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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】シートバック
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20231023BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/22
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019084151
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020179773
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-10-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 元三
(72)【発明者】
【氏名】牧 博史
(72)【発明者】
【氏名】中村 利雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 克也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖尋
(72)【発明者】
【氏名】神谷 健太郎
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-058154(JP,U)
【文献】米国特許第05762397(US,A)
【文献】特開2009-095597(JP,A)
【文献】特開2017-171053(JP,A)
【文献】実開平03-059225(JP,U)
【文献】国際公開第2017/051466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座者の背部を支持するシートバックであって、
内部骨格を成すバックフレームと、
該バックフレームに該バックフレームの正面視全域に亘って前方から覆い被さる形に組み付けられて着座者の背部を面状に弾性支持するポリエステル系熱可塑性エラストマーから成る弾性マットと、を有し、
前記バックフレームが、フレーム本体から前方に張り出す支持ワイヤを有し、
前記弾性マットが、その着座者の背部を支持する天板部の裏面から前記弾性マットと継ぎ目なく連続するように延び出し、前記支持ワイヤに引掛けられることで前記弾性マットを前記支持ワイヤに固定する複数のフックを有し、
複数の前記フックのうち、前記シートバックの着座者の腰部を支持する下部領域に設けられる1つ以上の下部フックを足し合わせた全体の形状幅が、前記下部領域から上の上部領域に設けられる1つ以上の上部フックを足し合わせた全体の形状幅よりも長いシートバック。
【請求項2】
請求項1に記載のシートバックであって、
前記支持ワイヤが、U字状に折り曲げられた形状とされ、U字の両端部が、前記フレーム本体に固定される固定部とされ、U字の両端部間を繋ぐ繋ぎ部が、前記弾性マットの面内方向に延びて前記フックが引掛けられる引掛部とされるシートバック。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のシートバックであって、
複数の前記フックが、前記支持ワイヤに対して、互い違いとなる向きに引掛けられるシートバック。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のシートバックであって、
前記弾性マットが、周縁部に後方へ向かってフランジ状に張り出す張出部を有するシートバック。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のシートバックであって、
