IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼネラル・エレクトリック・カンパニイの特許一覧

特許7370688表面処理ツールおよび、ターボ機械の表面処理方法
<>
  • 特許-表面処理ツールおよび、ターボ機械の表面処理方法 図1
  • 特許-表面処理ツールおよび、ターボ機械の表面処理方法 図2
  • 特許-表面処理ツールおよび、ターボ機械の表面処理方法 図3
  • 特許-表面処理ツールおよび、ターボ機械の表面処理方法 図4
  • 特許-表面処理ツールおよび、ターボ機械の表面処理方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】表面処理ツールおよび、ターボ機械の表面処理方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20231023BHJP
   F01D 5/02 20060101ALI20231023BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20231023BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B24B7/04 Z
F01D5/02
F01D25/00 F
F01D25/00 L
F01D25/00 X
F02C7/00 C
F02C7/00 D
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016245001
(22)【出願日】2016-12-19
(65)【公開番号】P2017127966
(43)【公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-12-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】14/977,374
(32)【優先日】2015-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ジョセフ・コレッティ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エドワード・ウィリアムズ
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】刈間 宏信
【審判官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-36943(JP,A)
【文献】実開平3-65658(JP,U)
【文献】実開昭56-129933(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 7/04 F01D 5/02 F01D 25/00 F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品(210)を受けるように構成された旋盤チャック(204)を有する旋盤組立体(202)であって、前記旋盤チャック(204)が第1の回転軸(A1)周りで前記部品(210)を回転させ、前記部品(210)が前記第1の回転軸(A1)に対し軸方向に配向された露出された軸方向対象面(216)を有する、旋盤組立体(202)と、
前記旋盤組立体(202)に機械的に結合され、前記第1の回転軸(A1)と実質的に平行に延び、前記部品(210)の外周面に近接して配置される、軸方向に調整可能なツールアーム(206)と、
前記軸方向に調整可能なツールアーム(206)に調整可能に結合され、前記軸方向に調整可能なツールアーム(206)から前記軸方向対象面(216)に向かって延びる研磨機と、
前記旋盤組立体(202)に機械的に結合され、前記第1の回転軸(A1)と実質的に垂直に延び、前記部品(210)の外周面に近接して配置される、軸方向に調整可能な別のツールアームと、
前記軸方向に調整可能な別のツールアーに結合され、艶出し面(322)を有する艶出しローラ(320)であって、前記艶出し面(322)が、前記第1の回転軸(A1)に実質的に非平行である第2の回転軸(A2’)周りで回転するように構成されて、その結果、前記艶出し面(322)が、前記部品(210)が前記第1の回転軸(A1)を中心に回転中に前記部品(210)の前記軸方向対象面(216)に選択的に接触して前記部品(210)に対し圧縮応力を加える、艶出しローラ(320)と、
前記艶出しローラ(320)に結合され、前記艶出し面(322)を前記第2の回転軸(A2’)周りで回転させ、前記艶出しローラ(320)を前記部品(210)の前記軸方向対象面(216)に押し付けて、前記部品(210)と前記艶出し面(322)との間で接触して、低減された表面粗さを有する軸方向対象面(216)を生じさる、駆動システム(25)と、
を備える表面処理ツール(200)。
【請求項2】
前記艶出し面(322)の幾何学的な輪郭は、前記艶出し面(322)と前記軸方向対象面(216)との間のヘルツ接触を発生させる形状とされる、請求項1に記載の表面処理ツール(200)。
【請求項3】
前記艶出し面(322)が、前記第2の回転軸(A2’)に対して傾斜して配置された第1の艶出し面(322)と、前記第1の艶出し面(322)に対して垂直に配置された第2の艶出し面(322)とを有し、
前記艶出しローラ(320)は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)またはバナジウム(V)のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の表面処理ツール(200)。
【請求項4】
前記軸方向に調整可能なツールアーム(206)に結合されたトリミングツール(226)をさらに備え、前記トリミングツール(226)が前記研磨機から独立しており、
前記トリミングツール(226)は、前記第1及び第2の回転軸(A1、A2’)とは異なる第3の回転軸(A3)の周りで回転するトリミング要素(228)を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の表面処理ツール(200)。
【請求項5】
前記旋盤組立体(202)の前記軸方向に調整可能な別のツールアーは、前記艶出しローラ(320)を前記軸方向に沿って移動させるためのトラック(230)をさらに含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の表面処理ツール(200)。
