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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】混圧タービン
(51)【国際特許分類】
   F01K 7/18 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
F01K7/18 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019029623
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020133537
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山田 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】川波 晃
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-014904(JP,U)
【文献】実開平04-132407(JP,U)
【文献】実開昭62-043102(JP,U)
【文献】実開昭57-162906(JP,U)
【文献】特開2000-104507(JP,A)
【文献】特開2011-007073(JP,A)
【文献】特開2011-144704(JP,A)
【文献】特公昭58-000563(JP,B2)
【文献】特開平02-294503(JP,A)
【文献】特開昭58-023206(JP,A)
【文献】実開昭50-150607(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 7/18
F01D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられ、回転軸線回りに回転するロータと、
前記ロータの外周に固定され、主蒸気が導かれる上流動翼段と、
前記上流動翼段の下流側に設けられ、複数の静翼からなる静翼列を有する下流静翼段と、
前記車室側から内周側に向けて、主蒸気よりも低圧とされた混気蒸気である低圧蒸気を供給する低圧蒸気供給部と、
前記低圧蒸気供給部から供給された低圧蒸気が前記静翼列よりも前記ロータ側に導かれた後に該静翼列側に導かれる低圧蒸気分配流路と、
を備え
前記低圧蒸気分配流路は、前記静翼列の内周に円周方向に沿って設けられた内周仕切壁を備え、
前記内周仕切壁は、前記低圧蒸気を前記低圧蒸気分配流路に導く流入部と、該流入部に対して前記ロータを挟んだ対向位置に設けられ、前記静翼列に前記低圧蒸気を導く対向流出部と、を備えている混圧タービン。
【請求項2】
前記内周仕切壁は、前記流入部と前記対向流出部との間にわたって連続した連続壁部を備えている請求項に記載の混圧タービン。
【請求項3】
前記内周仕切壁は、前記流入部と前記対向流出部との間に、1又は複数の中間流出部を備えている請求項に記載の混圧タービン。
【請求項4】
車室内に設けられ、回転軸線回りに回転するロータと、
前記ロータの外周に固定され、主蒸気が導かれる上流動翼段と、
前記上流動翼段の下流側に設けられ、複数の静翼からなる静翼列を有する下流静翼段と、
前記車室側から内周側に向けて、主蒸気よりも低圧とされた混気蒸気である低圧蒸気を供給する低圧蒸気供給部と、
前記低圧蒸気供給部から供給された低圧蒸気が前記静翼列よりも前記ロータ側に導かれた後に該静翼列側に導かれる低圧蒸気分配流路と、
を備え、
前記低圧蒸気分配流路は、前記静翼列の内周に円周方向に沿って設けられた内周仕切壁を備え、
前記内周仕切壁は、多孔体とされている混圧タービン。
【請求項5】
車室内に設けられ、回転軸線回りに回転するロータと、
前記ロータの外周に固定され、主蒸気が導かれる上流動翼段と、
前記上流動翼段の下流側に設けられ、複数の静翼からなる静翼列を有する下流静翼段と、
前記車室側から内周側に向けて、主蒸気よりも低圧とされた混気蒸気である低圧蒸気を供給する低圧蒸気供給部と、
前記低圧蒸気供給部から供給された低圧蒸気が前記静翼列よりも前記ロータ側に導かれた後に該静翼列側に導かれる低圧蒸気分配流路と、
