(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】容器、除湿装置
(51)【国際特許分類】
B65D 81/26 20060101AFI20231023BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20231023BHJP
B65D 33/01 20060101ALI20231023BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B65D81/26 C
B65D33/00 A
B65D33/01
B65D77/00 B
(21)【出願番号】P 2017251301
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000102544
【氏名又は名称】エステー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】小金井 隆志
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 優子
(72)【発明者】
【氏名】明神 弘恭
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】森本 哲也
【審判官】藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-206429(JP,A)
【文献】特開2003-340950(JP,A)
【文献】特開2001-238932(JP,A)
【文献】実開昭60-52256(JP,U)
【文献】特開平11-227839(JP,A)
【文献】特開2010-105312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 33/00
B65D 33/01
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
除湿剤を収容可能であって、かつ、載置部上に立位で載置可能な容器であって、
少なくとも一部が、水蒸気が通過可能であって、かつ、前記除湿剤が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する透湿部に形成されて、上下方向に延設された
後壁部
、及び前記後壁部に対向して上下方向に延設された前壁部を有する容器本体と、
前記透湿部に汚れが付着することを防止するため、前記容器本体の前記
後壁部に
隙間を有して固定されて前記透湿部の表面全面を覆う、水蒸気が通過可能なカバー部材と、
を具備した容器。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記水蒸気が通過可能な複数の孔を有する、
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記カバー部材は
、孔径が0.01mm以上であって10mm以下の孔を有する孔開きフィルムを含む、請求項1に記載の容器。
【請求項4】
前記カバー部材の表面に図柄を有する、請求項1に記載の容器。
【請求項5】
除湿剤と、
少なくとも一部が、水蒸気が通過可能であって、かつ、前記除湿剤が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する透湿部に形成されて、上下方向に延設された
後壁部
、及び前記後壁部に対向して上下方向に延設された前壁部を有し、載置部上に立位で載置可能な容器本体、並びに、
前記透湿部に汚れが付着することを防止するため、前記容器本体の前記
後壁部に
隙間を有して固定されて前記透湿部の表面全面を覆う、水蒸気が通過可能なカバー部材と、を具備した容器と、
を具備した除湿装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記水蒸気が通過可能な複数の孔を有する、
請求項5に記載の除湿装置。
【請求項7】
前記カバー部材は
、孔径が0.01mm以上であって10mm以下の孔を有する孔開きフィルムを含む、請求項5に記載の除湿装置。
【請求項8】
