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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】熱処理方法および熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
H01L21/26 T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019151893
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021034505
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 智宏
(72)【発明者】
【氏名】北澤 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】野崎 仁秀
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-321539(JP,A)
【文献】特開2019-129292(JP,A)
【文献】特開平11-160028(JP,A)
【文献】特開2017-041468(JP,A)
【文献】特開2012-074430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄膜が形成された基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法であって、
前記基板に形成されている前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、前記基板の種類、および前記基板の温度を測定する放射温度計の設置角度に基づいて前記放射温度計から見た前記基板の放射率を算定する放射率算定工程と、
前記放射率算定工程にて算定された前記放射率を前記放射温度計に設定し、フラッシュ光照射によって加熱された前記基板の温度を前記放射温度計によって測定する温度測定工程と、
を備え
前記放射率算定工程では、前記放射温度計の測定波長域における感度分布に基づいて前記基板の放射率の加重平均値を算定し、
前記温度測定工程では、前記放射率の前記加重平均値を前記放射温度計に設定することを特徴とする熱処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記放射率算定工程よりも前に、前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、および、前記基板の種類を設定入力する入力工程をさらに備えることを特徴とする熱処理方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱処理方法において、
前記基板の反射率を測定する反射率測定工程と、
前記基板の反射率に基づいて前記薄膜の膜種および前記薄膜の膜厚を特定する特定工程と、
を備えることを特徴とする熱処理方法。
【請求項4】
薄膜が形成された基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
処理対象となる基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内に収容された前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、
前記基板の温度を測定する放射温度計と、
前記基板に形成されている前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、前記基板の種類、および前記放射温度計の設置角度に基づいて前記放射温度計から見た前記基板の放射率を算定する放射率算定部と、
を備え、
前記放射率算定部は、前記放射温度計の測定波長域における感度分布に基づいて前記基板の放射率の加重平均値を算定し、
前記放射率算定部によって算定された前記放射率の前記加重平均値を前記放射温度計に設定し、前記フラッシュランプからのフラッシュ光照射によって加熱された前記基板の温度を前記放射温度計によって測定することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の熱処理装置において、
前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、および、前記基板の種類を設定入力する入力部をさらに備えることを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項4記載の熱処理装置において、
前記基板の反射率を測定する反射率測定部と、
前記基板の反射率に基づいて前記薄膜の膜種および前記薄膜の膜厚を特定する特定部と、
を備えることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法および熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプアニールに限らず、半導体ウェハーの熱処理においては、ウェハー温度の管理が重要となる。フラッシュランプアニールにおいても、フラッシュ光を照射したときの半導体ウェハーの表面の最高到達温度が正しく処理できたかどうかの重要な工程管理指標となる。このため、一般的には非接触の放射温度計によって半導体ウェハーの温度を測定するようにしている。放射温度計による温度測定には測定対象物の放射率が必須であり、従来はシリコンの放射率を使用して半導体ウェハーの温度を測定していた。
【0006】
半導体ウェハーの表面にはレジスト膜や層間絶縁膜、高誘電率膜等の各種薄膜が成膜されていることも多い。そのような薄膜が形成された半導体ウェハーの放射率はシリコンとは異なる値となるが、半導体ウェハーに対する放射温度計の測定角度を浅くすると(例えば、15°以下)、見かけの放射率は薄膜の膜種や膜厚に依存しなくなることが特許文献1に開示されている。このため、半導体ウェハーに対する放射温度計の設置角度を浅くすることにより、シリコンの放射率を使用しても薄膜が形成された半導体ウェハーの温度を測定することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-157064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の半導体技術では3次元高密度化の進展に伴って様々な薄膜が多層(例えば、100層以上)に積層される傾向にある。薄膜が多層に積層されると、放射温度計の測定角度を浅くしても見かけの放射率が大きく変動することが判明した。このため、多層膜を形成した半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、その表面の最高到達温度を正しく測定できなくなるという問題が生じる。フラッシュ光照射時の半導体ウェハーの表面の最高到達温度が正確に測定できないと、正しく処理できたか否かが不明となり、その結果として歩留まりが悪化するおそれもある。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、薄膜が多層に形成されていても基板の温度を正確に測定することができる熱処理方法および熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、薄膜が形成された基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理方法において、前記基板に形成されている前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、前記基板の種類、および前記基板の温度を測定する放射温度計の設置角度に基づいて前記放射温度計から見た前記基板の放射率を算定する放射率算定工程と、前記放射率算定工程にて算定された前記放射率を前記放射温度計に設定し、フラッシュ光照射によって加熱された前記基板の温度を前記放射温度計によって測定する温度測定工程と、を備え、前記放射率算定工程では、前記放射温度計の測定波長域における感度分布に基づいて前記基板の放射率の加重平均値を算定し、前記温度測定工程では、前記放射率の前記加重平均値を前記放射温度計に設定することを特徴とする。
【0012】
また、請求項の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記放射率算定工程よりも前に、前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、および、前記基板の種類を設定入力する入力工程をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
