(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】車両の窓の除氷方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/46 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
B60S1/46 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016180477
(22)【出願日】2016-09-15
【審査請求日】2019-06-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2015-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】ドニ、テボー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー、コラノフスキ
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】一ノ瀬 覚
【審判官】中村 則夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/198895(WO,A1)
【文献】特表2000-517366(JP,A)
【文献】特開2015-140111(JP,A)
【文献】特開昭64-48883(JP,A)
【文献】特開2004-34920(JP,A)
【文献】特開2005-186855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/00 - 1/68
B08B 1/00 - 1/04
B08B 5/00 - 13/00
B08B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.窓(10)上を移動可能な少なくとも1つのワイパーブレード(30)と、
b.前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)を前記窓(10)上の低位置(PB)と高位置(PH)との間で移動させるための駆動モータ(40)と、
c.除氷液を収容する少なくとも1つのタンク(3)と、
d.前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)に沿って配置された開口部(15)に前記少なくとも1つのタンクを連結するチューブシステム(5)と、
e.前記除氷液が前記開口部(15)を介して吐出されるまで、前記除氷液を前記チューブシステム(5)において流れさせるポンプ(22)と、
f.外気温を測定するためのセンサ(50)と、
g.前記駆動モータを制御するとともに前記ポンプを作動させるための電子ユニット(60)と、
を有する除氷装置(1)を装備した車両において、その窓(10)を除氷するための方法であって、
-前記外気温が-5℃以上+5℃以下の間にある第1の区間内に
設定されたある温度になったとき、量Q1の前記除氷液が前記開口部(15)を介して吐出されるとともに、回動速度V1が前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)に適用され、
-前記外気温が-30℃以上-10℃以下の間にある第2の区間内に
設定されたある温度になったとき、Q2>Q1である量Q2の前記除氷液が前記開口部(15)を介して吐出されるとともに、V2<V1である回動速度V2が前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)に適用されるように、
前記開口部(15)を介して吐出される前記除氷液の量Q、及び、前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)に適用される回動速度Vが、前記センサ(50)により計測された前記外気温に応じて、前記電子ユニット(60)により修正されるステップ、
をステップ1)として含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)を、複数の連続的な角度移動を含んで前記低位置から前記高位置まで移動させるステップ、をステップ2)として備え、
前記ステップ1)及び2)は特に同時に実施可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)の前記回動速度Vと、前記ポンプにより吐出される前記除氷液の量とが、これらの制御信号のパルス幅及び振幅又はいずれか一方の変調によって制御され、
前記ステップ2)は前記駆動モータの前記制御信号の複数の連続するパルスによって実行されるとともに、前記ステップ1)は前記ポンプの前記制御信号の複数の連続するパルスによって実行される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ1)における前記修正は、
-前記外気温が-5℃以上+5℃以下の間にある前記第1の区間内に
設定されたある温度になったとき、前記信号のパルス幅Θ1及び/又はパルス振幅LI1が前記ポンプに適用され、
-前記外気温が-30℃以上-10℃以下の間にある前記第2の区間内に
設定されたある温度になったとき、前記信号のΘ2>Θ1であるパルス幅Θ2及び/又はLI2>LI1であるパルス振幅LI2が前記ポンプに適用されるように、