前記カバー部材の表面に図柄を有する、請求項5に記載の除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に除湿剤を収容する容器、及び除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、袋状の容器に潮解性の除湿剤を収容した除湿装置が知られている。この種の容器として、当該容器内に空間を構成する部分の一部を、微多孔膜を含むシート部材で形成した容器が知られている。微多孔膜は、水蒸気を通し、かつ、除湿剤が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する孔が複数形成された膜である(例えば、特許文献1参照)。微多孔膜を通過して容器内に侵入した空気中の水蒸気は、除湿剤と反応して水溶液となり、容器内に溜まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、内部の空間を構成する部分の一部が微多孔膜を含むシート部材から形成された容器を有する除湿装置には、以下の問題があった。すなわち、微多孔膜に汚れ等が付着すると、汚れ等の性質によっては、容器内の水溶液が微多孔膜を通過して外部に出るという問題がある。
【0005】
一例として、使用者が、ハンドクリーム等の付着した手で微多孔膜に触れると、ハンドクリーム等に含まれる界面活性成分が微多孔膜に付着する虞がある。界面活性成分が付着した所は表面張力が下がり、容器内の水溶液が微多孔膜を通過して外部に出てしまうため、除湿装置の周囲が汚れる。
【0006】
この為、本発明は、内部に貯留された水溶液が外部に出ることを防止可能な容器、及び除湿装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の容器は、除湿剤を収容可能であって、かつ、載置部上に立位で載置可能な容器であって、容器本体と、カバー部材と、を備える。前記容器本体は、少なくとも一部が、水蒸気が通過可能であって、かつ、前記除湿剤が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する透湿部に形成されて、上下方向に延設された後壁部、及び前記後壁部に対向して上下方向に延設された前壁部を有する。前記カバー部材は、前記透湿部に汚れが付着することを防止するため、前記容器本体の前記後壁部に隙間を有して固定されて前記透湿部の表面全面を覆う。前記カバー部材は、水蒸気が通過可能に形成される。
【0008】
本発明の除湿装置は、除湿剤と、容器と、を備える。前記容器は、容器本体と、カバー部材と、を備える。前記容器本体は、少なくとも一部が、水蒸気が通過可能であって、かつ、前記除湿剤が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する透湿部に形成されて、上下方向に延設された後壁部、及び前記後壁部に対向して上下方向に延設された前壁部を有し、載置部上に立位で載置可能である。前記カバー部材は、前記透湿部に汚れが付着することを防止するため、前記容器本体の前記後壁部に隙間を有して固定されて前記透湿部の表面全面を覆う。前記カバー部材は、水蒸気が通過可能に形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カバー部材によって、透湿部の表面に付着すると表面張力を低下させて漏水を起こさせる汚れ等が、透湿部に付着することを防止可能であるので、容器内の水溶液が外部にもれ出ることを防止できる。
【0010】
さらに、カバー部材の表面に印刷等によりインク等を用いて図柄を形成することが可能になるため、商品の意匠性や商品価値を上げる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る除湿装置を前方から見た状態を一部切り欠いて示す斜視図。
【
図2】本発明の実施形態に係る除湿装置を後方から見た状態を、一部切り欠いて示す斜視図。
【
図3】本発明の実施形態に係る除湿装置に用いられる容器の後壁部を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る除湿装置10を、
図1乃至
図3を用いて説明する。
図1は、除湿装置10を前方から見た状態を一部切り欠いて示す斜視図である。
図2は、除湿装置10を後方から見た状態を一部切り欠いて示す斜視図である。
図3は、除湿装置10に用いられる容器15の後壁部22を示す断面図である。
【0013】
図1及び