【請求項6】
ターボ機械(100)処理のための方法であって、
旋盤組立体(202)で部品(210)の対象面(216)を第1の回転軸(A1)周りで回転させるステップであって、前記旋盤組立体(202)が、前記部品(210)を受けるように構成された旋盤チャック(204)を有し、前記旋盤チャック(204)が前記第1の回転軸(A1)周りで前記部品(210)を回転させ、前記部品(210)が前記第1の回転軸(A1)に対し軸方向に配向された露出された軸方向対象面(216)を有する、前記ステップと、
方向に調整可能なツールアーム(206)を前記部品(210)の外周面に近接して配置するステップであって、前記軸方向に調整可能なツールアーム(206)は、前記旋盤組立体(202)に機械的に結合され、前記第1の回転軸(A1)と実質的に平行に延び、前記部品(210)の外周面に近接して配置される、前記ステップと、
艶出しローラ(320)の艶出し面(322)を前記第1の回転軸(A1)と実質的に非平行である第2の回転軸(A2’)周りで駆動システム(25)が回転させるステップであって、前記艶出しローラ(320)は軸方向に調整可能な別のツールアーに結合され、前記軸方向に調整可能な別のツールアームは、前記旋盤組立体(202)に機械的に結合され、前記第1の回転軸(A1)と実質的に垂直に延び、前記部品(210)の外周面に近接して配置され、前記艶出し面(322)が、前記第1の回転軸(A1)に実質的に非平行である第2の回転軸(A2’)周りで回転するように構成される、前記ステップと、
前記軸方向対象面(216)の前記第1の回転軸(A1)を中心とした回転中および前記艶出し面(322)の回転中に、低減された表面粗さを有する軸方向対象面(216)を生じさせるように前記艶出しローラ(320)の前記艶出し面(322)を前記部品(210)の前記軸方向対象面(216)に接触させるステップであって、前記部品(210)に金属凝集を発生させる残留圧縮応力を加え、低減された表面粗さを有する前記軸方向対象面(216)と接する部品の間の摩擦係数が、前記軸方向対象面(216)と前記隣接する部品の間の初期摩擦係数よりも大き、前記ステップ、とを含む
方法。
【請求項7】
前記部品(210)がホイールフランジ(214)を含み、
前記ホイールフランジ(214)がターボ機械のロータを受ける開口(218)を有し、
前記ホイールフランジ(214)の前記軸方向対象面(216)が、前記ターボ機械の動作中、軸方向に隣接するホイールと接触し、前記軸方向対象面(216)と前記隣接するホイールとの間の金属凝集により、前記隣接するホイールへトルク伝達を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接触させるステップに続いて、前記軸方向対象面(216)をさらに変更することなく、ターボ機械(100)組立体内に前記部品(210)を配置するステップをさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記艶出し面(322)の幾何学的な輪郭は、前記艶出し面(322)と前記軸方向対象面(216)との間にヘルツ接触が発生するように構成されている、請求項6乃至8のいずれかに記記載の方法。
【請求項10】
前記艶出し面(322)が、前記第2の回転軸(A2’)に対して傾斜して配置された第1の艶出し面(322)と、前記第1の艶出し面(322)に対して垂直に配置された第2の艶出し面(322)とを有し、
前記軸方向対象面(216)は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)およびバナジウム(V)のうちの少なくとも1つを含む、請求項6乃至9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ターボ機械部品の処理に関し、より詳細には、表面機械加工ツール、軸方向に隣接する部品と接触する際に摩擦が増大し、および/または圧縮応力がより大きくなる部品(例えば、ターボ機械部品)の処理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
修理、改善、改装などの部品の配備後処理(本明細書では「処理」と総称する)は、新しい完全な組立体または/およびそれらの個々の部品の製造を必要とせずに、より大きいターボ機械組立体の寿命および品質を改善させ得る。ターボ機械のいくつかの部品、例えば内部にブレードを受けるように適合された回転可能なホイールは、製造および/または動作中に直接機械的接触を介して他の部品と係合することができる。部品間の摩擦接触は、2つ以上の部品、例えば、ターボ機械組立体の、軸方向に隣接したロータに取り付けられたホイール間の所望の機械的関係を維持する助けとなり得る。
【0003】
従来の、部品の処理工程では、ターボ機械保守者(servicer)は、対応するロータからターボ機械のホイールを取り外して、ホイールの1つまたは複数の接触面に湿式グリットブラストを適用することができる。湿式グリットブラストなどの工程は、それらの機械的特性のいくつかを変更することに加えて、これらの接触面を清掃することができる。しかしながら、湿式グリットブラストは、一般に、専用組立体、例えばブラストブース内にターボ機械ホイールを設置することを必要とし、それにより、処理に使用される工程および設備の総数が増加する。加えて、従来、処理された表面は、湿式グリットブラストにより、より大きい表面粗さと、例えばブラスト工程中に表面から材料を除去することによって生じる比表面積の少なくとも部分的な減少とを呈す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0047162号明細書
【発明の概要】
【0005】
本開示の第1の態様は、表面処理ツールを提供し、表面処理ツールは、部品を受けるように構成された旋盤チャックを有する旋盤組立体であって、旋盤チャックが第1の回転軸周りで部品を回転させ、部品が第1の回転軸に対し軸方向に配向された露出された軸方向対象面を有する、旋盤組立体と、ツールアームを介して旋盤組立体に結合された研磨機であって、第1の回転軸に実質的に非平行である第2の軸に沿って延在する研磨面を含み、その結果、研磨面が部品の対象面に選択的に接触する、研磨機と、研磨機に結合され、研磨機を第2の軸周りで回転させ研磨機を部品に押し付けて、部品と研磨面との間で接触している間、より大きい比表面積および低減された表面粗さを有する研磨された対象面を生じさせる、駆動システムと、を備える。