前記ポンプの制御信号のパルス幅及び/又は振幅を調節することにより実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の区間は、-2℃以上+2℃以下の間にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の区間は、-25℃以上-15℃以下の間にある、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の区間は、-5℃以上+5℃以下の間にあり、
前記第2の区間は、-30℃以上-10℃以下の間にあり、
Θ2=k×Θ1であり、kは係数である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の区間は、-5℃以上+5℃以下の間にあり、
前記第2の区間は、-30℃以上-10℃以下の間にあり、
V1=k×V2であり、kは係数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記kは、1.5以上3以下の間にある、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップ1)及び2)は、前記車両が停止しているときに、すなわち前記車両の速度がゼロであるときに、実行される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
3)前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)を前記高位置から前記低位置に、単独の角度移動によって移動させるステップ、
及び、
4)-前記外気温が-5℃以上+5℃以下の間にある第1の区間内に
設定されたある温度になったとき、量Q1の前記除氷液を前記開口部(15)を介して前記移動中に吐出させ、
-前記外気温が-30℃以上-10℃以下の間にある第2の区間内に
設定されたある温度になったとき、Q2>Q1である量Q2の前記除氷液を前記開口部(15)を介して前記移動中に吐出させるように、
前記除氷液を前記開口部(15)を介して前記移動中に吐出させるとともに、前記外気温に応じて噴霧される前記除氷液の前記量Qを修正するステップ、
が、前記ステップ1)及び2)に続く、請求項2~4及び7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ3)及び4)において、前記ポンプは、所定の幅及び振幅の制御信号のパルスによって制御される、請求項3に従属する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップ4)における前記修正が、
-前記外気温が-5℃以上+5℃以下の間にある前記第1の区間内に
設定されたある温度になったとき、速度V1が前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)に適用され、
-前記外気温が-30℃以上-10℃以下の間にある前記第2の区間内に
設定されたある温度になったとき、V2<V1である速度V2が前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)に適用されるように、
前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)の前記回動速度Vが調節されることにより実行される、請求項3に従属する請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
a.窓(10)上を移動可能な少なくとも1つのワイパーブレード(30)と、
b.前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)を前記窓(10)上の低位置(PB)と高位置(PH)との間で移動させるための駆動モータ(40)と、
c.除氷液を収容する少なくとも1つのタンク(3)と、
d.前記少なくとも1つのワイパーブレード(30)に沿って配置された開口部(15)に前記少なくとも1つのタンクを連結するチューブシステム(5)と、
e.前記除氷液が前記開口部(15)を介して吐出されるまで、前記除氷液を前記チューブシステム(5)において流れさせるポンプ(22)と、
f.外気温を測定するためのセンサ(50)と、
g.前記駆動モータを制御するとともに前記ポンプを作動させるための電子ユニット(60)と、
を有し、
前記電子ユニット(60)は、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように構成されている、車両の窓を除氷するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、車両の、特には自動車の窓を除氷するための方法であって、当該窓を除氷するための装置を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、一般に、窓を洗浄して払拭し運転者の周囲への視界を妨げないようにする窓の洗浄払拭システムを設けられている。この種の設備は、通常、フロントガラス等の窓の外面を払拭して当該表面に存在する水を除去する2つのワイパーブレードを備えている。ノズルが、車両のボンネットのレベルに、又は最近のものではブレードに配置されており、フロントガラス洗浄液タンクに連結されたポンプ及びチューブシステムを介して、ノズルにフロントガラス洗浄液が供給される。
【0003】
除氷システムを設けられた自動車もある。通常、除氷システムは、上述のタイプの標準的な洗浄払拭システムを備えるとともに、除氷液タンクと更なるポンプとを更に備えている。寒冷な気候において窓を除氷するために、除氷液タンクに連結されたポンプ及びチューブシステムを介して、ノズルに除氷液が供給される。