また、請求項の発明は、請求項1の発明に係る熱処理方法において、前記基板の反射率を測定する反射率測定工程と、前記基板の反射率に基づいて前記薄膜の膜種および前記薄膜の膜厚を特定する特定工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項の発明は、薄膜が形成された基板にフラッシュ光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、処理対象となる基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内に収容された前記基板にフラッシュ光を照射するフラッシュランプと、前記基板の温度を測定する放射温度計と、前記基板に形成されている前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、前記基板の種類、および前記放射温度計の設置角度に基づいて前記放射温度計から見た前記基板の放射率を算定する放射率算定部と、を備え、前記放射率算定部は、前記放射温度計の測定波長域における感度分布に基づいて前記基板の放射率の加重平均値を算定し、前記放射率算定部によって算定された前記放射率の前記加重平均値を前記放射温度計に設定し、前記フラッシュランプからのフラッシュ光照射によって加熱された前記基板の温度を前記放射温度計によって測定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項の発明は、請求項4の発明に係る熱処理装置において、前記薄膜の膜種、前記薄膜の膜厚、前記薄膜の層構成、および、前記基板の種類を設定入力する入力部をさらに備えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項の発明は、請求項4の発明に係る熱処理装置において、前記基板の反射率を測定する反射率測定部と、前記基板の反射率に基づいて前記薄膜の膜種および前記薄膜の膜厚を特定する特定部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1から請求項の発明によれば、基板に形成されている薄膜の膜種、薄膜の膜厚、薄膜の層構成、基板の種類、および基板の温度を測定する放射温度計の設置角度に基づいて放射温度計から見た基板の放射率を算定し、その放射率を設定した放射温度計によって基板の温度を測定するため、薄膜が多層に形成されていても基板の温度を正確に測定することができる。また、放射温度計の測定波長域における感度分布に基づいて基板の放射率の加重平均値を算定するため、基板の温度をより正確に測定することができる。
【0022】
請求項から請求項の発明によれば、基板に形成されている薄膜の膜種、薄膜の膜厚、薄膜の層構成、基板の種類、および放射温度計の設置角度に基づいて放射温度計から見た基板の放射率を算定し、その放射率を設定した放射温度計によって基板の温度を測定するため、薄膜が多層に形成されていても基板の温度を正確に測定することができる。また、放射温度計の測定波長域における感度分布に基づいて基板の放射率の加重平均値を算定するため、基板の温度をより正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る熱処理装置を示す平面図である。
図2図1の熱処理装置の正面図である。
図3】熱処理部の構成を示す縦断面図である。
図4】保持部の全体外観を示す斜視図である。
図5】サセプタの平面図である。
図6】サセプタの断面図である。
図7】移載機構の平面図である。
図8】移載機構の側面図である。
図9】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図10】反射率測定部および制御部の構成を示す図である。
図11】第1実施形態の温度測定手順を示すフローチャートである。
図12】情報入力画面の一例を示す図である。
図13】半導体ウェハーの分光放射率の一例を示す図である。
図14】上部放射温度計の感度分布を示す図である。
図15】補正後の半導体ウェハーの分光放射率を示す図である。
図16】第2実施形態の温度測定手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
<第1実施形態>
まず、本発明に係る熱処理装置の全体構成について説明する。図1は、本発明に係る熱処理装置100を示す平面図であり、図2はその正面図である。熱処理装置100は基板として円板形状の半導体ウェハーWにフラッシュ光を照射してその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、図1図3の各図においては、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を付している。
【0027】
図1および図2に示すように、熱処理装置100は、未処理の半導体ウェハーWを外部から装置内に搬入するとともに処理済みの半導体ウェハーWを装置外に搬出するためのインデクサ部101、未処理の半導体ウェハーWの位置決めを行うアライメント部230、加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却を行う2つの冷却部130,140、半導体ウェハーWにフラッシュ加熱処理を施す熱処理部160並びに冷却部130,140および熱処理部160に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う搬送ロボット150を備える。また、熱処理装置100は、上記の各処理部に設けられた動作機構および搬送ロボット150を制御して半導体ウェハーWのフラッシュ加熱処理を進行させる制御部3を備える。
【0028】
インデクサ部101は、複数のキャリアC(本実施形態では2個)を並べて載置するロードポート110と、各キャリアCから未処理の半導体ウェハーWを取り出すとともに、各キャリアCに処理済みの半導体ウェハーWを収納する受渡ロボット120とを備えている。未処理の半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポート110に載置されるともに、処理済みの半導体ウェハーWを収容したキャリアCは無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。
【0029】
また、ロードポート110においては、受渡ロボット120がキャリアCに対して任意の半導体ウェハーWの出し入れを行うことができるように、キャリアCが図2の矢印CUにて示す如く昇降移動可能に構成されている。なお、キャリアCの形態としては、半導体ウェハーWを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)の他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した半導体ウェハーWを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0030】
また、受渡ロボット120は、図1の矢印120Sにて示すようなスライド移動、矢印120Rにて示すような旋回動作および昇降動作が可能とされている。これにより、受渡ロボット120は、2つのキャリアCに対して半導体ウェハーWの出し入れを行うとともに、アライメント部230および2つの冷却部130,140に対して半導体ウェハーWの受け渡しを行う。受渡ロボット120によるキャリアCに対する半導体ウェハーWの出し入れは、ハンド121のスライド移動、および、キャリアCの昇降移動により行われる。また、受渡ロボット120とアライメント部230または冷却部130,140との半導体ウェハーWの受け渡しは、ハンド121のスライド移動、および、受渡ロボット120の昇降動作によって行われる。
【0031】
アライメント部230は、Y軸方向に沿ったインデクサ部101の側方に接続されて設けられている。アライメント部230は、半導体ウェハーWを水平面内で回転させてフラッシュ加熱に適切な向きに向ける処理部である。アライメント部230は、アルミニウム合金製の筐体であるアライメントチャンバー231の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に支持して回転させる機構(図10の回転支持部237、回転モータ238)、および、半導体ウェハーWの周縁部に形成されたノッチやオリフラ等を光学的に検出する機構などを設けて構成される。また、アライメントチャンバー231には、その内部にて支持されている半導体ウェハーWの表面の反射率を測定する反射率測定部232が設けられている。反射率測定部232は、半導体ウェハーWの表面に光を照射するとともに、当該表面にて反射された反射光を受光し、その反射光の強度から半導体ウェハーWの表面の反射率を測定する。
【0032】