【0006】
本開示の第2の態様は、部品を処理するための方法を提供し、方法は、部品の対象面を第1の回転軸周りで回転させるステップと、研磨機の研磨面を第1の回転軸と実質的に非平行である第2の軸周りで回転させるステップと、対象面の回転中および研磨面の回転中に、より大きい比表面積および低減された表面粗さを有する研磨された対象面を生じさせるように研磨機の研磨面を部品の対象面に接触させるステップであって、研磨された対象面と隣接する部品との間の摩擦係数が対象面と隣接する部品との間の初期摩擦係数よりも大きい、ステップと、を含む。
【0007】
本開示の第3の態様は、部品を提供し、部品は、内部にターボ機械シャフトおよび旋盤チャックのうちの1つを受けるための開口を有する本体であって、本体が旋盤チャックに結合されたことに応答して、開口が本体の回転軸に対して実質的に軸方向に旋盤チャックで配向される、本体と、本体に結合され、本体の回転軸に対して軸方向に延在する面を含み、面が窪みを含み、面の表面粗さは部品の残りの部分の表面粗さよりも大きい、フランジと、を備える。
【0008】
本開示の第4の態様は、表面処理ツールを提供し、表面処理ツールは、部品を受けるように構成された旋盤チャックを有する旋盤組立体であって、旋盤チャックが部品を第1の回転軸周りで回転させ、部品が第1の回転軸に対して軸方向に配向された露出された軸方向対象面を含む、旋盤組立体と、旋盤組立体に結合され、艶出し面を含む艶出しローラであって、艶出し面が第1の回転軸と実質的に非平行である第2の回転軸の周りで回転するように構成され、その結果、艶出し面が部品の対象面に選択的に接触して部品に圧縮応力を付与する、艶出しローラと、研磨機に結合され、研磨機を第2の回転軸周りで回転させ研磨機を部品に押し付けて、部品と研磨面との間で接触している間、より大きい比表面積および低減された表面粗さを有する研磨された対象面を生じさせる、駆動システムと、を備える。
【0009】
本開示の第5の態様は、ターボ機械を処理するための方法を提供し、方法は、部品の対象面を第1の回転軸周りで回転させるステップと、艶出しローラの艶出し面を第2の回転軸周りで回転させるステップであって、第2の回転軸が第1の回転軸と実質的に非平行である、ステップと、対象面の回転中および艶出し面の回転中に、艶出しローラの艶出し面を部品の対象面に接触させるステップであって、より大きい比表面積および低減された表面粗さを有する研磨された対象面を生じさせ、部品に残留圧縮応力を付与し、研磨された対象面と隣接する部品との間の摩擦係数が対象面と隣接する部品との間の初期摩擦係数よりも大きい、ステップと、を含む。
【0010】
開示の第6の態様は、部品を提供し、部品は、ターボ機械シャフトおよび旋盤チャックのうちの1つを受けるための開口を内部に有する回転可能な本体であって、開口が、回転可能な本体の回転軸に対して実質的に軸方向に配向される、回転可能な本体と、本体に結合され、本体の回転軸に対して軸方向に延在する表面を含むフランジであって、フランジの面が窪みを含み、フランジの面の表面粗さおよび圧縮応力がそれぞれ部品の残りの部分の表面粗さおよび圧縮応力よりも大きい、フランジと、を備える。
【0011】
開示されたシステムのこれらおよび他の特徴は、様々な実施形態を描く添付の図面と併せて、システムの様々な態様の以下の詳細な説明からより容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来のターボ機械システムの斜視図である。
図2】本開示の実施形態による表面処理ツールおよび部品の斜視図である。
図3】本開示の実施形態による表面処理ツールおよび対象面の拡大部分断面図である。
図4】本開示の実施形態による部品に接触する表面処理ツールの部分断面図である。
図5】本開示の実施形態による部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は必ずしも原寸に比例していないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことが意図され、従って、その範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、図面間で同様の番号は同様の要素を表す。
【0014】
以下の説明では、一部を形成する添付の図面を参照し、本教示を実施することができる特定の例示的な実施形態を例示として示す。これらの実施形態は、当業者が本教示を実施することができるように十分に詳細に記載されており、本教示の範囲から逸脱することなく他の実施形態を使用してもよく、変更がなされてもよいことを理解されたい。従って、以下の説明は単なる例示である。
【0015】
本開示の実施形態は、本明細書で論じられる様々な技術的特性を有する、ターボ機械のための表面処理ツール、部品を処理するための方法、および/または部品を提供し得る。本開示による表面処理ツールは、対応する旋盤チャックを備えた旋盤組立体として具体化することができる。旋盤チャックは、部品、例えば、ロータに結合されるように適合されたターボ機械のホイールを受けることができる。旋盤チャックは、部品を第1の回転軸周りで回転させることができ、部品は、旋盤チャック上に配置されるとき露出された対象面を含み得る。一実施形態では、旋盤組立体は、従来の湿式表面処理ツールとは対照的な1つのタイプとして、研磨機器(本明細書では「研磨機」と呼ぶ)も含むことができる。研磨機は、旋盤チャックの回転軸とは異なる(即ち、非平行である)第2の回転軸の周りで回転可能な研磨面を含むことができる。別の実施形態では、旋盤組立体は、異なるタイプの乾式表面処理を提供するための艶出しローラを含むことができる。従って、艶出しローラは、艶出し面を含み、旋盤チャックの回転軸と異なる第2の配向軸を中心に回転することができる。本開示の実施形態における研磨機および/または艶出しローラは、部品の研磨された対象面、例えば、1つまたは複数の金属、金属合金などを作り出すことができる1つまたは複数の構造で構成され得る。研磨された対象面は、研磨または艶出し加工の直接的な結果としての表面粗さの減少および/または比表面積の増加を呈することができる。動作中、研磨機および/または艶出しローラでの機械加工による部品間の表面仕上げおよび金属凝集は、対象面の摩擦を増加させおよび/または部品に残留圧縮応力を付与することができる。本明細書で使用される「残留応力」とは、応力を生じさせる機械的力が除去された後に材料に残っている応力を指す。従って、「残留圧縮応力」とは、材料が圧縮変形(即ち、内側に押される)して艶出し後にその表面に圧縮タイプの応力を材料が呈し続ける、材料の塑性変形を指す。
