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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 2/02 20060101AFI20231023BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20231023BHJP
   H01G 4/228 20060101ALI20231023BHJP
   H01G 4/224 20060101ALI20231023BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20231023BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20231023BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20231023BHJP
【FI】
H01G2/02 101E
H01G2/10 K
H01G4/228 S
H01G4/228 F
H01G4/224 200
H01G4/32 301F
H01G4/32 540
H01G4/38 A
H01G4/32 305A
H01G13/00 307Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020031251
(22)【出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2021136324
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】森 隆志
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535969(JP,A)
【文献】特開2017-152444(JP,A)
【文献】米国特許第07907385(US,B2)
【文献】中国実用新案第202384178(CN,U)
【文献】特開2015-135890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/02
H01G 2/10
H01G 4/228
H01G 4/224
H01G 4/32
H01G 4/38
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端面にそれぞれ互いに異極の電極面を有するコンデンサ素子ユニットと、
前記両電極面にそれぞれ接続された第1および第2のバスバーと、
前記コンデンサ素子ユニットの全体と前記第1および第2のバスバーの一部を覆う被覆用樹脂とを備え、
前記第2のバスバーは、前記一方の電極面に接続された第2の電極端子部と、前記第2の電極端子部から延出された第2の接続端子部とを有し、
前記第1のバスバーは、前記他方の電極面に接続された第1の電極端子部と、前記第1の電極端子部から前記コンデンサ素子ユニットの側面に沿う状態に延出された側面側連結部と、前記側面側連結部から前記第2の電極端子部に対して近接して重なり合うように延出された張り出し部と、前記張り出し部から延出された第1の接続端子部とを有するコンデンサであって、
前記第1の電極端子部および第2の電極端子部の少なくともいずれか一方には、これら両電極端子部の間の空間に対して前記側面側連結部とは反対側から差し込まれる前記コンデンサ素子ユニットの前記電極面が接触して弾性的に凹む接続用突起部が形成されており、
前記接続用突起部は、前記電極端子部における切り起こしによって舌片状に一体的に形成された接続用小突片であって、当該接続用小突片は、「ヘ」の字状に屈曲され、その付け根部である一方端から「ヘ」の字の頂点に近づくに従って前記電極面に接近し、前記「ヘ」の字の頂点から他方端に近づくに従って前記電極面から離間する形状に形成され、前記「ヘ」の字の頂点において前記電極面に当接していることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記接続用小突片は、この接続用小突片を一体的に形成している前記電極端子部に形成された切り抜き孔に対応してその孔縁から延出する状態に形成されている請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記第1のバスバーが前記コンデンサ素子ユニットの下端面側の電極面に接続され、
前記接続用小突片は、前記両電極端子部のうち前記側面側連結部を有する側の前記第1の電極端子部に形成される請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記接続用小突片は、前記第1の電極端子部における前記切り抜き孔の孔縁からの延出位置に関して、前記孔縁の全周範囲のうち前記側面側連結部に最も近い位置の近傍から延出され、その延出の方向は前記側面側連結部から離間する方向となってい請求項2または請求項3に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記接続用小突片は、この接続用小突片を一体的に形成している前記電極端子部に複数個形成され、そのすべての接続用小突片について、前記切り抜き孔の孔縁からの延出方向が、前記側面側連結部寄りの位置より前記側面側連結部から離れた位置に向かう方向で互いに平行になっている請求項3または請求項4に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記第1のバスバーにおける前記張り出し部と、この張り出し部に対して近接して重なり合う前記第2のバスバーにおける前記第2の電極端子部とは、これら両者間にシート状の絶縁体を挟み込んでいる請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のコンデンサ。