図2に示すように、除湿装置10は、容器15、及び、容器15内に収容された除湿剤40を有している。
容器15は、容器本体20、及び容器本体20に固定されたカバー部材30を有している。容器本体20は、内部に閉塞した空間Rを有している。さらに、容器本体20は、少なくとも一部が透湿部Xに形成されている。
【0014】
透湿部Xは、容器15の内部の空間Rを構成する壁部の一部である。透湿部Xは、後述する微多孔膜24を含むシート部材から形成された部分であり、水蒸気を通し、かつ、容器本体20内に貯留された水溶液を通さない性質を有する部分である。容器本体20内に貯留された水溶液は、本実施形態では、除湿剤40が水蒸気により潮解して生成された水溶液である。
【0015】
容器本体20は、一例として、複数のシート部材を、例えば熱による溶着によって固定することにより構成された所謂スタンディングパウチ容器である。容器本体20は、立位状態で机等の載置部1上に載置可能に構成されている。
【0016】
本実施形態では、容器本体20は、一例として、前壁部21、後壁部22、及び底壁部23を有している。容器本体20は、前壁部21、後壁部22、及び底壁部23により、内部に除湿剤40を収容可能な空間Rを形成する。さらに、容器本体20は、前壁部21、後壁部22、及び底壁部23から構成されることから、前壁部21の外側の面となる表面から構成される前面5、後壁部22の外側の面となる表面から構成される後面6、及び、底壁部23の外面となる表面から構成される下面7を有する。すなわち、容器本体20は、複数面として、前面5、後面6、及び下面7を有する。
【0017】
前壁部21は、透明であり、空気、及び、容器15内に貯留された水溶液を通さないシート部材から形成されている。前壁部21は、空気を通さないことから、水蒸気も通さない。前壁部21は、一例として、ポリアミドやポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、塩化ビニル等から形成されたプラスチックフィルムを有している。前壁部21は、一例として、長方形状に形成されている。
【0018】
図3に示すように、後壁部22は、水蒸気を通し、且つ、容器本体20内に貯留された水溶液の通過を規制する微多孔膜24を含むシート部材から形成されている。このシート部材は、具体的には、
図3に示すように、空気を通し、かつ、除湿剤40が水蒸気により潮解して生成された水溶液を通さない性質を有する微多孔膜24、及び、この微多孔膜24の両面のそれぞれに固定された不織布25を有するシート部材である。微多孔膜24の厚みは、一例で、20μm以上であって200μm以下である。不織布25は、目付けで10g以上であって100g以下である。
【0019】
微多孔膜24は、複数の孔を有する膜である。これらの孔のそれぞれは、水蒸気を通す大きさを有し、かつ、除湿剤40が水蒸気により潮解して生成された水溶液が通らない大きさを有する。本実施形態では一例として、微多孔膜24の水蒸気透過度は、2000g/m2・24h~8000g/m2・24hである。換言すると、1m2あたり、1日で2000g以上であって8000g以下の範囲の水蒸気を透過可能に形成されている。微多孔膜24の孔は、例えば0.1μm~10μmの径を有している。微多孔膜24は、この孔を複数有することにより、水蒸気を通過させ、水溶液の通過を規制する。不織布25は、水蒸気が通過可能に形成されている。不織布25の水蒸気透過度は特に限定されないが、8000g/m2・24h以上、好ましくは、10000g/m2・24h以上である。
【0020】
後壁部22は、一例として、前壁部21と同形状に形成されている。このように構成された後壁部22の一方の短手方向に沿う第1の後壁部用縁部22aは、前壁部21の一方の短手方向に沿う第1の前壁部用縁部21aに、一例として熱による溶着により、固定されている。
【0021】
後壁部22の長手方向に沿う第2の後壁部用縁部22bは、前壁部21の長手方向に沿う第2の前壁部用縁部21bに、一例として熱による溶着によって、固定されている。後壁部22の長手方向に沿う第3の後壁部用縁部22cは、前壁部21の長手方向に沿う第3の前壁部用縁部21cに、一例として熱による溶着によって、固定されている。
【0022】