【0016】
図1は、共通の圧縮機/タービンシャフト106を介してタービン部分104に動作可能に連結された圧縮機部分102を含む、従来のターボ機械100を示す。本明細書で使用する場合、用語「軸方向の」および/または「軸方向に」は、ターボ機械の回転軸(特に、ロータ部分)に実質的に平行である軸線ARに沿った物体の相対的な位置/方向を指す。さらに、用語「円周方向の」および/または「円周方向に」は、特定の軸を取り囲むが、任意の位置でその軸と交差しない円周に沿った物体の相対的な位置/方向を指す。
【0017】
圧縮機部分102は、燃焼機組立体108を介してタービン部分104に流体的に接続され得る。燃焼機組立体108は、1つまたは複数の燃焼機110を含む。燃焼機110は、限定はしないが、カニュラ型アレイで配置されることを含む構成の広範囲のターボ機械100に取り付けられてもよい。圧縮機部分102は複数の圧縮機ロータホイール112を含む。ロータホイール112は、各々が関連するエーロフォイル部分118を有する複数の第1段圧縮機ロータブレード116を有する第1段圧縮機ロータホイール114を含む。同様に、タービン部分104は、複数の第1段タービンロータブレード124を有する第1段タービンホイール122、を含む複数のタービンロータホイール120を含む。例示的な実施形態によれば、1つまたは複数のロータホイール112、114、120、122は、可搬式フライス加工デバイスおよび/またはフライス加工技術を施すことで機械加工され得る。しかしながら、ターボ機械100の他の部品および/または他のターボ機械システム内の同様の部品もまた、本明細書で論じられる1つまたは複数の可搬式フライス加工ツールで機械加工することができ、または別の方法で本明細書に記載の工程の実施形態の対象とすることができることを理解されたい。
【0018】
図2を参照すると、本開示の実施形態による表面処理ツール200が示される。表面処理ツール200は、旋盤組立体202を含み得る。旋盤組立体202は、今度は、本明細書で論じられる1つまたは複数の部品およびサブ部品を動作するための、旋盤チャック204、ツールアーム206、および機械駆動力を伝達しおよび/または生成する組立体駆動システム208を含み得る。「ツールポスト」としても知られかつ参照され得る旋盤チャック204は、部品を受けるように構成された単純なまたは複合の3次元形状を有する回転可能なプラットフォームとして提供され得る。例示的な実施形態では、旋盤チャック204は、実質的に円筒形であり、ターボ機械ロータの直径と実質的に等しい直径を有することができる。旋盤チャック204は、第1の回転軸A1を中心に、実質的に第1の回転経路R1に沿って回転するように適合され得る。ツールアーム206は、本明細書の他の箇所で論じられるように、1つまたは複数の機械加工要素を有して、旋盤チャック204に結合された部品に他の表面処理を提供するように配置され得る。
【0019】
組立体駆動システム208は、例えばツールアーム206の構造内に収容されたモータシステムに結合することができるか或いはそれを含むことができる。組立体駆動システム208のモータシステムは、様々なタイプの動力(例えば、燃料、電気等)を機械エネルギーに変換して、本明細書で論じるように、旋盤組立体202の部品を作動させる。例えば、モータシステムは、旋盤チャック204を回転させて、その上の部品の処理を可能にし、および/またはツールアーム206に結合された1つまたは複数のツールを駆動することができる。旋盤組立体202の構造は、いずれかの現在知られるまたは将来に開発されるモータシステム(例えば、電動機システム)の部品を収容するのに適した大きさにすることができる。一実施形態では、駆動機構208は、旋盤チャック204に直接的または間接的に機械的に結合され、第1の回転軸A1の周りでの旋盤チャック204の回転を可能にすることができる。
【0020】
旋盤組立体202の旋盤チャック204は、部品210を受けることができる。ターボ機械部品210は、ガスタービン、蒸気タービン、水タービンなどのターボ機械のロータ周りで回転するように適合された回転機器の1つまたは複数の部分の形態で提供され得る。例示的な実施形態では、部品210は、例えば半径方向に延在するタービンロータブレード124(図1)などの複数のブレード要素を保持するように適合されたタービンホイール122(図1)の形態を取り得る。この範囲では、部品210は、また、第1の回転軸A1に対して半径方向の表面に複数の半径方向ダブテールおよび/またはダブテールスロット(図示せず)を含むことができる。ターボ機械部品210は、また、ターボ機械の他の部品に係合するおよび/または受けるように構成された軸方向面212を含むことができる。ターボ機械部品210は、例えば、軸方向面212上に配置されたフランジ214を含むか、または別の形でそれに結合され得る。従って、フランジ214は、ターボ機械100などのターボ機械の動作中に軸方向に隣接する部品に接触する、およびまたは別の形で係合するための露出された軸方向対象面216を含み得る。フランジ214および/または軸方向対象面216を含む部品210の全体または一部は、超合金材料を含む鋼および/または合金(例えば、鋼基合金および/またはニッケル基合金)から構成され得、いくつかの実施形態では、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)またはバナジウム(V)の1つまたは複数を含んでもよい。従って、部品210の多くの材料組成が考えられることが理解される。フランジ214は、図2に例示されて、ターボ機械210の残りの部分に直接軸方向に結合されるが、処理される部品210のタイプに基づいて1つまたは複数の介在構造が存在してもよいことが理解される。
【0021】