アライメント部230への半導体ウェハーWの受け渡しは受渡ロボット120によって行われる。受渡ロボット120からアライメントチャンバー231へはウェハー中心が所定の位置に位置するように半導体ウェハーWが渡される。アライメント部230では、インデクサ部101から受け取った半導体ウェハーWの中心部を回転中心として鉛直方向軸まわりで半導体ウェハーWを回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。また、反射率測定部232が半導体ウェハーWの表面の反射率を測定する。向き調整の終了した半導体ウェハーWは受渡ロボット120によってアライメントチャンバー231から取り出される。
【0033】
搬送ロボット150による半導体ウェハーWの搬送空間として搬送ロボット150を収容する搬送チャンバー170が設けられている。その搬送チャンバー170の三方に熱処理部160の処理チャンバー6、冷却部130の第1クールチャンバー131および冷却部140の第2クールチャンバー141が連通接続されている。
【0034】
熱処理装置100の主要部である熱処理部160は、予備加熱を行った半導体ウェハーWにキセノンフラッシュランプFLからの閃光(フラッシュ光)を照射してフラッシュ加熱処理を行う基板処理部である。この熱処理部160の構成についてはさらに後述する。
【0035】
2つの冷却部130,140は、概ね同様の構成を備える。冷却部130,140はそれぞれ、アルミニウム合金製の筐体である第1クールチャンバー131,第2クールチャンバー141の内部に、金属製の冷却プレートと、その上面に載置された石英板とを備える(いずれも図示省略)。当該冷却プレートは、ペルチェ素子または恒温水循環によって常温(約23℃)に温調されている。熱処理部160にてフラッシュ加熱処理が施された半導体ウェハーWは、第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に搬入されて当該石英板に載置されて冷却される。
【0036】
第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141はともに、インデクサ部101と搬送チャンバー170との間にて、それらの双方に接続されている。第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141には、半導体ウェハーWを搬入出するための2つの開口が形設されている。第1クールチャンバー131の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口はゲートバルブ181によって開閉可能とされている。一方、第1クールチャンバー131の搬送チャンバー170に接続される開口はゲートバルブ183によって開閉可能とされている。すなわち、第1クールチャンバー131とインデクサ部101とはゲートバルブ181を介して接続され、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170とはゲートバルブ183を介して接続されている。
【0037】
インデクサ部101と第1クールチャンバー131との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ181が開放される。また、第1クールチャンバー131と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ183が開放される。ゲートバルブ181およびゲートバルブ183が閉鎖されているときには、第1クールチャンバー131の内部が密閉空間となる。
【0038】
また、第2クールチャンバー141の2つの開口のうちインデクサ部101に接続される開口はゲートバルブ182によって開閉可能とされている。一方、第2クールチャンバー141の搬送チャンバー170に接続される開口はゲートバルブ184によって開閉可能とされている。すなわち、第2クールチャンバー141とインデクサ部101とはゲートバルブ182を介して接続され、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170とはゲートバルブ184を介して接続されている。
【0039】
インデクサ部101と第2クールチャンバー141との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ182が開放される。また、第2クールチャンバー141と搬送チャンバー170との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う際には、ゲートバルブ184が開放される。ゲートバルブ182およびゲートバルブ184が閉鎖されているときには、第2クールチャンバー141の内部が密閉空間となる。
【0040】
さらに、冷却部130,140はそれぞれ、第1クールチャンバー131,第2クールチャンバー141に清浄な窒素ガスを供給するガス供給機構とチャンバー内の雰囲気を排気する排気機構とを備える。これらのガス供給機構および排気機構は、流量を2段階に切り換え可能とされていても良い。
【0041】
搬送チャンバー170に設けられた搬送ロボット150は、鉛直方向に沿った軸を中心に矢印150Rにて示すように旋回可能とされる。搬送ロボット150は、複数のアームセグメントからなる2つのリンク機構を有し、それら2つのリンク機構の先端にはそれぞれ半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a,151bが設けられている。これらの搬送ハンド151a,151bは上下に所定のピッチだけ隔てて配置され、リンク機構によりそれぞれ独立して同一水平方向に直線的にスライド移動可能とされている。また、搬送ロボット150は、2つのリンク機構が設けられるベースを昇降移動することにより、所定のピッチだけ離れた状態のまま2つの搬送ハンド151a,151bを昇降移動させる。
【0042】
搬送ロボット150が第1クールチャンバー131、第2クールチャンバー141または熱処理部160の処理チャンバー6を受け渡し相手として半導体ウェハーWの受け渡し(出し入れ)を行う際には、まず、両搬送ハンド151a,151bが受け渡し相手と対向するように旋回し、その後(または旋回している間に)昇降移動していずれかの搬送ハンドが受け渡し相手と半導体ウェハーWを受け渡しする高さに位置する。そして、搬送ハンド151a(151b)を水平方向に直線的にスライド移動させて受け渡し相手と半導体ウェハーWの受け渡しを行う。
【0043】
搬送ロボット150と受渡ロボット120との半導体ウェハーWの受け渡しは冷却部130,140を介して行うことができる。すなわち、冷却部130の第1クールチャンバー131および冷却部140の第2クールチャンバー141は、搬送ロボット150と受渡ロボット120との間で半導体ウェハーWを受け渡すためのパスとしても機能するものである。具体的には、搬送ロボット150または受渡ロボット120のうちの一方が第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に渡した半導体ウェハーWを他方が受け取ることによって半導体ウェハーWの受け渡しが行われる。搬送ロボット150および受渡ロボット120によって半導体ウェハーWをキャリアCから熱処理部160にまで搬送する搬送機構が構成される。
【0044】
上述したように、第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141とインデクサ部101との間にはそれぞれゲートバルブ181,182が設けられている。また、搬送チャンバー170と第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141との間にはそれぞれゲートバルブ183,184が設けられている。さらに、搬送チャンバー170と熱処理部160の処理チャンバー6との間にはゲートバルブ185が設けられている。熱処理装置100内にて半導体ウェハーWが搬送される際には、適宜これらのゲートバルブが開閉される。また、搬送チャンバー170およびアライメントチャンバー231にもガス供給部から窒素ガスが供給されるとともに、それらの内部の雰囲気が排気部によって排気される(いずれも図示省略)。
【0045】
次に、熱処理部160の構成について説明する。図3は、熱処理部160の構成を示す縦断面図である。熱処理部160は、半導体ウェハーWを収容して加熱処理を行う処理チャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュランプハウス5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲンランプハウス4と、を備える。処理チャンバー6の上側にフラッシュランプハウス5が設けられるとともに、下側にハロゲンランプハウス4が設けられている。また、熱処理部160は、処理チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と搬送ロボット150との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。
【0046】