【請求項7】
請求項1に記載の構造を有するコンデンサの製造方法であって、
前記第1のバスバーをハンダ付け用の治具にセットする第1工程と、前記第2の電極端子部を前記第1のバスバーにおける前記張り出し部の下面に沿わせる状態で前記第2のバスバーを横側方から差し込む第2工程と、前記両電極端子部の間の空間に対して前記コンデンサ素子ユニットを横側方から差し込む第3工程とを備え、
前記第3工程では、前記両電極面の少なくとも一方の電極面を前記接続用突起部に摺接させて前記接続用突起部を弾性的に凹ませながら差し込み、前記接続用突起部をその弾性復元力により前記電極面に対して弾性的に圧接させることを特徴とするコンデンサの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ素子ユニットと、このコンデンサ素子ユニットの下端面側の第1の電極面および上端面側の第2の電極面にそれぞれ接続された第1および第2のバスバーと、コンデンサ素子ユニットの全体と第1および第2のバスバーの一部を覆う被覆用樹脂とを備えたコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサを組み立てる際に、ハンダ付け用の治具に対して、
(1)まず下側に位置する第1のバスバーをセットし、
(2)次に第1のバスバーの上にコンデンサ素子ユニットをセットし、
(3)次に上側に位置する第2のバスバーをコンデンサ素子ユニットの上にセットする。
【0003】
ハンダ付け用の治具に対する第1のバスバー、コンデンサ素子ユニット、第2のバスバーの一般的な組み立てのこの手順(1)→(2)→(3)は、これを適用することが可能なコンデンサの形状・構造に制約がある。
【0004】
図9に示すコンデンサの場合は、下側に位置する第1のバスバーB1′の形状・構造が、コンデンサ素子ユニットUを上方から下方に向けてセットする妨げとなる要素を有しておらず、さらに、準組み立て状態にある第1のバスバーB1′およびコンデンサ素子ユニットUの形状・構造が、第2のバスバーB2′を上方から下方に向けてセットする妨げとなる要素を有していない。
【0005】
しかし、第1のバスバーまたは第2のバスバーのいずれか一方または双方の形状・構造が複雑であると、上記した一般的な組み立ての手順(1)→(2)→(3)を採用することができない場合がある。
【0006】
例えば、図10に示すように、第2のバスバーB2が比較的簡単な形状・構造であるのに対し、第1のバスバーB1がかなり複雑な形状・構造をしているコンデンサの場合である。
【0007】
第2のバスバーB2は比較的単純な形状・構造で、コンデンサ素子ユニットUの第2の電極面2B(図12(b))に接続される第2の電極端子部21と、第2の電極端子部21から延出された第2の接続端子部24とを有している。第2の接続端子部24を除いた第2の電極端子部21は全体的に1枚の平板状を呈している。
【0008】
第1のバスバーB1は第2のバスバーB2よりも複雑な形状・構造を有している。コンデンサ素子ユニットUの第1の電極面2A(図12(b))に接続される第1の電極端子部11と、第1の電極端子部11からコンデンサ素子ユニットUの側面に沿う状態に延出された側面側連結部12と、側面側連結部12から第2の電極端子部21に対して近接して重なり合うように延出された張り出し部13と、張り出し部13から延出された第1の接続端子部14とを有している。第1の接続端子部14を除いて、第1の電極端子部11、側面側連結部12および張り出し部13は全体的に断面がほぼ「コ」の字状を呈している。
【0009】
なお、接続端子部は外部の給電ラインに接続するための要素であり、バスバーは接続端子部を除いて全体が被覆用樹脂(図示せず)で被覆されている。
【0010】
そして、注目すべき点として、第1のバスバーB1のほぼ「コ」の字状における上辺部の張り出し部13は、第2のバスバーB2における第2の電極端子部21の外側(上側)にあって、この第2の電極端子部21に対して近接して重なり合う状態となっている。
【0011】
このような形状・構造を有するコンデンサにおいては、ハンダ付け用の治具に対して第1のバスバーB1をセットしたあと、上方から下方に向かう移動で第2のバスバーB2をセットすることはできず、図12に示すように、第2の電極端子部21が張り出し部13の下方に位置する状態で横側方から第2の電極端子部21を差し込む必要がある。この差し込みの状態で、第1のバスバーB1と第2のバスバーB2とはほぼ「コ」の字状を呈することになる。このあと、コンデンサ素子ユニットUをセットするが、上方から下方に向かう移動でコンデンサ素子ユニットUをセットすることはできない。重なり合っている張り出し部13と第2の電極端子部21とがコンデンサ素子ユニットUの直下方への移動を妨げるからである。