開口218は、フランジ214を含む部品210を通って軸方向に延在することができる。開口218は、その中のターボ機械のロータ、例えばロータ106(図1)を受けるおよび/または摺動可能に係合するように適合され得る。旋盤チャック204は、開口218と実質的に同じ断面積を有する旋盤チャック204からの、例えば軸方向突起の形態の回転可能な継手219を有することによって、部品210を受けることができる。回転可能な継手219は、図2に示すように、旋盤チャック204でおよび/または上で部品210の回転移動が可能となる形状とされ得る。回転可能な継手219は、回転可能な継手219に対して固定位置に部品210を保持する連結機構(例えば、機械的に作動されたロックおよび/または非作動のロック)を任意選択で含むことができ、旋盤チャック204によって部品210の回転が可能になる。回転可能な継手219は、開口218内に機械的に係合しおよび/または位置付けられるように構成された1つまたは複数の他の部品として実施され得ることが理解される。旋盤チャック204は、1つまたは複数の他の現在知られているかまたは将来に開発されるタイプの回転可能な継手によって、部品210を受け、かつそれと回転可能に係合することができることが理解される。
【0022】
部品210のフランジ214は、ターボ機械システムの一部としての動作中、軸方向に隣接する部品、例えば、隣接するホイールの別のフランジと接触してこれに係合することができる。作業者は、ロータ114(図1)に取り付けられた各部品が使用中に一貫した相対周方向位置を維持し、処理工程がこの物理的関係を維持することを望む場合がある。いくつかの場合、およびいくつかの条件では、軸方向対象面216などの相手面は、他の部品との長期接触およびその後の機械的摩耗から、低減された摩擦係数(即ち、材料の表面上の摩擦力の強さを表す係数)を呈することがあり、ある部品が他の部品に対して回転スリップする可能性があるなどの悪影響をもたらす。旋盤組立体202の修復器具は、軸方向対象面216に接触して、例えば、軸方向対象面216の比表面積を増加させながら軸方向対象面216の表面粗さを低減させることによって、軸方向対象面216の摩擦係数を増加させることができる。本明細書で使用する場合、用語「比表面積」は、一般に、顕微鏡レベルでの材料の隣接する部品との接触面積を表す。材料の比表面積の変化は、通常の観察者には認識されない可能性があるが、一方の材料と他方の材料との間の係合関係に実質的な変化を引き起こす場合がある。本開示による用途では、より滑らかな(即ち、より低い)表面粗さは、ある材料と他の材料との間の摩擦係数の増加(例えば、増加した表面積の接触を提供することによって)と関連し得、軸方向対象面216の比表面積およびそれに対応する摩擦係数を増加させる。例示的な実施形態では、研磨機220は、ツールアーム206を介して旋盤組立体202に結合され、その上に研磨面222を含むことができる。研磨面222は、研磨面222が実質的に矢印Rで示される方向に沿って回転できるように、第2の回転軸Aを中心に回転することができる。第2の回転軸Aは、例えば、第1の回転軸Aに対して約5°から175°の間、または約185°から約355°の間の値を有する、例えば角度差θを有することによって、第1の回転軸Aと実質的に非平行であり得る。いくつかの実施形態では、θは約90°の値を有し、それによって第2の回転軸Aを第1の回転軸Aに対して実質的に垂直に延在させ得ることが理解される。研磨面222の回転移動を可能にするために、研磨機220は、研磨面222が円周上に設けられた、例えばドラム研磨機の形態で提供され得る。角度配向の文脈において、用語「実質的な」または「実質的に」は、基準軸間の既述の関係に加えて、定義された角度関係(例えば、平行、垂直など)の誤差の想定のマージン内(例えば、1%、5%、10%など)の任意のおよび全ての角度関係を含むことができる。
【0023】
図3を参照すると、部品210(図2)の表面処理を示すために、研磨面222と軸方向対象面216の拡大断面図が示される。表面処理ツール200(図2)の動作中、研磨面222は、例えば接触領域CA内の部品210(図2)上のフランジ214(図2)の軸方向対象面216に選択的に接触し得る。軸方向対象面216の表面粗さを低減するために、研磨面222は、第2の回転軸A2を中心に回転しながら、軸方向対象面216に接触することができる。ターボ機械部品210およびフランジ214は、第1の回転軸A1を中心に回転することができる。軸方向対象面216が回転して回転研磨面222と接触すると、軸方向対象面216の少なくとも一部は、研磨面222によって生成された軸方向対象面216の窪みから処理され得る。他の実施形態では、研磨面222は、軸方向対象面216に接触している間、静止しているか、または径方向に振動する場合がある。このように、軸方向対象面216が第1の回転軸A1周りで回転するときに、研磨面222と軸方向対象面216との間の多くの形態の相対運動が考えられる。さらに、研磨面222と軸方向対象面216との間の接触は、軸方向対象面216の比表面積を増加させることができ、それによって、部品210と軸方向対象面216に隣接して位置する任意の部品との間の接触の総量が増加する。
【0024】
研磨面222の材料組成は、軸方向対象面216を研磨する、例えば表面粗さを低減させ比表面積を増加させた対応する表面仕上げを有する1つまたは複数の材料から構成され得る。例えば、ターボ機械210(図2)および/またはフランジ214が、例えば鋼および/または超合金材料(例えば、超合金材料)などの金属物質で構成されている場合、研磨面222は金属物質でも構成され得る。一実施形態では、フランジ214の軸方向対象面216は、本明細書で説明されるように、Mo、Crおよび/またはVの全部または一部から構成され得る。これにより、軸方向対象面216と隣接する部品との間の金属凝集は、各部品の材料組成の類似性によって引き起こされ、ある物質の同様の原子が他の物質の原子に電気的に引き寄せられ得る。金属凝集の発生により、部品210の軸方向の相手面216とターボ機械組立体の隣接するロータ取り付け要素との間に引力が生じる。軸方向の相手面216と研磨面222との間の押圧力は、図3の例において、ベクトルFcおよびFc’で表される。その結果、軸方向の相手面216の研磨された表面は、隣接する部品と接触して配置されると、低減された表面粗さおよび増加した比表面積の両方のために増大した摩擦係数を呈する。とりわけ、これらの影響は、ターボ機械100(図1)の動作中に部品210と隣接する部品との間のトルク伝達を増加させ得る。
【0025】