処理チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。処理チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、処理チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲンランプHLからの光を処理チャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0047】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。処理チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0048】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、処理チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、処理チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0049】
また、チャンバー側部61には、処理チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖すると処理チャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0050】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aおよび貫通孔61bが穿設されている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を上部放射温度計25の赤外線センサー29に導くための円筒状の孔である。一方、貫通孔61bは、半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を下部放射温度計20の赤外線センサー24に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aおよび貫通孔61bは、それらの貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、上部放射温度計25が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化カルシウム材料からなる透明窓26が装着されている。また、貫通孔61bの熱処理空間65に臨む側の端部には、下部放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0051】
また、処理チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81は処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、窒素(N)等の不活性ガス、または、水素(H)、アンモニア(NH)等の反応性ガスを用いることができる(本実施形態では窒素)。
【0052】
一方、処理チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86は処理チャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気機構190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、処理チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、処理ガス供給源85および排気機構190は、熱処理装置100に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置100が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0053】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気機構190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介して処理チャンバー6内の気体が排気される。
【0054】
図4は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0055】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、処理チャンバー6の壁面に支持されることとなる(図3参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0056】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。図5は、サセプタ74の平面図である。また、図6は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0057】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0058】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0059】
図4に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71が処理チャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7が処理チャンバー6に装着される。保持部7が処理チャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0060】
処理チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、処理チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0061】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0062】
また、図4および図5に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、下部放射温度計20(図3参照)が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、下部放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61bに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0063】
図7は、移載機構10の平面図である。また、図8は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(図7の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(図7の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。移載動作位置はサセプタ74の下方であり、退避位置はサセプタ74よりも外方である。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0064】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(図4,5参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気が処理チャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0065】
図3に戻り、処理チャンバー6の上方に設けられたフラッシュランプハウス5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュランプハウス5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュランプハウス5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュランプハウス5が処理チャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLは処理チャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0066】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0067】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0068】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0069】
