(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】金属製外装材
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20231023BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
E04F13/08 N
E04F13/08 A
B32B15/08 G
(21)【出願番号】P 2019187608
(22)【出願日】2019-10-11
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390018463
【氏名又は名称】アイジー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松岡竜央
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-067980(JP,A)
【文献】特開2019-058877(JP,A)
【文献】特開2012-076423(JP,A)
【文献】特開平11-226497(JP,A)
【文献】特表2010-540762(JP,A)
【文献】特開2008-087242(JP,A)
【文献】特開平01-142164(JP,A)
【文献】特開平08-011268(JP,A)
【文献】特開平11-172015(JP,A)
【文献】特開2018-184638(JP,A)
【文献】特開2016-040118(JP,A)
【文献】特開2019-111750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製表面材と裏面材間に芯材を形成し、金属性表面材の上下端部に雌雄連結構造を形成した横長で長尺状の金属製外装材において、金属製表面材は
金属基材上に化成被膜、プライマーを介してフッ素樹脂塗膜を形成し、該フッ素樹脂塗膜は艶消し材と、顔料と、骨材とからなる表面凹凸を備え、該フッ素樹脂塗膜に対してコロナ放電を施し、該コロナ放電を施したフッ素樹脂塗膜上に
、該フッ素樹脂塗膜表面に形成された凹凸を覆うようにして水性フッ素塗料を
塗布および硬化させた塗膜を形成したことを特徴とする金属製外装材。
【請求項2】
前記水性フッ素塗料にワックス剤を添加したことを特徴とする請求項1に記載の金属製外装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築、構築物の外装を形成する金属製外装材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、板材の化粧面にロールコーター、フローコーター、インクジェットプリンター等により加飾を施した外装材は数多く上市されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は「被膜構成体の製造方法及び建築板」に係り、第一の被膜の表面に電磁波を照射した後に、第一の被膜の表面に水性塗料を塗布して第二の被膜を作製することで、被膜構成体を製造することが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1には、第一の被膜の表面に電磁波を照射した後に、前記第一の被膜の表面に水性塗料を塗布して第二の被膜を作製することが記載されているが、フッ素塗膜上に水性フッ素塗料を形成した際の親水性の向上を図る構成が記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような欠点を解決するために、金属製表面材と裏面材間に芯材を形成し、金属性表面材の上下端部に雌雄連結構造を形成した横長で長尺状の金属製外装材において、金属製表面材は金属基材上に化成被膜、プライマーを介してフッ素樹脂塗膜を形成し、該フッ素樹脂塗膜は艶消し材と、顔料と、骨材とからなる表面凹凸を備え、該フッ素樹脂塗膜に対してコロナ放電を施し、該コロナ放電を施したフッ素樹脂塗膜上に、該フッ素樹脂塗膜表面に形成された凹凸を覆うようにして水性フッ素塗料を塗布および硬化させた塗膜を形成した金属製外装材を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る金属製外装材によれば、フッ素樹脂塗装鋼板よりなる金属製表面材の表面のフッ素樹脂塗膜に対して、コロナ放電をすることにより、(1)フッ素樹脂塗膜の表面を一時的に不安定化(活性化)することにより、フッ素樹脂塗膜の表面を親水性化し、水性フッ素塗料を付着しやすく、かつ密着性も向上できる。(2)水性フッ素塗料にワックス剤を添加することにより摩擦係数を低下し、傷付きを防止できる。などの特徴、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る金属製外装材における金属製表面材の代表例を示す拡大端面図である。
【
図2】本発明に係る金属製外装材の代表例を示す断面図である。
【
図3】本発明に係る金属製外装材の施工状態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る金属製外装材の代表例を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
以下に図面を用いて、本発明に係る金属製外装材の一実施例について詳細に説明する。すなわち、
図1(a)、(b)は本発明に係る金属製外装材Aの金属製表面材1の代表例を示す拡大端面図、
図2は本発明に係る金属製外装材Aを示す断面図、
図3は施工状態を示す断面図、
図4は金属製外装材Aの代表例を示す部分拡大断面図であり、化粧面6部分省略して破線で示した断面図である。また、αは躯体、βは固定具、γは連結目地である。
【0010】
本発明に係る金属製外装材Aは