処理された表面の平滑性および表面積を低減させるために、例えば研磨材料または粗い表面プロファイルを有する材料(例えば、軸方向対象面216に対して)を使用することに依存してもよい従来の処理技術とは対照的に、研磨面222は、軸方向対象面216の表面プロファイルに対してより大きい面積を有する平滑な表面を有することができる。即ち、軸方向対象面216と類似の粗い表面プロファイルを有する材料との間の実質的なピーク間または谷間の接触を想定するのではなく、研磨面222は、軸方向対象面216の粗さを意図的に低減させることによって軸方向対象面216を部分的に処理し、それによってその全比表面積を増加させることができる。例示的な実施形態では、研磨面222は、軸方向対象面216の初期表面粗さよりも低い表面粗さを有することができる。2つの研磨された実質的に平坦な表面間のこの接触は、動作中の軸方向対象面216と他の部品の隣接する軸方向表面との間の摩擦係数を増加させ得る。
【0026】
図2に戻ると、旋盤組立体202のツールアーム206は追加の部品を備えてタービン部品210の表面処理をさらに提供することができる。具体的には、ツールアーム206は、タービン部品210を旋盤チャック204から除去することなく、複数の工程でタービン部品210および/またはフランジ214を処理するように構成することができる。例えばツールアーム206は、部品210に対して研磨機220および/または旋盤組立体202に結合された他のツールの位置を調整するためのアクチュエータ224を内部に備えることができる。アクチュエータ224は、構造部品の一部として含まれるときに可変長寸法を提供するために現在知られているまたは将来に開発されるデバイスを提供することができる。例えば、アクチュエータ224は、例えば、リニアアクチュエータ、圧電アクチュエータ、空気圧アクチュエータ、サーボアクチュエータ、ナノアクチュエータ、油圧アクチュエータ、モータ駆動アクチュエータ、および/または調整可能な長さを提供するための任意の他の現在知られているまたは将来に開発される機構のうちの1つまたは複数として具体化され得る。
【0027】
研磨機220の位置および/またはツールアーム206の長さを変更することにより、部品210と研磨機220などのツールアーム206の機械加工要素との間の離間距離が調整され得る。例えばアクチュエータ224でツールアーム206を調節して、研磨機220は、部品210に接触するかまたは離れ得る。また、研磨機220は、処理中、部品210に対して研磨面222を押圧するための内部駆動システム225を内部に含むことができる。代替の実施形態では、内部駆動システム225がツールアーム206内に設けられて、例えば機械的結合、電気的結合、空気圧結合、油圧結合などを介して研磨機220に動作可能に接続され得る。内部駆動システム225の機能は、例えばアセンブリ駆動システム208によって提供され得ることを理解されたい。いずれにせよ、内部駆動システム225は、例えば、空気圧駆動システム、電気機械モータ、油圧駆動システムなどのうちの1つまたは複数として具体化することができる。
【0028】
旋盤組立体202は、また、例えばツールアーム206に結合されたトリミングツール226を含むことができる。トリミングツール226は、研磨機220と構造的に独立していることができ、トリミングツール226は、研磨機220と一緒におよび/または別々に用いられる。トリミングツール226は、旋盤組立体202、例えばタービン部品210の加工片の部分を取り除くために、例えば、鋸カッタ、スクリューカッタ、ウォーターカッタ、および/または任意の他の現在知られているまたは将来に開発されるタイプのカッティングビットの形態で設けられたトリミング要素228を含むことができる。使用される実施形態とは無関係に、トリミング要素228は、第1および/または第2の回転軸A1、A2とは異なる第3の回転軸A3(紙面に延在する)を中心に回転するように構成することもできる。例えば、トリミング要素228の第3の回転軸A3は、例えば、図2の斜視図において紙面の内外に延在することによって、第1および第2の回転軸A1、A2に対して実質的に垂直であり得る。それにより、トリミングツール226は、フランジ214の軸方向対象面216のような研磨機220で処理された部品を処理することなく、例えば、部品210から多量の材料を取り除くことによって、部品210の予備機械加工を行うことができる。
【0029】
研磨機220、トリミングツール226、および/または他の処理ツールを部品210と接触させるために、ツールアーム206はトラック230を含むことができる。より具体的には、研磨機220、トリミングツール226、および/または他のツールのベアリング232は、トラック230に機械的に結合されて、研磨機220、トリミングツール226、および/または他のツールは、ツールアーム206に亘って選択的に動いて、例えば部品210に向かうか離れる。トラック230と各ベアリング232との間の結合は、例えば回転ベアリング、摺動および嵌合係合、磁気的または磁気的/機械的係合などで提供され得る。手動で動作中に、使用者は、研磨機220、トリミングツール226、および/またはトラック230に結合された他のツールを、手動でまたはツールアーム206内および/またはそれの外に備える他のツールの補助で動かすことができる。例えば、ツールアーム206は、中に作動システム(例えば、電力、作動油などによって作動される)を含んで、トラック230に亘って研磨機220、トリミングツール226などを動かす。トラック230が省略された実施形態において、研磨機220および/またはトリミングツール226などのツールアーム206の部品は、ツールアーム206上の固定された位置に設けられ、その結果、アクチュエータ224は、研磨機220および/またはトリミングツール226を部品210の方に近づけるかまたは遠ざけて移動させることができる。また、トラック230による機械的係合およびアクチュエータ224からの移動は、所望の場合および/または適用可能な場合に、併用され得ることも理解される。さらに他の実施形態では、研磨機220の内部駆動システム225および/または他の駆動システムは、またツールアーム206に結合されたツールをトラック230に亘って移動させることができる。使用される実施形態にかかわらず、トラック230は、研磨機220、トリミングツール226および/またはトラック230に結合されたツールアーム206の他の部品が、部品210と接触して移動する、および/または接触しないで移動することを可能にし得る。
【0030】