【0012】
このような形状・構造上の制約があるために、ハンダ付け用の治具に対するコンデンサ素子ユニットUのセットは、第2の電極端子部21と第1の電極端子部11との間の空間40に対して側面側連結部12とは反対側に形成される開口(入口)40aから横方向に沿って差し込まなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2002-367857号公報(図4
【文献】特開2014-113053号公報(図19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、このような差し込みの制約は、次のような問題を引き起こす。
【0015】
コンデンサ素子ユニットにおける個々のコンデンサ素子どうし間には、その上下幅について寸法公差がある。この寸法公差にもかかわらず、すべてのコンデンサ素子に対してバスバーにおける電極端子部を適正にハンダ付けするために、通常、電極端子部における切り起こしによって弾性的な変位機能を有する舌片状の接続用小突片を一体的に形成している。この接続用小突片は、コンデンサ素子ユニットの差し込み方向の如何にかかわらず形成する必要がある。上記した従来例の場合でも同様に実施されている。
【0016】
ここで、下側に位置する第1のバスバーB1の電極端子部である第1の電極端子部11に弾性を有する舌片状の接続用小突片を形成した場合の動作を説明する。図11に示すように、第1の電極端子部11に対し切り起こしによって舌片状の接続用小突片11a′を形成するが、形成に当たり第1の電極端子部11に接続用小突片11a′の部分を残して切り抜き孔11bを形成する。接続用小突片11a′は切り抜き孔11bに対応してその孔縁から延出する状態に形成される。舌片状の接続用小突片11a′は、それに弾性をもたせるために1直線状に傾斜する状態に起こされている。つまり、孔縁である付け根部から斜め上方の遊端部に向けた傾斜姿勢となっている。付け根部から遊端部に近づくに従ってコンデンサ素子1の電極面(第1の電極面)1aに対し次第に近づく形状となっている。弾性を有する舌片状で直線傾斜状の接続用小突片11a′は、コンデンサ素子1の1個当たり複数形成されるのが一般的である。
【0017】
図9に示す従来例のようにコンデンサ素子ユニットU(コンデンサ素子1)を上方から下方に向かうようにしてハンダ付け用の治具にセットする場合、直線傾斜状の接続用小突片11a′はコンデンサ素子1の下面の第1の電極面1aによって下向きに押圧され、弾性的に凹(へこ)む。これにより、反作用で接続用小突片11a′が第1の電極面1aを強力に押しつけ、その状態でのハンダ付けとなるため、コンデンサ素子1の上下幅についての寸法公差を良好に吸収する状態で電極面1bに対して直線傾斜状の接続用小突片11a′ひいては第1の電極端子部11が適切にハンダ付けされる。
【0018】
ところが、本発明で問題としているような横側方から差し込む場合には、図12図13に示すように、直線傾斜状の接続用小突片11a′に対して、コンデンサ素子ユニットU(コンデンサ素子1)の差し込み方向前方の側面(下端側角部付近)が突き当ってしまい、空間奥の所定の位置まで適切に差し込むことができない場合がある。
【0019】
つまり、張り出し部13が第1の電極端子部11から側面側連結部12を介して第2の電極端子部21の上側外方位置まで大きく回り込み、第2の電極端子部21に対して張り出し部13が重なり合っている。第1のバスバーB1と第2のバスバーB2とが「コ」の字状を呈する形状・構造のコンデンサについて、ハンダ付け用の治具に対し各部品を順次セットする場合には、次の点に注意しなければならない。すなわち、複数のコンデンサ素子1どうし間の上下幅の寸法公差を吸収するための直線傾斜状の接続用小突片11a′の突出方向(立ち上げ方向)によっては当該接続用小突片11a′に対して、横側方から差し込むコンデンサ素子ユニットU(コンデンサ素子1)が突き当たってしまい適切にセットすることができないという、組み立て作業上の問題がある。ここで、接続用小突片11a′の突出方向をコンデンサ素子ユニットUの挿入方向(差し込み方向)と同じに構成すれば、接続用小突片11a′の引っ掛かりを回避することは可能である。しかしながら、その場合、接続用小突片11a′の付け根部の位置が側面側連結部12から離れてしまい、ESL(等価直列インダクタンス)およびESR(等価直列抵抗)が悪化するという問題がある。
【0020】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、第1のバスバーと第2のバスバーとが「コ」の字状を呈する形状・構造のコンデンサについて、上記した問題を解消して組み立て作業性の向上を図ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0022】
本発明によるコンデンサは、
両端面にそれぞれ互いに異極の電極面を有するコンデンサ素子ユニットと、
前記両電極面にそれぞれ接続された第1および第2のバスバーと、
前記コンデンサ素子ユニットの全体と前記第1および第2のバスバーの一部を覆う被覆用樹脂とを備え、