【0004】
本件出願人は、特にFR-A1-2789034号に記載された除氷システム及び装置を既に提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
除氷液は粘度を有しているが、この粘度は温度が低下するにつれて増加するということが知られている。したがって、外気温が低ければ低いほど、除氷液の粘度は高くなる。例えば、-5℃における液体の粘度は、-20℃における液体の粘度の半分であり得る。この粘度差は、ノズルによって噴霧される液の流量に直接的に影響を及ぼす。
【0006】
ポンプの性能が外気温によって影響を受け、寒冷な気候において低下するということもわかっている。これら2つの要因は、寒冷な気候において噴霧される除氷液の品質に多大な影響をもたらす。したがって、車両の外部の温度がどのようなものであっても最小量の除氷液が噴霧されることを保証する解決法を得ることが必要であり、且つこのような解決法が比較的コストの高い除氷液の過剰消費を招かないことが必要である。
【0007】
本発明は、このような要請に対する簡単で効果的且つ経済的な解決法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のために、本発明は、
車両の窓を除氷するための方法であって、前記車両は、
a.除氷液を収容する少なくとも1つのタンクと、
b.前記少なくとも1つのタンクを開口部に連結するチューブシステムであって、前記液体は前記開口部を介して前記窓に噴霧されるチューブシステムと、
c.前記液体が前記開口部を介して吐出されるまで、前記液体を前記チューブシステムにおいて循環させることが意図されたポンプと、
d.低位置と高位置との間において前記窓上を移動可能な少なくとも1つのワイパーブレードと、
e.前記少なくとも1つのブレードの回動のための駆動モータと、
f.前記車両の外部の温度T用のセンサと、
g.前記モータを制御するとともに前記ポンプを作動させるための電子ユニットと、を備えた除氷装置を設けられ、
前記方法はステップ1)を備え、
前記ステップ1)は、
-前記外気温がT1に等しいとき、量Q1の液体が前記開口部を介して吐出され、
-前記外気温がT2<T1であるT2に等しいとき、Q2>Q1である量Q2の液体が前記開口部を介して吐出されるように、
前記液体を前記開口部を介して吐出させるとともに、噴霧される液体の量Qを前記外気温に応じて修正するステップ、
又は、
-前記外気温がT1に等しく前記液体が粘度W1を有しているとき、前記量Qの液体が前記開口部を介して吐出され、
-前記外気温がT2<T1であるT2に等しく、前記液体がW2>W1である粘度W2を有しているとき、同量の前記量Qの液体が前記開口部を介して吐出されるように、
前記液体を前記開口部を介して吐出させるとともに、前記外気温がいかなるものであっても噴霧される液体の前記量Qを一定に維持するステップ、
からなる、方法、を提案する。
【0009】
したがって、本発明は、外気温に応じて噴霧される除氷液の量を修正するか、又は外気温がいかなるものであっても噴霧される液体の量を一定に維持するかのいずれかを提案する。最初の例において、外気温が非常に低いとき、噴霧される液体の量が増加する。
【0010】
外気温に応じて液体の量を調節することにより、液体の過剰消費という前述の問題を解決することができる。なぜならば、噴霧される液体の量は、任意の外気温にさらされる窓の除氷に最適なものとされるからである。
【0011】
外気温がいかなるものであっても噴霧される液体の量を実質的に一定に維持することにより、液体の粘度に外気温が与える影響という前述の技術的問題を解決することができる。液体の粘度がどのようなものであれ、窓を除氷するために噴霧される量は同一である。
【0012】
本発明による方法は、以下の1つ又は複数の特徴、ステップ又はサブステップを、互いに別箇に又は互いに組み合わせて備え得る。
【0013】
2)前記少なくとも1つのブレードを前記低位置から前記高位置まで、複数の連続的な角度移動を介して移動させるステップ、を備え、前記ステップ1)及び2)は特に同時に実施可能である。
【0014】
前記モータは、前記少なくとも1つのブレードの回動速度Vと、前記ポンプにより吐出される前記液体の量とが、これらの制御信号のパルス幅及び/又は振幅の変調によって制御されるように構成されており、前記ステップ2)は前記モータの前記制御信号の複数の連続するパルスによって実行されるとともに、前記ステップ1)は前記ポンプの前記制御信号の複数の連続するパルスによって実行される。
【0015】
前記ステップ1)における前記修正は、
-前記外気温がT1に等しいとき、前記信号のパルス幅Θ1及び/又はパルス振幅LI1が前記ポンプに適用され、
-前記外気温がT2に等しいとき、前記信号のΘ2>Θ1であるパルス幅Θ2及び/又はLI2>LI1であるパルス振幅LI2が前記ポンプに適用されるように、
前記ポンプの制御信号のパルス幅及び/又は振幅を調節することにより実行される。
【0016】
前記ステップ1)における前記修正は、
-前記外気温がT1に等しいとき、速度V1が前記少なくとも1つのブレードに適用され、
-前記外気温がT2に等しいとき、V2<V1である速度V2が前記少なくとも1つのブレードに適用されるように、
前記少なくとも1つのブレードの回動速度Vを調節することにより実行される。
【0017】
前記T1は、-5℃以上+5℃以下の間にあり、好適には-2℃以上+2℃以下の間にあり、例えば0℃である。
【0018】