処理チャンバー6の下方に設けられたハロゲンランプハウス4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。複数のハロゲンランプHLは処理チャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行う。
【0070】
図9は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。本実施形態では、上下2段に各20本ずつのハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0071】
また、図9に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲンランプHLからの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0072】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段の各ハロゲンランプHLの長手方向と下段の各ハロゲンランプHLの長手方向とが直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0073】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0074】
また、ハロゲンランプハウス4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(図3)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0075】
図3に示すように、処理チャンバー6には、上部放射温度計25および下部放射温度計20の2つの放射温度計(本実施形態ではパイロメーター)が設けられている。上部放射温度計25はサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め上方に設置されるとともに、下部放射温度計20はサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの斜め下方に設けられている。上部放射温度計25の赤外線センサー29の光軸と半導体ウェハーWの主面とのなす角度は小さく、例えば10°である。同様に、下部放射温度計20の赤外線センサー24の光軸と半導体ウェハーWの主面とのなす角度も例えば10°である。上部放射温度計25は、半導体ウェハーWの上面から放射された赤外光を受光し、その赤外光の強度から当該上面の温度を測定する。上部放射温度計25の赤外線センサー29は、フラッシュ光が照射された瞬間の半導体ウェハーWの上面の急激な温度変化に対応できるように、InSb(インジウムアンチモン)の光学素子を備えている。一方、下部放射温度計20は、半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を受光し、その赤外光の強度から当該下面の温度を測定する。
【0076】
上記の構成以外にも熱処理部160は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲンランプハウス4、フラッシュランプハウス5および処理チャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、処理チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲンランプハウス4およびフラッシュランプハウス5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュランプハウス5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0077】
図10は、アライメント部230に設けられた反射率測定部232および制御部3の構成を示す図である。反射率測定部232は、投光部300、受光部235およびハーフミラー236を備える。アライメント部230のアライメントチャンバー231内には、半導体ウェハーWを支持して回転させる回転支持部237と当該回転支持部237を回転駆動する回転モータ238とが設けられている。半導体ウェハーWを支持する回転支持部237を回転モータ238が回転させることによって、当該半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0078】
投光部300は、キセノン光源、ハロゲン光源またはLED光源等の光源を備えて反射率測定用の光を出射する。受光部235は受光した光の強度を電気信号に変換する受光素子を備える。投光部300から出射された光はハーフミラー236によって反射されて回転支持部237に支持された半導体ウェハーWの上面に垂直に照射される。投光部300から照射された光は半導体ウェハーWの上面にて反射される。その反射光はハーフミラー236を透過して受光部235によって受光される。制御部3は、受光部235が受光した反射光の強度に基づいて半導体ウェハーWの上面の反射率を算出する。なお、投光部300は、照射する波長域の異なる複数の光源を備えている方が好ましい。投光部300が波長域の異なる複数の光源を備えていれば、広域波長にわたって半導体ウェハーWの反射率を測定することができる。また、投光部300は、半導体ウェハーWの上面の複数箇所に光を照射するものであっても良い。半導体ウェハーWの上面の複数箇所に光を照射すれば、局所的なパターン依存性を軽減することが可能となる。
【0079】
制御部3は、熱処理装置100に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスク35を備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置100における処理が進行する。反射率算定部31、特定部36、放射率算定部32および温度予測部39は、制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって実現される機能処理部である。反射率算定部31、特定部36、放射率算定部32および温度予測部39の処理内容についてはさらに後述する。なお、図1においては、インデクサ部101内に制御部3を示しているが、これに限定されるものではなく、制御部3は熱処理装置100内の任意の位置に配置することができる。
【0080】
また、制御部3には表示部34および入力部33が接続されている。制御部3は、表示部34に種々の情報を表示する。熱処理装置100のオペレータは、表示部34に表示された情報を確認しつつ、入力部33から種々のコマンドやパラメータを入力することができる。入力部33としては、例えばキーボードやマウスを用いることができる。表示部34としては、例えば液晶ディスプレイを用いることができる。本実施形態においては、表示部34および入力部33として、熱処理装置100の外壁に設けられた液晶のタッチパネルを採用して双方の機能を併せ持たせるようにしている。
【0081】
次に、本発明に係る熱処理装置100の処理動作について説明する。ここでは、まず製品となる通常の半導体ウェハー(プロダクトウェハー)Wに対する典型的な処理動作について説明する。処理対象となる半導体ウェハーWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。その不純物の活性化が熱処理装置100によるフラッシュ光照射加熱処理(アニール)により実行される。
【0082】
まず、不純物が注入された未処理の半導体ウェハーWがキャリアCに複数枚収容された状態でインデクサ部101のロードポート110に載置される。そして、受渡ロボット120がキャリアCから未処理の半導体ウェハーWを1枚ずつ取り出し、アライメント部230のアライメントチャンバー231に搬入する。アライメントチャンバー231では、回転支持部237に支持した半導体ウェハーWをその中心部を回転中心として水平面内にて鉛直方向軸まわりで回転させ、ノッチ等を光学的に検出することによって半導体ウェハーWの向きを調整する。
【0083】
次に、インデクサ部101の受渡ロボット120がアライメントチャンバー231から向きの調整された半導体ウェハーWを取り出し、冷却部130の第1クールチャンバー131または冷却部140の第2クールチャンバー141に搬入する。第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に搬入された未処理の半導体ウェハーWは搬送ロボット150によって搬送チャンバー170に搬出される。未処理の半導体ウェハーWがインデクサ部101から第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141を経て搬送チャンバー170に移送される際には、第1クールチャンバー131および第2クールチャンバー141は半導体ウェハーWの受け渡しのためのパスとして機能するのである。
【0084】