前記第2のバスバーは、前記一方の電極面に接続された第2の電極端子部と、前記第2の電極端子部から延出された第2の接続端子部とを有し、
前記第1のバスバーは、前記一方の電極面に接続された第1の電極端子部と、前記第1の電極端子部から前記コンデンサ素子ユニットの側面に沿う状態に延出された側面側連結部と、前記側面側連結部から前記第2の電極端子部に対して近接して重なり合うように延出された張り出し部と、前記張り出し部から延出された第1の接続端子部とを有するコンデンサであって、
前記第1の電極端子部および第2の電極端子部の少なくともいずれか一方には、これら両電極端子部の間の空間に対して前記側面側連結部とは反対側から差し込まれる前記コンデンサ素子ユニットの前記電極面が接触して弾性的に凹む接続用突起部が形成されていることを特徴とする。
【0023】
また、本発明によるコンデンサの製造方法は、上記した本発明の構造を有するコンデンサの製造方法であって、
前記第1のバスバーをハンダ付け用の治具にセットする第1工程と、前記第2の電極端子部を前記第1のバスバーにおける前記張り出し部の下面に沿わせる状態で前記第2のバスバーを横側方から差し込む第2工程と、前記両電極端子部の間の空間に対して前記コンデンサ素子ユニットを横側方から差し込む第3工程とを備え、
前記第3工程では、前記両電極面の少なくとも一方の電極面を前記接続用突起部に摺接させて前記接続用突起部を弾性的に凹ませながら差し込み、前記接続用突起部をその弾性復元力により前記電極面に対して弾性的に圧接させることを特徴とする。
【0024】
なお、上記において、コンデンサ素子ユニットは、コンデンサ素子を複数集約したものを典型とするが、必ずしもこれのみに限定されるものではなく、単一の場合も含み得るものとする。
【0025】
本発明のコンデンサは第1のバスバーと第2のバスバーとが「コ」の字状を呈する形状・構造を有しており、両バスバーとコンデンサ素子ユニットとを組み立てるには、第2の電極端子部と第1の電極端子部との間の空間に対して側面側連結部とは反対側に形成される入口から横方向に沿ってコンデンサ素子ユニットを差し込むことになる。その際にコンデンサ素子の上下幅の寸法公差を吸収するための要素として接続用突起部が少なくともいずれか一方の電極端子部に形成されている。
【0026】
本発明においては、この接続用突起部は差し込まれてくるコンデンサ素子ユニットの電極面との摺接において弾性的に凹むことができる。すなわち、コンデンサ素子ユニットの差し込み方向前方の側面が接続用突起部に突き当って空間奥の所定の位置までの差し込みを妨げるといったことがない。コンデンサ素子ユニットの電極面は接続用突起部を押して弾性的に凹ませるので、空間奥の所定の位置まで適切に差し込むことが可能となる。
【0027】
複数の接続用突起部どうし間にサイズや形状の公差があるとしても、弾性復元力による押し付けであるので、電極面と電極端子部との複数箇所の密着点での押圧力の均等化が生じる。その結果、個々のコンデンサ素子どうし間にある上下幅の寸法公差にもかかわらず、すべてのコンデンサ素子においてバスバーにおける電極端子部を適正にハンダ付けすることが可能となる(ハンダ付け性能の向上)。
【0028】
上記構成の本発明のコンデンサおよびその製造方法には、次のようないくつかの好ましい態様ないし変化・変形の態様がある。
【0029】
〔1〕前記接続用突起部は、前記電極端子部における切り起こしによって舌片状に一体的に形成された接続用小突片であって、当該接続用小突片は、「ヘ」の字状に屈曲され、その付け根部である一方端から「ヘ」の字の頂点に近づくに従って前記電極面に接近し、前記「ヘ」の字の頂点から他方端に近づくに従って前記電極面から離間する形状に形成され、前記「ヘ」の字の頂点において前記電極面に当接していること。
【0030】
電極端子部を切り起こして形成した舌片状の接続用小突片は「ヘ」の字状に屈曲され、電極端子部への付け根部である一方端から「ヘ」の字の頂点までの部分は弾性変形性を有し、「ヘ」の字の頂点から他方端までの部分はコンデンサ素子ユニットの差し込み先端のエッジ部分を捉えて斜面に沿ってガイドする。このガイド作用を伴う摺接により舌片状の接続用小突片は弾性的にスムーズに変形して凹むことになり、コンデンサ素子ユニットの差し込みを妨害や抵抗の少ない条件下で許容する。
【0031】
ここで、「へ」の字状とは、接続用小突片の非端部(端部以外の部分)が頂部をなし、当該頂部において電極面に当接し、電極端子部への付け根部(一方端)と反対側の他方端の高さ位置が頂部よりも低い形状であることを意味し、頂部と一方端および/または頂部と他方端とを結ぶ形状が直線か曲線であるかは問わない。なお、両バスバー間へのコンデンサ素子ユニットの挿入性の観点からは、電極端子部への付け根部(一方端)と反対側の他方端の高さ位置は電極端子部平面と同じかそれ以下であることが好ましい。
【0032】
〔2〕前記接続用小突片は、この接続用小突片を一体的に形成している前記電極端子部に形成された切り抜き孔に対応してその孔縁から延出する状態に形成されていること。
【0033】
これは、電極端子部の周縁部以外の広がり領域(周縁部の内側の比較的広い面積領域)でも接続用小突片を形成するのに有利な構造である。すなわち、電極端子部の強度をあまり低下させることなく接続用小突片を形成することができる。