前記T2は、-30℃以上-10℃以下の間にあり、好適には-25℃以上-15℃以下の間にあり、例えば、-20℃である。
【0019】
Θ2=k.Θ1であり、kは係数である。
【0020】
V1=k.V2であり、kは係数である。
【0021】
前記kは、1.5以上3以下の間にあり、例えば2である。
【0022】
前記ステップ1)及び2)は、前記車両が停止しているときに、すなわち前記車両の速度がゼロであるときに、実行される。
【0023】
3)前記少なくとも1つのブレードを前記高位置から前記低位置に、単独の角度移動によって移動させるステップ、
及び、
4)-前記外気温がT1に等しいとき、量Q1の液体を前記開口部を介して前記移動中に吐出させ、
-前記外気温がT2<T1であるT2に等しいとき、Q2>Q1である量Q2の液体を前記開口部を介して前記移動中に吐出させるように、
前記液体を前記開口部を介して前記移動中に吐出させるとともに、前記外気温に応じて噴霧される液体の前記量Qを修正するステップ、
が、前記ステップ1)及び2)に続く。
【0024】
前記ステップ3)及び4)において、前記ポンプは、所定の幅及び振幅の制御信号のパルスによって制御される。
【0025】
前記ステップ4)における前記修正が、
-前記外気温がT1に等しいとき、速度V1が前記少なくとも1つのブレードに適用され、
-前記外気温がT2に等しいとき、V2<V1である速度V2が前記少なくとも1つのブレードに適用されるように、
前記少なくとも1つの前記ブレードの回動速度Vが調節されることにより実行される。
【0026】
また、本発明は、
車両の窓を除氷するための装置であって、
a.除氷液を収容する少なくとも1つのタンク(3)と、
b.前記少なくとも1つのタンクを開口部(15)に連結するチューブシステム(5)であって、前記液体は前記開口部(15)を介して前記窓(10)に噴霧されるチューブシステム(5)と、
c.前記液体が前記開口部(15)を介して吐出されるまで、前記液体を前記チューブシステム(15)において循環させることが意図されたポンプ(22)と、
d.低位置(PB)と高位置(PH)との間において前記窓(10)上を移動可能な少なくとも1つのワイパーブレード(30)と、
e.前記少なくとも1つのブレードの回動のための駆動モータ(40)と、
f.前記車両の外部の温度T用のセンサ(60)と、
g.前記モータを制御するとともに前記ポンプを作動させるための電子ユニットと、
を備え、
前記電子ユニットは、先行請求項のいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように構成されている、装置、に関する。
【0027】
本発明の他の特徴や利点は、以下の例示として示される実施形態の説明と添付図面を参照することでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、自動車の窓を洗浄し除氷する装置の概略図である。
【
図2】
図2は、窓を除氷するサイクルを示す概略図である。
【
図3】
図3は、窓を除氷するサイクルを示す概略図である。
【
図4a】
図4aは、本発明による除氷方法の一実施形態の工程を示すグラフである。
【
図4b】
図4bは、本発明による除氷方法の一実施形態の工程を示すグラフである。
【
図4c】
図4cは、本発明による除氷方法の一実施形態の工程を示すグラフである。
【
図5a】
図5aは、本発明による除氷方法の別の実施形態の工程を示すグラフである。
【
図5b】
図5bは、本発明による除氷方法の別の実施形態の工程を示すグラフである。
【
図6a】
図6aは、本発明による除氷方法の更に別の実施形態を示すグラフである。
【
図6b】
図6bは、本発明による除氷方法の更に別の実施形態を示すグラフである。
【
図7a】
図7aは、本発明による除氷方法の更に別の実施形態を示すグラフである。
【
図7b】
図7bは、本発明による除氷方法の更に別の実施形態を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の除氷方法は、
図1に示すような自動車のフロントガラス10等の窓に適用される除氷装置1を利用する。
【0030】
この種の装置は、洗浄液を収容する第1タンク2と、除氷液を収容する第2タンク3と、を備えている。
【0031】
洗浄装置1は、第1タンク2及び第2タンク3を複数の開口部15に接続するチューブシステム5も備えている。これらの開口部15を介して、洗浄液及び/又は除氷液がフロントガラス10に吐出される。洗浄装置は、洗浄液及び/又は除氷液が開口部15を介して吐出されるまで、洗浄液及び/又は除氷液をチューブシステム5において循環させることが意図されたポンプシステム20を更に備えている。
【0032】
ポンプシステム20は、2つの独立したポンプ21、22を備えている。第1ポンプ21は第1タンク2に関連付けられ、洗浄液をチューブシステム5において循環させることが意図されており、第2ポンプ22は第2タンク3に関連付けられ、除氷液をチューブシステム5において循環させることが意図されている。
【0033】
除氷装置1は、アーム31に設けられた少なくとも1つのワイパーブレード30を備えており、このワイパーブレード30は、フロントガラス10上を低位置PBと高位置PHとの間で移動可能である。図示した例において、装置1は、2つのワイパーブレード30を備えている。
【0034】