半導体ウェハーWを取り出した搬送ロボット150は熱処理部160を向くように旋回する。続いて、ゲートバルブ185が処理チャンバー6と搬送チャンバー170との間を開放し、搬送ロボット150が未処理の半導体ウェハーWを処理チャンバー6に搬入する。このときに、先行する加熱処理済みの半導体ウェハーWが処理チャンバー6に存在している場合には、搬送ハンド151a,151bの一方によって加熱処理後の半導体ウェハーWを取り出してから未処理の半導体ウェハーWを処理チャンバー6に搬入してウェハー入れ替えを行う。その後、ゲートバルブ185が処理チャンバー6と搬送チャンバー170との間を閉鎖する。
【0085】
処理チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWには、ハロゲンランプHLによって予備加熱が行われた後、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によってフラッシュ加熱処理が行われる。このフラッシュ加熱処理により半導体ウェハーWに注入された不純物の活性化が行われる。
【0086】
フラッシュ加熱処理が終了した後、ゲートバルブ185が処理チャンバー6と搬送チャンバー170との間を再び開放し、搬送ロボット150が処理チャンバー6からフラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWを搬送チャンバー170に搬出する。半導体ウェハーWを取り出した搬送ロボット150は、処理チャンバー6から第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141に向くように旋回する。また、ゲートバルブ185が処理チャンバー6と搬送チャンバー170との間を閉鎖する。
【0087】
その後、搬送ロボット150が加熱処理後の半導体ウェハーWを冷却部130の第1クールチャンバー131または冷却部140の第2クールチャンバー141に搬入する。このとき、当該半導体ウェハーWが加熱処理前に第1クールチャンバー131を通ってきている場合には加熱処理後にも第1クールチャンバー131に搬入され、加熱処理前に第2クールチャンバー141を通ってきている場合には加熱処理後にも第2クールチャンバー141に搬入される。第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141では、フラッシュ加熱処理後の半導体ウェハーWの冷却処理が行われる。熱処理部160の処理チャンバー6から搬出された時点での半導体ウェハーW全体の温度は比較的高温であるため、これを第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141にて常温近傍にまで冷却するのである。
【0088】
所定の冷却処理時間が経過した後、受渡ロボット120が冷却後の半導体ウェハーWを第1クールチャンバー131または第2クールチャンバー141から搬出し、キャリアCへと返却する。キャリアCに所定枚数の処理済み半導体ウェハーWが収容されると、そのキャリアCはインデクサ部101のロードポート110から搬出される。
【0089】
熱処理部160における加熱処理について説明を続ける。処理チャンバー6への半導体ウェハーWの搬入に先立って、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されて処理チャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86から処理チャンバー6内の気体が排気される。これにより、処理チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0090】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からも処理チャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理部160における半導体ウェハーWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0091】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、搬送ロボット150により搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWが処理チャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボット150は、未処理の半導体ウェハーWを保持する搬送ハンド151a(または搬送ハンド151b)を保持部7の直上位置まで進出させて停止させる。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0092】
未処理の半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボット150が搬送ハンド151aを熱処理空間65から退出させ、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、パターン形成がなされて不純物が注入された表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0093】
半導体ウェハーWが保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0094】
ハロゲンランプHLによる予備加熱を行うときには、半導体ウェハーWの温度が下部放射温度計20によって測定されている。すなわち、サセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から開口部78を介して放射された赤外光を透明窓21を通して下部放射温度計20が受光して昇温中のウェハー温度を測定する。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、下部放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。このように下部放射温度計20は、予備加熱段階においてハロゲンランプHLの出力を制御するための温度センサーでもある。予備加熱温度T1は、半導体ウェハーWに添加された不純物が熱により拡散する恐れのない、600℃ないし800℃程度とされる(本実施の形態では700℃)。
【0095】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、下部放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0096】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲンランプハウス4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0097】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点にてフラッシュランプFLが半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接に処理チャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてから処理チャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0098】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇し、半導体ウェハーWに注入された不純物が活性化された後、表面温度が急速に下降する。フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面温度は上部放射温度計25によって測定されている。フラッシュ加熱では半導体ウェハーWの表面温度を極めて短時間で昇降することができるため、半導体ウェハーWに注入された不純物の熱による拡散を抑制しつつ不純物の活性化を行うことができる。なお、不純物の活性化に必要な時間はその熱拡散に必要な時間に比較して極めて短いため、0.1ミリセカンドないし100ミリセカンド程度の拡散が生じない短時間であっても活性化は完了する。
【0099】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は下部放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、下部放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された処理後の半導体ウェハーWが搬送ロボット150の搬送ハンド151b(または搬送ハンド151a)により搬出される。搬送ロボット150は、搬送ハンド151bをリフトピン12によって突き上げられた半導体ウェハーWの直下位置にまで進出させて停止させる。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、フラッシュ加熱後の半導体ウェハーWが搬送ハンド151bに渡されて載置される。その後、搬送ロボット150が搬送ハンド151bを処理チャンバー6から退出させて処理後の半導体ウェハーWを搬出する。