このように構成された後壁部22は、溶着される溶着代以外の部分が、容器15の内部の空間Rと外部との間で空気が移動可能となる、透湿部Xとなる。すなわち、溶着される部分は孔がつぶれることによって空気が通過不能となり、溶着されない部分は孔を通して空気が移動可能となる。透湿部Xは、本発明で言う、透湿部の一例である。
【0023】
透湿部Xは、空気が通過可能であることから水蒸気が通過可能であり、かつ、除湿剤40が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する微多孔膜24を含むシート部材で形成された部分である。また、後壁部22のうち、溶着される周縁34は、内部の空間Rを構成する部分ではなく、内部の空間Rに空気を導く通路として機能する部分ではないので、透湿部Xではない。
【0024】
底壁部23は、容器本体20内に貯留された水溶液、及び、空気を通さない性質を有するシート部材から形成されている。底壁部23は、一例として、前壁部21を構成するシート部材と同じシート部材から形成されている。
【0025】
底壁部23は、一例として、長方形状に形成されている。底壁部23は、前壁部21の長手方向の他端部、及び後壁部22の長手方向の他端部に、例えば熱により、溶着されている。底壁部23は、前壁部21及び後壁部22を互いに引き離すことによって、
図1に示すように展開される。なお、底壁部23を折り畳むことによって、容器本体20を扁平にすることが可能となる。
【0026】
このように構成された容器本体20は、前面5、後面6、及び下面7のうちの一面となる後面6が、微多孔膜24及び不織布25を有するシート部材から形成される。さらに容器本体20は、内部に除湿剤40が収容されると、除湿剤40によって前壁部21及び後壁部22が互いに離れることにより、底壁部23が展開される。底壁部23が展開されると、前壁部21の底壁部23側の短手方向に沿う縁、及び、後壁部22の底壁部23側の短手方向に沿う縁が、環状に連続する。
【0027】
このように、前壁部21の短手方向に沿う縁、及び後壁部22の短手方向に沿う縁が環状に連続することにより、容器本体20は、これら縁を下端縁として、載置部1上に載置可能となる。
【0028】
カバー部材30は、後壁部22の全面、すなわち、透湿部X及び周縁34を覆う。カバー部材30は、水蒸気が通過可能であるとともに、後壁部22に、外部から異物が付着することを防止可能な材料から形成されている。カバー部材30は、本実施形態では、一例として、樹脂シート部材32、及び、樹脂シート部材32の一方の主面に固定された紙シート部材33を有している。
【0029】
樹脂シート部材32は、水及び空気を通さない性質を有する材料から形成されたシート部材に、水蒸気を含む空気が通過可能な孔を複数形成することにより、水蒸気を通すことが可能に構成されたシート部材である。樹脂シート部材32は、具体例として、上下左右に1mm以上であって2mm以下の間隔に連続して配置された孔32aを有するポリエチレンから形成されたプラスチックフィルムから形成されている。孔32aは、樹脂シート部材32を貫通している。孔32aの径は、0.01mm以上であって10mm以下の範囲である。このように、樹脂シート部材32は、本発明で言う、孔径0.01mm以上であって10mm以下の孔を有する孔開きフィルムの一例である。本実施形態では、孔32aの径は、具体例として、0.5mmである。
【0030】
カバー部材30を形成する際に、樹脂シート部材32の孔32aの径を、0.01mm以上であって10mm以下の範囲で水蒸気を含む空気がスムーズに透湿部Xを通過する径に設定することによって、除湿装置10を、当該除湿装置10が用いられる環境に適した除湿性能に設定することができる。
【0031】
例えば、除湿装置10が、湿度が比較的高い環境で用いられる場合では、孔32aの径を大きくする。孔32aの径を大きくすることによって、水蒸気が樹脂シート部材32を通過しやすくなるので、除湿装置10の周囲の湿度を速やかに低減できる。
【0032】
紙シート部材33は、一例として、耐油シートである。紙シート部材33は、水蒸気を含む空気が通過可能に形成されている。なお、紙シート部材33は、紙シート部材33を構成する繊維間の隙間を通して、空気が通過可能である。
【0033】
このように構成されたカバー部材30は、樹脂シート部材32が水蒸気を含む空気を通過可能であり、紙シート部材33も水蒸気を含む空気を通過可能であることから、除湿装置10の外部の水蒸気を含む空気を後壁部22側に通過可能である。