前述の開口部15は、ワイパーブレード30に沿って配置されている。開口部15は、洗浄液及び/又は除氷液をワイパーブレード30の上部に向けて、すなわちフロントガラス10の上部に向けて噴霧するように配設されている。また、システムは、ワイパーブレードの両側に配置された開口部15を備えてもよく、この場合、液体は、上方移動の方向においてのみ噴霧されるか、又はブレードの前側にのみ噴霧される。また、開口部15がワイパーブレード30の両側に配置されて液体を同時に噴霧することも可能である。
【0035】
また、装置1は、それぞれのワイパーブレード30をそれらの各低位置とそれらの各高位置との間で駆動することが意図されているモータ40を備えている。装置1は、更に、車両の外部の温度用のセンサ50を備えている。センサ50は、フロントガラスの上部であってその中央に配置されているが、この位置は本発明を限定するものではない。センサ50は、車両外部の周囲空気に直接露出していてもよく、例えば-50℃乃至+50℃の値の範囲の外気温を計測することが意図されている。
【0036】
除氷装置1は、更に、ワイパーブレード30を駆動するとともにポンプシステム20を作動させるモータ40を制御するための電子回路60を備えている。ポンプ21、22は、独立して制御可能である。以下の発明の詳細な説明において、ワイパーブレードを駆動するように選択されたモータ40と除氷液を供給するように選択された第2ポンプ22は、dcステッピングタイプのモータ又はポンプ、或いは可逆タイプのモータ又はポンプであり、一方の回転速度と他方の排出液の出力圧力又は量は、制御信号のパルス幅の変調によって制御される。当該速度及び/又は当該圧力/量が変調可能である限り、他の装置も想定され得る。
【0037】
ユニット60はセンサ50にも連結されており、上述のパラメータ(速度及び/又は圧力/量)のうちの少なくとも一方を修正することを目的として計測された温度を受信する。
【0038】
図2及び3は、フロントガラス10の除氷サイクルを示す。このサイクルは、ブレード30の上昇動作、すなわち、それらの低位置からそれらの高位置への動作(
図2及び矢印72)と、ブレードの降下、すなわち、それらの高位置からそれらの低位置への動作(
図3及び矢印74)と、を備えている。
【0039】
各ブレード30は、一連の小さい要素的又は角度的動作において上昇する。本例において、10個の動作が示されている。これらの動作のそれぞれに対する出発及び到着角度位置が、
図2において破線にてブレードの一方(図面左側)のみについて概略的に示されている。したがって、各ブレードによって払拭されるフロントガラス10の表面は、一連の角度セクタに分割されている。
【0040】
各ブレード30は、単独の動作において降下する(
図3)。したがって、この動作についての出発及び到着角度位置は、各ブレードの高位置及び低位置にそれぞれ対応する。
【0041】
図4aは窓の除氷方法をグラフにより示している。
図4において、時間すなわちパルス幅Θが横軸において示されるとともに、制御信号の振幅(LI)、すなわち、ブレード30を駆動するモータ40の制御信号(連続線)と、ノズル15に除氷液を供給するポンプ22の制御信号(破線)が縦軸において示されている。
【0042】
ブレードの低位置PBと高位置PHとの間のブレードの回動(上昇動作)が、一連の角度セクタに分割されていることが理解される。これらの角度セクタは、前述の角度セクタ(5個のセクタが例示されている)、したがって制御信号のパルスに相当する。
【0043】
駆動モータ40と除氷ポンプ22の動作について、低位置PBから計測された角度i‐1と角度iとの間に延在する任意の要素セクタ“i”を参照して説明する。駆動モータ40と供給ポンプ22は、他のセクタにおいても同様に制御される。この制御スキームは、ブレード30による払拭の角度振幅の全てに亘って繰り返されるが、参照符号0で示す第1セクタと参照符号fで示す最終セクタは除く。これら2つのユニットの制御については後述する。
【0044】
要素セクタiの開始時において、すなわち、角度i‐1のレベルにおいて、駆動モータ40の速度と供給ポンプ22により吐出される除氷液の量は、パルス振幅(LI)の制御信号によって減少している。この値は、モータについてはその最大値の50%、ポンプについてはその最大値の40%である。これらの減少した値は、時間ti.0に亘って維持される。
【0045】
次いで、時間ti.0の終了時、駆動モータ40を制御するために送信されるパルス振幅を、幅又は時間(Θ)ti.1に亘って、漸進的に100%まで増加させる。これは、モータ速度を変更するコマンドに対するレスポンスの最大速度に相当する。続いて、このパルス振幅を、3つの時間ti.2、ti.3及びti.4の合計に等しい時間に亘って、100%に維持する。この間、駆動モータ40の回転速度は最大速度であり、すなわち、例えば、フロントガラスを払拭するブレードの使用時における公称回転値に等しい。時間ti.4を過ぎると、パルス振幅は、時間ti.5の間に、50%減少した値に戻される。
【0046】
これと平行して、供給ポンプ22の制御信号に与えられるパルス振幅を、最初の時間ti.0に続く第1時間ti.1まで、40%減少した値に維持する。次いで、このパルス振幅を、時間ti.2に亘って、漸進的に100%まで増加させる。これは、ポンプを制御するコマンドに対するレスポンスの最大速度に相当する。続いて、パルス振幅を、時間ti.3に等しい時間に亘って、100%に維持する。この間、供給ポンプ22によって吐出される液体の量は最大量であり、すなわち、例えばフロントガラスを洗浄する(除氷機能は使用していない場合の)ブレードの使用時における公称圧力に等しい。
【0047】