図2に示すように、金属製表面材1と裏面材2で例えば合成樹脂発泡体からなる芯材3をサンドイッチした金属製外装材Aである。なお、
図2~
図4(a)、(b)においては、化粧面6部分の凹凸模様(エンボス模様)を省略して簡略化して示してある。
【0011】
金属製表面材1と裏面材2は金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、クラッド鋼板、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)等(勿論、これらを各種色調に塗装したカラー鋼板を含む)の一種をエンボスロール成形、あるいはプレス成形し、各種形状に加工したものである。また、裏面材2としてはアルミニウム蒸着紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布等の1種、または2種以上をラミネートしたもの、あるいは防水処理、難燃処理されたシート状物からなるものでも良い。
【0012】
芯材3は例えばポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等、の合成樹脂発泡体からなるものであり、金属製表面材1、もしくは裏面材2の裏面側に合成樹脂発泡体の原液を吐出し、加熱して反応・発泡・硬化させて金属製表面材1と裏面材2を芯材3により一体に形成するものである。また、芯材3中には各種難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン、水酸化アルミニウム等)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイト等)を混在させ、耐火性、防火性を向上させることもできる。
【0013】
金属製外装材A同士は、係合片10が嵌合溝16へ、係合溝11には嵌合片14が連結されることにより、
図3に示すように連結されるものである。勿論、図では横張りにて形成しているが、横方向に施工することにより縦張りに形成することもできる。
【0014】
金属製外装材Aの全体形状の一例としては
図2~
図4(a)、(b)に示すように、長尺で金属製の薄板からなる金属製表面材1と裏面材2間に芯材3をサンドイッチし、幅方向の一端に形成した雄型連結部4、他端に形成した雌型連結部5とから形成し、化粧面6の下端には側壁7、上端には側壁8を形成したものである。
【0015】
さらに詳説すると、雄型連結部4は化粧面6下端を裏面側に屈曲した側壁7と、側壁7の先端を上方へ突出した上面9と、上面9の先端を下方に屈曲した係合片10と、上面9と係合片10とからなる係合溝11とから形成したものである。
【0016】
雌型連結部5は化粧面6の上端を裏面側に屈曲した側壁8と、側壁8の先端を上方に屈曲した目地底面12と、目地底面12の先端を折り返し下方に突出した下面13と、目地底面12と下面13とからなる嵌合片14と、下面13の先端を上方に屈曲して突出した固定面15と、下面13と固定面15とから形成した嵌合溝16とから形成したものである。なお、Pは防水性強化のために形成したパッキンである。
【0017】
化粧面6は、
図1(a)、(b)に金属製表面材1の端面を示すようにフッ素樹脂を金属製基材1a上に化成被膜、プライマーを介してフッ素樹脂塗膜1bを形成したフッ素樹脂塗装鋼板(プレコート鋼板)よりなる金属製表面材1である。
【0018】
また、フッ素樹脂塗膜1bには艶消し材1c、顔料1d、骨材1eを形成するために微細な凹凸が形成されている。
【0019】
フッ素樹脂塗装鋼板Bの表面に対し、水性フッ素塗料Dを加飾塗料として形成するには密着性が弱いという大きな欠点があった。これはフッ素樹脂塗装鋼板Bの表面は安定してしかも撥水性のために水性塗料は弾かれ、かつ密着性が弱いという性質があった。
【0020】
そこで、本願発明の金属製外装材Aにおいて、
図1(a)に示すようにフッ素樹脂塗装鋼板Bよりなる金属製表面材1の表面のフッ素樹脂塗膜1bに対してコロナ放電Cを施すことにより、フッ素樹脂塗膜1bの表面を一時的に不安定化(活性化)することによりフッ素樹脂塗膜1bを親水性化し、水性フッ素塗料Dを付着しやすく、かつ密着性も向上した。勿論、最後には乾燥・焼き付け・硬化工程を経て接着一体化するものである。
【0021】
コロナ放電C(局部破壊放電)は尖った電極(針電極)の周りに不均一な電界が生じることにより起こる持続的な放電の総称であり、この際、針電極周辺に認められる発光部をコロナと呼ぶ。コロナ放電Cによって流れる電流は小さく、数μA程度である。
【0022】
その他の実施例としては、水性フッ素塗料Dにワックス剤を添加することにより摩擦係数を低下し、傷付きを防止できる金属製外装材Aとなる。
【0023】
また、水性フッ素塗料Dに乾燥助剤を添加することにより乾燥時間を短縮すると共に、乾燥させて水分を蒸発させることにより密着性を向上できる金属製外装材Aとなる。
【0024】
さらに、
図1(b)に示すように、化粧面6の艶消し材1c、顔料1d、骨材1eの微細な凹凸を利用し、凸と凸間に水性フッ素塗料Dを塗り込むと、傷の原因となる物体の摩擦は凸の上部に接触するものの、凸と凸の間にある塗料を傷付ける確率は少なくなる。この効果により凸の上部には傷が付くものの、殆どの部分には傷が付かない状態になる。この方法はロールコーター塗装に適している。
【符号の説明】
【0025】
α 躯体
β 固定具
γ 連結目地
A 金属製外装材
B フッ素樹脂塗装鋼板
C コロナ放電
D 水性フッ素塗料
P パッキン
1 金属製表面材
1a 金属製基材
1b フッ素樹脂塗膜
1c 艶消し材
1d 顔料
1e 骨材
2 裏面材
3 芯材
4 雄型連結部
5 雌型連結部
6 化粧面
7 側壁
8 側壁
9 上面
10 係合片
11 係合溝
12 目地底面
13 下面
14 嵌合片
15 固定面
16 嵌合溝