を備え、
前記低圧蒸気供給部は、前記低圧蒸気分配流路に向けて延在するガイド壁を備えている混圧タービン。
【請求項6】
前記ガイド壁は、前記上流動翼段の出口における主蒸気の絶対速度の方向に向けて配置されている請求項に記載の混圧タービン。
【請求項7】
前記静翼列の外周に円周方向に沿って設けられた外周仕切壁を備えている請求項1からのいずれかに記載の混圧タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる圧力の蒸気が供給される混圧タービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
混圧タービンは、異なる圧力の蒸気が供給されることによって動作する(特許文献1参照)。混圧タービンでは、主蒸気が流れる動翼段の下流側に、主蒸気よりも低圧とされた低圧蒸気を供給することによって蒸気が混合される。
【0003】
特許文献1には、低圧蒸気を主蒸気に混合する際に、外周側から円周方向に均一に低圧蒸気を導くために、タービン車室の内周に沿って円環状とされた整流板を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭62-43102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、タービン車室の内周に沿って設けられた整流板を通過させた後に静翼列の外周側から低圧蒸気を導く構成となっている。このため、整流版の周囲に混気を供給する空間ないし流路が必要になり、車室の外径が大きくなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、車室の外径を小さくすることができる混圧タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る混圧タービンは、車室内に設けられ、回転軸線回りに回転するロータと、前記ロータの外周に固定され、主蒸気が導かれる上流動翼段と、前記上流動翼段の下流側に設けられ、複数の静翼からなる静翼列を有する下流静翼段と、前記車室側から内周側に向けて、前記主蒸気よりも低圧とされた混気蒸気である低圧蒸気を供給する低圧蒸気供給部と、前記低圧蒸気供給部から供給された低圧蒸気が前記静翼列よりも前記ロータ側に導かれた後に該静翼列側に導かれる低圧蒸気分配流路と、を備えている。
【0008】
低圧蒸気供給部から導入された低圧蒸気は、低圧蒸気分配流路によって、下流静翼段の静翼列よりもロータ側に導かれた後に静翼列に導かれる。すなわち、低圧蒸気は、静翼列の内周側から導かれ、主蒸気と混合する。このように、低圧蒸気を静翼列に分配する空間として静翼列の内周側の空間を用いることとしたので、静翼列の外周側の空間を低圧蒸気の分配のために積極的に用いる必要がないので、車室の外径を小さくすることができる。
【0009】
さらに、本発明の一態様に係る混圧タービンでは、前記低圧蒸気分配流路は、前記静翼列の内周に円周方向に沿って設けられた内周仕切壁を備え、前記内周仕切壁は、前記低圧蒸気を前記低圧蒸気分配流路に導く流入部と、該流入部に対して前記ロータを挟んだ対向位置に設けられ、前記静翼列に前記低圧蒸気を導く対向流出部と、を備えている。
【0010】
低圧蒸気分配流路は、静翼列の内周に設けた内周仕切壁を備え、低圧蒸気分配流路に設けた流入部から導入した低圧蒸気を効果的に取り入れることができる。そして、流入部に対してロータを挟んで対向する位置に設けられた対向流出部から低圧蒸気を静翼列に導くこととした。これにより、流入部から最も遠い対向流出部からも低圧蒸気を静翼列に導くことができる。
【0011】
さらに、本発明の一態様に係る混圧タービンでは、前記内周仕切壁は、前記流入部と前記対向流出部との間にわたって連続した連続壁部を備えている。
【0012】
流入部と対向流出部との間にわたって連続した連続壁部を設けることとしたので、流入部から最も遠い対向流出部から優先的に低圧蒸気を静翼列に導くことができる。
【0013】
さらに、本発明の一態様に係る混圧タービンでは、前記内周仕切壁は、前記流入部と前記対向流出部との間に、1又は複数の中間流出部を備えている。
【0014】