上記の時間を過ぎたポンプの制御ユニットのレスポンス時間に相当する時間ti.4において、パルス振幅を、最初に最大値の60%に等しい第1の減少値とし、次いで、時間ti.5に亘ってパルス振幅の最大値の40%に等しい更なる減少値とする。時間ti.5の終了時、駆動モータ40と供給ポンプ22のパルス振幅は、セクタiの開始時のそれぞれの値に戻され、そして新しいサイクルであるセクタi+1に進んでもよい。
【0048】
これらの同一であるサイクルに先立ち、参照符号“0”で示される開始サイクルと参照符号“f”で示される完了サイクルが実施される。
【0049】
開始サイクルの始点であるブレードの休止位置において、ブレードはそれらの低位置において不動であり、駆動モータと供給ポンプは停止している。なぜならば、それらの制御システムに送信されるパルス振幅がゼロに等しいからである。駆動モータ40が停止された状態にある時間t0.0において、供給ポンプ22を制御するパルス振幅を漸進的に100%まで増加させる。この時間t0.0は、0乃至100%の間においてパルス振幅を増大させる最大ペースに相当する。この100%のパルス振幅を、時間t0.1に亘って維持する。この時間は、除氷液がフロントガラスの底部に拡がって、そこに堆積してブレード15を動けなくしている氷を融解させる時間である。時間t0.1の終了時、t1.0及びt1.1に等しい時間において、駆動モータ40の制御信号のパルス振幅を漸進的に0から100%に増加させることにより、駆動モータ40を始動させる。これと平行して、供給ポンプ22のパルス振幅を、2つの時間t1.0及びt1.1において、100%から60%へ、そして40%へとそれぞれ減少させる。これは、第1の除氷サイクル、すなわちi=1である角度セクタに亘って実施されるサイクルの最初の2つの時間に相当する。開始サイクルと第1サイクルとの接続は、適切な時間t1.0及びt1.1を選択することにより実施される。時間t1.0は、モータのパルス振幅が当該時間の終了時においておよそ50%に達するようなものとされる。時間t.1については、当該時間の終了時において、駆動モータ40のパルス振幅が100%に達すると同時に、供給ポンプ22のそれが40%に達するように選択される。
【0050】
完了サイクル“f”を開始するのに先立つtf.3の終了時において、モータを制御するパルス振幅と供給ポンプ22を制御するパルス振幅は、双方とも100%である。続いて、これらの振幅を別箇に減少させる。最初に、供給ポンプ22の制御信号のパルス振幅をゼロまで減少させて、これにより時間tf.4の終了時において供給ポンプを完全に停止させる。同様に、駆動モータ40のパルス振幅をゼロまで減少させて、これにより、時間tf.4の終了時と時間tf.5の終了時との間において、このモータを完全に停止させる。
【0051】
これで、ブレードの1つの外方動作に亘る除氷サイクルが完了し、ブレードを上述のように単独動作によってその低位置PBへ戻し得る。戻る際の払掃動作が、洗浄ポンプ21を始動することにより除氷液をチューブシステム5からパージするために用いられてもよい。ブレードの降下段階において噴霧された液体は、有利には、氷がフロントガラスに再度出現しないようにする保護フィルムをフロントガラスに塗布する。その後、フロントガラスの状態に応じて、ブレードの次の上昇動作において新たな除氷サイクルを実行してもよい。
【0052】
したがって、開始サイクルと完了サイクルを除き、フロントガラスの除氷サイクルは、以下の工程を備えている。
【0053】
各ブレードによって払掃される角度セクタを、連続的な要素セクタに分割する。制御信号のパルス振幅は、任意の量の除氷液を各要素セクタに塗布し氷に液体を浸透させるのに必要な有効性に相当する。駆動モータ40の制御信号のパルス振幅を100%まで増加させることにより、駆動モータ40を連続して最大速度とし、複数の時間ti.2、ti.3及びti.4に亘ってこの値に維持する。時間ti.2は、供給ポンプ22の制御信号のパルス振幅をその減少値から100%に増加させるのに必要な時間に相当する。時間ti.3は、所望量の除氷液がブレードの開口部15に送達されるのに必要な時間に相当する。最後に、時間ti.4は、ポンプの制御信号のパルス振幅を100%から60%に減少させたことによるポンプが減速する時間に相当し、時間ti.5の終了時にその制御信号のパルス振幅は40%に達する。時間ti.4において、除氷液は供給ポンプにより依然として豊富に放出されており、ブレードを駆動するモータ40の回転速度はその最大値に維持されている。供給ポンプ22がその最大出力圧力に達して関連する要素セクタ上への除氷液の適切な分配を確保しているとき、駆動モータ40は依然としてその最大速度にあることに留意されたい。更に、供給ポンプ22がその最大圧力にある時間は、モータ40が最大速度にある時間より短い。この時間は、駆動モータの最大回転期間に先立つとともに後続している。これらの一連の最大速度及び出力の期間は、氷に液体を最大効率で浸透させて、液体の必要量を減少させる良好な除氷液の散布を保証する。
【0054】
次いで、駆動モータ40の制御信号のパルス振幅を、(絶対ではないが典型的には50%である)減少値まで減少させる。これは、ブレードの減速した回動に相当する。この減少速度は、除氷液を関連する要素セクタに広げて氷に液体を浸透させて、これにより液体が作動可能となる段階に対応する。
【0055】
駆動モータのパルス振幅を再び上昇させ次いで供給ポンプのパルス振幅を再び上昇させて新たな除氷サイクルを次の要素セクタにおいて開始する前に、駆動モータ40と供給ポンプ22のパルス振幅を、それらの減少値においてしばらく維持する。
【0056】