更に、前記バックフレームを後方から覆うバックボードを有し、該バックボードと前記弾性マットとが、前記シートバックの周囲側部において互いの周縁部同士が嵌合されて前記バックフレームを包み込むように箱状に組み合わされるシートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックに関する。詳しくは、着座者の背部を支持するシートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シートバックが、金属製のバックフレームと、バックフレームを覆う発泡ウレタン製のバックパッドと、バックパッドに被せられるファブリック製のバックカバーと、から成る構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-114983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、バックパッドとバックカバーとをそれぞれバックフレームに個別に組み付ける必要があることから、構成が複雑となり、かつ、組み付け作業も煩雑となる。そこで、本発明は、シート性能を維持しつつ組み付け性を向上させることのできるシートバックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のシートバックは次の手段をとる。
【0006】
すなわち、本発明のシートバックは、着座者の背部を支持するシートバックであって、内部骨格を成すバックフレームと、バックフレームに前方から覆い被さる形に組み付けられて着座者の背部を面状に弾性支持する弾性マットと、を有するものである。バックフレームが、フレーム本体から前方に張り出す支持ワイヤを有する。弾性マットが、着座者の背部を支持する天板部の裏面に設けられ、支持ワイヤに引掛けられることで弾性マットを支持ワイヤに固定する複数のフックを有する。
【0007】
上記構成によれば、弾性マットをバックフレームに設けられた支持ワイヤにフックで引掛けて固定するという簡便な組み付けにより、弾性マットによる良好な座り心地とバックフレームによる良好な支持強度とが得られるシートバックを得ることができる。
【0008】
また、本発明のシートバックは、更に次のように構成されていてもよい。支持ワイヤが、U字状に折り曲げられた形状とされ、U字の両端部が、フレーム本体に固定される固定部とされ、U字の両端部間を繋ぐ繋ぎ部が、弾性マットの面内方向に延びてフックが引掛けられる引掛部とされる。
【0009】
上記構成によれば、支持ワイヤによる弾性マットの支持強度を適切に高めることができる。
【0010】
また、本発明のシートバックは、更に次のように構成されていてもよい。複数のフックが、支持ワイヤに対して、互い違いとなる向きに引掛けられる。
【0011】
上記構成によれば、各フックが支持ワイヤから外れにくくなるため、弾性マットにより着座者の背部をより良好な座り心地が得られるように安定して支えることができる。
【0012】
また、本発明のシートバックは、更に次のように構成されていてもよい。弾性マットが、ポリエステル系熱可塑性エラストマーから成り、周縁部に後方へ向かってフランジ状に張り出す張出部を有する。
【0013】
上記構成によれば、弾性マットを良好な座り心地と通気性とが得られやすい軽量な構成とすることができる。上記弾性マットは、周縁部に後方へ向かってフランジ状に張り出す張出部を有する構成により、ポリエステル系熱可塑性エラストマーから成るフレキシブルな構成であっても、周縁部に適度な剛性を持たせた構成とすることができる。
【0014】
また、本発明のシートバックは、更に次のように構成されていてもよい。シートバックが、更に、バックフレームを後方から覆うバックボードを有する。バックボードと弾性マットとが、シートバックの周囲側部において互いの周縁部同士が嵌合されてバックフレームを包み込むように箱状に組み合わされる。
【0015】
上記構成によれば、シートバックを弾性マットとバックボードとが一体感のある形に組み合わされる見栄えの良い構成とすることができる。
【0016】
また、本発明のシートバックは、更に次のように構成されていても良い。複数のフックのうち、シートバックの着座者の腰部を支持する下部領域に設けられる1つ以上の下部フックを足し合わせた形状幅が、下部領域から上の上部領域に設けられる1つ以上の上部フックを足し合わせた形状幅よりも長い。
【0017】
上記構成によれば、弾性マットにより、着座者の背部を体圧の大きさに応じた硬さで受け止めることができ、体圧分散性の良い支持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1の実施形態に係るシートバックの概略構成を表した斜視図である。
図2】弾性マットを背面側から見た斜視図である。
図3図1のIII-III線断面図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0020】
《第1の実施形態》
(シートバック1の概略構成について)
