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特許7370692包装体、包装袋およびそれらのマーキング方法
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  • 特許-包装体、包装袋およびそれらのマーキング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】包装体、包装袋およびそれらのマーキング方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20231023BHJP
   B41M 5/26 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B65D33/00 A
B41M5/26
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018111485
(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2019214392
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110930
【氏名又は名称】フジモリプラケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】出口 佳苗
(72)【発明者】
【氏名】芝田 和正
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 哲
(72)【発明者】
【氏名】松冨 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】榊原 慎矢
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517335(JP,A)
【文献】特開2009-137261(JP,A)
【文献】特開2010-047681(JP,A)
【文献】特開2017-095156(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0269740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/00
B41M 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋であって、
前記合成樹脂フィルムが、
二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを、アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されており、さらに、そのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる金属蒸着層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、ポリエチレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、あるいは、
二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらに、そのナイロンフィルム上に、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、もしくは、
二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、、エステル系の接着剤を介在させて、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、
前記インク層が、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、
紫外線レーザーによるマーキング処理が施されており、かつ、
そのマーキング処理が、前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させたものであることを特徴とするガスバリア性を有する包装袋。
【請求項2】
各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋のマーキング方法であって、
前記合成樹脂フィルムが、
二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを、アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されており、さらに、そのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる金属蒸着層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、ポリエチレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、あるいは、
二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらに、そのナイロンフィルム上に、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、もしくは、
二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、、エステル系の接着剤を介在させて、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、
前記インク層が、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、