【0034】
〔3〕前記第1のバスバーが前記コンデンサ素子ユニットの下端面側の電極面に接続され、前記接続用小突片は、前記両電極端子部のうち前記側面側連結部を有する側の前記第1の電極端子部に形成されることが好ましい。この第1の電極端子部における前記切り抜き孔の孔縁からの延出位置に関して、前記孔縁の全周範囲のうち前記側面側連結部に最も近い位置の近傍から延出され、その延出の方向は前記側面側連結部から離間する方向となっていること。
【0035】
接続用小突片は、これを上側に位置する第2の電極端子部ではなく下側に位置する第1の電極端子部の方に形成することで、コンデンサ素子ユニットからの重力を受けさせることができ、弾性的に変形させやすくなる。
【0036】
〔4〕接続用小突片が形成された第1の電極端子部は、これと第1の接続端子部との間に側面側連結部と張り出し部とを介在させていて、電流経路長が第2の電極端子部よりかなり長いものとなっている。
【0037】
接続用小突片を第1の電極端子部における切り抜き孔の孔縁から延出させるに当たり、孔縁の全周範囲のうちのどの位置が好ましいかについて、側面側連結部に最も近い位置の近傍から延出され、その延出の方向は前記側面側連結部から離間する方向とすれば、電流経路長を極力短いものとすることができる。その結果として、第1のバスバーの等価直列抵抗(ESR)および等価直列インダクタンス(ESL)の低減を図ることが可能となる。
【0038】
加えて、接続用小突片の延出の方向が側面側連結部から離間する方向となっていることは、接続用小突片の長手方向がコンデンサ素子ユニットの差し込み方向と平行であることを意味し、コンデンサ素子ユニットの差し込みに対する摩擦抵抗を軽減することが可能となる。
【0039】
〔5〕前記接続用小突片は、この接続用小突片を一体的に形成している前記電極端子部に複数個形成され、そのすべての接続用小突片について、前記切り抜き孔の孔縁からの延出方向が、前記側面側連結部寄りの位置より前記側面側連結部から離れた位置に向かう方向で互いに平行になっていること。このように構成することにより、複数のコンデンサ素子どうし間の上下幅の寸法公差を吸収する機能が遺憾なく発揮される。
【0040】
〔6〕前記第1のバスバーにおける前記張り出し部と、この張り出し部に対して近接して重なり合う前記第2のバスバーにおける前記第2の電極端子部とは、これら両者間にシート状の絶縁体を挟み込んでいること。
【発明の効果】
【0041】
第1のバスバーおよび第2のバスバーの形状・構造が「コ」の字状を呈するゆえにコンデンサ素子ユニットのセットにおいて第1の電極端子部と第2の電極端子部との間の空間に対して側面側連結部とは反対側から横方向に沿って差し込まなければならないという制約がある。その際に本発明においては、コンデンサ素子の上下幅の寸法公差を吸収するために必要な接続用突起部が差し込みを妨害する可能性があるところ、接続用突起部において、コンデンサ素子ユニットの電極面との摺接において弾性的に凹むことができる構造をもたせた。その結果として、その妨害を解消して適切かつスムーズな差し込みを許容し、コンデンサの組み立て作業性を向上することができる。併せて、ハンダ付け用の治具に大掛かりな改変をしなくても済む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の実施例におけるコンデンサを示す断面図
図2】本発明の実施例におけるコンデンサのコンデンサ素子ユニットを示す斜視図
図3】本発明の実施例におけるコンデンサの第1のバスバーを示す斜視図
図4】本発明の実施例におけるコンデンサの接続用突起部の一例である接続用小突片と切り抜き孔を示す斜視図
図5】本発明の実施例におけるコンデンサの第2のバスバーを示す斜視図
図6】本発明の実施例におけるコンデンサの組み立ての工程(第1のバスバーと第2のバスバー)を示す斜視図
図7】本発明の実施例におけるコンデンサの組み立ての工程(第1のバスバーと第2のバスバーとコンデンサ素子ユニット)を示す斜視図
図8】本発明の実施例におけるコンデンサの組み立ての工程であって、コンデンサ素子ユニットの差し込みに対する接続用小突片の動作を示す要部断面図
図9】従来例における工程説明図(その1)
図10】従来例における工程説明図(その2)
図11】従来例における接続用小突片と切り抜き孔を示す斜視図
図12】従来例における工程説明図(その3)
図13】従来例における問題を説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、上記構成の本発明のコンデンサにつき、その実施の形態を具体的な実施例のレベルで詳しく説明する。
【0044】
図1図8において、構成要素の1はコンデンサ素子、Uはコンデンサ素子ユニット、2Aはコンデンサ素子ユニットUの下端面における第1の電極面、2Bは上端面における第2の電極面、B1は第1のバスバー、B2は第2のバスバー、30は外装樹脂(被覆用樹脂)である。コンデンサ素子1は例えば、誘電体フィルムと金属層(電極)を交互に積層または少なくとも片面を金属で蒸着した誘電体フィルムを積層、巻回したフィルムコンデンサである。
【0045】