始めに、本発明の第1の実施形態に係るシートバック1の構成について、図1図4を用いて説明する。なお、以下の説明において、前後上下左右等の各方向を示す場合には、各図中に示されたそれぞれの方向を指すものとする。また、「シート幅方向」と示す場合には、シートバック1の左右方向を指すものとする。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るシートバック1は、自動車用のシートの背凭れ部として構成されている。上記シートバック1は、その左右両サイドの下端部が、不図示のリクライナを介して、着座部となるシートクッションの左右両サイドの後端部に連結されている。それにより、シートバック1は、上記不図示のリクライナを介して、シートクッションに対する背凭れ角度を調節可能とされている。上記シートバック1の上部には、頭凭れ部となる不図示のヘッドレストが装着されている。
【0022】
上記シートバック1は、金属製のバックフレーム10と、ポリエステル系熱可塑性エラストマー製の弾性マット20と、樹脂製のバックボード30と、から構成される。バックフレーム10は、シートバック1の内部骨格を成す強度部材として機能する。弾性マット20は、バックフレーム10に前方から覆い被さる形に組み付けられて、着座者の背部を面状に弾性支持するクッション部材として機能する。バックボード30は、バックフレーム10に後方から覆い被さる形に組み付けられて、シートバック1の背裏面の意匠性を向上させる化粧板として機能する。
【0023】
(バックフレーム10の構成について)
具体的には、バックフレーム10は、シートバック1の左右両サイドの側部骨格を成す縦長板状のサイドフレーム11と、これらサイドフレーム11の上部間に架橋されてシートバック1の上部骨格を成す正面視略逆U字状に折り曲げられたアッパパイプ12と、を有する。更に、バックフレーム10は、上記各サイドフレーム11とアッパパイプ12とで構成されるフレーム本体10Aから前方に張り出す支持ワイヤ13A,13Bを有する。
【0024】
これら支持ワイヤ13A,13Bは、それぞれ、鋼線材から成り、フレーム本体10Aに溶接されて結合されている。このうち、前者の支持ワイヤ13Aは、1本の鋼線材が正面視略逆U字状に折り曲げられた形状とされる。そして、上記支持ワイヤ13Aは、その逆U字の両端部を成す各下端部が、更に後方に折り曲げられて、各側のサイドフレーム11の上部領域の外側面に当てられて溶接されている(固定部13A1)。
【0025】
また、上記支持ワイヤ13Aは、その逆U字の両端部間を繋ぐ上辺部の中央箇所が、更に、後方に向かって平面視略逆U字状に張り出す形に折り曲げられて、アッパパイプ12の上側面に当てられて溶接されている(固定部13A2)。それにより、支持ワイヤ13Aは、その両端の固定部13A1と中央の固定部13A2とがそれぞれ各サイドフレーム11とアッパパイプ12とに接合されて、これらの間を上下方向(弾性マット20の面内方向)に延びる中間部としての各引掛部13A3及び左右方向(弾性マット20の面内方向)に延びる各引掛部13A4が、フレーム本体10Aに対して強く支持された状態とされる。
【0026】
一方、後者の支持ワイヤ13Bは、左右一対で構成される。これら支持ワイヤ13Bは、それぞれ、1本の鋼線材が側面視後向きに開口する略U字状に折り曲げられた形状とされる。そして、これら支持ワイヤ13Bは、それらのU字の両端部を成す上下の後端部が、それぞれ、各側のサイドフレーム11の上下領域の外側面に当てられて溶接されている(固定部13B1)。それにより、各支持ワイヤ13Bは、それらの両端の固定部13B1がそれぞれ各側のサイドフレーム11の上下領域に接合されて、これらの間を上下方向(弾性マット20の面内方向)に延びる中間部としての各引掛部13B2が、フレーム本体10Aに対して強く支持された状態とされる。
【0027】
(弾性マット20の構成について)
弾性マット20は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの射出成形材から成る。本実施形態では、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとして、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)が用いられている。上記弾性マット20は、バックフレーム10に前方から覆い被さる形にセットされる平板状の天板部21と、天板部21の全周縁から後方に向かってフランジ状に延びる張出部22と、天板部21の背裏面に形成されたフック23と、を有する。