【0034】
カバー部材30は、樹脂シート部材32が後壁部22に対向する姿勢で、カバー部材30の周縁34の全周囲が後壁部22の周縁26に、例えば熱による溶着により、固定されている。カバー部材30と後壁部22との溶着部は、本実施形態では一例として、透湿部Xを囲む環状に形成される。周縁26は、上述の、第1の後壁部用縁部22a、第2の後壁部用縁部22b、第3の後壁部用縁部22cを含む。
【0035】
このように、カバー部材30は、後壁部22の透湿部X以外の部分に固定される。この為、カバー部材30が後壁部22との間の溶着部分によって、透湿部Xが狭くなることがない。カバー部材30は、例えば、後壁部22を前壁部21と底壁部23とに溶着するときに、後壁部22と一体に溶着してもよい。このようにすることによって、後壁部22の溶着部分とカバー部材30との溶着部分とが重なるので、カバー部材30は、後壁部22の透湿部Xの表面の前面を覆うことが可能となる。
【0036】
カバー部材30は、後壁部22に固定された状態で、後壁部22との間に隙間Sを有している。もしもカバー部材30に汚れ等が付着したとしても、この汚れは、隙間Sにより後壁部22に付着することをより確実に防止できる。また、カバー部材30の表面35に印刷などによりインク等を用いて図柄36を描いた場合に、隙間Sにより後壁部22にインク等が付着することをより確実に防止できる。したがって、隙間Sにより容器15内の水溶液が外部に漏れ出ることを、より確実に防止することができる。なお、図柄36は、例えば、文字、絵、数字、及び記号の少なくとも1つである。すなわち、図柄36は、ユーザにより視認可能なものであればよい。また、図柄36は、印刷により形成されることに限定されない。他の例では、図柄36は、手作業により描かれてもよい。
【0037】
本実施形態では、カバー部材30の、後壁部22に固定される前の状態の幅は、後壁部22の幅よりも短い。なお、ここで言う幅は、除湿装置10を載置部1上に載置したときの上下方向に直交する方向である。そして、カバー部材30は、その周縁34を後壁部22の周縁26に合わせた状態で、後壁部22に固定される。
【0038】
このように、カバー部材30の幅が、後壁部22の幅よりも短く、さらに、カバー部材30が、その周縁34を後壁部22の周縁26に合わせた状態でカバー部材30が後壁部22に固定されることにより、カバー部材30に対して後壁部22がたわむ。このたわみにより、カバー部材30と後壁部22との間に隙間Sが設けられる。
【0039】
なお、カバー部材30の幅が、後壁部22の幅よりも長くてもよい。カバー部材30の幅が後壁部22の幅よりも長い場合であっても、カバー部材30の周縁34を後壁部22の周縁26に合わせた状態でカバー部材30を後壁部22に固定することにより、カバー部材30がたわんでカバー部材30と後壁部22との間に隙間が設けられる。
【0040】
または、カバー部材30の後壁部22に固定される前の形状は、後壁部22と同じであってもよい。この場合であっても、カバー部材30の、後壁部22に固定される周縁34に囲まれる範囲が後壁部22に密着することがないので、隙間Sが設けられる。
【0041】
除湿剤40は、一例として、塩化マグネシウムや硫酸マンガン、クエン酸、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、十酸化四リン、リン酸などの潮解性の除湿剤であり、具体的には、塩化カルシウムである。
【0042】
なお、除湿剤40である潮解性除湿薬剤の他に、必要に応じて従来から除湿装置で使用されている他の添加剤を混合することも可能である。他の添加剤としては、例えば、香料、消臭剤、防カビ剤、抗菌剤、増粘剤、及び色素の少なくとも1つである。
【0043】
次に、除湿装置10の動作を説明する。使用者は、除湿装置10を把持すると、使用者の手は、前壁部21、及びカバー部材30に触れることとなる。このとき、カバー部材30により使用者の手に付着したハンドクリーム等の界面活性成分を含む異物が、後壁部22に付着することが防止される。
【0044】
除湿装置10の外部の水蒸気の一部は、カバー部材30を通過して、後壁部22とカバー部材30との間の隙間Sに侵入する。後壁部22とカバー部材30との間の隙間Sに侵入した水蒸気は、後壁部22を通過して容器本体20内(空間R内)に侵入する。容器本体20内に侵入した水蒸気は、除湿剤40を潮解することによって水溶液となり、容器本体20内に溜まる。