図2図7に示すように、コンデンサ素子1を3行3列に配列してコンデンサ素子ユニットUを構成している。配列の3行3列は1例にすぎなくて、m,nをそれぞれ1以上の整数(m=1,2…、n=1,2…)としてm行n列の任意の配列が可能である。m×n個のコンデンサ素子1は、それぞれの軸方向が互いに平行で、整然と縦横方向に密接する状態に配列され、全体的に平面視で矩形(長方形または正方形)を呈している。
【0046】
図1に示すように、個々のコンデンサ素子1は、その軸方向の一端である下端面に第1の電極面1aが形成され、軸方向の他端である上端面に第2の電極面1bが形成されている。第1の電極面1aと第2の電極面1bとが互いに異極となっていることはいうまでもない。3行3列の9個のコンデンサ素子1からなるコンデンサ素子ユニットUでは、9個の第1の電極面1aをまとめて第1の電極面2Aとし、9個の第2の電極面1bをまとめて第2の電極面2Bとする。
【0047】
図3に示すように、第1のバスバーB1は、コンデンサ素子ユニットUにおける下端面側の第1の電極面2Aに接続される第1の電極端子部11と、第1の電極端子部11からコンデンサ素子ユニットUの側面に沿う状態に延出された側面側連結部12と、側面側連結部12から第2のバスバーB2における第2の電極端子部21に対して近接して重なり合うように延出された張り出し部13と、張り出し部13から延出された第1の接続端子部14とを有している。
【0048】
図5に示すように、第2のバスバーB2は、コンデンサ素子ユニットUにおける上端面側の第2の電極面2Bに接続される第2の電極端子部21と、第2の電極端子部21から上方に向けて延出された第2の接続端子部24とを有している。
【0049】
コンデンサ素子ユニットUにおける9個のコンデンサ素子1においては、それぞれの上下幅(軸方向長さ)について寸法公差がある。この寸法公差を吸収するための要素である接続用突起部の一例としての接続用小突片11aについて、次に説明する。
【0050】
図4に示すように、接続用突起部である接続用小突片11aは第1のバスバーB1における第1の電極端子部11の舌片状の切り起こしによって一体的に形成されている。詳しくは、第1の電極端子部11に切り抜き孔11bを形成する際に、その切り抜き孔11bの孔縁から延出する状態に形成されている。図2図3との対照で分かるように、接続用小突片11aは3行3列のコンデンサ素子1の1個当たり2個ずつ対応され、その配置は均等分布となっている。接続用小突片11aを形成するための切り抜き孔11bも同様に3行3列のコンデンサ素子1の1個当たり2個ずつ対応されている。図3のように、第1の電極端子部11の周縁部以外では切り抜き孔11bは閉曲線で形作られているが、周縁部でのいくつかの切り抜き孔11bは外部空間に連通開放する開曲線で形作られている。
【0051】
個々のコンデンサ素子1の1個当たり2個ずつ対応された接続用小突片11aについて、図3で示すように、第1の電極端子部11における切り抜き孔11bの孔縁からの延出位置に関して、個々の孔縁の全周範囲のうち側面側連結部12に最も近い位置の近傍から延出されている。そして、接続用小突片11aの延出の方向は側面側連結部12から離間する方向(コンデンサ素子ユニットUの差し込み方向とは逆方向)となっている。すなわち、すべての接続用小突片11aは平面視で互いに平行となっている。
【0052】
図4に示すように、個々の接続用小突片11aは、ほぼ「ヘ」の字状に屈曲され、切り抜き孔11bの孔縁に対する付け根部から「ヘ」の字の頂点に近づくに従って斜め上方に斜行してコンデンサ素子ユニットUの第1の電極面2Aに接近し、さらに「ヘ」の字の頂点から遊端部に近づくに従って斜め下方に斜行し第1の電極面2Aから離間する形状に形成され、「ヘ」の字の頂点において第1の電極面2Aに当接するようになっている。接続用小突片11aの遊端部の高さ位置は切り抜き孔11bの高さ位置とほぼ同じとなっている。
【0053】
図5に示すように、第2のバスバーB2は平板状の第2の電極端子部21と、第2の電極端子部21から立ち上げられた第2の接続端子部24とを有している。第2の電極端子部21にも舌片状の接続用小突片21aが一体的に形成されている。第2の電極端子部21に切り抜き孔21bを形成する際に、その切り抜き孔21bの孔縁から延出する状態に形成されている。接続用小突片21aも3行3列のコンデンサ素子1の1個当たり2個ずつ対応され、その配置は均等分布となっている。切り抜き孔21bも同様である。第2の電極端子部21の周縁部以外では切り抜き孔21bは閉曲線で形作られているが、周縁部でのいくつかの切り抜き孔21bは外部空間に連通開放する開曲線で形作られている。
【0054】
第2のバスバーB2における接続用小突片21aは第1のバスバーB1における接続用小突片11aとは異なり、複数の接続用小突片21aについて舌片の方向性はまちまちである。第1の電極端子部11における接続用小突片11aと同じく、差し込み方向とは反対方向に延出されたもののほか、差し込み方向と同方向に延出されたもの、差し込み方向と直角な方向での右方向に延出されたもの、左方向に延出されたものなどがある。この方向性の分散は、コンデンサ素子ユニットUと第2の電極端子部21とのハンダ付けの強度を重視するものである。
【0055】