【0028】
上記天板部21は、上記バックフレーム10の各サイドフレーム11とアッパパイプ12とに前方から覆い被さる形にセットされる大きさを備える。張出部22は、図2に示すように、天板部21の全周縁から後方に張り出す形状とされて、天板部21の曲げや捩りに対する剛性を適度に高めている。
【0029】
フック23は、天板部21の背裏面上の上部2箇所に設けられたフック23Aと、中間部4箇所に設けられたフック23Bと、下部4箇所に設けられたフック23Cと、によって構成される。これらフック23A,23B,23Cは、天板部21の背裏面上からL字状に折れ曲がった形となって張り出す形状とされる。これらフック23A,23B,23Cは、図1に示すように、上記バックフレーム10に設けられた対応する各支持ワイヤ13A,13Bの引掛部13A4,13A3,13B2にそれぞれ引掛けられることで、弾性マット20をバックフレーム10に引掛けた状態に固定する。
【0030】
詳しくは、上記フック23Aは、図2に示すように、左右一対で構成される。また、フック23Bは、上下に2つずつ並ぶ左右一対の構成とされる。また、フック23Cも、上記フック23Bと並んで上下に2つずつ並ぶ左右一対の構成とされる。図1に示すように、上記各フック23Aは、それぞれ、上記支持ワイヤ13Aの中央の固定部13A2から左右方向に延びる各引掛部13A4に上側から引掛けられる(図4参照)。
【0031】
また、図1に示すように、各フック23Bは、それぞれ、上記支持ワイヤ13Aの両端の固定部13A1から上方向に延びる各引掛部13A3にシート幅方向の内側或いは外側から互い違いとなる形に引掛けられる(図3参照)。具体的には、図1に示すように、各フック23Bは、上下に並ぶ上側のフック23Bが、各引掛部13A3にシート幅方向の内側から外側へと引掛けられ、下側のフック23Bが、各引掛部13A3にシート幅方向の外側から内側へと引掛けられる構成とされる。ここで、各フック23Bが、それぞれ、本発明の「上部フック」に相当する。
【0032】
また、図1に示すように、各フック23Cも同様に、それぞれ、各支持ワイヤ13Bの両端の固定部13B1間を上下方向に延びる各引掛部13B2にシート幅方向の内側或いは外側から互い違いとなる形に引掛けられる。具体的には、各フック23Cは、上下に並ぶ上側のフック23Cが、各引掛部13B2にシート幅方向の内側から外側へと引掛けられ、下側のフック23Cが、各引掛部13B2にシート幅方向の外側から内側へと引掛けられる構成とされる。ここで、各フック23Cが、それぞれ、本発明の「下部フック」に相当する。
【0033】
上記弾性マット20は、上記各フック23A,23B,23Cをバックフレーム10の各支持ワイヤ13A,13Bの対応する各引掛部13A4,13A3,13B2に引掛けることで、バックフレーム10に対して前後上下左右方向にそれぞれ位置決めされた状態に組み付けられる。上記各フック23A,23B,23Cが引掛けられるバックフレーム10の各支持ワイヤ13A,13Bの引掛部13A4,13A3,13B2は、バックフレーム10から前方に張り出した位置で、バックフレーム10の上側と左右の周囲に沿って延びる形に配設されている。
【0034】
そのため、上記各支持ワイヤ13A,13Bの引掛部13A4,13A3,13B2に各フック23A,23B,23Cが引掛けられて固定される弾性マット20は、その天板部21の上側と左右の各周縁部位が、バックフレーム10から前方に張り出した位置で支持されることとなる。その結果、弾性マット20は、着座者の背部が天板部21の中央に凭れ掛かった際に、中央部が比較的軟らかく後方に撓まされる一方で、左右両サイド部が前方に張り出した位置で比較的硬く支持される構成となる。
【0035】
したがって、上記弾性マット20の中央部によって、着座者の背部を後方から軟らかく弾性支持しつつ、弾性マット20の左右両サイド部によって、着座者の背部を左右両サイドから適度な硬さで支持(サイドサポート)することができる。
【0036】
詳しくは、上記シートバック1の下部領域に設けられた左右一対の支持ワイヤ13Bは、それらの引掛部13B2が、上部領域に設けられた支持ワイヤ13Aの各引掛部13A3よりも前方に大きく張り出した状態に設けられている。また、これら下部領域に設けられた左右一対の各支持ワイヤ13Bの引掛部13B2に引掛けられる各フック23Cは、各々の上下方向の形状幅W2が、上部領域に設けられた支持ワイヤ13Aの上下方向に延びる各引掛部13A3に引掛けられる各フック23Bの各々の上下方向の形状幅W1よりも長い構成とされる。