図4を参照すると、表面処理ツール200の実施形態は、軸方向対象面216を処理するための他の器具を含み得る。例えば、ツールアーム206は、その上に艶出し面322を有する艶出しローラ320を含むことができる。艶出しローラ320は、艶出しローラ320をツールアーム206のトラック230に結合するためのベアリング232を任意に含み得る。艶出し面322は、艶出しローラ320の残りの部分に回転可能に取り付けられ得、その結果、艶出し面322が第1の回転軸A1に対して非平行方向に配向された第2の回転軸A2’を中心に線R2に沿って回転することができる。回転軸A1、A2’の間の角度方向の差は、例えば約5°と175°の間、または約185°と約355°の間の値を有する角度差θ2によって表すことができる。艶出し面322は、艶出しされる材料に残留圧縮応力を付与するために摺動接触によって表面を変形させることができる1つまたは複数の純金属および/または金属合金から構成され得る。例として、艶出し面322は、例えば、鋼および/または超合金材料で構成され得る。艶出しローラ320は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)またはバナジウム(V)のうちの少なくとも1つを含む。動作中、艶出しローラ320の内部駆動システム325および/または艶出しローラ320のツールアーム206に対する移動によって、艶出し面322がフランジ214の軸方向相手面216に接触して、その結果、回転艶出し面322が軸方向相手面216に対して回転する。内部駆動システム325は、内部駆動システム225(図2)に関して本明細書の他で論じられた1つまたは複数の例示的システムとして実施することができ、或いは、艶出しローラ320に動作可能に結合された組立体駆動システム208として実施することができる。
【0031】
艶出し面322の軸方向相手面216に対する回転によって、中に窪み330が生成され、それによって軸方向相手面216の残留圧縮応力が増加し得る。作動中、内部駆動システム325によって、艶出し面322が部品210に対して機械的に押圧されて、部品210と任意の軸方向の隣接する部品との間の金属凝集が増加し得る。従って、旋盤組立体202の一部としての艶出しローラ320を使用すれば、軸方向相手面216に残留圧縮応力が付与される。ツールアーム206と研磨ツール220との間に設けられた様々な結合、整列および係合機構等は、また、艶出しローラ320に適合されおよび/または使用され得ることがさらに理解される。
【0032】
図2および図4を併せて参照すると、本開示の実施形態は、また、例えば旋盤組立体202を研磨ツール220および/または艶出しローラ320と共に使用する部品210を処理するための方法を提供する。部品210を処理するための方法には、例えば、旋盤チャック204を同じ軸周りで回転させることによって、第1の回転軸A1周りで軸方向対象面216を回転させることが含まれる。本明細書の他の箇所で論じるように、軸方向対象面216は、ターボ機械100(図1)などのターボ機械システムの他の部品と接触および/または回転するように構成されたフランジ214の相手面とすることができる。本開示による方法では、研磨ツール220および/または艶出しローラ320は、また第2の回転軸A2、A2’周りでそれぞれ回転することができ、その結果、研磨ツール220および/または艶出しローラ320は、第1の回転軸A1と実質的に非平行である軸周りで回転する。軸方向対象面216が研磨ツール220で処理されるところで、研磨面222は、第1の回転軸A1に対して実質的に垂直な第2の回転軸A2を中心にして回転するように配向され得る。軸方向対象面216が艶出し面322を用いて処理される実施形態では、第2の回転軸A2’は、また第1の回転軸A1に対して実質的に垂直であり得るか、または例えば図4に示されるような特定の角度差θを有するように配向され得る。部品210を処理するために、回転研磨および/または艶出し面222、322は、回転軸方向対象面216と接触することができる。各表面と各表面の材料組成物との間の接触により、研磨ツール222および/または艶出しローラ320の適用によって、本明細書で論じるように、軸方向対象面216上に研磨され艶出しされた面が形成され得る。接触前の軸方向対象面216の初期表面粗さは、本明細書で論じるように、研磨された軸方向対象面216の表面粗さより大きくすることができる。例えば30秒間、10分間、2時間などの所定時間、回転面間の接触の後、例えば研磨および/または艶出し面222、322の使用により形成された低減された粗さのある、より大きい比表面積を有する結果として、例えば軸方向対象面216の摩擦係数が増加し得る。部品210の軸方向対象面216が艶出し面322と接触するところで、軸方向対象面216に残留圧縮応力が付与され得る。摩擦および残留圧縮応力(適用可能な場合)での増加は、少なくとも部分的に、軸方向対象面210と艶出し面322との間の誘導ヘルツ接触から発生する。ヘルツ接触は一般に、2つの丸い表面間の応力誘起形態の機械的接触を指し、2つの丸い表面はそれらを一緒に押圧する機械的負荷の結果として変形を受ける。この程度まで、艶出しローラ322と軸方向対象面216との間が接触することで、各部品間のヘルツの接触の摩擦および/または変形の影響が増加し得る。
【0033】
研磨ツール220および/または艶出しローラ320を用いた部品210の処理に加えて、本開示の実施形態は、部品210の表面処理のための追加のステップを含むことができる。例えば、本開示による方法は、さらなる方法ステップにおいて、軸方向対象面216を研磨および/または艶出しする前に、トリミングツール226で部品210の一部を除去することを含むことができる。トリミングツール226で実施される例示的なトリミング工程は、本明細書の他で論じられる。研磨機220および/または艶出しローラ320の前にトリミングツール226を使用することにより、単一の旋盤組立体202が、別個の機械加工組立体を使用することなく、部品210に多数の処理工程を実施することができる。研磨ツール220を用いて軸方向対象面216の摩擦係数を増加させおよび/または艶出しローラ320との摩擦および圧縮応力の両方を増加させた後、本開示による方法には、ターボ機械組立体(例えば、ターボ機械100(図1))において、部品210を配置することも含まれてもよい。具体的には、部品210は、旋盤チャック204から取り外すことができ、次いで、本明細書記載の研磨および/または艶出しの後に軸方向対象面216にさらなる修正、例えば追加の処理を実行することなく、ターボ機械100(図1)内に実装され得る。他の利点の中で、本開示による方法によって、部品210の湿式グリットブラストなどの他の技術の形態でのさらなる処理を必要とせずに、ツールアーム206を用いて旋盤組立体202を使用して部品210およびその一部を完全に処理する能力が提供される。
