たんに電流検出部11を見ていても、放電事象が生じているか否かを判定するのは困難である。そこで、放電事象が生じているタイミングを知るために、ハイパスフィルタ12を用いる。ハイパスフィルタ12を用いて、高周波帯域のノイズが所定の条件で検出されれば、そのノイズは放電事象によるものと特定することができる。
【0014】
しかし、ハイパスフィルタ12を用いるだけでは、放電事象の要因を判定することは困難である。そこで、本実施形態では、図2に示すことから理解されるように、ハイパスフィルタ12で放電事象が生じたタイミングにおいて、電流検出部11で電流がどのような挙動を示すのかを確認することで、放電事象の要因を判定できるようにする。なお、この際、ハイパスフィルタ12で放電事象が生じたタイミングの前後の電流の大きさなどを確認することで、交流電流であっても、放電事象による電流への影響を確認することができる。
【0015】
例えば、図3に示すことから理解されるように、コンセント60に対して負荷62につながるプラグ61が接続されているものとする。図4に示すように、断線などにより同極間放電事象が生じる状態になると、電流が流れにくくなり、電流検出部11で検出される電流値は通常想定される電流値よりも小さなものとなる。したがって、図5に示すことから理解されるように、正弦波の一部が凹むような電流波形を示すことになる。
【0016】
一方、図6に示すことから理解されるように、トラッキングや微小短絡などにより異極間放電事象が生じる状態になると、電流は全体として流れやすくなる。したがって、図7に示すことから理解されるように、正弦波の一部に突起が生じるような電流波形を示すことになる。
【0017】
このように、放電事象の種類によって、電流波形に違いが生じることを利用すれば、放電事象の要因を判定することができる。より具体的には、放電事象発生時の電流が増大した場合には、異極間放電事象が生じたと判定し、放電事象発生時の電流が減少した場合には、同極間放電事象が生じたと判定することができる。判定部13はこのような判定をできるようにすることが好ましい。
【0018】
判定部13には、電流検出部11で検出された電流と、ハイパスフィルタ12を通過した後の電流の双方が入力される。このようにするため、図1に示す例では、電流検出部11から判定部13に向かうラインを途中で分岐し、電流検出部11で検出された電流をそのまま判定部13に入力するライン(第2回路)と、電流検出部11で検出された電流にハイパスフィルタ12を通してから判定部13に入力するライン(第1回路)が設けられるようにしている。
【0019】
ハイパスフィルタ12を通過した高周波ノイズが、所定時間の間、所定の閾値を超えている場合には、放電事象が生じていると判定部13で判定するが、この場合、配線経路51に設けられた開閉部14が開かれることになる。開閉部14を開く動作は、信号を送ることなどにより開閉部14に接続される機構部を動作させればよい。
【0020】
ところで、放電事象が生じている状態でも、対応の緊急性は一律ではない。対応の緊急性は一般に、放電事象による電流への影響の大きさに関係があることから、放電事象による電流への影響の度合いにより、放電事象が生じているとの判定時から開閉部14を開くまでの時間に差異を設けるものとしても良い。
【0021】
実施形態の開閉部14は、判定部13から送られる遮断信号により配線経路51を開くように動作するものである。したがって、電流検出部11で検出した放電電流の大きさによって、放電事象発生を判定してから開閉部14に遮断信号を送るまでの時間を変化させるようにすれば、放電事象が生じているとの判定時から開閉部14を開くまでの時間に差異を設けることができる。このようにすれば、危険度の高い放電が生じた際に、迅速に遮断処理を行うようにすることができる。
【0022】
たとえば、ハイパスフィルタ12を通過した電流波形の実効値から放電電流の大きさを特定する場合、この大きさが大きいほど遮断信号を送るまでの時間を短くするのが好ましい。具体的には、ハイパスフィルタ12を通過した電流波形の実効値から特定した放電電流の大きさが5Aの場合には、遮断までの時間が1秒、10Aの場合には0.4秒、16Aの場合には0.28秒、32Aの場合には0.14秒、といったように定めることが例示できる。なお、32A以上であれば、全て0.14秒としても良いし、それより短くしても構わない。勿論、このような設定に限る必要はない。
【0023】
放電電流の大きさは、ハイパスフィルタ12の出力から判定することに限らない。例えば、電流検出部11の出力の実効値より放電電流の大きさを特定しても良い。この場合、ハイパスフィルタ12の出力からノイズの出ているタイミングを特定した上で、このタイミングにおける電流検出部11の出力の実効値より放電電流の大きさを特定するのが好ましい。
【0024】
図1に示す例では、ハイパスフィルタ12と判定部13を備えた放電検出ユニット19に電流検出部11となるCTを接続して、CT(電流検出部11)を経てハイパスフィルタ12に電流の情報が送られるような構成であるが、図8に示すようにすることもできる。
【0025】
図8に示す例では、配線経路51の電流検出部11とは別に形成した電路間を渡すハイパスフィルタ12が接続されており、高周波帯域の出力を判定部13に入力させる第1回路21と、電流検出部11の出力を直接判定部13に入力させる第2回路22とを備え、判定部13は、第1回路21からの入力により放電事象の有無を特定し、第2回路22からの入力により電流の増減を特定するように構成している。この第1回路21と、第2回路22は、互いに独立したものであり、ハイパスフィルタ12の検出結果は、電流検出部11の検出結果に左右されることは無い。なお、ハイパスフィルタ12は配線経路51の電流検出部11の一時側に接続されているものとしても良い。また、図8に示した例ではハイパスフィルタ12は異極間を掛け渡すように配置されている。
【0026】
ところで、図1図8に示す例では、ブレーカ9に放電検出システムを搭載しているが、図9に示すことから理解されるように、ブレーカ9とは別に放電検出ユニット19を設けることも可能である。
【0027】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。たとえば、放電検出ユニットに電流検出部を含めても良い。
【符号の説明】
【0028】
11 電流検出部
12 ハイパスフィルタ
13 判定部
14 開閉部
21 第1回路
22 第2回路
51 配線経路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9