【0100】
次に、半導体ウェハーWの表面温度の測定についてさらに詳細に説明する。半導体ウェハーWの表面の温度は上部放射温度計25によって測定される。上部放射温度計25によって半導体ウェハーWの表面の温度を測定するためには、半導体ウェハーWの表面の放射率(上部放射温度計25から見た見かけの放射率)を上部放射温度計25に設定することが必要となる。典型的には、製品となる半導体ウェハーWの表面には薄膜が多層に形成されていることが多い。上部放射温度計25の測定角度は浅いものの、半導体ウェハーWの表面に薄膜が多層に積層されているときには放射率も多層膜の状態によって変動する。このため、第1実施形態においては、以下のようにして半導体ウェハーWの表面温度を測定している。
【0101】
図11は、第1実施形態の温度測定手順を示すフローチャートである。第1実施形態においては、処理対象となる半導体ウェハーWの熱処理装置100における処理が開始される前に装置のオペレータが各種情報を入力部33から設定入力する(ステップS11)。オペレータが各種情報を入力するタイミングは、熱処理装置100における半導体ウェハーWの処理が開始される前の任意の時点であれば良く、例えば半導体ウェハーWが収容されたキャリアCがロードポート110に載置されたときであって良い。
【0102】
図12は、情報入力画面の一例を示す図である。本実施形態においては、入力部33および表示部34として双方の機能を併せ持つタッチパネルを採用している。図12に示すのは、そのタッチパネルに表示される入力画面の一例である。オペレータは、図12に示す入力画面から半導体ウェハーWの表面に形成されている薄膜についての膜情報、半導体ウェハーW自体についての基板情報、および、上部放射温度計25に関する装置情報を入力する。
【0103】
膜情報には、半導体ウェハーWの表面に形成されている薄膜の膜種、膜厚および層構成が含まれる。具体的にはオペレータは、図12の"Layer1"~"Layer4"の項目から、半導体ウェハーWの表面に多層に形成されている各薄膜の膜種(Type)および膜厚(Thin)を入力する。また、オペレータは、"Cycle time"の項目から、多層膜における"Layer1"~"Layer4"の繰り返しの回数を層構成として入力する。図12の例では、膜厚15nmの窒化ケイ素(SiN)の薄膜と膜厚15nmの二酸化ケイ素(SiO)の薄膜とが交互に4×25=100層形成されていることとなる。
【0104】
また、基板情報には、多層膜が形成されている半導体ウェハーWの基材の種類が含まれる。具体的にはオペレータは、図12の"Subst"の項目から、半導体ウェハーWの基材の種類を入力する。図12の例では、半導体ウェハーWの基材の種類としてシリコン(Si)が入力されている。
【0105】
さらに、装置情報には、上部放射温度計25の設置角度が含まれる。上部放射温度計25の設置角度は、半導体ウェハーWの主面の法線に対する上部放射温度計25の赤外線センサー29の光軸の角度である。具体的には、図12の"Angle"の項目から、上部放射温度計25の設置角度が入力される。なお、上部放射温度計25の設置角度は装置の固定のパラメータであるため、逐一入力されることなく、固定値として設定されていても良い。
【0106】
次に、設定入力された各種情報に基づいて、制御部3の放射率算定部32が半導体ウェハーWの表面の放射率を算定する(ステップS12)。具体的には、オペレータが図12の"Calculation"を選択することによって、設定入力された各種情報に基づいて放射率算定部32が演算処理を行って半導体ウェハーWの表面の放射率を算定する。薄膜が形成された半導体ウェハーWの反射率は、上記各種情報に基づいてフレネルの公式等の公知の理論式を用いて算出される。放射率算定部32は、算出された反射率を1から減じることによって半導体ウェハーWの放射率を算定する(半導体ウェハーWの透過率は0と仮定している)。なお、ステップS12にて各種情報に基づいて算定される半導体ウェハーWの表面の放射率は、上部放射温度計25の設置角度から見た見かけの放射率である。また、ステップS12では、少なくとも上部放射温度計25の測定波長域である5μm~6.5μmを含む波長域における半導体ウェハーWの表面の分光放射率を算定する。
【0107】
次に、放射率算定部32がステップS12で求められた半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を算定する(ステップS13)。図13は、ステップS12で求められた半導体ウェハーWの表面の分光放射率の一例を示す図である。図14は、上部放射温度計25の感度分布を示す図である。図14に示すように、上部放射温度計25の測定波長域である5μm~6.5μmのうち、波長6μm~6.5μmの感度は波長5μm~6μmの感度に比較して低い。すなわち、上部放射温度計25による温度測定に際しては、5μm~6μmの波長域がより重要となる。このため、放射率算定部32は、図14に示すような上部放射温度計25の感度分布に基づいて図13に示す分光放射率を補正する。その結果、図15に示すような、補正後の半導体ウェハーWの表面の分光放射率が求まる。放射率算定部32は、図15に示す補正後の分光放射率から上部放射温度計25の測定波長域である5μm~6.5μmの平均値を算定する。すなわち、放射率算定部32は、上部放射温度計25の感度分布に基づいて半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を算定するのである。
【0108】
その後、上部放射温度計25による半導体ウェハーWの表面の温度測定を実行する(ステップS14)。このときには、ステップS13で算定された半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を上部放射温度計25に設定する。上部放射温度計25は、当該放射率の加重平均値を用い、フラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの表面温度を測定する。
【0109】
第1実施形態においては、半導体ウェハーWの表面に形成された薄膜についての膜情報、半導体ウェハーWについての基板情報、および、上部放射温度計25の設置角度が設定入力され、それら各種情報に基づいて多層膜が形成されている半導体ウェハーWの表面の正確な放射率を求めている。この放射率は、上部放射温度計25から見た見かけの放射率である。そして、求めた放射率を用いて上部放射温度計25がフラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの表面の温度を測定する。膜情報等に基づいて正確に算定された放射率を用いて上部放射温度計25が温度測定を行っているため、薄膜が多層に形成されていても半導体ウェハーWの温度を正確に測定することができる。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面の最高到達温度(処理温度T2)を正確に測定することが可能となる。
【0110】
また、上部放射温度計25の感度分布に基づいて半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を求め、その加重平均値を用いて上部放射温度計25が温度測定を行っている。このため、上部放射温度計25はより正確に半導体ウェハーWの表面温度を測定することができる。
【0111】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態の熱処理装置の構成は第1実施形態と同じである。また、第2実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、半導体ウェハーWの放射率の算定方法である。
【0112】
図16は、第2実施形態の温度測定手順を示すフローチャートである。第2実施形態においては、半導体ウェハーWの温度測定に先立って、半導体ウェハーWの反射率と膜情報との相関関係を示すデータベースDB(図10)が作成されている。具体的には、シリコンの半導体基板上に種々の膜種および膜厚の薄膜が形成されている場合の反射率をシミュレーションによって個別に求める。そして、求められた反射率とシミュレーションの条件として設定した薄膜の膜種および膜厚とを相互に関連付けてデータベースDBに登録する。作成されたデータベースDBは制御部3の記憶部である磁気ディスク35に格納される。データベースDBには、複数の薄膜についての膜種および膜厚と反射率とが相互に関連付けられて登録されることとなる。
【0113】