その合成樹脂フィルムの前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させることによってマーキングを行うことを特徴とするガスバリア性を有する包装袋のマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、薬品、化粧品、洗剤等の各種の物質の包装用途に用いられる合成樹脂フィルムからなる包装袋およびそれらのマーキング方法(文字・記号や模様等の印字方法)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、薬品、化粧品、洗剤等の各種の液体や粉体等の包装用袋として、合成樹脂製のフィルム(あるいはシート)によって形成されたものが広く使用されている。また、医薬品、飲料や食品等の包装袋の表面には、商品名、品質表示、注意書き、バーコード等の同一商品に共通する情報とは別に、製造所、製造年月日、賞味期限、製造責任者等の固有の情報が記載される。それらの固有情報は、内容物が収納・密封された時点で、包装袋の外面の所定の枠内に記入されることが多く、固有情報の記載方法として、包装袋の構成材料である合成樹脂フィルムの表面に、YAGレーザー(イットリウム、アルミニウム、ガーネットを用いた固体レーザー)、YVO(イットリウム・バナデートを用いた固体レーザー)やCOレーザー等の出力の高いレーザー光を照射することにより合成樹脂フィルム中のインク層の発色物質を変色させたり消失させたりすることによって、白抜き文字やデザインを印字させる方法が知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-227137号公報
【文献】特開2007-55110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1,2の如きマーキング方法は、YAGレーザー、YVOレーザーやCOレーザーの出力調整が難しく、マーキング外観(印字外観)が不良になり易い。また、インク層としてYAGレーザー、YVOレーザーやCOレーザーによって改質され得る特殊なインクを利用しなければならないため、合成樹脂フィルムのコストが高くなってしまう、という不具合もある。加えて、合成樹脂フィルムがガスバリア層(金属箔あるいは金属蒸着フィルムからなる層)を有している場合には、YAGレーザー、YVOレーザーやCOレーザーの照射によって金属蒸着層が損傷して、合成樹脂フィルムの保存特性が損なわれる、という不具合もある。それゆえ、特許文献1,2の如きYAGレーザー、YVOレーザーやCOレーザーを利用した従来のマーキング方法は、ガスバリア層を有する包装袋に印字する場合には、胴材の中央(周縁以外の部分)には印字することができず、周縁のヒートシール部分にしか印字することができなかった。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の包装袋等へのマーキング方法が有する問題点を解消し、レーザーによるマーキング部分に損傷がなく、マーキング部分が美麗である上、レーザーマーキング用に高価なインクを用いる必要がなく安価に製造することが可能な各種の物品の包装・収納用の包装体(包装フィルム)、包装袋およびそれらのマーキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋であって、前記合成樹脂フィルムが、二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを、アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されており、さらに、そのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる金属蒸着層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、ポリエチレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、あるいは、二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらに、そのナイロンフィルム上に、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、もしくは、二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、、エステル系の接着剤を介在させて、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、前記インク層が、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、紫外線レーザーによるマーキング処理(すなわち、印字処理あるいは印刷処理)が施されており、かつ、そのマーキング処理が、前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させたもの(すなわち、溶融、昇華、蒸発、発色等させたもの)であることを特徴とするガスバリア性を有する包装袋である。
【0010】
請求項2に記載された発明は、各種の物品を包装・収納するための合成樹脂フィルムからなる包装袋のマーキング方法であって、前記合成樹脂フィルムが、二軸延伸ナイロンフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを、アルミニウム蒸着層が外側になるように積層されており、さらに、そのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる金属蒸着層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、ポリエチレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、あるいは、二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、さらに、そのナイロンフィルム上に、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルム、もしくは、二軸延伸PETフィルムからなる基材層の上に、インク層を積層し、そのインク層の上に、エステル系の接着剤を介在させて、アルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔層の上に、、エステル系の接着剤を介在させて、無延伸ポリプロピレンフィルムからなる熱接着層を積層してなる積層フィルムであり、前記インク層が、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂からなるバインダー中に、二酸化チタンを顔料として添加したものであり、その合成樹脂フィルムの前記基材層の外側から紫外線レーザーを照射することによって前記インク層を変化させることによってマーキングを行うことを特徴とするガスバリア性を有する包装袋のマーキング方法である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の包装袋は、紫外線レーザーを用いて、基材層にダメージを与えることなく、内側のインク層を変化させることによってマーキング(印字)されているため、レーザーによるマーキング部分(印字部分)に損傷がなく(基材の欠損や金属蒸着層の抜け等がなく)、マーキング部分が美麗である。また、請求項1の包装袋は、レーザーによるマーキングのために高価なインクを用いる必要がないので、安価に製造することができる。