除氷サイクルの終了時において、ブレードがその高地点PH付近に近づいたとき、最終要素セクタ“f”に対するサイクルは、単に、2つの制御信号のパルス振幅を0まで減少させて除氷液の送達を停止するとともに駆動モータの回転を中止する工程からなる。
【0057】
図4aは、除氷装置1の電子ユニット60によりモニタリングされた除氷サイクルを示す。
ユニット60は、
-外気温がT1に等しいとき、量Q1の液体がブレードの各要素動作において開口部を介して吐出され、
-外気温がT2<T1であるT2に等しいとき、Q2>Q1である量Q2の液体がブレードの各要素動作において開口部を介して吐出されるように、
センサ60により計測された車両の外部の気温に応じて噴霧される液体の量を修正するように構成されている。
【0058】
図4aが、例えば-20℃の温度T2における非常に寒冷な気候における除氷サイクルを示している場合、ユニット60は、温度がこれより低くないとき、例えば、T1=0℃であるときに、
図4b又は
図4cの除氷サイクルを実行するように構成され得る。
【0059】
図4bの除氷サイクルと
図4aの除氷サイクルとの本質的な差異は、ポンプの制御信号のパルスの振幅(LI)に関する。
図4aの前述のサイクルのように、モータの制御信号のパルスの振幅の最大値は100%に維持されている、すなわち、フロントガラスを払掃する速度は変わらないが、ポンプの制御信号のパルスの振幅の最大値は、(
図4aのサイクルでは100%であったのに対し)75%に減少されている。これは、ポンプによって噴霧される液体の量を反映するものであって、
図4bのサイクルにおいて、液体の量は
図4aにおけるより少ない。したがって、ブレードの各要素動作について、噴霧される液体の量は、T2=-20℃よりT1=0℃の方が少ない。したがって、除氷液を過剰に消費することなく車両の除氷を最適なものとするために使用される液体の量は、外気温に依存している。
【0060】
図4cの除氷サイクルと
図4aの除氷サイクルとの本質的な差異は、ポンプの制御信号のパルスの幅(Θ)に関する。モータの制御信号のパルスの最大振幅が維持される時間は
図4aのサイクルにおける時間と等しいが、ポンプの制御信号のパルスの最大振幅が維持される時間は大幅に減少されている。これは、ポンプによって噴霧される液体の量を反映するものであって、
図4cのサイクルにおいて、液体の量は
図4aのサイクルより少ない。したがって、ブレードの各要素動作について、噴霧される液体の量は、T2=-20℃よりT1=0℃の方が少ない。
【0061】
電子ユニット60は、寒冷な気候において標準又は初期設定サイクルとみなされ得る
図4b又は
図4cのサイクルを温度T1において実行する一方、他方で、非常に寒冷な気候における除氷サイクルとしてみなされ得る
図4aのサイクルを温度T2において実行するように構成されていてもよい。
【0062】
温度T1及びT2がそれぞれ0℃と-20℃である上述の例において、噴霧される液体の量をそれぞれQ1及びQ2とし、且つQ2=k.Q1とする。ここで、kは、この具体的事例において好適には2に等しい係数である。
【0063】
図5a及び5bは、本発明の変形実施形態を示す。
図5aのサイクルは
図4aのサイクルと同一である。
【0064】
図5aが、例えば0℃の温度T1における寒冷な気候における標準的な除氷サイクルを示す場合、ユニット60は、温度がこれより低いとき、例えばT2=-20℃であるときに、
図5bの除氷サイクルを実行するように構成され得る。
【0065】
図5bの除氷サイクルと
図5aの除氷サイクルとの本質的な差異は、ポンプとモータの制御信号のパルスの振幅(LI)に関する。モータの制御信号のパルスの振幅の最大値は、(
図5aのサイクルでは100%であるのに対し)75%に減少されている。これは、フロントガラスを払掃する速度が
図5bのサイクルより遅いことを意味する。ポンプの制御信号のパルスの振幅の最大値は、100%に維持される。これは、単位時間当たりに噴霧される液体の量が
図5aのサイクルと同じであることを意味する。したがって、ブレードがゆっくりと移動するため、ブレードは任意の角度セクタを覆うのにより時間がかかるとともに、この経過時間において噴霧される液体の量は、
図5aのサイクルの場合においてブレードが同じ角度セクタを通過するのに必要な経過時間におけるより多い。噴霧される液の量は、T1=0℃よりT2=-20℃の方が多い。したがって、除氷液を過剰に消費することなく車両の除氷を最適なものとするために使用される液体の量は、外気温に依存している。
【0066】
温度T1及びT2がそれぞれ0℃と-20℃である上述の例において、ブレードの速度をそれぞれV1及びV2とし、且つV1=k.V2とする。ここで、kは、この具体的事例において好適には2に等しい係数である。
【0067】
或いは、ユニット60は、外気温がいかなるものであっても、噴霧される液の量Qを一定に維持するように構成されている。この場合、外気温がT1に等しく液体が粘度W1を有しているとき、量Qの液体が開口部を介して吐出される。また、外気温がT2<T1であるT2に等しく、液体がW2>W1である粘度W2を有しているとき、同量である量Qの液体が開口部を介して吐出される。
【0068】
図4aが、例えば-20℃の温度T2における非常に寒冷な気候における除氷サイクルを示している場合、ユニット60は、温度がこれより低くないとき、例えば、T1=0℃であるときに、
図4b又は4cの除氷サイクルを実行するように構成され得る。
【0069】
図4bの除氷サイクルと
図4aの除氷サイクルとにおいて、上述のパルス振幅は異なっているが、ポンプにより噴霧される液体の量は、2つの前記温度において液体が有する異なる粘度を理由として、両サイクルにおいて各角度セクタについて同一である。