第2実施形態では、処理対象となる半導体ウェハーWの反射率を測定する(ステップS21)。上述したように、処理対象となる半導体ウェハーWは向き調整のためにアライメント部230のアライメントチャンバー231に搬入される。アライメントチャンバー231では、半導体ウェハーWが回転支持部237によって支持される。反射率測定部232の投光部300から出射された光はハーフミラー236によって反射されて半導体ウェハーWの表面に入射角0°にて照射される。投光部300から照射された光は半導体ウェハーWの表面にて反射され、その反射光はハーフミラー236を透過して受光部235によって受光される。制御部3の反射率算定部31は、受光部235が受光した半導体ウェハーWからの反射光の強度を投光部300が照射した光の強度で除することによって半導体ウェハーWの表面の反射率を算出する。なお、回転支持部237に支持された半導体ウェハーWを回転モータ238によって回転させつつ当該半導体ウェハーWの反射率を測定するようにしても良い。
【0114】
次に、制御部3の特定部36がステップS21で測定された半導体ウェハーWの反射率に基づいて膜情報を特定する(ステップS22)。具体的には、特定部36は、ステップS21で測定された反射率に対応付けられた膜種および膜厚をデータベースDBから抽出する。このようにして特定された膜種および膜厚が半導体ウェハーWに形成されている薄膜の膜種および膜厚である。
【0115】
薄膜の膜種および膜厚以外の各種情報は、第1実施形態と同様にして設定入力される。すなわち、半導体ウェハーWについての基板情報、上部放射温度計25の設置角度、および、薄膜の層構成はオペレータによって入力部33から設定入力される。
【0116】
以降のステップS23~ステップS25の手順は第1実施形態のステップS12~ステップS14の手順と同じである。まず、ステップS22で特定された膜情報を含む各種情報に基づいて、制御部3の放射率算定部32が半導体ウェハーWの表面の放射率を算定する(ステップS23)。なお、ステップS21では半導体ウェハーWの表面の反射率が測定されるのであるが、この反射率は可視光域のものであるため、上部放射温度計25の測定波長域(5μm~6.5μm)の反射率とは相違する。それゆえ、ステップS21で測定された反射率を1から減じるだけでは上部放射温度計25の測定波長域における放射率を求めることはできない。このため、第1実施形態と同様に、薄膜の膜情報を含む各種情報に基づいて半導体ウェハーWの表面の放射率を算定する。
【0117】
次に、放射率算定部32が半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を算定する(ステップS24)。ここでは、第1実施形態と同様に、放射率算定部32は、上部放射温度計25の感度分布に基づいて半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を算定する。そして、上部放射温度計25による半導体ウェハーWの表面の温度測定を実行する(ステップS25)。
【0118】
第2実施形態においては、半導体ウェハーWの表面に形成されている薄膜の膜種および膜厚を入力するのではなく、半導体ウェハーWの反射率から特定している。そして、その特定した膜種および膜厚を含む各種情報に基づいて多層膜が形成されている半導体ウェハーWの表面の正確な放射率を求めている。上部放射温度計25は、求められた放射率を用いてフラッシュ光照射によって加熱される半導体ウェハーWの表面の温度を測定する。第1実施形態と同じく、膜情報等に基づいて正確に算定された放射率を用いて上部放射温度計25が温度測定を行っているため、薄膜が多層に形成されていても半導体ウェハーWの温度を正確に測定することができる。その結果、フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面の最高到達温度(処理温度T2)を正確に測定することが可能となる。
【0119】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態の熱処理装置の構成は第1実施形態と同じである。また、第3実施形態における半導体ウェハーWの処理手順も第1実施形態と同じである。第3実施形態では、第1実施形態または第2実施形態で求められた放射率を用いてフラッシュ光照射前に半導体ウェハーWの表面の最高到達温度を予測している。
【0120】
フラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面の最高到達温度は、フラッシュランプFLに印加する電圧に依存している。第1実施形態または第2実施形態で求められた正確な放射率を上部放射温度計25に設定し、フラッシュランプFLに何パターンかの電圧を印加してフラッシュ光を照射したときの半導体ウェハーWの表面の最高到達温度を上部放射温度計25によって測定する。これにより、フラッシュランプFLへの印加電圧とフラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面の最高到達温度との相関関係を求めておく。
【0121】
半導体ウェハーWの処理時にはフラッシュランプFLへの印加電圧がウェハー毎に規定されている。制御部3の温度予測部39は、その印加電圧と上記の相関関係とに基づいてフラッシュ光照射時の半導体ウェハーWの表面の最高到達温度を予測する。第1実施形態または第2実施形態で求められた正確な放射率を設定された上部放射温度計25による半導体ウェハーWの実測温度と予測温度は良好な整合性を示す。
【0122】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、上部放射温度計25から見た半導体ウェハーWの表面の放射率を算定していたが、下部放射温度計20から見た半導体ウェハーWの裏面の放射率を算定するようにしても良い。この場合、半導体ウェハーWの裏面に形成された薄膜についての膜情報、半導体ウェハーWについての基板情報、および、下部放射温度計20の設置角度に関する各種情報に基づいて半導体ウェハーWの裏面の放射率が求められる。半導体ウェハーWの表面に比較して裏面には薄膜が多層に形成されているケースは少ないものの、上記実施形態と同様にして半導体ウェハーWの裏面の放射率を求め、その放射率を下部放射温度計20に設定することにより、下部放射温度計20によって半導体ウェハーWの裏面の温度を正確に測定することができる。
【0123】
また、上記実施形態においては、上部放射温度計25の感度分布に基づいて半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を求めていたが、加重平均は必須では無く、各種情報に基づいて算定された半導体ウェハーWの放射率をそのまま用いて温度測定を行うようにしても良い。加重平均値を用いない場合であっても、求められた半導体ウェハーWの放射率から上部放射温度計25の測定波長域である5μm~6.5μmの平均値を算定して上部放射温度計25に設定する。このようにしても、膜情報等を含む各種情報に基づいて算定された放射率を用いて半導体ウェハーWの表面温度を正確に測定することができる。もっとも、上記実施形態のように、上部放射温度計25の感度分布に基づいて半導体ウェハーWの表面の放射率の加重平均値を求め、その加重平均値を上部放射温度計25に設定した方がより正確に半導体ウェハーWの表面温度を測定することができる。
【0124】
また、上記実施形態においては、フラッシュランプハウス5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲンランプハウス4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0125】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【0126】
また、熱処理装置100によって処理対象となる基板は半導体ウェハーに限定されるものではなく、液晶表示装置などのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板や太陽電池用の基板であっても良い。
【符号の説明】
【0127】
3 制御部
4 ハロゲンランプハウス
5 フラッシュランプハウス
6 処理チャンバー
7 保持部
10 移載機構
31 反射率算定部
32 放射率算定部
33 入力部
34 表示部
35 磁気ディスク
36 特定部
39 温度予測部
65 熱処理空間
74 サセプタ
100 熱処理装置
101 インデクサ部
120 受渡ロボット
130,140 冷却部
150 搬送ロボット
151a,151b 搬送ハンド
160 熱処理部
231 アライメントチャンバー
232 反射率測定部
DB データベース
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
W 半導体ウェハー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16