また、第2の電極端子部21における接続用小突片21aは第1の電極端子部11における接続用小突片11aのような「ヘ」の字状ではなく、第2の電極端子部21の平面と面一の状態にある。これは、第1の電極端子部11および第2の電極端子部21をコンデンサ素子ユニットUの第1の電極面2Aおよび第2の電極面2Bに圧着する上では、「ヘ」の字状の接続用小突片の形成は第1の電極端子部11のみで充分だからである。
【0056】
図3図5の対照および図6の参照で分かるように、第1のバスバーB1における第1の電極端子部11と第2のバスバーB2における第2の電極端子部21とは、その大きさにおいてほぼ同じ程度となっているが、第1のバスバーB1における張り出し部13は、その大きさが第1の電極端子部11や第2の電極端子部21よりかなり小さなものとなっている。
【0057】
図1図6および図7に示すように、第1のバスバーB1における張り出し部13は第2のバスバーB2における第2の電極端子部21に対して平行する状態で近接して重なり合っている。シート状の絶縁体31は水平部と垂直部とを有し、互いに近接して重なり合う第2の電極端子部21とその上部直近の張り出し部13との間には水平部が挟み込まれ、互いに近接対向する第1の接続端子部14と第2の接続端子部24との間の上下幅のごく小さい空間には垂直部が挟み込まれている。
【0058】
なお、図1の表示内容には図6図7の具体的構造から外れている部分がある。すなわち、第1の接続端子部14と第2の接続端子部24の位置がコンデンサの中央寄りになっていて、図6図7での偏移した具体例とは異なっている。また、図6図7での第1の接続端子部14と第2の接続端子部24の形状が図1では簡略化されている。このようにデフォルメ(修飾ないし変容)を施したのは、本発明の概念的な要素を分かりやすくするためであり、本質においてはなんら影響はない。
【0059】
次に、ハンダ付け用の治具(図示せず)に対して第1のバスバーB1、第2のバスバーB2およびコンデンサ素子ユニットUをセットする要領について説明する。
【0060】
(1)まず、第1のバスバーB1における張り出し部13の下面と第1の接続端子部14の外側面とにわたってシート状の絶縁体31を貼り付ける(図3参照)。そして、このシート状の絶縁体31を貼り付けた第1のバスバーB1をハンダ付け用の治具にセットする(第1工程)。
【0061】
(2)次に、図3に示す第1のバスバーB1において下端面側の水平姿勢の第1の電極端子部11と垂直姿勢の側面側連結部12と上端面側の張り出し部13に貼り付けられた絶縁体31とで囲まれた一側方開口の空間40に対して、図5に示す第2のバスバーB2を開口40aから横側方に向けて移動して差し込む(第2工程)。その結果が図6に示されている。この差し込みでは、第2の電極端子部21を張り出し部13の下面に沿わせる状態で差し込む。その結果、第2の電極端子部21が張り出し部13の下面に近接して両者間にシート状の絶縁体31の水平部が挟み込まれ、かつ第2の接続端子部24が第1の接続端子部14に近接して両者間にシート状の絶縁体31の垂直部が挟み込まれた状態が得られる。
【0062】
(3)次に、一側方開口の空間40に対してその開口40aからコンデンサ素子ユニットUを横側方に沿って移動させて差し込む(第3工程)。その結果が図7に示されている。
【0063】
図8に示すように、開口40aから空間40の内部に差し込まれたコンデンサ素子ユニットUは、その移動方向前方にくる先端側面における上端側の角部3B(図1参照)が第2のバスバーB2における第2の電極端子部21の下面に摺接し、下端側の角部3Aが第1のバスバーB1における第1の電極端子部11の上面に摺接しながら、空間40の奥側(図8の右側)へと進む。
【0064】
従来例の場合は、図12に示すように、その進行の途中に、第1のバスバーB1における第1の電極端子部11に一体的に形成されて、直線状の弾性に富む舌片状の接続用小突片11a′が進行に対する抵抗要素として存在する。コンデンサ素子ユニットUの下端側の角部3Aが接続用小突片11a′に当接すると、空間40内でそれ以上奥側への差し込みに障害となる。無理に力を入れて押し込むと、接続用小突片11a′が潰れ、製品品質上問題である。
【0065】
本発明の実施例にあっては、舌片状の接続用小突片11aは「ヘ」の字状を呈し、弾性を有しているので、接続用小突片11aの遊端部の高さ位置は第1の電極端子部11とほぼ同じか低く形成されており、コンデンサ素子ユニットUの下端側の角部3Aを接続用小突片11aの遊端部から接続用小突片11aの傾斜上面に乗り上げさせることができる。このとき、接続用小突片11aは弾性的に凹むことになる。
【0066】
下端側の角部3Aが「ヘ」の字の頂点を通過してさらに奥側に進むと、接続用小突片11aはコンデンサ素子ユニットUの下面によって下方に押し付けられ、ほぼ平らになる。そうなると、舌片状の接続用小突片11aの弾性復元力が充分に大きくなり、コンデンサ素子ユニットUの第1の電極面2Aを下から上方に向けて弾性的に押圧する。その結果、コンデンサ素子ユニットUの第2の電極面2Bが第2のバスバーB2の第2の電極端子部21の下面に対して弾性的に押圧される。
【0067】
1つのコンデンサ素子1当たり2個の弾性を有する舌片状の接続用小突片11aで押圧され、コンデンサ素子ユニットUの全体がほぼ均等分布の状態で分散配置された18個(一例)もの接続用小突片11aで押圧されているので、コンデンサ素子ユニットUは第1のバスバーB1と第2のバスバーB2で形成される空間40の内部で適正な安定姿勢を保つ状態に差し込まれる。