【0012】
また、請求項1の包装袋は、インク層の外側が基材層によって覆われているため、レーザーによるマーキング部分が消失しにくい(擦過等による剥がれ等が起こりにくい)。また、紫外線レーザーの照射強度を調整することによって、インク層の外側の基材層を膨出させることが可能であるので、デザイン性のある特殊なマーキングや点字用の加工を施したものとすることもできる。
【0013】
さらに、請求項1の包装袋によれば、各素材による吸収率が非常に高い紫外線レーザーによってマーキング時に熱ストレスをかけないため、マーキング外観をきわめて良好なものとすることができる。
【0014】
加えて、請求項1の包装体は、紫外線レーザーを用いて、基材層にダメージを与えることなく、内側のインク層を変化させることによってマーキング(印字)されているため、レーザーによるマーキング部分(印字部分)に損傷がなく(基材の欠損や金属蒸着層の抜け等がなく)、マーキング部分が美麗である。また、請求項4の包装体は、レーザーによるマーキングのために高価なインクを用いる必要がないので、安価に製造することができる。
【0015】
請求項2の包装体あるいは包装袋のマーキング方法によれば、各素材による吸収率が非常に高い紫外線レーザーによってマーキング時に熱ストレスをかけないため、包装体あるいは包装袋のマーキング外観をきわめて良好なものとすることができる。また、基材の欠損や金属蒸着層の抜けを生じさせないので、包装袋の周縁のヒートシール部分のみならず、胴材の中央(周縁以外の部分)にも印字することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】包装袋のマーキング部分の鉛直断面を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る包装体および包装袋は、各種の物品を収納するための合成樹脂フィルムによって形成されており、紫外線レーザーによるマーキング処理(印字処理あるいは印刷処理)が施されていることを特徴とするものである。ここでいう合成樹脂フィルムとは、食品、薬品、化粧品、洗剤等の包装材料として用いられる合成樹脂フィルムを積層した積層フィルム、あるいは合成樹脂フィルムと紙やアルミ箔等とを積層した積層フィルム、共押出フィルム等のことである。また、合成樹脂フィルムとして、少なくとも片面(内面)が熱接着性を有しているものを用いると、包装袋の製造が容易となるので好ましい。
【0018】
そのような合成樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、6,6-ナイロン等のナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等のベースフィルム(基材層)に、熱接着性フィルム(熱接着層)を積層した積層フィルム(ラミネートフィルム)等を好適に用いることができる。
【0019】
熱接着性フィルム(熱接着層)としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、およびそれらの金属架橋物等の樹脂、エチレン-α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルム(あるいはシート)や塗布膜等を好適に用いることができる。
【0020】
加えて、合成樹脂フィルムは、単純に基材層と熱接着層とを積層した積層フィルム(ラミネートフィルム)に限定されず、そのような積層フィルム(ラミネートフィルム)の中間にポリエステルフィルムやナイロンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等を挟み込んだ3層以上の積層フィルム(ラミネートフィルム)も好適に用いることができる。
【0021】
また、合成樹脂フィルム(基材層、熱接着層)には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等の特性を改良、改質する目的で、必要に応じて、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤、改質用樹脂等の配合剤や添加剤等を添加することができる。
【0022】
さらに、合成樹脂フィルム(基材層、熱接着層)は、未延伸のものを用いることも可能であるし、一軸延伸あるいは二軸延伸したものを用いることも可能である。また、基材層と熱接着層との界面、基材層や熱接着層とその他の層(たとえば、中間層)との界面には、保存特性向上等の必要に応じて、金属箔層や金属蒸着層を設けることも可能である。加えて、合成樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、内容物に対する保存性能や耐破袋強度等の面から、40~250μmであると好ましく、110~180μmであるとより好ましい。
【0023】
一方、本発明に係る包装体および包装袋は、合成樹脂フィルムの表面あるいは内部にインク層が設けられており、紫外線レーザーを照射して当該インキ層を変化させる(溶融、昇華、蒸発、発色等させる)ことによってマーキング処理が施されていることが必要である。インク層は、合成樹脂フィルムの表面に設けられていても良いが、基材層と熱接着層との間にインク層を設けた積層フィルムを用いて、基材層の外側から紫外線レーザーを照射してインキ層を変化させる(消失あるいは発色させる)ことによってマーキング処理を施すと、マーキング部分がより明瞭で美麗なものとなり、マーキング部分が取れにくいものとなるので好ましい。図1は、そのようにして得られた包装体あるいは包装袋のマーキング部分の断面を模式的に示したものであり、紫外線レーザーの照射によって、基材層3と熱接着層1との間に設けられたインク層2が変化してマーキング部分αが現れた状態になっている。
【0024】