流入部と対向流出部との間に中間流出部を設けることで、周方向における各位置の静翼に対して低圧蒸気を分配することができる。中間流出部を複数設ける場合、中間流出部の流出流路面積は、同一面積としても良いが、流入部に近いほど小さく、かつ対向流出部に近いほど大きくしても良い。流入部から遠い位置ほど低圧蒸気を導きに難いからである。
【0015】
さらに、本発明の一態様に係る混圧タービンでは、前記低圧蒸気分配流路は、前記静翼列の内周に円周方向に沿って設けられた内周仕切壁を備え、前記内周仕切壁は、多孔体とされている。
【0016】
低圧蒸気分配流路は、静翼列の内周に設けた内周仕切壁を備えている。低圧蒸気は、多孔体とされた内周仕切壁の全体から静翼列側に供給される。これにより、低圧蒸気を静翼列に対して可及的に均一に供給することができる。
【0017】
さらに、本発明の一態様に係る混圧タービンでは、前記低圧蒸気供給部は、前記低圧蒸気分配流路に向けて延在するガイド壁を備えている。
【0018】
低圧蒸気分配流路に向けて延在するガイド壁によって、低圧蒸気分配流路内に低圧蒸気をガイドすることとした。これにより、低圧蒸気を無駄なく低圧蒸気分配流路内に導くことができる。
【0019】
さらに、本発明の一態様に係る混圧タービンでは、前記ガイド壁は、前記上流動翼段の出口における主蒸気の絶対速度の方向に向けて配置されている。
【0020】
上流動翼段の出口における主蒸気の絶対速度の方向に向けてガイド壁を配置することにより、主蒸気の流れを乱すことを抑制することができる。これにより、タービン効率の低下を抑制することができる。
主蒸気の絶対速度の方向は、上流動翼段の周速度と、上流動翼段の出口の相対速度から得ることができる。
【0021】
さらに、本発明の参考態様に係る混圧タービンでは、前記低圧蒸気供給部は、前記静翼の翼長方向に貫通する低圧蒸気供給孔を備えている。
【0022】
静翼の翼長方向に貫通する低圧蒸気供給孔を設けることによって、低圧蒸気を低圧蒸気分配流路に供給することができる。これにより、主蒸気が流れる主流路の流れに影響を及ぼす構造物を不要とすることができ、タービン効率の低下を抑制することができる。
【0023】
さらに、本発明の一態様に係る混圧タービンでは、前記静翼列の外周に円周方向に沿って設けられた外周仕切壁を備えている。
【0024】
静翼列の外周に円周方向に沿って設けられた外周仕切壁を設けることにより、外周仕切壁の内周側に主流路を規定することができる。これにより、主流路における蒸気流れを整えることができるので、タービン効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
静翼列の内周側から低圧蒸気を供給することとしたので、車室の外径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る混圧タービンの要部を示した縦断面図である。
図2A】混気蒸気が導入される要部を示した縦断面図である。
図2B図2Aの静翼段を正面側から見た横断面図である。
図3】変形例1を示した図2Bに対応する横断面図である。
図4】変形例2を示した図2Bに対応する横断面図である。
図5】変形例2に対してガイドプレートを適用した横断面図である。
図6】変形例3を示した図2Bに対応する横断面図である。
図7A】変形例4を示し、ガイドプレートの配置方向を示した側面図である。
図7B図7Aのガイドプレートの配置方向が変化した状態を示した側面図である。
図7C図7Aのガイドプレートの配置方向が変化した状態を示した側面図である。
図8A】本発明の参考例としての実施形態に係り、図2Aに対応した縦断面図である。
図8B図8Aの静翼段を正面側から見た横断面図である。
図9A図8Aの静翼を示した横断面図である。
図9B図9Aの変形例を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について説明する。
図1には、本実施形態に係る混圧タービン1の要部が示されている。
混圧タービン1は、図示しない発電機に接続されており、発電機タービンとして用いられる。ただし、混圧タービン1は、発電機用以外にも他の用途の蒸気タービンとして用いることもできる。
【0028】
混圧タービン1は、車室3内にロータ5を備えている。ロータ5は、回転軸線CL回りに回転可能に支持されている。