【0045】
本実施形態では、このように構成された除湿装置10は、カバー部材30によって、後壁部22の表面の全面が覆われる。この為、使用者が、ハンドクリーム等の界面活性成分を含む異物が付着した手で除湿装置10に触れても、界面活性成分等の異物が後壁部22に付着することを防止できる。この為、界面活性成分によって表面張力が下がり、後壁部22を通して容器本体20内の水溶液が外部に出ることが防止される。
【0046】
また、カバー部材30は、樹脂シート部材32を含むシート部材で形成され、孔32aを通して水蒸気を容器本体20側に通過させる。この為、孔32aの大きさを変更することによって除湿装置10の除湿性能を変更できる。この為、孔32aの径を、適切な径に設定することによって、除湿装置10を、当該除湿装置10が使用される環境に適した性能に設定することが可能となる。
【0047】
また、樹脂シート部材32の孔32aの径を、0.01mm以上であって10mm以下にすることによって、容器本体20の内部の空間Rに貯留された水溶液が、万が一、後壁部22を通ってカバー部材30側に漏れ出ても、孔32aが小さいので、漏れ出た水溶液がカバー部材30を通って外部に出ることを防止できる。
【0048】
さらに、カバー部材30と後壁部22との溶着箇所が透湿部Xを囲む環状に形成されるので、万が一、後壁部22を通ってカバー部材30側に水溶液が漏れ出ても、カバー部材30の縁は、溶着によりシールされるので、当該漏れ出た水溶液が容器15から外部に漏れ出ることが防止される。
【0049】
なお、本実施形態では、容器本体20の複数面のうちの一面の一例である後面6が、微多孔膜24を含むシート部材で形成されることによって、後面6の一部すなわち溶着される周縁34以外の部分が透湿部Xに形成された。しかしながら、容器本体20の後面以外の面が透湿部Xに形成されてもよい。この一例としては、前壁部21が、水蒸気を通し、さらに、容器15内に貯留された水溶液の通過を規制する微多孔膜24を含むシート部材で形成されてもよい。このように、前壁部21が微多孔膜24を含むシート部材で形成された場合は、前面5となる前壁部21のうちの透湿部Xが少なくともカバー部材30で覆われる。
【0050】
また、本実施形態では、カバー部材30は、後面6の全体を覆うことによって、後壁部22のうち空間Rを構成する透湿部Xを覆っている。しかしながら、本実施形態では、容器本体20が、前壁部21、後壁部22、及び底壁部23を溶着することによって構成されていることから、溶着代となる周縁34は空間Rを構成する部分とはなっていない。このように、容器本体の一面が微多孔膜24を含むシート部材から形成された場合であっても、空間Rを構成しない部分がある場合には、カバー部材30は、この、空間Rを構成しない部分には設けられなくてもよい。
【0051】
すなわち、後壁部22が微多孔膜24を含むシート部材で形成されるが、後壁部22の周縁の熱により前壁部21等に溶着される周縁34は、内部の空間R内と容器15の外部とを連通する部分とはならず、本発明で言う透湿部Xとはならない。このように、後壁部22のうち、透湿部X以外の部分となる周縁34(溶着代)は、カバー部材30に覆われなくてもよい。
【0052】
さらに、本実施形態では、後壁部22が微多孔膜24を含むシート部材で形成されたが、他の例では、後壁部22の一部が微多孔膜24を含むシート部材で形成されてもよい。この場合でも、カバー部材30は、微多孔膜24で形成された範囲のうち、少なくとも透湿部Xを覆う。このように、面の一部が微多孔膜24を含むシート部材で形成された場合の、シート部材のうち透湿部X以外の部分は、例えば、微多孔膜24を含むシート部材を、面の他の部分に固定するときの溶着代などの固定部分である。この固定部分は、面の微多孔膜24を含むシート部材以外で形成された部分と重なったり、または、溶着されるので、内部の空間Rと連通する部分とはならないので、透湿部Xではない。
【0053】
本実施形態では、透湿部Xを形成する、微多孔膜24を含むシート部材は、微多孔膜24、及び微多孔膜24の両面のそれぞれに固定された不織布25を有している。しかしながら、微多孔膜24を含むシート部材は、他の例では、不織布25を片面だけ有してもよいし、不織布25を有していなくてもよい。このように、透湿部Xを構成するシート部材は、少なくとも微多孔膜24を含んでいればよい。