【0037】
それにより、上記各フック23Cの上下方向の形状幅W2を足し合わせた全体の形状幅が、各フック23Bの上下方向の形状幅W1を足し合わせた全体の形状幅よりも長い構成とされる。上記構成により、弾性マット20は、着座者の腰部を支持する下部領域が、各フック23C及び支持ワイヤ13Bによって左右両サイドから強く支持される構成とされる。それにより、上記弾性マット20が、着座者の背部を体圧の大きさに応じた硬さで受け止めることができ、体圧分散性の良い支持を行える構成とされる。
【0038】
バックボード30は、バックフレーム10に後方から覆い被さる形にセットされる平板状の背板部31と、背板部31の全周縁から前方に向かってフランジ状に延びる張出部32と、を有する。上記背板部31は、上記バックフレーム10の各サイドフレーム11とアッパパイプ12とに後方から覆い被さる形にセットされる大きさを備える。張出部32は、背板部31の全周縁から前方に張り出す形状とされて、背板部31の曲げや捩りに対する剛性を高めている。
【0039】
上記バックボード30は、上記バックフレーム10に後方から覆い被さる形にセットされて、その所々の箇所がバックフレーム10に後方から引掛けられたりスナップフィット嵌合されたりすることで一体的に固定される。また、上記バックボード30は、上記バックフレーム10に組み付けられた後、前出の弾性マット20がバックフレーム10に前方から組み付けられることで、その周縁の張出部32に弾性マット20の周縁の張出部22が外周側から嵌り込んだ状態に組み付けられる(図3図4参照)。
【0040】
それにより、上記組み付けられたバックボード30は、弾性マット20との間でバックフレーム10を包み込むように弾性マット20と箱状に組み合わされるようになっている。それにより、上記箱状に組み合わされた弾性マット20とバックボード30とによって、バックフレーム10が外部から見えない状態に見栄え良く被覆されるようになっている。
【0041】
上記弾性マット20は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標))から成る構成とされることで、天板部21の一部に不図示のスリットや孔を開けることで硬さを調整したり通気性を高めたりすることが簡便に行える構成とされる。また、弾性マット20の表面にシボや幾何学模様を施したり2色成形したりして、弾性マット20を重厚感のある意匠に仕上げることも簡便に行うことができる。
【0042】
(まとめ)
以上をまとめると、本実施形態に係るシートバック1は、次のような構成となっている。すなわち、着座者の背部を支持するシートバック(1)であって、内部骨格を成すバックフレーム(10)と、バックフレーム(10)に前方から覆い被さる形に組み付けられて着座者の背部を面状に弾性支持する弾性マット(20)と、を有するものである。
【0043】
バックフレーム(10)が、フレーム本体(10A)から前方に張り出す支持ワイヤ(13A,13B)を有する。弾性マット(20)が、着座者の背部を支持する天板部(21)の裏面に設けられ、支持ワイヤ(13A,13B)に引掛けられることで弾性マット(20)を支持ワイヤ(13A,13B)に固定する複数のフック(23A,23B,23C)を有する。
【0044】
上記構成によれば、弾性マット(20)をバックフレーム(10)に設けられた支持ワイヤ(13A,13B)にフック(23A,23B,23C)で引掛けて固定するという簡便な組み付けにより、弾性マット(20)による良好な座り心地とバックフレーム(10)による良好な支持強度とが得られるシートバック(1)を得ることができる。
【0045】
また、支持ワイヤ(13A,13B)が、U字状に折り曲げられた形状とされ、U字の両端部が、フレーム本体(10A)に固定される固定部(13A1,13A2,13B1)とされ、U字の両端部間を繋ぐ繋ぎ部が、弾性マット(20)の面内方向に延びてフック(23A,23B,23C)が引掛けられる引掛部(13A4,13A3,13B2)とされる。上記構成によれば、支持ワイヤ(13A,13B)による弾性マット(20)の支持強度を適切に高めることができる。
【0046】
また、複数のフック(23B,23C)が、支持ワイヤ(13A,13B)に対して、互い違いとなる向きに引掛けられる。上記構成によれば、各フック(23B,23C)が支持ワイヤ(13A,13B)から外れにくくなるため、弾性マット(20)により着座者の背部をより良好な座り心地が得られるように安定して支えることができる。