また、インク層形成用のインクとしては、通常のインクビヒクル(インキビヒクル)の1種ないし2種以上を主成分とし、必要に応じて可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を添加するとともに、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等を加えて十分に混練して得た組成物(すなわち、バインダーである樹脂の水溶液、水分散液、あるいはバインダーである樹脂を有機溶媒に溶解させた溶液中に各種の顔料および/またはその他の添加剤を添加したもの)を好適に用いることができる。インクビヒクルとしては、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、硝化綿、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム等を単独であるいは2種以上混合して用いることができる。また、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂をバインダーとして用いると、紫外線レーザーを照射したときにマーキング部分の濃度が高くなり、視認性が良好になるので好ましい。加えて、顔料としては、無機顔料、多環顔料やアゾ顔料等の有機顔料、レーキ顔料、蛍光顔料等の内の一種、あるいは2種以上の混合物を好適に用いることができるが、二酸化チタンやカーボンブラック等の無機顔料を用いると、紫外線レーザーを照射したときに各素材(合成樹脂や顔料等)による紫外線レーザーの吸収率をより高めて、熱ストレスを効率的に低減させることができるため、視認性が良好になるので好ましい。
【0025】
加えて、上記したインク層を基材層あるいは熱接着層上に設ける方法としては、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他の塗工・塗装方式等を好適に用いることができる。
【0026】
一方、紫外線レーザーによるマーキング処理(印字処理あるいは印刷処理)とは、300nm以上380nm以下の波長を有する紫外線を照射することによって、基材の表面(あるいは内層に)に、製造者、製造年月日、製品の原料、性状、内容量等の印字あるいは印刷を施す処理のことである。すなわち、そのような特定の波長の紫外線レーザーを上記したインク層に照射することによって、インク層の内の紫外線レーザーの照射部分が紫外線レーザーのエネルギーを吸収して変化(溶融、昇華、蒸発、発色等)し、そのインク層の変化部分がマーキングとして認識可能になる。加えて、マーキング処理する紫外線レーザー波長を350nm以上360nm以下に調整すると、マーキング外観がきわめて良好なものとなるので好ましく、355nmに調整するとより好ましい。加えて、紫外線レーザーの照射出力も特に限定されないが、40kHz~400kHzのパルス波を0.5W~50Wの出力で1,000mm/秒~15,000mm/秒のスキャンスピードで照射すると、包装体あるいは包装袋のマーキング外観がきわめて良好なものとなるので好ましい。
【0027】
また、本発明に係る包装袋の形状は、特に限定されず、二方袋、三方袋、ピロー袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等の各種の形状とすることができる。さらに、包装袋を製造する際に、合成樹脂フィルムとして熱接着層を有する2枚の積層フィルムを用い、それらの2枚の積層フィルムを、熱接着層同士が接合するように重ね合わせた後に、左右および/または底部等をヒートシールする製袋方法を用いると、製造が容易なものとなるので好ましい。加えて、本発明に係る包装袋には、開封を容易にするためのノッチや切り込み等を設けることも可能である。
【実施例
【0028】
以下、本発明に係る包装体あるいは包装袋について実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。また、実施例、比較例における物性、特性の評価方法は以下の通りである。
【0029】
<レーザーマーキング部分の視認性>
実施例・比較例で得られた包装体のマーキング部分(印字部分)の視認性を、目視によって下記の4段階で官能評価した。
◎:印字濃度が非常に高く、視認性がきわめて良好である。
○:印字濃度が高く、視認性が良好である。
△:印字濃度が若干低い、あるいは、視認性が若干不良である。
×:印字濃度が低い、あるいは、視認性が不良である。
【0030】
<レーザーマーキング部分の表面状態>
実施例・比較例で得られた包装体のレーザーマーキング部分(印字部分)の表面状態(外観)を、ルーペ(拡大率10倍)を用いて観察し、その状態を下記の3段階で官能評価した。
○:レーザー照射面にキズがまったくない。
△:レーザー照射面にキズがわずかに見られる。
×:レーザー照射面にキズが多く見られる。
【0031】
<レーザーマーキング後の金属部分の状態>
実施例・比較例で得られた包装体のレーザーマーキング後のアルミニウム層あるいはアルミニウム蒸着層の損傷状態を、ルーペ(拡大率10倍)を用いて観察し、その状態を下記の3段階で官能評価した。
○:アルミ層・アルミ蒸着層に抜け(欠損部分)がまったくない。
△:アルミ層・アルミ蒸着層に抜けがわずかに見られる。
×:アルミ層・アルミ蒸着層に抜けが多く見られる。
【0032】
<食品の長期保存性>
実施例・比較例で得られた包装袋によって食品(マヨネーズ)を包装して長期間(約6ヶ月間)に亘って保存した後の内容物の状態の変化によって、下記の2段階で官能評価した。
○:内容物の状態に変化が見られなかった。
△:内容物の色、味の変化、腐敗が見られた。
【0033】
[実施例1]
<積層フィルムの作製>
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムの上に、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂とを有機溶媒(酢酸エチル・イソプロピルアルコール・酢酸プロピル・n-プロピルアルコール)に溶解させてなるバインダー中に酸化チタンを顔料として添加したインク(白色)を、通常のグラビア印刷によって塗布して乾燥させた後に、そのインク塗布面の上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ50μmのポリエチレンフィルムを積層することによって、下記の層構成を有する積層フィルムを作製した。
・基材層:厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム
・インク層:バインダー樹脂(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂)中に顔料(酸化チタン)を添加したインクからなる厚さ約2.0μmの層
・熱接着層:厚さ50μmのポリエチレンフィルム
【0034】
<包装体(包装フィルム)の作製>