【0029】
ロータ5の外周には、複数の動翼段7が固定されている。図1には、回転軸線CL方向に並べられた5段の動翼段7が示されている。各動翼段7には、回転軸線CLを中心とする円周方向に等間隔で複数の動翼7aが固定されている。円周方向に配置された複数の動翼7aによって動翼列が構成される。なお、動翼段7の数は本実施形態に限定されるものではない。
【0030】
各動翼段7の上流側(同図において左側)には、静翼段10が配置されている。各静翼段10は、車室3の内周側に固定されている。各静翼段10には、回転軸線CLを中心とする円周方向に等間隔で複数の静翼10aが固定されている。円周方向に配置された複数の静翼10aによって静翼列が構成される。静翼列はノズルとして機能する。複数の静翼10aによって構成される静翼列は、複数の動翼7aによって構成される動翼列に対向するように配置されている。なお、静翼段10の数は本実施形態に限定されるものではない。
【0031】
主蒸気が図示しない主蒸気供給口から導かれ、矢印A1に示すように主流路F1を流れる。具体的には、主蒸気は、初段の静翼段10を通過した後に初段の動翼段7を通過する。その後、第2段の静翼段10を通過した後に第2段の動翼段7を通過する。これを順次各段の静翼段10及び動翼段7で繰り返すことによって、蒸気のエンタルピがロータ5の回転軸線CL回りの駆動力に変換される。
【0032】
第3段(同図において左から3番目)の動翼段(上流動翼段)7と、第4段(左から4段目)の静翼段(下流静翼段)10との間でかつ車室3の外周には、矢印A2で示すように混気蒸気を車室3内に導く混気蒸気導入口12が設けられている。混気蒸気導入口12は、図示しない混気蒸気の供給源(例えばボイラ)に接続されている。混気蒸気は、主蒸気よりも低圧とされた低圧蒸気である。なお、混気蒸気導入口12を設ける位置は、第3段の動翼段7と第4段の静翼段10との間に限定されるものではなく、他の段落の動翼段7と静翼段10との間に設けても良い。
【0033】
混気蒸気導入口12は、内周側に位置する混気蒸気導入空間13に接続されている。混気蒸気導入空間13は、他の段落における動翼段7と静翼段10との間の空間よりも回転軸線CL方向に広い空間とされている。混気蒸気導入空間13は、回転軸線CLを中心とする円周方向に360°にわたって設けられている。混気蒸気は、矢印A3で示すように、混気蒸気導入空間13から内周方向に導かれる。
【0034】
図2Aには、図1に示した混気蒸気導入口12周りの要部が示されている。同図に示されているように、静翼段10の上流側には、外周仕切壁15と、内周仕切壁17とが固定されている。
【0035】
外周仕切壁15は、下流端(図において右側)が静翼段10に固定されている。図2Bに示すように、外周仕切壁15は、静翼段10の外周に設置されており、一部が外側混気蒸気導入部15aとして切り欠かれた円筒形状とされている。外周仕切壁15の内周側に静翼10aが位置する主流路F1が規定されることになる。
なお、図2Bでは、静翼列を構成する複数の静翼10aが省略されて示されている。
【0036】
内周仕切壁17は、図2Aに示すように、下流端(図において右側)が静翼段10に固定されている。図2Bに示すように、内周仕切壁17は、静翼段10の内周に設置されており、複数ヶ所が切り欠かれた円筒形状とされている。
内周仕切壁17は、混気蒸気を内周側に導入する内側混気蒸気導入部17aと、ロータ5を挟んだ対向位置に設けられた対向流出部17bとが設けられている。これにより、内周仕切壁17の内周側に、混気蒸気を導入するとともに各静翼10aに混気蒸気を導く混気蒸気分配流路(低圧蒸気分配流路)17cが形成される。
【0037】
図2Bに示すように、外周仕切壁15の外側混気蒸気導入部15aと内周仕切壁17の内側混気蒸気導入部17aとを半径方向に接続するように、ガイドプレート(ガイド壁)20が設けられている。ガイドプレート20は、図2Bにおいてハの字状に2つ設けられている。これら2つのガイドプレート20によって囲まれた領域に、混気蒸気供給部(低圧蒸気供給部)21が形成されている。混気蒸気供給部21は、混気蒸気導入口12と内周仕切壁17の内周側に形成された混気蒸気分配流路17cとを接続する流路となる。