【0047】
また、弾性マット(20)が、ポリエステル系熱可塑性エラストマーから成り、周縁部に後方へ向かってフランジ状に張り出す張出部(22)を有する。上記構成によれば、弾性マット(20)を良好な座り心地と通気性とが得られやすい軽量な構成とすることができる。上記弾性マット(20)は、周縁部に後方へ向かってフランジ状に張り出す張出部(22)を有する構成により、ポリエステル系熱可塑性エラストマーから成るフレキシブルな構成であっても、周縁部に適度な剛性を持たせた構成とすることができる。
【0048】
また、シートバック(1)が、更に、バックフレーム(10)を後方から覆うバックボード(30)を有する。バックボード(30)と弾性マット(20)とが、シートバック(1)の周囲側部において互いの周縁部同士が嵌合されてバックフレーム(10)を包み込むように箱状に組み合わされる。上記構成によれば、シートバック(1)を弾性マット(20)とバックボード(30)とが一体感のある形に組み合わされる見栄えの良い構成とすることができる。
【0049】
また、複数のフック(23A,23B,23C)のうち、シートバック(1)の着座者の腰部を支持する下部領域に設けられる1つ以上の下部フック(23C)を足し合わせた全体の形状幅が、下部領域から上の上部領域に設けられる1つ以上の上部フック(23B)を足し合わせた全体の形状幅よりも長い。上記構成によれば、弾性マット(20)により、着座者の背部を体圧の大きさに応じた硬さで受け止めることができ、体圧分散性の良い支持を行うことができる。
【0050】
《その他の実施形態について》
以上、本発明の実施形態を1つの実施形態を用いて説明したが、本発明は上記実施形態のほか、各種の形態で実施することができるものである。
【0051】
1.本発明のシートバックは、鉄道等の自動車以外の車両や、航空機、船舶等の様々な乗物用に供されるシートにも広く適用することができるものである。また、シートバックは、乗物用シートの他、スポーツ施設や、劇場、コンサート会場、イベント会場等の各施設に設置される観覧席や、マッサージシート等の様々なシートにも広く適用することができるものである。
【0052】
2.弾性マットは、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)以外のポリエステル系熱可塑性エラストマーから成るものであっても良い。また、ゴムや他の樹脂材料から成るものであっても良い。
【0053】
3.フックは、弾性マットに別部材が一体成形されて設けられる構成であっても良い。フックの引掛けられる支持ワイヤは、バックフレームのフレーム本体から片持ち状に張り出すように設けられる構成であっても良い。フックは、支持ワイヤに対して、複数互い違いとなるように引掛けられるものの他、複数同じ向きに引掛けられるものであっても良い。上部フックと下部フックとは、それぞれ1つ以上で構成されていれば良い。
【0054】
4.弾性マットは、その周縁部に後方への張出部がない構成であっても良い。また、張出部は、必ずしも弾性マットの周縁部全体に形成されていなくても良く、一部に形成される構成であっても良い。バックボードも同様に、その周縁部に前方への張出部がない構成であっても良い。
【0055】
上記バックボードに前方への張出部がない場合、弾性マットの張出部がバックボードの周縁部に嵌合して箱状に組み合わされる構成であっても良い。また、上記弾性マットに後方への張出部がない場合、バックボードの張出部が弾性マットの周縁部に嵌合して箱状に組み合わされる構成であっても良い。なお、上記弾性マットとバックボードとは、互いの間に隙間が形成される構成であっても良い。また、弾性マットは、シートバックの周囲側部を覆うように設けられる樹脂製のサイドシールドにより周縁部が被覆されるようになっているものであっても良い。
【符号の説明】
【0056】
1 シートバック
10 バックフレーム
10A フレーム本体
11 サイドフレーム
12 アッパパイプ
13A 支持ワイヤ
13A1 固定部
13A2 固定部
13A3 引掛部
13A4 引掛部
13B 支持ワイヤ
13B1 固定部
13B2 引掛部
20 弾性マット
21 天板部
22 張出部
23 フック
23A フック
23B フック(上部フック)
23C フック(下部フック)
30 バックボード
31 背板部
32 張出部
W1 形状幅
W2 形状幅
図1
図2
図3
図4