上記の如く作製された積層フィルムに、紫外線レーザー照射器(キーエンス社製 UVレーザーマーカー MD-Uシリーズ)を利用して、積層フィルムの基材層側から40Hzのパルス波状の紫外線レーザー光線を2.0Wの出力で10,000mm/秒のスキャンスピードで照射することによりフォントサイズ10.5にて製造年月日(実験の年月日)を印字することによって実施例1の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装体(包装フィルム)を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1に示す。
【0035】
<包装袋の作製>
さらに、上記の如く作製した包装フィルムを、熱接着層同士が内側になるように長手方向に沿って二つ折りして、その二つ折りした包装フィルムに、長手方向に沿って所定の間隔で、長手方向に対して直交するように所定の幅(前後幅)でヒートシールするとともに、そのヒートシール部分の中間(前後の中間)を裁断することによって三方袋を連続的に作製した。そして、得られた包装袋を食品(マヨネーズ)の包装に用いたところ、何らの問題を生じさせることなく長期間(約6ヶ月間)の保存が可能であった。
【0036】
[実施例2]
積層フィルムの作製時における基材層上へ塗布するインクを下記のレーザーマーキング専用インクに変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、実施例2の包装体(包装フィルム)および包装袋を作製した。そして、そのマーキング処理が施された包装体を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1に示す。
・レーザーマーキング専用インク:レーザー発色剤を含有したインク(東洋インキ株式会社製 Elbima Z117)
また、得られた包装袋を用いて、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ良好な長期保存性を示した。
【0037】
[実施例3]
<積層フィルムの作製>
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムの上に、実施例1と同様なインク(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂とを有機溶媒(酢酸エチル・イソプロピルアルコール・酢酸プロピル・n‐プロピルアルコール)に溶解させてなるバインダー中に酸化チタンを顔料として添加したもの)を、通常のグラビア印刷によって塗布して乾燥させた後に、そのインク塗布面の上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ12μmの表面にアルミニウムを蒸着したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(アルミ蒸着層の厚さ=約600Å)を、アルミニウム蒸着層が外側になるように積層し、さらに、アルミニウム蒸着PETフィルム上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ45μmのポリエチレンフィルムを積層することによって、下記の層構成を有する積層フィルムを作製した。
・基材層:厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム
・インク層:バインダー樹脂(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂)中に顔料(酸化チタン)を添加したインクからなる厚さ約2.0μmの層
・中間層( ガスバリア層):厚さ12μmのアルミ蒸着PETフィルム
・熱接着層:厚さ45μmのポリエチレンフィルム
【0038】
<包装フィルム・包装袋の作製>
上記の如く作製した積層フィルムに、実施例1と同様な方法で製造年月日を印字することによって実施例3の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。また、実施例3の包装フィルムを用いて、実施例1と同様にして包装袋を作製し、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ良好な長期保存性を示した。
【0039】
[実施例4]
<積層フィルムの作製>
厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムの上に、実施例1 と同様なインク(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂とを有機溶媒(酢酸プロピル・メチルエチルケトン・イソプロピルアルコール)に溶解させてなるバインダー中に酸化チタンを顔料として添加したもの)を、通常のグラビア印刷によって塗布して乾燥させた後に、そのインク塗布面の上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ15μmのEVOH(エチレンービニルアルコール共重合体)フィルムを積層し、さらに、そのEVOHフィルム上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、なおかつ、そのナイロンフィルム上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを積層することによって、下記の層構成を有する積層フィルムを作製した。
・基材層:厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルム
・インク層:バインダー樹脂(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂)中に顔料(酸化チタン)を添加したインクからなる厚さ約2.0μm の層
・第一中間層:厚さ12μmのEVOHフィルム
・第二中間層:厚さ15μmのナイロンフィルム
・熱接着層:厚さ100μmのポリエチレンフィルム
【0040】
<包装フィルム・包装袋の作製>
上記の如く作製した積層フィルムに、実施例1と同様な方法で製造年月日を印字することによって実施例4の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。また、実施例4の包装フィルムを用いて、実施例1と同様にして包装袋を作製し、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ良好な長期保存性を示した。
【0041】
[実施例5]
<積層フィルムの作製>
厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの上に、実施例1と同様なインク(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂とを有機溶媒(酢酸プロピル・酢酸エチル・イソプロピルアルコール・1プロパノール)に溶解させてなるバインダー中に酸化チタンを顔料として添加したもの)を、通常のグラビア印刷によって塗布して乾燥させた後に、そのインク塗布面の上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ7μmのアルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ15μmの二軸延伸ナイロンフィルムを積層し、なおかつ、そのナイロンフィルム上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ60μmのCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルムを積層することによって、下記の層構成を有する積層フィルムを作製した。
・基材層:厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム
・インク層:バインダー樹脂(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂)中に顔料(酸化チタン)を添加したインクからなる厚さ約2.0μmの層
・ガスバリア層:厚さ7μmのアルミニウム箔
・中間層: 厚さ15μmのナイロンフィルム
・熱接着層:厚さ60μmのCPPフィルム
【0042】
<包装フィルム・包装袋の作製>
上記の如く作製した積層フィルムに、実施例1と同様な紫外線レーザー照射器を用いて、積層フィルムの基材層側から40Hzのパルス波状の紫外線レーザー光線を2,5Wの出力で12,000mm/秒のスキャンスピードで照射することによりフォントサイズ10.5にて製造年月日を印字することによって実施例5の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。また、実施例5の包装フィルムを用いて、実施例1と同様にして包装袋を作製し、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ良好な長期保存性を示した。
【0043】
[実施例6]
<積層フィルムの作製>
厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの上に、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂とを有機溶媒(トルエン・メチルエチルケトン・酢酸エチル)に溶解させてなるバインダー中にカーボンブラックを顔料として添加したインク(黒色)を、通常のグラビア印刷によって塗布して乾燥させた後に、そのインク塗布面の上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ7μmのアルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ70μmのCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルムを積層することによって、下記の層構成を有する積層フィルムを作製した。
・基材層:厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム
・インク層:バインダー樹脂(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂)中に顔料(カーボンブラック)を添加したインクからなる厚さ約2.0μmの層
・ガスバリア層:厚さ7μmのアルミニウム箔
・熱接着層:厚さ70μmのCPPフィルム
【0044】
<包装フィルム・包装袋の作製>
上記の如く作製した積層フィルムに実施例5と同様な方法で製造年月日を印字することによって実施例6の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。また、実施例6の包装フィルムを用いて、実施例1と同様にして包装袋を作製し、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ良好な長期保存性を示した。
【0045】
[実施例7]
積層フィルムの作製時における基材層上へ塗布するインクを下記のグラビア印刷用インクに変更した以外は実施例6と同様にして、実施例7の包装体(包装フィルム)および包装袋を作製した。そして、そのマーキング処理が施された包装体を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1に示す。
・ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂とを有機溶媒(トルエン・メチルエチルケトン・酢酸エチル)に溶解させてなるバインダー中に酸化チタンを顔料として添加したインク(白色)
また、得られた包装袋を用いて、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ良好な長期保存性を示した。
【0046】
[実施例8]
<積層フィルムの作製>
厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムの上に、ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂とを有機溶媒(トルエン・メチルエチルケトン・酢酸エチル)に溶解させてなるバインダー中に酸化チタンを顔料として添加したインク(黒色)を、通常のグラビア印刷によって塗布して乾燥させた後に、そのインク塗布面の上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ9μmのアルミニウム箔を積層し、さらに、そのアルミニウム箔上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ12μmのPETフィルムを積層し、なおかつ、そのPETフィルム上に、接着剤(エステル系)を利用して、厚さ50μmのポリエチレンフィルムを積層することによって、下記の層構成を有する積層フィルムを作製した。
・基材層:厚さ12μmの二軸延伸PETフィルム
・インク層:バインダー樹脂(ウレタン樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂との混合樹脂)中に顔料(カーボンブラック)を添加したインクからなる厚さ約2.0μmの層
・ガスバリア層:厚さ9μmのアルミニウム箔
・中間層:厚さ12μmのPETフィルム