【0070】
同様に、
図4cの除氷サイクルと
図4aの除氷サイクルとにおいて、上述の幅は異なっているが、ポンプにより噴霧される液体の量は、2つの前記温度において液体が有する異なる粘度を理由として、2つのサイクルにおいて各角度セクタについて同一である。
【0071】
温度T1及びT2がそれぞれ0℃と-20℃である上述の例において、噴霧される液体の量は等しく、ポンプの作動時間(パルス幅)をそれぞれt1及びt2とし、且つt2=k.t1とする。ここで、kは、この具体的事例において好適には2に等しい係数である。
【0072】
図5a及び5bは、本発明の変形実施例を示す。
図5aのサイクルは
図4aのサイクルと同一である。
【0073】
上述の変形例において、
図5aが、例えば温度t1が0℃である寒冷な気候における標準的な除氷サイクルを示す場合、ユニット60は、温度がこれより低いとき、例えばT2=-20℃であるときに、
図5bの除氷サイクルを実行するように構成され得る。
【0074】
図5bの除氷サイクルと
図5aの除氷サイクルとの間の上述のパルス振幅の差異にかかわらず、ポンプにより噴霧される液体の量は、2つの前記温度において液体が有する粘度差があるため、いずれのサイクルにおいても各角度セクタについて同一である。
【0075】
温度T1及びT2がそれぞれ0℃と-20℃である上述の例において、噴霧される液体の量は同一であり、ブレードの駆動速度をそれぞれV1及びV2とし、且つV1=k.V2とする。ここで、kは、この具体的事例において好適には2に等しい係数である。
【0076】
図6aは、ブレードのフロントガラスを降下する段階における除氷サイクルを示すグラフである。ブレードのその高位置PHとその低位置PBとの間の回動が単独の動作によりなされていることが理解される。
【0077】
開始サイクルの始点であるブレードの休止位置において、ブレードはそれらの最高位置において不動であり、駆動モータと供給ポンプは停止している。なぜならば、それらの制御システムに送信されるパルス振幅はゼロに等しいからである。時間t0.0において、駆動モータ40が停止し続けているとき、供給ポンプ22の制御のパルス振幅が漸進的に100%へと変更される。この時間t0.0は、0乃至100%の間においてパルス振幅を増大させる最大ペースに相当する。この100%のパルス振幅を、実質的に降下動作の間中、維持する。時間t0.1の終了時、駆動モータ40の制御信号のパルス振幅を0から100%に漸進的に増加させることにより、駆動モータ40を始動させる。そして、t1.1から、その制御信号のパルス振幅を、実質的にブレードの降下動作の間中、100%に維持する。
【0078】
図6aが、例えば-20℃の温度T2における非常に寒冷な気候における除氷サイクルを示している場合、ユニット60は、温度がこれより低くないとき、例えば、T1=0℃であるときに、
図6bの除氷サイクルを実行するように構成され得る。
【0079】
図6bの除氷サイクルと
図6aの除氷サイクルとの本質的な差異は、ポンプの制御信号のパルスの振幅(LI)に関する。
図6aの前述のサイクルのように、モータの制御信号のパルスの振幅の最大値は100%に維持されている、すなわち、フロントガラスを払掃する速度は変わらないが、ポンプの制御信号のパルスの振幅の値は、(
図6aのサイクルでは100%であったのに対し)75%に減少されている。これは、ポンプによって噴霧される液体の量を反映するものであって、
図6bのサイクルにおいて、液体の量は
図6aのサイクルにおけるより少ない。したがって、ブレードの各要素動作について、噴霧される液体の量は、T2=-20℃よりT1=0℃の方が少ない。したがって、除氷液を過剰に消費することなく車両の除氷を最適なものとするために使用される液体の量は、外気温に依存している。
【0080】
図7a及び7bは、本発明の変形実施形態を示す。
図7aのサイクルは
図6aのサイクルと同一である。
【0081】
図7aが、例えば0℃の温度T1における寒冷な気候における除氷サイクルを示している場合、ユニット60は、温度がこれより低いとき、例えば、T2=-20℃であるときに、
図7bの除氷サイクルを実行するように構成され得る。
【0082】
図7bの除氷サイクルと
図7aの除氷サイクルとの本質的な差異は、ポンプの制御信号のパルスの振幅(LI)に関する。モータの制御信号のパルスの振幅の最大値は、(
図5aのサイクルでは100%であるのに対し)75%に減少されている。これは、フロントガラスを払掃する速度が
図7bのサイクルより遅いことを意味する。ポンプの制御信号のパルスの振幅の最大値は、100%に維持される。これは、単位時間当たりに噴霧される液体の量が
図7aのサイクルと同じであることを意味する。したがって、ブレードがより遅く移動するため、フロントガラスを下降するのにより時間がかかるとともに、この経過時間において噴霧される液体の量は、
図7aのサイクルの場合においてブレードが下降するのに必要な経過時間におけるより多い。噴霧される液の量は、T1=0℃よりT2=-20℃の方が多い。したがって、除氷液を過剰に消費することなく車両の除氷を最適なものとするために使用される液体の量は、外気温に依存している。
【0083】
温度T1及びT2がそれぞれ0℃と-20℃である上述の例において、ブレードの速度をそれぞれV1及びV2とし、且つV1=k.V2とする。ここで、kは、この具体的事例において好適には2に等しい係数である。
【0084】
上述の除氷サイクルは、好適には、車両の運転を妨害しないように車両の静止時に実行される。