【0034】
図5を参照すると、本開示の実施形態は、本明細書で提供される本開示による表面処理ツール200および/または方法の使用に起因する物理的特性を有する部品210を含み得る。ターボ機械部品210は、例えば、ロータホイールまたはターボ機械100(図1)などのターボ機械組立体の他の軸方向に取り付けられた部分の形態の本体400を含むことができる。本体400は、本体400に結合された別個の部品であり得るか、または本体400と一体の部品210の一部を表すことができるフランジ214に軸方向に結合され得る。また、本体400の幾何学的プロファイルは、図5に示す実施形態よりもさらに複雑であり得ることが理解される。いずれにしても、開口218は、任意選択的に部品210の中心線軸、即ち第1の回転軸A1に沿って、フランジ214および本体400を介して軸方向に延在することができる。フランジ214は、本体400に対して軸方向対象面216を軸方向に隣接して配置され、軸方向対象面216を含むことができ、その結果、軸方向対象面216は、動作中に、軸方向対象面216に軸方向に隣接しておよび/または整列されて配置されたターボ機械システムの他の部品に軸方向に接触、係合し得る。軸方向対象面216の表面粗さは、本明細書の他で論じられた工程によって処理された後に低減され、さらに、軸方向対象面216は、処理前の比表面積よりも大きい軸方向比表面積を増加され得る。さらに、軸方向対象面216は、例えば、表面処理ツール200の実施形態からおよび/または本開示による方法中に形成された1つまたは複数の窪み330を含むことができる。それにより、各窪み330は、影響を受けた領域の艶出しパターンの形態で形成することができる。窪み330は、フランジ214の軸方向対象面216全体に亘って実質的に均一に分布し得るが、本体400の他の軸方向表面および/または部品210の残りの部分を含む他の表面には存在しない。本明細書の他で論じるように、軸方向対象面216は鋼、鋼合金、および/または他の金属物質で構成することができて、その結果、フランジ214は、ターボ機械100(図1)などのターボ機械システムにおけるロータ114(図1)に軸方向に結合されたタービンホイールのサブ部品として用いられるように動作可能である。
【0035】
窪み330の存在することで、軸方向対象面216の摩擦係数および/または残留圧縮応力の増加に加えて、部品210は、表面処理ツール200の実施形態および/または本開示による方法で以前に処理されたことが示され得る。さらに、本開示の実施形態による部品210は、他の技術的および商業的利点も提供することができる。例えば、ターボ機械100(図1)の一部として含まれる場合、部品210は、同じロータ114に取り付けられた軸方向に隣接する部品と同じ回転速度で回転することができる。適用可能である場合、軸方向対象面216の残留圧縮応力が存在すると、また部品210がターボ機械システムの他の部品と嵌合係合する能力が高まり得る。部品210の付与された残留圧縮応力により、また磨耗、機械的衝撃、および/または他の事象または物理的要因に対する部品210の抵抗も改善し得る。より一般的には、本開示の実施形態は、部品210の表面処理のための方法を提供し、例えば、ツールアーム206の実施形態およびそのサブ部品を有する単一の旋盤組立体202を用いて、実行時間を短縮すること、および複数の処理工程を実施する能力を提供し得る。
【0036】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示を限定するものではない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段文脈によって明白に示さない限り、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用されるとき、用語「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」は、記載された特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または部品の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、部品、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。
【0037】
この記述された説明は、例を用いて最良の形態を含む本発明を開示し、任意のデバイスまたはシステムを作成および使用し組み込まれた方法を実行することを含めて、当業者が本発明を実施することを可能にする。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が思いつく他の例を含むことができる。特許請求の範囲の文字通りの言葉と異ならない構造的要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字通りの言葉との実質的に異ならない差異を有する均等な構造的要素を含む場合、そのような他の例は、特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0038】
100 ターボ機械
102 圧縮機部分
104 タービン部分
106 ロータ
108 燃焼機組立体
110 燃焼機
112 圧縮機ロータホイール
114 タービンロータホイール
116 第1段圧縮機ロータブレード
118 エーロフォイル部分
120 タービンロータホイール
122 タービンホイール
124 タービンロータブレード
200 表面処理ツール
202 旋盤組立体
204 旋盤チャック
206 ツールアーム
208 駆動機構
210 部品
212 軸方向面
214 フランジ
216 軸方向対象面
218 開口
219 回転可能な継手
220 研磨ツール
222 研磨面
224 アクチュエータ
225、325 内部駆動システム
226 トリミングツール
228 要素
230 トラック
232 ベアリング
320 艶出しローラ
322 艶出し面
330 窪み
400 本体
図1
図2
図3
図4
図5