・熱接着層:厚さ50μmのPEフィルム
【0047】
<包装フィルム・包装袋の作製>
上記の如く作製した積層フィルムに実施例5と同様な方法で製造年月日を印字することによって実施例8の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。また、実施例8の包装フィルムを用いて、実施例1と同様にして包装袋を作製し、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ良好な長期保存性を示した。
【0048】
[比較例1]
実施例1と同様にして作製された積層フィルムの表面に、YAGレーザー照射器(パナソニック デバイス SUNX社製FAYbレーザーマーカー)を利用して、積層フィルムの基材層側から30kHzのパルス波状のYAGレーザーを20Wの出力で10,000mm/秒のスキャンスピードで照射することによりフォントサイズ1 0 . 5 にて製造年月日をマーキングすることによって比較例1 の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装体を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。
【0049】
[比較例2]
実施例2と同様にして作製された積層フィルムの表面に、比較例1と同様な方法で製造年月日をマーキングすることによって比較例2の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装体を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1に示す。
【0050】
[比較例3]
実施例3と同様にして作製された積層フィルムの表面に、比較例1と同様な方法で製造年月日をマーキングすることによって比較例3の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装体を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。また、比較例3の包装フィルムを用いて、実施例1と同様にして包装袋を作製し、実施例1と同様な食品の保存試験を実施したところ、長期間保存後(6ヶ月保存後)の内容物に品質の低下が見られた。
【0051】
[比較例4]
実施例4と同様にして作製された積層フィルムの表面に、比較例1と同様な方法で製造年月日をマーキングすることによって比較例4の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装体を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。
【0052】
[比較例5]
実施例5と同様にして作製された積層フィルムの表面に、比較例1と同様なYAGレーザー照射器を用いて、積層フィルムの基材層側から30kHzのパルス波状のYAGレーザーを25Wの出力で12,000mm/秒のスキャンスピードで照射することによりフォントサイズ10.5 にて製造年月日をマーキングすることによって比較例5の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装体を用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。
【0053】
[比較例6]
実施例6と同様にして作製された積層フィルムの表面に、比較例5と同様な方法で製造年月日を印字することによって比較例6の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。
【0054】
[比較例7]
実施例7と同様にして作製された積層フィルムの表面に、比較例5と同様な方法で製造年月日を印字することによって比較例7の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。
【0055】
[比較例8]
実施例8と同様にして作製された積層フィルムの表面に、比較例5と同様な方法で製造年月日を印字することによって比較例8の包装体(包装フィルム)を得た。そして、そのマーキング処理が施された包装フィルムを用いて、上記した方法によってレーザーマーキング部分の視認性・表面状態、レーザーマーキング後の金属部分の状態を評価した。評価結果を、包装体(包装フィルム)の性状とともに表1 に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1から、紫外線レーザーを利用してマーキング処理を施した実施例1~8の包装体(包装フィルム)は、いずれもレーザーマーキング部分の視認性および表面状態が良好であることが分かる。また、アルミニウム箔やアルミニウム蒸着PETフィルムからなるガスバリア層を設けた実施例3,5~8の包装体は、いずれもレーザーマーキング後の金属部分の状態が良好であることが分かる。さらに、紫外線レーザーを利用してマーキング処理を施した包装体によって形成された実施例1~8の包装袋は、いずれも食品の長期保存性が良好であることが分かる。それに対して、紫外線レーザーを利用することなくYAGレーザーを用いて印字処理を施した比較例1,4の包装体(包装フィルム)は、いずれもレーザーマーキング部分の視認性および表面状態が不良であることが分かる。また、ガスバリア層を設けた比較例3,5~8の包装体は、いずれもレーザーマーキング後の金属部分の状態が不良であることが分かる。さらに、YAGレーザーを利用してマーキング処理を施した包装体によって形成された比較例3の包装袋は、食品の長期保存性が不良であることが分かる。
【0058】
<包装袋の変更例>
本発明に係る包装体および包装袋の構成は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、構成材料である合成樹脂フィルムの基材層、金属蒸着層、中間層、熱接着層の材質、積層構成等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の包装体および包装袋は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、各種の物質の包装・収納用の袋あるいはその構成材料として好適に用いることができる。また、本発明の包装体あるいは包装袋のマーキング方法は、各種の包装体あるいは包装袋に製造年月日等をマーキングするための方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
P・・包装袋
3・・基材層
2・・インク層
1・・熱接着層
α・・マーキング部分
図1