【0068】
コンデンサ素子ユニットUの上端面側の第2の電極面2Bは全体的に第2のバスバーB2の第2の電極端子部21に対してほぼ均等な押圧力で接触し、第2の電極端子部21において切り抜き孔21bの部分に形成された接続用小突片21aの箇所において、第2の電極面2Bが第2の電極端子部21に良好にハンダ付けされる。また、コンデンサ素子ユニットUにおける個々のコンデンサ素子1の第1の電極面1aのそれぞれが第1のバスバーB1の舌片状で「ヘ」の字状の接続用小突片11aによって押圧されるので、複数のコンデンサ素子1の相互間に上下幅(軸方向長さ)の寸法公差があったとしても、その寸法公差を吸収し、いずれのコンデンサ素子1の第1の電極面1aも接続用小突片11aによって強力に押し付けられ、第1の電極面2Aが第1の電極端子部11に良好にハンダ付けされる。
【0069】
第2のバスバーB2における第2の電極端子部21に形成された複数の接続用小突片21aは、第1のバスバーB1における第1の電極端子部11での複数の接続用小突片11aとは異なり、方向性がまちまちである。これは、個々の接続用小突片21aについて第2の接続端子部24に至るまでの電流経路長がまちまちであり、それぞれについて最も電流経路長が短くなるように設計した結果である。
【0070】
これに対して、第1のバスバーB1の接続用小突片11aの場合はすべてが互いに平行であり、その付け根は切り抜き孔11bの孔縁の全周範囲のうち側面側連結部12に最も近い位置の近傍に設定されている。これは、すべての接続用小突片11aからの電流の方向が第1の電極端子部11上においていったんは側面側連結部12に向かい、側面側連結部12および張り出し部13を介して第1の接続端子部14へと流れるからである。つまり、すべての接続用小突片11aにつき第1の接続端子部14までの電流経路長を最短化することができる。その結果として、第1のバスバーの等価直列抵抗(ESR)および等価直列インダクタンス(ESL)の低減を図ることができるのである。
【0071】
上記の実施例では、接続用突起部としての「ヘ」の字状の接続用小突片11aを第1のバスバーB1における第1の電極端子部11に形成したが、これに代えて第2のバスバーB2における第2の電極端子部21に「ヘ」の字状の接続用小突片を形成してもよい。さらに、「へ」の字状の接続用小突片の凸量を調整することで、上下面の両バスバーB1,B2のそれぞれに「へ」の字状の接続用小突片を形成してもよい。すなわち、第1のバスバーB1における第1の電極端子部11および第2のバスバーB2における第2の電極端子部21の少なくともいずれか一方に「へ」の字状の接続用小突片を形成すればよい。
【0072】
また、上記実施例では、外装樹脂(被覆用樹脂)30がコンデンサの最外殻を構成するケースレスタイプのコンデンサを例示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、全体をケース内に収納し、そのケース内に被覆用樹脂を充填する方式のケースモールドタイプのコンデンサに適用してもよい。
【0073】
また、第1のバスバー、第2のバスバーについては、電極端子部に対して接続端子部が別体であり、リベットや溶接で連結した構造のものに適用してもよい。
【0074】
上記の実施例では、舌片状で「ヘ」の字状を呈する接続用小突片を弾性的に凹むことが可能な「接続用突起部」の好適例としたが、接続用突起部としては必ずしもこれに限定されるものではなく、本発明の主旨の範囲内で種々に変更してよい。
【0075】
例えば、必ずしも実施例のように片持ち式(接続用小突片の一方端が遊端部)にする必要はなく、両持ち式(接続用小突片の両端が切り抜き孔の縁に接続)に構成してもよい。両持ち式でも弾性的に凹む性能をもたせることは比較的簡単に実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、第1のバスバーと第2のバスバーとが断面ほぼ「コ」の字状を呈してコンデンサ素子ユニットを囲む形式のコンデンサに関して、コンデンサ素子の上下幅の寸法公差を吸収するための弾性を有する接続用突起部がコンデンサ素子ユニットの差し込みを妨げないようにしながら、そしてハンダ付け用の治具に大掛かりな改変をしないようにしながら、コンデンサ素子ユニットの適切かつスムーズな差し込みを許容してコンデンサの組み立て作業性の向上を図る技術として有用である。
【符号の説明】
【0077】
1 コンデンサ素子
1a コンデンサ素子の第1の電極面
1b コンデンサ素子の第2の電極面
2A コンデンサ素子ユニットの第1の電極面
2B コンデンサ素子ユニットの第2の電極面
11 第1の電極端子部
11a 接続用小突片(接続用突起部)
11b 切り抜き孔
12 側面側連結部
13 張り出し部
14 第1の接続端子部
21 第2の電極端子部
24 第2の接続端子部
30 外装樹脂(被覆用樹脂)
31 シート状の絶縁体
B1 第1のバスバー
B2 第2のバスバー
U コンデンサ素子ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13