【0038】
図2Bの矢印A4に示すように、混気蒸気は、混気蒸気導入口12から混気蒸気供給部21を通り、混気蒸気分配流路17cへと流れ込む。その後、対向流出部17bから静翼10a側に導かれる。
【0039】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
混気蒸気供給部21から導入された混気蒸気は、混気蒸気分配流路17cによって、静翼段10の各静翼10aよりも内周側に導かれた後に各静翼10aに導かれる。すなわち、混気蒸気は、各静翼10aの内周側から導かれ、主蒸気と混合する。このように、混気蒸気を静翼10aに分配する空間として各静翼10aの内周側の空間である混気蒸気分配流路17cを用いることとしたので、混気蒸気の分配のための外周側の空間が不要となるので、車室3の径を小さくすることができる。
【0040】
内周仕切壁17に、内側混気蒸気導入部17aに対してロータ5を挟んで対向する位置に対向流出部17bを設けることとした。これにより、内側混気蒸気導入部17aから最も遠い対向流出部17bであっても有効に混気蒸気を静翼10aに導くことができる。特に、内周仕切壁17は、内側混気蒸気導入部17aと対向流出部17bとの間にわたって連続した連続壁部とされているので、対向流出部17bに混気蒸気を他から流出させずに優先的に導くことができる。
【0041】
混気蒸気分配流路17cに接続するガイドプレート20によって、混気蒸気分配流路17c内に混気蒸気をガイドすることとした。これにより、混気蒸気を無駄なく混気蒸気分配流路17c内に導くことができる。
【0042】
静翼10aの外周に円周方向に沿って設けられた外周仕切壁15を設けることにより、外周仕切壁15の内周側に主流路F1を規定することができる。これにより、主流路F1における蒸気流れを整えることができるので、タービン効率を向上させることができる。特許文献1に示した公知例では、静翼列の外周側から混気蒸気を導くので、車室が大型化してしまい外周仕切壁15を設けることが困難である。本実施形態では、静翼列の内周側から混気蒸気を導くことができるので、車室の大型化を回避しながら外周仕切壁15を採用することができる点で公知例に対して有利である。
【0043】
なお、本実施形態は、以下のように変形することができる。
[変形例1]
図3に示すように、ガイドプレート20を省略しても良い。これにより、矢印A5に示すように、混気蒸気供給部21に近い静翼10aに対して直接的に混気蒸気を供給することができる。本変形例の場合、混気蒸気は、外側混気蒸気導入部15a及び内側混気蒸気導入部17aを介して混気蒸気分配流路17cへと導かれる。
【0044】
[変形例2]
図4に示すように、図3の構成に対して、内側混気蒸気導入部17aと対向流出部17bとの間に、1又は複数の中間流出部17dを設けても良い。
中間流出部17dを設けることで、周方向における各位置の静翼10aに対して混気蒸気を効率的に分配することができる。中間流出部17dを複数設ける場合、中間流出部17dの流出流路面積は、同一面積としても良いが、内側混気蒸気導入部17aに近いほど小さく、かつ対向流出部17bに近いほど大きくしても良い。内側混気蒸気導入部17aから遠い位置ほど混気蒸気を導きに難いからである。
なお、図5に示すように、本変形例に対して、図2Bに示したガイドプレート20を設けても良い。
【0045】
[変形例3]
図6に示すように、内周仕切壁17として多孔体を用いても良い。多孔体としては、例えばパンチングメタルや金網を用いることができる。多孔体とされた内周仕切壁17を用いることにより、混気蒸気を各静翼10aに対して可及的に均一に供給することができる。
【0046】
[変形例4]
図7A乃至図7Cには、外周側からガイドプレート20を見た図、より具体的には図2Bの矢印B1方向にガイドプレートを見た図が示されている。
ガイドプレート20の配置方向は、主蒸気S1の絶対速度C方向に向けることが好ましい。絶対速度Cは、ガイドプレート20の直近の上流側に位置する動翼7aの形状及び取付角度から決まる相対速度Wと、ロータ5の回転数によって決まる動翼7aの周速度Uとから決まる。ロータ5の回転数としては、例えば定格時の回転数が用いられる。なお、図7A乃至図7Cにおいて、矢印C1は動翼7aの回転方向(すなわちロータ回転方向)を示している。