【0054】
本実施形態では、カバー部材30は、本発明で言う孔開きフィルムの一例である、樹脂シート部材32と、紙シート部材33を有している。しかしながら、カバー部材30は、他の例では、紙シート部材33を有していなくてもよい。このように、カバー部材30は、孔開きフィルムを含んでいればよい。
【0055】
また、本実施形態では、カバー部材30は、一例として、後壁部22と、前壁部21及び底壁部23との溶接箇所に、溶接された。具体例としては、カバー部材30は、後壁部22と一体に、前壁部21及び底壁部23に溶接された、この為、カバー部材30は、後壁部22に固定されたときに、透湿部Xを狭めることがない。
【0056】
しかしながら、他の例としては、カバー部材30は、後壁部22と前壁部21との溶接箇所よりも内側、及び、後壁部22と底壁部23の溶接箇所よりも内側に、溶接されてもよい。この場合では、後壁部22とカバー部材30との溶接箇所の面積分、透湿部Xは狭くなるが、カバー部材30は、透湿部Xの表面の前面を覆うことが可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、カバー部材30は、一例として、溶着により後壁部22に固定された。しかしながら、カバー部材30を後壁部22に固定する手段は、溶着以外であってもよい。カバー部材30は、例えば、接着剤によって固定されてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、容器本体20の一部が透湿部Xに形成された。他の例では、容器本体20は、全体が透湿部Xに形成されてもよい。または、容器本体20は、内部の空間Rを構成する部分の全体のみが、透湿部Xに形成されてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、透湿部を、微多孔膜24を含むシート部材から形成した。他の例では、透湿部は、水蒸気が通過可能であって、かつ、除湿剤40が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する不織布から形成されてもよい。具体例として、極細長繊維を重ねて熱と圧力で結合させた高密度不織布であってもよい。この場合、例えば後壁部22をこの高密度不織布から形成する。このように、水蒸気が通過可能であって、かつ、除湿剤40が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する高密度不織布から透湿部を形成しても、本実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
除湿剤を収容可能な容器であって、
少なくとも一部が、水蒸気が通過可能であって、かつ、前記除湿剤が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する透湿部に形成された容器本体と、
前記容器本体に固定されて前記透湿部の表面全面を覆う、水蒸気が通過可能なカバー部材と、
を具備した容器。
[2]
前記カバー部材は、前記水蒸気が通過可能な複数の孔を有する、
[1]に記載の容器。
[3]
カバー部材は孔径が0.01mm以上であって10mm以下の孔を有する孔開きフィルムを含む、
[1]に記載の容器。
[4]
前記カバー部材の表面に図柄を有する、
[1]に記載の容器。
[5]
除湿剤と、
少なくとも一部が、水蒸気が通過可能であって、かつ、前記除湿剤が水蒸気により潮解して生成された水溶液の通過を規制する透湿部に形成された容器本体、並びに、前記容器本体に固定されて前記透湿部の表面全面を覆う、水蒸気が通過可能なカバー部材と、を具備した容器と、
を具備した除湿装置。
[6]
前記カバー部材は、前記水蒸気が通過可能な複数の孔を有する、
[5]に記載の除湿装置。
[7]
カバー部材は孔径が0.01mm以上であって10mm以下の孔を有する孔開きフィルムを含む、
[5]に記載の除湿装置。
[8]
前記カバー部材の表面に図柄を有する、
[5]に記載の除湿装置。
【符号の説明】
【0061】
5…前面、6…後面、7…下面、10…除湿装置、15…容器、20…容器本体、21…前壁部、22…後壁部、23…底壁部、24…微多孔膜、25…不織布、30…カバー部材、40…除湿剤、R…空間、S…隙間、X…透湿部。