【0047】
図7Aのように、絶対速度Cの方向が水平方向(回転軸線CL(図1参照)に平行な方向)を向く場合には、ガイドプレート20は水平方向に長手方向を向けて配置される。
図7Bのように、絶対速度Cの方向が右上方向を向く場合には、ガイドプレート20は右上方向に長手方向を向けて配置される。
図7Cのように、絶対速度Cの方向が右下方向を向く場合には、ガイドプレート20は右下方向に長手方向を向けて配置される。
【0048】
本変形例のように、動翼7aの出口における主蒸気の絶対速度Cの方向に沿ってガイドプレート20を配置することにより、主蒸気の流れを乱すことを抑制することができる。これにより、タービン効率の低下を抑制することができる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の参考例としての実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して、混気蒸気分配流路17cへと混気蒸気を導く経路が異なる点で相違する。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、第1実施形態と相違する点について主として説明する。
【0050】
図8Aに示すように、混気蒸気導入口12から導入された混気蒸気は、矢印A6に示すように、静翼段10に形成した混気蒸気供給孔(低圧蒸気供給部)を通過して、混気蒸気分配流路17cへと導かれる。
【0051】
混気蒸気分配流路17cへと導かれた混気蒸気は、図8Bに示すように、内周仕切壁17に形成された複数の流出部17eから半径方向外側に流れて静翼10aへと導かれる。各流出部17eは、好ましくは、内周仕切壁17の円周方向に等間隔に設けられている。なお、流出部17eは、1つとしても良い。
【0052】
本実施形態の内周仕切壁17は、静翼段10から混気蒸気が導かれるので、第1実施形態のような内側混気蒸気導入部17a(図2B参照)が設けられていない。したがって、外周仕切壁15についても、外側混気蒸気導入部15a(図2B参照)が設けられていない。このため、外周仕切壁15は無端状の円筒形とすることができるので、主流路F1を流れる蒸気の漏れを抑制できるので好ましい。また、主流路F1を流れる蒸気を混気蒸気が阻害することがない。
【0053】
図9A及び図9Bには、静翼段10に混気蒸気供給孔を形成する際に用いられる静翼10aが示されている。
静翼10aには、翼先端から翼根方向に向かう翼長方向(同図において紙面垂直方向)に貫通する貫通孔(低圧蒸気供給孔)10bが形成されている。混気蒸気の流量が比較的小さい場合には、図9Aに示すように、ドリル加工によって貫通孔10bを形成する。混気蒸気の流量が比較的大きい場合には、流路断面積を大きくするために、図9Bに示すように、板金によって静翼10aを製作することによって貫通孔10bを形成する。
【0054】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
静翼10aの翼長方向に貫通する貫通孔10bを設けることによって、静翼段10を介して混気蒸気を混気蒸気分配流路17cに供給することができる。これにより、主蒸気が流れる主流路F1の流れに影響を及ぼす構造物及び混気蒸気を不要とすることができ、タービン効率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 混圧タービン
3 車室
5 ロータ
7 動翼段
7a 動翼
10 静翼段
10a 静翼
10b 貫通孔(低圧蒸気供給孔)
12 混気蒸気導入口
13 混気蒸気導入空間
15 外周仕切壁
15a 外側混気蒸気導入部
17 内周仕切壁
17a 内側混気蒸気導入部
17b 対向流出部
17c 混気蒸気分配流路(低圧蒸気分配流路)
17d 中間流出部
17e 流出部
20 ガイドプレート(ガイド壁)
21 混気蒸気供給部(低圧蒸気供給部)
CL 回転軸線
F1 主流路
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B